以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明のロックアップクラッチの制御装置が適用された車両用動力伝達装置10の骨子図である。この車両用動力伝達装置10は横置き型自動変速機であって、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)型車両に好適に採用されるものであり、走行用の駆動力源としてエンジン12を備えている。内燃機関にて構成されているエンジン12の出力は、エンジン12のクランク軸13、流体伝動装置としてのトルクコンバータ14から前後進切換装置16、入力軸36、ベルト式無段変速機(CVT)18、減速歯車装置20を介して差動歯車装置22に伝達され、左右の駆動輪24L、24Rへ分配される。上記トルクコンバータ14、前後進切換装置16、ベルト式無段変速機18などにより動力伝達機構が構成されている。
エンジン12の吸気配管31には、図示しないスロットルアクチュエータを用いてエンジン12の吸入空気量を電気的に制御するための電子制御スロットル弁80が備えられている。電子制御装置60(図2参照)により、運転者の出力要求量を表すアクセル操作量であるアクセル開度Accなどに応じて上記電子制御スロットル弁80の開閉制御および燃料噴射制御等が行われることによりエンジン12の出力が増減制御される。
トルクコンバータ14は、エンジン12のクランク軸に連結されたポンプ翼車14p、およびタービン軸34を介して前後進切換装置16に連結されたタービン翼車14tを備えており、流体を介して動力伝達を行うようになっている。また、それ等のポンプ翼車14pおよびタービン翼車14tの間にはロックアップクラッチ26が設けられており、油圧制御回路86(図2参照)のロックアップコントロール弁などによって係合側油室15および解放側油室17に対する油圧供給が切り換えられることにより、ロックアップクラッチ26の作動状態が係合(締結或いは締結状態と同じ)または解放(解放状態と同じ)されるようになっており、完全係合させられることによってポンプ翼車14pおよびタービン翼車14tは一体回転させられる。上記ポンプ翼車14pには、ベルト式無段変速機18を変速制御したりベルト挟圧力を発生させたり、或いは各部に潤滑油を供給したりするための油圧を発生する機械式のオイルポンプ28が設けられている。上記タービン軸34は、トルクコンバータ14の出力側部材に相当する。
前後進切換装置16は、ダブルピニオン型の遊星歯車装置を主体として構成されており、トルクコンバータ14のタービン軸34はサンギヤ16sに一体的に連結され、ベルト式無段変速機18の入力軸36はキャリア16cに一体的に連結されている一方、キャリア16cとサンギヤ16sは前進用クラッチC1を介して選択的に連結され、リングギヤ16rは後進用ブレーキB1を介してハウジングに選択的に固定されるようになっている。前進用クラッチC1および後進用ブレーキB1は断続装置に相当するもので、何れも油圧シリンダによって摩擦係合させられる油圧式摩擦係合装置であり、前進用クラッチC1が係合させられるとともに後進用ブレーキB1が解放されることにより、前後進切換装置16は一体回転状態とされることにより前進用動力伝達経路が成立(達成)させられて、前進方向の駆動力がベルト式無段変速機18側へ伝達される一方、後進用ブレーキB1が係合させられるとともに前進用クラッチC1が解放されることにより、前後進切換装置16は後進用動力伝達経路が成立(達成)させられて、入力軸36はタービン軸34に対して逆方向へ回転させられるようになり、後進方向の駆動力がベルト式無段変速機18側へ伝達される。また、前進用クラッチC1および後進用ブレーキB1が共に解放されると、前後進切換装置16は動力伝達を遮断するニュートラル(遮断状態)になる。
ベルト式無段変速機18は、前記入力軸36に設けられた入力側部材である有効径が可変の入力側可変プーリ42と、出力軸44に設けられた出力側部材である有効径が可変の出力側可変プーリ46と、それ等の可変プーリ42、46に巻き掛けられた摩擦接触する動力伝達部材として機能する伝動ベルト48とを備えており、可変プーリ42、46と伝動ベルト48との間の摩擦力を介して動力伝達が行われる。可変プーリ42および46は、入力軸36および出力軸44にそれぞれ固定された固定回転体42aおよび46aと、入力軸36および出力軸44に対して軸まわりの相対回転不能かつ軸方向の移動可能に設けられた可動回転体42bおよび46bと、それらの間のV溝幅が可変とする推力を付与する入力側油圧シリンダ42cおよび出力側油圧シリンダ46cとを備えて構成されており、入力側可変プーリ42の油圧シリンダの油圧が制御されることにより、両可変プーリ42、46のV溝幅が変化して伝動ベルト48の掛かり径(有効径)が変更され、変速比γ(=入力軸回転速度NIN/出力軸回転速度NOUT)が連続的に変化させられる。
