JP3909009B2 - 有機質正特性サーミスタおよびその製造方法 - Google Patents

有機質正特性サーミスタおよびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、温度センサーや過電流保護素子として用いられ、温度上昇とともに抵抗値が増大するPTC(positive temperature coefficient of resistivity)特性を有する有機質正特性サーミスタに関する。
【0002】
【従来の技術】
高分子マトリックスに導電性粒子を分散させた有機質正特性サーミスタはこの分野では公知であり、米国特許3243753号明細書および同3351882号明細書等に開示されている。
【0003】
抵抗値の増大は、結晶性高分子が融解に伴って膨張し、導電性粒子の導電経路を切断するためと考えられている。
【0004】
有機質正特性サーミスタは、過電流・過熱保護素子、自己制御型発熱体、温度センサー等に利用することができる。この中でも、電気回路に直列に接続する過電流・加熱保護素子では特に、室温抵抗値が十分低いこと、室温抵抗値と動作時の抵抗値の変化率が十分大きいこと、繰り返し動作における抵抗値の変化が小さいことが特性として求められる。
【0005】
有機質正特性サーミスタの導電性粒子としては、カーボンブラックやグラファイトなどの炭素系導電性粒子が主に用いられている。しかしながら、素子の低抵抗化を行うには大量の導電性粒子を配合する必要がある。その場合、抵抗変化率が減少し過電流・過熱保護素子としての充分な特性が得られない。
【0006】
この欠点は、炭素系粒子よりも比抵抗の低い金属導電性粒子を使うことで克服することができる。低い室温抵抗と大きな抵抗変化率を両立するために、特にスパイク状の突起を持つ金属導電性粒子を用いることが開示されている。特開平5−47503(登録3022644)には、結晶性重合体とこれにスパイク状の突起を有する導電性粒子を混練してなる有機質正特性サーミスタが開示されており、また米国特許5378407号にはスパイク状の突起を有するフィラメント状のNiと、結晶性ポリオレフイン、オレフイン系コポリマー、又はフルオロポリマーからなる導電性ポリマー組成物が開示されている。
【0007】
本発明者らも、スパイク状の突起を持つ導電性粒子を用いることで低い室温抵抗と大きい抵抗変化率が両立できることを、特開平10−214705号公報、同11−168005公報、特開2000−82602号公報、同2000−200704号公報などで開示している。
【0008】
しかしながら、これら金属導電性粒子を用いた有機質正特性サーミスタは、長期保存等の信頼性に劣ることが本発明者により確認された。これは保存試験時間とともに室温抵抗値が徐々に上昇するというもので、その程度は保存試験条件に依存する。
【0009】
この原因は、金属導電性粒子の表面が酸化され導電率が低下することによるもの、保存中に導電性粒子の凝集が進み一部の導電パスが切断されることによるもの、等が考えられる。この抵抗値上昇の問題が、導電性粒子表面をあらかじめ有機物で処理することで解決されることがわかった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、金属を導電性粒子として含む有機質正特性サーミスタの特性安定性を向上させることである。
【0011】
【課題を解決する手段】
すなわち上記目的は、以下の本発明の構成により達成される。
(1)高分子有機マトリックスと、この高分子有機マトリックス中に導電性金属粒子を含有し、前記導電性金属粒子表面近傍に高分子有機マトリクスとは異なる材料であって、前記導電性金属粒子と共有結合することなく、前記高分子有機マトリックスと分子レベルで相溶性がない有機物層を有する有機質正特性サーミスタ。
(2)前記有機物は、高分子有機マトリックスに対して反応性を持たない材料である上記(1)の有機正特性サーミスタ。
(3)前記導電性金属粒子が、ニッケルまたは銅を含む上記(1)または(2)の有機質正特性サーミスタ。
(4)前記高分子有機マトリックスが、熱可塑性ポリマーである上記(1)〜(3)のいずれかの有機質正特性サーミスタ。
(5)さらに低分子有機化合物を含む上記(1)〜(4)のいずれかの有機質正特性サーミスタ。
(6)前記導電性金属粒子が、スパイク状の突起を有している上記(1)〜(5)のいずれかの有機質正特性サーミスタ。
(7)前記有機物は、生分解性を有する材料である上記(1)〜(6)のいずれかの有機質正特性サーミスタ。
(8)あらかじめ有機物で導電性金属粒子表面を覆うように処理し、この導電性金属粒子を高分子有機マトリックスと混合・分散して有機質正特性サーミスタを得ており、前記有機物は、高分子有機マトリクスとは異なる材料であって、前記導電性金属粒子と共有結合することなく、前記高分子有機マトリックスと分子レベルで相溶性がない材料である有機質正特性サーミスタの製造方法。
)前記有機物は、高分子有機マトリックスに対して反応性を持たない材料である上記(8)の有機質正特性サーミスタの製造方法。
10)前記導電性金属粒子が、ニッケルまたは銅を含む上記(8)または(9)の有機質正特性サーミスタの製造方法。
11)前記高分子有機マトリックスが、熱可塑性ポリマーである上記(8)〜(10)のいずれかの有機質正特性サーミスタの製造方法。
12)前記高分子有機マトリックスに、さらに低分子有機化合物を含む上記(8)〜(11)のいずれかの有機質正特性サーミスタの製造方法。
13)前記導電性金属粒子が、スパイク状の突起を有している上記(8)〜(12)のいずれかの有機質正特性サーミスタの製造方法。
14)前記有機物は、生分解性を有する材料である上記(8)〜(13)のいずれかの有機質正特性サーミスタの製造方法。
【0012】
【作用】
本発明の有機質正特性サーミスタは、高分子有機マトリックスに、あらかじめ表面を有機物(高分子有機マトリクスとは異なる材料であって、導電性金属粒子と共有結合することなく、高分子有機マトリックスと分子レベルで相溶性がない有機物)で処理した金属導電性粒子を含むことを特長とする。
【0013】
