JP3057997B2 - 無段変速機の制御装置 - Google Patents

無段変速機の制御装置

Info

Publication number
JP3057997B2
JP3057997B2 JP1962294A JP1962294A JP3057997B2 JP 3057997 B2 JP3057997 B2 JP 3057997B2 JP 1962294 A JP1962294 A JP 1962294A JP 1962294 A JP1962294 A JP 1962294A JP 3057997 B2 JP3057997 B2 JP 3057997B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
speed
gear ratio
ratio
continuously variable
variable transmission
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP1962294A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH07229544A (ja
Inventor
佳寿 安保
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nissan Motor Co Ltd
Original Assignee
Nissan Motor Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nissan Motor Co Ltd filed Critical Nissan Motor Co Ltd
Priority to JP1962294A priority Critical patent/JP3057997B2/ja
Publication of JPH07229544A publication Critical patent/JPH07229544A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3057997B2 publication Critical patent/JP3057997B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Control Of Transmission Device (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は無段変速機の制御装置に
関するものであり、特に氷雪路面や濡れたタイル路面等
のような低摩擦係数状態(この摩擦係数状態を単にμと
も記す)路面での急制動時に好適なものである。
【0002】
【従来の技術】ベルトとプーリとの接触点半径を変化さ
せる,所謂プーリ比を変化させることで入出力の変速比
を変更制御するベルト式無段変速機にあっては、その性
能上,昨今のトルクコンバータ及び歯車伝達機構を用い
た自動変速機とその出力側との間に介装されているワン
ウエイクラッチのような動力伝達方向規制手段を介装し
ないのが好ましいとされている。ここでは、ベルト式無
段変速機より上流側,つまり機関(エンジン)側を入力
側,下流側,即ちプロペラシャフトやディファレンシャ
ル装置等の動力伝達系及び車輪側を出力側と定義する。
このようなベルト式無段変速機の前記プーリ比の変更制
御には、通常,流体圧や電子制御された機械的機構等が
用いられており、具体的にはピストン化された可動プー
リ片(可動円錐部材)を固定プーリ片(固定円錐部材)
に対して相対移動させることで,両者の間に形成される
プーリ溝の幅を変更制御する。
【0003】ここで、この種の無段変速機のうち,本出
願人が先に提案した特開昭61−105353号公報に
記載される無段変速機及びその制御装置を引用すると、
当該無段変速機の変速比を制御するためには主としてス
テップモータが使用されており、このステップモータの
回転角を制御することで可動プーリ片(可動円錐部材)
と固定プーリ片(固定円錐部材)との間に形成されるプ
ーリ溝の幅を変更制御するようにしている。その一方
で、ピストン化された可動プーリ片(可動円錐部材)の
シリンダ室には,所定の流体圧,具体的には油圧が付与
されており、この油圧によって両プーリ片(両円錐部
材)間に介在し且つ回転移動するベルトを挟持すると共
に,伝達される回転駆動力(トルク)に変動が生じても
前記プーリ溝の幅が変化しないようにしている。
【0004】なお、更に前記特開昭61−105353
号公報に記載される無段変速機及びその制御装置に着目
すると、入力側及び出力側のプーリのうち,特に出力側
のプーリ(以下,単にセカンダリプーリとも記す)の可
動プーリ片(可動円錐部材)のシリンダ室には,例えば
基準となるライン圧に,スロットルバルブの開度(以
下,単にスロットル開度とも記す)の大きさに応じたス
ロットル圧を加えた流体圧,即ち油圧がライン圧調圧弁
で調整されてライン圧として供給されており、入力側か
ら出力側に伝達される回転駆動力(トルク)に応じて,
当該ベルトが滑らないだけの挟持力が当該セカンダリプ
ーリの両プーリ片間に発生するようにしてある。このラ
イン圧調節弁は、そのスプールが,前記ステップモータ
の回転角変更制御によって移動されるロッドにレバーを
介して連結されており、このレバーが前記プライマリプ
ーリの可動プーリ片(可動円錐部材)にも連結されてい
る。具体的に当該ステップモータの回転角が初期入力,
即ちトリガとして与えられるとロッドが移動され、これ
によってレバーが,ロッドの移動方向と逆方向に回動し
てプライマリプーリの可動プーリ片(可動円錐部材)を
移動しようとする。この可動プーリ片の移動に伴って前
記ライン圧調節弁のスプールが移動され、前記ベルトに
掛かる回転駆動力に応じて,当該ベルトが滑らないだけ
の挟持力を付与するライン圧が調圧される。
【0005】一方、入力側のプーリ(以下,単にプライ
マリプーリとも記す)にもこのように調整されたライン
圧が,変速制御弁を介して供給されている。この変速制
御弁のスプールは前記レバーに連結されており、前述の
ように前記ステップモータの回転角がトリガとして与え
られると,前記プライマリプーリの可動プーリ片(可動
円錐部材)との相対位置関係で前記レバーが回動しなが
ら移動し、この回動又は移動に伴ってスプールが移動さ
れる。ここで、一般に、車速が小さい状態又はスロット
ル開度が大きい状態で無段変速機の変速比が大きいほど
ベルトに掛かる前記回転駆動力は大きくなるから,大き
なライン圧をプライマリプーリのシリンダ室に供給して
そのベルト挟持力を増加する必要がある。一方、前記レ
バーの移動がプーリ比を小さくする方向,即ちプライマ
リプーリのベルト溝幅を狭くする方向である場合に、当
該プライマリプーリのシリンダ室の内圧が小さ過ぎてそ
のベルト挟持力が小さ過ぎると、前記レバーの回動に伴
って当該プライマリプーリの可動プーリ片(可動円錐部
材)を相対移動させることができない。そこで、このよ
うにレバーの移動がプーリ比を小さくする方向である場
合には,前記変速制御弁のスプールに設けられたランド
がライン圧の供給(入力)ポートとプライマリプーリの
シリンダ室への出力ポートとを連通して、前記のように
して設定プーリ比が未だ大きく,その結果未だ大きく調
圧されているライン圧を当該プライマリプーリのシリン
ダ室に供給してそのベルト挟持力を増加し、これにより
プライマリプーリの可動プーリ片(可動円錐部材)が移
動されると,前記ライン圧調圧弁のスプールが移動され
て前述のように必要な小さなベルト挟持力に応じてライ
ン圧が小さく調圧される。逆に、前記レバーの移動がプ
ーリ比を大きくする方向,即ちプライマリプーリのベル
ト溝幅を広くする方向である場合に、当該プライマリプ
ーリのシリンダ室の内圧が大き過ぎてそのベルト挟持
力,即ちピストン化された可動プーリ片(可動円錐部
材)の推力が大き過ぎると、前記レバーの回動に伴って
当該プライマリプーリの可動プーリ片(可動円錐部材)
を相対移動させることができない。そこで、このように
レバーの移動がプーリ比を大きくする方向である場合に
は,前記変速制御弁のスプールに設けられたランドがプ
ライマリプーリのシリンダ室への出力ポートとドレーン
ポートを連通して、当該プライマリプーリのシリンダ室
内の油圧をドレーンしてそのベルト挟持力を減少し、こ
れによりプライマリプーリの可動プーリ片(可動円錐部
材)が移動されると,前記ライン圧調圧弁のスプールが
移動されて前述のように必要な大きなベルト挟持力に応
じてライン圧が大きく調圧される。そして、目標とする
変速比が達成されてプライマリプーリのシリンダ室の内
圧が所定の状態になると、変速制御弁のスプールは自動
的に移動して,前記スプールに設けられたランドは前記
出力ポートを閉塞して当該プライマリプーリのシリンダ
室の内圧を保持する。つまり、基本的には変速制御弁の
スプールは、セカンダリプーリのシリンダ室の内圧とプ
ライマリプーリのシリンダ室の内圧との均衡を崩すとい
った意味合いで,当該プライマリプーリのシリンダ室の
内圧を変更制御するときに過渡的に移動するだけで,そ
の他のときには移動せず、従って、定常的には前記変速
操作機構のレバーは当該スプールとの連結点を中心とし
て回動すると考えればよい。
【0006】一方、一般にこの種の無段変速機では、そ
の変速比を制御するための変速パターンは,車速と機関
回転数又は機関回転速度(以下,これらを総称して機関
回転状態とも記す)とに依存しており、具体的には例え
ば車速と前記スロットル開度等とを変数として変速パタ
ーンを制御している。従って、制動中はスロットル開度
が低減しているから実際の機関回転状態に関わらず,無
段変速機の変速パターンは或る一定の変速比に設定され
続けることも考えられる。なお、このようにスロットル
開度が低減し且つ車速が或る程度大きい場合を、通常の
変速パターンにおいてコースト状態,つまり惰性走行状
態に等しいと考えれば、前記制動中の変速パターンで設
定され続けると考えられる或る一定の変速比とは、実際
の車両の変速比において減速比が最も小さい状態にな
る。
【0007】ここで、通常の乾燥したアスファルト路面
やコンクリート路面のような高摩擦係数状態(以下,単
にμとも記す)路面において、車輪がロックする程度の
急制動,所謂急ブレーキを行った場合を想定する。この
ような高μ路面における急ブレーキでは,通常の回転状
態から車輪がロックするまでの当該車輪の減速度は非常
に大きく、タイヤと路面とのグリップ力が大きいため
に,車体速の減速度も非常に大きく、前記検出される車
速は急激に減少する。従って、前述のように制動直前の
変速比は車両減速比で比較的小さい状態であるから、前
記無段変速機の変速比制御では,その変速比はこの急制
動中に急激に大きくなると考えられる。ところが、この
ように急ブレーキの作動中は無段変速機の変速比が急激
に大きくなり、然る後,アクセルペダルの踏込みを行う
と、駆動輪に急激な駆動力が負荷されるために車両の走
行安定性が損なわれる虞れがある。
【0008】このような問題を解決するために本出願人
は、先に特開平4−254054号公報に記載される無
段変速機の制御装置を提案した。この無段変速機の制御
装置によれば、前述のような急ブレーキ操作が行われる
と、無段変速機の変速比は,その直前の変速比,つまり
比較的小さな変速比に固定され、然る後,急ブレーキ操
作が解除されて駆動輪の回転が開始されるとこの変速比
の固定を解除する。従って、急ブレーキ操作によっても
駆動輪が回転している限り,変速比は小さな変速比に固
定されるから、この急ブレーキ操作の直後にアクセルペ
ダルの踏込みを行って駆動輪に駆動力が付与されても,
少なくともその瞬間に走行安定性が損なわれる虞れがな
い。また、急ブレーキ操作によって車両が停止した後
に,アクセルペダルの踏込みを行って車両を発進させる
と、駆動輪の回転に伴って,前記変速比固定制御が解除
されるから、無段変速機は当該発進直後の車速,つまり
小さな車速に応じた大きな変速比に変速制御され、十分
な回転駆動力を駆動輪に伝達してスムーズな発進を可能
とする。なお、前記変速比固定制御の解除は,単に駆動
輪の回転速度とか回転数といった駆動輪回転状態のみに
応じて実行されると考えてよく、具体的にこの駆動輪が
正に回転しようとする,つまり当該駆動輪の回転状態値
が“0”から正方向に増加した瞬間にこの変速比固定制
御が解除される。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】それでは、前記特開平
4−254054号公報に記載される無段変速機の制御
装置による変速比制御を,氷雪路面や濡れたタイル路面
等の低μ路面で子細に考察してみる。ここでは、制動系
に既存のアンチスキッド制御装置を搭載しない車両を想
定する。
【0010】このような低μ路面ではタイヤと路面との
間の摩擦係数状態も小さいから、当該低μ路面でタイヤ
に制動力が付与されると車輪はロックし易く、自動車工
学に言うスリップ率が大きくなる。現今のタイヤ特性で
はスリップ率が10〜30%程度の範囲内で操舵や駆動
・制動に関与するタイヤのグリップ力(摩擦力と等価で
ある)は確保されるから、これよりも車輪の実際のスリ
ップ率(以下,単に実スリップ率とも記す)が大きくな
ることは舵取り効果や制動距離の確保が困難になること
になる。逆論すれば、このタイヤのグリップ力を確保で
きる車輪のスリップ率の範囲を目標スリップ率とし、こ
の目標スリップ率に対して,車体速,即ち車速から算出
される当該目標スリップ率を満足する車輪速の範囲を目
標車輪速とすれば、この目標車輪速の範囲内に実際の車
輪速が納まっていることが車両としての舵取り効果や制
動距離を確保できることになる。このとき、実スリップ
率が前記目標スリップ率の範囲を越えて大きいというこ
とは、前述のようにタイヤのグリップ力そのものが低下
していると考えてもよいことになる。
【0011】このことを、前記特開平4−254054
号公報に記載される無段変速機の制御装置において、制
動系の大きな制動力が車輪に付与されている状態にあて
はめてみる。このとき、制動系の車輪への大きな制動力
に抗して,当該車輪を回転させる入力は、アクセルペダ
ルの踏込みがない限り,あくまでも路面にグリップして
いるタイヤが走行慣性による車体速(車速)に追従する
ように車輪を回転させる入力のみである。
【0012】しかし、このような無段変速機の実際の変
速及び動力伝達系の出力側端である車輪を,タイヤのグ
リップ力と車体速とで回転させる場合、この間,前述の
ようにスロットル開度が低減していると共に,当該無段
変速機の変速比は,急制動直前の変速比に固定されてし
まっているために、この車輪を回転させる入力は無段変
速機の入力側にまで回転変動として伝達されてしまう。
ここで、出力側に前記ワンウエイクラッチのような動力
伝達方向規制手段を持たない無段変速機では、車輪を回
転させるために必要な車輪からの入力伝達系は,その末
端に当該無段変速機の回転系が持つ慣性重量を備えてい
ると言える。これを、路面から車輪に入力される回転駆
動力(つまり路面が車輪を回転させる駆動力であること
から車輪への路面回転駆動力とも記す)の入力伝達系で
考えれば、当該路面回転駆動力は前記無段変速機の回転
系が持つ慣性重量に抗して車輪(駆動輪)を回転させな
ければならず、しかも前述のように当該低μ路面でタイ
ヤと路面との間のグリップ力が低下している状態では,
車輪は簡単にロックする或いはロック傾向に移行する。
ここで、出力端部である車輪がロックして回転しない状
況であるのに,機関は回転し続けているという問題も考
えられるが、実際には入力側に内装されたクラッチ機構
を遮断することで,この回転数差の問題は回避される。
【0013】それよりも問題になるのは、車輪速が小さ
くなった車輪,極論すればロックして車輪速が零となっ
た車輪が,制動力を解除されて再び回転しようとすると
きである。このとき、無段変速機の変速比は,固定され
ている急制動開始時の変速比よりも大きな変速比に瞬時
に変更制御され、両者の偏差は,車両が完全に停車した
状態から再び発進加速するときに最大となるであろう。
つまり、例えばこのように低μ路面での急制動により車
両が完全に停車した状態から再び発進加速するときに
は,前述のように低μ路面での急制動時に車輪は比較的
早期にロックする或いはロック傾向になるために固定制
御される変速比は比較的小さく,当該発進加速するとき
の目標変速比は最も大きくなるから、両者の偏差も極め
て大きなものとなる。従って、正に車両が発進しようと
するとき,即ち車輪が回転しようとするときに,この大
きな変速比偏差を変更制御するために、例えば前記特開
昭61−105353号公報に記載される無段変速機の
制御装置では,入力トリガとしてステップモータの大き
な回転角が与えられる。しかし、未だ車輪(駆動輪)は
回転していないから,正に車両が発進しようとするその
ときにはプライマリプーリのプーリ溝幅は変化せず、前
記変速操作機構のレバーの回動及び移動変位は大きくな
る。このときの状態を子細に考察すると,前記変速操作
機構のレバーは、前述のように急激に大きく変更設定さ
れる目標変速比に追従すべく,前記プライマリプーリの
可動プーリ片(可動円錐部材)との連結点を中心として
回動又は移動するから、これに伴って前記変速制御弁の
スプールもプライマリプーリのシリンダ室の内圧ドレー
ン方向に大きく移動され、従って当該スプールに形成さ
れているランドは当該変速制御弁の出力ポートとドレー
ンポートとを完全に連通状態にしてしまう。従って、前
述のように比較的小さな変速比に固定保持されている状
態で前記プライマリシリンダ室の内圧は小さいのに、こ
の変速比固定解除の瞬間に前記プライマリプーリのシリ
ンダ室の油圧は更に大きくドレーンされてその内圧が減
少するために,当該プライマリプーリのベルト挟持力は
大幅に低減してしまう。このとき、正に回転移動しよう
とするベルトはプライマリプーリとの間で滑り、この滑
りが瞬間的な衝撃として発生して,著しい場合には車室
内にまで伝達されてしまう。勿論、このようなベルトの
滑りが発生すると当該ベルトの耐久性が低下する。
【0014】本発明はこれらの諸問題に鑑みて開発され
たものであり、特に低μ路面での制動時に,車輪速(駆
動輪速)の大きな減速度が発生してもベルト−プーリ間
の滑りを抑制防止し、もってベルトの耐久性を向上する
ことができる無段変速機の制御装置を提供することを目
的とするものである。
【0015】
【課題を解決するための手段】本件発明者は前記諸問題
を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下の知見を得て
本発明を開発した。即ち、前記変速比固定制御からその
解除制御に移行する際のベルトープーリ間の滑りが、前
記低μ路面における急制動時を含めて、車両の停車状態
から再発進加速時に発生する主たる原因は二つ挙げられ
る。そのうちの一つはプーリが回転していないことであ
り、もう一つは固定制御されている急制動直前の変速比
と再発進加速時の目標変速比との偏差が大きいことであ
る。もしも、前記プライマリプーリが十分な回転速度で
回転していれば(勿論、セカンダリプーリも回転してい
る必要がある)、前記ステップモータの大きな回転角に
よる入力トリガに対しても実際の変速は実行されるはず
であるから、少なくとも例えば前記変速制御弁のスプー
ルが急激に且つ大幅に移動して前記プライマリプーリの
シリンダ室の内圧が急激に減少してしまうこともない。
また、例えプライマリプーリが正に回転しようとすると
きであっても、変更制御される変速比の偏差がさほど大
きくなければ、例えば前記変速操作機構のレバーの回動
位相又は移動変位はさほど大きくならないから、少なく
とも例えば前記変速制御弁のスプールが急激に且つ大幅
に移動して前記プライマリプーリのシリンダ室の内圧が
急激に減少してしまうこともない。ここで、若し前記変
速操作機構並びに変速制御弁によって当該シリンダ室の
内圧が多少減少したとしても、それに伴って当該プライ
マリプーリのベルト挟持力が大幅に低減することはな
く、同時にベルトの滑りが発生してしまうことはないと
考えられる。それでは、前記プーリが回転していること
を条件に前記変速比固定制御を解除する場合には、例え
ば検出される車速が所定値よりも大きい場合に行うこと
で、前述の作用・効果を達成することができる。また、
変速比偏差を条件に前記変速比固定制御を解除する場合
には、例えば前記変速比固定制御とは個別に、スロット
ル開度や車速等の変数に基づいて目標変速比を算出し、
この目標変速比と当該固定制御されている変速比との偏
差が所定値よりも小さい場合に行うことで、前述の作用
・効果を達成することができる。これらは具体的に、何
れも車両が既に発進していることを要件とする。ここで
問題となるのは、車両の発進加速性能であるが、一般に
発進加速性能を問われる高μ路面では、確かに発進後ま
で変速比を比較的小さく固定保持していることは発進加
速性能を低下させることになろう。しかしながら、前述
のような低μ路面では、発進時に2速ホールドするよう
に、むしろ、変速比を小さくしておくほうが車輪(駆動
