JP3058003B2 - 無段変速機の制御装置 - Google Patents

無段変速機の制御装置

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JP3058003B2 JP7207094A JP7207094A JP3058003B2 JP 3058003 B2 JP3058003 B2 JP 3058003B2 JP 7207094 A JP7207094 A JP 7207094A JP 7207094 A JP7207094 A JP 7207094A JP 3058003 B2 JP3058003 B2 JP 3058003B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は無段変速機の制御装置に
関するものであり、特に氷雪路面や濡れたタイル路面等
のような低摩擦係数状態(この摩擦係数状態を単にμと
も記す)路面での舵取り効果や制動距離を確保可能とす
るのに好適な、無段変速機の変速比制御に関するもので
ある。
【0002】
【従来の技術】ベルトとプーリとの接触点半径を変化さ
せる、所謂プーリ比を変化させることで入出力の変速比
を変更するベルト式無段変速機にあっては、昨今のトル
クコンバータ及び歯車伝達機構を用いた自動変速機とそ
の出力側との間に介装されているワンウエイクラッチの
ような動力伝達方向規制手段を介装しないことが、その
性能上好ましいとされている。ここでは、ベルト式無段
変速機より上流側、即ち機関(エンジン)側を入力側と
定義し、下流側、即ちプロペラシャフトやディファレン
シャル装置等の動力伝達系及び車輪側を出力側と定義す
る。また、前記プーリ比の変更制御には、通常、流体
圧、実質的には油圧が用いられており、具体的には、ピ
ストン化された可動プーリ片(可動円錐板)を固定プー
リ片(固定円錐板)に対して相対移動させることで、両
者の間に形成されるプーリ溝の幅を変更制御する。
【0003】一般に、この種の無段変速機において、そ
の変速比を制御するための変速パターンは、車速と機関
回転数又は機関回転速度(以下、これらを総称して「機
関回転状態」とも記す)とに依存しており、具体的に
は、例えば車速とスロットルバルブの開度(以下、単に
「スロットル開度」とも記す)等とを変数として、各シ
フトポジションに応じた変速比制御領域内で変速パター
ンを制御している。つまり、前進走行時について述べれ
ば、シフト操作装置に設けられているシフトポジション
のうち、通常走行レンジ(一般にいうDレンジであり、
以下、単に「Dレンジ」と略称することもある)が選択
されている場合には、通常走行に好適な通常走行変速比
制御領域(つまりDレンジ変速比領域である)内で、ま
たエンジンブレーキレンジ(一般にいう2レンジ又はD
sレンジ及びLレンジ又は1レンジであり、以下、単に
「2レンジ」又は「Lレンジ」と略称することもある)
が選択されている場合には、前記通常走行変速比制御領
域よりも最小変速比の大きいエンジンブレーキ変速比制
御領域(つまり2又はLレンジ変速比領域である)内
で、前記車速及びスロットル開度に応じた無段変速機の
変速パターンを制御する。従って、アクセルペダルの踏
込みを解除するとスロットル開度が低減するから、実際
の機関回転状態に関わらず、無段変速機の変速パターン
は或る一定の変速比に設定され続けることも考えられ
る。なお、このようにスロットル開度が低減し且つ車速
が或る程度大きい場合を、通常の変速パターンにおいて
コースト状態つまり惰性走行状態に等しいと考えれば、
前記アクセルペダル踏込み解除状態の変速パターンで設
定され続けると考えられる或る一定の変速比とは、各レ
ンジの変速比領域において、実際の車両の変速比におけ
る減速比が最も小さい状態になる。
【0004】ここで、通常の乾燥したアスファルト路面
やコンクリート路面のような高μ路面において、エンジ
ンブレーキによる車速低減を目的とし、アクセルペダル
の踏込みを解除した状態で、前記Dレンジから2又はL
レンジにシフトポジションを移行した、所謂ダウンシフ
ト操作を行った場合を想定する。このようにアクセルペ
ダルの踏込みが解除されている、即ちスロットル開度が
低減している状態では、未だシフトポジションがDレン
ジにあるときには前記Dレンジ変速比領域の最も小さい
変速比が設定されおり、この状態からシフトポジション
が2又はLレンジに移行すると、前記2又はLレンジ変
速比領域の最も小さい変速比に強制的に変更設定され
る。このとき、前記各レンジにおける変速比領域の最小
変速比の設定の違いから、無段変速機の変速比は急激に
大きくなるように変更設定されることになる。これによ
り、車輪には機関のバックトルク、即ちエンジンブレー
キが大きな制動力として作用するわけであるが、これを
降坂走行中に実施した場合には、車体に作用する重力加
速度の影響で車体速(即ち車速である)は減速されにく
いのに対して、無段変速機の急減速変速は比較的長期に
持続されるから、この間、無段変速機の入力軸の回転速
度の変化幅が大きく、これが過渡的な慣性トルクの変動
となってベルトとプーリとの間で滑りが発生する虞れが
ある。
【0005】このような問題を解決する無段変速機の変
速比制御に関する無段変速機の制御装置の一つに、例え
ば特開平4−203665号公報に記載されるものがあ
る。この無段変速機の制御装置では、シフト操作装置に
設けられているシフトポジションのうち、通常走行レン
ジ(Dレンジ)からエンジンブレーキレンジ(2又はL
レンジ)にダウンシフト操作された場合に、車体に作用
する加速度を検出し、この加速度検出値が所定値を越え
るような場合には、当該ダウンシフト操作により強制的
に急激に大きくなるように変更設定される無段変速機の
変速比の変化速度を抑制しようとするものである。
【0006】この無段変速機の制御装置によれば、例え
ば降坂途中で、前述のような無段変速機の急減速変化速
度が抑制されるから、その時々刻々における変速比に応
じた前記プーリ比を達成する流体圧,油圧が確保され
て、固定円錐板と可動円錐板との間でベルトの挟着力が
確保されると共に、入力軸の回転速度の変化幅が小さく
なるから、過渡的な慣性トルク変動が抑制されてベルト
の滑りが防止されるという利点がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記特
開平4−203665号公報に記載される無段変速機の
制御装置では、前記2又はLレンジ、即ちエンジンブレ
ーキレンジにおける、車輪からの入力に対する無段変速
機の慣性トルクの大きさそのものを小さくすることはで
きない。このことによる問題を、氷雪路面や濡れたタイ
ル路面等の低μ路面で子細に考察してみる。
【0008】このような低μ路面ではタイヤと路面との
間の摩擦係数状態も小さいから、当該低μ路面でタイヤ
に制動力が付与されると車輪はロックし易く、自動車工
学に言うスリップ率が大きくなる。現今のタイヤ特性で
は、スリップ率が10〜30%程度の範囲内であれば操
舵や駆動・制動に関与するタイヤのグリップ力(摩擦力
と等価である)は確保されるから、これよりも車輪の実
際のスリップ率(以下、単に「実スリップ率」とも記
す)が大きくなることは舵取り効果や制動距離の確保が
困難になることになる。逆論すれば、このタイヤのグリ
ップ力を確保できる車輪のスリップ率の範囲を目標スリ
ップ率とし、この目標スリップ率に対して、車体速、即
ち車速から算出される当該目標スリップ率を満足する車
輪速の範囲を目標車輪速とすれば、この目標車輪速の範
囲内に実際の車輪速が納まっていることが、車両として
の舵取り効果や制動距離を確保できることになる。この
とき、実スリップ率が前記目標スリップ率の範囲を越え
て大きいということは、前述のように、タイヤのグリッ
プ力そのものが低下していると考えてもよいことにな
る。
【0009】このことを、前記通常走行レンジ(Dレン
ジ)からエンジンブレーキレンジ(2又はLレンジ)に
ダウンシフト操作して、無段変速機の変速比を強制的に
大きくし、これによりエンジンブレーキによる車輪への
制動力が大きくなっている状態にあてはめてみる。この
とき、エンジンブレーキによる車輪への制動力に抗して
当該車輪を回転させる入力は、アクセルペダルの踏込み
がない限り、あくまでも、路面にグリップしているタイ
ヤが走行慣性により車体速(つまり車速と等価である)
に追従するように車輪を回転させる入力のみである。
【0010】しかし、このような無段変速機の実際の変
速及び動力伝達系の出力側端である車輪を、タイヤのグ
リップ力と車体速とで回転させる場合、この間、前述の
ようにスロットル開度が低減して当該無段変速機の変速
パターンが或る一定の変速比に設定され続けているため
に、この車輪を回転させる入力は無段変速機の入力側に
まで回転変動として伝達されてしまう。ここで、出力側
に前記ワンウエイクラッチのような動力伝達方向規制手
段を持たない無段変速機では、車輪を回転させるために
必要な車輪からの入力伝達系は、前記シフト操作によっ
て強制的に大きな減速比、即ち車輪が回りにくい状態に
移行されたと考えられ、しかもこの車輪からの入力伝達
系は、その末端に当該無段変速機の回転系が持つ慣性重
量を備えていると言える。即ち、車輪への入力は、各エ
ンジンブレーキレンジの最小変速比が与える大きな慣性
トルクに抗して当該車輪を回さなければならない。しか
も、車輪への入力はタイヤと路面とのグリップ力に依存
していて、前述のような低μ路面ではこのグリップ力そ
のものが小さく、更に実スリップ率は目標スリップ率を
越えて更にタイヤのグリップ力が小さくなっている。従
って、前記ダウンシフト操作による大きなエンジンブレ
ーキ、つまり車輪への大きな制動力によって減速し始め
た当該車輪は、十分なグリップ力を得ることができず、
且つ前記無段変速機の大きな慣性トルクに抗して回転し
にくいため、前記所望する目標スリップ率の範囲に、当
該車輪速を維持又は増速復帰させることが困難になる虞
れがある。
【0011】また、これに類似する現象は同じく低μ路
面で、例えば前記エンジンブレーキレンジ、即ち2又は
Lレンジにおいて登坂走行した後に、平坦路面走行又は
降坂走行に移行した場合、運転者がアクセルペダルの踏
込みを解除してコースト走行状態に移行した場合などに
も発生する虞れがある。エンジンブレーキレンジでの登
坂走行中は、車速一定であってもスロットル開度が大き
いために無段変速機の変速比は大きくなるが、その一方
でエンジンの回転駆動力が車輪を回転させている。一
方、平坦路面走行又は降坂走行に移行すると、車速一定
であってもスロットル開度が小さいために無段変速機の
変速比は小さくなるが、その一方でエンジンによる車輪
の回転駆動力は極端に低減する。このとき、前記エンジ
ンブレーキレンジでの無段変速機の変速比は小さくなる
としても、その最小変速比は前述のようにある程度大き
いものであるから、タイヤのグリップ力と車速とによる
車輪回転駆動力(つまり、路面が車輪を回転させる駆動
力であることから「車輪への路面回転駆動力」とも記
す)は、依然として無段変速機の大きな慣性トルクに抗
して作用しなければならず、低μ路面のようにタイヤの
グリップ力が小さい状況下では、コースト走行に移行し
た時点からむしろ車輪はロック傾向になってしまう。
【0012】このことは、前述のエンジンブレーキによ
る車輪への制動力とは直接的に関連しないが、例えば運
転に熟練した運転者では、既知のようなアンチスキッド
制御装置を搭載しない通常の車両にあっても、ブレーキ
ペダル踏込みによる制動時に前記低μ路面において車輪
がロックする或いはロックする傾向、つまり車輪のスリ
ップ率が大きくなると、車輪に付与した制動力が大きす
ぎると判断し、必然的に、所謂ポンピングブレーキ操作
によって前記アンチスキッド制御装置と同様の制動力の
増減操作を行うことにより、車輪速を目標車輪速まで増
速復帰させて前述の舵取り効果や制動距離を確保しよう
とする場合にも、同様に発生する虞れがある。
【0013】これと同様の問題は、前記アンチスキッド
制御装置を搭載する車両にあって、当該アンチスキッド
制御装置により、実スリップ率が目標スリップ率を上回
って増加した或いは増加しそうな車輪に対し、当該車輪
への制動力を減少した場合にも発生する可能性がある。
本発明はこれらの諸問題に鑑みて開発されたものであ
り、特に低μ路面においても、急激に減速した駆動輪の
車輪速を、速やかに前記目標スリップ率を満足する車輪
速まで復帰することを可能として、舵取り効果や制動距
離を確保することのできる無段変速機の制御装置を提供
することを目的とするものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】本件発明者は前記諸問題
を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下の知見を得て
本発明を開発した。即ち、例えば無段変速機の入力側に
設けられたクラッチを車輪の急制動時に遮断すること
は、機関の停止、つまりエンジンストップを回避するた
めには有効である。しかし、機関と車輪との動力伝達系
を完全に遮断してしまったのでは、具体的に前記ダウン
シフト操作等により増加したエンジンブレーキによる各
車輪への制動力に抗して、当該車輪を低μ路面で回転さ
せることは依然としてできない。そこで、機関と車輪と
は動力伝達系によって接続した状態に維持して、当該車
輪(具体的には駆動輪である)の車輪速を目標車輪速に
維持又は増速復帰させる入力の一部に適用し、同時にエ
ンジンブレーキレンジの変速比制御領域を制御すること
によって、路面回転駆動力の入力伝達系がもつ無段変速
機の慣性トルクを減少できることを見出した。
【0015】この際、問題となるのは、実際の変速比制
御領域を変更制御する制御量である。つまり、例えば意
図的な制動であるブレーキペダルの踏込みを解除してア
クセルペダルの踏込みを行えば、機関の回転状態は上昇
するから車輪への回転駆動力はエンジンから得られ、路
面回転駆動力に対して前述のような制御を無段変速機側
で行う必要はない。問題なのは、前記アンチスキッド制
御装置によって制動力が減少された場合をも含んで、ア
クセルペダルを踏込むことができない状況、つまり車速
一定であってもスロットル開度が低減している状況で
の、路面回転駆動力に対する無段変速機の慣性トルクで
あり、これは即ち当該エンジンブレーキレンジの変速比
制御領域の最小変速比によって決定される。従って、車
速が或る程度のレベルで且つスロットル開度が低減して
いる状況で決定される、当該エンジンブレーキレンジの
変速比制御領域の最小変速比をより小さくすれば、路面
