JP2994010B2 - クローニングベクタープラスミド、それから誘導されるベクタープライマー及びそれを用いたcDNAバンクの作製方法 - Google Patents

クローニングベクタープラスミド、それから誘導されるベクタープライマー及びそれを用いたcDNAバンクの作製方法

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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、多機能を有するクローニングベクター、そ
れから誘導されるベクタープライマー及びそれを用いた
cDNAバンクの作製方法に関する。この方法により、医薬
として有用なタンパク質を大量に生産するために利用で
きるcDNAを容易に得ることが出来る。
[従来の技術] 我々の体の細胞を構成するタンパク質は、細胞骨格と
して、反応の触媒として、あるいは情報伝達の媒体とし
て生命を司る上で中心的な役割を有している。従って、
新しいタンパク質を発見し、その構造と機能を解明する
ことは生命を知る上で重要であるばかりでなく、医薬や
診断薬として用いる上でも重要である。これまで我々の
体の中で機能しているタンパク質を医薬として用いよう
とする試みは数多く行なわれてきたが、目的とするタン
パク質を大量に調製することが困難なため、限られた物
しか実用化されていなかった。ところが最近の遺伝子工
学の目覚ましい発達のおかげで、ヒト由来のタンパク質
をコードしている遺伝子を取り出し、それを用いて細胞
や動物細胞内でそのタンパク質を大量に発現させる事が
出来るようになった。すでにこのような手法で多くのタ
ンパク質が医薬としての開発段階に入っている。
ヒトのタンパク質は、我々の体内で機能しているの
で、どれもが医薬として利用できる可能性を秘めてい
る。また多くの遺伝病は重要な機能を有しているタンパ
ク質の欠損によって起こる事が知られている。従って、
未知のヒトタンパク質を大量に生産してその機能を明ら
かにし、さらには疾患との関連性を明らかにすること
は、今後の医薬開発に於て重要なステップとなる。そこ
で従来どおり目的とする活性を有するタンパク質の精製
から始めようとすると、材料を大量に入手する必要があ
るため多くの時間と労力を要する。そこで本発明者ら
は、遺伝子から攻める戦略を採ることにした。すなわ
ち、タンパク質のアミノ酸配列情報はゲノム遺伝子上に
コードされており、mRNAに転写された後タンパク質に翻
訳されるので、このmRNAからcDNAを作製し、得られた全
てのcDNAバンクを作製し、その後これらのタンパク質の
性質を明らかにして行こうとする計画である。
ヒトのゲノム上には、約105個程度の遺伝子が存在し
ていると考えられている。従ってヒトのタンパク質の種
類もその程度と見積られている。最近ヒトのゲノム遺伝
子の全配列を決定しようとする計画が世界的なレベルで
討議されている。もしこれが実現すれば、ヒトのタンパ
ク質の全配列も解明されることになると期待されてい
る。しかし現実には、一つのタンパク質をコードしてい
る遺伝子はエキソンとイントロンからなり、ゲノムの塩
基配列だけからタンパク質のアミノ酸配列を決定するに
は無理がある。細胞内ではゲノム上の遺伝情報はmRNAに
読み取られた後、mRNAからイントロンの部分がプロセス
され、エキソン部分のみからなるmRNAがリボソーム上で
タンパク質に翻訳される。従って、この段階のmRNAの塩
基配列を決定できればそれがコードしているタンパク質
のアミノ酸配列も決定できることになる。遺伝子組換え
技術は、mRNAをcDNAに変換しこれを大腸菌に導入するこ
とを可能にした。これによって1個のmRNAに由来するcD
NAを含むプラスミド即ち「cDNAベクター」が得られ、こ
れらのcDNAベクターを含む大腸菌からなる集団、すなわ
ち「cDNAライブラリー」が作製できる。もしこのように
して得られた全cDNAクローンの塩基配列を決定すれば、
細胞内に存在する全mRNAの塩基配列、すなわち細胞内で
合成されている全タンパク質のアミノ酸配列を決定出来
ることになる。このようにして塩基配列の決定されたcD
NA集団を「cDNAバンク」と呼ぶことにする。もし得られ
たcDNAベクターを適当な動物細胞に導入して発現出来れ
ば、その発現産物を用いて活性のスクリーニングを行な
うことが出来る。すなわち、このような戦略を用いれば
一次構造の解った、しかも哺乳動物細胞内で発現可能な
ヒトのタンパク質のcDNAバンク(「ホモ・プロテイン」
cDNAバンク)を作製することが可能となる。なお、ここ
ではヒトを例にあげたが、他の動物や植物について同様
のcDNAバンクが作製できれば、その利用価値はヒトの場
合と同様に大きい。
上述した戦略の成否の鍵を握っているのはcDNAライブ
ラリーの質である。従来法に従ってcDNAを合成した場
合、それをシーケンスしたり、それをプローブとして用
いて完全長のクローンをスクリーニングしたり、あるい
はそのcDNAを発現させたりするには、cDNAを含む断片を
一度ベクターから切り出した後、そのまま用いるかある
いはそれぞれの目的にあったベクターにサブクローニン
グする必要があった。しかし数多くのクローンに於てこ
のような操作をすることは多大の労力と時間を要するの
で、最初に作製したcDNAベクター上でこれらの操作を全
て行なえる方法が望まれる。すなわち、このようなcDNA
ベクターに最低要求される条件は、1)挿入方向の決ま
ったしかも完全長のcDNAクローンを含むこと、2)シー
ケンスが容易であること、3)プローブを容易に調製で
きて各種スクリーニングが可能であること、4)インビ
トロあるいはインビボの系で発現可能であることの4つ
である。なお1)で云う「完全長cDNAクローン」とは、
厳密な意味では鋳型となるmRNAと完全に同じ5′末端か
ら始まりポリAテールまでを含むcDNAクローンを意味す
るが、この明細書ではmRNA上でタンパク質をコードして
いる部分を全て含むcDNAクローンの意味で使用する。
現在cDNA作製法として最も広く使用されている方法
は、以下に示すGubler−Hoffman法[Gene25:263−269
(1983)]である。この方法では、まず細胞から単離し
たポリ(A)+RNAを鋳型とし、オリゴdTをプライマーと
して逆転写酵素により第1鎖cDNAを合成する。次いで大
腸菌RNaseH、大腸菌DNAポリメラーゼI、大腸菌DNAリガ