図2は、図1のエンジン12やベルト式無段変速機18などを制御するために車両に設けられた制御系統を説明するブロック線図で、電子制御装置60には、エンジン回転速度センサ62、タービン回転速度センサ64、入力軸回転速度センサ65、車速センサ66、アイドルスイッチ付きスロットルセンサ68、冷却水温センサ70、CVT油温センサ72、アクセル開度センサ74、フットブレーキスイッチ76、レバーポジションセンサ78、クランク角カウンタ92などが接続され、エンジン12の回転速度(エンジン回転速度)NE、タービン軸34の回転速度(タービン回転速度)NT、入力軸36の回転速度(入力軸回転速度)NIN、車速V、電子スロットル弁80の全閉状態(アイドル状態)およびその開度(スロットル弁開度)θTH、エンジン12の冷却水温TW 、ベルト式無段変速機18等の油圧回路の油温TCVT、アクセルペダル等のアクセル操作部材の操作量であるアクセル開度Acc、常用ブレーキであるフットブレーキの操作の有無、シフトレバー77のレバーポジション(操作位置)PSH、クランク角θCなどを表す信号が供給されるようになっている。タービン回転速度NTは、前進用クラッチC1が係合させられた前進走行時には入力軸回転速度NINと一致し、車速Vはベルト式無段変速機18の出力軸44の回転速度(出力軸回転速度)NOUTに対応する。また、アクセル開度Accは運転者の出力要求量を表している。また、上記レバーポジションセンサ78は、たとえばニュートラル位置検出スイッチ、ドライブ位置検出スイッチ、エンジンブレーキ位置検出スイッチ、リバース位置検出スイッチなどの複数のスイッチを備えている。
電子制御装置60は、CPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、エンジン12の出力制御やベルト式無段変速機18の変速制御、ベルト挟圧力制御、ロックアップクラッチ26の係合、解放制御、などを実行するようになっており、必要に応じてエンジン制御用と変速制御用とに分けて構成される。エンジン12の出力制御は電子スロットル弁80、燃料噴射装置82、点火装置84などによって行われ、ベルト式無段変速機18の変速制御、ベルト挟圧力制御、およびロックアップクラッチ26の係合、解放制御は、何れも油圧制御回路86によって行われる。油圧制御回路86は、電子制御装置60により励磁されて油路を開閉するソレノイド弁や油圧制御を行うリニアソレノイド弁、それらのソレノイド弁から出力される信号圧に従って油路を開閉したり油圧制御を行ったりする開閉弁、調圧弁などを備えて構成されている。
また、ベルト式無段変速機18の変速制御については、電子制御装置60は例えば図3に示すように運転者の出力要求量を表すアクセル操作量Accおよび車速Vをパラメータとして予め定められた変速マップから入力側の目標回転速度NIN *を算出し、実際の入力軸回転速度NINが目標回転速度NIN *と一致するように、それ等の偏差に応じて無段変速機18の変速制御、すなわち入力側可変プーリ42の油圧シリンダ42cに対する作動油の供給、排出によって変速制御圧PBELTが制御され、変速比γが連続的に変化させられる。図3のマップは変速条件に相当するもので、車速Vが小さくアクセル操作量Accが大きい程大きな変速比γになる目標回転速度NIN *が設定されるようになっている。また、車速Vは出力軸回転速度NOUTに対応するため、入力軸回転速度NINの目標値である目標回転速度NIN *は目標変速比に対応し、無段変速機18の最小変速比γminと最大変速比γmaxの範囲内で定められている。
また、ロックアップクラッチ26のロックアップクラッチ制御については、ロックアップクラッチ26の係合トルクすなわち係合力を連続的に制御可能なものであり、電子制御装置60は例えば図4に示すようにスロットル弁開度θTHおよび車速Vをパラメータとして予め記憶された解放領域(ロックアップオフ領域)と係合領域(ロックアップオン領域)との境界線を有するマップ(関係)から実際のスロットル弁開度θTHおよび車速Vに基づいてロックアップクラッチ26の作動状態を制御するロックアップクラッチ制御手段100を機能的に備えていて、ロックアップクラッチ26のオン、オフを切り換えるためにロックアップソレノイドSLを制御する。また、このロックアップクラッチ26のオン、オフの切換制御では、その切換制御における係合或いは解放ショックを抑制するために、ロックアップクラッチ26の作動油圧PLUを漸増或いは漸減するためにロックアップ作動圧ソレノイドDSUをデューティ制御する。また、減速走行時ロックアップ制御は、たとえば、スロットル開度θTHが零と判定される値で惰行走行(減速走行)する前進走行時において、ロックアップクラッチ26を係合することで駆動輪側からの逆入力をエンジン12側へ、タービン回転速度NTおよびエンジン回転速度NEが略一致された状態で伝達する。これによってエンジン回転速度NEは車両の減速にしたがって緩やかに減少させられる。このようにロックアップクラッチ26が係合させられると、エンジン回転速度NEがタービン回転速度NTまで引き上げられるため、ロックアップクラッチ26の解放時に比較してエンジン12に対する燃料供給を停止するフューエルカット領域(車速範囲)が拡大されて燃費が向上する。
図5は油圧制御回路86のロックアップクラッチ26の制御に関する油圧回路部分としてのロックアップ制御部200の一例を示す図であり、ロックアップコントロール弁250を備えロックアップクラッチのオン、オフを制御する。