輪)に掛かる回転駆動力(トルク)を抑制して当該駆動
輪のスリップを抑制することができるから、安定した発
進加速を行うことができる。このとき必要となるのは、
当該路面が低μ路面であるか否かの判定であるが、例え
ば前述のようにベルトープーリ間に滑りが発生するの
は、路面ータイヤ間のグリップ力による回転駆動力(路
面回転駆動力)と制動力との偏差から発生する駆動輪速
の減速度が或る程度以上大きくなり、その結果、当該駆
動輪がロックする或いはロック傾向になるために前記固
定保持制御される変速比が比較的小さい場合だけである
と考えれば、当該駆動輪の減速度を検出し、この駆動輪
速減速度が予め設定された所定値より大きい場合にの
み、前記変速比固定保持制御を実行することにすれば、
それは低μ路面における急制動でタイヤがロックする或
いはロック傾向にあることを判定することと等価であ
り、前記低μ路面での制動時に発生するベルトの滑りを
確実に抑制防止することができる。
【0016】而して本発明のうち請求項1に係る無段変
速機の制御装置は図1aの基本構成図に示すように、
ルトとプーリとの接触点半径を変化させることで変速比
を変更するベルト式の無段変速機を車両に搭載し、その
無段変速機の変速比を車速に基づいて制御する変速比制
御手段を備えた無段変速機の制御装置において、車輪回
転の減速度を検出する車輪減速度検出手段と、車両の前
後方向車速を検出する車速検出手段とを備え、前記変速
比制御手段は、前記車輪減速度検出手段で検出された車
輪減速度検出値が所定車輪回転減速度値以上のときに、
前記無段変速機の変速比をその時点の変速比に固定保持
制御する変速比固定手段と、前記車速検出手段で検出さ
れた車速検出値が所定車速値以上のときに、前記変速比
固定手段による無段変速機の変速比固定保持制御を解除
する変速比固定解除手段とを備えたことを特徴とするも
のである。
【0017】また、本発明のうち請求項2に係る無段変
速機の制御装置は図1bの基本構成図に示すように、
ルトとプーリとの接触点半径を変化させることで変速比
を変更するベルト式の無段変速機を車両に搭載し、その
無段変速機の変速比を車速に基づいて制御する変速比制
御手段を備えた無段変速機の制御装置において、車輪回
転の減速度を検出する車輪減速度検出手段と、車両に作
用する入力又は車両で発生している物理量を検出する入
力物理量検出手段とを備え、前記変速比制御手段は、前
記車輪減速度検出手段で検出された車輪減速度検出値が
所定車輪回転減速度値以上のときに、前記無段変速機の
変速比をその時点の変速比に固定保持制御する変速比固
定手段と、前記入力物理量検出手段で検出された入力物
理量検出値に基づいて当該車両の無段変速機で達成すべ
き目標変速比を算出又は検出する目標変速比演算手段
と、前記目標変速比演算手段で算出又は検出された無段
変速機の目標変速比及び前記変速比固定手段で固定保持
制御されている無段変速機の変速比の偏差が所定変速比
偏差値以下のときに、前記変速比固定手段による無段変
速機の変速比固定保持制御を解除する変速比固定解除手
段とを備えたことを特徴とするものである。
【0018】
【作用】本発明のうち請求項1に係る無段変速機の制御
装置では図1aの基本構成図に示すように、前記車輪減
速度検出手段が,例えば駆動輪の車輪速変化量の微分値
から車輪回転の減速度を検出する。そして、前記変速比
制御手段に設けられた変速比固定手段は、例えば制動系
による車輪への制動の実行された結果,前記車輪減速度
検出手段で検出された車輪回転減速度検出値が所定車輪
回転減速度値以上のときに,例えば当該駆動輪の車輪速
は前記低μ路面で前記目標スリップ率の範囲を満足する
目標車輪速を越えて減速し、その結果,当該駆動輪はロ
ックする或いはロック傾向にあると判定し、これに基づ
いて前記無段変速機の変速比をその時点の比較的小さな
変速比に固定保持制御する。これにより、当該ロックす
る或いはロック傾向にある駆動輪の車輪速が,無段変速
機の回転系に与える回転変動及びそれに基づくトルク変
動を抑制して動力伝達系を保護すると共に、例えば制動
を解除した直後に変速比が急激に大きくなって車両挙動
が不安定になるのを抑制防止することができる。一方、
前記車速検出手段は,車両の前後方向車速を常に検出し
ている。従って、車両が一旦停車し,然る後,発進加速
しようとする時点の車速は、未だ前記所定車速に到達し
ていないから、前記変速比固定手段によって固定制御さ
れている無段変速機の変速比は,前記変速比固定解除手
段によってその固定制御が解除されずに,前記急制動開
始直前の比較的小さな変速比に保持されており、当該車
両再発進時における当該低μ路面での安定した発進加速
を確保する。また、例えば前記特開昭61−10535
3号公報に記載される無段変速機の制御装置にあって
は,変速比変更制御入力トリガとしてのステップモータ
の回転角が,当該車両再発進時に発生しないから、例え
ば前記変速操作機構による変速制御弁のスプールの移動
がなく、従って前記駆動プーリシリンダ室の内圧はドレ
ーンされずに保持されてベルト挟持力は保持され、当該
車両再発進時にベルトが滑ることはない。そして、その
車両再発進後,前記車速検出手段で検出された車速検出
値が,所定車速値以上となると、前記変速比固定解除手
段が,前記変速比固定手段による無段変速機の変速比固
定保持制御を解除するため、その後の車速やスロットル
開度等の変数に応じた最適な変速比が,前記変速比制御
手段によって変更制御されてスムーズな走行が確保され
る。また、この変速比固定保持制御の解除時には,各プ
ーリは十分な回転速度で回転しているから、例えば当該
固定保持制御されている変速比と当該解除時の目標変速
比との偏差が比較的大きく、そのため,前記入力トリガ
であるステップモータの回転角が比較的大きくなっても
駆動プーリのプーリ溝幅は変化し、これに伴って駆動プ
ーリの可動プーリ片も移動するから,前記変速操作機構
に連結された変速制御弁のスプールもさほど大きく移動
することはなく、従って駆動プーリシリンダ室の内圧が
大幅にドレーンされてそのベルト挟持力が大幅に低減す
ることもないためにベルトが滑るのを抑制防止すること
ができる。
【0019】また、本発明のうち請求項2に係る無段変
速機の制御装置では図1bの基本構成図に示すように、
前記車輪減速度検出手段が,例えば駆動輪の車輪速変化
量の微分値から車輪回転の減速度を検出する。そして、
前記変速比制御手段に設けられた変速比固定手段は、例
えば制動系による車輪への制動の実行された結果,前記
車輪減速度検出手段で検出された車輪回転減速度検出値
が所定車輪回転減速度値以上のときに,例えば当該駆動
輪の車輪速は前記低μ路面で前記目標スリップ率の範囲
を満足する目標車輪速を越えて減速し、その結果,当該
駆動輪はロックする或いはロック傾向にあると判定し、
これに基づいて前記無段変速機の変速比をその時点の比
較的小さな変速比に固定保持制御する。これにより、当
該ロックする或いはロック傾向にある駆動輪の車輪速
が,無段変速機の回転系に与える回転変動及びそれに基
づくトルク変動を抑制して動力伝達系を保護すると共
に、例えば制動を解除した直後に変速比が急激に大きく
なって車両挙動が不安定になるのを抑制防止することが
できる。一方、前記入力物理量検出手段は,例えば車両
で発生している物理量としての車両の前後方向車速や車
両に作用する入力としてのスロットル開度等を常に検出
し、これらの入力物理量検出値を変数として,前記目標
変速比演算手段では、当該車両の無段変速機で現在,達
成すべき目標変速比を算出又は検出している。従って、
車両が一旦停車し,然る後,発進加速しようとする時点
の目標変速比と前記変速比固定制御手段によって固定制
御されている無段変速機の変速比との偏差は、未だ前記
所定変速比偏差値よりも大きいから、当該変速比固定手
段によって固定制御されている無段変速機の変速比は,
前記変速比固定解除手段によってその固定制御が解除さ
れずに,前記急制動開始直前の比較的小さな変速比に保
持されており、当該車両再発進時における当該低μ路面
での安定した発進加速を確保する。また、例えば前記特
開昭61−105353号公報に記載される無段変速機
の制御装置にあっては,変速比変更制御入力トリガとし
てのステップモータの回転角が,当該車両再発進時に発
生しないから、例えば前記変速操作機構による変速制御
弁のスプールの移動がなく、従って前記駆動プーリシリ
ンダ室の内圧はドレーンされずに保持されてベルト挟持
力は保持され、当該車両再発進時にベルトが滑ることは
ない。そして、その車両再発進後,前記入力物理量検出
手段で検出された車速検出値やスロットル開度検出値等
の入力物理量検出値が大きくなって、前記目標変速比演
算手段で算出又は検出される目標変速比と,前記変速比
固定手段で固定保持制御されている変速比との偏差が前
記所定変速比偏差以下となると、前記変速比固定解除手
段が,当該変速比固定手段による無段変速機の変速比固
定保持制御を解除するため、その後の車速やスロットル
開度等の変数に応じた最適な変速比が,前記変速比制御
手段によって変更制御されてスムーズな走行が確保され
る。また、この変速比固定保持制御の解除時には,目標
変速比と現在変速比との偏差が比較的小さいから、例え
各プーリは十分な回転速度で回転していなくとも、前記
入力トリガであるステップモータの回転角が比較的小さ
く、このステップモータのロッドで移動される前記変速
操作機構に連結された変速制御弁のスプールもさほど大
きく移動することはなく、従って駆動プーリシリンダ室
の内圧が大幅にドレーンされてそのベルト挟持力が大幅
に低減することもないためにベルトが滑るのを抑制防止
することができる。
【0020】
【実施例】次に本発明の無段変速機の制御装置を実際の
車両に適用した第1実施例を図2〜図10に基づいて説
明する。この第1実施例の基本的な車両構造は,後述す
る無段変速油圧制御回路やコントローラであるマイクロ
コンピュータ等を含めて,本出願人が先に提案した特開
昭61−105353号公報に記載される無段変速機の
制御装置と同等かほぼ同等であり、このうち同等の部分
は夫々各構造の説明部位で同等であることを説明したの
ち,当該公報を参照するものとして詳細な説明を割愛す
ることもある。なお、本実施例では機関(即ちエンジ
ン)の回転駆動力によって回転駆動される駆動輪は前左
右輪である、所謂FF(フロントエンジンフロントドラ
イブ)車両に適用されたものとする。また、各車輪の制
動力は,当該車輪に設けられた流体圧ホイルシリンダに
よって供給されるものとし、各ホイルシリンダへの作動
流体圧は,ブレーキペダルに接続されたマスタシリンダ
内のマスタシリンダ圧が等分されるものとする。また、
基本的には前述のようなアンチスキッド制御装置を搭載
していないものとする。
【0021】図2は無段変速機の動力伝達機構を示すも
のであり、この無段変速機はフルードカップリング1
2,前後進切換機構15,Vベルト式無段変速機構2
9,差動装置56等を有しており、エンジン10の出力
軸10aの回転を所定の変速比及び回転方向で出力軸6
6及び68に伝達することができる。この無段変速機
は、フルードカップリング12(ロックアップ油室12
a,ポンプインペラ12b,タービンライナ12c,ロ
ックアップクラッチ12d等を有している)、回転軸1
3、駆動軸14、前後進切換機構15、駆動プーリ16
(固定円錐部材18,駆動プーリシリンダ室20(室2
0a,室20b),可動円錐部材22,溝22a等から
なる)、遊星歯車機構17(サンギヤ19,ピニオンギ
ヤ21,ピニオンギヤ23,ピニオンキャリア25,イ
ンターナルギヤ27等からなる)、Vベルト24、従動
プーリ26(固定円錐部材30,従動プーリシリンダ室
32,可動円錐部材34等からなる)、従動軸28、前
進用クラッチ40、駆動ギヤ46、アイドラギヤ48、
後進用ブレーキ50、アイドラ軸52、ピニオンギヤ5
4、ファイナルギヤ44、差動装置56(ピニオンギヤ
58,ピニオンギヤ60,サイドギヤ62,サイドギヤ
64等からなる)、出力軸66、出力軸68等から構成
されているが、これらのついての詳細な説明を省略す
る。なお、説明を省略した部分の詳細な構成については
本出願人が先に提案した前記特開昭61−105353
号公報を参照されたい。また、前記従動プーリ26のシ
リンダ室32の受圧面積は前記駆動プーリ16のシリン
ダ室20の各室20a,20bの受圧面積の約1/2程
度に設定してあると共に、当該従動プーリ26のシリン
ダ室32及び駆動プーリ16のシリンダ室20には後述
する油圧制御装置から,共通作動油圧としてのライン圧
が供給されているために、駆動プーリ16のシリンダ室
20の各室20a,20bに当該油圧制御装置から制御
された作動油圧が供給されながら駆動プーリ16のV字
状プーリ溝の幅を拡狭変更して,Vベルト24と駆動プ
ーリ16との接触位置半径を変更制御すると、このVベ
ルト24に掛かるエンジン10からの回転駆動力に抗し
て当該Vベルト24と従動プーリ26とが滑らないよう
に挟持しながら,且つ駆動プーリ16のV字状プーリ溝
の幅の拡狭変更量に反比例するように当該従動プーリ2
6のV字状溝の幅を拡狭変更して当該従動プーリ26と
Vベルト24との接触位置半径を変更制御し、これによ
り所望する両プーリ16,26間のプーリ比を達成して
これを無段変速機の入出力間の変速比にするように構成
されている。勿論、駆動プーリ16のベルト挟持力はこ
の従動プーリ26のベルト挟持力よりも大きい。
【0022】図3は本実施例の無段変速機の油圧制御装
置である。この油圧制御装置は、オイルポンプ101、
ライン圧調圧弁102、マニュアル弁104、変速制御
弁106、調整圧切換弁108、ステップモータ11
0、変速操作機構112、スロットル弁114、一定圧
調圧弁116、電磁弁118、カップリング圧調圧弁1
20、ロックアップ制御弁122等を有しており、これ
らは互いに図示のように接続されており、また前進用ク
ラッチ40、後進用ブレーク50、フルードカップリン
グ12、ロックアップ油室12a、駆動プーリシリンダ
室20及び従動プーリシリンダ室32とも図示のように
接続されている。これらの弁等についての詳細な説明は
前記特開昭61−105353号公報に記載されている
ものと同等かほぼ同等であるために,当該公報を参照さ
れるものとしてここでは割愛するが、前記マニュアル弁
104のスプール136の切換え停止位置には,Lレン
ジとDレンジとの間に所謂2レンジ(一般にDsレンジ
とも言う)を介装して,計6つのポジションで当該スプ
ール136が停止するものとした。この停止ポジション
増加に係る当該油圧制御装置における具体的な作動油圧
の変化はなく、後述するマイクロコンピュータでの演算
処理が若干異なる程度である。なお、図3中の各参照符
号は次の部材を示す。ピニオンギヤ110a、リザーバ
タンク130、ストレーナ131、油路132、リリー
フ弁133、弁穴134、ポート134a〜134e、
スプール136、ランド136a〜136b、油路13
8、一方向オリフィス139、油路140、油路14
2、一方向オリフィス143、弁穴146、ポート14
6a〜146g、スプール148、ランド148a〜1
48e、スリーブ150、スプリング152、スプリン
グ154、変速比伝達部材158、油路164、油路1
65、オリフィス166、オリフィス170、弁穴17
2、ポート172a〜172e、スプール174、ラン
ド174a〜174c、スプリング175、油路17
6、オリフィス177、レバー178、油路179、ピ
ン181、ロッド182、ランド182a,182b、
ラック182c、ピン183、ピン185、弁穴18
6、ポート186a〜186d、油路188、油路18
9、油路190、弁穴192、ポート192a〜192
g、スプール194、ランド194a、194e、負圧
ダイヤフラム198、オリフィス199、オリフィス2
02、オリフィス203、弁穴204、ポート204a
〜204e、スプール206、ランド206a,206
b、スプリング208、油路209、フィルタ211、
オリフィス216、ポート222、ソレノイド224、
プランジャ224a、スプリング225、弁穴230、
ポート230a〜230e、スプール232、ランド2
32a,232b、スプリング234、油路235、オ
リフィス236、弁穴240、ポート240a〜240
h、スプール242、ランド242a〜242e、油路
243、油路245、オリフィス246、オリフィス2
47、オリフィス248、オリフィス279、チョーク
型絞り弁250、リリーフバルブ251、保圧弁25
2、チョーク型絞り弁253、油路254、クーラ25
6、クーラ保圧弁258、オリフィス259、切換検出
スイッチ278である。
【0023】ここで、この油圧制御回路によって行われ
るプーリ比,即ち変速比制御の機構並びに駆動プーリシ
リンダ室20及び従動プーリシリンダ室32に供給され
るライン圧について簡潔に説明する。まず、前記駆動プ
ーリシリンダ室20及び従動プーリシリンダ室32に供
給されるライン圧は、前述のようにステップモータ11
0の回転角を制御量とする入力によってプーリ比の変更
制御を可能としながら,ベルト24に掛かる回転移動力
に対して当該ベルト24が滑らないだけの挟持力を各プ
ーリ16,26に発生させるためのものと考えればよ
い。従って、前述のように車速の増大又はスロットル開
度の減少に伴ってプーリ比,即ち車両減速比又は変速比
を小さくする本実施例の無段変速機の制御装置では、プ
ーリ比,即ち変速比を小さく変更制御するにあたっては
前記供給ライン圧を減少し、変速比を大きく変更制御す
るにあたっては前記供給ライン圧を増加する必要があ
る。
【0024】ここで、前記負圧ダイヤフラム198によ
って機関(エンジン)10の吸気負圧の増大と共に油路
140への出力油圧が小さくなるから、油路140への
スロットル弁114からのスロットル圧は,この負圧ダ
イヤフラム198の制御油圧と油路132の基圧との和
であると考えてよい。従って、この油路140のスロッ
トル圧をパイロット圧とするライン圧調圧弁102で
は,そのスプール148の移動に伴って油路132のラ
イン圧が調圧され、このライン圧が前記変速制御弁10
6を介して駆動プーリシリンダ室20及び従動プーリシ
リンダ室32に供給される。
【0025】一方、前記変速操作機構112は如何様な
作用となるかというと、まず前述のように駆動プーリシ
リンダ室20及び従動プーリシリンダ室32には必要な
ライン圧が供給されているとすれば,前記変速制御弁1
06のスプール174に設けられたランド174bとラ
ンド174cとの,油路132からのライン圧に対する
受圧面積差に伴う油圧力とスプリング175の弾性力と
が均衡し、この状態でランド174bが駆動プーリシリ
ンダ室20への出力ポート172bを閉塞し、これが定
常状態となるから基本的にスプール174とレバー17
8との連結ピン181の位置は変化しない。ここで、前
記図2の無段変速機構29において,例えばその変速比
(プーリ比であり,車両減速比である)を小さく変更制
御するためには、駆動プーリ16の可動円錐部材22は
図3の右方に移動される必要があるから,前記変速操作
機構112のレバー178は,前記連結ピン181を回
動中心として図3において反時計回りに回動する必要が
あり、この必要な回動位相を達成するための前記ロッド
182又は連結ピン185の移動変位に応じたステップ
モータ110の回転角が,後述する変速比制御演算処理
によって制御量として与えられ、結果的に当該ロッド1
82又は連結ピン185は図3の左方に移動される。逆
に、当該無段変速機構29の変速比を大きく変更制御す
るためには、駆動プーリ15の可動円錐部材22は図3
の左方に移動される必要があるから,前記変速操作機構
112のレバー178は,前記連結ピン181を回動中
心として図3において時計回りに回動する必要があり、
この必要な回動位相を達成するための前記ロッド182
又は連結ピン185の移動変位に応じたステップモータ
110の回転角が,後述する変速比制御演算処理によっ
て制御量として与えられ、結果的に当該ロッド182又
は連結ピン185は図3の右方に移動される。
【0026】しかしながら、ステップモータ110の回
転角が制御量として入力されても駆動プーリ16の可動
円錐部材22がリアルタイムに移動されるわけではない
から、前記ロッド182又は連結ピン185の移動に伴
って、前記変速操作機構112のレバー178は,前記
変速比伝達部材158との連結ピン183を回動中心と
するようにも回動する。つまり、前述のように無段変速
機構29の変速比を小さく変更制御するために,ステッ
プモータ110の回転角を入力トリガとして前記ロッド
182又は連結ピン185を図3の左方に移動すると、
未だ駆動プーリシリンダ室20の内圧が小さくて駆動プ
ーリ16のベルト挟持力が小さく、そのため当該駆動プ
ーリ16の可動円錐部材22が右方に移動していない,
或いは移動できない状態で、前記変速操作機構12のレ
バー178は前記変速比伝達部材158との連結ピン1
83を回動中心として反時計回りに回動するから、前記
変速制御弁112のスプール174と当該レバー178
との連結ピン181が図3の左方に移動され、これによ
