JP2999802B2 - ポリアニリン―繊維複合材料 - Google Patents

ポリアニリン―繊維複合材料

Info

Publication number
JP2999802B2
JP2999802B2 JP15575690A JP15575690A JP2999802B2 JP 2999802 B2 JP2999802 B2 JP 2999802B2 JP 15575690 A JP15575690 A JP 15575690A JP 15575690 A JP15575690 A JP 15575690A JP 2999802 B2 JP2999802 B2 JP 2999802B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
polyaniline
acid
soluble
polymer
film
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP15575690A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH0445929A (ja
Inventor
浩之 樋口
正男 阿部
彰 大谷
実 江副
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nitto Denko Corp
Original Assignee
Nitto Denko Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nitto Denko Corp filed Critical Nitto Denko Corp
Priority to JP15575690A priority Critical patent/JP2999802B2/ja
Publication of JPH0445929A publication Critical patent/JPH0445929A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP2999802B2 publication Critical patent/JP2999802B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Laminated Bodies (AREA)
  • Polymers With Sulfur, Phosphorus Or Metals In The Main Chain (AREA)
  • Paints Or Removers (AREA)
  • Macromolecular Compounds Obtained By Forming Nitrogen-Containing Linkages In General (AREA)
  • Treatments For Attaching Organic Compounds To Fibrous Goods (AREA)
  • Multicomponent Fibers (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は、ポリアニリン−繊維複合材料に関し、詳し
くは、酸化還元能や導電性等を有するポリアニリンの連
続した強靱なフイルムによつて表面が被覆されているポ
リアニリン−繊維複合材料に関する。
従来の技術 アニリンを化学酸化剤にて化学酸化重合して、ドーン
パントとしての電解質イオンを含み、電導度が10-6S/cm
以上である導電性有機重合体を製造する方法は既に知ら
れており、更に、かかる化学酸化重合による導電性有機
重合体の製造において、標準水素電極を基準とする還元
半電池反応における起電力として定められる標準電極電
位が0.6V以上である酸化剤が特に好適に用いられること
も、既に特開昭61−258831号公報に記載されている。
しかしながら、一般に、導電性有機重合体は、不溶不
融性であるので、キヤステイング法にてフイルム化する
ことできず、導電性有機重合体の応用を展開するうえで
大きい障害となつている。特開昭60−235831号公報や、
J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,26,1531(1988)に
記載されているように、アニリンの電解酸化重合によれ
ば、電極上に導電性有機重合体のフイルムを形成させる
ことができるが、フイルム形成面が電極表面に限られる
ために、大面積のフイルムを得ることが困難であるうえ
に、電解酸化によるために、製造費用が高い。しかも、
このフイルムは、強度が小さく、また、不溶不融性であ
る。
そこで、従来、有機溶剤に可溶性の中間体を製造し、
その溶液をキヤステイング法にてフイルム化した後、中
間体を物理的又は化学的手段にて導電性重合体に変換さ
せる方法が種々提案されている。しかし、この方法によ
るときは、高温での処理を必要としたり、或いは中間体
から導電性重合体への変換が必ずしも理論どおりに進行
しないので、製造面からも、得られるフイルムの物性の
面からも、導電性有機重合体フイルムの製造方法として
は、実用的ではない。
ポリピロール又はポリチオフエンの分野では、有機溶
剤に可溶性の重合体が知られている。即ち、長鎖アルキ
ル基を置換基として有するチオフエンやアルカンスルホ
ン酸基を置換基として有するピロールを電解酸化重合し
て、それぞれ有機溶剤可溶性のポリ3−アルキルチオフ
エン及び水溶性のポリピロールアルカンスルホン酸を得
ることができる。これら重合体は、いずれもその溶液か
らキヤステイング法にてフイルムを得ることができる。
しかし、この方法は、いずれも特殊な単量体を用いると
共に、これを電解酸化重合するので、製造費用が著しく
高い。
他方、アニリンの化学酸化重合の分野においては、最
近、アニリンに対して約1/4モル量のペルオキソ二硫酸
アンモニウムを酸化剤として作用させ、アニリンを化学
酸化重合させて、有機溶剤可溶性のポリアニリンを得る
ことができることが報告されている(A.G.MacDiarmid e
t al.,Synthetic Metals,21,21(1987);A.G.MacDiarmi
d et al.,L.Alcacer(ed.),Conducting Polymers,105
−120(D.Reidel Publishing Co.,1987)。しかし、こ
の重合体は、N−メチル−2−ピロリドンやジメチルス
ルホキシドのみならず、80%酢酸や60%ギ酸水溶液にも
可溶性であるので、その分子量は低い。また、重合体の
N−メチル−2−ピロリドンやジメチルスルホキシドの
溶液から自立性フイルムを得ることができることも記載
されている。更に、酢酸溶液から酢酸にてドープされた
導電性重合体フイルムを得ることができ、これをアンモ
ニアで脱ドープしたフイルムとすることも記載されてい
る。しかし、この脱ドープ状態のフイルムは、ポリアニ
リンの分子量が低いために、強度が小さく、折り曲げに
よつて容易に割れるので、実用に耐えない。
また、アニリンをペルオキソ二硫酸アンモニウムで酸
化して、テトラヒドロフランに溶解するポリアニリンを
得ることができることも知られている(J.Tang,Synthet
ic Metals,24,231(1988)。しかし、この重合体も、テ
トラヒドロフランに溶解するところからみて、分子量は
低いものとみられる。
他方、多孔質の繊維基材にアニリンを含浸させ、これ
を酸化剤溶液中に浸漬して、アニリンを酸化重合させる
と同時に、繊維基材に薄層状にポリアニリンを析出させ
て、ポリアニリン−繊維複合材料を得ることができるこ
とは、既に、特開昭61−108644号公報、特開昭61−1955
04号公報、特開昭61−266435号公報、米国特許第4,803,
096号明細書、米国特許第4,877,646号明細書に記載され
ているように知られている。しかし、このような方法に
よれば、繊維基材を被覆するポリアニリンは、ポリアニ
リン粒子が結晶的に析出したものであつて、不均質にな
りやすい。また、アニリンの酸化重合の液中にポリエチ
レンテレフタレート等の高分子フイルムを浸漬して、フ
イルム状にポリアニリンに析出させる方法によれば、得
られるポリアニリンはフイルムへの付着強度が低い。こ
のようなことから、容易に理解されるように、従来の方
法によつて得られるポリアニリンフイルムは、連続した
フイルムでなく、ポリアニリンが基材から剥離しやす
い。しかも、その強度が非常に低い。
発明が解決しようとする課題 本発明者らは、特に、アニリンの化学酸化重合によつ
て有機溶剤可溶性の高分子量有機重合体を得るべく鋭意
研究した結果、従来、知られているポリアニリンよりも
遥かに高分子量でありながら、脱ドープ状態において、
種々の有機溶剤に可溶性であつて、容易にその溶液から
キヤステイング法にて自立性のフイルムを得ることがで
き、しかも、このフイルムが強靱であり、可撓性にすぐ
れると共に、高い引張強度を有することを見出し、更
に、かかるフイルムにプロトン酸をドーピングすること
によつて、強靱な高分子量高導電性有機重合体フイルム
を得ることができることを見出している。
そこで、本発明者らは、かかるポリアニリンの利用に
ついて更に鋭意研究した結果、繊維基材の表面が脱ドー
プ状態又はドープ状態の上記ポリアニリンからなる連続
した強靱なフイルム(ポリアニリン層)によつて被覆さ
れている新規な複合材料を得ることができることを見出
して、本発明に至つたものである。
課題を解決するための手段 本発明によるポリアニリン−繊維複合材料は、一般式 (式中、m及びnそれぞれ繰返し単位中のキノンジイミ
ン構造単位及びフニレンジアミン構造単位のモル分率を
示し、0<m<1、0<n<1、m+n=1である。) を主たる繰返し単位として有するポリアニリンであつ
て、脱ドープ状態において有機溶剤に可溶性であり、且
つ、N−メチルピロリドン中、30℃で測定した極限粘度
〔η〕が0.40dl/g以上であるポリアニリンからなるフイ
ルムにて表面が被覆されていることを特徴とする。
特に、本発明においては、上記ポリアニリンは、脱ド
ープ状態において、457.9nmの波長の光で励起して得ら
れるレーザー・ラマンスペクトルにおけるパラ置換ベン
ゼンの骨格振動のうち、1600cm-1よりも高波数にあらわ
れる骨格延伸振動のラマン線の強度Iaと1600cm-1よりも
低波数にあらわれる骨格延伸振動のラマン線強度Ibの比
Ia/Ibが1.0以上であることが好ましい。
先ず、上記した所定の繰返し単位を有し、脱ドープ状
