JP3898009B2 - 多段階差次的クローニング技術と細胞増殖制御遺伝子 - Google Patents

多段階差次的クローニング技術と細胞増殖制御遺伝子 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、特定の生理現象を示す細胞において特異的に発現する遺伝子(発現特化型遺伝子)を高効率でクローニングする方法と、この方法を用いて単離したヒト細胞増殖制御遺伝子(あるいはヒト静止期発現特化型遺伝子)とその発現タンパク質に関するものである。これらの遺伝子や発現タンパク質は、多彩な病気の診断や治療のための方法や薬剤の開発に有用である。
【0002】
【従来の技術】
生体の構造や生理現象に関与する遺伝子を特定する方法として、ゲノム遺伝子から転写されるmRNAから合成されるcDNAを単離する方法が広く用いられている。cDNAの単離法として従来採用されてきた方法は、相同クローニング法、相互作用クローニング法、機能クローニング法の3つに大別できるが、これら従来のクローニング法は基本思想が一本釣りであるため包括的な解析が不可能である。例えば、最初に開発されたdifferential hybridization法や近年PCRを利用して開発されたdifferential display法は、いずれも転写誘導の差が大きいハウス・キーピング遺伝子が繰り返し単離される確率が高いため、実際に単離できる遺伝子の総数は限られており、よほどの幸運に恵まれない限り現象の本質に迫れる重要な遺伝子に遭遇することがなかった。そこで一網打尽にcDNAがクローニングできるのみでなく、機能にまで迫れるタイプの新たな方法論が望まれてきた。
【0003】
ヒトの全ゲノム塩基配列が決定されたポストゲノム時代に入って、約3万種類存在するといわれるmRNA(cDNA)を全て貼り付けたcDNAマイクロアレイを作成すれば発現特化型cDNAを単離することが原理的には可能となった。しかしながら、この実行には非常に高額な費用と手間がかかること、データの読み取りや解析に高価な機器の設置と多大な時間と費用が必要なこと、ハイブリダイゼーションの強弱を基本としたデータは厳しく再現性をテストする必要があるため、最終的にはノーザン解析による確認が必要なこと、などの理由からもっと高効率で安価に実行可能な技術の開発が望まれてきた。
【0004】
一方、抗癌剤は数多くあるが、その多くが通常は静止期(G0期)にある正常細胞よりも、静止期に入ることができず常に増殖を続けている癌細胞が正常細胞よりも増殖が早いという期待のもとに、癌細胞に優先的に取り込ませて殺傷する薬剤である。しかし実際にはそれらは増殖している正常細胞にも取り込まれるため副作用が強い。静止期(G0)にある細胞は、細胞周期を離れた状態にあり、一切の増殖が停止した状態にある。その状態を維持するには何らかの強力な増殖抑制因子が発現し、機能している可能性が以前より指摘されていた。しかし、細胞周期における静止期の研究は遅れており、静止期特異的に発現誘導を受ける遺伝子の報告はごく僅かである。細胞が増殖を停止している状態としては、静止期(G0)の他に老化細胞がある。老化細胞特異的に発現上昇の認められる遺伝子に関しては、現在までに多数の報告があり、その中には癌抑制遺伝子の候補である可能性が示唆されているものも含まれている。従って、癌細胞では静止期(G0)で特異的に発現が誘導される遺伝子群の中で、強力な増殖抑制因子として機能しているものが失われている可能性がある。その様な遺伝子群を単離することができれば、未知の癌抑制遺伝子の発見につながることが十分に期待できる。臨床的な視点からみても、以下のような利点が考えられる。
1) 現在の癌治療の主流である化学・放射線治療等は、癌細胞のみならずその周囲の正常細胞までも損傷させてしまうため、患者に対する副作用等の負担が大きいが、G0期特異的な増殖抑制因子の発現を促すという方法に基づいた治療法であれば、多くの癌細胞の増殖を有効的に抑制する。
2) もともと静止期にある周囲の正常細胞にはほとんど悪影響(副作用)を与えない。
3) 癌抑制遺伝子p53による遺伝子治療が既に行われていることからも、新規癌抑制遺伝子の発見が新たな遺伝子治療や遺伝子診断に繋がっていく。
4) 従来の抗癌剤では癌細胞を全て殺すことはできないため少数の悪性化が進んだ癌のみが残り、生存競争していた普通の癌細胞が殺されたあとで一層活動的な転移癌となって広がってゆくという過程をとることが多い。またエンドスタチンのような血管新生を阻害して兵糧責めにより癌を大きく増やさない薬物も開発されている。しかし、これとて癌を根元的に撲滅するわけではないため、新しい癌増殖抑制剤の開発が望まれていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
前記のとおり、細胞静止期には増殖を阻害する因子が転写誘導されることが期待されるが、実際の静止期における増殖阻害に決定的な役割を果たすヒト遺伝子は特定されておらず、また当然のことながら静止期特異的なヒト遺伝子も特定されていなかった。その理由の一つとして、特定の生理現象にある細胞(例えば細胞静止期)において特異的に発現する遺伝子を高効率でクローニングする方法が存在していないことが挙げられる。
【0006】
この出願の発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであって、特定の生理現象にある細胞において特異的に発現する遺伝子を簡便かつ確実にクローニングする方法を提供することを課題としている。
【0007】
またこの出願の発明は、癌細胞は静止期に入れないという特徴を持つという事実を利用して、腫瘍診断や治療に有用な細胞増殖制御遺伝子と、その発現タンパク質、並びにこのタンパク質に対する抗体を提供することを課題としてもいる。
【0008】
さらにまた、この出願の発明は、前記の遺伝子材料を利用した診断等のための手段を提供することを課題としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この出願は、前記の課題を解決するものとして、以下の(1)〜(14)の発明を提供する。
(1) 異なる生理現象を示す細胞XおよびYにおいてそれぞれに発現する遺伝子のライブラリーから共通に発現する遺伝子を削除する操作を3回以上繰り返し、細胞Xで特異的に発現する20〜500個の遺伝子を特定することを特徴とする多段階差次的クローニング方法。
(2) 細胞Xが細胞周期静止期のヒト細胞であり、細胞Yが細胞周期増殖期のヒト細胞である前記発明(1)の多段階差次的クローニング方法。
(3) 前記発明(2)の方法によってクローニングされた遺伝子であって、細胞周期静止期のヒト細胞で特異的に発現している細胞増殖制御遺伝子。
(4) cDNAが、配列番号1−40の奇数配列番号のいずれかの塩基配列を有する細胞増殖制御遺伝子またはそれらの集合。
(5) 前記発明(4)の細胞増殖制御遺伝子のゲノムDNA、mRNA、cDNAまたはそれらの相補配列から精製されたポリヌクレオチド。
(6) 前記発明(4)の細胞増殖制御遺伝子または前記発明(5)のポリヌクレオチドにハイブリダイズする、10塩基対以上の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド。
(7) 前記発明(5)のポリヌクレオチドを保有する組換えベクター。
(8) 前記発明(7)の組換えベクターによる形質転換体細胞。
(9) 前記発明(3)の細胞増殖制御遺伝子の発現産物であるヒト細胞増殖抑制タンパク質。
(10) 前記発明(4)の細胞増殖制御遺伝子の発現産物であって、配列番号1−40の偶数配列番号のいずれかのアミノ酸配列を有するヒト細胞増殖抑制タンパク質またはそれらの集合。
(11) 前記発明(8)の形質転換体細胞によって産生される前記発明(10)のヒト細胞増殖抑制タンパク質。
(12) 配列表の偶数配列番号のいずれかのアミノ酸配列における連続5アミノ酸残基以上のアミノ配列からなるペプチド。
(13) 前記発明(9)または(10)のヒト細胞増殖抑制タンパク質を認識する抗体。
(14) 前記発明(5)のポリヌクレオチドの少なくとも1、または前記発明(6)のオリゴヌクレオチドの少なくとも1と、担体とからなる組成物。
(15) 前記発明(14)の組成物を備えた検索・診断キット。
【0010】