り当該変速制御弁112のスプール174が図3の左方
に移動されて,当該スプール174に設けられたランド
174bは、結果的に前述のように未だ増圧されたライ
ン圧が供給される入力ポート172cと駆動プーリシリ
ンダ室20への出力ポート172bとを連通状態とし、
これにより駆動プーリ16のベルト挟持力が増加するた
めに当該駆動プーリ16の可動円錐部材22は図3の右
方に次第に移動する,即ち駆動プーリ16のVベルト溝
幅が次第に狭くなって滑らかにプーリ比が小さくなり、
これに伴って前記連結ピン181は前記定常位置に次第
に復元して前記変速制御弁106のスプール174も定
常位置に次第に復元する。この際に、駆動プーリ可動円
錐部材22の移動に伴ってライン圧調圧弁102のスプ
ール148が次第に移動され、前述のように変速制御弁
106の入力ポート172から出力ポート172cに供
給されるライン圧は次第に減圧されるから、前記変速制
御弁106のスプール174の定常位置への復元に伴っ
て,そのランド174bが前記出力ポート172bを閉
塞して前記ベルト24が滑らないだけの挟持力を発揮す
る駆動プーリシリンダ室20の内圧が保持される。一
方、前述のように無段変速機構29の変速比を大きく変
更制御するために,ステップモータ110の回転角を入
力トリガとして前記ロッド182又は連結ピン185を
図3の右方に移動すると、未だ駆動プーリシリンダ室2
0の内圧が大きくて駆動プーリ16のベルト挟持力が大
きく、そのため当該駆動プーリ16の可動円錐部材22
が左方に移動していない,或いは移動できない状態で、
前記変速操作機構12のレバー178は前記変速比伝達
部材158との連結ピン183を回動中心として時計回
りに回動するから、前記変速制御弁112のスプール1
74と当該レバー178との連結ピン181が図3の左
方に移動され、これにより当該変速制御弁112のスプ
ール174が図3の左方に移動されて,当該スプール1
74に設けられたランド174bは、結果的に駆動プー
リシリンダ室20への出力ポート172bとドレーンポ
ート172aとを連通状態とし、これにより駆動プーリ
16のベルト挟持力が減少するために当該駆動プーリ1
6の可動円錐部材22は図3の左方に次第に移動する,
即ち駆動プーリ16のVベルト溝幅が次第に広くなって
滑らかにプーリ比が小さくなり、これに伴って前記連結
ピン181は前記定常位置に次第に復元して前記変速制
御弁106のスプール174も定常位置に次第に復元す
る。ところが、若しこの際に、駆動プーリ16のベルト
挟持力が小さいと,変速操作機構112のレバー178
は,逆にロッド182との連結ピン185を回動中心と
して時計方向に回動し、これにより駆動プーリ可動円錐
部材22の移動に伴ってライン圧調圧弁102のスプー
ル148が次第に左方に移動され、前述のように変速制
御弁106の入力ポート172から出力ポート172c
に供給されるライン圧は次第に増圧されるから、前記変
速制御弁106のスプール174の定常位置への復元に
伴って,そのランド174bが前記出力ポート172b
を閉塞して前記ベルト24が滑らないだけの挟持力を発
揮する駆動プーリシリンダ室20の内圧が保持される。
【0027】このように変速制御弁106は、変速比の
変更制御時に,そのスプールが過渡的に移動することに
よって,駆動プーリシリンダ室20の内圧と従動プーリ
シリンダ室32の内圧とのバランスを崩すといった意味
合いから,駆動プーリ16のベルト挟持力を次第に増減
することで、当該変速比の変更制御を滑らかに行うため
のものであるが、前記駆動プーリ16の可動円錐部材2
2が移動できない状態,即ち各プーリが十分な回転速度
で回転していない場合や、変更制御される変速比の偏差
が過大である場合には、逆に駆動プーリシリンダ室20
の内圧が大幅に変化して当該駆動プーリ16のベルト挟
持力も大幅に変化する可能性がある。
【0028】図4は前記ステップモータ110及びソレ
ノイド224の作動を制御する電子制御装置(マイクロ
コンピュータ)300を示すものである。このマイクロ
コンピュータ300は、入力インターフェース311、
基準パルス発生器312、中央演算処理装置(CPU)
313、リードオンリメモリ(ROM)314、ランダ
ムアクセスメモリ(RAM)315及び出力インターフ
ェース316を有しており、これらはアドレスバス31
9及びデータバス320によって連結されている。この
マイクロコンピュータには、エンジン回転速度センサ3
01、車速センサ302、スロットル開度センサ30
3、シフトポジションスイッチ304、タービン回転速
度センサ305、エンジン冷却水温センサ306、ブレ
ーキセンサ307、切換検出スイッチ298、左駆動輪
速(即ち前左輪速)センサ402及び右駆動輪速(即ち
前右輪速)センサ404からの信号が直接又は波形成形
器308,309,322,412及び414、及びA
D変換器310を介して入力され、一方、増幅器317
及び信号線317a〜317dを介してステップモータ
110へ信号が出力され、また前記電磁弁ソレノイド2
24へも信号が出力されるが、これらの詳細な説明は前
記特開昭61−105353号公報に記載されるものと
同等又はほぼ同等であるので,そちらを参照されるもの
として割愛する。なお、当該公報に記載されていないも
のとしては、前述のようにシフトポジションとしてLレ
ンジとDレンジとの間に2レンジが新たに設けられてい
るため、前記シフトポジションスイッチ304からはこ
の2レンジを加えた計6つのポジション信号がマイクロ
コンピュータ300に入力される。また、左駆動輪速セ
ンサ402及び右駆動輪速センサ404からは,夫々当
該駆動輪速に応じた正弦波出力信号が出力され、夫々,
波形整形器412,414を介して当該駆動輪速に応じ
たパルス信号からなる車輪速検出値VWL,VWR(これら
を統括して各車輪速とも記し,その場合の符号はVWj
も記す。従って、jはL又はRに相当する)が入力イン
ターフェース311を介してマイクロコンピュータ30
0内に読込まれる。
【0029】そして、前記マイクロコンピュータ300
により前記無段変速機の変速比制御は図5のフローチャ
ートに示す基準演算処理に従って実行される。この演算
処理の基本的なロジック体系は前記特開昭61−105
353号公報に記載されるものとほぼ同等であるが、前
記シフトポジションに2レンジが付加された関係で,検
索される変速パターンとして当該2レンジに相当する変
速パターンが付加される。
【0030】この変速比制御の基準演算処理について簡
単に説明すれば、図5の演算処理は所定時間(ΔT)毎
のタイマ割込みによって実行され、まずステップ502
で前記シフトポジションスイッチ304からのシフトポ
ジションを読込み、次いでステップ504でシフトポジ
ションがD,2,L,Rレンジであると判定された場合
にはステップ508に移行し、そうでない場合にはステ
ップ506に移行する。前記ステップ508では前記ス
ロットル開度センサ303からの信号に基づいてスロッ
トル開度THを読込み、次いでステップ510で車速セ
ンサ302からの信号に基づいて車速Vを読込み、次い
でステップ512でエンジン回転速度センサ301から
の信号に基づいてエンジン回転速度NE を読込み、次い
でステップ514でタービン回転速度センサ305から
の信号に基づいてタービン回転速度Nt を読込む。次に
ステップ516に移行して,前記エンジン回転速度NE
とタービン回転速度Nt との回転偏差ND を算出し、次
にステップ518で,予め記憶されている制御マップに
従ってロックアップ車速VON及びロップアップオフ車速
OFF を検索する。
【0031】次にステップ520に移行して、ロップア
ップフラグLUFが設定されている場合にはステップ5
44に移行し、そうでない場合にはステップ522に移
行する。前記ステップ544では、当該車速Vが前記ロ
ックアップオフ車速VOFF よりも小さい場合にステップ
540に移行し、そうでない場合にステップ546に移
行する。一方、前記ステップ522で当該車速Vが前記
ロックアップ車速VONよりも大きいと判定された場合に
はステップ524に移行し、そうでない場合には前記ス
テップ540に移行する。前記ステップ524では、前
記回転偏差NDから第1の目標値Nm1 を減じて回転目
標値偏差eを算出し、次にステップ526で予め記憶さ
れた制御マップから前記回転目標値偏差eに応じた第1
のフィードバックゲインG1 を検索し、次にステップ5
28で前記回転偏差ND が制御系切換閾値N0 よりも小
さい場合にはステップ530に移行し、そうでない場合
にはステップ538に移行する。前記ステップ530で
は、電磁弁ソレノイド224の前回デューティ比に微小
所定値αを加えて,当該電磁弁ソレノイド224の今回
デューティ比を設定し、次にステップ532でこの電磁
弁ソレノイド224の今回デューティ比が100%より
小さいと判定された場合にはステップ602に移行し、
そうでない場合にはステップ534に移行する。前記ス
テップ534では、電磁弁ソレノイド224の今回ディ
ーティ比を100%に修正し、次にステップ536でロ
ップアップフラグLUFを設定して前記ステップ602
に移行する。一方、前記ステップ538では今回デュー
ティ比を,前記回転目標値偏差e及び第1のフィードバ
ックゲインG1 を変数とする演算式に基づいて算出し、
前記ステップ602に移行する。一方、前記ステップ5
40では電磁弁ソレノイド224の今回デューティ比を
0%に設定し、次にステップ542でロックアップフラ
グLUFを算出し、前記ステップ602に移行する。ま
た、前記ステップ546では電磁弁ソレノイド224の
今回デューティ比を100%に設定して、前記ステップ
602に移行する。
【0032】前記ステップ602で、当該車速Vが変速
比制御開始閾値V0 よりも小さいと判定された場合はス
テップ604に移行し、そうでない場合はステップ62
4に移行する。前記ステップ604でスロットル開度T
Hがアイドル判定閾値TH0よりも小さいと判定された
場合はステップ610に移行し、そうでない場合にはス
テップ606に移行する。前記ステップ606では、電
磁弁ソレノイド224の今回デューティ比を0%に設定
し、次にステップ608でステップモータ110への目
標パルスPD を最大変速比パルスP1 に設定してステッ
プ630に移行する。一方、前記ステップ506では、
電磁弁ソレノイド224の今回デューティ比を0%に設
定して前記ステップ630に移行する。
【0033】一方、前記ステップ624ではシフトポジ
ションがDレンジである場合にステップ626に移行
し、当該Dレンジに相当する変速パターンから車速V及
びスロットル開度THに応じた変速比を検索して前記ス
テップ630に移行する。シフトポジションがDレンジ
でない場合にはステップ639に移行して、シフトポジ
ションが2レンジである場合にはステップ640に移行
し、当該2レンジに相当する変速パターンから車速V及
びスロットル開度THに相当する変速比を検索して前記
ステップ630に移行する。シフトポジションが2レン
ジでない場合にはステップ642に移行して、シフトポ
ジションがLレンジである場合にはステップ628に移
行し、当該Lレンジに相当する変速パターンから車速V
及びスロットル開度THに相当する変速比を検索して前
記ステップ630に移行する。またシフトポジションが
Lレンジでない場合にはステップ644に移行して、シ
フトポジションRレンジに相当する変速パターンから車
速V及びスロットル開度THに相当する変速比を検索し
て前記ステップ630に移行する。
【0034】一方、前記ステップ610で,前記切換検
出スイッチ298がオン状態である場合にはステップ6
12に移行し、そうでない場合にはステップ620に移
行する。前記ステップ612では前記回転偏差ND から
第2の目標値Nm2 を減じて回転目標値偏差eを算出
し、次にステップ614で予め記憶された制御マップか
ら前記回転目標値偏差eに応じた第2のフィードバック
ゲインG2 を検索し、次にステップ616で電磁弁ソレ
ノイド224の今回デューティ比を,前記回転目標値偏
差e及び第2のフィードバックゲインG2 を変数とする
演算式に基づいて算出し、次にステップ618でステッ
プモータ110への現在のパルス数PA を“0”に設定
してステップ636に移行する。一方、前記ステップ6
30で現在パルス数PA が目標パルス数PD に等しいと
判定された場合には前記ステップ636に移行する。ま
た、前記ステップ630で現在パルス数PA が目標パル
ス数PD より小さいと判定された場合には、ステップ6
32に移行してステップモータ駆動信号をアップシフト
方向に移動し、次にステップ634で現在パルス数P A
に“1”を加えて新たな現在パルス数PA として更新記
憶した後、前記ステップ636に移行する。一方、前記
ステップ630で現在パルス数PA が目標パルス数PD
より大きいと判定された場合には、前記ステップ620
に移行してステップモータ駆動信号をダウンシフト方向
に移動し、次にステップ622で現在パルス数PA から
“1”を減じて新たな現在パルス数PA として更新記憶
した後、前記ステップ636に移行する。
【0035】前記ステップ636では、前記ステップモ
ータ駆動信号を出力し、次にステップ638で電磁弁ソ
レノイド駆動信号を出力してから,メインプログラムに
復帰する。本実施例では、前記ステップ644のRレン
ジ相当変速パターン検索を除くステップ626,62
8,640で検索される変速パターンは、凡そ図6のよ
うな変速パターンに従って無段変速機の変速比が設定さ
れると考えてよい。即ち、各変速パターンにおける変速
比は,車速Vとスロットル開度THとを変数とする制御
マップ上で,それらの変数に従って検索すれば一意に設
定される。この図6を,車速Vを横軸,エンジン回転速
度Neを縦軸,スロットル開度THをパラメータとする
変速パターンの総合制御マップであると仮定すれば、原
点を通る傾き一定の直線は変速比が一定であると考えれ
ばよく、例えば変速パターンの全領域において最も傾き
の大きい直線は,車両全体の減速比が最も大きい,即ち
最大変速比CHiであり、逆に最も傾きの小さい直線は,
車両全体の減速比が最も小さい,即ちDレンジ最小変速
比CDLO であり、このDレンジ最小変速比よりも傾きの
大きい車両全体の減速比が2レンジ最小変速比C2LO
あると考えてよい。従って、具体的には前記Lレンジの
変速パターンは車速V及びスロットル開度THに関わら
ず前記最大変速比CHiに固定され、前記2レンジの変速
パターンは前記最大変速比CHiと2レンジ最小変速比C
2LO との間の領域で車速V及びスロットル開度THに応
じて設定される変速比の経時的軌跡からなる制御曲線と
なり、前記Dレンジの変速パターンは前記最大変速比C
HiとDレンジ最小変速比CDLO との間の領域で車速V及
びスロットル開度THに応じて設定される変速比の経時
的軌跡からなる制御曲線となろう。因みに、前記Dレン
ジにおけるDレンジ変速領域での通常加速走行時変速パ
ターンCPTN を図6に二点鎖線で記してみた。なお、車
速Vが前記変速比制御開始閾値V0 よりも小さい領域で
は,各シフトポジションのレンジに関係なく,変速比
(即ち変速パターン)は前記最大変速比CHiに固定され
る。つまり、この変速比制御開始閾値V0 は自動変速機
搭載車両で発生するクリープ状態の制御上限値であると
考えればよい。ここで、最大変速比CHiにおける変速比
制御開始閾値V0 のときのスロットル開度THを同じく
変速比制御開始閾値TH1 と定義し、この変速比制御開
始スロットル開度閾値TH1 において2レンジ最小変速
比C2LO となる車速Vを2レンジ最小変速比車速V21
同じく変速比制御開始スロットル開度閾値TH1 におい
てDレンジ最小変速比CDLO となる車速VをDレンジ最
小変速比車速VD1と定義し、これらの各レンジ最小変速
比車速V21,VD1を単にレンジ最小変速比車速Vj1とも
記すこととする。
【0036】但し、前記各ステップ626,628,6
40,644(実質的にはDレンジ変速パターン検索ス
テップ626及び2レンジ変速パターン検索ステップ6
40のみである)における変速パターン検索は、後述す
るサブルーチン(マイナプログラム)に従って実行さ
れ、具体的には低μ路面での急制動から車両停車,再発
進加速にかけては前記通常加速走行時変速パターンのよ
うな変速パターンにはならない。
【0037】それでは次に、前述のような無段変速機並
びにその変速制御装置を搭載する車両にあって,特に氷
雪路面や濡れたタイル路面等の低μ路面で発生するベル
ト−プーリ間の滑りの問題並びにそれを解決するための
本実施例の基本原理について、図7,図8を用いて簡潔
に説明する。こうした低μ路面では、タイヤと路面との
摩擦係数状態が小さいために,急ブレーキ等の急制動で
は車輪の実スリップ率は前記舵取り効果や制動距離を確
保可能な目標スリップ率,つまり10〜30%のスリッ
プ率の範囲を容易に越えて、更にタイヤのグリップ力そ
のものが低下する。そして、前記特開平4−25405
4号公報に記載される無段変速機の制御装置では当該無
段変速機の変速比は,その急制動開始直前の変速比,つ
まり比較的小さな変速比に固定され、運転者がブレーキ
ペダルの踏込みを解除して正に車輪が回転し始めるとき
に,この変速比固定制御が解除されるから、当該無段変
速機の変速比は大きな変速比に設定変更されることにな
る。
【0038】このとき、無段変速機の変速比は,固定さ
れている急制動開始時の変速比よりも大きな変速比に瞬
時に変更制御され、両者の偏差は,車両が完全に停車し
た状態から再び発進加速するときに最大となるであろ
う。つまり、図7に示すように変速比固定制御が開始さ
れた時点の変速比をCHOLDとし、例えばこのように低μ
路面での急制動により車両が完全に停車した状態から再
び発進加速した後,即ち変速比固定制御が解除された後
は,前記通常加速走行変速パターンCPTN に従って変速
比制御が実行されるとすると、前述のように低μ路面で
の急制動時に車輪は比較的早期にロックする或いはロッ
ク傾向になるために固定制御される変速比CHOLDは比較
的小さく、車両が停車後に再発進加速するとき,即ち変
速比固定制御が解除されるときの目標変速比CH.R は最
大変速比CHiに等しいから、両者の偏差(変速比偏差)
DiFFも極めて大きなものとなる。
【0039】従って、正に車両が発進しようとすると
き,即ち車輪が回転しようとするときに,この大きな変
速比偏差CDiFFを変更制御するために、例えば前記特開
昭61−105353号公報に記載される無段変速機の
制御装置では,前記図5に示す変速比制御演算処理によ
って入力トリガとしてステップモータ110の大きな回
転角が与えられる。これを,前記図3の油圧制御回路及
び図2の無段変速機構を簡潔に模式的に表した図8を用
いて説明する。このとき、前記変速比指令弁108のス
プール,即ちロッド182及び連結ピン185は、図8
の右方に大きく且つ速く移動されることになる。この移
動変位及び速度が前記変速比偏差CDiFFと等価であると
考えればよい。若し、このとき各プーリ16,26が十
分な回転速度で回転していれば、過渡的で且つ微視的な
変動を除いて,前記変速操作機構112のレバー178
は、前記変速制御弁106のスプール174との連結ピ
ン181を回動中心として図8に一点鎖線で示すように
回動し、同時に変速比伝達部材158,連結ピン183
及び駆動プーリ16の可動円錐部材22が図8の一点鎖
線で示すように移動して変速比の変更制御が実行される
から問題はない。しかし、未だ車輪(駆動輪)は回転し
ていないから,正に車両が発進しようとするそのときに
は駆動プーリ16も従動プーリ26も回転しておらず、
また前記ライン圧によるベルト挟持力によって駆動プー
リ16の可動円錐部材22が移動しないから当該駆動プ
ーリ16のプーリ溝幅は変化せず、これにより前記変速
操作機構112のレバー178は,前記変速比伝達部材
158との連結ピン183を回動中心として図8におい
て二点鎖線で示すように時計回りに大きく且つ速く回動
する。従って、変速操作機構112の連結ピン181及
び変速制御弁106のスプール172も,図8の右方,
即ち駆動プーリシリンダ室20の内圧ドレーン方向に大
きく且つ速く移動されるから、当該スプール172に形
成されているランド172bは,同図に二点鎖線で示す
ように当該変速制御弁106の出力ポート174bとド
レーンポート174aとを完全に連通状態にしてしま
う。従って、前述のように比較的小さな変速比に固定保
持されている状態で前記駆動プーリシリンダ室20の内
圧は比較的小さいのに、この変速比固定解除の瞬間に前
記当該駆動プーリシリンダ室20の油圧は更に大きくド
レーンされてその内圧が減少するために,当該駆動プー
リ16のベルト挟持力は大幅に低減し、このとき正に回
転移動しようとするベルト24が駆動プーリ16との間
で滑り、この滑りが瞬間的な衝撃として発生して,著し
い場合には車室内にまで伝達されてしまう。
【0040】この問題を解決するための一つの手段とし
て、前記変速比固定保持制御の解除を,各プーリ16,
26が十分な回転速度で回転しているときに実行するこ