導電性金属粒子の表面をあらかじめ有機物で処理することにより、長期保存中の粒子表面への酸素の拡散を防止し酸化を抑えて抵抗値が安定する。また、表面処理により導電性金属粒子同士の過度の擬集を抑える効果もあると考えられる。さらに、導電性金属粒子と、高分子有機マトリックスとを容易に分離することもできる。
【0014】
【本発明の実施の形態】
本発明の有機質正特性サーミスタは、高分子有機マトリックスに、あらかじめ表面を高分子有機マトリクスとは異なる材料であって、前記導電性金属粒子と共有結合することなく、前記高分子有機マトリックスと分子レベルで相溶性がない材料で処理した導電性金属粒子を含むことを特長とする。
【0015】
高分子有機マトリックスは熱可塑性、熱硬化性どちらも用いることができる。
【0016】
熱可塑性高分子マトリックスとしては、ポリオレフイン(例えばポリエチレン)、オレフイン系コポリマー(例えばエチレン−酢酸ビニルコポリマー、エチレン−アクリル酸コポリマー)、ハロゲン系ポリマー、ポリアミド、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンオキサイド、ポリアセタール、熱可塑性変性セルロース、ポリスルホン類、熱可塑性ポリエステル(PET等)、ポリエチルアクリレート、ポリメチルメタアクリレート、熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
【0017】
具体的には、高密度ポリエチレン[例えば、商品名ハイゼックス2100JP(三井石油化学製)、商品名Marlex6003(フィリップス社製)、商品名HY540(日本ポリケム製)等]、低密度ポリエチレン[例えば、商品名LC500(日本ポリケム製)、商品名DYNH−1(ユニオンカーバイド社製)等]、中密度ポリエチレン[例えば、商品名2604M(ガルフ社製)等]、エチレン−エチルアクリレートコポリマー[例えば、商品名DPD6169(ユニオンカーバイド社製)等]、エチレン−酢酸ビニルコポリマー[例えば、商品名LV241(日本ポリケム製)等]、エチレン−アクリル酸コポリマー[例えば、商品名EAA455(ダウケミカル社製)等]、アイオノマー[例えば、商品名ハイミラン1555(三井・デュポンポリケミカル社製)等]、ポリフッ化ビニリデン[例えば、商品名Kynar461(エルフ・アトケム社製)等]、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレンコポリマー[例えば、商品名KynarADS(エルフ・アトケム社製)等]などが挙げられる。
【0018】
これらの中でも、ポリオレフインが好ましく、特にポリエチレンが好適に用いられる。高密度、直鎖状抵密度、低密度ポリエチレンの各グレードを用いることができるが、中でも高密度、直鎖状低密度ポリエチレンが好ましい。その溶融粘度(MFR)は15.0g /10min 以下、特に8.0g /10min 以下であることが好ましい。
【0019】
熱硬化性高分子マトリックスとしては、特に制限されないが、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド、ポリウレタン、フェノール樹脂、シリコーン樹脂が好ましく用いられる。
【0020】
エポキシ樹脂は、末端に反応性のエポキシ基をもつオリゴマー(分子量数百から一万程度)を各種硬化剤で硬化(架橋)したものであり、ビスフェノールAに代表されるグリシジルエーテル型、グリシジルエステル型、グリシジルアミン型、脂環型に分類される。用途によっては、3官能以上の多官能エポキシ樹脂も用いることができる。本発明では、これらの中でも、グリシジルエーテル型、中でもビスフェノールA型を用いることが好ましい。用いるエポキシ樹脂のエポキシ当量は100〜500程度が好ましい。硬化剤は、反応機構により、重付加型、触媒型、縮合型に分類される。重付加型は、硬化剤自身がエポキシ基や水酸基に付加するもので、ポリアミン、酸無水物、ポリフェノール、ポリメルカプタン、イソシアネート等がある。触媒型は、エポキシ基同士の重合触媒となるもので、3級アミン類、イミダゾール類等がある。縮合型は、水酸基との縮合で硬化するもので、フェノール樹脂、メラミン樹脂等がある。本発明では、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の硬化剤としては、重付加型、特にポリアミン系および酸無水物を用いることが好ましい。硬化条件は適宜決めればよい。
【0021】
このようなエポキシ樹脂、硬化剤は市販されており、例えば、油化シェルエポキシ社製エピコート(樹脂)、エピキュア、エポメート(硬化剤)、チバガイギー社製アラルダイト等がある。
【0022】
不飽和ポリエステル樹脂は、主に不飽和二塩基酸もしくは二塩基酸と多価アルコールとを主体としたポリエステル(分子量1000〜5000程度)を架橋の働きをするビニルモノマーに溶解したもので、過酸化ベンゾイル等の有機過酸化物を重合開始剤として硬化させて得られる。必要に応じて重合促進剤を併用して硬化してもよい。本発明で用いる不飽和ポリエステルの原料としては、不飽和二塩基酸としては無水マレイン酸、フマル酸が好ましく、二塩基酸としては無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸が好ましく、多価アルコールとしてはプロピレングリコール、エチレングリコールが好ましい。ビニルモノマーとしてはスチレン、ジアリルフタレート、ビニルトルエンが好ましい。ビニルモノマーの配合量は適宜決めればよいが、通常、フマル酸残基1molに対して1.0〜3.0mol程度である。また、合成工程におけるゲル化防止、硬化特性の調節等のためにキノン類、ヒドロキノン類等の公知の重合禁止剤が添加される。硬化条件は適宜決めればよい。
【0023】
このような不飽和ポリエステル樹脂は市販されており、例えば、日本触媒製エポラック、日立化成製ポリセット、大日本インキ化学工業製ポリライト等がある。
【0024】