態において有機溶剤に可溶性にあるポリアニリン(以
下、有機溶剤可溶性ポリアニリンということがある。)
の製造について説明する。
この有機溶剤可溶性ポリアニリンは、反応系に存在す
るプロトン酸によつてドーピングされた導電性を有する
ポリアニリンを製造し、次いで、この導電性を有するポ
リアニリンを脱ドーピングすることによつて得ることが
できる。この導電性を有するポリアニリン(以下、導電
性ポリアニリンということがある。)は、上記溶剤可溶
性ポリアニリンと異なり、通常、有機溶剤に不溶性であ
る。
上記導電性ポリアニリンは、酸解離定数pKa値が3.0以
下であるプロトン酸の存在下に溶剤中にてアニリンに温
度を5℃以下、好ましくは0℃以下の温度に保持しつ
つ、標準水素電極を基準とする還元半電池反応における
起電力として定められる標準電極電位が0.6V以上である
酸化剤の水溶液をアニリン1モル当り、酸化剤の1モル
を、酸化剤1分子を還元するのに必要な電子数で割つた
量として定義される当量で、2当量以上、好ましくは2
〜2.5当量徐々に加えることによつて、得ることができ
る。
次いで、この導電性ポリアニリンは塩基性物質によつ
て脱ドーピングすることによつて、有機溶剤可溶性ポリ
アニリンを得ることができる。
上記したアニリンの酸化重合による導電性ポリアニリ
ンの製造において、上記酸化剤としては、二酸化マンガ
ン、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、過酸化水素、第二
鉄塩、ヨウ素酸塩等が特に好ましく用いられる。これら
の中で、例えば、ペルオキソ二硫酸アンモニウムや過酸
化水素は、その酸化反応において、共に1分子当りに2
個の電子が関与するので、通常、アニリン1モルに対し
て1〜1.25モルの範囲の量が用いられる。
上記アニリンの酸化重合において用いられるプロトン
酸は、酸解離定数pKa値が3.0以下であれば、特に、限定
されるものではなく、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、過塩
素酸、ホウフツ化水素酸、リンフツ化水素酸、フツ化水
素酸、ヨウ化水素酸等の無機酸、ベンゼンスルホン酸、
p−トルエンスルホン酸等の芳香族スルホン酸、メタン
スルホン酸、エタンスルホン酸等のアルカンスルホン
酸、ピクリン酸等のフエノール類、m−ニトロ安息香酸
等の芳香族カルボン酸、ジクロロ酸、マロン酸等の脂肪
族カルボン酸等を挙げることができる。また、ポリマー
酸も用いることができる。かかるポリマー酸としては、
例えば、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン
酸、ポリアリルスルホン酸、ポリビニル硫酸等を挙げる
ことができる。
用いるプロトン酸の量は、用いる酸化剤の反応様式に
依存する。例えば、二酸化マンガンの場合は、酸化反応
は、 MnO2+4H++2e-→Mn2+2H2O で示されるから、用いる二酸化マンガンの少なくとも4
倍モル量のプロトンを供給し得るプロトン酸を用いる必
要がある。また、過酸化水素の場合も、酸化反応は、 H2O2+2H++2e-→2H2O で示されるから、用いる過酸化水素の少なくとも2倍モ
ル量のプロトンを供給し得るプロトン酸を用いる必要が
ある。他方、ペルオキソ二硫酸アンモニウムの場合は、
酸化反応は、 S2O8 2-+2e-→2SO4 2- で示されるから、特に、プロトン酸を用いる必要はな
い。しかし、本発明においては、酸化剤として、ペルオ
キソ二硫酸アンモニウムを用いる場合であつても、この
酸化剤と等モル量のプロトン酸を用いることが好まし
い。
アニリンの酸化重合における溶剤としては、アニリ
ン、プロトン酸及び酸化剤を溶解し、且つ、酸化剤によ
つて酸化されないものが用いられる。水が最も好ましく
用いられるが、しかし、必要に応じて、メタノール、エ
タノール等のアルコール類、アセトニトリル等のニトリ
ル類、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキ
シド等の極性溶剤、テトラヒドロフラン等のエーテル
類、酢酸等の有機酸類も用いることができる。また、こ
れら有機溶剤と水との混合溶剤も用いることができる。
得られた導電性ポリアニリンを脱ドーピングして、有
機溶剤可溶性ポリアニリンを得るには、前述したアニリ
ンの酸化重合の間、特に、酸化剤溶液をアニリン溶液に
加える間に、反応混合物の温度を常に5℃以下に保持す
ることが重要である。従つて、酸化剤溶液は、アニリン
に徐々に加えて、反応混合物の温度が5℃を越えないよ
うにする必要がある。急激に酸化剤を加えるときは、外
部からの冷却によつても、反応混合物の温度が上昇し
て、低分子量の重合体を生成したり、或いは後述する脱
ドーピング後にも溶剤不溶性の導電性ポリアニリンが生
成する。
特に、反応温度は、0℃以下に保持するのが好まし
く、これによつて、脱ドーピング後、N−メチル−2−
ピロリドン中、30℃で測定した(以下、同じ。)極限粘
度〔η〕が1.0dl/g以上の高分子量の有機溶剤可溶性ポ
リアニリンを得ることができる。
このようにして、用いたプロトン酸によつてドープさ
れた導電性ポリアニリンを得ることができる。このよう
に、ドープ状態では、得られたポリアニリンは、反応系
に存在するプロトン酸と塩を形成しているために、多く
のドープ状態の導電性有機重合体についてそうであるよ
うに、一般には、後述するような有機溶剤に溶解しな
い。
しかしながら、上記プロトン酸にてドーピングされ
て、有機溶剤に不溶性である導電性ポリアニリンは、こ
れを脱ドーピングすることによつて、有機溶剤に可溶性
とすることができる。
その製造時に、反応系に存在するプロトン酸にてドー
プされている前記導電性ポリアニリンの脱ドーピング
は、一種の中和反応であるから、このような脱ドーピン
グを行なうには、ドーパントとしてのプロトン酸を塩基
性物質にて中和すればよい。このような塩基性物質は、
特に、限定されるものではないが、好ましくは、アンモ
ニア水、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リ
チウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の金
属水酸化物が用いられる。脱ドーピングは、上記アニリ
ンの酸化重合の後、反応混合物中に直接に塩基性物質を
加えてもよく、或いは導電性ポリアニリンを一旦単離し
た後、これに塩基性物質を作用させてもよい。
前記導電性ポリアニリンは、通常、10-6S/cm以上の電
導度を有して、黒緑色を呈するが、脱ドーピング後は、
紫色或いは紫がかつた銅色である。この変色は、重合体
中の塩構造のアミン窒素が遊離アミンに変化したためで
ある。電導度は、通常、10-10S/cm台である。
このようにして得られる脱ドープ状態のポリアニリン
は、高分子量を有し、しかも、種々の有機溶剤に溶解す
る。かかる有機溶剤としては、N−メチル−2−ピロリ
ドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N−N−ジメチル
ホルムアミド、ジメチルスルホキシド、1,3−ジメチル
−2−イミダゾリジノン、スルホラン等を挙げることが
できる。溶解度は、重合体の平均分子量や溶剤にもよる
が、重合体の0.5〜100%が溶け、1〜30重量%の溶液を
得ることができる。
特に、上記有機溶剤可溶性ポリアニリンは、N−メチ
ル−2−ピロリドンに高い溶解性を示し、通常、重合体
の20〜100%が溶解し、3〜30重量%溶液を得ることが
できる。しかし、テトラヒドロフラン、80%酢酸水溶
液、60%ギ酸水溶液、アセトニトリル等には溶解しな
い。
従つて、かかる有機溶剤可溶性ポリアニリンは、これ
を有機溶剤に溶解して、溶液とすれば、これをキヤステ
イング法にてフイルム化することができる。例えば、有
機溶剤可溶性ポリアニリン溶液をガラス板上にキヤステ
イングした後、溶剤の加熱乾燥の条件を選ぶことによつ
て、均一、強靭で可撓性にすぐれる自立性フイルムを得
ることができる。
更に、前記有機溶剤可溶性ポリアニリンをキヤステイ
ングして得られるフイルムは、溶剤の乾燥条件によつて
も、異なる性質を有する。通常、極限粘度〔η〕が0.40
dl/g以上である有機溶剤可溶性ポリアニリンのN−メチ
ル−2−ピロリドン溶液をガラス板上にキヤステイング
し、溶剤を乾燥させる場合に、乾燥温度が100℃以下で
あるときは、得られるフイルムは強度が尚十分に大きく
なく、また、N−メチル−2−ピロリドンにも一部溶解
する。しかし、乾燥温度を130℃以上とするときは、得
られるフイルムは可撓性にすぐれ、非常に強靭であつ
て、折り曲げても割れることがない。また、このように
して得られるフイルムは、N−メチル−2−ピロリドン
にも溶解せず、更に、濃硫酸にも溶解しない。このよう
に、キヤステイング後の高温での溶剤乾燥による重合体
の溶剤不溶化は、重合体中に存在し、或いは加熱時に生
成するラジカルのカツプリングによつて、重合体分子が
架橋するためであるとみられる。
従つて、勿論、上記有機溶剤可溶性ポリアニリンの有
機溶剤溶液は、塗料組成物として用いることができる。
この塗料組成物を適宜の基材上に塗布し、乾燥すれば、
均一、強靭で可撓性にすぐれる有機溶剤可溶性ポリアニ
リンの塗膜を得ることができる。
そこで、上記したフイルムや塗膜が強靭で可撓性にす
ぐれることには、極限粘度〔η〕が0.40dl/g以上の有機
溶剤可溶性ポリアニリンを用いることが望ましい。
有機溶剤可溶性ポリアニリンの溶液は、必要に応じ
て、他の有機溶剤で希釈されていてもよい。このような
希釈溶剤としては、N−エチル−2−ピロリドンと相溶
性を有するものが好ましく、従つて、例えば、アルコー
ル、ケトン、エステル、エーテル、ニトリル類を含む含
窒素有機溶剤等が好適に用いられる。
特に、例えば、メタノール、エタノール、プロピルア
ルコール、ブチルアルコール等のような脂肪族アルコー
ルが希釈溶剤として好適である。しかし、エチレングリ
コールのようなグリコール類も好適に用いることができ
る。また、アセトニトリル、テトラヒドロフランも好適
な希釈溶剤である。
また、希釈程度によつては、必要に応じて、例えば、
n−ヘキサンのように、N−メチル−2−ピロリドンに
相溶性をもたない炭化水素溶剤も希釈溶剤として用いる
ことができる。
本発明による前記可溶性ポリアニリンは、元素分析、
赤外線吸収スペクトル、ESRスペクトル、レーザー・ラ
マンスペクトル、熱重量分析、溶剤への溶解性、可視乃
至近赤外吸収スペクトルから、 (式中、m及びnはそれぞれ繰返し単位中のキノンジイ