すなわち、前記発明(1)の方法によれば、特定の生理現象を示す細胞Xにおいて特異的に発現する遺伝子20〜500種を同定することができる。そして、細胞Xとして静止期にある細胞を対象とすることによって、前記発明(3)の細胞増殖制御遺伝子(以下、「TIGA遺伝子」と記載することがある)が単離された。このTIGA遺伝子(群)は増殖抑制を引き起こすことから、これらを癌に導入して大量発現させれば癌を強制的に静止期に導入し、癌細胞の増殖を抑止することが可能となる。また、こららTIGA遺伝子の大量発現と同じ状態を実現できる薬剤を新たに開発すれば、正常細胞は元来個体の中で静止期にあることを考えると副作用の無い抗癌剤として用いることができると期待される。
【0011】
一方、癌細胞は本来は静止期に入れないことを考えると、癌細胞はTIGA遺伝子群のうちのいずれかが欠損していることが考えられる。実際、単離した既知の塩基配列を持つTIGA遺伝子の幾つかは、すでに癌抑制遺伝子として機能していることが知られている遺伝子であった。そこで前記発明(14)の組成物(具体的にはDNAマイクロアレイ、DNAチップ)を用いて患者の癌細胞における発現遺伝子を調べ、どのTIGA遺伝子の発現が欠失しているかどうか診断することで、個別な癌細胞に合わせたテーラーメード(tailormade)な抗癌剤の選択による癌治療を行う道が開ける。
【0012】
この出願の発明は、以上のとおりの新規ヒト遺伝子およびその発現タンパク質を基礎とするものである。なお、前記の発明において、「ポリヌクレオチド」および「オリゴヌクレオチド」は特定塩基数の断片を意味するものでなく、一応の目安として100bp以上の断片をポリヌクレオチド、100bp未満の断片をオリゴヌクレオチドとするが、例外も存在する。同様に、オリゴペプチドについても特定範囲のアミノ酸残基数に限定されるものではない。
【0013】
以下、この出願の発明について、実施形態を詳しく説明する。
【0014】
【発明の実施の形態】
発明(1)の遺伝子クローニング方法の原理は、対象となる2つの生物現象を示す細胞XとYにおいて、サブトラクション(差分化)を段階的に繰り返すことで、細胞Xでのみ発現する(あるいはmRNA存在量が格段に異なる)mRNA(現実にはcDNA)分子を高効率に短期間で全てクローニングすることである。
その手順を簡略に説明すると以下のようになる(図1参照)。まず対象となる2つの生物現象の両方からmRNAを調整する。XとYを並べた小さなノーザンブロットを100枚くらい作製してノーザン解析に用いる。まず差分化される方(X)についてcDNAライブラリーを作製する。つぎに差し引きたい方(Y)のmRNAをビオチン化し、f1ヘルパーファージを用いて単鎖化したXのcDNAライブラリーと加熱徐冷結合(ハイブリダイズ)させ、類似の塩基配列を持つために塩基対を形成したDNA/mRNA混合物をビオチンと結合して複合体を作るアビジンと混ぜ、遠心によって取り除く。上澄みには、相補mRNAが存在しないか、または相補mRNAが極めて少ないために単鎖のままのcDNAが残存する。この残った単鎖cDNAをプライマー存在下でDNAポリメラーゼを働かせることにより2重鎖とし、大腸菌コンピテントセルに導入することで差分化cDNAライブラリー(一次差分化cDNAライブラリー)を作製する。
【0015】
次に、一次差分化cDNAライブラリーから無作為に数100クローンを選んでプラスミドDNAを調製する。これらすべてに番号をつけて、制限酵素切断によって挿入cDNAを切り出す。得られたcDNAsの半量を用いてサザンブロットを作製する(図2)。実験の効率を上げるため1枚のアガロースゲル電気泳動において80サンプルくらいは載せられるような微小な泳動溝を持つアガロースゲルを作製し、順番にサンプルを載せ、泳動も4段に重ねてミクロな解析を行う。これによって数枚のサザンプロットを作製するだけで数百すべてのクローンが解析できる。このうち10から30クローン、好ましくは約20クローンを無作為に選び、残り半分のサンプルから調製用アガロースゲル電気泳動により、そのcDNAの挿入部分を切り出す。これを32Pで標識してプローブとする。このプローブの半分をノーザン解析(2つのサブトラクション系での転写量の違いを検索するため)に、残りをサザン解析(重複クローンを除外するため)に用いる。ノーザン解析によればこの一次差分化cDNAライブラリーのうち何%がXにおいてYよりも転写量が増加している目的のクローンなのかの推測ができる。一方、サザン解析によってはハイブリダイズしなかったクローンを順番どうりさらに約20クローンを無作為に選び、再びcDNAの挿入部分を切り出して、32Pで標識してプローブとする。これを再びノーザン解析およびサザン解析にかける。このステップを数百すべてのクローンの解析が終了するまで繰り返す。ただし、繰り返してゆくうちに重複クローンは解析から除外されるために解析クローンが激減してくるので、数回このステップを繰り返すだけで数百すべてのクローンの解析は終了する。
【0016】
以上のステップによって単離される目的とするクローン(XとYでのmRNA存在量が格段に異なるもの)はノーザン解析によって以下の3種類に分類される(図3)。
TYPE I:Yではほとんど発現されておらず、Xでは劇的にmRNA存在量が増加するもの。
TYPE II:Yでも少し発現がみられ、Xでは数倍程度の発現量上昇が観察されるもの。
TYPE III:ノーザンブロットにおいて二本以上のバンドが見られ、そのうち一つのみがXにおいてTYPE I様のmRNA存在量変化を示すもの。
【0017】
この結果は逐一プロットしてゆく。原理的には図4に示すような曲線を描くと期待される。すなわち、横軸には数百すべてのクローンの番号をプロットし、縦軸にはその番号に至るまでに分かった目的とするクローン(XとYでのmRNA存在量が格段に異なるもの)の数をプロットする。各プロットを結んでゆくと曲線が描けるが、その形から数百以上は解析するクローンの数をふやして同様な解析を続けても重複クローンばかりが出てくるようになって効率が悪くなる。そこで以下のとおりの二次差分化cDNAライブラリーを作製することによって解析の効率を向上させる。
【0018】
すなわち、前記のノーザン解析によって目的とするクローンであると同定したcDNAについては、5'末端および3'末端(ポリA側)から1,000bpずつの塩基配列を決定する。使用するベクター(pAP3neo:宝酒造)は、クローニングサイトの5'末端にはT7RNAポリメラーゼのプロモーター配列が、3'末端にはT3RNAポリメラーゼのプロモーター配列が組み込んである。これらに対するプライマーの存在下でLi-Cor社製のシークェンサーを用いれば1レーンの解読のみで1,000bpずつの塩基配列決定が可能であり効率は良い。そして、既存のデータベース(FASTA、BLAST等)よるホモロジー解析により、これらcDNAが新規遺伝子由来であるか否か、既存タンパク質の持つ機能モチーフを持つか否かなどを検索する。得られたデータを整理して目的とするクローンの全カタログを作成する。
【0019】
数百クローン以上のノーザン解析・サザン解析を続けても重複クローンばかりが出てくるようになった時点で、解析済みの全てのcDNAクローンを集めてT7RNAポリメラーゼを作用させてcDNAをRNA化し、ビオチン標識する。一方、一次差分化cDNAライブラリーもf1ヘルパーファージを用いて単鎖化しておく。これらを混ぜ、上述と同様な手法でハイブリダイズし、ビオチン・アビジンの結合を利用してサブトラクションを行う(図5)。これを二次差分化cDNAライブラリーと称する。ここからまた数百クローンを無作為に選別してプラスミドDNAを調製し、上述のようにしてノーザン解析・サザン解析を継続する。プロットや塩基配列決定も同様に行う。そして、cDNAライブラリー中に含まれるクローンが30種類以下となるまで、3回以上の解析、差分化を繰り返す。
【0020】
以上の方法によって、特定の生理現象を示す細胞において特異的に発現する遺伝子(TYPE I遺伝子)を同定することが可能となる。そして、細胞静止期にあるヒト細胞を対象とすることによって(発明2)、ヒト静止期特異的に転写誘導されるヒトTYPE I TIGA遺伝子群(発明3)をクローニングすることが可能となる。
【0021】
この出願の発明は、これらのTIGA遺伝子として具体的に発明(4)の遺伝子20種類を提供する。
【0022】
すなわち、この出願の発明者らは、血清飢餓状態において培養することで増殖を停止させた状態にあるヒト初代培養繊維芽細胞から細胞抽出したmRNAを用いて作成したcDNAライブラリーから、通常の血清量を加えて増殖状態に置いて培養したヒト初代培養繊維芽細胞から細胞抽出したmRNAを差し引く(subtraction)ことで静止期特異的に転写誘導される遺伝子群(TIGA)から転写されたmRNAが濃縮されたサブトラクティッド(subtracted)cDNAライブラリーを作成した。そして、前記発明(1)の方法によってcDNAライブラリーに含まれる静止期特異的mRNA(cDNA)を実質的に全て単離した。その段階的サブトラクション曲線を図6に示す。さらに、こららの遺伝子群から、TIGA3−TIGA22と名付けた20種類の新規なヒト遺伝子を単離した。これらTIGA遺伝子はノーザンブロット解析の結果、いずれも血清飢餓状態に入ってから急激に転写誘導を受ける。これらTIGA遺伝子がコードする蛋白質のアミノ酸配列数に関するデータは表1にまとめて示す。