回転駆動力に対する無段変速機の慣性トルクは小さくな
る。
【0016】また、このようにエンジンブレーキレンジ
の変速比制御領域の最小変速比を小さくする制御は、エ
ンジンブレーキによって車輪速が制動される如何なる状
況下でも適切であるわけではない。すなわち、高μ路面
等ではタイヤが十分なグリップ力を有しているから、こ
の最小変速比の減小制御がエンジンブレーキによる車輪
への制動力を不必要に小さくしてしまい、結果的にタイ
ヤが十分なグリップ力を有しているにも関わらず制御距
離を確保できなくなる虞れがある。従って、例えば低μ
路面におけるエンジンブレーキレンジの過大なエンジン
ブレーキ制動力によって、車輪が、通常の回転状態から
前記目標スリップ率を越えるような車輪速まで減速する
比率、つまり車輪回転減速度が或る所定車輪回転減速度
値以上となった場合にのみ、前記エンジンブレーキレン
ジの変速比制御領域の最小変速比を小さくする制御を実
施するものとすればよい。
【0017】このとき、各エンジンブレーキレンジの変
速比制御領域の最小変速比を小さくする目標値は、駆動
輪のスリップ率が過大とならない範囲でエンジンブレー
キによる駆動輪への制動力をできるだけ確保したいとい
う目的に則せば、駆動輪の車輪速が車体速より所定の割
合(例えば、スリップ率10〜30%に相当する分)だ
け小さくなる所定変速比に設定すればよいことになる。
【0018】このような知見から、本発明に係る無段変
速機の制御装置は、図1の基本構成図に示すように、変
速シフトポジションに少なくとも通常走行レンジ及びエ
ンジンブレーキレンジを備え、前記変速シフトポジショ
ンに通常走行レンジが選択されたときには通常走行に好
適な通常走行変速比制御領域で無段変速機の変速パター
ンを制御し、且つ前記変速シフトポジションにエンジン
ブレーキレンジが選択されたときには前記通常走行変速
比制御領域よりも最小変速比の大きいエンジンブレーキ
変速比制御領域で無段変速機の変速パターンを制御する
変速パターン制御手段を備えた無段変速機の制御装置に
おいて、前記エンジンブレーキレンジが選択されたこと
を検出するエンジンブレーキレンジ検出手段と、車輪回
転の減速度を検出する車輪回転減速度検出手段と、車体
速度を検出する車速検出手段とを備え、前記変速パター
ン制御手段は、前記エンジンブレーキレンジ検出手段が
エンジンブレーキレンジ選択を検出し、且つ前記車輪回
転減速度検出手段で検出された車輪回転減速度検出値が
所定車輪回転減速度値以上のときに、前記エンジンブレ
ーキ変速比制御領域の最小変速比を、駆動輪の車輪速が
前記車速検出手段で検出された車速検出値の70〜90
%となる値まで小さく変更する変速パターン変更手段を
備えたことを特徴とするものである。
【0019】
【0020】
【作用】本発明の無段変速機の制御装置では、図1の基
本構成図に示すように、前記無段変速機の変速パターン
に設けられた変速パターン変更手段は、例えば前記ダウ
ンシフト操作や2又はLレンジ、即ちエンジンブレーキ
レンジでの急激なコースト走行への移行時にあって、
該エンジンブレーキレンジ選択がエンジンブレーキレン
ジ検出手段で検出され、且つ前記車輪回転減速度検出手
段で検出された車輪回転減速度検出値が所定車輪回転減
速度値以上のときには、例えば車両は低μ路面を走行中
で、当該エンジンブレーキレンジにおける変速比制御領
域の最小変速比が、エンジンブレーキによる車輪への過
大な制動力として作用していると判定して、当該エンジ
ンブレーキレンジの変速比制御領域の最小変速比を、通
常の最小変速比から、駆動輪の車輪速が前記車速検出手
段で検出された車速検出値の70〜90%となる値まで
小さくする。これにより、無段変速機の入出力系の減速
比が小さくなるから、同等の機関バックトルクによるエ
ンジンブレーキの車輪への制動力は低減し、同時にタイ
ヤのグリップ力と車体速とが車輪を回転駆動する力、即
ち前記路面回転駆動力に対する無段変速機の慣性トルク
は小さくなる。また、各エンジンブレーキレンジの変速
比制御領域の最小変速比を小さくする目標値は、駆動輪
の車輪速が、前記車速検出手段で検出された車速検出値
の70〜90%となる値に設定されているため、駆動輪
車輪速は、スリップ率10〜30%を満足する車輪速
に保持される。これにより、前記低μ路面における舵取
り効果や制動距離の確保が確実になされる。
【0021】これと同等の作用・効果は、前記アンチス
キッド制御装置を含んで、アクセルペダルの踏込みが小
さく又はなく、つまりスロットル開度が小さく且つ車輪
への制動力が減少された場合にも発現する。一方、前記
高μ路面等でタイヤが十分なグリップ力を有している場
合には、前記エンジンブレーキレンジにおいてエンジン
ブレーキによる大きな制動力が駆動輪に作用しても、当
該駆動輪の減速度は車体の減速度と同程度であり、この
車体の減速度は、前記低μ路面において車輪がロックす
る或いはロック傾向である程度の当該車輪の減速度より
も小さいと考えられる。したがって、前記所定車輪回転
減速度値を、高μ路面における当該車体の最大減速度よ
りも大きな値に設定することで、高μ路面におけるエン
ジンブレーキレンジでの走行時には、前記変速パターン
変更手段によるエンジンブレーキレンジの変速比制御領
域の最小変速比を小さくする変更制御が回避されるた
め、これにより当該エンジンブレーキレンジにおけるエ
ンジンブレーキが車輪への制動力として小さくなること
はなく、同時にこの大きな制動力を利して車両の制動距
離を確保することができる。
【0022】
【実施例】次に、本発明の無段変速機の制御装置を実際
の車両に適用した第1実施例を、図2〜図9に基づいて
説明する。この実施例の基本的な車両構造は、後述する
無段変速油圧制御回路やコントローラであるマイクロコ
ンピュータ等を含めて、本出願人が先に提案した特開昭
61−105353号公報に記載される無段変速機の制
御装置と同等かほぼ同等であり、このうち同等の部分は
夫々各構造の説明部位で同等であることを説明したの
ち、当該公報を参照するものとして詳細な説明を割愛す
ることもある。なお、本実施例における無段変速機の制
御装置は、機関(即ちエンジン)の回転駆動力によって
回転駆動される駆動輪が前左右輪である、所謂FF(フ
ロントエンジンフロントドライブ)車両に適用されたも
のとする。また、各車輪の制動力は、当該車輪に設けら
れた流体圧ホイルシリンダによって供給されるものと
し、各ホイルシリンダへの作動流体圧は、ブレーキペダ
ルに接続されたマスタシリンダ内のマスタシリンダ圧が
等分されるものとする。また、基本的には、前述のよう
なアンチスキッド制御装置を搭載していないものとす
る。
【0023】図2は無段変速機の動力伝達機構を示すも
のであり、この無段変速機はフルードカップリング1
2,前後進切換機構15,Vベルト式無段変速機構2
9,差動装置56等を有しており、エンジン10の出力
軸10aの回転を所定の変速比及び回転方向で出力軸6
6及び68に伝達することができる。この無段変速機
は、フルードカップリング12(ロックアップ油室12
a,ポンプインペラ12b,タービンライナ12c,ロ
ックアップクラッチ12d等を有している)、回転軸1
3、駆動軸14、前後進切換機構15、駆動プーリ16
(固定円錐部材18,駆動プーリシリンダ室20(室2
0a,室20b),可動円錐部材22,溝22a等から
なる)、遊星歯車機構17(サンギヤ19,ピニオンギ
ヤ21,ピニオンギヤ23,ピニオンキャリア25,イ
ンターナルギヤ27等からなる)、Vベルト24、従動
プーリ26(固定円錐部材30,従動プーリシリンダ室
32,可動円錐部材34等からなる)、従動軸28、前
進用クラッチ40、駆動ギヤ46、アイドラギヤ48、
後進用ブレーキ50、アイドラ軸52、ピニオンギヤ5
4、ファイナルギヤ44、差動装置56(ピニオンギヤ
58,ピニオンギヤ60,サイドギヤ62,サイドギヤ
64等からなる)、出力軸66、出力軸68等から構成
されているが、これらのついての詳細な説明を省略す
る。なお、説明を省略した部分の詳細な構成について
は、本出願人が先に提案した前記特開昭61−1053
53号公報を参照されたい。
【0024】また、前記従動プーリ26のシリンダ室3
2の受圧面積は前記駆動プーリ16のシリンダ室20の
各室20a,20bの受圧面積の約1/2程度に設定し
てあり、当該従動プーリ26のシリンダ室32には後述
する油圧制御装置から,共通作動油圧としてのライン圧
が供給されており、駆動プーリ16のシリンダ室20の
各室20a,20bに当該油圧制御装置から制御された
作動油圧が供給されて駆動プーリ16のV字状プーリ溝
の幅を拡狭変更して,Vベルト24と駆動プーリ16と
の接触位置半径を変更制御すると、このVベルト24に
掛かるエンジン10からの回転駆動力に抗して当該Vベ
ルト24と従動プーリ26とが滑らないように挟持しな
がら,且つ駆動プーリ16のV字状プーリ溝の幅の拡狭
変更量に反比例するように当該従動プーリ26のV字状
溝の幅を拡狭変更して当該従動プーリ26とVベルト2
4との接触位置半径を変更制御し、これにより所望する
両プーリ16,26間のプーリ比を達成してこれを無段
変速機の入出力間の変速比にするように構成されてい
る。
【0025】図3は本実施例の無段変速機の油圧制御装
置である。この油圧制御装置は、オイルポンプ101、
ライン圧調圧弁102、マニュアル弁104、変速制御
弁106、調整圧切換弁108、ステップモータ11
0、変速操作機構112、スロットル弁114、一定圧
調圧弁116、電磁弁118、カップリング圧調圧弁1
20、ロックアップ制御弁122等を有しており、これ
らは互いに図示のように接続されており、また前進用ク
ラッチ40、後進用ブレーク50、フルードカップリン
グ12、ロックアップ油室12a、駆動プーリシリンダ
室20及び従動プーリシリンダ室32とも図示のように
接続されている。これらの弁等についての詳細な説明は
前記特開昭61−105353号公報に記載されている
ものと同等かほぼ同等であるために,当該公報を参照さ
れるものとしてここでは割愛するが、前記マニュアル弁
104のスプール136の切換え停止位置には,Lレン
ジとDレンジとの間に所謂2レンジを介装して,計6つ
のポジションで当該スプール136が停止するものとし
た。この停止ポジション増加に係る当該油圧制御装置に
おける具体的な作動油圧の変化はなく、後述するマイク
ロコンピュータでの演算処理が若干異なる程度である。
【0026】なお、図3中の各参照符号は次の部材を示
す。ピニオンギヤ110a、リザーバタンク130、ス
トレーナ131、油路132、リリーフ弁133、弁穴
134、ポート134a〜134e、スプール136、
ランド136a〜136b、油路138、一方向オリフ
ィス139、油路140、油路142、一方向オリフィ
ス143、弁穴146、ポート146a〜146g、ス
プール148、ランド148a〜148e、スリーブ1
50、スプリング152、スプリング154、変速比伝
達部材158、油路164、油路165、オリフィス1
66、オリフィス170、弁穴172、ポート172a
〜172e、スプール174、ランド174a〜174
c、スプリング175、油路176、オリフィス17
7、レバー178、油路179、ピン181、ロッド1
82、ランド182a,182b、ラック182c、ピ
ン183、ピン185、弁穴186、ポート186a〜
186d、油路188、油路189、油路190、弁穴
192、ポート192a〜192g、スプール194、
ランド194a「194e、負圧ダイヤフラム198、
オリフィス199、オリフィス202、オリフィス20
3、弁穴204、ポート204a〜204e、スプール
206、ランド206a,206b、スプリング20
8、油路209、フィルタ211、オリフィス216、
ポート222、ソレノイド224、プランジャ224
a、スプリング225、弁穴230、ポート230a〜
230e、スプール232、ランド232a,232
b、スプリング234、油路235、オリフィス23
6、弁穴240、ポート240a〜240h、スプール
242、ランド242a〜242e、油路243、油路
245、オリフィス246、オリフィス247、オリフ
ィス248、オリフィス279、チョーク型絞り弁25
0、リリーフバルブ251、保圧弁252、チョーク型
絞り弁253、油路254、クーラ256、クーラ保圧
弁258、オリフィス259、切換検出スイッチ278
である。
【0027】図4は前記ステップモータ110及びソレ
ノイド224の作動を制御する電子制御装置(マイクロ
コンピュータ)300を示すものである。このマイクロ
コンピュータ300は、入力インターフェース311、
基準パルス発生器312、中央演算処理装置(CPU)
313、リードオンリメモリ(ROM)314、ランダ
ムアクセスメモリ(RAM)315及び出力インターフ
ェース316を有しており、これらはアドレスバス31
9及びデータバス320によって連結されている。この
マイクロコンピュータには、エンジン回転速度センサ3
01、車速センサ302、スロットル開度センサ30
3、シフトポジションスイッチ304、タービン回転速
度センサ305、エンジン冷却水温センサ306、ブレ
ーキセンサ307、切換検出スイッチ298、左駆動輪
速(即ち前左輪速)センサ402及び右駆動輪速(即ち
前右輪速)センサ404からの信号が直接又は波形成形
器308,309,322,412及び414、及びA
D変換器310を介して入力され、一方、増幅器317
及び信号線317a〜317dを介してステップモータ
110へ信号が出力され、またソレノイド224へも信
号が出力されるが、これらの詳細な説明は前記特開昭6
1−105353号公報に記載されるものと同等又はほ
ぼ同等であるので,そちらを参照されるものとして割愛
する。なお、当該公報に記載されていないものとして
は、前述のようにシフトポジションとしてLレンジとD
レンジとの間に2レンジが新たに設けられているため、
前記シフトポジションスイッチ304からはこの2レン
ジを加えた計6つのポジション信号がマイクロコンピュ
ータ300に入力される。また、左駆動輪速センサ40
2及び右駆動輪速センサ404からは,夫々当該駆動輪
速に応じた正弦波出力信号が出力され、夫々,波形整形
器412,414を介して当該駆動輪速に応じたパルス
信号からなる車輪速検出値VWL,VWR(これらを統括し
て各車輪速とも記し,その場合の符号はVWjとも記す。
従って、jはL又はRに相当する)が,夫々入力インタ
ーフェース311を介してマイクロコンピュータ300
内に読込まれる。なお、この車速センサ302は、左右
の従動輪速の平均値を車速(車体速)Vとして検出する
