JP3555389B2 - 無段変速機の制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両に搭載される無段変速機の制御装置に関するものであり、特に溝幅が可変の一対のプーリで巻回されるベルトを狭持し、当該プーリの溝幅を調整することで変速比を可変制御する無段変速機構を備えたものに好適なものである。
【0002】
【従来の技術】
このような無段変速機の制御装置としては例えば本出願人が先に提案した特開平8−200461号公報に記載されるものがある。この従来技術に見られるように、プーリの溝幅を調整して変速比を可変制御するものでは、ベルトの滑りを抑制防止するためにプーリを構成する二つの円錐体に作動流体圧を供給し、その推力,つまり押圧力により二つの円錐体でベルトを挟持する。この無段変速機構を構成するプーリへの供給作動流体圧を、この従来技術ではライン圧と称しているが、前述のような目的から、一般にエンジンからの入力負荷に応じてこのライン圧の設定圧を大きくしてベルトが滑らないようにしている。ちなみに、このライン圧は、ポンプで昇圧された作動流体を、例えばデューティ弁やモディファイヤ弁等を含んで構成される無段変速機構用調圧弁で調圧するようにしており、その場合には、前記デューティ弁へのデューティ比制御信号によってライン圧を制御できるようにしている。
【0003】
また、この従来技術では、セカンダリプーリと称される出力側のプーリには前記ライン圧を直接供給するが、プライマリプーリと称される入力側のプーリには変速制御弁と称される開閉弁を介してこのライン圧を供給するようにしている。これは、当該プライマリプーリ側が変速比変更制御を司るものであり、具体的にはステップモータ等のアクチュエータでプライマリプーリの円錐体の何れか一方の可動側円錐体を移動させてベルトの接触半径を変更し、セカンダリプーリ側はそれに伴って自動的にベルトの接触半径が変化するように構成されている。従って、前記プライマリプーリの可動側円錐体にもライン圧を供給される必要はあるが、むしろこのプライマリプーリの可動側円錐体に推力を与えているシリンダ室内の容積変動に応じて開閉弁が自動的に開閉されるように構成し、これにより変速,つまり可動側円錐体の移動を補助しながら必要なライン圧が供給されるように構成されているのである。なお、前述のような変速の原理から、この種のベルト式無段変速機では、二つのプーリが双方とも回転していないと、つまり車両が実際に発進・走行していないと変速は行われない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前記従来のプライマリプーリ側へのライン圧(作動流体圧)を供給したり遮断したりするための開閉弁は、前述のように変速しないときは作動しない,つまり閉じたままである。従って、例えば変速比が最大の状態のまま、内燃機関,つまりエンジンを停止して駐車している間は、当然ながら変速もしないから、開閉弁も閉じたままである。ところが、このような駐車中は作動流体圧も昇圧されないから、現実的には作動流体路系の各種の摺動部や可動部などから作動流体が漏れてしまい、長期間の駐車後には、前記開閉弁で閉じられたままのプライマリプーリのシリンダ室内に空洞が発生することもある。
【0005】
このように長期間の駐車中にプーリのシリンダ室内に空洞が発生しても、次のエンジンの再始動時には前記開閉弁は閉じたままであるから、次に実際に変速が行われるまで,つまり車両が実際に発進するまで当該シリンダ室内の空洞は残存する。次いで、この状態から車両が発進して変速が行われ、前記開閉弁が作動して、プーリのシリンダ室内と前記作動流体圧供給側とが連通されると、作動流体が急速にプーリのシリンダ室内に流れ込み、供給側作動流体圧が低下する恐れがある。また、このシリンダ室内の空洞に相当する気泡が前記作動流体の流れ込みによって外部に排出されてしまうのであれば前述のような問題は比較的短時間で解消されるが、気体の伸縮性によって単にこの気泡が潰れただけのような場合には、例えば供給される流体圧が低下すると再び気泡が膨張するから、次いで再び作動流体の急速な流れ込みや供給側作動流体圧の低下を招く恐れもある。そして、このように供給側作動流体圧が低下すると、前述のようにプーリによるベルト挟持力が低下してベルトが滑る恐れもある。
【0006】
本発明はこれらの諸問題に鑑みて開発されたものであり、長期間の駐車後の再発進時にも作動流体圧の低下を抑制防止できる無段変速機の制御装置を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明のうち請求項1に記載される無段変速機の制御装置は、溝幅が可変の一対のプーリで、巻回されるベルトを挟持する無段変速機構を有し、ポンプで昇圧された作動流体を前記無段変速機構への入力負荷に応じた所定の流体圧に無段変速機構用調圧弁で調圧して当該無段変速機構に供給するようにし、少なくとも一方のプーリには、変速比が変化するときに作動される開閉弁を介して前記所定の作動流体圧を供給したり遮断したりするようにした無段変速機の制御装置にあって、内燃機関の始動を検出する内燃機関始動検出手段と、この内燃機関始動検出手段が内燃機構の始動を検出した後に、所定時間だけ前記開閉弁を作動して、前記ポンプで昇圧された作動流体の流体圧を、前記少なくとも一方のプーリに供給する流体予圧供給手段とを備え、前記流体予圧供給手段は、前記少なくとも一方のプーリのシリンダ室の空洞内のつぶれている気泡の再膨張を抑制防止するように、前記所定時間経過後も前記開閉弁を作動して、前記少なくとも一方のプーリに、前記ポンプで昇圧された作動流体の流体圧を少しずつ供給し続けることを特徴とするものである。
【0008】
ここで用いられる無段変速機構に供給する流体圧とは、例えば前記ライン圧と称されるような、対向する二つの円錐体でベルトを挟持するためにプーリのシリンダ室に供給される作動流体圧を言う。また、内燃機関は一般にエンジンと言い表れる。また、変速比が変化するときに作動される開閉弁を介して所定の作動流体圧が供給されたり遮断されたりするプーリとは、例えば前記プライマリプーリのように変速に際して作動する変速制御弁等により当該プーリのシリンダ室の容積変動に応じて作動流体が供給されたり遮断されたりするようなプーリ全般を示す。
【0010】
また、本発明のうち請求項2に係る無段変速機の制御装置は、前記所定時間は、少なくとも前記内燃機関の始動から、車両が発進可能な条件が満足されるまでの時間であることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明のうち請求項3に係る無段変速機の制御装置は、前記所定時間は、少なくとも前記内燃機関の始動から、車両が実際に発進するまでの時間であることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明のうち請求項4に係る無段変速機の制御装置は、前記所定時間は、前記作動流体の温度に応じて設定されることを特徴とするものである。
【0013】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のうち請求項1に係る無段変速機の制御装置によれば、内燃機関が始動された後に、所定時間だけ開閉弁を作動することにより、ポンプで昇圧されている作動流体の流体圧をプーリに供給するようにすると共に、前記プーリのシリンダ室内に作動流体を供給した後も、当該プーリに作動流体の流体圧を少しずつ供給し続ける構成としたため、実際に車両が発進して変速が開始される以前に当該プーリのシリンダ室内に作動流体の流体圧を供給することができ、例えば長期間の駐車後のようにプーリのシリンダ室内に空洞が発生しているような場合でも、プーリのシリンダ室内の空洞内のつぶれている気泡の再膨張を抑制防止でき、車両の発進後の変速開始時に当該プーリのシリンダ室に急速に作動流体が流れ込むのを抑制防止して供給側の作動流体圧の低下も抑制防止することができる。
【0015】
また、本発明のうち請求項2に係る無段変速機の制御装置によれば、実際の変速が開始される条件、つまり車両が発進可能な条件が満足されたら、前記開閉弁の作動によるプーリへの作動流体圧の供給を停止し、実際の変速に望ましい状態、又はそれに近しい状態に戻すことで、通常の変速制御を確保する。