ポリイミドは、製造方法により縮合型と付加型とに大別されるが、付加重合型ポリイミドのビスマレイミド型ポリイミドが好ましい。ビスマレイミド型ポリイミドは、単独重合、他の不飽和結合との反応、芳香族アミン類とのマイケル付加反応あるいはジエン類とのDiels-Alder反応等を利用して硬化できる。本発明では、特に、ビスマレイミドと芳香族ジアミン類との付加反応によって得られるビスマレイミド系ポリイミド樹脂が好ましい。芳香族ジアミン類としては、ジアミノジフェニルメタン等が挙げられる。その合成・硬化条件は適宜決めればよい。
【0025】
このようなポリイミドは市販されており、例えば、東芝ケミカル社製イミダロイ、チバガイギー社製ケルイミド等がある。
【0026】
ポリウレタンは、ポリイソシアネートとポリオールの重付加反応で得られる。ポリイソシアネートとしては、芳香族系と脂肪族系とがあるが、芳香族系が好ましく、2,4−または2,6−トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタリンジイソシアネート等が好ましく用いられる。ポリオールには、ポリプロピレングリコール等のポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール等があるが、ポリプロピレングリコールが好ましい。触媒には、アミン系(トリエチレンジアミン等の3級アミン系とアミン塩)でもよいが、ジブチルすずジラウレート、スタナスオクトエート等の有機金属系を用いることが好ましい。その他に、多価アルコール、多価アミン等の架橋剤等を副資材として併用してもよい。合成・硬化条件は適宜決めればよい。
【0027】
このようなポリウレタンは市販されており、例えば、住友バイエルウレタン社製スミジュール、三井東圧化学社製NPシリーズ、日本ポリウレタン社製コロネート等がある。
【0028】
フェノール樹脂は、フェノールとホルムアルデヒド等のアルデヒドとを反応させて得られ、合成条件によってノボラック型とレゾール型とに大別される。酸性触媒下で生成するノボラック型はヘキサメチレンテトラミン等の架橋剤とともに加熱することで硬化し、塩基性触媒下で生成するレゾール型はそれ単独で加熱または酸触媒存在下で硬化する。本発明では、どちらを用いてもよい。合成・硬化条件は適宜決めればよい。
【0029】
このようなフェノール樹脂は市販されており、例えば、住友ベークライト社製スミコン、日立化成製スタンドライト、東芝ケミカル社製テコライト等がある。
【0030】
シリコーン樹脂は、シロキサン結合の繰り返しからなり、主にオルガノハロシランの加水分解や重縮合から得られるシリコーン樹脂、また、アルキッド変性、ポリエステル変性、アクリル変性、エポキシ変性、フェノール変性、ウレタン変性、メラミン変性等の各変性シリコーン樹脂、線状のポリジメチルシロキサンやその共重合体を有機過酸化物等で架橋したシリコーンゴム、室温硬化(RTV)可能な縮合および付加型のシリコーンゴム等がある。
【0031】
このようなシリコーン樹脂は市販されており、例えば、信越化学製、東レダウコーニング製、東芝シリコーン製の各種シリコーンゴム、シリコーンレジン等がある。
【0032】
用いる熱硬化製樹脂は、所望の性能、用途に応じて適宜選択することができるが、中でも、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂を用いることが好ましい。また、2種以上を用いて相互に反応させた重合物であってもよい。
【0033】
熱硬化性高分子マトリックスと熱可塑性高分子マトリックスとを併用する場合、熱硬化性高分子マトリックスと熱可塑性高分子マトリックスとの質量比は、1:5〜9:1、特に1:4〜8:1であることが好ましい。熱可塑性高分子マトリックスがこれより多いと、初期抵抗の安定性が低下する傾向がある。熱可塑性高分子マトリックスがこれより少ないと、高温高湿下での安定性が悪くなる傾向がある。
【0034】
さらに、低分子有機化合物を併用してもよい。通常の有機質正特性サーミスタは、高分子有機マトリックスの膨張により素子が動作(抵抗値が上昇)する。低分子有機化合物を動作物質に用いるときの利点は、一般に高分子に比べ結晶化度が高いため、昇温により抵抗値が増大する際の立ち上がりが急峻になることが挙げられる。また、融点の異なる低分子有機化合物を用いれば、抵抗が増大する温度(動作温度)を簡単に制御できる。さらに、高分子は過冷却状態を取りやすいため、昇温時の動作温度より降温時に抵抗値が復帰する温度の方が低くなるヒステリシスを示すが、低分子有機化合物を用いることでこれを抑えることができる。結晶性高分子の場合、分子量や結晶化度の違い、またコモノマーと共重合することによってその融点は変化し、動作温度を変化させることができるが、その際結晶状態の変化を伴うため十分なPTC特性が得られないことがある。これは特に100℃以下に動作温度を設定するときより顕著になる傾向がある。
【0035】
本発明に用いる低分子有機化合物は、分子量が2000程度まで、好ましくは1000程度まで、さらに好ましくは200〜800の結晶性物質であれば特に制限はないが、常温(25℃程度の温度)で固体であるものが好ましい。
【0036】
低分子有機化合物としては、ワックス(具体的には、パラフィンワックスやマイクロクリスタリンワックス等の石油系ワックス、植物系ワックス、動物系ワックス、鉱物系ワックスのような天然ワックス等)、油脂(具体的には、脂肪または固体脂と称されるもの)などがある。ワックスや油脂の成分は、炭化水素(具体的には、炭素数22以上のアルカン系の直鎖炭化水素等)、脂肪酸(具体的には、炭素数12以上のアルカン系の直鎖炭化水素の脂肪酸等)、脂肪酸エステル(具体的には、炭素数20以上の飽和脂肪酸とメチルアルコール等の低級アルコールとから得られる飽和脂肪酸のメチルエステル等)、脂肪酸アミド(具体的には、オレイン酸アミド、エルカ酸アミドなどの不飽和脂肪酸アミド等)、脂肪族アミン(具体的には、炭素数16以上の脂肪族第1アミン)、高級アルコール(具体的には、炭素数16以上のn−アルキルアルコール)、塩化パラフィンなどであるが、これら自体を単独で、もしくは併用して低分子有機化合物として用いることができる。低分子有機化合物は、各成分の分散を良好にするために、高分子マトリックスの極性を考慮して適宜選択すればよい。低分子有機化合物としては石油系ワックスが好ましい。