ものとする。
【0028】そして、前記マイクロコンピュータ300
により、前記無段変速機の変速比制御が、図5のフロー
チャートに示す基準演算処理に従って実行される。この
演算処理の基本的なロジック体系は、前記特開昭61−
105353号公報に記載されるものとほぼ同等である
が、前記シフトポジションに2レンジが付加された関係
で、検索される変速パターンとして当該2レンジに相当
する変速パターンが付加される。この変速比制御の基準
演算処理について簡単に説明すれば、図5の演算処理は
所定時間(ΔT)毎のタイマ割込みによって実行され、
まずステップ502で前記シフトポジションスイッチ3
04からのシフトポジションを読込み、次いでステップ
504でシフトポジションがD,2,L,Rレンジであ
ると判定された場合にはステップ508に移行し、そう
でない場合にはステップ506に移行する。前記ステッ
プ508では前記スロットル開度センサ303からの信
号に基づいてスロットル開度THを読込み、次いでステ
ップ510で車速センサ302からの信号に基づいて車
速Vを読込み、次いでステップ512でエンジン回転速
度センサ301からの信号に基づいてエンジン回転速度
E を読込み、次いでステップ514でタービン回転速
度センサ305からの信号に基づいてタービン回転速度
t を読込む。次にステップ516に移行して,前記エ
ンジン回転速度NE とタービン回転速度Nt との回転偏
差ND を算出し、次にステップ518で,予め記憶され
ている制御マップに従ってロックアップ車速VON及びロ
ップアップオフ車速VOFF を検索する。
【0029】次にステップ520に移行して、ロップア
ップフラグLUFが設定されている場合にはステップ5
44に移行し、そうでない場合にはステップ522に移
行する。前記ステップ544では、当該車速Vが前記ロ
ックアップオフ車速VOFF よりも小さい場合にステップ
540に移行し、そうでない場合にステップ546に移
行する。一方、前記ステップ522で当該車速Vが前記
ロックアップ車速VONよりも大きいと判定された場合に
はステップ524に移行し、そうでない場合には前記ス
テップ540に移行する。前記ステップ524では、前
記回転偏差NDから第1の目標値Nm1 を減じて回転目
標値偏差eを算出し、次にステップ526で予め記憶さ
れた制御マップから前記回転目標値偏差eに応じた第1
のフィードバックゲインG1 を検索し、次にステップ5
28で前記回転偏差ND が制御系切換閾値N0 よりも小
さい場合にはステップ530に移行し、そうでない場合
にはステップ538に移行する。
【0030】前記ステップ530では、前回デューティ
比に微小所定値αを加えて今回デューティ比を設定し、
次にステップ532でこの今回デューティ比が100%
より小さいと判定された場合にはステップ602に移行
し、そうでない場合にはステップ534に移行する。前
記ステップ534では、今回ディーティ比を100%に
修正し、次にステップ536でロップアップフラグLU
Fを設定して前記ステップ602に移行する。一方、前
記ステップ538では今回デューティ比を,前記回転目
標値偏差e及び第1のフィードバックゲインG1 を変数
とする演算式に基づいて算出し、前記ステップ602に
移行する。一方、前記ステップ540では今回デューテ
ィ比を0%に設定し、次にステップ542でロックアッ
プフラグLUFを算出し、前記ステップ602に移行す
る。また、前記ステップ546では今回デューティ比を
100%に設定して、前記ステップ602に移行する。
【0031】前記ステップ602で、当該車速Vが変速
比制御開始閾値V0 よりも小さいと判定された場合はス
テップ604に移行し、そうでない場合はステップ62
4に移行する。前記ステップ604でスロットル開度T
Hがアイドル判定閾値TH0よりも小さいと判定された
場合はステップ610に移行し、そうでない場合にはス
テップ606に移行する。前記ステップ606では、今
回デューティ比を0%に設定し、次にステップ608で
ステップモータ110への目標パルスPD を最大変速比
パルスP1 に設定してステップ630に移行する。一
方、前記ステップ506では、今回デューティ比を0%
に設定して前記ステップ630に移行する。
【0032】一方、前記ステップ624ではシフトポジ
ションがDレンジである場合にステップ626に移行
し、当該Dレンジに相当する変速パターンから車速V及
びスロットル開度THに応じた変速比を検索して前記ス
テップ630に移行する。シフトポジションがDレンジ
でない場合にはステップ639に移行して、シフトポジ
ションが2レンジである場合にはステップ640に移行
し、当該2レンジに相当する変速パターンから車速V及
びスロットル開度THに相当する変速比を検索して前記
ステップ630に移行する。シフトポジションが2レン
ジでない場合にはステップ642に移行して、シフトポ
ジションがLレンジである場合にはステップ628に移
行し、当該Lレンジに相当する変速パターンから車速V
及びスロットル開度THに相当する変速比を検索して前
記ステップ630に移行する。またシフトポジションが
Lレンジでない場合にはステップ644に移行して、シ
フトポジションRレンジに相当する変速パターンから車
速V及びスロットル開度THに相当する変速比を検索し
て前記ステップ630に移行する。
【0033】一方、前記ステップ610で,前記切換検
出スイッチ298がオン状態である場合にはステップ6
12に移行し、そうでない場合にはステップ620に移
行する。前記ステップ612では前記回転偏差ND から
第2の目標値Nm2 を減じて回転目標値偏差eを算出
し、次にステップ614で予め記憶された制御マップか
ら前記回転目標値偏差eに応じた第2のフィードバック
ゲインG2 を検索し、次にステップ616で今回デュー
ティ比を,前記回転目標値偏差e及び第2のフィードバ
ックゲインG2 を変数とする演算式に基づいて算出し、
次にステップ618でステップモータ110への現在の
パルス数PA を“0”に設定してステップ636に移行
する。一方、前記ステップ630で現在パルス数PA
目標パルス数PD に等しいと判定された場合には前記ス
テップ636に移行する。また、前記ステップ630で
現在パルス数PA が目標パルス数PD より小さいと判定
された場合には、ステップ632に移行してステップモ
ータ駆動信号をアップシフト方向に移動し、次にステッ
プ634で現在パルス数PA に“1”を加えて新たな現
在パルス数PA として更新記憶した後、前記ステップ6
36に移行する。一方、前記ステップ630で現在パル
ス数PA が目標パルス数PD より大きいと判定された場
合には、前記ステップ620に移行してステップモータ
駆動信号をダウンシフト方向に移動し、次にステップ6
22で現在パルス数PA から“1”を減じて新たな現在
パルス数PA として更新記憶した後、前記ステップ63
6に移行する。
【0034】前記ステップ636では、前記ステップモ
ータ駆動信号を出力し、次にステップ638でソレノイ
ド駆動信号を出力してメインプログラムに復帰する。本
実施例では、前記ステップ644のRレンジ相当変速パ
ターン検索を除くステップ626,628,640で検
索される通常の変速パターンは、後述する変速パターン
変更制御による変速パターンを除いて、凡そ図6のよう
な変速パターンに従って無段変速機の変速比が設定され
ると考えてよい。即ち、各変速パターンにおける変速比
は、車速Vとスロットル開度THとを変数とする制御マ
ップ上で、それらの変数に従って検索すれば一意に設定
される。この図6を、車速Vを横軸、エンジン回転速度
E を縦軸、スロットル開度THをパラメータとする変
速パターンの総合制御マップであると仮定すれば、原点
を通る傾き一定の直線は変速比が一定であると考えれば
よく、例えば変速パターンの全領域において最も傾きの
大きい直線は、車両全体の減速比が最も大きい最大変速
比CHiであり、逆に最も傾きの小さい直線は、車両全体
の減速比が最も小さいDレンジ最小変速比CDLO であ
り、このDレンジ最小変速比DLO よりも傾きが大きく最
大変速比CHiよりも傾きが小さい直線は、車両全体の減
速比が最大変速比CHiよりやや小さい2レンジ最小変速
比C2LO であると考えてよい。
【0035】従って、具体的に、前記Lレンジの変速パ
ターンは、車速V及びスロットル開度THに関わらず前
記最大変速比CHiに固定され、前記2レンジの変速パタ
ーンは、前記最大変速比CHiと2レンジ最小変速比C
2LO との間の領域で、車速V及びスロットル開度THに
応じて設定される変速比の経時的軌跡からなる制御曲線
となり、前記Dレンジの変速パターンは、前記最大変速
比CHiとDレンジ最小変速比CDLO との間の領域で、車
速V及びスロットル開度THに応じて設定される変速比
の経時的軌跡からなる制御曲線となろう。ここで、この
変速パターンは前記した変速パターン変更制御によって
変更がなされるものとし、その変更制御対象となる制御
量には通常の文字を付加する。例えば、前記Lレンジの
変速パターンである図6のLレンジは通常Lレンジと記
し、同図の最大変速比CHiは通常Lレンジ最小変速比C
LLO と等価である。また、図6の2レンジ最小変速比は
通常2レンジ最小変速比C2LO と記し、同図の2レンジ
変速領域は通常2レンジ変速領域と記す。そして、前記
通常Lレンジ最小変速比CLLO と等価である最大変速比
Hiと,通常2レンジ最小変速比C2LO との偏差をL−
2レンジ変速比最大偏差ΔCL-2 と定義し、また、前記
通常Lレンジ最小変速比CLLO と等価である最大変速比
Hiと,Dレンジ最小変速比CDLO との偏差をL−Dレ
ンジ変速比最大偏差ΔCL-D と定義する。
【0036】なお、車速Vが前記変速比制御開始閾値V
0 よりも小さい領域では、各シフトポジションのレンジ
に関係なく、変速比(即ち変速パターン)は前記最大変
速比CHiに固定される。つまり、この変速比制御開始閾
値V0 は、自動変速機搭載車両で発生するクリープ状態
の制御上限値であると考えればよい。ここで、最大変速
比CHiにおける変速比制御開始閾値V0 のときのスロッ
トル開度THを同じく変速比制御開始閾値TH1 と定義
し、この変速比制御開始スロットル開度閾値TH1 にお
いて2レンジ最小変速比C2LO となる車速Vを通常2レ
ンジ最小変速比車速V21,同じく変速比制御開始スロッ
トル開度閾値TH1 においてDレンジ最小変速比CDLO
となる車速VをDレンジ最小変速比車速VD1と定義し、
これらの各レンジ最小変速比車速V21,VD1を単に通常
レンジ最小変速比車速Vj1とも記すこととする。但し、
これらのクリープ状態の制御上限値に関しては,後述す
る車輪速確保の制御に対応すべく適宜に選定されるべき
ものであって、例えば低μ路面において車輪速が確保で
きないような場合には当該クリープ状態制御上限値を排
除することも考えられる。
【0037】それでは次に、前述のような無段変速機並
びにその変速制御装置を搭載する車両にあって、特に氷
雪路面や濡れたタイル路面等の低μ路面で発生する車輪
速(特に駆動輪速)の問題並びにそれを解決するための
本実施例の基本原理について、簡潔に説明する。前記2
レンジやLレンジをエンジンブレーキレンジと称するこ
とにすれば、このエンジンブレーキレンジの変速領域の
通常最小変速比、即ち通常Lレンジ最小変速比CLLO
通常2レンジ最小変速比C2LO は、少なくともDレン
ジ、つまり通常走行レンジの最小変速比CDLO よりも車
両減速比として大きい。従って、コースト走行状態のよ
うにアクセルペダルの踏込みがないなどのスロットル開
度が低下している状況で、これらのエンジンブレーキレ
ンジが選択されている状況下では、通常走行レンジにお
けるコースト走行状態よりもエンジンブレーキによる駆
動輪への制動力が大きいことになる。このように大きな
エンジンブレーキによる駆動輪への制動力に抗して当該
駆動輪を回転させる入力は、タイヤのグリップ力と車体
速とによる前記路面回転駆動力のみである。
【0038】一方、前記エンジンブレーキレンジの通常
最小変速比に変速比制御されている無段変速機は、前記
路面回転駆動力に対して通常走行レンジの最小変速比よ
りも大きな慣性トルクを有していると言える。つまり、
路面回転駆動力は、この大きな慣性トルクに抗して駆動
輪を回転させなければならない。ところが、前述のよう
に、低μ路面ではタイヤのグリップ力そのものが小さ
く、更に実スリップ率は目標スリップ率を越えて更にタ
イヤのグリップ力が小さくなっているから、前記路面回
転駆動力そのものが非常に小さいことになる。従って、
このようなエンジンブレーキレンジの通常最小変速比に
変速比制御されている無段変速機を搭載した車両では、
低μ路面での駆動輪の車輪速を、前記所望する目標スリ
ップ率を満足する目標車輪速の範囲に維持又は増速復帰
させることが困難になる虞れがある。これは、前述した
ダウンシフト操作時にもエンジンブレーキレンジにおけ
るコースト走行状態にも、アクセルペダルの踏込みが小
さく又はなくて、エンジンの回転駆動力が車輪への十分
な回転駆動力として伝達されない場合にはすべて発生し
得る懸念である。また、ブレーキペダルの踏込みによる
意図的な制動時や前記アンチスキッド制御装置の作動時
にも、前記駆動輪の車輪速が前記目標スリップ率を満足
する目標車輪速よりも小さくなった場合には、同様に発
生する可能性がある。
【0039】これを総合的に図7を用いて説明する。同
図において、前記無段変速機の慣性トルクを車軸回転に
必要な車軸トルクに換算したものをTFCVTとして表す。
また、各タイヤ−路面間静的摩擦係数状態μにおける路
面回転駆動力を車軸回転に必要な車軸トルクに換算した
ものをTμとして表し、具体的にはμに各摩擦係数状態
が代入される。
【0040】同図から明らかなように、路面μが小さく
なると路面回転駆動力Tμも小さくなる。一方、無段変
速機の慣性トルクTFCVTは、その変速比が小さくなるほ
ど小さくなる。ここで最も小さな無段変速機の慣性トル
クTFCVTとなるのは、前記Dレンジ(通常走行レンジ)
の最小変速比が設定されている場合であり、これに比し
て、前記2レンジ(エンジンブレーキレンジ)の最小変
速比が設定されている場合の当該無段変速機の慣性トル
クTFCVTは相当に大きい。ここで、路面μが0.80程
度である場合の路面回転駆動力T0.80曲線は、無段変速
機の慣性トルクTFCVT曲線を下回ることはないから、こ
のような高μ路面で無段変速機の変速比が各エンジンブ
レーキレンジの最小変速比に設定制御されていても、駆
動輪がロックすることはない。ところが、路面μが0.
