JP3186110B2 - 固体電解コンデンサー及びその製造方法 - Google Patents

固体電解コンデンサー及びその製造方法

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JP3186110B2
JP3186110B2 JP24811391A JP24811391A JP3186110B2 JP 3186110 B2 JP3186110 B2 JP 3186110B2 JP 24811391 A JP24811391 A JP 24811391A JP 24811391 A JP24811391 A JP 24811391A JP 3186110 B2 JP3186110 B2 JP 3186110B2
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acid
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正男 阿部
実 江副
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、導電性有機高分子を固
体電解質として用いる固体電解コンデンサー及びその製
造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、大容量のコンデンサーとして知ら
れている電解コンデンサーには、電解液式と固体式とが
ある。このうち、固体電解質を用いる固体式コンデンサ
ーとしては、二酸化マンガン又は7,7,8,8−テトラシア
ノキノジメタン(TCNQ)錯体を用いる方式が知られ
ているが、前者は、インピーダンスが大きく、後者は、
熱安定性に乏しい等、種々の問題を有している。
【0003】そこで、近年、導電性有機高分子を固体電
解質として用いる固体電解コンデンサーが種々提案され
ている。例えば、特開昭63−158829号公報に
は、表面に酸化アルミニウム誘電体を形成させたアルミ
ニウム箔上にアルミニウムを真空蒸着し、これを陽極と
し、ステンレスからなる陰極との間に支持電解質と共に
ピロールを含む水溶液を電解酸化して、陽極上に導電性
ポリピロールの膜を生成させて、固体電解コンデンサー
を得ることが記載されている。
【0004】しかし、この方法によれば、酸化アルミニ
ウム誘電体皮膜が絶縁性であるために、この上に導電性
ポリピロールの薄膜を電解重合にて形成させるために、
予め誘電体皮膜の表面上にアルミニウムを蒸着する等の
作業を必要とし、製造工程が複雑であり、製造費用も高
くならざるを得ない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、有機溶
剤可溶性であつて、しかも、非常に高分子量のポリアニ
リンであつて、適宜の基材上に流延塗布することによつ
て、自立性のフイルムや薄膜を得ることができること、
更に、これらフイルムや膜を pKa値が4.8以下のプロト
ン酸にてドーピングすることによつて、導電性を付与し
得ることを見出している。
【0006】一方、実用に耐える固体電解コンデンサー
を得るためには、導電性高分子は、種々の環境下での耐
久性が要求され、なかでも、耐水性及び耐熱性は極めて
重要である。この点に関して、従来、ポリアニリンは、
同様に導電性高分子として知られているポリピロールに
比べて耐水性に劣るとされている。即ち、プロトン酸に
てドーピングされているポリアニリンが水に接触する
と、プロトン酸が脱ドープして、導電性の低下が起こる
のである。
【0007】そこで、本発明者らは、前記した有機溶剤
可溶性のポリアニリンについて更に研究を進めて、耐熱
性と共に耐水性にすぐれる導電性ポリアニリンを得るべ
く鋭意研究した結果、前記有機溶剤可溶性のポリアニリ
ンは、分子内にスルホン酸基を2個以上有するポリスル
ホン酸(以下、これを単にポリスルホン酸ということが
ある。)と共に有機溶剤に溶解することができ、かくし
て、この溶液を誘電体皮膜上に流延塗布し、乾燥するこ
とによつて、前述したような重合性単量体の電解酸化を
含む方法に比べて、格段に簡単な方法によつて、上記ポ
リスルホン酸をドーパントとして有する導電性ポリアニ
リン膜を固体電解質として形成して、誘電体皮膜との密
着性にすぐれ、高周波領域におけるインピーダンスが小
さく、静電容量が大きいと共に、耐久性及び信頼性にす
ぐれる固体電解コンデンサーを得ることができることを
見出して、本発明に至つたものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明による固体電解コ
ンデンサーは、皮膜形成金属上に形成された誘電体酸化
皮膜と、この誘電体酸化皮膜上に固体電解質として、一
般式
【0009】
【化1】
【0010】(式中、m及びnはそれぞれ繰返し単位中
のキノンジイミン構造単位及びフエニレンジアミン構造
単位のモル分率を示し、0<m<1、0<n<1、m+
n=1である。)を主たる繰返し単位として有するポリ
アニリンであつて、脱ドープ状態において有機溶剤に可
溶性であり、457.9nmの波長の光で励起して得られ
るレーザー・ラマンスペクトルにおけるパラ置換ベンゼ
ンの骨格振動のうち、1600cm-1よりも高波数にあら
われる骨格延伸振動のラマン線の強度Iaと1600cm
-1よりも低波数にあらわれる骨格延伸振動のラマン線強
度Ibの比Ia/Ibが1.0以上である有機溶剤可溶性
ポリアニリンに、分子内に2個以上のスルホン酸基を有
するスルホン酸がドーピングされてなる導電性高分子の
膜が形成されていることを特徴とする。
【0011】また、かかる本発明による固体電解コンデ
ンサーは、一般式
【0012】
【化1】
【0013】(式中、m及びnはそれぞれ繰返し単位中
のキノンジイミン構造単位及びフエニレンジアミン構造
単位のモル分率を示し、0<m<1、0<n<1、m+
n=1である。)を主たる繰返し単位として有するポリ
アニリンであつて、脱ドープ状態において有機溶剤に可
溶性であり、457.9nmの波長の光で励起して得られ
るレーザー・ラマンスペクトルにおけるパラ置換ベンゼ
ンの骨格振動のうち、1600cm-1よりも高波数にあら
われる骨格延伸振動のラマン線の強度Iaと1600cm
-1よりも低波数にあらわれる骨格延伸振動のラマン線強
度Ibの比Ia/Ibが1.0以上であるポリアニリンを
分子内に2個以上のスルホン酸基を有するポリスルホン
酸と共に有機溶剤に溶解させ、得られた溶液を誘電体皮
膜上に塗布し、乾燥させて、誘電体皮膜上に導電性ポリ
アニリンの膜を形成することによつて得ることができ
る。
【0014】特に、本発明においては、上記ポリアニリ
ンは、N−メチル−2−ピロリドン中、30℃で測定し
た極限粘度〔η〕が0.40dl/g以上であることが好まし
い。本発明において、固体電解質として用いられるポリ
アニリンからなる導電性高分子とは、一般式
【0015】
【化1】
【0016】(式中、m及びnはそれぞれ繰返し単位中
のキノンジイミン構造単位及びフエニレンジアミン構造
単位のモル分率を示し、0<m<1、0<n<1、m+
n=1である。)を主たる繰返し単位として有するポリ
アニリンであつて、脱ドープ状態において有機溶剤に可
溶性であり、457.9nmの波長の光で励起して得られ
るレーザー・ラマンスペクトルにおけるパラ置換ベンゼ
