JP3097432B2 - 無段変速機の制御装置 - Google Patents

無段変速機の制御装置

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JP3097432B2 JP1010494A JP1010494A JP3097432B2 JP 3097432 B2 JP3097432 B2 JP 3097432B2 JP 1010494 A JP1010494 A JP 1010494A JP 1010494 A JP1010494 A JP 1010494A JP 3097432 B2 JP3097432 B2 JP 3097432B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は無段変速機の制御装置に
関するものであり、特に氷雪路面や濡れたタイル路面等
のような低摩擦係数状態(この摩擦係数状態を単にμと
も記す)路面での舵取り効果や制動距離を確保可能とす
るのに好適な,無段変速機の変速比制御に関するもので
ある。
【0002】
【従来の技術】ベルトとプーリとの接触点半径を変化さ
せる,所謂プーリ比を変化させることで入出力の変速比
を変更するベルト式無段変速機にあっては、その性能
上,昨今のトルクコンバータ及び歯車伝達機構を用いた
自動変速機とその出力側との間に介装されているワンウ
エイクラッチのような動力伝達方向規制手段を介装しな
いのが好ましいとされている。ここでは、ベルト式無段
変速機より上流側,つまり機関(エンジン)側を入力
側、下流側,即ちプロペラシャフトやディファレンシャ
ル装置等の動力伝達系及び車輪側を出力側と定義する。
また、前記プーリ比の変更制御には通常流体圧,実質的
には油圧が用いられており、具体的にはピストン化され
た可動プーリ片(可動円錐板)を固定プーリ片(固定円
錐板)に対して相対移動させることで,両者の間に形成
されるプーリ溝の幅を変更制御する。
【0003】一般に、この種の無段変速機では、その変
速比を制御するための変速パターンは,車速と機関回転
数又は機関回転速度(以下,これらを総称して機関回転
状態とも記す)とに依存しており、具体的には例えば車
速とスロットルバルブの開度(以下,単にスロットル開
度とも記す)等とを変数として,各シフトポジションに
応じた変速比制御領域内で変速パターンを制御してい
る。つまり、前進走行時について述べれば、シフト操作
装置に設けられているシフトポジションのうち,通常走
行レンジ(一般にいうDレンジであり、以下,単にDレ
ンジと略称することもある)が選択されている場合に
は,通常走行に好適な通常走行変速比制御領域(つまり
Dレンジ変速比領域である)内で、またエンジンブレー
キレンジ(一般にいう2レンジ又はDsレンジ及びLレ
ンジ又は1レンジであり、以下,単に2レンジ又はLレ
ンジと略称することもある)が選択されている場合に
は,前記通常走行変速比制御領域よりも最小変速比の大
きいエンジンブレーキ変速比制御領域(つまり2又はL
レンジ変速比領域である)内で、前記車速及びスロット
ル開度に応じた無段変速機の変速パターンを制御する。
従って、アクセルペダルの踏込みを解除するとスロット
ル開度が低減するから、実際の機関回転状態に関わら
ず,無段変速機の変速パターンは或る一定の変速比に設
定され続けることも考えられる。なお、このようにスロ
ットル開度が低減し且つ車速が或る程度大きい場合を、
通常の変速パターンにおいてコースト状態,つまり惰性
走行状態に等しいと考えれば、前記アクセルペダル踏込
み解除状態の変速パターンで設定され続けると考えられ
る或る一定の変速比とは、各レンジの変速比領域におい
て,実際の車両の変速比における減速比が最も小さい状
態になる。
【0004】ここで、通常の乾燥したアスファルト路面
やコンクリート路面のような高μ路面において、エンジ
ンブレーキによる車速低減を目的とし、アクセルペダル
の踏込みを解除した状態で,前記Dレンジから2又はL
レンジにシフトポジションを移行した,所謂ダウンシフ
ト操作を行った場合を想定する。このようにアクセルペ
ダルの踏込みが解除されている,即ちスロットル開度が
低減している状態では、未だシフトポジションがDレン
ジにあるときには前記Dレンジ変速比領域の最も小さい
変速比が設定されている状態から、シフトポジションが
2又はLレンジに移行すると,前記2又はLレンジ変速
比領域の最も小さい変速比に強制的に変更設定される。
このとき、前記各レンジの変速比領域の最小変速比の設
定から、無段変速機の変速比は急激に大きくなるように
変更設定されることになる。これにより、車輪には機関
のバックトルク,即ちエンジンブレーキが大きな制動力
として作用するわけであるが、これを降坂走行中に実施
した場合には,車体に作用する重力加速度の影響で車体
速(即ち車速である)は減速されにくいのに対して,無
段変速機の急減速変速は比較的長期に持続されるから、
この間,無段変速機の入力軸の回転速度の変化幅が大き
く、これが過渡的な慣性トルクの変動となってベルトと
プーリとの間で滑りが発生する虞れがある。
【0005】このような問題を解決する無段変速機の変
速比制御に関する無段変速機の制御装置の一つに、例え
ば特開平4−203665号公報に記載されるものがあ
る。この無段変速機の制御装置では、シフト操作装置に
設けられているシフトポジションのうち,通常走行レン
ジ(Dレンジ)からエンジンブレーキレンジ(2又はL
レンジ)にダウンシフト操作された場合に、車体に作用
する加速度を検出し、この加速度検出値が,所定値を越
えるような場合には、当該ダウンシフト操作により強制
的に急激に大きくなるように変更設定される無段変速機
の変速比の変化速度を抑制しようとするものである。
【0006】この無段変速機の制御装置によれば、例え
ば降坂途中で,前述のような無段変速機の急減速変化速
度が抑制されるから、その時々刻々における変速比に応
じた前記プーリ比を達成する流体圧,油圧が確保されて
固定円錐板と可動円錐板との間でベルトの挟着力が確保
されると共に、入力軸の回転速度の変化幅が小さくなる
から、過渡的な慣性トルク変動が抑制されてベルトの滑
りが防止されるという利点がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記特
開平4−203665号公報に記載される無段変速機の
制御装置では、前記2又はLレンジ,即ちエンジンブレ
ーキレンジにおける車輪からの入力に対する無段変速機
の慣性トルクの大きさそのものを小さくすることはでき
ない。このことによる問題を、氷雪路面や濡れたタイル
路面等の低μ路面で子細に考察してみる。
【0008】このような低μ路面ではタイヤと路面との
間の摩擦係数状態も小さいから、当該低μ路面でタイヤ
に制動力が付与されると車輪はロックし易く、自動車工
学に言うスリップ率が大きくなる。現今のタイヤ特性で
はスリップ率が10〜30%程度の範囲内で操舵や駆動
・制動に関与するタイヤのグリップ力(摩擦力と等価で
ある)は確保されるから、これよりも車輪の実際のスリ
ップ率(以下,単に実スリップ率とも記す)が大きくな
ることは舵取り効果や制動距離の確保が困難になること
になる。逆論すれば、このタイヤのグリップ力を確保で
きる車輪のスリップ率の範囲を目標スリップ率とし、こ
の目標スリップ率に対して,車体速,即ち車速から算出
される当該目標スリップ率を満足する車輪速の範囲を目
標車輪速とすれば、この目標車輪速の範囲内に実際の車
輪速が納まっていることが,車両としての舵取り効果や
制動距離を確保できることになる。このとき、実スリッ
プ率が前記目標スリップ率の範囲を越えて大きいという
ことは、前述のようにタイヤのグリップ力そのものが低
下していると考えてもよいことになる。
【0009】このことを、前記通常走行レンジ(Dレン
ジ)からエンジンブレーキレンジ(2又はLレンジ)に
ダウンシフト操作して,無段変速機の変速比を強制的に
大きくし、これによりエンジンブレーキによる車輪への
制動力が大きくなっている状態にあてはめてみる。この
とき、エンジンブレーキによる車輪への制動力に抗し
て,当該車輪を回転させる入力は、アクセルペダルの踏
込みがない限り,あくまでも路面にグリップしているタ
イヤが走行慣性による車体速(つまり車速と等価であ
る)に追従するように車輪を回転させる入力のみであ
る。
【0010】しかし、このような無段変速機の実際の変
速及び動力伝達系の出力側端である車輪を,タイヤのグ
リップ力と車体速とで回転させる場合、この間,前述の
ようにスロットル開度が低減して当該無段変速機の変速
パターンが或る一定の変速比に設定され続けているため
に、この車輪を回転させる入力は無段変速機の入力側に
まで回転変動として伝達されてしまう。ここで、出力側
に前記ワンウエイクラッチのような動力伝達方向規制手
段を持たない無段変速機では、車輪を回転させるために
必要な車輪からの入力伝達系は,前記シフト操作によっ
て強制的に小さな減速比,即ち車輪は回りにくい状態に
移行されたと考えられ、しかもこの車輪からの入力伝達
系は,その末端に当該無段変速機の回転系が持つ慣性重
量を備えていると言える。即ち、車輪への入力は,各エ
ンジンブレーキレンジの最小変速比が与える大きな慣性
トルクに抗して当該車輪を回さなければならない。しか
も、車輪への入力はタイヤと路面とのグリップ力に依存
していて,前述のような低μ路面ではこのグリップ力そ
のものが小さく、更に実スリップ率は目標スリップ率を
越えて更にタイヤのグリップ力が小さくなっている。従
って、前記ダウンシフト操作による大きなエンジンブレ
ーキ,つまり車輪への大きな制動力によって減速し始め
た当該車輪は、十分なグリップ力を得,且つ前記無段変
速機の大きな慣性トルクに抗して回転しにくく、前記所
望する目標スリップ率の範囲に当該車輪速を維持又は増
速復帰させることが困難になる虞れがある。
【0011】また、これに類似する現象は同じく低μ路
面で、例えば前記エンジンブレーキレンジ、即ち2又は
Lレンジにおいて登坂走行した後に、エンジンブレーキ
レンジのまま平坦路面走行又は降坂走行に移行した場合
又はエンジンブレーキレンジにおいて運転者がアクセル
ペダルの踏込みを解除して急激にコースト走行状態に移
行した場合などにも発生する虞れがある。エンジンブレ
ーキレンジでの登坂走行中は車速一定であってもスロッ
トル開度が大きいために無段変速機の変速比は大きくな
るが、その一方でエンジンの回転駆動力が車輪を回転さ
せている。一方、平坦路面走行又は降坂走行に移行する
と車速一定であってもスロットル開度が小さいために無
段変速機の変速比は小さくなるが、その一方でエンジン
による車輪の回転駆動力は極端に低減する。このとき、
前記エンジンブレーキレンジでは、無段変速機の変速比
は小さくなるとしても、その最小変速比は前述のように
ある程度、大きいものであるから、タイヤのグリップ力
と車速とによる車輪回転駆動力(つまり路面が車輪を回
転させる駆動力であることから車輪への路面回転駆動力
とも記す)は、依然として無段変速機の大きな慣性トル
クに抗して作用しなければならず、低μ路面のようにタ
イヤのグリップ力が小さい状況下では、コースト走行に
移行した時点からむしろ車輪はロック傾向になってしま
う。
【0012】このことは、前述のエンジンブレーキによ
る車輪への制動力とは直接的に関連しないが、例えば運
転に熟練した運転者では,既知のようなアンチスキッド
制御装置を搭載しない通常の車両にあっても、ブレーキ
ペダル踏込みによる制動時に前記低μ路面において車輪
がロックする或いはロックする傾向,つまり車輪のスリ
ップ率が大きくなると、車輪に付与した制動力が大きす
ぎると判断し、必然的に所謂ポンピングブレーキ操作に
よって,前記アンチスキッド制御装置と同様の制動力の
増減操作を行うことにより、車輪速を目標車輪速まで増
速復帰させて前述の舵取り効果や制動距離を確保しよう
とする場合にも同様に発生する虞れがある。
【0013】これと同様の問題は、前記アンチスキッド
制御装置を搭載する車両にあって,当該アンチスキッド
制御装置により実スリップ率が目標スリップ率を上回っ
て増加した或いは増加しそうな車輪に対し、当該車輪へ
の制動力を減少した場合にも発生する可能性がある。本
発明はこれらの諸問題に鑑みて開発されたものであり、
特に低μ路面においても急激に減速した車輪速を,速や
かに車体速又は前記目標スリップ率を満足する車輪速ま
で復帰することを可能として、舵取り効果や制動距離を
確保することが可能な無段変速機の制御装置を提供する
ことを目的とするものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】本件発明者は前記諸問題
を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下の知見を得て
本発明を開発した。即ち、例えば無段変速機の入力側に
設けられたクラッチを車輪の急制動時に遮断すること
は、機関の停止、つまりエンジンストップを回避するた
めには有効である。しかし、機関と車輪との動力伝達系
を完全に遮断してしまったのでは、具体的に前記ダウン
シフト操作やエンジンブレーキレンジにおける急激なコ
ースト走行への移行等により増加したエンジンブレーキ
による各車輪への制動力に抗して、当該車輪を低μ路面
で回転させることは依然としてできない。そこで、機関
と車輪とは動力伝達系によって接続した状態に維持し
て、当該車輪(具体的には駆動輪である)の車輪速を目
標車輪速に維持又は増速復帰させる入力の一部に適用
し、同時にエンジンブレーキレンジの変速比制御領域を
制御し、通常のエンジンブレーキレンジにおける最小変
速比より小さい変速比へ移行する(アップシフトさせ
る)ことによって、路面回転駆動力の入力伝達系がもつ
無段変速機の慣性トルクを減少できることを見出した。
この際、問題となるのは、実際の変速比制御領域を変更
制御する制御量である。つまり、例えば意図的な制動で
あるブレーキペダルの踏込みを解除してアクセルペダル
の踏込みを行えば、機関の回転状態は上昇するから車輪
への回転駆動力はエンジンから得られ、路面回転駆動力
に対して前述のような制御を無段変速機側で行う必要は
