JP3023256B2 - 誘導電動機の制御装置 - Google Patents

誘導電動機の制御装置

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JP3023256B2 JP5017528A JP1752893A JP3023256B2 JP 3023256 B2 JP3023256 B2 JP 3023256B2 JP 5017528 A JP5017528 A JP 5017528A JP 1752893 A JP1752893 A JP 1752893A JP 3023256 B2 JP3023256 B2 JP 3023256B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、速度検出器を持たず、
特に低周波領域で、電動機を同期速度以上の速度で回転
させる回生運転時においても、安定な制御を遂行するこ
とを意図した誘導電動機の制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】速度検出器や電圧検出器を用いることな
く誘導電動機を駆動する方式として、一般に、いわゆる
V/f一定制御方式が知られている。これは、電動機の
主磁束を維持するために、電動機端子電圧Vと周波数f
との比をほぼ一定に制御する方式である。この方式は簡
単な制御回路構成で実現することが可能であるが、周波
数fの低下に比例して電動機端子電圧Vも低下するの
で、特に低周波領域において、負荷状態の変化により安
定性が悪化することが知られている。
【0003】速度検出器を持たない機器構成のもとで、
低速トルク特性をも改善することができる方式として、
速度センサレス・ベクトル制御方式が考えられる。これ
は、電動機の回転磁界上で電動機磁束と平行なd軸と、
それに直角なq軸とからなるd−q座標系を設定し、電
動機の電流や電圧などをd−q座標系に変換し、交流量
を直流量として扱うベクトル制御の原理に基づく方式で
ある。この方式は速度検出器を用いることなく、高精度
な制御を実現することを目指したもので、より具体的な
方式が種々提案されている。一般的には、速度制御と電
流制御を行う構成のものであるが、制御精度を向上させ
るために、電圧検出器を必要としたり、制御回路構成が
複雑になることが多い。
【0004】速度検出器を持たず、しかも簡単な制御回
路構成のもとで低速トルク特性を改善する方式として、
図7に示す制御回路方式のものが知られている(特開平
2−70282号公報)。これは、電動機の電流や電圧
などをベクトル的に扱ってはいるものの、V/f一定制
御を基本としたものであって、従来のV/f一定制御に
おける低周波領域のトルク特性悪化の原因が主に電圧の
一次抵抗降下による電動機磁束の低下にあることに注目
し、負荷状態に応じて電動機磁束を維持するために必要
な電圧指令値を与える方式である。
【0005】ここで図7の装置の制御原理について説明
するのに先立ち、まず、同装置の回路構成について説明
する。
【0006】図7における主回路は、三相交流電源1か
らの三相交流電力を整流して直流電力に変換するコンバ
ータ2、このコンバータ2の出力直流電圧を平滑化する
平滑コンデンサ3、入力端子が平滑コンデンサ3の両端
に接続され、コンバータ2からの出力直流電力を交流電
力に変換する電圧形のインバータ4、およびインバータ
4の出力交流電力によって可変速駆動される誘導電動機
5からなっている。
【0007】図7における制御装置は、周波数制御部
6、電圧指令値演算部7、積分器8、座標変換器9、座
標変換器10、およびPWM制御回路11からなってい
る。
【0008】積分器8は一次周波数指令値ω1 を積分
して位相基準θを形成する。座標変換手段10は、電
流検出器21,22により検出される誘導電動機5の相
電流Iv ,Iw に基づき、位相基準θと同期して回転
する回転磁束座標系すなわちd−q座標系における、一
次電流I1 の電動機磁束と平行なd軸に直交するq軸成
分としてトルク成分I1qを演算する。なお、d−q座標
系とは、電動機の回転磁界上に定義された座標系であ
り、電動機の磁束と平行にd軸、それと直角にq軸をと
った座標系のことである。
【0009】周波数制御部6は、まず一次電流のトルク
成分I1qおよび交流電流のd軸成分指令値すなわち磁束
成分指令値I1d を用いて、次式によりすべり周波数ω