【0016】
また、本発明のうち請求項3に係る無段変速機の制御装置によれば、実際の変速が開始される条件として、実際に車両が発進したら、前記開閉弁の作動によるプーリへの作動流体圧の供給を停止し、実際の変速に望ましい状態、又はそれに近しい状態に戻すことで、通常の変速制御を確保する。
【0017】
また、本発明のうち請求項4に係る無段変速機の制御装置によれば、作動流体の粘性が温度に依存することを考慮し、開閉弁の作動によるプーリへの作動流体圧の供給所定時間を、作動流体の温度に応じて設定することで、作動流体の流体圧を前記プーリのシリンダ室内に必要なだけ確実に供給することができる。
【0018】
【発明の実施形態】
以下、本発明の無段変速機の制御装置の一実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0019】
図1は本発明の一実施形態を示す無段変速機及びその制御装置の概略構成図である。まず、この無段変速機の動力伝達機構は、フルードカップリングがトルクコンバータに変更されている点を除いて、本出願人が先に提案した特開平7−317895号公報に記載されるものと同等であるために、同等の構成部材には同等の符号を附して簡潔に説明する。なお、図中の符号10はエンジン、12はトルクコンバータ、15は前後進切換機構、29はVベルト式無段変速機構、56は差動装置、66,68は前輪用の左右ドライブシャフトである。
【0020】
前記エンジン10の吸気管路11には、運転者によるアクセルペダルの踏込み量に応じて開閉するスロットルバルブ19が配設されている。また、このスロットルバルブ19には、その開度(以下、スロットル開度とも記す)TVOを検出するスロットル開度センサ303が取付けられている。また、エンジン10の出力軸10aには、その回転速度(以下、エンジン回転数とも記す)NE を検出するエンジン回転数センサ301が取付けられている。なお、エンジン負荷や車速等に応じて例えば燃料噴射量やその時期、点火時期等をエンジンコントロールユニット200が制御することで、エンジン10の回転状態は車両の走行状態に応じて最適状態に制御される。また、スロットル開度センサ303で検出されるスロットル開度TVOの検出信号は、当該スロットル開度TVOが大でアクセルペダルの踏込み量が大であることを示す。また、前記エンジン回転数センサ301はエンジンのイグニッション点火パルスからエンジン回転速度を検出するように構成してもよい。
【0021】
前記エンジン10の出力軸10aに連結されたトルクコンバータ12は、ロックアップ機構付きの既存のものであり、図示されるロックアップフェーシングの図示左方がアプライ側流体室12a、その反対側,即ちロックアップフェーシングとトルコンカバーとの間がリリース側流体室12bになり、アプライ側流体室12aへの作動流体圧が高まるとロックアップ、リリース側流体室12bへのそれが高まるとアンロックアップ状態となる。なお、このトルクコンバータ12の出力軸,即ちタービン出力軸13には、無段変速機構29への回転速度(以下、単に入力回転数とも記す)NPri を検出する入力回転数センサ305が取付けられている。なお、後述する前後進切換機構15では、例えば前進用クラッチ40の締結力を可変調整することにより、アクセルペダルを踏込んでいないときの,所謂クリープ走行力等を制御することもあるが、通常の走行時には当該前進用クラッチ40は完全に締結しているので、前記タービン出力軸13の回転数を無段変速機構への入力回転数NPri として用いる。また、前記リリース側流体室12bに供給される作動流体はアプライ側流体室12aを通ってドレンされるし、アプライ側流体室12aに供給された作動流体のドレン分はリリース側流体室12bから、その他の冷却・潤滑系に転用されてゆく。従って、このロックアップ機構への作動流体は流体路そのものを切換えるのではなく、供給の向きを切換えることでロックアップ/アンロックアップの切換制御を行っている。
【0022】
また、前記前後進切換機構15は、遊星歯車機構17、前進用クラッチ40、および後進用ブレーキ50を有して構成される。このうち、遊星歯車機構17は、複段のピニオン列を有して構成されており、これらのピニオン列を支持するピニオンキャリアが駆動軸14を介して前記無段変速機構29の駆動プーリ16に接続され、サンギヤが前記タービン回転軸13に接続されている。また、前記ピニオンキャリアは前進用クラッチ40によって前記タービン回転軸13と締結可能とされ、遊星歯車機構17のリングギヤが後進用ブレーキ50によって静止部と締結可能とされている。従って、前進用クラッチ40が流体室40aへの作動流体圧によって締結されると、ピニオンキャリアを介して前記駆動軸14とタービン出力軸13とが同方向に等速回転する。また、後進用ブレーキ50が流体室50aへの作動流体圧によって締結されると、複段のピニオン列を介して前記駆動軸14がタービン出力軸13と逆方向に等速回転する。
【0023】
前記無段変速機構29を構成する駆動プーリ16は、前記駆動軸14と一体に回転する固定円錐体18と、これに対向配置されてV字状プーリ溝を形成すると共に軸方向に移動可能な可動円錐体22とから構成される。また、この駆動プーリ16の可動円錐体22には、固定円錐体18との間でベルト24を挟持するために、作動流体圧が供給されるシリンダ室20が形成されている。また、前記駆動プーリ16と対をなして、ベルト24が巻回される従動プーリ26は、従動軸28と一体に回転する固定円錐体30と、これに対向配置されてV字状プーリ溝を形成すると共に軸方向に移動可能な可動円錐体34とから構成され、当該可動円錐体34にも、固定円錐体30との間でベルト24を挟持するために、作動流体圧が供給されるシリンダ室32が形成されている。
【0024】
このベルト式無段変速機構29は、ラック182に噛合するピニオン108aをステップモータ108の回転軸に取付け、更にラック182と前記可動プーリ16の可動円錐体22とをレバー178で連結し、このステップモータ108を後述する変速機コントロールユニット300からの駆動信号DS/M により回転制御することで駆動プーリ16の可動円錐体22及び従動プーリ26の可動円錐体34を軸方向に移動させてベルト24との接触位置半径を変えることにより、駆動プーリ16と従動プーリ26との回転比,つまり変速比(プーリ比)を変えることができる。なお、このプーリ比接触位置半径変更制御は、例えば前述のように本実施形態では駆動プーリ16の可動円錐体22を移動させてその溝幅を変更することで、従動プーリ26の可動円錐体34が自動的に移動されて溝幅が変更されるようになっている。これは、前述のようにベルト24が、主として押圧方向に駆動力を伝達する,プッシュ式ベルトであるためである。なお、このプッシュ式ベルトの構成は、周知のエレメントをベルトの長手方向又は巻回方向に並べて構成される。また、前記駆動プーリ16のシリンダ室20並びに従動プーリ26のシリンダ室32への作動流体圧の供給経路については、後段の流体圧制御装置の項で詳述する。
【0025】
そして、前記従動軸28に固定された駆動ギヤ46と、アイドラ軸52上のアイドラギヤ48とが噛合し、このアイドラ軸52に設けられたピニオンギヤ54がファイナルギヤ44に噛合し、このファイナルギヤ44に差動装置56を介して前左右のドライブシャフト66及び68が連結されている。なお、この最終出力軸には車速VSPを検出する車速センサ302が取付けられている。
【0026】
次に、この無段変速機の流体圧制御装置について説明する。この流体圧制御装置は、前記エンジン10の回転駆動力で回転されるポンプ101により、リザーバ130内の作動流体を十分に昇圧してアクチュエータユニット100に供給する。このアクチュエータユニット100内の構成は、本出願人が先に提案した前記特開平7−317895号公報に記載されるものと同様であるため、同等の構成要素には同等の符号を附して、その詳細な図示並びに説明を省略し、本実施形態で必要な弁構成の説明に止める。なお、この流体圧制御装置には、前記リザーバ130内の作動流体の温度TMPを検出する作動流体温度センサ306が設けられている。また、前記従動プーリ26の可動円錐体34に設けられているシリンダ室32は、ライン圧PL と呼ばれる作動流体圧供給源に直接連通されているから、その可動円錐体34が軸方向に移動するときの当該シリンダ室32の容積変動については問題ないが、駆動プーリ16の可動円錐体22のシリンダ室20は後述する変速制御弁106なる開閉弁を介して作動流体圧供給源に接続されているので、当該シリンダ室20の容積変動時には、この変速制御弁106が関与して実際の変速を補助する。その詳細な内容については後述する。