とが挙げられる。即ち、このように各プーリ16,26
が十分な回転速度で回転している場合には、例えば前述
のように当該固定保持制御されている変速比CHOLDと当
該解除時の目標変速比CH.R との偏差CDiFFが比較的大
きく、そのため,前記入力トリガであるステップモータ
110の回転角が比較的大きくなっても駆動プーリ16
のプーリ溝幅は変化し、これに伴って駆動プーリ16の
可動円錐部材22も移動するから,前記変速操作機構1
12に連結された変速制御弁106のスプール174も
さほど大きく移動することはなく、従って駆動プーリシ
リンダ室20の内圧が大幅にドレーンされてそのベルト
挟持力が大幅に低減することもないためにベルトが滑る
のを抑制防止することができる。
【0041】従って、本実施例ではこのベルト−プーリ
間の滑りを抑制防止するために,各プーリが十分な回転
速度で回転しているための条件として、車両の前後方向
車速が或る所定車速値以上であることを前提とし、その
ために検出された車速検出値Vが当該所定車速値VH.R
以上となったときに,具体的には車両が一旦停車した後
の再発進加速中の車速検出値Vが当該所定車速値VH.R
以上となったときに、前記変速比固定保持制御を解除す
ることとした。但し、本実施例では,この所定車速値V
H.R を比較的大きな車速値に設定し、この車速値VH.R
で設定される目標変速比CH.R と前記固定保持制御され
ている変速比CHOLDとの偏差CDiFFが比較的小さくなる
ようにして、前記ベルトの滑りをより積極的に抑制防止
するようにした。
【0042】それでは、如何様な急制動から車両停車,
再発進加速時にも前記変速比固定保持制御並びにその解
除制御を行うことが正当であるかというと、一般に発進
加速性能を問われる高μ路面では,確かに発進後まで変
速比を比較的小さく固定保持していることは発進加速性
能を低下させることになろう。しかしながら、前述のよ
うな低μ路面では,発進時に2速ホールドするように、
むしろ,変速比を小さくしておくほうが車輪(駆動輪)
に掛かる回転駆動力(トルク)を抑制して当該駆動輪の
スリップを抑制することができるから、安定した発進加
速を行うことができる。このとき必要となるのは,当該
路面が低μ路面であるか否かの判定であるが、例えば前
述のようにベルト−プーリ間に滑りが発生するのは,路
面−タイヤ間のグリップ力による回転駆動力(路面回転
駆動力)と制動力との偏差から発生する駆動輪速の減速
度が或る程度以上大きくなり、その結果,当該駆動輪が
比較的短時間後にロックする或いはロック傾向になるた
めに前記固定保持制御される変速比が比較的小さい場合
だけであると考えれば、当該駆動輪の減速度αWjを,検
出された駆動輪速検出値VWjの微分値等から算出又は検
出し、この駆動輪速減速度検出値αWjが予め設定された
所定値αW0より大きい場合にのみ,前記変速比固定保持
制御並びにその解除制御を実行することにすれば、それ
は低μ路面における急制動でタイヤがロックする或いは
ロック傾向にあることを判定することと等価であり、前
記低μ路面での制動時に発生するベルトの滑りを確実に
抑制防止しながら,高μ路面での発進加速性能を確保す
ることができる。勿論、この高μ路面での急制動時に
は,前記特開平4−254054号公報に記載される変
速比固定制御並びにその解除制御を実行するようにして
もよい。
【0043】以上の発明原理に基づいて,実際の車両で
駆動プーリ20及び従動プーリ32による通常変速パタ
ーンにおける変速比制御並びに前記変速比固定保持制御
及びその解除制御を実行するための演算処理を図9に示
す。この演算処理は、前記無段変速機の制御装置である
マイクロコンピュータ300で所定時間(ΔT)毎のタ
イマ割込みによって実行される図5の変速比制御の演算
処理のうち,前記変速パターン検索ステップ626,6
28,640,644(実質的にはDレンジ変速パター
ン検索ステップ626及び2レンジ変速パターン検索ス
テップ640のみである)のマイナプログラムとして実
行される。なお、算出される車輪減速度には車両前方へ
の車輪加速度も包含されるため、ここでは両者を含めて
車輪加減速度αWjを算出するものとし、車両前方への車
輪加速度を正,車両後方への車輪減速度を負で表す。従
って、前記車輪減速度が或る所定値よりも大きいという
表現は,ここでは車輪加減速度速度αWjが或る所定値α
W0(負の値)よりも小さいと表記される。なお、この所
定値αW0は、低μ路面で車輪に大きな制動力が作用し、
その結果,当該車輪速が前記目標スリップ率を満足する
目標車輪速よりも減少するような場合,つまりロック傾
向を示す場合に、この車輪の減速度,つまり負の車輪加
減速度が下回る程度の値に設定してあり、通常の高μ路
面では,急制動を行っても負の車輪加減速度がこの所定
値を下回ることのない程度の大きさに設定してある。ま
た、図中の制御フラグFは,“1”のセット状態で前記
変速比固定保持制御,“0”のリセット状態で当該変速
比固定保持制御が解除された通常の変速パターンから変
速比制御が実行されていることを示す。また、図中の制
御フラグのセット・リセットでは,その都度,前記RA
M315への記憶更新が同時に実行される。
【0044】この図9の演算処理では、まずステップS
1で前記左駆動輪速センサ402,右駆動輪速センサ4
04から,夫々,各車輪速検出値(単に車輪速とも記
す)V Wjを読込む。次にステップS2に移行して、前記
マイクロコンピュータ300のRAM315に記憶され
ている最新の各車輪速前回値VWj0 を読込む。
【0045】次にステップS3に移行して、前記ステッ
プS1で読込まれた車輪速VWjとステップS2で読込ま
れた車輪速前回値VWj0 とを用いて,下記1式に従って
各車輪加減速度αWjを算出する。 αWj=(VWj0 −VWj)/ΔT ……… (1) 次にステップS4に移行して、前記ステップS3で算出
された各車輪加減速度αWjのうち,最も小さい車輪加減
速度αWjをセレクトローにより選択し、この車輪加減速
度αWjを最小車輪加減速度αW として算出設定する。
【0046】次にステップS5に移行して、前記図6に
示す各シフトポジションにおける変速比制御マップ検索
により,前記図5の演算処理のステップ508で読込ま
れたスロットル開度TH及びステップ510で読込まれ
た車速Vに応じた基準目標変速比CDiを算出設定する。
次にステップS6に移行して、前記マイクロコンピュー
タ300のRAM315に記憶されている最新の目標変
速比の前回値CD0を読込む。
【0047】次にステップS7に移行して、制御フラグ
Fが“1”のセット状態であるか否かを判定し、当該制
御フラグFが“1”のセット状態である場合にはステッ
プS8に移行し、そうでない場合にはステップS9に移
行する。前記ステップS9では、前記ステップS4で算
出設定された最小車輪加減速度αW が,絶対値が大きく
且つ負の値である予め設定された所定値αW0よりも大き
いか否かを判定し、当該最小車輪加減速度αW が所定値
αW0よりも大きい場合にはステップS10に移行し、そ
うでない場合にはステップS11に移行する。
【0048】前記ステップS10では、目標変速比CD
を基準目標変速比CDiに設定してからステップS12に
移行する。一方、前記ステップS11では,制御フラグ
Fを“1”にセットし、次いでステップS13に移行し
て,目標変速比CD を前記ステップS6で読込まれた前
回値CD0に設定してから、前記ステップS12に移行す
る。
【0049】また、前記ステップS8では、前記図5の
演算処理のステップ510で読込まれた車速Vが予め設
定された変速比固定解除車速VH.R 以上であるか否かを
判定し、当該車速Vが変速比固定解除車速VH.R 以上で
ある場合にはステップS14に移行し、そうでない場合
には前記ステップS13に移行する。前記ステップS1
4では,制御フラグFを“0”にリセットし、次いでス
テップS15に移行して,目標変速比CD を基準目標変
速比CDiに設定してから、前記ステップS12に移行す
る。
【0050】前記ステップS12では、前記ステップS
10,S13,S15で設定された今回目標変速比CD
を,前記マイクロコンピュータ300のRAM315に
前回値CD0として更新記憶してから、ステップS16に
移行する。前記ステップS16では、前記ステップS1
で読込まれた各車輪速検出値VWjを,前記マイクロコン
ピュータ300のRAM315に各車輪速検出値VWj0
として更新記憶してから、ステップS17に移行する。
【0051】前記ステップS17では、前記ステップS
10,S13,S15で設定された目標変速比CD に応
じた,ステップモータ110の目標パルス数PD を算出
してから、前記図5に示すメインプログラムに復帰す
る。次に、前記図9の演算処理の作用を図10を用いな
がら説明する。今、乾燥したアスファルト路面やコンク
リート路面等のようにタイヤとの間に十分な摩擦係数状
態が維持される高μ路面において、アクセルペダルを踏
込んで車両が定速状態若しくは加速状態で通常に走行し
ている状態を想定する。なお、シフトポジションは通常
走行に公的な前記Dレンジに維持されているものを想定
する。この状態では、ブレーキペダルの踏込みがなく、
その結果,ブレーキ液圧が増加していない状態では各車
輪への制動力が作用していないから、従って前記図9の
演算処理が実行される所定サンプリング時間毎に,ステ
ップS1〜S3で算出される各車輪加減速度αWjは零又
は正の値となり、車速一定であっても,直進走行から旋
回走行への移行等によって具体的に旋回内輪の車輪速が
減少している場合にも,このステップS1〜S3で算出
される各車輪加減速度αWjは零よりもやや小さい程度の
負の値となる。従って、前記図9の演算処理のステップ
S4で算出設定される最小車輪加減速度αW も,せいぜ
い零よりもやや小さい程度の負の値となる。この零より
もやや小さい程度の負の値である最小車輪加減速度α W
は,前記絶対値が大きく且つ負の値に設定された所定値
αW0よりも大きいはずであり、未だ制御フラグFは
“0”のリセット状態であるから、前記図9の演算処理
のステップS7からステップS9を経てステップS10
に移行し、前記ステップS5で算出設定された基準目標
変速比CDiが今回目標変速比CD に設定され、この目標
変速比CD をステップS12で前回値CD0としてRAM
315に更新記憶し、各車輪速VWjをステップS16で
車輪速前回値VWj0 としてRAM315に更新記憶し、
前記目標変速比CD に応じた目標パルス数PD がステッ
プ17で算出されて,メインプログラムに復帰するフロ
ーを繰り返す。
【0052】従って、このフローで算出設定される目標
変速比CD は通常の各レンジの変速比制御マップから車
速V及びスロットル開度THに応じて設定されるもので
あり、変速比を固定制御したり,或いはその固定制御を
解除制御したりしないから、通常走行に好適な変速比の
変更制御が,前記図5の演算処理によって実行され続け
る。
【0053】次にこの状態から,同じく高μ路面におい
てシフトポジションを変えることなく,ブレーキペダル
の踏込みもアクセルペダルの踏込みも解除した惰性走行
状態,つまりコースト走行状態に移行したとする。この
コースト走行状態では,所謂エンジンブレーキによって
各車輪にはバックトルクが制動力として作用し、その結
果,前記図9の演算処理が実行されるサンプリング時間
毎に,ステップS1〜S3で算出される各車輪加減速度
αWjのうち,ステップS4で選択された最小車輪加減速
度αW は或る負の値となるが、この最小車輪加減速度α
W が前記絶対値が大きく且つ負の値である所定値αW0
下回ることはなく、未だ制御フラグFは“0”のリセッ
ト状態であるから、前記ステップS7からステップ9を
経てステップS10に移行し、前記ステップS5で算出
設定された基準目標変速比CDiが今回目標変速比CD
設定され、この目標変速比CD をステップS12で前回
値CD0としてRAM315に更新記憶し、各車輪速VWj
をステップS16で車輪速前回値VWj0 としてRAM3
15に更新記憶し、前記目標変速比CD に応じた目標パ
ルス数PD がステップ17で算出されて,メインプログ
ラムに復帰するフローを繰り返す。
【0054】従って、このフローで算出設定される目標
変速比CD は通常の各レンジの変速比制御マップから車
速V及びスロットル開度THに応じて設定されるもので
あり、変速比を固定制御したり,或いはその固定制御を
解除制御したりしないから、通常走行に好適な変速比の
変更制御が,前記図5の演算処理によって実行され続け
る。
【0055】また、このような高μ路面で,シフトポジ
ションをダウンシフト方向,即ちDレンジから2レンジ
若しくはLレンジに移行し、前記無段変速機の変速パタ
ーンによる変速比を強制的に大きくして,エンジンブレ
ーキを各駆動輪へのより大きな制動力として作用させた
場合には、前記図7の演算処理が実行されるサンプリン
グ時間毎に,ステップS1〜S3で算出される各車輪加
減速度αWjのうち,ステップS4で選択された最小車輪
加減速度αW はより絶対値の大きなある負の値となる
が、この最小車輪加減速度αW が前記絶対値が大きく且
つ負の値である所定値αW0を下回ることはなく、また制
御フラグFが“1”にセットされることもないから、前
記ステップS7からステップS9,S10,S12を経
てメインプログラムに復帰するフローを繰り返し、その
結果,変速比を固定制御したり,或いはその固定制御を
解除制御したりしないから、通常走行に好適な変速比の
変更制御が,前記図5の演算処理によって実行され続け
る。
【0056】また、このような高μ路面では,例え急ブ
レーキによって各車輪に大きな制動力が作用しても、路
面とタイヤとの大きな摩擦係数状態により当該車輪速が
前記目標スリップ率を満足する目標車輪速を大きく下回
ることはないから、急制動を含む高μ路面での制動時に
は、前記図9の演算処理が実行されるサンプリング時間
毎に,ステップS1〜S3で算出される各車輪加減速度
αWjのうち,ステップS4で選択された最小車輪加減速
度αW は更に絶対値の大きな或る負の値となるが、この
最小車輪加減速度αW が前記絶対値が大きく且つ負の値
である所定値α W0を下回ることはなく、また制御フラグ
Fが“1”にセットされることもないから、前記ステッ
プS7からステップS9,S10,S12を経てメイン
プログラムに復帰するフローを繰り返し、その結果,変
速比を固定制御したり,或いはその固定制御を解除制御
したりしないから、通常走行に好適な変速比の変更制御
が,前記図5の演算処理によって実行され続ける。
【0057】以上より、高μ路面では,如何なる場合に
も無段変速機の変速比が固定制御されたり,またその固
定解除制御が実行されたりすることがないから、前記急
ブレーキ操作による急制動時を含めて,通常走行に好適
な変速比の変更制御が実行され続ける。勿論、この高μ
路面での急制動時には,前記特開平4−254054号
公報に記載される無段変速機の変速制御を実行して走行
安定性や発進加速性を向上するようにしてもよい。
【0058】一方、前記氷雪路面や濡れたタイル路面等
の低μ路面では,タイヤと路面との摩擦係数状態が小さ
いから、前記急ブレーキを含む制動時には車輪はロック
傾向を示し、その結果,当該車輪速は前記目標スリップ
率を満足する目標車輪速を下回り易くなる。そして、こ
のような低μ路面では,前述のように路面,即ち車体速
が車輪を回転させようとする路面回転駆動力に対して、
実際の車輪速は非常に増速しにくい状態であると考えら
れるから、前記車輪速が目標車輪速を下回り始めると,
少なくともアクセルペダルを踏込んでエンジンの回転駆
動力で積極的に車輪速を増速しない限り、当該車輪速は
減速を続け,比較的短時間後にロックする或いはロック
する直前の状態にまで至るものと考えられる。従って、
この低μ路面での制動時において,前記車輪速が急激に
減速し始めた最初の前記図9の演算処理で、前記ステッ
プS1〜S3で算出される各車輪加減速度αWjは絶対値
の相当に大きな負の値となろう。従って、前記図9の演
算処理のステップS4で算出設定される最小車輪加減速
度αW も,絶対値の相当に大きな負の値となる。ここ
で、制御フラグFは未だ“0”のリセット状態であると
すれば、前記図9の演算処理のステップS7からステッ
プS9に移行し、前記最小車輪加減速度αW が前記絶対
値が大きく且つ負の値に設定された所定値αW0を下回る
と,ステップS11に移行する。このステップS11で
は、制御フラグFを“1”にセットし、次いでステップ
S13で目標変速比CD を,前記ステップS6で読込ん
だ前回値CD0に設定し、この目標変速比CD をステップ
S12で前回値CD0としてRAM315に更新記憶し、
各車輪速VWjをステップS16で車輪速前回値VWj0
してRAM315に更新記憶し、前記目標変速比CD
応じた目標パルス数PD がステップ17で算出されて,
メインプログラムに復帰する。次いで、図9の演算処理
が実行される前記サンプリング時間後に,当該車両の車
速Vが前記変速比固定解除所定車速値VH.R よりも減速
しているとすると、当該演算処理のステップS1〜S3
で算出される各車輪加減速度αWj又はステップS4で選
択される最小車輪加減速度αW に関わらず,ステップS
7で制御フラグFが“1”のセット状態であるためにス
テップS8に移行し、その後,車速Vが更に減速してい
るとすればステップS13に移行するから、目標変速比
D を前記ステップS6で読込んだ前回値CD0,即ち当
該低μ路面で制動が開始された時点での目標変速比CD
(=固定変速比CHOLD)に設定し、この目標変速比CD
をステップS12で前回値CD0としてRAM315に更
新記憶し、各車輪速VWjをステップS16で車輪速前回
値VWj0 としてRAM315に更新記憶し、前記目標変
速比CD に応じた目標パルス数PD がステップ17で算
出されて,メインプログラムに復帰するフローが繰り返
される。その後、車速Vが変速比固定解除所定車速値V
H.R を上回らない限り,制御フラグFは“0”にリセッ
トされないから前記のフローが繰り返され、従ってその
間,つまり車速Vの減少に伴って前記図5の演算処理に
よって制御される変速比CD は,図10に仮想線で示す
ように前記制動開始時点での変速比,即ち固定変速比C
HOLDに固定制御されることになるから、前記特開平4−
254054号公報に記載されるのと同様に無段変速機
の変速比固定制御が実行される。なお、前述のようにこ
のような低μ路面の制動時では,車輪は比較的短時間で
ロックする或いはロック傾向になるから、図10に示す
ように当該固定保持制御されている固定変速比CHOLD
比較的小さな変速比となる。
【0059】然る後、車両の車速は更に減速して当該車
両は一旦,停車し、更に再発進加速する状況を想定す
る。少なくとも、この車両の停車時及びその停車に至る
までの時間では、前記図9の演算処理が実行されるサン
プリング時間毎に,当該車両の車速Vが前記変速比固定
解除所定車速値VH.R を上回ることはないから、当該演
算処理のステップS8からステップS13に移行して,
前記制動開始時点の変速比CHOLDの固定保持制御が実行
され続けている。そして、車両が再発進加速する際の,
前記図9の演算処理が実行されるサンプリング時にも、
当該車両の車速Vは,未だ前記比較的大きく設定された
変速比固定解除所定車速値VH.R を上回ることはなく、
しかも未だ制御フラグFは“1”のセット状態であるか
ら、当該演算処理のステップS7からステップS8に移
行し、更にステップS13に移行して目標変速比CD
前記ステップS6で読込んだ前回値CD0,即ち前記固定
変速比CHOLDに設定し、この目標変速比CD をステップ
S12で前回値CD0としてRAM315に更新記憶し、
各車輪速VWjをステップS16で車輪速前回値VWj0
してRAM315に更新記憶し、前記目標変速比CD
応じた目標パルス数P D がステップ17で算出されて,
メインプログラムに復帰する。次いで、図9の演算処理
が実行される前記サンプリング時間後に,当該車両の車
速Vが前記比較的大きく設定された変速比固定解除所定
車速値VH.R を上回らない限り,即ち車速Vが当該変速
比固定解除所定車速値VH.R まで復帰しない限り、当該
演算処理のステップS1〜S3で算出される各車輪加減
速度αWj又はステップS4で選択される最小車輪加減速
度αW に関わらず,ステップS7で制御フラグFが
“1”のセット状態であるためにステップS8を経てス
テップS13に移行するから、目標変速比CD を前記ス
テップS6で読込んだ前回値CD0,即ち当該低μ路面で
制動が開始された時点での目標変速比CD (=固定変速
比CHOLD)に設定し、この目標変速比CD をステップS
12で前回値CD0としてRAM315に更新記憶し、各
車輪速VWjをステップS16で車輪速前回値VWj0 とし
てRAM315に更新記憶し、前記目標変速比CD に応
じた目標パルス数PD がステップ17で算出されて,メ
インプログラムに復帰するフローが繰り返される。従っ
て、この間,固定変速比CHOLDは,図10に仮想線で示
すように前記制動開始時点の比較的小さな目標変速比C