ミン構造単位及びフニレンジアミン構造単位のモル分率
を示し、0<m<1、0<n<1、m+n=1であ
る。) を主たる繰返し単位として有する重合体である。
前記溶剤可溶性ポリアニリンからキヤステイング法に
て溶剤不溶化して得たフイルムも、溶剤可溶性重合体と
実質的に同じ赤外線吸収スペクトルを示し、また、元素
分析、赤外線吸収スペクトル、ESRスペクトル、レーザ
ー・ラマンスペクトル、熱重量分析、溶剤への溶解性、
可視乃至赤外吸収スペクトル等から、架橋構造を有する
ものの、実質的に同じ繰返し単位からなるものとみられ
る。
上記一般式にて示される有機溶剤可溶性ポリアニリン
において、m及びnの値は、重合体を酸化又は還元する
ことによつて調整することができる。即ち、還元するこ
とによつて、mを低減させ、nを増大させることができ
る。逆に、酸化すれば、mを増大させ、nを低減させる
ことができる。重合体の還元によつて、重合体中のキノ
ンジイミン構造単位が減少すると、重合体の溶剤への溶
解性が高められる。また、還元前に比べて、溶液の粘度
は低下する。
このような有機溶剤可溶性ポリアニリンの還元のため
には、抱水ヒドラジン、フエニルヒドラジン等のヒドラ
ジン類、水素化リチウムアルミニウム、水素化ホウ素リ
チウム等の金属水素化物、水素等が好適に用いられる。
有機溶剤、特に、N−メチル−2−ピロリドンに溶解す
るが、N−メチル−2−ピロリドンを還元しない点か
ら、フエニルヒドラジンが最も好ましく用いられる。他
方、有機溶剤可溶性ポリアニリンの酸化のために用いら
れる酸化剤は、一般式におけるフニレンジアミン構造単
位を酸化し得るものであれば任意であるが、標準水素電
極を基準とする還元半電池反応における起電力として定
められる標準電極電位が0.3V以上である酸化剤が特に好
適に用いられる。例えば、穏和な酸化剤である酸化銀が
好ましく用いられる。酸素吹き込みも有用である。強力
な酸化剤として、例えば、過マンガン酸カリウムや重ク
ロム酸カリウム等も用いることができるが、その使用に
際しては、重合体の劣化をもたらさないようにする必要
がある。
このように、有機溶剤可溶性ポリアニリンを還元する
ことは、重合体溶液の粘度を低減させるので、前述した
ドーピング状態で溶剤可溶性ポリアニリンの溶液を安定
に保つのに有用である。
前記有機溶剤可溶性ポリアニリンの還元において、還
元剤を過剰に用いた場合は、重合体中のキノンジイミン
構造単位の多くが還元されるために、キノンジイミン構
造単位へのプロトン酸によるドーピングによるセミキノ
ンラジカル(ポーラロン構造)の生成が少なく、従つ
て、得られる導電性ポリアニリンの電導度は、そのドー
ピング直後には、それほど高くない。しかし、ドーピン
グした重合体を空気中に放置することによつて、還元さ
れたフニレンジアミン構造単位が空気酸化によつて、徐
々にキノンジイミン構造単位に戻り、重合体層中に残存
するプロトン酸によつてドーピングされて、セミキノン
ラジカルを生成するので、高導電性の有機重合体を得る
ことができる。
このようにして得られる導電性有機重合体を薄膜とし
て用いたときの表面抵抗は、用いるプロトン酸によつて
異なるが、通常、105〜1010Ω/□程度である。
ここで、レーザー・ラマンスペクトルより得られる本
発明によるポリアニリンの特徴について、従来より知ら
れている所謂ポリアニリンと比較しつつ、説明する。
一般に、物質を構成する原子間の振動に関する情報を
得る手段として、振動分光学があり、これには赤外分光
とラマン分光とがある。赤外分光は、双極子モーメント
の変化をもたらす振動モードに活性であり、ラマン分光
は、分極率の変化をもたらす振動に活性である。従つ
て、両者は、相補的な関係にあつて、一般的には、赤外
分光で強くあらわれる振動モードは、ラマン分光では弱
く、他方、ラマン分光にて強くあらわれる振動モード
は、赤外分光では弱い。
赤外線吸収スペクトルは、振動準位間のエネルギー吸
収を検出することによつて得られ、ラマンスペクトル
は、光照射によつて分子が励起された後、基底状態のよ
り高い振動準位に落ちるときに生じる散乱光(ラマン散
乱)を検出することによつて得られる。このとき、照射
光に対する散乱光のエネルギー差から振動エネルギー準
位を知ることができる。
通常、ラマンスペクトルは、アルゴンレーザー等から
の可視光励起によつて得られる。ここに、試料が可視領
域に吸収帯を有する場合、照射レーザー光とその吸収帯
波長がマツチングすると、非常に強いラマン線が得られ
ることが知られている。この現象は共鳴ラマン効果と呼
ばれており、これによれば、通常のラマン線の104〜105
倍もの強いラマン線が得られる。かかる共鳴ラマン効果
によれば、照射したレーザー光の波長によつて励起され
る化学構造部分の情報がより強調されて得られることと
なる。従つて、照射するレーザー光の波長を変えなが
ら、ラマンスペクトルを測定することによつて、その試
料の化学構造をより正確に解析することができる。この
ような特徴は、赤外分光にはないラマン分光の特徴であ
る。
第1図は、本発明による有機溶剤可溶性であつて、N
−メチル−2−ピロリドン中、30℃で測定した極限粘度
〔η〕が1.2dl/gである脱ドープ状態のポリアニリンの
粉末をデイスク状に成形した試料について、励起波長45
7.9nmで照射して得たレーザー・ラマンスペクトルであ
る。ラマン線の帰属は以下のとおりである。1622及び15
91cm-1は、パラ置換ベンゼンの骨格延伸振動、1489及び
1479cm-1は、キノンジイミン構造のC=C及びC=Nの
伸縮振動、1220cm-1はC−N伸縮振動とC−C伸縮振動
の混在、1185及び1165cm1はC−Hの面内変角振動であ
る。
第2図は、Y.Furukawa et al.,Synth.Met.,16,189(1
986)に示された脱ドープ状態のポリアニリンについ
て、励起波長457.9nmで照射して得たレーザー・ラマン
スペクトルである。このポリアニリンは、白金電極上、
アニリンの電解酸化重合によつて得られたものである。
第1図にみられるように、本発明による溶剤可溶性の
脱ドープ状態のポリアニリンは、パラ置換ベンゼンの骨
格振動のうち、1600cm-1よりも高波数にあらわれる骨格
延伸振動のラマン線強度Iaと1600cm-1よりも低波数にあ
らわれるラマン線強度Ibとの比Ia/Ibが1.0以上である。
これに対して、第2図に示したポリアニリンを含む従来
より知られているポリアニリンは、化学酸化重合による
ものを含めて、すべて上記比Ia/Ibは1.0よりも小さい。
1622及び1591cm-1のラマン線は、共に、パラ置換ベン
ゼンの骨格延伸振動に基づくものである。還元状態にあ
るポリアニリンでは、キノンジイミン構造をもたないた
めに、1621cm-1にのみラマン線を生じるが、キノンジイ
ミン構造を有する脱ドープ状態のポリアニリンでは、前
述したように、1622及び1591cm-1にラマン線があらわれ
る。これらのラマン線は、第3図に示すような励起波長
依存性を示す。
励起波長を488.0nmから476.5nmを経て457.9nmへと短
波長側に変化させるにつれて、Ia/Ibは変化する。即
ち、488.0nmのときはIa/Ibは1.0より小さいが、457.9nm
では、1.0以上となつており、488.0nmのときと比べて、
Ia/Ib強度が逆転している。この逆転現象は、以下のよ
うに説明されよう。
第4図に本発明による溶剤可溶性ポリアニリンの電子
スペクトルを示す。647nmのピークは、ポリアニリンを
還元することによつて消失するので、キノンジイミン構
造に由来するものとみられ、334nmのピークは、逆にポ
リアニリンを還元することによつて強度を増すので、パ
ラ置換ベンゼンのπ−π遷移に由来するとみられる。
第4図に前記したラマン励起波長を示す。ここで、パラ
置換ベンゼン骨格延伸振動のバンドについては、励起波
長を488.0nmから457.9nmへと短波長側に変化させると、
1591cm-1のバンドと比較して、1622cm-1のバンドの共鳴
ラマン効果の共鳴条件がより有利になり、前述のような
相対強度の変化が生じると考えられる。
次に、第1図と第2図に示すスペクトルにおいて、15
91cm-1と1622cm-1のラマン線の相対強度が、同じ励起波
長(457.9nm)であるにもかかわらず、異なることは、
以下のように説明されよう。即ち、フニレンジアミン構
造のモデル化合物としてのN,N′−ジフエニル−p−フ
ニレンジアミンが1617cm-1のみにラマン線を有し、キノ
ンジイミン構造のモデル化合物としてのN,N′−ジフエ
ニル−p−ベンゾキノンジイミンが1568cm-1及び1621cm
-1にラマン線を有することから、下記(a)に示すよう
に、キノンジイミン構造と非共役のパラ置換ベンゼン環
は、短波長光の励起にて強度が増した1622cm-1のラマン
線を有し、下記(b)に示すように、キノンジイミン構
造と共役しているパラ置換ベンゼン環は、1591cm-1及び
1622cm-1のラマン線を有するものと推定される。
元素分析の結果から、本発明による脱ドープ状態の有
機溶剤可溶性ポリアニリンにおいては、キノンジイミン
の数とフニレンジアミンの数はほぼ等しいとみられるか
ら、かかる脱ドープ状態の溶剤可溶性ポリアニリンの構
造連鎖は、キノンジイミン構造とフニレンジアミン構造
との連結様式から、(c)に示すように、キノンジイミ
ン構造とフニレンジアミン構造の交互共重合体的連鎖
と、(d)に示すように、キノンジイミン構造とフニレ
ンジアミン構造のブロツク共重合体的連鎖の2つに分類
される。図中、矢印にて示すパラ置換ベンゼン環は、キ
ノンジイミンと非共役のベンゼン環を示し、上記交互共
重合体的連鎖においては、例えば、8量体連鎖単位当り
では2つであり、ブロツク共重合体的連鎖においては、
例えば、8量体連鎖単位当りでは3つである。連鎖単位
がもつと長い場合は、両者におけるキノンジイミンと非
共役のベンゼン環の数の差は、更に大きくなる。この差
が1591cm-1と1622cm-1のラマン線の相対強度の差となつ
てあらわれるといえる。
本発明による有機溶剤可溶性ポリアニリンにおいて
は、レーザー・ラマンスペクトルにおけるIa/Ib比が1.0
以上であるところから、キノンジイミン構造と非共役の
ベンゼン環が多く含まれており、かくして、前記ブロツ
ク共重合体的連鎖を有するものとみられる。
本発明によるポリアニリンの有機溶剤可溶性は、かか
るブロツク共重合体的連鎖を有することによつて合理的
に説明される。一般に、キノンジイミン構造におけるイ
ミン窒素(−N=)は、近傍の第2級アミノ基水素(−