ロックアップコントロール弁250は、互いに当接可能で且つ両者間にスプリング202が介在させられた第1スプール弁子204および第2スプール弁子206と、その第1スプール弁子204の軸端側に設けられ、第1スプール弁子204および第2スプール弁子206を係合(ON)側の位置へ付勢するためにロックアップ作動圧ソレノイドDSUの作動圧PDSUを受け入れる油室208と、第1スプール弁子204および第2スプール弁子206を解放(OFF)側位置へ付勢するために第2ライン圧PL2を受け入れる油室210と、第1スプール弁子204を解放(OFF)側位置へ付勢するためにロックアップソレノイドSLの作動圧PSLを受け入れる油室212とを備えている。第1スプール弁子204がその解放側位置に位置すると、入力ポート214に供給された第2ライン圧PL2が解放側ポート216からトルクコンバータ14の解放側油室17へ供給されると同時に、トルクコンバータ14の係合側油室15内の作動油が係合側ポート218から排出ポート220を経てクーラバイパス弁224或いはオイルクーラ226へ排出させられて、ロックアップクラッチ26の係合圧すなわち差圧ΔP(=係合側油室32内の油圧−解放側油室34内の油圧)が低められる。反対に、第1スプール弁子204がその係合側位置に位置すると、入力ポート222に供給された第2ライン圧PL2が係合側ポート218からトルクコンバータ14の係合側油室15へ供給されると同時に、トルクコンバータ14の解放側油室17内の作動油が解放側ポート216から排出ポート228を経て排出されて、ロックアップクラッチ26の係合圧が高められる。
したがって、前記電子制御装置60はロックアップクラッチ26のオン、オフを切り換えるためにロックアップ作動圧ソレノイドDSUおよびロックアップソレノイドSLを制御する油圧指令値SPを油圧制御回路86へ出力する。図6は、ロックアップクラッチ26の締結状態から解放状態とする場合のその油圧指令値SPの一例であり、縦軸はその油圧指令値SPによるロックアップクラッチ26の作動油圧PLUの指令油圧値である。この指令油圧値はロックアップクラッチ26の実際のトルク容量である実トルク容量を設定するための目標となる目標トルク容量に対応するものであり、図6では油圧指令値SPの大きさが実トルク容量を示すように画かれている。したがって、ロックアップクラッチ26の実トルク容量はその油圧指令値SPに従って制御されることになる。図6によれば、tS時点より前ではロックアップクラッチ26は所定の締結圧としての指令油圧値PLUONで締結状態とされるように前記ロックアップ作動圧ソレノイドDSUの作動圧PDSUおよび前記ロックアップソレノイドSLの作動圧PSLが制御される。そして、tS時点でロックアップクラッチ26の解放指令Rが出されると指令油圧値は解放初期圧PLUFまで急低下させられその後、tE時点での所定の解放圧としての指令油圧値PLUOFFとなるようにtE時点まで漸減されるように前記作動圧PDSUおよび前記作動圧PSLが制御されて、ロックアップクラッチ26は解放状態とされる。但し、実際にはロックアップクラッチ26の上記実トルク容量がロックアップクラッチ26の必要トルク容量より低下すれば、ロックアップクラッチ26は解放が開始されることになる。したがって、図6に示すように指令油圧値が解放初期圧PLUFから解放圧としての指令油圧値PLUOFFまで漸減される間となるtR時点で実トルク容量が必要トルク容量より低下することとなって、その解放が開始される解放開始ポイントとなる。すなわち、ロックアップクラッチ26の解放指令Rが出されてから実際に解放が開始される解放開始ポイントまでの期間であるtS時点乃至tR時点がクラッチ解放時間αとなる。このクラッチ解放時間αは予め実験等により求められた一定の値である。
上記必要トルク容量はロックアップクラッチ26のすべりを生じさせないための最小トルク容量であり、車両の減速走行時のロックアップオン状態では駆動輪からの逆入力によるタービン回転速度NT(この場合には入力回転速度NINと同じ)に相当する負トルクと、車両の減速に伴ってエンジン回転速度NEが減少することによるエンジンから放出されるエンジンクランク軸系のイナーシャトルクとのそれぞれの絶対量の差によって決定される。
図7は、前記電子制御装置60が備えている車両減速走行時のロックアップクラッチ26の解放制御とフューエルカット制御を実行する制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。
図7において燃料供給制御手段112は、燃費を向上させるために、エンジン回転速度NEやアクセル開度Accなどに基づいてエンジン12への燃料供給の必要がないか否かを判断し、たとえば車両の減速走行時のエンジン回転速度NEが予め設定されたフューエルカット回転速度を上回っている状態では、フューエルカット作動のための停止指令Cすなわちエンジン12への燃料供給の停止指令Cを前記電子スロットル弁80、燃料噴射装置82、点火装置84などで構成されているフューエルカット装置88に出力する。図8は、燃料供給制御手段112によるフューエルカット作動の一例を説明するタイムチャートである。たとえば、アクセル開度Accが零となった減速走行時にエンジン回転速度NEが予め決められた所定値たとえば1400rpmに設定されたフューエルカット開始回転速度NEKを越え且つエンジン回転速度NEが低下に向かっている場合に、フューエルカット作動が開始されるようにエンジン12への燃料供給の停止指令Cを出力する(図8のt1時点)。