s を算出する。
【0010】 ωs =K・I1q/I1d …(1) ただし、K:比例ゲイン 次いで、すべり周波数ωs と周波数指令値ωr との和
として一次周波数指令値ω1 を演算する。すなわち、 ω1 =ωr +ωs …(2) 電圧指令値演算手段7は、一次周波数指令値ω1 、交
流電流のd軸成分指令値I1d 、座標変換手段10によ
って得られた検出交流電流のq軸成分I1q、および電動
機定数(一次抵抗R1 および一次自己インダクタンスL
1 )を用いて、一次電圧指令値のd軸成分V1d および
q軸成分V1q を次式に基づいて演算する。
【0011】 V1d =R1 1d …(3) V1q =R1 1q+ω1 1 1d …(4) 座標変換手段9は、電圧指令値演算手段7によって得ら
れた一次電圧指令値のd軸成分V1d およびq軸成分V
1q 、並びに積分器8によって得られた位相基準θ
用いて、座標変換により三相電圧指令値Vu
v ,Vw を形成する。
【0012】PWM制御回路11は三相電圧指令値Vu
,Vv ,Vw に基づいてインバータ4の出力をP
WM制御する。
【0013】さて角速度ω1 で回転するd−q座標系に
おいて、誘導電動機の定常状態の電圧電流方程式は次式
で与えられる。
【0014】 V1 =(R1 +jω1 1 )I1 +jω1 MI2 …(5) 0=jωs MI1 +(R2 +jωs 2 )I2 …(6) ただし、V1 :一次電圧(=V1d+jV1q) I1 :一次電流(=I1d+jI1q) I2 :二次電流(=I2d+jI2q) R1 :電動機の一次抵抗 R2 :電動機の二次抵抗 L1 :電動機の一次自己インダクタンス L2 :電動機の二次自己インダクタンス M :電動機の一次二次間の相互インダクタンス ω1 :電動機の同期速度 ωr :電動機の回転速度 ωs :すべり周波数(=ω1 −ωr ) 二次磁束鎖交数φ2 を相互インダクタンスMで除算した
商φ2 ′を考えると、これは電流の次元を持ち、二次磁
束鎖交数φ2 を与える一次側換算の等価励磁電流とな
る。すなわち、 φ2 ′=φ2 /M=(MI1 +L2 2 )/M …(7) この(7)式を用いて(5),(6)式を書き直すと次
のようになる。
【0015】
【数1】 ただし、σ=1−{(M2 /(L1 2 )} …(漏れ
係数) V1 =V1d+jV1q1 =I1d+jI1q φ2 ′=φd ′+φq ′ ここで、等価励磁電流φ2 ′は、本来のd軸成分φd
と、それに直交する誤差成分なq軸成分φq ′とからな
っているものとして表現されている。
【0016】誘導電動機の発生トルクTは次式で求めら
れる。
【0017】 T=n(1−σ)L1 (φd ′I1q−φq ′I1d) …(9) ただし、n:極対数 理想的なベクトル制御の条件は、φ2 ′=(一定)とい
うことであり、次式で表すことができる。
【0018】 φd ′=(一定) …(10) φq ′=0 …(11) このとき、(8)式の第3行および(9)式から以下の
関係が得られる。
【0019】 φd ′=I1d=(一定) …(12) T=n(1−σ)L1 φd ′I1q =n(1−σ)L1 1d1q …(13) この(13)式は、I1dがφd ′に等しく、I1qがトル
クTに比例することを表わしている。このことがI1d
よびI1qをそれぞれ一次電流の「磁束成分」および「ト
ルク成分」と呼ぶ所以である。
【0020】(10)〜(12)式を(8)式の第1行
および第2行に代入することにより次の電圧電流方程式
を得ることができる。
【0021】 V1d=R1 1d−ω1 σL1 1q …(14) V1q=R1 1q+ω1 1 1d …(15) つまり、(14),(15)式に示すように一次電流お
よび電動機定数を用いて電圧指令値を与えれば、(1
0),(11)式を満足し、φ2 ′=(一定)の制御を
実現することができる、ということである。
【0022】図8は(14),(15)式の電圧電流方
程式で表わされる誘導電動機の等価回路を示すものであ
る。図8において、E1 は一次端子電圧V1 から電動機
一次抵抗R1 による抵抗降下分I1 1 を差し引いた内
部誘起電圧を表わし、E1 ′は漏れ係数σを考慮した実
効誘起電圧を表わすものであり、各符号はすでに用いた
ものと同一である。
【0023】(8)式の第4行から次式を得ることがで
きる。