ーゼにより第2鎖を合成する。得られた2本鎖cDNAをT4
DNAポリメラーゼで平滑末端化した後、適当なオリゴヌ
クレオチドリンカーを付加し、ファージベクターやプラ
スミドベクターに挿入した後大腸菌の形質転換を行な
う。この方法では、第2鎖DNAを合成するときmRNAの
5′末端に相当する部分をプライマーとして用いている
ことや、DNAポリメラーゼIやT4DNAポリメラーゼのエキ
ソヌクレアーゼ活性のため末端の欠失が起こりやすく、
完全長クローンを得ることは困難である。哺乳動物細胞
用オリジンとプロモーター、1本鎖ファージの複製開始
点とファージのRNAポリメラーゼプロモーターを有する
ベクター、例えばpCDM8[B.Seed,Nature329:840−842
(1987)]を用いれば、シーケンス用の1本鎖DNAの調
製、RNAプローブの調製、インビトロあるいはインビボ
翻訳用のmRNAの合成、哺乳動物細胞における発現などが
可能である。しかしベクターへのcDNAの挿入の向きが一
定でないという欠点がある。すなわちGubler−Hoffman
法を用いてcDNAを合成する場合、1)の条件を満足しな
い。またpCDM8は4.8kbpと長く、長いcDNAのクローニン
グには適しない。
完全長cDNAクローンを高頻度で得る方法としては、Ok
ayama−Berg法[Mol.Cell.Biol.2:161−170(1982)]
が挙げられる。この方法はdTテール付加したベクタープ
ライマーをプライマーとしてポリ(A)+RNAから逆転写
酵素によって第1鎖cDNAを合成し、これにdCテールを付
加した後、dGテールしたリンカーDNAを連結し、大腸菌R
NaseH、大腸菌DNAポリメラーゼI、大腸菌DNAリガーゼ
を作用させてRNAをDNAに置き換える。第1鎖合成後のdC
テール付加は、第1鎖合成が途中で停止しているような
3′末端には起こり難く、従ってdCテールされた物はほ
ぼ完全長クローンといってよい。またベクタープライマ
ーを用いているため挿入されたcDNAの向きが一義的に決
まる。リンカーDNAにSV40の複製開始点とプロモーター
を組み込むことにより、動物細胞内で発現可能な系も作
られている。[H.Okayama及びP.Berg,Mol.Cell.Biol.3:
280−289(1983)]。本庶はリンカーDNAにSP6プロモー
ターを組み込み、カエルの卵で発現可能なmRNAを合成で
きる系を開発した(特開昭62−74291)。しかし、これ
らOkayama−Berg法に基づく方法は高度の技術が要求さ
れる為限られたグループでしか使用されていない。また
dGテール数が多いため5′末端側からのシーケンスが困
難であることや、プローブの調製が容易でない等の為上
記の目的にそぐわない。すなわち上記2)及び3)の条
件を満たさない。
これらの欠点を改良した方法もいくつか試みられてい
るが、上記4条件の全てを満足するcDNAベクターは得ら
れていない。上記4条件のうち何れが欠けても、先に示
した戦略を遂行するには不十分であり、これらをすべて
満足する方法の開発が必要不可欠である。
[発明が解決しようとする課題] 従って、本発明の目的は、1)挿入方向の決まった完
全長クローンを含む、2)シーケンスが容易である。
3)完全長cDNAに相補的なプローブを調製することがで
き、それを用いて容易にスクリーニングを行なうことが
できる、4)哺乳動物細胞内で発現可能であるという4
条件をすべて満足するcDNAベクターを合成する方法並び
に該方法に必要なクローニングベクター及びこれから誘
導されるベクタープライマーを提供することである。
[課題を解決するための手段] 本願発明者らは、鋭意研究の結果、上記4条件を満足
するcDNAクローニングベクターを構築し、それを用いて
ヒトcDNAバンクを作製することに成功し本発明を完成し
た。すなわち、本発明は、哺乳動物細胞用プロモーター
PR1と、その下流に位置し、真核細胞遺伝子に出現頻度
の少ないユニークな制限酵素部位RE1及びRNAポリメラー
ゼのプロモーターPR2と、その下流に位置し、dNオリゴ
マー(ただし、dNはdA、dC、dG、dTのいずれかを表す)
からなる3′突出末端を生成するユニークな制限酵素部
位RE2と、その下流に位置するユニークな任意の制限酵
素部位RE3と、その下流に位置するユニークな任意の
3′突出末端生成制限酵素部位RE4と、その下流に位置
し、真核細胞遺伝子に出現頻度の少ないユニークな制限
酵素部位RE5及びRNAポリメラーゼプロモーターPR3と、
制限酵素部位RE1の上流の任意の位置に存在する少なく
とも1種類の任意の3′突出末端生成制限酵素部位RE6
と、さらに上記以外の任意の位置に、哺乳動物細胞用複
製オリジンOR1、1本鎖ファージの複製オリジンOR2、大
腸菌用複製オリジンOR3及び選択マーカーを有するクロ
ーニングベクタープラスミドを提供する。
また、本発明は、上記本発明のクローニングベクター
プラスミドを制限酵素部位RE4で切断後、末端デオキシ
ヌクレオチド転移酵素によりdTテール付加を行ない、さ
らに制限酵素部位RE3で切断することにより調製したベ
クタープライマーを提供する。
さらに、本発明は、上記本発明のベクタープライマー
をプライマーとして用いて、細胞から単離したポリ
(A)+RNAからcDNAを合成し、このcDNA含有プラスミド
を用いて大腸菌を形質転換し、得られた形質転換体にヘ
ルパーファージを感染させることによりcDNAプラークラ
イブラリーを調製し、この中の独立したプラークから1
本鎖DNAを用いてcDNAインサートの5′末端からシーケ
ンスすることにより、塩基配列が決定され且つ哺乳動物
細胞内で発現可能なcDNAベクターからなるcDNAバンクを
作製する方法を提供する。
さらにまた、本発明は、上記本発明の方法で2種のcD
NAライブラリーLAならびにライブラリーLBを作製し、ラ
イブラリーLAからRNAポリメラーゼを用いてセンス鎖のR
NAプローブ集団を調製し、一方ライブラリーLBからアン
チセンス鎖の1本鎖cDNA集団を調製し、RNAプローブ集
団と1本鎖cDNA集団の両者を混合してハイブリダイズさ
せた物をプローブとして用いてライブラリーLAをスクリ
ーニングすることにより、ライブラリーLAに特異的なcD
NAクローンを得、これを5′末端からシーケンスし、ラ
イブラリーLAに特異的で、塩基配列が決定され且つ哺乳