【0023】
【表1】
Figure 0003898009
【0024】
前記のとおり、発明(4)の新規TIGA遺伝子は、そのcDNAが配列番号1−40の奇数配列番号の塩基配列を有することを特徴とするゲノム遺伝子である。こららの遺伝子は、それぞれ配列番号1−40の偶数配列番号のアミノ酸配列を有するヒト細胞増殖抑制タンパク質(以下、「Tigaタンパク質」と記載することがある)をコードしている(表1)。
【0025】
この発明(4)の遺伝子TIGAは、後記する発明(5)のポリヌクレオチド作製のために有用であり、さらには各種のヒト悪性腫瘍の診断や、治療薬開発の対象遺伝子等としても有用である。
【0026】
なお、この発明(4)の新規遺伝子TIGAには、それがコードするタンパク質の発現に対する制御領域(プロモーター/エンハンサー、サプレッサー等)も含まれる。これらの発現制御領域は、タンパク質Tigaの機能や、あるいは遺伝子TIGAの発現制御因子の探索に有用である。
【0027】
この発明(4)の遺伝子TIGAは、例えば、配列番号1−40の奇数配列番号の塩基配列またはその一部配列からなるポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドをプローブとしてヒトゲノムDNAライブラリーをスクリーニングすることによって単離するすることができる。
【0028】
発明(5)は、前記発明(4)の遺伝子TIGAのゲノムDNA、mRNA、cDNAまたはこれらの相補配列から精製されたポリヌクレオチドである。このようなポリヌクレオチドは、発明(6)のオリゴヌクレオチドの調製や、タンパク質Tigaの遺伝子工学的生産のための材料として有用である。
【0029】
これらのポリヌクレオチドは、ヒト細胞から単離したゲノムDNAやmRNAから公知の方法により精製することによってDNA断片やRNA断片として得ることができる。また、cDNAはヒト細胞から抽出したポリ(A)+RNAを鋳型として合成することができる。ヒト細胞としては、人体から手術などによって摘出されたものでも培養細胞でも良い。cDNAは、公知の方法(Mol. Cell Biol. 2, 161-170, 1982; Gene 25, 263-269, 1983; Gene, 150, 243-250, 1994)を用いて合成することができる。あるいは、オリゴヌクレオチドをプライマ−として、ヒト細胞から単離したmRNAを鋳型とするRT-PCR法を用いて、目的cDNAを合成することもできる。このようにして調製されるcDNAはそれぞれ、具体的には配列番号1−40の奇数配列番号の塩基配列を有している。なお、一般にヒト遺伝子は個体差による多型が頻繁に認められる。従って前記奇数配列番号の塩基配列において、1または複数個(10以下)のヌクレオチドの付加、欠失および/または他のヌクレオチドによる置換がなされているポリヌクレオチドもこの発明のポリヌクレオチド(cDNA)の範囲に含まれる。また、同様に、これらの変更によって生じる、1または複数個のアミノ酸の付加、欠失および/または他のアミノ酸による置換がなされているタンパク質も、タンパク質Tigaの活性を有する限り、後記発明(10)のタンパク質の範囲に含まれる。
【0030】
発明(6)は、前記発明(4)の遺伝子TIGAまたは前記発明(5)のポリヌクレオチドにハイブリダイズする、10塩基対以上の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドである。これらのオリゴヌクレオチド(DNA断片またはRNA断片、若しくはそれらのアンチセンス鎖)は、例えば、遺伝子TIGAやその変異を検出するためのプローブ、あるいはポリヌクレオチドを合成するためのPCRプライマーとして有用である。また、一般の悪性腫瘍診断用のマイクロアレイ等のためのDNA断片やRNA断片として使用することもできる。このようなオリゴヌクレオチドは、常法により合成して調製することもでき、あるいは場合によっては発明(5)のポリヌクレオチドを適当な制限酵素で切断することによってもできる。
【0031】
発明(7)は、前記発明(5)のポリヌクレオチドを保有する組換えベクターである。ベクターはクローニングベクターまたは発現ベクターであり、インサートとしてのポリヌクレオチドの種類や、その使用目的等に応じて適宜のものを使用する。例えば、cDNAまたはそのORF領域をインサートとしてタンパク質Tigaを生産する場合には、in vitro転写用の発現ベクターや、大腸菌、枯草菌等の原核細胞や、酵母、昆虫細胞、哺乳動物細胞等の真核細胞のそれぞれに適した発現ベクターを使用することができる。また、遺伝子TIGAのゲノムDNAをインサートとする場合には、BAC(Bacterial Artificial Chromosome)ベクターやコスミドベクター等を使用することもでき、こられらの組換えベクターは、例えば蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)による染色体異常を診断するためのプローブとして有用である。さらには、遺伝子TIGA由来のポリヌクレオチドをウイルスベクター等に組換え、これを遺伝子治療に用いることもできる。
【0032】
発明(8)は、前記発明(7)の組換えベクターによる形質転換体細胞である。これらの細胞は、例えば、タンパク質Tigaを製造する場合には、大腸菌、枯草菌等の原核細胞や、酵母、昆虫細胞、哺乳動物細胞等の真核細胞等を使用することができる。また、遺伝子TIGA由来のポリヌクレオチドを組み換えたウイルスベクターによって形質転換した細胞は、遺伝子治療に用いることもできる。これらの形質転換体細胞は、電気穿孔法、リン酸カルシウム法、リポソーム法、DEAEデキストラン法など公知の方法によって組換えベクターを細胞に導入することによって調製することができる。
【0033】
発明(9)は、前記発明(3)のTIGA発現産物である。また、発明(10)は前記発明(4)の新規遺伝子TIGAの発現産物であって、各々、配列表の偶数配列番号のアミノ酸配列を有することを特徴とするタンパク質Tigaである。このタンパク質は、抗体作製のための免疫原として、あるいは悪性黒色腫やその他の悪性腫瘍の治療薬を開発するための標的分子等として有用である。このタンパク質は、ヒト細胞から単離する方法、偶数配列番号のアミノ酸配列に基づき化学合成によってペプチドを調製する方法等によって得ることができるが、好ましくは、発明(8)の形質転換細胞から単離・精製する方法によって大量に生産せることができる(発明(11))。すなわち、形質転換体細胞を培養し、その培養物から、例えば、尿素などの変性剤や界面活性剤による処理、超音波処理、酵素消化、塩析や溶媒沈殿法、透析、遠心分離、限外濾過、ゲル濾過、SDS-PAGE、等電点電気泳動、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー等によって単離、精製することによってタンパク質Tigaを大量に得ることができる。なお、発明(11)のタンパク質には、他の任意の蛋白質との融合蛋白質も含まれる。例えば、グルタチン−S−トランスフェラ−ゼ(GST)や緑色蛍光蛋白質(GFP)との融合蛋白質などが例示できる。
【0034】
さらに、細胞で発現したタンパク質は、翻訳された後、細胞内で各種修飾を受ける場合がある。したがって、修飾されたタンパク質も発明(11)のタンパク質の範囲に含まれる。このような翻訳後修飾としては、N末端メチオニンの脱離、N末端アセチル化、糖鎖付加、細胞内プロテア−ゼによる限定分解、ミリストイル化、イソプレニル化、リン酸化などである。
【0035】
発明(12)は、それぞれ偶数配列番号の連続5アミノ酸残基以上のアミノ酸配列からなるオリゴペプチドである。このオリゴペプチドは、例えば抗体作製のための抗原として使用することができ、例えば、配列番号1−40の偶数配列番号のアミノ酸配列に基づき、公知のペプチド合成法等により作成することができる。
【0036】