D に固定保持されることになる。この低μ路面での車両
停車から再発進加速時には、無段変速機の目標変速比C
D は,結果的に比較的小さな目標変速比CHOLDに固定保
持されるから、所謂駆動輪に掛かる回転駆動力(トル
ク)は小さく,従って当該駆動輪は当該低μ路面でスリ
ップしにくくなるから、安定した発進加速を実現するこ
とができる。
【0060】そして、車両の車速Vが前記比較的大きく
設定された変速比固定解除所定車速値VH.R を上回った
最初の図9の演算処理が実行されるサンプリング時に
は、車両は未だ加速走行状態であるために,当該演算処
理のステップS1〜S3で算出される各車輪加減速度α
Wj又はステップS4で選択される最小車輪加減速度αW
に関わらず,ステップS7で制御フラグFが“1”のセ
ット状態であるためにステップS8に移行し、車速Vが
変速比固定解除所定車速値VH.R 以上であるためにステ
ップS14に移行して制御フラグFを“0”にリセット
し、次いでステップS15に移行して,前記ステップS
5で算出設定された基準目標変速比CDiが今回目標変速
比CD に設定され、この目標変速比CD をステップS1
2で前回値CD0としてRAM315に更新記憶し、各車
輪速VWjをステップS16で車輪速前回値VWj0 として
RAM315に更新記憶し、前記目標変速比CD に応じ
た目標パルス数PD がステップ17で算出されて,メイ
ンプログラムに復帰する。この目標変速比CD に応じて
算出された目標パルス数PD は,前記図5の演算処理に
よってステップモータ110に向けて出力されるから、
図10に実線の矢印で示すようにそれまで固定保持制御
されている固定変速比CHOLDから,その時点の車速V並
びにスロットル開度THに応じた目標変速比CD への偏
差を補正すべく、前記図3の油圧制御回路で変速比の変
更制御が実施される。このとき、各プーリは,車速Vの
増加に伴って十分な回転速度で回転しているから、例え
図10に仮想線で示す前記固定変速比CHOLDと目標変速
比CD との偏差CDiFFが大きくても,速やかに且つ滑ら
かに変速比,つまり前記プーリ比は変化し、その際に,
急激にベルトが滑ることはない。勿論、前記変速制御弁
106のスプール174は、実質的な変速比,つまりプ
ーリ比の変更制御を行うために,前記駆動プーリシリン
ダ室20の内圧と従動プーリシリンダ室32の内圧との
バランスと崩すといった意味合いから、図3の右方に移
動して当該駆動プーリシリンダ室20の内圧をドレーン
するのであるが、その作用は過渡的で且つ微視的である
ために当該駆動プーリ16のベルト挟持力が大幅に且つ
急激に減少してベルトが滑るといったことはない。ま
た、本実施例では,前述のように前記変速比固定解除所
定車速値VH.R を比較的大きな値に設定したために、当
該所定車速値VH.R における目標変速比CD は比較的小
さな変速比となるはずである。従って、図10に仮想線
で示す前記固定変速比CHOLDと固定保持制御解除時の目
標変速比CD との偏差CDi FFは比較的小さく、前記図3
の油圧制御回路で,ステップモータ110への制御量と
しての回転角入力トリガが小さいために変速操作機構1
12のレバー178の回動位相も比較的小さく、従っ
て,若しも駆動プーリ16の可動円錐部材22がスムー
ズに移動しない或いはできない状態で,前記レバー17
8が,変速比伝達部材158との連結ピン183を回動
中心として回動したとしても、前記変速制御弁106の
スプール174並びにその連結ピン181が,図3にお
いて急激に且つ大幅に右方に移動されることはないか
ら、前記駆動プーリシリンダ室20の内圧は急激に且つ
大幅にドレーンされることはなく、従ってベルト挟持力
が急激に且つ大幅に減少してベルト24が滑ることもな
い。
【0061】そして、その後の図9の演算処理が実行さ
れるサンプリング時間毎に,ステップS1〜S3で算出
される各車輪加減速度αWj又はステップS4で選択され
る最小車輪加減速度αW が,諸制動によって前記所定値
αW0を下回らない限り、未だ制御フラグFは“0”のリ
セット状態であるから、当該演算処理のステップS7か
らステップS9を経てステップS10に移行し、前記ス
テップS5で算出設定された基準目標変速比CDiが今回
目標変速比CD に設定され、この目標変速比C D をステ
ップS12で前回値CD0としてRAM315に更新記憶
し、各車輪速V WjをステップS16で車輪速前回値V
Wj0 としてRAM315に更新記憶し、前記目標変速比
D に応じた目標パルス数PD がステップ17で算出さ
れて,メインプログラムに復帰するフローを繰り返す。
【0062】従って、このフローで算出設定される目標
変速比CD は,図10に実線の矢印で示すように通常の
各レンジの変速比制御マップから車速V及びスロットル
開度THに応じて設定される,通常加速走行変速パター
ンC* PTN に従ったものであり、変速比を固定制御した
り,或いはその固定制御を解除制御したりしないから、
通常走行に好適な変速比の変更制御が,前記図5の演算
処理によって実行され続ける。
【0063】このような状況は,同じく低μ路面で、前
記シフトポジションをダウンシフト方向,即ちDレンジ
から2レンジ若しくはLレンジに移行し、前記無段変速
機の変速パターンによる変速比を強制的に大きくして,
エンジンブレーキを各駆動輪へのより大きな制動力とし
て作用させた場合にも同様に発生することが考えられ、
その結果,駆動輪の車輪速が前記目標スリップ率を満足
する目標車輪速を下回り、当該駆動輪がロックする或い
はロックする直前の状態に比較的短時間に移行した場合
にも、前記ど同様の変速比固定保持制御並びにその解除
制御が実行され、ベルトの滑りを抑制防止することが可
能となる。
【0064】また、類似する状況は、同じく低μ路面に
おいて前記Dレンジを除く走行レンジ,つまり2レンジ
やLレンジ等でアクセルペダルを踏込んだ走行状態から
コースト走行状態に移行した際にも発生することが考え
られる。即ち、このように変速比制御の変速パターンに
おける最小変速比が大きい場合には、アクセルペダルを
踏込んでいる状態,つまりスロットル開度が大きい状態
で走行し、然る後,コースト走行状態に移行してスロッ
トル開度が小さくなっても、無段変速機の変速比が比較
的大きいために前記ダウンシフト方向にシフトポジショ
ンを移行した場合と同様にエンジンブレーキによって各
駆動輪に大きな制動力が作用し、これにより駆動輪の車
輪速が前記目標スリップ率を満足する目標車輪速を下回
り、当該駆動輪がロックする或いはロックする直前の状
態に比較的短時間に移行するためである。このような場
合にも,本実施例による変速比固定保持制御並びにその
解除制御が実行されてベルトの滑りを抑制防止すること
が可能となる。
【0065】なお、前記実施例ではアンチスキッド制御
装置を搭載しない車両についてのみ本実施例の作用を説
明したが、実際にはアンチスキッド制御装置を搭載した
車両にあってもこれと同等の問題が発生する可能性はあ
り、前記図9の演算処理をアンチスキッド制御装置の作
動信号に組合わせて実行させることでほぼ同様に解決す
ることができる。また、この場合には前記車輪加減速度
の判定に合わせてスリップ率を判定要件として設定すれ
ば、より一層確実な構成となる。
【0066】また、本実施例では,ベルトの滑りをより
積極的に抑制防止するために、固定変速比CHOLDと目標
変速比CD との偏差CDiFFを小さくすべく,前記変速比
固定解除所定車速値VH.R を比較的大きな値に設定した
が、変速比の固定解除時にプーリが十分な回転速度で回
転していれば,前記偏差CDiFFの大きさに関わらず、変
速比,即ちプーリ比の変更制御は実行されるはずである
から、前記変速比固定解除所定車速値VH.R は,そのプ
ーリ回転速度の大きさに応じて適宜選定すればよい。
【0067】以上より本実施例は本発明のうち請求項1
に係る無段変速機の制御装置を実施化したものと考えら
れ、前記各駆動輪速センサ402,404及び図9の演
算処理のステップS1〜S4,S16が本発明の車輪減
速度検出手段に相当し、以下同様に,図9の演算処理の
ステップS6,S7,S9,S11〜S13が変速比固
定手段に相当し、前記車速センサ302及び図5の演算
処理のステップ510が車速検出手段に相当し、図9の
演算処理のステップS5,S8,S14,S15が変速
比固定解除手段に相当し、図9のマイナプログラムの演
算処理を含む図5の演算処理が変速比制御手段に相当す
る。
【0068】次に本発明の無段変速機の制御装置を実際
の車両に適用した第2実施例を図11,図12に基づい
て説明する。この第2実施例の基本的な車両構造は,後
述する無段変速油圧制御回路やコントローラであるマイ
クロコンピュータ等を含めて,本出願人が先に提案した
特開昭61−105353号公報に記載される無段変速
機の制御装置と同等かほぼ同等であり、このうち同等の
部分は夫々各構造の説明部位で同等であることを説明し
たのち,当該公報を参照するものとして詳細な説明を割
愛することもある。
【0069】まず、本実施例の無段変速機の動力伝達機
構は、前記第1実施例に相当する図2の無段変速機の動
力伝達機構と同等又はほぼ同等であり、同時にこれが前
記特開昭61−105353号公報に記載されるものと
同等かほぼ同等であるために、ここでは詳細な説明を割
愛する。また、本実施例の無段変速機の油圧制御装置
は、前記第1実施例に相当する図3の無段変速機の油圧
制御装置と同等又はほぼ同等であり、同時にこれが前記
特開昭61−105353号公報に記載されるものと同
等かほぼ同等であるために、ここでは詳細な説明を割愛
する。
【0070】また、本実施例の変速制御装置に相当する
コントローラの一部を構成するマイクロコンピュータ
は、前記第1実施例に相当する図4の電子制御装置(マ
イクロコンピュータ)300と同等又はほぼ同等であ
り、同時にこれが前記特開昭61−105353号公報
に記載されるものと同等かほぼ同等であるために、ここ
では詳細な説明を割愛する。
【0071】また、前記マイクロコンピュータ300に
より実行される通常の無段変速機の変速比制御は、前記
図5のフローチャートに示す基準演算処理に従って前記
第1実施例と同等又はほぼ同等に実施され、同時にこれ
が前記特開昭61−105353号公報に記載されるも
のと同等かほぼ同等であるために、ここでは詳細な説明
を割愛する。なお、前記2レンジ変速パターン検索に関
しては,前記第1実施例と同等である。従って、Rレン
ジを除く前記各レンジの変速パターンによる変速比制御
は凡そ図6に示す前記第1実施例と同等かほぼ同等であ
るから、その詳細な説明も割愛する。
【0072】それでは次に、前述のような無段変速機並
びにその変速制御装置を搭載する車両にあって,特に氷
雪路面や濡れたタイル路面等の低μ路面で発生する車輪
速(特に駆動輪速)の問題並びにそれを解決するための
本実施例の基本原理について、簡潔に説明する。前述の
ような問題を解決するためのもう一つの手段としては、
前記変速比固定保持制御の解除を,前記固定保持制御さ
れている変速比CHOLDと,現在時点における目標変速比
D ,つまり固定保持制御を解除する時点の目標変速比
H.R との偏差CDiFFが比較的小さいときに行うことが
挙げられる。このようにすれば、前記入力トリガである
ステップモータ110の回転角が比較的小さく,同時に
変速操作機構112に連結された変速制御弁106のス
プール174もさほど大きく移動することがないから、
従って駆動プーリシリンダ室20の内圧が大幅にドレー
ンされてそのベルト挟持力が大幅に低減することもない
ためにベルトが滑るのを抑制防止することができる。
【0073】従って、本実施例ではこのベルト−プーリ
間の滑りを抑制防止するために,前記固定保持制御され
ている変速比CHOLDと,固定保持制御を解除する時点の
目標変速比CH.R との偏差CDiFFが比較的小さいための
条件として、当該時点の目標変速比CD を算出設定する
ためのパラメータとして,前記車速V及びスロットル開
度THを用い、これらのパラメータに基づいて常時,基
準目標変速比CDiを算出設定し、この基準目標変速比C
Diと当該固定変速比CHOLD,つまり記憶されている変速
比の前回値CDOとの偏差CDiFFの絶対値が,予め設定さ
れた変速比固定解除所定偏差値ΔC以下であることを前
提とし、当該変速比偏差CDiFFの絶対値が変速比固定解
除所定偏差値ΔC以下となったときに,具体的には車両
が一旦停車した後の再発進加速中の基準目標変速比CDi
と変速比の前回値CDOとの偏差C DiFFの絶対値が変速比
固定解除所定偏差値ΔC以下となったときに、前記変速
比固定保持制御を解除することとした。但し、本実施例
では,この変速比固定解除所定偏差値ΔCを比較的小さ
な偏差値に設定し、前記変速比固定解除時の目標変速比
H.R と前記固定保持制御されている変速比CHOLDとの
偏差CDiFFが比較的小さくなるようにして、前記ベルト
の滑りをより積極的に抑制防止するようにした。また、
前述のように固定保持制御されている変速比CHOLDは比
較的小さな変速比であることから、この変速比固定解除
所定偏差値ΔCを比較的小さな偏差値に設定したこと
で,同時に変速比固定解除時点における前記基準目標変
速比CDiのパラメータである車速Vは比較的大きくなっ
ており、従って各プーリは十分な回転速度で回転してい
ると考えられるから,前記変速比の変更制御はより一層
円滑となってベルトの滑りがより積極的に抑制防止でき
るようにした。
【0074】また、前記第1実施例と同様に,駆動輪の
車輪減速度αW を算出又は検出し、この車輪減速度αW
が所定値αW0より大きくなった場合に,当該駆動輪は低
μ路面でロックする或いはロック傾向にあると判定する
ことで、前記変速比固定保持制御並びにその解除制御を
実行することにした。従って、前記第1実施例と同様
に,車両停車後の再発進加速時には安定した発進加速を
実現することができる。勿論、前記高μ路面での急制動
時には,前記特開平4−254054号公報に記載され
る変速比固定制御並びにその解除制御を実行するように
してもよい。
【0075】以上の発明原理に基づいて,実際の車両で
駆動プーリ20及び従動プーリ32による通常変速パタ
ーンにおける変速比制御並びに前記変速比固定保持制御
及びその解除制御を実行するための演算処理を図11に
示す。この演算処理は、前記無段変速機の制御装置であ
るマイクロコンピュータ300で所定時間(ΔT)毎の
タイマ割込みによって実行される図5の変速比制御の演
算処理のうち,前記変速パターン検索ステップ626,
628,640,644(実質的にはDレンジ変速パタ
ーン検索ステップ626及び2レンジ変速パターン検索
ステップ640のみである)のマイナプログラムとして
実行される。なお、算出される車輪減速度には車両前方
への車輪加速度も包含されるため、ここでは両者を含め
て車輪加減速度αWjを算出するものとし、車両前方への
車輪加速度を正,車両後方への車輪減速度を負で表す。
従って、前記車輪減速度が或る所定値よりも大きいとい
う表現は,ここでは車輪加減速度速度αWjが或る所定値
αW0(負の値)よりも小さいと表記される。なお、この
所定値αW0は、低μ路面で車輪に大きな制動力が作用
し、その結果,当該車輪速が前記目標スリップ率を満足
する目標車輪速よりも減少するような場合,つまりロッ
ク傾向を示す場合に、この車輪の減速度,つまり負の車
輪加減速度が下回る程度の値に設定してあり、通常の高
μ路面では,急制動を行っても負の車輪加減速度がこの
所定値を下回ることのない程度の大きさに設定してあ
る。また、図中の制御フラグFは,“1”のセット状態
で前記変速比固定保持制御,“0”のリセット状態で当
該変速比固定保持制御が解除された通常の変速パターン
から変速比制御が実行されていることを示す。また、図
中の制御フラグのセット・リセットでは,その都度,前
記RAM315への記憶更新が同時に実行される。
【0076】この図11の演算処理では、まずステップ
S21で前記左駆動輪速センサ402,右駆動輪速セン
サ404から,夫々,各車輪速検出値(単に車輪速とも
記す)VWjを読込む。次にステップS22に移行して、
前記マイクロコンピュータ300のRAM315に記憶
されている最新の各車輪速前回値VWj0 を読込む。
【0077】次にステップS23に移行して、前記ステ
ップS21で読込まれた車輪速VWjとステップS22で
読込まれた車輪速前回値VWj0 とを用いて,下記1式に
従って各車輪加減速度αWjを算出する。 αWj=(VWj0 −VWj)/ΔT ……… (1) 次にステップS24に移行して、前記ステップS23で
算出された各車輪加減速度αWjのうち,最も小さい車輪
加減速度αWjをセレクトローにより選択し、この車輪加
減速度αWjを最小車輪加減速度αW として算出設定す
る。
【0078】次にステップS25に移行して、前記図6
に示す各シフトポジションにおける変速比制御マップ検
索により,前記図5の演算処理のステップ508で読込
まれたスロットル開度TH及びステップ510で読込ま
れた車速Vに応じた基準目標変速比CDiを算出設定す
る。次にステップS26に移行して、前記マイクロコン
ピュータ300のRAM315に記憶されている最新の
目標変速比の前回値CD0を読込む。
【0079】次にステップS27に移行して、制御フラ
グFが“1”のセット状態であるか否かを判定し、当該
制御フラグFが“1”のセット状態である場合にはステ
ップS28に移行し、そうでない場合にはステップS2
9に移行する。前記ステップS29では、前記ステップ
S24で算出設定された最小車輪加減速度αW が,絶対
値が大きく且つ負の値である予め設定された所定値αW0
よりも大きいか否かを判定し、当該最小車輪加減速度α
W が所定値αW0よりも大きい場合にはステップS30に
移行し、そうでない場合にはステップS31に移行す
る。
【0080】前記ステップS30では、目標変速比CD
を基準目標変速比CDiに設定してからステップS32に
移行する。一方、前記ステップS31では,制御フラグ
Fを“1”にセットし、次いでステップS33に移行し
て,目標変速比CD を前記ステップS6で読込まれた前
回値CD0に設定してから、前記ステップS32に移行す
る。
【0081】また、前記ステップS28では、前記ステ
ップS25で算出設定された基準目標変速比CDiと,前
記ステップS26で読込まれた目標変速比の前回値CD0
との偏差の絶対値|CDi−CD0|が,前記変速比固定解
除所定偏差値ΔC以下であるか否かを判定し、当該変速
比偏差の絶対値|CDi−CD0|が変速比固定解除所定偏
差値ΔC以下である場合にはステップS34に移行し、
そうでない場合には前記ステップS33に移行する。
【0082】前記ステップS34では,制御フラグFを
“0”にリセットし、次いでステップS35に移行し
て,目標変速比CD を基準目標変速比CDiに設定してか
ら、前記ステップS32に移行する。前記ステップS3
2では、前記ステップS30,S33,S35で設定さ
れた今回目標変速比CD を,前記マイクロコンピュータ
300のRAM315に前回値CD0として更新記憶して
から、ステップS36に移行する。
【0083】前記ステップS36では、前記ステップS
1で読込まれた各車輪速検出値VWjを,前記マイクロコ
ンピュータ300のRAM315に各車輪速検出値V
Wj0 として更新記憶してから、ステップS37に移行す
る。前記ステップS37では、前記ステップS30,S
33,S35で設定された目標変速比CD に応じた,ス
テップモータ110の目標パルス数PD を算出してか
ら、前記図5に示すメインプログラムに復帰する。
【0084】次に、前記図11の演算処理の作用を図1
2を用いながら説明する。乾燥したアスファルト路面や
コンクリート路面等のようにタイヤとの間に十分な摩擦
係数状態が維持される高μ路面において、如何なる場合
にも無段変速機の変速比が固定制御されたり,またその
固定解除制御が実行されたりすることがなく、その結
果,急ブレーキ操作による急制動時を含めて,通常走行
に好適な変速比の変更制御が実行され続ける作用は、該
当するステップ番号が異なるだけで,前記第1実施例と
同等又はほぼ同等であるために,ここでは詳細な説明は
割愛する。勿論、この高μ路面での急制動時には,前記
特開平4−254054号公報に記載される無段変速機
の変速制御を実行して走行安定性や発進加速性を向上す
るようにしてもよい。
【0085】一方、前記氷雪路面や濡れたタイル路面等
の低μ路面では,タイヤと路面との摩擦係数状態が小さ
いから、前記急ブレーキを含む制動時には車輪はロック
傾向を示し、その結果,当該車輪速は前記目標スリップ
率を満足する目標車輪速を下回り易くなる。そして、こ
のような低μ路面では,前述のように路面,即ち車体速
が車輪を回転させようとする路面回転駆動力に対して、
実際の車輪速は非常に増速しにくい状態であると考えら
れるから、前記車輪速が目標車輪速を下回り始めると,
少なくともアクセルペダルを踏込んでエンジンの回転駆
動力で積極的に車輪速を増速しない限り、当該車輪速は
減速を続け,比較的短時間後にロックする或いはロック
