JP3050446B2 - 魚肉すり身及び/又は水産練製品の品質改良剤 - Google Patents

魚肉すり身及び/又は水産練製品の品質改良剤

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、品質改良剤に関するも
のであり、更に詳細には、ホエー蛋白質処理物を主成分
とする魚肉すり身及び/又は水産練製品の品質改良剤に
関するものである。また本発明は、この品質改良剤を用
いて製造した魚肉すり身及び/又は水産練製品自体にも
関するものであって、本発明は、こ(れら)の品質の安
定、弾力の補強、保水性の向上のほか、更に水産練製品
にあっては、すり身の一部代替、増量が可能となる等、
広範にして卓越した品質改良効果を奏するものである。
【0002】
【従来の技術】水産練製品の製造に使用する魚肉すり身
は、最近になって高品質のものが量的に不足する傾向に
ある。そこで品質の劣るものないしは品質にバラツキが
あるものを使用せざるを得ないのが現状であり、これら
を改良する目的で品質改良剤が使用されている。品質改
良剤としては、リン酸塩、アルコール系、酢酸系物質の
ほか、大豆蛋白質、小麦蛋白質、卵白等卵製品といった
動植物蛋白質系物質が使用され、また、ホエー蛋白質の
利用も一部試みられている(特開昭63−141566
号)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来既
知の品質改良剤は、いずれも次のような欠点は避けられ
ない。すなわち、第1に、大豆蛋白質、小麦グルテン等
小麦蛋白質といった植物性蛋白質は、風味上の観点から
その添加量が制限される。また、非植物性蛋白質、例え
ば、リン酸塩、アルコール系物質、酢酸系物質による改
良では、風味のみならず、食感も低下してしまう。
【0004】一方、動物性蛋白質にあっても、例えば卵
白は、これを大量に使用すると卵白臭が残るし、ホエー
蛋白質についても、単独では効果がなく、したがって事
前に熱変性ゲル化しておきしかる後に使用せねばなら
ず、厄介な前処理が必須であるだけでなく、奏される効
果も所期のものとはほど遠い。
【0005】このように、いずれの品質改良剤も満足で
きるものではなく、特に、多用されている動植物蛋白質
系の品質改良剤にあっては、大量に添加使用すると、風
味、色調、食感が変化し、また、生地粘度が低下し、保
型性に悪影響が出る等の欠点は避けられない。
【0006】次に第2に、水産練製品は、おでん等の具
材として使用される場合が多いが、おでん等を煮る工程
において、従来の品質改良剤では、おでん等水産練製品
に弾力ないし食感の低下が認められる。そして第3に、
高価な魚肉すり身の使用量を低下せしめる目的で、水産
練製品の主原料である魚肉すり身について、増量ないし
一部置換処理を行った場合、食感が柔らかく変化してし
まう。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記した従来
の品質改良剤の欠点を一挙に解決するためになされたも
のであって、各方面から検討した結果、効果も顕著でな
くしかも熱変性ゲル化処理という前処理が必須であると
ころから実用に供するまでには至らなかった従来既知の
ホエー蛋白質に敢えて着目し、ホエー蛋白質について再
度検討を行い、各種の誘導体、類縁体、処理物等につい
ても広範に検討し、そして、WPC、WPIといったホ
エー蛋白質処理物を用い、これに増粘剤、カルシウム塩
を配合し、更にpH調整剤を配合したところ、予期せざ
ることに、従来既知のホエー蛋白質の場合には熱変性ゲ
ル化処理という前処理が必須であるのに対して、前処理
が全く必要でなく、しかも卓越したゲル化力、保水力が
得られるという著効が奏されることを発見した。そして
更に、澱粉類を配合したところ、上記によってすり身の
弾力補強効果が奏されるうえ、更に、加水しても生地粘
度が低下しないこと、大量にすり身の増量、置換が可能
なこと、そして、おでん等による二次加熱処理でも弾力
その他物性の低下や変化が認められないという著効が奏
されることも発見した。
【0008】本発明は、これらの新知見に基づき、更に
研究の結果完成されたものであって、ホエー蛋白質処理
物を主成分とし、これに増粘多糖類、カルシウム塩類、
pH調整剤を配合し、必要あれば更に澱粉類を配合して
