JP3064047B2 - 多層セラミック回路基板 - Google Patents

多層セラミック回路基板

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、850〜1050℃の
低温で焼成可能な多層セラミック回路基板に関するもの
である。
【0002】
【従来の技術】一般に電子機器の高密度配線基板には、
アルミナセラミックシート上に、タングステン、モリブ
デンなどの高融点金属の導電性ペーストを用いて、内部
配線パターンを形成して、そのシートを積層して、セラ
ミックシートと内部配線とを一括的に焼成した多層配線
基板が多用されてきた。
【0003】しかし、上述の多層配線基板は、セラミッ
クシートに含有されているバインダー成分を除去するに
24〜36時間もかかり、また高価なアームガス雰囲気
中で焼成しなくてはならなく、結果として高価な多層配
線基板となってしまう。
【0004】また、近年、安価で、信号伝達が高速な多
層配線基板が強く求められ、その要求に応えるべく、低
温で焼成可能なセラミックシートを用いて、さらに内部
配線に安価なAgを内部配線に使用した多層配線基板が
提案されている(特開昭61−108192号)。
【0005】そこで、本発明者は、先に、ガラス−セラ
ミック基板の焼結開始温度よりも低い屈伏点をもったガ
ラスフリットを含む導電性ペーストで用いた内部配線を
形成した多層セラミック配線基板を提案した。このよう
な屈伏点をもった導電性ペーストを用いた内部配線を形
成した多層セラミック配線基板では、焼成後の基板の反
りを有効に抑えることができるものとなった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上述の多層セラミック
配線基板では、導電性ペーストに含有するガラスフリッ
ト成分として、B2 3 −SiO2 −BaOガラス、C
aO−B2 3 −SiO2 ガラス、SiO2 −B2 3
−CaO−Al2 3 ガラスを用いていた。
【0007】ここで、B2 3 は、低温焼成可能なセラ
ミック基板に用いる導電性ペーストとするために、添加
されるガラスフリットの軟化点を下げるためには、B2
3 を添加しなくてはならない。しかし、B2 3 は、
揮発性が高いため、B2 3 の量によっては、800〜
1050℃で焼成すると、B2 3 成分の揮発成分が焼
結したセラミック基板中に気泡として残り、内部配線間
の基板絶縁抵抗を大きく劣化させるという問題を知見し
た。
【0008】本発明は、上述の問題点に鑑みて案出され
たものであり、その目的は、内部配線間の基板絶縁抵抗
を良好に維持し、且つ基板の反りがなく、内部配線の導
通性が良好な多層セラミック回路基板を提供することに
ある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、850〜10
50℃で焼成可能なセラミックグリーンシートに、貴金
属を主成分とする導体材料とガラスフリットとからなる
導電性ペーストでビアホール及び内部配線を形成し、該
セラミックグリーンシートを複数積層し、セラミックグ
リーンシート、ビアホール及び内部配線を一体的に焼成
して成る多層セラミック回路基板において、前記導電性
ペーストは、屈伏点が700〜845℃で、かつガラス
組成中15mol%以下のB2 3 (0を含まない)を
有するガラスフリットを含有していることを特徴とする
多層セラミック回路基板である。
【0010】
【作用】本発明によれば、セラミックグリーンシート上
に、内部配線となる導電性ペーストを所定形状に印刷
し、複数のセラミックシートを積層、圧着した後、所定
雰囲気中に800〜1050℃に焼成しても、内部配線
を形成する導電性ペーストの含まれるガラスフリットの
屈伏点がセラミックグリーンシートの焼結開始温度より
も低いため、セラミックグリーンシートの焼結挙動と内
部配線の導電性ペーストの焼結挙動が近似するため、焼
結後の基板の反りが抑制される。さらに、ガラスフリッ
トのB2 3 が15mol%以下であるため、焼結時に
発生する揮発成分を抑制できに、焼結後の基板絶縁抵抗
を1010Ω以下とすることができる。
【0011】
【実施例】以下、本発明の多層セラミック回路基板を図
面に基づいて説明する。図において、多層セラミック配