NH−)と水素結合を形成することが知られているが(Ma
cromolecules,21,1297(1988))、第2級アミノ基相互
の間の水素結合は強くない。
従つて、ポリアニリンが前記交互共重合体的連鎖を有
する場合は、(f)に示すような水素結合の強固なネツ
トワークを形成する。従来より知られているポリアニリ
ンが脱ドープ状態でも、多くの有機溶剤に不溶性である
のは、かかる水素結合の強固なネツトワークを形成する
ことに起因するとみられる。これに対して、本発明によ
る脱ドープ状態の有機溶剤可溶性ポリアニリンのよう
に、重合体連鎖が前記ブロツク共重合体的連鎖である場
合は、通常は、ブロツク鎖が異なる長さを有するから、
(e)にみられるように、フニレンジアミン構造部分と
キノンジイミン構造部分が隣接しても、多くの水素結合
を形成することができず、溶剤が重合体鎖間に侵入し、
溶剤との間に水素結合を生じて、有機溶剤に溶解するこ
ととなる。ブロツク鎖がどの部分も完全に同じ長さを有
するとすれば、前記したような水素結合のネツトワーク
を形成するであろうが、このような構造を有する確率は
極めて小さいから、通常は、無視し得る。
更に、このような鎖間相互作用は、前記レーザー・ラ
マンスペクトルのC−H面内変角振動からも説明され
る。前記第2図に示した脱ドープ状態のポリアニリンの
C−H面内変角振動に帰属される1162cm-1のラマン線
は、ポリアニリンが還元されて、イミン窒素がすべて第
2級アミノ窒素に変換されると、1181cm-1に高波数シフ
トする。
前述したように、本発明による有機溶剤可溶性ポリア
ニリンは、脱ドープ状態において、C−H面内変角振動
に帰属されるラマン線として、1165及び1185cm-1の2つ
がある。この1185cm-1のラマン線は、従来より知られて
いる脱ドープ状態のポリアニリンにはみられないもので
あつて、還元状態におけるC−H面内変角振動に帰属さ
れる1181cm-1に近い値を示している。
これらの点から、本発明による有機溶剤可溶性ポリア
ニリンは、脱ドープ状態において、ブロツク共重合体的
連鎖を有し、還元構造の雰囲気を有すると思われる。こ
のことより、高分子量であるにもかかわらず、有機溶剤
に対して高い溶解性を有するのであろう。以上のよう
に、本発明によるポリアニリンは、従来より知られてい
るポリアニリンとは異なる構造連鎖を有する新規な重合
体である。
このように、本発明によるポリアニリンは、繰返し単
位として、前述したようなブロツク共重合体的連鎖にて
キノンジイミン構造単位とフニレンジアミン構造単位を
有するので、プロトン酸にてドーピングされた状態にお
いては、酸化還元反応を伴なわずに、酸塩基反応のみに
よつて、導電性を有するものとして説明される。この導
電機構は、A.G.MacDiarmidらによるものであつて(A.G.
MacDiarmid et al.,J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,1987,17
84)、プロトン酸によるドーピングによつて、下に示す
ように、キノンジイミン構造がプロトン化され、これが
セミキノンカチオンラジカル構造をとつて、導電性を有
するものである。かかる状態は、ボーラロン状態と呼ば
れる。
前述したように、本発明による脱ドープ状態で有機溶
剤可溶性のポリアニリンは、これを有機溶剤に溶解し、
キヤステイング法にて自立性フイルムとすることがで
き、また、適宜の基材上にキヤステイング法にてフイル
ム化して、複合フイルムを得ることもできる。そして、
かかるフイルムは、これをプロトン酸によつてドーピン
グすることによつて、容易に導電性フイルムを与える。
本発明において、溶剤可溶性ポリアニリンの溶液は、
好ましくはプロトン酸のアンモニウム塩を含む溶液組成
物とされる。
本発明において、プロトン酸のアンモニウム塩を構成
する好ましいプロトン酸として、酸解離定数pKa値が4.8
以下である有機酸のほか、ホウフツ化水素酸、リンフツ
化水素酸、過塩素酸、硫酸、塩酸、硝酸等の無機酸を挙
げることができる。
上記酸解離定数pKa値が4.8以下である有機酸は、脂肪
族、芳香族、芳香脂肪族、脂環式等の一又は多塩基酸を
含み、更に、このような有機酸は、水酸基、ハロゲン、
ニトロ基、シアノ基、アミノ基等を有していてもよい。
従つて、かかる有機酸の具体例として、例えば、酢酸、
n−酪酸、ペンタデカフルオロオクタン酸、ペンタフル
オロ酢酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、ジクロ
ロ酢酸、モノフルオロ酢酸、モノブロモ酢酸、モノクロ
ロ酢酸、シアノ酢酸、アセチル酢酸、ニトロ酢酸、トリ
フエニル酢酸、ギ酸、シユウ酸、安息香酸、m−ブロモ
安息香酸、p−クロロ安息香酸、m−クロロ安息香酸、
p−クロロ安息香酸、o−ニトロ安息香酸、2,4−ジニ
トロ安息香酸、3,5−ジニトロ安息香酸、ピクリン酸、
o−クロロ安息香酸、p−ニトロ安息香酸、m−ニトロ
安息香酸、トリメチル安息香酸、p−シアノ安息香酸、
m−シアノ安息香酸、チモールブルー、サリチル酸、5
−アミノサリチル酸、o−メトキシ安息香酸、1,6−ジ
ニトロ−4−クロロフエノール、2,6−ジニトロフエノ
ール、2,4−ジニトロフエノール、p−オキシ安息香
酸、ブロモフエノールブルー、マンデル酸、フタル酸、
イソフタル酸、マレイン酸、フマル酸、マロン酸、酒石
酸、クエン酸、乳酸、コハク酸、α−アラニン、β−ア
ラニン、グリシン、グリコール酸、チオグリコール酸、
エチレンジアミン−N,N′−二酢酸、エチレンジアミン
−N,N′−二酢酸、エチレンジアミン−N,N,N′,N′−四
酢酸等を挙げることができる。
また、有機酸は、スルホン酸又は硫酸基を有するもの
であつてもよい。このような有機酸としては、例えば、
アミノナフトールスルホン酸、メタニル酸、スルフアニ
ル酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、ラウリ
ル硫酸、キシレンスルホン酸、クロロベンゼンスルホン
酸、1−プロパンスルホン酸、1−ブタンスルホン酸、
1−ヘキサンスルホン酸、1−ヘプタンスルホン酸、1
−オクタンスルホン酸、1−ノナンスルホン酸、1−デ
カンスルホン酸、1−ドデカンスルホン酸、ベンゼンス
ルホン酸、スチレンスルホン酸、p−トルエンスルホン
酸、ナフタレンスルホン酸等を挙げることができる。
更に、有機酸は、ポリマー酸であつてもよい。このよ
うなポリマー酸としては、例えば、ポリビニルスルホン
酸、ポリビニル硫酸、ポリスチレンスルホン酸、スルホ
ン化スチレン−ブタジエン共重合体、ポリアリルスルホ
ン酸、ポリメタリルスルホン酸、ポリ−2−アクリルア
ミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ポリハロゲン化
アクリル酸等を挙げることができる。
ナフイオン(米国デユポン社登録商標)として知られ
ている含フツ素重合体も、ポリマー酸として好適に用い
られる。
他方、本発明において、プロトン酸アンモニウム塩を
構成するための塩基としては、例えば、アンモニアのほ
か、アルキルアミン、アリールアミン等の有機アミンが
用いられる。有機アミンの具体例としては、例えば、メ
チルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチ
ルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、n−プ
ロピルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリ−n−プ
ロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、
sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、エチル−n
−プロピルアミン等を挙げることができる。
特に、本発明においては、プロトン酸アンモニウム塩
は、揮発し難いプロトン酸と揮発しやすい塩基とからな
るアンモニウム塩が好ましく、例えば、かかるアンモニ
ウム塩として、p−トルエンスルホン酸アンモニウムを
挙げることができる。
本発明において、溶液組成物は、このように、前記脱
ドープ状態で可溶性のポリアニリンとプロトン酸のアン
モニウム塩とを溶解含有してなり、ここに、プロトン酸
のアンモニウム塩は中性の塩であるために、上記脱ドー
プ状態で可溶性のポリアニリンは、プロトン酸のアンモ
ニウム塩によつてはドーピングされず、しかも、定に溶
液状態にて存在する。
しかし、かかる溶液を適宜の基材上に流延し、乾燥さ
せて、ポリアニリンを膜化させるとき、揮発性の高いア
ンモニウムや有機アミンは、溶剤と共に揮散すると共
に、揮発性の低いプロトン酸は、膜中に残存して、ポリ
アニリンをドーピングし、導電性を与える。
ドーピング前は、フイルムは、反射光は銅色を呈し、
透過光は青色を呈するが、プロトン酸によるドーピング
後は、反射光は青色を呈し、透過光は緑色を呈する。ま
た、ドーピング後は、近赤外領域(1000〜2000nm)の反
射率が大幅に変化する。即ち、ドーピング前は、近赤外
光を殆ど反射するが、ドーピング後は、近赤外光を殆ど
吸収する。
ドーピングによつて得られる導電性薄膜の電導度は、
用いるプロトン酸のpKa値に依存し、前述したように、p
Ka値が4.8以下のプロトン酸が有効である。pKa値が1〜
4.8のプロトン酸を用いるときは、そのpKa値が小さいほ
ど、即ち、酸性が強いほど、得られる薄膜の電導度は高
い。しかし、pKa値が1よりも小さいときは、得られる
薄膜の電導度は、最早、殆ど変化せず、ほほ一定であ
る。但し、勿論、必要に応じて、pKa値が1以下のプロ
トン酸を用いてもよい。
このようにして、プロトン酸のドーピングによつて得
られる本発明による導電性薄膜の導電性は、通常、10-6
S/cm以上、多くの場合、104S/cm以上である。
この導電性薄膜、特に、フイルムは、強靭であつて、
折り曲げても、容易には割れない。しかし、このように
して得られる導電性薄膜は、プロトン酸の存在下に調製
された導電性重合体と同様に、プロトン酸にてドーピン
グされているために、前述した理由によつて、また、薄
膜調製時の溶剤の加熱蒸発工程で生成するラジカルのカ
ツプリングによる架橋のために、前記した有機溶剤には
溶解しない。
前記した溶液組成物において、プロトン酸のアンモニ
ウム塩の量は、脱ドープ状態のポリアニリンの製造条件
にもよるもので、厳密には、その範囲を定めることは困