なることを基本的思想とする品質改良剤に関するもので
ある。以下、本発明を詳述する。
【0009】本発明に係る魚肉すり身及び/又は水産練
製品の品質改良剤は、上記したようにホエー蛋白質処理
物を主要成分とするものである。ホエー蛋白質処理物と
しては、ホエー蛋白質を濃縮、分離、精製、変性、修
飾、沈澱、分画等各種処理して得られるものをすべて包
含し、液状、ペースト状、粉末状のいずれのタイプも使
用可能である。
【0010】ホエー蛋白質処理物としては、ホエー蛋白
質濃縮物及びホエー蛋白質分離物が例挙される。先ず、
ホエー蛋白質濃縮物(Whey Protein Co
ncentrate、WPC)は、チーズやカゼインを
製造する際に副生してくるホエー(スイートホエー、カ
ゼインホエー)を濃縮し、結晶する乳糖を分離した液の
乾燥処理物を指称している。そしてこのWPCの多くは
その含有物の35〜80%が蛋白で、そのうち約60%
がβ−ラクトグロブリンで、約20%がα−ラクトアル
ブミンであり、更に約13%が免疫グロブリンからなっ
ており、通常は中性である。
【0011】ホエー蛋白質分離物(Whey Prot
ein Isolate、WPI)は、WPCとは区別
されるものであって、WPCよりも高純度に分離された
未変性ホエー蛋白質であり、灰分、脂肪、炭水化物がず
っと少なくなっている。特に脂肪分は大抵1%以下と少
なく練製品用品質改良剤には申し分ない素材である。ま
た、WPIはそれ自身の風味、色調も極めて希薄であ
り、この点においてもすぐれており、非常に使用しやす
いものである、さらにWPIは、蛋白質が未変性である
ため、水への溶解性も高く、また酸性領域においても高
い溶解性を保っている。そして増粘多糖類と併用する
と、粘度が大幅に上昇するという有用な性質も併せ有し
ている。
【0012】本発明において使用する増粘多糖類として
は、天然ガム類が広く用いられ、次のようなものが例示
される:キサンタンガム、グアーガム、ローカストビー
ンガム、トラガントガム、タマリンドガム、カラギーナ
ン、ファーセレラン、アラビアガム、ジェランガム、カ
ードラン、サイリュームシードガム等の1種又は2種以
上。
【0013】そして本発明においては、これら2成分に
更にカルシウム塩類を併用する。カルシウム塩類として
は、天然物、合成品、有機、無機、精製品、粗製品をと
わず、すべてのカルシウム塩ないしそれを含有する物質
が広く使用される。カルシウム塩類の非限定的例として
は次のものが挙げられる:卵殻、貝殻、骨から得た天然
カルシウム(炭酸カルシウム、リン酸カルシウム等を含
有成分とするもの)、天然カルシウムを焼成処理して得
た焼成カルシウム、塩化カルシウム、炭酸カルシウム、
リン酸カルシウム、にがりその他の1種又はそれ以上。
【0014】更に本発明においては、上記成分にpH調
整剤を更に配合する。pH調整剤としては、pHを調整
する性質を有する飲食可能なものであればすべてのもの
が使用でき、例えば、ポリリン酸塩、炭酸塩(炭酸ナト
リウム、炭酸カリウム等)、アルカリ(土)金属水酸化
物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシ
ウム、水酸化マグネシウム等)、その他が挙げられる。
【0015】本発明に係る品質改良剤は、これら4成分
を混合して用いれば良く、その混合割合に格別な限定は
なく適宜で良いが一応の目安は次のとおりである:ホエ
ー蛋白質処理物50〜99部;増粘多糖類0.1〜10
部;カルシウム塩類0.1〜10部;pH調整剤0.1
〜10部。
【0016】本発明においては、上記4成分の配合で充
分に所期の目的が達成され、特にすり身の弾力が補強強
化されるが、更に研究した結果、上記4成分に澱粉類を
配合したところ、上記した効果が更に増幅されただけで
なく、水産練製品に使用しているすり身の増量がはから
れ、あるいはその一部を置換することが可能となり、ま
た、おでん等水産練製品を二次加熱しても物性の低下が
ないという新しい効果を発見した。したがって、本発明
に係る品質改良剤は、更に澱粉類を配合したものを包含
するものである。
【0017】澱粉類としては、天然澱粉のほか、各種の
処理物、誘導体が広く使用することができ、その非限定
例としては、次のものが挙げられる:天然澱粉(バレイ