動物細胞内で発現可能なcDNAバンクを作製する方法を提
供する。
[発明の効果] 本発明により、上記4つの条件を全て満たすcDNAのク
ローニングが可能になった。従って、本発明クローニン
グベクターを用いると、サブクローニングのような手数
のかかる操作を必要とすることなく、完全長のcDNAをク
ローニングし、その塩基配列を決定し、cDNAに相補的な
プローブを作製してスクリーニングを行ない、哺乳動物
細胞内でcDNAを発現させることができる。従って、本発
明のクローニングベクターは、cDNAバンク(本明細書で
は、塩基配列の決定されたcDNAライブラリーをcDNAバン
クと呼ぶ)を作製する場合のように、多数のmRNAを処理
する必要がある場合に特に威力を発揮する。従って、本
発明により、ヒト又は他の動物の全タンパク質のアミノ
酸配列を決定することも、従来の方法を用いて行なう場
合に比べてはるかに短い時間で終了させることが可能と
なる。
[発明の具体的説明] 本発明のcDNAベクターの機能をまとめて第1図に示し
た。以下、クローニングベクターの構築法、これを用い
たcDNAベクター作製法、このcDNAベクターが上記4条件
を満足することを示す実施例について述べる。
(1)クローニングベクター 本発明の最大の特徴は、cDNA合成に用いるクローニン
グベクターにある。上記4条件のうち、1)の条件を満
たすためにベクタープライマーを用い、2)、3)、
4)の条件を満たすために、それぞれの機能をこのベク
タープライマーに付与している。すなわち、上述のよう
に、本発明のクローニングベクターは、哺乳動物細胞用
プロモーターPR1、その下流に真核細胞の遺伝子に出現
頻度の少ないユニークな制限酵素部位RE1とRNAポリメラ
ーゼのプロモーターPR2、その下流にdNオリゴマー(た
だし、dNはdA、dC、dG、dTのいずれかを表す)からなる
3′突出末端を生成するユニークな制限酵素部位RE2、
その下流にユニークな任意の制限酵素部位RE3、その下
流にユニークな任意の3′突出末端生成制限酵素部位RE
4、その下流に真核細胞の遺伝子に出現頻度の少ないユ
ニークな任意の3′突出末端生成制限酵素部位RE5とRNA
ポリメラーゼプロモーターPR3、制限酵素RE1の上流の任
意の位置でしかも他の機能を損なわない位置に少なくと
も1種類の任意の3′突出末端生成制限酵素部位RE6、
さらに上記以外の任意の位置に、哺乳動物細胞用複製オ
リジンOR1、1本鎖ファージの複製オリジンOR2、大腸菌
用複製オリジンOR3、選択マーカーを有するプラスミド
からなる。
上記表記の中で、「ユニークな」とはプラスミド上で
ただ1箇所だけ存在することを意味する。PR1からPR3ま
での位置関係を第2図に示す。RE1とPR2の順序はどちら
が先でも構わない。同様に、RE5とPR3の順序もどちらが
先でも構わない。またこれらの部位間には出来るだけ余
分な塩基配列が無いことが好ましい。1)の条件を満た
すために、RE2、RE3、RE4を2)の条件を満たすため
に、OR2、RE6を、3)の条件を満たすために、PR2、PR
3、PR1、PE5、OR2を、4)の条件を満たすために、OR
1、PR1をそれぞれ必要としている。
哺乳動物細胞用プロモーターPR1としては、SV40の初
期プロモーターや後期プロモーター、アデノウィルス2
の後期プロモーター、レトロウィルスの5′ロングター
ミナルリピート(LTR)等が例示出来る。真核細胞の遺
伝子に出現頻度の少ないユニークな制限酵素部位RE1やR
E5としては、Not I、SnaB I、Sfi I、Spe Iなどが例示
出来る。dNオリゴマー(ただし、dNはdA、dC、dG、dTの
いずれかを表す)からなる3′突出末端を生成するユニ
ークな制限酵素部位RE2としては、Bst XI、Sfi I、Dra
III、Bgl Iなどが例示できる。これらの制限酵素の切断
部位は任意のヌクレオチド対で置き換えることが出来る
ので、この任意のヌクレオチドをdGにすれば、切断後dG
オリゴマーからなる3′突出末端を生成する。Bst XIの
切断部位の塩基配列は、 なので、NをGにすれば、Bst XI切断後、次のような末
端となる。
従って、RE2としては、その切断部が任意のヌクレオ
チドである3′突出末端生成制限酵素部位であればいか
なるものでも良く、上述の例に限定されない。
制限酵素部位RE1の上流の任意の位置に存在する少な
くとも一種類の任意の3′突出末端生成制限酵素部位RE
6としては、RE1、RE2、RE3、RE4、RE5のいずれとも異な
る制限酵素部位であれば、いかなる3′突出末端制限酵
素部位でも良い。ただし、真核細胞遺伝子に出現頻度の
低い制限酵素部位であることが望ましい。例えば、Sfi
I等が例示できるが、これに限定されるものではない。
また、RE6は一種類だけではなく、複数種類存在するこ
とが望ましい。RE6は必ずしもユニークである必要はな
いが、いずれもRE1より上流に存在する必要がある。
RNAポリメラーゼプロモーターPR2やPR3としては、T3R
NAポリメラーゼプロモーター、T7RNAポリメラーゼプロ
モーター、SP6RNAポリメラーゼプロモータなどが例示で
きる。哺乳動物細胞用複製オリジンOR1としては、SV40
のオリジンなどが例示できる。1本鎖ファージの複製オ
リジンOR2としては、f1ファージのオリジンやM13ファー
ジのオリジンが例示できる。大腸菌用複製オリジンOR3
としては、pBR322のオリジンやpUC系のプラスミドのオ
リジンなどが例示できる。選択マーカーとしては、アン
ピシリン耐性マーカー、テトラサイクリン耐性マーカ
ー、カナマイシン耐性マーカーなどのような薬剤耐性マ
ーカー、栄養要求性及び温度感受性等が例示できる。さ
らに哺乳動物細胞に導入した際の薬剤耐性マーカーとし
てネオマイシン耐性遺伝子等をそれ用のプロモーターと
一緒に導入しても良いが、その場合ベクターが長くなり
過ぎる欠点を有する。また、哺乳動物細胞に導入した場
合、その発現効果を向上させるためにスプライス部位及
びポリA付加シグナルを含めるのが望ましい。
cDNAは制限酵素部位RE2とRE4の間に、mRNAの5′側が
RE2側になるような向きで導入される。1本鎖ファージ
の複製オリジンの向きによって、2本鎖のうちどちらか
の鎖が1本鎖になるかが決まるが、本ベクターにおいて
1本鎖ファージの複製オリジンはcDNAのアンチセンス鎖
が1本鎖になるような向きに挿入される。なお、本明細