ンの骨格振動のうち、1600cm-1よりも高波数にあら
われる骨格延伸振動のラマン線の強度Iaと1600cm
-1よりも低波数にあらわれる骨格延伸振動のラマン線強
度Ibの比Ia/Ibが1.0以上である有機溶剤可溶性
ポリアニリンに、分子内にスルホン酸基を2個以上有す
るポリスルホン酸がドーピングされてなるものである。
【0017】上記のようなポリアニリンからなる導電性
高分子を誘電体皮膜上に形成するには、先ず、プロトン
酸にてドーピングされたアニリンの導電性酸化重合体を
調製し、これを脱ドーピングして、有機溶剤可溶性のポ
リアニリンを調製し、次いで、この有機溶剤可溶性のポ
リアニリンをドーパントであるポリスルホン酸と共に溶
剤に溶解して溶液とし、この溶液を誘電体皮膜上にキヤ
ステイング又はコーテイングし、乾燥させて、導電性の
フイルム又は膜とする。
【0018】先ず、上記プロトン酸にてドーピングされ
たアニリンの導電性酸化重合体は、酸解離定数 pKa値が
3.0以下であるプロトン酸の存在下に溶剤中にてアニリ
ンに温度を5℃以下、好ましくは0℃以下の温度に保持
しつつ、標準水素電極を基準とする還元半電池反応にお
ける起電力として定められる標準電極電位が0.6V以上
である酸化剤の水溶液をアニリン1モル当りに、酸化剤
の1モルを、酸化剤1分子を還元するのに必要な電子数
で割つた量として定義される当量で、2当量以上、好ま
しくは2〜2.5当量徐々に加えて、アニリンを酸化重合
させることによつて得ることができる。
【0019】次いで、このプロトン酸にてドーピングさ
れたアニリンの酸化重合体を塩基性物質によつて脱ドー
ピングすることによつて、有機溶剤可溶性のポリアニリ
ンを得ることができる。上記アニリンの酸化重合におい
ては、酸化剤としては、二酸化マンガン、ペルオキソ二
硫酸アンモニウム、過酸化水素、第二鉄塩、ヨウ素酸塩
等が特に好ましく用いられる。これらの中で、例えば、
ペルオキソ二硫酸アンモニウムや過酸化水素は、その酸
化反応において、共に1分子当りに2個の電子が関与す
るので、通常、アニリン1モルに対して1〜1.25モル
の範囲の量が用いられる。
【0020】上記アニリンの酸化重合において用いられ
るプロトン酸は、酸解離定数 pKa値が3.0以下であれ
ば、特に、限定されるものではなく、例えば、塩酸、硫
酸、硝酸、過塩素酸、ホウフツ化水素酸、リンフツ化水
素酸、フツ化水素酸、ヨウ化水素酸等の無機酸、ベンゼ
ンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等の芳香族スル
ホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸等のアル
カンスルホン酸、ピクリン酸等のフエノール類、m−ニ
トロ安息香酸等の芳香族カルボン酸、ジクロロ酢酸、マ
ロン酸等の脂肪族カルボン酸等を挙げることができる。
また、ポリマー酸も用いることができる。かかるポリマ
ー酸としては、例えば、ポリスチレンスルホン酸、ポリ
ビニルスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリビニル
硫酸等を挙げることができる。
【0021】用いるプロトン酸の量は、用いる酸化剤の
反応様式に依存する。例えば、二酸化マンガンの場合
は、酸化反応は、 MnO2+4H++2e- → Mn2++2H2O で示されるから、用いる二酸化マンガンの少なくとも4
倍モル量のプロトンを供給し得るプロトン酸を用いる必
要がある。また、過酸化水素の場合も、酸化反応は、 H2O2+2H++2e- → 2H2O で示されるから、用いる過酸化水素の少なくとも2倍モ
ル量のプロトンを供給し得るプロトン酸を用いる必要が
ある。他方、ペルオキソ二硫酸アンモニウムの場合は、
酸化反応は、 S2O8 2-+2e- → 2SO4 2- で示されるから、特に、プロトン酸を用いる必要はな
い。しかし、酸化剤として、ペルオキソ二硫酸アンモニ
ウムを用いる場合であつても、この酸化剤と等モル量の
プロトン酸を用いることが好ましい。
【0022】アニリンの酸化重合における溶剤として
は、アニリン、プロトン酸及び酸化剤を溶解し、且つ、
酸化剤によつて酸化されないものが用いられる。水が最
も好ましく用いられるが、しかし、必要に応じて、メタ
ノール、エタノール等のアルコール類、アセトニトリル
等のニトリル類、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチ
ルスルホキシド等の極性溶剤、テトラヒドロフラン等の
エーテル類、酢酸等の有機酸類も用いることができる。
また、これら有機溶剤と水との混合溶剤も用いることが
できる。
【0023】前記有機溶剤可溶性のポリアニリンの調製
において、反応の間、特に、酸化剤溶液をアニリン溶液
に加える間に、反応混合物の温度を常に5℃以下に保持
することが重要である。従つて、酸化剤溶液は、アニリ
ンに徐々に加えて、反応混合物の温度が5℃を越えない
ようにする必要がある。急激に酸化剤を加えるときは、
外部からの冷却によつても、反応混合物の温度が上昇し
て、低分子量の重合体を生成したり、或いは後述する脱
ドーピング後にも溶剤不溶性の酸化重合体が生成する。
【0024】特に、上記の反応においては、反応温度を
0℃以下に保持するのが好ましく、これによつて、脱ド
ーピング後、N−メチル−2−ピロリドン中、30℃で
測定した(以下、同じ。)極限粘度〔η〕が1.0dl/g以
上の高分子量の有機溶剤可溶性ポリアニリンを得ること
ができる。このようにして、用いたプロトン酸によつて
ドープされたポリアニリンを得ることができる。ドープ
状態では、このポリアニリンは、プロトン酸と塩を形成
しているために、後述するような有機溶剤に溶解しな
い。高分子量アミンの塩が一般に有機溶剤に難溶性であ
ることはよく知られている。しかしながら、この有機溶
剤不溶性のポリアニリンを脱ドーピングすることによつ
て、有機溶剤可溶性のポリアニリンを得ることができ
る。
【0025】このプロトン酸にてドープされているポリ
アニリンの脱ドーピングは、一種の中和反応であるか
ら、ドーパントとしてのプロトン酸を中和し得る塩基性
物質であれば、特に、限定されるものではないが、好ま
しくは、アンモニア水、水酸化ナトリウム、水酸化カリ
ウム、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化カ
ルシウム等の金属水酸化物が用いられる。脱ドーピング
は、上記アニリンの酸化重合の後、反応混合物中に直接
に塩基性物質を加えてもよく、或いは重合体を一旦単離
した後、塩基性物質を作用させてもよい。
【0026】アニリンの酸化重合によつて得られたドー
プ状態のポリアニリンは、通常、10-6S/cm以上の電
導度を有して、黒緑色を呈するが、脱ドーピング後は、
紫色或いは紫がかつた銅色である。この変色は、重合体
中の塩構造のアミン窒素が遊離アミンに変化したためで
ある。電導度は、通常、10-10 S/cm台である。この
ようにして得られる脱ドープ状態のポリアニリンは、高
分子量を有し、しかも、種々の有機溶剤に溶解する。か
かる有機溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、
N,N−ジメチルアセトアミド、 N,N−ジメチルホルムア
ミド、ジメチルスルホキシド、1,3−ジメチル−2−イ