難であるが、通常、ポリアニリン100重量部に対して、
プロトン酸のアンモニウム塩を、5〜300重量部の範囲
とすれば、望ましい結果を得ることができる。
前記溶液組成物の調製方法は、特に、限定されるもの
ではなく、溶剤可溶性ポリアニリンの溶液を調製した
後、その溶液にプロトン酸のアンモニウム塩を溶解させ
てもよいし、また、予め溶剤にプロトン酸のアンモニウ
ム塩を溶解させ、この溶液にポリアニリンを溶解させて
もよい。
本発明によるポリアニリン−繊維複合材料は、上述し
た脱ドープ状態にて溶剤可溶性のポリアニリンの溶液、
好ましくは、前述したような溶液組成物を調製し、これ
を繊維基材に塗布し、必要に応じて、加熱して、溶剤を
蒸発させることによつて、繊維基材の表面に強靭なポリ
アニリンのフイルム(ポリアニリン層)を形成すること
によつて得ることができる。例えば、繊維基材が糸の場
合は、好ましい態様によれば、糸をポリアニリン溶液に
浸漬した後、細い円筒中を通過させることによつて、ほ
ぼ一定量のポリアニリン溶液を糸に塗布することができ
る。
本発明によれば、繊維基材に塗布するポリアニリン
は、脱ドープ状態であつてもよいし、或いはドープ状態
であつてもよい。脱ドープ状態のポリアニリンの溶液を
用いるときは、その濃度は、通常、0.1〜5重量%の範
囲であり、好ましくは0.5〜2重量%の範囲である。こ
のように、用いるポリアニリン溶液の濃度を調整するこ
とによつて、繊維基材の表面に形成されるポリアニリン
のフイルムの厚さを調節することができる。
本発明において、繊維基材は、天然繊維、化学繊維、
合成繊維、無機繊維等、ポリアニリン溶液を形成する有
機溶剤に完全に溶解するものでなければ、特に限定され
るものではない。例えば、綿、麻、羊毛、絹等の天然繊
維、ガラス繊維、岩石繊維、炭素繊維等の無機繊維、レ
ーヨン、アセテート等の化学繊維、ポリアミド、ポリエ
ステル、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポ
リウレタン等の合成繊維等が用いられる。
このような繊維基材をポリアニリン溶液に浸漬し、用
いた有機溶剤にもよるが、通常、80〜150℃、好ましく
は100〜130℃に加熱して、溶剤を蒸発させれば、ポリア
ニリンが繊維基材の表面に強靭なフイルムを形成し、本
発明によるポリアニリン−繊維複合材料を得ることがで
きる。
このようにして得られるポリアニリン−繊維複合材料
において、ポリアニリンは、ラジカルのカツプリング反
応等による架橋反応を起こすらしく、加熱後のポリアニ
リンフイルムは、N−メチル−2−ピロリドンを含む種
々の有機溶剤に溶解しない。また、繊維基材の表面上の
ポリアニリンは、脱ドープ状態のポリアニリンは、鮮や
かな紺色を呈しているが、ドープ状態では緑色を呈して
いる。
発明の効果 以上のように、本発明によるポリアニリン−繊維複合
材料は、繊維の表面が高分子ポリアニリンからなる強靭
なフイルムで被覆されており、このようなフイルムは容
易には繊維から剥離しない。
本発明によるポリアニリン−繊維複合材料は、脱ドー
プ状態のポリアニリンが繊維の表面を被覆しているとき
は、アニオン吸着材として好適に用いることができ、ま
た、ドープ状態のポリアニリンが繊維の表面を被覆して
いるときは、帯電防止材として好適に用いることができ
る。更に、本発明によるポリアニリン−繊維複合材料
は、これを液体に浸漬するとき、その液体のpHによつて
色変化を生じるので、pH指示用途にも用いることでき
る。
実施例 以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明は
これら実施例により何ら限定されるものではない。
参考例1 (アニリンの酸化重合によるドープ状態の導電性有機重
合体の製造) 撹拌装置、温度計及び直管アダプターを備えた10容
量セパラブル・フラスコに蒸留水6000g、36%塩酸360ml
及びアニリン400g(4.295モル)をこの順序にて仕込
み、アニリンを溶解させた。別に、氷水にて冷却しなが
ら、ビーカー中の蒸留水1493gに97%濃硫酸434g(4.295
モル)を加え、混合して、硫酸水溶液を調製した。この
硫酸水溶液を上記セパラブル・フラスコに加え、フラス
コ全体を低温恒温槽にて−4℃まで冷却した。
次に、ビーカー中にて蒸留水2293gにペルオキソ二硫
酸アンモニウム980g(4.295モル)を加え、溶解させ
て、酸化剤水溶液を調製した。
フラスコ全体を低温恒温槽で冷却して、反応混合物の
温度を−3℃以下に保持しつつ、撹拌下にアニリン塩の
酸性水溶液に、チユービングポンプを用いて、直管アダ
プターから上記ペルオキソ二硫酸アンモニウム水溶液を
1ml/分以下の割合にて徐々に滴下した。最初、無色透明
の溶液は、重合の進行に伴つて緑青色から黒緑色とな
り、次いで、黒緑色の粉末が析出した。
この粉末析出時に反応混合物において温度の上昇がみ
られるが、この場合にも、本発明に従つて、高分子量重
合体を得るためには、反応系内の温度を0℃以下、好ま
しくは−3℃以下に抑えることが肝要である。粉末析出
後は、ペルオキソ二硫酸アンモニウム水溶液の滴下速度
を例えば8ml/分程度とやや速くしてもよい。しかし、こ
の場合にも、反応混合物の温度をモニターしつつ、温度
を−3℃以下に保持するように、滴下速度を調整するこ
とが必要である。かくして、7時間を要して、ペルオキ
ソ二硫酸アンモニウム水溶液の滴下を終了した後、更に
1時間、−3℃以下の温度にて撹拌を続けた。
得られた重合体粉末を濾別し、水洗、アセトン洗浄
し、室温で真空乾燥して、黒緑色の重合体粉末430gを得
た。これを直径13mm、厚さ700μmのデイスクに加圧成
形し、フアン・デル・ポー法によつて、その電導度を測
定したところ、14S/cmであつた。
(導電性有機重合体のアンモニウムによる脱ドーピン
グ) 上記ドープされている導電性有機重合体粉末350gを2N
アンモニウム水4中に加え、オートホモミキサーにて
回転数5000rpmにて5時間撹拌した。混合物は、黒緑色
から青紫色に変化した。
ブフナーろうとにて粉末を濾別し、ビーカー中にて撹
拌しながら、蒸留水にて濾液が中性になるまで繰り返し
て洗浄し、続いて、濾液が無色になるまでアセトンにて
洗浄した。この後、粉末を室温にて10時間真空乾燥し
て、黒褐色の脱ドーピングした重合体粉末280gを得た。
この重合体はN−メチル−2−ピロリドンに可溶性で
あつて、溶解度は同溶剤100gに対して8g(7.4g)であつ
た。また、これを溶剤として30℃で測定した極限粘度
〔η〕は1.23dl/gであつた。
この重合体は、ジメチルスルホキシド及びジメチルホ
ルムアミドには1%以下の溶解度であつた。テトラヒド
ロフラン、ピリジン、80%酢酸水溶液、60%ギ酸水溶液
又はアセトニトリルには実質的に溶解しなかつた。
この脱ドープ状態のポリアニリンの粉末をデイスク状
に成形した試料について、励起波長457.9nmで照射して
得たレーザー・ラマンスペクトルを第1図に示す。比較
のために、Y.Furukawa et al.,Synth.Met.,16,189(198
6)に示された脱ドープ状態のポリアニリンについて、
励起波長457.9nmで照射して得たレーザー・ラマンスペ
クトルを第2図に示す。このポリアニリンは、白金電極
上、アニリンの電解酸化重合によつて得られたものであ
る。
また、レーザー励起光の波長を変化させて、1400〜17
00cm-1の範囲について、ラマンスペクトルを測定した結
果を第3図に示す。励起波長を488.0nmから476.5nmを経
て457.9nmへと短波長側に変化させるにつれて、Ia/Ibが
変化し、457.9nmでは、1.0以上となつており、488.0nm
のときと比べて、Ia/Ib強度が逆転していることが示さ
れる。
更に、第4図に電子スペクトルを示す。
次に、上記有機溶剤可溶性ポリアニリンについて、N
−メチル−2−ピロリドン用のGPCカラムを用いて、GPC
測定を行なつた。カラムは、N−メチル−2−ピロリド
ン用のものを3種類連結して用いた。また、溶離液には
0.01モル/濃度の臭化リチウムのN−メチル−2−ピ
ロリドン溶液を用いた。第5図にGPC測定の結果を示
す。
この結果から、上記有機溶剤可溶性ポリアニリンは、
数平均分子量23000、重量平均分子量160000(いずれ
も、ポリスチレン換算)であつた。
同様に、反応条件を種々に変えて、N−メチル−2−
ピロリドン中、30℃で測定した極限粘度〔η〕の異なる
有機溶剤可溶性ポリアニリンを得た。これらについて、
極限粘度〔η〕とGPCによる数平均分子量及び重量平均
分子量を第1表に示す。
参考例2 (可溶性アニリン酸化重合体を用いる自立性フイルムの
調製) 参考例1にて得た脱ドープしたアニリン酸化重合体粉
末5gをN−メチル−2−ピロリドン95g中に少量ずつ加
え、室温にて溶解させて、黒青色溶液を得た。この溶液
をG3ガラスフイルターにて真空濾過したところ、フイル
ター上に残存した不溶物は極めて少量であつた。このフ
イルターをアセトンにて洗浄し、残存する不溶物を乾燥
後、重量測定したところ、75mgであつた。従つて、重合
体は、その98.5%が溶解し、不溶物は1.5%であつた。
このようにして得られた重合体溶液をガラス板上にキ
ヤステイングし、ガラス棒にてしごいた後、熱風循環乾
燥器中でN−メチル−2−ピロリドンを蒸発揮散させ
た。この後、ガラス板を冷水中に浸漬することによつ
て、重合体フイルムがガラス板より自然に剥離し、かく
して、厚さ40μmの重合体フイルムを得た。
このフイルムをアセトンで洗浄した後、室温で風乾し
て、銅色の金属光沢を有するフイルムを得た。
フイルムは、その乾燥温度によつて、強度及び溶解性
が異なる。乾燥温度が100℃以下のときは、得られるフ
イルムは、N−メチル−2−ピロリドンに少量溶解する
と共に、強度も比較的小さい。しかし、130℃以上の温
度で加熱して得られるフイルムは、非常に強靭であつ
て、また、N−メチル−2−ピロリドンやその他の有機
溶剤にも溶解しない。また、濃硫酸にも溶解しない。こ
のように、高温で加熱すると、その過程で重合体分子が
相互に架橋し、不溶性となるものとみられる。
このようにして得られた脱ドープ状態のフイルムは、
電導度はいずれも10-11S/cm台であつた。
また、フイルムは10000回の折り曲げによつても割れ
ず、引張強度は850kg/cm2であつた。
参考例3 (自立性フイルムのプロトン酸によるドーピング) 参考例2において、160℃で2時間加熱乾燥して得た
自立性フイルムをそれぞれ1Nの硫酸、過塩素酸及び塩酸
水溶液中に室温にて66時間浸漬した後、アセトンで洗浄
