JP3077345B2 - 含リン難燃剤の製造方法 - Google Patents

含リン難燃剤の製造方法

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JP3077345B2 JP03360592A JP36059291A JP3077345B2 JP 3077345 B2 JP3077345 B2 JP 3077345B2 JP 03360592 A JP03360592 A JP 03360592A JP 36059291 A JP36059291 A JP 36059291A JP 3077345 B2 JP3077345 B2 JP 3077345B2
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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はポリエステルに優れた難
燃性を付与することのできる含リン難燃剤の製造方法に
関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年人命尊重の立場から、繊維を初めと
する種々の成型品において難燃化が要求特性として挙げ
られ、様々な研究が行なわれている。線状ポリエステル
から製造される成型品においても、難燃剤をポリマー製
造時に添加して共重合あるいはブレンドさせる方法や、
成型時にポリエステル中に練り込む方法、さらには成型
品を後加工して耐炎性を付与する方法等が提案されてい
る。
【0003】これらの方法の中で工業的価値を考慮した
場合、最も簡便でしかも得られる成型品の諸性能を損な
わないという点で、ポリマー製造時に難燃剤を添加して
共重合させる方法が有利であり、この難燃剤としてはリ
ン化合物が多く用いられている。
【0004】しかしながら、多くのリン化合物は、ポリ
エステルの重縮合における高温、減圧下という条件で
は、熱分解を起こしたり、系外に飛散したり、ポリエス
テル生成反応中にゲル化を引き起こす等の問題があっ
た。
【0005】これらの問題を解決するために、特公昭5
9−22717号公報において、新規な含リン難燃剤が
開示された。このリン化合物は、ポリエステルに共重合
することができ、揮発性もなく、しかも熱安定性に優れ
たものである。該公報の製法によると、9,10−ジヒドロ
-9- オキサ-10-ホスファフェナンスレン-10-オキシド
(以下HCAと省略する)とイタコン酸もしくはその無
水物との反応をエチレングリコール中で行ない、反応終
了後に反応生成物のエチレングリコールエステルを単離
している。しかしながら、この単離操作には多大な時間
と労力が必要であり、収率も良くないことが多いため、
この方法は、難燃性ポリエステルの製造を繁雑化させ、
コストを上昇させる要因となっていた。
【0006】一方、反応生成物のエチレングリコール溶
液は、上記反応の後期に濁り始め、反応完結時にはかな
り白濁した溶液となる。このためこの溶液のままでは、
難燃性ポリエステルの製造に利用することができない。
なぜなら、生成ポリエステルに濁りを与えるだけでな
く、繊維やフィルムに加工する際にノズル詰まりを起こ
して、製品物性にも悪影響を及ぼすためである。そこで
ろ過工程が必要となるが、濁りの原因の粒子が非常に微
細であり、反応溶液が粘稠なことから、ろ過が困難であ
るという問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記問題を解
決するためになされたものであって、単離やろ過を必要
としない含リン難燃剤の安価な製造方法を提供すること
にある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
の本発明は、有機リン化合物と不飽和カルボン酸もしく
はその無水物をエチレングリコール中で反応させて含リ
ン難燃剤を製造する方法において、反応完結間際または
完結後にアルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化
合物よりなる群から選択される1種以上の化合物を、有
機リン化合物に対して0.1〜10モル%添加するとこ
ろに要旨を有する。
【0009】
【作用】本発明者らは、有機リン化合物と不飽和カルボ