【0037】
これらの低分子有機化合物は、市販されており、市販品をそのまま用いることができる。
【0038】
本発明では、低分子有機化合物としては、融点mpが40〜200℃、さらに好ましくは40〜100℃であるものを用いることが好ましい。このようなものとしては、パラフィンワックス(例えば、テトラコサンC2450;mp49〜52℃、ヘキサトリアコンタンC3674;mp73℃、商品名HNP−10(日本精蝋社製);mp75℃、HNP−3(日本精蝋社製);mp66℃など)、マイクロクリスタリンワックス(例えば、商品名Hi−Mic−1080(日本精蝋社製);mp83℃、Hi−Mic−1045(日本精蝋社製);mp70℃、Hi−Mic2045(日本精蝋社製);mp64℃、Hi−Mic3090(日本精蝋社製);mp89℃、セラッタ104(日本石油精製社製);mp96℃、155マイクロワックス(日本石油精製社製);mp70℃など)、脂肪酸(例えば、ベヘン酸(日本精化製);mp81℃、ステアリン酸(日本精化製);mp72℃、パルミチン酸(日本精化製);mp64℃など)、脂肪酸エステル(例えば、アラキン酸メチルエステル(東京化成製);mp48℃など)、脂肪酸アミド(例えば、オレイン酸アミド(日本精化製);mp76℃)などがある。また、ポリエチレンワックス(例えば商品名三井ハイワックス110(三井石油化学工業社製);mp100℃)、ステアリン酸アミド(mp109℃)、ベヘン酸アミド(mp111℃)、N−N’−エチレンビスラウリン酸アミド(mp157℃)、N−N’−ジオレイルアジピン酸アミド(mp119℃)、N−N’−ヘキサメチレンビス−12−ヒドロキシステアリン酸アミド(mp140℃)などもある。また、パラフィンワックスに樹脂類を配合した配合ワックスやこの配合ワックスにマイクロクリスタリンワックスを混合したものであって融点を40〜200℃にしたものも好ましく用いることができる。
【0039】
低分子有機化合物は、動作温度等によって1種あるいは2種以上を選択して用いることができる。
【0040】
低分子有機化合物の含有量は、高分子マトリックス(硬化剤等も含む)の合計質量の0.05〜4倍、特に0.1〜2.5倍であることが好ましい。この混合比が小さくなって低分子有機化合物の含有量が少なくなると、抵抗変化率が十分得られにくくなってくる。反対に混合比が大きくなって低分子有機化合物の含有量が多くなると、低分子化合物が溶融する際にサーミスタ素体が大きく変形する他、導電性金属粒子との混合が困難になってくる。
【0041】
本発明の有機質正特性サーミスタは、示差走査熱量測定法(DSC)で、用いた高分子マトリックスの融点付近と低分子有機化合物の融点付近とに吸熱ピークが見られる。このことにより、高分子マトリックスと低分子有機化合物とが独立に分散して存在する海島構造をしていると考えられる。
【0042】
導電性金属粒子としては、銅、アルミニウム、ニッケル、タングステン、モリブデン、銀、亜鉛、コバルト等が用いられるが、中でもニッケル、銅が好ましい。
【0043】
形状は、球状、フレーク状、棒状等が用いられる。特に好ましく用いられるのは、表面にスパイク状の突起を有するものである。その表面形状によりトンネル電流が流れやすくなり、突起のない球状の導電性金属粒子よりも室温抵抗を低減することができると考えられる。
【0044】
また導電性金属粒子間の間隔が球状のものより大きいため、抵抗変化率を大きくすることができる。
【0045】
本発明に用いることのできるスパイク状の突起を有する導電性金属粒子は、1個、1個が鋭利な突起をもつ一次粒子から形成されており、粒径の1/3〜1/50の高さの円錘状のスパイク状の突起が1個の粒子に複数(通常10〜500個)存在するものである。その材質は金属、特にNi等が好ましい。
【0046】
このような導電性金属粒子は、1個、1個が個別に存在する粉体であってもよいが、一次粒子が10〜1000個程度鎖状に連なり二次粒子を形成していることが好ましい。鎖状のものには、一部一次粒子が存在してもよい。前者の例としては、スパイク状の突起をもつ球状のニッケル粉があり、商品名INCO Type 123ニッケルパウダ(インコ社製)として市販されており、その平均粒径は3〜7μm 程度、見かけの密度は1.8〜2.7g/cm3程度、比表面積は0.34〜0.44m2/g程度である。
【0047】
また、好ましく用いられる後者の例としては、フィラメント状ニッケル粉があり、商品名INCO Type 210、255、270、287ニッケルパウダ(インコ社製)として市販されており、このうちINCO Type 210,255が好ましい。そして、その一次粒子の平均粒径は、好ましくは0.1μm 以上、より好ましくは0.2μm 以上4.0μm以下程度である。これらのうち、一次粒子の平均粒径は0.4以上3.0μm以下が最も好ましく、これに平均粒径0.1μm 以上0.4μm未満のものを50質量%以下混合してもよい。また、見かけの密度は0.3〜1.0g/cm3程度、比表面積は0.4〜2.5m2/g程度である。
【0048】
なお、この場合の平均粒径はフィッシュー・サブシーブ法で測定したものである。
【0049】
このような導電性金属粒子については、特開平5−47503号公報、米国特許第5378407号明細書に記載されている。
【0050】
また、スパイク状の突起を有する導電性金属粒子の他に、補助的に導電性を付与するための導電性粒子として、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、金属被覆カーボンブラック、グラファイト化カーボンブラック、金属被覆炭素繊維等の炭素系導電性粒子、球状、フレーク状、繊維状等の金属粒子、異種金属被覆金属(銀コートニッケル等)粒子、炭化タングステン、窒化チタン、窒化ジルコニウム、炭化チタン、ホウ化チタン、ケイ化モリブデン等のセラミック系導電性粒子、また、特開平8−31554号、同9−27383号公報に記載されている導電性チタン酸カリウムウィスカー等を添加してもよい。このような導電性粒子は、スパイク状の突起を有する導電性金属粒子の25質量%以下とすることが好ましい。