線基板1は、積層基板2と、内部配線3と、表面配線4
とから構成されている。
【0012】積層基板2は、例えば3枚のガラスフリッ
トを含むセラミックグリーンシートを積層して一体的化
したシート2a、2b、2cから構成されている。各グ
リーンシートは、Al2 3 などの無機物フィラーとS
iO2 、Al2 3 、ZnOなどのガラスフリットと
を、有機ビヒクルと均質混練したものをドクターブレー
ド法などでシート化したものが使用される。尚、無機物
フィラーとガラスフリットとの重量比率は無機物フィラ
ーは10〜45%であり、ガラスフリットは90〜55
%である。
【0013】内部配線3は、はセラミックグリーンシー
ト2a、2b、2c間及びグリーンシート2b、2c間
に所定のパターンで形成されている。各内部配線3は、
ビアホール6を通じて基板間で所定回路を構成し、基板
2の表面に延びている。その表面にはビアホール6の径
よりも大きなランド電極3aが形成されている。内部配
線3は、Au、Ag、Cu、又はそれらの合金、Ag−
Pdなどの貴金属の導電材料、ガラスフリット及び有機
ビヒクルからなる導電性ペーストから構成されており、
ガラスフリットを構成する組成及びその組成比率によっ
て導電性ペースト中のガラスフリントの屈伏点がセラミ
ックグリーンシート2a、2b、2cの焼結開始温度が
低いため、セラミックグリーンシート2a、2b、2c
の焼結挙動と導電性ペーストの焼結挙動が近似するの
で、積層基板2の反りの防止の効果を高めることができ
る。
【0014】ここで、屈伏点とは、ガラスフリットの体
積が熱膨張により増加する挙動を示す温度範囲から粘性
流動によって収縮する温度範囲に移行する際の境界温度
をいう。この屈伏点は、ガラスフリットのガラス転移点
と軟化点との間に認められる。尚、屈伏点が基板の焼結
開始温度よりも高い場合は、積層基板の反りを抑えるこ
とができない。上述のガラスフリットとして、B2 3
−Al2 3 −SiO2 −ZnO−MgO、B2 3
Al2 3 −SiO2 −ZnO−CaO、B23 −A
2 3 −SiO2 −CaOを有するものが挙げられ、
それらの組成比率を制御することにより、屈伏点が70
0〜845℃に設定できる。ガラス成分及び無機物フィ
ラーのセラミックを主成分として構成され、低温で焼成
される基板において、屈伏点が700℃未満の場合は、
ガラス流動が速くなり、導電性材料どうしが互いに引き
寄せられて焼結が促進され、導電性材料が過焼結状態と
なり内部配線抵抗が大きくまた不安定となる。逆に、屈
伏点が845℃を越える場合は、ガラスフリットの軟化
流動性が悪く、ガラスフリットが導電性粒子間に均一に
分散されず、導電性材料同士の焼結を抑制することがで
きず、その結果、積層基板に反りが発生する。
【0015】また、導電性ペーストの固体成分、即ち、
導体材料と、ガラスフリットの体積比率は、導電性材料
のは70〜45体積%であり、残部はガラスフリットと
する。導電性材料が70体積%を越える場合は、導電性
材料の焼結を充分に制御できず、積層基板に反りが発生
する。
【0016】逆に、導電性材料が45体積%未満の場合
は、絶縁物であるガラスフリットが過剰となり、配線抵
抗が大きくなり、多層回路基板を通過する信号の高速化
が困難になる。
【0017】次に、ガラスフリットに添加されるB2
3 について説明すると、B2 3 は、ガラス成分及びセ
ラミック成分からなる基板材料を用いて、850〜10
50℃という低温で焼成するために、ガラスの軟化点温
度を低下させるためには必須な材料である。しかし、本
発明者が種々の実験を行った結果、B2 3 を過剰に添
加すると、焼結反応中に揮発してしまい、積層基板間に
気泡が発生してしまうということを知見した。その結
果、B2 3 は、ガラスフリットの全組成物中に、15
mol%以下、好ましくは10mol%以下に設定する
ことが好ましい。上述のように、積層基板間に気泡が発
生してしまうと、内部配線に挟まれた基板の絶縁抵抗が
大きく劣化してしまう。基板の絶縁抵抗においては、3
000時間の経時変化で1010Ω以上が保たれれば、実
用上問題はない。尚、より好ましくは1012Ω以上であ
る。
【0018】表面配線4は、積層基板2の少なくとも一