し、風乾して、それぞれ導電性フイルムを得た。
フイルムは、いずれも濃青色を呈し、電導度は、それ
ぞれ9S/cm、13S/cm及び6S/cmであつた。また、過塩素酸
にてドーピングしたフイルムの引張強度は520kg/cm2
あつた。
参考例4 (共に脱ドープ状態で可溶性の集合体及び不溶性フイル
ム化された重合体のスペクトル及び構造) 参考例1にて得た可溶性重合体粉末と参考例2にて得
た不溶性重合体フイルムのKBr錠剤法によるFT−IRスペ
クトルをそれぞれ第6図及び第7図に示す。参考例2に
て得た不溶性重合体フイルムのスペクトルには、残留溶
剤N−メチル−2−ピロリドンによるとみられる1660cm
-1の吸収が若干認められるが、2つのスペクトルは殆ど
同じてあるので、溶剤可溶性の重合体のキヤステイング
後の溶剤の加熱乾燥によつて、重合体は架橋によつて溶
剤不溶化するものの、化学構造において大きい変化が生
じていないことが認められる。
上記可溶性重合体粉末及び不溶性重合体フイルムの熱
重量分析の結果を第8図に示す。いずれも高い耐熱性を
有する。不溶性のフイルムがより高い温度まで分解しな
いので、濃硫酸に不溶性であることを考慮すれば、不溶
性フイルムにおいては、重合体分子が架橋していること
を示すものである。
また、第9図にESRスペクトルを示す。スピン濃度
は、可溶性重合体が12×1018スピン/gであり、加熱温度
を高めるにつれて、スピン濃度が高くなり、ラジカルが
加熱によつて生成することが示される。このラジカルの
カツプリングによつて、重合体が架橋して、加熱したフ
イルムが不溶性になるものとみられる。
次に、可溶性重合体と不溶性重合体について、元素分
析の結果を以下に示す。
可溶性重合体 C,77.19;H,4.76;N,14.86(合計 96.81) 不溶性重合体 C,78.34;H,4.99:N,15.16(合計 98.49) この元素分析に基づいて、C12.00に規格化した可溶性
重合体の組成式はC12.008.821.98であり、可溶性
の重合体の組成式はC12.009.111.99である。他
方、同様に、C12.00に規格化したキノンジイミン構造単
位及びフエニレンジアミン構造単位は、それぞれ下記の
とりである。
キノンジイミン構造単位 C12H8N2 フエニレンジアミン構造単位 C12H10N2 従つて、可溶性重合体及び溶剤不溶性重合体共に、前
述したように、キノンジイミン構造単位とフエニレンジ
アミン構造単位を主たる繰返し単位として有する重合体
である。
次に、参考例2にて得た脱ドープ状態のフイルムと参
考例3にて得た過塩素酸をドープしたフイルムの可視乃
至近赤外領域の反射スペクトルをそれぞれ第10図に示
す。脱ドープ状態においては、近赤外光を殆ど反射して
いるが、ドープ後には、近赤外光を吸収しており、反射
が殆どないことが認められる。これは、プロトン酸ドー
ピングによつて生成した導電性をもたらすポーラロン又
はバイポーラロンによる吸収に基づく。
また、脱ドープ状態のフイルムを過塩素酸にてドープ
することによつて、ESR吸収が大幅に増大し、スピン濃
度は3.8×1021スピン/gにも達する。これは生成したポ
ーラロンであるセキミノンラジカルに由来するものであ
る。
実施例1 参考例1にて得た極限粘度〔η〕1.23である脱ドープ
状態のポリアニリン400mgをN−メチル−2−ピロリド
ン20g又は40gに溶解して、2重量%濃度又は1重量%濃
度の溶解を調製した。この溶液にp−トルエンスルホン
酸一水和物400mg、フエニルビドラジン130mg及び25%ア
ンモニア水260mgを加えて、溶液組成物とした。
次に、ポリアミド繊維糸(レジロンミシン糸50 100D
/1×2(2))、ポリエステル繊維糸(ジヤツペスパン
ミシン糸60 60/3(2)、綿繊維糸(富士紡績(株)
製)、絹糸(K.K.K.8番16号)及び麻糸(タカギ繊維
(株)製CM−600)を上記1重量%又は2重量%ポリア
ニリン溶液に浸漬した後、100℃の熱風循環乾燥器内で
3分間加熱乾燥した。場合によつては、この操作を数回
繰り返した。
このようにして得た導電性繊維の帯電防止効果を静電
測定器(SIMCO社スタテイツクアナライザーEA−2)を
用いて測定した。帯電電圧1KVから100Vまで減衰するに
要した時間(帯電減衰時間という。)を第2表に示す。
1KVまで帯電しない繊維については、帯電した最高電圧
を目安とした。
また、得られたポリアニリン−繊維複合材料において
は、ポリアニリンがフイルム(ポリアニリン層)状に糸
表面に均一に付着しており、指で糸をしごいても、ポリ
アニリンフイルムは糸から剥離しなかつた。N−メチル
−2−ピロリドンに浸漬しても、ポリアニリンフイルム
は、溶解しなかつた。
比較例1 特開昭61−258831号公報に記載の方法に従って、有機
溶剤に不溶性のポリアニリンを調製した。即ち、300ml
容量のセパラブルフラスコに水45gを入れ、農塩酸4mlを
加え、更にアニリン5gを溶解させて、アニリン塩酸塩水
溶液を調製し、氷水でフラスコを冷却した。
別に、水28.8gに濃硫酸4.61gを加え、更に重クロム酸
カリウム1.84gを溶解させた酸化剤水溶液を調製し、こ
れを氷水で冷却した上記アニリンの塩酸塩水溶液中に、
撹拌下、滴下ろうとから30分間を要して滴下した。滴下
終了後、更に30分間撹拌し、この後、反応混合物をアニ
リン400ml中に投じ、2時間撹拌し、次いで、重合体を
濾別した。得られた重合体を蒸留水中で撹拌洗浄し、濾
別し、このようにして濾液が中性になるまで洗浄を繰り
返した。次いで、濾別した重合体をアセトンにより濾液
が無色になるまで洗浄を繰り返した。濾別した重合体を
五酸化リン上、室温で10時間真空乾燥して、有機溶剤不
溶性のポリアニリンを緑色粉末として得た。
このポリアニリンは、濃硫酸には溶解したが、N−メ
チル−2−ピロリドンをはじめ、殆どの有機溶剤に不溶
性であつた。また、このポリアニリンを約15%のアンモ
ニア水に投じて、2時間攪拌した後、濾別し、その後、
洗浄濾液が中性になるまで水洗し、更に濾液が無色にな
るまでアニリン洗浄を行ない、その後、室温にて10時
間、真空乾燥して、脱ドープ状態のポリアニリンを得
た。このポリアニリンも、N−メチル−2−ピロリドン
をはじめ、殆どの有機溶剤に不溶性であつた。
このポリアニリンの粉末120mgを錠剤成形機を用いて
直径13mm、厚み700μmのディスク状試料に成形し、こ
れを457.9nmのレーザー光にて励起してラマンスペクト
ルを測定した。ベンゼン環の伸縮振動ラマン線のうち、
1600cm-1よりも低波数のラマン線強度に対する1600cm-1
よりも高波数のラマン線強度比は1よりも小さしもので
あつた。
このようにして得られた脱ドープ状態の有機溶剤不溶
性のポリアニリン400mgを、実施例1と同様にして、N
−メチル−2−ピロリドン20g又は40gに溶解して溶液を
調製しようと試みたが、上記ポリアニリンはN−メチル
−2−ピロリドンに溶解せず、懸濁状態のままであつ
た。
そこで、この懸濁液に実施例1と同様にp−トルエン
スルホン酸一水和物、フエニルヒドラシン及びアンモニ
ア水を加え、懸濁組成物とし、これに実施例1において
用いたのと同じポリアミド繊維糸、ポリエステル繊維
糸、綿繊維糸、絹糸又は麻糸を浸漬した後、100℃の熱
風循環乾燥機内で3分間加熱乾燥した。それぞれの糸は
全く着色せず、ポリアニリンの糸へ付着は認められなか
つた。また、実施例1と同様にして帯電減衰時間を測定
したところ、いずれも170秒以上であつて、帯電防止効
果は認められなかつた。
比較例2 特開昭61−108644号公報に記載の方法にてポリアニリ
ンを調製した。即ち、10重量%塩酸アニリンのエタノー
ル溶液を調製し、これに実施例1において用いたのと同
じポリアミド繊維糸、ポリエステル繊維糸、綿繊維糸、
絹糸又は麻糸を浸漬した。別に、重クロム酸カリウム/
硫酸/水重量比が5/15/75の重クロム酸カリウムの硫酸
酸性水溶液を調製し、この中に上記塩酸アニリンのエタ
ノール溶液を含浸させた上記それぞれの糸を10分間浸漬
し、アニリンを酸化重合させて、糸の表面と内部にポリ
アニリンを析出させた。次いで、このように処理したそ
れぞれの糸を水洗し、更にアセトン洗浄した後、60℃で
1時間乾燥した。このような処理を3回繰り返したとこ
ろ、糸は黒緑色に着色した。しかし、この糸において
は、ポリアニリンは、糸の表面と内部に粉末状態で析出
しているにすぎず、糸を手で揉むと、ポリアニリンが糸
から剥がれ落ちた。そこで、ポリアニリンが最早、糸か
ら剥がれ落ちなくなるまで糸を揉んだ後、実施例1と同
様にして帯域減衰時間を測定したところ、いずれも170
秒以上であつて、帯電防止効果は認められなかつた。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明による脱ドープ状態で有機溶剤可溶性
のアニリン酸化重合体を457.9nmの波長の光で励起した
ときのレーザー・ラマンスペクトル、第2図は、従来よ
り知られているポリアニリンを457.9nmの波長の光で励
起したときのレーザー・ラマンスペクトル、第3図は、
第1図と同じアニリン酸化重合体を種々異なる励起波長
の光で励起したときのレーザー・ラマンスペクトル、第
4図は、本発明による脱ドープ状態で有機溶剤可溶性の
アニリン酸化重合体のN−メチル−2−ピロリドン溶液
の電子スペクトルである。 第5図は、本発明による溶剤可溶性ポリアニリンのGPC
による分子量分布を示すグラフ、第6図は、本発明によ
る脱ドープ状態で可溶性のアニリン酸化重合体のKBr錠
剤法によるFT−IRスペクトル、第7図は、上記溶剤可溶
性の重合体のキヤステイングして得た溶剤不溶性のフイ
ルムのKBR錠剤法によるFT−IRスペクトル、第8図は、
上記可溶性重合体及び不溶性重合体フイルムの熱重量分
析、第9図は、上記可溶性重合体を加熱したときのESR
スペクトル変化を示す図、第10図は、脱ドープ状態の重
合体フイルムとこれを過塩素酸にてドープしたフイルム
の近赤外領域の反射スペクトルである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 江副 実 大阪府茨木市下穂積1丁目1番2号 日 東電工株式会社内 (56)参考文献 特開 平2−69525(JP,A) 特開 平3−52929(JP,A) 特開 昭62−13435(JP,A) 特開 昭61−108644(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) D06M 15/61 - 15/63