【0051】
導電性金属粒子の含有量は、高分子マトリックスと低分子有機化合物の合計質量(硬化剤等を含む有機成分の合計質量)の1.5〜8倍であることが好ましい。この混合比が小さくなって導電性金属粒子の含有量が少なくなると、非動作時の室温抵抗を十分低くすることができなくなってくる。反対に導電性金属粒子の含有量が多くなると、大きな抵抗変化率が得られにくくなり、また、均一な混合が困難になって安定した特性が得られにくくなってくる。
【0052】
表面処理に用いる有機物としては、常温で液体もしくは固体であり、室温での蒸気圧が0.1mmHg以下程度の不揮発性のものであれば種類を問わないが、導電性金属粒子表面との親和性を考慮して有機物を選択することが望ましい。その一方で、金属表面に強固に結合するようなカップリング剤などの使用は、逆に金属粒子の導電性を阻害するため避けるべきである。
【0053】
また、混練物中で導電性金属粒子の表面に有機物を存在させるために、高分子有機マトリックスとの相溶性がそれほど高くないほうが望ましい結果が得られる。本発明における相溶性が高くないとは、分子レベルで相溶するものを含まないという意味であり、ミクロ相分離、マクロ相分離するものは好ましく用いることができる。
【0054】
また、マトリックス樹脂に対して活性を有するような材料も避けるべきである。有機物がマトリックス樹脂と結合ないし相互作用を有すると、導電性金属粒子の挙動が制限され、動作時からの復帰特性に悪影響が生ずる。このような物質としては、例えば、有機酸とトリアジン誘導体がある。マトリックス樹脂にポリオレフィンを使用する場合は、有機酸の中でも、特に長鎖の飽和、不飽和脂肪酸を有する場合、これらの脂肪酸はカルボキシル基の部分が導電性金属粒子の表面に吸着し、かつ長鎖の炭化水素がマトリックス樹脂と相互作用を有する場合がある。トリアジン誘導体は導電性金属粒子の表面に吸着するとともに、誘導体の各種官能基がマトリックス樹脂と反応または相互作用をすることがある。
【0055】
具体的な有機物としては、例えば、軟化剤、保湿剤として用いられる多価アルコール類が挙げられる。具体的には、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、1、3−ブチレングリコール、イソプレングリコール、エリスリトール、ジエチレングリコール、ペンチルグリコール、ネオペンチルグリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体、グリセリン、ポリグリセリン、ポリオキシエチレングリセリン、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等が挙げられる。
【0056】
またその他に、長鎖アルコールも好ましく、少なくとも8個の炭素原子を有するものが好ましい。少なくとも8個の炭素原子を有する長鎖アルコールとしては、オクタノール、テトラデカノール、ウンデカノール、ステアリルアルコール、2−デカノール、デカノール、2−ドデカノール、1,2−ドデカンジオール、トリデカノール、ヘキサデカノール、1,12−ドデカンジオール、1,2−デカンジオール、1,10−デカンジオール、4−デカノール、2−オクタノール、3−オクタノール、ノナノール、2−ウンデカノール、2−テトラデカノール、1,2−テトラデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール及びヘプタデカノール等を挙げることができる。
【0057】
また、上記アルコール類と脂肪酸とのエステルも好ましく用いることができる。さらに、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンブチルエーテルなどのエーテル類も用いることができる。
【0058】
さらに、脂肪族カルボン酸アミドも好ましく、脂肪族カルボン酸アミドの具体例としては、例えば、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘニン酸アミド、N−オレイルパルミトアミド、N−ステアリルエルカ酸アミド、N,N′−エチレンビス(ステアロミド)、N,N′−メチレンビス(ステアロアミド)、メチロール・ステアロアミド、エチレンビスオレイン酸アマイド、エチレンビスベヘン酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスラウリン酸アマイド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アマイド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アマイド、ブチレンビスステアリン酸アマイド、N,N′−ジオレイルセバシン酸アミド、N,N′−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N′−ジステアリルアジピン酸アミド、N,N′−ジステアリルセバシン酸アミド、m−キシリレンビスステアリン酸アミド、N,N′−ジステアリルイソフタル酸アミド、N,N′−ジステアリルテレフタル酸アミド、N−オレイルオレイン酸アミド、N−ステアリルオレイン酸アミド、N−ステアリルエルカ酸アミド、N−オレイルステアリン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド、N−ブチル−N′ステアリル尿素、N−プロピル−N′ステアリル尿素、N−アリル−N′ステアリル尿素、N−フェニル−N′ステアリル尿素、N−ステアリル−N′ステアリル尿素、ジメチトール油アマイド、ジメチルラウリン酸アマイド、ジメチルステアリン酸アマイド等が挙げられる。特に、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘニン酸アミド、N−オレイルパルミトアミド、N−ステアリルエルカ酸アミド等を挙げることができる。