方の主面に所定の高密度パターンで形成されている。表
面配線4は、例えば耐マイグレーション性に優れたCu
系の導電材料を含む導電性ペーストにより形成されてい
る。尚、使用目的に応じて、Ag系ペーストで表面配線
4を形成してもよい。
【0019】多層セラミック配線基板1では、ランド電
極3a、3a間やランド電極3aと表面配線4との間に
はICチップやチップ抵抗、チップコンデンサなどの電
子部品7が半田などを介して接続されている。尚、ラン
ド電極3aと表面配線4間には低温焼結、例えば600
℃で焼成可能なCuからなる接続導体8や、厚膜抵抗体
膜が形成されている。
【0020】次に、上述の多層セラミック配線基板1の
製造方法を説明する。まず、基板材料であるセラミック
グリーンシート2a、2b、2cを形成する。グリーン
シート2a、2b、2cは、無機物フィラーのセラミッ
クとガラス成分(セラミック10〜50重量%、ガラス
成分90〜50重量%)とを有機ビヒクルで混練して、
ドクターブレード法によってテープ化をおこなう。この
テープを所定大きさに裁断してシート2a、2b、2c
を形成する。このシート2a、2b、2cに内部回路網
に応じて、スルーホールを形成する。
【0021】内部配線3は、上述の導電性ペーストで、
各シート2a、2b、2c上に所定パターンとなるらう
にスクリーン印刷をおこなう。この時、上述のスルーホ
ールにも導電性ペーストを充填し、ビアホール6を形成
する。
【0022】内部配線3のパターンが形成されたセラミ
ックグリーンシート2a、2b、2cを3枚積層し、さ
らに圧着して、セラミックグリーンシート2a、2b、
2cと内部配線3のパターンとを同時に焼成する。この
焼成過程は、昇温過程で、グリーンシート2a、2b、
2cや導電性ペースト中に含まれる有機ビヒクル成分を
除去する脱バイ過程、及びセラミック及び導電材料を焼
結する焼結過程とを含んでいる。焼成雰囲気や焼成温度
の焼成条件は、導電材料によって異なり、導電性ペース
トにAg系の導電材料を用いた場合には、大気雰囲気又
は酸化性雰囲気で850〜960℃で焼成される。ま
た、導電性ペーストにAu系の導電材料を用いた場合に
は、大気雰囲気又は酸化性雰囲気で850〜1060℃
で焼成される。さらに、導電性ペーストにCu系の導電
材料を用いた場合には、還元性又は中性性雰囲気で85
0〜1060℃で焼成される。この焼成温度や焼成条
件、材料コストなどから見ると、内部配線3の導電性ペ
ーストとして、Ag系、Ag単体又はAg−Pdが有用
である。
【0023】この焼成工程において、導電性ペーストに
おいて、屈伏点をセラミックグリーンシート2a、2
b、2cの焼結開始温度よりや小さく設定しているため
に、セラミックと導電材料の焼結反応の挙動の相違によ
る積層基板2の反りが有効に抑えることができる。さら
に、導電性ペーストに含有されるガラスフリットとし
て、B2 3 がガラスフリット中に15mol%以下と
なるため、B2 3 の揮発による焼結した積層基板2中
の気泡を有効に抑えることができる。
【0024】次に、焼結が完了した積層基板2の表面に
表面配線4を形成する。表面配線4は、Cu系ペースト
やAg系ペーストを所定パターンに印刷・乾燥して、焼
成して形成される。
【0025】このようにして製造された多層セラミック
配線基板1上には、さらに接続導体8や厚膜抵抗体膜や
電子部品が搭載される。
【0026】〔実験例〕本発明者は、導電性ペーストに
用いるガラスフリットとして、屈伏点が700〜845
℃の試料番号1〜6に示す組成のガラスフリットを作成
して、B2 3 の含有量の差異による積層基板2中の気
泡の発生を調べた。
【0027】導電性ペーストは、各ガラスフリットに平
均粒径5〜25μmのAgを60体積%混合し、さらに
有機ビヒクルを混練した。さらに、セラミックグリーン
シートの略中央部分に、前記導電性ペーストをベタ状に
印刷して、5枚のセラミックグリーンシートを積層した
後、大気雰囲気、ピーク温度900℃、30分焼結し、
積層基板2を作成した。この後、積層基板の反り及び内
部電極間3の基板の絶縁抵抗として、初期状態及び30
00時間の経時後のその値を調べた。
【0028】
【表1】
【0029】基板の反りは、試料番号1〜6のガラスフ
リットが屈伏点700〜845℃になるので、積層基板