書においては、mRNAと同じ塩基配列(ただしTとUは同
じと考えて)を有するものをセンス鎖、mRNAに相補的な
塩基配列を有するものをアンチセンス鎖と呼んでいる。
5′末端から塩基配列を決定するためのシーケンス用
プライマーとして、RE2の上流の任意の部位の塩基配列
を有する合成オリゴヌクレオチドを用いることが出来る
が、広く利用されているM13用シーケンスプライマーの
配列をベクター中に組み込んでもよい。
RNAポリメラーゼプロモーターPR2は、生成する1本鎖
RNAが鋳型mRNAに対して、センス鎖となるような方向
に、またPR3は、1本鎖RNAがアンチセンス鎖になるよう
な方向に組み込む。以上の構成からなるプラスミドは、
公知のプラスミドおよび合成オリゴヌクレオチドから容
易に作製することが出来る。以下の実施例に記載された
プラスミドpKA1は、PR1としてSV40初期プロモーター、R
E1としてSnaB I、PR2としてT7プロモーター、RE2として
Bst XI、RE3としてEcoR V、RE4としてKpn I、RE5として
Not I、PR3としてT3プロモーター、RE6としてSfi I、Ps
t IとSph I、OR1としてSV40のオリジン、OR2としてf1の
オリジン、OR3としてpBR322のオリジン、薬剤耐性マー
カーとしてアンピシリン耐性マーカー(β−ラクタマー
ゼ遺伝子)、シーケンス用プライマーが張り付く部位と
してM13のユニバーサルプライマー(U)とリバースプ
ライマー(R)に相当する塩基配列をそれぞれ使用して
いる(第3図)。さらにpKA1のSV40プロモーターの下流
に16Sスプライス部位が、また、T3プロモーターの下流
にポリA付加シグナルが含まれている。pKA1は3.6kbpか
らなり、公知の多機能を有するクローニングベクターに
比較して短く、従って長いcDNAのクローニングにも適し
ている。
上述したプラスミドを制限酵素部位RE4で切断し、
3′突出末端とした後、常法により末端デオキシヌクレ
オチド転移酵素を用いてdTテール付加を行なう。dTテー
ルの付加数は30〜70塩基が好ましく、さらに好ましくは
50〜60塩基である。次いで制限酵素部位RE3で切断し、
ベクターを含む長い断片をアガロースゲル電気泳動法な
どにより単離精製する。これをベクタープライマーとし
て使用する。
(2)cDNAライブラリーの作製法 細胞から公知の方法で取得したポリ(A)+RNAを、上
述のベクタープライマーとアニールさせた後、逆転写酵
素により第1鎖cDNAを合成する。次いで末端デオキシヌ
クレオチド転移酵素によりdCテール付加を行なう。dCテ
ールの付加数は4個から10個が好ましい。次いでこれを
制限酵素部位RE2で切断後、大腸菌DNAリガーゼによりセ
ルフライゲーションを行なう。次いで大腸菌RNaseH、大
腸菌DNAポリメラーゼI、大腸菌DNAリガーゼにより第2
鎖を合成する。以上の工程は第4図に示した。得られた
cDNA含有混合プラスミド溶液で、大腸菌F′因子含有株
の形質転換を行なう。大腸菌F′因子含有株としては、
NM522、JM101、JM103、JM105、JM109、DH5αF′等が例
示できる。形質転換体、すなわち、cDNAライブラリーを
適当な培地、例えばLブロスや2xTY培地(薬剤耐性マー
カーとしてアンピシリン耐性遺伝子を含む場合はアンピ
シリンを含有する)などで培養し菌を増幅した後、グリ
セロールやDMSOを添加して凍結保存する。cDNAライブラ
リーを溶液培地中で培養した後、ヘルパーファージを感
染させると、各大腸菌は含有しているcDNAベクターに由
来する1本鎖cDNAを含むファージが菌体外に放出され
る。なおこの1本鎖cDNAは鋳型となったmRNAに対してア
ンチセンス鎖を有している。そこでcDNAライブラリーに
ヘルパーファージを感染させた後、遠心して菌体を集
め、次いで培地で十分洗浄してヘルパーファージを除去
した後、培地で希釈したものをcDNAベクターを含まない
宿主大腸菌のみの溶液と軟寒天あるいは軟アガロース溶
液と混合し、これを寒天培地上に流して培養すると、cD
NA含有菌のあるところにプラークが生成する。単一プラ
ークからつまようじなどで菌を拾い2vTYなどの液体培地
に移して培養する。培養液の一部を凍結保存し、残りの
培養液を遠心して菌体からは常法に従いプラスミドを単
離する。また上清からは、公知の方法に従いファージを
単離し、さらにこのファージから1本鎖cDNAを単離精製
する。又上清の一部も冷蔵保存しておくことが好まし
い。なおここで用いるヘルパーファージとしては、M13K
07[J.Vieira and J.Messing,“Methods in Enzymolog
y"vol.153,p.3,1987]、VCS−M13、R408(以上Stratage
ne社)等を例示できる。
ヘルパーファージを感染させる前にcDNAライブラリー
を寒天培地上に蒔いて単一コロニーとした後、各コロニ
ーを培養し、それぞれにヘルパーファージを感染させ、
以下上と同様にして1本鎖DNAを単離しても良い。
以上のような方法により、一つのmRNAに由来するcDNA
ベクターを含む形質転換体、該cDNAベクターからなる2
本鎖プラスミド、1本鎖DNAからなる該cDNAベクター、
1本鎖DNAを含むファージの各ライブラリーが出来上が
る。
(3)塩基配列決定法 塩基配列の決定は、1本鎖あるいは2本鎖いずれのDN
Aを用いて行なう事も出来るが、1本鎖DNAを使用した方
が多くの塩基配列を読むことが出来るので好ましい。制
限酵素部位RE2の直前の塩基配列に相当する17〜20マー
程度のシーケンス用合成オリゴヌクレオチドプライマー
を用いて、放射性化合物あるいは蛍光色で標識した基質
を用いジデオキシ法により塩基配列を決定する。酵素と
しては、クレノウ断片、TaqDNAポリメラーゼ、T7DNAポ
リメラーゼ、逆転写酵素などを用いることが出来る。pK
A1を用いる場合には、プライマーとしてM13用ユニバー
サルプライマーを使用することが出来る。このプライマ
ーでcDNAの5′末端から約400塩基程度の配列を決定で
きる。もし完全長クローンの場合はこの中に開始コドン
が見出され、開始コドンから始まるオープンリーディン
グフレームが存在する。もしこの中に停止コドンが見出
されない場合には、さらに塩基配列を決定する必要があ
る。その場合には、決定された塩基配列の3′末端に近
い部位の塩基配列を基にして新たなるシーケンス用プラ