【0024】 I1q=(L2 /R2 )φd ′ωs …(16) 実は前述の(1)式はこの(16)式に基づいて得られ
ているものである。この(16)式により、すべり周波
数ωs は一次電流のトルク成分I1qに比例することが分
かる。すなわち、周波数制御に関しては、一次電流のト
ルク成分I1qに比例して定まるすべり周波数ωs を用い
ればよいことになるのである。
【0025】以上の原理に基づいて構成されているのが
図7の制御装置である。なお、前述の(3)式は、(1
4)式において右辺第2項を省略したものに相当する。
【0026】(14)式および(15)式において、σ
1 は1に比べて極めて小さく、低周波領域において
は、ω1 も十分小さいことから、負荷状態の変動すなわ
ちI1qの変動に対してV1dに関する(14)式の右辺第
2項の変動は無視することができる。他方、高周波領域
においては、σL1 が1に比べて極めて小さいとはいい
ながらω1 が大きくなるため、I1qの変動に対する(1
4)式の右辺第2項の変動も無視することができなくな
る。ところが高周波領域では、V1dがV1qより相当大き
い値を持っているため、一次電圧V1 (=(V1d 2 +V
1q 2 1/2 )としては、V1dの変動の影響は小さい。従
って、V1dに関する(14式)の右辺第2項は無視(省
略)することができる。従って、以降、V1dを表わす式
(14)の右辺第2項すなわち漏れインダクタンスに関
する成分は省略して考えるものとする。従ってまた、図
8の等価回路において、上述の省略により、電動機の誘
起電圧に関し、E1 ′=E1 とみなすことができること
になる。
【0027】図9は図7の制御装置による電動機制御の
ベクトル図を示したものである。電動機の誘起電圧E1
を維持するために、負荷(トルク成分電流)I1qに対し
電動機に流れる一次電流I1 による一次抵抗降下分R1
1 を補うような電圧指令値V1 を電動機端子電圧と
して供給することにより、電動機磁束相当電流Im を一
定に制御する(Im =I1d=(一定))ことが可能にな
る。
【0028】
【発明が解決しようとする課題】前述の速度センサレス
制御方式では、低周波領域で不安定となりやすく、特に
電動機を同期速度以上の速度で回転させる回生運転のも
とでは、制御不能状態に陥ることがある。これは、電動
機磁束に平行な磁束軸(dr 軸)と、制御で座標変換の
際に用いられる磁束軸(d軸)との間にズレを生ずるこ
と(以下、この現象を「軸ズレ」という)が主な原因と
考えられる。軸ズレが生じた場合、一次電流検出値I1
の座標変換が正しく行われなくなる。すなわち、検出一
次電流を座標変換して得られる一次電流の磁束成分I1d
およびトルク成分I1qと、各々の実際値I1dr ,I1qr
との間に誤差が生ずるのである。このため、与えられた
電圧指令値V1d ,V1q では、電圧の一次抵抗降下分
の補償が完全にはできない状態になり、電動機磁束が維
持できず、制御が不安定になるのである。
【0029】軸ズレは、実際の電動機定数(R1r)と制
御で用いる電動機定数(R1 )との不一致(これは、電
動機の温度変動に伴う電動機定数の変動、あるいは制御
定数初期設定ミスにより生じうる、いわゆるミスマッチ
である)が主な原因となるほかに、PWM制御のスイッ
チングの際にインバータ直流リンク部の短絡防止のため
に設けられるデッドタイムによっても生じうる。このこ
とを以下にさらに詳述する。
【0030】デッドタイムTd は出力電圧の誤差として
次式で表わされる。
【0031】 Td =ΔVd /(Vdc・fc ) …(17) ただし、ΔVd :デッドタイムによる誤差電圧 Vdc :直流電圧 fc :キャリア周波数 図10(a)に電動機を無負荷で運転した場合のベクト
ル図を示す。デッドタイムによる誤差電圧ΔVd は、電
動機一次電流I1 に対し、逆方向に作用する。これは、
一次電圧の指令値V1 =E1 +R1 1 に対する電圧
実際値V1 の誤差ΔVd =V1 −V1 となるため、電
動機の誘起電圧は漏れインダクタンスによる電圧降下を
省略すると、E1r=V1 −R1 1 となる。ここで、電
動機磁束電流Im は誘起電圧と直交関係にあるため、電
動機の実際のdr −qr 軸はd−q軸よりも進む。従っ
て、図10(b)に示すように、電動機を無負荷で駆動
した場合でも、制御上では僅かに力行運転(I1q>0)
という状態で安定する。この状態は、V1 −E1r=R