発明(13)は、発明(9)または(10)のタンパク質Tigaを認識するポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体である。この抗体は、細胞でのタンパク質またはその変異体タンパク質の発現を調べることによって悪性黒色腫やその他の悪性腫瘍の診断を行うための材料等として有用である。この抗体には、タンパク質Tigaのエピトープに結合することができる全体分子、およびFab、F(ab')2、Fv断片等が全て含まれる。このような抗体は、例えばポリクローナル抗体の場合には、前記のタンパク質Tigaやそのペプチドを抗原として用いて動物を免役した後、血清から得ることが出きる。あるいは、上記の真核細胞用発現ベクターを注射や遺伝子銃によって、動物の筋肉や皮膚に導入した後、血清を採取することによって作製することができる。動物としては、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ニワトリなどが用いられる。免疫した動物の脾臓から採取したB細胞をミエロ−マと融合させてハイブリド−マを作製すれば、モノクロ−ナル抗体を産生することができる。
【0037】
発明(14)は、前記発明(5)のポリヌクレオチドの少なくとも1種、または前記発明(6)のオリゴヌクレオチドの少なくとも1種と、担体とからなる組成物である。このような組成物は、例えばDNAチップやDNAマイクロアレイであり、ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドを担体(基盤)上に直接合成したものであってもよく、あるいはポリヌクレオチドやオリゴヌクレオチドが結合するような素材でコーティングした基盤上にオリゴヌクレオチドをスポットしたものであってもよい。そして、標識化した被験サンプルDNAと基盤上のポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションの有無を指標として、被験サンプル細胞における細胞増殖抑制遺伝子の発現の有無を検出することができる。そして、このような組成物を備えたキット(発明15)は、遺伝子検索や癌診断のための有効な手段となりうる。
【0038】
以下、実施例を示してこの出願の発明についてさらに詳細かつ具体的に説明するが、この出願の発明は以下の例によって限定されるものではない。
【0039】
【実施例】
1:材料および方法
1.1:TIG-1(正常ヒト胎児由来2 倍体繊維芽細胞)の培養
1.1.1:材料
DMEM 培地:DMEM(大日本製薬)10 L用1本分(134.8 g)、炭酸水素ナトリウム37 g(終濃度0.37 %)と結晶ペニシリンGカリウム萬有製薬、100万単位/バイアル)、硫酸ストレプトマイシン[明治製菓、1 g(力価)/バイアル]各1バイアルをMilliQ水10 Lに溶解した。フィルター滅菌(孔径0.22 μm;IWAKI)後、500 または1000 mlずつmediumビンへ分注し、4℃で保管した。
DMEM+10% FCS培地:FCSを終濃度が10%となるように上記培地に添加し、使用した。
DMEM+0.5% FCS培地:FCSを終濃度が0.5%となるように上記培地に添加し、使用した。
1.1.2:培養方法
TIG-1(JCRB0501、20 PDL)はヒューマンサイエンス研究資源バンクより購入したものを用いた。コンフルエント〜セミコンフルエントとなったところで培地を除き、PBS(-)で洗浄後、0.05 %トリプシン/0.02 % EDTA/PBS(-)で細胞を剥がした。これに培地(DMEM/10 % FCS)を加え、細胞を懸濁し、滅菌チューブに移して遠心(室温、1000 rpm、5 min)した。上清を除き、再度PBS(-)に懸濁し遠心(室温、1000 rpm、5 min)した。上清除去後、培地(DMEM/10 % FCS)によく懸濁して、直径60または100 mm dishにまいた。Split ratioは1:4または1:8で、パッセージは5〜7日に一度行った。70〜80 %コンフルエントとなったところで対数増殖期(以後、Logとする)由来のtotal RNAの調整を、以降におけるRNA調整のステップ通りに行った。血清飢餓の実験には、PDL約40までの細胞を用いた。
1.2:TIG-1の血清飢餓培養
50〜60 %コンフルエントとなったところで培地(DMEM/10 % FCS)を除き、PBS(-)で2回洗浄後、これに培地(DMEM/0.5 % FCS)を加え、細胞を培養した。静止期(以後、G0とする)由来のtotal RNAの調製は、培地交換後、約96時間経過したものについて以降におけるRNA調整のステップの通りに行った。
1.3:Total RNAの調整(CsTFA法)
1.3.1:材料
5.5 M GTC溶液:以下の組成、
Guanidinethiocyanate 64.9 g
Sodium citrate ・2H2O 0.74 g
Sodium lauryl sarcosinate 0.5 g
からなるGTC溶液を滅菌MilliQ水で100 mlとし、室温保存した。使用直前に2- mercaptoethanol(以後、2-MEとする)を1/71(終濃度0.2 M)加えて使用した。CsTFA(D=1.51)溶液:以下の組成、
CsTFA (D=2.01;Pharmacia) 100 ml
0.5M EDTA(pH 7.0) 39.5 ml(終濃度 100 mM)
滅菌MilliQ 水 58.15 ml
からなるCsTFA(D=1.51)溶液を4 ℃で保存し、使用した。
4 M GTC溶液:以下の組成、
5.5 M GTC 溶液 4 ml
滅菌MilliQ 水 1.5 ml
2- ME 56μl
からなるGTC溶液を室温保存し、使用した。
TE:10 mM Tris・HCl(pH 8.0)/1 mM EDTA(pH 8.0)をフィルター(孔径 0.22 μm; MILLIPORE)滅菌後、更にオートクレーブ滅菌し、- 20 ℃で保存した。1.3.2:Total RNAの調整方法
Total RNAはLog、G0状態のTIG-1細胞について、それぞれ培養皿(直径100 mm)100および200枚分の細胞を用いて調整した。各状態の細胞について、培地を除去し、PBS(-)で2回洗浄して死細胞や残査血清を除いた後、培養皿に直接0.8〜1 mlの5.5 M GTCを加えることで細胞を溶かし、ラバーポリスマンでビーカーにそれぞれ回収した。30 ml注射筒に18 G注射針を付け、溶液を2個の乾熱滅菌済ビーカーの一方から他方へ移す要領で、溶液の粘性が減るまで数回注射針を通過させてDNAを細断した。遠心により細胞破片を除き、上清22〜23 mlをオートクレーブ済みのポリアロマーチューブ(BECKMAN;40 ml容)に入れたCsTFA溶液15 ml上にそっと重層した。超遠心(17 ℃、25000 rpm、24時間)後、上清を静かに除き、沈澱を600 μlの4 M GTC溶液にピペッティングにより溶解した。これをエッペンドルフチューブに移し、遠心(4 ℃、15000 rpm、30 sec)して不溶物を沈澱させた。上清600 μlあたり15 μlの1 M酢酸、450 μlのエタノールを加えvortexし、-20 ℃で3時間以上氷冷した。遠心(4 ℃、15000 rpm、10 min)して上清を除き、沈澱を330 μlのTEに溶かした。遠心(4 ℃、15000 rpm、30 sec)して不溶物を沈澱させ、上清330 μlあたり33 μlの2 M NaCl、990 μlの100 %エタノールを加え、vortexした。-20 ℃で3時間以上氷冷した後、遠心(4 ℃、15000 rpm、10 min)し、沈澱を直前に調整した70 %エタノールで洗浄した。上清を完全に除き、得られたRNA沈澱をTEに溶解した。これは-80 ℃に保存した。
1.4:Total RNAの調整(AGPC法)
1.4.1:材料
Solution D:以下の組成、
Guanidinethiocyanate 50 g
0.75 M Sodium citrate (pH 7.0) 1.52 ml
10 % Sodium lauryl sarcosinate 5.28 ml
からなる溶液を滅菌MilliQ水で100 mlとし、室温保存した。使用直前に2-MEを1/142(終濃度0.1 M)加えて使用した。
水飽和フェノール:65 ℃で溶解させたフェノール100 gに、100 mlの滅菌MilliQ水と0.1 gの8-ヒドロキシキノリンを加え、スターラーで5分撹拌した。静置後、水層を除去した。この操作を2〜3回繰り返すことで、水飽和状態とした。これは4 ℃で遮光保存した。
1.4.2:Total RNAの調整方法