においても0.02mm以下の反りに抑えることができ
た。
【0030】試料番号1〜3のガラスフリット、即ち、
2 3が10mol%以下を有するガラスフリットを
用いて導電性ペーストを作成した場合には、積層基板2
の内部に気泡が一切認められなかった。
【0031】積層基板2の絶縁抵抗値において、初期状
態が、2×1013Ωであったのに対して、3000時間
後では、試料番号1が8×1013Ωであり、試料番号2
が2×1012Ωであり、試料番号3が4×1012Ωであ
り、いずれの場合でも極めて良好な結果であった。
【0032】試料番号4のガラスフリット、即ち、B2
3 が14.5mol%を有するガラスフリットを用い
て導電性ペーストを作成した場合には、積層基板2の内
部には、若干の気泡が認められた。
【0033】しかし、積層基板2の絶縁抵抗値におい
て、初期状態が、2×1013Ωであったのに対して、3
000時間後では、3000時間後では、3×1010Ω
であり、良好な結果であった。
【0034】試料番号5、6のガラスフリット、即ち、
2 3 が15mol%を越えて有するガラスフリット
を用いて導電性ペーストを作成した場合には、積層基板
2の内部に気泡が認めらた。
【0035】積層基板2の絶縁抵抗値において、初期状
態が、2×1013Ωであったのに対して、3000時間
後では、試料番号5が8×109 Ωであり、試料番号6
が3×108 Ωであり、いずれの場合でも実用に耐ええ
る積層基板2が得られなかった。
【0036】以上のように、850〜1050℃と低温
で焼結するセラミックグリーンシート上に、導電性ペー
ストを印刷し、積層、圧着後、焼成して多層セラミック
配線基板を得るには、本発明者が先に出願しているよう
に、導電性ペーストの屈伏点を基板材料の焼結開始温度
よりも低く設定し、反りを抑制するとともに、ガラスフ
リットに含まれるB2 3 を15mol%以下、好まし
くは10mol%以下にすることが、良好な基板絶縁抵
抗を得るには極めて重要である。
【0037】尚、実験例では、導電性ペーストの導体材
料として、Ag単体を用いたが、Ag−PdなどのAg
合金、Cu、Auなど、貴金属材料を用いても同様な結
果がえられた。
【0038】
【発明の効果】本発明に係る多層セラミック配線基板
は、貴金属を主成分とする導体材料及びガラスフリット
からなる導電性ペーストでビアホール及び内部配線を形
成したセラミックグリートを複数積層し、850〜10
50℃で焼成した多層セラミック回路基板において、前
記導電性ペーストは、セラミックグリーンシートの焼結
開始温度よりも屈伏点が低い700〜845℃で、かつ
15mol%以下のB2 3 を有するガラスフリットを
含有しているので、多層セラミック回路基板に反りが有
効に抑えられ、さらに基板間に気泡を有効に抑制でき、
絶縁抵抗を良好となり、内部配線の導電性が良好な多層
セラミック回路基板となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る多層セラミック配線基板の断面図
である。
【符号の説明】
1 多層セラミック配線基板 2 積層基板 3 内部配線 4 表面配線
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H05K 3/46 H05K 1/09 C04B 41/88

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】850〜1050℃で焼成可能なセラミッ
    クグリーンシートに、貴金属を主成分とする導体材料と
    ガラスフリットとからなる導電性ペーストでビアホール
    及び内部配線を形成し、該セラミックグリーンシートを
    複数積層し、セラミックグリーンシート、ビアホール及
    び内部配線を一体的に焼成して成る多層セラミック回路
    基板において、 前記導電性ペーストは、屈伏点が700〜845℃で、
    かつガラス組成中15mol%以下のB2 3 (0を含
    まない)を有するガラスフリットを含有していることを
    特徴とする多層セラミック回路基板。
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