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】一般式 (式中、m及びnはそれぞれ繰返し単位中のキノンジイ
    ミン構造単位及びフエニレンジアミン構造単位のモル分
    率を示し、0<m<1、0<n<1、m+n=1であ
    る。) を主たる繰返し単位として有するポリアニリンであつ
    て、脱ドープ状態において有機溶剤に可溶性であり、且
    つ、N−メチルピロリドン中、30℃で測定した極限粘度
    〔η〕が0.4dl/g以上であるポリアニリンからなるフイ
    ルムにて表面が被覆されていることを特徴とするポリア
    ニリン−繊維複合材料。
  2. 【請求項2】一般式 (式中、m及びnはそれぞれ繰返し単位中のキノンジイ
    ミン構造単位及びフニレンジアミン構造単位のモル分率
    を示し、0<m<1、0<n<1、m+n=1であ
    る。) を主たる繰返し単位として有するポリアニリンであつ
    て、脱ドープ状態において有機溶剤に可溶性であり、且
    つ、N−メチルピロリドン中、30℃で測定した極限粘度
    〔η〕が0.4dl/g以上であるポリアニリンに酸解離定数p
    Ka値が4.8以下のプロトン酸がドーピングされてなる導
    電性ポリアニリンからなるフイルムにて表面が被覆され
    ていることを特徴とするポリアニリン−繊維複合材料。
  3. 【請求項3】プロトン酸がポリビニルスルホン酸である
    ことを特徴とする請求項第2項記載のポリアニリン−繊
    維複合材料。
  4. 【請求項4】一般式 (式中、m及びnはそれぞれ繰返し単位中のキノンジイ
    ミン構造単位及びフニレンジアミン構造単位のモル分率
    を示し、0<m<1、0<n<1、m+n=1であ
    る。) を主たる繰返し単位として有するポリアニリンであつ
    て、脱ドープ状態において、有機溶剤に可溶性であり、
    N−メチルピロリドン中、30℃で測定した極限粘度
    〔η〕が0.4dl/g以上であり、且つ、457.9nmの波長の光
    で励起して得られるレーザー・ラマンスペクトルにおけ
    るパラ置換ベンゼンの骨格振動のうち、1600cm-1よりも
    高波数にあらわれる骨格延伸振動のラマン線の強度Iaと
    1600cm-1よりも低波数にあらわれる骨格延伸振動のラマ
    ン線強度Ibの比Ia/Ibが1.0以上であるポリアニリンから
    なるフイルムにて表面が被覆されていることを特徴とす
    るポリアニリン−繊維複合材料。
  5. 【請求項5】一般式 (式中、m及びnはそれぞれ繰返し単位中のキノンジイ
    ミン構造単位及びフニレンジアミン構造単位のモル分率
    を示し、0<m<1、0<n<1、m+n=1であ
    る。) を主たる繰返し単位として有するポリアニリンであつ
    て、脱ドープ状態において、有機溶剤に可溶性であり、
    N−メチルピロリドン中、30℃で測定した極限粘度
    〔η〕が0.4dl/g以上であり、且つ、457.9nmの波長の光
    で励起して得られるレーザー・ラマンスペクトルにおけ
    るパラ置換ベンゼンの骨格振動のうち、1600cm-1よりも
    高波数にあらわれる骨格延伸振動のラマン線の強度Iaと
    1600cm-1よりも低波数にあらわれる骨格延伸振動のラマ
    ン線強度Ibの比Ia/Ibが1.0以上であるポリアニリンに酸
    解離定数pKa値が4.8以下のプロトン酸がドーピングされ
    てなる導電性ポリアニリンからなるフイルムにて表面が
    被覆されていることを特徴とするポリアニリン−繊維複
    合材料。
  6. 【請求項6】プロトン酸がポリビニルスルホン酸である
    ことを特徴とする請求項第5項記載のポリアニリン−繊
    維複合材料。
JP15575690A 1990-06-14 1990-06-14 ポリアニリン―繊維複合材料 Expired - Fee Related JP2999802B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP15575690A JP2999802B2 (ja) 1990-06-14 1990-06-14 ポリアニリン―繊維複合材料