30程度である場合の路面回転駆動力T0.30曲線は、無
段変速機の慣性トルクTFCVT曲線のうち、やや変速比の
大きい点で当該無段変速機の慣性トルクTFCVT曲線を下
回り、更に路面μが0.10程度である場合の路面回転
駆動力T0.10曲線は、無段変速機の慣性トルクTFC VT
線のうち、相当に変速比の小さな点で当該無段変速機の
慣性トルクTFCVT曲線を下回る。そして、路面μに応じ
て、車輪ロック回避最小変速比C0.30LO,C 0.10LOが設
定される。このように、路面回転駆動力Tμ曲線が無段
変速機の慣性トルクTFCVT曲線を下回る領域では、エン
ジンからの回転駆動力が増加しない限り、当該駆動輪は
ロックすることになる。
【0041】そこで、機関と車輪とは動力伝達系によっ
て接続した状態に維持して、当該車輪(具体的には駆動
輪である)の車輪速を目標車輪速に維持又は増速復帰さ
せる入力の一部に適用し、同時にエンジンブレーキレン
ジの変速領域の最小変速比、具体的にはLレンジ最小変
速比CLLO 及び2レンジ最小変速比C2LO をより小さな
変速比(ここではこれらを代表して低μ路面L,2レン
ジ最小変速比CLFLOと記す)に変更設定することで、エ
ンジンブレーキによる車輪への制動力を小さくすると共
に、路面回転駆動力に対する無段変速機の慣性トルクを
小さくして駆動輪が路面及び車体速によって回転し易い
状況を構成する。
【0042】そして、本実施例では、各エンジンブレー
キレンジの変速比制御領域の最小変速比を小さくする目
標値を、駆動輪の車輪速VW が車体速VC の70%とな
る値に設定することにより、駆動輪のスリップ率を30
%として、舵取り効果や制動距離の確保が確実になされ
るようにした。具体的には、Dレンジ最小変速比CDL O
を、駆動輪の車輪速を車体速に復帰可能な変速比とみな
して、低μ路面L,2レンジ最小変速比CLFLOを下記の
(1)式で与える。
【0043】CLFLO=CDLO /0.7 ……(1) ここで、後述の図9のマップにおいて、横軸を本来の車
輪速VW から車体速V c に置換して考えると、VW
0.7Vc にする低μ路面L,2レンジ最小変速比C
LFLOが、前記(1)式で与えられることが分かる。すな
わち、マップの横軸は、先ず本来の車輪速VW として考
え、VW =Vc であるDレンジ最小変速比C DLO からV
W =0.7Vc である低μ路面L,2レンジ最小変速比
LFLOのラインを設定するために、車体速Vc に置換
し、マップの使用時には再び車輪速VWに置換すると考
えればよい。
【0044】なお、低μ路面L,2レンジ最小変速比C
LFLOは前記(1)式以外によっても与えられ、例えば、
車速センサ302からの車速検出値V(=Vc )と、シ
フトレジスタ領域等に記憶されたVW =Vc となったエ
ンジン回転速度センサ301からのエンジン回転速度検
出値NEOとから、下記の(1’)式によっても算出され
る。
【0045】 CLFLO=NEO/(0.7V) ……(1’) また、この低μ路面L,2レンジ最小変速比CLFLOは、
路面回転駆動力が無段変速機の慣性トルクに抗して駆動
輪を回転可能とすることを最優先するものであるから、
2レンジ又はLレンジの何れのエンジンブレーキレンジ
が選択されているかは、実質的には問題ではない。
【0046】また、このようにエンジンブレーキレンジ
の変速比制御領域の最小変速比を小さくする制御は、エ
ンジンブレーキによって車輪速が制動される如何なる状
況下でも適切であるわけではない。すなわち、高μ路面
等ではタイヤが十分なグリップ力を有しているから、こ
の最小変速比の減小制御がエンジンブレーキによる車輪
への制動力を不必要に小さくしてしまい、結果的にタイ
ヤが十分なグリップ力を有しているにも関わらず制御距
離を確保できなくなる虞れがある。従って、例えば低μ
路面におけるエンジンブレーキレンジの過大なエンジン
ブレーキ制動力によって、車輪が、通常の回転状態から
前記目標スリップ率を越えるような車輪速まで減速する
比率、つまり車輪回転減速度が或る所定車輪回転減速度
値以上となった場合にのみ、前記エンジンブレーキレン
ジの変速比制御領域の最小変速比を小さくする制御を実
施するものとすればよい。
【0047】また、前記2レンジ及びLレンジであるエ
ンジンブレーキレンジ以外のシフトポジションでは、前
記エンジンブレーキによる駆動輪への制動力の大きさの
問題も、無段変速機の慣性トルクの大きさの問題も、発
生しない若しくは回避する余地がないという事実から、
具体的にDレンジ,Pレンジ,Rレンジ,Nレンジが選
択された場合には前記最小変速比の変更設定制御を解除
するものとした。以上の発明原理に基づいて、前記図5
の演算処理で検索され且つ図6の変速パターンと異なる
変速パターンを算出設定するための演算処理を図8に示
す。この演算処理は、前記無段変速機の制御装置である
マイクロコンピュータ30で所定時間(ΔT)毎のタイ
マ割込みによって実行され、ここで算出設定された変速
パターンは前記RAM315に記憶され、当該RAM3
15に記憶されている最新の変速パターンに従って前記
図5の演算処理で変速比制御がなされる。従って、図8
の演算処理は、図5の演算処理よりも優先順位が高いと
考えればよい。
【0048】ここで、算出される車輪減速度には、車両
前方への車輪加速度も包含されるため、ここでは両者を
含めて車輪加減速度αWjを算出するものとし、車両前方
への車輪加速度を正、車両後方への車輪減速度を負で表
す。従って、前記車輪減速度が或る所定値よりも大きい
という表現は、ここでは車輪加減速度αWjが或る所定値
αW0(負の値)よりも小さいと表記される。なお、この
所定値αW0は、低μ路面で車輪に大きな制動力が作用
し、その結果、当該車輪速が前記目標スリップ率を満足
する車輪速よりも減少するような場合(つまりロック傾
向を示す場合)に、この車輪の減速度(つまり負の車輪
加減速度)が下回る程度の値に設定してあり、通常の高
μ路面では、急制動を行っても、負の車輪加減速度がこ
の所定値を下回ることのない程度の大きさに設定してあ
る。
【0049】この図8の演算処理では、まずステップS
1で、前記左駆動輪速センサ402、右駆動輪速センサ
404から、夫々、各車輪速検出値(単に車輪速とも記
す)VWjを読込む。次にステップS2に移行して、前記
シフトポジションスイッチ304からの信号に基づいて
シフトポジションを読込む。
【0050】次にステップS3に移行して、前記ステッ
プS2で読込まれたシフトポジションがP,R,N,D
レンジの何れかのシフトレンジであるか否かを判定し、
当該シフトポジションがP,R,N,Dレンジの何れか
のシフトレンジである場合にはステップS4に移行し、
そうでない場合にはステップS5に移行する。前記ステ
ップS4では、前記図6に相当する制御マップ上の各レ
ンジ最小変速比を通常のレンジ最小変速比C2LO ,C
LLO (=CHi)に設定し、これを前記マイクロコンピュ
ータ300のRAM315に更新記憶してからステップ
S6に移行する。
【0051】一方、前記ステップS5では、前記マイク
ロコンピュータ300のRAM315に記憶されている
最新の各車輪速前回値VWj0 を読込んでステップS7に
移行する。前記ステップS7では、前記ステップS1で
読込まれた車輪速VWjと前記ステップS5で読込まれた
車輪速前回値VWj0 とを用いて、下記(2)式に従って
各車輪加減速度αWjを算出して、ステップS8に移行す
る。
【0052】 αWj=(VWj0 −VWj)/ΔT ……(2) 前記ステップS8では、各車輪加減速度αWjのうちより
小さい車輪加減速度α Wjをセレクトローにより選択し、
この車輪加減速度αWjを最小車輪加減速度αWとして算
出設定して、ステップS9に移行する。前記ステップS
9では、前記ステップS8で算出設定された最小車輪加
減速度αW が、絶対値が大きく且つ負の値である予め設
定された所定値αW0よりも大きいか否かを判定し、最小
車輪加減速度αW が所定値αW0よりも大きい場合には前
記ステップS6に移行し、そうでない場合にはステップ
S10に移行する。
【0053】前記ステップS10では、前記図6に相当
する制御マップ上の各レンジ最小変速比C2LO ,CLLO
を、前記(1)式で与えられる低μ路面L,2レンジ最
小変速比CLFLO=CDLO /0.7に設定し、これを前記
RAM315に更新記憶してから前記ステップS6に移
行する。そして、前記ステップS6では、前記ステップ
S1で読み込まれた各車輪速V Wjを各車輪速前回値V
Wj0 としてRAM315に更新記憶してから、メインプ
ログラムに復帰する。
【0054】次に、前記図8の演算処理の作用を説明す
る。今、乾燥したアスファルト路面やコンクリート路面
等のようにタイヤとの間に十分な摩擦係数状態が維持さ
れる高μ路面において、アクセルペダルを踏込んで車両
が定速状態若しくは加速状態で通常に走行している状態
を想定する。なお、シフトポジションは通常走行に好適
な前記Dレンジに維持されているものと想定する。従っ
て、前記図8の演算処理が実行される所定サンプリング
時間毎に、ステップS1で各駆動輪速センサ402,4
04からの車輪速VWjを読込み、次いでステップS2で
シフトポジションを読込む。次いで、図8の演算処理の
ステップS3では,シフトポジションがDレンジである
ことからステップS4に移行し、このステップS4でマ
ップ上の各レンジ、つまり2レンジ及びLレンジの最小
変速比を、通常の各レンジ最小変速比C2LO 及びCLLO
(=CHi)に設定して、これを前記RAM315に更新
記憶し、次いでステップS6に移行して、前記ステップ
S1で読込んだ各車輪速VWjを車輪速前回値VWj0 とし
てRAM315に更新記憶し、メインプログラムに復帰
するフローを繰り返す。
【0055】従って、このフローからは各エンジンブレ
ーキレンジ、つまり2レンジ及びLレンジの最小変速比
を小さくする変速領域、即ち変速パターンの変更設定は
なされないから、前記図6に示す通常変速パターンに従
って、図5の演算処理で無段変速機の変速比制御が実行
される。このとき、実行される変速比制御領域は前記D
レンジ変速領域と等価である。
【0056】次にこの状態から、同じく高μ路面におい
てシフトポジションを変えることなく、ブレーキペダル
の踏込みもアクセルペダルの踏込みも解除した惰性走行
状態、つまりコースト走行状態に移行したとする。この
コースト走行状態では、所謂エンジンブレーキによるバ
ックトルクが各車輪の制動力として作用するが、未だシ
フトポジションがDレンジであることから、図8の演算
処理が実行されるサンプリング時間毎に、ステップS1
〜S3からステップS4に移行し、このステップS4で
前記2レンジ及びLレンジの最小変速比を、通常の各レ
ンジ最小変速比C2LO 及びCLLO (=CHi)に設定し
て、これを前記RAM315に更新記憶し、次いでステ
ップS6に移行して、前記ステップS1で読込んだ各車
輪速VWjを車輪速前回値VWj0 としてRAM315に更
新記憶し、メインプログラムに復帰するフローを繰り返
す。
【0057】従って、このフローからも2レンジ及びL
レンジの最小変速比を小さくする変速領域、即ち変速パ
ターンの変更設定はなされないから、前記図6に示す通
常変速パターンに従って、図5の演算処理で無段変速機
の変速比制御が実行される。このとき、図5の演算処理
で実行される無段変速機の変速比制御領域は、前記Dレ
ンジ変速領域と等価である。
【0058】また、このような高μ路面で、シフトポジ
ションをダウンシフト方向、即ちDレンジから2レンジ
若しくはLレンジに移行し、前記無段変速機の変速パタ
ーンによる変速比を強制的に大きくして、エンジンブレ
ーキを各駆動輪へのより大きな制動力として作用させた
場合には、前記図8の演算処理が実行されるサンプリン
グ時間毎に、ステップS1〜S3を経てステップS5に
移行する。そして、このステップS5で各車輪速前回値
をRAM315から読込み、次いでステップS7で各車
輪加減速度αWjを算出し、次いでステップS8で各車輪
加減速度αWjのうちの最小車輪加減速度αW を算出設定
する。このとき、当該ステップS8で選択された最小車
輪加減速度αW はより絶対値の大きな或る負の値となる
が、ブレーキペダル踏込みによる意図的な制動力が車輪
に作用しない限り、前記図7に示すように、このような
高μ路面での車輪速から得られるスリップ率が前記目標
スリップ率を上回り、その結果、当該車輪速が目標スリ
ップ率を下回ってロック傾向を示すことはないから、こ
の最小車輪加減速度αW が前記絶対値が大きく且つ負の
値である所定値αW0より小さくなることはなく、従って
ステップS9からステップS6に移行して、ステップS
1で読込まれた各車輪速VWjを車輪速前回値VWj0 とし
てRAM315に更新記憶し、メインプログラムに復帰
するフローを繰り返し、その結果、RAM315に記憶
されている2レンジ及びLレンジの最小変速比は通常の
各レンジ最小変速比C2LO 及びCLLO (=CHi)に維持
されている。つまり、2レンジ又はLレンジでの無段変
速機の変速比制御領域は、前記図6に示す通常2レンジ
変速領域又は通常Lレンジと同等であり、従ってスロッ