【0027】
図1中の符号104は、セレクトレバー103によって直接操作され、主として前記前進用クラッチ40のシリンダ室40aへのクラッチ圧PCLと後進用ブレーキ50のシリンダ室50aへのブレーキ圧PBRK とを切換制御するためのマニュアル弁である。なお、このセレクトレバー103には、選択されたシフトポジションを検出し、それに応じたシフトレンジ信号SRANGE を出力するインヒビタスイッチ304が取付けられている。ちなみに、このシフトレンジ信号SRANGE は、実車のシフトポジションに合わせて、P,R,N,D,2,Lに相当する信号になっている。
【0028】
また、符号128は後述する変速機コントロールユニット300からの駆動信号DL/U によって駆動され、主として前記トルクコンバータ12のロックアップ機構によるロックアップ/アンロックアップを制御するためのロックアップ制御用デューティ弁である。ちなみに、このロックアップ制御用デューティ弁128は、デューティ比の大きい制御信号でトルクコンバータ12をロックアップし、デューティ比の小さい制御信号でアンロックアップするように作用する。また、符号129は、後述する変速機コントロールユニット300からの駆動信号DCLによって駆動され、主として前記前進用クラッチ40又は後進用ブレーキ50の締結力を制御するためのクラッチ締結制御用デューティ弁である。このクラッチ締結制御用デューティ弁129は、デューティ比の大きい制御信号で前進用クラッチ40又は後進用ブレーキ50を締結し、デューティ比の小さい制御信号で締結解除するように作用する。
【0029】
また、符号120は、後述する変速機コントロールユニット30からの駆動信号DPLによって駆動され、前述のようにベルト24を挟持するために、前記従動プーリ26及び駆動プーリ16への作動流体圧(以下、この流体圧をライン圧とも記す)PL を制御するためのライン圧制御用デューティ弁120である。なお、引用する公報では、このデューティ弁120をモディファイヤ用デューティ弁としている。これは、このデューティ弁120からの出力圧が、一旦、プレッシャモディファイヤ弁というパイロット圧調圧弁のパイロット圧として作用し、その結果、プレッシャモディファイヤ弁からの出力圧がライン圧調圧弁のパイロット圧として作用して、当該ライン圧調圧弁の上流側に形成されるライン圧PL を調圧するためである。しかしながら、この説明からも明らかなように、このデューティ弁120のデューティ比を制御すれば、間接的にではあるが、ライン圧PL を制御することができるのである。また、これにより、本実施形態では、図2に示すように、所定の不感帯領域を除き、このライン圧制御用デューティ弁120への制御信号又は駆動信号のデューティ比D/TPLの増加に伴って(目標)ライン圧PL(OR) はリニアに増圧するものとする。ちなみに、前記プレッシャモディファイヤ弁からの出力圧が増圧されると、クラッチ圧の元圧やトルクコンバータのロックアップ圧の元圧も同時に増圧する(傾きや切片は異なる)ことができるようになっている。
【0030】
そして、符号106が、前記ステップモータ108と駆動プーリ16の可動円錐体22との相対変位,即ち前記レバー178の挙動に応じて操作され、主として変速の様子,つまり要求する変速比と当該駆動プーリ16の溝幅との相対関係に応じて駆動プーリ16側への作動流体圧(ライン圧)PL(Pri)を制御する変速制御弁である。
【0031】
この変速制御弁106の作用について図3を用いて簡潔に説明する。即ち、図3においてステップモータ108が時計方向に回転駆動されると、ロッド182の下方への移動に伴ってレバー178がピン183を支点として時計方向に回動し、変速制御弁106のスプール106gを下方に移動させ、これにより一旦、駆動プーリシリンダ室20内の作動流体が保圧弁160を介してリザーバ130に還元されるので、駆動プーリ16の可動円錐体22が上方に移動してプーリ溝幅が広がり、逆に従動プーリ26のプーリ溝幅が狭まって変速比が大きくなる。この可動円錐体22の移動に伴ってセンサシュー164が図2の上方に移動すると、今度はピン185を支点としてレバー178が時計方向に回動し、スプール106gは上方に引き戻されて必要なライン圧PL を駆動プーリシリンダ室20に供給する。
【0032】
一方、ステップモータ108を反時計方向に回転駆動した場合には、変速制御弁106のスプール106gが図示上方に移動することにより駆動プーリシリンダ室20内にライン圧PL が供給されて当該駆動プーリ16の溝幅が狭まり、合わせて従動プーリ26の溝幅が広くなって変速比は小さくなる。また、この駆動プーリ16の可動円錐体22の下方への移動に伴ってレバー178がピン185を支点として反時計方向に回動してスプール106gを下方に押し戻し、必要に応じて駆動プーリシリンダ室20の流体圧を抜圧する。このような動作によってスプール106g,駆動プーリ16及び従動プーリ26は、ステップモータ108の回転位置,つまりポジションに対応して目標とする変速比の状態で安定する。なお、ステップモータ108は、変速比が最大変速比CLOであるときに回転角,つまりポジションθS/M が“0”であるとし、それよりポジションθS/M が正方向に大きくなると変速比が小さくなるものとする。
【0033】
前記変速機コントロールユニット300は、例えば後述する図4の演算処理等を実行することで、前記無段変速機構29並びに前記アクチュエータユニット100を制御するための制御信号を出力する制御手段としてのマイクロコンピュータ310と、当該マイクロコンピュータ310から出力される制御信号を、実際のアクチュエータ,即ち前記ステップモータ108や各デューティ弁120,128,129に適合する駆動信号に変換する駆動回路311〜314とを備えて構成される。
【0034】
このうち、前記マイクロコンピュータ310は、例えばA/D変換機能等を有する入力インタフェース回路310aと、マイクロプロセサ等の演算処理装置310bと、ROM,RAM等の記憶装置310cと、例えばD/A変換機能を有する出力インタフェース回路310dとを備えている。このマイクロコンピュータ310では、例えば前記特開平7−317895号公報に記載される演算処理を行うことで、実際の変速比を司るステップモータ108の回転角,つまりポジションを求め、そのポジションが達成されるパルス制御信号SS/M を出力したり、ベルト24を挟持するのに最適なライン圧PL を求め、それを達成するために必要なライン圧制御用デューティ弁120のデューティ比D/TPLを算出し、そのライン圧制御デューティ比D/TPLに応じたライン圧制御信号SPLを出力したり、或いはトルクコンバータ12のロックアップ機構をロックアップ/アンロックアップ制御するのに最適な作動流体圧(以下、これを単にトルコン圧とも記す)PT/C を求め、それを達成するために必要なロックアップ制御用デューティ弁128のデューティ比D/TL/U を算出し、そのロックアップ制御デューティ比D/TL/U に応じたロックアップ制御信号SL/U を出力したり、例えばアクセルペダルが踏込まれていない状態での車両のクリープ走行に最適な作動流体圧(以下、これを単にクラッチ圧とも記す)PCLを求め、それを達成するために必要なクラッチ締結制御用デューティ弁129のデューティ比D/TCLを算出し、そのクラッチ圧制御デューティ比D/TCLに応じたクラッチ締結制御信号SCLを出力したりする。
【0035】