ミダゾリジノン、スルホラン等を挙げることができる。
溶解度は、重合体の平均分子量や溶剤にもよるが、重合
体の0.5〜100%が溶け、1〜30重量%の溶液を得
ることができる。特に、この脱ドープ状態のポリアニリ
ンは、N−メチル−2−ピロリドンに高い溶解性を示
し、通常、ポリアニリンの20〜100%が溶解し、3
〜30重量%溶液を得ることができる。しかし、テトラ
ヒドロフラン、80%酢酸水溶液、60%ギ酸水溶液、
アセトニトリル等には溶解しない。
【0027】従つて、かかる有機溶剤可溶性ポリアニリ
ンは、これを有機溶剤に溶解し、キヤステイングすれ
ば、自立性の可撓性で強靱なフイルムを得ることができ
る。このようなフイルム化や薄膜化において、強靱なも
のを得るためには、有機溶剤可溶性ポリアニリンは、N
−メチルピロリドン中、30℃で測定した極限粘度
〔η〕が0.40dl/g以上であるものを用いることが望ま
しい。
【0028】更に、前記溶剤可溶性のアニリン酸化重合
体をキヤステイングして得られるフイルムは、溶剤の乾
燥条件によつても、異なる性質を有する。通常、極限粘
度〔η〕が0.40dl/g以上である可溶性重合体のN−メ
チル−2−ピロリドン溶液をガラス板上にキヤステイン
グし、溶剤を乾燥させる場合に、乾燥温度が100℃以
下であるときは、得られるフイルムは強度が尚十分に大
きくなく、また、N−メチル−2−ピロリドンにも一部
溶解する。しかし、乾燥温度を130℃以上とするとき
は、得られるフイルムは可撓性にすぐれ、非常に強靱で
あつて、折り曲げても割れることがない。また、このよ
うにして得られるフイルムは、N−メチル−2−ピロリ
ドンにも溶解せず、更に、濃硫酸にも溶解しない。この
ように、キヤステイング後の高温での乾燥による重合体
の溶剤不溶化は、重合体中に存在し、或いは加熱時に生
成するラジカルのカツプリングによつて、重合体分子が
架橋するためであるとみられる。
【0029】前記可溶性ポリアニリンは、元素分析、赤
外線吸収スペクトル、ESRスペクトル、レーザー・ラ
マンスペクトル、熱重量分析、溶剤への溶解性、可視乃
至近赤外吸収スペクトルから、
【0030】
【化1】
【0031】(式中、m及びnはそれぞれ繰返し単位中
のキノンジイミン構造単位及びフエニレンジアミン構造
単位のモル分率を示し、0<m<1、0<n<1、m+
n=1である。)を主たる繰返し単位として有する。前
記溶剤可溶性ポリアニリンからキヤステイング法にて溶
剤不溶化して得たフイルムも、溶剤可溶性ポリアニリン
と実質的に同じ赤外線吸収スペクトルを示し、また、元
素分析、赤外線吸収スペクトル、ESRスペクトル、レ
ーザー・ラマンスペクトル、熱重量分析、溶剤への溶解
性、可視乃至近赤外吸収スペクトル等から、架橋構造を
有するものの、実質的に同じ繰返し単位からなるものと
みられる。
【0032】上記一般式にて示される溶剤可溶性ポリア
ニリンにおいて、m及びnの値は、重合体を酸化又は還
元することによつて調整することができる。即ち、還元
することによつて、mを低減させ、nを増大させること
ができる。逆に、酸化すれば、mを増大させ、nを低減
させることができる。重合体の還元によつて、重合体中
のキノンジイミン構造単位が減少すると、重合体の溶剤
への溶解性が高められる。また、還元前に比べて、溶液
の粘度は低下する。
【0033】このような溶剤可溶性ポリアニリンの還元
のためには、抱水ヒドラジン、フエニルヒドラジン等の
ヒドラジン類、水素化リチウムアルミニウム、水素化ホ
ウ素リチウム等の金属水素化物、水素等が好適に用いら
れる。有機溶剤、特に、N−メチル−2−ピロリドンに
溶解するが、N−メチル−2−ピロリドンを還元しない
点から、フエニルヒドラジンが最も好ましく用いられ
る。他方、溶剤可溶性ポリアニリンの酸化のために用い
られる酸化剤は、一般式におけるフエニレンジアミン構
造単位を酸化し得るものであれば任意であるが、標準水
素電極を基準とする還元半電池反応における起電力とし
て定められる標準電極電位が0.3V以上である酸化剤が
特に好適に用いられる。例えば、穏和な酸化剤である酸
化銀が好ましく用いられる。酸素吹き込みも有用であ
る。強力な酸化剤として、例えば、過マンガン酸カリウ
ムや重クロム酸カリウム等も用いることができるが、そ
の使用に際しては、重合体の劣化をもたらないようにす
る必要がある。このように、溶剤可溶性ポリアニリンを
還元することは、その溶液の粘度を低減させるのに有用
である。
【0034】前記ポリアニリンの還元において、還元剤
を過剰に用いた場合は、重合体中のキノンジイミン構造
単位の多くが還元されるために、キノンジイミン構造単
位へのドーピングによるセミキノンラジカル(ポーラロ
ン構造)の生成が少なく、従つて、得られる導電性有機
重合体の電導度は、そのドーピング直後には、それほど
高くない。しかし、ドーピングした重合体を空気中に放
置することによつて、還元されたフエニレンジアミン構
造単位が空気酸化によつて、徐々にキノンジイミン構造
単位に戻り、重合体層中に残存するプロトン酸によつて
ドーピングされて、セミキノンラジカルを生成するの
で、高導電性のポリアニリンを得ることができる。
【0035】ここで、レーザー・ラマンスペクトルより
得られる有機溶剤可溶性ポリアニリンの特徴について、
従来より知られている所謂ポリアニリンと比較しつつ、
説明する。一般に、物質を構成する原子間の振動に関す
る情報を得る手段として、振動分光学があり、これには
赤外分光とラマン分光とがある。赤外分光は、双極子モ
ーメントの変化をもたらす振動モードに活性であり、ラ
マン分光は、分極率の変化をもたらす振動に活性であ
る。従つて、両者は、相補的な関係にあつて、一般的に
は、赤外分光で強くあらわれる振動モードは、ラマン分
光では弱く、他方、ラマン分光にて強くあらわれる振動
モードは、赤外分光では弱い。
【0036】赤外線吸収スペクトルは、振動準位間のエ
ネルギー吸収を検出することによつて得られ、ラマンス
ペクトルは、光照射によつて分子が励起された後、基底
状態のより高い振動準位に落ちるときに生じる散乱光
(ラマン散乱)を検出することによつて得られる。この
とき、照射光に対する散乱光のエネルギー差から振動エ
ネルギー準位を知ることができる。
【0037】通常、ラマンスペクトルは、アルゴンレー
ザー等からの可視光励起によつて得られる。ここに、試
料が可視領域に吸収帯を有する場合、照射レーザー光と
その吸収帯波長がマツチングすると、非常に強いラマン
線が得られることが知られている。この現象は共鳴ラマ
ン効果と呼ばれており、これによれば、通常のラマン線
の104 〜105 倍もの強いラマン線が得られる。かか
る共鳴ラマン効果によれば、照射したレーザー光の波長
によつて励起される化学構造部分の情報がより強調され
て得られることとなる。従つて、照射するレーザー光の
波長を変えながら、ラマンスペクトルを測定することに
よつて、その試料の化学構造をより正確に解析すること
ができる。このような特徴は、赤外分光にはないラマン
分光の特徴である。
【0038】図1は、有機溶剤可溶性であつて、N−メ
チル−2−ピロリドン中、30℃で測定した極限粘度
〔η〕が1.2dl/gである脱ドープ状態のポリアニリンの
粉末をデイスク状に成形した試料について、励起波長4
57.9nmで照射して得たレーザー・ラマンスペクトル