上記アクセル開度Accが零とされる値とは、たとえばアクセルオフであったり略全閉であったり或いはアクセル開度Accが2〜3%程度以下であったり或いはアクセル開度Accが微開であったりする状態のことである。その後、減速走行と共にエンジン回転速度NEが予め決められた所定値、たとえば1000rpmに設定されたフューエルカット復帰回転速度NEF以下となるとフューエルカット作動が終了するようにエンジン12への燃料供給の停止指令Cの出力を中止する(図8のt2時点)。フューエルカット状態が解除させられると、燃料供給が再開されてエンジン12が速やかに完爆状態、すなわちエンジン12が爆発による自力回転が安定して行われる回転速度とされる。そして、ロックアップクラッチ26は少なくともフューエルカット作動中は、エンジン回転速度が急低下されないように前述のロックアップクラッチ制御によりロックアップクラッチ26は締結状態とされる。
しかしながら、図8に示すようにエンジン12への燃料供給が再開されてからエンジン12が完爆するまでには時間すなわちエンジン完爆時間εが必要であり、そのエンジン完爆時間εにおいてもエンジン回転速度NEが急低下しないように前記ロックアップクラッチ26は締結状態とされる必要がある。そのため、エンジン完爆後にロックアップクラッチ26を解放状態としたり、或いはエンジン12への燃料供給の再開とともにロックアップクラッチ26を解放状態とするのであるが、上記エンジン完爆時間εに比較して十分長い前記クラッチ解放時間αが必要であることから、エンジンへの燃料再開による復帰ショックが発生する可能性がある。反対に、エンジン完爆前にロックアップクラッチ26が実際に解放される場合には、エンジン回転速度NEが急低下してエンストする可能性がある。上記エンジン完爆時間εは、エンジン回転速度NE等をパラメータとする予め記憶された関係(ε=A/エンジン回転速度NE+B;A、Bは任意の係数)として設定されている。たとえば、このA、Bは予め実験等によって設定されているものであり、1気筒が完爆したことでエンジン12の完爆状態とするのか、或いは全気筒を含めた複数の気筒が完爆したことでエンジン12の完爆状態とするのかによってそのA、Bを調節することでエンジン完爆時間εが設定される。
走行状態読込手段110は、現在の車両の走行状態を車両に備えられている各センサから読み込む。たとえば、エンジン回転速度センサ62、タービン回転速度センサ64、入力軸回転速度センサ65、車速センサ66、スロットルセンサ68、アクセル操作量(開度)センサ74、レバーポジションセンサ78、クランク角カウンタ92などから、エンジン12の回転速度(エンジン回転速度)NE、タービン軸34の回転速度(タービン回転速度)NT、入力軸36の回転速度(入力軸回転速度)NIN、車速V、電子スロットル弁80の全閉状態およびその開度(スロットル弁開度)θTH、アクセルペダル等のアクセル操作部材の操作量であるアクセル開度Acc、シフトレバー77のレバーポジション(操作位置)PSH、クランク角θCなどを読み込む。また、この走行状態読込手段110は、前記クラッチ解放時間αをクラッチ解放予定時間α1として読み込む。
ロックアップクラッチ制御手段100は、クラッチ制御手段として機能するものであり、前記図4に示す予め記憶された関係(マップ)に従ってロックアップクラッチ26の作動状態を制御するように前記油圧制御回路86に油圧指令値SPを出力する。また、たとえば車両の減速走行時のエンジン12への燃料供給を停止するフューエルカット作動中にはフューエルカット領域を拡大するために、ロックアップクラッチ26を所定の締結圧としての指令油圧値PLUONで締結状態とするように前記ロックアップ作動圧ソレノイドDSUの作動圧PDSUおよび前記ロックアップソレノイドSLの作動圧PSLを制御し、所定の締結圧PLUONで締結状態とされているロックアップクラッチ26の作動状態を所定の解放圧としての指令油圧値PLUOFFで解放状態とするように、具体的にはこのロックアップクラッチ26の締結状態から解放状態への切換過度期では、前記図6に示すように指令油圧値を所定の締結圧PLUONから解放初期圧PLUFまで急低下させその後、所定の解放圧PLUOFFまで漸減するように前記ロックアップ作動圧ソレノイドDSUの作動圧PDSUおよび前記ロックアップソレノイドSLの作動圧PSLを制御するように前記油圧制御回路86に油圧指令値SPを出力する。
減速時ロックアップクラッチ解放指令手段106は、減速時クラッチ解放指令手段として機能するものであり、車両の減速走行時のフューエルカット作動中に上記ロックアップクラッチ制御手段100によって締結状態とされているロックアップクラッチ26を上記ロックアップクラッチ制御手段100によって解放状態とするための解放指令Rをロックアップ制御手段100に出力するか否かを、たとえばフューエルカット作動の終了によってエンジンへの燃料供給が再開されて車両が減速走行から停止されてもエンジン12がストールすることなくたとえばアイドル回転速度で速やかに回転するように、ロックアップクラッチ26の解放が開始されてもよい時期かで判断する。たとえば減速時ロックアップクラッチ解放指令手段106は、その判断を車速Vが予め設定されている所定車速たとえば10km/h以下となった否かで判断する。この所定車速はエンジン12からの情報によってエンジン12が自力回転可能な回転速度に基づいて変化させてもよいし、車両減速度ΔVに基づいて変化させてもよいし、或いはフューエルカット作動が終了させられて燃料供給が再開されるかに基づいて変化させてもよい。また、この減速時ロックアップクラッチ解放指令手段106による解放指令Rは、図4に示す予め記憶された関係(マップ)より優先される。なお、この解放指令Rは図4に示す予め記憶された関係(マップ)に従って出力されてもよい。