する直前の状態にまで至るものと考えられる。従って、
この低μ路面での制動時において,前記車輪速が急激に
減速し始めた最初の前記図11の演算処理で、前記ステ
ップS21〜S23で算出される各車輪加減速度αWj
絶対値の相当に大きな負の値となろう。従って、前記図
11の演算処理のステップS24で算出設定される最小
車輪加減速度αW も,絶対値の相当に大きな負の値とな
る。ここで、制御フラグFは未だ“0”のリセット状態
であるとすれば、前記図11の演算処理のステップS2
7からステップS29に移行し、前記最小車輪加減速度
αW が前記絶対値が大きく且つ負の値に設定された所定
値αW0を下回ると,ステップS31に移行する。このス
テップS31では、制御フラグFを“1”にセットし、
次いでステップS33で目標変速比CD を,前記ステッ
プS36で読込んだ前回値CD0に設定し、この目標変速
比CD をステップS32で前回値CD0としてRAM31
5に更新記憶し、各車輪速VWjをステップS36で車輪
速前回値VWj0 としてRAM315に更新記憶し、前記
目標変速比CD に応じた目標パルス数PD がステップ3
7で算出されて,メインプログラムに復帰する。次い
で、図11の演算処理が実行される前記サンプリング時
間後に,当該車両の車速Vが前記変速比固定解除所定車
速値VH.R よりも減速しているとすると、当該演算処理
のステップS21〜S23で算出される各車輪加減速度
αWj又はステップS24で選択される最小車輪加減速度
αW に関わらず,ステップS27で制御フラグFが
“1”のセット状態であるためにステップS28に移行
し、その後,車速Vが更に減速しているとすればステッ
プS33に移行するから、目標変速比CD を前記ステッ
プS6で読込んだ前回値CD0,即ち当該低μ路面で制動
が開始された時点での目標変速比CD (=固定変速比C
HOLD)に設定し、この目標変速比CD をステップS32
で前回値CD0としてRAM315に更新記憶し、各車輪
速VWjをステップS36で車輪速前回値VWj0 としてR
AM315に更新記憶し、前記目標変速比CD に応じた
目標パルス数PD がステップ37で算出されて,メイン
プログラムに復帰するフローが繰り返される。その後、
前記ステップS25で毎回,算出設定される基準目標変
速比CDiと固定されている目標変速比の前回値CD0(=
固定変速比CHOLD)との偏差の絶対値|CDi−CD0
が,前記変速比固定解除所定偏差値ΔCを下回らない限
り,即ち或る程度車速Vが増速しない限り,制御フラグ
Fは“0”にリセットされないから前記のフローが繰り
返され、従ってその間,つまり車速Vの減少に伴って前
記図5の演算処理によって制御される変速比CD は,図
12に仮想線で示すように前記制動開始時点での変速
比,即ち固定変速比CHOLDに固定制御されることになる
から、前記特開平4−254054号公報に記載される
のと同様に無段変速機の変速比固定制御が実行される。
なお、前述のようにこのような低μ路面の制動時では,
車輪は比較的短時間でロックする或いはロック傾向にな
るから、図12に示すように当該固定保持制御されてい
る固定変速比CHOLDは比較的小さな変速比となる。
【0086】然る後、車両の車速は更に減速して当該車
両は一旦,停車し、更に再発進加速する状況を想定す
る。少なくとも、この車両の停車時及びその停車に至る
までの時間では、前記図11の演算処理が実行されるサ
ンプリング時間毎に,前記ステップS25で毎回,算出
設定される基準目標変速比CDiと固定されている目標変
速比の前回値CD0(=固定変速比CHOLD)との偏差の絶
対値|CDi−CD0|が,前記変速比固定解除所定偏差値
ΔCを下回ること,即ち当該基準目標変速比CDiを達成
するまで或る程度車速Vが増速することはないから、当
該演算処理のステップS8からステップS13に移行し
て,前記制動開始時点の変速比CHOLDの固定保持制御が
実行され続けている。そして、車両が再発進加速する際
の,前記図9の演算処理が実行されるサンプリング時に
も、前記ステップS25で算出設定される基準目標変速
比CDiと固定されている目標変速比の前回値CD0(=固
定変速比CHOLD)との偏差の絶対値|CDi−CD0|が,
前記変速比固定解除所定偏差値ΔCを下回る程度に車速
Vが増速することはなく、しかも未だ制御フラグFは
“1”のセット状態であるから、当該演算処理のステッ
プS27からステップS28に移行し、更にステップS
33に移行して目標変速比CD を前記ステップS26で
読込んだ前回値CD0,即ち前記固定変速比CHOLDに設定
し、この目標変速比CD をステップS32で前回値CD0
としてRAM315に更新記憶し、各車輪速VWjをステ
ップS36で車輪速前回値VWj0 としてRAM315に
更新記憶し、前記目標変速比CD に応じた目標パルス数
D がステップ37で算出されて,メインプログラムに
復帰する。次いで、図11の演算処理が実行される前記
サンプリング時間毎に,或る程度車速Vが増速して,前
記ステップS25で算出設定される基準目標変速比CDi
と固定されている目標変速比の前回値CD0(=固定変速
比CHOLD)との偏差の絶対値|CDi−CD0|が,前記変
速比固定解除所定偏差値ΔCを下回らない限り、当該演
算処理のステップS21〜S23で算出される各車輪加
減速度αWj又はステップS24で選択される最小車輪加
減速度αW に関わらず,ステップS27で制御フラグF
が“1”のセット状態であるためにステップS28を経
てステップS33に移行するから、目標変速比CD を前
記ステップS26で読込んだ前回値CD0,即ち当該低μ
路面で制動が開始された時点での目標変速比CD (=固
定変速比CHOLD)に設定し、この目標変速比CD をステ
ップS32で前回値CD0としてRAM315に更新記憶
し、各車輪速VWjをステップS36で車輪速前回値V
Wj0 としてRAM315に更新記憶し、前記目標変速比
D に応じた目標パルス数PD がステップ37で算出さ
れて,メインプログラムに復帰するフローが繰り返され
る。従って、この間,固定変速比CHOLDは,図12に仮
想線で示すように前記制動開始時点の比較的小さな目標
変速比CD に固定保持されることになる。この低μ路面
での車両停車から再発進加速時には、無段変速機の目標
変速比CD は,結果的に比較的小さな目標変速比CHOLD
に固定保持されるから、所謂駆動輪に掛かる回転駆動力
(トルク)は小さく,従って当該駆動輪は当該低μ路面
でスリップしにくくなるから、安定した発進加速を実現
することができる。
【0087】そして、その後,車両の車速Vが或る程度
増速して基準目標変速比CDiと固定されている目標変速
比の前回値CD0(=固定変速比CHOLD)との偏差の絶対
値|CDi−CD0|が前記変速比固定解除所定偏差値ΔC
以下となった最初の図11の演算処理が実行されるサン
プリング時には、車両は未だ加速走行状態であるため
に,当該演算処理のステップS21〜S23で算出され
る各車輪加減速度αWj又はステップS24で選択される
最小車輪加減速度αW に関わらず,ステップS27で制
御フラグFが“1”のセット状態であるためにステップ
S28に移行し、前記変速比偏差の絶対値|CDi−CD0
|が前記変速比固定解除所定偏差値ΔC以下であるため
にステップS34に移行して制御フラグFを“0”にリ
セットし、次いでステップS35に移行して,前記ステ
ップS25で算出設定された基準目標変速比CDiが今回
目標変速比CD に設定され、この目標変速比CD をステ
ップS32で前回値CD0としてRAM315に更新記憶
し、各車輪速VWjをステップS36で車輪速前回値V
Wj0 としてRAM315に更新記憶し、前記目標変速比
D に応じた目標パルス数PD がステップ37で算出さ
れて,メインプログラムに復帰する。この目標変速比C
D に応じて算出された目標パルス数PD は,前記図5の
演算処理によってステップモータ110に向けて出力さ
れるから、図12に実線の矢印で示すようにそれまで固
定保持制御されている固定変速比CHOLDから,その時点
の車速V並びにスロットル開度THに応じた目標変速比
D への偏差を補正すべく、前記図3の油圧制御回路で
変速比の変更制御が実施される。このとき、前記変速比
固定解除所定変速比偏差値ΔCを比較的小さな値に設定
しているから、この小さな変速比偏差値ΔCに相当す
る,図12に仮想線で示す前記固定変速比CHOLDと目標
変速比CD との偏差CDiFFが小さく、この小さな変速比
偏差CDiFFを補正すべき入力トリガであるステップモー
タ110の回転角入力が小さいために,変速操作機構1
12のレバー178の回動位相も比較的小さく、従っ
て,若しも駆動プーリ16の可動円錐部材22がスムー
ズに移動しない或いはできない状態で,前記レバー17
8が,変速比伝達部材158との連結ピン183を回動
中心として回動したとしても、前記変速制御弁106の
スプール174並びにその連結ピン181が,図3にお
いて急激に且つ大幅に右方に移動されることはないか
ら、前記駆動プーリシリンダ室20の内圧は急激に且つ
大幅にドレーンされることはなく、従ってベルト挟持力
が急激に且つ大幅に減少してベルト24が滑ることもな
い。勿論、前記変速制御弁106のスプール174は、
実質的な変速比,つまりプーリ比の変更制御を行うため
に,前記駆動プーリシリンダ室20の内圧と従動プーリ
シリンダ室32の内圧とのバランスと崩すといった意味
合いから、図3の右方に移動して当該駆動プーリシリン
ダ室20の内圧をドレーンするのであるが、その作用は
過渡的で且つ微視的であるために当該駆動プーリ16の
ベルト挟持力が大幅に且つ急激に減少してベルトが滑る
といったことはない。また、本実施例では,前記変速比
固定解除所定変速比偏差値ΔCを比較的小さな値に設定
したために、前記変速比固定制御の解除時には、各プー
リは,車速Vの増加に伴って十分な回転速度で回転して
いるから、例え図12に仮想線で示す前記固定変速比C
HOLDと目標変速比CD との偏差CDiFFが大きくても,速
やかに且つ滑らかに変速比,つまり前記プーリ比は変化
し、その際に,急激にベルトが滑ることはない。
【0088】そして、その後の図11の演算処理が実行
されるサンプリング時間毎に,ステップS21〜S23
で算出される各車輪加減速度αWj又はステップS24で
選択される最小車輪加減速度αW が,諸制動によって前
記所定値αW0を下回らない限り、未だ制御フラグFは
“0”のリセット状態であるから、当該演算処理のステ
ップS27からステップS29を経てステップS30に
移行し、前記ステップS25で算出設定された基準目標
変速比CDiが今回目標変速比CD に設定され、この目標
変速比CD をステップS32で前回値CD0としてRAM
315に更新記憶し、各車輪速VWjをステップS36で
車輪速前回値VWj0 としてRAM315に更新記憶し、
前記目標変速比CD に応じた目標パルス数PD がステッ
プ37で算出されて,メインプログラムに復帰するフロ
ーを繰り返す。
【0089】従って、このフローで算出設定される目標
変速比CD は,図12に実線の矢印で示すように通常の
各レンジの変速比制御マップから車速V及びスロットル
開度THに応じて設定される,通常加速走行変速パター
ンC* PTN に従ったものであり、変速比を固定制御した
り,或いはその固定制御を解除制御したりしないから、
通常走行に好適な変速比の変更制御が,前記図5の演算
処理によって実行され続ける。
【0090】このような状況は,同じく低μ路面で、前
記シフトポジションをダウンシフト方向,即ちDレンジ
から2レンジ若しくはLレンジに移行し、前記無段変速
機の変速パターンによる変速比を強制的に大きくして,
エンジンブレーキを各駆動輪へのより大きな制動力とし
て作用させた場合にも同様に発生することが考えられ、
その結果,駆動輪の車輪速が前記目標スリップ率を満足
する目標車輪速を下回り、当該駆動輪がロックする或い
はロックする直前の状態に比較的短時間に移行した場合
にも、前記ど同様の変速比固定保持制御並びにその解除
制御が実行され、ベルトの滑りを抑制防止することが可
能となる。
【0091】また、類似する状況は、同じく低μ路面に
おいて前記Dレンジを除く走行レンジ,つまり2レンジ
やLレンジ等でアクセルペダルを踏込んだ走行状態から
コースト走行状態に移行した際にも発生することが考え
られる。即ち、このように変速比制御の変速パターンに
おける最小変速比が大きい場合には、アクセルペダルを
踏込んでいる状態,つまりスロットル開度が大きい状態
で走行し、然る後,コースト走行状態に移行してスロッ
トル開度が小さくなっても、無段変速機の変速比が比較
的大きいために前記ダウンシフト方向にシフトポジショ
ンを移行した場合と同様にエンジンブレーキによって各
駆動輪に大きな制動力が作用し、これにより駆動輪の車
輪速が前記目標スリップ率を満足する目標車輪速を下回
り、当該駆動輪がロックする或いはロックする直前の状
態に比較的短時間に移行するためである。このような場
合にも,本実施例による変速比固定保持制御並びにその
解除制御が実行されてベルトの滑りを抑制防止すること
が可能となる。
【0092】なお、前記実施例ではアンチスキッド制御
装置を搭載しない車両についてのみ本実施例の作用を説
明したが、実際にはアンチスキッド制御装置を搭載した
車両にあってもこれと同等の問題が発生する可能性はあ
り、前記図9の演算処理をアンチスキッド制御装置の作
動信号に組合わせて実行させることでほぼ同様に解決す
ることができる。また、この場合には前記車輪加減速度
の判定に合わせてスリップ率を判定要件として設定すれ
ば、より一層確実な構成となる。
【0093】また、本実施例では,ベルトの滑りをより
積極的に抑制防止するために、各プーリが十分な回転速
度で回転するように車速が十分に増速しているべく,前
記変速比固定解除所定変速比偏差値ΔCを比較的小さな
値に設定したが、変速比の固定解除時に,固定変速比C
HOLDと目標変速比CD との偏差が或る程度小さければ,
プーリの回転速度に関わらず、駆動プーリシリンダ室2
0の内圧ドレーン量は小さくなってベルト挟持力は保持
されるはずであるから、前記変速比固定解除所定変速比
偏差値ΔCは,その内圧ドレーン量の大きさに応じて適
宜選定すればよい。
【0094】以上より本実施例は本発明のうち請求項2
に係る無段変速機の制御装置を実施化したものと考えら
れ、前記各駆動輪速センサ402,404及び図11の
演算処理のステップS21〜S24,S36が本発明の
車輪減速度検出手段に相当し、以下同様に,図11の演
算処理のステップS26,S27,S29,S31〜S
33が変速比固定手段に相当し、前記車速センサ30
2,スロットル開度センサ303及び図5の演算処理の
ステップ508,510が車速検出手段に相当し、図1
1の演算処理のステップS25が目標変速比演算手段に
相当し、図11の演算処理のステップS28,S34,
S35が変速比固定解除手段に相当し、図11のマイナ
プログラムの演算処理を含む図5の演算処理が変速比制
御手段に相当する。
【0095】次に前記各実施例による変速操作機構11
2の作用を,前記図3の油圧制御回路及び図2の無段変
速機構を簡潔に模式的に表した図13を用いて説明す
る。前述のように低μ路面での急制動時に車輪は比較的
早期にロックする或いはロック傾向になるために固定制
御される変速比CHOLDは比較的小さい。この変速比固定
保持制御時には変速制御弁106のスプール174は定
常状態,即ちそのランド174bが出力ポート172b
を閉塞している状態にあるとすれば、変速操作機構11
2のレバー178は図13に実線で示すように左上右下
の状態に保持されている。
【0096】さて、前記各実施例では,何れも変速比固
定解除制御時において、車速Vが或る程度大きくて各プ
ーリは十分な回転速度で回転しており、しかも固定変速
比C HOLDと目標変速比CD との偏差CDiFFが或る程度小
さいために、この変速比偏差CDiFFを変更制御するため
の制御量であるステップモータ110の回転角は或る程
度小さく、また駆動プーリ16の可動円錐部材22は,
自己の十分な回転速度によって滑らかに且つ速やかに移
動可能であるから、前記制御量であるステップモータ1
10の回転角が入力トリガとして与えられると,ロッド
182及び連結ピン185が図13の右方矢印方向にさ
ほど大きくなく移動し、また変速操作機構112のレバ
ー178は,前記変速制御弁106のスプール174と
の連結ピン181を回動中心として図13の仮想線の位
置まで回動し、同時に駆動プーリ可動円錐部材22及び
連結ピン183,変速比伝達部材158は,図13の左
方に速やか且つ滑らかに移動する。このとき、実質的に
は前記各プーリのシリンダ室の内圧バランスを崩して前
記駆動プーリ可動円錐部材22の移動を可能ならしめる
ために,変速制御弁106のスプール174は過渡的且
つ微視的に移動してその出力ポート172bとドレーン
ポート172aとを連通状態とし、これにより駆動プー
リシリンダ室20の内圧は若干ドレーンされるのである
が、その量はさほど大きくないために当該駆動プーリ1
6のベルト挟持力が大幅に低減してベルトが滑る虞れは
ない。
【0097】なお、前記各実施例は,本出願人が先に提
案した特開昭61−105353号公報に記載される無
段変速機の制御装置を基体としたものであるが、本発明
はこれ以外のベルト式無段変速機に広く展開可能である
ことは言うまでもない。また、前記各実施例では、変速
比制御コントローラをマイクロコンピュータで構築した
ものについてのみ詳述したが、これに限定されるもので
はなく、演算回路等の電子回路を組み合わせて構成して
もよいことは言うまでもない。
【0098】
【発明の効果】以上説明したように本発明の無段変速機
の制御装置によれば、車速検出値が所定値以上となって
プーリが十分な回転速度で回転している状態で変速比,
即ちプーリ比の変更制御が可能となった状態か、或いは
車速やスロットル開度等の入力物理量から得られる目標
変速比と固定変速比との偏差が所定値以下となって当該
目標変速比と固定変速比との偏差を変更制御するための
制御量である入力トリガが小さくなり,プーリのシリン
ダ室内圧のドレーン量が十分に小さくベルト挟持力が十
分に保持される状態で、低μ路面での変速比固定制御を
解除するために、ベルトがプーリとの間で滑るのを抑制
防止することができる。また、少なくとも車輪減速度が
所定値を越えた時点で低μ路面の制動を検出して変速比
の固定保持制御を開始し、車両が一旦停車後に再発進加
速するまでこの固定保持制御が維持されるために、当該
固定保持制御開始時点の比較的小さい変速比で車両は発
進加速して当該低μ路面での安定した発進加速を可能と
する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の無段変速機の制御装置の基本構成図で
ある。
【図2】無段変速機の動力伝達機構の一例を示す構成図
である。
【図3】無段変速機の油圧制御装置の一例を示す構成図
である。
【図4】無段変速機の変速比制御装置に相当するコント
ローラの一例を示す構成図である。
【図5】図4のコントローラで実行される通常の無段変
速機の変速比制御の演算処理の一例を示すフローチャー
トである。
【図6】図5の演算処理による変速パターンの説明図で
ある。
【図7】従来の変速比固定−解除制御による変速パター
ンの説明図である。
【図8】図7の変速パターンによる変速操作機構並びに
変速制御弁の作用説明図である。
【図9】本発明の無段変速機の制御装置の第1実施例を
示す変速比固定−解除制御の演算処理のフローチャート
である。
【図10】図9の演算処理による変速パターンの説明図
である。
【図11】本発明の無段変速機の制御装置の第2実施例
を示す変速比固定−解除制御の演算処理のフローチャー
トである。
【図12】図11の演算処理による変速パターンの説明
図である。
【図13】図10又は図12の変速パターンによる変速
操作機構並びに変速制御弁の作用説明図である。
【符号の説明】
16は駆動プーリ(プライマリプーリ) 18は固定円錐部材(固定プーリ片) 20は駆動プーリシリンダ室 22は可動円錐部材(可動プーリ片) 24はVベルト 26は従動プーリ(セカンダリプーリ) 29は無段変速機構(無段変速機) 30は固定円錐部材(固定プーリ片) 32は従動プーリシリンダ室 34は可動円錐部材(可動プーリ片) 106は変速制御弁 110はステップモータ 112は変速操作機構 300はマイクロコンピュータ 302は車速センサ(車速検出手段,入力物理量検出手
段) 303はスロットル開度センサ(入力物理量検出手段) 402は左駆動輪速センサ(車輪減速度検出手段) 404は右駆動輪速センサ(車輪減速度検出手段)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI F16H 59:70 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) F16H 9/00 F16H 61/12 F16H 59:44 F16H 59:48 F16H 59:54 F16H 59:70