トル開度の低減に伴って図5の演算処理で設定される各
レンジ最小変速比C2LO及びCLLO (=CHi)は大きな
車両減速比となるから、エンジンブレーキによるバック
トルクは車輪への大きな制動力として作用し、これによ
り制動距離が確保される。
【0059】また、このような高μ路面の2レンジ若し
くはLレンジでの走行にあって、登坂走行から平坦路面
走行又は降坂走行等のコースト走行に移行した場合に
は、エンジンからの回転駆動力は極端に低減し、同時に
スロットル開度の低減から無段変速機の変速比は各エン
ジンブレーキレンジの最小変速比が設定されることにな
るが、この各エンジンブレーキレンジの最小変速比は、
少なくともDレンジ、即ち通常走行レンジの最小変速比
よりも大きいことから、エンジンブレーキによるバック
トルクは各駆動輪への大きな制動力として作用し、同時
に前記無段変速機の慣性トルクは比較的大きい状態に維
持される。この状態で、前記図8の演算処理が実行され
るサンプリング時間毎に、ステップS1〜S3を経てス
テップS5,S7で算出される各車輪加減速度αWjのう
ち、ステップS8で選択される最小車輪加減速度αW
絶対値の大きな或る負の値となるが、ブレーキペダル踏
込みによる意図的な制動力が車輪に作用しない限り、前
記ダウンシフト操作時と同様に、図7に示すように、こ
のような高μ路面での車輪速から得られるスリップ率が
前記目標スリップ率を上回り、その結果、当該車輪速が
目標スリップ率を下回ってロック傾向を示すことはない
から、この最小車輪加減速度αW が前記絶対値が大きく
且つ負の値である所定値αW0より小さくなることはな
く、従ってステップS9からステップS6に移行して、
ステップS1で読込まれた各車輪速VWjを車輪速前回値
Wj0 としてRAM315に更新記憶し、メインプログ
ラムに復帰するフローを繰り返し、その結果、RAM3
15に記憶されている2レンジ及びLレンジの最小変速
比は、通常の各レンジ最小変速比C2LO 及びCLLO (=
Hi)に維持されている。つまり、2レンジ又はLレン
ジでの無段変速機の変速比制御領域は、前記図6に示す
通常2レンジ変速領域又は通常Lレンジと同等であり、
従ってスロットル開度の低減に伴って図5の演算処理で
設定される各レンジ最小変速比C2LO 及びCLLO (=C
Hi)は大きな車両減速比となるから、エンジンブレーキ
によるバックトルクは車輪への大きな制動力として作用
し、これにより制動距離が確保される。
【0060】また、このような高μ路面では、2レンジ
又はLレンジのエンジンブレーキレンジにおいて、例え
急ブレーキによって各車輪に大きな制動力が作用して
も、路面とタイヤとの大きな摩擦係数状態により当該車
輪速が前記目標スリップ率を満足する目標車輪速を大き
く下回ることはないから、急制動を含む高μ路面での制
動時には、前記図8の演算処理が実行されるサンプリン
グ時間毎に、ステップS1〜S3を経てステップS5,
S7で算出される各車輪加減速度αWjのうち、ステップ
S8で選択された最小車輪加減速度αW は更に絶対値の
大きな或る負の値となるが、この最小車輪加減速度αW
が前記絶対値が大きく且つ負の値である所定値αW0を下
回ることはないから、前記ステップS9からステップS
6を経てメインプログラムに復帰するフローを繰り返
し、その結果、RAM315に記憶されている2レンジ
及びLレンジの最小変速比は通常の各レンジ最小変速比
2LO及びCLLO (=CHi)に維持されている。この場
合も、2レンジ又はLレンジでの無段変速機の変速比制
御領域は、前記図6に示す通常2レンジ変速領域又は通
常Lレンジと同等であり、従ってスロットル開度の低減
に伴って図5の演算処理で設定される各レンジ最小変速
比C2LO 及びCLLO (=CHi)は大きな車両減速比とな
るから、エンジンブレーキによるバックトルクは車輪へ
の大きな制動力として作用し、これにより制動距離が確
保される。
【0061】以上より、高μ路面では,如何なる場合に
も2レンジ及びLレンジの最小変速比を小さく変更設定
する変速パターン変更制御が実行されることはなく、そ
の結果、エンジンブレーキによるバックトルクは駆動輪
への制動力として有効に活用されて制動距離が確保され
る。一方、前記氷雪路面や濡れたタイル路面等の低μ路
面では、タイヤと路面との摩擦係数状態が小さいから、
前記ブレーキペダルの踏込みによる意図的な制動時を含
む制動力に対して車輪はロック傾向を示し、その結果、
当該車輪速は前記目標スリップ率を満足する目標車輪速
を下回り易くなる。そして、このような低μ路面では、
前述のように路面、即ち車体速が車輪を回転させようと
する入力に対して、実際の車輪速は非常に増速しにくい
状態であると考えられるから、前記車輪速が目標車輪速
を下回り始めると、少なくともアクセルペダルを踏込ん
でエンジンの回転駆動力で積極的に車輪速を増速しない
限り、当該車輪速は減速を続け、比較的短時間後にロッ
クする或いはロックする直前の状態にまで至るものと考
えられる。この要件には、前記ブレーキペダルの踏込み
による意図的な制動を伴わない前記ダウンシフト操作
や、同じくエンジンブレーキレンジ、即ち2レンジ又は
Lレンジでのコースト走行への移行時も包含される。
【0062】従って、この低μ路面で2レンジ又はLレ
ンジを選択し、アクセルペダル踏込みによるエンジンの
回転駆動力が低減している制動時において、前記車輪速
が急激に減速し始めた最初の前記図8の演算処理で、ス
テップS1〜S3を経てステップS5,S7で算出され
る各車輪加減速度αWjは絶対値の相当に大きな負の値と
なろう。従って、前記図8の演算処理のステップS8で
算出設定される最小車輪加減速度αW も、絶対値の相当
に大きな負の値となる。従って、前記図8の演算処理の
ステップS9に移行して、前記最小車輪加減速度αW
前記絶対値が大きく且つ負の値に設定された所定値αW0
を下回ってステップS10に移行する。このステップS
10では、マップ上の2レンジ及びLレンジの最小変速
比C2LO,CLLO が、駆動輪の車輪速を車体速の0.7
倍に復帰可能な低μ路面L,2レンジ最小変速比CLFLO
に変更設定され、これをRAM315に更新記憶してか
ら、ステップS6に移行して、前記ステップS1で読込
んだ各車輪速VWjを車輪速前回値VWj0 としてRAM3
15に更新記憶し、メインプログラムに復帰する。
【0063】そして、その後、前記図8の演算処理が実
行されるサンプリング時間毎に、前記ステップS3での
シフトポジションの判定で2レンジ又はLレンジでない
と判定されない限り、ステップS5,S7,S8で算出
される最小車輪加減速度αWの値に関わらず、つまりス
テップS9からステップS10を経てステップS6に移
行するか,或いはステップS9からステップS6に直接
移行するかは関係なく、マップ上の2レンジ及びLレン
ジの最小変速比C2LO ,CLLO は前記低μ路面L,2レ
ンジ最小変速比CLFLOに維持され、各演算処理毎に前記
ステップS1で読込んだ各車輪速VWjを車輪速前回値V
Wj0 としてRAM315に更新記憶し、メインプログラ
ムに復帰するフローを繰り返す。
【0064】従って、この間、前記図5の演算処理で
は、図6の前記通常2レンジ変速領域よりも最小変速比
が小さく設定されて、全変速領域が拡幅された低μ路面
L,2レンジ変速領域において、前記車速及びスロット
ル開度に応じた無段変速機の変速比制御が実行されるこ
とになるが、前述のようにスロットル開度THが低減し
ていると仮定すれば、設定制御される無段変速機の変速
比CD は常に小さな車両減速比となるものと考えられ、
その結果、エンジンブレーキによる車輪への制動力は小
さくなると共に、路面とタイヤとのグリップ力が駆動輪
を回転しようとする路面回転駆動力に対する無段変速機
の慣性トルクが低減するために、当該各駆動輪は回転し
易い状態となる。また、低μ路面L,2レンジ最小変速
比CLFLOは、駆動輪の車輪速を車体速の0.7倍に復帰
可能な値に変更設定されるため、各駆動輪速はスリップ
率が30%となる車輪速に維持又は増速復帰されて、舵
取り効果や制動距離の確保が可能となる。
【0065】その後、例えば前記変速パターン変更制御
によって車輪のスリップ率を確保しながら十分な車両減
速を得ることができたとか、或いはその結果、車両が駐
停車するに至ったとか、或いは適切な変速比制御によっ
て更に車両を加速したいといった運転者の意志によっ
て、シフトポジションを前記エンジンブレーキレンジで
ある2レンジ又はLレンジから通常走行レンジであるD
レンジに移行したとする。このような場合を含んで、前
記各エンジンブレーキレンジ以外のシフトポジションが
選択された場合には、前述のように当該エンジンブレー
キレンジの最小変速比を更に小さく変更設定する必要が
ないか,或いはあってもその変更代がない(例えばDレ
ンジが選択された場合)から、前記図8の演算処理が実
行される最初のサンプリング時間に、前記ステップS1
〜S3を経てステップS4に移行し、このステップS4
で前記2レンジ及びLレンジの最小変速比を、通常の各
レンジ最小変速比C2LO 及びCLLO (=CHi)に設定し
て、これを前記RAM315に更新記憶し、次いでステ
ップS6に移行して、前記ステップS1で読込んだ各車
輪速VWjを車輪速前回値VWj0 としてRAM315に更
新記憶し、メインプログラムに復帰するフローを、次に
何れかのエンジンブレーキレンジが選択されるまで繰り
返す。
【0066】従って、このフローから2レンジ及びLレ
ンジの最小変速比を小さくする変速領域、即ち変速パタ
ーンの変更設定はなされないから、前記図6に示す通常
変速パターンに従って、図5の演算処理で無段変速機の
変速比制御が実行される。それでは、前記低μ路面のエ
ンジンブレーキ作動時、即ち前記ダウンシフト操作時や
エンジンブレーキレンジでのコースト走行時において、
各エンジンブレーキレンジの変速比制御領域変更制御が
実行された場合の作用効果について、図9に基づいて考
察する。
【0067】例えば選択されているエンジンブレーキレ
ンジが2レンジである場合、例えば前記コースト走行を
開始した時点での変速比CD が、通常2レンジ最小変速
比C 2LO より大きいコースト走行開始変速比CCOAST
あると仮定する。前述のように、通常、コースト走行時
やダウンシフト操作時にはアクセルペダルの踏込みがな
い或いは小さく、その結果、スロットル開度THが低減
しているとすれば、このコースト走行開始からほどなく
無段変速機の変速比CD には当該通常2レンジ最小変速
比C2LO が設定される。つまり、この間はエンジンブレ
ーキのバックトルクは駆動輪への大きな制動力として作
用していないから、当該各駆動輪の加減速度αWjは比較
的絶対値の小さな負の値にしかならず、従って前記図8
の演算処理のステップS9からステップS6に直接移行
するために、マップ上の2レンジ最小変速比は通常2レ
ンジ最小変速比C2LO に維持される。
【0068】ところが、無段変速機の変速比CD がこの
通常2レンジ最小変速比C2LO に設定されると、前記図
7に示すように、タイヤ−路面間静的摩擦係数状態μが
0.30とか0.10といったレベルの低μ路面では、
エンジンブレーキによる駆動輪への制動力及び無段変速
機の慣性トルクに抗して、路面回転駆動力が駆動輪を回
転させることができず、当該駆動輪の車輪速VWjは急激
に減速して目標スリップ率を満足する目標車輪速を下回
り、そのようになると当該駆動輪速VWjはロック状態に
至るまで一気に減速することになる。これは図9におい
て、前記通常2レンジ最小変速比C2LO が、前記無段変
速機慣性トルクTFCVTを換算して得られる当該低μ路面
におけるロック最小変速比CLOCKよりも大きいことから
明らかであろう。
【0069】すると、前記図8の演算処理のステップS
7で算出される各車輪加減速度αWjは絶対値の相当に大
きな負の値となり、従って同ステップS9で最小車輪加
減速度αW は所定値αW0より小さくなって、同ステップ
S10で、Dレンジ最小変速比CDLO を0.7で除した
値である低μ路面L,2レンジ最小変速比CLFLOが、当
該2レンジ最小変速比C2LO の代わりに設定され、同じ
2レンジの変速比制御領域は通常のDレンジ変速領域よ
り少しだけ狭い領域まで拡幅されることになる。
【0070】従って、前記と同様に、コースト走行状態
でスロットル開度THが低減しているとすれば、図9に
示すように、無段変速機の変速比CD は、前記低μ路面
L,2レンジ最小変速比CLFLOまで小さくなる。従っ
て、エンジンブレーキによる駆動輪への制動力は小さく
なり同時に無段変速機の慣性トルクは小さくなるから、
図7に示すように路面回転駆動力Tμは当該無段変速機
の慣性トルクTFCVTに抗して駆動輪を回転させることが
でき、やがて各駆動輪の車輪速は車体速の0.7倍に維
持又は増幅復帰され、車両の減速効果が発現する。
【0071】この間、時間的には、無段変速機の変速比
D は通常2レンジ最小変速比C2L O に或る時間維持さ
れるが、実際の車速変動は殆ど発生しないと考えられる
ので、変速比制御マップ上の変速パターンは、図9に示
すようにほぼ車速一定で低μ路面L,2レンジ最小変速
比CLFLOまで小さくなる。また、例えばダウンシフト操