イマーを合成し、これをプライマーとして塩基配列の決
定を行なう。また本発明のプラスミドを用いれば、該cD
NAを含むプラスミドを制限酵素部位RE1と制限酵素部位R
E6で切断後、公知の方法によりエキソヌクレアーゼで処
理することにより、cDNAの5′末端からの欠失体を作製
する事が出来、この欠失体についてRE6の直前の塩基配
列に基づくシーケンス用プライマーを用いて塩基配列を
決定することも出来る。pKA1の場合には制限酵素部位RE
6の直前にM13用リバースプライマー部位が存在するので
これを利用できる。
得られた塩基配列はセンス鎖であり、従ってmRNAと同
じ配列を有しているので、この塩基配列あるいはオープ
ンリーディングフレームがコードするアミノ酸配列を用
いてDNAあるいはタンパク質のデータベースの検索を行
ない、類似配列の有無を調べることが出来る。もし類似
配列が存在する場合、得られたcDNAがコードするタンパ
ク質の種類や性質を推定することが出来る。
(4)スクリーニング法 全cDNAライブラリーの塩基配列を決定しようとする場
合、同じクローンを重複してシーケンスする事を避ける
ために、既にシーケンスしたクローンと同じ物を前もっ
て除去することが望ましい。本発明はこのための方法即
ちサブトラクション法を提供する。この手法は細胞特異
的なクローンや、刺激によって誘導されて来るクローン
を得る場合にも利用できる。
ここで2種のcDNAライブラリーLAとLBがあり、LAから
LBを差引く場合を考える。即ちライブラリーLAが新規ク
ローンや特異的クローンを含み、ライブラリーLBが既に
シーケンスの決定したクローンや共通クローンからなる
場合に相当する。まずライブラリーLAを培養して増幅し
た後、cDNAを含有する総プラスミドを単離する。これを
制限酵素部位RE5で切断後、プロモーターPR2に作用する
RNAポリメラーゼを、放射能物質や蛍光物質などで標識
したヌクレオチド基質と共に反応させると各cDNAのセン
ス鎖に相当する標識RNA集団が得られる。次いでライブ
ラリーLBを培養後、ヘルパーファージを感染させ、その
培養上清から1本鎖DNA集団を調製する。ライブラリーL
Aから調製した標識RNA集団を、ライブラリーLBから調製
した大過剰の1本鎖DNA集団と混合してハイブリダイゼ
ーションさせると、両ライブラリーに共通に存在するcD
NAクローンに由来するRNA(センス鎖)と1本鎖DNA(ア
ンチセンス鎖)同士はハイブリダイズするが、ライブラ
リーLAにのみ存在するcDNAクローンに由来する標識RNA
は遊離の状態で存在する。従ってこれをプローブとし
て、ライブラリーLAをプラークハイブリダイゼーション
あるいはコロニーハイブリダイゼーション法によりスク
リーニングすれば、ライブラリーLAにのみ存在するクロ
ーンを得ることが出来る。第5図に以上述べたサブトラ
クション法の原理を示した。
本発明で作製されたcDNAベクターはcDNAの3′末端側
にRNAポリメラーゼプロモーターPR3を有するので、制限
酵素RE1で切断後PR3に作用するRNAポリメラーゼと反応
させると、cDNAに対してアンチセンス鎖を有するRNAプ
ローブを調製することが出来る。これはノザンハイブリ
ダイゼーション用のプローブとして利用できる。
(5)動物細胞での発現法 本発明のcDNAベクターは哺乳動物細胞内で機能する複
製オリジンならびにプロモーターを有しているので、単
離したcDNA含有プラスミドをそのまま適当な動物細胞に
リン酸カルシウム法やエレクトロポレーション法など公
知の方法を用いて導入することにより、動物細胞内で発
現することが可能である。導入されたプラスミド上のcD
NAがレセプターや分泌タンパク質をコードしている場合
は、この方法で活性のスクリーニングが可能となる。
また制限酵素部位RE5で切断後、プロモーターPR2に作
用するRNAポリメラーゼをCAP類似のヌクレオチド基質m7
GpppGと共に反応させると、インビトロ翻訳系やカエル
卵細胞を用いた翻訳系で利用可能なRNAが得られる。
[実施例] 以下、実施例に基づき本発明をさらに具体的に説明す
るが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
DNAの組換えに関する基本的な操作および反応は文献
[T.Maniatis et al.(1982),“Molecular Cloning.A
Laboratry Manual",Cold Spring Harbor Laboratory]
に従って行った。
実施例1 クローニングベクターpkAlの構築 (1)pTZ18RP1の作製(第6図) プラスミドpTZ18R(ファルマシア社)10μgを100単
位のBamH I、次いで100単位のEcoR Iで二重消化した
後、0.8%のアガロースゲル電気泳動(AGE)にかけ、ゲ
ルから2.9kbpの断片を単離精製した。これに制限酵素部
位EcoR I、Bst XI、EcoR V、Not I、Kpn I、BamH Iを含
む合成オリゴマーL1とL2を10pmolづつ混合してアニール
させた後、ライゲーション反応を行なった。
反応液で大腸菌HB101を形質転換し、形質転換体を培
養後プラスミドを単離した。M13シーケンス用リバース
プライマーを用いて合成オリゴマー挿入部位のシーケン
スを行い目的とする塩基配列を有するものをpTZ18RP1と
命名した。
(2)pTZ18RP2の作製(第6図) pTZ18RP1のT7プロモーターの直前に点突然変異を導入
することによりSnaB I部位を形成した。(1)で調製し
たプラスミドpTZ18RP1を用いて大腸菌CJ236(バイオラ
ッド社)を形質転換し、得られた形質転換体コロニーを
50μg/mlアンピシリン含有2xTY培地5ml中で37℃1時間
培養後、ヘルパーファージM13K07(ファルマシア社)を
添加して37℃一晩培養した。この培養上清から1本鎖DN
Aを精製した。次いでこの1本鎖DNAを、5′末端をT4ポ
リヌクレオチドキナーゼによりリン酸化した合成オリゴ
マーL3 10pmolを混合してアニールさせた後、4単位の
クレノウ断片、350単位のT4DNAリガーゼ、0.8mM dNTP存
在下4℃5分間、室温5分間、37℃2時間反応させた。
反応液で大腸菌JM109の形質転換を行い、形質転換体
からプラスミドを単離した、SnaB Iで切断可能なものを
さらにシーケンスし、目的とする塩基配列を有すること