1r1 とすると、電圧指令値V1 に対し、実際の電圧
の一次抵抗降下分が大きくなった場合(R1r1 >R1
1 )であるとも考えられる。すなわち、デッドタイム
(R1 のミスマッチ)の影響は、運転周波数によっても
異なって現れる。誤差電圧ΔVd が一定であるとする
と、高周波領域では、誘起電圧E1 が十分大きいため、
供給される一次電圧指令値V1 も大きく、一次電圧指
令値に対する誤差電圧の割合は小さくなり、軸ズレも生
じ難くなる。これに対して低周波領域においては、内部
誘起電圧E1 が低いため、供給される一次電圧指令値V
1 も小さく、従って一次電圧指令値V1 に対する誤
差電圧ΔVd の割合が大きくなり、軸ズレが生じやすく
なる。これは、低周波領域ほど、不安定になりやすいと
いう事実に符合している。
【0032】上述の「軸ズレ」が生じた場合に、電動機
を同期速度以下の速度で運転する力行運転の場合、軸ズ
レは解消する方向に作用するが、同期速度以上の速度で
運転する回生運転の場合、逆に軸ズレは増加する方向に
作用する。これを以下に説明する。
【0033】電動機を力行運転する場合のベクトル図を
図11(a)に示す。力行運転のもとで負荷が加えられ
た場合、一般にすべりが大きくなり、電動機回転速度は
低下する。負荷のいかんにかかわらず電動機回転速度を
一定に維持するためには、すべりを補正するように、一
次周波数指令値ω1 を増大させる必要がある。その場
合、(1)式に従い負荷状態を表す一次電流トルク成分
1qからすべり周波数ωs を求め一次周波数指令値ω1
を決定するので、一次周波数指令値ω1 は負荷の増
大に応じて大きくなることになる。ここで電動機誘起電
圧E1 は、E1=E1 ′=Mω1 1d である。しか
るに一次電流のd軸成分指令値I1d は一定であること
から、一次周波数指令値ω1 の上昇に伴い、電動機に
供給される一次電圧指令値V1 =E1 +R1 1 も上
昇するが、デッドタイムによる誤差電圧ΔVd は無負荷
の場合と同一であるため、一次電圧指令値に対する誤差
電圧の割合としては無負荷状態の場合よりも小さくな
る。従って、図示のように、E1r′=V1 −R1 1
なり、軸ズレは小さくなる(この場合、dr −qr 軸は
r ′−qr ′軸にシフトする)。また、電動機磁束は
無負荷状態の場合より大きくなるように作用する(Im
<Im ′)ことが分かる。
【0034】同様に、回生運転状態になった場合を図1
1(b)に示す。回生運転状態になった場合は、力行運
転の場合と同様に考えると、誘起電圧E1 の低下に伴
い、一次電圧指令値V1 も低下するため、この一次電
圧指令値V1 に対する誤差電圧ΔVd の割合が大きく
なる。従って、E1r′=V1 −R1 1 となり、軸ズレ
も大きくなる(dr −qr 軸はdr ′−qr ′軸へとシ
フトする)。また、電動機磁束は無負荷状態の場合より
低下するように作用する(Im >Im ′)ことが分か
る。
【0035】図11(a),(b)は一次電流の磁束成
分指令値I1d とそれに対応する検出値I1dを一定(I
1d =I1d)と仮定した場合について示したものであ
る。この図から、負荷状態の変動によって電動機磁束が
変化することが分かる。逆に、電動機磁束を一定(Im
=Im ′)と仮定した場合は、負荷状態の変動によって
検出一次電流の磁束成分が変動する。この状態は図12
(a),(b)に示している。
【0036】力行運転の場合では、図12(a)に示す
ように、一次電流の磁束成分指令値I1d に対し、その
検出値I1dが小さくなる(I1d >I1d)。ところで、
一次電圧指令値V1 =E1 +R1 1 は、一次電流の
d軸成分指令値I1d に対する電圧の一次抵抗降下分R
1 1 =R1 1d +R1 1qが小さくなり、また、E
1r′=V1 −R1 1 であることから軸ズレは小さくな
るように作用する。
【0037】回生運転の場合には、図12(b)に示す
ように、一次電流の磁束成分指令値I1d に対し、その
検出値I1dが大きくなる(I1d <I1d)ため、力行運
転の場合と同様に考えて、与えられた電圧指令値V1
=E1 +R1 1 に対して、実際の電圧の一次抵抗降下
分R1 1 =R1 1d +R1 1qが大きくなり、ま
た、E1r′=V1 −R1 1 であることから、軸ズレは
大きくなるように作用する。
【0038】以上述べたように、低周波領域において、