燃料供給再開指令手段114は、前記エンジン完爆時間εとして予め記憶された関係から現在のエンジン回転速度NE等に基づいてエンジン完爆時間ε1を算出し、そのエンジン完爆時間ε1と前記走行状態読込手段110によって読み込まれた前記クラッチ解放予定時間α1とに基づいて、前記ロックアップクラッチ制御手段100によってロックアップクラッチ26が実際に解放されるときにエンジン12が完爆するように、前記燃料供給制御手段112によってエンジン12への燃料供給が再開されるために、すなわち燃料供給制御手段112によってフューエルカット作動が終了されるためにエンジン12への燃料供給の停止指令Cの出力が中止されるように燃料供給再開指令Fを上記燃料供給制御手段112に出力する。つまり、通常の燃料供給制御手段112による停止指令Cに優先してエンジン12への燃料供給が再開されることになる。たとえば、燃料供給再開指令手段114は、前記クラッチ解放予定時間α1と前記エンジン完爆時間ε1とに基づいて所定時間としての燃料再開要求時間β1(=α1−ε1)を設定し、上記解放指令Rからの経過時間たとえばクラッチ解放経過カウンタの出力値であるクラッチ解放経過時間が上記燃料再開要求時間β1を越えたか否かを判定し、その判定結果に基づいて上記燃料供給再開指令Fを上記燃料供給制御手段112に出力する。また、上記燃料再開要求時間β1は上記(=α1−ε1)にとらわれず任意の時間に設定することも可能である。
図9は、前記電子制御装置60の制御作動の要部すなわち車両減速走行時のフューエルカット作動中にロックアップクラッチ26の作動状態が締結状態から解放状態へ切り換えられるときの制御作動と燃料供給を再開する制御作動を説明するフローチャートであり、図10はその制御作動を説明するタイムチャートである。図9において前記燃料供給制御手段112および前記ロックアップクラッチ制御手段100に対応するステップ(以下、ステップを省略する)SA1において、車両の減速走行時に燃費向上のためにロックアップクラッチ26が所定の締結圧PLUONで締結状態とされるように前記ロックアップ作動圧ソレノイドDSUの作動圧PDSUおよび前記ロックアップソレノイドSLの作動圧PSLが制御され、エンジン回転速度NEやアクセル開度Accなどに基づいて、エンジン12への燃料供給の停止指令Cが前記フューエルカット装置88に出力されて、フューエルカット作動が実行される。たとえば、停止指令Cはアクセル開度Accが零となった減速走行時にエンジン回転速度NEが予め決められた所定値、たとえば1400rpmに設定されたフューエルカット開始回転速度NEKを越え且つエンジン回転速度NEが低下に向かっている場合に、フューエルカット作動が開始されるように出力される(図10のtS時点より前)。この間は、ロックアップクラッチ26の作動状態を示すクラッチ解放制御実行フラグはロックアップクラッチ26を締結状態とするOFFとされ、また燃料供給制御の作動状態を示す燃料カット制御実行フラグはフューエルカット作動を実行するONとされるが、反対に燃料カット復帰要求フラグは燃料供給の再開を要求しないOFFとされる。
次に、前記減速時ロックアップクラッチ解放指令手段106に対応するSA2において、上記SA1において締結状態とされているロックアップクラッチ26を上記ロックアップクラッチ制御手段100によって解放状態とするための解放指令Rが出力されてもよいか否かが、たとえば、車速Vが予め設定されてる所定車速たとえば10km/h以下となったか否かで判定される。このSA2の判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられるが、肯定される場合(図10のtS時点)は前記クラッチ解放制御実行フラグがロックアップクラッチ26を解放状態とするONとされるとともに、前記燃料供給再開指令手段114に対応するSA3において、前記エンジン完爆時間εとして予め記憶された関係から現在のエンジン回転速度NE等に基づいてエンジン完爆時間ε1が算出され、そのエンジン完爆時間ε1と前記クラッチ解放予定時間α1とに基づいて所定時間としての燃料再開要求時間β1(=α1−ε1)が設定され、上記解放指令Rからの経過時間たとえばクラッチ解放経過カウンタの出力値であるクラッチ解放経過時間が上記燃料再開要求時間β1を越えたか否かが判定される。