以降に述べるノーザン解析でRNAをブロットしたメンブレンを作製する際のtotal RNAをAGPC法により調整した。Log、G0状態のTIG-1細胞について、1×106細胞あたり1.6 mlのSolution Dを加え、ピペッティング、vortexにより細胞を溶かした。ソニケーションによりDNAを細断後、遠心(4 ℃、15000 rpm、30 sec)して不溶物を沈澱させた。上清を500 μlずつ3本のエッペンドルフチューブに移した。500 μlあたり50 μlの2 M NaOAc(pH 4.0)、500 μlの水飽和フェノール、300 μlのクロロホルムを加え、10 秒間vortexした。氷上に15分放置した後、遠心(4℃、15000 rpm、10 min)した。水層のみ採取し、等量のイソプロパノール約500μlを添加、vortex後、室温で10分静置した。遠心(4 ℃、15000 rpm、15 min)によりRNAが沈澱するので上清を静かに捨て、Solution Dを100 μl加え、沈澱を完全に溶解させた。これに100 μlのイソプロパノールを加え、vortex後、-20 ℃で30分静置した。遠心(4 ℃、15000 rpm、10 min)後、上清を捨て、150 μlの70 %エタノールで洗浄した。遠心(4 ℃、15000 rpm、3 min)等によりエタノールを完全に除去後、30 μlのTEを加え、沈澱を溶解させた。沈澱が溶けにくい場合は、更に適当量のTEを加え、沈澱を完全に溶解させた。
1.5:Poly(A)+RNAの調整
1.5.1:オリゴ(dT)セルロースカラムの調整
0.2 gのオリゴ(dT)セルロース(Type3;Collaborative Research)に20 mlの滅菌MilliQ水を加え、室温で10分静置した。上清をデカンテーションにより除き、新たに10 mlの滅菌MilliQ水を加えた。この懸濁液をオートクレーブ済みのエコノカラム(直径0.6 cm;Bio-Rad)に注ぎ込み、セルロースカラムの高さが約1cmになるようにした。滅菌水が流れ落ちた後、約8 mlのTE/NaCl(TEと1 M NaClを1:1の割合で混合し、-20 ℃で保存したもの)を加え、平衡化した。
1.5.2:Poly(A)+RNAの調整
超遠心(CsTFA)法により得られたLog、G0由来のtotal RNAに等容のTE、および2倍量の1 M NaClを加え、総容量を約1 mlとした。1.5.1で平衡化したカラムに全RNA溶液を加え、溶出してきた液を再度カラムに注いだ。溶出液をもう一度カラムに通した後、8 mlのTE/NaClで洗浄した。0.5 mlずつ6回に分けてTEをカラムに加え、poly(A)+RNAを溶出した。溶出液はすぐに氷上に置いた。各分画について2 μlずつ、パラフィルム上で20 μlのEtBr溶液(1 μg/ml)と混合し、UVライト下で写真撮影した。RNAを含む分画250 μlあたり50 μlの2 M NaCl、750 μlのエタノール、1 μlのGlycogenを加え、vortexした。-80 ℃のエタノール中で20分以上氷冷した後、遠心(4 ℃、15000 rpm、15 min)し、上清を静かに除いた。直前に調整した70 %エタノールで洗浄し、遠心(4 ℃、15000 rpm、5 min)した後、上清をできるだけ除いた。30 μlの5 mM Tris・HCl(pH 7.5)に溶解し、一部をすぐにcDNAライブラリー作製に用いた。残りは-80 ℃で保存した。最終的にLogおよびG0について、それぞれ約49および55μgのpoly(A)+RNAを得た。
1.6:cDNAライブラリーの作製
1.6.1:材料
リンカープライマー:5'-(GA)10 ACGCGTCGACTCGAGCGGCCGCGGACCG (T)18-3'
アダプター:Bam HI (Bgl II)- Sma I d(GATCCCCGGG)
ベクターDNA:pAP3neoをNot Iで切断後、BAP 処理し、その後Bgl IIで切断したもの。
Not I補充液:278 mM NaCl/8 mM MgCl2/1.8 mM DTT/0.018 % BSA/0.018 % Triton X-100
10×STE:1 M NaCl/0.1 M Tris・HCl(pH 8.0)/10 mM EDTA(pH 8.0)
1.6.2:First strandの合成
LogおよびG0由来のPoly(A)+RNA 7.5 μl(4.5 μg)をエッペンドルフチューブにとり、65 ℃で5分加熱した後、氷上で急冷し、変性させた。ここに2.5 μlの10×First Strand Buffer(ZAP cDNA Synthesis Kit「Stratagene」内のもの)、2.5 μlの0.1 M DTT、1.5 μlのFirst Strand Methyl Nucleotide Mixture(10 mM dATP、dGTP、dTTP/5 mM 5-methyl-dCTP;ZAP cDNA Synthesis Kit「Stratagene」内のもの)、1 μlのリンカープライマー(1.6 μg/μl)、0.5 μlのRNase Inhibitor(40 U/μl;東洋紡績)、8.5 μlの滅菌MilliQ水を順に加えていった。室温に10分放置し、プライマーをアニーリングさせた。2 μlの逆転写酵素(約20 U/μl;生化学工業)を加え、ピペッティングにより混合し37 ℃で40分、反応させた。Superscript II RT(200 U/μl;GIBCO BRL)を2 μl加え、48℃で40分、さらに反応させた。遠心(4 ℃、15000 rpm、5 sec)後、氷上に置いた。
1.6.3:Second strandの合成
氷上に置いた反応液に、20 μlの10×Second Strand Buffer(ZAP cDNA Synthesis Kit 「Stratagene」内のもの)、7.5 μlの0.1 M DTT、3 μlのSecond Strand Nucleotide Mixture(10 mM dATP、dGTP、dTTP/25 mM dCTP;ZAP cDNA Synthesis Kit「Stratagene」内のもの)、132.5 μlの滅菌MilliQ水(予め氷冷しておいたもの)を順に加えていった。氷上に5分置いた後、1.5 μlのRNaseH(1.5 U/μl;東洋紡績)、6 μlのE.coli DNA polymerase I(9 U/μl;東洋紡績)を加え(総容量約200 μl)、16℃で150分反応させた。200 μlのフェノール/クロロホルムを加え、vortex後、遠心(室温、15000 rpm、7 min)して上清を新しいエッペンドルフチューブに移した。50 μlの滅菌MilliQ水で再抽出した後、クロロホルム処理を行った。50 μlの滅菌MilliQ水で再抽出した後、上清をミリポアフィルター(UFCP3TK50;MILLIPORE)の上室にのせ、溶液が全て下室に流れ落ちるまで遠心(4℃、10000 rpm、20 min)した。下室のTEを除き、新たに上室に100 μlのTEを加え、遠心(4℃、10000 rpm、15 min)してフィルターを洗浄した。この操作をもう一度行った後、30 μlの1/10 TEをフィルターの上室に加え、ピペッティングとvortexによりフィルターに付着したcDNAを溶かし出した。フィルターを逆さにして遠心(4℃、5000 rpm、10 sec)することでcDNA溶液を回収した。
1.6.4:2本鎖cDNAの末端平滑化
上述のcDNA溶液30 μl(in 1/10 TE)に、10 μlの10×Second Strand Buffer(ZAP cDNA Synthesis Kit 「Stratagene」内のもの)、5 μlのblunting dNTP Mixture(KIT 内のもの)、51.5 μlの滅菌MilliQ水を順に加えた。ここに3.5 μlのPfu DNA polymerase (2.5 U/μl)を加え(総容量100 μl)、軽くvortexした後、37℃で30分、反応させた。フェノール/クロロホルム処理を行い、100 μlの滅菌MilliQ水で再抽出を行った。この後、クロロホルム処理を行い、100 μlの滅菌MilliQ水で再抽出を行った。上清をミリポアフィルターにのせ、1.6.3の場合と同様にしてフリーのdNTPを除いた。最終的に20 μlのTEに2本鎖cDNAを回収した。
1.6.5:アダプターのライゲーション、Not Iによる切断