【0059】
これらは生分解性を有するものが多く、PTCサーミスターのリサイクル工程でこれを応用すると、金属粒子を覆っている有機層を、生分解により除去することにより、比較的容易にマトリックス樹脂と、金属粒子とを分離することができるという長所を有する。
【0060】
具体的には、前記金属粉を含有する樹脂マトリクスを破砕ないし粉砕し、微生物、酵素等が存在するバッチ層等にて処理することで、金属粉の周囲に存在する有機層が分解され、マトリックスと金属粉とが分離される。その後、比重差などを応用することにより、マトリックスと金属粉とは容易に分離することができる。
【0061】
通常の生物処理により分解する処理方法としては、活性汚泥法、嫌気性硝化法もしくはスポンジ担体法等の微生物浮遊懸濁法、生物ろ過法、浸漬ろ床法、流動床法、回転円板法もしくは散水ろ床法等の生物膜法または自己造粒法等を用いることができる。これらの処理は連続式であっても回分式であってもよい。また好気性、嫌気性のどちらでもよくまたはそれらの組み合せでもよい。活性汚泥法については、特公昭55−49559号、同51−12943号等にも開示されている。また、微生物に代えて分解酵素を用いてもよく、両者を組み合わせてもよい。
【0062】
また、上記有機物の他にフェノール類化合物や親水性のポリマー等を用いることもできる。
【0063】
より具体的には、P−フェノールスルホン酸、2,6−ジブチル−P−クレゾール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)等、ポリビニルアルコール、ポリビニールピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸およびその塩、ポリビニルメチルエーテル等である。
【0064】
処理方法としては、有機物を溶媒に溶かして溶液とし、その溶液中に導電性金属粒子を分散させた後に溶媒を蒸発させる方法、また導電性金属粒子に上記溶液をスプレー等で塗布し溶媒を蒸発させる方法、等がある。
【0065】
溶媒としては、例えば水、エタノール、メタノール、アセトン、トルエン、ヘキサン等を挙げることができる。
【0066】
処理量は導電性金属粒子の比表面積・比重と有機物分子の大きさ・分子量によるが、導電性金属粒子の0.1から5質量%の有機物で処理することが好ましい。これより処理量が低いと特性改善効果が充分でなく、高いと素子の抵抗値を充分下げることが困難になる傾向がある。
【0067】
次に、本発明の有機質正特性サーミスタの製造方法について説明する。
【0068】
熱可塑性高分子マトリックスと低分子有機化合物と導電性金属粒子との混練は公知の方法により行えばよく、材料中最も融点の高い高分子の融点以上の温度、好ましくは5〜40℃高い温度において公知のミルやロール等で5〜90分程度混練すればよい。熱劣化を防ぐため、高分子の融点より高い温度ではあるが、混練可能なできるだけ低い温度で混練を行えばよい。また、あらかじめ高分子マトリックスと低分子有機化合物を溶融混合、または溶媒中で溶解し混合しても良い。
【0069】
溶液法で高分子マトリックスと低分子有機化合物と導電性金属粒子とを混合する場合、高分子マトリックス、および低分子有機化合物の1種以上が溶解する溶媒を用い、残りの高分子マトリックス、および低分子有機化合物と導電性金属粒子とをこの溶液中に分散させればよい。
【0070】
混練物は、所定の厚さのシート形状にプレス成型する。成型は、注入法、押し出し法等で行ってもよい。また、前記混練とシート成型を1工程で行う押し出し法を用いることもできる。成型後に、必要に応じて架橋処理を施してもよい。架橋方法は、放射線架橋、有機過酸化物による化学架橋、シラン系カップリング剤をグラフト化しシラノール基を縮合反応する水架橋等があるが、放射線架橋を行うことが好ましい。最後に、Cu、Ni等の金属電極を熱圧着したり、導電性ペースト等を塗布してサーミスタ素子とする。また、プレス成型と電極形成とを同時に行ってもよい。
【0071】
熱硬化性高分子マトリックスを用いる場合、所定量の硬化前の熱硬化性樹脂、導電性金属粒子を混合・分散して塗料状とする。混合・分散は既知の方法によればよく、各種攪拌機、分散機、塗料用ロール機などを用いることができる。混合中に気泡が混入した場合は真空脱泡を行う。粘度の調整のため芳香族炭化水素、ケトン類、アルコール類、等各種溶媒を用いることもできる。これをニッケルや銅等の金属箔電極間に流し込むか、またはスクリーン印刷等の塗布によりシート状にしたものを、熱硬化性樹脂の所定の熱処理条件で硬化する。予備硬化を比較的低温で行った後、本硬化を高温で行う方法もある。混合物のみをシート状に硬化したものに導電性ペースト等を塗布して電極としてもよい。得られたシート成形体は、所望の形状に打ち抜いてサーミスター素子とする。
【0072】
高分子マトリックスと低分子有機化合物の熱劣化を防止するため酸化防止剤を混入することもでき、フェノール類、有機イオウ類、フォスファイト類などが用いられる。
【0073】
また、良熱導電性添加物として、特開昭57−12061号公報に記載されている窒化ケイ素、シリカ、アルミナ、粘土(雲母、タルク等)、特公平7−77161号公報に記載されているシリコン、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ベリリア、セレン、特開平5−217711号公報に記載されている無機窒化物、酸化マグネシウム等を添加してもよい。
【0074】
耐久性向上のために、特開平5−226112号公報に記載されている酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、シリカ、酸化マグネシウム、アルミナ、酸化クロム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、酸化鉛、特開平6−68963号公報に記載されている高比誘電率の無機固体、具体的には、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、ニオブ酸カリウム等を添加してもよい。