を確認したプラスミドをpTZ18RP2と命名した。
(3)pTZ18RP3の作製(第6図) pTZ18RP2のBamH I部位にT3プロモーターを導入した。
(2)で調製したプラスミドpTZ18RP2 10μgを100単位
のBamH Iで消化した後、0.8%アガロースゲル電気泳動
にかけ、切断をゲルから単離精製した。これにT3プロモ
ーターを含む合成オリゴヌクレオチドL4とL5をそれぞれ
10pmolづつ混合してアニールした後、ライゲーション反
応を行った。
反応液で大腸菌NM522を形質転換した後、形質転換体
からプラスミドを単離し、シーケンスによって目的とす
る塩基配列を有していることを確認したプラスミドをpT
Z18RP3と命名した。
(4)pTZ18RP4の作製(第6図) pTZ18RP3のSnaB I部位にXho I部位とM13シーケンス用
ユニバーサルプライマー配列(U)を導入した。(3)
で調製したプラスミドpTZ18RP3 10μgを100単位のSnaB
Iで切断し、0.8%アガロースゲル電気泳動にかけた
後、切断片をゲルから単離精製した。これにXho I部位
とM13シーケンス用ユニバーサルプライマー配列(U)
を有する合成オリゴマーL6とL7をそれぞれ10pmolづつ混
合した後、ライゲーション反応を行った。
反応液で大腸菌NM522(ストラタジーン社より市販)
を形質転換したのち、形質転換体からプラスミドを単離
し、シーケンスによって目的とする塩基配列を有してい
ることを確認したプラスミドをpTZ18RP4と命名した。
(5)pTZ19UD1の作製(第7図) プラスミドpTZ19UのBgl IとBamH I間にM13用リバース
プライマー配列(R)を導入した。pTZ19U(東洋紡社)
2μgを20単位のBgl Iで37℃15分間反応し部分消化し
たものを、1.2%アガロースゲル電気泳動にかけ、Bgl I
で1箇所切断された切断片(2.8kbp)をゲルから単離精
製した。この断片を100単位のBamH Iで消化し再び1.2%
のアガロースゲル電気泳動にかけた後、2.7kbpの断片を
ゲルから単離精製した。得られたpTZ19UのBamH I−Bal
I断片に、M13シーケンス用リバースプライマー配列
(R)を有する合成オリゴマーL8とL9をそれぞれ10pmol
づつ混合した後、ライゲーション反応を行った。
反応液で大腸菌JM109を形質転換した後、形質転換体
からプラスミドを単離し、シーケンスによって目的とす
る塩基配列を有していることを確認したプラスミドをpT
Z19UD1と命名した。
(6)pKAOの作製(第7図) (5)で作製したpTZ19UD1 10μgを100単位のBgl
I、100単位のHind IIIで完全消化した後、1.2%アガロ
ースゲル電気泳動にかけ、f1オリジンを含む1.4kbpの断
片を単離精製した。pL1(ファルマシア社製)10μgを1
00単位のHind IIIと100単位のBamH Iで消化後、1.8%ア
ガロースゲル電気泳動にかけ、SV40のオリジンと初期プ
ロモータを含む420bpの断片を単離精製した。pCDV1(フ
ァルマシア社)10μgを100単位のBamH Iと100単位のBa
l Iで消化した後、0.8%アガロースゲル電気泳動にか
け、ポリA付加シグナルを含む1.6kbpの断片を単離精製
した。
上記3つの断片をライゲーションし、大腸菌HB101の
形質転換を行った。形質転換体からプラスミドを単離
し、BamH I、Bgl I、Hind IIIによる制限酵素地図か
ら、目的とするプラスミドpkA0であることを確認した。
(7)pKAlaの作製(第8図) (4)で作製したプラスミドpTZ18RP4 10μgを100単
位のBamH Iと100単位のXho Iで消化後、1.8%アガロー
スゲル電気泳動にかけ、117bpの断片を単離精製した。
次いで(6)で作製したプラスミドpKA0 10μgを100単
位のBamH Iと100単位のXho Iで消化後、0.8%アガロー
スゲル電気泳動にかけ、3.3kbpの断片を単離精製した。
両者の断片をライゲーション後、大腸菌HB101の形質転
換を行った。形質転換体からプラスミドを単離し、BamH
I、Xho Iによる制限酵素地図から、目的とするプラス
ミドpKAlaであることを確認した。
(8)pKAlbの作製(第8図) pL1 10μgを100単位のPst Iで消化後、T4DNAポリメ
ラーゼにより平滑末端化し、これをHind IIIで消化した
後、1.8%アガロースゲル電気泳動にかけ、SV40プロモ
ーターと16Sスプライス部位を含む500bpの断片を単離精
製した。
pKAla 1μgを100単位のXholで切断後、クレノウ断片
により平滑末端化した。さらに100単位のHind IIIで切
断後、0.8%アガロースゲル電気泳動にかけ、3kbpの断
片を単離精製した。
両者の断片をライゲーション後、大腸菌HB101の形質
転換を行った。形質転換体からプラスミドを単離し、Hi
nd III、BamH Iによる制限酵素地図から、目的とするプ
ラスミドpKAlbであることを確認した。
(9)pKAlの作製(第8図) プラスミドpKAlb 10μgを100単位のHind IIIで消化
後、0.8%アガロースゲル電気泳動にかけ、ゲルから3.6
kbの断片を単離精製した。これに制限酵素部位Sfi Iを
含む合成オリゴマーL10とL11を10pmolずつ混合してアニ
ールさせた後、ライゲーション反応を行なった。
反応液で大腸菌HB101を形質転換し、形質転換体を培
養後プラスミドを単離した。M13シーケンス用リバース
プライマーを用いて合成オリゴマー挿入部位のシーケン
スを行ない、目的とする塩基配列を有するもの、すなわ
ち制限酵素部位がSph I−Sfi I−Hind IIIの順になって
いるものをpKAlと命名した。pKAlの詳細な制限酵素地図
はすでに第3図に示した。
実施例2 cDNAライブラリーの作製 (1)ベクタープライマーの作製(第9図) pKAl 100μgを200単位のKpn Iで完全消化後、0.8%
アガロースゲル電気泳動にかけ、切断片を単離精製し
た。得られた切断片70μgを20μMdTTP存在下、末端ヌ
クレオチド転移酵素(宝酒造社製)375単位を加え37℃3
0分間反応させた。一部について[α−32p]dTTPの取り
込み量からdTテールの付加数を求めたところ、約60個で