ない。問題なのは、前記アンチスキッド制御装置によっ
て制動力が減少された場合をも含んで、アクセルペダル
を踏込むことができない状況、つまり車速一定であって
もスロットル開度が低減している状況での路面回転駆動
力に対する無段変速機の慣性トルク、これは即ち当該エ
ンジンブレーキレンジの変速比制御領域の最小変速比に
よって決定される。従って、車速が或る程度のレベルで
且つスロットル開度が低減している状況で決定される当
該エンジンブレーキレンジの変速比制御領域の最小変速
比をより小さくし、通常のエンジンブレーキレンジにお
ける最小変速比より小さい変速比にアップシフトさせる
ことにより、路面回転駆動力に対する無段変速機の慣性
トルクは小さくなる。また、エンジンブレーキによって
車輪速が制動させる如何なる状況下でも、このようにエ
ンジンブレーキレンジの変速比制御領域の最小変速比を
小さくする制御が適切かというと、高μ路面等ではタイ
ヤが十分なグリップ力を有しているから、この最小変速
比の減少制御がエンジンブレーキによる車輪への制動力
を不必要に小さくしてしまい、結果的にタイヤが十分な
グリップ力を有しているにも関わらず制動距離を確保で
きなくなる虞れがある。従って、例えば低μ路面におけ
るエンジンブレーキレンジの過大なエンジンブレーキ制
動力によって車輪が通常の回転状態から、前記目標スリ
ップ率を越えるような車輪速まで減速する比率、つまり
車輪回転減速度が或る所定車輪回転減速度値以上となっ
た場合にのみ、前記エンジンブレーキレンジの変速比制
御領域の最小変速比を小さくする制御を実施するものと
すればよい。このとき、各エンジンブレーキレンジの変
速比制御領域の最小変速比を小さくする目標値は、エン
ジンブレーキによる車輪への制動力をできるだけ小さく
し且つ路面回転駆動力に対する無段変速機の慣性トルク
をできるだけ小さくする目的から言えば、当該目標値を
通常走行レンジの変速比制御領域の最小変速比にするこ
とが望ましい。しかし、その一方で、車輪のスリップ率
が過大とならない範囲でエンジンブレーキによる車輪へ
の制動力をできるだけ確保したいという目的に則せば、
当該スリップ率が車体速と実際の車輪速との偏差に応じ
且つ制動時の両者の偏差は制動力及び路面の摩擦係数状
態に応じている事実から、前記車輪回転減速度に応じて
各エンジンブレーキレンジの変速比制御領域の最小変速
比を小さくする目標値を設定すればよいことになる。
【0015】一方、低μ路面における前記エンジンブレ
ーキによる車輪への過大な制動力に係る諸問題は、エ
ジンブレーキレンジが選択されているときのみと考えら
れる。つまり、通常走行レンジが選択されているときに
は、前述のように変速比制御領域の最小変速比をそれ以
上小さくすることができないし、また通常の前進走行状
態では、所謂Pレンジ、Nレンジ、Rレンジ等が選択さ
れることも考えられない(問題なのはNレンジである
が、無段変速機を含む自動変速機搭載車両においては、
通常の前進走行状態におけるNレンジの選択シフト操作
を推奨していない)。従って、前記各エンジンブレーキ
レンジの変速比制御領域の最小変速比を小さくする制御
は、エンジンブレーキレンジ以外のシフトポジションが
選択されたときに解除することとすればよい。
【0016】而して本発明のうち請求項1に係る無段変
速機の制御装置は図1の基本構成図に示すように、変速
シフトポジションに少なくとも通常走行レンジ及びエン
ジンブレーキレンジを備え、前記変速シフトポジション
に通常走行レンジが選択されたときには通常走行に好適
な通常走行変速比制御領域で無段変速機の変速パターン
を制御し且つ前記変速シフトポジションにエンジンブレ
ーキレンジが選択されたときには前記通常走行変速比制
御領域よりも最小変速比の大きいエンジンブレーキ変速
比制御領域で無段変速機の変速パターンを制御する変速
パターン制御手段を備えた無段変速機の制御装置におい
て、前記エンジンブレーキレンジが選択されていること
を検出するエンジンブレーキレンジ検出手段と、車輪回
転の減速度を検出する車輪回転減速度検出手段とを備
え、前記変速パターン制御手段は、運転者がアクセルペ
ダルの踏込みを解除している状態で、前記エンジンブレ
ーキレンジ検出手段がエンジンブレーキレンジ選択を検
出し且つ前記車輪回転減速度検出手段で検出された車輪
回転減速度検出値が所定車輪回転減速度値以上のとき
に、前記エンジンブレーキ変速比制御領域の最小変速比
を所定変速比まで小さく変更する変速パターン変更手段
を備えたことを特徴とするものである。
【0017】また、本発明のうち請求項2に係る無段変
速機の制御装置は、前記変速パターン制御手段が、前記
変速パターン変更手段によるエンジンブレーキ変速比制
御領域の変更を,前記エンジンブレーキレンジ以外の変
速シフトポジションが選択されたときに解除する変速パ
ターン変更解除手段を備えたことを特徴とするものであ
る。
【0018】また、本発明のうち請求項3に係る無段変
速機の制御装置は、前記変速パターン変更手段が、前記
エンジンブレーキ変速比制御領域の最小変速比が小さく
変更される所定変速比を,前記通常走行変速比制御領域
の最小変速比に設定することを特徴とするものである。
また、本発明のうち請求項4に係る無段変速機の制御装
置は、前記変速パターン変更手段が、前記エンジンブレ
ーキ変速比制御領域の最小変速比が小さく変更される所
定変速比を,前記車輪回転減速度検出手段で検出された
車輪回転減速度検出値に応じて設定することを特徴とす
るものである。
【0019】
【作用】本発明のうち請求項1に係る無段変速機の制御
装置では図1の基本構成図に示すように、前記無段変速
機の変速パターンに設けられた変速パターン変更手段
は、例えば前記ダウンシフト操作や2又はLレンジ、即
ちエンジンブレーキレンジにおいて急激なコースト走行
への移行時にあって、当該エンジンブレーキレンジ選択
がエンジンブレーキレンジ検出手段で検出され且つ前記
車輪減速度検出手段で検出された車輪回転減速度検出値
が所定車輪回転減速度値以上のときには、例えば車両は
低μ路面を走行中で、当該エンジンブレーキレンジにお
ける変速比制御領域の最小変速比が、エンジンブレーキ
による車輪への過大な制動力として作用していると判定
し、従って当該エンジンブレーキレンジの変速比制御領
域の通常の最小変速比を、所定変速比まで小さくする。
これにより、通常のエンジンブレーキレンジにおける最
小変速比より小さな変速比へアップシフトすることがで
き、無段変速機の入出力系の減速比が小さくなるから同
等の機関バックトルクによるエンジンブレーキの車輪へ
の制動力は低減し、同時にタイヤのグリップ力と車体速
とが車輪を回転駆動する力、即ち前記路面回転駆動力に
対する無段変速機の慣性トルクは小さくなるから、車輪
(駆動輪)の車輪速は、前記した目標スリップ率の範囲
を満足する目標車輪速に維持又は増速復帰し易くなり、
その結果、車両としての舵取り効果と制動距離とを確保
できる。これと同等の作用・効果は、前記アンチスキッ
ド制御装置を含んで、アクセルペダルの踏込みが小さく
又はなく、つまりスロットル開度が小さく且つ車輪への
制動力が減少された場合にも発現する。一方、前記高μ
路面等でタイヤが十分なグリップ力を有している場合に
は、前記エンジンブレーキレンジにおいてエンジンブレ
ーキによる大きな制動力が駆動輪に作用しても、当該車
輪の減速度は車体の減速度と同程度であり、この車体の
減速度は、前記低μ路面において車輪がロックする或い
はロック傾向である程度の当該車輪の減速度よりも小さ
いと考えられるから、前記所定車輪回転減速度値を高μ
路面における当該車体の最大減速度よりも大きな値に設
定することで、前記変速パターン変更手段によるエンジ
ンブレーキレンジの変速比制御領域の最小変速比を小さ
くする変更制御を回避し、これにより当該エンジンブレ
ーキレンジにおけるエンジンブレーキが車輪への制動力
として小さくなることはなく、同時のこの大きな制動力
を利して車両の制動距離を確保することができる。
【0020】また、本発明のうち請求項2に係る無段変
速機の制御装置では、前記変速パターン変更解除手段
が、前記エンジンブレーキ以外のシフトポジション,即
ちDレンジ(通常走行レンジ),Pレンジ,Rレンジ,
Nレンジが選択された場合に、前記変速パターン変更手
段によって変更されたエンジンブレーキレンジの変速比
制御領域の最小変速比を解除して通常の最小変速比に復
帰する。このとき、車両の駐停車時,即ちPレンジやN
レンジの選択時には、前記最小変速比変更制御を実施す
る必要がない。また、車両の後退時,即ちRレンジの選
択時にも、少なくとも前記車両前進時のエンジンブレー
キによる問題は発生しないから、前記最小変速比変更制
御を実施する必要がない。また、通常走行レンジが選択
されているときには,前述のようにその変速比制御領域
の最小変速比をそれ以上小さくすることができないか
ら、実質的に前記最小変速比変更制御を実施する必要が
ない。同時に、この通常走行レンジが車両の前進走行中
に前記エンジンブレーキレンジから移行選択された場合
には,前記エンジンブレーキレンジの変速比制御領域の
最小変速比変更制御によって車輪速が前記目標車輪速に
維持又は増速復帰され、又はより大きな車速を得る必要
があるとも考えられるから、これらの状況下で前記エン
ジンブレーキレンジの変速比制御領域の最小変速比を解
除して通常の最小変速比に復帰することは運転者の意識
に逆らうものではない。
【0021】また、本発明のうち請求項3に係る無段変
速機の制御装置では、前記変速パターン変更手段が、前
記エンジンブレーキ変速比制御領域の最小変速比が小さ
く変更される所定変速比を、前記通常走行変速比制御領
域の最小変速比に設定することとしたために、この所定
変速比までエンジンブレーキ変速比制御領域の最小変速
比が小さく変更設定されれば、通常のエンジンブレーキ
レンジにおける最小変速比より小さな変速比へアップシ
フトさせることができ、エンジンブレーキによる車輪へ
の制動力は可及的に小さくなり且つ路面回転駆動力に対
する無段変速機の慣性トルクも可及的に小さくなるか
ら、車輪は路面によって最も回転駆動され易くなり、前
記の諸効果を速やかに得ることができる。
【0022】また、本発明のうち請求項4に係る無段変
速機の制御装置は、前記変速パターン変更手段が、前記
エンジンブレーキ変速比制御領域の最小変速比が小さく
変更される所定変速比を,前記車輪回転減速度検出手段
で検出された車輪回転減速度検出値に応じて設定するこ
ととしたために、前述のように車輪のスリップ率が過大
とならない範囲で可及的にエンジンブレーキによる車輪
への制動力は確保され、これにより前記低μ路面におけ
る最良の制動距離を確保することが可能となる。
【0023】
【実施例】次に本発明の無段変速機の制御装置を実際の
車両に適用した第1実施例を図2〜図9に基づいて説明
する。この第1実施例の基本的な車両構造は,後述する
無段変速油圧制御回路やコントローラであるマイクロコ
ンピュータ等を含めて,本出願人が先に提案した特開昭
61−105353号公報に記載される無段変速機の制
御装置と同等かほぼ同等であり、このうち同等の部分は
夫々各構造の説明部位で同等であることを説明したの
ち,当該公報を参照するものとして詳細な説明を割愛す
ることもある。なお、本実施例では機関(即ちエンジ
ン)の回転駆動力によって回転駆動される駆動輪は前左
右輪である、所謂FF(フロントエンジンフロントドラ
イブ)車両に適用されたものとする。また、各車輪の制
動力は,当該車輪に設けられた流体圧ホイルシリンダに
よって供給されるものとし、各ホイルシリンダへの作動
流体圧は,ブレーキペダルに接続されたマスタシリンダ
内のマスタシリンダ圧が等分されるものとする。また、
基本的には前述のようなアンチスキッド制御装置を搭載
していないものとする。
【0024】図2は無段変速機の動力伝達機構を示すも
のであり、この無段変速機はフルードカップリング1
2,前後進切換機構15,Vベルト式無段変速機構2
9,差動装置56等を有しており、エンジン10の出力
軸10aの回転を所定の変速比及び回転方向で出力軸6
6及び68に伝達することができる。この無段変速機
は、フルードカップリング12(ロックアップ油室12
a,ポンプインペラ12b,タービンライナ12c,ロ
ックアップクラッチ12d等を有している)、回転軸1
3、駆動軸14、前後進切換機構15、駆動プーリ16
(固定円錐部材18,駆動プーリシリンダ室20(室2
0a,室20b),可動円錐部材22,溝22a等から
なる)、遊星歯車機構17(サンギヤ19,ピニオンギ
ヤ21,ピニオンギヤ23,ピニオンキャリア25,イ
ンターナルギヤ27等からなる)、Vベルト24、従動
プーリ26(固定円錐部材30,従動プーリシリンダ室
32,可動円錐部材34等からなる)、従動軸28、前
進用クラッチ40、駆動ギヤ46、アイドラギヤ48、
後進用ブレーキ50、アイドラ軸52、ピニオンギヤ5
4、ファイナルギヤ44、差動装置56(ピニオンギヤ
58,ピニオンギヤ60,サイドギヤ62,サイドギヤ
64等からなる)、出力軸66、出力軸68等から構成
されているが、これらのついての詳細な説明を省略す
る。なお、説明を省略した部分の詳細な構成については
本出願人が先に提案した前記特開昭61−105353
号公報を参照されたい。また、前記従動プーリ26のシ
リンダ室32の受圧面積は前記駆動プーリ16のシリン
ダ室20の各室20a,20bの受圧面積の約1/2程
度に設定してあり、当該従動プーリ26のシリンダ室3
2には後述する油圧制御装置から,共通作動油圧として
のライン圧が供給されており、駆動プーリ16のシリン
ダ室20の各室20a,20bに当該油圧制御装置から
制御された作動油圧が供給されて駆動プーリ16のV字
状プーリ溝の幅を拡狭変更して,Vベルト24と駆動プ
ーリ16との接触位置半径を変更制御すると、このVベ
ルト24に掛かるエンジン10からの回転駆動力に抗し
て当該Vベルト24と従動プーリ26とが滑らないよう
に挟持しながら,且つ駆動プーリ16のV字状プーリ溝
の幅の拡狭変更量に反比例するように当該従動プーリ2
6のV字状溝の幅を拡狭変更して当該従動プーリ26と
Vベルト24との接触位置半径を変更制御し、これによ
り所望する両プーリ16,26間のプーリ比を達成して