また、前記駆動回路311は前記パルス制御信号SS/M をステップモータ108に適した駆動信号DS/M に、駆動回路312は前記ライン圧制御信号SPLをライン圧制御用デューティ弁120に適した駆動信号DPLに、駆動回路313は前記ロックアップ制御信号SL/U をロックアップ制御用デューティ弁128に適した駆動信号DL/U に、駆動回路314は前記クラッチ締結制御信号SCLをクラッチ締結制御用デューティ弁129に適した駆動信号DCLに、夫々変換して出力する。
【0036】
なお、例えばデューティ比に応じた制御信号やパルス制御信号の形態は、既に所望するデューティ比やパルス数を満足しており、各駆動回路311〜314は、例えば単にそれを増幅するなどの電気的処理を施すだけで、信号の形態そのものを処理するものではない。
【0037】
また、前記エンジンコントロールユニット200内にも独自のマイクロコンピュータを有しており、前記変速機コントロールユニット300のマイクロコンピュータ310と相互通信を行って、エンジン並びに変速機を車両走行状態に応じて最適状態に制御するように構成されている。
【0038】
次に、本実施形態で制御全体を通常変速制御とプリチャージ制御とに二分する基幹ロジックの構成を、前記マイクロコンピュータ310で実行される図4のフローチャートに示す演算処理に従って説明する。この演算処理は、所定サンプリング時間(例えば10msec)ΔT毎にタイマ割込処理として実行される。なお、これ以後の演算処理では、何れも特に通信のためのステップを設けていないが、演算処理装置310bで必要なプログラムやマップ、或いは必要なデータは随時記憶装置310cから読込まれるし、逆に演算処理装置310bで算出されたデータは随時記憶装置310cに更新記憶されるものとする。また、プリチャージとは、前記駆動プーリ(以下、プライマリプーリとも記す)16のシリンダ室20に、前記ライン圧PL を事前に供給することを示す。また、これに合わせて前記従動プーリを以下、セカンダリプーリとも記す。
【0039】
この演算処理では、まずステップS01で、前記車速センサ302からの車速VSPが、例えば3km/h程度に予め設定された所定値VSP0 以上であるか否かを判定し、当該車速VSPが所定値VSP0 以上である場合にはステップS02に移行し、そうでない場合にはステップS03に移行する。前記ステップS02では、プリチャージフラグFCHG を“1”にセットしてからステップS304に移行する。一方、前記ステップS303では、プリチャージフラグFCHG が“0”のリセット状態であるか否かを判定し、当該プリチャージフラグFCHG がリセット状態である場合にはステップS305に移行し、そうでない場合には前記ステップS304に移行する。そして、前記ステップS304では、後述する図9の演算処理による通常変速制御ルーチンに入り、前記ステップS305では、後述する図5の演算処理によるプリチャージ制御ルーチンに入る。
【0040】
次に、前記図4の演算処理のステップS05で実行される図5の演算処理について説明する。この演算処理では、まずステップS10で前記エンジン回転数センサ301からのエンジン回転数NE ,インヒビタスイッチ304からのシフトレンジ信号SRANGE を読込む。次いでステップS11に移行して、前記エンジン回転数NE が、例えば500rpm 程度に予め設定された所定値NE0以上であるか否かを判定し、当該エンジン回転数NE が所定値NE0以上である場合にはステップS12に移行し、そうでない場合にはメインプログラムに復帰する。前記ステップS12では、予め設定された比較的高めのライン圧プリチャージ用所定値PLCHGを目標ライン圧PL0R に設定する。次いでステップS13に移行して、個別の演算処理により、例えば各種のタイマをクリアするなどの初期化処理を行う。次いでステップS14に移行して、個別の演算処理によって前記初期化処理が終了したか否かを判定し、当該初期化処理が終了していればステップS15に移行し、そうでない場合にはステップS16に移行する。
【0041】
前記ステップS15では、個別の演算処理によって前記シフトレンジ信号SRANGE が、車両の発進しない“P”レンジか,又は“N”レンジであるか否かを判定し、当該シフトレンジ信号SRANGE がこの二つのレンジである場合にはステップS17に移行し、そうでない場合にはステップS18に移行する。前記ステップS18では、発進可能カウンタCNTDRV をインクリメントしてからステップS19に移行して、この発進可能カウンタCNTDRV が予め設定された所定値CNTDRV0以上であるか否かを判定し、当該発進可能カウンタCNTDRV が所定値CNTDRV0以上である場合にはステップS20に移行し、そうでない場合には前記ステップS17に移行する。
【0042】
そして、前記ステップS17では、初期設定フラグFSET が“0”のリセット状態であるか否かを判定し、当該初期設定フラグFSET がリセット状態である場合にはステップS21に移行し、そうでない場合にはステップS22に移行する。前記ステップS21では、前記作動流体温度センサ306からの作動流体温度TMPを読込んでからステップS23に移行し、ここで個別の演算処理によって前記作動流体温度TMPから前記ステップモータ108のプリチャージ用駆動速度θ’ S/MCHGを設定してからステップS24に移行する。この場合には、例えば作動流体温度TMPが−10℃未満のときにはステップモータ駆動速度θ’ S/MCHGを50pps(pulse per sec.) 程度の低速とし、−10℃以上のときには300pps 程度の高速とする。前記ステップS24では、前記作動流体温度TMPからプリチャージ時間に相当するプリチャージカウント値CNTCHG0を設定してからステップS25に移行する。この場合には、例えば作動流体温度TMPが−30℃未満のときにはプリチャージカウント値CNTCHG0を7.0sec.程度の長時間とし、−30℃以上−10℃未満のときには3.1sec.程度の中時間とし、−10℃以上のときには2.2sec.程度の短時間とする。そして、前記ステップS25では前記プリチャージカウント値CNTCHG0をプリチャージカウンタCNTCHG にセットしてからステップS26に移行して、初期設定フラグFSET を“1”にセットしてから前記ステップS22に移行する。
【0043】
前記ステップS22では、前記プリチャージカウンタCNTCHG をデクリメントしてからステップS27に移行して、このプリチャージカウンタCNTCHG が“0”以上であるか否かを判定し、当該プリチャージカウンタCNTCHG が“0”以上である場合にはステップS28に移行し、そうでない場合には前記ステップS20に移行する。前記ステップS28では、例えば第55ステップ程度の比較的大きな正値のポジションに設定されたプリチャージ用第1ポジション所定値θS/MCHG1 から現在のポジションθS/M を減じた絶対値|θS/MCHG1 −θS/M |が、予め設定された微小値α以上であるか否かを判定し、当該絶対値|θS/MCHG1 −θS/M |が微小値α以上である場合にはステップS29に移行し、そうでない場合には前記ステップS16に移行する。また、前記ステップS29では、前記設定されたプリチャージ用ステップモータ駆動速度θ’ S/MCHGそのものに前記所定サンプリング時間ΔTを乗じてプリチャージ用ステップモータポジション補正量ΔθS/MCHGを算出してからステップS30に移行する。
【0044】
一方、前記ステップS20では、前記入力回転数センサ305からの入力回転数NPri ,スロットル開度センサ303からのスロットル開度TVOを読込んでからステップS32に移行して、制御マップ検索等の個別の演算処理に従って、スロットル開度TVO,エンジン回転数NE からエンジントルクTE を算出してからステップS33に移行する。具体的には、例えば図6に示すように、スロットル開度TVOをパラメータとし且つエンジン回転数NE に応じたエンジントルクTE の出力特性図から現在のエンジントルクTE を算出する。前記ステップS33では、制御マップ検索等の個別の演算処理に従って、トルコン入出力速度比NE /NPri からトルク比tを算出してからステップS34に移行する。具体的には、エンジン回転数NE を入力回転数NPri ,即ちタービン出力軸回転数で除してトルコン入出力速度比NE /NPri を算出し、例えば図7に示すように、このトルコン入出力速度比NE /NPri からトルクコンバータ(図ではトルコン)領域,つまりトルク増幅領域かロックアップ領域かを弁別すると共に、トルコン領域ならばトルコン入出力速度比NE /NPri に応じてリニアに減少するトルク比tを求める。