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP15575690A JP2999802B2 (ja) 1990-06-14 1990-06-14 ポリアニリン―繊維複合材料

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH0445929A JPH0445929A (ja) 1992-02-14
JP2999802B2 true JP2999802B2 (ja) 2000-01-17

Family

ID=15612729

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP15575690A Expired - Fee Related JP2999802B2 (ja) 1990-06-14 1990-06-14 ポリアニリン―繊維複合材料

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2999802B2 (ja)

Families Citing this family (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP3182331B2 (ja) * 1995-12-20 2001-07-03 日本バイリーン株式会社 クリーニング材
AU2003903431A0 (en) * 2003-07-03 2003-07-17 Commonwealth Scientific And Industrial Research Organisation Electroconductive textiles
CN102943317A (zh) * 2012-10-24 2013-02-27 长春理工大学 一种构筑光电双功能两股并行纳米纤维束的方法
JP6948272B2 (ja) * 2018-01-30 2021-10-13 信越ポリマー株式会社 導電性布帛の製造方法
CN115356288A (zh) * 2022-08-05 2022-11-18 山东大学 基于原位生长聚合物的微纳光纤气体传感器及制备方法

Also Published As

Publication number Publication date
JPH0445929A (ja) 1992-02-14

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP2739148B2 (ja) 有機重合体又は導電性有機重合体組成物のフィルム,繊維又は複合体の製造方法
JP2866996B2 (ja) 有機重合体溶液
Chevalier et al. Synthesis, characterization, and properties of poly (N-alkylanilines)
JP3694038B2 (ja) 固体電解コンデンサ
JP2631896B2 (ja) 固体電解コンデンサー及びその製造方法
KR19990063698A (ko) 전기전도성 중합체 및 그의 전구체를 해응집시키는 산화/환원방법 및 이에 의한 제품의 제조방법
US5728321A (en) Organic polymer, conducting organic polymer, production methods and uses of the same
JP2999802B2 (ja) ポリアニリン―繊維複合材料
JPH05247204A (ja) 導電性有機重合体の製造方法
JP2649731B2 (ja) 剥離シート及び粘着テープ
JP2942785B2 (ja) 有機重合体溶液
JP2766987B2 (ja) 電 池
JP2942786B2 (ja) 有機重合体組成物及びこれを用いる導電性有機重合体薄膜の製造方法
JP2909555B2 (ja) 電磁波シールド材の製造方法
JP2843938B2 (ja) 導電性有機重合体組成物フイルム及びその製造方法
JP3467345B2 (ja) 半導電性樹脂シート及びその製造方法
JP2777659B2 (ja) 抵抗ローラ
JP3186110B2 (ja) 固体電解コンデンサー及びその製造方法
JP2961213B2 (ja) 有機重合体及び導電性有機重合体組成物、それらの製造方法及び用途
JP2943119B2 (ja) 有機重合体、導電性有機重合体組成物及びそれらの製造方法
JP3204573B2 (ja) 有機重合体溶液
JPH04139257A (ja) 噴霧可能帯電防止材組成物
JPH1036667A (ja) 導電性ポリアニリン組成物及びこれを固体電解質とする固体電解コンデンサ
Nalwa Structural determination of a semiconductive tetramer of aniline by IR, UV-visible, ESR, XPS and mass spectroscopy techniques
JPH0450198A (ja) ポリアニリン単結晶

Legal Events

Date Code Title Description
LAPS Cancellation because of no payment of annual fees