あった。次いで反応生成物をEcoR Vで切断し、0.8%ア
ガロースゲル電気泳動にかけ、長い方の切断片を単離精
製した。
(2)ポリ(A)+RNAの調製 ヒト培養細胞株HUT−78、HUT−102、U937、HT−1080
を培養後、細胞を集め、グアニジウムイソチオシアネー
ト法により総mRNAを抽出した。これをオリゴdTカラムに
かけてポリ(A)+RNAを精製した。
(3)cDNAの合成 cDNA合成の全工程はすでに第4図に示した。反応条件
はOkayama−Bergらの方法(前掲文献)に準じた。酵素
は宝酒造社のものを用いた。(2)で調製したポリ
(A)+RNA3μgを(1)で調製したベクタープライマ
ー1.5μgとアニールさせた後、逆転写酵素20単位を加
え、第1鎖DNAを合成した。反応液をフェノール抽出、
エタノール沈殿後、1μM dCTP存在下15単位のデオキシ
ヌクレオチド転移酵素を加えてdcテール付加反応を行っ
た。反応液をフェノール抽出、エタノール沈殿後、50単
位のBst XI(ニューイングランドバイオラボス社)で消
化した。反応液をフェノール抽出エタノール沈殿後、ア
ニールし、大腸菌DNAリガーゼによりライゲーションを
行った。反応液に、dNTP(dATP、dGTP、dCTP、dTTP)、
大腸菌DNAポリメラーゼ、大腸菌RNaseHを加え、RNA鎖を
DNA鎖に置換した。
(4)cDNAライブラリーの作製 (3)で調製したcDNAベクター溶液で大腸菌NM522の
形質転換を行った。形質転換体を2xTY(アンピシリン10
0μg/ml含有)培地に懸濁し37℃一晩培養した。一部を
寒天培地上に蒔いて一晩培養した後、コロニー数を数え
ライブラリーに含まれる独立したクローン数を推定した
ところ、2x105〜106であった。培養液の一部を採り、ヘ
ルパーファージM13KO7(ファルマシア社)を感染させ、
カナマイシンを70μg/mlになるように添加して37℃一晩
培養した。培養液の一部を15%グリセロール保存液とし
て−80℃で保存した。
(5)cDNAベクタープラスミドの単離 (4)で調製したcDNAライブラリー大腸菌培養液を遠
心し、得られた菌体を2xTY培地で十分洗浄した後、大腸
菌NM522培養液並びに47℃に保温した軟寒天培地と混合
し、2xTY寒天培地上にすばやく流し込んだ。これを37℃
で一晩インキュベートしてプラークを形成させた。単一
プラークを単離して2xTY培地に懸濁し37℃一晩培養し
た。培養液を遠心し、菌体と上清に分け、菌体から2本
鎖プラスミドを、培養上清から1本鎖DNAを単離した。
培養液は15%グリセロール溶液として−80℃で凍結保存
し、2本鎖プラスミドと1本鎖DNAはTEに溶解した後−2
0℃で凍結保存、培養上清は4℃で冷蔵保存した。
実施例3 ヒトcDNAバンクの作製 (1)ヒトcDNAインサートの大きさ決定 実施例2、(5)で単離した2本鎖プラスミドをEcoR
I、Not Iで二重消化を行い、0.8アガロースゲル電気泳
動によりcDNA断片の大きさを求めた。
(2)塩基配列の決定 実施例2、(5)で単離した1本鎖cDNAベクタープラ
スミドを、DNAシーケンサー(アプライドバイオシステ
ムズ社製)を用いて塩基配列の決定を行った。シーケン
ス反応は蛍光色素で標識したM13ユニバーサルプライマ
ーとTaqポリメラーゼを用いジデオキシ法により行っ
た。この方法により5′末端から約400bpの塩基配列を
決定できた。5′末端には4個〜10個のdGテールが認め
られた。配列データは“ホモ・プロテインcDNAデータベ
ース”としてファイル化した。
(3)塩基配列の解析 ファイル化された塩基配列は遺伝情報解析ソフトGENI
AS並びにタンパク質ペプチド一次構造解析ソフトPRINAS
(いずれも三井情報開発社)を用いて解析した。まず各
塩基配列を用いて遺伝子データベースGenBankRの検索を
行った。次いで塩基配列をアミノ酸配列に変換し、開始
コドン並びにオープンリーディングフレーム(ORF)の
有無を調べた。もしORFが存在している場合には、変換
されたアミノ酸配列を用いてプロテインデータベースPR
INAS(三井情報開発社)の検索を行った。
以上の方法によりcDNAインサートの大きさ、5′末端
からの塩基配列、ORFがコードするアミノ酸配列の判っ
たcDNAベクターの集団、即ちcDNAバンクが構築できた。
これまでのところ、ORFが存在し、データベース中の既
知タンパク質とホモロジーのあるクローンは約20%であ
り、それらのほとんどは完全長クローンであった。代謝
系酵素、DNA複製やタンパク質合成に関与するタンパク
質、分泌タンパク質、細胞外マトリックスなど広範囲に
わたるタンパク質のcDNAクローンが得られた。表1に既
知タンパク質とホモノロジーを有するクローンの代表例
を示す。
実施例4 RNAプローブによるプラークハイブリダイゼーション (1)RNAプローブの調製 RNAプローブの調製はストラタジーン社のキットを用
いて行った。2本鎖cDNAベクタープラスミドをNot Iで
切断後、50μCi[α−32P]CTPを基質として用い、T7RN
AポリメラーゼによりcDNAのセンス鎖に相当するRNAプロ
ーブを合成した。
(2)プラークハイブリダイゼーション 実施例2、(5)に記載した方法で寒天プレート上に
cDNAプラークライブラリーを形成させた。寒天表面上に
乾いたニトロセルロースフイルターを載せ、プラーク周
辺のファージをフィルター上に移した。同様にして2枚
のレプリカフイルターを調製した。フイルターを風乾後
80℃、3時間加熱処理を行った。フイルターを50%ホル
ムアミド、5xSSC、10xデンハルト溶液、0.1%SDS溶液中
で37℃2時間プレインキューベートした後、(1)で調
製したRNAプローブを添加し、さらに37℃、16時間イン
キューベントした。フイルターを0.2xSSC、0.1%SDS溶
液で65℃、1時間洗浄し、風乾後オートラジオグラフィ
ーにかけた。第10図(A)に、アクチンcDNAを有するプ
ラスミドベクターを用いたモデル実験の例を示す。プラ
ークの存在するところにシグナルが認められる。
(3)サブトラクション法 アクチンcDNAを含むクローンからRNAプローブと1本
鎖DNAを調製し、両者を前もってハイブリダイゼンーシ
ョンした。この混合物をプローブとして、アクチン1本
鎖DNAを含むファージをスポットにしたフィルターとハ
イブリダイズさせたところ、第10図(B)に示す様にシ
