JPH1113844A - 無段変速機の制御装置 - Google Patents

無段変速機の制御装置

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JPH1113844A
JPH1113844A JP17489897A JP17489897A JPH1113844A JP H1113844 A JPH1113844 A JP H1113844A JP 17489897 A JP17489897 A JP 17489897A JP 17489897 A JP17489897 A JP 17489897A JP H1113844 A JPH1113844 A JP H1113844A
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明人 鈴木
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Abstract

(57)【要約】 【課題】変速制御弁等の開閉弁により駐車中等では閉じ
られているプライマリプーリのシリンダ室から作動流体
が抜けた後、実際の変速が開始されたときに当該シリン
ダ室内に多量の作動流体が流れ込んでライン圧が低下す
るのを防止する。 【解決手段】エンジンが再始動されたら、作動流体の温
度(粘性)に応じた所定時間だけステップモータを回転
駆動することにより変速制御弁を強制的に開いてプライ
マリプーリのシリンダ室内に作動流体を供給する。ま
た、所定時間経過後も、ライン圧を少しずつ供給して、
潰れた気泡が再膨張するのを防止する。車両が発進可能
な状態になったり、実際に発進したりしたときには、前
記プライマリプーリのシリンダ室への作動流体供給を止
める。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、車両に搭載される
無段変速機の制御装置に関するものであり、特に溝幅が
可変の一対のプーリで巻回されるベルトを狭持し、当該
プーリの溝幅を調整することで変速比を可変制御する無
段変速機構を備えたものに好適なものである。
【0002】
【従来の技術】このような無段変速機の制御装置として
は例えば本出願人が先に提案した特開平8−20046
1号公報に記載されるものがある。この従来技術に見ら
れるように、プーリの溝幅を調整して変速比を可変制御
するものでは、ベルトの滑りを抑制防止するためにプー
リを構成する二つの円錐体に作動流体圧を供給し、その
推力,つまり押圧力により二つの円錐体でベルトを挟持
する。この無段変速機構を構成するプーリへの供給作動
流体圧を、この従来技術ではライン圧と称しているが、
前述のような目的から、一般にエンジンからの入力負荷
に応じてこのライン圧の設定圧を大きくしてベルトが滑
らないようにしている。ちなみに、このライン圧は、ポ
ンプで昇圧された作動流体を、例えばデューティ弁やモ
ディファイヤ弁等を含んで構成される無段変速機構用調
圧弁で調圧するようにしており、その場合には、前記デ
ューティ弁へのデューティ比制御信号によってライン圧
を制御できるようにしている。
【0003】また、この従来技術では、セカンダリプー
リと称される出力側のプーリには前記ライン圧を直接供
給するが、プライマリプーリと称される入力側のプーリ
には変速制御弁と称される開閉弁を介してこのライン圧
を供給するようにしている。これは、当該プライマリプ
ーリ側が変速比変更制御を司るものであり、具体的には
ステップモータ等のアクチュエータでプライマリプーリ
の円錐体の何れか一方の可動側円錐体を移動させてベル
トの接触半径を変更し、セカンダリプーリ側はそれに伴
って自動的にベルトの接触半径が変化するように構成さ
れている。従って、前記プライマリプーリの可動側円錐
体にもライン圧を供給される必要はあるが、むしろこの
プライマリプーリの可動側円錐体に推力を与えているシ
リンダ室内の容積変動に応じて開閉弁が自動的に開閉さ
れるように構成し、これにより変速,つまり可動側円錐
体の移動を補助しながら必要なライン圧が供給されるよ
うに構成されているのである。なお、前述のような変速
の原理から、この種のベルト式無段変速機では、二つの
プーリが双方とも回転していないと、つまり車両が実際
に発進・走行していないと変速は行われない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、前記従来の
プライマリプーリ側へのライン圧(作動流体圧)を供給
したり遮断したりするための開閉弁は、前述のように変
速しないときは作動しない,つまり閉じたままである。
従って、例えば変速比が最大の状態のまま、内燃機関,
つまりエンジンを停止して駐車している間は、当然なが
ら変速もしないから、開閉弁も閉じたままである。とこ
ろが、このような駐車中は作動流体圧も昇圧されないか
ら、現実的には作動流体路系の各種の摺動部や可動部な
どから作動流体が漏れてしまい、長期間の駐車後には、
前記開閉弁で閉じられたままのプライマリプーリのシリ
ンダ室内に空洞が発生することもある。
【0005】このように長期間の駐車中にプーリのシリ
ンダ室内に空洞が発生しても、次のエンジンの再始動時
には前記開閉弁は閉じたままであるから、次に実際に変
速が行われるまで,つまり車両が実際に発進するまで当
該シリンダ室内の空洞は残存する。次いで、この状態か
ら車両が発進して変速が行われ、前記開閉弁が作動し
て、プーリのシリンダ室内と前記作動流体圧供給側とが
連通されると、作動流体が急速にプーリのシリンダ室内
に流れ込み、供給側作動流体圧が低下する恐れがある。
また、このシリンダ室内の空洞に相当する気泡が前記作
動流体の流れ込みによって外部に排出されてしまうので
あれば前述のような問題は比較的短時間で解消される
が、気体の伸縮性によって単にこの気泡が潰れただけの
ような場合には、例えば供給される流体圧が低下すると
再び気泡が膨張するから、次いで再び作動流体の急速な
流れ込みや供給側作動流体圧の低下を招く恐れもある。
そして、このように供給側作動流体圧が低下すると、前
述のようにプーリによるベルト挟持力が低下してベルト
が滑る恐れもある。
【0006】本発明はこれらの諸問題に鑑みて開発され
たものであり、長期間の駐車後の再発進時にも作動流体
圧の低下を抑制防止できる無段変速機の制御装置を提供
することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、本発明のうち請求項1に記載される無段変速機の制
御装置は、溝幅が可変の一対のプーリで、巻回されるベ
ルトを狭持する無段変速機構を有し、ポンプで昇圧され
た作動流体を前記無段変速機構への入力負荷に応じた所
定の流体圧に無段変速機構用調圧弁で調圧して当該無段
変速機構に供給するようにし、少なくとも一方のプーリ
には、変速比が変化するときに作動される開閉弁を介し
て前記所定の作動流体圧を供給したり遮断したりするよ
うにした無段変速機の制御装置にあって、内燃機関の始
動を検出する内燃機関始動検出手段と、この内燃機関始
動検出手段が内燃機関の始動を検出した後に、所定時間
だけ前記開閉弁を作動して、前記ポンプで昇圧された作
動流体の流体圧を、前記少なくとも一方のプーリに供給
する流体予圧供給手段とを備えたことを特徴とするもの
である。
【0008】ここで用いられる無段変速機構に供給する
流体圧とは、例えば前記ライン圧と称されるような、対
向する二つの円錐体でベルトを挟持するためにプーリの
シリンダ室に供給される作動流体圧を言う。また、内燃
機関は一般にエンジンと言い表れる。また、変速比が変
化するときに作動される開閉弁を介して所定の作動流体
圧が供給されたり遮断されたりするプーリとは、例えば
前記プライマリプーリのように変速に際して作動する変
速制御弁等により当該プーリのシリンダ室の容積変動に
応じて作動流体が供給されたり遮断されたりするような
プーリ全般を示す。
【0009】また、本発明のうち請求項2に係る無段変
速機の制御装置は、前記流体予圧供給手段は、前記所定
時間経過後も前記開閉弁を作動して、前記少なくとも一
方のプーリに、前記ポンプで昇圧された作動流体の流体
圧を少しずつ供給し続けることを特徴とするものであ
る。
【0010】また、本発明のうち請求項3に係る無段変