作した場合には、その直後にエンジンの回転数が一旦や
や上昇するが、前述のように駆動輪がロック傾向となる
(即ち路面駆動力が伝達されない)ためにエンジンの回
転数が低下し、前記最小変速比の変更制御が実行される
と再びエンジンの回転数が上昇するために、運転者には
当該エンジン回転数の増減に伴う若干の違和感が極めて
短時間に発生するものの、同時にこれらのエンジン回転
数増減がロック傾向にある車輪速の増減によるものであ
ると判断されるから、次の瞬間にこの違和感は解消され
るであろう。また、この作用については、選択シフトポ
ジションがLレンジである場合も,前記通常2レンジ最
小変速比が通常Lレンジ最小変速比と置換されるだけ
で、ほぼ同様に展開される。
【0072】この車両の減速効果、即ち車速Vが、低μ
路面L,2レンジ最小変速比車速V LF1 (変速比制御開
始スロットル開度閾値TH1 において低μ路面L,2レ
ンジ最小変速比CLFLOとなる車速)まで減少する間、無
段変速機の変速比CD は前記低μ路面L,2レンジ最小
変速比CLFLOに維持され、更に車速Vが低下すると前記
クリープ走行上限値制御、即ち変速比制御開始スロット
ル開度閾値TH1 における変速比制御曲線に従って次第
に大きな変速比CD が設定される。このように車速Vが
減速することは、エンジンブレーキの制動力が前記路面
回転駆動力(即ち車速と等価である)に抗して有効に作
用していくことであるから、この時点で車両減速比と等
価な無段変速機の変速比CD を大きくすることは、車両
運動にとって支障のないことは容易に推察される。
【0073】なお、前記実施例ではアンチスキッド制御
装置を搭載しない車両についてのみ本実施例の作用を説
明したが、実際にはアンチスキッド制御装置を搭載した
車両にあってもこれと同等の問題が発生する可能性はあ
り、前記図8の演算処理をアンチスキッド制御装置の作
動信号に組合わせて実行させることでほぼ同様に解決す
ることができる。また、この場合には前記車輪加減速度
の判定に合わせてスリップ率を判定要件として設定すれ
ば、より一層確実な構成となる。
【0074】以上より、本実施例は本発明に係る無段変
速機の制御装置を実施化したものと考えられ、図8の演
算処理のステップS1,S5,S7,S8が本発明にお
ける車輪回転減速度検出手段に相当し、以下同様に図8
の演算処理のステップS3がエンジンブレーキ検出手段
に相当し、図8の演算処理のステップS9,S10が変
速パターン変更手段に相当し、図4に示す車速センサ3
02が車速検出手段に相当し、図4に示すマイクロコン
ピュータ300及び図5に示す演算処理が変速パターン
制御手段に相当し、前記Dレンジが通常走行レンジに相
当し、前記2レンジ又はLレンジがエンジンブレーキレ
ンジに相当する。
【0075】次に、本発明の無段変速機の制御装置を実
際の車両に適用した第2実施例を、図10、図11に基
づいて説明する。この第2実施例の基本的な車両構造
は、後述する無段変速油圧制御回路やコントローラであ
るマイクロコンピュータ等を含めて、本出願人が先に提
案した特開昭61−105353号公報に記載される無
段変速機の制御装置と同等かほぼ同等であり、このうち
同等の部分は夫々各構造の説明部位で同等であることを
説明したのち、当該公報を参照するものとして詳細な説
明を割愛することもある。
【0076】まず、本実施例の無段変速機の動力伝達機
構は、前記第1実施例に相当する図2の無段変速機の動
力伝達機構と同等又はほぼ同等であり、同時にこれが前
記特開昭61−105353号公報に記載されるものと
同等かほぼ同等であるために、ここでは詳細な説明を割
愛する。また、本実施例の無段変速機の油圧制御装置
は、前記第1実施例に相当する図3の無段変速機の油圧
制御装置と同等又はほぼ同等であり、同時にこれが前記
特開昭61−105353号公報に記載されるものと同
等かほぼ同等であるために、ここでは詳細な説明を割愛
する。
【0077】また、本実施例の変速制御装置に相当する
コントローラの一部を構成するマイクロコンピュータ
は、前記第1実施例に相当する図4の電子制御装置(マ
イクロコンピュータ)300と同等又はほぼ同等であ
り、同時にこれが前記特開昭61−105353号公報
に記載されるものと同等かほぼ同等であるために、ここ
では詳細な説明を割愛する。
【0078】また、前記マイクロコンピュータ300に
より実行される通常の無段変速機の変速比制御は、前記
図5のフローチャートに示す基準演算処理に従って前記
第1実施例と同等又はほぼ同等に実施され、同時にこれ
が前記特開昭61−105353号公報に記載されるも
のと同等かほぼ同等であるために、ここでは詳細な説明
を割愛する。なお、前記2レンジ変速パターン検索に関
しては,前記第1実施例と同等である。従って、Rレン
ジを除く前記各レンジの変速パターンによる通常の変速
比制御は凡そ図6に示す前記第1実施例と同等かほぼ同
等であるから、その詳細な説明も割愛する。
【0079】そして、本実施例では,前述の基本原理に
基づいて、特に低μ路面において、エンジンブレーキに
よる駆動輪への制動力を低減すると共に、路面回転駆動
力に対する無段変速機の慣性トルクを低減して、駆動輪
が路面および車体速によって回転し易い状況を構成する
のであるが、先ず、変速比と駆動輪の減速度とから、現
時点で駆動輪がどういう状態であるかを考えて、その状
態から路面μを推測する。そして、推測された路面μに
応じて、駆動輪の車輪速を車体速に復帰するための変速
比CLFS を算出し、さらに、駆動輪の車輪速を車体速の
0.7〜0.9倍(すなわち、所望するスリップ率の範
囲内で制動距離を確保可能な値)とする変速比を、低μ
路面L,2レンジ最小変速比CLFLOとして算出設定する
(前述したように、この低μ路面L,2レンジ最小変速
比CLFLOは、実質的にはLレンジ又は2レンジに関わら
ず同じ値になる)。
【0080】前記変速比CLFS を低μ路面基準変速比と
し、この低μ路面基準変速比CLFSを算出するために、
駆動輪の車輪速を車体速に復帰するために必要な、前記
エンジンブレーキレンジの変速比制御領域の最小変速比
の減小量(これは、エンジンブレーキによる駆動輪への
制動力および無段変速機の慣性トルクの低減代に相当す
る。)を、以下に記述するパラメータを用いて変更設定
する。具体的には、Lレンジにおける最小変速比減小量
ΔCLLO 及び2レンジにおける最小変速比減小量ΔC
2LO をパラメータに基づいて算出し、通常Lレンジ最小
変速比CLLO 及び通常2レンジ最小変速比C2LO から、
各最小変速比減小量ΔCLLO 及びΔC2LOを減算した値
を、前記低μ路面基準変速比CLFS に設定する。
【0081】例えば前記低μ路面において、大きな車速
と同等の速度で回転している車輪速が、大きな制動力に
よって大きな減速度で減速している場合には、短時間で
大きく減少している当該車輪の車輪速と前記車速から算
出される目標スリップ率の範囲を満足する目標車輪速と
の間に大きな偏差が発生する。この目標車輪速に対して
大きな偏差を有する当該車輪の車輪速を、速やかに増速
して目標車輪速に復帰するためには、その分だけ前記エ
ンジンブレーキによる制動力の低減代及び無段変速機の
慣性トルクの低減代、即ち各エンジンブレーキレンジの
最小変速比の減小量を大きくしなければならない。逆
に、この各エンジンブレーキレンジの最小変速比の減小
量を、前記エンジンブレーキによる制動力の低減代及び
無段変速機の慣性トルクの低減代に応じて変更設定する
ことは、当該駆動輪の車輪速を前記目標車輪速の範囲に
維持しながら、エンジンブレーキの制動力によって可及
的に制動距離を確保可能とする。
【0082】ここで、各エンジンブレーキレンジの最小
変速比の減小量(単に各レンジ変速比減小量とも記す)
ΔCLLO 及びΔC2LO を、前記目標車輪速(ここでは、
車体速と同じ値)と実際の駆動輪の車輪速との偏差の大
きさに応じて算出設定することも可能であるし、或る意
味では有益であるが、しかしながらこの目標車輪速と実
車輪速との偏差は、当該駆動輪が低μ路面でのエンジン
ブレーキによる制動力及び無段変速機の慣性トルクによ
って減速された結果として表される数値であって、簡単
に言えば当該駆動輪の減速度の積分値であるから、制御
系の入力としては、その時点で既に遅れが発生している
とも言える。そこで、本実施例では、各レンジ変速比減
小量ΔCLLO 及びΔC2LO を、駆動輪の減速度の大きさ
を示すと考えられる前記車輪加減速度の所定値αWOと最
小車輪加減速度αW との偏差の絶対値|αWD|を用いて
変更設定するものとし、具体的には下記(3)式及び
(4)式に従って各レンジ変速比減小量ΔCLLO 及びΔ
2LO を算出する。
【0083】 ΔCLLO =k|αWD| ……(3) ΔC2LO =ΔCLLO −ΔCL-2 =k|αWD|−ΔCL-2 ……(4) 但し、kは予め設定された比例定数である。従って、前
記低μ路面基準変速比CLFS は下記(5)式で与えられ
る。 CLFS =C2LO −ΔC2LO =CLLO −ΔCLLO ……(5) そして、ここでは、駆動輪の車輪速を車体速の0.9倍
にするため、低μ路面L,2レンジ最小変速比CLFLO
下記の(6)式で与えられる。
【0084】 CLFLO=CLFS /0.9 ……(6) ここで、後述の図11のマップにおいて、横軸を本来の
車輪速VW から車体速Vc に置換して考えると、VW
0.9Vc にする低μ路面L,2レンジ最小変速比C
LFLOが、前記(6)式で与えられることが分かる。すな
わち、マップの横軸は、先ず本来の車輪速VW として考
え、VW =Vc である低μ路面基準変速比CLFS からV
W =0.9Vc である低μ路面L,2レンジ最小変速比
LFLOのラインを設定するために、車体速Vc に置換
し、マップの使用時には再び車輪速V W に置換すると考
えればよい。
【0085】但し、何れにしてもこの低μ路面L,2レ
ンジ最小変速比CLFLOを前記Dレンジ最小変速比CDLO
より小さくすることはできないから、本実施例では、低
μ路面L,2レンジ最小変速比CLFLOがDレンジ最小変
速比CDLO より小さく算出された場合には、当該Dレン
ジ最小変速比CDLO を低μ路面L,2レンジ最小変速比
LFLOに設定することとした。
【0086】なお、前記比例定数kの設定値を所定の値
に変えることで、各レンジ変速比減小量ΔCLLO 及びΔ
2LO を、VW =0.9Vc を達成するのに必要な値と
して算出することも可能であり、その場合には、当該各
レンジ変速比減小量ΔCLLO及びΔC2LO を通常Lレン
ジ最小変速比CLLO 及び通常2レンジ最小変速比C2L O
から減算した値が、低μ路面L,2レンジ最小変速比C
LFLOに相当する。
【0087】以上の原理に基づいて、前記図5の演算処
理で検索され、且つ図6の変速パターンと異なる変速パ
ターンを算出設定するための演算処理を図10に示す。
この演算処理は、前記無段変速機の制御装置であるマイ
クロコンピュータ30で、所定時間(ΔT)毎のタイマ
割込みによって実行され、ここで算出設定された変速パ
ターンは前記RAM315に記憶され、当該RAM31
5に記憶されている最新の変速パターンに従って、前記
図5の演算処理で変速比制御がなされる。従って、図1
0の演算処理は、図5の演算処理よりも優先順位が高い
と考えればよい。
【0088】ここで、算出される車輪減速度には、車両
前方への車輪加速度も包含されるため、ここでは両者を
含めて車輪加減速度αWjを算出するものとし、車両前方
への車輪加速度を正、車両後方への車輪減速度を負で表
す。従って、前記車輪減速度が或る所定値よりも大きい
という表現は、ここでは車輪加減速度αWjが或る所定値
αW0(負の値)よりも小さいと表記される。なお、この
所定値αW0は、低μ路面で車輪に大きな制動力が作用
し、その結果、当該車輪速が前記目標スリップ率を満足
する車輪速よりも減少するような場合(つまりロック傾
向を示す場合)に、この車輪の減速度(つまり負の車輪
加減速度)が下回る程度の値に設定してあり、通常の高
μ路面では、急制動を行っても、負の車輪加減速度がこ
の所定値を下回ることのない程度の大きさに設定してあ
る。
【0089】この図10の演算処理では、まずステップ
S11で前記左駆動輪速センサ402、右駆動輪速セン
サ404から、夫々、各車輪速検出値(単に車輪速とも
記す)VWjを読込む。次にステップS12に移行して、
前記シフトポジションスイッチ304からの信号に基づ
いてシフトポジションを読込む。
【0090】次にステップS13に移行して、前記ステ
ップS12で読込まれたシフトポジションがP,R,
N,Dレンジの何れかのシフトレンジであるか否かを判
定し、当該シフトポジションがP,R,N,Dレンジの
何れかのシフトレンジである場合にはステップS14に
移行し、そうでない場合にはステップS15に移行す
る。
【0091】前記ステップS14では、前記図6に相当
する制御マップ上の各レンジ最小変速比を、通常のレン
ジ最小変速比C2LO ,CLLO (=CHi)に設定し、これ
を前記マイクロコンピュータ300のRAM315に更
新記憶してからステップS16に移行する。一方、前記
ステップS15では、前記マイクロコンピュータ300