力行運転の場合、軸ズレは解消し、電動機磁束も増加す
るように作用する。ところが、回生運転の場合には、軸
ズレが増加し、電動機磁束は低下するように作用する。
電動機磁束の低下は誘起電圧の低下を招き、制御が不安
定になりやすく、制御不能状態に陥るおそれがある。以
上のことから、同じ周波数で電動機を駆動しているとい
う条件のもとでも、力行運転の場合には安定に制御する
ことができても、回生運転の場合には不安定となり、制
御不能状態になることが起こり得るのである。
【0039】本発明は以上の問題を考慮してなされたも
のであって、特に低周波領域における回生運転の場合に
おいても安定に制御することができる誘導電動機の制御
装置を提供することを目的とする。
【0040】
【課題を解決するための手段】本発明による誘導電動機
の制御装置は、交流電圧指令値に応じた交流電圧により
インバータを介して誘導電動機を駆動する誘導電動機の
制御装置であって、誘導電動機に実際に流れる交流電流
の検出値を、一次周波数指令値と同期して回転する座標
系において、電動機磁束と平行なd軸成分とそれに直交
するq軸成分とに分離する第1の座標変換手段と、一次
周波数指令値、交流電流のd軸成分指令値、第1の座標
変換手段によって得られた検出交流電流のq軸成分、お
よび電動機定数から、一次電圧指令値のd軸成分および
q軸成分を得る電圧指令値演算手段と、交流電流のd軸
成分指令値および検出交流電流のd軸成分の間の差を用
いて、電圧指令値演算手段によって得られた電圧指令値
のd軸成分およびq軸成分を補正する電圧指令値補正手
段と、電圧指令値補正手段によって補正された電圧指令
値のd軸成分およびq軸成分を、一次周波数指令値を用
いて三相電圧指令値に座標変換しインバータに対する交
流電圧指令値とする第2の座標変換手段とを具備したこ
とを特徴とするものである。
【0041】
【作用】上記の制御装置によれば、交流電流のd軸成分
指令値と検出交流電流のd軸成分との差を用いて、電圧
指令値のd軸成分およびq軸成分を補正する電圧指令値
補正手段を設けたので、負荷状態の変動に対して電動機
磁束の変化を抑制することができる。特に、低周波領域
において、回生運転の場合にも軸ズレの増加を抑制する
ことができ、電動機磁束の低下をも抑制することができ
るため、制御が不安定になるのを防止することができ
る。
【0042】
【実施例】以下、図面を参照して本発明の実施例につい
て説明する。
【0043】図1は本発明の第1の実施例を示すもので
ある。この制御装置の基本原理は、従来技術の項で述べ
た図7のものと同一であるが、図1の制御装置は、電圧
指令値演算部7と座標変換器9との間に、本発明に従っ
て電圧指令値補正部12を付加している点において図7
の制御装置と相違する。
【0044】図2は、図1の制御装置における電圧指令
値補正部12について、その詳細を示したものである。
電圧指令値補正部12は、交流電流のd軸成分指令値I
1d および検出交流電流のd軸成分I1dの間の差(I1d
−I1d)を用いて、電圧指令値のd軸成分V1d およ
びq軸成分V1q を補正してそれぞれ新たな電圧指令値
のd軸成分V1d ′およびq軸成分V1q ′を得るもの
であって、その演算内容は次の演算式で表わすことがで
きる。
【0045】 V1d ′=V1d −ΔV …(18) V1q ′=V1q +ΔV …(19) ΔV=K1 (I1d −I1d) …(20) ただし、K1 :補正ゲイン 図3を参照して、図1,2の制御装置において電圧指令
値の補正が行われる様子を説明する。
【0046】すでに述べたように、低周波領域において
軸ズレが生じた状態で回生運転に入ったとき、無負荷状
態と同じ電動機磁束を維持することができたと仮定する
と、検出一次電流のd軸成分I1dは一次電流のd軸成分
指令値I1d より大きくなり(I1d <I1d)、軸ズレ
を増加させるように作用する。また、検出一次電流のq
軸成分I1qと実際のトルク電流成分I1qr との間には、
軸ズレによる誤差が生じ(I1q>I1qr )、検出一次電
流のq軸成分I1qにより推定されるすべり周波数ωs
も誤差が含まれることになる。これにより、一次周波数
指令値ω1 に誤差が生ずるため、誘起電圧E1 =Mω
1 1d にも誤差が含まれる状態になる。このとき、
検出一次電流のq軸成分I1qにより定まる誘起電圧E1