これを無段変速機の入出力間の変速比にするように構成
されている。
【0025】図3は本実施例の無段変速機の油圧制御装
置である。この油圧制御装置は、オイルポンプ101、
ライン圧調圧弁102、マニュアル弁104、変速制御
弁106、調整圧切換弁108、ステップモータ11
0、変速操作機構112、スロットル弁114、一定圧
調圧弁116、電磁弁118、カップリング圧調圧弁1
20、ロックアップ制御弁122等を有しており、これ
らは互いに図示のように接続されており、また前進用ク
ラッチ40、後進用ブレーク50、フルードカップリン
グ12、ロックアップ油室12a、駆動プーリシリンダ
室20及び従動プーリシリンダ室32とも図示のように
接続されている。これらの弁等についての詳細な説明は
前記特開昭61−105353号公報に記載されている
ものと同等かほぼ同等であるために,当該公報を参照さ
れるものとしてここでは割愛するが、前記マニュアル弁
104のスプール136の切換え停止位置には,Lレン
ジとDレンジとの間に所謂2レンジを介装して,計6つ
のポジションで当該スプール136が停止するものとし
た。この停止ポジション増加に係る当該油圧制御装置に
おける具体的な作動油圧の変化はなく、後述するマイク
ロコンピュータでの演算処理が若干異なる程度である。
なお、図3中の各参照符号は次の部材を示す。ピニオン
ギヤ110a、リザーバタンク130、ストレーナ13
1、油路132、リリーフ弁133、弁穴134、ポー
ト134a〜134e、スプール136、ランド136
a〜136b、油路138、一方向オリフィス139、
油路140、油路142、一方向オリフィス143、弁
穴146、ポート146a〜146g、スプール14
8、ランド148a〜148e、スリーブ150、スプ
リング152、スプリング154、変速比伝達部材15
8、油路164、油路165、オリフィス166、オリ
フィス170、弁穴172、ポート172a〜172
e、スプール174、ランド174a〜174c、スプ
リング175、油路176、オリフィス177、レバー
178、油路179、ピン181、ロッド182、ラン
ド182a,182b、ラック182c、ピン183、
ピン185、弁穴186、ポート186a〜186d、
油路188、油路189、油路190、弁穴192、ポ
ート192a〜192g、スプール194、ランド19
4a「194e、負圧ダイヤフラム198、オリフィス
199、オリフィス202、オリフィス203、弁穴2
04、ポート204a〜204e、スプール206、ラ
ンド206a,206b、スプリング208、油路20
9、フィルタ211、オリフィス216、ポート22
2、ソレノイド224、プランジャ224a、スプリン
グ225、弁穴230、ポート230a〜230e、ス
プール232、ランド232a,232b、スプリング
234、油路235、オリフィス236、弁穴240、
ポート240a〜240h、スプール242、ランド2
42a〜242e、油路243、油路245、オリフィ
ス246、オリフィス247、オリフィス248、オリ
フィス279、チョーク型絞り弁250、リリーフバル
ブ251、保圧弁252、チョーク型絞り弁253、油
路254、クーラ256、クーラ保圧弁258、オリフ
ィス259、切換検出スイッチ278である。
【0026】図4は前記ステップモータ110及びソレ
ノイド224の作動を制御する電子制御装置(マイクロ
コンピュータ)300を示すものである。このマイクロ
コンピュータ300は、入力インターフェース311、
基準パルス発生器312、中央演算処理装置(CPU)
313、リードオンリメモリ(ROM)314、ランダ
ムアクセスメモリ(RAM)315及び出力インターフ
ェース316を有しており、これらはアドレスバス31
9及びデータバス320によって連結されている。この
マイクロコンピュータには、エンジン回転速度センサ3
01、車速センサ302、スロットル開度センサ30
3、シフトポジションスイッチ304、タービン回転速
度センサ305、エンジン冷却水温センサ306、ブレ
ーキセンサ307、切換検出スイッチ298、左駆動輪
速(即ち前左輪速)センサ402及び右駆動輪速(即ち
前右輪速)センサ404からの信号が直接又は波形成形
器308,309,322,412及び414、及びA
D変換器310を介して入力され、一方、増幅器317
及び信号線317a〜317dを介してステップモータ
110へ信号が出力され、またソレノイド224へも信
号が出力されるが、これらの詳細な説明は前記特開昭6
1−105353号公報に記載されるものと同等又はほ
ぼ同等であるので,そちらを参照されるものとして割愛
する。なお、当該公報に記載されていないものとして
は、前述のようにシフトポジションとしてLレンジとD
レンジとの間に2レンジが新たに設けられているため、
前記シフトポジションスイッチ304からはこの2レン
ジを加えた計6つのポジション信号がマイクロコンピュ
ータ300に入力される。また、また左駆動輪速センサ
402及び右駆動輪速センサ404からは,夫々当該駆
動輪速に応じた正弦波出力信号が出力され、夫々,波形
整形器412,414を介して当該駆動輪速に応じたパ
ルス信号からなる車輪速検出値VWL,VWR(これらを統
括して各車輪速とも記し,その場合の符号はVWjとも記
す。従って、jはL又はRに相当する)が,夫々入力イ
ンターフェース311を介してマイクロコンピュータ3
00内に読込まれる。
【0027】そして、前記マイクロコンピュータ300
により前記無段変速機の変速比制御は図5のフローチャ
ートに示す基準演算処理に従って実行される。この演算
処理の基本的なロジック体系は前記特開昭61−105
353号公報に記載されるものとほぼ同等であるが、前
記シフトポジションに2レンジが付加された関係で,検
索される変速パターンとして当該2レンジに相当する変
速パターンが付加される。この変速比制御の基準演算処
理について簡単に説明すれば、図5の演算処理は所定時
間(ΔT)毎のタイマ割込みによって実行され、まずス
テップ502で前記シフトポジションスイッチ304か
らのシフトポジションを読込み、次いでステップ504
でシフトポジションがD,2,L,Rレンジであると判
定された場合にはステップ508に移行し、そうでない
場合にはステップ506に移行する。前記ステップ50
8では前記スロットル開度センサ303からの信号に基
づいてスロットル開度THを読込み、次いでステップ5
10で車速センサ302からの信号に基づいて車速Vを
読込み、次いでステップ512でエンジン回転速度セン
サ301からの信号に基づいてエンジン回転速度NE
読込み、次いでステップ514でタービン回転速度セン
サ305からの信号に基づいてタービン回転速度Nt
読込む。次にステップ516に移行して,前記エンジン
回転速度NEとタービン回転速度Nt との回転偏差ND
を算出し、次にステップ518で,予め記憶されている
制御マップに従ってロックアップ車速VON及びロップア
ップオフ車速VOFF を検索する。
【0028】次にステップ520に移行して、ロップア
ップフラグLUFが設定されている場合にはステップ5
44に移行し、そうでない場合にはステップ522に移
行する。前記ステップ544では、当該車速Vが前記ロ
ックアップオフ車速VOFF よりも小さい場合にステップ
540に移行し、そうでない場合にステップ546に移
行する。一方、前記ステップ522で当該車速Vが前記
ロックアップ車速VONよりも大きいと判定された場合に
はステップ524に移行し、そうでない場合には前記ス
テップ540に移行する。前記ステップ524では、前
記回転偏差NDから第1の目標値Nm1 を減じて回転目
標値偏差eを算出し、次にステップ526で予め記憶さ
れた制御マップから前記回転目標値偏差eに応じた第1
のフィードバックゲインG1 を検索し、次にステップ5
28で前記回転偏差ND が制御系切換閾値N0 よりも小
さい場合にはステップ530に移行し、そうでない場合
にはステップ538に移行する。前記ステップ530で
は、前回デューティ比に微小所定値αを加えて今回デュ
ーティ比を設定し、次にステップ532でこの今回デュ
ーティ比が100%より小さいと判定された場合にはス
テップ602に移行し、そうでない場合にはステップ5
34に移行する。前記ステップ534では、今回ディー
ティ比を100%に修正し、次にステップ536でロッ
プアップフラグLUFを設定して前記ステップ602に
移行する。一方、前記ステップ538では今回デューテ
ィ比を,前記回転目標値偏差e及び第1のフィードバッ
クゲインG1 を変数とする演算式に基づいて算出し、前
記ステップ602に移行する。一方、前記ステップ54
0では今回デューティ比を0%に設定し、次にステップ
542でロックアップフラグLUFを算出し、前記ステ
ップ602に移行する。また、前記ステップ546では
今回デューティ比を100%に設定して、前記ステップ
602に移行する。
【0029】前記ステップ602で、当該車速Vが変速
比制御開始閾値V0 よりも小さいと判定された場合はス
テップ604に移行し、そうでない場合はステップ62
4に移行する。前記ステップ604でスロットル開度T
Hがアイドル判定閾値TH0よりも小さいと判定された
場合はステップ610に移行し、そうでない場合にはス
テップ606に移行する。前記ステップ606では、今
回デューティ比を0%に設定し、次にステップ608で
ステップモータ110への目標パルスPD を最大変速比
パルスP1 に設定してステップ630に移行する。一
方、前記ステップ506では、今回デューティ比を0%
に設定して前記ステップ630に移行する。
【0030】一方、前記ステップ624ではシフトポジ
ションがDレンジである場合にステップ626に移行
し、当該Dレンジに相当する変速パターンから車速V及
びスロットル開度THに応じた変速比を検索して前記ス
テップ630に移行する。シフトポジションがDレンジ
でない場合にはステップ639に移行して、シフトポジ
ションが2レンジである場合にはステップ640に移行
し、当該2レンジに相当する変速パターンから車速V及
びスロットル開度THに相当する変速比を検索して前記
ステップ630に移行する。シフトポジションが2レン
ジでない場合にはステップ642に移行して、シフトポ
ジションがLレンジである場合にはステップ628に移
行し、当該Lレンジに相当する変速パターンから車速V
及びスロットル開度THに相当する変速比を検索して前
記ステップ630に移行する。またシフトポジションが
Lレンジでない場合にはステップ644に移行して、シ
フトポジションRレンジに相当する変速パターンから車
速V及びスロットル開度THに相当する変速比を検索し
て前記ステップ630に移行する。
【0031】一方、前記ステップ610で,前記切換検
出スイッチ298がオン状態である場合にはステップ6
12に移行し、そうでない場合にはステップ620に移
行する。前記ステップ612では前記回転偏差ND から
第2の目標値Nm2 を減じて回転目標値偏差eを算出
し、次にステップ614で予め記憶された制御マップか
ら前記回転目標値偏差eに応じた第2のフィードバック
ゲインG2 を検索し、次にステップ616で今回デュー
ティ比を,前記回転目標値偏差e及び第2のフィードバ
ックゲインG2 を変数とする演算式に基づいて算出し、
次にステップ618でステップモータ110への現在の
パルス数PA を“0”に設定してステップ636に移行
する。一方、前記ステップ630で現在パルス数PA
目標パルス数PD に等しいと判定された場合には前記ス
テップ636に移行する。また、前記ステップ630で
現在パルス数PA が目標パルス数PD より小さいと判定
された場合には、ステップ632に移行してステップモ
ータ駆動信号をアップシフト方向に移動し、次にステッ
プ634で現在パルス数PA に“1”を加えて新たな現
在パルス数PA として更新記憶した後、前記ステップ6
36に移行する。一方、前記ステップ630で現在パル
ス数PA が目標パルス数PD より大きいと判定された場
合には、前記ステップ620に移行してステップモータ
駆動信号をダウンシフト方向に移動し、次にステップ6
22で現在パルス数PA から“1”を減じて新たな現在
パルス数PA として更新記憶した後、前記ステップ63
6に移行する。
【0032】前記ステップ636では、前記ステップモ
ータ駆動信号を出力し、次にステップ638でソレノイ
ド駆動信号を出力してメインプログラムに復帰する。本
実施例では、前記ステップ644のRレンジ相当変速パ
ターン検索を除くステップ626,628,640で検
索される通常の変速パターンは、後述する変速パターン
変更制御による変速パターンを除いて,凡そ図6のよう
な変速パターンに従って無段変速機の変速比が設定され
ると考えてよい。即ち、各変速パターンにおける変速比
は,車速Vとスロットル開度THとを変数とする制御マ
ップ上で,それらの変数に従って検索すれば一意に設定
される。この図6を,車速Vを横軸,エンジン回転速度
Neを縦軸,スロットル開度THをパラメータとする変
速パターンの総合制御マップであると仮定すれば、原点
を通る傾き一定の直線は変速比が一定であると考えれば
よく、例えば変速パターンの全領域において最も傾きの
大きい直線は,車両全体の減速比が最も大きい,即ち最
大変速比CHiであり、逆に最も傾きの小さい直線は,車
両全体の減速比が最も小さい,即ちDレンジ最小変速比
DLO であり、このDレンジ最小変速比よりも傾きの大
きい車両全体の減速比が2レンジ最小変速比C2LO であ
ると考えてよい。従って、具体的には前記Lレンジの変
速パターンは車速V及びスロットル開度THに関わらず
前記最大変速比CHiに固定され、前記2レンジの変速パ
ターンは前記最大変速比CHiと2レンジ最小変速比C
2LO との間の領域で車速V及びスロットル開度THに応
じて設定される変速比の経時的軌跡からなる制御曲線と
なり、前記Dレンジの変速パターンは前記最大変速比C
HiとDレンジ最小変速比CDLO との間の領域で車速V及
びスロットル開度THに応じて設定される変速比の経時
的軌跡からなる制御曲線となろう。ここで、この変速パ