前記の1.6.4で末端を平滑化した2本鎖cDNA 20 μlのうち、4 μlをとり、2 μlの10×ligation buffer、2 μlの10 mM rATP、1 μlのBam HI (Bgl II)-Sma I d(GATCCCCGGG)アダプター(0.35 μg/μl)、10 μlの滅菌MilliQ水を加えた。氷上に5分置いた後、1.5 μlのT4 DNA ligase(4 U/μl;東洋紡績)を加え、ピペッティングにより混合した。8℃で24時間反応させた。70℃で30分加熱した後、遠心(4℃、10000 rpm、10 sec)して氷上に置いた。ここに27 μlのNot I補充液、3μlのNot I(10 U/μl;NEB)を加え、ピペッティングにより混合した。37℃で90分保温し、Not Iで切断した。反応液に5 μlの10×STE、5 μlのtRNA(2 μg/μl)を加え(総容量 60 μl)、10 μlずつスピンカラム(CHROMA SPIN-400;Clontech)に加えた(この時、カラムの内壁をつたわらせないように注意した)。遠心(BECKMAN J6-HC;4℃、2100 rpm[700 g]、5 min)後、等量のフェノール/クロロホルムを加え、vortexした。これを遠心(室温、15000 rpm、2 min)後、上清を新しい0.6 mlチューブに回収した。これに等量のクロロホルムを加え、vortexした後、遠心(室温、15000 rpm、2 min)により上清を回収した。これに4 μlの5 M NaCl、100 μlのエタノールを加え、vortex後、-80℃に2〜3時間静置した。
1.6.6:ベクターへのライゲーション
遠心(4℃、15000 rpm、15 min)後、上清を注意深く除き、直前に調整した100 μlの70 %エタノールを加えて再度遠心(4℃、15000 rpm、7 min)した。上清を注意深く除き、cDNAの沈殿に3 μlの10×ligation buffer、3 μlの10 mM ATP、22μlの滅菌MilliQ水、1 μlのベクター(pAP3neo/Not I/Bgl II、1 μg/μl)を直接加えた。氷上に5分置いた後、1 μlのT4 DNA ligase(4 U/μl;東洋紡績)を加え、ピペッティングにより混合した。12℃で40時間、反応させた。70℃で30分加熱した後、遠心(4℃、10000 rpm、10 sec)し、70 μlのTEを加えた。フェノール/クロロホルム処理を行い、50 μlのTEで再抽出を行った。上清をミリポアフィルター(UFCP3TK50)の上室にのせ、溶液が全て下室に流れ落ちるまで遠心(4℃、10000 rpm、20 min)した。下室のTEを除き、新たに上室に100 μlのTEを加え、遠心(4℃、10000 rpm、15 min)してフィルターを洗浄した。この操作をもう一度行った後、30 μlのTEをフィルターの上室に加え、ピペッティングとvortexによりフィルターに付着したDNAを溶かし出した。フィルターを逆さにして遠心(4℃、5000 rpm、10 sec)することでDNA溶液を回収した。これは、-20℃で保存しておいた。
1.6.7:大腸菌への導入
前記1.6.6で調整したライゲーション液のうち約15(5×3)μlを、エレクトロポレーション用濃縮大腸菌DH12S(GIBCO BRL)150(50×3)μlに導入した。エレクトロポレーションはLog、G0のそれぞれについて、各5 μlずつ3回に分けて行った。2 mlのSOC培地(2 ml×3本、計6 ml)中、37℃で1時間、激しく振とう培養した。これを全て、アンピシリンを含む500 mlのLB培地(3 Lの三角フラスコ内)に移し、よく混合し、10 μl、100 μlをとってそれぞれアンピシリンを含むLBプレートにまいた。37℃で終夜培養し、titerを測定した。残りの培養液は37℃で激しく振とう培養した。約6時間後、200 mlの培養液を新しい3 Lの三角フラスコに移し、5 mlのヘルパーファージ(R408)を加え37℃で終夜培養した。残りの300 mlの培養液については、そのまま終夜培養を行った。ヘルパーファージを加えた200 mlの培養液については、1本鎖DNA(ssDNA)の調整を引き続き行った(後述)。300 mlの終夜培養液については、約275 mlからプラスミド抽出キット(QIAGEN Maxi)を用い、総プラスミドを調整した。残りの約25 mlについては、DMSOを7 %となるように添加し、液体窒素中で保存した。
1.6.8:Titerの測定、インサート分布の検査
Titer check用プレート上のコロニーをカウントし、各ライブラリーのtiterを算出した。また、Log、G0の各プレート上の任意の約20クローンについて、制限酵素処理(Eco RI/Kpn I)により、インサートサイズの分布を調べた。
1.7:一本鎖 DNA(ssDNA)の調整
1.7.1:材料
2×YT培地:以下の組成、
Bacto tryptone 16 g
Bacto yeast extract 10 g
NaCl 5 g
からなる培地をH2Oで1 Lとし、オートクレーブ滅菌した。
10×DNase buffer:0.1 M Tris・HCl(pH 7.5)/0.1 M MgCl2
1.7.2:方法
200 mlの培養液を新しい3 Lの三角フラスコに移し、5 mlのヘルパーファージ(R408)を加え37℃で終夜培養後、培養液を滅菌ガラスチューブに移し、遠心(4℃、10000 rpm、5 min)して大腸菌を沈殿させた。上清を注意深く新しい滅菌ガラスチューブに移し、再度遠心(4℃、10000 rpm、10 min)した。上清を滅菌フィルター(孔径0.22 μm;MILLIPORE)に通し、大腸菌を完全に除いた。25 mlの上清あたり2.5 mlの10×DNase buffer、1 μlの DNase I(20 U/μlに希釈したもの;ニッポンジーン)を加え、37℃で30分反応させた。1/4容量の20 % PEG(MW=6000)/2.5 M NaClを加えてvortexし、滅菌ガラスチューブに移した。室温に20分置いた後、遠心(4℃、10000 rpm、10 min)し上清を除いた。再度遠心(4℃、10000 rpm、5 min)し、イエローチップを用いて上清を除いた。さらにもう一度遠心(4℃、10000 rpm、1 min)し、先の細いチップを用いて上清を完全に除いた。得られたファージの沈殿を、総容量で400 μlのTEに溶解し、25 μlのproteinase K(2 μg/μl in 20 % glycerol)、4 μlの10 % SDSを加えて42℃で1時間、反応させた。フェノール処理、フェノール/クロロホルム処理(5〜6回)、クロロホルム処理の後、エタノール沈殿を行った。70 %エタノールで洗浄後、得られたssDNAを20〜30 μlのTEに溶解した。-20 ℃で保存した。
1.8:サブトラクションライブラリーの作製
1.8.1:材料
PHOTOPROBE Biotin:0.5 mgのPHOTOPROBE Biotin(Vector Laboratories)に、0.5 mlの滅菌MilliQ水(-20℃保存しておいたもの)を暗所で加え、溶解させた。-20℃で遮光保存した。
2×HB:以下の組成、
脱イオンホルムアミド 400 μl
1 M HEPES(pH 7.5) 50 μl
0.5 M EDTA(pH 8.0) 2 μl
10 % SDS 10 μl
滅菌MilliQ 水 38 μl
からなる2×HB溶液を使用直前に調整した。
SB:以下の組成、
1 M HEPES(pH 7.5) 50 μl
0.5 M EDTA(pH 8.0) 4 μl
2 M NaCl 250 μl
滅菌MilliQ 水 696 μl
からなるSB溶液を使用直前に調整した。
5'-APプライマー:5'-GGAAGTGTTACTTCTGCTCT-3'
1.8.2:Poly(A)+RNA のビオチン化
Log由来のpoly(A)+RNA 10 μgをエッペンドルフチューブにとり、滅菌MilliQ水を加えて容量を20 μlとした。ここに10 μlのPHOTOPROBE Biotin(1 μg/μl)を暗所で加え、ピペッティングにより混合した。エッペンドルフチューブの蓋を開けて氷上に置き、約10 cmの高さから水銀ランプ(アイセルフバラスト、BHRF160WH;岩崎電気)で20分照射してビオチン化を行った。70 μlの0.1 M Tris・HCl(pH 9.5)/1 mM EDTAを加え、100 μlの水飽和ブタノールを加えてvortexした。遠心(4℃、15000 rpm、5 min)後、上層(ブタノール層)を除いた。この操作をあと2回繰り返した。水層に100 μlのクロロホルムを加えてvortexし、遠心(4℃、15000 rpm、5 min)後、水層を新しいエッペンドルフチューブに移した。クロロホルム抽出をもう一度行った後、水層に1/10倍量の3 M NaOAc(pH 5.2)、3倍量の100 %エタノール、1 μlのglycogenを加えてvortexし、-80℃で30分以上置いた。遠心(4℃、15000 rpm、15 min)して上清を除き、RNAの沈殿が薄くオレンジ色をしていることを確認した。直前に調整した70 %エタノールで洗浄した後、沈殿を20μlの滅菌MilliQ水に溶かした。ここに再度10 μlのPHOTOPROBE Biotin(1 μg/μl)を暗所で加え、上記の操作を繰り返した。cDNAとのハイブリダイゼーションまで、エタノール沈殿の状態で-80℃に置いた。