である。ラマン線の帰属は以下のとおりである。162
2及び1591cm-1は、パラ置換ベンゼンの骨格延伸振
動、1489及び1479cm-1は、キノンジイミン構造
のC=C及びC=Nの伸縮振動、1220cm-1はC−N
伸縮振動とC−C伸縮振動の混在、1185及び116
5cm-1はC−Hの面内変角振動である。
【0039】図2は、Y. Furukawa et al., Synth. Me
t.,16, 189 (1986)に示された脱ドープ状態のポリアニ
リンについて、励起波長457.9nmで照射して得たレ
ーザー・ラマンスペクトルである。このポリアニリン
は、白金電極上、アニリンの電解酸化重合によつて得ら
れたものである。図1にみられるように、本発明にて用
いる溶剤可溶性の脱ドープ状態のポリアニリンでは、パ
ラ置換ベンゼンの骨格振動のうち、1600cm-1よりも
高波数にあらわれる骨格延伸振動のラマン線強度Iaと
1600cm-1よりも低波数にあらわれるラマン線強度I
bとの比Ia/Ibが1.0以上である。これに対して、
図2に示したポリアニリンを含む従来より知られている
ポリアニリンは、化学酸化重合によるものを含めて、す
べて上記比Ia/Ibは1.0よりも小さい。
【0040】1622及び1591cm-1のラマン線は、
共に、パラ置換ベンゼンの骨格延伸振動に基づくもので
ある。還元状態にあるポリアニリンでは、キノンジイミ
ン構造をもたないために、1621cm-1にのみラマン線
を生じるが、キノンジイミン構造を有する脱ドープ状態
のポリアニリンでは、前述したように、1622及び1
591cm-1にラマン線があらわれる。これらのラマン線
は、図3に示すような励起波長依存性を示す。
【0041】励起波長を488.0nmから476.5nm
を経て457.9nmへと短波長側に変化させるにつれ
て、Ia/Ibは変化する。即ち、488.0nmのとき
はIa/Ibは1.0より小さいが、457.9nmでは、
1.0以上となつており、488.0nmのときと比べて、
Ia/Ib強度が逆転している。この逆転現象は、以下
のように説明されよう。
【0042】図4に溶剤可溶性ポリアニリンの電子スペ
クトルを示す。647nmのピークは、ポリアニリンを
還元することによつて消失するので、キノンジイミン構
造に由来するものとみられ、334nmのピークは、逆
にポリアニリンを還元することによつて強度を増すの
で、パラ置換ベンゼンのπ−π* 遷移に由来するとみら
れる。図4に前記したラマン励起波長を示す。ここで、
パラ置換ベンゼン骨格延伸振動のバンドについては、励
起波長を488.0nmから457.9nmへと短波長側に
変化させると、1591cm-1のバンドと比較して、16
22cm-1のバンドの共鳴ラマン効果の共鳴条件がより有
利になり、前述のような相対強度の変化が生じると考え
られる。
【0043】次に、図1と図2に示すスペクトルにおい
て、1591cm-1と1622cm-1のラマン線の相対強度
が、同じ励起波長(457.9nm)であるにもかかわら
ず、異なることは、以下のように説明されよう。即ち、
フエニレンジアミン構造のモデル化合物としての N,N'-
ジフエニル−p−フエニレンジアミンが1617cm-1
みにラマン線を有し、キノンジイミン構造のモデル化合
物としてのN,N'-ジフエニル−p−ベンゾキノンジイミ
ンが1568cm-1及び1621cm-1にラマン線を有する
ことから、下記(a) に示すように、キノンジイミン構造
と非共役のパラ置換ベンゼン環は、短波長光の励起にて
強度が増した1622cm-1のラマン線を有し、下記(b)
に示すように、キノンジイミン構造と共役しているパラ
置換ベンゼン環は、1591cm-1及び1622cm-1のラ
マン線を有するものと推定される。
【0044】
【化2】
【0045】元素分析の結果から、脱ドープ状態の溶剤
可溶性ポリアニリンにおいては、キノンジイミンの数と
フエニレンジアミンの数はほぼ等しいとみられるから、
かかる脱ドープ状態の溶剤可溶性ポリアニリンの構造連
鎖は、キノンジイミン構造とフエニレンジアミン構造と
の連結様式から、(c) に示すように、キノンジイミン構
造とフエニレンジアミン構造の交互共重合体的連鎖と、
(d) に示すように、キノンジイミン構造とフエニレンジ
アミン構造のブロツク共重合体的連鎖の2つに分類され
る。図中、矢印にて示すパラ置換ベンゼン環は、キノン
ジイミンと非共役のベンゼン環を示し、上記交互共重合
体的連鎖においては、例えば、8量体連鎖単位当りでは
2つであり、ブロツク共重合体的連鎖においては、例え
ば、8量体連鎖単位当りでは3つである。連鎖単位がも
つと長い場合は、両者におけるキノンジイミンと非共役
のベンゼン環の数の差は、更に大きくなる。この差が1
591cm-1と1622cm-1のラマン線の相対強度の差と
なつてあらわれるといえる。
【0046】
【化3】
【0047】溶剤可溶性ポリアニリンにおいては、レー
ザー・ラマンスペクトルにおけるIa/Ib比が1.0以
上であるところから、キノンジイミン構造と非共役のベ
ンゼン環が多く含まれており、かくして、前記ブロツク
共重合体的連鎖を有するものとみられる。ポリアニリン
の有機溶剤可溶性は、かかるブロツク共重合体的連鎖を
有することによつて合理的に説明される。一般に、キノ
ンジイミン構造におけるイミン窒素(−N=)は、近傍
の第2級アミノ基水素(−NH−)と水素結合を形成す
ることが知られているが(Macromolecules, 21, 1297
(1988))、第2級アミノ基相互の間の水素結合は強くな
い。
【0048】従つて、ポリアニリンが前記交互共重合体
的連鎖を有する場合は、(f) に示すような水素結合の強
固なネツトワークを形成する。従来より知られているポ
リアニリンが脱ドープ状態でも、多くの有機溶剤に不溶
性であるのは、かかる水素結合の強固なネツトワークを
形成することに起因するとみられる。これに対して、脱
ドープ状態の溶剤可溶性ポリアニリンのように、重合体
連鎖が前記ブロツク共重合体的連鎖である場合は、通常
は、ブロツク鎖が異なる長さを有するから、(e) にみら
れるように、フエニレンジアミン構造部分とキノンジイ
ミン構造部分が隣接しても、多くの水素結合を形成する
ことができず、溶剤が重合体鎖間に侵入し、溶剤との間
に水素結合を生じて、有機溶剤に溶解することとなる。
ブロツク鎖がどの部分も完全に同じ長さを有するとすれ
ば、前記したような水素結合のネットワークを形成する
であろうが、このような構造を有する確率は極めて小さ
いから、通常は、無視し得る。
【0049】
【化4】
【0050】
【化5】
【0051】更に、このような鎖間相互作用は、前記レ
ーザー・ラマンスペクトルのC−H面内変角振動からも
説明される。前記図2に示した脱ドープ状態のポリアニ
リンのC−H面内変角振動に帰属される1162cm-1
ラマン線は、ポリアニリンが還元されて、イミン窒素が
すべて第2級アミノ窒素に変換されると、1181cm -1
に高波数シフトする。
【0052】前述したように、溶剤可溶性ポリアニリン
は、脱ドープ状態において、C−H面内変角振動に帰属
されるラマン線として、1165及び1185cm-1の2
つがある。この1185cm-1のラマン線は、従来より知
られている脱ドープ状態のポリアニリンにはみられない
ものであつて、還元状態におけるC−H面内変角振動に