ターンは前記した変速パターン変更制御によって変更が
なされるものとし、その変更制御対象となる制御量には
通常の文字を付加する。例えば、前記Lレンジの変速パ
ターンである図6のLレンジは通常Lレンジと記し、同
図の最大変速比CHiは通常Lレンジ最小変速比CLLO
等価である。また、図6の2レンジ最小変速比は通常2
レンジ最小変速比C2LO と記し、同図の2レンジ変速領
域は通常2レンジ変速領域と記す。そして、前記通常L
レンジ最小変速比CLLO と等価である最大変速比C
Hiと,通常2レンジ最小変速比C2LO との偏差をL−2
レンジ変速比最大偏差ΔCL-2 と定義し、また、前記通
常Lレンジ最小変速比CLLO と等価である最大変速比C
Hiと,Dレンジ最小変速比CDLO との偏差をL−Dレン
ジ変速比最大偏差ΔCL-D と定義する。なお、車速Vが
前記変速比制御開始閾値V0 よりも小さい領域では,各
シフトポジションのレンジに関係なく,変速比(即ち変
速パターン)は前記最大変速比CHiに固定される。つま
り、この変速比制御開始閾値V0 は自動変速機搭載車両
で発生するクリープ状態の制御上限値であると考えれば
よい。ここで、最大変速比CHiにおける変速比制御開始
閾値V0 のときのスロットル開度THを同じく変速比制
御開始閾値TH1 と定義し、この変速比制御開始スロッ
トル開度閾値TH1 において2レンジ最小変速比C2LO
となる車速Vを通常2レンジ最小変速比車速V21,同じ
く変速比制御開始スロットル開度閾値TH1 においてD
レンジ最小変速比CDLO となる車速VをDレンジ最小変
速比車速VD1と定義し、これらの各レンジ最小変速比車
速V21,VD1を単に通常レンジ最小変速比車速Vj1とも
記すこととする。但し、これらのクリープ状態の制御上
限値に関しては,後述する車輪速確保の制御に対応すべ
く適宜に選定されるべきものであって、例えば低μ路面
において車輪速が確保できないような場合には当該クリ
ープ状態制御上限値を排除することも考えられる。
【0033】それでは次に、前述のような無段変速機並
びにその変速制御装置を搭載する車両にあって,特に氷
雪路面や濡れたタイル路面等の低μ路面で発生する車輪
速(特に駆動輪速)の問題並びにそれを解決するための
本実施例の基本原理について、簡潔に説明する。前記2
レンジやLレンジをエンジンブレーキレンジと称するこ
とにすれば、このエンジンブレーキレンジの変速領域の
通常最小変速比,即ち通常Lレンジ最小変速比CLLO
通常2レンジ最小変速比C2LO は、少なくともDレン
ジ,つまり通常走行レンジの最小変速比CDLO よりも車
両減速比として大きい。従って、コースト走行状態のよ
うにアクセルペダルの踏込みがないなど,スロットル開
度が低下している状況でこれらのエンジンブレーキレン
ジが選択されている状況下では、通常走行レンジにおけ
るコースト走行状態よりもエンジンブレーキによる駆動
輪への制動力が大きいことになる。このように大きなエ
ンジンブレーキによる駆動輪への制動力に抗して,当該
駆動輪を回転させる入力は、タイヤのグリップ力と車体
速とによる前記路面回転駆動力のみである。
【0034】一方、前記エンジンブレーキレンジの通常
最小変速比に変速比制御されている無段変速機は、前記
路面回転駆動力に対して通常走行レンジの最小変速比よ
りも大きな慣性トルクを有していると言える。つまり、
路面回転駆動力は、この大きな慣性トルクに抗して駆動
輪を回転させなければならない。ところが、前述のよう
に低μ路面ではタイヤのグリップ力そのものが小さく、
更に実スリップ率は目標スリップ率を越えて更にタイヤ
のグリップ力が小さくなっているから、前記路面回転駆
動力そのものが非常に小さいことになる。従って、この
ようなエンジンブレーキレンジの通常最小変速比に変速
比制御されている無段変速機を搭載した車両では、低μ
路面での駆動輪の車輪速を、前記所望する目標スリップ
率を満足する目標車輪速の範囲に維持又は増速復帰させ
ることが困難になる虞れがある。これは、前述したダウ
ンシフト操作時にもエンジンブレーキレンジにおける急
激なコースト走行への移行時にも、アクセルペダルの踏
込みが小さく又はなくてエンジンの回転駆動力が、車輪
への十分な回転駆動力として伝達されない場合にはすべ
て発生し得る懸念である。また、ブレーキペダルの踏込
みによる意図的な制動時や前記アンチスキッド制御装置
の作動時にも、前記駆動輪の車輪速が前記目標スリップ
率を満足する目標車輪速よりも小さくなった場合には、
同様に発生する可能性がある。
【0035】これを総合的に図7を用いて説明する。同
図において前記無段変速機の慣性トルクを車軸回転に必
要な車軸トルクに換算したものをTFCVTとして表す。ま
た、各タイヤ−路面間静的摩擦係数状態μにおける路面
回転駆動力を車軸回転に必要な車軸トルクに換算したも
のをTμとして表し、具体的にはμに各摩擦係数状態が
代入される。同図から明らかなように,路面μが小さく
なると、路面回転駆動力Tμも小さくなる。一方、無段
変速機の慣性トルクTFCVTは,その変速比が小さくなる
ほど小さくなる。ここで最も小さな無段変速機の慣性ト
ルクTFCVTとなるのは前記Dレンジ(通常走行レンジ)
の最小変速比が設定されている場合であり、前記2レン
ジ(エンジンブレーキレンジ)の最小変速比が設定され
ている場合の当該無段変速機の慣性トルクTFCVTは,こ
れに比して相当に大きい。ここで、路面μが0.80程
度である場合の路面回転駆動力T0.80曲線は、無段変速
機の慣性トルクTFCVT曲線を下回ることはないから、こ
のような高μ路面で無段変速機の変速比が各エンジンブ
レーキレンジの最小変速比に設定制御されていても,駆
動輪がロックすることはない。ところが、路面μが0.
30程度である場合の路面回転駆動力T0.30曲線は、無
段変速機の慣性トルクTFCVT曲線のうち,やや変速比の
大きい点で当該無段変速機の慣性トルクTFCVT曲線を下
回り、更に路面μが0.30程度である場合の路面回転
駆動力T0.30曲線は、無段変速機の慣性トルクTFCVT
線のうち,相当に変速比の小さな点で当該無段変速機の
慣性トルクTFCVT曲線を下回る。このように路面回転駆
動力Tμ曲線が無段変速機の慣性トルクTFCVT曲線を下
回る領域では、エンジンからの回転駆動力が増加しない
限り,当該駆動輪はロックすることになる。
【0036】そこで、機関と車輪とは動力伝達系によっ
て接続した状態に維持して、当該車輪(具体的には駆動
輪である)の車輪速を目標車輪速に維持又は増速復帰さ
せる入力の一部に適用し、同時にエンジンブレーキレン
ジの変速領域の最小変速比、具体的にはLレンジ最小変
速比CLLO 及び2レンジ最小変速比C2LO をより小さな
変速比(ここではこれらを代表して低μ路面L、2レン
ジ最小変速比CLFLOと記す)に変更設定することで、
常のエンジンブレーキレンジにおける最小変速比より小
さな変速比へアップシフトして、エンジンブレーキによ
る車輪への制動力を小さくすると共に、路面回転駆動力
に対する無段変速機の慣性トルクを小さくして駆動輪が
路面及び車体速によって回転し易い状況を構成する。
【0037】ここで、前記低μ路面L,2レンジ最小変
速比CLFLOは、少なくとも前記路面μに応じた駆動輪ロ
ック領域よりも小さな変速比に設定する必要があり、例
えば図7に則れば路面μが0.30程度の場合の駆動輪
ロック領域よりも少なくとも小さい車輪ロック回避最小
変速比C0.30LOと、路面μが0.10程度の場合の駆動
輪ロック領域によりも少なくとも小さい車輪ロック回避
最小変速比C0.10LOとでは、低μ路面L,2レンジ最小
変速比CLFLOは異なっていてもよい。本実施例では,全
ての安全を考慮し且つエンジンブレーキによる駆動輪へ
の制動力を可及的に小さくすると共に,路面回転駆動力
に対する無段変速機の慣性トルクを可及的に小さくする
ために、低μ路面L,2レンジ最小変速比CLFLOをDレ
ンジ最小変速比CDLO に設定する。なお、所定の制動力
に対する車輪の減速度の大きさは路面μの減少に応じて
大きくなるはずであるから、車輪ロック回避最小変速比
CμLOは車輪の減速度に基づいて算出可能であり、この
車輪ロック回避最小変速比CμLOを低μ路面L,2レン
ジ最小変速比CLFLOに設定してもよい。また、この低μ
路面L,2レンジ最小変速比CLFLOは,路面回転駆動力
が無段変速機の慣性トルクに抗して駆動輪を回転可能と
することを最優先するものであるから、2レンジ又はL
レンジの何れのエンジンブレーキレンジが選択されてい
るかは,実質的には問題ではない。
【0038】また、エンジンブレーキによって車輪速が
制動される如何なる状況下でも,このようにエンジンブ
レーキレンジの変速比制御領域の最小変速比を小さくす
る制御が適切かというと,高μ路面等ではタイヤが十分
なグリップ力を有しているから、この最小変速比の減小
制御がエンジンブレーキによる車輪への制動力を不必要
に小さくしてしまい、結果的にタイヤが十分なグリップ
力を有しているにも関わらず制御距離を確保できなくな
る虞れがある。従って、例えば低μ路面におけるエンジ
ンブレーキレンジの過大なエンジンブレーキ制動力によ
って車輪が通常の回転状態から,前記目標スリップ率を
越えるような車輪速まで減速する比率、つまり車輪回転
減速度が或る所定車輪回転減速度値以上となった場合に
のみ、前記エンジンブレーキレンジの変速比制御領域の
最小変速比を小さくする制御を実施するものとすればよ
い。
【0039】また、前記2レンジ及びLレンジであるエ
ンジンブレーキレンジ以外のシフトポジションでは、前
記エンジンブレーキによる駆動輪への制動力の大きさの
問題も,無段変速機の慣性トルクの大きさの問題も、発
生しない若しくは回避する余地がないという事実から、
具体的にDレンジ,Pレンジ,Rレンジ,Nレンジが選
択された場合には前記最小変速比の変更設定制御を解除
するものとした。
【0040】以上の発明原理に基づいて,前記図5の演
算処理で検索され且つ図6の変速パターンと異なる変速
パターンを算出設定するための演算処理を図8に示す。
この演算処理は、前記無段変速機の制御装置であるマイ
クロコンピュータ30で所定時間(ΔT)毎のタイマ割
込みによって実行され、ここで算出設定された変速パタ
ーンは前記RAM315に記憶され、当該RAM315
に記憶されている最新の変速パターンに従って前記図5
の演算処理で変速比制御がなされる。従って、図8の演
算処理は,図5の演算処理よりも優先順位が高いと考え
ればよい。ここで、算出される車輪減速度には車両前方
への車輪加速度も包含されるため、ここでは両者を含め
て車輪加減速度αWjを算出するものとし、車両前方への
車輪加速度を正,車両後方への車輪減速度を負で表す。
従って、前記車輪減速度が或る所定値よりも大きいとい
う表現は,ここでは車輪加減速度αWjが或る所定値αW0
(負の値)よりも小さいと表記される。なお、この所定
値αW0は、低μ路面で車輪に大きな制動力が作用し、そ
の結果,当該車輪速が前記目標スリップ率を満足する車
輪速よりも減少するような場合,つまりロック傾向を示
す場合に、この車輪の減速度,つまり負の車輪加減速度
が下回る程度の値に設定してあり、通常の高μ路面で
は,急制動を行っても負の車輪加減速度がこの所定値を
下回ることのない程度の大きさに設定してある。
【0041】この図8の演算処理では、まずステップS
1で前記左駆動輪速センサ402,右駆動輪速センサ4
04から,夫々,各車輪速検出値(単に車輪速とも記
す)V Wjを読込む。次にステップS2に移行して、前記
シフトポジションスイッチ304からの信号に基づいて
シフトポジションを読込む。
【0042】次にステップS3に移行して、前記ステッ
プS2で読込まれたシフトポジションがP,R,N,D
レンジの何れかのシフトレンジであるか否かを判定し、
当該シフトポジションがP,R,N,Dレンジの何れか
のシフトレンジである場合にはステップS4に移行し、
そうでない場合にはステップS5に移行する。前記ステ
ップS4では、前記図6に相当する制御マップ上の各レ
ンジ最小変速比を通常のレンジ最小変速比C2LO ,C
LLO (=CHi)に設定し、これを前記マイクロコンピュ
ータ300のRAM315に更新記憶してからステップ
S6に移行する。
【0043】一方、前記ステップS5では、前記マイク
ロコンピュータ300のRAM315に記憶されている
最新の各車輪速前回値VWj0 を読込んでステップS7に
移行する。前記ステップS7では、前記ステップS1で
読込まれた車輪速VWjと前記ステップS5で読込まれた
車輪速前回値VWj0 とを用いて,下記1式に従って各車
輪加減速度αWjを算出して、ステップS8に移行する。
【0044】 αWj=(VWj0 −VWj)/ΔT ……… (1) 前記ステップS8では、各車輪加減速度αWjのうち,小
さい車輪加減速度αWjをセレクトローにより選択し、こ
の車輪加減速度αWjを最小車輪加減速度αW として算出
設定して、ステップS9に移行する。前記ステップS9
では、前記ステップS8で算出設定された最小車輪加減
速度αW が,絶対値が大きく且つ負の値である予め設定
された所定値αW0よりも大きいか否かを判定し、最小車
輪加減速度αW が所定値αW0よりも大きい場合には前記
ステップS6に移行し、そうでない場合にはステップS
10に移行する。
【0045】前記ステップS10では、前記低μ路面
L,2レンジ最小変速比CLFLOとしての前記Dレンジ最
小変速比CDLO に,前記図6に相当する制御マップ上の
各レンジ最小変速比C2LO ,CLLO を設定し、これを前
記RAM315に更新記憶してから前記ステップS6に
移行する。そして、前記ステップS6では、前記ステッ
プS1で読み込まれた各車輪速V Wjを各車輪速前回値V
Wj0 としてRAM315に更新記憶してから,メインプ
ログラムに復帰する。
【0046】次に、前記図8の演算処理の作用を説明す
る。今、乾燥したアスファルト路面やコンクリート路面
等のようにタイヤとの間に十分な摩擦係数状態が維持さ
れる高μ路面において、アクセルペダルを踏込んで車両
が定速状態若しくは加速状態で通常に走行している状態
を想定する。なお、シフトポジションは通常走行に好適