1.8.3:cDNAとPAB-RNA(ビオチン化RNA)のハイブリダイゼーション
前記1.8.2で調整したPAB-RNA 5 μg分を遠心(4℃、15000 rpm、15 min)により回収し、70 %エタノールで洗浄後、上清を除き8 μlの滅菌MilliQ水に溶かした。ここに、12.5 μlの2×HB、2.5 μlの2 M NaCl、1 μlのpoly(A)(1 μg/μl;Pharmacia)、および1 μlのssDNA(0.5μg/μl;G0由来のcDNAライブラリー)を加え、総容量を25 μlとした。65℃で10分加熱した後、速やかに42℃のヒートブロックに移した。2〜3晩(42時間以上)、ハイブリダイゼーションを行った。
1.8.4:ssDNAの回収、再ハイブリダイゼーション
サンプルをエッペンドルフチューブに移し、400 μlのSBを加えてピペッティングで混合した。5 μlのStreptavidin(2 μg/μl;GIBCO BRL)を加え、ピペッティングで混合後、室温に5分置いた。フェノール/クロロホルム処理を行い、上清を新しいエッペンドルフチューブに移した。残りのフェノール/クロロホルム溶液に100 μlのTEを加えて再抽出した。更に、上清に5 μlのStreptavidin(2 μg/μl)を加え、ピペッティングで混合後、室温に5分置き、フェノール/クロロホルム処理を2回行い、クロロホルム処理を1回行った。水層をミリポアフィルター(UFCP3TK50;MILLIPORE)の上室にのせ、溶液が全て下室に流れ落ちるまで遠心(4℃、10000 rpm)した。下室のTEを除き、新たに上室に300 μlのTEを加え、溶液が全て下室に流れ落ちるまで遠心(4℃、10000 rpm)してフィルターを洗浄した。この操作をもう一度行った後、30 μlの1/10 TEをフィルターの上室に加え、しつこくピペッティングとvortexを行いフィルターに付着したssDNAを溶かし出した。フィルターを逆さにして遠心(4℃、5000 rpm、10 sec)することでssDNA溶液を回収した。これを真空乾燥し、滅菌MilliQ水で調整して9 μlとした。前記1.8.2で調整したPAB-RNA 3 μg分を遠心して回収し、70 %エタノールで洗浄後、上清を除き、上記のssDNA溶液9 μlを加えた。ここに12.5 μlの2×HB、2.5 μlの2 M NaCl、1 μlのpoly(A)(1 μg/μl)を加え、前記1.8.3の場合と同様にしてハイブリダイゼーションを行った。
1.8.5:ssDNAの回収、2本鎖DNAの合成、大腸菌への導入
上記の様にしてPAB-RNAと2回ハイブリダイゼーションを行ったcDNAについて、1.8.4の方法に従いssDNAを回収した。30 μl(in 1/10 TE)のssDNA溶液のうち15 μlを以降の2本鎖DNA合成に使用し、残りは-20℃に保存した。SsDNA 15 μlに、14 μlの滅菌MilliQ水、1 μlの5'-APプライマー(0.2 μg/μl、リン酸化済みのもの)を加え、65℃で10分加熱した。室温に5分置いてプライマーをssDNAにアニーリングさせた後、5 μlの10×buffer(Bca BEST Dideoxy Sequencing Kit[宝酒造]内のもの)、10 μlの1 mM dNTP mixture、0.5 μlのSSB(3 μg/μl)、2 μlのBca BEST DNA polymerase (2U/μl;宝酒造)、3 μlの滅菌MilliQ水を加えた。65℃で1時間反応することにより2本鎖DNAを合成した。反応液に50 μlの滅菌MilliQ水を加え、フェノール/クロロホルム処理を行った。残りのフェノール/クロロホルム溶液に100 μlのTEを加えて再抽出した。抽出した上清のクロロホルム処理を行った。残りのクロロホルム溶液に100 μlのTEを加えて再抽出した後、上清をミリポアフィルター(UFCP3TK50;MILLIPORE)にのせ、溶液が全て下室に流れ落ちるまで遠心(4℃、10000 rpm)した。下室のTEを除き、上室に300 μlのTEを加えて溶液が全て下室に流れ落ちるまで遠心(4℃、10000 rpm)してフィルターを洗浄した。この操作をもう一度行った後、25 μlのTEをフィルターの上室に加え、しつこくピペッティングとvortexを行いフィルターに付着した2本鎖 DNAを溶かし出した。フィルターを逆さにして遠心(4℃、5000 rpm、10 sec)することで2本鎖DNAを回収した。この25 μl(6.25 μl×4)をエレクトロポレーション用濃縮大腸菌(50 μl×4)に導入した。これに各々1.5 mlのSOC培地を加え、37℃で1時間激しく振とうし後、4本を1本にまとめた。このうちの300 μlにLB 2 mlを加え、230 μlずつ10枚のLB/Ampプレートにまいた。また、この培養液のうち1、10、100 μl をアンピシリンを含むLBプレートにまいた。37℃で終夜培養し、titerを測定した。残りはアンピシリンを含むLB培地500 mlに加え、37℃で6時間、振とう培養した。この500 mlのうち30 mlからプラスミドを抽出した(G0-Log dsDNA subtracted library)。残りの470 mlについては、3 mlのヘルパーファージ(R408)を加え、約6時間、37℃で振とう培養した後、前述の方法と同様にしてssDNAを回収した(G0-Log ssDNA subtracted library)。
1.9: サブトラクション(差分化)cDNAライブラリーのインサートチェックとサザンフィルターの作成及びインサートの回収とサザンハイブリダイゼーション
1.9.1:材料
10×TAE:以下の組成、
Tris 48.4 g
氷酢酸 11.4 ml
0.5 M EDTA (pH 8.0) 20 ml
をMilliQ水で1 Lにfill upし、室温に保存した。
0.8 % アガロースゲル(12×14 cm):1 gのアガロースにつき125 ml の1×TAEを加えて加熱溶解させた。12×14 cm大のゲルメーカーに注ぎ込み1枚のゲルに4段の、well数が20個のコーム(+マーカーレ−ン3個)を使用して作成した(1枚につき80個のサンプルをapplyできる)。
加水分解液:35 % HCl 11.1 mlを滅菌MilliQ水で500 mlにfill upしたもの。室温に保存した。
変性溶液:以下の組成、
NaOH 20 g
NaCl 87.7 g
を滅菌MilliQ水を加えて1 Lにfill upし、室温に保存した。
20×SSC:以下の組成、
NaCl 175.4 g
クエン酸ナトリウム 2水和物 88.2 g
を滅菌MilliQ水で1 Lとし、オートクレーブ滅菌し、室温に保存した。
50×Denhardt's:以下の組成、
Ficoll (Type 400;Pharmacia) 5 g
Polyvinylpyrrolidone (MW=360,000;SIGMA) 5 g
Bovine serum albumin (Fraction V;SIGMA) 5 g
を滅菌MilliQ水で500 mlとし、フィルター(孔径0.22 μm;MILLIPORE)滅菌し、-20℃で保存した。
プレハイ・ハイブリダイゼーション液:5×Denhardt's/5×SSC/0.1 % SDSを使用直前に調整し、ここに変性させたサケ精子 DNA(5 mg/ml)を1/50加えた(最終濃度0.1 mg/ml)。
1.9.2:インサートチェックとサザンフィルターの作成
重差分化cDNAライブラリーよりコロニーを80個あるいは160個を1セットとしてピックアップし、2 mlのLB/ampの入ったプラスミド抽出機器(PI-100L AUTOMATIC PLASMID ISOLATION SYSTEM ; KURABO)専用チューブに植菌して37℃で終夜振とう培養した。プラスミド抽出機器により抽出された各プラスミドに100 μlのTEを加え室温で30分撹拌した。それぞれのプラスミド 5 μlを制限酵素処理(SmaI/NotI)し、0.8 %のアガロースゲル2枚でインサートのチェックを行