帰属される1181cm-1に近い値を示している。
【0053】これらの点から、溶剤可溶性ポリアニリン
は、脱ドープ状態において、ブロツク共重合体的連鎖を
有し、還元構造の雰囲気を有すると思われる。このこと
より、高分子量であるにもかかわらず、有機溶剤に対し
て高い溶解性を有するのであろう。以上のように、本発
明において用いる溶剤可溶性ポリアニリンは、従来より
知られているポリアニリンとは異なる構造連鎖を有する
新規な重合体である。
【0054】このように、アニリンの酸化重合体は、繰返し
単位として、前述したようなブロツク共重合体的連鎖に
てキノンジイミン構造単位とフエニレンジアミン構造単
位を有するので、プロトン酸にてドーピングされた状態
においては、酸化還元反応を伴なわずに、酸塩基反応の
みによつて、導電性を有するものとして説明される。
【0055】この導電機構は、A. G. MacDiarmidらによ
るものであつて(A. G. MacDiarmidet al., J. Chem. S
oc., Chem. Commun., 1987, 1784) 、プロトン酸による
ドーピングによつて、下に示すように、キノンジイミン
構造がプロトン化され、これがセミキノンカチオンラジ
カル構造をとつて、導電性を有するものである。かかる
状態は、ポーラロン状態と呼ばれる。
【0056】
【化6】
【0057】以上に説明した溶剤可溶性ポリアニリン
は、本発明によれば、分子内に2個以上のスルホン酸基
を有するポリスルホン酸と共に、有機溶剤に溶解させる
ことができる。従つて、このようなポリアニリンの溶液
を誘電体皮膜上に流延塗布し、溶剤を乾燥除去すれば、
直ちに容易に上記ポリスルホン酸にてドーピングされた
導電性ポリアニリンの膜を得ることができ、かくして、
導電性ポリアニリンの膜を誘電体酸化皮膜上に直接形成
することができる。
【0058】本発明において、ポリスルホン酸は芳香族
ポリスルホン酸でもよく、脂肪族ポリスルホン酸でもよ
い。本発明において好適に用いることができる芳香族ポ
リスルホン酸としては、例えば、ベンゼンジスルホン
酸、ナフタレンジスルホン酸、ナフタレントリスルホン
酸、ナフタレンテトラスルホン酸、アントラセンジスル
ホン酸、アントラキノンジスルホン酸、フェナントレン
ジスルホン酸、フルオレノンジスルホン酸、カルバゾー
ルジスルホン酸、ジフエニルメタンジスルホン酸、ビフ
エニルジスルホン酸、ターフェニルジスルホン酸、ター
フェニルトリスルホン酸、ナフタレンスルホン酸−ホル
マリン縮合物、フェナントレンスルホン酸−ホルマリン
縮合物、アントラセンスルホン酸−ホルマリン縮合物、
フルオレンスルホン酸−ホルマリン縮合物、カルバゾー
ルスルホン酸−ホルマリン縮合物等を挙げることができ
る。尚、芳香環におけるスルホン酸基の位置は任意であ
る。
【0059】また、本発明において好適に用いることが
できる脂肪族ポリスルホン酸としては、例えば、メタン
ジスルホン酸、1,1−エタンジスルホン酸、1,2−エタ
ンジスルホン酸、1,3−プロパンジスルホン酸、1,1−
プロパンジスルホン酸、2,2−プロパンジスルホン酸等
を挙げることができる。また、上記したようなポリスル
ホン酸は、炭化水素基、アルコキシ基、ハロゲン、水酸
基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基等の置換基を有して
いてもよい。
【0060】ドーパントとしてのポリスルホン酸は、ポ
リアニリンに対して過剰に用いるときは、得られた溶液
を流延塗布して得られる導電性ポリアニリン膜の強度が
低いことがある。従つて、ポリアニリン溶液を調製する
際に、ポリアニリンに対して添加するポリスルホン酸の
量は、ポリアニリンの主鎖のアミノ基に対して当量以下
がよく、好ましくは0.75当量以下であり、特に好まし
くは0.5当量以下である。
【0061】このようにして得られる導電性ポリアニリ
ン膜の導電性は、通常、10-6S/cm以上、多くの場
合、10-4S/cm以上であるが、好ましい態様によれ
ば、10 -2S/cm以上のものも得ることができる。この
導電性薄膜は、強靱であつて、折り曲げても、容易には
割れない。一般に、酸化重合によつて得られたポリアニ
リンは、重合時に用いられるプロトン酸がドーピングさ
れて、導電性を有している。しかし、かかる導電性ポリ
アニリンは、弱酸性、中性、或いはアルカリ性の水溶液
や、又は塩基性の有機溶剤中において、ドーパントであ
るプロトン酸を放出して、その電導性が著しく低下する
ことが知られている。更に、従来、一般的にドーパント
として用いられるプロトン酸は、塩酸、硫酸、過塩素酸
等の低分子酸であるので、このような低分子酸をドーパ
ントとして有するポリアニリン薄膜からは、低分子酸が
拡散しやすく、それが用いられている周辺の金属部分を
腐食するおそれもある。
【0062】しかしながら、本発明におけるポリスルホ
ン酸をドーパントとする導電性ポリアニリン膜は、弱酸
性、中性、或いはアルカリ性の水溶液や、又は塩基性の
有機溶剤中において、ドーパントを放出し難いので、誘
電体上に膜化する種々の過程において、水や有機溶剤に
よる洗浄によつても、導電性が変化せず、有利に導電性
膜を形成することができるのみならず、湿気や水分等の
周囲環境の条件の変動にかかわらずに、そのすぐれた導
電性を保持することができるので、コンデンサー特性を
損なうことがない。また、ポリアニリンからポリスルホ
ン酸が放出されることもないので、それが用いられてい
る周辺の金属部分を腐食するおそれもない。
【0063】本発明によれば、表面を粗面化した皮膜形
成金属を電解酸化又は空気酸化等によつて、その金属の
酸化物を形成させて、誘電体皮膜とし、次いで、前記し
たドーパントとしてのポリスルホン酸を含む有機溶剤可
溶性のポリアニリンの溶液をこの誘電体皮膜上にキヤス
テイング又はコーテイングし、乾燥することによつて、
導電性膜を容易に形成することができ、かくして、固体
電解コンデンサーを得ることができる。
【0064】上記皮膜形成金属としては、通常、アルミ
ニウム又はタンタルが好ましく用いられ、従つて、誘電
体皮膜としては、酸化アルミニウム又は酸化タンタルの
皮膜が好ましく用いられる。一般に、誘電体は、上記し
たように、通常、酸化アルミニウム又は酸化タンタルの
皮膜からなり、この皮膜は、表面積を増すために、通
常、粗面であつて、多孔質化されている。固体電解質
は、かかる酸化皮膜の多孔質粗面に密着することが必要
である。ここに、本発明によれば、溶剤可溶性ポリアニ
リンをポリスルホン酸と共に、キヤステイングやコーテ
イングにて膜化できるので、誘電体上の膜の厚みを任意
に調整することができる。例えば、誘電体上に厚み0.0
1〜200μmにわたる種々の厚みの膜を得ることがで
き、従つて、導電性膜の導電性を10-6〜102 S/cm
の範囲、好ましくは10-2〜50S/cmの範囲に調整す
ることもできる。
【0065】しかも、本発明による固体電解コンデンサ
ーによれば、導電性高分子の導電性が電子伝導によるか
ら、イオン伝導の電解液式コンデンサーに比べて、高周
波領域にてインピーダンスが小さく、且つ、容量が大き
い。電解コンデンサーとしての形状は、シート型、積層
型、巻回型等、いずれでもよい。大容量が必要とされる
場合は、積層型や巻回型が好ましく用いられる。巻回型
の場合は、本発明に従つて、誘電体皮膜上にポリアニリ