な前記Dレンジに維持されているものと想定する。従っ
て、前記図8の演算処理が実行される所定サンプリング
時間毎に,ステップS1で各駆動輪速センサ402,4
04からの車輪速VWjを読込み、次いでステップS2で
シフトポジションを読込む。次いで、図8の演算処理の
ステップS3では,シフトポジションがDレンジである
ことからステップS4に移行し、このステップS4でマ
ップ上の各レンジ,つまり2レンジ及びLレンジの最小
変速比を,通常の各レンジ最小変速比C2LO 及びCLLO
(=CHi)に設定して、これを前記RAM315に更新
記憶し、次いでステップS6に移行して、前記ステップ
S1で読込んだ各車輪速VWjを車輪速前回値VWj0 とし
てRAM315に更新記憶し、メインプログラムに復帰
するフローを繰り返す。
【0047】従って、このフローからは各エンジンブレ
ーキレンジ,つまり2レンジ及びLレンジの最小変速比
を小さくする変速領域,即ち変速パターンの変更設定は
なされないから、前記図6に示す通常変速パターンに従
って,図5の演算処理で無段変速機の変速比制御が実行
される。このとき、実行される変速比制御領域は,前記
Dレンジ変速領域と等価である。
【0048】次にこの状態から,同じく高μ路面におい
てシフトポジションを変えることなく,ブレーキペダル
の踏込みもアクセルペダルの踏込みも解除した惰性走行
状態,つまりコースト走行状態に移行したとする。この
コースト走行状態では,所謂エンジンブレーキによるバ
ックトルクが各車輪の制動力として作用するが、未だシ
フトポジションがDレンジであることから、図8の演算
処理が実行されるサンプリング時間毎に,ステップS1
〜S3からステップS4に移行し、このステップS4で
前記2レンジ及びLレンジの最小変速比を,通常の各レ
ンジ最小変速比C2LO 及びCLLO (=CHi)に設定し
て、これを前記RAM315に更新記憶し、次いでステ
ップS6に移行して、前記ステップS1で読込んだ各車
輪速VWjを車輪速前回値VWj0 としてRAM315に更
新記憶し、メインプログラムに復帰するフローを繰り返
す。
【0049】従って、このフローからも2レンジ及びL
レンジの最小変速比を小さくする変速領域,即ち変速パ
ターンの変更設定はなされないから、前記図6に示す通
常変速パターンに従って,図5の演算処理で無段変速機
の変速比制御が実行される。このとき、図5の演算処理
で実行される無段変速機の変速比制御領域は,前記Dレ
ンジ変速領域と等価である。
【0050】また、このような高μ路面で,シフトポジ
ションをダウンシフト方向,即ちDレンジから2レンジ
若しくはLレンジに移行し、前記無段変速機の変速パタ
ーンによる変速比を強制的に大きくして,エンジンブレ
ーキを各駆動輪へのより大きな制動力として作用させた
場合には、前記図8の演算処理が実行されるサンプリン
グ時間毎に,ステップS1〜S3を経てステップS5に
移行する。そして、このステップS5で各車輪速前回値
をRAM315から読込み、次いでステップS7で各車
輪加減速度αWjを算出し、次いでステップS8で各車輪
加減速度αWjのうちの最小車輪加減速度αW を算出設定
する。このとき、当該ステップS8で選択された最小車
輪加減速度αW はより絶対値の大きな或る負の値となる
が、ブレーキペダル踏込みによる意図的な制動力が車輪
に作用しない限り、前記図7に示すように,このような
高μ路面での車輪速から得られるスリップ率が前記目標
スリップ率を上回り、その結果,当該車輪速が目標スリ
ップ率を下回ってロック傾向を示すことはないから、こ
の最小車輪加減速度αW が前記絶対値が大きく且つ負の
値である所定値αW0より小さくなることはなく、従って
ステップS9からステップS6に移行して,ステップS
1で読込まれた各車輪速VWjを車輪速前回値VWj0 とし
てRAM315に更新記憶し、メインプログラムに復帰
するフローを繰り返し、その結果,RAM315に記憶
されている2レンジ及びLレンジの最小変速比は通常の
各レンジ最小変速比C2LO 及びCLLO (=CHi)に維持
されている。つまり、2レンジ又はLレンジでの無段変
速機の変速比制御領域は、前記図6に示す通常2レンジ
変速領域又は通常Lレンジと同等であり、従ってスロッ
トル開度の低減に伴って図5の演算処理で設定される各
レンジ最小変速比C2LO及びCLLO (=CHi)は大きな
車両減速比となるから、エンジンブレーキによるバック
トルクは車輪への大きな制動力として作用し、これによ
り制動距離が確保される。
【0051】また、このような高μ路面の2レンジ若し
くはLレンジでの走行にあって,登坂走行から平坦路面
走行又は降坂走行等のコースト走行に移行した場合に
は、エンジンからの回転駆動力は極端に低減し、同時に
スロットル開度の低減から無段変速機の変速比は各エン
ジンブレーキレンジの最小変速比が設定されることにな
るが、この各エンジンブレーキレンジの最小変速比は,
少なくともDレンジ,即ち通常走行レンジの最小変速比
よりも大きいことから、エンジンブレーキによるバック
トルクは各駆動輪への大きな制動力として作用し、同時
に前記無段変速機の慣性トルクは比較的大きい状態に維
持される。この状態で、前記図8の演算処理が実行され
るサンプリング時間毎に,ステップS1〜S3を経てス
テップS5,S7で算出される各車輪加減速度αWjのう
ち,ステップS8で選択される最小車輪加減速度αW
絶対値の大きな或る負の値となるが、ブレーキペダル踏
込みによる意図的な制動力が車輪に作用しない限り、前
記ダウンシフト操作時と同様に,図7に示すように,こ
のような高μ路面での車輪速から得られるスリップ率が
前記目標スリップ率を上回り、その結果,当該車輪速が
目標スリップ率を下回ってロック傾向を示すことはない
から、この最小車輪加減速度αW が前記絶対値が大きく
且つ負の値である所定値αW0より小さくなることはな
く、従ってステップS9からステップS6に移行して,
ステップS1で読込まれた各車輪速VWjを車輪速前回値
Wj0 としてRAM315に更新記憶し、メインプログ
ラムに復帰するフローを繰り返し、その結果,RAM3
15に記憶されている2レンジ及びLレンジの最小変速
比は通常の各レンジ最小変速比C2LO 及びCLLO (=C
Hi)に維持されている。つまり、2レンジ又はLレンジ
での無段変速機の変速比制御領域は、前記図6に示す通
常2レンジ変速領域又は通常Lレンジと同等であり、従
ってスロットル開度の低減に伴って図5の演算処理で設
定される各レンジ最小変速比C2LO 及びCLLO (=
Hi)は大きな車両減速比となるから、エンジンブレー
キによるバックトルクは車輪への大きな制動力として作
用し、これにより制動距離が確保される。
【0052】また、このような高μ路面では,2レンジ
又はLレンジのエンジンブレーキレンジにおいて、例え
急ブレーキによって各車輪に大きな制動力が作用して
も、路面とタイヤとの大きな摩擦係数状態により当該車
輪速が前記目標スリップ率を満足する目標車輪速を大き
く下回ることはないから、急制動を含む高μ路面での制
動時には、前記図8の演算処理が実行されるサンプリン
グ時間毎に,ステップS1〜S3を経てステップS5,
S7で算出される各車輪加減速度αWjのうち,ステップ
S8で選択された最小車輪加減速度αW は更に絶対値の
大きな或る負の値となるが、この最小車輪加減速度αW
が前記絶対値が大きく且つ負の値である所定値αW0を下
回ることはないから、前記ステップS9からステップS
6を経てメインプログラムに復帰するフローを繰り返
し、その結果,RAM315に記憶されている2レンジ
及びLレンジの最小変速比は通常の各レンジ最小変速比
2LO及びCLLO (=CHi)に維持されている。この場
合も、2レンジ又はLレンジでの無段変速機の変速比制
御領域は、前記図6に示す通常2レンジ変速領域又は通
常Lレンジと同等であり、従ってスロットル開度の低減
に伴って図5の演算処理で設定される各レンジ最小変速
比C2LO 及びCLLO (=CHi)は大きな車両減速比とな
るから、エンジンブレーキによるバックトルクは車輪へ
の大きな制動力として作用し、これにより制動距離が確
保される。
【0053】以上より、高μ路面では,如何なる場合に
も2レンジ及びLレンジの最小変速比を小さく変更設定
する変速パターン変更制御が実行されることはなく、そ
の結果,エンジンブレーキによるバックトルクは駆動輪
への制動力として有効に活用されて制動距離が確保され
る。一方、前記氷雪路面や濡れたタイル路面等の低μ路
面では,タイヤと路面との摩擦係数状態が小さいから、
前記ブレーキペダルの踏込みによる意図的な制動時を含
む制動力に対して車輪はロック傾向を示し、その結果,
当該車輪速は前記目標スリップ率を満足する目標車輪速
を下回り易くなる。そして、このような低μ路面では,
前述のように路面,即ち車体速が車輪を回転させようと
する入力に対して、実際の車輪速は非常に増速しにくい
状態であると考えられるから、前記車輪速が目標車輪速
を下回り始めると,少なくともアクセルペダルを踏込ん
でエンジンの回転駆動力で積極的に車輪速を増速しない
限り、当該車輪速は減速を続け,比較的短時間後にロッ
クする或いはロックする直前の状態にまで至るものと考
えられる。この要件には、前記ブレーキペダルの踏込み
による意図的な制動を伴わない前記ダウンシフト操作
や、同じくエンジンブレーキレンジ,即ち2レンジ又は
Lレンジでのコースト走行への移行時も包含される。従
って、この低μ路面で2レンジ又はLレンジを選択し、
アクセルペダル踏込みによるエンジンの回転駆動力が低
減している制動時において,前記車輪速が急激に減速し
始めた最初の前記図8の演算処理で、ステップS1〜S
3を経てステップS5,S7で算出される各車輪加減速
度αWjは絶対値の相当に大きな負の値となろう。従っ
て、前記図8の演算処理のステップS8で算出設定され
る最小車輪加減速度αW も,絶対値の相当に大きな負の
値となる。従って、前記図8の演算処理のステップS9
に移行して、前記最小車輪加減速度αW が前記絶対値が
大きく且つ負の値に設定された所定値αW0を下回ると,
ステップS10に移行する。このステップS10では、
マップ上の2レンジ及びLレンジの最小変速比C2LO
LLO を前記Dレンジ最小変速比CDLO である低μ路面
L,2レンジ最小変速比CLFLOに変更設定し、これをR
AM315に更新記憶してから、ステップS6に移行し
て,前記ステップS1で読込んだ各車輪速VWjを車輪速
前回値VWj0 としてRAM315に更新記憶し、メイン
プログラムに復帰する。そして、その後,前記図8の演
算処理が実行されるサンプリング時間毎に,前記ステッ
プS3でのシフトポジションの判定で2レンジ又はLレ
ンジでないと判定されない限り、ステップS5,S7,
S8で算出される最小車輪加減速度αW の値に関わら
ず、つまりステップS9からステップS10を経てステ
ップS6に移行するか,或いはステップS9からステッ
プS6に直接移行するかは関係なく、マップ上の2レン
ジ及びLレンジの最小変速比C2LO ,CLLO は前記Dレ
ンジ最小変速比CDLO である低μ路面L,2レンジ最小
変速比CLFLOに維持され、各演算処理毎に前記ステップ
S1で読込んだ各車輪速VWjを車輪速前回値VWj0 とし
てRAM315に更新記憶し、メインプログラムに復帰
するフローを繰り返す。
【0054】従って、この間,前記図5の演算処理で
は、図6の前記通常Dレンジ変速領域と同等の低μ路面
L,2レンジ変速領域で,前記車速及びスロットル開度
に応じた無段変速機の変速比制御が実行されることにな
るが、前述のようにスロットル開度THが低減している
と仮定すれば,設定制御される無段変速機の変速比CD
は常に小さな車両減速比となるものと考えられ、その結
果,エンジンブレーキによる車輪への制動力は小さくな
ると共に、路面とタイヤとのグリップ力が駆動輪を回転
しようとする路面回転駆動力に対する無段変速機の慣性
トルクが低減するために、当該各駆動輪は回転し易い状
態となり、各駆動輪速は前記目標車輪速に維持又は増速
復帰されて舵取り効果や制動距離の確保が可能となる。
【0055】その後、例えば前記変速パターン変更制御
によって車輪のスリップ率を確保しながら十分な車両減
速を得ることができたとか、或いはその結果,車両が駐
停車するに至ったとか、或いは適切な変速比制御によっ
て更に車両を加速したいといった運転者の意志によっ
て,シフトポジションを前記エンジンブレーキレンジで
ある2レンジ又はLレンジから通常走行レンジであるD
レンジに移行したとする。このような場合を含んで,前
記各エンジンブレーキレンジ以外のシフトポジションが
選択された場合には、前述のように当該エンジンブレー
キレンジの最小変速比を更に小さく変更設定する必要が
ないか,或いはあってもその変更代がない(例えばDレ
ンジが選択された場合)から、前記図8の演算処理が実
行される最初のサンプリング時間に,前記ステップS1
〜S3を経てステップS4に移行し、このステップS4
で前記2レンジ及びLレンジの最小変速比を,通常の各
レンジ最小変速比C2LO 及びCLLO (=CHi)に設定し
て、これを前記RAM315に更新記憶し、次いでステ
ップS6に移行して、前記ステップS1で読込んだ各車
輪速VWjを車輪速前回値VWj0 としてRAM315に更
新記憶し、メインプログラムに復帰するフローを,次に
何れかのエンジンブレーキレンジが選択されるまで繰り
返す。
【0056】従って、このフローから2レンジ及びLレ
ンジの最小変速比を小さくする変速領域、即ち変速パタ
ーンの変更設定はなされないから、前記図6に示す通常
変速パターンに従って、図5の演算処理で無段変速機の
変速比制御が実行される。それでは、前記低μ路面のエ
ンジンブレーキ作動時、即ち前記ダウンシフト操作時
エンジンブレーキレンジにおけるコースト走行への移行
において、各エンジンブレーキレンジの変速比制御領
域変更制御が実行された場合の作用効果について、図9
に基づいて考察する。
【0057】例えば選択されているエンジンブレーキレ
ンジが2レンジである場合、例えば前記コースト走行を
開始した時点での変速比CD が,通常2レンジ最小変速
比C 2LO より大きいコースト走行開始変速比CCOAST
あると仮定する。前述のように,通常,コースト走行時
やダウンシフト操作時にはアクセルペダルの踏込みがな
い或いは小さく、その結果,スロットル開度THが低減
しているとすれば、このコースト走行開始からほどなく
無段変速機の変速比CD には当該通常2レンジ最小変速
比C2LO が設定される。つまり、この間はエンジンブレ
ーキのバックトルクは駆動輪への大きな制動力として作
用していないから,当該各駆動輪の加減速度αWjは比較
的絶対値の小さな負の値にしかならず、従って前記図8
の演算処理のステップS9からステップS6に直接移行
するために,マップ上の2レンジ最小変速比は通常2レ
ンジ最小変速比C2LO に維持される。ところが、無段変
速機の変速比CD がこの通常2レンジ最小変速比C2LO
に設定されると、前記図7に示すように,タイヤ−路面
間静的摩擦係数状態μが0.30とか0.10といった
レベルの低μ路面では、エンジンブレーキによる駆動輪
への制動力及び無段変速機の慣性トルクに抗して,路面
回転駆動力が駆動輪を回転させることができず、当該駆
動輪の車輪速VWjは急激に減速して目標スリップ率を満
足する目標車輪速を下回り、そのようになると当該駆動
輪速VWjはロック状態に至るまで一気に減速することに
なる。これは図9において、前記通常2レンジ最小変速
比C2L O が,前記無段変速機慣性トルクTFCVTを換算し
て得られる当該低μ路面におけるロック最小変速比C
LOCKよりも大きいことから明らかであろう。すると、前
記図8の演算処理のステップS7で算出される各車輪加
減速度αWjは絶対値の相当に大きな負の値となり、従っ
て同ステップS9で最小車輪加減速度αW は所定値αW0
より小さくなって同ステップS10で前記Dレンジ最小
変速比CDLO が低μ路面L,2レンジ最小変速比CLFLO
として当該2レンジ最小変速比C2LO の代わりに設定さ
れ、同じ2レンジの変速比制御領域は通常のDレンジ変
速領域まで拡幅されることになる。従って、前記と同様
に,コースト走行状態でスロットル開度THが低減して
いるとすれば、図9に示すように無段変速機の変速比C
D は,前記低μ路面L,2レンジ最小変速比CLFLOであ
るDレンジ最小変速比CDLO まで小さくなる。従って、
エンジンブレーキによる駆動輪への制動力は小さくなり
同時に無段変速機の慣性トルクは小さくなるから、図7
に示すように路面回転駆動力Tμは当該無段変速機の慣
性トルクTFCVTに抗して駆動輪を回転させることがで
き、やがて各駆動輪の車輪速は前記目標車輪速に維持又
は増幅復帰され、車両の減速効果が発現する。この間、
時間的には無段変速機の変速比CD は通常2レンジ最小
変速比C2LO に或る時間維持されるが、実際の車速変動
は殆ど発生しないので,変速比制御マップ上の変速パタ
ーンは図9に示すようにほぼ車速一定でDレンジ最小変
速比CDLO まで小さくなる。また、例えばダウンシフト
操作した場合には,その直後にエンジンの回転数が一旦
やや上昇するが、前述のように駆動輪がロック傾向とな
る,即ち路面駆動力が伝達されないためにエンジンの回
転数が低下し、前記最小変速比の変更制御が実行される
と再びエンジンの回転数が上昇するために,運転者には
当該エンジン回転数の増減に伴う若干の違和感が極めて
短時間に発生するものの、同時にこれらのエンジン回転
数増減がロック傾向にある車輪速の増減によるものであ
ると判断されるから、次の瞬間にこの違和感は解消され
るであろう。また、この作用については、選択シフトポ
ジションがLレンジである場合も,前記通常2レンジ最
小変速比が通常Lレンジ最小変速比と置換されるだけ
で、ほぼ同様に展開される。
【0058】この車両の減速効果,即ち車速Vの減少に
伴って前記Dレンジ最小変速比車速VD1までの間、無段
変速機の変速比CD は前記低μ路面L,2レンジ最小変
速比CLFLOであるDレンジ最小変速比CDLO に維持さ
れ、更に車速Vが低下すると前記クリープ走行上限値制
御,即ち変速比制御開始スロットル開度閾値TH1 にお
ける変速比制御曲線に従って次第に大きな変速比CD
設定される。このように車速Vが減速することは,エン
ジンブレーキの制動力が前記路面回転駆動力(即ち車速
と等価である)に抗して有効に作用していことであるか
ら、この時点で車両減速比と等価な無段変速機の変速比
D を大きくすることは車両運動にとって支障のないこ
とは容易に推察される。
【0059】なお、前記実施例ではアンチスキッド制御
装置を搭載しない車両についてのみ本実施例の作用を説
明したが、実際にはアンチスキッド制御装置を搭載した
車両にあってもこれと同等の問題が発生する可能性はあ
り、前記図8の演算処理をアンチスキッド制御装置の作
動信号に組合わせて実行させることでほぼ同様に解決す
ることができる。また、この場合には前記車輪加減速度
の判定に合わせてスリップ率を判定要件として設定すれ
ば、より一層確実な構成となる。
【0060】以上より本実施例は本発明のうち請求項1
から3の全てに係る無段変速機の制御装置を実施化した
ものであり、図8の演算処理のステップS1,S5,S
7,S8が本発明の車輪回転減速度検出手段に相当し、
以下同様に図8の演算処理のステップS3がエンジンブ
レーキ検出手段に相当し、図8の演算処理のステップS
9,S10が変速パターン変更手段に相当し、図8の演
算処理のステップS2,S3,S4が変速パターン変更
解除手段に相当し、図4に示すマイクロコンピュータ3
00及び図5に示す演算処理が変速パターン制御手段に
相当し、前記Dレンジが通常走行レンジに相当し、前記
2レンジ又はLレンジがエンジンブレーキレンジに相当
する。
【0061】次に本発明の無段変速機の制御装置を実際
の車両に適用した第2実施例を図10,図11に基づい
て説明する。この第2実施例の基本的な車両構造は,後
述する無段変速油圧制御回路やコントローラであるマイ
クロコンピュータ等を含めて,本出願人が先に提案した
特開昭61−105353号公報に記載される無段変速
機の制御装置と同等かほぼ同等であり、このうち同等の
部分は夫々各構造の説明部位で同等であることを説明し
たのち,当該公報を参照するものとして詳細な説明を割
愛することもある。
【0062】まず、本実施例の無段変速機の動力伝達機
構は、前記第1実施例に相当する図2の無段変速機の動
力伝達機構と同等又はほぼ同等であり、同時にこれが前
記特開昭61−105353号公報に記載されるものと
同等かほぼ同等であるために、ここでは詳細な説明を割
愛する。また、本実施例の無段変速機の油圧制御装置
は、前記第1実施例に相当する図3の無段変速機の油圧
制御装置と同等又はほぼ同等であり、同時にこれが前記
特開昭61−105353号公報に記載されるものと同
等かほぼ同等であるために、ここでは詳細な説明を割愛
する。
【0063】また、本実施例の変速制御装置に相当する
コントローラの一部を構成するマイクロコンピュータ
は、前記第1実施例に相当する図4の電子制御装置(マ
イクロコンピュータ)300と同等又はほぼ同等であ
り、同時にこれが前記特開昭61−105353号公報
に記載されるものと同等かほぼ同等であるために、ここ
では詳細な説明を割愛する。
【0064】また、前記マイクロコンピュータ300に
より実行される通常の無段変速機の変速比制御は、前記
図5のフローチャートに示す基準演算処理に従って前記
第1実施例と同等又はほぼ同等に実施され、同時にこれ
が前記特開昭61−105353号公報に記載されるも
のと同等かほぼ同等であるために、ここでは詳細な説明
を割愛する。なお、前記2レンジ変速パターン検索に関
しては,前記第1実施例と同等である。従って、Rレン
ジを除く前記各レンジの変速パターンによる通常の変速
比制御は凡そ図6に示す前記第1実施例と同等かほぼ同
等であるから、その詳細な説明も割愛する。
【0065】そして、本実施例では,前述の基本原理に
基づいて、特に低μ路面において駆動輪の車輪速を目標
車輪速の範囲に維持する又は増速復帰するための路面回
転駆動力に対して、エンジンブレーキによる駆動輪への
制動力を低減すると共に,無段変速機の慣性トルクを低
減するのであるが、これらの低減代に相当する前記エン
ジンブレーキレンジの変速比制御領域の最小変速比の減
小量を,以下に記述するパラメータを用いて変更設定す
る。具体的には、Lレンジにおける最小変速比減小量Δ
LLO 及び2レンジにおける最小変速比減小量ΔC2LO
をパラメータに基づいて算出し、各最小変速比減小量Δ
LLO 及びΔC2LO を,通常Lレンジ最小変速比CLLO
及び通常2レンジ最小変速比C2LO から減算した値を,
前記低μ路面L,2レンジ最小変速比CLFLOに設定する
(前述したように、この低μ路面L,2レンジ最小変速
比CLFLOは,実質的にはLレンジ又は2レンジに関わら
ず同じ値になる)。
【0066】例えば前記低μ路面において、大きな車速
と同等の速度で回転している車輪速が,大きな制動力に
よって大きな減速度で減速している場合には、短時間で
大きく減少している当該車輪の車輪速と前記車速から算
出される目標スリップ率の範囲を満足する目標車輪速と
の間に大きな偏差が発生する。この目標車輪速に対して
大きな偏差を有する当該車輪の車輪速を,速やかに増速
して目標車輪速に復帰するためには、その分だけ前記エ
ンジンブレーキによる制動力の低減代及び無段変速機の
慣性トルクの低減代,即ち各エンジンブレーキレンジの
最小変速比の減小量を大きくしなければならない。逆
に、この各エンジンブレーキレンジの最小変速比の減小
量を,前記エンジンブレーキによる制動力の低減代及び
無段変速機の慣性トルクの低減代に応じて変更設定する
ことは、当該駆動輪の車輪速を前記目標車輪速の範囲に
維持しながら,エンジンブレーキの制動力によって可及
的に制動距離を確保可能とする。ここで、各エンジンブ
レーキレンジの最小変速比の減小量(単に各レンジ変速
比減小量とも記す)ΔCLLO 及びΔC2LO を,前記目標
車輪速と実際の駆動輪の車輪速との偏差の大きさに応じ
て算出設定することも可能であるし,或る意味では有益
であるが、しかしながらこの目標車輪速と実車輪速との
偏差は,当該駆動輪が低μ路面でのエンジンブレーキに
よる制動力及び無段変速機の慣性トルクによって減速さ
れた結果,簡単に言えば当該駆動輪の減速度の積分値で
あって、制御系の入力としては,その時点で既に遅れが
発生しているとも言える。そこで、本実施例では各レン
ジ変速比減小量ΔCLLO 及びΔC 2LO を,駆動輪の減速
度の大きさを示すと考えられる前記車輪加減速度の所定
値αWOと最小車輪加減速度αW との偏差の絶対値|αWD
|を用いて変更設定するものとし、具体的には下記2式
及び3式に従って各レンジ変速比減小量ΔCLLO 及びΔ
2LO を算出する。
【0067】 ΔCLLO =k|αWD| ……… (2) ΔC2LO =ΔCLLO −ΔCL-2 =k|αWD|−ΔCL-2 ……… (3) 但し、kは予め設定された比例定数である。従って、前
記低μ路面L,2レンジ最小変速比CLFLOは下記4式で
与えられる。
【0068】 CLFLO=C2LO −ΔC2LO =CLLO −ΔCLLO ……… (4) 但し、何れにしてもこの低μ路面L,2レンジ最小変速
比CLFLOを前記Dレンジ最小変速比CDLO 以下にするこ
とはできないから、本実施例では,前記Lレンジ変速比
減小量ΔCLLO が,前記図6に示すL−Dレンジ変速比
最大偏差ΔCL- D 以上である場合には、当該Dレンジ最
小変速比CDLO を低μ路面L,2レンジ最小変速比C
LFLOに設定することとした。
【0069】以上の発明原理に基づいて,前記図5の演
算処理で検索され且つ図6の変速パターンと異なる変速
パターンを算出設定するための演算処理を図10に示
す。この演算処理は、前記無段変速機の制御装置である
マイクロコンピュータ30で所定時間(ΔT)毎のタイ
マ割込みによって実行され、ここで算出設定された変速
パターンは前記RAM315に記憶され、当該RAM3
15に記憶されている最新の変速パターンに従って前記
図5の演算処理で変速比制御がなされる。従って、図1
0の演算処理は,図5の演算処理よりも優先順位が高い
と考えればよい。ここで、算出される車輪減速度には車
両前方への車輪加速度も包含されるため、ここでは両者
を含めて車輪加減速度αWjを算出するものとし、車両前
方への車輪加速度を正,車両後方への車輪減速度を負で
表す。従って、前記車輪減速度が或る所定値よりも大き
いという表現は,ここでは車輪加減速度αWjが或る所定
値α W0(負の値)よりも小さいと表記される。なお、こ
の所定値αW0は、低μ路面で車輪に大きな制動力が作用
し、その結果,当該車輪速が前記目標スリップ率を満足
する車輪速よりも減少するような場合,つまりロック傾
向を示す場合に、この車輪の減速度,つまり負の車輪加
減速度が下回る程度の値に設定してあり、通常の高μ路
面では,急制動を行っても負の車輪加減速度がこの所定
値を下回ることのない程度の大きさに設定してある。
【0070】この図10の演算処理では、まずステップ
S11で前記左駆動輪速センサ402,右駆動輪速セン
サ404から,夫々,各車輪速検出値(単に車輪速とも
記す)VWjを読込む。次にステップS12に移行して、
前記シフトポジションスイッチ304からの信号に基づ
いてシフトポジションを読込む。
【0071】次にステップS13に移行して、前記ステ
ップS12で読込まれたシフトポジションがP,R,
N,Dレンジの何れかのシフトレンジであるか否かを判
定し、当該シフトポジションがP,R,N,Dレンジの
何れかのシフトレンジである場合にはステップS14に
移行し、そうでない場合にはステップS15に移行す
る。
【0072】前記ステップS14では、前記図6に相当
する制御マップ上の各レンジ最小変速比を通常のレンジ
最小変速比C2LO ,CLLO (=CHi)に設定し、これを
前記マイクロコンピュータ300のRAM315に更新
記憶してからステップS16に移行する。一方、前記ス
テップS15では、前記マイクロコンピュータ300の
RAM315に記憶されている最新の各車輪速前回値V
Wj0 を読込んでステップS17に移行する。
【0073】前記ステップS17では、前記ステップS
11で読込まれた車輪速VWjと前記ステップS15で読
込まれた車輪速前回値VWj0 とを用いて,下記1式に従
って各車輪加減速度αWjを算出して、ステップS18に
移行する。 αWj=(VWj0 −VWj)/ΔT ……… (1) 前記ステップS18では、各車輪加減速度αWjのうち,
小さい車輪加減速度α Wjをセレクトローにより選択し、
この車輪加減速度αWjを最小車輪加減速度αWとして算
出設定して、ステップS19に移行する。
【0074】前記ステップS19では、前記ステップS
18で算出設定された最小車輪加減速度αW が,絶対値
が大きく且つ負の値である予め設定された所定値αW0
りも大きいか否かを判定し、最小車輪加減速度αW が所
定値αW0よりも大きい場合には前記ステップS16に移
行し、そうでない場合にはステップS20に移行する。
【0075】前記ステップS20では、前記ステップS
18で算出された最小車輪加減速度αW と前記車輪加減
速度の所定値αWOとから,最小車輪加減速度偏差絶対値
|α WD|を算出してから,ステップS21に移行する。
前記ステップS21では、前記ステップS20で算出さ
れた最小車輪加減速度偏差絶対値|αWD|を用いて,前
記2式及び3式に従って各低μ路面における各レンジ変
速比減小量ΔCLLO ,ΔC2LO を算出してから,ステッ
プS22に移行する。
【0076】前記ステップS22では、前記ステップS
21で算出されたLレンジ変速比減小量ΔCLLO が,前
記図6に示すL−Dレンジ変速比最大偏差ΔCL-D 以上
であるか否かを判定し、Lレンジ変速比減小量ΔCLLO
がL−Dレンジ変速比最大偏差ΔCL-D 以上である場合
にはステップS23に移行し、そうでない場合にはステ
ップS24に移行する。
【0077】前記ステップS23では、前記図6に相当
する制御マップ上の各レンジ最小変速比CLLO ,C2LO
を,前記低μ路面L,2レンジ最小変速比CLFLOとして
の前記Dレンジ最小変速比CDLO に設定し、これを前記
RAM315に更新記憶してから前記ステップS16に
移行する。一方、前記ステップS24では、前記ステッ
プS21で算出された各低μ路面における各レンジ変速
比減小量ΔCLLO ,ΔC2LO を用いて,前記4式に従っ
て前記低μ路面L,2レンジ最小変速比CLFLOを算出し
てから,ステップS25に移行する。
【0078】前記ステップS25では、前記図6に相当
する制御マップ上の各レンジ最小変速比CLLO ,C2LO
を,前記ステップS24で算出された低μ路面L,2レ
ンジ最小変速比CLFLOに設定し、これを前記RAM31
5に更新記憶してから前記ステップS16に移行する。
そして、前記ステップS16では、前記ステップS11
で読み込まれた各車輪速VWjを各車輪速前回値VWj0
してRAM315に更新記憶してから,メインプログラ
ムに復帰する。
【0079】次に、前記図10の演算処理の作用を説明
する。なお、乾燥したアスファルト路面やコンクリート
路面等のようにタイヤとの間に十分な摩擦係数状態が維
持される高μ路面における本実施例の作用効果は、各ス
テップの符号が異なるだけで,前記第1実施例と同様又
はほぼ同様であるために、ここでは詳細な説明を割愛す
る。
【0080】一方、前記氷雪路面や濡れたタイル路面等
の低μ路面では,タイヤと路面との摩擦係数状態が小さ
いから、前記ブレーキペダルの踏込みによる意図的な制
動時を含む制動力に対して車輪はロック傾向を示し、そ
の結果,当該車輪速は前記目標スリップ率を満足する目
標車輪速を下回り易くなる。そして、このような低μ路
面では,前述のように路面,即ち車体速が車輪を回転さ
せようとする入力に対して、実際の車輪速は非常に増速
しにくい状態であると考えられるから、前記車輪速が目
標車輪速を下回り始めると,少なくともアクセルペダル
を踏込んでエンジンの回転駆動力で積極的に車輪速を増
速しない限り、当該車輪速は減速を続け,比較的短時間
後にロックする或いはロックする直前の状態にまで至る
ものと考えられる。この要件には、前記ブレーキペダル
の踏込みによる意図的な制動を伴わない前記ダウンシフ
ト操作や、同じくエンジンブレーキレンジ,即ち2レン
ジ又はLレンジでのコースト走行への移行時も包含され
る。従って、この低μ路面で2レンジ又はLレンジを選
択し、アクセルペダル踏込みによるエンジンの回転駆動
力が低減している制動時において,前記車輪速が急激に
減速し始めた最初の前記図8の演算処理で、ステップS
11〜S13を経てステップS15,S17で算出され
る各車輪加減速度αWjは絶対値の相当に大きな負の値と
なろう。従って、前記図8の演算処理のステップS18
で算出設定される最小車輪加減速度α W も,絶対値の相
当に大きな負の値となる。従って、前記図10の演算処
理のステップS19に移行して、前記最小車輪加減速度
αW が前記絶対値が大きく且つ負の値に設定された所定
値αW0を下回ると,ステップS20に移行する。このス
テップS20では最小車輪加減速度偏差絶対値|αWD
を算出し、次いでステップS21では,この最小車輪加
減速度偏差絶対値|αWD|に基づいて各レンジ変速比減
小量ΔCLLO ,ΔC2LO を算出する。そして、ステップ
S22からステップS25では,前記各レンジ変速比減
小量ΔCLLO ,ΔC2LO から算出される低μ路面最小変
速比CLFLOが,前記Dレンジ最小変速比CDLO を越えな
い場合には、制御マップ上の2レンジ及びLレンジの最
小変速比C2LO ,CLLO を当該低μ路面最小変速比C
LFLOに変更設定し、算出される低μ路面最小変速比C
LFLOが,前記Dレンジ最小変速比CDLO 以上である場合
には、制御マップ上の2レンジ及びLレンジの最小変速
比C2LO ,CLLO を前記Dレンジ最小変速比CDLO に変
更設定し、これをRAM315に更新記憶してから、ス
テップS16に移行して,前記ステップS11で読込ん
だ各車輪速VWjを車輪速前回値VWj0 としてRAM31
5に更新記憶し、メインプログラムに復帰する。そし
て、その後,前記図8の演算処理が実行されるサンプリ
ング時間毎に,前記ステップS13でのシフトポジショ
ンの判定で2レンジ又はLレンジでないと判定されない
限り、ステップS15,S17,S18で算出される最
小車輪加減速度αW の値に関わらず、つまりステップS
19からステップS20〜S25を経てステップS16
に移行するか,或いはステップS19からステップS1
6に直接移行するかは関係なく、マップ上の2レンジ及
びLレンジの最小変速比C2LO ,CLLO は前記Dレンジ
最小変速比CDLO 又は低μ路面L,2レンジ最小変速比
LFLOに維持され、各演算処理毎に前記ステップS11
で読込んだ各車輪速VWjを車輪速前回値VWj0 としてR
AM315に更新記憶し、メインプログラムに復帰する
フローを繰り返すことになる。
【0081】従って、この間、前記図5の演算処理で
は、例えば選択されているエンジンブレーキレンジが2
レンジである場合、図6の前記通常2レンジ変速領域よ
りも最小変速比が小さく設定されて、全変速領域が拡幅
された低μ路面L、2レンジ変速領域において、前記車
速及びスロットル開度に応じた無段変速機の変速比制御
が実行されることになるが、前述のようにスロットル開
度THが低減していると仮定すれば、設定制御される無
段変速機の変速比CD は常に小さな車両減速比、即ち前
記図10の演算処理のステップS25又はS23で算出
設定された低μ路面L、2レンジ最小変速比CLFLOとな
るものと考えられ、その結果、当該最小変速比の減小分
だけエンジンブレーキによる車輪への制動力は小さくな
ると共に、路面とタイヤとのグリップ力が駆動輪を回転
しようとする路面回転駆動力に対する無段変速機の慣性
トルクが低減するために、当該各駆動輪は回転し易い状
態となり、各駆動輪速は前記目標車輪速に維持又は増速
復帰された舵取り効果や制動距離の確保が可能となる。
【0082】また、前記各駆動輪速が前記目標車輪速に
維持又は増速復帰されれば、例えば図10の演算処理の
ステップS24〜S25で、Dレンジ最小変速比CDLO
よりも大きい車両減速比である低μ路面L、2レンジ最
小変速比CLFLOが設定された場合、前記路面回転駆動力
は駆動輪を回転駆動可能であるが、その反面で、当該低
μ路面L、2レンジ最小変速比CLFLOがDレンジ最小変
速比CDLO よりも大きい分だけ、エンジンブレーキによ
る制動力が当該路面回転駆動力に抗して駆動輪に有効に
作用し、しかもこの低μ路面L、2レンジ最小変速比C
LFLOが駆動輪の減速度の大きさに応じたもの、即ち通常
2レンジ最小変速比C2LO におけるエンジンブレーキに
よる駆動輪への制動力及び無段変速機の慣性トルクと、
路面回転駆動力との偏差に応じたものであることから、
これにより当該低μ路面における最良の制動距離が確保
されることになろう。これは選択されているエンジンブ
レーキレンジがLレンジである場合でも同様である。
【0083】その後、例えば前記変速パターン変更制御
によって車輪のスリップ率を確保しながら十分な車両減
速を得ることができたとか、或いはその結果、車両が駐
停車するに至ったとか、或いは適切な変速比制御によっ
て更に車両を加速したいといった運転者の意志によっ
て、シフトポジションを前記エンジンブレーキレンジで
ある2レンジ又はLレンジから通常走行レンジであるD
レンジに移行したとする。このような場合を含んで、前
記各エンジンブレーキレンジ以外のシフトポジションが
選択されている場合には、前述のように当該エンジンブ
レーキレンジの最小変速比を更に小さく変更設定する必
要がないか、或いはあってもその変更代がない(例えば
Dレンジが選択された場合)から、前記図10の演算処
理が実行される最初のサンプリング時間に、前記ステッ
プS11〜S13を経てステップS14に移行し、この
ステップS14で前記2レンジ及びLレンジの最小変速
比を、通常の各レンジ最小変速比C2LO 及びCLLO (=
Hi)に設定して、これを前記RAM315に更新記憶
し、次いでステップS16に移行して、前記ステップS
51で読込んだ各車輪速Vwj を車輪速前回値Vwj0
してRAM315に更新記憶し、メインプログラムに復
帰するフローを、次に何れかのエンジンブレーキレンジ
が選択されるまで繰り返す。
【0084】従って、このフローから2レンジ及びLレ
ンジの最小変速比を小さくする変速領域,即ち変速パタ
ーンの変更設定はなされないから、前記図6に示す通常
変速パターンに従って,図5の演算処理で無段変速機の
変速比制御が実行される。それでは、前記低μ路面のエ
ンジンブレーキ作動時,即ち前記ダウンシフト操作時や
エンジンブレーキレンジでのコースト走行時において、
各エンジンブレーキレンジの変速比制御領域変更制御が
実行された場合の作用効果について,図11に基づいて
考察する。ここでは、前記図10の演算処理のステップ
S24,S25で前記Dレンジ最小変速比CDLO よりも
車両減速比の大きい低μ路面L,2レンジ最小変速比C
LFLOが設定された場合を想定する。
【0085】例えば選択されているエンジンブレーキレ
ンジが2レンジである場合、例えば前記コースト走行を
開始した時点での変速比CD が,通常2レンジ最小変速
比C 2LO より大きいコースト走行開始変速比CCOAST
あると仮定する。前述のように,通常,コースト走行時
やダウンシフト操作時にはアクセルペダルの踏込みがな
い或いは小さく、その結果,スロットル開度THが低減
しているとすれば、このコースト走行開始からほどなく
無段変速機の変速比CD には当該通常2レンジ最小変速
比C2LO が設定される。つまり、この間はエンジンブレ
ーキのバックトルクは駆動輪への大きな制動力として作
用していないから,当該各駆動輪の加減速度αWjは比較
的絶対値の小さな負の値にしかならず、従って前記図1
0の演算処理のステップS19からステップS16に直
接移行するために,マップ上の2レンジ最小変速比は通
常2レンジ最小変速比C2LO に維持される。ところが、
無段変速機の変速比CD がこの通常2レンジ最小変速比
2LO に設定されると、前記図7に示すように,タイヤ
−路面間静的摩擦係数状態μが0.30とか0.10と
いったレベルの低μ路面では、エンジンブレーキによる
駆動輪への制動力及び無段変速機の慣性トルクに抗し
て,路面回転駆動力が駆動輪を回転させることができ
ず、当該駆動輪の車輪速VWjは急激に減速して目標スリ
ップ率を満足する目標車輪速を下回り、そのようになる
と当該駆動輪速VWjはロック状態に至るまで一気に減速
することになる。これは図11において、前記通常2レ
ンジ最小変速比C2LO が,前記無段変速機慣性トルクT
FCVTを換算して得られる当該低μ路面におけるロック最
小変速比CLOCKよりも大きいことから明らかであろう。
すると、前記図10の演算処理のステップS17で算出
される各車輪加減速度αWjは絶対値の相当に大きな負の
値となり、従って同ステップS19で最小車輪加減速度
αW は所定値αW0より小さくなる。そして、図10の演
算処理のステップS20〜S22を経てステップS2
4,S25で前記Dレンジ最小変速比CDLO より車両減
速比の大きい低μ路面L,2レンジ最小変速比CLFLO
当該2レンジ最小変速比C2LO の代わりに設定され、同
じ2レンジの変速比制御領域は図11に示す低μ路面
L,2レンジ変速領域まで拡幅されることになる。従っ
て、前記と同様に,コースト走行状態でスロットル開度
THが低減しているとすれば、図11に示すように無段
変速機の変速比CD は,前記低μ路面L,2レンジ最小
変速比CLFLOまで小さくなる。このとき、前述のように
前記低μ路面L,2レンジ最小変速比CLFLOは,通常2
レンジ最小変速比C2LO におけるエンジンブレーキによ
る駆動輪への制動力及び無段変速機の慣性トルクと,路
面回転駆動力との偏差に等価な,駆動輪の減速度の大き
さに応じて設定されるため、図11に示すように当該低
μ路面L,2レンジ最小変速比CLFLOは,前記当該低μ
路面におけるロック最小変速比CLOCKよりもやや車両減
速比で小さい程度の値に設定されていることになる。従
って、エンジンブレーキによる駆動輪への制動力は小さ
くなり同時に無段変速機の慣性トルクは小さくなるか
ら、図7に示すように路面回転駆動力Tμは当該無段変
速機の慣性トルクTFCVTに抗して駆動輪を回転させるこ
とができ、やがて各駆動輪の車輪速は前記目標車輪速に
維持又は増幅復帰され、前記低μ路面L,2レンジ最小
変速比CLFLOがDレンジ最小変速比CDLO よりも大きい
分だけ、エンジンブレーキによる制動力が当該路面回転
駆動力に抗して駆動輪へ有効に作用し、車両の減速効果
が十分に発現する。この間、時間的には無段変速機の変
速比CD は通常2レンジ最小変速比C2LO に或る時間維
持されるが、実際の車速変動は殆ど発生しないと考えら
れるので,変速比制御マップ上の変速パターンは図11
に示すようにほぼ車速一定で低μ路面L,2レンジ最小
変速比CLF LOまで小さくなる。また、例えばダウンシフ
ト操作した場合には,その直後にエンジンの回転数が一
旦やや上昇するが、前述のように駆動輪がロック傾向と
なる,即ち路面駆動力が伝達されないためにエンジンの
回転数が低下し、前記最小変速比の変更制御が実行され
ると再びエンジンの回転数が上昇するために,運転者に
は当該エンジン回転数の増減に伴う若干の違和感が極め
て短時間に発生するものの、同時にこれらのエンジン回
転数増減がロック傾向にある車輪速の増減によるもので
あると判断されるから、次の瞬間にこの違和感は解消さ
れるであろう。また、この作用については、選択シフト
ポジションがLレンジである場合も,前記通常2レンジ
最小変速比が通常Lレンジ最小変速比と置換されるだけ
で、ほぼ同様に展開される。
【0086】この車両の減速効果,即ち車速Vが前記低
μ路面L,2レンジ最小変速比車速VLF1 まで減少する
間、無段変速機の変速比CD は前記低μ路面L,2レン
ジ最小変速比CLFLOに維持され、更に車速Vが低下する
と前記クリープ走行上限値制御,即ち変速比制御開始ス
ロットル開度閾値TH1 における変速比制御曲線に従っ
て次第に大きな変速比CD が設定される。このように車
速Vが減速することは,エンジンブレーキの制動力が前
記路面回転駆動力(即ち車速と等価である)に抗して有
効に作用していことであるから、この時点で車両減速比
と等価な無段変速機の変速比CD を大きくすることは車
両運動にとって支障のないことは容易に推察される。
【0087】なお、前記実施例ではアンチスキッド制御
装置を搭載しない車両についてのみ本実施例の作用を説
明したが、実際にはアンチスキッド制御装置を搭載した
車両にあってもこれと同等の問題が発生する可能性はあ
り、前記図10の演算処理をアンチスキッド制御装置の
作動信号に組合わせて実行させることでほぼ同様に解決
することができる。また、この場合には前記車輪加減速
度の判定に合わせてスリップ率を判定要件として設定す
れば、より一層確実な構成となる。
【0088】以上より本実施例は本発明のうち請求項1
及び2及び4の全てに係る無段変速機の制御装置を実施
化したものであり、図10の演算処理のステップS1
1,S15,S17,S18が本発明の車輪回転減速度
検出手段に相当し、以下同様に図10の演算処理のステ
ップS13がエンジンブレーキ検出手段に相当し、図1
0の演算処理のステップS19〜S25が変速パターン
変更手段に相当し、図10の演算処理のステップS1
2,S13,S14が変速パターン変更解除手段に相当
し、図4に示すマイクロコンピュータ300及び図5に
示す演算処理が変速パターン制御手段に相当し、前記D
レンジが通常走行レンジに相当し、前記2レンジ又はL
レンジがエンジンブレーキレンジに相当する。
【0089】次に前記各実施例による車輪速増速効果を
図12を用いて説明する。同図は、低μ路面を走行中
に,時刻t1 でシフトポジションを前記Dレンジから2
レンジに移行する,所謂ダウンシフト操作を行った場合
の駆動輪の車輪速VWj及び無段変速機の目標変速比CD
の状態を示すシミュレーション実験結果である。図中、
車速Vには理解を容易化するために前記アンチスキッド
制御装置で採用される疑似車速,即ち最大車輪速VWHi
を採用した。また、目標車輪速V* Wjは、前記車速Vに
対して目標スリップ率の上限値である約30%が達成さ
れるように,この車速Vに係数(0.7)を乗じて設定
した。また、アクセルペダルの踏込みはなく,スロット
ル開度は極めて低減している状態を想定する。また、同
図には前記変速パターン変更制御を実施せず、通常の変
速パターンに従って無段変速機の変速比制御を行った場
合の変速比CDn及び駆動輪の車輪速VWjn を,夫々二点
鎖線で併記した。また、変速比を示す図には,前記前記
無段変速機慣性トルクTFCVTを換算して得られる当該低
μ路面におけるロック最小変速比CLOCKを合わせて記し
た。
【0090】同図では、時刻t1 で2レンジに移行し,
ほどなく無段変速機の目標変速比は通常2レンジ最小変
速比C2LO に設定され、実際の無段変速機の変速比CD
も次第に大きくなっていった。その結果,車輪速VWj
大幅に減速し、その傾きである減速度(最小車輪加減速
度)αW が時刻t2 で前記所定値αW0よりも小さくなっ
た。従って、前記各演算処理で,当該2レンジ最小変速
比C2LO は低μ路面L,2レンジ最小変速比CLFLOまで
小さくなり、無段変速機の目標変速比も当該低μ路面
L,2レンジ最小変速比CLFLOに設定され、実際の無段
変速機の変速比C D も比較的急速に小さくなっていっ
た。そして、その結果,エンジンのアイドル回転数又は
アイドル回転速度は,当該低μ路面において車輪速VWj
を急速に増速し、時刻t3 から時刻t4 までの時間は車
速Vを上回る,所謂スリップロスが発生した。しかしな
がら、当該時刻t4 以後,駆動輪には前記路面回転駆動
力とエンジンブレーキの制動力とが有効に作用し、車速
Vは滑らかに減速した。また、この間,駆動輪の車輪速
Wjは目標スリップ率を満足する目標車輪速下限値V*
Wjを下回ることがないことから、車両の舵取り効果と制
動距離とが確保されたことが分かる。また、これは無段
変速機の目標変速比が比較的小さな低μ路面L,2レン
ジ最小変速比CLFLOに維持され、その結果,実際の無段
変速機の変速比C D は,車速Vの減速に応じて滑らかに
大きくなっていったことによることが分かる。この間,
実際の無段変速機の変速比CD が前記ロック最小変速比
LOCKより大きくなることはないから、少なくとも意図
的な制動力が加味されない限り,車輪はロックしないこ
とも分かる。
【0091】一方、前記各演算処理による変速パターン
変更制御を実施しなかった場合には、前記時刻t2 以後
も車輪速VWjn は減速し続け、これに応答して実際の無
段変速機の変速比CD は更に大きくなっていった。そし
て、実際の無段変速機の変速比CD が前記ロック最小変
速比CLOCKより大きくなる時刻t5 で当該駆動輪の車輪
速VWjn は“0”となって完全なロック状態に陥った。
【0092】以上のように、前記各実施例によれば駆動
輪の車輪速を,目標スリップ率を満足する目標車輪速の
範囲に維持又は増速復帰して車両の舵取り効果を確保す
ることができ、また無段変速機の最小変速比の減小代
を,当該駆動輪の車輪速の減速度に応じたものに設定す
れば、有効なエンジンブレーキによる制動力を得て車両
の制動距離を確保することができる。
【0093】なお、前記各実施例は,本出願人が先に提
案した特開昭61−105353号公報に記載される無
段変速機の制御装置を基体としたものであるが、本発明
はこれ以外のベルト式無段変速機に広く展開可能である
ことは言うまでもない。また、前記各実施例では、変速
比制御コントローラをマイクロコンピュータで構築した
ものについてのみ詳述したが、これに限定されるもので
はなく、演算回路等の電子回路を組み合わせて構成して
もよいことは言うまでもない。
【0094】また、前記各実施例では、本発明の無段変
速機の制御装置を前輪駆動車両に展開した場合について
のみ詳述したが、後輪駆動車両,四輪駆動車両にあって
もほぼ同様に展開できることは言うまでもない。
【0095】
【発明の効果】以上説明したように本発明の無段変速機
の制御装置によれば、低μ路面走行中に、例えばエンジ
ンブレーキレンジでの急激なコースト走行移行した場
合、当該エンジンブレーキレンジの変速比制御領域の通
常の最小変速比を所定変速比まで小さくすることによ
り、エンジンブレーキによる駆動輪への制動力が低減
し、同時に路面回転駆動力に対する無段変速機の慣性ト
ルクは小さくなるから、駆動輪の車輪速は、目標スリッ
プ率の範囲を満足する目標車輪速に維持又は増速復帰し
易くなり、車両としての舵取り効果と制動距離とを確保
できる。このとき、前記所定変速比を通常走行レンジの
最小変速比に設定すれば、前記エンジンブレーキによる
駆動輪への制動力が最も低減し、同時に路面回転駆動力
に対する無段変速機の慣性トルクは最も小さくなるか
ら、駆動輪の車輪速は、前記目標車輪速に最も維持又は
増速復帰し易くなる。また、前記所定変速比を、駆動輪
の減速度に応じて設定すれば、駆動輪の車輪速を前記目
標車輪速に維持又は増速復帰して車両としての舵取り効
果を確保しながら、エンジンブレーキによる駆動輪への
制動力を発揮して制動距離を短縮することが可能とな
る。また、前記エンジンブレーキレンジ以外のシフトポ
ジションが選択された場合に、前記エンジンブレーキレ
ンジの最小変速比を解除して通常の最小変速比に復帰す
ることで、例えば同じ低μ路面にあっても、車輪速が前
記目標車輪速に維持又は増速復帰され、又はより大きな
車速を得るなどの運転者の意図する車両運動を可能とす
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の無段変速機の制御装置の基本構成図で
ある。
【図2】無段変速機の動力伝達機構の一例を示す構成図
である。
【図3】無段変速機の油圧制御装置の一例を示す構成図
である。
【図4】無段変速機の変速比制御装置に相当するコント
ローラの一例を示す構成図である。
【図5】図5のコントローラで実行される通常の無段変
速機の変速比制御の演算処理の一例を示すフローチャー
トである。
【図6】図5の演算処理による変速パターンの説明図で
ある。
【図7】本発明の基本原理の説明図である。
【図8】本発明の無段変速機の制御装置の第1実施例を
示すものであり、低μ路面におけるエンジンブレーキレ
ンジの変速パターン変更制御の演算処理を示すフローチ
ャートである。
【図9】図8の演算処理により変更制御されたエンジン
ブレーキレンジの変速パターンの説明図である。
【図10】本発明の無段変速機の制御装置の第2実施例
を示すものであり、低μ路面におけるエンジンブレーキ
レンジの変速パターン変更制御の演算処理を示すフロー
チャートである。
【図11】図10の演算処理により変更制御されたエン
ジンブレーキレンジの変速パターンの説明図である。
【図12】各エンジンブレーキレンジの変速パターン変
更制御による車輪速及び無段変速機の変速比を説明する
タイムチャートである。
【符号の説明】
10はエンジン 29は無段変速機構(無段変速機) 110はステップモータ 118は電磁弁 224はソレノイド 300はマイクロコンピュータ 302は車速センサ 303はスロットル開度センサ 304はシフトポジションスイッチ 402は左駆動輪速センサ(車輪回転減速度検出手段) 404は右駆動輪速センサ(車輪回転減速度検出手段)
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI F16H 63:06

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 変速シフトポジションに少なくとも通常
    走行レンジ及びエンジンブレーキレンジを備え、前記変
    速シフトポジションに通常走行レンジが選択されたとき
    には通常走行に好適な通常走行変速比制御領域で無段変
    速機の変速パターンを制御し且つ前記変速シフトポジシ
    ョンにエンジンブレーキレンジが選択されたときには前
    記通常走行変速比制御領域よりも最小変速比の大きいエ
    ンジンブレーキ変速比制御領域で無段変速機の変速パタ
    ーンを制御する変速パターン制御手段を備えた無段変速
    機の制御装置において、前記エンジンブレーキレンジが
    選択されていることを検出するエンジンブレーキレンジ
    検出手段と、車輪回転の減速度を検出する車輪回転減速
    度検出手段とを備え、前記変速パターン制御手段は、
    転者がアクセルペダルの踏込みを解除している状態で、
    前記エンジンブレーキレンジ検出手段がエンジンブレー
    キレンジ選択を検出し且つ前記車輪回転減速度検出手段
    で検出された車輪回転減速度検出値が所定車輪回転減速
    度値以上のときに、前記エンジンブレーキ変速比制御領
    域の最小変速比を所定変速比まで小さく変更する変速パ
    ターン変更手段を備えたことを特徴とする無段変速機の
    制御装置。
  2. 【請求項2】 前記変速パターン制御手段は、前記変速
    パターン変更手段によるエンジンブレーキ変速比制御領
    域の変更を、前記エンジンブレーキレンジ以外の変速シ
    フトポジションが選択されたときに解除する変速パター
    ン変更解除手段を備えたことを特徴とする請求項1に記
    載の無段変速機の制御装置。
  3. 【請求項3】 前記変速パターン変更手段は、前記エン
    ジンブレーキ変速比制御領域の最小変速比が小さく変更
    される所定変速比を、前記通常走行変速比制御領域の最
    小変速比に設定することを特徴とする請求項1又は2に
    記載の無段変速機の制御装置。
  4. 【請求項4】 前記変速パターン変更手段は、前記エン
    ジンブレーキ変速比制御領域の最小変速比が小さく変更
    される所定変速比を、前記車輪回転減速度検出手段で検
    出された車輪回転減速度検出値に応じて設定することを
    特徴とする請求項1又は2に記載の無段変速機の制御装
    置。
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