ン酸もしくはその無水物のエチレングリコール中での反
応において、均一透明な含リン難燃剤エチレングリコー
ル溶液とするために、アルカリ金属化合物またはアルカ
リ土類金属化合物を上記反応完結間際または完結後に特
定量添加することが有用であることを見出し、本発明に
至ったものである。以下本発明を詳述する。
【0010】まず本発明において使用される有機リン化
合物とは、具体的に例示すると、ジメチルホスフィンオ
キシド、ジエチルホスフィンオキシド、ジプロピルホス
フィンオキシド、ジブチルホスフィンオキシド、ジフェ
ニルホスフィンオキシド等のホスフィンオキシド;メチ
ルメタンホスフィネート、エチルメタンホスフィネー
ト、メチルエタンホスフィネート、エチルエタンホスフ
ィネート、メチルプロパンホスフィネート、エチルプロ
パンホスフィネート、メチルブタンホスフィネート、エ
チルブタンホスフィネート、メチルベンゼンホスフィネ
ート、エチルベンゼンホスフィネート等のホスフィン酸
誘導体;9,10- ジヒドロ-9- オキサ-10-ホスファフェナ
ンスレン-10-オキシド(以後HCAと省略する)等が挙
げられる。これらの中でもHCAが好ましく使用され
る。
【0011】本発明において使用される不飽和カルボン
酸もしくはその無水物とは、重合性不飽和結合を有する
モノカルボン酸または多価カルボン酸もしくはそれらの
無水物であって、具体的には、(メタ)アクリル酸、
(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチ
ル、クロトン酸、クロトン酸メチル、クロトン酸エチ
ル、マレイン酸、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエ
チル、無水マレイン酸、フマル酸、フマル酸ジメチル、
フマル酸ジエチル、メサコン酸、メサコン酸ジメチル、
メサコン酸ジエチル、シトラコン酸、シトラコン酸ジメ
チル、シトラコン酸ジエチル、無水シトラコン酸、イタ
コン酸、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、無
水イタコン酸等が挙げられ、これらの中でも、イタコン
酸もしくはその無水物が好ましく使用される。
【0012】前記有機リン化合物は、単独ではポリエス
テル主鎖中に導入できないため、不飽和カルボン酸類と
反応させて難燃剤を生成させることが必要であり、この
反応はエチレングリコール中、不活性ガス雰囲気下で加
熱撹拌することによって行なわれる。この反応は、 100
℃以上に加熱することによって進行するが、あまり低い
温度では反応の完結に時間がかかり、逆に高すぎると有
機リン化合物や不飽和カルボン酸が熱分解してしまうた
め、 120〜200 ℃が好ましい。有機リン化合物と不飽和
カルボン酸もしくはその無水物の反応比は実質的には等
モルで行なうことが好ましいが、いずれかがやや過剰と
なっても構わない。またエチレングリコールの使用量
は、不飽和カルボン酸もしくはその無水物に対して 1.5
〜20倍モル、好ましくは 2〜5 倍モルの範囲である。エ
チレングリコールの使用量が 1.5倍モルより少ない場
合、不飽和カルボン酸もしくはその無水物によるカルボ
キシル基とのエステル化が不充分となることと、反応溶
液の粘度が高くなるため好ましくない。一方、20倍モル
を超えて使用すると、反応溶液の粘度が低くなり取扱い
が容易となるが、不経済である。
【0013】本発明では、上記の有機リン化合物と不飽
和カルボン酸もしくはその無水物の反応完結間際かまた
は完結後に、反応溶液中にアルカリ金属もしくはアルカ
リ土類金属化合物を添加することによって、反応溶液の
濁りを防ぎ、そのまま使用可能な含リン難燃剤を製造す
ることができる。この濁りの消滅は、反応中に生成した
不溶物が金属化合物と反応することによってエチレング
リコールに可溶となったためであると考えられる。
【0014】使用できるアルカリ金属化合物もしくはア
ルカリ土類金属化合物としては、水酸化リチウム、水酸
化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ(土類)金
属水酸化物;酸化リチウム、酸化ナトリウム、酸化カリ
ウム、酸化マグネシウム等のアルカリ(土類)金属酸化
物;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭
酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウ
ム、炭酸バリウム等のアルカリ(土類)金属炭酸塩;酢
酸リチウム、プロピオン酸ナトリウム、酢酸カリウム、
酢酸マグネシウム、安息香酸カルシウム、酢酸ストロン
チウム、酢酸バリウム等のアルカリ(土類)金属カルボ
ン酸塩;リチウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、
カリウムブトキシド、マグネシウムエトキシド、カルシ
ウムプロポキシド、ストロンチウムブトキシド、バリウ
ムプロポキシド等のアルカリ(土類)金属アルコキシド
類が挙げられる。
【0015】これらの化合物は、そのままでも使用でき
るが、エチレングリコールに溶解した溶液として添加し
ても構わない。これらのアルカリ(土類)金属化合物の
使用量は、前記リン化合物に対して 0.1〜10モル%、特
に好ましくは 0.2〜2 モル%である。使用量が 0.1モル
%より少ないと、反応生成物溶液の濁りを完全に消すこ
とができない。また、10モル%を超えて使用しても効果
はなく、逆にこの難燃剤を導入した後のポリエステルの
耐加水分解性や耐熱安定性を悪化させる原因となるので
好ましくない。
【0016】本発明の含リン難燃剤は、上記アルカリ
(土類)金属化合物を添加することにより、その製造が
完成する。この含リン難燃剤は、濁りが全くなく、エチ
レングリコール溶液のまま使用可能であり、ポリエステ
ルに難燃性を付与するものとして非常に有用である。
【0017】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明
するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものでは
ない。
【0018】実施例1〜5 撹拌装置、温度計、窒素ガス導入管、留出管を装備した
1リットルの4つ口反応フラスコに、エチレングリコー
ル 300g、HCA 187g、イタコン酸 113gを仕込み、
窒素ガス雰囲気下、加熱撹拌した。反応温度は約6時間
で室温から 190℃とし、この温度でさらに4時間反応を
続けた。加熱を開始して約5時間で濁りが生じ、反応の
終了時には完全に白濁していた。この間、反応温度が 1
70℃近くになったころからエステル下によって生成した
水が留出を始め、最終的には約32mlの留出があった。次
いで、HCAに対し 0.5モル%となるように1モルの水
酸化ナトリウム−エチレングリコール溶液 4.3mlを加え
190℃で30分間撹拌を続けた。反応溶液の濁りは消滅
し、若干黄色に着色した含リン難燃剤が得られた。表1
に水酸化ナトリウム以外の実施例2〜5を実施例1の結
果と共に併記した。
【0019】
【表1】
【0020】実施例6〜9 実施例1と同様の反応装置にエチレングリコール 300
g、HCA 198g、イタコン酸無水物 102gを仕込み、
実施例1と同様に反応を行なった。反応終了時の溶液は
完全に白濁していた。次いで、HCAに対し1モル%と
なるように1モルの安息香酸ナトリウム−エチレングリ
コール溶液 8.7mlを加え 190℃で30分間撹拌を続けた。
反応溶液の濁りは消滅し、淡黄色の透明均一な含リン難
燃剤が得られた。表2に安息香酸ナトリウム以外の実施
例7〜9を実施例6の結果と共に併記した。
【0021】
【表2】
【0022】実施例10〜15 実施例1と同様の反応装置にエチレングリコール 300
g、HCA 187g、イタコン酸 118gを仕込み、加熱撹
拌した。30分後に反応温度を室温から 190℃へと昇温
し、この温度で3時間反応を行なった。反応終了時の溶
液は完全に白濁していた。次いで、HCAに対し 0.2モ
ル%となるように1モルのカルシウムエトキシド−エチ
レングリコール溶液 1.7mlを加え30分間撹拌を続けた。
反応溶液の濁りは消滅し、透明均一な含リン難燃剤が得
られた。表3にカルシウムエトキシド以外の実施例11
〜15を実施例10の結果と共に併記した。
【0023】
【表3】
【0024】実施例16〜20 実施例1と同様の反応装置にエチレングリコール 300
g、HCA 198g、イタコン酸無水物 104gを仕込み、