ン膜を形成させた後、巻回して製作する方法や、或いは
誘電体皮膜を形成させたエツチング金属箔をセパレータ
を介して巻回しておき、箔と箔との間にポリアニリン溶
液を注入した後、加熱乾燥し、誘電体皮膜上にポリアニ
リン膜を形成させる方法等によつて製作することができ
る。本発明による電解コンデンサーは、電解液を含まな
いためにチツプ化が容易である。
【0066】
【発明の効果】以上のように、本発明による固体電解コ
ンデンサーによれば、誘電体皮膜上に電子伝導による導
電性を有するポリアニリンからなる導電性高分子膜が形
成されており、高周波領域にてインピーダンスが小さ
く、且つ、容量が大きい。更に、本発明による固体電解
コンデンサーによれば、固体電解質として、ポリスルホ
ン酸をドーパントとする導電性ポリアニリンを有し、こ
の導電性ポリアニリンが格段にすぐれた耐水性を有す
る。従つて、得られる固体電解コンデンサーは、耐久性
及び信頼性にすぐれる。
【0067】しかも、本発明によれば、ポリアニリンと
ポリスルホン酸とを含む溶液を誘電体酸化皮膜上に流延
塗布し、乾燥するのみで、密着性にすぐれる導電性膜を
容易に形成することができ、かくして、その製造が簡単
であり、また、製造費用も格段に低減される。また、本
発明による電解コンデンサーは、電解液を含まないため
にチツプ化が容易であり、表面実装用として好適に用い
ることができる。
【0068】
【実施例】以下に本発明にて用いる有機溶剤可溶性ポリ
アニリンの製造を示すための参考例と共に、実施例によ
つて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により
何ら限定されるものではない。 参考例1 (アニリンの酸化重合によるドープ状態の導電性有機重
合体の製造)攪拌装置、温度計及び直管アダプターを備
えた10リツトル容量セパラブル・フラスコに蒸留水6
000g、36%塩酸360ml及びアニリン400g
(4.295モル)をこの順序にて仕込み、アニリンを溶
解させた。別に、氷水にて冷却しながら、ビーカー中の
蒸留水1493gに97%濃硫酸434g(4.295モ
ル)を加え、混合して、硫酸水溶液を調製した。この硫
酸水溶液を上記セパラブル・フラスコに加え、フラスコ
全体を低温恒温槽にて−4℃まで冷却した。
【0069】次に、ビーカー中にて蒸留水2293gに
ペルオキソ二硫酸アンモニウム980g(4.295モ
ル)を加え、溶解させて、酸化剤水溶液を調製した。フ
ラスコ全体を低温恒温槽で冷却して、反応混合物の温度
を−3℃以下に保持しつつ、攪拌下にアニリン塩の酸性
水溶液に、チユービングポンプを用いて、直管アダプタ
ーから上記ペルオキソ二硫酸アンモニウム水溶液を1ml
/分以下の割合にて徐々に滴下した。最初、無色透明の
溶液は、重合の進行に伴つて緑青色から黒緑色となり、
次いで、黒緑色の粉末が析出した。
【0070】この粉末析出時に反応混合物において温度
の上昇がみられるが、この場合にも、本発明に従つて、
高分子量重合体を得るためには、反応系内の温度を0℃
以下、好ましくは−3℃以下に抑えることが肝要であ
る。粉末析出後は、ペルオキソ二硫酸アンモニウム水溶
液の滴下速度を例えば8ml/分程度とやや速くしてもよ
い。しかし、この場合にも、反応混合物の温度をモニタ
ーしつつ、温度を−3℃以下に保持するように、滴下速
度を調整することが必要である。かくして、7時間を要
して、ペルオキソ二硫酸アンモニウム水溶液の滴下を終
了した後、更に1時間、−3℃以下の温度にて攪拌を続
けた。
【0071】得られた重合体粉末を濾別し、水洗、アセ
トン洗浄し、室温で真空乾燥して、黒緑色の重合体粉末
430gを得た。これを直径13mm、厚さ700μmの
デイスクに加圧成形し、フアン・デル・ポー法によつ
て、その電導度を測定したところ、14S/cmであつ
た。 (導電性有機重合体のアンモニアによる脱ドーピング)
上記ドープされている導電性有機重合体粉末350gを
2Nアンモニア水4リツトル中に加え、オートホモミキ
サーにて回転数5000rpm にて5時間攪拌した。混合
物は、黒緑色から青紫色に変化した。
【0072】ブフナーろうとにて粉末を濾別し、ビーカ
ー中にて攪拌しながら、蒸留水にて濾液が中性になるま
で繰り返して洗浄し、続いて、濾液が無色になるまでア
セトンにて洗浄した。この後、粉末を室温にて10時間
真空乾燥して、黒褐色の脱ドーピングした重合体粉末2
80gを得た。この重合体はN−メチル−2−ピロリド
ンに可溶性であつて、溶解度は同溶剤100gに対して
8g(7.4%)であつた。また、これを溶剤として30
℃で測定した極限粘度〔η〕は1.23であつた。
【0073】この重合体は、ジメチルスルホキシド及び
ジメチルホルムアミドには1%以下の溶解度であつた。
テトラヒドロフラン、ピリジン、80%酢酸水溶液、6
0%ギ酸水溶液及びアセトニトリルには実質的に溶解し
なかつた。この脱ドープ状態のポリアニリンの粉末をデ
イスク状に成形した試料について、励起波長457.9n
mで照射して得たレーザー・ラマンスペクトルを図1に
示す。比較のために、Y. Furukawa et al., Synth.Me
t., 16, 189 (1986)に示された脱ドープ状態のポリアニ
リンについて、励起波長457.9nmで照射して得たレ
ーザー・ラマンスペクトルを図2に示す。このポリアニ
リンは、白金電極上、アニリンの電解酸化重合によつて
得られたものである。
【0074】また、レーザー励起光の波長を変化させ
て、1400〜1700cm-1の範囲について、ラマンス
ペクトルを測定した結果を図3に示す。励起波長を48
8.0nmから476.5nmを経て457.9nmへと短波
長側に変化させるにつれて、Ia/Ibが変化し、45
7.9nmでは、1.0以上となつており、488.0nmの
ときと比べて、Ia/Ib強度が逆転していることが示
される。
【0075】更に、図4に電子スペクトルを示す。次
に、上記有機溶剤可溶性ポリアニリンについて、N−メ
チル−2−ピロリドン用のGPCカラムを用いて、GP
C測定を行なつた。カラムは、N−メチル−2−ピロリ
ドン用のものを3種類連結して用いた。また、溶離液に
は0.01モル/l濃度の臭化リチウムのN−メチル−2
−ピロリドン溶液を用いた。図5にGPC測定の結果を
示す。
【0076】この結果から、上記有機溶剤可溶性ポリア
ニリンは、数平均分子量23000、重量平均分子量1
60000(いずれも、ポリスチレン換算)であつた。
同様に、反応条件を種々に変えて、N−メチル−2−ピ
ロリドン中、30℃で測定した極限粘度〔η〕の異なる
有機溶剤可溶性ポリアニリンを得た。これらについて、
極限粘度〔η〕とGPCによる数平均分子量及び重量平
均分子量を表1に示す。
【0077】
【表1】
【0078】参考例2 (可溶性アニリン酸化重合体を用いる自立性フイルムの
調製)参考例1にて得た脱ドープしたアニリン酸化重合
体粉末5gをN−メチル−2−ピロリドン95g中に少
量ずつ加え、室温にて溶解させて、黒青色溶液を得た。
この溶液をG3ガラスフイルターにて真空濾過したとこ
ろ、フイルター上に残存した不溶物は極めて少量であつ
た。このフイルターをアセトンにて洗浄し、残存する不
溶物を乾燥後、重量測定したところ、75mgであつた。
従つて、重合体は、その98.5%が溶解し、不溶物は1.