このSA3の判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられるが、肯定される場合は、同じく前記燃料供給再開指令手段114に対応するSA4において、ロックアップクラッチ26が実際に解放されるときにエンジン12が完爆するように、エンジン12への燃料供給が再開されるためのすなわち上記SA1におけるフューエルカット作動が終了されるためのエンジン12への燃料供給の停止指令Cの出力が中止されるように燃料供給再開指令Fが出力される(図10のtF時点)。したがって、前記燃料カット制御実行フラグはフューエルカット作動を実行しないOFFとされるが、反対に燃料カット復帰要求フラグ(燃料カットキャンセル要求フラグに同じ)は燃料供給の再開を要求するONとされる。つづく、前記燃料供給制御手段112に対応するSA5において、フューエルカット作動が終了するようにエンジン12への燃料供給の停止指令Cの出力が中止されて、エンジン12への燃料供給が再開される。これによって、前記ロックアップクラッチ26が実際に解放されるときに前記エンジン12は速やかに完爆することになる(図10のtR時点)。なお、前記クラッチ解放制御実行フラグは、ロックアップクラッチ26が実際に解放された後も、たとえば図6に示した所定の解放圧PLUOFFとなるまでONとされる。
上述のように、本実施例によれば、燃料供給制御手段112(SA1)によるエンジン12への燃料供給の停止作動中に、減速時ロックアップクラッチ解放指令手段106(SA2)によってクラッチの解放指令Rが出力されてロックアップクラッチ26が実際に解放されるときにエンジン12が完爆するように、燃料供給再開指令手段114(SA4)によって燃料供給制御手段112(SA5)によるエンジン12への燃料供給を再開させる指令Fが出力されるので、ロックアップクラッチ26が実際に解放されるときにエンジン12が完爆する。つまりロックアップクラッチ26が実質締結状態であるときにエンジン12への燃料供給が再開されることになり、エンジン回転速度NEが急低下することなく速やかにエンジン12が完爆するとともに、エンジン12が完爆するときにはロックアップクラッチ26が実際に解放されているので、燃料供給の再開による燃料復帰ショックを抑制してドライバビリティーが好適に向上される。
また、本実施例によれば、前記燃料供給制御手段112(SA5)によって燃料供給が再開されてから前記エンジン12が完爆するまでの時間がエンジン回転速度NEに基づいて設定されるので、エンジン回転速度NEの違いに拘わらず、燃料供給再開後に速やかにエンジン12が完爆する。
また、本実施例によれば、前記燃料供給再開指令手段114(SA4)によって、前記減速時ロックアップクラッチ解放指令手段106(SA2)による前記解放指令Rからの経過時間が、前記クラッチ解放予定時間α1と前記エンジン完爆時間ε1とに基づいて設定された所定時間としての燃料再開要求時間β1(=α1−ε1)を経過したときに前記燃料供給再開指令Fが出力されるので、ロックアップクラッチ26の実際の解放時期とエンジン12の完爆時期とがほぼ同じ時期になる。
つぎに、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の説明において前述の実施例と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
図7に示す前記燃料供給再開指令手段114は、前記燃料供給制御手段112への前記燃料供給再開指令Fの出力を、上述したように燃料再開要求時間β1(=α1−ε1)を設定し前記解放指令Rからの経過時間がその燃料再開要求時間β1を越えたか否かの判定結果に基づいて行う方法とは別の方法で実行する。たとえば、燃料供給再開指令手段114は、前記解放指令Rから前記エンジン12を最短の行程で完爆させるための予め設定された行程に到達したときに上記燃料供給再開指令Fを出力する。予め設定された行程である所定行程は、走行状態読込手段110によって読み込まれたクランク角の出力値であるエンジン12のクランク角θCがエンジン12の行程を示す計測パラメータであることを利用し、上記所定行程に相当する燃料再開要求クランク角θC *として表される。このクランク角カウンタは4サイクルエンジンの膨張、排気、吸気、圧縮の4行程に対応するようにクランク角θCを0°〜720°で表すものであり、たとえば、クランク角θCが0°〜180°であれば膨張行程を、クランク角θCが180°〜360°であれば排気行程を、クランク角θCが360°〜540°であれば吸気行程を、クランク角θCが540°〜720°であれば圧縮行程に対応している。たとえば、その燃料再開要求クランク角θC *は、エンジン12の特性によって適宜設定されるものであり、好適には、吸気管のチャンバで燃料噴射する場合には応答遅れを考慮してエンジン12の排気行程時に対応するクランク角θCの範囲(たとえば、180°〜360°)内の値に、或いは気筒内燃料噴射の場合にはエンジン12の吸気行程時に対応するクランク角θCの範囲(たとえば、360°〜540°)内の値に設定されており、予め記憶値として実験等によって求められているものであって前記走行状態読込手段110によって読み込まれる。また、クランク角θCが0°から燃料再開要求クランク角θC *となるのに必要とされる時間である所定行程時間δがエンジン回転速度NEおよび燃料再開要求クランク角θC *をパラメータとする予め記憶された関係として設定されている。