実施例10と同様に反応を行なった。反応終了時の溶液
は完全に白濁していた。次いで、HCAに対し 0.3モル
%となるように1モルの酢酸ストロンチウム−エチレン
グリコール溶液 5.9mlを加え30分間撹拌を続けた。反応
溶液の濁りは消滅し透明均一な含リン難燃剤が得られ
た。表4に酢酸ストロンチウム以外の実施例17〜20
を実施例16の結果と共に併記した。
【0025】
【表4】
【0026】比較例1 実施例10と全く同様にして反応させた後の白濁した反
応溶液に、HCAに対し0.05モル%となるように1モル
の水酸化ナトリウム−エチレングリコール溶液0.5mlを
加え30分間撹拌を続けたが、反応溶液は白濁したままで
あった。
【0027】比較例2 1モルの水酸化ナトリウム−エチレングリコール溶液を
使用しなかった点を除いて、実施例1と全く同様にして
反応を行なった。反応後の白濁した溶液を室温まで冷却
し、東洋ろ紙(株)社製のNo.5のろ紙を利用して、減圧
下で吸引ろ過を行なった。濁りのない溶液が得られた
が、ろ過には3時間以上を要した。
【0028】参考例1 テレフタル酸1203g、エチレングリコール 950g、実施
例13で得られた反応溶液 188g、トリエチルアミン
3.8gおよび三酸化アンチモンの混合物をオートクレー
ブ中 2.5kg/cm2の加圧下、約 240℃で2時間エステル化
反応を行なった。続いて昇温して反応温度を70分間で 2
75℃としながら、同時に反応系の圧力を徐々に減じて
0.1mmHgとし、この条件で 100分間重縮合反応を行なっ
た。得られたポリエステルは着色もなくきれいなもので
あった。
【0029】フェノールと1,1,2,2-テトラクロロエタン
の混合溶媒(重量比3:2)中30℃で測定したポリエ
ステルの極限粘度は0.66であった。また、得られたポリ
エステルを常法によって紡糸延伸した糸をメリヤス編み
として、その1gを長さ10cmに丸めて径10mmφの針金コ
イル中に挿入し、45°の角度に保持したまま下端から点
火して火源を遠ざけ、消火した場合には再点火を繰り返
し、全試料を燃焼するのに要した点火回数の5個の試料
についての平均値は 5.3回と優れたものであった。ま
た、得られた繊維の強度は 5.6g/d 、伸度は37%であっ
た。
【0030】
【発明の効果】本発明によれば、含リン誘導体のエチレ
ングリコール溶液にアルカリもしくはアルカリ土類金属
化合物を特定量添加することによって、濁りの全くない
含リン難燃剤を提供できる。従ってポリエステルに優れ
た難燃性を付与し得る含リン難燃剤を生産効率よくしか
も経済的に製造することが可能となった。また、本発明
の含リン難燃剤を共重合したポリエステルは難燃性能に
優れた繊維、フィルム、成型品を提供できるものであ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特公 昭59−22717(JP,B2) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C09K 21/12 C07F 9/32 CA(STN)

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 有機リン化合物と不飽和カルボン酸もし
    くはその無水物をエチレングリコール中で反応させて含
    リン難燃剤を製造する方法において、反応完結間際また
    は完結後にアルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属
    化合物よりなる群から選択される1種以上の化合物を、
    有機リン化合物に対して0.1〜10モル%添加するこ
    とを特徴とする含リン難燃剤の製造方法。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の有機リン化合物が、9,10
    −ジヒドロ-9- オキサ-10-ホスファフェナンスレン-10-
    オキシドである請求項1記載の含リン難燃剤の製造方
    法。
  3. 【請求項3】 請求項1記載の不飽和カルボン酸がイタ
    コン酸である請求項1または2に記載の含リン難燃剤の
    製造方法。
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