5%であつた。
【0079】このようにして得られた重合体溶液をガラ
ス板上にキヤステイングし、ガラス棒にてしごいた後、
熱風循環乾燥器中でN−メチル−2−ピロリドンを蒸発
揮散させた。この後、ガラス板を冷水中に浸漬すること
によつて、重合体フイルムがガラス板より自然に剥離
し、かくして、厚さ40μmの重合体フイルムを得た。
このフイルムをアセトンで洗浄した後、室温で風乾し
て、銅色の金属光沢を有するフイルムを得た。
【0080】フイルムは、その乾燥温度によつて、強度
及び溶解性が異なる。乾燥温度が100℃以下のとき
は、得られるフイルムは、N−メチル−2−ピロリドン
に少量溶解すると共に、強度も比較的小さい。しかし、
130℃以上の温度で加熱して得られるフイルムは、非
常に強靱であつて、また、N−メチル−2−ピロリドン
やその他の有機溶剤にも溶解しない。また、濃硫酸にも
溶解しない。このように、高温で加熱すると、その過程
で重合体分子が相互に架橋し、不溶性となるものとみら
れる。
【0081】このようにして得た脱ドープ状態のフイル
ムは、電導度はいずれも10-11 S/cm台であつた。ま
た、フイルムは10000回の折り曲げによつても割れ
ず、引張強度は850Kg/cm2 であつた。 参考例3 (自立性フイルムのプロトン酸によるドーピング)参考
例2において、160℃で2時間加熱乾燥して得た自立
性フイルムをそれぞれ1Nの硫酸、過塩素酸及び塩酸水
溶液中に室温にて66時間浸漬した後、アセトンで洗浄
し、風乾して、それぞれ導電性フイルムを得た。
【0082】フイルムは、いずれも濃青色を呈し、電導
度は、それぞれ9S/cm、13S/cm及び6S/cmであ
つた。また、過塩素酸にてドーピングしたフイルムの引
張強度は520Kg/cm2 であつた。 参考例4 (共に脱ドープ状態で可溶性の重合体及び不溶性フイル
ム化された重合体のスペクトル及び構造)参考例1にて
得た可溶性重合体粉末と参考例2にて得た不溶性重合体
フイルムのKBr錠剤法によるFT−IRスペクトルを
それぞれ図6及び図7に示す。参考例2にて得た不溶性
重合体フイルムのスペクトルには、残存する溶剤N−メ
チル−2−ピロリドンによるとみられる1660cm-1
吸収が若干認められるが、2つのスペクトルは殆ど同じ
であるので、溶剤可溶性の重合体のキヤステイング後の
溶剤の加熱乾燥によつて、重合体は架橋によつて溶剤不
溶化するものの、化学構造において大きい変化が生じて
いないことが認められる。
【0083】次に、可溶性重合体と不溶性重合体につい
て、元素分析の結果を以下に示す。 可溶性重合体 C, 77.19; H, 4.76; N, 14.86 (合計 96.81)不溶性重合体 C, 78.34; H, 4.99; N, 15.16 (合計 98.49) この元素分析に基づいて、C12.00に規格化した可溶
性重合体の組成式はC12.00H8.82N1.98 であり、不溶性
の重合体の組成式は C12.00H9.11N1.99 である。他方、
同様に、C12.00に規格化したキノンジイミン構造単
位及びフエニレンジアミン構造単位は、それぞれ下記の
とおりである。キノンジイミン構造単位 C12H8N2 フエニレンジアミン構造単位 C12H10N2 従つて、可溶性重合体及び溶剤不溶性重合体共に、前述
したように、キノンジイミン構造単位とフエニレンジア
ミン構造単位を主たる繰返し単位として有する重合体で
ある。 参考例5 参考例2にて得られた重合体フイルムを種々のpKa 値を
有するプロトン酸の水溶液又はアルコール溶液に浸漬
し、ドーピングの可否を調べた。種々のpKa 値を有する
プロトン酸にてドーピングして得られた重合体フイルム
の電導度を表2に示す。pKa 値が4.8以下であるプロト
ン酸が重合体のドーピングに有効であることが示され
る。
【0084】
【表2】
【0085】実施例1 参考例1にて得られた脱ドーピングした有機溶剤可溶性
のポリアニリン粉末7.5gをN−メチル−2−ピロリド
ン42.5g中に少量ずつ加えて溶解させて、黒青色溶液
を得た。この溶液に更にフエニルヒドラジン1.25gを
加えて、ポリアニリンを還元処理した。溶液は褐色とな
つた。
【0086】1,5−ナフタレンジスルホン酸四水和物7.