【0045】
前記ステップS34では、前記エンジントルクTE に前記トルク比tを乗じて入力トルクTPri を算出し、次いでステップS35に移行して、図8の制御マップに従って、前記入力トルクTPri を用いて基準ライン圧PL0を算出してからステップS36に移行する。この図8の制御マップは、入力トルクTPri をパラメータとし且つ現在の変速比CP に応じた基準ライン圧PL0の設定マップである。各プーリ16,26のシリンダ室20,32に供給されるライン圧PL はベルト24への側方荷重であるから、ベルト耐久性の面からも、或いはエネルギ損の面からもライン圧PL は小さい方が望ましい。しかしながら、ベルト24には伝達すべきトルクがかかるから、それによってベルトが滑らないようにプーリで挟持しなければならず、そのトルクとは変速比CP が大きいほど,及び/又は入力トルクTPri が大きいほど大きいから、その分だけベルト挟持力を高めるようにライン圧PL を大きくする必要がある。これを変速比CP 及び入力トルクTPri だけから設定するのが基準ライン圧PL0になる。そして、前記ステップS36では、前記基準ライン圧PL0を目標ライン圧PL0R に設定してからステップS37に移行する。
【0046】
前記ステップS37では、例えば第2ステップ程度の比較的小さな正値のポジションに設定されたプリチャージ用第2ポジション所定値θS/MCHG2 から現在のポジションθS/M を減じた絶対値|θS/MCHG2 −θS/M |が、予め設定された微小値β以上であるか否かを判定し、当該絶対値|θS/MCHG2 −θS/M |が微小値β以上である場合にはステップS38に移行し、そうでない場合には前記ステップS16に移行する。また、前記ステップS38では、前記設定されたプリチャージ用ステップモータ駆動速度の負値(−θ’ S/MCHG)に前記所定サンプリング時間ΔTを乗じてプリチャージ用ステップモータポジション補正量ΔθS/MCHGを算出してから前記ステップS30に移行する。そして、前記ステップS30では、前記プリチャージ用ステップモータポジション補正量ΔθS/MCHGだけステップモータ108を回転させるための総パルス数並びに単位時間値にパルス数を設定し、その両者を満足するパルス制御信号SS/M を創成出力してから前記ステップS16に移行する。
【0047】
また、前記ステップS16では、前記図2の制御マップから前記目標ライン圧PL0R を達成するためのライン圧制御デューティ比D/TPLを算出設定し、次いでステップS39に移行して、個別の演算処理に従って、前記ライン圧制御デューティ比D/TPLに応じたライン圧制御信号SPLを創成出力してからメインプログラムに復帰する。なお、ライン圧制御デューティ比D/TPLの制御マップは、既存のデューティ比制御を応用すればよいからその詳細な説明は省略する。また、ライン圧制御デューティ比D/TPLに応じたライン圧制御信号SPLを創成については、既存のPWM(Pulse Width Modulation)制御を応用すればよいから、その詳細な説明は省略する。
【0048】
次に、前記図4の演算処理のステップS04で実行される本実施形態の変速制御全体の概略構成を、図9に示すゼネラルフローの演算処理に従って説明する。この演算処理は、基本的には、前記Dレンジが選択され且つエンジンコントロールユニット側からの要求がない状態で、前記特開平7−317895号公報に記載される変速制御を簡潔に纏めたものであり、その詳細は当該公報を参照されるとして、ここではゼネラルフローの概要を説明するに止める。
【0049】
この演算処理では、まずステップS1で、前記車速センサ302からの車速VSP,エンジン回転数センサ301からのエンジン回転数NE ,入力回転数センサ305からの入力回転数NPri ,スロットル開度センサ303からのスロットル開度TVO,及びインヒビタスイッチ304からのシフトレンジ信号SRANGE を読込む。
【0050】
次にステップS2に移行して、個別の演算処理に従って、前記車速VSP,入力回転数NPri から現在の変速比CP を算出する。具体的には、最終出力軸回転数に比例する車速VSPを、無段変速機構29から最終出力軸までの,所謂最終減速比nで除せば無段変速機構29の出力回転数NSec が得られるから、これに対する入力回転数NPri の比を算出すれば現在の変速比CP が得られる。次にステップS3に移行して、例えば前記図5の演算処理のステップS32と同様に制御マップ検索等の個別の演算処理に従って、スロットル開度TVO,エンジン回転数NE からエンジントルクTE を算出する。次にステップS4に移行して、例えば前記図5の演算処理のステップS32乃至ステップS36及びステップS16及びステップS39と同様の個別の演算処理に従って通常のライン圧PL の制御を行う。
【0051】
次にステップS5に移行して、個別の演算処理に従って、ロックアップ制御を行う。具体的には、例えば図10のような制御マップから車速VSP及びスロットル開度TVOに応じたロックアップ車速VON及びアンロックアップ車速VOFF を設定し、原則的に車速VSPがロックアップ車速VON以上ならロックアップ,アンロックアップ車速VOFF 以下ならアンロックアップとなるように前記制御信号SL/U を創成出力するが、特にロックアップ側に移行するときに、そのときのエンジン回転数NE と入力回転数NPri ,即ちタービン出力軸回転数との差分値が大きいときには、その差分値の大きさに応じた比較的大きなゲインでデューティ比D/TL/U を増加し、両者の差分値が小さくなる,つまりロックアップ気味になると比較的小さな所定値ずつデューティ比D/TL/U を増加して、完全なロックアップ移行時の衝撃を緩和する。
【0052】
次にステップS6に移行して、制御マップ検索等の個別の演算処理に従って、到達変速比CD を算出する。この到達変速比CD は、車速VSP及びスロットル開度TVOとから現在のエンジン回転数NE を達成する、最も理想的な無段変速機構29の変速比であり、具体的には図11に示すように、3者が完全に一致する変速比Cが設定できれば、そのときの車速VSPとエンジン回転数NE とを満足しながら、運転者によるアクセルペダルの踏込み量,即ちスロットル開度TVOに応じた加速を得られる。ここで、例えば前記図6が到達変速比CD の設定に用いる制御マップであると仮定すれば、原点を通る傾き一定の直線が或る一定の変速比となり、例えば変速パターンの全領域において最も傾きの大きい直線は、車両全体の減速比が最も大きい,即ち最大変速比CLoであり、逆に最も傾きの小さい直線は、車両全体の減速比が最も小さい,即ちDレンジ最小変速比CDHi であると考えてよい。
【0053】
次にステップS7に移行して、個別の演算処理に従って、目標変速比CR を算出する。具体的には、原則的に前記到達変速比CD が現在の変速比CP より大きければダウンシフト方向,小さければアップシフト方向に、例えば現在の変速比CP を最も速い変速速度dCR /dt又は最も小さい時定数τで変速した所定サンプリング時間ΔT後の変速比を目標変速比CR として設定する。但し、スロットル開度TVOが全開状態に近い状態から閉方向変化した,所謂アクセルペダルの足戻し状態では変速速度dCR /dtを少し遅くし又は時定数τを少し大きくし、更にこの条件に加えてスロットル開度の閉方向への変化速度が速く且つスロットル開度の閉方向への変化量が大きい,所謂アクセルペダルの足離し状態では変速速度dCR /dtを更に遅くし又は時定数τを更に大きくして、夫々、目標変速比CR を設定する。
【0054】