ショ、米、コーン、タピオカ、小麦その他天然起源の各
種澱粉);α化澱粉(例えば、澱粉に水を加えて加熱し
たもの、あるいは苛性ソーダ溶液等の膨潤剤で糊化した
もの);化工澱粉(澱粉を酸、アルカリ、酵素、熱を加
えて分解せしめる際の中間生成物、あるいは、澱粉を化
学修飾してなるものであって、例えば、可溶性澱粉、デ
キストリン、ブリティッシュガム、各種澱粉誘導体(酸
化澱粉、澱粉エステル、澱粉エーテル等))その他。こ
(れら)の澱粉類の配合割合は、1〜50部が適当であ
って、目的、使用すり身の種類等に合わせて上記範囲内
で最適値を選択すればよい。
【0018】本発明に係る品質改良剤は、すり身のみな
らず水産練製品のいずれについてもその品質を改良する
ことができる。その使用方法としては、上記した品質改
良剤をすり身及び/又は練製品の調製工程中又は製品に
対して一度にあるいは数回に分けて添加使用すればよ
い。また必要あれば、これら4ないし5成分を個々ある
いは適宜組み合わせて使用すればよい。品質改良剤は、
すり身ないし水産練製品に対して適当量使用すればよい
が、通常、使用する原料肉に対してその0.01〜20
部、好ましくは0.1〜10部、更に好ましくは0.2
〜3部使用するのが好適である。
【0019】本発明によれば、かまぼこ、ちくわ、はん
ぺん、さつま揚げ、魚団子、つみれ、揚げかまぼこ、魚
肉ソーセージ等の水産練製品のほか、その原料であるす
り身について、その品質を広く改良することができる。
【0020】
【作用】本発明に係る品質改良剤は、ホエー蛋白質処理
物に蛋白質と反応性の高い増粘多糖類を配合することに
より、粘度のみでなくゲル化力及び保水性を向上せし
め、これに更にカルシウム塩類を配合することによっ
て、カルシウムと反応性の高いホエー蛋白質のゲル化性
を向上せしめ、これら3者に更にpH調整剤を配合する
ことにより、上記3者の併用の場合よりも、ゲル物性
(ゲル化力、保水力)を大幅に向上せしめることがで
き、すり身に添加した場合、すり身の弾力補強、品質の
バラツキ補正といった著効が奏される。
【0021】また、本発明にしたがって更に澱粉類を配
合することによって、上記効果を更に高めることができ
るだけでなく、水産練製品に添加した場合、加水しても
生地粘度の低下が防止され、大量にすり身の増量、置換
が可能となり、また、二次加熱した場合の弾力の低下も
避けられ、おでん等の製造に非常に有利となる。
【0022】以下、本発明の実施例を記述する。
【0023】
【実施例1】原料としてスケトウスリ身(陸上二級)を
用い、下記表1に示すかまぼこ配合を常法にしたがって
サイレントカッターで混練し、チューブに充填し、坐り
条件を変えて加熱処理し、ケーシングかまぼこ(1)、
(2)、(3)を調製した。品質改良剤において、増粘
多糖類としては、キサンタンガムをWPCに対して2%
使用し、カルシウム塩としては貝殻カルシウムをWPC
に対して2%使用し、pH調整剤としてはポリリン酸ナ
トリウムを1%使用配合した。
【0024】
【表1】
【0025】このようにして調製した3種類のかまぼこ
について、レオメータ(不動工業社製)を用い、径7m
mプランジャーを使用して物性を測定し、下記表2の結
果を得た。その結果から明らかなように、かまぼこ
(3)(本発明)は非常にすぐれた物性値を示し、本発
明に係る品質改良剤がすぐれたすり身の弾力補強効果を
奏することが立証された。
【0026】
【表2】
【0027】
【実施例2】原料としてスケトウスリ身(陸上二級)を
用い、下記表3の配合により常法にしたがって揚げかま
ぼこ(1)、(2)、(3)を製造した。なお品質改良
剤の組成も同じく表3の下段に示したが、増粘多糖類と
しては、キサンタンガムとローカストビーンガムをWP
Cに各々1%添加し、カルシウム塩としては卵殻カルシ
ウムをWPCに0.5%添加し、pH調整剤としては炭
酸ナトリウムを1.5%添加し、澱粉類としてはバレイ
ショ澱粉を30%添加した。このような組成を有する品
質改良剤は、すり身に対して3%使用し、これに水のば
しとしてすり身に対して18%の加水を行った。
【0028】
【表3】
【0029】製造した揚げかまぼこについて、実施例1
と同様にしてゼリー強度(フライ後、及び90℃、1時
間のおでん処理後)、練上り生地粘度についての測定を
行い、下記表4の結果を得た。その結果から明らかにな