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ベルトとプーリとの接触点半径を変化さ
    せることで変速比を変更するベルト式の無段変速機を車
    両に搭載し、その無段変速機の変速比を車速に基づいて
    制御する変速比制御手段を備えた無段変速機の制御装置
    において、車輪回転の減速度を検出する車輪減速度検出
    手段と、車両の前後方向車速を検出する車速検出手段と
    を備え、前記変速比制御手段は、前記車輪減速度検出手
    段で検出された車輪減速度検出値が所定車輪回転減速度
    値以上のときに、前記無段変速機の変速比をその時点の
    変速比に固定保持制御する変速比固定手段と、前記車速
    検出手段で検出された車速検出値が所定車速値以上のと
    きに、前記変速比固定手段による無段変速機の変速比固
    定保持制御を解除する変速比固定解除手段とを備えたこ
    とを特徴とする無段変速機の制御装置。
  2. 【請求項2】 ベルトとプーリとの接触点半径を変化さ
    せることで変速比を変更するベルト式の無段変速機を車
    両に搭載し、その無段変速機の変速比を車速に基づいて
    制御する変速比制御手段を備えた無段変速機の制御装置
    において、車輪回転の減速度を検出する車輪減速度検出
    手段と、車両に作用する入力又は車両で発生している物
    理量を検出する入力物理量検出手段とを備え、前記変速
    比制御手段は、前記車輪減速度検出手段で検出された車
    輪減速度検出値が所定車輪回転減速度値以上のときに、
    前記無段変速機の変速比をその時点の変速比に固定保持
    制御する変速比固定手段と、前記入力物理量検出手段で
    検出された入力物理量検出値に基づいて当該車両の無段
    変速機で達成すべき目標変速比を算出又は検出する目標
    変速比演算手段と、前記目標変速比演算手段で算出又は
    検出された無段変速機の目標変速比及び前記変速比固定
    手段で固定保持制御されている無段変速機の変速比の偏
    差が所定変速比偏差値以下のときに、前記変速比固定手
    段による無段変速機の変速比固定保持制御を解除する変
    速比固定解除手段とを備えたことを特徴とする無段変速
    機の制御装置。
JP1962294A 1994-02-16 1994-02-16 無段変速機の制御装置 Expired - Fee Related JP3057997B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP1962294A JP3057997B2 (ja) 1994-02-16 1994-02-16 無段変速機の制御装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP1962294A JP3057997B2 (ja) 1994-02-16 1994-02-16 無段変速機の制御装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH07229544A JPH07229544A (ja) 1995-08-29
JP3057997B2 true JP3057997B2 (ja) 2000-07-04