次にステップS8に移行して、個別の演算処理に従って、クラッチ締結制御を行う。具体的には、原則的に車速VSPがクリープ制御閾値以上なら前進用クラッチ40を締結、車速VSPがクリープ制御閾値未満で且つスロットル開度TVOがクリープ制御用の全閉閾値以上なら締結解除するように制御信号SCLを創成出力するが、車速VSPがクリープ制御閾値未満で且つスロットル開度TVOが全閉閾値未満の場合には、そのときのエンジン回転数NE と入力回転数NPri ,即ちタービン出力軸回転数との差分値に応じて反比例するゲインでデューティ比D/TCLを設定することにより、坂道などの影響で車両がクリープ走行し易いときにはクラッチの締結力を弱め、クリープ走行し難いときにはクラッチの締結力を強めるようにしている。
【0055】
次にステップS9に移行して、個別の演算処理に従って、変速比制御を行ってからメインプログラムに復帰する。具体的には前記設定された目標変速比CR に対して、そのときの変速速度dCR /dt又は時定数τで変速を行うための総パルス数並びに単位時間値にパルス数を設定し、その両者を満足するパルス制御信号SS/M を創成出力してからメインプログラムに復帰する。
【0056】
次に、本実施形態の作用について説明するが、通常変速制御の概要については、前記特開平7−317895号公報に記載されるものと同様であるから、ここではそれを簡略化し、特に図5の演算処理による作用について図12のタイミングチャートを参照しながら詳述する。このタイミングチャートでは、エンジンを停止した状態で長期間駐車し、前述のように実際にはプライマリプーリ16のシリンダ室20内に作動流体が漏れて当該シリンダ室20内に空洞(気泡)が発生している状況をシミュレートしたものである。なお、エンジンは,所謂暖気運転を必要としない程度に暖かな状態にあるものとする。
【0057】
この状態で、シフトレンジはPレンジのまま、アクセルペダルを踏込むことなく、時刻t01で、イグニッションスイッチをONさせてエンジンを始動させた。その直後からエンジン回転数NE はスタータモータの影響で大きく増加するが、やがて所定のアイドル回転数で安定する。また、この時刻t01で図4の演算処理が実行されると、車速VSPは未だ発進所定値VSP0 未満で且つ前記プリチャージフラグFCHG はリセットされたままであるからステップS01からステップS03を経て図5の演算所為が実行され、ここでエンジン回転数NE が前記所定値NE0以上となると、図5の演算処理のステップS10からステップS11を経てステップS12に移行して、前記予め設定された比較的高めのライン圧プリチャージ用所定値PLCHGを目標ライン圧PL0R に設定し、次いでステップS13で初期化処理を行うが、続くステップS14では未だ初期化処理が終了していないので、ステップS16に移行して、前記設定された目標ライン圧PL0R に応じたライン圧制御デューティ比D/TPLを設定し、次いでステップS39に移行して、そのライン圧制御デューティ比D/TPLに応じたライン圧制御信号SPLを創成出力する。これにより、ライン圧PL は図示のように、エンジン始動の直後から前記ライン圧プリチャージ用所定値PLCHGに向けて増圧され続ける。
【0058】
そして、やがて時刻t02で前記初期化処理が終了すると、図5の演算処理では、ステップS14からステップS15に移行し、この時点では未だシフトレンジがPレンジのままであるからステップS17に移行する。このとき、未だ初期設定フラグFSET がセットされていないからステップS21に移行して作動流体温度TMPを読込み、次いでステップS23でプリチャージ用ステップモータ駆動速度θ’ S/MCHGを設定し、続くステップS24でプリチャージカウント値CNTCHG0を設定する。これらは何れも作動流体の温度依存性を考慮したものである。前述のように作動流体は、一般に低温ほど粘性が高く、高温ほど粘性が低い。こうした粘性は作動流体の流動性であり応答性であるから、例えば同じバルブ開度でも、その前後で移動する流体の流量や速度,或いは移動する距離が異なる。そこで、後述するように前記ステップモータを強制的に作動させて前記プライマリプーリ16のシリンダ室20に作動流体を流し込む際の、そのステップモータの作動速度,つまり前記プリチャージ用ステップモータ駆動速度θ’ S/MCHGを低温ほど低速側に設定したり、或いはその流し込み時間,つまり前記プリチャージカウント値CNTCHG0を低温ほど長く設定したりする。これにより、作動流体の温度に応じてステップモータを適切な速度で駆動したり、或いはプライマリプーリのシリンダ室内に作動流体を適切な時間だけ流し込む,つまりプリチャージしたりすることが可能となる。そして、続くステップS25で前記プリチャージカウント値CNTCHG0をプリチャージカウンタCNTCHG に設定し、次いでステップS26で初期設定フラグFSET をセットするから、これ以後、このフローを通過することはない。
【0059】
次のステップS22では、前記プリチャージカウンタCNTCHG をデクリメントするが、ここでそれが負値になるはずはないのでステップS27からステップS28に移行する。そして、前記予め設定された比較的大きな正値のポジションに設定されたプリチャージ用第1ポジション所定値θS/MCHG1 から現在のポジションθS/M を減じた絶対値|θS/MCHG1 −θS/M |は未だ微小値α以上であるからステップS29に移行し、ここで前記プリチャージ用ステップモータ駆動速度θ’ S/MCHGに前記所定サンプリング時間ΔTを乗じてプリチャージ用ポジション補正量ΔθS/MCHGを算出し、次いでステップS30でそれに応じたパルス制御信号SS/M を創成出力し、これ以後、例えばPレンジ又はNレンジ以外のシフトレンジが選択されたり、或いは前記プリチャージカウンタCNTCHG が負値となったりしない限り、ステップS17からステップS22を経てステップS27乃至ステップS30に移行するフローが繰返される。従って、この後、ステップモータ108のポジションθS/M は変速比が小さくなる方向に前記駆動速度θ’ S/MCHGで大きくなり、それに伴って前記変速制御弁106がライン圧PL の供給方向に作動するから、前記プライマリプーリシリンダ室20内の作動流体圧(以下、プライマリ圧とも記す)PPri は、当該ライン圧PL に向けてそれと同等かそれよりやや低い値まで増圧し続ける。
【0060】
やがて時刻t03でライン圧PL は前記プリチャージ用所定値PLCHGに到達し、これに合わせて前記ステップモータ108のポジションθS/M が前記プリチャージ用第1ポジション所定値θS/MCHG1 に接近し、これにより前記図5の演算処理のステップS28では、当該所定値θS/MCHG1 からポジションθS/M を減じた絶対値|θS/MCHG1 −θS/M |が微小値α未満となって、そのままステップS16に移行するフローとなり、その結果、ステップモータ108のポジションθS/M は当該プリチャージ用第1ポジション所定値θS/MCHG1 に保持される。
【0061】
従って、この間及びその後も、車両は発進せず、実際には変速が行われないから前記変速制御弁106はライン圧PL の供給方向に強制的に作動されたままとなり、その後もプライマリ圧PPri は前記ライン圧PL と同等又はそれよりやや低い値に維持され、その結果、プライマリプーリシリンダ室20内には作動流体が流れ込む。しかしながら、その際、前述したプライマリプーリシリンダ室20の空洞内の気体が完全に排除されないこともあり得る。つまり、当該空洞を構成する気泡は、前記プライマリ圧PPri と圧力的に釣り合う状態,つまり温度一定下で容積が小さくなる,つまり潰れているだけという場合もある。しかしながら、その容積減少分だけ作動流体はプライマリプーリシリンダ室20内に確実に流れ込むし、また現在潰れている気泡の再膨張も、後述するプリチャージ用第2ポジション所定値θS/MCHG2 によって確実に抑制防止される。なお、このプリチャージ用第1ポジション所定値θS/MCHG1 によるプライマリプーリシリンダ室20のプリチャージを以下、第1プリチャージ段階とも記す。
【0062】