は実際のトルク電流成分I1qr により定められるべき誘
起電圧よりも高くなる。従って、一次電圧指令値V1
=E1 +R1 1 は実際に与えられるべき電圧に比べ、
d軸方向に小さく、q軸方向に大きく与えられることに
なる。
【0047】ここで、(18)〜(20)式に従い、一
次電流のd軸成分の偏差による補正を行った場合、図3
に示すように、一次電圧指令値V1 はd軸方向に増加
し、q軸方向に減少させるように作用する。d軸方向の
補正は、一次電流のd軸成分の誤差による電圧の一次抵
抗降下分の誤差(R1 1 <R1 1r)を補正する。q
軸方向の補正は、一次電流のq軸成分の誤差により生ず
る誘起電圧E1 の誤差を補正する。一次電圧指令値の補
正に伴い、実際の電圧指令値V1 も同様に変化するた
め、E1r′=V1 −R1 1 となり、軸ズレの増加を抑
制することは、電動機磁束の低下を抑制することにもつ
ながる。
【0048】同様の状態で、力行運転の場合について
は、一次電流のd軸成分の誤差(I1d−I1d <0)に
より軸ズレを減少させる方向に作用する。軸ズレの減少
により一次電流のd軸成分およびq軸成分の誤差も小さ
くなるので、電圧指令値の誤差も小さくなる。従って、
本発明による電圧補正は、力行運転の場合には、あまり
重要でないとも言える。
【0049】以上述べたように、低周波領域において、
回生運転を行っている場合でも、本発明に従って電圧指
令値の補正を行うことにより、軸ズレの増加を抑制し、
電動機磁束の減少を抑制するため、安定な制御を行うこ
とができる。
【0050】また、高周波領域では、軸ズレがほとんど
生じなくなるため、本発明の装置においても電圧指令値
の補正が行われない状態になるが、与えられる電圧指令
値に誤差が含まれ難くなるため、制御の安定性に関して
は問題ないと言える。
【0051】図2に示した実施例における電圧指令値補
正部12は図4に示すように変形することができる。こ
の実施例と図2の実施例との差異は、(18),(1
9)式で用いる電圧補正量ΔVの求め方にある。すなわ
ち、この実施例においては、電圧補正量ΔVを次の演算
式に従って求める。
【0052】 ΔV=K2 (I1d −I1d)/V1 …(21) ただし、K2 :補正ゲイン V1 =(V1d *2 +V1q *2 1/2 すでに述べたように、高周波領域においては、電圧指令
値の補正を行う必要性が低くなり、周波数によって出力
電圧指令値の大きさも変化することから、この実施例で
は、電圧補正量ΔVが電圧指令値V1 =(V1d *2
1q *2 1/2に反比例する構成となっている。
【0053】また、図2および図4に示した電圧指令値
補正部12においては、電圧補正量ΔVを演算する際、
電動機電流のd軸成分偏差(=I1d −I1d)を用い
て、比例動作制御のみを行う構成としたが、比例動作
(P)制御だけではなく、積分動作(I)制御をも併用
する、いわゆるPI動作制御を行う構成としてもよい。
【0054】さらに、図1の実施例においては周波数制
御部6を備えているが、場合によってはこれを省略して
図5に示す構成とすることもできる。周波数制御部とい
うのは、負荷に応じたすべり周波数ωs を推定し一次周
波数指令値ω1 を制御しているものであるが、周波数
制御を行わない場合は電圧の一次抵抗降下分R1 1
補償のみを行っても、従来のV/f一定制御と比べてト
ルク特性の改善を期待することができる。なお、周波数
制御部を省略することによって制御の安定性を損なうこ
とはない。
【0055】図6は、図1の制御装置における電流のd
軸成分指令値I1d を周波数指令値ωr の関数として
決定する電流d軸成分指令値演算回路13の実施例を示
したものである。電動機が定格回転速度を超える高周波
領域では電圧指令値V1 が出力電圧の限界値相当の値
を超える場合がありうる。ところが、出力電圧として
は、その限界値を超えることができないため、電圧が飽
和して電動機の磁束が弱まる。そこで、電圧指令値が出
力電圧の限界値を超える可能性の高い高周波領域(ωr
>ωlim 。ただし、ωlim は低周波領域と高周波領域
との境界を示す限界周波数)において電流のd軸成分指
令値I1d を、図6に示すように周波数指令値ωr
反比例するように定めるものである。この実施例によれ
ば電圧指令値が飽和する領域で特に良好に作用するた
め、制御の安定性をさらに向上させることができる。