グナルはまったく得られなかった。即ち、このことは、
RNAプローブを対応する1本鎖DNAとプリハイブリダイゼ
ーションすることにより、プローブとしての機能を完全
に抑えることが出来ることを意味し、第5図に示したサ
ブトラクション法が可能であることが示された。
実施例5 デリーション法によるcDNAインサートの全塩基配列決定 表1に示したTNF(腫瘍壊死因子)cDNAを含むクロー
ンNo.16から単離したプラスミドpKATNFl 15μgを20単
位のSph Iについで15単位のSnaB Iで切断後、エキソヌ
クレアーゼIIIを加え37℃で反応させ1分間隔でサンプ
リングした後、マングビーンヌクレアーゼ処理、ついで
クレノウ処理後、セルフライゲーションを行ないcDNAイ
ンサートの5′末端を欠失したプラスミドを調製した。
以上の反応は宝酒造社製のキロデレーションキットを用
いて行なった。それぞれの欠失体から実施例2(4)、
(5)に記載した方法で1本鎖DNAを調製し、実施例3
(2)と同様の方法で塩基配列を決定した。ただし、こ
の際シーケンス用プライマーとしてM13用リバースプラ
イマーを用いた。その結果5′末端からそれぞれ150b
p、300bp、600bp、850bp、1050bp、1300bp欠失したプラ
スミドを得ることができ、これらの5′末端シーケンス
によりcDNAの全領域をカバーする塩基配列を決定でき
た。なお、得られた塩基配列はすでに報告されているTN
Fの塩基配列と一た。
実施例6 哺乳動物細胞によるcDNAの発現 実施例5で塩基配列を決定したpKATNFlをCOS7細胞(A
TCCより分譲)に導入し、その培養上清のTNF活性を測定
した。まずプラスミドpKATNFlを単離した後、エクトロ
ポレーション法により5x106個のCOS7細胞に導入した。C
OS7をMEM培地中で3日間培養した後、培養上清を採り、
マウスL929細胞(ATCCより分譲)を用いたTNFアッセイ
にかけた。その結果、培養上清に2.9×103U/mlのTNF活
性が認められ、ベクター上のSV40プロモーターが正常に
作動していることが示された。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明のcDNAベクターの機能を示す図、 第2図は、本発明のクローニングベクターにおけるプロ
モーターの配置を示す図、 第3図は、本発明のベクターpKA1の制限酵素地図、 第4図は、本発明のベクタープラスミドを用いたcDNAの
合成工程を示す図、 第5図は、本発明のcDNAベクター系を用いたサブトラク
ション法を説明するための図、 第6図ないし第8図は、本発明のベクターを構築する工
程を説明するための図、 第9図は、本発明のベクタープライマーを作製する方法
を示す図、 第10図は、本発明の系を用いて、プラークハイブリダイ
ゼーションとサブトラクション法を行った結果を示す。

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】哺乳動物細胞用プロモーターPR1と、その
    下流に位置し、真核細胞遺伝子に出現頻度の少ないユニ
    ークな制限酵素部位RE1及びRNAポリメラーゼのプロモー
    ターPR2と、その下流に位置し、dNオリゴマー(ただ
    し、dNはdA、dC、dG、dTのいずれかを表す)からなる
    3′突出末端を生成するユニークな制限酵素部位RE2
    と、その下流に位置するユニークな任意の制限酵素部位
    RE3と、その下流に位置するユニークな任意の3′突出
    末端生成制限酵素部位RE4と、その下流に位置し、真核
    細胞遺伝子に出現頻度の少ないユニークな制限酵素部位
    RE5及びRNAポリメラーゼプロモーターPR3と、制限酵素
    部位RE1の上流の任意の位置に存在する少なくとも1種
    類の任意の3′突出末端生成制限酵素部位RE6と、さら
    に上記以外の任意の位置に、哺乳動物細胞用複製オリジ
    ンOR1、1本鎖ファージの複製オリジンOR2、大腸菌用複
    製オリジンOR3及び選択マーカーを有するクローニング
    ベクタープラスミド。
  2. 【請求項2】pKA1である請求項1記載のプラスミド。
  3. 【請求項3】請求項1記載のプラスミドを制限酵素部位
    RE4で切断後、末端デオキシヌクレオチド転移酵素によ
    りdTテール付加を行ない、さらに制限酵素部位RE3で切
    断することにより調製したベクタープライマー。
  4. 【請求項4】請求項2記載のプラスミドを、制限酵素Kp
    nlで切断後、末端デオキシヌクレオチド転移酵素により
    dTテールを付加し、さらに制限酵素EcoR Vで切断するこ
    とにより調製した請求項3記載のベクタープライマー。
  5. 【請求項5】請求項3又は4に記載のベクタープライマ
    ーをプライマーとして用いて、細胞から単離したポリ
    (A)+RNAからcDNAを合成し、このcDNA含有プラスミド
    を用いて大腸菌を形質転換し、得られた形質転換体にヘ
    ルパーファージを感染させることによりcDNAプラークラ
    イブラリーを調製し、この中の独立したプラークから1
    本鎖DNAを調製し、この1本鎖DNAを用いてcDNAインサー
    トの5′末端からシーケンスすることにより、塩基配列
    が決定され且つ哺乳動物細胞内で発現可能なcDNAベクタ
    ーからなるcDNAバンクを作製する方法。
  6. 【請求項6】請求項5記載の方法で2種のcDNAライブラ
    リーLAならびにライブラリーLBを作製し、ライブラリー
    LAからRNAポリメラーゼを用いてセンス鎖のRNAプローブ
    集団を調製し、一方ライブラリーLBからアンチセンス鎖
    の1本鎖cDNA集団を調製し、RNAプローブ集団と1本鎖c
    DNA集団の両者を混合してハイブリダイズさせた物をプ
    ローブとして用いてライブラリーLAをスクリーニングす
    ることにより、ライブラリーLAに特異的なcDNAクローン
    を得、これを5′末端からシーケンスし、ライブラリー
    LAに特異的で、塩基配列が決定され且つ哺乳動物細胞内
    で発現可能なcDNAバンクを作製する方法。
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