その後も、前記プリチャージカウンタCNTCHG は前記所定サンプリング時間ΔT毎にデクリメントされるから、やがて時刻t04で実行される図5の演算処理のステップS22で当該プリチャージカウンタCNTCHG が負値になると、ステップS27からステップS20以後に移行して入力回転数NPri ,スロットル開度TVOを読込み、これ以後は、通常のライン圧制御が行われる。即ち、続くステップS32でアイドリング状態のエンジントルクTE を算出したのち、前記通常のライン圧制御と同様に、ステップS33でトルク比tを算出し、続くステップS34で入力トルクTPri を算出し、次のステップS35でそれに応じた基準ライン圧PL0を算出し、次のステップS36でこの基準ライン圧PL0が目標ライン圧PL0R に設定され直すから、何れにしてもステップS16及びステップS39で出力されるライン圧制御信号SPLは、所謂アイドリング状態で通常に達成されるアイドリング所定値PL(idle) をライン圧PL として創成することに他ならない。
【0063】
一方、前記ステップS27からステップS20に移行すると前記ステップS36からステップS37に移行する。この時点では、前記ステップモータ108の現在のポジションθS/M は前記比較的大きな正値のプリチャージ用第1ポジション所定値θS/MCHG1 であるから、前記プリチャージ用第2ポジション所定値θS/MCHG2 から現在のポジションθS/M を減じた絶対値|θS/MCHG2 −θS/M |が前記微小値β未満であるはずはなく、従ってステップS38に移行して前記プリチャージ用ステップモータ駆動速度の負値(−θ’ S/MCHG)に前記所定サンプリング時間ΔTを乗じてプリチャージ用ポジション補正量ΔθS/MCHGを算出し、次いでステップS30でそれに応じたパルス制御信号SS/M を創成出力する。従って、この後、ステップモータ108のポジションθS/M は変速比が大きくなる方向に前記駆動速度θ’ S/MCHGで小さくなり、合わせて前述のようにライン圧PL がアイドリング所定値PL(idle) まで小さくなることから、プライマリ圧PPri も減少する。
【0064】
次に、時刻t05で、前記ライン圧PL は前記アイドリング所定値PL(idle) に到達し、これに合わせて前記ステップモータ108のポジションθS/M が前記プリチャージ用第2ポジション所定値θS/MCHG2 に接近し、これにより前記図5の演算処理のステップS37では、当該所定値θS/MCHG2 からポジションθS/M を減じた絶対値|θS/MCHG2 −θS/M |が微小値β未満となって、そのままステップS16に移行するフローとなり、その結果、ステップモータ108のポジションθS/M は当該プリチャージ用第2ポジション所定値θS/MCHG2 に保持される。従って、この間及びその後も、車両は発進せず、実際には変速が行われないから前記変速制御弁106はライン圧PL の供給方向に強制的に作動されたままとなっているが、実際の開度は小さいからオリフィスとして作用し、しかもライン圧PL そのものも前記アイドリング所定値PL(idle) まで低下しているので、プライマリ圧PPri は当該ライン圧PL より低い値に維持される。これにより、前述のように潰れているプライマリプーリシリンダ室20内の気泡が再膨張するのを抑制防止することができる。ちなみに、このときのプライマリ圧PPri は、例えばそのまま前進用クラッチ40や後進用ブレーキ50を締結しても、ベルト24の耐久性に影響を及ぼすようなものではない。なお、このプリチャージ用第2ポジション所定値θS/MCHG2 によるプライマリプーリシリンダ室20のプリチャージを、第2プリチャージ段階とも記す。
【0065】
その後、時刻t06で、セレクトレバーによってDレンジがセレクトされる。このとき、図5の演算処理では、ステップS15からステップS18に移行し、ここでインクリメントされる発進可能カウンタCNTDRV が所定値以上になると、ステップS19から前記ステップS20以後に無条件に移行する。つまり、Pレンジ又はNレンジ以外という,発進可能なレンジが、意図的に,即ち前記発進可能カウンタCNTDRV がカウントアップする程度にセレクトされた場合には、運転者は発進する意思があるとして、前記プリチャージ用第2ポジション所定値θS/MCHG2 によるプライマリプーリシリンダ室20の第2プリチャージ段階に移行する。この場合の作用は、前記時刻t05からのものと何ら相違ないが、この演算処理によれば、例え前記プリチャージカウンタCNTCHG がカウントアップしていなくとも、発進可能なレンジが意図的にセレクトされるだけで、第2プリチャージ段階に移行してスムーズな発進に備える。
【0066】
そして、時刻t07で、比較的大きくアクセルペダルを踏込んで発進すると、スロットル開度TVOは大きく変化し、これによりエンジン回転数NE は速やかに増速する。また、この直後から車速VSPは前記発進所定値VSP0 以上となるために、図4の演算処理ではステップS01からステップS02に移行してプリチャージフラグFCHG をセットした後、ステップS04での図9の演算処理による通常の変速制御ルーチンに移行する。なお、この後、車速VSPが前記発進所定値VSP0 未満になっても図4の演算処理ではステップS03からステップS04に移行してしまうため、前述したプリチャージ制御ルーチンは実行されない。このように通常変速制御が実行され始めると、前記公報に記載されるように、前記増速するエンジン回転数NE 及び大きく開かれたスロットル開度TVOに応じて到達変速比CD は暫しの間、最大変速比CLOに設定され、現在の変速比CP そのものが最大変速比CLOであることから、目標変速比CR も最大変速比CLOに維持されて現在の変速比CP もそれに一致され続ける。また、ライン圧PL も、この最大変速比CLO並びに入力トルクTPri に応じた高い値に設定制御される。なお、この間のステップモータポジションθS/M は、前記微小値βの設定によって前記プリチャージ用第2ポジション所定値θS/MCHG2 に維持される。
【0067】
やがて、増速し続ける車速VSPに対して、エンジン回転数NE がスロットル開度TVOに応じた値に安定し始めると、到達変速比CD や目標変速比CR が次第に小さくなるため、ステップモータ108が回転駆動されてポジションθS/M が正方向に大きくなり、それの伴って実際の変速比CP も小さくなる。すると、前記変速制御弁106が、前記ライン圧PL をプライマリプーリシリンダ室20に供給する方向に作動し、しかもライン圧PL は、既に大幅に増圧されているから、プライマリ圧PPri は急速に且つ大幅に増圧される。このとき、若し未だプライマリプーリシリンダ室20内に空洞が存在したとしたら、そのとき初めて作動流体がプライマリプーリシリンダ室20内に急速に流れ込むことになり、その結果、ライン圧PL が一時的に低下し、それに起因してベルト24に滑りが生じたりする恐れがあるが、本実施形態では、前記第1プリチャージ段階で事前に作動流体をプライマリプーリシリンダ室20内にプリチャージしているために、そうしたライン圧PL の低下は見られない。また、例えば前記第1プリチャージ段階では空洞内の気体を完全に排出できず、当該空洞に相当する気泡が、単に圧力バランスする状態まで潰れただけであったとしても、前記第2プリチャージ段階で当該気泡を潰れた状態に維持することができるので、その再膨張を抑制防止することができ、結果的にプライマリプーリシリンダ室20への作動流体の流れ込みを確実に抑制防止してライン圧の低下を抑制防止できる。
【0068】
このようにして、エンジン回転数NE はさほど増加せず、車速VSPは確実に増速されながら、プライマリ圧PPri がライン圧PL に対して所定の割合まで増圧されると、今度は変速比CP の減少に応じて(入力トルクTPri はほぼ一定と考える)目標ライン圧PL0R が減少され、これに呼応して現在のライン圧PL も次第に減圧されてゆくのでプライマリ圧PPri も次第に減圧されていった。
【0069】