【0075】
耐電圧改善のために、特開平4−74383号公報に記載されている炭化ホウ素等を添加してもよい。
【0076】
強度改善のために、特開平5−74603号公報に記載されている水和チタン酸アルカリ、特開平8−17563号公報に記載されている酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、シリカ等を添加してもよい。
【0077】
結晶核剤として、特公昭59−10553号公報に記載されているハロゲン化アルカリ、メラミン樹脂、特公平6−76511号公報に記載されている安息香酸、ジベンジリデンソルビトール、安息香酸金属塩、特開平7−6864号公報に記載されているタルク、ゼオライト、ジベンジリデンソルビトール、特開平7−263127号公報に記載されているソルビトール誘導体(ゲル化剤)、アスファルト、さらには、リン酸ビス(4−t−ブチルフェニル)ナトリウム等を添加してもよい。
【0078】
ア−ク調節制御剤としては、特公平4−28744号公報に記載されているアルミナ、マグネシア水和物、特開昭61−250058号公報に記載されている金属水和物、炭化ケイ素等を添加してもよい。
【0079】
金属害防止剤として、特開平7−6864号公報に記載されているイルガノックスMD1024(チバガイギー製)等を添加してもよい。
【0080】
また、難燃剤として、特開昭61−239581号公報に記載されている三酸化二アンチモン、水酸化アルミニウム、特開平5−74603号公報に記載されている水酸化マグネシウム、さらには、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等のハロゲンを含有する有機化合物(重合体を含む)、リン酸アンモニウム等のリン系化合物等を添加してもよい。
【0081】
これら以外にも、硫化亜鉛、塩基性炭酸マグネシウム、酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、アルミノシリケート粘土(雲母、タルク、カオリナイト、モンモリロナイト等)、ガラス粉、ガラスフレーク、ガラス繊維、硫酸カルシウム等を添加してもよい。
【0082】
これらの添加剤は、高分子マトリックス、低分子有機化合物および導電性金属粒子の合計重量の25重量%以下であることが好ましい。
【0083】
本発明の有機質正特性サーミスタは、非動作時における初期抵抗が低く、その室温比抵抗値は10-3〜10-1Ω・cm程度であり、動作時における抵抗の立ち上がりが急峻であり、非動作時から動作時にかけての抵抗変化率が6桁以上と大きい。
【0084】
本発明の有機質正特性サーミスタの構成例を図1に示す。本発明の有機質正特性サーミスタは、少なくとも熱可塑性高分子マトリックスと導電性金属粒子とを有するサーミスター素体2と、このサーミスター素体2を挟み込むようにして一対の電極3が配置されている。図示例は、サーミスターの断面形状の一例を示したものであり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。また、その平面形状は要求される特性や仕様により円形、四角形、その他最適なものとすればよい。
【0085】
【実施例】
〔実施例1〕
フィラメント状ニッケル粉(INCO社製、商品名Type210ニッケルパウダ、平均粒径0.5〜1.0μm 、見掛け密度0.8g /cm3 、比表面積1.5〜2.5m2 /g)を導電性金属粒子として用いた。
【0086】
その0.5重量%のポリエチレングリコール(純正化学製、分子量200)を含む0.25%エタノール溶液中に、上記ニッケル粉を分散・撹拌してスラリー状とし、エタノールをエバポレーターで蒸発させ、残った表面処理済みニッケル粉を真空乾燥した。処理前と処理後のニッケル粉のTEM写真を図2,3にそれぞれ示す。
【0087】
高分子有機マトリックスとして直鎖状低密度ポリエチレン(三井化学製、商品名エボリュー2520、MFR=1.7g/10min 、融点121℃)、上記表面処理済みのフィラメント状ニッケル粉、動作物質としてパラフィンワックス(Baker Petrolite社製、商品名Poly Wax655、融点99℃)を、容積比で44:26:30の割合で用いた。これらを150℃に設定したミルに投入し、30分間混練した。
【0088】
得られた混練物をNi箔電極ではさみ、熱プレス機にて150℃で箔を熱圧着し全体を0.35mmとした。得られた電極つきシートの両面を20Mradの電子線を照射して架橋処理し、これを直径10mmの円盤状に打ち抜いてサーミスタ素子を得た。
【0089】
〔実施例2〕
実施例1のポリエチレングリコールをポリグリセリン(日本油脂製、商品名ユニグリG−2)に変えたほかは実施例1と同様にサーミスタ素子を作成した。
【0090】
〔実施例3〕
実施例1のポリエチレングリコールをテトラデカノール(日本油脂製、商品名NAA−43、融点38℃)に変えたほかは実施例1と同様にサーミスタ素子を作成した。
【0091】
〔実施例4〕
実施例1のポリエチレングリコールをエルカ酸アミド(日本精化製、商品名ニュートロンS、融点78℃)に変えたほかは実施例1と同様にサーミスタ素子を作成した。
【0092】
〔実施例5〕
実施例1と同様にニッケル粉の表面処理を行った。用いたニッケル粉は、フィラメント状ニッケル粉(INCO社製、商品名Type255ニッケルパウダ、平均粒径2.2〜2.8μm 、見掛け密度0.5〜0.65g /cm3 、比表面積0.68m2 /g )である。
【0093】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ社製、商品名エビコート801)20g、変性アミン系硬化剤(油化シェルエポキシ社製、商品名エポメートB002)10g、パラフィンワックス(Baker Petrolite社製、商品名Poly Wax655、融点99℃)15g、上記表面処理済みニッケル粉180g、トルエン20mlを遠心式分散機で20分間混合した。得られたスラリー状の混練物をNi箔の片側に塗布し、その塗布面をもう一枚のNi電極ではさみ、さらにその上下を厚さ0.4mmのスペーサーとともに真鍮板ではさんで、90℃設定の熱プレス機を用いて加圧状態で3時間硬化させた。得られた厚さ0.4mmの電極つきシートを実施例1と同様に打ち抜いてサーミスタ素子とした。なお、得られたサンプル5個の熱衝撃試験前抵抗値は以下の通りであった。