45gをN−メチル−2−ピロリドン42.55gに溶解
した溶液を調製し、上記ポリアニリン溶液と混合して、
ドーパントを含有する緑色のポリアニリン溶液を得た。
この溶液をガラス板上にキヤステイングし、150℃で
2時間乾燥させて、ポリアニリンのフイルムを得た。こ
のフイルムをガラス板から剥離したところ、厚み29μ
m、電導度0.3S/cmであつた。このフイルムを蒸留水
中に浸漬したときの電導度変化を表3に示す。
【0087】次に、上記溶液をアルミナ誘電体皮膜上に
塗布し、120℃で50分間加熱乾燥して、ポリアニリ
ン膜を形成させた。更に、その上に10mm×13mmの面
積に銀蒸着して、固体電解コンデンサーを作製した。こ
のコンデンサーの容量とインピーダンスの周波数特性を
測定した結果を表4に示す。 実施例2 参考例1にて得られた脱ドーピングした有機溶剤可溶性
のポリアニリン粉末7.5gをN−メチル−2−ピロリド
ン42.5g中に少量ずつ加えて溶解させて、黒青色溶液
を得た。
【0088】この溶液に更にフエニルヒドラジン1.25
gを加えて、ポリアニリンを還元処理した。溶液は褐色
となつた。m−ベンゼンジスルホン酸4.93gをN−メ
チル−2−ピロリドン45.07gに溶解した溶液を調製
し、上記ポリアニリン溶液と混合して、ドーパントを含
有する緑色のポリアニリン溶液を得た。
【0089】この溶液をガラス板上にキヤステイング
し、150℃で2時間乾燥させて、ポリアニリンのフイ
ルムを得た。このフイルムをガラス板から剥離したとこ
ろ、厚み19μm、電導度1.6S/cmであつた。このフ
イルムを蒸留水中に浸漬したときの電導度変化を表3に
示す。次に、上記溶液をアルミナ誘電体皮膜上に塗布
し、120℃で50分間加熱乾燥して、ポリアニリン膜
を形成させた。更に、その上に10mm×13mmの面積に
銀蒸着して、固体電解コンデンサーを作製した。
【0090】このコンデンサーの容量とインピーダンス
の周波数特性を測定した結果を表4に示す。 実施例3 参考例1にて得られた脱ドーピングした有機溶剤可溶性
のポリアニリン粉末7.5gをN−メチル−2−ピロリド
ン42.5g中に少量ずつ加えて溶解させて、黒青色溶液
を得た。
【0091】この溶液に更にフエニルヒドラジン1.25
gを加えて、ポリアニリンを還元処理した。溶液は褐色
となつた。1,2−エタンジスルホン酸3.85gをN−メ
チル−2−ピロリドン46.15gに溶解した溶液を調製
し、上記ポリアニリン溶液と混合して、ドーパントを含
有する緑色のポリアニリン溶液を得た。
【0092】この溶液をガラス板上にキヤステイング
し、150℃で2時間乾燥させて、ポリアニリンのフイ
ルムを得た。このフイルムをガラス板から剥離したとこ
ろ、厚み30μm、電導度4.3S/cmであつた。このフ
イルムを蒸留水中に浸漬したときの電導度変化を表3に
示す。次に、上記溶液をアルミナ誘電体皮膜上に塗布
し、120℃で50分間加熱乾燥して、ポリアニリン膜
を形成させた。更に、その上に10mm×13mmの面積に
銀蒸着して、固体電解コンデンサーを作製した。
【0093】このコンデンサーの容量とインピーダンス
の周波数特性を測定した結果を表4に示す。
【0094】
【表3】
【0095】
【表4】
【0096】比較例1 参考例1にて得られた脱ドーピングした有機溶剤可溶性
のポリアニリン粉末7.5gをN−メチル−2−ピロリド
ン42.5g中に少量ずつ加えて溶解させて、黒青色溶液
を得た。この溶液に更にフエニルヒドラジン1.25gを
加えて、ポリアニリンを還元処理した。溶液は褐色とな
つた。
【0097】p−トルエンスルホン酸一水和物7.88g
をN−メチル−2−ピロリドン42.12gに溶解した溶
液を調製し、上記ポリアニリン溶液と混合して、ドーパ
ントを含有する緑色のポリアニリン溶液を得た。この溶
液をガラス板上にキヤステイングし、150℃で2時間
乾燥させて、ポリアニリンのフイルムを得た。このフイ
ルムをガラス板から剥離したところ、厚み25μm、電
導度0.4S/cmであつた。このフイルムを蒸留水中に浸
漬したときの電導度変化を表3に示す。
【0098】次に、上記溶液をアルミナ誘電体皮膜上に
塗布し、120℃で30分間加熱乾燥して、ポリアニリ
ン膜を形成させた。更に、その上に10mm×13mmの面
積に銀蒸着して、固体電解コンデンサーを作製した。こ
のコンデンサーの容量とインピーダンスの周波数特性を
測定した結果を表4に示す。
【図面の簡単な説明】
【図1】は、本発明による固体電解コンデンサーの製造
に用いる脱ドープ状態で有機溶剤可溶性のアニリン酸化
重合体を457.9nmの波長の光で励起したときのレー
ザー・ラマンスペクトル、
【図2】は、従来より知られているポリアニリンを45
7.9nmの波長の光で励起したときのレーザー・ラマン
スペクトル、
【図3】は、図1と同じ溶剤可溶性ポリアニリンを種々
異なる励起波長の光で励起したときのレーザー・ラマン
スペクトル、
【図4】は、有機溶剤可溶性のアニリン酸化重合体のN
−メチル−2−ピロリドン溶液の電子スペクトル、
【図5】は、溶剤可溶性ポリアニリンのGPCによる分
子量分布を示すグラフ、
【図6】は、溶剤可溶性のポリアニリン酸化重合体のK
Br錠剤法によるFT−IRスペクトル、
【図7】は、溶剤可溶性の重合体をキヤステイングして
得た溶剤不溶性のフイルムのKBr錠剤法によるFT−
IRスペクトルである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平3−35516(JP,A) 特開 昭61−239617(JP,A) 特表 平3−504872(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01G 9/028

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】皮膜形成金属上に形成された誘電体酸化皮
    膜と、この誘電体酸化皮膜上に固体電解質として、一般
    式 【化1】 (式中、m及びnはそれぞれ繰返し単位中のキノンジイ
    ミン構造単位及びフエニレンジアミン構造単位のモル分
    率を示し、0<m<1、0<n<1、m+n=1であ
    る。)を主たる繰返し単位として有するポリアニリンで
    あつて、脱ドープ状態において有機溶剤に可溶性であ
    り、457.9nmの波長の光で励起して得られるレーザ
    ー・ラマンスペクトルにおけるパラ置換ベンゼンの骨格
    振動のうち、1600cm-1よりも高波数にあらわれる骨
    格延伸振動のラマン線の強度Iaと1600cm-1よりも
    低波数にあらわれる骨格延伸振動のラマン線強度Ibの
    比Ia/Ibが1.0以上である有機溶剤可溶性ポリアニ
    リンに、分子内に2個以上のスルホン酸基を有するポリ
    スルホン酸がドーピングされてなる導電性高分子の膜が
    形成されていることを特徴とする固体電解コンデンサ
    ー。
  2. 【請求項2】ポリアニリンがN−メチル−2−ピロリド
    ン中、30℃で測定した極限粘度〔η〕が0.40dl/g以
    上であることを特徴とする請求項1記載の固体電解コン
    デンサー。
  3. 【請求項3】皮膜形成金属上に形成された誘電体酸化皮
    膜と、この誘電体酸化皮膜上に固体電解質としてポリア
    ニリンからなる導電性高分子の膜が形成されている固体
    電解コンデンサーの製造方法において、一般式 【化1】 (式中、m及びnはそれぞれ繰返し単位中のキノンジイ
    ミン構造単位及びフエニレンジアミン構造単位のモル分
    率を示し、0<m<1、0<n<1、m+n=1であ
    る。)を主たる繰返し単位として有するポリアニリンで
    あつて、脱ドープ状態において有機溶剤に可溶性であ
    り、457.9nmの波長の光で励起して得られるレーザ
    ー・ラマンスペクトルにおけるパラ置換ベンゼンの骨格
    振動のうち、1600cm-1よりも高波数にあらわれる骨
    格延伸振動のラマン線の強度Iaと1600cm-1よりも
    低波数にあらわれる骨格延伸振動のラマン線強度Ibの
    比Ia/Ibが1.0以上であるポリアニリンを分子内に
    2個以上のスルホン酸基を有するポリスルホン酸と共に
    有機溶剤に溶解させ、得られた溶液を誘電体皮膜上に塗
    布し、乾燥させて、誘電体皮膜上に導電性ポリアニリン
    の膜を形成することを特徴とする固体電解コンデンサー
    の製造方法。
  4. 【請求項4】ポリアニリンがN−メチル−2−ピロリド
    ン中、30℃で測定した極限粘度〔η〕が0.40dl/g以
    上であることを特徴とする請求項3記載の固体電解コン
    デンサーの製造方法。
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