るように、本発明に係る品質改良剤(3)が水産練製品
においても卓越した効果を示すことが実証された。
【0030】
【表4】
【0031】
【発明の効果】本発明によれば、次のような著効が奏さ
れる。(1)すり身の弾力補強機能にすぐれ(すり身に
対して0.05〜5%好適には0.3〜2%で充分に所
期の効果が発揮される)、品質のバラツキが補整でき
る。(2)水産練製品の食感改良、弾力補強、保水性向
上効果が奏され、また、洋上すり身等高等品質のすり身
使用商品では食感をしなやかなものに改良できる。
(3)水産練製品の主原料であるすり身の一部増量、又
は、置換が可能となり、例えばすり身に対して0.5〜
10%好適には1〜3%使用することにより、6倍加水
で揚げかまぼこのすり身に対して約20%増量が可能と
なる。(4)水産練製品を具材として用い、例えばおで
んにしても、物性の変化が防止される。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平4−45773(JP,A) 特開 平4−20266(JP,A) 特開 昭59−169472(JP,A) 特開 昭62−285767(JP,A) 特開 昭63−141566(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A23L 1/325

Claims (10)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ホエー蛋白質処理物に、増粘多糖類、カ
    ルシウム塩類、pH調整剤を配合してなることを特徴と
    する魚肉すり身及び/又は水産練製品の品質改良剤。
  2. 【請求項2】 更に澱粉類を配合してなることを特徴と
    する請求項1に記載の品質改良剤。
  3. 【請求項3】 ホエー蛋白質処理物50〜99部、増粘
    多糖類0.1〜10部、カルシウム塩類0.1〜10部
    及びpH調整剤0.1〜10部を配合してなることを特
    徴とする請求項1に記載の品質改良剤。
  4. 【請求項4】 更に澱粉類を1〜50部配合してなるこ
    とを特徴とする請求項2に記載の品質改良剤。
  5. 【請求項5】 ホエー蛋白質処理物が、ホエー蛋白質濃
    縮物(WPC)及び/又はホエー蛋白質分離物(WP
    I)であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいず
    れか1項に記載の品質改良剤。
  6. 【請求項6】 増粘多糖類が、キサンタンガム、グアー
    ガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、トラガン
    トガム、タマリンドガム、アラビアガム、ジェランガ
    ム、カードラン、サイリュームシードガム及び/又は、
    ファーセレランであることを特徴とする請求項1〜請求
    項5のいずれか1項に記載の品質改良剤。
  7. 【請求項7】 カルシウム塩類が、天然カルシウム、そ
    れを焼成してなる焼成カルシウム、塩化カルシウム、炭
    酸カルシウム、リン酸カルシウム、及び/又は、にがり
    であることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか
    1項に記載の品質改良剤。
  8. 【請求項8】 pH調整剤が、ポリリン酸塩、炭酸塩、
    及び/又は、アルカリ(土)金属水酸化物であることを
    特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の
    品質改良剤。
  9. 【請求項9】 澱粉が、天然澱粉、それを処理してなる
    α化澱粉、及び/又は、化学修飾してなる化工澱粉であ
    ることを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか1項
    に記載の品質改良剤。
  10. 【請求項10】 請求項1〜請求項9のいずれか1項に
    記載の品質改良剤を用いてなる魚肉すり身及び/又は水
    産練製品。
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