速機の制御装置は、前記所要時間は、少なくとも前記内
燃機関の始動から、車両が発進可能な条件が満足される
までの時間であることを特徴とするものである。
【0011】また、本発明のうち請求項4に係る無段変
速機の制御装置は、前記所要時間は、少なくとも前記内
燃機関の始動から、車両が実際に発進するまでの時間で
あることを特徴とするものである。
【0012】また、本発明のうち請求項5に係る無段変
速機の制御装置は、前記所要時間は、前記作動流体の温
度に応じて設定されることを特徴とするものである。
【0013】
【発明の効果】以上説明したように、本発明のうち請求
項1に係る無段変速機の制御装置によれば、内燃機関が
始動された後に、所定時間だけ開閉弁を作動することに
より、ポンプで昇圧されている作動流体の流体圧をプー
リに供給するようにする構成としたため、実際に車両が
発進して変速が開始される以前に当該プーリのシリンダ
室内に作動流体の流体圧を供給することができ、例えば
長期間の駐車後のようにプーリのシリンダ室内に空洞が
発生しているような場合でも、車両の発進後の変速開始
時に当該プーリのシリンダ室に急速に作動流体が流れ込
むのを抑制防止して供給側の作動流体圧の低下も抑制防
止することができる。
【0014】また、本発明のうち請求項2に係る無段変
速機の制御装置によれば、前記プーリのシリンダ室内に
作動流体の流体圧を供給した後も、当該プーリに作動流
体の流体圧を少しずつ供給し続けることにより、例えば
プーリのシリンダ室の空洞内の潰れている気泡の再膨張
を抑制防止でき、実際の車両の発進後の変速開始時に当
該プーリのシリンダ室に再び急速に作動流体が流れ込む
のを抑制防止して、供給側の作動流体圧の低下を抑制防
止できる。
【0015】また、本発明のうち請求項3に係る無段変
速機の制御装置によれば、実際の変速が開始される条
件,つまり車両が発進可能な条件が満足されたら、前記
開閉弁の作動によるプーリへの作動流体圧の供給を停止
し、実際の変速に望ましい状態,又はそれに近しい状態
に戻すことで、通常の変速制御を確保する。
【0016】また、本発明のうち請求項4に係る無段変
速機の制御装置によれば、実際の変速が開始される条件
として、実際に車両が発進したら、前記開閉弁の作動に
よるプーリへの作動流体圧の供給を停止し、実際の変速
に望ましい状態,又はそれに近しい状態に戻すことで、
通常変速制御を確保する。
【0017】また、本発明のうち請求項5に係る無段変
速機の制御装置によれば、作動流体の粘性が温度に依存
することを考慮し、開閉弁の作動によるプーリへの作動
流体圧の供給所定時間を、作動流体の温度に応じて設定
することで、作動流体の流体圧を前記プーリのシリンダ
室内に必要なだけ確実に供給することができる。
【0018】
【発明の実施形態】以下、本発明の無段変速機の制御装
置の一実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0019】図1は本発明の一実施形態を示す無段変速
機及びその制御装置の概略構成図である。まず、この無
段変速機の動力伝達機構は、フルードカップリングがト
ルクコンバータに変更されている点を除いて、本出願人
が先に提案した特開平7−317895号公報に記載さ
れるものと同等であるために、同等の構成部材には同等
の符号を附して簡潔に説明する。なお、図中の符号10
はエンジン、12はトルクコンバータ、15は前後進切
換機構、29はVベルト式無段変速機構、56は差動装
置、66,68は前輪用の左右ドライブシャフトであ
る。
【0020】前記エンジン10の吸気管路11には、運
転者によるアクセルペダルの踏込み量に応じて開閉する
スロットルバルブ19が配設されている。また、このス
ロットルバルブ19には、その開度(以下、スロットル
開度とも記す)TVOを検出するスロットル開度センサ
303が取付けられている。また、エンジン10の出力
軸10aには、その回転速度(以下、エンジン回転数と
も記す)NE を検出するエンジン回転数センサ301が
取付けられている。なお、エンジン負荷や車速等に応じ
て例えば燃料噴射量やその時期、点火時期等をエンジン
コントロールユニット200が制御することで、エンジ
ン10の回転状態は車両の走行状態に応じて最適状態に
制御される。また、スロットル開度センサ303で検出
されるスロットル開度TVOの検出信号は、当該スロッ
トル開度TVOが大でアクセルペダルの踏込み量が大で
あることを示す。また、前記エンジン回転数センサ30
1はエンジンのイグニッション点火パルスからエンジン
回転速度を検出するように構成してもよい。
【0021】前記エンジン10の出力軸10aに連結さ
れたトルクコンバータ12は、ロックアップ機構付きの
既存のものであり、図示されるロックアップフェーシン
グの図示左方がアプライ側流体室12a、その反対側,
即ちロックアップフェーシングとトルコンカバーとの間
がリリース側流体室12bになり、アプライ側流体室1
2aへの作動流体圧が高まるとロックアップ、リリース
側流体室12bへのそれが高まるとアンロックアップ状
態となる。なお、このトルクコンバータ12の出力軸,
即ちタービン出力軸13には、無段変速機構29への回
転速度(以下、単に入力回転数とも記す)NPri を検出
する入力回転数センサ305が取付けられている。な
お、後述する前後進切換機構15では、例えば前進用ク
ラッチ40の締結力を可変調整することにより、アクセ
ルペダルを踏込んでいないときの,所謂クリープ走行力
等を制御することもあるが、通常の走行時には当該前進
用クラッチ40は完全に締結しているので、前記タービ
ン出力軸13の回転数を無段変速機構への入力回転数N
Pri として用いる。また、前記リリース側流体室12b
に供給される作動流体はアプライ側流体室12aを通っ
てドレンされるし、アプライ側流体室12aに供給され
た作動流体のドレン分はリリース側流体室12bから、
その他の冷却・潤滑系に転用されてゆく。従って、この
ロックアップ機構への作動流体は流体路そのものを切換
えるのではなく、供給の向きを切換えることでロックア
ップ/アンロックアップの切換制御を行っている。
【0022】また、前記前後進切換機構15は、遊星歯
車機構17、前進用クラッチ40、および後進用ブレー
キ50を有して構成される。このうち、遊星歯車機構1
7は、複段のピニオン列を有して構成されており、これ
らのピニオン列を支持するピニオンキャリアが駆動軸1
4を介して前記無段変速機構29の駆動プーリ16に接
続され、サンギヤが前記タービン回転軸13に接続され
ている。また、前記ピニオンキャリアは前進用クラッチ
40によって前記タービン回転軸13と締結可能とさ
れ、遊星歯車機構17のリングギヤが後進用ブレーキ5
0によって静止部と締結可能とされている。従って、前
進用クラッチ40が流体室40aへの作動流体圧によっ
て締結されると、ピニオンキャリアを介して前記駆動軸
14とタービン出力軸13とが同方向に等速回転する。
また、後進用ブレーキ50が流体室50aへの作動流体
圧によって締結されると、複段のピニオン列を介して前
記駆動軸14がタービン出力軸13と逆方向に等速回転
する。
【0023】前記無段変速機構29を構成する駆動プー
リ16は、前記駆動軸14と一体に回転する固定円錐体
18と、これに対向配置されてV字状プーリ溝を形成す
ると共に軸方向に移動可能な可動円錐体22とから構成
される。また、この駆動プーリ16の可動円錐体22に
は、固定円錐体18との間でベルト24を挟持するため
に、作動流体圧が供給されるシリンダ室20が形成され
ている。また、前記駆動プーリ16と対をなして、ベル
ト24が巻回される従動プーリ26は、従動軸28と一
体に回転する固定円錐体30と、これに対向配置されて
V字状プーリ溝を形成すると共に軸方向に移動可能な可
動円錐体34とから構成され、当該可動円錐体34に
も、固定円錐体30との間でベルト24を挟持するため
に、作動流体圧が供給されるシリンダ室32が形成され
ている。
【0024】このベルト式無段変速機構29は、ラック
182に噛合するピニオン108aをステップモータ1
08の回転軸に取付け、更にラック182と前記可動プ
ーリ16の可動円錐体22とをレバー178で連結し、
このステップモータ108を後述する変速機コントロー