しかしながら、上記クランク角カウンタはクランク角θCを0°〜720°で繰り返し出力するものであるので、前記燃料供給再開指令手段114は前記解放指令Rから繰り返し出力されるクランク角θCのどの時期で燃料再開要求クランク角θC *に到達したか否かを判定すればよいのか判別できない。
そこで、たとえばその判別をするために、先ず、前記燃料供給再開指令手段114は、上述した機能に加えて上記エンジン回転速度NEおよび燃料再開要求クランク角θC *をパラメータとして予め記憶された関係からエンジン回転速度NEおよび燃料再開要求クランク角θC *に基づいて所定行程時間δを算出する。そして、上記燃料供給再開指令手段114は、その所定行程時間δと、前記走行状態読込手段110によって読み込まれた前記クラッチ解放予定時間α1と前記エンジン完爆時間ε1とに基づいて所定閾値時間としての燃料再開要求準備時間β2(=α1−ε1−δ)を設定し、前記解放指令Rからの経過時間たとえばクラッチ解放経過カウンタの出力値であるクラッチ解放経過時間が上記燃料再開要求準備時間β2を越えたか否かに基づいて、クランク角θCが燃料再開要求クランク角θC *に到達したか否かを判定すればよいのかを判別する。要するに、燃料供給再開指令手段114は、解放指令Rからの経過時間が燃料再開要求準備時間β2を越えるまでは、クランク角θCが燃料再開要求クランク角θC *に到達したか否かを判定しないか、或いはその判定結果を無効とする。そして、燃料供給再開指令手段114は、解放指令Rからの経過時間が燃料再開要求準備時間β2を越えた後に、上記クランク角θCがエンジン12の所定行程としての燃料再開要求クランク角θC *に到達したか否かを判定し、その判定結果に基づいて上記燃料供給再開指令Fを上記燃料供給制御手段112に出力する。また、上記燃料再開要求時間β2は上記(=α1−ε1−δ)にとらわれず任意の時間に設定することも可能である。
図11は、前記電子制御装置60の制御作動の要部すなわち車両減速走行時のフューエルカット作動中にロックアップクラッチ26の作動状態が締結状態から解放状態へ切り換えられるときの制御作動と燃料供給を再開する制御作動を説明するフローチャートであり、図12はその制御作動を説明するタイムチャートである。図11において前記燃料供給制御手段112および前記ロックアップクラッチ制御手段100に対応するSB1において、車両の減速走行時に燃費向上のためにロックアップクラッチ26が所定の締結圧PLUONで締結状態とされるように前記ロックアップ作動圧ソレノイドDSUの作動圧PDSUおよび前記ロックアップソレノイドSLの作動圧PSLが制御され、エンジン回転速度NEやアクセル開度Accなどに基づいて、エンジン12への燃料供給の停止指令Cが前記フューエルカット装置88に出力されて、フューエルカット作動が実行される。たとえば、停止指令Cはアクセル開度Accが零となった減速走行時にエンジン回転速度NEが予め決められた所定値、たとえば1400rpmに設定されたフューエルカット開始回転速度NEKを越え且つエンジン回転速度NEが低下に向かっている場合に、フューエルカット作動が開始されるように出力される(図12のtS時点より前)。この間は、ロックアップクラッチ26の作動状態を示すクラッチ解放制御実行フラグはロックアップクラッチ26を締結状態とするOFFとされ、また燃料供給制御の作動状態を示す燃料カット制御実行フラグはフューエルカット作動を実行するONとされるが、反対に燃料カット復帰要求フラグは燃料供給の再開を要求しないOFFとされる。
次に、前記減速時ロックアップクラッチ解放指令手段106に対応するSB2において、上記SB1において締結状態とされているロックアップクラッチ26を上記ロックアップクラッチ制御手段100によって解放状態とするための解放指令Rが出力されてもよいか否かが、たとえば、エンジン回転速度NE(ロックアップオン状態の時には入力回転速度NINであってもよい)が予め設定されてる所定車速たとえば10km/h以下となった否かで判定される。このSB2の判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられるが、肯定される場合(図12のtS時点)は前記クラッチ解放制御実行フラグがロックアップクラッチ26を解放状態とするONとされるとともに、前記燃料供給再開指令手段114に対応するSB3において、前記エンジン完爆時間εとして予め記憶された関係から現在のエンジン回転速度NE等に基づいてエンジン完爆時間ε1が算出され、また、エンジン回転速度NEおよび燃料再開要求クランク角θC *をパラメータとして予め記憶された関係からエンジン回転速度NEおよび燃料再開要求クランク角θC *に基づいて所定行程時間δが算出され、そのエンジン完爆時間ε1とその所定行程時間δと前記クラッチ解放予定時間α1とに基づいて所定閾値時間としての燃料再開要求準備時間β2(=α1−ε1−δ)が設定され、上記解放指令Rからの経過時間たとえばクラッチ解放経過カウンタの出力値であるクラッチ解放経過時間が上記燃料再開要求時間β2を越えたか否かが判定される。このSB3の判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられるが、肯定される場合(図12のtF’時点)は、同じく前記燃料供給再開指令手段114に対応するSB4において、クランク角カウンタの出力値であるクランク角θCがエンジン12の所定行程としての燃料再開要求クランク角θC *に到達したか否かが判定される。