【0056】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、特
に低周波領域で電動機を駆動する場合に、回生運転下で
あっても、電動機磁束を維持することが可能である。従
って、低周波から高周波にわたるすべての周波数領域に
おいて、力行運転たると回生運転たるとを問わず、誘導
電動機の安定な制御を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例による誘導電動機の制御装置
を示すブロック図。
【図2】図1における電圧指令値補正部の詳細を示すブ
ロック図。
【図3】図1の制御装置における電圧指令値の補正を説
明するためのベクトル図。
【図4】本発明における電圧指令値補正部に関する他の
実施例を示すブロック図。
【図5】本発明の他の実施例による誘導電動機の制御装
置を示すブロック図。
【図6】電流のd軸成分指令値を周波数指令値の関数と
して得る実施例を示すブロック図。
【図7】従来の誘導電動機の制御装置を示すブロック
図。
【図8】誘導電動機の等価回路を示す結線図。
【図9】誘導電動機の制御原理を説明するためのベクト
ル図。
【図10】デッドタイムによる軸ズレの発生を説明する
ためのベクトル図。
【図11】力行運転の場合の軸ズレの変化を説明するた
めのベクトル図。
【図12】回生運転の場合の軸ズレの変化を説明するた
めのベクトル図。
【符号の説明】
1 三相交流電源 2 コンバータ 3 平滑コンデンサ 4 インバータ 5 誘導電動機 6 周波数制御部 7 電圧指令値演算部 8 積分器 9 座標変換器 10 座標変換器 11 PWM制御回路 12 電圧指令値補正部 13 電流d軸成分指令値演算回路
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平6−38574(JP,A) 特開 平4−325893(JP,A) 特開 平1−206888(JP,A) 特開 平3−128690(JP,A) 特開 平2−32788(JP,A) 特開 平3−253288(JP,A) 特開 平5−292777(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H02P 5/408 - 5/412 H02P 7/628 - 7/632

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】交流電圧指令値に応じた交流電圧によりイ
    ンバータを介して誘導電動機を駆動する誘導電動機の制
    御装置であって、 誘導電動機に実際に流れる交流電流の検出値を、一次周
    波数指令値と同期して回転する座標系において、電動機
    磁束と平行なd軸成分とそれに直交するq軸成分とに分
    離する第1の座標変換手段と、 一次周波数指令値、交流電流のd軸成分指令値、第1の
    座標変換手段によって得られた検出交流電流のq軸成
    分、および電動機定数から、一次電圧指令値のd軸成分
    およびq軸成分を得る電圧指令値演算手段と、 交流電流のd軸成分指令値および検出交流電流のd軸成
    分の間の差を用いて、電圧指令値演算手段によって得ら
    れた電圧指令値のd軸成分およびq軸成分を補正する電
    圧指令値補正手段と、 電圧指令値補正手段によって補正された電圧指令値のd
    軸成分およびq軸成分を、一次周波数指令値を用いて三
    相電圧指令値に座標変換しインバータに対する交流電圧
    指令値とする第2の座標変換手段とを具備したことを特
    徴とする誘導電動機の制御装置。
  2. 【請求項2】請求項1に記載の装置において、電圧指令
    値演算手段の前段に、第1の座標変換手段によって得ら
    れた検出交流電流のq軸成分から、すべり周波数推定値
    を演算し、このすべり周波数推定値を周波数指令値に加
    算して一次周波数指令値を得る周波数制御手段を備えた
    ことを特徴とする誘導電動機の制御装置。
  3. 【請求項3】請求項1または2に記載の装置において、
    電圧指令値演算手段の前段に、交流電流のd軸成分指令
    値を周波数指令値の関数として演算する演算手段を備え
    たことを特徴とする誘導電動機の制御装置。
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