ルユニット300からの駆動信号DS/M により回転制御
することで駆動プーリ16の可動円錐体22及び従動プ
ーリ26の可動円錐体34を軸方向に移動させてベルト
24との接触位置半径を変えることにより、駆動プーリ
16と従動プーリ26との回転比,つまり変速比(プー
リ比)を変えることができる。なお、このプーリ比接触
位置半径変更制御は、例えば前述のように本実施形態で
は駆動プーリ16の可動円錐体22を移動させてその溝
幅を変更することで、従動プーリ26の可動円錐体34
が自動的に移動されて溝幅が変更されるようになってい
る。これは、前述のようにベルト24が、主として押圧
方向に駆動力を伝達する,プッシュ式ベルトであるため
である。なお、このプッシュ式ベルトの構成は、周知の
エレメントをベルトの長手方向又は巻回方向に並べて構
成される。また、前記駆動プーリ16のシリンダ室20
並びに従動プーリ26のシリンダ室32への作動流体圧
の供給経路については、後段の流体圧制御装置の項で詳
述する。
【0025】そして、前記従動軸28に固定された駆動
ギヤ46と、アイドラ軸52上のアイドラギヤ48とが
噛合し、このアイドラ軸52に設けられたピニオンギヤ
54がファイナルギヤ44に噛合し、このファイナルギ
ヤ44に差動装置56を介して前左右のドライブシャフ
ト66及び68が連結されている。なお、この最終出力
軸には車速VSPを検出する車速センサ302が取付けら
れている。
【0026】次に、この無段変速機の流体圧制御装置に
ついて説明する。この流体圧制御装置は、前記エンジン
10の回転駆動力で回転されるポンプ101により、リ
ザーバ130内の作動流体を十分に昇圧してアクチュエ
ータユニット100に供給する。このアクチュエータユ
ニット100内の構成は、本出願人が先に提案した前記
特開平7−317895号公報に記載されるものと同様
であるため、同等の構成要素には同等の符号を附して、
その詳細な図示並びに説明を省略し、本実施形態で必要
な弁構成の説明に止める。なお、この流体圧制御装置に
は、前記リザーバ130内の作動流体の温度TMPを検
出する作動流体温度センサ306が設けられている。ま
た、前記従動プーリ26の可動円錐体34に設けられて
いるシリンダ室32は、ライン圧PL と呼ばれる作動流
体圧供給源に直接連通されているから、その可動円錐体
34が軸方向に移動するときの当該シリンダ室32の容
積変動については問題ないが、駆動プーリ16の可動円
錐体22のシリンダ室20は後述する変速制御弁106
なる開閉弁を介して作動流体圧供給源に接続されている
ので、当該シリンダ室20の容積変動時には、この変速
制御弁106が関与して実際の変速を補助する。その詳
細な内容については後述する。
【0027】図1中の符号104は、セレクトレバー1
03によって直接操作され、主として前記前進用クラッ
チ40のシリンダ室40aへのクラッチ圧PCLと後進用
ブレーキ50のシリンダ室50aへのブレーキ圧PBRK
とを切換制御するためのマニュアル弁である。なお、こ
のセレクトレバー103には、選択されたシフトポジシ
ョンを検出し、それに応じたシフトレンジ信号SRANGE
を出力するインヒビタスイッチ304が取付けられてい
る。ちなみに、このシフトレンジ信号SRANGEは、実車
のシフトポジションに合わせて、P,R,N,D,2,
Lに相当する信号になっている。
【0028】また、符号128は後述する変速機コント
ロールユニット300からの駆動信号DL/U によって駆
動され、主として前記トルクコンバータ12のロックア
ップ機構によるロックアップ/アンロックアップを制御
するためのロックアップ制御用デューティ弁である。ち
なみに、このロックアップ制御用デューティ弁128
は、デューティ比の大きい制御信号でトルクコンバータ
12をロックアップし、デューティ比の小さい制御信号
でアンロックアップするように作用する。また、符号1
29は、後述する変速機コントロールユニット300か
らの駆動信号DCLによって駆動され、主として前記前進
用クラッチ40又は後進用ブレーキ50の締結力を制御
するためのクラッチ締結制御用デューティ弁である。こ
のクラッチ締結制御用デューティ弁129は、デューテ
ィ比の大きい制御信号で前進用クラッチ40又は後進用
ブレーキ50を締結し、デューティ比の小さい制御信号
で締結解除するように作用する。
【0029】また、符号120は、後述する変速機コン
トロールユニット30からの駆動信号DPLによって駆動
され、前述のようにベルト24を挟持するために、前記
従動プーリ26及び駆動プーリ16への作動流体圧(以
下、この流体圧をライン圧とも記す)PL を制御するた
めのライン圧制御用デューティ弁120である。なお、
引用する公報では、このデューティ弁120をモディフ
ァイヤ用デューティ弁としている。これは、このデュー
ティ弁120からの出力圧が、一旦、プレッシャモディ
ファイヤ弁というパイロット圧調圧弁のパイロット圧と
して作用し、その結果、プレッシャモディファイヤ弁か
らの出力圧がライン圧調圧弁のパイロット圧として作用
して、当該ライン圧調圧弁の上流側に形成されるライン
圧PL を調圧するためである。しかしながら、この説明
からも明らかなように、このデューティ弁120のデュ
ーティ比を制御すれば、間接的にではあるが、ライン圧
L を制御することができるのである。また、これによ
り、本実施形態では、図2に示すように、所定の不感帯
領域を除き、このライン圧制御用デューティ弁120へ
の制御信号又は駆動信号のデューティ比D/TPLの増加
に伴って(目標)ライン圧PL(OR) はリニアに増圧する
ものとする。ちなみに、前記プレッシャモディファイヤ
弁からの出力圧が増圧されると、クラッチ圧の元圧やト
ルクコンバータのロックアップ圧の元圧も同時に増圧す
る(傾きや切片は異なる)ことができるようになってい
る。
【0030】そして、符号106が、前記ステップモー
タ108と駆動プーリ16の可動円錐体22との相対変
位,即ち前記レバー178の挙動に応じて操作され、主
として変速の様子,つまり要求する変速比と当該駆動プ
ーリ16の溝幅との相対関係に応じて駆動プーリ16側
への作動流体圧(ライン圧)PL(Pri)を制御する変速制
御弁である。
【0031】この変速制御弁106の作用について図3
を用いて簡潔に説明する。即ち、図3においてステップ
モータ108が時計方向に回転駆動されると、ロッド1
82の下方への移動に伴ってレバー178がピン183
を支点として時計方向に回動し、変速制御弁106のス
プール106gを下方に移動させ、これにより一旦、駆
動プーリシリンダ室20内の作動流体が保圧弁160を
介してリザーバ130に還元されるので、駆動プーリ1
6の可動円錐体22が上方に移動してプーリ溝幅が広が
り、逆に従動プーリ26のプーリ溝幅が狭まって変速比
が大きくなる。この可動円錐体22の移動に伴ってセン
サシュー164が図2の上方に移動すると、今度はピン
185を支点としてレバー178が時計方向に回動し、
スプール106gは上方に引き戻されて必要なライン圧
L を駆動プーリシリンダ室20に供給する。
【0032】一方、ステップモータ108を反時計方向
に回転駆動した場合には、変速制御弁106のスプール
106gが図示上方に移動することにより駆動プーリシ
リンダ室20内にライン圧PL が供給されて当該駆動プ
ーリ16の溝幅が狭まり、合わせて従動プーリ26の溝
幅が広くなって変速比は小さくなる。また、この駆動プ
ーリ16の可動円錐体22の下方への移動に伴ってレバ
ー178がピン185を支点として反時計方向に回動し
てスプール106gを下方に押し戻し、必要に応じて駆
動プーリシリンダ室20の流体圧を抜圧する。このよう
な動作によってスプール106g,駆動プーリ16及び
従動プーリ26は、ステップモータ108の回転位置,
つまりポジションに対応して目標とする変速比の状態で
安定する。なお、ステップモータ108は、変速比が最
大変速比CLOであるときに回転角,つまりポジションθ
S/M が“0”であるとし、それよりポジションθS/M
正方向に大きくなると変速比が小さくなるものとする。
【0033】前記変速機コントロールユニット300
は、例えば後述する図4の演算処理等を実行すること
で、前記無段変速機構29並びに前記アクチュエータユ