(1)0.006Ω,(2)0.006Ω,(3)0.006Ω,(4)0.007Ω,(5)0.007Ω
上記結果より、金属粒子の凝集が抑制され、サンプルのばらつきが少なくなっていることがわかる。
【0094】
〔比較例1〕
ニッケル粉への表面処理を行わなかったのを除き、実施例1と同様にサーミスタ素子を作成した。
【0095】
〔比較例2〕
実施例1のようにニッケル粉への表面処理をあらかじめ行わず、ポリエチレン、パラフィンワックス、ニッケル粉を加熱混練するときと同時にポリエチレングリコールを混合したことを除き、実施例1と同様にサーミスタ素子を作成した。
【0096】
〔比較例3〕
ニッケル粉への表面処理を行わなかったのを除き、実施例5と同様にサーミスタ素子を作成した。なお、得られたサンプル5個の熱衝撃試験前抵抗値は次の通りであった。
(31)0.005Ω,(32)0.008Ω,(33)0.011Ω,(34)0.012Ω,(35)0.015Ω
上記結果から、金属粒子の凝集により、抵抗値のばらつきが大きくなってしまっていることがわかる。
【0097】
〔比較例4〕
実施例1で用いたニッケル粉に対し、0.5wt%のシラン系カップリング剤(ビニルトリエトキシシラン、信越化学工業製、商品名KBE1003)を、1:1の水・エタノール混合溶媒に溶解し、溶液全体の1wt%の酢酸(99.7%)を加えた。この溶液中にニッケル粉を加えて5時間撹拌した。これを濾過し、濾紙上のニッケル粉をエタノールで洗浄後、60℃で一昼夜乾燥した。
【0098】
得られたカップリング処理済みニッケル粉を用い、その他は実施例1と同様にしてサーミスタ素子を作製した。
【0099】
これらの素子について、−40℃で30分保持し、次に85℃で30分保持する温度サイクルを1サイクルとする熱衝撃試験を200サイクル行った。この結果を下表に示す。
【0100】
【表1】
Figure 0003909009
【0101】
表面処理を行わなかった比較例1と比べ、表面処理を行った実施例1〜4の効果は明らかである。また、事前に導電性粉に表面処理を行わず単に混合した比較例2よりも表面処理を行った実施例1〜4のほうが効果が大きい。また、高分子有機マトリックスを熱硬化性のエポキシ樹脂としても大きな表面処理の効果が現れた(実施例5、比較例3)。さらに、金属粒子表面を有機マトリックスと相溶性のない有機物で被覆したことにより、導電性金属粒子の過度の凝集が抑えられ、分散性が向上したために初期抵抗が安定したことがわかった。また、高分子マトリクスや、金属表面と強固に結合しうるカップリング剤を用いると、未処理のものと比較しても逆に特性が悪化してしまった(比較例4)。
【0102】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、金属を導電性粒子として含む有機質正特性サーミスタの特性安定性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の有機質正特性サーミスタの基本構成を示す断面図である。
【図2】実施例における、有機物処理前のニッケル粉の状態を示した図面代用TEM写真である。
【図3】実施例における、有機物処理後のニッケル粉の状態を示した図面代用TEM写真である。
【符号の説明】
2 サーミスター素体
3 電極

Claims (14)

  1. 高分子有機マトリックスと、この高分子有機マトリックス中に導電性金属粒子を含有し、前記導電性金属粒子表面近傍に高分子有機マトリクスとは異なる材料であって、前記導電性金属粒子と共有結合することなく、前記高分子有機マトリックスと分子レベルで相溶性がない有機物層を有する有機質正特性サーミスタ。
  2. 前記有機物は、高分子有機マトリックスに対して反応性を持たない材料である請求項1の有機正特性サーミスタ。
  3. 前記導電性金属粒子が、ニッケルまたは銅を含む請求項1または2の有機質正特性サーミスタ。
  4. 前記高分子有機マトリックスが、熱可塑性ポリマーである請求項1〜3のいずれかの有機質正特性サーミスタ。
  5. さらに低分子有機化合物を含む請求項1〜4のいずれかの有機質正特性サーミスタ。
  6. 前記導電性金属粒子が、スパイク状の突起を有している請求項1〜5のいずれかの有機質正特性サーミスタ。
  7. 前記有機物は、生分解性を有する材料である請求項1〜6のいずれかの有機質正特性サーミスタ。
  8. あらかじめ有機物で導電性金属粒子表面を覆うように処理し、この導電性金属粒子を高分子有機マトリックスと混合・分散して有機質正特性サーミスタを得ており、
    前記有機物は、高分子有機マトリクスとは異なる材料であって、前記導電性金属粒子と共有結合することなく、前記高分子有機マトリックスと分子レベルで相溶性がない材料である有機質正特性サーミスタの製造方法。
  9. 前記有機物は、高分子有機マトリックスに対して反応性を持たない材料である請求項8の有機質正特性サーミスタの製造方法。
  10. 前記導電性金属粒子が、ニッケルまたは銅を含む請求項8または9の有機質正特性サーミスタの製造方法。
  11. 前記高分子有機マトリックスが、熱可塑性ポリマーである請求項8〜10のいずれかの有機質正特性サーミスタの製造方法。
  12. 前記高分子有機マトリックスに、さらに低分子有機化合物を含む請求項8〜11のいずれかの有機質正特性サーミスタの製造方法。
  13. 前記導電性金属粒子が、スパイク状の突起を有している請求項8〜12のいずれかの有機質正特性サーミスタの製造方法。
  14. 前記有機物は、生分解性を有する材料である請求項8〜13のいずれかの有機質正特性サーミスタの製造方法。
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