なお、前記実施形態では、例えば車速VSPが前記発進所定値VSP0 以上になると、プリチャージ中であっても、図4のステップS01からステップS02を経てステップS04の通常変速制御ルーチンに移行してしまう。即ち、意図的な発進は前記Pレンジ又はNレンジ以外のシフトレンジが選択されたときであり、その場合には当然ながらプリチャージを中止して、通常の発進制御を確保しなければならない。しかしながら、極めて特殊な使用例ではあるが、エンジン始動後に、坂道等の影響で、例えばNレンジにあるのに車両が発進してしまい、その後にDレンジ等の走行レンジがセレクトされるような場合に、それまでプライマリ圧のプリチャージが継続されてしまうと、駆動輪によってセカンダリプーリ26は強制的に回転され、それに伴ってベルト24やプライマリプーリ16も回転されてしまうので、前述のように例えば第1プリチャージ段階でステップモータ108のポジションθS/M を強制的に回転駆動させたままだと、そのプリチャージ用第1ポジション所定値θS/MCHG1 に応じた変速比に向けて実際に変速が行われてしまう。そこで、どのような状況下にあっても、車両が発進して、実際の変速が可能な状態では、少なくとも前記第1プリチャージ段階によるプリチャージを中止して、発進変速制御を確保しなければならない。そうした要求から、車速VSPが発進所定値VSP0 以上になると通常変速制御に移行する。
【0070】
次に、従来のエンジン始動〜発進時のシミュレーションを、同じ時間軸上のタイミングチャートとして図13に示す。この従来の無段変速機の制御装置では、単に前記図9の通常変速制御ルーチン用の演算処理が行われるものとする。従って、エンジン始動後にライン圧PL は前記アイドリング所定値PL(idle) までしか増圧されないから、前記時刻t01からの到達時間が異なり、時刻t03でライン圧PL がアイドリング所定値PL(idle) に一致した。
【0071】
この従来の無段変速機の制御装置では、勿論、プライマリプーリシリンダ室20のプリチャージは行われないから、若し長期間の駐車によて当該シリンダ室20内に空洞が生じていると、車両が発進して実際の変速が実行される前記時刻t08まで、プライマリ圧PPri は“0”(MPa) であり、この時刻t08でライン圧PL (の一部)がプライマリ圧PPri として供給されると、前記空洞の気体を排出するように、或いは当該空洞を構成する気泡を圧縮して潰すように、急速に且つ大量の作動流体が当該プライマリプーリシリンダ室20内に流れ込み、結果的にライン圧PL が低下する。これが図13に斜線部で示されるライン圧PL の降下部分である。そして、このようにライン圧PL が低下すると、一時的なベルト滑りや変速制御の応答遅れ等の弊害が発生する恐れがある。
【0072】
以上より、前記ライン圧デューティ弁120が本発明の無段変速機構用調圧弁を構成し、以下同様に、前記図5の演算処理のステップS11が内燃機関始動検出手段を構成し、図4の演算処理のステップS01及びステップS05及び図5の演算処理全体が流体予圧供給手段を構成する。
【0073】
なお、前記実施形態では、基本的に、前記高いライン圧PL でプライマリ圧PPri をプリチャージする第1プリチャージ段階に続いて、ライン圧PL を少しずつプライマリ圧PPri に供給し続ける第2プリチャージ段階を設けた場合についてのみ詳述したが、前記第1プリチャージ段階だけでもライン圧PL の低減防止効果は十分にあり、必ずしも第2プリチャージ段階を必要とするものではない。ただ、前述のように空洞を構成する気泡が第1プリチャージ段階で単純に潰れただけであり、当該第1プリチャージ段階が終了した後、ライン圧PL をプライマリ圧PPri に供給しない時間が長くなったときにのみ、当該気泡が再膨張するので、そうした懸念を回避するためにも第2プリチャージ段階を設けるのが望ましい。
【0074】
また、前記実施形態では、前記第1プリチャージ段階の所定時間を作動流体の温度に応じて設定したが、これは、例えば前記−10℃以下のような低温時のものに統一しておくことも可能である。しかしながら、前記第1プリチャージ段階のように、実際には変速しないのに、その変速用アクチュエータであるステップモータを回転駆動させて、開閉弁である変速制御弁を作動させるのは、本来的な使用方法ではないので、必要にして十分なプリチャージが行われたら、速やかに発進変速可能な状態に戻すのが好ましい。
【0075】
また、前記実施形態では、車両が発進可能な条件として、セレクトレバーがPレンジ又はNレンジ以外のシフトレンジがセレクトしたことを採り上げたが、その他の条件を付加したり、それに変更したりしてもよい。
【0076】
また、前記実施形態では、各コントロールユニットをマイクロコンピュータで構築したものについてのみ詳述したが、これに限定されるものではなく、演算回路等の電子回路を組み合わせて構成してもよいことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】無段変速機及びその制御装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】目標ライン圧からライン圧制御用デューティ弁へのデューティ比を設定する制御マップである。
【図3】図1の無段変速機及びその制御装置による変速原理の説明図である。
【図4】図1の変速機コントロールユニットで実行される演算処理の一例を示すフローチャートである。
【図5】図4の演算処理で実行されるマイナプログラムの第1実施形態を示すフローチャートである。
【図6】スロットル開度をパラメータとしてエンジン回転数からエンジントルクを設定する制御マップである。
【図7】トルコン入出力速度比からトルク比を設定する制御マップである。
【図8】入力トルクをパラメータとして変速比から基準ライン圧を設定する制御マップである。
【図9】図4の演算処理で実行されるマイナプログラムの一例を示すフローチャートである。
【図10】車速とスロットル開度とからロックアップ車速及びアンロックアップ車速を設定する制御マップである。
【図11】スロットル開度をパラメータとして車速から変速比を設定する制御マップである。
【図12】本発明の無段変速機の制御装置による作用を示すタイミングチャートである。
【図13】従来の無段変速機の制御装置による作用を示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
10はエンジン
12はトルクコンバータ
16は駆動プーリ
19はスロットルバルブ
20はシリンダ室
24はベルト
26は従動プーリ
29は無段変速機構
32はシリンダ室
108はステップモータ
120はライン圧制御用デューティ弁
128はロックアップ制御用デューティ弁
129はクラッチ締結制御用圧切換弁
200はエンジンコントロールユニット
300は変速機コントロールユニット
301はエンジン回転数センサ
302は車速センサ
303はスロットル開度センサ
304はインヒビタスイッチ
305は入力回転数センサ
306は作動流体温度センサ
310はマイクロコンピュータ
Claims (4)
- 溝幅が可変の一対のプーリで、巻回されるベルトを挟持する無段変速機構を有し、ポンプで昇圧された作動流体を前記無段変速機構への入力負荷に応じた所定の流体圧に無段変速機構用調圧弁で調圧して当該無段変速機構に供給するようにし、少なくとも一方のプーリには、変速比が変化するときに作動される開閉弁を介して前記所定の作動流体圧を供給したり遮断したりするようにした無段変速機の制御装置にあって、内燃機関の始動を検出する内燃機関始動検出手段と、この内燃機関始動検出手段が内燃機構の始動を検出した後に、所定時間だけ前記開閉弁を作動して、前記ポンプで昇圧された作動流体の流体圧を、前記少なくとも一方のプーリに供給する流体予圧供給手段とを備え、前記流体予圧供給手段は、前記少なくとも一方のプーリのシリンダ室の空洞内のつぶれている気泡の再膨張を抑制防止するように、前記所定時間経過後も前記開閉弁を作動して、前記少なくとも一方のプーリに、前記ポンプで昇圧された作動流体の流体圧を少しずつ供給し続けることを特徴とする無段変速機の制御装置。
- 前記所定時間は、少なくとも前記内燃機関の始動から、車両が発進可能な条件が満足されるまでの時間であることを特徴とする請求項1に記載の無段変速機の制御装置。
- 前記所定時間は、少なくとも前記内燃機関の始動から、車両が実際に発進するまでの時間であることを特徴とする請求項1に記載の無段変速機の制御装置。
- 前記所定時間は、前記作動流体の温度に応じて設定されることを特徴とする請求項1に記載の無段変速機の制御装置。
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