ニット100を制御するための制御信号を出力する制御
手段としてのマイクロコンピュータ310と、当該マイ
クロコンピュータ310から出力される制御信号を、実
際のアクチュエータ,即ち前記ステップモータ108や
各デューティ弁120,128,129に適合する駆動
信号に変換する駆動回路311〜314とを備えて構成
される。
【0034】このうち、前記マイクロコンピュータ31
0は、例えばA/D変換機能等を有する入力インタフェ
ース回路310aと、マイクロプロセサ等の演算処理装
置310bと、ROM,RAM等の記憶装置310c
と、例えばD/A変換機能を有する出力インタフェース
回路310dとを備えている。このマイクロコンピュー
タ310では、例えば前記特開平7−317895号公
報に記載される演算処理を行うことで、実際の変速比を
司るステップモータ108の回転角,つまりポジション
を求め、そのポジションが達成されるパルス制御信号S
S/M を出力したり、ベルト24を挟持するのに最適なラ
イン圧PL を求め、それを達成するために必要なライン
圧制御用デューティ弁120のデューティ比D/TPL
算出し、そのライン圧制御デューティ比D/TPLに応じ
たライン圧制御信号SPLを出力したり、或いはトルクコ
ンバータ12のロックアップ機構をロックアップ/アン
ロックアップ制御するのに最適な作動流体圧(以下、こ
れを単にトルコン圧とも記す)PT/C を求め、それを達
成するために必要なロックアップ制御用デューティ弁1
28のデューティ比D/TL/U を算出し、そのロックア
ップ制御デューティ比D/TL/U に応じたロックアップ
制御信号SL/U を出力したり、例えばアクセルペダルが
踏込まれていない状態での車両のクリープ走行に最適な
作動流体圧(以下、これを単にクラッチ圧とも記す)P
CLを求め、それを達成するために必要なクラッチ締結制
御用デューティ弁129のデューティ比D/TCLを算出
し、そのクラッチ圧制御デューティ比D/TCLに応じた
クラッチ締結制御信号SCLを出力したりする。
【0035】また、前記駆動回路311は前記パルス制
御信号SS/M をステップモータ108に適した駆動信号
S/M に、駆動回路312は前記ライン圧制御信号SPL
をライン圧制御用デューティ弁120に適した駆動信号
PLに、駆動回路313は前記ロックアップ制御信号S
L/U をロックアップ制御用デューティ弁128に適した
駆動信号DL/U に、駆動回路314は前記クラッチ締結
制御信号SCLをクラッチ締結制御用デューティ弁129
に適した駆動信号DCLに、夫々変換して出力する。
【0036】なお、例えばデューティ比に応じた制御信
号やパルス制御信号の形態は、既に所望するデューティ
比やパルス数を満足しており、各駆動回路311〜31
4は、例えば単にそれを増幅するなどの電気的処理を施
すだけで、信号の形態そのものを処理するものではな
い。
【0037】また、前記エンジンコントロールユニット
200内にも独自のマイクロコンピュータを有してお
り、前記変速機コントロールユニット300のマイクロ
コンピュータ310と相互通信を行って、エンジン並び
に変速機を車両走行状態に応じて最適状態に制御するよ
うに構成されている。
【0038】次に、本実施形態で制御全体を通常変速制
御とプリチャージ制御とに二分する基幹ロジックの構成
を、前記マイクロコンピュータ310で実行される図4
のフローチャートに示す演算処理に従って説明する。こ
の演算処理は、所定サンプリング時間(例えば10mse
c)ΔT毎にタイマ割込処理として実行される。なお、
これ以後の演算処理では、何れも特に通信のためのステ
ップを設けていないが、演算処理装置310bで必要な
プログラムやマップ、或いは必要なデータは随時記憶装
置310cから読込まれるし、逆に演算処理装置310
bで算出されたデータは随時記憶装置310cに更新記
憶されるものとする。また、プリチャージとは、前記駆
動プーリ(以下、プライマリプーリとも記す)16のシ
リンダ室20に、前記ライン圧PL を事前に供給するこ
とを示す。また、これに合わせて前記従動プーリを以
下、セカンダリプーリとも記す。
【0039】この演算処理では、まずステップS01
で、前記車速センサ302からの車速VSPが、例えば3
km/h程度に予め設定された所定値VSP0 以上であるか否
かを判定し、当該車速VSPが所定値VSP0 以上である場
合にはステップS02に移行し、そうでない場合にはス
テップS03に移行する。前記ステップS02では、プ
リチャージフラグFCHG を“1”にセットしてからステ
ップS304に移行する。一方、前記ステップS303
では、プリチャージフラグFCHG が“0”のリセット状
態であるか否かを判定し、当該プリチャージフラグF
CHG がリセット状態である場合にはステップS305に
移行し、そうでない場合には前記ステップS304に移
行する。そして、前記ステップS304では、後述する
図9の演算処理による通常変速制御ルーチンに入り、前
記ステップS305では、後述する図5の演算処理によ
るプリチャージ制御ルーチンに入る。
【0040】次に、前記図4の演算処理のステップS0
5で実行される図5の演算処理について説明する。この
演算処理では、まずステップS10で前記エンジン回転
数センサ301からのエンジン回転数NE ,インヒビタ
スイッチ304からのシフトレンジ信号SRANGE を読込
む。次いでステップS11に移行して、前記エンジン回
転数NE が、例えば500rpm 程度に予め設定された所
定値NE0以上であるか否かを判定し、当該エンジン回転
数NE が所定値NE0以上である場合にはステップS12
に移行し、そうでない場合にはメインプログラムに復帰
する。前記ステップS12では、予め設定された比較的
高めのライン圧プリチャージ用所定値P LCHGを目標ライ
ン圧PL0R に設定する。次いでステップS13に移行し
て、個別の演算処理により、例えば各種のタイマをクリ
アするなどの初期化処理を行う。次いでステップS14
に移行して、個別の演算処理によって前記初期化処理が
終了したか否かを判定し、当該初期化処理が終了してい
ればステップS15に移行し、そうでない場合にはステ
ップS16に移行する。
【0041】前記ステップS15では、個別の演算処理
によって前記シフトレンジ信号SRA NGE が、車両の発進
しない“P”レンジか,又は“N”レンジであるか否か
を判定し、当該シフトレンジ信号SRANGE がこの二つの
レンジである場合にはステップS17に移行し、そうで
ない場合にはステップS18に移行する。前記ステップ
S18では、発進可能カウンタCNTDRV をインクリメ
ントしてからステップS19に移行して、この発進可能
カウンタCNTDRV が予め設定された所定値CNTDRV0
以上であるか否かを判定し、当該発進可能カウンタCN
DRV が所定値CNTDRV0以上である場合にはステップ
S20に移行し、そうでない場合には前記ステップS1
7に移行する。
【0042】そして、前記ステップS17では、初期設
定フラグFSET が“0”のリセット状態であるか否かを
判定し、当該初期設定フラグFSET がリセット状態であ
る場合にはステップS21に移行し、そうでない場合に
はステップS22に移行する。前記ステップS21で
は、前記作動流体温度センサ306からの作動流体温度
TMPを読込んでからステップS23に移行し、ここで
個別の演算処理によって前記作動流体温度TMPから前
記ステップモータ108のプリチャージ用駆動速度θ'
S/MCHGを設定してからステップS24に移行する。この
場合には、例えば作動流体温度TMPが−10℃未満の
ときにはステップモータ駆動速度θ' S/MC HGを50pps
(pulse per sec.) 程度の低速とし、−10℃以上のと
きには300pps 程度の高速とする。前記ステップS2
4では、前記作動流体温度TMPからプリチャージ時間
に相当するプリチャージカウント値CNTCHG0を設定し
てからステップS25に移行する。この場合には、例え
ば作動流体温度TMPが−30℃未満のときにはプリチ
ャージカウント値CNTCHG0を7.0sec.程度の長時間
とし、−30℃以上−10℃未満のときには3.1sec.
程度の中時間とし、−10℃以上のときには2.2sec.
程度の短時間とする。そして、前記ステップS25では
前記プリチャージカウント値CNTCHG0をプリチャージ
カウンタCNTCH G にセットしてからステップS26に
移行して、初期設定フラグFSET を“1”にセットして
から前記ステップS22に移行する。
【0043】前記ステップS22では、前記プリチャー
ジカウンタCNTCHG をデクリメントしてからステップ
S27に移行して、このプリチャージカウンタCNT
CHG が“0”以上であるか否かを判定し、当該プリチャ
ージカウンタCNTCHG が“0”以上である場合にはス
テップS28に移行し、そうでない場合には前記ステッ
プS20に移行する。前記ステップS28では、例えば
第55ステップ程度の比較的大きな正値のポジションに
設定されたプリチャージ用第1ポジション所定値θ
S/MCHG1 から現在のポジションθS/M を減じた絶対値|
θS/MCHG1 −θS/M |が、予め設定された微小値α以上
であるか否かを判定し、当該絶対値|θS/MCHG 1 −θ
S/M |が微小値α以上である場合にはステップS29に
移行し、そうでない場合には前記ステップS16に移行
する。また、前記ステップS29では、前記設定された
プリチャージ用ステップモータ駆動速度θ' S/MCHGその
ものに前記所定サンプリング時間ΔTを乗じてプリチャ
ージ用ステップモータポジション補正量ΔθS/MCHGを算
出してからステップS30に移行する。
【0044】一方、前記ステップS20では、前記入力
回転数センサ305からの入力回転数NPri ,スロット
ル開度センサ303からのスロットル開度TVOを読込
んでからステップS32に移行して、制御マップ検索等
の個別の演算処理に従って、スロットル開度TVO,エ
ンジン回転数NE からエンジントルクTE を算出してか
らステップS33に移行する。具体的には、例えば図6
に示すように、スロットル開度TVOをパラメータとし
且つエンジン回転数NE に応じたエンジントルクTE
出力特性図から現在のエンジントルクTE を算出する。
前記ステップS33では、制御マップ検索等の個別の演
算処理に従って、トルコン入出力速度比NE /NPri
らトルク比tを算出してからステップS34に移行す
る。具体的には、エンジン回転数NE を入力回転数N
Pri ,即ちタービン出力軸回転数で除してトルコン入出
力速度比NE /NPri を算出し、例えば図7に示すよう
に、このトルコン入出力速度比NE /NPri からトルク
コンバータ(図ではトルコン)領域,つまりトルク増幅
領域かロックアップ領域かを弁別すると共に、トルコン
領域ならばトルコン入出力速度比NE /NPri に応じて
リニアに減少するトルク比tを求める。
【0045】前記ステップS34では、前記エンジント
ルクTE に前記トルク比tを乗じて入力トルクTPri
算出し、次いでステップS35に移行して、図8の制御
マップに従って、前記入力トルクTPri を用いて基準ラ
イン圧PL0を算出してからステップS36に移行する。
この図8の制御マップは、入力トルクTPri をパラメー
タとし且つ現在の変速比CP に応じた基準ライン圧PL0
の設定マップである。各プーリ16,26のシリンダ室
20,32に供給されるライン圧PL はベルト24への
側方荷重であるから、ベルト耐久性の面からも、或いは
エネルギ損の面からもライン圧PL は小さい方が望まし
い。しかしながら、ベルト24には伝達すべきトルクが
かかるから、それによってベルトが滑らないようにプー
リで挟持しなければならず、そのトルクとは変速比CP
が大きいほど,及び/又は入力トルクTPri が大きいほ
ど大きいから、その分だけベルト挟持力を高めるように
ライン圧PL を大きくする必要がある。これを変速比C
P 及び入力トルクTPri だけから設定するのが基準ライ
ン圧PL0になる。そして、前記ステップS36では、前
記基準ライン圧PL0を目標ライン圧PL0R に設定してか
らステップS37に移行する。
【0046】前記ステップS37では、例えば第2ステ
ップ程度の比較的小さな正値のポジションに設定された
プリチャージ用第2ポジション所定値θS/MCHG2 から現
在のポジションθS/M を減じた絶対値|θS/MCHG2 −θ
S/M |が、予め設定された微小値β以上であるか否かを
判定し、当該絶対値|θS/MCHG2 −θS/M |が微小値β
以上である場合にはステップS38に移行し、そうでな
い場合には前記ステップS16に移行する。また、前記
ステップS38では、前記設定されたプリチャージ用ス
テップモータ駆動速度の負値(−θ' S/MCHG)に前記所
定サンプリング時間ΔTを乗じてプリチャージ用ステッ
プモータポジション補正量ΔθS/MCHGを算出してから前
記ステップS30に移行する。そして、前記ステップS
30では、前記プリチャージ用ステップモータポジショ
ン補正量ΔθS/MCHGだけステップモータ108を回転さ
せるための総パルス数並びに単位時間値にパルス数を設
定し、その両者を満足するパルス制御信号SS/M を創成
出力してから前記ステップS16に移行する。
【0047】また、前記ステップS16では、前記図2
の制御マップから前記目標ライン圧PL0R を達成するた
めのライン圧制御デューティ比D/TPLを算出設定し、
次いでステップS39に移行して、個別の演算処理に従
って、前記ライン圧制御デューティ比D/TPLに応じた
ライン圧制御信号SPLを創成出力してからメインプログ
ラムに復帰する。なお、ライン圧制御デューティ比D/
PLの制御マップは、既存のデューティ比制御を応用す
ればよいからその詳細な説明は省略する。また、ライン
圧制御デューティ比D/TPLに応じたライン圧制御信号
PLを創成については、既存のPWM(Pulse Width Mo
dulation)制御を応用すればよいから、その詳細な説明
は省略する。
【0048】次に、前記図4の演算処理のステップS0
4で実行される本実施形態の変速制御全体の概略構成
を、図9に示すゼネラルフローの演算処理に従って説明
する。この演算処理は、基本的には、前記Dレンジが選
択され且つエンジンコントロールユニット側からの要求
がない状態で、前記特開平7−317895号公報に記
載される変速制御を簡潔に纏めたものであり、その詳細
は当該公報を参照されるとして、ここではゼネラルフロ
ーの概要を説明するに止める。
【0049】この演算処理では、まずステップS1で、
前記車速センサ302からの車速V SP,エンジン回転数
センサ301からのエンジン回転数NE ,入力回転数セ
ンサ305からの入力回転数NPri ,スロットル開度セ
ンサ303からのスロットル開度TVO,及びインヒビ
タスイッチ304からのシフトレンジ信号SRANGE を読
込む。
【0050】次にステップS2に移行して、個別の演算
処理に従って、前記車速VSP,入力回転数NPri から現
在の変速比CP を算出する。具体的には、最終出力軸回
転数に比例する車速VSPを、無段変速機構29から最終
出力軸までの,所謂最終減速比nで除せば無段変速機構
29の出力回転数NSec が得られるから、これに対する
入力回転数NPri の比を算出すれば現在の変速比CP
得られる。次にステップS3に移行して、例えば前記図
5の演算処理のステップS32と同様に制御マップ検索
等の個別の演算処理に従って、スロットル開度TVO,
エンジン回転数NE からエンジントルクTE を算出す
る。次にステップS4に移行して、例えば前記図5の演
算処理のステップS32乃至ステップS36及びステッ
プS16及びステップS39と同様の個別の演算処理に
従って通常のライン圧PL の制御を行う。
【0051】次にステップS5に移行して、個別の演算
処理に従って、ロックアップ制御を行う。具体的には、
例えば図10のような制御マップから車速VSP及びスロ
ットル開度TVOに応じたロックアップ車速VON及びア
ンロックアップ車速VOFF を設定し、原則的に車速VSP
がロックアップ車速VON以上ならロックアップ,アンロ
ックアップ車速VOFF 以下ならアンロックアップとなる
ように前記制御信号S L/U を創成出力するが、特にロッ
クアップ側に移行するときに、そのときのエンジン回転
数NE と入力回転数NPri ,即ちタービン出力軸回転数
との差分値が大きいときには、その差分値の大きさに応
じた比較的大きなゲインでデューティ比D/TL/U を増
加し、両者の差分値が小さくなる,つまりロックアップ
気味になると比較的小さな所定値ずつデューティ比D/
L/U を増加して、完全なロックアップ移行時の衝撃を
緩和する。
【0052】次にステップS6に移行して、制御マップ
検索等の個別の演算処理に従って、到達変速比CD を算
出する。この到達変速比CD は、車速VSP及びスロット
ル開度TVOとから現在のエンジン回転数NE を達成す
る、最も理想的な無段変速機構29の変速比であり、具
体的には図11に示すように、3者が完全に一致する変
速比Cが設定できれば、そのときの車速VSPとエンジン
回転数NE とを満足しながら、運転者によるアクセルペ
ダルの踏込み量,即ちスロットル開度TVOに応じた加
速を得られる。ここで、例えば前記図6が到達変速比C
D の設定に用いる制御マップであると仮定すれば、原点
を通る傾き一定の直線が或る一定の変速比となり、例え
ば変速パターンの全領域において最も傾きの大きい直線
は、車両全体の減速比が最も大きい,即ち最大変速比C
Loであり、逆に最も傾きの小さい直線は、車両全体の減
速比が最も小さい,即ちDレンジ最小変速比CDHi であ
ると考えてよい。
【0053】次にステップS7に移行して、個別の演算
処理に従って、目標変速比CR を算出する。具体的に
は、原則的に前記到達変速比CD が現在の変速比CP
り大きければダウンシフト方向,小さければアップシフ
ト方向に、例えば現在の変速比CP を最も速い変速速度
dCR /dt又は最も小さい時定数τで変速した所定サ
ンプリング時間ΔT後の変速比を目標変速比CR として
設定する。但し、スロットル開度TVOが全開状態に近
い状態から閉方向変化した,所謂アクセルペダルの足戻
し状態では変速速度dCR /dtを少し遅くし又は時定
数τを少し大きくし、更にこの条件に加えてスロットル
開度の閉方向への変化速度が速く且つスロットル開度の
閉方向への変化量が大きい,所謂アクセルペダルの足離
し状態では変速速度dCR /dtを更に遅くし又は時定
数τを更に大きくして、夫々、目標変速比CR を設定す
る。
【0054】次にステップS8に移行して、個別の演算
処理に従って、クラッチ締結制御を行う。具体的には、
原則的に車速VSPがクリープ制御閾値以上なら前進用ク
ラッチ40を締結、車速VSPがクリープ制御閾値未満で
且つスロットル開度TVOがクリープ制御用の全閉閾値
以上なら締結解除するように制御信号SCLを創成出力す
るが、車速VSPがクリープ制御閾値未満で且つスロット
ル開度TVOが全閉閾値未満の場合には、そのときのエ
ンジン回転数NE と入力回転数NPri ,即ちタービン出
力軸回転数との差分値に応じて反比例するゲインでデュ
ーティ比D/T CLを設定することにより、坂道などの影
響で車両がクリープ走行し易いときにはクラッチの締結
力を弱め、クリープ走行し難いときにはクラッチの締結
力を強めるようにしている。
【0055】次にステップS9に移行して、個別の演算
処理に従って、変速比制御を行ってからメインプログラ
ムに復帰する。具体的には前記設定された目標変速比C
R に対して、そのときの変速速度dCR /dt又は時定
数τで変速を行うための総パルス数並びに単位時間値に
パルス数を設定し、その両者を満足するパルス制御信号
S/M を創成出力してからメインプログラムに復帰す
る。
【0056】次に、本実施形態の作用について説明する
が、通常変速制御の概要については、前記特開平7−3
17895号公報に記載されるものと同様であるから、
ここではそれを簡略化し、特に図5の演算処理による作
用について図12のタイミングチャートを参照しながら
詳述する。このタイミングチャートでは、エンジンを停
止した状態で長期間駐車し、前述のように実際にはプラ
イマリプーリ16のシリンダ室20内に作動流体が漏れ
て当該シリンダ室20内に空洞(気泡)が発生している
状況をシミュレートしたものである。なお、エンジン
は,所謂暖気運転を必要としない程度に暖かな状態にあ
るものとする。
【0057】この状態で、シフトレンジはPレンジのま
ま、アクセルペダルを踏込むことなく、時刻t01で、イ
グニッションスイッチをONさせてエンジンを始動させ
た。その直後からエンジン回転数NE はスタータモータ
の影響で大きく増加するが、やがて所定のアイドル回転
数で安定する。また、この時刻t01で図4の演算処理が
実行されると、車速VSPは未だ発進所定値VSP0 未満で
且つ前記プリチャージフラグFCHG はリセットされたま
まであるからステップS01からステップS03を経て
図5の演算所為が実行され、ここでエンジン回転数NE
が前記所定値N E0以上となると、図5の演算処理のステ
ップS10からステップS11を経てステップS12に
移行して、前記予め設定された比較的高めのライン圧プ
リチャージ用所定値PLCHGを目標ライン圧PL0R に設定
し、次いでステップS13で初期化処理を行うが、続く
ステップS14では未だ初期化処理が終了していないの
で、ステップS16に移行して、前記設定された目標ラ
イン圧PL0R に応じたライン圧制御デューティ比D/T
PLを設定し、次いでステップS39に移行して、そのラ
イン圧制御デューティ比D/TPLに応じたライン圧制御
信号SPLを創成出力する。これにより、ライン圧PL
図示のように、エンジン始動の直後から前記ライン圧プ
リチャージ用所定値PLCHGに向けて増圧され続ける。
【0058】そして、やがて時刻t02で前記初期化処理
が終了すると、図5の演算処理では、ステップS14か
らステップS15に移行し、この時点では未だシフトレ
ンジがPレンジのままであるからステップS17に移行
する。このとき、未だ初期設定フラグFSET がセットさ
れていないからステップS21に移行して作動流体温度
TMPを読込み、次いでステップS23でプリチャージ
用ステップモータ駆動速度θ' S/MCHGを設定し、続くス
テップS24でプリチャージカウント値CNT CHG0を設
定する。これらは何れも作動流体の温度依存性を考慮し
たものである。前述のように作動流体は、一般に低温ほ
ど粘性が高く、高温ほど粘性が低い。こうした粘性は作
動流体の流動性であり応答性であるから、例えば同じバ
ルブ開度でも、その前後で移動する流体の流量や速度,
或いは移動する距離が異なる。そこで、後述するように
前記ステップモータを強制的に作動させて前記プライマ
リプーリ16のシリンダ室20に作動流体を流し込む際
の、そのステップモータの作動速度,つまり前記プリチ
ャージ用ステップモータ駆動速度θ' S/MCHGを低温ほど
低速側に設定したり、或いはその流し込み時間,つまり
前記プリチャージカウント値CNTCHG0を低温ほど長く
設定したりする。これにより、作動流体の温度に応じて
ステップモータを適切な速度で駆動したり、或いはプラ
イマリプーリのシリンダ室内に作動流体を適切な時間だ
け流し込む,つまりプリチャージしたりすることが可能
となる。そして、続くステップS25で前記プリチャー
ジカウント値CNTCHG0をプリチャージカウンタCNT
CHG に設定し、次いでステップS26で初期設定フラグ
SET をセットするから、これ以後、このフローを通過
することはない。
【0059】次のステップS22では、前記プリチャー
ジカウンタCNTCHG をデクリメントするが、ここでそ
れが負値になるはずはないのでステップS27からステ
ップS28に移行する。そして、前記予め設定された比
較的大きな正値のポジションに設定されたプリチャージ
用第1ポジション所定値θS/MCHG1 から現在のポジショ
ンθS/M を減じた絶対値|θS/MCHG1 −θS/M |は未だ
微小値α以上であるからステップS29に移行し、ここ
で前記プリチャージ用ステップモータ駆動速度θ'
S/MCHGに前記所定サンプリング時間ΔTを乗じてプリチ
ャージ用ポジション補正量ΔθS/MCHGを算出し、次いで
ステップS30でそれに応じたパルス制御信号SS/M
創成出力し、これ以後、例えばPレンジ又はNレンジ以
外のシフトレンジが選択されたり、或いは前記プリチャ
ージカウンタCNTCHG が負値となったりしない限り、
ステップS17からステップS22を経てステップS2
7乃至ステップS30に移行するフローが繰返される。
従って、この後、ステップモータ108のポジションθ
S/M は変速比が小さくなる方向に前記駆動速度θ' S/MC
HGで大きくなり、それに伴って前記変速制御弁106が
ライン圧PL の供給方向に作動するから、前記プライマ
リプーリシリンダ室20内の作動流体圧(以下、プライ
マリ圧とも記す)PPri は、当該ライン圧PL に向けて
それと同等かそれよりやや低い値まで増圧し続ける。
【0060】やがて時刻t03でライン圧PL は前記プリ
チャージ用所定値PLCHGに到達し、これに合わせて前記
ステップモータ108のポジションθS/M が前記プリチ
ャージ用第1ポジション所定値θS/MCHG1 に接近し、こ
れにより前記図5の演算処理のステップS28では、当
該所定値θS/MCHG1 からポジションθS/M を減じた絶対
値|θS/MCHG1 −θS/M |が微小値α未満となって、そ
のままステップS16に移行するフローとなり、その結
果、ステップモータ108のポジションθS/Mは当該プ
リチャージ用第1ポジション所定値θS/MCHG1 に保持さ
れる。
【0061】従って、この間及びその後も、車両は発進
せず、実際には変速が行われないから前記変速制御弁1
06はライン圧PL の供給方向に強制的に作動されたま
まとなり、その後もプライマリ圧PPri は前記ライン圧
L と同等又はそれよりやや低い値に維持され、その結
果、プライマリプーリシリンダ室20内には作動流体が
流れ込む。しかしながら、その際、前述したプライマリ
プーリシリンダ室20の空洞内の気体が完全に排除され
ないこともあり得る。つまり、当該空洞を構成する気泡
は、前記プライマリ圧PPri と圧力的に釣り合う状態,
つまり温度一定下で容積が小さくなる,つまり潰れてい
るだけという場合もある。しかしながら、その容積減少
分だけ作動流体はプライマリプーリシリンダ室20内に
確実に流れ込むし、また現在潰れている気泡の再膨張
も、後述するプリチャージ用第2ポジション所定値θ
S/MCHG2 によって確実に抑制防止される。なお、このプ
リチャージ用第1ポジション所定値θS/MCHG1 によるプ
ライマリプーリシリンダ室20のプリチャージを以下、
第1プリチャージ段階とも記す。
【0062】その後も、前記プリチャージカウンタCN
CHG は前記所定サンプリング時間ΔT毎にデクリメン
トされるから、やがて時刻t04で実行される図5の演算
処理のステップS22で当該プリチャージカウンタCN
CHG が負値になると、ステップS27からステップS
20以後に移行して入力回転数NPri ,スロットル開度
TVOを読込み、これ以後は、通常のライン圧制御が行
われる。即ち、続くステップS32でアイドリング状態
のエンジントルクTE を算出したのち、前記通常のライ
ン圧制御と同様に、ステップS33でトルク比tを算出
し、続くステップS34で入力トルクTPri を算出し、
次のステップS35でそれに応じた基準ライン圧PL0
算出し、次のステップS36でこの基準ライン圧PL0
目標ライン圧PL0R に設定され直すから、何れにしても
ステップS16及びステップS39で出力されるライン
圧制御信号SPLは、所謂アイドリング状態で通常に達成
されるアイドリング所定値PL(idle) をライン圧PL
して創成することに他ならない。
【0063】一方、前記ステップS27からステップS
20に移行すると前記ステップS36からステップS3
7に移行する。この時点では、前記ステップモータ10
8の現在のポジションθS/M は前記比較的大きな正値の
プリチャージ用第1ポジション所定値θS/MCHG1 である
から、前記プリチャージ用第2ポジション所定値θS/
MCHG2 から現在のポジションθS/M を減じた絶対値|θ
S/MCHG2 −θS/M |が前記微小値β未満であるはずはな
く、従ってステップS38に移行して前記プリチャージ
用ステップモータ駆動速度の負値(−θ' S/MCHG)に前
記所定サンプリング時間ΔTを乗じてプリチャージ用ポ
ジション補正量ΔθS/MCHGを算出し、次いでステップS
30でそれに応じたパルス制御信号SS/M を創成出力す
る。従って、この後、ステップモータ108のポジショ
ンθS/M は変速比が大きくなる方向に前記駆動速度θ'
S/MCHGで小さくなり、合わせて前述のようにライン圧P
L がアイドリング所定値PL(idle) まで小さくなること
から、プライマリ圧PPri も減少する。
【0064】次に、時刻t05で、前記ライン圧PL は前
記アイドリング所定値PL(idle) に到達し、これに合わ
せて前記ステップモータ108のポジションθS/M が前
記プリチャージ用第2ポジション所定値θS/MCHG2 に接
近し、これにより前記図5の演算処理のステップS37
では、当該所定値θS/MCHG2 からポジションθS/M を減
じた絶対値|θS/MCHG2 −θS/M |が微小値β未満とな
って、そのままステップS16に移行するフローとな
り、その結果、ステップモータ108のポジションθ
S/M は当該プリチャージ用第2ポジション所定値θ
S/MCHG2 に保持される。従って、この間及びその後も、
車両は発進せず、実際には変速が行われないから前記変
速制御弁106はライン圧PL の供給方向に強制的に作
動されたままとなっているが、実際の開度は小さいから
オリフィスとして作用し、しかもライン圧PL そのもの
も前記アイドリング所定値PL(idle) まで低下している
ので、プライマリ圧PPri は当該ライン圧PL より低い
値に維持される。これにより、前述のように潰れている
プライマリプーリシリンダ室20内の気泡が再膨張する
のを抑制防止することができる。ちなみに、このときの
プライマリ圧PPri は、例えばそのまま前進用クラッチ
40や後進用ブレーキ50を締結しても、ベルト24の
耐久性に影響を及ぼすようなものではない。なお、この
プリチャージ用第2ポジション所定値θS/MCHG2 による
プライマリプーリシリンダ室20のプリチャージを、第
2プリチャージ段階とも記す。
【0065】その後、時刻t06で、セレクトレバーによ
ってDレンジがセレクトされる。このとき、図5の演算
処理では、ステップS15からステップS18に移行
し、ここでインクリメントされる発進可能カウンタCN
DRV が所定値以上になると、ステップS19から前記
ステップS20以後に無条件に移行する。つまり、Pレ
ンジ又はNレンジ以外という,発進可能なレンジが、意
図的に,即ち前記発進可能カウンタCNTDRV がカウン
トアップする程度にセレクトされた場合には、運転者は
発進する意思があるとして、前記プリチャージ用第2ポ
ジション所定値θ S/MCHG2 によるプライマリプーリシリ
ンダ室20の第2プリチャージ段階に移行する。この場
合の作用は、前記時刻t05からのものと何ら相違ない
が、この演算処理によれば、例え前記プリチャージカウ
ンタCNTCHG がカウントアップしていなくとも、発進
可能なレンジが意図的にセレクトされるだけで、第2プ
リチャージ段階に移行してスムーズな発進に備える。
【0066】そして、時刻t07で、比較的大きくアクセ
ルペダルを踏込んで発進すると、スロットル開度TVO
は大きく変化し、これによりエンジン回転数NE は速や
かに増速する。また、この直後から車速VSPは前記発進
所定値VSP0 以上となるために、図4の演算処理ではス
テップS01からステップS02に移行してプリチャー
ジフラグFCHG をセットした後、ステップS04での図
9の演算処理による通常の変速制御ルーチンに移行す
る。なお、この後、車速VSPが前記発進所定値V SP0
満になっても図4の演算処理ではステップS03からス
テップS04に移行してしまうため、前述したプリチャ
ージ制御ルーチンは実行されない。このように通常変速
制御が実行され始めると、前記公報に記載されるよう
に、前記増速するエンジン回転数NE 及び大きく開かれ
たスロットル開度TVOに応じて到達変速比CD は暫し
の間、最大変速比CLOに設定され、現在の変速比CP
のものが最大変速比CLOであることから、目標変速比C
R も最大変速比CLOに維持されて現在の変速比CP もそ
れに一致され続ける。また、ライン圧PL も、この最大
変速比CLO並びに入力トルクTPri に応じた高い値に設
定制御される。なお、この間のステップモータポジショ
ンθS/M は、前記微小値βの設定によって前記プリチャ
ージ用第2ポジション所定値θS/MCHG2 に維持される。
【0067】やがて、増速し続ける車速VSPに対して、
エンジン回転数NE がスロットル開度TVOに応じた値
に安定し始めると、到達変速比CD や目標変速比CR
次第に小さくなるため、ステップモータ108が回転駆
動されてポジションθS/M が正方向に大きくなり、それ
の伴って実際の変速比CP も小さくなる。すると、前記
変速制御弁106が、前記ライン圧PL をプライマリプ
ーリシリンダ室20に供給する方向に作動し、しかもラ
イン圧PL は、既に大幅に増圧されているから、プライ
マリ圧PPri は急速に且つ大幅に増圧される。このと
き、若し未だプライマリプーリシリンダ室20内に空洞
が存在したとしたら、そのとき初めて作動流体がプライ
マリプーリシリンダ室20内に急速に流れ込むことにな
り、その結果、ライン圧PL が一時的に低下し、それに
起因してベルト24に滑りが生じたりする恐れがある
が、本実施形態では、前記第1プリチャージ段階で事前
に作動流体をプライマリプーリシリンダ室20内にプリ
チャージしているために、そうしたライン圧PL の低下
は見られない。また、例えば前記第1プリチャージ段階
では空洞内の気体を完全に排出できず、当該空洞に相当
する気泡が、単に圧力バランスする状態まで潰れただけ
であったとしても、前記第2プリチャージ段階で当該気
泡を潰れた状態に維持することができるので、その再膨
張を抑制防止することができ、結果的にプライマリプー
リシリンダ室20への作動流体の流れ込みを確実に抑制
防止してライン圧の低下を抑制防止できる。
【0068】このようにして、エンジン回転数NE はさ
ほど増加せず、車速VSPは確実に増速されながら、プラ
イマリ圧PPri がライン圧PL に対して所定の割合まで
増圧されると、今度は変速比CP の減少に応じて(入力
トルクTPri はほぼ一定と考える)目標ライン圧PL0R
が減少され、これに呼応して現在のライン圧PL も次第
に減圧されてゆくのでプライマリ圧PPri も次第に減圧
されていった。
【0069】なお、前記実施形態では、例えば車速VSP
が前記発進所定値VSP0 以上になると、プリチャージ中
であっても、図4のステップS01からステップS02
を経てステップS04の通常変速制御ルーチンに移行し
てしまう。即ち、意図的な発進は前記Pレンジ又はNレ
ンジ以外のシフトレンジが選択されたときであり、その
場合には当然ながらプリチャージを中止して、通常の発
進制御を確保しなければならない。しかしながら、極め
て特殊な使用例ではあるが、エンジン始動後に、坂道等
の影響で、例えばNレンジにあるのに車両が発進してし
まい、その後にDレンジ等の走行レンジがセレクトされ
るような場合に、それまでプライマリ圧のプリチャージ
が継続されてしまうと、駆動輪によってセカンダリプー
リ26は強制的に回転され、それに伴ってベルト24や
プライマリプーリ16も回転されてしまうので、前述の
ように例えば第1プリチャージ段階でステップモータ1
08のポジションθS/M を強制的に回転駆動させたまま
だと、そのプリチャージ用第1ポジション所定値θ
S/MCHG1 に応じた変速比に向けて実際に変速が行われて
しまう。そこで、どのような状況下にあっても、車両が
発進して、実際の変速が可能な状態では、少なくとも前
記第1プリチャージ段階によるプリチャージを中止し
て、発進変速制御を確保しなければならない。そうした
要求から、車速VSPが発進所定値VSP0 以上になると通
常変速制御に移行する。
【0070】次に、従来のエンジン始動〜発進時のシミ
ュレーションを、同じ時間軸上のタイミングチャートと
して図13に示す。この従来の無段変速機の制御装置で
は、単に前記図9の通常変速制御ルーチン用の演算処理
が行われるものとする。従って、エンジン始動後にライ
ン圧PL は前記アイドリング所定値PL(idle) までしか
増圧されないから、前記時刻t01からの到達時間が異な
り、時刻t03でライン圧PL がアイドリング所定値P
L(idle) に一致した。
【0071】この従来の無段変速機の制御装置では、勿
論、プライマリプーリシリンダ室20のプリチャージは
行われないから、若し長期間の駐車によて当該シリンダ
室20内に空洞が生じていると、車両が発進して実際の
変速が実行される前記時刻t 08まで、プライマリ圧P
Pri は“0”(MPa) であり、この時刻t08でライン圧P
L (の一部)がプライマリ圧PPri として供給される
と、前記空洞の気体を排出するように、或いは当該空洞
を構成する気泡を圧縮して潰すように、急速に且つ大量
の作動流体が当該プライマリプーリシリンダ室20内に
流れ込み、結果的にライン圧PL が低下する。これが図
13に斜線部で示されるライン圧PL の降下部分であ
る。そして、このようにライン圧PL が低下すると、一
時的なベルト滑りや変速制御の応答遅れ等の弊害が発生
する恐れがある。
【0072】以上より、前記ライン圧デューティ弁12
0が本発明の無段変速機構用調圧弁を構成し、以下同様
に、前記図5の演算処理のステップS11が内燃機関始
動検出手段を構成し、図4の演算処理のステップS01
及びステップS05及び図5の演算処理全体が流体予圧
供給手段を構成する。
【0073】なお、前記実施形態では、基本的に、前記
高いライン圧PL でプライマリ圧P Pri をプリチャージ
する第1プリチャージ段階に続いて、ライン圧PL を少
しずつプライマリ圧PPri に供給し続ける第2プリチャ
ージ段階を設けた場合についてのみ詳述したが、前記第
1プリチャージ段階だけでもライン圧PL の低減防止効
果は十分にあり、必ずしも第2プリチャージ段階を必要
とするものではない。ただ、前述のように空洞を構成す
る気泡が第1プリチャージ段階で単純に潰れただけであ
り、当該第1プリチャージ段階が終了した後、ライン圧
L をプライマリ圧PPri に供給しない時間が長くなっ
たときにのみ、当該気泡が再膨張するので、そうした懸
念を回避するためにも第2プリチャージ段階を設けるの
が望ましい。
【0074】また、前記実施形態では、前記第1プリチ
ャージ段階の所定時間を作動流体の温度に応じて設定し
たが、これは、例えば前記−10℃以下のような低温時
のものに統一しておくことも可能である。しかしなが
ら、前記第1プリチャージ段階のように、実際には変速
しないのに、その変速用アクチュエータであるステップ
モータを回転駆動させて、開閉弁である変速制御弁を作
動させるのは、本来的な使用方法ではないので、必要に
して十分なプリチャージが行われたら、速やかに発進変
速可能な状態に戻すのが好ましい。
【0075】また、前記実施形態では、車両が発進可能
な条件として、セレクトレバーがPレンジ又はNレンジ
以外のシフトレンジがセレクトしたことを採り上げた
が、その他の条件を付加したり、それに変更したりして
もよい。
【0076】また、前記実施形態では、各コントロール
ユニットをマイクロコンピュータで構築したものについ
てのみ詳述したが、これに限定されるものではなく、演
算回路等の電子回路を組み合わせて構成してもよいこと
は言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】無段変速機及びその制御装置の一例を示す概略
構成図である。
【図2】目標ライン圧からライン圧制御用デューティ弁
へのデューティ比を設定する制御マップである。
【図3】図1の無段変速機及びその制御装置による変速
原理の説明図である。
【図4】図1の変速機コントロールユニットで実行され
る演算処理の一例を示すフローチャートである。
【図5】図4の演算処理で実行されるマイナプログラム
の第1実施形態を示すフローチャートである。
【図6】スロットル開度をパラメータとしてエンジン回
転数からエンジントルクを設定する制御マップである。
【図7】トルコン入出力速度比からトルク比を設定する
制御マップである。
【図8】入力トルクをパラメータとして変速比から基準
ライン圧を設定する制御マップである。
【図9】図4の演算処理で実行されるマイナプログラム
の一例を示すフローチャートである。
【図10】車速とスロットル開度とからロックアップ車
速及びアンロックアップ車速を設定する制御マップであ
る。
【図11】スロットル開度をパラメータとして車速から
変速比を設定する制御マップである。
【図12】本発明の無段変速機の制御装置による作用を
示すタイミングチャートである。
【図13】従来の無段変速機の制御装置による作用を示
すタイミングチャートである。
【符号の説明】
10はエンジン 12はトルクコンバータ 16は駆動プーリ 19はスロットルバルブ 20はシリンダ室 24はベルト 26は従動プーリ 29は無段変速機構 32はシリンダ室 108はステップモータ 120はライン圧制御用デューティ弁 128はロックアップ制御用デューティ弁 129はクラッチ締結制御用圧切換弁 200はエンジンコントロールユニット 300は変速機コントロールユニット 301はエンジン回転数センサ 302は車速センサ 303はスロットル開度センサ 304はインヒビタスイッチ 305は入力回転数センサ 306は作動流体温度センサ 310はマイクロコンピュータ

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 溝幅が可変の一対のプーリで、巻回され
    るベルトを狭持する無段変速機構を有し、ポンプで昇圧
    された作動流体を前記無段変速機構への入力負荷に応じ
    た所定の流体圧に無段変速機構用調圧弁で調圧して当該
    無段変速機構に供給するようにし、少なくとも一方のプ
    ーリには、変速比が変化するときに作動される開閉弁を
    介して前記所定の作動流体圧を供給したり遮断したりす
    るようにした無段変速機の制御装置にあって、内燃機関
    の始動を検出する内燃機関始動検出手段と、この内燃機
    関始動検出手段が内燃機関の始動を検出した後に、所定
    時間だけ前記開閉弁を作動して、前記ポンプで昇圧され
    た作動流体の流体圧を、前記少なくとも一方のプーリに
    供給する流体予圧供給手段とを備えたことを特徴とする
    無段変速機の制御装置。
  2. 【請求項2】 前記流体予圧供給手段は、前記所定時間
    経過後も前記開閉弁を作動して、前記少なくとも一方の
    プーリに、前記ポンプで昇圧された作動流体の流体圧を
    少しずつ供給し続けることを特徴とする請求項1に記載
    の無段変速機の制御装置。
  3. 【請求項3】 前記所要時間は、少なくとも前記内燃機
    関の始動から、車両が発進可能な条件が満足されるまで
    の時間であることを特徴とする請求項1又は2に記載の
    無段変速機の制御装置。
  4. 【請求項4】 前記所要時間は、少なくとも前記内燃機
    関の始動から、車両が実際に発進するまでの時間である
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の無段変速機の
    制御装置。
  5. 【請求項5】 前記所要時間は、前記作動流体の温度に
    応じて設定されることを特徴とする請求項1又は2に記
    載の無段変速機の制御装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001330131A (ja) * 2000-05-23 2001-11-30 Toyota Motor Corp 車両用無段変速機の油圧制御装置
JP2008069878A (ja) * 2006-09-14 2008-03-27 Jatco Ltd 無段変速機の変速制御装置

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