このSB4の判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられるが、肯定される場合は、同じく前記燃料供給再開指令手段114に対応するSB5において、ロックアップクラッチ26が実際に解放されるときにエンジン12が完爆するように、エンジン12への燃料供給が再開されるためのすなわち上記SB1におけるフューエルカット作動が終了されるためのエンジン12への燃料供給の停止指令Cの出力が中止されるように燃料供給再開指令Fが出力される(図12のtF時点)。したがって、前記燃料カット制御実行フラグはフューエルカット作動を実行しないOFFとされるが、反対に燃料カット復帰要求フラグ(燃料カットキャンセル要求フラグに同じ)は燃料供給の再開を要求するONとされる。つづく、前記燃料供給制御手段112に対応するSB6において、フューエルカット作動が終了するようにエンジン12への燃料供給の停止指令Cの出力が中止されて、エンジン12への燃料供給が再開される。これによって、前記ロックアップクラッチ26が実際に解放されるときに前記エンジン12は速やかに完爆することになる(図12のtR時点)。なお、前記クラッチ解放制御実行フラグは、前述の図9、図10に示す実施例と異なり、図12のtR時点においてOFFとされてもよい。
上述のように、本実施例によれば、燃料供給制御手段112(SB1)によるエンジン12への燃料供給の停止作動中に、減速時ロックアップクラッチ解放指令手段106(SB2)によってクラッチの解放指令Rが出力されてロックアップクラッチ26が実際に解放されるときにエンジン12が完爆するように、燃料供給再開指令手段114(SB5)によって燃料供給制御手段112(SB6)によるエンジン12への燃料供給を再開させる指令Fが出力されるので、ロックアップクラッチ26が実際に解放されるときにエンジン12が完爆する。つまりロックアップクラッチ26が実質締結状態であるときにエンジン12への燃料供給が再開されることになり、エンジン回転速度NEが急低下することなく速やかにエンジン12が完爆するとともに、エンジン12が完爆するときにはロックアップクラッチ26が実際に解放されているので、燃料供給の再開による燃料復帰ショックを抑制してドライバビリティーが好適に向上される。
また、本実施例によれば、前記燃料供給制御手段112(SB6)によって燃料供給が再開されてから前記エンジン12が完爆するまでの時間がエンジン回転速度NEに基づいて設定されるので、エンジン回転速度NEの違いに拘わらず、燃料供給再開後に速やかにエンジン12が完爆する。
また、本実施例によれば、前記燃料供給再開指令手段114(SB5)によって、前記エンジン12の行程が前記減速時ロックアップクラッチ解放指令手段106(SB2)による前記解放指令Rから前記エンジン12を最短の行程で完爆させるための予め設定された行程である所定行程としての燃料再開要求クランク角θC *に到達したときに前記燃料供給再開指令Fが出力されるので、ロックアップクラッチ26の実際の解放時期とエンジン12の完爆時期とがほぼ同じ時期になる。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
たとえば、前述の実施例の車両は、自動変速機としてベルト式無段変速機18を備えるものであったが、共通の軸心まわりに回転させられる一対のコーンと、その軸心と交差する回転中心回転可能な複数個のローラがそれら一対のコーンの間で挟圧され、そのローラの回転中心と軸心との交差角が変化させられることによって変速比が可変とされた所謂トラクション型無段変速機などであってもよい。このトラクション型無段変速機では、一対のコーンの間で挟圧されるローラが動力伝達部材として機能している。
また、前述の実施例の車両は、自動変速機としてベルト式無段変速機18を備えるものであったが、クラッチ或いはブレーキ等の係合装置の作動の組合せによって複数の変速段が構成されるような遊星歯車式などの有段自動変速機であってもよい。
また、前述の実施例では、エンジン12の動力を伝達するクラッチとしてロックアップクラッチ26を例示したが、前進用クラッチC1であっても適用され得る。要するに、エンジン12の動力を駆動輪に伝達する間の動力伝達経路において、そのエンジンの動力を断続できる装置であれば本発明は適用され得る。
また、前述の実施例の車両は、エンジン12の出力を流体を介して伝達するトルクコンバータ14を有するものであったが、トルクコンバータ14に替えて、流体継手(フルードカップリング)などの他の流体式動力伝達装置が採用されてもよい。
また、前述の実施例では、クラッチ解放時間αは予め実験等により求められた一定の値であったが、実際のクラッチ解放時間αを目標クラッチ解放時間α0とする学習制御が行われる場合は目標クラッチ解放時間α0が用いられてもよい。さらに、このクラッチ解放時間αは前記目標トルク容量および/または車両の減速状態によって変化する予め求められた関係から実際の目標トルク容量および/または車両の減速度に基づいて設定されてもよい。
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。