のRAM315に記憶されている最新の各車輪速前回値
Wj0 を読込んでステップS17に移行する。
【0092】前記ステップS17では、前記ステップS
11で読込まれた車輪速VWjと前記ステップS15で読
込まれた車輪速前回値VWj0 とを用いて、下記(2)式
に従って各車輪加減速度αWjを算出して、ステップS1
8に移行する。 αWj=(VWj0 −VWj)/ΔT ……(2) 前記ステップS18では、各車輪加減速度αWjのうち、
小さい車輪加減速度α Wjをセレクトローにより選択し、
この車輪加減速度αWjを最小車輪加減速度αWとして算
出設定して、ステップS19に移行する。
【0093】前記ステップS19では、前記ステップS
18で算出設定された最小車輪加減速度αW が、絶対値
が大きく且つ負の値である予め設定された所定値αW0
りも大きいか否かを判定し、最小車輪加減速度αW が所
定値αW0よりも大きい場合には前記ステップS16に移
行し、そうでない場合にはステップS20に移行する。
【0094】前記ステップS20では、前記ステップS
18で算出された最小車輪加減速度αW と前記車輪加減
速度の所定値αWOとから、最小車輪加減速度偏差絶対値
|α WD|を算出して、ステップS21に移行する。前記
ステップS21では、前記ステップS20で算出された
最小車輪加減速度偏差絶対値|αWD|を用い、前記
(3)式及び(4)式に従って、各低μ路面における各
レンジ変速比減小量ΔCLLO ,ΔC2LO を算出して、ス
テップS22に移行する。
【0095】前記ステップS22では、前記ステップS
21で算出された各低μ路面における各レンジ変速比減
小量ΔCLLO ,ΔC2LO を用い、前記(5)式に従っ
て、前記低μ路面基準変速比CLFS を算出して、ステッ
プS23に移行する。前記ステップS23では、前記ス
テップS22で算出された低μ路面基準変速比CLFS
用い、前記(6)式に従って、前記低μ路面L,2レン
ジ最小変速比CLFLOを算出して、ステップS24に移行
する。
【0096】前記ステップS24では、前記ステップS
23で算出された低μ路面L,2レンジ最小変速比C
LFLOが、Dレンジ最小変速比CDLO より小さいか否かを
判定し、低μ路面L,2レンジ最小変速比CLFLOがDレ
ンジ最小変速比CDLO より小さい場合にはステップS2
5に移行し、そうでない場合にはステップS26に移行
する。
【0097】前記ステップS25では、前記図6に相当
する制御マップ上の各レンジ最小変速比CLLO ,C2LO
を、前記低μ路面L,2レンジ最小変速比CLFLOとして
の前記Dレンジ最小変速比CDLO に設定し、これを前記
RAM315に更新記憶してから前記ステップS16に
移行する。一方、前記ステップS26では、前記図6に
相当する制御マップ上の各レンジ最小変速比CLLO ,C
2LO を、前記ステップS23で算出された低μ路面L,
2レンジ最小変速比CLFLOに設定し、これを前記RAM
315に更新記憶してから前記ステップS16に移行す
る。
【0098】そして、前記ステップS16では、前記ス
テップS11で読み込まれた各車輪速VWjを各車輪速前
回値VWj0 としてRAM315に更新記憶してから、メ
インプログラムに復帰する。次に、前記図10の演算処
理の作用を説明する。なお、乾燥したアスファルト路面
やコンクリート路面等のようにタイヤとの間に十分な摩
擦係数状態が維持される高μ路面における本実施例の作
用効果は、各ステップの符号が異なるだけで,前記第1
実施例と同様又はほぼ同様であるために、ここでは詳細
な説明を割愛する。
【0099】一方、前記氷雪路面や濡れたタイル路面等
の低μ路面では,タイヤと路面との摩擦係数状態が小さ
いから、前記ブレーキペダルの踏込みによる意図的な制
動時を含む制動力に対して車輪はロック傾向を示し、そ
の結果、当該車輪速は前記目標スリップ率を満足する目
標車輪速を下回り易くなる。そして、このような低μ路
面では,前述のように路面,即ち車体速が車輪を回転さ
せようとする入力に対して、実際の車輪速は非常に増速
しにくい状態であると考えられるから、前記車輪速が目
標車輪速を下回り始めると,少なくともアクセルペダル
を踏込んでエンジンの回転駆動力で積極的に車輪速を増
速しない限り、当該車輪速は減速を続け,比較的短時間
後にロックする或いはロックする直前の状態にまで至る
ものと考えられる。この要件には、前記ブレーキペダル
の踏込みによる意図的な制動を伴わない前記ダウンシフ
ト操作や、同じくエンジンブレーキレンジ,即ち2レン
ジ又はLレンジでのコースト走行への移行時も包含され
る。
【0100】従って、この低μ路面で2レンジ又はLレ
ンジを選択し、アクセルペダル踏込みによるエンジンの
回転駆動力が低減している制動時において,前記車輪速
が急激に減速し始めた最初の前記図10の演算処理で、
ステップS11〜S13を経てステップS15,S17
で算出される各車輪加減速度αWjは絶対値の相当に大き
な負の値となろう。従って、前記図10の演算処理のス
テップS18で算出設定される最小車輪加減速度α
W も,絶対値の相当に大きな負の値となる。従って、前
記図10の演算処理のステップS19に移行して、前記
最小車輪加減速度α W が前記絶対値が大きく且つ負の値
に設定された所定値αW0を下回ると,ステップS20に
移行する。このステップS20では最小車輪加減速度偏
差絶対値|α WD|を算出し、次いでステップS21で
は,この最小車輪加減速度偏差絶対値|αWD|に基づい
て各レンジ変速比減小量ΔCLLO ,ΔC2LO を算出す
る。そして、ステップS22からステップS26では,
ステップS23で算出される低μ路面最小変速比CLFLO
が前記Dレンジ最小変速比CDLO 以上である場合には、
制御マップ上の2レンジ及びLレンジの最小変速比C
2LO ,CLLO を当該低μ路面最小変速比CLFLOに変更設
定し、算出される低μ路面最小変速比CLFLOが前記Dレ
ンジ最小変速比CDLO より小さい場合には、制御マップ
上の2レンジ及びLレンジの最小変速比C2LO ,CLLO
を前記Dレンジ最小変速比CDLO に変更設定し、これを
RAM315に更新記憶してから、ステップS16に移
行して,前記ステップS11で読込んだ各車輪速VWj
車輪速前回値VWj0 としてRAM315に更新記憶し、
メインプログラムに復帰する。
【0101】そして、その後、前記図10の演算処理が
実行されるサンプリング時間毎に、前記ステップS13
でのシフトポジションの判定で2レンジ又はLレンジで
ないと判定されない限り、ステップS15,S17,S
18で算出される最小車輪加減速度αW の値に関わら
ず、つまりステップS19からステップS20〜S26
を経てステップS16に移行するか、或いはステップS
19からステップS16に直接移行するかは関係なく、
マップ上の2レンジ及びLレンジの最小変速比C 2LO
LLO は前記Dレンジ最小変速比CDLO 又は低μ路面
L,2レンジ最小変速比CLFLOに維持され、各演算処理
毎に前記ステップS11で読込んだ各車輪速VWjを車輪
速前回値VWj0 としてRAM315に更新記憶し、メイ
ンプログラムに復帰するフローを繰り返すことになる。
【0102】従って、この間、前記図5の演算処理で
は、例えば選択されたエンジンブレーキレンジが2レン
ジである場合、図6の前記通常2レンジ変速領域よりも
最小変速比が小さく設定され、全変速領域が拡幅された
低μ路面L,2レンジ変速領域において、前記車速及び
スロットル開度に応じた無段変速機の変速比制御が実行
されることになるが、前述のようにスロットル開度TH
が低減していると仮定すれば、設定制御される無段変速
機の変速比CD は常に小さな車両減速比,即ち前記図1
0の演算処理のステップS26又はS25で設定された
低μ路面L,2レンジ最小変速比CLFLOとなるものと考
えられる。その結果、当該最小変速比の減小分だけエン
ジンブレーキによる車輪への制動力は小さくなると共
に、路面とタイヤとのグリップ力が駆動輪を回転しよう
とする路面回転駆動力に対する無段変速機の慣性トルク
が低減するために、当該各駆動輪は回転し易い状態とな
り、特に、前記図10の演算処理のステップS26で低
μ路面L,2レンジ最小変速比CLFLOが設定された場合
には、各駆動輪速は目標車輪速である車体速の0.9倍
に維持又は増速復帰されて、舵取り効果や制動距離の確
保が可能となる。これは選択されたエンジンブレーキレ
ンジがLレンジある場合でも同様である。
【0103】その後、例えば前記変速パターン変更制御
によって車輪のスリップ率を確保しながら十分な車両減
速を得ることができたとか、或いはその結果、車両が駐
停車するに至ったとか、或いは適切な変速比制御によっ
て更に車両を加速したいといった運転者の意志によっ
て、シフトポジションを前記エンジンブレーキレンジで
ある2レンジ又はLレンジから通常走行レンジであるD
レンジに移行したとする。このような場合を含んで、前
記各エンジンブレーキレンジ以外のシフトポジションが
選択された場合には、前述のように当該エンジンブレー
キレンジの最小変速比を更に小さく変更設定する必要が
ないか、或いはあってもその変更代がない(例えばDレ
ンジが選択された場合)。
【0104】そのため、前記図10の演算処理が実行さ
れる最初のサンプリング時間に、前記ステップS11〜
S13を経てステップS14に移行し、このステップS
14で前記2レンジ及びLレンジの最小変速比を、通常
の各レンジ最小変速比C2LO及びCLLO (=CHi)に設
定して、これを前記RAM315に更新記憶し、次いで
ステップS16に移行して、前記ステップS1で読込ん
だ各車輪速VWjを車輪速前回値VWj0 としてRAM31
5に更新記憶し、メインプログラムに復帰するフロー
を、次に何れかのエンジンブレーキレンジが選択される
まで繰り返す。
【0105】従って、このフローから、2レンジ及びL
レンジの最小変速比を小さくする変速領域、即ち変速パ
ターンの変更設定はなされないから、前記図6に示す通
常変速パターンに従って、図5の演算処理により無段変
速機の変速比制御が実行される。それでは、前記低μ路
面のエンジンブレーキ作動時、即ち前記ダウンシフト操
作時やエンジンブレーキレンジでのコースト走行時にお
いて、各エンジンブレーキレンジの変速比制御領域変更
制御が実行された場合の作用効果について、図11に基
づいて考察する。ここでは、前記図10の演算処理のス
テップS26で、前記Dレンジ最小変速比CDLO よりも
車両減速比の大きい低μ路面L,2レンジ最小変速比C
LFLOが設定された場合を想定する。
【0106】例えば選択されているエンジンブレーキレ
ンジが2レンジである場合、例えば前記コースト走行を
開始した時点での変速比CD が、通常2レンジ最小変速
比C 2LO より大きいコースト走行開始変速比CCOAST
あると仮定する。前述のように、通常、コースト走行時
やダウンシフト操作時にはアクセルペダルの踏込みがな
い或いは小さく、その結果、スロットル開度THが低減
しているとすれば、このコースト走行開始からほどな
く、無段変速機の変速比CD には当該通常2レンジ最小
変速比C2LO が設定される。つまり、この間はエンジン
ブレーキのバックトルクは駆動輪への大きな制動力とし
て作用していないから、当該各駆動輪の加減速度αWj
比較的絶対値の小さな負の値にしかならず、従って前記
図10の演算処理のステップS19からステップS16
に直接移行するために、マップ上の2レンジ最小変速比
は通常2レンジ最小変速比C2LO に維持される。ところ
が、無段変速機の変速比CD がこの通常2レンジ最小変
速比C2LO に設定されると、前記図7に示すように、タ
イヤ−路面間静的摩擦係数状態μが0.30とか0.1
0といったレベルの低μ路面では、エンジンブレーキに
よる駆動輪への制動力及び無段変速機の慣性トルクに抗
して、路面回転駆動力が駆動輪を回転させることができ
ず、当該駆動輪の車輪速VWjは急激に減速して目標スリ
ップ率を満足する目標車輪速を下回り、そのようになる
と当該駆動輪速VWjはロック状態に至るまで一気に減速
することになる。これは図11において、前記通常2レ
ンジ最小変速比C2LO が、前記無段変速機慣性トルクT
FCVTを換算して得られる当該低μ路面におけるロック最
小変速比CLOCKよりも大きいことから明らかであろう。
【0107】すると、前記図10の演算処理のステップ
S17で算出される各車輪加減速度αWjは絶対値の相当
に大きな負の値となり、従って同ステップS19で最小
車輪加減速度αW は所定値αW0より小さくなる。そし
て、図10の演算処理のステップS20〜S24を経て
ステップS26で、前記Dレンジ最小変速比CDLO より
車両減速比の大きい低μ路面L,2レンジ最小変速比C
LFLOが当該2レンジ最小変速比C2LO の代わりに設定さ
れ、同じ2レンジの変速比制御領域は図11に示す低μ
路面L,2レンジ変速領域まで拡幅されることになる。
【0108】従って、前記と同様に、コースト走行状態
でスロットル開度THが低減しているとすれば、図11
に示すように無段変速機の変速比CD は、前記低μ路面
L,2レンジ最小変速比CLFLOまで小さくなる。このと
き、前述のように、低μ路面L,2レンジ最小変速比C