Family

ID=12004297

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP1962294A Expired - Fee Related JP3057997B2 (ja) 1994-02-16 1994-02-16 無段変速機の制御装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3057997B2 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6547692B1 (en) * 1999-06-12 2003-04-15 Robert Bosch Gmbh System for adjusting the tension of the continuous belt component of a CVT
JP4613225B2 (ja) * 2008-05-30 2011-01-12 ジヤトコ株式会社 無段変速機の制御装置

Also Published As

Publication number Publication date
JPH07229544A (ja) 1995-08-29

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US5056637A (en) System for controlling speed of an engine for a motor vehicle having a continuously variable transmission
EP0893626B1 (en) Transmission control system for and method of automotive vehicle with continuously variable automatic transmission
JP4119613B2 (ja) 自動変速機のロックアップ制御装置
US20080004141A1 (en) Device and method of controlling a belt-type continuously variable transmission
EP3054197B1 (en) Control device for stepped transmission mechanism and system
KR0162008B1 (ko) 차량용 직결 클러치의 슬립 제어장치
JPH07456B2 (ja) 無段変速機の変速制御装置
JP3339370B2 (ja) 無段変速機の制御装置
US7282009B2 (en) Control of lock-up clutch
JP2002243031A (ja) 自動変速機の変速制御装置
JP3057997B2 (ja) 無段変速機の制御装置
JPH07217713A (ja) 無段変速機の制御装置
JP3109362B2 (ja) 無段変速機の制御装置
JP2780448B2 (ja) 無段変速機の変速制御装置
JP3097432B2 (ja) 無段変速機の制御装置
JP4362943B2 (ja) 無段変速機の変速制御装置
JP3565122B2 (ja) 車両用自動変速機のクリープ力制御装置
JP3624425B2 (ja) 無段変速機の制御装置
JP3058003B2 (ja) 無段変速機の制御装置
JP3008777B2 (ja) 無段変速機の制御装置
JPH09217801A (ja) 無段自動変速機の変速制御装置
JP5691733B2 (ja) 車両用無段変速機のロックアップ制御装置
JP3451802B2 (ja) 車両用直結クラッチのスリップ制御装置
JP3555389B2 (ja) 無段変速機の制御装置
JP3430934B2 (ja) Vベルト式無段変速機の変速制御装置

Legal Events

Date Code Title Description
FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090421

Year of fee payment: 9

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090421

Year of fee payment: 9

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100421

Year of fee payment: 10

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees