JP3008777B2 - 無段変速機の制御装置 - Google Patents

無段変速機の制御装置

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JP3008777B2 JP11154094A JP11154094A JP3008777B2 JP 3008777 B2 JP3008777 B2 JP 3008777B2 JP 11154094 A JP11154094 A JP 11154094A JP 11154094 A JP11154094 A JP 11154094A JP 3008777 B2 JP3008777 B2 JP 3008777B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は無段変速機の制御装置に
関するものであり、特に路面の摩擦係数状態(以下,単
にμとも記す)が小さい低μ路面での発進加速時等のよ
うに駆動輪にスリップが発生し易い状況で好適なもので
ある。
【0002】
【従来の技術】ベルトとプーリとの接触点半径を変化さ
せる(所謂プーリ比を変化させる)ことで入出力軸間の
変速比を変更制御するベルト式無段変速機にあっては、
昨今のトルクコンバータ及び歯車伝達機構を用いた自動
変速機とその出力側との間に介装されているワンウエイ
クラッチのような動力伝達方向規制手段を介装しないこ
とが、その性能上好ましいとされている。ここでは、ベ
ルト式無段変速機より上流側、つまり機関(エンジン)
側を入力側と定義し、下流側、即ちプロペラシャフトや
ディファレンシャル装置等の動力伝達系及び車輪側を出
力側と定義する。このようなベルト式無段変速機の前記
プーリ比の変更制御には、通常、流体圧や電子制御され
た機械的機構等が用いられており、具体的には、ピスト
ン化された可動プーリ片(可動円錐部材)を固定プーリ
片(固定円錐部材)に対して相対移動させることで、両
者の間に形成されるプーリ溝の幅を変更制御する。
【0003】ここで、この種の無段変速機のうち、本出
願人が先に提案した特開昭61−105353号公報に
記載される無段変速機及びその制御装置を引用すると、
当該無段変速機の変速比を制御するためには主としてス
テップモータが使用されており、このステップモータの
回転角を制御することで可動プーリ片(可動円錐部材)
と固定プーリ片(固定円錐部材)との間に形成されるプ
ーリ溝の幅を変更制御するようにしている。その一方
で、ピストン化された可動プーリ片(可動円錐部材)の
シリンダ室には、所定の流体圧、具体的には油圧が付与
されており、この油圧によって、両プーリ片(両円錐部
材)間に介在し且つ回転移動するベルトを挟持すると共
に、伝達される回転駆動力(トルク)に変動が生じても
前記プーリ溝の幅が変化しないようにしている。
【0004】そして、この種の無段変速機では一般に、
その変速比を制御するための変速パターンは、当該無段
変速機の出力軸と入力軸との回転速度比であるから、車
速と機関回転数又は機関回転速度(以下、これらを総称
して「機関回転状態」とも記す)とに依存しており、具
体的には、例えば車速と前記スロットル開度等とを変数
として変速パターンを設定制御している。
【0005】一般に、車速が大きい状態つまり高速走行
状態では、同等の機関(エンジン)の回転状態において
駆動輪の車輪速を大きくする必要があるから、無段変速
機の変速比を車両全体での減速比で考えた場合、当該無
段変速機の変速比を小さくする必要がある。逆に車速が
小さい状態つまり低速走行状態では、同等のエンジンの
回転状態において駆動輪の車輪速を小さくする必要があ
るから、無段変速機の変速比は大きなものでなければな
らない。ところが、運転者の意思としては、車速の大小
に関わらず、車両をより加速したい場合にはアクセルペ
ダルをより大きく踏込むため、その結果スロットル開度
が大きくなる。一方、車両をより加速する即ち車速を大
きくするためには、同等のエンジンの回転状態におい
て、車両全体での減速比である無段変速機の変速比は小
さくなければならない。
【0006】これらのことから、無段変速機の変速比制
御曲線,つまり変速パターンは、通常、車速が大きくな
ると変速比が小さくなり、スロットル開度が大きくなる
と変速比が大きくなるように、車速を変数とし且つスロ
ットル開度をパラメータとしたエンジン回転状態に対す
る制御マップに表され、同一の変速比は当該変速比制御
マップ中の傾き一定の直線として表される。
【0007】以上より、無段変速機の変速比制御は、通
常の自動変速機の変速比制御と同様に、この変速比制御
マップ中の変速比マトリックスから、当該車両走行状態
並びに操縦入力に応じた目標変速比を設定し、これに応
じて前記プーリ比を変更制御することになる。勿論、ス
ロットル開度の代わりにアクセルペダルの踏込み量をア
クセル開度として検出し、これを用いて変速比制御する
ことも可能である。また、アクセルペダルの踏込み量
は,その絶対的な変位の大きさでなくともよく、例えば
アクセルペダルの踏込み速度やその加速度(具体的には
直接的に加速度を検出しなくとも踏込み力の大きさから
も間接的に加速度を検出することができる)等でも,そ
れらを積分することなどにより代用可能であり、これら
を総合すれば,少なくともアクセルペダルの操作状態に
関係なくスロットル開度を自動制御する,所謂駆動力制
御装置を搭載しない車両にあっては、アクセルペダルの
操作状態を検出することで無段変速機の変速比変更制御
が可能となる。
【0008】なお、前記変速比制御マップには、スロッ
トル開度が全閉の状態,即ちエンジンの回転状態が,所
謂アイドリング回転状態であるときに、通常の自動変速
機と同様に車両を少しずつ走行させる,所謂クリープ走
行制御パターンがある。具体的には、例えばエンジン回
転速度を縦軸に,車速を横軸にとって変速比制御マップ
を構成し、スロットル開度と同等にエンジン回転速度が
大きくなると想定して当該スロットル開度を縦軸方向へ
の変数に設定し、ベルト式無段変速機の変速パターン
を,車速とスロットル開度とから得られる最適なエンジ
ン回転速度に同調させた場合に、前記傾き一定直線で表
される同等の変速比直線のうち,最も傾きの大きい変速
比直線が,車両減速比で考えた場合の最大変速比であ
り、最も傾きの小さい変速比直線が最小変速比になる。
ここで、制御の対象となる変速比は無段であるから、或
るスロットル開度,即ちエンジン回転速度一定で、或る
車速から,当該車速の増加に伴って次第に変速比が小さ
くなる制御曲線がクリープ制御上限曲線になる。つま
り、スロットル開度,即ちアクセルペダルの操作状態
が,所謂全閉の状態であっても、車速が或る所定値に至
るまでは最大変速比に維持された後に当該所定値以上に
なると変速比は小さくなり、逆に,或る程度以上の車速
で同じくアクセルペダルの操作全閉状態となると変速比
は一旦,最小変速比となった後、惰性走行状態,所謂コ
ースト走行状態で,車速が或る所定値以下になると変速
比は大きくなることになる。そこで、このクリープ制御
上限曲線をコースト走行変速比制御曲線と定義する。
【0009】ちなみに、前記無段変速機の変速比制御に
用いられる車速は、通常,インストゥルメントパネルに
表示されるものと同様に、変速機の出力軸回転速度等を
変換して得られる駆動輪の回転速度が代用されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】それでは、前述のよう
な変速比制御マップによる無段変速機の変速比制御を,
氷雪路面や濡れたタイル路面等の低μ路面で子細に考察
してみる。ここでは、前述のような駆動力制御装置の一
種として提案されている,駆動輪への駆動力過多を検出
して当該駆動輪への制動力を自動的に発生制御する,所
謂トラクションコントロールシステムが搭載されていな
い車両を想定する。
【0011】このような低μ路面ではタイヤと路面との
間の摩擦係数状態も小さいから、当該低μ路面でタイヤ
に駆動力が付与されると車輪はスリップし易く、自動車
工学に言うスリップ率が大きくなる。現今のタイヤ特性
ではスリップ率が10〜30%程度の範囲内で操舵や駆
動・制動に関与するタイヤのグリップ力(摩擦力と等価
である)は確保されるから、これよりも車輪の実際のス
リップ率(以下,単に実スリップ率とも記す)が大きく
なることは舵取り効果や発進加速性能の確保が困難にな
ることになる。逆に言えば、このタイヤのグリップ力を
確保できる車輪のスリップ率の範囲を目標スリップ率と
し、この目標スリップ率に対して,車体速,即ち車速か
ら算出される当該目標スリップ率を満足する車輪速の範
囲を目標車輪速とすれば、この目標車輪速の範囲内に実
際の車輪速が納っていることが車両としての舵取り効果
や発進加速性能を確保できることになる。
【0012】このような状況下において,或る程度以上
の経験を有する運転者によれば、例えば停車中の車両を
発進させるためにアクセルペダルを踏込んだところ、タ
イヤ−路面間の小さな摩擦係数状態のために,駆動輪の
タイヤは路面とのグリップ力を失って当該駆動輪に過大
なスリップが発生してしまった場合、アクセルペダルの
操作量に比して車速が増速しないなどの経験則を判定条
件として,この状態はアクセルペダルの踏込み量が大き
過ぎてエンジンの回転速度が増速し過ぎ、結果的に駆動
輪への駆動力がタイヤのグリップ力を越えて大きくなり
過ぎて駆動輪速が車体速よりも大きくなっている状態,
即ち前述のスリップ率が大きくなり過ぎている状態であ
ると判定し、当該駆動輪速が前記目標車輪速の範囲に納
まるようにアクセルペダルの踏込み量を小さくする,所
謂アクセルペダル足戻しとか足離しといった操作をして
エンジンからの駆動輪への駆動力を小さくすると共に、
この場合はタイヤのグリップ力と等価な,路面が駆動輪
を回転してくれる路面回転駆動力によって当該駆動輪速
を車速に向けて小さく収束させる。このとき、前述のよ
うに出力側にワンウエイクラッチ等の動力伝達方向規制
手段を持たない無段変速機では,この路面回転駆動力が
無段変速機自体のもつ回転慣性に抗して駆動輪を回転さ
せなければならないという問題もあるのだが、ここでは
アクセルペダル足戻しとか足離し時にエンジンからの駆
動輪への駆動力が小さい状態で,路面回転駆動力によっ
て駆動輪速は速やかに車体速まで収束するものとする。
【0013】このときのアクセルペダル操作状態,即ち
スロットル開度と、駆動輪速として得られる車速との経
時的変化を、前記無段変速機の変速比制御マップにあて
はめて考えてみる。まず、車両を発進させようとしてア
クセルペダルを比較的大きく踏込んだときにはスロット
ル開度も速やかに大きくなり,車速として検出される駆
動輪速はこれに遅れて増速するために、この時間の無段
変速機の変速比は,前述の最大変速比に保持されるか或
いはこの最大変速比に近い比較的大きな変速比の近傍で
推移することになろう。次いで、前述のような或る程度
以上の運転者であればどこまでもアクセルペダルを踏込
むことはないから,或る踏込み量で収束又は固定し、ス
ロットル開度も或る一定又はほぼ一定の状態となる。し
かし、駆動輪は,既にスロットル開度に応じた十分なエ
ンジンからの駆動力によって次第にスリップ量が大きく
なり、実際の車速はさほど増速していないにも関わら
ず,車速として検出される駆動輪速は速やかに大きくな
るから、前記変速比制御マップでは,あたかもスロット
ル開度一定又はほぼ一定で車速が増速しているものとし
て、無段変速機の変速比を比較的速やかに小さな変速比
に変更制御する。このとき、無段変速機の変速比制御に
よって車両減速比が速やかに小さくなれば駆動輪への回
転駆動力も小さくなるが、ここでは,ここに至るまでの
変速比制御,即ち前述の最大変速比に保持されたり比較
的大きな変速比の近傍で推移したりする変速比制御によ
って、当該駆動輪は既に前記目標車輪速を満足する目標
スリップ率を越えてスリップしていて,タイヤのグリッ
プ力がエンジンからの駆動力に追従しきれず、むしろ,
車両減速比が小さくなる,つまり最終出力軸回転速度が
大きくなるにつれて、駆動輪速は単純に増速してしまう
ものとする。
【0014】次いで、運転者が,この駆動輪速の過大な
増速を前述のようにして判定し、アクセルペダルを急激
に戻して例えばスロットル開度が全閉となると、前記変
速比制御マップでは,あたかも車速として検出されてい
る駆動輪速が未だ減速していない或いは余り減速してい
ない状態でスロットル開度が急激に全閉状態となるか
ら、無段変速機の変速比は前記最小変速比か或いは前記
コースト走行変速比制御曲線上の比較的小さな変速比ま
で急激に変更制御される。更に、当該駆動輪速は前記路
面回転駆動力によって制動されるために,比較的速やか
に実際の車体速まで減速することになるが、前記アクセ
ルペダル足戻し又は足離し時にコースト走行変速比制御
曲線上の比較的小さな変速比に変更制御された場合は勿
論、最小変速比に変更制御された場合も,車速として検
出されている駆動輪速が前記所定値以下となると、この
コースト走行変速比制御曲線に従って,無段変速機の変
速比は急激に大きな変速比に変更制御される。
【0015】このとき、問題となるのは,前記無段変速
機の変速比変更制御の後段部分、即ちアクセルペダルの
急激な足戻し又は足離し時の制御である。具体的には、
前述のようにアクセルペダルの足戻し又は足離しの直後
に無段変速機の変速比が急激に小さくなり、その後,速
やかに大きく変更制御されるために、この間の前記プー
リの大きくて速いV溝幅変更制御に伴ってショックが発
生する。また、例えば前記アクセルペダルの急激な足戻
し又は足離しの直後に,未だエンジンの回転速度が十分
に減速していないにも関わらず、前述のように無段変速
機の変速比が急激に小さくなると,当該エンジンの持つ
回転慣性,所謂イナーシャトルクが急激に駆動輪に伝達
されてしまい、これが車両を前方に飛び出させるような
エネルギとして放出されて,所謂突走り感がある。ま
た、その直後に,今度は無段変速機の変速比が急激に大
きくなると、各駆動輪に急激な制動力が作用して,所謂
つんのめり感がある。
【0016】本発明はこれらの諸問題に鑑みて開発され
たものであり、特に低μ路面の発進加速時等で駆動輪が
急激にスリップし、これに伴ってアクセルペダルを急激
に足戻し操作又は足離し操作した際に発生する変速ショ
ックを抑制防止してスムーズな加速感が得られる無段変
速機の制御装置を提供することを目的とするものであ
る。
【0017】
【課題を解決するための手段】本件発明者は前記諸問題
を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下の知見を得て
本発明を開発した。即ち、前述の低μ路面における発進
加速時等のように,アクセルペダルの踏込み量等のアク
セルペダル操作状態が大き過ぎた結果,駆動輪への駆動
力がタイヤのグリップ力を越えて大きくなり過ぎて当該
駆動輪速が大きくなり過ぎると共にそのスリップ率が大
きくなり過ぎ、これを感知した運転者が今度はアクセル
ペダルを急激に足戻し操作又は足離し操作したときに、
前述のような変速ショックや車両のつんのめり感が発生
するのは,その間の駆動輪速から検出される車速の変動
が大き過ぎるためであり、また車両の突走り感が発生す
るのはアクセルペダルの操作状態として検出されるスロ
ットル開度が大きく且つ速く変化するためである。しか
しながら、通常の無段変速機の変速比制御では、アクセ
ルペダルの操作状態検出値,即ちスロットル開度の変化
に対する変速比変化の応答性は速い方が好ましいため、
変速比変更制御の変速速度を大きいものとしており、ま
た車速も現時点では駆動輪速(具体的には最終出力軸回
転速度)から検出するのが最も好適であるとして,これ
も変更しにくい。そこで、前記の二つの条件,即ち駆動
輪への駆動力がタイヤのグリップ力に対して大き過ぎる
という条件とアクセルペダルが閉じ方向に操作されてい
るという条件とが同時に満足されるときに,無段変速機
の変速比を固定保持してしまえばよい。ここで、駆動輪
への駆動力がタイヤのグリップ力に対して大き過ぎるこ
とを直接的に検出するのは、例えば駆動輪軸にロードセ
ル等の回転力検出センサを取付けたとしても,そこから
検出される回転力が,実際のエンジンの出力や路面μに
係るタイヤのグリップ力等の影響を受けているために困
難なものとなる。要求するのは,駆動輪速が大幅に増速
して過大にスリップしてしまうような力であるから、こ
れを当該駆動輪の加速度として検出すればよいことにな
り、この加速度を所定値と比較することで,駆動輪への
駆動力が過大であるか否か,即ち駆動輪がスリップする
のかしないのかを判定することができよう。
【0018】また、この無段変速機の変速比固定制御を
いつ解除するかであるが、前記駆動輪のスリップを感知
した運転者が意識的にアクセルペダルを足戻し操作又は
足離し操作するのに対して、前記変速比固定制御は,運
転者の意思と無関係に実施されるのであるから、運転者
が再びアクセルペダルを踏込む等の操作のできるとき、
即ち駆動輪速のスリップ率が,前記目標スリップ率等の
所定値以下となったときに行えば、そのときに運転者
が,例えばインストゥルメントパネルから読み取れる或
いはエンジンノイズから経験則に従って感知できるエン
ジン回転速度と体感車体速とから駆動輪のスリップの収
束を判定してアクセルペダルを操作すれば、これに応じ
て無段変速機の変速比が変更制御開始できることにな
る。
【0019】また、前記検出された駆動輪加速度が駆動
輪に掛かる駆動力と等価であるとして、この駆動力を比
較すべき前記所定加速度値は,実際の車体を走行させる
力に応じたものであるのが望ましい。つまり、駆動輪加
速度に現れる駆動輪駆動力が,車体の走行に如何程消費
されているかを比較検証することで、その残余分が駆動
輪をスリップさせる駆動力であることを検知することが
できる。そこで、この比較対象となる所定加速度値には
車体加速度を用いることにする。
【0020】また、通常変速比制御において,アクセル
ペダルの足戻し操作や足離し操作に伴ってスロットル開
度が閉じ方向に操作され、その結果,例えば前記コース
ト走行変速比制御曲線等に従って変速比が大きく変更制
御される場合には、エンジンブレーキによる制動力を得
るといった意味合いからも,速い速度に設定された変速
比制御の変速速度で高応答に変速比制御を実行すること
が望ましいが、例えば前述のような低μ路面でスリップ
率の収束に伴って変速比固定制御を解除したとき、この
解除時点の目標変速比が,固定変速比に対して相当に大
きな場合には、この速い変速速度で目標変速比到達制御
を行ってしまうと,車両減速比が急激に大きくなり、こ
のとき未だエンジンの回転速度,即ちエンジン出力は小
さいままであると考えられるから、駆動輪には急激な制
動力がかかってつんのめり感が発生したり、或いは駆動
輪がロック傾向になってしまったりする虞れがある。そ
こで、前記変速比固定解除制御を実施したときに,目標
変速比が固定変速比よりも大きいときには変速速度を小
さく調整するようにした。
【0021】而して、本発明のうち請求項1に係る無段
変速機の制御装置は、図1の基本構成図に示すように,
アクセルペダルの操作状態を検出するアクセルペダル操
作状態検出手段と、車両の前後方向速度を検出する車速
検出手段と、前記アクセルペダル操作状態検出手段で検
出されたアクセルペダル操作状態検出値及び前記車速検
出手段で検出された車速検出値に基づいて算出された目
標変速比に対して,車両に搭載された無段変速機の変速
比を制御する変速比制御手段とを備えた無段変速機の制
御装置において、駆動輪回転の加速度を検出する駆動輪
加速度検出手段を備え、前記変速比制御手段は、前記ア
クセルペダル操作状態検出手段で検出されたアクセルペ
ダル操作状態検出値からアクセルペダルが閉じ方向に操
作され且つ前記駆動輪加速度検出手段で検出された駆動
輪加速度検出値が所定駆動輪加速度値以上のときに,前
記無段変速機の変速比をその時点の変速比に固定保持制
御する変速比固定手段を備えたことを特徴とするもので
ある。
【0022】また、本発明のうち請求項2に係る無段変
速機の制御装置は、図1の基本構成図に示すように,駆
動輪の回転速度を検出する駆動輪速検出手段を備え、前
記変速比制御手段は、前記駆動輪速検出手段で検出され
た駆動輪速検出値から得られる駆動輪スリップ率が所定
スリップ率値以下のときに,前記変速比固定手段による
無段変速機の変速比固定保持制御を解除する変速比固定
解除手段を備えたことを特徴とするものである。
【0023】また、本発明のうち請求項3に係る無段変
速機の制御装置は、図1の基本構成図に示すように,車
体に発生する加速度を検出する車体加速度検出手段を備
え、前記変速比固定手段で用いられる所定駆動輪加速度
値が,前記車体加速度検出手段で検出された車体加速度
検出値であることを特徴とするものである。また、本発
明のうち請求項4に係る無段変速機の制御装置は、図1
の基本構成図に示すように,前記変速比制御手段が、前
記変速比固定解除手段で解除されたときの無段変速機の
変速比よりも前記目標変速比が大きいときに,無段変速
機の変速比変更制御の変速速度を小さく調整する変速速
度調整手段を備えたことを特徴とするものである。
【0024】
【作用】本発明のうち請求項1に係る無段変速機の制御
装置では、図1の基本構成図に示すように、前記変速比
制御手段は、例えば前述したように前記車速検出手段で
検出された車速検出値を変数とし且つアクセルペダル操
作状態検出手段で検出されたスロットル開度等のアクセ
ルペダル操作状態検出値をパラメータとした無段変速機
の変速比制御マップ中の変速比マトリックス等から、当
該車両走行状態並びに操縦入力に応じた目標変速比を設
定して,この目標変速比が達成されるように無段変速機
の変速比を変更制御するが、前記駆動輪加速度検出手段
で検出された駆動輪加速度検出値が所定加速度値以上で
あって,正に駆動輪をスリップさせるに足る駆動力が作
用していると判定され、同時に前記アクセルペダル操作
状態検出値からアクセルペダルが閉じ方向に操作されて
いると判定されたときに、前記変速比制御手段に備えら
れた変速比固定手段が,無段変速機の変速比をその直前
の変速比に固定してしまうため、例えば前述のように実
際に駆動輪に過大なスリップが発生してしまい、その結
果,運転者がアクセルペダルを急激に足戻し操作又は足
離し操作したときに、例えば前述した変速比制御マップ
のスロットル開度が急激に減少したとして当該アクセル
ペダル足戻し又は足離し操作直後に無段変速機の変速比
が急激に小さくなったり、更にその後に車速として検出
されている駆動輪速が急激に減速したとして無段変速機
の変速比が前記コースト走行変速比制御曲線に従って急
激に大きくなったりすることがなく、それらに伴う変速
ショックや車両の突走り感やつんのめり感等が発生する
こともない。
【0025】また、本発明のうち請求項2に係る無段変
速機の制御装置では、図1の基本構成図に示すように,
前記車両に備えられた駆動輪速検出手段で駆動輪速を検
出し、この駆動輪速検出値と,例えば前記車速検出手段
で検出された車速検出値とから得られるスリップ率が,
例えば前記舵取り効果や発進加速性能を確保するのに十
分な目標スリップ率の範囲内に設定された所定スリップ
率以下となったときに、前記変速比固定解除手段が前述
の変速比固定保持制御を解除するために、例えば運転者
が経験則から駆動輪のスリップが収束して再び加速する
ためにアクセルペダルの踏込みを再開したときには,既
に前記変速比固定制御が解除されて通常の変速比制御が
実行される状態となり、車両走行に支障を来す駆動輪の
過大なスリップをフィードバックしながら運転者の意思
を反映することができる。
【0026】また、本発明のうち請求項3に係る無段変
速機の制御装置では、図1の基本構成図に示すように,
前記車両に備えられた車体加速度検出手段で車体に発生
する加速度を検出し、前記変速比固定手段で用いられる
所定駆動輪加速度値に,この車体加速度検出手段で検出
された車体加速度検出値を用いたために、前記駆動輪に
かかる駆動力としての車輪加速度検出値を,車体を移動
する力である車体加速度検出値と比較することで、当該
駆動輪の駆動力が,路面μ等を介して車体速の移動力と
して如何様に作用しているかを正確に判定することがで
き、これにより当該駆動力が駆動輪にスリップを発生す
るに足るものであるか否かの判定を正確に行うことがで
きる。
【0027】また、本発明のうち請求項4に係る無段変
速機の制御装置では、図1の基本構成図に示すように,
変速比制御手段に備えられた変速速度調整手段が、前記
変速比固定解除手段により変速比固定保持制御を解除し
たときの目標変速比が,固定変速比よりも大きいとき
に,無段変速機の変速比変更制御の変速速度を小さく調
整するために、例えば未だエンジンの回転速度,即ちエ
ンジン出力は小さい状態で車両減速比が急激に大きくな
って,駆動輪に急激な制動力がかかってつんのめり感が
発生したり、或いは駆動輪がロック傾向になったりする
のを抑制防止することができる。
【0028】
【実施例】以下、本発明の無段変速機の制御装置を実際
の車両に適用した一実施例を図2〜図15に基づいて説
明する。図2は、本発明の一実施例に相当する無段変速
機の動力伝達機構を示すスケルトン図である。この実施
例の無段変速機は、機関(すなわち、エンジン)の回転
駆動力によって回転駆動される駆動輪が前左右輪であ
る、所謂FF(フロントエンジンフロントドライブ)車
両に適用されたものである。ちなみに、本実施例の車両
には,駆動輪の過大なスリップを検出して当該駆動輪へ
の駆動力を小さくすべく、例えばエンジンの回転出力を
低減したり,或いは駆動輪のブレーキを作動して制動力
を付与したりする,所謂駆動力制御装置(トラクション
コントロールシステム)を搭載していないものとする。
また、氷雪路面や濡れたタイル路面での制動中の車輪の
ロックを防止するアンチスキッド制御装置を搭載してい
るものとする。
【0029】また、本実施例の車両に搭載される無段変
速機は、通常、前進走行用の変速シフトポジションとし
て、通常走行レンジと通常走行変速比制御領域よりも最
小変速比の大きいエンジンブレーキレンジとを備えてい
る。そして、変速シフトポジションに通常走行レンジ
(一般にいうDレンジであり、以下、単に「Dレンジ」
と略称することもある。)が選択されているときには、
後述するように通常走行に好適な通常走行変速比制御領
域(Dレンジ変速比領域)内で、エンジンブレーキレン
ジ(一般にいう2レンジまたはDsレンジおよびLレン
ジまたは1レンジであり、以下、単に「2レンジ」、
「Lレンジ」と略称することもある。)が選択されてい
るときにはエンジンブレーキレンジ制御領域(2レンジ
変速比領域またはLレンジ変速比領域)内で、それぞれ
車速およびスロットル開度に応じて無段変速機の変速比
を制御する。
【0030】このように、変速シフトポジションにエン
ジンブレーキレンジを備えている無段変速機が搭載され
た車両においては、アクセルペダルの踏み込みを解除し
てスロットル開度をほぼ“0”とした状態で、前記Dレ
ンジから2レンジまたはLレンジにシフトポジションを
移行することにより、車両全体の減速比としての変速比
を大きくして、エンジンブレーキによる車速低減を行う
ことができる。また、スロットル開度が大きい状態でシ
フトポジションを前記Dレンジから2レンジまたはLレ
ンジに移行してアクセルペダルを踏み込むことにより、
エンジンの回転駆動力を上げて車両をより大きく加速す
ることもできる。
【0031】この無段変速機の動力伝達機構は、図2に
明示するように,フルードカップリング12、前後進切
換機構15、Vベルト式無段変速機構29、差動装置5
6等を有しており、エンジン10の出力軸10aの回転
を、所定の変速比および回転方向で左右のドライブシャ
フト66,68に伝達することができる。そして、回転
駆動源としてのエンジン10の出力軸10aには、流体
伝動装置であるフルードカップリング12が連結されて
いる。このフルードカップリング12は、ロックアップ
機構付きのものであり、ロックアップ油室12aの油圧
を制御して、ロックアップピストン12dを移動させる
ことにより、入力側のポンプインペラー12bと出力側
のタービンライナ12cとを機械的に連結可能、又は切
り離し可能である。また、フルードカップリング12の
出力側は、前後進切換機構15の回転軸13と連結され
ており、前後進切換機構15は、遊星歯車機構17、前
進用クラッチ40、および後進用ブレーキ50を有して
いる。なお、前記フルードカップリングには,所謂,通
常のトルクコンバータを採用することも可能である。
【0032】また前記遊星歯車機構17は、サンギヤ1
9と、2つのピニオンギヤ21及び23を有するピニオ
ンキャリア25と、インターナルギヤ27とから構成さ
れている。2つのピニオンギヤ21及び23は互いに噛
合しており、ピニオンギヤ21はサンギヤ19と噛合し
ており、またピニオンギヤ23はインターナルギヤ27
と噛合している。サンギヤ19は常に回転軸13と一体
に回転するように連結されている。ピニオンキャリア2
5は前進用クラッチ40によって回転軸13と連結可能
である。また、インターナルギヤ27は後進用ブレーキ
50によって静止部に対して固定可能である。ピニオン
キャリア25は回転軸13の外周に配置された駆動軸1
4と連結され、この駆動軸14には駆動プーリ16が設
けられている。
【0033】このうち駆動プーリ16は、駆動軸14と
一体に回転する固定円錐板18と、固定円錐板18に対
向配置されてV字状プーリ溝を形成すると共に、駆動プ
ーリシリンダ室20に作用する油圧によって駆動軸14
の軸方向に移動可能である可動円錐板22とから構成さ
れている。なお、駆動プーリシリンダ室20は、室20
a及び20bの2室からなり、後述する従動プーリシリ
ンダ室32の2倍の受圧面積を有している。駆動プーリ
16はVベルト24によって従動プーリ26と伝動可能
に連結されている。
【0034】また、前記従動プーリ26は、従動軸28
上に設けられ、従動軸28と一体に回転する固定円錐板
30と、固定円錐板30に対向配置されてV字状プーリ
溝を形成すると共に、従動プーリシリンダ室32に作用
する油圧によって従動軸28の軸方向に移動可能である
可動円錐板34とから構成されている。これらの駆動プ
ーリ16、Vベルト24及び従動プーリ26により、V
ベルト式無段変速機構29が構成される。そして、前記
従動軸28には駆動ギヤ46が固着されており、この駆
動ギヤ46はアイドラ軸52上のアイドラギヤ48と噛
合している。更に、前記アイドラ軸52に設けられたピ
ニオンギヤ54はファイナルギヤ44と常に噛合してい
る。また、前記ファイナルギヤ44には、差動装置56
を構成する一対のピニオンギヤ58及び60が取付けら
れており、このピニオンギヤ58及び60と一対のサイ
ドギヤ62及び64が噛合しており、サイドギヤ62及
び64は夫々出力軸66及び68と連結されている。
【0035】上記のような動力伝達機構にエンジン10
の出力軸10aから入力された回転力は、フルードカッ
プリング12及び回転軸13を介して前後進切換機構1
5に伝達され、前進用クラッチ40が締結されると共に
後進用ブレーキ50が解放されている場合には、一体回
転状態となっている遊星歯車機構17を介して回転軸1
3の回転力が同じ回転方向のまま駆動軸14に伝達され
る。一方、前進用クラッチ40が解放されると共に後進
用ブレーキ50が締結されている場合には、遊星歯車機
構17の作用により回転軸13の回転力は回転方向が逆
になった状態で駆動軸14に伝達される。駆動軸14の
回転力は、駆動プーリ16、Vベルト24、従動プーリ
26、従動軸28、駆動ギヤ46、アイドラギヤ48、
アイドラ軸52、ピニオンギヤ54及びファイナルギヤ
44を介して差動装置56に伝達され、左右のドライブ
シャフト66,68が前進方向又は後進方向に回転す
る。なお、前進用クラッチ40及び後進用ブレーキ50
の両方が解放されている場合には、動力伝達機構は中立
状態となる。
【0036】上記のような動力伝達の際に、駆動プーリ
16の可動円錐板22及び従動プーリ26の可動円錐板
34を軸方向に移動させてVベルト24との接触位置半
径を変えることにより、駆動プーリ16と従動プーリ2
6との回転比を変えることができる。例えば、駆動プー
リ16のV字状プーリ溝の幅を拡大すると共に、従動プ
ーリ26のV字状プーリ溝の幅を縮小すれば、駆動プー
リ16側のVベルトの接触位置半径は小さくなり、従動
プーリ26側のVベルトの接触位置半径は大きくなるた
め、大きな変速比が得られることになる。可動円錐板2
2及び34を逆方向に移動させれば、上記と全く逆に変
速比は小さくなる。なお、このプーリ比接触位置半径変
更制御は、後述するように何れか一方のプーリ,本実施
例では駆動プーリ16のV字状プーリ溝幅を変更制御す
ることで、他方のプーリ,本実施例では従動プーリ26
のV字状プーリ溝幅が自動的に変更制御され、これは既
知のように前述のVベルト24が,通常のベルト機構の
ように引張り方向に駆動力を伝達するのに対して,主と
して押圧方向に駆動力を伝達するものであるためであ
る。
【0037】次に、この無段変速機の油圧制御装置につ
いて説明する。この油圧制御装置は、図3に示すよう
に、オイルポンプ101、ライン圧調圧弁102、マニ
ュアル弁104、変速制御弁106、ステップモータ1
08、変速比圧弁110、変速操作機構112、切換弁
114、プレッシャーモディファイヤ弁116、一定圧
調圧弁118、モディファイヤ用デューティ弁120、
クラッチリリーフ弁122、トルクコンバータリリーフ
弁124、ロックアップ制御弁126、ロックアップ用
デューティ弁128、クラッチ接離制御用デューティ弁
129、変速指令弁150等で構成されている。
【0038】前記オイルポンプ101は、タンク130
内の油をストレーナ131を介して吸引し、油路132
に吐出する。油路132の吐出油は、ライン圧調圧弁1
02のポート102a,102bに供給されて、このラ
イン圧調圧弁102で所定圧力のライン圧として調圧さ
れ、この調圧されたライン圧が従動プーリシリンダ室3
2、変速制御弁106のポート106a及び切換弁11
4の入力ポート114aに夫々供給される。なお、前記
油路132には、ライン圧の異常高圧を抑制するパイロ
ットリリーフ弁133kが設けられている。
【0039】前記切換弁114は、ライン圧が供給され
る入力ポート114a、ライン圧調圧弁102のポート
102fに連通された出力ポート114b、タンク13
0に連通されたドレーンポート114c及びモディファ
イヤ用デューティ弁120の出力圧がパイロット圧とし
て供給されるパイロットポート114dと、スプール1
14eとを備え、パイロットポート114dのパイロッ
ト圧が略零であるときに入力ポート114a、出力ポー
ト114b及びドレーンポート114cが連通状態とな
るが、パイロットポート114dのパイロット圧が高く
なるとドレーンポート114cがスプール114eによ
って閉鎖される。なお、この切換弁114の入力ポート
114aは、前記油路132に連通する油路133が,
その途中にセパレータ133sを介装することにより遮
断されていると共に、前記出力ポート114bと前記ラ
イン圧調圧弁102のパイロットポート102fとを連
通する油路134が,その途中にセパレータ134sを
介装することにより遮断されている。
【0040】前記プレッシャーモディファイヤ弁116
は、前記ライン圧調圧弁102のパイロットポート10
2fに連通されたポート116a、モディファイヤ用デ
ューティ弁120の出力圧がパイロット圧として供給さ
れるパイロットポート116b、タンク130に連通さ
れたドレーンポート116c及びライン圧調圧弁102
の出力ポート102dに連通された入力ポート116d
の四つのポートと、2つのランド116e,116fを
有するスプール116gと、このスプール116gをパ
イロットポート116b側に付勢するリターンスプリン
グ116hとを備えており、パイロットポート116b
のパイロット圧が略零であるときにポート116aとド
レーンポート116cとが連通状態となるが、パイロッ
ト圧が高くなるとこれに応じてスプール116gが図3
において上動してポート116a及び116d間が連通
状態となる。
【0041】前記一定圧調圧弁118は、ライン圧調圧
弁102の出力ポート102dに連通された入力ポート
118a、出力ポート118b、出力ポート118bの
出力圧がフィルタ118cを介してパイロット圧として
供給されるパイロットポート118d及びタンク130
に連通されたドレーンポート118eの四つのポート
と、2つのランド118f及び118gを有するスプー
ル118hと、スプール118hをパイロットポート1
18d側に付勢するリターンスプリング118iとを備
えており、前記パイロットポート118dの入口にはオ
リフィス118jが設けられている。この一定圧調圧弁
118は、周知のパイロット圧による調圧作用によりス
プリング118iの付勢力に対応した一定の油圧を調圧
し、これを出力ポート118bを介してモディファイヤ
用デューティ弁120、ロックアップ用デューティ弁1
28及びクラッチ接離制御用デューティ弁129に供給
する。
【0042】前記モディファイヤ用デューティ弁120
は、入力ポート120aが前記一定圧調圧弁118の出
力ポート118bに連通され、出力ポート120bが切
換弁114のパイロットポート114d、プレッシャー
モディファイヤ弁116のパイロットポート116b、
クラッチリリーフ弁122の外部パイロットポート12
2cに連通され、ドレーンポート120cがタンク13
0に連通され、変速制御装置300から供給される目標
変速比に対応したデューティ比の駆動電流によって、出
力ポート120bからデューティ比に応じたモディファ
イヤ制御圧を出力する。
【0043】前記ロックアップ用デューティ弁128
は、入力ポート128aが前記一定圧調圧弁118の出
力ポート118bに接続され、出力ポート128bが後
述する変速指令弁150の入力ポート150aに接続さ
れ、さらにライン圧調圧弁102のパイロットポート1
02e,及びクラッチリリーフ弁122のパイロットポ
ート122cに接続され、ドレーンポート128cがタ
ンク130に接続され、後述する変速制御装置300か
ら供給される所定デューティ比の駆動電流よって、出力
ポート128bからロックアップ制御圧PLUを出力す
る。ここで、前記出力ポート128bとライン圧調圧弁
102のパイロットポート102e及びクラッチリリー
フ弁122のパイロットポート122cとの間を接続す
る油路135及び油路136がそれらの途中に介装され
たセパレータ135s及び136sによって遮断されて
いる。
【0044】前記クラッチ接離制御用デューティ弁12
9は、入力ポート129aが前記一定圧調圧弁118の
出力ポート118bに連通され、出力ポート129bが
後述する後進用ブレーキ制御弁140及び前進用クラッ
チ制御弁142のパイロットポート140h及び142
hに連通され、ドレーンポート129cがタンク130
に連通され、後述する変速制御装置300からクリープ
制御時やアンチスキッド制御装置を搭載する車両にあっ
てはそのアンチスキッド制御時に供給される所定デュー
ティ比の駆動電流によって、出力ポート129bからデ
ューティ比に応じたクラッチ制御圧PCCを出力する。
【0045】前記ライン圧調圧弁102は、そのシリン
ダ中に形成されている大径孔部102gに形成された入
力ポート102a、パイロットポート102c、大径孔
部102gに連通する中径孔部102hに形成されたパ
イロットポート102e、この中径孔部102hに連通
する小径孔部102iに形成されたパイロットポート1
02b及びこの小径孔部102iに連通する特大径孔部
102jに形成されたパイロットポート102fの五つ
のポートと、各孔部102g〜102jに対応するラン
ド102o,102p,102q,102rを有するス
プール102sとで形成され、各パイロットポート10
2b,102c,102e及び102fに供給されるパ
イロット圧と受圧面積による推力バランスによってスプ
ール102sが図3において左右動して入力ポート10
2a及び出力ポート102d間の開口面積を調整してラ
イン圧を調圧する。
【0046】前記マニュアル弁104は、ライン圧調圧
弁102の出力ポート102dに連通する入力ポート1
04a、Rレンジポート104b、Dレンジポート10
4c、Lレンジポート104d及び両端のドレーンポー
ト104e,104fの六つのポートと、2つのランド
104g,104hを有するスプール104iとから構
成されている。そして、前記スプール104iは、運転
席近傍に設けたセレクトレバー(図示せず)によって動
作され、P,R,N,D,2,Lレンジの6つの停止位
置を有している。そして、Rレンジポート104bが後
進用ブレーキ制御弁140を介して後進用ブレーキ50
に連通され、Dレンジポート104c及びLレンジポー
ト104dが前進用クラッチ制御弁142を介して前進
用クラッチ40に連通されている。なお、このマニュア
ル弁104において,前記シフトポジションが2レンジ
に停止したときの具体的な作動油圧の変化はなく、後述
するマイクロコンピュータによる演算処理が,当該2レ
ンジに応じた変速比制御及び油圧制御を実行するだけで
ある。
【0047】前記後進用ブレーキ制御弁140は、前記
マニュアル弁104のRレンジポート104bに連通す
る入力ポート140a、後進用ブレーキ50にオリフィ
ス140b及び140cを介して連通する出力ポート1
40d、タンク130に連通するドレーンポート140
e、出力ポート140dの出力圧がオリフィス140f
を介してパイロット圧として供給されるパイロットポー
ト140g及びクラッチ制御用デューティ弁129の出
力ポート129bに連通されたパイロットポート140
hの五つのポートと、3つのランド140i,140
j,140kを有するスプール140mと、このスプー
ル140mをパイロットポート140g,140h側に
付勢するリターンスプリング140nとから構成されて
いる。なお、オリフィス140b及び140cには、こ
れらと並列に後進用ブレーキ50から後進用ブレーキ制
御弁140に流出する作動油を阻止する逆止弁140o
及び後進用ブレーキ制御弁140から後進用ブレーキ5
0に流入する作動油を阻止する逆止弁140pが介挿さ
れている。
【0048】前記前進用クラッチ制御弁142は、マニ
ュアル弁104のDレンジポート104cにオリフィス
142aを介して連通する入力ポート142b、前進用
クラッチ40にオリフィス142cを介して連通する出
力ポート142d、タンク130に連通するドレーンポ
ート142e、出力ポート142dの出力圧がオリフィ
ス142fを介してパイロット圧として供給されるパイ
ロットポート142g及びクラッチ制御用デューティ弁
129の出力ポート129bに連通されたパイロットポ
ート142hの五つのポートと、3つのランド142
i,142j,142kを有するスプール142mと、
このスプール142mをパイロットポート142g,1
42h側に付勢するリターンスプリング142nとから
構成されている。なお、オリフィス142aと並列にク
ラッチ制御弁142からマニュアル弁104に流出する
作動油を阻止する逆止弁142oが介挿され、且つオリ
フィス142cと並列に前進用クラッチ制御弁142か
ら前進用クラッチ40に流入する作動油を阻止する逆止
弁142pが介挿されている。
【0049】前記クラッチリリーフ弁122は、そのシ
リンダ中に形成されている大径孔部122eに形成され
た入力ポート122a及び出力ポート122dと、この
大径孔部122eに連通する中径孔部122fに形成さ
れたパイロットポート122bと、この中径孔部122
fに連通する小径孔部122gに形成されたパイロット
ポート122cと、各孔部122e,122f及び12
2gに係合するランド122h,122i及び122j
を有するスプール122kと、このスプール122kを
パイロットポート122b及び122c側に付勢するリ
ターンスプリング122mとから構成されている。ここ
で、前記入力ポート122aは前記ライン圧調圧弁10
2の出力ポート102dに直接連通され、パイロットポ
ート122bはオリフィス122nを介してライン圧調
圧弁102の出力ポート102dに連通され、パイロッ
トポート122cは前記モディファイヤ用デューティ弁
120の出力ポート120b及びロックアップ用デュー
ティ弁128の出力ポート128bに連通され、出力ポ
ート122dはトルクコンバータリリーフ弁124の入
力ポート124aに連通されている。
【0050】前記トルクコンバータリリーフ弁124
は、前記クラッチリリーフ弁122の出力ポート122
dに連通された入力ポート124aと、出力ポート12
4bと、1つのランド124cを有するスプール124
dと、このスプール124dを出力ポート124bの閉
塞方向に付勢するリターンスプリング124eとから構
成され、出力ポート124bが潤滑用圧力を設定する潤
滑リリーフボール144を介してオイルポンプ101の
吸込み側に戻されると共に、ディファレンシャルギヤ、
パワートレーン、ベルト等の潤滑系に潤滑用として出力
される。
【0051】前記ロックアップ制御弁126は、そのシ
リンダ中に形成されている大径孔部126aに形成され
たクラッチリリーフ弁122の出力ポート122dに連
通される入力ポート126b、ロックアップ油室12a
に連通された出力ポート126c、フルードカップリン
グ12に連通された出力ポート126d、クーラー14
6に連通された出力ポート126e、上述した潤滑系に
連通された出力ポート126f及びタンク130に連通
されたドレーンポート126gの六つのポートと、小径
孔部126hに形成された出力ポート126cにオリフ
ィス148を介して連通されたパイロットポート126
i及び変速指令弁150の出力ポート150bに連通さ
れたパイロットポート126jと、大径孔部126aに
係合する4つのランド126m,126n,126o,
126pと小径孔部126hに係合するランド126r
とを有するスプール126sと、このスプール126s
をパイロットポート126i及び126j側に付勢する
リターンスプリング126tとから構成されている。な
お、前記出力ポート126dとフルードカップリング1
2とを連通する油路149には、異常高圧を抑制するリ
リーフ弁152が接続されている。
【0052】前記変速制御弁106は、入力ポート10
6a,出力ポート106b及び調圧ポート106cの三
つのポートと、3つのランド106d,106e及び1
06fを有するスプール106gとを備えており、入力
ポート106aがライン圧が供給される油路132に連
通され、出力ポート106bが駆動プーリ16の駆動プ
ーリシリンダ室20に連通され、調圧ポート106cが
駆動プーリシリンダ圧を予め設定された所定圧に保圧す
る保圧弁160を介してタンク130に連通され、且つ
スプール106gの上端が後述する変速操作機構112
のレバー178の略中央部にピン181によって回転自
在に連結されている。したがって、一定の変速比を維持
する場合には、図3において、ランド106eによって
出力ポート106bが閉塞されているため、駆動プーリ
シリンダ室20へのライン圧供給が遮断状態にあるもの
とすると、スプール106gが図3において上動するこ
とにより、入力ポート106aと出力ポート106bと
が連通状態となって、所定のライン圧が駆動プーリシリ
ンダ室20に供給されて増圧されることにより、駆動プ
ーリ16のV字状プーリ溝の幅が小さくなり、他方、従
動プーリ26のV字状プーリ溝の幅が大きくなる。すな
わち、駆動プーリ16のVベルト接触半径が大きくなる
と共に従動プーリ26のVベルト接触半径が小さくなる
ので、変速比は小さくなる。逆にスプール106gを図
3で下動させると、上記とは全く逆の作用により、変速
比は大きくなる。
【0053】前記変速操作機構112のレバー178
は、前述したようにその略中央部において変速制御弁1
06のスプール106gとピン181によって結合され
ているが、レバー178の一端は、駆動プーリ16の軸
14と平行に配設された断面方形の案内軸162に摺動
自在に装着され、且つ外周縁に形成されたフランジ16
4aの外周縁の一部が駆動プーリ16の可動円錐板22
の外周に設けた溝22aに係合して、可動円錐板22の
軸方向の移動に応じて移動するセンサーシュー164
に、ピン183と図示しない長孔とによって連結され、
他端がロッド182にピン185によって連結されてい
る。ロッド182は、ラック182cを有しており、こ
のラック182cがステップモータ108のピニオンギ
ヤ108aと噛合している。
【0054】このような変速操作機構112において、
後述する図4に示す変速制御装置300によって制御さ
れるステップモータ108が時計方向に回転駆動される
と、ロッド182が下方に移動し、レバー178がピン
183を支点として時計方向に回動し、レバー178に
連結された変速制御弁106のスプール106gを下方
に移動させる。
【0055】これによって、前述したように、駆動プー
リシリンダ室20内の圧油が保圧弁160を介してタン
ク130に戻されるので、駆動プーリシリンダ室20の
シリンダ圧が保圧弁160で設定された圧力まで低下さ
れる。このため、駆動プーリ16の可動円錐板22は図
3中で、上方に移動して、駆動プーリ16のV字状プー
リ溝間隔は大きくなり、同時にこれに伴って従動プーリ
26のV字状プーリ溝間隔は小さくなり、車両減速比で
ある変速比は大きくなる。
【0056】このとき、レバー178の一端はピン18
3によってセンサーシュー164と連結されているの
で、前記駆動プーリ16の可動円錐板22の移動に伴っ
てセンサーシュー164が図3中で上方に移動すると、
今度はレバー178の他端側のピン185を支点として
レバー178は時計方向に回動する。このため、スプー
ル106gは上方に引き戻されて、駆動プーリ16及び
従動プーリ26を変速比が小さい状態にしようとする。
このような動作によって、スプール106g、駆動プー
リ16及び従動プーリ26は、ステップモータ108の
回転位置に対応して目標とする変速比の状態で安定す
る。
【0057】逆に、ステップモータ108を反時計方向
に回転駆動した場合は、上記とは逆に変速制御弁106
のスプール106gが図3中で上方に移動することによ
り、駆動プーリシリンダ室20に所定のライン圧が供給
されて、駆動プーリ16のV字状プーリ溝が小さくな
り、従動プーリ26のV字状プーリ溝が大きくなり、変
速比が小さくなる。このとき、駆動プーリ16における
可動円錐板22の移動に伴ってセンサーシュー164が
図3中で下方に移動するので、変速制御弁106のスプ
ール106gが下方にひき戻されて、駆動プーリ16及
び従動プーリ26を変速比が大きい状態にしようとす
る。このような動作によって、スプール106g、駆動
プーリ16及び従動プーリ26は、ステップモータ10
8の回転位置に対応して目標とする変速比の状態で安定
する。
【0058】したがって、ステップモータ108を所定
の変速パターンに従って作動させると、変速比はこれに
追従して変化することになり、ステップモータ108を
制御することによって無段変速機構の変速を制御するこ
とができる。前記ステップモータ108は、変速制御装
置300から送出されるステップモータ駆動信号に対応
して回転角が決定され、当該ステップモータ駆動信号
は、通常は走行状態に応じた所定の変速パターンに従っ
て与えられる。
【0059】変速比圧弁110は、入力ポート110
a,出力ポート110b,ドレーンポート110c及び
パイロットポート110dの四つのポートと、3つのラ
ンド110e,110f及び110gを有するスプール
110hと、前述したセンサーシュー164に略中央部
に支点を有するレバー170を介して連結されたスプリ
ング止め摺動杆110iと、このスプリング止め摺動杆
110iとスプール110hとの間に介挿され、スプー
ル110hをパイロットポート110d側に付勢するリ
ターンスプリング110jとを備えており、入力ポート
110aが一定圧調圧弁118の入力ポート118aに
連通されていると共に、出力ポート110bがライン圧
調圧弁102のパイロットポート102c及び自身のパ
イロットポート110dに連通され、駆動プーリ16の
V字状プーリ溝間隔が小さいときには、スプリング止め
摺動杆110iが上方の位置をとるため、リターンスプ
リング110jの付勢力が小さくなって、出力ポート1
10bから出力されるパイロット圧が小さくなり、ライ
ン圧調圧弁102で調圧される油路132のライン圧が
小さい状態となり、この状態から駆動プーリ16のV字
状プーリ溝間隔が大きくなるにつれてスプリング止め摺
動杆110iが徐々に下方移動するため、リターンスプ
リング110jの付勢力が大きくなって、出力ポート1
10bから出力されるパイロット圧が徐々に大きくなっ
て、油路132のライン圧が徐々に増加する。
【0060】そして、上記ステップモータ108、モデ
ィファイヤ用デューティ弁120、ロックアップ用デュ
ーティ弁128、及びクラッチ接離制御用デューティ弁
129が、マイクロコンピュータからなる変速制御装置
300によって制御され、当該変速制御装置300に
は、エンジン回転速度センサ301、車速センサ30
2、スロットル開度センサ303、シフトポジションス
イッチ304、タービン回転速度センサ305、エンジ
ン冷却水温センサ306、ブレーキセンサ307、前後
加速度センサ401、左駆動輪速センサ403、右駆動
輪速センサ404、左従動輪速センサ405及び右従動
輪速センサ406からの各検出値が入力される。
【0061】前記エンジン回転速度センサ301は、エ
ンジンのイグニッション点火パルスからエンジン回転速
度NE を検出する。また、車速センサ302は、無段変
速機の出力軸の回転から車速Vを検出する。また、シフ
トポジションスイッチ304は、前述したマニュアル弁
104がP,R,N,D,2,Lのどの位置にあるかを
検出する。また、タービン回転速度センサ305は、前
記フルードカップリング12のタービン軸の回転速度N
t を検出する。また、エンジン冷却水温センサ306
は、エンジン冷却水の温度が一定値以下のときに信号を
発生する。また、ブレーキセンサ307は、車両のブレ
ーキが使用されているか否かを,例えばブレーキペダル
に設けられたスイッチ信号として検出する。また、前記
左駆動輪速センサ403は,本実施例では前左輪の回転
速度VwFLを検出する。また、前記右駆動輪速センサ4
04は,本実施例では前右輪の回転速度VwFRを検出す
る。また、前記左従動輪速センサ405は,本実施例で
は後左輪の回転速度VwRLを検出する。また、前記右従
動輪速センサ406は,本実施例では後右輪の回転速度
VwRRを検出する。
【0062】前記スロットル開度センサ303は、エン
ジンのスロットル開度を電圧信号として検出するもので
あって、ポテンショメータ等から構成され、アクセルペ
ダルの踏込み量を9段階に分割し、このアクセルペダル
の踏込み量が“0”である、即ち、それと等価なスロッ
トル開度が全閉状態である場合を(0/8)とし、アク
セルペダルの踏込み量が最大である、即ち、それと等価
なスロットル開度が全開状態である場合を(8/8)と
して、当該スロットル開度に応じたアナログ信号が出力
されるものである。
【0063】そして、前記変速制御装置300は、図4
に示すように、入力インタフェース311、CPU(中
央処理装置)313、基準パルス発生器312、ROM
(リードオンリメモリ)314、RAM(ランダムアク
セスメモリ)315、及び出力インタフェース316を
少なくとも有しており、これらはアドレスバス319及
びデータバス320によって接続されている。
【0064】そして、前記エンジン回転速度センサ30
1、車速センサ302、及びタービン回転速度センサ3
05からの信号は、夫々波形整形器308,309,3
22を介して入力インタフェース311に供給され、ま
た、スロットル開度センサ303からの電圧信号は、A
/D変換器310を介して当該スロットル開度に応じた
ディジタル信号からなるスロットル開度検出値(単に、
スロットル開度とも記す)THが、前記(n/8)(n
=0〜8の整数)の形式で入力インタフェース311に
供給され、前後加速度センサ401からの電圧信号は、
A/D変換器402によってデジタル信号に変換されて
入力インタフェース311に供給され、各駆動輪速セン
サ403〜406からの信号は、夫々波形整形器407
〜410を介して入力インタフェース311に供給され
る。
【0065】また、基準パルス発生器312は、中央処
理装置313を作動させる基準パルスを発生させるもの
であり、ROM314には、ステップモータ108及び
各デューティ弁120,128及び129を制御するた
めのプログラム及び制御に必要なデータを格納してあ
る。RAM315には、各センサ及びスイッチからの情
報、制御に必要なパラメータ等を一時的に格納する。
【0066】そして、中央処理装置313では、入力イ
ンタフェース311を介して入力した各センサ等からの
データをもとに所定の処理を行い、所定のデータを出力
インタフェース316を介してモータ駆動回路317、
デューティ弁120,128及び129の電磁ソレノイ
ドに出力する。そして、モータ駆動回路317では、変
速制御装置300の出力インタフェース316から出力
されたステップモータ駆動信号を増幅して対応する電圧
信号等に変換し、これをステップモータ108に出力す
るとともに、ステップモータ108に配設した例えばロ
ータリエンコーダ318からの位置情報IS (ステップ
数)を、変速制御装置300の入力インタフェース31
1に出力する。
【0067】ここで、ロータリエンコーダ318からは
ステップモータの位置情報としてステップ数IS が出力
され、後述のように、このステップ数IS に基づいて前
記ステップモータ108の回転角に対応する現在ステッ
プ数PA が算出されるが、この現在ステップ数PA は、
図5に示すように、無段変速機の変速比が車両減速比で
最大の場合に“0”とし、変速比が小さくなるに従って
一意に小さくなるものとする。
【0068】また、前記ステップモータ駆動信号は、所
定時間における総パルス数とそのピッチとを可変とした
パルス信号からなり、当該パルス信号の所定時間におけ
る総パルス数及びパルスピッチを変更制御することで、
ステップモータ108の回転角並びに回転角速度を制御
することができるようにした。なお、この所定時間と
は、後述する変速比制御の演算処理のサンプリング時間
に一致させた。また、前記回転角とステップ数との相関
に従って、ステップモータ駆動信号による総パルス数が
増加するほどステップモータ108の回転角は大きくな
り、同時に、前記図3に示す油圧制御回路並びに図2の
無段変速機構で達成される無段変速機の変速比は,前記
図5に示す特性図に従って小さくなるものとする。な
お、ステップモータが“1”パルスで進む角度がステッ
プ(単位進角)であり、進角はステップにパルス数を乗
じたものとなるから、前記ステップ数はパルス数と等価
なものである。
【0069】そして、前記マイクロコンピュータ300
により、前記無段変速機の変速比制御は図6のフローチ
ャートに示す基準演算処理に従って実行される。後述さ
れるように、この演算処理における各シフトポジション
での変速パターン検索では、前記ステップモータ駆動信
号を設定するためのステップモータ108の目標駆動速
度SPが設定される。ここで、この目標駆動速度SP
は、この演算処理が行われるサンプリング時間毎のステ
ップモータの駆動量(回転角及び回転角速度)を制御す
るためのものであり、変速比を変更制御する変速速度に
相当する。そして、ステップモータ駆動信号として、当
該目標駆動速度SPを達成するステップモータ108の
回転角及び回転角速度に応じた、前記所定時間内の総パ
ルス数及びパルスピッチからなるパルス信号が出力され
る。
【0070】なお、前述のように、前記所定時間は、本
演算処理のタイマ割込み時間、即ちサンプリング時間Δ
Tに一致させた。また、ステップモータ駆動信号は1パ
ルスずつ出力されるわけではないから、前記ロータリエ
ンコーダ318からの検出ステップ数IS に基づいた現
在ステップ数PA (即ちステップモータ108の回転角
と等価なステップ位置)に応じて、前記ステップモータ
駆動信号つまり駆動制御量はフィードバック制御される
こととした。
【0071】この変速比制御の基準演算処理について説
明すれば、図6の演算処理は例えば10msec程度の所定
時間(ΔT)毎のタイマ割込みによって実行され、まず
ステップ502で前記シフトポジションスイッチ304
からのシフトポジションを読込み、次いでステップ50
4でシフトポジションが走行レンジであるD,L,2,
Rレンジであるか否かを判定し、D,L,2,Rレンジ
であると判定された場合にはステップ508に移行し、
そうでない場合、即ちP,Nレンジである場合にはステ
ップ506に移行し、ステップ506でロックアップ用
デューティ弁128の電磁ソレノイドに対する励磁電流
のデューティ比を“0”に設定してから、後述するステ
ップ630に移行する。
【0072】前記ステップ508では、前記スロットル
開度センサ303からの信号に基づいてスロットル開度
THを読込み、次いでステップ510で、車速センサ3
02からの信号に基づいて車速Vを読込み、次いで、ス
テップ511aで、ロータリエンコーダ318から検出
されたステップ数IS をステップ位置情報として読み込
み、このステップ数IS に基づいて、ステップ511b
で、ステップモータ108の回転角度(変速比が最大の
ときのステップモータ108の回転角を“0”とした
値)を表す現在ステップ数PA を算出する。
【0073】次いでステップ512で、エンジン回転速
度センサ301からエンジン回転速度NE を読み込み、
ステップ513aに移行する。このステップ513aで
は、ステップ511bで算出された現在ステップ数P A
から現在の変速比CP を算出してから、ステップ513
bに移行して、スロットル開度TH及びエンジン回転速
度NE をもとに、図7に示す,スロットル開度THをパ
ラメータとしてエンジン回転速度NE とエンジントルク
E との関係を示すマップを参照してエンジントルクT
E を算出し、次いでステップ513cに移行して、算出
したエンジントルクTE と現在の変速比CP とをもと
に、図8に示す,エンジントルクTE をパラメータとし
て変速比Cとライン圧PL との関係を示すマップを参照
してライン圧PL を算出し、このライン圧PL を得るた
めにライン圧調圧弁102に供給するパイロット圧をプ
レッシャーモディファイヤ弁116から出力するために
対応するモディファイヤ用デューティ弁120に対する
励磁電流のデューティ比を決定してからステップ514
に移行する。
【0074】ここで、図8に示す、エンジントルクTE
をパラメータとして変速比Cとライン圧PL との関係を
示すマップは、変速比Cを横軸、ライン圧PL を縦軸と
し、ライン圧最大値LMAX 及びライン圧最小値LMIN
間でアクセル開度毎のエンジントルクTE をパラメータ
として、変速比Cに応じてライン圧PL が変化するよう
になされており、例えば、変速比Cが,後述する最大変
速比CHiで、例えばC=2.503のとき、ライン圧最
大値LMAX =24〔kg/cm2〕、ライン圧最小値L
MIN =16〔kg/cm2〕、変速比Cが最小変速比CLO
で、例えばC=0.497のとき、ライン圧最大値L
MAX =8〔kg/cm2〕、ライン圧最小値LM IN =5.
5〔kg/cm2〕に設定される。
【0075】前記ステップ514では、タービン回転速
度センサ305からの信号に基づいてタービン回転速度
t を読込み、次いでステップ516に移行して、前記
エンジン回転速度NE とタービン回転速度Nt との回転
偏差ND を算出して、ステップ518に移行する。前記
ステップ518では、ステップ508で読込んだスロッ
トル開度THとステップ510で読込んだ車速Vとを基
に、予めROM314に記憶されている図9に示す制御
マップに従って、ロックアップオン車速VON及びロック
アップオフ車速VOFF を検索する。
【0076】次にステップ520に移行して、ロックア
ップフラグLUFが“1”に設定されているか否かを判
定し、ロックアップフラグLUFが“1”に設定されて
いる場合にはステップ544に移行し、そうでない場合
にはステップ522に移行する。前記ステップ544で
は、車速Vが前記ロックアップオフ車速VOFF よりも小
さいか否かを判定し、V<VOFF である場合にステップ
540に移行し、そうでない場合、すなわち、V≧V
OFF である場合にステップ546に移行する。一方、前
記ステップ522で車速Vが前記ロックアップオン車速
ONよりも大きいと判定された場合にはステップ524
に移行し、そうでない場合には前記ステップ540に移
行する。
【0077】前記ステップ524では、前記回転偏差N
D から、予め設定した第1の目標値Nm1 を減じて回転
目標値偏差eを算出し、次にステップ526で予め記憶
された制御マップから前記回転目標値偏差eに応じた第
1のフィードバックゲインG 1 を検索し、次にステップ
528で、前記回転偏差ND が、予め設定した制御系切
換閾値N0 よりも小さいか否かを判定し、ND <NO
ある場合にはステップ530に移行し、そうでない場
合,即ちND ≧NO である場合にはステップ538に移
行する。
【0078】前記ステップ530では、ロックアップ用
デューティ弁128の前回デューティ比に、予め設定し
た微小所定値αを加えて、このロックアップ用デューテ
ィ弁128の今回デューティ比を設定し、次にステップ
532でこのロックアップ用デューティ弁128の今回
デューティ比が100%より小さいか否かを判定し、1
00%より小さいと判定された場合にはステップ601
に移行し、そうでない場合にはステップ534に移行す
る。ステップ534では、ロックアップ用デューティ弁
128の今回デューティ比を100%に修正し、次にス
テップ536でロックアップフラグLUFを“1”に設
定してから前記ステップ601に移行する。
【0079】一方、前記ステップ538では、今回デュ
ーティ比を前記回転目標値偏差e及び第1のフィードバ
ックゲインG1 を変数とする演算式に基づいて算出し、
前記ステップ601に移行する。また、前記ステップ5
40ではロックアップ用デューティ弁128の今回デュ
ーティ比を0%に設定し、次にステップ542でロック
アップフラグLUFを“0”にリセットしてから前記ス
テップ601に移行する。また、前記ステップ546で
はロックアップ用デューティ弁128の今回デューティ
比を100%に設定して、前記ステップ601に移行す
る。
【0080】前記ステップ601では、車両がアンチス
キッド制御中であるか否かを判定する。このアンチスキ
ッド制御は、車両の走行中にブレーキペダルを踏込んで
制動状態としたときに、これによってホイールシリンダ
圧が増加して、車輪速を低下させるが、そのときのスリ
ップ率が所定値を越えたときに、そのときのホイールシ
リンダ圧を保持し、この保持状態で車輪減速度が設定値
を越えたときに車輪がロック傾向にあると判断してホイ
ールシリンダ圧を減圧してロック状態を回避し、以後車
輪速が回復すると、保持状態、緩増圧状態、保持状態及
び減圧状態を繰り返しながら制動状態を継続することに
より、車輪のロックを防止して良好な制動状態を得るよ
うにしたものであり、アンチスキッド制御が開始される
と、これを表すアンチスキッド制御中フラグが“1”に
セットされるため、このアンチスキッド制御中フラグが
“1”であるか否かを判定することにより、アンチスキ
ッド制御中であるか否かを判断することができる。
【0081】そして、アンチスキッド制御中ではないと
きには、そのままステップ602に移行するが、アンチ
スキッド制御中であるときには、ステップ601aに移
行して、クラッチ接離制御用デューティ弁129の電磁
ソレノイドに対する励磁電流のデューティ比を100%
に設定してステップ602に移行する。ステップ602
では、当該車速Vが予め設定された変速比制御開始閾値
0 (例えば2〜3km/hに設定され、図8に示すよ
うにロックアップオン車速VON及びロックアップオフ車
速VOFF より小さい値となる。)よりも小さいか否かを
判定し、V<V0 と判定された場合はクリープ制御の必
要があると判断してステップ604に移行し、そうでな
い場合即ちV≧V0 である場合は変速制御を行う必要が
あると判断してステップ624に移行する。前記ステッ
プ604ではスロットル開度THがアイドル判定閾値
(後述の変速比制御開始閾値に相当)TH0よりも小さ
いか否かを判定し、TH<TH0 であると判定された場
合はステップ610に移行し、そうでない場合,即ちT
H≧TH0 であると判定された場合にはステップ606
に移行する。前記ステップ606では、クラッチ接離制
御用デューティ弁129の今回デューティ比を0%に設
定して前進用クラッチ40又は後進用ブレーキ50を完
全に締結状態とし、次にステップ608でステップモー
タ108の目標ステップ数PD を“0”に設定してか
ら、後述するステップ630に移行する。
【0082】一方、前記ステップ610では、ステップ
モータ108の現在ステップ数PAが“0”であるか否
かを判定し、PA =0である場合にはステップ612に
移行し、そうでない場合にはステップ619に移行す
る。前記ステップ619では、目標駆動速度SPを最大
値SPMAX に設定してステップ620に移行する。
【0083】前記ステップ612では、前記回転偏差N
D から予め設定した第2の目標値Nm2 を減じて回転目
標値偏差eを算出し、次にステップ614で、予め記憶
された制御マップから、前記回転目標値偏差eに応じた
第2のフィードバックゲインG2 を検索し、次にステッ
プ616で、クラッチ接離制御用デューティ弁129の
今回デューティ比を、前記回転目標値偏差e及び第2の
フィードバックゲインG2 を変数とする演算式に基づい
て算出してステップ638に移行する。
【0084】一方、前記ステップ624で、シフトポジ
ションがDレンジであるか否かを判定し、Dレンジであ
る場合にはステップ626に移行して、当該Dレンジに
相当する変速パターンから車速V及びスロットル開度T
Hに応じた変速比(即ち目標変速比CD である)を検索
すると共に、当該目標変速比CD に応じた目標ステップ
数PD 及びそれを達成するための前記ステップモータ目
標駆動速度SPを設定して、前記ステップ630に移行
する。
【0085】前記ステップ624で、シフトポジション
がDレンジでないと判定された場合には、ステップ62
5に移行して、シフトポジションが2レンジであるか否
かを判定する。シフトポジションが2レンジである場合
にはステップ627に移行して、当該2レンジに相当す
る変速パターンから車速V及びスロットル開度THに相
当する変速比(即ち目標変速比CD である)を検索する
と共に、当該目標変速比CD に応じた目標ステップ数P
D 及びそれを達成するための前記ステップモータ目標駆
動速度SPを設定して、前記ステップ630に移行す
る。
【0086】前記ステップ625で、シフトポジション
が2レンジでないと判定された場合には、ステップ63
9に移行して、シフトポジションがLレンジであるか否
かを判定する。シフトポジションがLレンジである場合
にはステップ640に移行して、当該Lレンジに相当す
る変速パターンから車速V及びスロットル開度THに相
当する変速比(即ち目標変速比CD である)を検索する
と共に、当該目標変速比CD に応じた目標ステップ数P
D 及びそれを達成するための前記ステップモータ目標駆
動速度SPを設定して、前記ステップ630に移行す
る。
【0087】前記ステップ639で、シフトポジション
がLレンジでないと判定された場合には、ステップ64
0に移行して、シフトポジションRレンジに相当する変
速パターンから車速V及びスロットル開度THに相当す
る変速比(即ち目標変速比C D である)を検索すると共
に、当該目標変速比CD に応じた目標ステップ数PD
びそれを達成するための前記ステップモータ目標駆動速
度SPを設定して、前記ステップ630に移行する。
【0088】一方、前記ステップ630では、現在ステ
ップ数PA と目標ステップ数PD とを比較して、現在ス
テップ数PA が目標ステップ数PD に等しいと判定され
た場合には、前記ステップ638に移行する。また、前
記ステップ630で現在ステップ数PA が目標ステップ
数PD より小さいと判定された場合には、ステップ63
2に移行して、ステップモータ駆動信号を、前記各変速
パターン検索で設定された目標駆動速度SPに応じてア
ップシフト方向に形成設定した後、前記ステップ636
に移行する。一方、前記ステップ630で現在ステップ
数PA が目標ステップ数PD より大きいと判定された場
合には、前記ステップ620に移行して、ステップモー
タ駆動信号を、前記各変速パターン検索で設定された目
標駆動速度SPに応じてダウンシフト方向に形成設定し
た後、前記ステップ636に移行する。
【0089】前記ステップ636では、前記ステップ6
32またはステップ620で設定されたステップモータ
駆動信号を出力して、ステップ638に移行する。前記
ステップステップ638では、電磁弁ソレノイド駆動信
号を出力してから、メインプログラムに復帰する。そし
て、モータ駆動回路317では、前記ステップモータ駆
動信号に対応する電圧信号等をステップモータ108に
出力する。
【0090】本実施例では、前記ステップ640のRレ
ンジ相当変速パターン検索を除くステップ626,62
7,628で検索される変速パターンは、凡そ図10の
ような変速パターンに従って無段変速機の変速比が設定
されると考えてよい。即ち、各変速パターンにおける変
速比は、車速Vとスロットル開度THとを変数とする制
御マップ上で、それらの変数に従って検索すれば一意に
設定される。
【0091】この図10を、車速Vを横軸、エンジン回
転速度NE を縦軸、スロットル開度THをパラメータと
する変速パターンの総合制御マップであると仮定すれ
ば、原点を通る傾き一定の直線は変速比が一定であると
考えればよい。そして、例えば変速パターンの全領域に
おいて最も傾きの大きい直線は、車両全体の減速比が最
も大きい即ち最大変速比CHiを表し、逆に最も傾きの小
さい直線は、車両全体の減速比が最も小さい即ちDレン
ジ最小変速比CDLO を表し、2レンジ最小変速比C2LO
は、Dレンジ最小変速比CDLO を表す直線より傾きが大
きく最大変速比C Hiを表す直線より傾きが小さい直線と
して表される。
【0092】従って、具体的に、前記Lレンジの変速パ
ターンは、車速V及びスロットル開度THに関わらず前
記最大変速比CHiに固定され、前記2レンジの変速パタ
ーンは、前記最大変速比CHiと2レンジ最小変速比C
2LO との間の領域で車速V及びスロットル開度THに応
じて設定される変速比の経時的軌跡からなる制御曲線と
なり、前記Dレンジの変速パターンは、前記最大変速比
HiとDレンジ最小変速比CDLO との間の領域で車速V
及びスロットル開度THに応じて設定される変速比の経
時的軌跡からなる制御曲線となる。因みに、乾燥したア
スファルト路面やコンクリート路面等の所謂高μ路面を
走行する際の,前記DレンジにおけるDレンジ変速領域
での通常加速走行時変速パターンCPTN を、図10に二
点鎖線で記してみた。
【0093】なお、車速Vが前記変速比制御開始閾値V
0 よりも小さい領域では、各シフトポジションのレンジ
に関係なく、変速比(即ち変速パターン)は前記最大変
速比CHiに固定される。つまり、この変速比制御開始閾
値V0 は、自動変速機搭載車両で発生するクリープ状態
の制御上限値であると考えればよい。ここで、最大変速
比CHiにおける変速比制御開始閾値V0 のときのスロッ
トル開度THを同じく変速比制御開始閾値TH0 と定義
し、この変速比制御開始スロットル開度閾値TH0 にお
いて2レンジ最小変速比C2LO となる車速Vを2レンジ
最小変速比車速V21、同じく変速比制御開始スロットル
開度閾値TH0 においてDレンジ最小変速比CDLO とな
る車速VをDレンジ最小変速比車速VD1と定義し、これ
らの各レンジ最小変速比車速V21,VD1を単にレンジ最
小変速比車速Vj1とも記すこととする。ここで、前記ス
ロットル開度THの変速比制御開始閾値TH0 における
変速比制御曲線を,クリープ制御上限を示すコースト走
行変速比制御曲線CCOASTP TNと定義する。
【0094】そして、変速比を、或る現在の変速比CP
から前記図6の演算処理で算出設定された次の目標変速
比CD に変化させる速度が変速速度であり、この変速速
度は前記ステップモータの目標駆動速度SPで変更制御
できることになる。但し、前記各ステップ626,62
7,628,640(実質的にはDレンジ変速パターン
検索ステップ626及び2レンジ変速パターン検索ステ
ップ627のみである)における目標駆動速度SPの設
定は、後述するサブルーチン(マイナプログラム)に従
って実行される。
【0095】したがって、今、車両が正常状態であり、
車両がエンジンを停止させ且つシフトレバーでPレンジ
を選択した駐車状態にあるものとし、この状態で、Vベ
ルト式無段変速機構29が、図3において、Vベルト2
4の駆動プーリ16側の接触位置半径が最小で、従動プ
ーリ26側の接触位置半径が最大となった最大変速比C
MAX の変速位置にあるものとする。
【0096】この駐車状態からイグニッションスイッチ
をオン状態としてエンジンを始動させてアイドリング状
態とすると、これに応じてオイルポンプ101が回転駆
動されることにより、流路132への吐出圧が増加し、
これがライン圧調圧弁102のパイロットポート102
bにパイロット圧として供給される。このとき、ライン
圧調圧弁102の出力ポート102dに接続されたクラ
ッチリリーフ弁122によってその入力ポート122a
のクラッチ圧PC がエンジン停止状態でドレーン圧近傍
までに低下しているものとすると、このクラッチ圧PC
が変速比圧弁110を介して供給される、スプール10
2sの右端部のパイロットポート102cに供給される
パイロット圧が低くなる。
【0097】一方、イグニッションスイッチがオン状態
となったときに中央処理装置313では、初期化を行っ
てロックアップフラグLUFを“0”にリセットすると
共に、目標ステップ数PD を“0”に設定してから図6
の処理を実行し、このとき、シフトレバーでPレンジが
選択されていることから、ステップ504からステップ
506に移行してロックアップ用デューティ弁128の
デューティ比を“0”に設定してからステップ630に
移行し、このとき、現在ステップ数PA が目標ステップ
数PD (=0)に一致しているものとするとステップモ
ータ108に駆動信号を出力しないで、ステップ638
で、デューティ比“0”のソレノイド駆動信号を各デュ
ーティ弁120、128及び129に出力する。このた
め、モデファイヤ用デューティ弁120のデューティ比
が零の状態を維持し、その出力ポート120bから出力
されるモディファイヤ圧PM が零となって、これがプレ
ッシャーモディファイヤ弁116のパイロットポート1
16bに入力されるため、このプレッシャーモディファ
イヤ弁116の入力ポート116d及び出力ポート11
6aが遮断状態で、且つ出力ポート116aとドレーン
ポート116cとが連通状態となるため、ライン圧調圧
弁102のパイロットポート102fのパイロット圧も
零となる。
【0098】したがって、スプール102sを右動させ
るパイロットポート102b及び102fのパイロット
圧と、スプール102sを左動させるパイロットポート
102cの圧力と、スプール102sの受圧面積との積
でなる推力差によってスプール102sが右動し、これ
によって入力ポート102aとスプール102sのラン
ド102oとの間の開口面積が増加し、これによって入
力ポート102aと出力ポート102dとが連通状態と
なるため、流路132のライン圧が一時的に減少する。
【0099】ところが、ライン圧調圧弁102の出力ポ
ート102dから出力される出力圧は、その下流側に配
設されているクラッチリリーフ弁122の入力ポート1
22a及びパイロットポート122bに供給されるた
め、入力ポート122aで形成されるクラッチ圧P
C は、このクラッチリリーフ弁122のリターンスプリ
ング122mによる推力とパイロットポート122bの
パイロット圧及びスプール122kのランド122iの
受圧面積の積で表される推力とが釣り合う圧力まで増加
する。
【0100】このように、クラッチ圧PC が増加する
と、これが変速比制御弁110の入力ポート110aに
供給され、このとき駆動プーリ16のV字状プーリ溝間
隔が広くなっていることから、これに応じてセンサシュ
ー164が図3でみて上方側に移動しており、このため
スプリング止め摺動杆110iが下方に移動して、リタ
ーンスプリング110jの付勢力が大きくなっているた
め、この変速比制御弁110の出力ポート110bから
出力される制御圧がクラッチ圧PC よりは低い値である
がこれに近い値となり、この制御圧がライン圧調圧弁1
02のパイロットポート102cにパイロット圧として
供給される。このため、ライン圧調圧弁102のスプー
ル102sが左動して入力ポート102aとランド10
2oとの間の開口面積が小さくなり、これに応じて流路
132のライン圧が図8に示すように、最大ライン圧曲
線LMAX 上の最大変速比CHiに対応する点で表される比
較的高いライン圧に設定される。
【0101】このPレンジを選択している停車状態か
ら、ブレーキペダルの踏込みを維持して、前進走行を開
始するために、シフトレバーでDレンジを選択すると、
図6の処理が実行されたときに、ステップ504からス
テップ508に移行し、変速制御処理を開始する。しか
しながら、ブレーキペダルの踏込を継続している状態で
は、エンジンはアイドリング状態にあると共に、車両も
停止状態であるので、車速Vは零であり、ステップ51
3a〜513cで算出されるモディファイヤ用デューテ
ィ弁120のデューティ比は最小ではないがアイドリン
グ状態のエンジントルクに応じた値となり、モディファ
イヤ用デューティ弁120から出力されるモディファイ
ヤ圧PM が多少増加し、これに応じてプレッシャーモデ
ィファイヤ弁116の出力ポート116a及びドレーン
ポート116c間が遮断状態となり、これに代えて出力
ポート116a及び入力ポート116d間が連通状態と
なるため、クラッチ圧PC に基づく比較的小さい圧力の
モディファイヤ圧がパイロット圧としてライン圧調圧弁
102のパイロットポート102fに供給される。この
ため、スプール102sが右動して、流路132のライ
ン圧PL が図8に示すように、最小ライン圧曲線LMIN
上の最大変速比CMAX に対応する点で表される最小ライ
ン圧に設定される。
【0102】一方、シフトレバーでDレンジを選択した
ときに、マニュアル弁104の入力ポート104aと出
力ポート104cとが連通状態となるため、クラッチリ
リーフ弁122で形成されたクラッチ圧PC が前進用ク
ラッチ制御弁142を介し、更にオリフィス142cを
介して前進用クラッチ40に供給されるので、この前進
用クラッチ40が緩やかに増加して一端締結状態とな
る。ところが、図6の処理において、ロックアップフラ
グLUFが初期状態で、“0”にリセットされているの
で、ステップ520からステップ522に移行し、車速
Vが零であるので、ステップ540に移行して、ロック
アップ用デューティ弁128のデューティ比を“0”に
設定し、次いでステップ542に移行して、ロックアッ
プフラグLUFを“0”にリセットしてからステップ6
01に移行する。
【0103】この時点では、アンチスキッド制御中では
ないので、ステップ602に移行し、ここで、車速Vは
停車中であって設定車速V0 より小さいので、ステップ
604に移行し、アイドリング状態であるためスロット
ル開度THが前記閾値TH0より小さいので、ステップ
610に移行し、現在ステップ数PA がPA =0である
ので、ステップ612から616を実行して、クラッチ
接離制御用デューティ弁129のデューティ比をエンジ
ン回転速度NE とタービン回転速度Nt との偏差ND
目標偏差Nm2 との差eとゲインG2 とに基づいて設定
することにより、デューティ比が比較的大きい値、例え
ば60程度に設定される。このため、クラッチ接離制御
用デューティ弁129の出力ポート129bから出力さ
れるクラッチ制御圧PCCが後進用ブレーキ制御弁140
及び前進用クラッチ制御弁142のパイロットポートに
供給されるため、これら後進用ブレーキ制御弁140及
び前進用クラッチ制御弁142のスプール140m及び
142mがリターンスプリング140n及び142nに
抗して下降し、前進用クラッチ制御弁142では、出力
ポート142dとドレーンポート142eとを連通させ
る状態となり、前進用クラッチ40に対するクラッチ締
結圧をリターンスプリング142nの付勢力とパイロッ
トポート142hのパイロット圧による推力とがバラン
スする圧力まで低下させて、クリープ走行を可能な状態
に制御する。
【0104】一方、ロックアップ用デューティ弁128
に対するデューティ比が“0”となるので、これから出
力されるロックアップ制御圧PLUは略零に制御され、こ
れがロックアップ制御弁126のパイロットポート12
6jにパイロット圧として供給されるので、スプール1
26sはリターンスプリング126tによって図3に示
すように右動した位置となり、トルクコンバータリリー
フ弁124から供給されるトルクコンバータ制御圧PT
が入力ポート126b及び出力ポート126cを介して
ロックアップ油室12aに供給され、フルードカップリ
ング12には、ロックアップ油室12a側から作動圧が
供給され、フルードカップリング12の油圧はリリーフ
弁152によって一定圧に保持される。
【0105】このため、フルードカップリング12にお
けるポンプインペラ12bとタービンランナ12cとの
間を作動油を介して連結するロックアップ解除状態に制
御する。なお、フルードカップリング12から出力され
る作動油がロックアップ制御弁126の入力ポート12
6d及び出力ポート126eを介してクーラー146に
出力される。
【0106】したがって、この状態でブレーキペダルの
踏込みを解除し、アクセルペダルを解放状態とするか又
は軽く踏込んでスロットル開度THが前記閾値TH0
満の状態を維持すると、前進用クラッチ40が僅かに締
結された状態となり、エンジン10の回転駆動力がフル
ードカップリング12、前進用クラッチ40及び遊星歯
車機構17のピニオンキャリア25を介して駆動プーリ
16に伝達され、フルードカップリング12でエンジン
10に対する過負荷を吸収して車両を最大変速比CHi
クリープ走行させることができる。
【0107】また、Dレンジを選択してブレーキペダル
を踏込んでいる停車状態から発進するため、ブレーキペ
ダルの踏込みを解除し、これに代えてアクセルペダルを
大きく踏込むことにより、スロットル開度THが前記閾
値TH0 より大きくなると、図6の処理が実行されたと
きにステップ604からステップ606に移行して、ク
ラッチ接離制御用デューティ弁129のデューティ比が
“0”に設定され、次いでステップ608で目標ステッ
プ数PD を図5に示すように最大変速比CHiを表すステ
ップ数“0”に設定してからステップ630に移行す
る。
【0108】このとき、現在ステップ数PA が“0”で
あるので、PA =PD となり、そのままステップ638
でソレノイド駆動信号を出力する。このため、クラッチ
接離制御用デューティ弁129から出力されるクラッチ
制御圧PCCが零となって、前進用クラッチ制御弁142
のスプール142mがリターンスプリング142nによ
って上昇し、出力ポート142dとドレーンポート14
2eとを遮断し、逆に出力ポート142dと入力ポート
142bとを連通させる状態となり、前進用クラッチ4
0に対するクラッチ締結圧を増加させて、前進用クラッ
チ40を完全に締結状態に制御すると共に、ステップモ
ータ108を図5に示すステップ数“0”の最大変速比
Hiの位置に維持する。
【0109】このように、前進用クラッチ40が締結状
態となることにより、最大変速比C Hiで車両を発進させ
ることができ、このとき、スロットル開度THが大きく
なることにより、図6の処理におけるステップ513a
〜513cで設定されるライン圧PL もエンジントルク
の増加に応じて図8の最大ライン圧曲線LMAX 上の最大
変速比CHiに対応する点の最大圧力となり、これが従動
プーリシリンダ室32に供給されるので、ベルト24に
対してエンジントルクに対応した押付力を作用して、ベ
ルト24とプーリ16及び26間の滑りを抑制して良好
な発進を行うことができる。
【0110】そして、車速Vが図9に示す設定車速V0
に達すると、図6の処理が実行されたときに、ステップ
602からステップ624に移行し、Dレンジであるの
でステップ626に移行して、そのときの車速V、エン
ジン回転速度NE 及びスロットル開度THをもとに、予
め記憶されたDレンジ変速パターンから目標変速比C D
を検索し、この目標変速比CD を達成するためのステッ
プモータ108の目標ステップ数PD と目標駆動速度S
Pとを決定して、変速制御を開始する。
【0111】すなわち、目標ステップ数PD が“0”よ
り大きな値に設定されることにより、図6の処理におけ
るステップ630からステップ632に移行し、後述さ
れるマイナプログラムに従って設定された目標駆動速度
SPから、ステップモータ駆動信号がアップシフト方向
に形成設定され、ステップ636で、ステップモータ1
08を図3でみて反時計方向に所定ステップ角分回転さ
せる。
【0112】この結果、図11に示すように、ロッド1
82が上方に移動し、レバー178が、センサーシュー
164との連結点であるピン183を支点として反時計
方向に破線図示の位置まで回動し、このレバー178に
ピン181を介して連結されている変速制御弁106の
スプール106gが上方に移動する。これによって、変
速制御弁106の入力ポート106a及び出力ポート1
06bが連通状態となり、入力ポート106aに供給さ
れているライン圧PL が駆動プーリシリンダ室20に供
給されるので、可動円錐板22が固定円錐板18側に移
動されてV字状プーリ溝間隔が小さくなり、これによっ
てベルト24の駆動プーリ16に対する接触位置半径が
大きくなり、これに応じて従動プーリ26に対する接触
位置半径が小さくなることにより、変速比が徐々に小さ
くなる。
【0113】一方、可動円錐板22の移動によってセン
サーシュー164が下方に移動し、これによってレバー
178がロッド182のピン185を支点として反時計
方向に回動することにより、変速制御弁106のスプー
ル106gが下降し、そのランド106eによって出力
ポート106bが徐々に閉塞され、目標変速比に一致し
たときに、出力ポート106bがランド106eによっ
て完全に閉塞されるので、駆動プーリ16の駆動プーリ
シリンダ室20の圧力上昇が停止され、可動円錐板22
の移動が停止される。
【0114】このように、Vベルト式無段変速機構29
の変速比が小さくなると、図6のステップ513a〜5
13cで算出されるモディファイヤ用デューティ弁12
0のデューティ比が大きくなり、これに応じてプレッシ
ャーモディファイヤ弁116の出力ポート116aから
出力されるモディファイヤ圧が大きくなってライン圧調
圧弁102のパイロットポート102fに供給するパイ
ロット圧が増加すると共に、センサーシュー164の下
動によって変速比圧弁110のスプリング止め摺動杆1
10iが上動し、これによってリターンスプリング11
0jの付勢力が小さくなり、これに応じて出力ポート1
10bから出力されるライン圧調圧弁102のパイロッ
トポート102cに対するパイロット圧が低下すること
により、ライン圧調圧弁102のスプール102sが右
動し、これによって入力ポート102aとランド102
oとの間の開口面積が大きくなることにより、ライン圧
L が低下し、従動プーリシリンダ室32の圧力が低下
することにより、変速比に応じたベルト挟持力に変更さ
れる。
【0115】その後、スロットル開度THが大きい状態
を維持しながら車速Vが増加して、ロックアップオン車
速VONを越える状態となると、図6の処理におけるステ
ップ522からステップ524に移行して、エンジン回
転速度NE とタービンランナ回転速度Nt との回転速度
偏差ND から第1の目標値Nm1 を減じて回転目標値偏
差eを算出し、次にステップ526で予め記憶された制
御マップから前記回転目標値偏差eに応じた第1のフィ
ードバックゲインG1 を検索し、次にステップ528で
前記回転速度偏差ND が制御系切換閾値N0 よりも小さ
いか否かを判定する。ND ≧NO である場合には回転速
度偏差が大きすぎるものと判断してステップ538に移
行して、ロックアップ用デューティ弁128に対するデ
ューティ比を回転速度偏差e及びフィードバックゲイン
1 に応じた値に設定してフィードバック制御を行う。
このため、ステップ638でソレノイド駆動信号がロッ
クアップ用デューティ弁128に出力されたときに、そ
の出力ポート128bから出力されるロックアップ制御
圧PLUが徐々に増加することにより、これが変速指令弁
150の入力ポート150a及び150bを通じてロッ
クアップ制御弁126のパイロットポート126jに供
給されるため、そのスプール126sがリターンスプリ
ング126tに抗して左動することになり、ロックアッ
プ油室12aに供給されるトルクコンバータ圧PT が徐
々に減少されると共に、フルードカップリング12から
クーラー146に出力される作動油量も減少され、ロッ
クアップ油室12aの圧力が低下することにより、徐々
にロックアップ状態に切換えが行われる。
【0116】そして、前記回転速度偏差ND が制御系切
換閾値N0 より小さくなると、図6のステップ528か
らステップ530に移行し、現在のロックアップ用デュ
ーティ比に所定値αを加算するフィードフォワード制御
を行い、これが100%未満であるときには、ステップ
534に移行してデューティ比を100%に設定し、次
いでステップ536でロックアップ制御フラグLUFを
“1”にセットしてからステップ601に移行する。
【0117】このため、ロックアップ用デューティ弁1
28から出力されるロックアップ制御圧PLUが高い圧力
となるため、ロックアップ制御弁126のスプール12
6sがさらに左動し、ロックアップ油室12aをドレー
ンポート126gに連通させると共に、トルクコンバー
タ圧PT をフルードカップリング12に直接供給し、さ
らに潤滑用リリーフボール144で設定される潤滑圧P
LBが入力ポート126f及び出力ポート126eを介し
てクーラー146に供給されて冷却される。
【0118】このため、ロックアップ油室12aの圧力
が略零となるので、ポンプインペラー12bとタービン
ランナ12cとを機械的に連結したロックアップ状態と
なり、車両は加速状態を継続する。そして、所望の車速
Vに達して、アクセルペダルの踏込みを停止すると、ス
ロットル開度THが一定値となり、エンジン回転速度も
一定となるので、ステップ626で検索される目標ステ
ップ数PD が一定値となり、これと現在ステップ数PA
とが一致するので、図6の処理においてステップ630
からステップ638に移行してステップモータを駆動さ
せないため、現在ステップ数PA が維持されて変速動作
は行われず、定速走行状態が維持される。
【0119】そして、この定速走行状態からアクセルペ
ダルの踏込を解除しエンジンブレーキ状態とするか又は
ブレーキペダルを踏込んで制動状態とさせたものとす
る。この場合には、スロットル開度THが低下すること
により、ステップ626で検索される目標ステップ数P
D が低下し、これによってステップ630からステップ
620に移行し、後述されるマイナプログラムに従って
設定された目標駆動速度SPから、ステップモータ駆動
信号がダウンシフト方向に形成設定される。
【0120】このため、ステップモータ108が図11
で時計方向に回転駆動され、これによってロッド182
が下方に移動することにより、レバー178がセンサー
シュー164のピン183を支点として時計方向に回動
し、これによって変速制御弁106のスプール106g
が下降することにより、出力ポート106bとドレーン
ポート106cとが連通状態となり、駆動プーリシリン
ダ室20aの作動油が徐々に保圧弁160を介してタン
ク130に戻される。このため、駆動プーリシリンダ室
20aの圧力が徐々に低下することにより駆動プーリ1
6のV字状プーリ溝間隔が徐々に広がり、駆動プーリ1
6に対するベルト24の接触位置半径が徐々に小さくな
り、逆に従動プーリ26に対するベルト24の接触位置
半径が大きくなることにより、変速比Cが大きくなって
ダウンシフトが行われ、車両は減速状態となる。
【0121】そして、減速状態を継続して、車速Vがロ
ックアップオフ車速VOFF 未満となると、図6の処理に
おけるステップ544からステップ540に移行して、
ロックアップ用デューティ弁128に対するデューティ
比が“0”に設定され、次いで、ステップ542でロッ
クアップ制御フラグLUFが“0”にリセットされる。
このため、ロックアップ制御弁126のパイロットポー
ト126jの圧力が低下することにより、スプール12
6sが瞬時に右動し、トルクコンバータ圧PTがロック
アップ油室12aに供給されるため、ロックアップ状態
が直ちに解除されてフルードカップリング12を介した
駆動状態に復帰し、この間無段変速機29の変速比Cは
増加状態を継続し、車速Vが設定車速V0 未満となる
と、ステップ602からステップ604に移行し、スロ
ットル開度THが前記閾値TH0 より小さいので、ステ
ップ610に移行し、現在ステップ数PA が“0”、す
なわち、最大変速比CHiに達していないときには、ステ
ップ619で目標駆動速度SPを最大駆動速度SPMAX
に設定した後、変速比の変化量に応じてステップモータ
108を駆動させ、現在ステップ数PA が“0”に達す
るとステップ612に移行して前述したように、前進用
クラッチ40のクラッチ圧を低下させてクリープ走行可
能な状態に復帰させる。
【0122】この減速状態を継続している間に、駆動プ
ーリ16の可動円錐板22が上方に移動することによ
り、センサーシュー164が下降することにより、変速
比圧弁110の出力圧が増加し、これによってライン圧
調圧弁102のパイロットポート102cのパイロット
圧が増加することにより、ライン圧が増加して従動プー
リ26のベルト挟持力が変速位置に応じた値に調整され
る。
【0123】また、シフトレバーでRレンジを選択した
場合には、マニュアル弁104の入力ポート104aと
Rレンジポート104bとが連通状態となり、クラッチ
リリーフ弁122で形成されたクラッチ圧PC が後進用
ブレーキ制御弁140を介し、オリフィス140fを介
してパイロット圧としてパイロットポート140gに供
給されると共に、オリフィス140b、140cを介し
て後進用ブレーキ50に供給され、これによって、後進
用ブレーキ50が作動し、駆動軸14が逆回転し、車両
は後進する。
【0124】この場合も、上記と同様に、各センサの検
出信号をもとに各デューティー比を設定し、この場合、
Rレンジであるのでステップ640において、Rレンジ
の変速パターンを検索して目標ステップ数PD を設定し
てステップモータ108を駆動し、ステップ630で、
目標ステップ数PD と現在ステップ数PA とがPA <P
D である場合にはステップ632で、PA <PD である
場合にはステップ622で、ステップモータ駆動信号
を、前記目標駆動速度SPからアップシフト方向にまた
はダウンシフト方向にそれぞれ形成設定して、これをモ
ータ駆動回路317に出力し、これによりステップモー
タ108を駆動することによって、変速制御弁106が
駆動され変速される。
【0125】なお、制動時にアンチスキッド制御が開始
されると、前述したように、アンチスキッド制御中フラ
グが“1”にセットされることにより、図6の処理にお
けるステップ601からステップ601aに移行して、
クラッチ接離制御用デューティ弁129の電磁ソレノイ
ドに対する励磁電流のデューティ比が100%に設定さ
れるため、ステップ636でソレノイド駆動信号がクラ
ッチ接離制御用デューティ弁129に出力されたとき
に、クラッチ接離制御用デューティ弁129の出力ポー
ト129bから出力されるクラッチ制御圧PCCが高い圧
力となり、これが前進用クラッチ制御弁142のパイロ
ットポート142hに供給されるので、そのスプール1
42mがリターンスプリング142nに抗して下降し、
これによって出力ポート142dとドレーンポート14
2eとが連通状態となることにより、前進用クラッチ4
0のクラッチ圧が低下して、車輪速の変動による負荷が
エンジン10に作用することを回避することができる。
【0126】また、車両が走行状態から停車状態となっ
た後に、シフトレバーをDレンジからNレンジにシフト
すると、これに応じてマニュアル弁104のスプール1
04iが図3で下方に移動することにより、Dレンジポ
ート104cがドレーンポート104fに連通する状態
となるが、前進用クラッチ制御弁142の入力ポート1
42bとDレンジポート104cとの間の油路に逆止弁
142oが介挿されていることにより、前進用クラッチ
制御弁142の入力ポート142bから流出する作動油
はオリフィス142aを通じてDレンジポート104c
及びドレーンポート104fを介してタンク130に戻
ることになり、前進用クラッチ40のクラッチ圧の低下
が徐々に行われ、DレンジからNレンジへのシフト時の
ショックを防止することができる。
【0127】なお、シフトポジションが2レンジに選択
されている場合には、ステップ625からステップ62
7に移行して、2レンジ変速パターンから変速比の目標
値C D を検索して前記目標駆動速度SPが設定され、前
記Dレンジの場合と同様にして、ステップモータ108
の駆動により変速速度が制御される。また、シフトポジ
ションがDレンジに選択されている場合には、ステップ
639からステップ628に移行して、Lレンジ変速パ
ターンから変速比の目標値CD が検索されるが、この実
施例では、Lレンジ変速パターンは車速Vおよびスロッ
トル開度THに関わらず前記最大変速比CHiに固定され
ているため、ステップ630からステップ638に至っ
て、ステップモータ108は駆動されない。
【0128】それでは次に、前述のような無段変速機お
よびその変速制御装置を搭載する車両にあって、氷雪路
面や濡れたタイル路面等の低μ路面での発進加速時等
に、アクセルペダルを或る程度踏込んで駆動輪がスリッ
プした後、それを感知した運転者がアクセルペダルを足
戻し操作又は足離し操作したときに発生する変速ショッ
ク及びそのときの変速に伴う突走り感やつんのめり感を
抑制防止するための基本原理について説明する。
【0129】まず、前述のような低μ路面での走行時
に,前記図6の演算処理による通常の無段変速機の変速
比制御の変速比の経時変化について考察する。前述のよ
うに或る程度以上の経験を有する運転者によれば、自己
の経験則等に従って,現今のタイヤでグリップ力を確保
できる車輪のスリップ率の範囲を目標スリップ率とすれ
ば,この目標スリップ率を満足する目標車輪速の範囲内
に実際の車輪速を納めて舵取り効果や発進加速性能を確
保できるようにしている。
【0130】具体的に、例えば運転者が前述のような小
さな路面μを認識しにくい状況下で,例えばアクセルペ
ダルを大きく踏込んで停車中の車両を発進させると、未
だ駆動輪速(具体的には前述のように駆動輪軸回転速度
である)から算出される車速Vが増速していない状況
で,アクセルペダルの踏込みに応じてスロットル開度T
Hは急速に増加するから、前記図6の演算処理による通
常の変速比制御で設定される目標変速比CD は,図12
に変速比制御パターン曲線CPTN1で示すように,前記最
大変速比CHiに保持されるか或いはこの最大変速比CHi
に近い比較的大きな変速比に設定されるであろう。この
とき、例えばエンジン回転速度NE とその出力トルクT
E とがリニアに増加するものとすると,駆動輪にかかる
回転駆動力は,当該無段変速機の大きな変速比で,エン
ジン回転速度NE の増加に伴う出力トルクTE に応じて
増加することになり、この回転駆動力が,前記タイヤの
グリップ力を偶力とするタイヤ抗力を越えると、当該駆
動輪にスリップが発生し、一旦,駆動輪にスリップが発
生すると,当該回転駆動力が低減しないかぎり或いは相
応の制動力が付与されないかぎりそのスリップが収束す
ることはなく、駆動輪速Vwdi(i=LorR)は増速
を続ける。
【0131】次いで、前述のような或る程度以上の運転
者であればどこまでもアクセルペダルを踏込むことはな
いから,或る踏込み量で収束又は固定し、スロットル開
度THも或る一定値TH1 又はほぼ一定値TH1 の状態
となる。しかし、駆動輪は,既にスロットル開度に応じ
た十分なエンジンからの駆動力によって次第にスリップ
量が大きくなり、実際の車速(以下,実車速とも記す)
C はさほど増速していないにも関わらず,車速Vとし
て検出される駆動輪速Vwdiは速やかに大きくなるか
ら、前記変速比制御マップでは,図12に変速比制御パ
ターン曲線CPTN2で示すように,あたかもスロットル開
度THが一定値TH1 又はほぼ一定値TH 1 で車速Vが
増速しているものとして、無段変速機の変速比を比較的
速やかに小さな変速比に変更制御する。このとき、無段
変速機の変速比制御によって車両減速比が速やかに小さ
くなれば駆動輪への回転駆動力も小さくなるが、ここで
は,ここに至るまでの変速比制御パターンCPTN1,即ち
前述の最大変速比CHiに保持されたり比較的大きな変速
比の近傍で推移したりする変速比制御によって、当該駆
動輪は既に前記目標車輪速を満足する目標スリップ率を
越えてスリップしていて,タイヤのグリップ力がエンジ
ンからの駆動力に追従しきれず、むしろ,車両減速比が
小さくなる,つまり最終出力軸回転速度が大きくなるに
つれて、駆動輪速Vwdiは単純に増速してしまうものと
する。
【0132】しかしながら、前述のような或る程度以上
の経験を有する運転者は,例えばアクセルペダルの踏込
み量に比して車速がさほど増速していないなどの経験則
を判定条件として,当該駆動輪速Vwdiが前記目標車輪
速の範囲に納まるようにアクセルペダルの踏込み量を小
さくする,所謂アクセルペダル足戻しとか足離しといっ
た操作をしてエンジンからの駆動輪への駆動力を小さく
すると共に、この場合はタイヤのグリップ力と等価な,
路面が駆動輪を回転してくれる路面回転駆動力によって
当該駆動輪速Vwdiを実車速VC に向けて小さく収束さ
せようとする。ここではアクセルペダル足戻しとか足離
し時にエンジンからの駆動輪への駆動力が小さい状態
で,路面回転駆動力によって駆動輪速は速やかに車体速
まで収束するものとする。
【0133】このとき、アクセルペダルを急激に戻して
例えばスロットル開度THが全閉(ここでは近似的に前
記閾値TH0 で表す)となると、前記変速比制御マップ
では,あたかも車速Vとして検出されている駆動輪速V
diが未だ減速していない或いは余り減速していない状
態でスロットル開度THが急激に全閉値TH0 となるか
ら、図12に変速比制御パターンCPTN3で示すように,
無段変速機の変速比Cは前記最小変速比CDLO か或いは
前記コースト走行変速比制御曲線CCOASTPTN上の比較的
小さな変速比まで急激に変更制御される。更に、車速V
として検出されている当該駆動輪速Vwdiは前記路面回
転駆動力によって制動されるために,比較的速やかに実
車速VC まで減速することになり、これに伴って,前記
アクセルペダル足戻し操作又は足離し操作直後にコース
ト走行変速比制御曲線CCOASTPTN上の比較的小さな変速
比に変更制御された場合は勿論、最小変速比CHiに変更
制御された場合も,車速Vとして検出されている駆動輪
速Vwdiが前記所定値VD1以下となると、このコースト
走行変速比制御曲線CCOASTPTNに従って,図12に変速
比制御パターンCPTN4で示すように,無段変速機の変速
比は急激に大きな変速比に変更制御される。
【0134】このうち、アクセルペダルの急激な足戻し
操作又は足離し操作後の変速比制御では、まず前記変速
比制御パターンCPTN3に示すように無段変速機の変速比
が前記最小変速比CHi又はその近傍の変速比まで急激に
小さくなり、その後,変速比制御パターンCPTN4に示す
ように速やかに大きく変更制御されるために、この間の
前記各プーリ16,26の大きくて速いV溝幅変更制御
に伴ってショックが発生する。また、例えば前記アクセ
ルペダルの急激な足戻し又は足離しの直後に,未だエン
ジンの回転速度が十分に減速していないにも関わらず、
前述のように無段変速機の変速比が急激に小さくなる
と,当該エンジンの持つ回転慣性,所謂イナーシャトル
クが急激に駆動輪に伝達されてしまい、これが車両を前
方に飛び出させるようなエネルギとして放出されて,所
謂突走り感がある。また、その直後に,今度は無段変速
機の変速比が急激に大きくなると、各駆動輪に急激な制
動力が作用して,所謂つんのめり感がある。
【0135】これらの諸問題を解決するために、本実施
例では,車体に作用する車体前後加速度Xgを検出し、
各駆動輪に作用している駆動輪加減速度αwj (j=F
LorFR)の最大値を最大車輪加減速度αwとし、こ
の最大車輪加減速度αwと車体前後加速度Xgとの偏差
が所定加速度値α0 以上であるときに、当該駆動輪には
スリップを発生させるに足る駆動力がかかっていると判
定し、更にスロットル開度が閉じ方向に変更制御されて
いるときに、前記図6の演算処理で設定される目標変速
比CD を前回値CD0に強制的に設定することで,変速比
をスリップ発生に伴って行われるアクセルペダル足戻し
操作直前の変速比に固定保持する。つまり、前述のよう
な低μ路面での発進加速時等に変速ショックや突走り感
やつんのめり感が発生するのは、駆動輪に発生した過大
なスリップを収束するために,運転者がアクセルペダル
を急激に戻し操作することによって、変速比制御のパラ
メータであるスロットル開度THや車速Vとして検出さ
れている駆動輪速Vwdiが急激に変化し、これに伴って
無段変速機で達成される目標変速比CD が大きく且つ速
く変化するためであるから、このような条件下で変速比
を,その直前の比較的小さな変速比に固定保持すること
は,変速ショックを抑制防止するだけでなく、未だスリ
ップが収束していない状態で,運転者が再びアクセルペ
ダルを踏込んだ場合には、通常の発進加速性能でいう大
きな加速力は得られないが,一般にこのような低μ路面
で2速ホールドするように安定した加速走行が達成でき
る。なお、本実施例では,前記諸条件に加えて,アクセ
ルペダルの操作量の大きさと速さ及び車速Vとして検出
される駆動輪速Vwdiの収束度合いを検証するために、
目標変速比の今回値である基準目標変速比CDiと,目標
変速比の前回値CD0との偏差が或る負の値の所定値C0
よりも小さいときに、前記変速比固定制御を開始するこ
ととした。
【0136】次に、この無段変速機の変速比固定保持制
御をいつ解除するかであるが、前記駆動輪のスリップを
感知した運転者が意識的にアクセルペダルを足戻し操作
又は足離し操作するのに対して、前記変速比固定制御
は,運転者の意思と無関係に実施されるのであるから、
運転者が再びアクセルペダルを踏込む等の操作のできる
ときには,通常の変速比制御を実行できるようにするの
が望ましい。そこで、本実施例では,駆動輪速Vwdi
実車速VC の近傍まで収束したとき、具体的には駆動輪
速のスリップ率Sが,前記目標スリップ率等の所定値S
0 以下となったときに前記変速比固定保持制御を解除す
れば、そのときに運転者が,例えばインストゥルメント
パネルから読み取れる或いはエンジンノイズから経験則
に従って感知できるエンジン回転速度と体感車体速とか
ら駆動輪のスリップの収束を判定してアクセルペダルを
操作しても、これに応じて無段変速機の変速比が変更制
御開始できることになる。なお、本実施例では,前述の
ように実車速VC を直接的に検出することが困難である
ため、前記駆動輪のスリップ率Sの算出にあたっては,
当該実車速VC の代わりに従動輪速Vwfi(i=Lor
R)の最小値Vwfminを用い、またスリップ率の算出対
象となる駆動輪速Vwdiには,その最大値Vw dmaxを用
いることとした。
【0137】また、通常変速比制御においては,アクセ
ルペダルの足戻し操作や足離し操作に伴ってスロットル
開度THが閉じ方向に操作され、その結果,例えば前記
コースト走行変速比制御曲線CCOASTPTN等に従って変速
比が大きく変更制御される場合には、エンジンブレーキ
による制動力を得るといった意味合いからも,速い速度
に設定された変速比制御の変速速度で高応答に変速比制
御を実行することが望ましいが、例えば前述のような低
μ路面でスリップ率の収束に伴って変速比固定制御を解
除したとき、この解除時点の目標変速比である基準目標
変速比CDiが,固定されている目標変速比の前回値CD0
に対して相当に大きな場合には、この速い変速速度で目
標変速比到達制御を行ってしまうと,車両減速比が急激
に大きくなり、このとき未だエンジンの回転速度,即ち
エンジン出力は小さいままであると考えられるから、駆
動輪には急激な制動力がかかってつんのめり感が発生し
たり、或いは駆動輪がロック傾向になってしまったりす
る虞れがある。そこで、本実施例では前記変速比固定解
除制御を実施したときに,基準目標変速比CDiが固定さ
れていた目標変速比の前回値CD0よりも大きいときには
変速速度を小さく調整するようにしてつんのめり感や駆
動輪のロックを抑制防止するために、通常は最大速SP
MAX に設定される前記ステップモータの目標駆動速度S
Pを,当該最大速SPMAX を“1”よりも大きなスカラ
ー量である所定値kで除した値に設定することにした。
【0138】また、このようにして設定された目標駆動
速度SPのみに応じて前記ステップモータ駆動信号を設
定してしまうと、その総パルス数で今回演算処理による
ステップモータの到達回転角が決定されてしまい、これ
により、検出される現在ステップ数PA が目標ステップ
数PD を越えた値になり(すなわち、オーバーシュート
が発生して)、その繰り返しによりハンチングが生じる
可能性がある。そこで、この実施例では、目標ステップ
数PD と現在ステップ数PA との偏差の絶対値|PD
A |が目標駆動速度SPの絶対値|SP|以下である
場合には、当該目標ステップ数PD と現在ステップ数P
A との偏差の絶対値|PD −PA |を目標駆動速度SP
に設定することにした。
【0139】以上の基本原理に基づいて、車両の走行状
態および車両への操作入力に応じて目標変速比CD を設
定するとともに、この目標変速比CD に到達するまでの
変速速度を決定する目標駆動速度SPを設定するための
演算処理を図13に示す。この演算処理は、前記無段変
速機の制御装置であるマイクロコンピュータ300で、
所定時間(ΔT)毎のタイマ割込みによって実行される
図6の変速比制御の演算処理のうち、前記変速パターン
検索ステップ626,627,628,640(実質的
には、Dレンジ変速パターン検索ステップ626および
2レンジ変速パターン検索ステップ627のみである)
のマイナプログラムとして実行される。また、この図1
3の演算処理において、制御フラグFは、前記変速比固
定保持制御中又はその解除時にあって未だ基準目標変速
比CDiが固定されている目標変速比の前回値CD0より大
きいときの変速速度低減制御中であることを示し、制御
フラグFが“1”のセット状態で変速比固定保持制御中
又は変速速度低減制御中であることを示し、“0”のリ
セット状態で通常変速制御中であることを示す。また、
図中の制御フラグのセット・リセットでは、その都度、
前記RAM315への記憶更新が同時に実行される。
【0140】この図13の演算処理では、まず、ステッ
プS1で前記RAM315に更新記憶されている目標変
速比の前回値CD0を読込む。次にステップS2に移行し
て、前記各車輪速センサ403〜406で検出された各
車輪速検出値Vwj (j=FL〜RR)を読込む。次に
ステップS3に移行して、前記ステップS2で読込まれ
た各車輪速検出値Vwj のうち,駆動輪速VwdL,Vw
dRから駆動輪速最大値Vwdmaxを下記1式に従って選出
設定する。なお、下記1式中,“max”は最大値選出
を意味する。また、本実施例では前輪が駆動輪であるか
ら、前記各車輪速検出値Vwj に適合すると,前記添字
dは前輪を意味する“F”となる。
【0141】 Vwdmax= max(VwdL,VwdR) ……… (1) 次にステップS4に移行して、前記ステップS2で読込
まれた各車輪速検出値Vwj のうち,従動輪速VwfL
VwfRから従動輪速最小値Vwfminを下記1式に従って
選出設定する。なお、下記1式中,“min”は最小値
選出を意味する。また、本実施例では後輪が従動輪であ
るから、前記各車輪速検出値Vwj に適合すると,前記
添字fは後輪を意味する“R”となる。
【0142】 Vwfmin= min(VwfL,VwfR) ……… (2) 次にステップS5に移行して、前記図6の演算処理のス
テップ508で読込まれたスロットル開度THと、ステ
ップ510で読込まれた車速Vとを用いて、前記図10
の検索マップから今回の基準目標変速比CDiを検索す
る。次にステップS6に移行して、前記ステップS4で
選出された駆動輪速最大値Vwdmaxから前記ステップS
5で選出された従動輪速最小値Vwfminを減じ,更にそ
の値を当該従動輪速最小値Vwfminで除して得られる駆
動輪スリップ率Sが,前記目標スリップ率に相当する所
定値S0 より小さいか否かを判定し、当該駆動輪スリッ
プ率Sが所定値S0 より小さい場合にはステップS7に
移行し、そうでない場合にはステップS8に移行する。
なお、この所定値S0 は,通常の中高μ路面での加速発
進時等での駆動輪スリップ率や同じく中高μ路面での旋
回中や制動中に発生する駆動輪スリップ率よりも大きな
値であるとする。
【0143】前記ステップS8では、制御フラグFが
“1”のセット状態であるか否かを判定し、当該制御フ
ラグFが“1”のセット状態である場合にはステップS
9に移行し、そうでない場合にはステップS10に移行
する。前記ステップS10では、前記RAM315に更
新記憶されている各車輪速前回値Vwj0を読込み、次い
でステップS11に移行して、下記3式に従って各車輪
加減速度αwj を算出設定してからステップS12に移
行する。
【0144】 αwj =(Vwj0−Vwj )/ΔT ……… (3) 前記ステップS12では、前記ステップS11で算出設
定された各車輪加減速度αwj のうちの最大車輪加減速
度αwをセレクトハイにより選出し、次いでステップS
13に移行して、前記前後加速度センサ401で検出さ
れた車体前後加速度検出値Xgを読込んでからステップ
S14に移行する。
【0145】前記ステップS14では、前記ステップS
12で選出された最大車輪加減速度αwから,前記ステ
ップS13で読込まれた車体前後加速度検出値Xgを減
じた加速度偏差値が,前記或る正の所定加速度値α0
り小さいか否かを判定し、当該加速度偏差値が所定加速
度値α0 より小さい場合にはステップS15に移行し、
そうでない場合にはステップS16に移行する。なお、
この所定加速度値α0は,通常の中高μ路面等で比較的
大きな駆動輪スリップが発生したり或いは低μ路面でも
比較的小さな駆動輪スリップが発生したりした場合の発
進加速時にあっても,それらのスリップによって消費さ
れる駆動輪駆動力に応じた加速度の大きさよりも大きな
値に設定されている。
【0146】前記ステップS16では、前記図6の演算
処理のステップ508で読込まれたスロットル開度の今
回値TH(n) がRAM315に更新記憶されているスロ
ットル開度の前回値TH(n-1) 以上であるか否かを判定
し、スロットル開度の今回値TH(n) が前回値TH
(n-1) 以上である場合には前記ステップS15に移行
し、そうでない場合にはステップS17に移行する。
【0147】前記ステップS17では、前記ステップS
5で設定された基準目標変速比CDiから前記ステップS
1で読込まれた目標変速比の前回値CD0を減じた目標変
速比偏差が所定偏差値C0 以上であるか否かを判定し、
当該目標変速比偏差が所定偏差値C0 以上である場合に
は前記ステップS15に移行し、そうでない場合には前
記ステップS9に移行する。なお、この所定偏差値C0
は、低μ路面での駆動輪スリップ時に運転者がアクセル
ペダルを足戻し操作した結果,発生する基準目標変速比
Diと目標変速比の前回値CD0との偏差を,次回の変速
比制御演算処理で是正したときに変速ショックや突走り
感が発生しない程度の比較的大きな絶対値に設定してあ
る。
【0148】前記ステップS9では、ステップモータの
目標駆動速度SPを前記最大速SP MAX に設定すると共
に,無段変速機の目標変速比CD を前回値CD0に設定
し、次いでステップS18に移行して、制御フラグFを
“1”にセットしてからステップS19に移行する。一
方、前記ステップS7では、制御フラグFが“1”のセ
ット状態であるか否かを判定し、当該制御フラグFが
“1”のセット状態である場合にはステップS20に移
行し、そうでない場合には前記ステップS15に移行す
る。
【0149】前記ステップS20では、前記ステップS
5で設定された基準目標変速比CDiが前記ステップS1
で読込まれた目標変速比の前回値CD0以下であるか否か
を判定し、基準目標変速比CDiが目標変速比の前回値C
D0以下である場合には前記ステップS15に移行し、そ
うでない場合にはステップS22に移行する。前記ステ
ップS15では、ステップモータの目標駆動速度SPを
前記最大速SPMAX に設定すると共に,無段変速機の目
標変速比CD を基準目標変速比CDiに設定し、次いでス
テップS21に移行して、制御フラグFを“0”にリセ
ットしてから前記ステップS19に移行する。
【0150】一方、前記ステップS22では、ステップ
モータの目標駆動速度SPを,前記最大速SPMAX
“1”より大きなスカラー量である所定値kで除した値
に設定すると共に,無段変速機の目標変速比CD を基準
目標変速比CDiに設定してから前記ステップS19に移
行する。前記ステップS19では、前記ステップS9,
S15,S22で設定された目標変速比CD を目標変速
比の前回値CDiとして前記RAM315の所定記憶領域
に更新記憶する。
【0151】次いでステップS23に移行して、前記ス
テップS2で読込まれた各車輪速検出値Vwj を各車輪
速前回値Vwj0として前記RAM315の所定記憶領域
に更新記憶する。次いでステップS24に移行して、前
記ステップS9,S15,S22で設定された目標変速
比CD から、ステップモータ108が当該目標変速比C
D を達成するための目標ステップ数PD を算出する。
【0152】次に、ステップS25に移行して、前記ス
テップS24で算出された目標ステップ数PD と前記図
6の演算処理のステップ511bで算出された現在ステ
ップ数PA との偏差の絶対値|PD −PA |が、前記ス
テップS9,S15,S22で設定された目標駆動速度
SPの絶対値|SP|以下であるか否かを判定し、|P
D −PA |≦|SP|である場合にはステップS26に
移行し、そうでないつまり|PD −PA |>|SP|で
ある場合にはメインプログラムに復帰する。
【0153】前記ステップS26では、目標駆動速度S
Pを、前記目標ステップ数PD と現在ステップ数PA
の偏差の絶対値|PD −PA |に設定してからメインプ
ログラムに復帰する。次に、前記図13の演算処理の作
用を説明する。今、車両が乾燥したアスファルト路面や
コンクリート路面等の良好な中高μ路面で発進加速し、
シフトポジションはDレンジに維持されており、車速V
が前記所定値V0 を越えている状態で、アクセルペダル
の踏込み量を増大しながら、つまりアクセルペダルを踏
込みながら、或いはアクセルペダルの踏込みを一定に維
持しながら車速Vを増速している状態を想定する。
【0154】この状態で、前記図13の演算処理が図6
の演算処置のサンプリング時間(ΔT)毎に実行される
と、ステップS1で目標変速比の前回値CD0が読込ま
れ、ステップS2で各車輪速検出値Vwj が読込まれ、
ステップS3,S4で駆動輪速最大値Vwdmax及び従動
輪速最小値Vwfminが夫々選出され、ステップS5で車
速Vとスロットル開度THとに応じた基準目標変速比C
Diが設定される。このとき、路面は十分なμを有してい
るから車速Vとして検出される駆動輪速Vwdiは実車速
C とほぼ等しく或いはアクセルペダルの踏込み量が大
きくて駆動輪にスリップが発生したとしても当該駆動輪
速Vwdiは実車速VC よりもやや大きい程度であり、前
記ステップS5で前記図10の制御マップに従って設定
される基準目標変速比CDiは,スロットル開度THと実
車速VC とに適合したものか或いはほぼ適合したものと
なる。また、このように中高μ路面での発進加速時にお
ける駆動輪のスリップは小さなものであるから、次いで
ステップS6で,前記駆動輪速最大値Vwdmaxと,実車
速VC に等価な従動輪速最小値Vwfminとから算出され
る駆動輪スリップ率Sは,前記中高μ路面での発進加速
時に発生するスリップ率や旋回に伴う車輪速差から算出
される疑似的なスリップ率より大きな所定値S 0 よりも
当然に小さく、従ってステップS7に移行するが、ここ
で制御フラグFは未だ“0”にリセットされたままであ
るから、ステップS15に移行し、このステップS15
でステップモータの目標駆動速度SPが最大速SPMAX
に設定されると共に目標変速比CD は基準目標変速比C
Diに設定され、この目標変速比C D に応じて、ステップ
S24で当該目標変速比CD を達成するステップモータ
108の回転角である目標ステップ数PD が算出設定さ
れる。そして、ステップS25で、目標ステップ数PD
と現在ステップ数PA との偏差の絶対値が、前記目標駆
動速度SPの絶対値以下でない限り、前記ステップS1
5で設定された最大速SPMAX が目標駆動速度SPにな
る。
【0155】このように、最大速SPMAX が目標駆動速
度SPに設定されると、例えば車速Vの増加よりもスロ
ットル開度THの増加の方が大きい場合のように、車両
減速比を大きくして駆動輪の回転駆動力を大きくすべき
ような場合には、前記図13の演算処理で設定された目
標変速比CD を達成するための前記目標ステップ数P D
は、現在ステップ数PA よりも小さいはずであるから、
前記図6の演算処理のステップ630からステップ62
0に移行する。そして、当該目標駆動速度SPである最
大速SPMAX に応じた、前記所定時間ΔT当たりの最小
ピッチのパルス信号で、ステップモータ駆動信号をダウ
ンシフト方向即ちステップモータの回転角が小さくなる
方向に形成し、このステップモータ駆動信号が次のステ
ップ636でステップモータ108に向けて出力され
る。
【0156】逆に、例えば車速Vの増加よりもスロット
ル開度THの増加の方が小さい場合のように、車両減速
比を小さくして駆動輪の回転駆動力を小さくすべきよう
な場合には、前記図13の演算処理で設定された目標変
速比CD を達成するための前記目標ステップ数PD は現
在の実ステップ数PA よりも大きいはずであるから、前
記図6の演算処理のステップ630からステップ632
に移行する。そして、当該目標駆動速度SPである最大
速SPMAX に応じた、前記所定時間ΔT当たりの最小ピ
ッチのパルス信号で、ステップモータ駆動信号をアップ
シフト方向即ちステップモータの回転角が大きくなる方
向に形成し、このステップモータ駆動信号が次のステッ
プ636でステップモータ108に向けて出力される。
【0157】これにより、当該ステップモータ108
は、前記最大速SPMAX に応じた最大回転速度(最大角
速度)で所定時間ΔT間に最大角回転するため、所望す
る目標変速比CD に向けて、アップシフト方向へもダウ
ンシフト方向へも最大の速度で変速比が変更制御され
る。従って、前記車両走行状態並びに操縦入力に対して
無段変速機の変速比は最大変速速度で変化するため、運
転者には応答性のよい変速フィーリングが与えられる。
【0158】やがて、アクセルペダルの踏込み量一定で
車両が定速走行に移行し始めて、前記図13の演算処理
が、図6の演算処理のサンプリング時間毎に実行される
と、前記と同様のフローが繰り返され、結果的に、無段
変速機で達成される変速比は、前記最大速SPMAX に設
定された目標駆動速度SPに応じたステップモータの回
転角及び回転角速度で、次第に目標変速比CD に近づ
く。つまりステップモータ108で達成される現在ステ
ップPA は、当該目標変速比CD を達成する目標ステッ
プ数PD に近づく。そして、図13の演算処理のステッ
プS25で目標ステップ数PD と現在ステップ数PA
の偏差の絶対値が、この目標駆動速度SPの絶対値以下
となると、次のステップS26でこの目標ステップ数P
D と実ステップ数PA との偏差の絶対値が目標駆動速度
SPに設定される。
【0159】従って、この時点での図13(即ち図6)
の演算処理から次の演算処理までの所定時間(即ちサン
プリング時間ΔT)後に、ステップモータ108の回転
角である現在ステップ数PA が目標ステップ数PD にな
るから、その時点で前記目標変速比CD が達成され、そ
の後、車両は一定の変速比、一定のスロットル開度で定
速走行状態に移行する。
【0160】次に、同じく中高μ路面においてアクセル
ペダルを足戻し操作した,所謂コースト走行時にも前記
と同様に,図6の演算処理が実行されるサンプリング時
間ΔT毎に図13の演算処理が実行されると、このコー
スト走行時にもステップS6で算出される前記駆動輪速
最大値Vwdmaxと,実車速VC に等価な従動輪速最小値
Vwfminとから算出される駆動輪スリップ率Sは,エン
ジンから駆動輪に付与される駆動力が減少しているため
に前記所定値S0 よりも当然に小さく、従って図13の
演算処理のステップS15でステップモータの目標駆動
速度SPが最大速SPMAX に設定されると共に目標変速
比CD は基準目標変速比CDiに設定され、この目標変速
比CD に応じてステップモータ108は前記最大速SP
MAX に応じた最大回転速度(最大角速度)で所定時間Δ
T間に最大角回転し、運転者には応答性のよい変速フィ
ーリングが与えられ、やがて図13の演算処理が繰り返
されて,そのステップS25で目標ステップ数PD と現
在ステップ数PA との偏差の絶対値が、この目標駆動速
度SPの絶対値以下となると、次のステップS26でこ
の目標ステップ数PD と実ステップ数PA との偏差の絶
対値が目標駆動速度SPに設定されるため、この演算処
理後にステップモータの回転角は目標ステップ数PD
なって目標変速比CD が達成される。
【0161】次に、前記図13の演算処理による氷雪路
面や濡れたタイル路面等の低μ路面での発進加速時の作
用について,図14を引用しながら説明する。ここで
は、運転者が当該路面の小さなμを認識しにくく,アク
セルペダルを比較的大きく踏込んでしまった場合を想定
する。このような低μ路面での発進加速時に,アクセル
ペダルを比較的大きく踏込みながら車速Vとして検出さ
れ且つ既にエンジンからの過大な駆動力によってスリッ
プを発生し始めている駆動輪速Vwdiが前記所定値V0
を越えた状態で、前記図13の演算処理が図6の演算処
置のサンプリング時間(ΔT)毎に実行されると、ステ
ップS1で目標変速比の前回値CD0が読込まれ、ステッ
プS2で各車輪速検出値Vwj が読込まれ、ステップS
3,S4で駆動輪速最大値Vwdmax及び従動輪速最小値
Vwfminが夫々選出され、ステップS5で車速Vとスロ
ットル開度THとに応じた基準目標変速比CDiが設定さ
れる。このとき、各駆動輪は既にグリップ力を失ってス
リップを開始しているから,車速Vとして検出される駆
動輪速Vwdiは実車速VC よりも大きな値となり、これ
に先んじてスロットル開度THの方が大きくなるから、
この間に前記ステップS5で設定される基準目標変速比
Diは前記最大変速比CHiか或いはそれに近い比較的大
きな変速比となるであろう。次いで図13の演算処理が
実行されるサンプリング時間ΔT毎に,前記ステップS
6で前記駆動輪速最大値Vwdmaxと,実車速VC に等価
な従動輪速最小値Vwfminとから算出される駆動輪スリ
ップ率Sは、既に駆動輪が過大にスリップしていると考
えられるために,前記所定値S0 を越えており、従って
ステップS8に移行する。このとき、制御フラグFは未
だ“0”のリセット状態であるからステップS10に移
行し、以後,ステップS12までで最大車輪加減速度α
wが選出される。次いでステップS13,S14では,
読込まれた車体前後加速度検出値Xgと前記最大車輪加
減速度αwとの偏差が所定加速度値α0 より小さいか否
かの判定が行われるが、この時点で既に駆動輪はスリッ
プしているから当該駆動輪にかかる駆動力は,車体を前
方に移動しようとする力を越えていると考えられ、従っ
て前記加減速度偏差は所定加速度値α0 より大きくなっ
てステップS16に移行する。ところが、未だスロット
ル開度THは増加中であるから前記ステップS15に移
行し、このステップS15でステップモータの目標駆動
速度SPが最大速SPMAX に設定されると共に目標変速
比CD は基準目標変速比CDiに設定され、この目標変速
比CD に応じて、ステップS24で当該目標変速比C D
を達成するステップモータ108の回転角である目標ス
テップ数PD が算出設定される。そして、ステップS2
5で、目標ステップ数PD と現在ステップ数P A との偏
差の絶対値が、前記目標駆動速度SPの絶対値以下でな
い限り、前記ステップS15で設定された最大速SP
MAX が目標駆動速度SPになる。従って、このアクセル
ペダルの踏込み中の目標変速比CD は,図14に従来と
同様の変速比制御パターンCPTN1で示すように,最大変
速比CHiに維持されるか或いはほぼこの最大変速比CHi
に維持されるため、前述のようにステップモータの目標
駆動速度SPが最大速SPMAX に設定されても,実質的
には殆ど変速比変更制御は実行されない。更に、この無
段変速機の変速比が最大変速比CHiに維持されることも
相まって,スロットル開度THの増加に伴ってエンジン
回転速度NE が増速すればするほど、駆動輪速Vwdi
増速するが,未だ実車速VC はさほど増速していないか
ら当該駆動輪のスリップは大きくなって前記目標車輪速
から相当に大きくなっているものと考えられる。つま
り、この時点でエンジンから駆動輪に伝達される駆動力
が多少小さくなっても,タイヤは容易にはそのグリップ
力を回復し得ないから当該駆動輪速のスリップも容易に
は収束しない。
【0162】やがて、運転者がアクセルペダルの踏込み
量を一定に維持する状態に移行し始めて、前記図13の
演算処理が,図6の演算処理のサンプリング時間ΔT毎
に実行されると、前記と同様に,ステップS1で目標変
速比の前回値CD0が読込まれ、ステップS2で各車輪速
検出値Vwj が読込まれ、ステップS3,S4で駆動輪
速最大値Vwdmax及び従動輪速最小値Vwfminが夫々選
出され、ステップS5で車速Vとスロットル開度THと
に応じた基準目標変速比CDiが設定される。このとき、
例えばスロットル開度THが或る一定値TH1 に維持さ
れた直後でも,エンジンの応答遅れに伴うエンジン回転
速度NE の増速や或いはエンジンのイナーシャトルクな
どによって車速Vとして検出される駆動輪速Vwdiは未
だ増速し続けており、これに伴って当該スロットル開度
THをパラメータとする変速比制御マップから,前記ス
テップS5で設定される基準目標変速比CDiは、次第に
小さな変速比に設定されるであろう。従って、このスロ
ットル開度TH一定にした後に,図13の演算処理が図
6の演算処理のサンプリング時間で最初に実行されたと
き、前記ステップS6で前記駆動輪速最大値Vw
dmaxと,実車速VC に等価な従動輪速最小値Vwfmin
から算出される駆動輪スリップ率Sは、既に駆動輪が過
大にスリップしていると考えられるために,前記所定値
0 を越えており、従ってステップS8に移行する。こ
のとき、制御フラグFは未だ“0”のリセット状態であ
るからステップS10に移行し、以後,ステップS12
までで最大車輪加減速度αwが選出される。次いでステ
ップS13,S14では,読込まれた車体前後加速度検
出値Xgと前記最大車輪加減速度αwとの偏差が所定加
速度値α0 より小さいか否かの判定が行われるが、この
時点で既に駆動輪はスリップしているから当該駆動輪に
かかる駆動力は,車体を前方に移動しようとする力を越
えていると考えられ、従って前記アクセルペダルの踏込
み時と同様にステップS16に移行する。ところが、未
だスロットル開度THは一定中で,減少してはいないか
ら前記ステップS15に移行し、このステップS15で
ステップモータの目標駆動速度SPが最大速SPMAX
設定されると共に目標変速比CD は基準目標変速比CDi
に設定され、この目標変速比CD に応じて、ステップS
24で当該目標変速比CD を達成するステップモータ1
08の回転角である目標ステップ数PD が算出設定され
る。そして、ステップS25で、目標ステップ数PD
現在ステップ数PA との偏差の絶対値が、前記目標駆動
速度SPの絶対値以下でない限り、前記ステップS15
で設定された最大速SPMAX が目標駆動速度SPにな
り、また目標ステップ数PD と現在ステップ数PA との
偏差の絶対値が、前記目標駆動速度SPの絶対値より小
さくなると当該ステップ数偏差の絶対値が目標駆動速度
SPに設定されて,ステップモータの回転角は前記目標
変速比CD を達成する目標ステップ数PD となる。
【0163】ところで、このようにスロットル開度TH
一定の状態が維持されると、エンジンの応答遅れに伴う
エンジン回転速度NE の増速も収束するであろうし,或
いはエンジンのイナーシャトルクなどによる車速Vとし
て検出される駆動輪速Vwdiの増速も通常の中高μ路面
では収束するであろう。しかしながら、このような低μ
路面で既に前記目標車輪速を相当に上回るほどスリップ
している駆動輪速Vw diは、前述のように多少,無段変
速機の変速比が小さくなっても,そのスリップが収束す
ることがなく、むしろ,エンジン回転速度NE が一定で
も無段変速機の変速比が小さくなることによる最終出力
軸回転速度の増速に伴って,当該駆動輪速Vwdiは更に
増速してそのスリップ率も大きくなってしまうと考えら
れる。そこで、これ以後,前記図6の演算処理のサンプ
リング時間ΔT毎に図13の演算処理が実行されると、
前記と同様に,ステップS1で目標変速比の前回値CD0
が読込まれ、ステップS2で各車輪速検出値Vwj が読
込まれ、ステップS3,S4で駆動輪速最大値Vwdmax
及び従動輪速最小値Vwfminが夫々選出され、ステップ
S5で車速Vとスロットル開度THとに応じた基準目標
変速比CDiが設定されるが、スロットル開度THが或る
一定値TH1 に維持されていても,前述のように小さく
変更制御される無段変速機の変速比に伴う最終出力軸回
転速度の増速によって,車速Vとして検出される駆動輪
速Vwdiは未だ増速し続け、これに伴って当該スロット
ル開度THをパラメータとする変速比制御マップから,
当該ステップS5で設定される基準目標変速比CDiは、
更に次第に小さな変速比に設定されるであろう。従っ
て、この図13の演算処理の前記ステップS6で前記駆
動輪速最大値Vwdmaxと,実車速VC に等価な従動輪速
最小値Vwfminとから算出される駆動輪スリップ率S
は、既に駆動輪が過大にスリップしていると考えられる
ために,前記所定値S0 を越えており、従ってステップ
S8に移行する。このとき、制御フラグFは未だ“0”
のリセット状態であるからステップS10に移行し、以
後,ステップS12までで最大車輪加減速度αwが選出
される。次いでステップS13,S14では,読込まれ
た車体前後加速度検出値Xgと前記最大車輪加減速度α
wとの偏差が所定加速度値α0 より小さいか否かの判定
が行われるが、この時点で既に駆動輪はスリップしてい
るから当該駆動輪にかかる駆動力は,車体を前方に移動
しようとする力を越えていると考えられ、従ってステッ
プS16に移行する。ところが、未だスロットル開度T
Hは一定中で,減少してはいないから前記と同様にステ
ップS15に移行し、このステップS15でステップモ
ータの目標駆動速度SPが最大速SPMAX に設定される
と共に目標変速比C D は基準目標変速比CDiに設定さ
れ、この目標変速比CD に応じて、ステップS24で当
該目標変速比CD を達成するステップモータ108の回
転角である目標ステップ数PD が算出設定される。そし
て、ステップS25で、目標ステップ数PD と現在ステ
ップ数PA との偏差の絶対値が、前記目標駆動速度SP
の絶対値以下でない限り、前記ステップS15で設定さ
れた最大速SPMAX が目標駆動速度SPになり、また目
標ステップ数PD と現在ステップ数PA との偏差の絶対
値が、前記目標駆動速度SPの絶対値より小さくなると
当該ステップ数偏差の絶対値が目標駆動速度SPに設定
されて,ステップモータの回転角は前記目標変速比CD
を達成する目標ステップ数PD となる。
【0164】従って、このアクセルペダルの踏込みを一
定としている間の目標変速比CD は,図14に従来と同
様の変速比制御パターンCPTN2で示すように,パラメー
タであるスロットル開度THが一定値TH1 に維持され
ている状態で,駆動輪速Vw diの増速をあたかも車速V
の増速であると判定し,且つ前記ステップモータの目標
駆動速度SPを最大速SPMAX に設定した状態で比較的
速やかに小さな変速比に変更制御される。但し、エンジ
ン回転速度NE 一定でその出力トルクTE が一定である
とすると、駆動輪にかかる駆動力は,無段変速機の変速
比が小さくなるに従って次第に小さくなっており、例え
ばこれ以下にエンジンの出力トルクTEが小さくなって
駆動輪への駆動力が小さくなると、当該駆動輪速のスリ
ップは収束方向に是正される状態を想定する。
【0165】ところが、運転者は前述のように,例えば
アクセルペダルの踏込み量に比して車速がさほど増速し
ていないなどの経験則を判定条件として,当該駆動輪速
Vw diが前記目標車輪速の範囲に納まるようにアクセル
ペダルの踏込み量を小さくする,所謂アクセルペダル足
戻しとか足離しといった操作をしてエンジンからの駆動
輪への駆動力を小さくすると共に、この場合はタイヤの
グリップ力と等価な,路面が駆動輪を回転してくれる路
面回転駆動力によって当該駆動輪速Vwdiを実車速VC
に向けて小さく収束させようとする状態に移行した。こ
こでは、アクセルペダルを急激に戻して例えばスロット
ル開度THが全閉値TH0 になったものとするこのアク
セルペダル足戻し操作後に,前記図6の演算処理のサン
プリング時間ΔTで前記図13の演算処理が最初に実行
されると、ステップS1で目標変速比の前回値CD0が読
込まれ、ステップS2で各車輪速検出値Vwj が読込ま
れ、ステップS3,S4で駆動輪速最大値Vwdmax及び
従動輪速最小値Vwfminが夫々選出され、ステップS5
で車速Vとスロットル開度THとに応じた基準目標変速
比CDiが設定される。このとき、スロットル開度THは
急激に全閉値TH0 となり、しかしながら車速Vとして
検出される駆動輪速Vwdiは,未だ残存するエンジンの
イナーシャトルクや未だ回復していないタイヤのグリッ
プ力によってスリップし続け、従って車速Vである駆動
輪速Vwdiが未だ減速していない或いは殆ど減速してい
ない状態で、前記ステップS5で設定される基準目標変
速比CDiは,前記最小変速比CLOか或いは前記コースト
走行変速比制御パターンCCOASTPTN上の比較的小さな変
速比に向けて速やかに設定されるであろう。ところが、
この図13の演算処理の前記ステップS6で前記駆動輪
速最大値Vwdmaxと,実車速VC に等価な従動輪速最小
値Vwfminとから算出される駆動輪スリップ率Sが、未
だ駆動輪のスリップに伴って前記所定値S0 を越えてお
り、従ってステップS8に移行する。このとき、制御フ
ラグFは未だ“0”のリセット状態であるからステップ
S10に移行し、以後,ステップS12までで最大車輪
加減速度αwが選出される。次いでステップS13,S
14では,読込まれた車体前後加速度検出値Xgと前記
最大車輪加減速度αwとの偏差が所定加速度値α0 より
小さいか否かの判定が行われるが、この時点で未だ駆動
輪はスリップしているから当該駆動輪にかかる駆動力
は,車体を前方に移動しようとする力を越えていると考
えられ、従ってステップS16に移行し、スロットル開
度THは減少しているためにステップS17に移行す
る。このとき、前記ステップS5で設定される基準目標
変速比CDiがスロットル開度THの大幅で且つ速い減少
に伴って比較的小さな変速比に設定されているために、
目標変速比の前回値CD0との偏差は前記所定偏差値C0
より小さくなっており、従ってステップS9に移行して
ステップモータの目標駆動速度SPが最大速SPMAX
設定されると共に目標変速比CD は前記目標変速比の前
回値CD0に設定され、続くステップS18で制御フラグ
Fが“1”にセットされ、この目標変速比CD に応じ
て、ステップS24で当該目標変速比CD を達成するス
テップモータ108の回転角である目標ステップ数PD
が算出設定される。そして、ステップS25で、目標ス
テップ数PD と現在ステップ数PA との偏差の絶対値
が、前記目標駆動速度SPの絶対値以下でない限り、前
記ステップS15で設定された最大速SPMAX が目標駆
動速度SPになり、これ以後,当該図13の演算処理が
実行されるサンプリング時間ΔT毎に,少なくとも前記
ステップS6で算出される駆動輪スリップ率Sが前記所
定値S0 より小さくならないかぎり、前記ステップS8
で制御フラグFが“1”のセット状態であるために,ス
テップS9にそのまま移行し、ステップモータの目標駆
動速度SPが最大速SPMAX に設定されると共に目標変
速比CD は前記目標変速比の前回値C D0に設定され、続
くステップS18で制御フラグFが“1”にセットさ
れ、この目標変速比CD に応じて、ステップS24で当
該目標変速比CD を達成するステップモータ108の回
転角である目標ステップ数PD が算出設定され、ステッ
プS25で、目標ステップ数PD と現在ステップ数PA
との偏差の絶対値が、前記目標駆動速度SPの絶対値以
下でない限り、前記ステップS15で設定された最大速
SPMAX が目標駆動速度SPとなる。
【0166】しかしながら、この間,目標変速比C
D は、図14に変速比固定制御パターンCHOLDで示すよ
うに,アクセルペダル足戻し直前の変速比,即ち前記目
標変速比の前回値CD0に固定保持されるから、前述のよ
うにステップモータの目標駆動速度SPが設定されても
実際の無段変速機の変速比は変更制御されない。また、
これに伴って,目標変速比CD そのものが変更設定され
ないために目標ステップ数PD も変更設定されず、いま
現在ステップ数PA が既に目標変速比の前回値CD0を満
足するものであれば、前記図13の演算処理のステップ
S25からステップS26に移行して,実質的には目標
駆動速度SPは“0”となってしまう。
【0167】次いでアクセルペダルを完全に足戻しして
スロットル開度THが全閉値TH0である状態が継続
し、やがて駆動輪スリップ率Sが前記所定値S0 より小
さくなったと想定し、このときの車速Vとして検出され
ている駆動輪速Vwdiは前記クリープ上限速度所定値V
0 と同等かほぼ同等であるとする。つまり、実車速VC
は,未だこのクリープ上限速度所定値V0 程度までしか
増速していないことになる。このとき、前記図6の演算
処理のサンプリング時間ΔTで前記図13の演算処理が
最初に実行されると、ステップS1で目標変速比の前回
値CD0が読込まれ、ステップS2で各車輪速検出値Vw
j が読込まれ、ステップS3,S4で駆動輪速最大値V
dmax及び従動輪速最小値Vwfminが夫々選出され、ス
テップS5で車速Vとスロットル開度THとに応じた基
準目標変速比CDiが設定される。このとき、スロットル
開度THは全閉値TH0 であり、車速Vとして検出され
る駆動輪速Vwdiは,前記所定値V0 程度まで減速して
いるから、前記ステップS5で設定される基準目標変速
比CDiは,前記最大変速比CHiか或いは前記コースト走
行変速比制御パターンCCOASTPTN上の比較的大きな変速
比に向けて速やかに設定されるであろう。そして、この
図13の演算処理の前記ステップS6で前記駆動輪速最
大値Vwdmaxと,実車速VC に等価な従動輪速最小値V
fminとから算出される駆動輪スリップ率Sは、既に駆
動輪のスリップの収束に伴って前記所定値S0 より小さ
くなっているために、ステップS7に移行する。このと
き、制御フラグFは未だ“1”のセット状態であるから
ステップS20に移行する。このステップS20では,
前述のように前記ステップS5で設定された基準目標変
速比CDiが,それまで固定保持されていた目標変速比の
前回値CD0よりも大きいためにステップS22に移行
し、ステップモータの目標駆動速度SPが最大速SP
MAX を“1”より大きなスカラー量である所定値kで除
した値,即ち最大速SP MAX より小さな速度に設定され
ると共に目標変速比CD は前記基準目標変速比C Diに設
定され、この目標変速比CD に応じて、ステップS24
で当該目標変速比CD を達成するステップモータ108
の回転角である目標ステップ数PD が算出設定される。
そして、ステップS25で、目標ステップ数PD と現在
ステップ数PA との偏差の絶対値が、前記目標駆動速度
SPの絶対値以下でない限り、前記ステップS22で設
定された目標駆動速度SP,即ち前記所定時間ΔT当た
りのピッチが前記最小ピッチより大きなパルス信号で且
つダウンシフト方向にステップモータの回転角が小さく
なる方向に形成されたステップモータ駆動信号により、
当該所定時間ΔT毎に前記最大回転速度(最大角速度)
よりも小さな回転速度(角速度)で,ステップモータが
所定時間ΔT間での最大角より小さな回転角だけ回転す
るため、無段変速機の変速比は比較的ゆっくりとした変
速速度で大きな変速比に変更制御され、これ以後,当該
図13の演算処理が実行されるサンプリング時間ΔT毎
に、少なくともアクセルペダルの再踏込みによってスロ
ットル開度THが増加しない限り或いは前記目標変速比
D が達成されない限り,このフローが繰り返され、や
がて無段変速機の変速比は,図14に変速比固定解除制
御パターンCH.R で示すように,スリップ収束時点での
目標変速比CD に向けて変更制御される。
【0168】このアクセルペダル足戻し状態によるスロ
ットル開度THが全閉値TH0 である状態が継続され
て、無段変速機の変速比が,スリップ収束時点での目標
変速比CD に一致すると、それまでの変速比変更制御に
伴って随時更新記憶されていた目標変速比の前回値CD0
と図13の演算処理のステップS5で設定される基準目
標変速比CDiが一致するために、その後,図13の演算
処理が実行される図6の演算処理のサンプリング時間Δ
Tで,前記ステップS20からステップS15に移行
し、このステップS15でステップモータの目標駆動速
度SPが最大速SP MAX に設定されると共に目標変速比
D は基準目標変速比CDiに設定され、次いでステップ
S21で制御フラグFが“0”にリセットされ、この目
標変速比CDに応じて、ステップS24で当該目標変速
比CD を達成するステップモータ108の回転角である
目標ステップ数PD が算出設定される。そして、ステッ
プS25で、目標ステップ数PD と現在ステップ数PA
との偏差の絶対値が、前記目標駆動速度SPの絶対値以
下でない限り、前記ステップS15で設定された最大速
SPMAX が目標駆動速度SPとなり、これ以後,通常の
変速比変更制御が開始可能となる。
【0169】以上のように前記13の演算処理によれ
ば、前記アクセルペダルの足戻し操作後の無段変速機の
変速比が,その直前の変速比に固定保持制御されるか
ら、少なくとも当該無段変速機の変速比が急激に小さく
なったり大きくなったりすることに伴う変速ショックは
なく、またアクセルペダル,即ちスロットル開度THの
変化に伴うエンジンのイナーシャトルク等の影響から車
両に突走り感やつんのめり感が発生することもない。ま
た、駆動輪のスリップが収束した後に,本実施例では変
速比固定制御が解除されるが、この変速比固定制御解除
後に,例えば基準とする目標変速比CDiが,それまで固
定保持されていた目標変速比の前回値CD0よりも大きい
場合には、その変速速度が小さくなるために、駆動輪に
急激な制動力が付与されて,それがつんのめり感となっ
たり、或いは駆動輪がロック傾向となるといったことも
ない。また、駆動輪のスリップが収束する以前に運転者
が再びアクセルペダルを踏込んでしまった場合には,前
回アクセルペダルを足戻し操作した時点の比較的小さな
変速比に固定保持されているため、仮にエンジンの回転
速度NE が増速してその出力トルクTE が増加しても,
駆動輪への駆動力は,さほど大きくならず、それ以上に
駆動輪がスリップして舵取り効果や安定した走行を損な
うことが抑制される。
【0170】以上より、前記実施例は本発明の請求項1
乃至4の全ての無段変速機の制御装置を実施化したもの
と考えられ、前記スロットル開度センサ310及び図1
3の演算処理のステップS16が本発明の無段変速機の
制御装置のアクセルペダル操作状態検出手段に相当し、
以下同様に,車速センサ301及び図6の演算処理のス
テップ510が車速検出手段に相当し、各駆動輪速セン
サ403,404及び図13の演算処理のステップS
2,S10〜S12が駆動輪加速度検出手段に相当し、
同じく図13の演算処理のステップS8,S9,S1
4,S16〜S18が変速比固定手段に相当し、各駆動
輪速センサ403,404及び図13の演算処理のステ
ップS2が駆動輪速検出手段に相当し、同じく図13の
演算処理のステップS3〜S7,S15,S20,S2
1が変速比固定解除手段に相当し、前後加速度センサ4
01及び図13の演算処理のステップS13,S14が
車体加速度検出手段に相当し、図13の演算処理のステ
ップS20,S22が変速速度調整手段に相当し、図1
3の演算処理全体及び図6の演算処理全体が変速比制御
手段に相当し、図2の無段変速機構29および図3の油
圧制御回路が無段変速機に相当する。
【0171】次に本発明の無段変速機の制御装置による
車両挙動に係る作用を図15のタイミングチャートを用
いて説明する。このタイミングチャートは,前述の氷雪
路面や濡れたタイル路面等のような低μ路面で停車中の
車両を直進走行状態で発進加速したときのシミュレーシ
ョンであり、図15aはアクセルペダルの操作状態検出
値であるスロットル開度TH,同図bは車両全体として
のエンジン出力トルクTE ,同図cは車体加速度検出値
Xg及び駆動輪加減速度αw,同図dは実車体速VC
び駆動輪速最大値Vwdm ax,同図eは変速比Cの夫々の
経時変化を示す。
【0172】このシミュレーションは,時刻t0 で車両
を発進し、これと同時にアクセルペダルを一様に且つ急
激に踏込んでいって,時刻t1 でアクセルペダルの踏込
み量を,スロットル開度TH換算で前記一定値TH1
維持されるように保持し、然る後,駆動輪の過大なスリ
ップを感知した運転者が,時刻t3 でアクセルペダル
を,スロットル開度TH換算で前記全閉値TH0 まで足
戻しし、その後,時刻t 8 で駆動輪速のスリップが収束
し且つ実車速が或る程度まで減速したことを感知した運
転者が,今度はゆっくりとアクセルペダルを踏込んだ状
態を想定したものである。なお、無段変速機の変速比制
御は図14にほぼ従うため、これを参照していただきた
い。
【0173】まず、前記運転者がアクセルペダルを一様
に且つ急激に踏込んだ時刻t0 から時刻t1 までの時間
0 〜t1 に、エンジン出力トルクTE が,スロットル
開度THの増加に伴ってリニアに増加したものとする
と、前記時刻t3 におけるスロットル開度THの到達一
定値TH1 が比較的大きな値であるために,車速Vとし
て検出される駆動輪速最大値Vwdmaxがこれに追従しき
れず、従って前記図14に変速比制御パターンCPTN1
示すように,この間,無段変速機の変速比は最大変速比
Hiに維持され、これにより最大駆動輪加減速度αw
は,当該スロットル開度TH若しくはエンジン出力トル
クTE と同等にリニアに増加し、その駆動輪速最大値V
dmaxは,前記最大駆動輪加減速度αwの積分値として
二次曲線的に増速した。ところが、この発進加速に伴う
駆動輪の駆動力,即ち最大駆動輪加減速度αwが,既に
駆動輪のタイヤのグリップ力を低下させるに足るもので
あったために、車体に作用する車体前後加速度検出値X
gは,前記最大駆動輪加減速度αwから,所謂トラクシ
ョンロスを減じた大きさとなる。ここでは、このトラク
ションロスに係る力の大きさが,駆動輪に係る駆動力と
リニアな関係にあるとして、前記車体前後加速度検出値
Xgは,前記最大駆動輪加減速度αwよりも小さな傾き
で一様に増加したものとし、その結果,実車速VC はこ
の車体前後加速度検出値Xgの積分値として二次曲線的
に,駆動輪速最大値Vwdmaxより小さな値で増速した。
【0174】次いで前記時刻t3 でスロットル開度TH
が前記一定値TH1 に維持されたため、エンジン出力ト
ルクTE も或る一定値THE1に保持された。しかしなが
ら、このスロットル開度THの到達一定値TH1 が比較
的大きな値であるために,車速Vとして検出されている
駆動輪速最大値Vwdmaxがこれに追従するまで,即ち前
記図10の変速比制御マップでこのスロットル開度TH
の一定値TH1 をパラメータの下限値とする車速Vに駆
動輪速最大値Vwdmaxが到達する時刻t2 まで、この時
間t1 〜t2 も,前記図14に変速比制御パターンC
PTN1で示すように無段変速機の変速比は最大変速比CHi
に維持され、同時にエンジン出力トルクT E のスロット
ル開度THに対する応答遅れがないとすると,最大駆動
輪加減速度αwは,当該スロットル開度TH若しくはエ
ンジン出力トルクTE と同等に或る一定値に維持され、
その駆動輪速最大値Vwdmaxは,前記最大駆動輪加減速
度αwの積分値として一次曲線的に増速した。また、前
記車体前後加速度検出値Xgは,前記トラクションロス
の関係から最大駆動輪加減速度αwよりも小さな或る一
定値に維持され、その結果,実車速VC はこの車体前後
加速度検出値Xgの積分値として一次曲線的に,駆動輪
速最大値Vwdmaxより小さな値で増速した。
【0175】ところが、スロットル開度THが前記一定
値TH1 に維持され且つ無段変速機の変速比が前記最大
変速比CHiに維持されている状態で、前記時刻t2 で車
速Vとして検出されている駆動輪速最大値Vwdmaxが当
該スロットル開度THの一定値TH1 ,即ち相応するエ
ンジン回転速度NE に追従したため、この時刻t2
後,前記アクセルペダルが足戻し操作されてスロットル
開度THが全閉値TH0になる時刻t3 までの時間t2
〜t3 ,図14に変速比制御パターンCPTN2で示すよう
に無段変速機の変速比は次第に且つ一様に小さな変速比
に変更制御され、時刻t3 では或る変速比C1 となっ
た。そして、この無段変速機の変速比変更制御に伴い,
既にスリップ率が過大となってグリップ力を失った最大
駆動輪加減速度αwは、前述のように最終出力軸回転速
度の増速に伴って次第に且つ一様に大きくなり、その駆
動輪速最大値Vwdmaxは,前記最大駆動輪加減速度αw
の積分値として二次曲線的に増速した。一方、既にスリ
ップ率が過大となり過ぎた駆動輪の最大駆動輪加減速度
αwは次第に大きくなっても,当該駆動輪は所謂空転状
態又はそれに近い状態となっているために、前記車体前
後加速度検出値Xgは前記時刻t2 と同等の一定値とな
り、その結果,実車速VC はこの車体前後加速度検出値
Xgの積分値として一次曲線的に,駆動輪速最大値Vw
dmaxより小さな値で増速した。なお、前記時刻t2
後,最大駆動輪加減速度αwと車体前後加速度検出値X
gとの偏差は,前記所定加速度値α0 を越えて大きくな
り続けた。なお、この時間t2 〜t3 の無段変速機の変
速比変更制御に係る変速速度は、前記ステップモータの
目標駆動速度SPが前記最大速SPMAX に維持されるた
めに,最も速い変速速度に設定されている。
【0176】次いで、前記時刻t3 でアクセルペダルの
足戻し操作と共にスロットル開度THが前記全閉値TH
0 となったために、その後,前記13の演算処理が実行
される図6の演算処理の最初のサンプリング時間で、図
10に示す変速比制御マップに従って基準目標変速比C
Diは最小変速比CLOとなるが、同図13の演算処理で,
駆動輪速最大値Vwdmaxは実車速VC と等価な従動輪速
最小値Vwfminを越えて過大にスリップし且つ最大駆動
輪加減速度αwと車体前後加速度検出値Xgとの偏差が
前記所定加速度値α0 より大きく且つスロットル開度T
Hが閉じ方向で且つ基準目標変速比CDiと目標変速比の
前回値CD0である現在の変速比C1 との偏差が前記所定
偏差値C0 より小さいために、この時刻t3 以後,無段
変速機の変速比は図14に変速比固定制御パターンC
HOLDで示すように前記或る変速比C 1 に固定保持制御さ
れることになった。一方、スロットル開度THが全閉値
TH 0 となった時刻t3 以後も,エンジンの応答遅れや
イナーシャトルクによってエンジン出力トルクTE は速
やかに低減することなく,やや残存していたが、やがて
低減し始めた。そして、これに相まって,走行抵抗や前
記無段変速機の変速比が或る変速比C1 に固定保持され
ている関係などから駆動輪のグリップ力が次第に回復し
始め、当該駆動輪には前記路面回転駆動力による制動力
が作用し、これがエンジンの出力軸にも伝達されて当該
エンジン出力トルクTE は三次曲線的に減少し、時刻t
4 で車両全体として“0”となり、更に時刻t5 で負の
トルク,即ちバックトルク(−TE2)となり、これ以
後,一定状態に維持された。このエンジン出力トルクT
E の減少及び前記無段変速機の変速比が或る変速比C1
に固定保持されている関係から、最大駆動輪加減速度α
wも,前記エンジン出力トルクTE の減少と時を同じく
して三次曲線的に減少し、前記時刻t4 で“0”とな
り、更に時刻t5 で或る負の値となって、これ以後,一
定状態に維持された。これに伴って、駆動輪速最大値V
dmaxは前記最大駆動輪加減速度αwの積分値として変
化し、前記時刻t4 まで二次曲線的にやや増速するもの
の,時刻t5 まで二次曲線的に減少し、更にこの時刻t
5 以後,一次曲線的に減少を続けた。また、車体前後加
速度検出値Xgは,前記最大駆動輪加減速度αwの減少
の影響を受けて前記時刻t3 から時刻T4 まで三次曲線
的に減少し、時刻t4 から後述する時刻t6 まで二次曲
線的に減少し、従動輪速最小値Vwfminと同等な実車速
Cは,この車体前後加速度検出値Xgの積分値とし
て,前記t3 から時刻T4 まで二次曲線的に増速するも
のの,時刻t4 から時刻t6 までは一次曲線的に減速し
た。
【0177】もし、前記時刻t3 以後,無段変速機の変
速比が固定保持制御されないと、その変速比CN は,図
15eに二点鎖線で示すように,当該時刻t3 の直後に
基準目標変速比CDiである最小変速比CLOに急激に変更
制御され、やがて車速Vとして検出されている駆動輪最
大値Vwdmaxの減速と共に,最大変速比CHiに向けて大
幅に且つ速やかに変更設定されることになろうから、こ
れに伴う急激な各プーリのV溝幅変更制御が変速ショッ
クとなってしまう。また、未だエンジンのイナーシャト
ルクが残存している当該時刻t3 の直後に,このように
無段変速機の変速比CN が最小変速比CLOに急激に変更
されるために、これが駆動輪に放出されて,同図15c
に二点鎖線で示すように駆動輪加減速度αwN は急激に
大きくなり、これが車両への突走り感として作用すると
共に,この加速度によって加速された駆動輪速最大値V
dmaxN は同図15dに二点鎖線で示すように急激に増
速されてスリップが増大する。また、この後,無段変速
機の変速比CN が最大変速比CHiに向けて急速に変更制
御されるために、駆動輪加減速度αwN は図15cに二
点鎖線で示すように,エンジン出力トルクTE の収束以
前に急速に小さくなって、これが車両のつんのめり感と
して作用すると共に,この減速度によって駆動輪速最大
値VwdmaxN は同図15dに二点鎖線で示すように急激
に減速され、この駆動輪速最大値VwdmaxN が実車速V
C を下回ると当該駆動輪がロック傾向となってしまう。
【0178】一方、前記実施例では前記時刻t6 で最大
駆動輪加減速度αwと車体前後加速度検出値Xgとが同
じ値となり,同時に駆動輪速最大値Vwdmaxと実車速V
C とが同じ値となった。この時刻t6 以後, 前記図13
の演算処理が実行される図6の演算処理の最初のサンプ
リング時間で、基準目標変速比CDiは最大変速比CHi
なるが、同図13の演算処理で,それまで固定保持され
ていた目標変速比の前回値CD0である或る変速比C
1 が,この最大変速比CHiである基準目標変速比C Di
り小さいために、変速速度に相当するステップモータの
目標駆動速度SPは,前記最大速SPMAX を“1”より
大きなスカラー量である所定値kで除した値に設定さ
れ、それ以後,時刻t7 で車速Vとして検出されている
駆動輪速最大値Vwdmaxが前記所定速V0 となるまで、
前記図13の演算処理が実行される図6の演算処理のサ
ンプリング時間毎に,この目標駆動速度SPに応じた比
較的ゆっくりとした変速速度で,且つ図14に変速比固
定解除制御パターンCH.R で示すように無段変速機の変
速比は前記最大変速比CHiに変更制御された。これに伴
って駆動輪への駆動力は次第に小さくなるため、既にス
リップの収束した駆動輪加減速度αwは,車体前後加速
度検出値Xgと共に,比較的傾きの緩やかな一次曲線的
に減少し、それらの積分値である駆動輪速最大値Vw
dmaxも実車速VC も同様に,二次曲線的に減速した。こ
の時点で,少なくとも基準目標変速比CDiが目標変速比
の前回値CD0より大きくなることはないから、前記図1
3の演算処理が実行される図6の演算処理の最初のサン
プリング時間に,変速比固定制御又は変速速度調整制御
を示す制御フラグFは“0”にリセットされ、通常の変
速比制御を開始可能としている。
【0179】やがて前記時刻t7 で車速Vとして検出さ
れている駆動輪速最大値Vwdmaxも実車速VC も,共に
前記クリープ制御上限速度V0 となり、同時に無段変速
機の変速比は最大変速比CHiとなり、未だ車両全体とし
てのエンジン出力トルクTEは一定のバックトルク(−
E2)を出力していることになるから、前記時刻t7
ら前記時刻t8 までの時間t7 〜t8 ,最大駆動輪加減
速度αwと車体前後加速度検出値Xgとは同等に或る一
定値に維持され、その積分値である駆動輪速最大値Vw
dmaxと実車速VC とは同様に一次曲線的に減速した。
【0180】次いで、時刻t8 , 今度は運転者がアク
セルペダルを一様に且つゆっくりと踏込んだため、これ
に応じてスロットル開度THが比較的傾きの小さな一次
曲線的に緩やかに増大し、これに伴って,車両全体とし
てのエンジン出力トルクTEが負から正に転じながら増
大する。しかし、後述する時刻t9 まで車速Vとして検
出されている駆動輪速最大値Vwdmaxも実車速VC も,
共に前記クリープ制御上限速度V0 より小さいために、
無段変速機の変速比は最大変速比CHiに維持されるか
ら、駆動輪加減速度αwは,前記エンジン出力トルクT
E の増加に伴って増加し、今度は駆動輪が過大にスリッ
プしていないために,車体前後加速度検出値Xgも,こ
の駆動輪加減速度αwと同様に増加する。そして、それ
らの各積分値である車速Vとして検出されている駆動輪
速最大値Vwdmaxも実車速VC も同様に増速していっ
た。
【0181】次いで、前記時刻t9 で車速Vとして検出
されている駆動輪速最大値Vwdmaxが前記クリープ制御
上限速度V0 以上となり且つそれが増速を継続している
ために、無段変速機の変速比は次第に小さな変速比に変
更制御され、これに伴って当該駆動輪への駆動力は次第
に小さくなるから,駆動輪加減速度αw及び車体前後加
速度検出値Xgは二次曲線的に,次第にその傾きを小さ
くしながら増加し、その積分値である駆動輪速最大値V
dmaxも実車速VC は同様の二次曲線か或いは一次曲線
的に増速していった。
【0182】このように本発明の無段変速機の制御装置
は、低μ路面でのスリップ検出時にアクセルペダルを足
戻し操作しても変速ショックが発生しにくく、またその
前後で車両に突走り感やつんのめり感が発生することも
ない。なお、前記目標駆動速度SPを設定するための所
定値kは,必ずしも一定値である必要はなく、例えば前
記基準目標変速比CDiと目標変速比の前回値CD0との偏
差の大きさや,アクセルペダルの踏込み量の大きさなど
に応じて変更設定可能としてもよい。また、前記実施例
では,無段変速機の変速比の変更制御に係る変速速度
を,具体的にアクチュエータの駆動速度を変更すること
で調整することとしたが、本発明では,例えば前記基準
目標変速比CDiに対して設定される目標変速比CD を小
さくしたり、或いは制御系全体での変速比変更制御の制
御ゲインを小さくしたりすることでも対応することがで
きる。
【0183】また、前記実施例では、アクセルペダルの
操作状態をスロットル開度310からの検出値THによ
って検出しているが、本発明の無段変速機の制御装置と
してのアクセルペダル操作状態検出手段としては,アク
セルペダルの踏込み量をアクセル開度として検出するも
のであってもよく、或いは当該アクセルペダルの踏込み
操作速度やその加速度を用いてもよい。
【0184】また、上記各実施例においてはモータ駆動
回路はクローズドループで形成されているが、モータ駆
動回路をオープンループに形成することも可能である。
また、上記各実施例においては、無段変速機を油圧制御
装置によって制御するようになされているが、これに限
らず、圧縮率の少ない流体であれば任意の作動流体を適
用することができる。
【0185】また、上記各実施例は、本出願人が先に提
案した特開昭61−105353号公報に記載される無
段変速機の制御装置を基体としたものであるが、本発明
はこれ以外のベルト式無段変速機に広く展開可能である
ことは言うまでもない。また、ベルト式無段変速機に限
らず、特開平4−78369号公報や特開平5−398
47号公報に記載されるようなトロイダル式の無段変速
機にも展開可能であることも言うまでもない。
【0186】また、前記各実施例では、変速比制御コン
トローラをマイクロコンピュータで構築したものについ
てのみ詳述したが、これに限定されるものではなく、演
算回路等の電子回路を組み合わせて構成してもよいこと
は言うまでもない。
【0187】
【発明の効果】以上説明したように本発明の無段変速機
の制御装置によれば、低μ路面での発進加速時等に,運
転者によるアクセルペダルの操作状態が大き過ぎるため
に駆動輪への駆動力が大きくなり過ぎ、その結果,駆動
輪に過大なスリップが発生している状態で当該運転者が
アクセルペダルを戻す操作をしたときに、無段変速機の
変速比がその直前の変速比に固定保持制御されるため、
急激なアクセルペダル操作状態や急速な駆動輪速の収束
に伴う大幅で且つ速い変速比変更制御による変速ショッ
クが抑制防止されるとともに、エンジンのイナーシャト
ルクの急激な放出に伴う突走り感や駆動輪にかかる大き
な制動力によるつんのめり感が抑制防止される。また、
駆動輪のスリップ率が収束したときに前記無段変速機の
変速比固定制御を解除するため、これに合わせて運転者
がアクセルペダルを踏込んだときには,通常の変速比変
更制御を再開することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の無段変速機の制御装置の基本構成図で
ある。
【図2】無段変速機の動力伝達機構の一例を示す構成図
である。
【図3】無段変速機の油圧制御装置の一例を示す構成図
である。
【図4】無段変速機の変速比制御装置に相当するコント
ローラの一例を示す構成図である。
【図5】変速比とステップモータのステップ位置との対
応を表すグラフである。
【図6】図4のコントローラで実行される無段変速機の
変速比制御の演算処理の一例を示すフローチャートであ
る。
【図7】エンジン回転数とエンジントルクとの対応を表
すグラフである。
【図8】変速比とライン圧との対応を示すグラフであ
る。
【図9】ロックアップ車速を表すグラフである。
【図10】図6の演算処理による変速パターンの説明図
である。
【図11】変速操作機構および変速制御弁の動作説明図
である。
【図12】通常の変速比制御による低μ路面での駆動輪
スリップ過大時の無段変速機の変速比の説明図である。
【図13】本発明の無段変速機の制御装置の一実施例に
おいて、図6の演算処理のマイナプログラムとして実行
される演算処理を示すフローチャートである。
【図14】図13の変速比制御による低μ路面での駆動
輪スリップ過大時の無段変速機の変速比の説明図であ
る。
【図15】図13及び図6の演算処理による車両挙動を
説明するタイミングチャートである。
【符号の説明】 16 駆動プーリ 18 固定円錐部材 20 駆動プーリシリンダ室 22 可動円錐部材 24 Vベルト 26 従動プーリ 29 無段変速機構(無段変速機) 30 固定円錐部材 32 従動プーリシリンダ室 34 可動円錐部材 106 変速制御弁 108 ステップモータ 112 変速操作機構 300 変速制御装置(マイクロコンピュータ) 301 エンジン回転速度センサ 302 車速センサ(車速検出手段) 303 スロットル開度センサ(アクセルペダル操作状
態検出手段) 317 モータ駆動回路 318 ロータリエンコーダ 401 前後加速度センサ(車体加速度検出手段) 403〜406 車輪速センサ(車輪速検出手段,車輪
加減速度検出手段)

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アクセルペダルの操作状態を検出するア
    クセルペダル操作状態検出手段と、車両の前後方向速度
    を検出する車速検出手段と、前記アクセルペダル操作状
    態検出手段で検出されたアクセルペダル操作状態検出値
    及び前記車速検出手段で検出された車速検出値に基づい
    て算出された目標変速比に対して,車両に搭載された無
    段変速機の変速比を制御する変速比制御手段とを備えた
    無段変速機の制御装置において、駆動輪回転の加速度を
    検出する駆動輪加速度検出手段を備え、前記変速比制御
    手段は、前記アクセルペダル操作状態検出手段で検出さ
    れたアクセルペダル操作状態検出値からアクセルペダル
    が閉じ方向に操作され且つ前記駆動輪加速度検出手段で
    検出された駆動輪加速度検出値が所定駆動輪加速度値以
    上のときに,前記無段変速機の変速比をその時点の変速
    比に固定保持制御する変速比固定手段を備えたことを特
    徴とする無段変速機の制御装置。
  2. 【請求項2】 駆動輪の回転速度を検出する駆動輪速検
    出手段を備え、前記変速比制御手段は、前記駆動輪速検
    出手段で検出された駆動輪速検出値から得られる駆動輪
    スリップ率が所定スリップ率値以下のときに,前記変速
    比固定手段による無段変速機の変速比固定保持制御を解
    除する変速比固定解除手段を備えたことを特徴とする請
    求項1に記載の無段変速機の制御装置。
  3. 【請求項3】 車体に発生する加速度を検出する車体加
    速度検出手段を備え、前記変速比固定手段で用いられる
    所定駆動輪加速度値が,前記車体加速度検出手段で検出
    された車体加速度検出値であることを特徴とする請求項
    1又は2に記載の無段変速機の制御装置。
  4. 【請求項4】 前記変速比制御手段は、前記変速比固定
    解除手段で解除されたときの無段変速機の変速比よりも
    前記目標変速比が大きいときに,無段変速機の変速比変
    更制御の変速速度を小さく調整する変速速度調整手段を
    備えたことを特徴とする請求項2又は3に記載の無段変
    速機の制御装置。
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