LFLOを算出するための基準となる前記低μ路面基準変速
比CLFS (駆動輪の車輪速VW を車体速VC に復帰する
ための変速比)は、通常2レンジ最小変速比C2LO にお
けるエンジンブレーキによる駆動輪への制動力及び無段
変速機の慣性トルクと、路面回転駆動力との偏差に等価
な、駆動輪の減速度の大きさに応じて設定されるため、
図11に示すように、当該低μ路面基準変速比CLFS
よびこれを0.9で除して算出される低μ路面L,2レ
ンジ最小変速比CLFLOは、前記当該低μ路面におけるロ
ック最小変速比CLOCKよりもやや車両減速比で小さい程
度の値に設定されていることになる。従って、エンジン
ブレーキによる駆動輪への制動力は小さくなり同時に無
段変速機の慣性トルクは小さくなるから、図7に示すよ
うに、路面回転駆動力Tμは当該無段変速機の慣性トル
クTFCVTに抗して駆動輪を回転させることができ、やが
て各駆動輪の車輪速は車体速の0.9倍に維持又は増幅
復帰されて、エンジンブレーキによる制動力が当該路面
回転駆動力に抗して駆動輪へ有効に作用し、車両の減速
効果が十分に発現する。
【0109】この間、時間的には、無段変速機の変速比
D は通常2レンジ最小変速比C2L O に或る時間維持さ
れるが、実際の車速変動は殆ど発生しないと考えられる
ので、変速比制御マップ上の変速パターンは、図11に
示すようにほぼ車速一定で低μ路面L,2レンジ最小変
速比CLFLOまで小さくなる。また、例えばダウンシフト
操作した場合には、その直後にエンジンの回転数が一旦
やや上昇するが、前述のように駆動輪がロック傾向とな
る(即ち路面駆動力が伝達されない)ためにエンジンの
回転数が低下し、前記最小変速比の変更制御が実行され
ると再びエンジンの回転数が上昇するために、運転者に
は当該エンジン回転数の増減に伴う若干の違和感が極め
て短時間に発生するものの、同時にこれらのエンジン回
転数増減がロック傾向にある車輪速の増減によるもので
あると判断されるから、次の瞬間にこの違和感は解消さ
れるであろう。また、この作用については、選択シフト
ポジションがLレンジである場合も、前記通常2レンジ
最小変速比が通常Lレンジ最小変速比と置換されるだけ
で、ほぼ同様に展開される。
【0110】この車両の減速効果、即ち車速Vが、低μ
路面L,2レンジ最小変速比車速V LF1 (変速比制御開
始スロットル開度閾値TH1 において低μ路面L,2レ
ンジ最小変速比CLFLOとなる車速)まで減少する間、無
段変速機の変速比CD は前記低μ路面L,2レンジ最小
変速比CLFLOに維持され、更に車速Vが低下すると前記
クリープ走行上限値制御、即ち変速比制御開始スロット
ル開度閾値TH1 における変速比制御曲線に従って次第
に大きな変速比CD が設定される。このように車速Vが
減速することは、エンジンブレーキの制動力が前記路面
回転駆動力(即ち車速と等価である)に抗して有効に作
用していことであるから、この時点で車両減速比と等価
な無段変速機の変速比CD を大きくすることは、車両運
動にとって支障のないことは容易に推察される。
【0111】なお、前記実施例では、アンチスキッド制
御装置を搭載しない車両についてのみ本実施例の作用を
説明したが、実際にはアンチスキッド制御装置を搭載し
た車両にあってもこれと同等の問題が発生する可能性は
あり、前記図10の演算処理をアンチスキッド制御装置
の作動信号に組合わせて実行させることで、ほぼ同様に
解決することができる。また、この場合には前記車輪加
減速度の判定に合わせてスリップ率を判定要件として設
定すれば、より一層確実な構成となる。
【0112】以上より、本実施例は発明に係る無段変
速機の制御装置を実施化したものと考えられ、図10の
演算処理のステップS11,S15,S17,S18が
発明の車輪回転減速度検出手段に相当し、以下同様に
図10の演算処理のステップS13がエンジンブレーキ
検出手段に相当し、図10の演算処理のステップS19
〜S26が変速パターン変更手段に相当し、図4に示す
車速センサ302が車速検出手段に相当し、図4に示す
マイクロコンピュータ300及び図5に示す演算処理が
変速パターン制御手段に相当し、前記Dレンジが通常走
行レンジに相当し、前記2レンジ又はLレンジがエンジ
ンブレーキレンジに相当する。
【0113】次に、前記各実施例による車輪速増速効果
を図12を用いて説明する。同図は、低μ路面を走行中
に、時刻t1 でシフトポジションを前記Dレンジから2
レンジに移行する、所謂ダウンシフト操作を行った場合
の駆動輪の車輪速VWj及び無段変速機の目標変速比CD
の状態を示すシミュレーション実験結果である。図中、
車速Vには理解を容易化するために前記アンチスキッド
制御装置で採用される疑似車速、即ち最大車輪速VWHi
を採用した。また、目標車輪速V* Wjは、前記車速Vに
対して目標スリップ率の上限値である約30%が達成さ
れるように、この車速Vに係数(0.7)を乗じて設定
した。また、アクセルペダルの踏込みはなく,スロット
ル開度は極めて低減している状態を想定する。また、同
図には前記変速パターン変更制御を実施せず、通常の変
速パターンに従って無段変速機の変速比制御を行った場
合の変速比CDn及び駆動輪の車輪速VWjn を、夫々二点
鎖線で併記した。また、変速比を示す図には、前記前記
無段変速機慣性トルクTFC VTを換算して得られる当該低
μ路面におけるロック最小変速比CLOCKを合わせて記し
た。
【0114】同図では、時刻t1 で2レンジに移行し、
ほどなく無段変速機の目標変速比は通常2レンジ最小変
速比C2LO に設定され、実際の無段変速機の変速比CD
も次第に大きくなっていった。その結果、車輪速VWj
大幅に減速し、その傾きである減速度(最小車輪加減速
度)αW が、時刻t2 で前記所定値αW0よりも小さくな
った。従って、前記各演算処理で、当該2レンジ最小変
速比C2LO は低μ路面L,2レンジ最小変速比CLFLO
で小さくなり、無段変速機の目標変速比も当該低μ路面
L,2レンジ最小変速比CLFLOに設定され、実際の無段
変速機の変速比CD も比較的急速に小さくなっていっ
た。そして、その結果、エンジンのアイドル回転数又は
アイドル回転速度は、当該低μ路面において車輪速VWj
を急速に増速し、時刻t3 から時刻t4 までの時間は、
車速Vを上回る所謂スリップロスが発生した。
【0115】しかしながら、当該時刻t4 以後、駆動輪
には前記路面回転駆動力とエンジンブレーキの制動力と
が有効に作用し、車速Vは滑らかに減速した。また、こ
の間、駆動輪の車輪速VWjは目標スリップ率を満足する
目標車輪速下限値V* Wjを下回ることがないことから、
車両の舵取り効果と制動距離とが確保されたことが分か
る。また、これは無段変速機の目標変速比が比較的小さ
な低μ路面L,2レンジ最小変速比CLFLOに維持され、
その結果、実際の無段変速機の変速比CD は、車速Vの
減速に応じて滑らかに大きくなっていったことによるこ
とが分かる。この間、実際の無段変速機の変速比CD
前記ロック最小変速比CLOCKより大きくなることはない
から、少なくとも意図的な制動力が加味されない限り、
車輪はロックしないことも分かる。
【0116】一方、前記各演算処理による変速パターン
変更制御を実施しなかった場合には、前記時刻t2 以後
も車輪速VWjn は減速し続け、これに応答して実際の無
段変速機の変速比CDnは更に大きくなっていった。そし
て、実際の無段変速機の変速比CDnが前記ロック最小変
速比CLOCKより大きくなる時刻t5 で、当該駆動輪の車
輪速VWjn は“0”となって完全なロック状態に陥っ
た。
【0117】以上のように、前記各実施例によれば、低
μ路面走行中に急激に減速した駆動輪の車輪速を、速や
かに目標スリップ率を満足する目標車輪速(車体速の
0.7〜0.9倍)の範囲に維持又は増速復帰して、車
両の舵取り効果と制動距離を確保することができる。な
お、前記各実施例は、本出願人が先に提案した特開昭6
1−105353号公報に記載される無段変速機の制御
装置を基体としたものであるが、本発明はこれ以外のベ
ルト式無段変速機に広く展開可能であることは言うまで
もない。
【0118】また、前記各実施例では、変速比制御コン
トローラをマイクロコンピュータで構築したものについ
てのみ詳述したが、これに限定されるものではなく、演
算回路等の電子回路を組み合わせて構成してもよいこと
は言うまでもない。また、前記各実施例では、本発明の
無段変速機の制御装置を前輪駆動車両に展開した場合に
ついてのみ詳述したが、後輪駆動車両、四輪駆動車両に
あってもほぼ同様に展開できることは言うまでもない。
なお、四輪駆動車両の場合には、ABS制御などで用い
られる疑似車体速を車速として用いればよい。
【0119】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の無段変速
機の制御装置によれば、低μ路面走行中に、例えば前記
ダウンシフト操作やエンジンブレーキレンジでの急激な
コースト走行へ移行した場合、当該エンジンブレーキレ
ンジの変速比制御領域の通常の最小変速比を、駆動輪の
車輪速が車速の70〜90%となる値まで小さくするこ
とにより、エンジンブレーキによる駆動輪への制動力が
低減し、同時に路面回転駆動力に対する無段変速機の慣
性トルクは小さくなる。また、駆動輪の車輪速が、昨今
のタイヤ特性において操舵や駆動・制動に関与するタイ
ヤのグリップ力が確保されるスリップ率10〜30%を
満足する値となるため、車両としての舵取り効果と制動
距離とが確実に確保できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の無段変速機の制御装置の基本構成図で
ある。
【図2】無段変速機の動力伝達機構の一例を示す構成図
である。
【図3】無段変速機の油圧制御装置の一例を示す構成図
である。
【図4】無段変速機の変速比制御装置に相当するコント
ローラの一例を示す構成図である。
【図5】図5のコントローラで実行される通常の無段変
速機の変速比制御の演算処理の一例を示すフローチャー
トである。
【図6】図5の演算処理による変速パターンの説明図で
ある。
【図7】本発明の基本原理の説明図である。
【図8】本発明の無段変速機の制御装置の第1実施例を
示すものであり、低μ路面におけるエンジンブレーキレ
ンジの変速パターン変更制御の演算処理を示すフローチ
ャートである。
【図9】図8の演算処理により変更制御されたエンジン
ブレーキレンジの変速パターンの説明図である。
【図10】本発明の無段変速機の制御装置の第2実施例
を示すものであり、低μ路面におけるエンジンブレーキ
レンジの変速パターン変更制御の演算処理を示すフロー
チャートである。
【図11】図10の演算処理により変更制御されたエン
ジンブレーキレンジの変速パターンの説明図である。
【図12】各エンジンブレーキレンジの変速パターン変
更制御による車輪速及び無段変速機の変速比を説明する
タイムチャートである。
【符号の説明】
10 エンジン 29 無段変速機構(無段変速機) 110 ステップモータ 118 電磁弁 224 ソレノイド 300 マイクロコンピュータ 302 車速センサ 303 スロットル開度センサ 304 シフトポジションスイッチ 402 左駆動輪速センサ(車輪回転減速度検出手段) 404 右駆動輪速センサ(車輪回転減速度検出手段)
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) F16H 9/00 F16H 59/00 - 61/12

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 変速シフトポジションに少なくとも通常
    走行レンジ及びエンジンブレーキレンジを備え、前記変
    速シフトポジションに通常走行レンジが選択されたとき
    には通常走行に好適な通常走行変速比制御領域で無段変
    速機の変速パターンを制御し、且つ前記変速シフトポジ
    ションにエンジンブレーキレンジが選択されたときには
    前記通常走行変速比制御領域よりも最小変速比の大きい
    エンジンブレーキ変速比制御領域で無段変速機の変速パ
    ターンを制御する変速パターン制御手段を備えた無段変
    速機の制御装置において、前記エンジンブレーキレンジが選択されたことを検出す
    るエンジンブレーキレンジ検出手段と、 車輪回転の減速
    度を検出する車輪回転減速度検出手段と、車体速度を検
    出する車速検出手段とを備え、前記変速パターン制御手
    段は、前記エンジンブレーキレンジ検出手段がエンジン
    ブレーキレンジ選択を検出し、且つ前記車輪回転減速度
    検出手段で検出された車輪回転減速度検出値が所定車輪
    回転減速度値以上のときに、前記エンジンブレーキ変速
    比制御領域の最小変速比を、駆動輪の車輪速が前記車速
    検出手段で検出された車速検出値の70〜90%となる
    まで小さく変更する変速パターン変更手段を備えたこ
    とを特徴とする無段変速機の制御装置。
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