った。インサートのあったプラスミドのみを0.6 mlのチューブに回収した。インサートチェックで使用したゲルは続いてサザントランスファーを行った。ゲルを適当な容器に入れ、加水分解液を加え、室温で振とうし、色素の色が変わるのを確認した後、さらに10分振とうした。加水分解液を捨てた後、変性溶液を加え、室温で色素の色が元に戻るのを確認できたら、さらに5分振とうした後、溶液を捨て、もう一度変性溶液を加えて、10〜15分振とうした。20×SSCを用いたキャピラリートランスファーによりゲル中のDNAをナイロンメンブレン(Biodyne B、孔径0.45 μm;PALL)にブロットした(一晩)。メンブレンを80℃で2時間bakeすることにより、DNAをメンブレンに固定した。ハイブリダイゼーションまでハイブリダイゼーション用バッグに密閉して室温で保存した。このフィルターはノーザンハイブリダイゼーションと同時に行い、重複クローンの検出のために使用した。また、この操作は後々、次の重差分化への移行または重差分完了の目安となる。
1.9.3:インサートの切り出しと抽出
以下のような手順でQIAquick Gel Extraction Kitを用いてインサートの回収を行った。1.9.2で収したプラスミドから20 μlを制限酵素処理(SmaI/NotI)し、0.8 %アガロースゲル(SeaKem GTG agarose ; BioProducts)で電気泳動後、目的のバンドを切り出し、重量を測定した後-80℃に20〜30分置いた。重量の3倍量のSolBuffer QG(QIAquick Gel Extraction Kit内のもの)を加え、65℃、10分してゲルを完全に溶解させた(オレンジ色あるいは紫色に変色した場合は10 μlの3 M酢酸ナトリウム(pH 5.0)を加え黄色になるのを確認する)。2 mlのコレクションチューブに入ったQIAquick spin column(QIAquick Gel Extraction Kit内のもの; QIAGEN)に溶液を注ぎ室温に10分置いた。5000 rpm、1 min、4℃で遠心後、コレクションチューブの溶液を除いた。QIAquick spin columnにWash Buffer PE(QIAquick Gel Extraction Kit内のもの; QIAGEN)を650 μl加えて室温に10分置いた。13000 rpm、1 min、4℃で遠心後、コレクションチューブの溶液を除いた。再度13000 rpm、1 min、4℃で遠心して、QIAquick spin column中の溶液を完全に除いた。ランプ下で10分程乾燥させた後、30 μlの10 mM Tris・HCl(pH 8.5)を加え、室温に10分置いた。QIAquick spin columnを新しい1.5 mlのエッペンドルフチューブに移し、13000 rpm、1 min、4℃で遠心してインサートを回収した。これら回収したインサートはサザンおよびノーザンハイブリダイゼーション用のプローブとして使用した(後述)。
1.9.4:サザンプレハイブリ・ハイブリダイゼーション
サザンハイブリダイゼーションは、後述のノーザンハイブリダイゼーションに使用する各プローブから一部をとり、それらをミックスしたものをプローブに使用するのでノーザンハイブリダイゼーションと同時に行った。1.9.2で作製したハイブリバッグに入ったメンブレンに、直前に調整したプレハイブリダイゼーション液を10 ml加えた。泡ができるだけ入らないようにシーリングし、55℃の湯浴中に2時間以上おいてプレハイブリダイゼーションを行った。ノーザン用にラベルしたそれぞれのプローブ(後述)から1/3から1/2量とってミックスしたものをミックスプローブとして使用した。プローブを95℃で5分加熱後、5分急冷し、変性させた。これを3 mlのハイブリダイゼーション液と混合し、プレハイブリダイゼーション溶液を除いた後のメンブレンに加えた。泡ができるだけ入らないようシーリングし、55℃の湯浴中で24時間以上、ハイブリダイゼーションを行った。
1.9.5:洗浄、オートラジオグラフィー
メンブレンをハイブリバッグから注意深く取り出し、2×SSC/0.1 % SDSの入ったガラストレイ(乾熱滅菌したもの)に移した。65℃で20〜30分を2回ゆっくり振とうしてハイブリダイゼーション液をできるだけ除いた後、0.1×SSC/0.1 % SDS中、65℃で20〜30分2〜3回洗浄した。メンブレンをサランラップに包み、増感紙2枚を用いて-80℃で30〜60分程度X線フィルムに感光させた。
1.10 ノーザンハイブリダイゼーション
1.10.1:材料
10×MOPS buffer:6.56 gのNaOAcと4.2 gのMOPSを約800 mlの滅菌MilliQ水に溶かし、NaOHでpHを7.0に調整した。20 mlの0.5 M EDTA(pH 8.0)を加え、滅菌MilliQ水で容量を1 Lとした。フィルター滅菌(孔径0.22 μm;IWAKI)後、4℃で遮光保存した。
MOPS/ホルムアルデヒドゲル:以下の組成、
10×MOPS buffer 13 ml
滅菌MilliQ水 110.5 ml
の溶液にアガロース(1.3 g)を溶かし、50〜60℃に冷めたら、ホルマリン(35 %ホルムアルデヒド溶液)を7.8 ml加えた。
20×SSC:以下の組成、
NaCl 175.4 g
クエン酸ナトリウム 2水和物 88.2 g
を滅菌MilliQ水で1 Lとし、オートクレーブ滅菌した。
ホルムアルデヒドゲル泳動用色素:以下の組成、
Glycerol 2.5 ml
0.5M EDTA(pH 8.0) 10 μl
BPB 12.5 mg
XC 12.5 mg
滅菌MilliQ水 2.5 ml
をオートクレーブ滅菌後、エッペンドルフチューブに分注し、-20℃で保存した。
脱イオンホルムアミド:30〜40 mlの100 %ホルムアミド(ナカライテスク、分子生物学特級)に0.5 g程度のイオン交換レジン(AG 501-X8;Bio-Rad)を加え、軽く撹拌した。-20℃で保存し、使用前に緑色のレジンが残っていれば使用可能とし、すべてオレンジ色ならば新たにレジンを加えた。
50×Denhardt's:以下の組成、
Ficoll(Type400;Pharmacia) 5 g
Polyvinylpyrrolidone(MW=360,000;SIGMA) 5 g
Bovine serum albumin(Fraction V;SIGMA) 5 g
を滅菌MilliQ水で500 mlとし、フィルター(孔径0.22 μm;MILLIPORE)滅菌し、-20℃で保存した。
ハイブリダイゼーション液:50 %ホルムアミド/5×Denhardt's/5×SSC/0.1 % SDSを使用直前に調整し、ここに変性させたサケ精子 DNA(5 mg/ml)を1/50 加えた(最終濃度0.1 mg/ml)。
1.10.2:RNAのブロッティング
Log、G0状態のTIG-1細胞から超遠心(CsTFAの代わりにCsClを使用)、またはAGPC法により得たtotal RNA 1 μl(3 μg/μlに調整)に1 μlの10×MOPS、2 μlのホルムアルデヒド溶液、5 μlの脱イオンホルムアミドを加え、総容量を9 μlとした。65℃で5分加熱した後、氷上に5分置いて急冷した。1 μlの泳動用色素を加え、全量をMOPS/ホルムアルデヒドゲルにアプライした。滅菌した1×MOPS bufferを用いて100 Vで電気泳動した。BPBが2/3程度流れた時点で泳動を止め、滅菌MilliQ水で15分ずつ3回洗うことによりゲルからホルムアルデヒドを除いた。20×SSCに30〜60分浸した後、20×SSCを用いたキャピラリートランスファーによりゲル中のRNAをナイロンメンブレン(Biodyne A、孔径0.2 μm;PALL)にブロットした(一晩)。メンブレンを80℃で2時間ベイクすることにより、RNAをメンブレンに固定した。ハイブリダイゼーションまでハイブリダイゼーション用バッグに密閉して室温で保存した。
1.10.3:Sephadex G-50カラムの作製
プローブをラベルした後、残存する[α-32P]dCTPを効率良く除くため、以下のようにしてカラムを自作した。0.6 mlのチューブの底に21Gの注射針で軽く穴を開け、1.5 mlのエッペンドルフチューブ上に置いた。TEで膨潤させオートクレーブ滅菌したSephadex G-50(Pharmacia)を500 μlとり、上述の0.6 mlチューブ内に入れた。遠心(室温、3000 rpm、3 min)して1.5 mlチューブ内に落ちたTEを除き、再度遠心(室温、3000 rpm、3 min)してTEを除いた。0.6 mlチューブ内にSephadex G-50をもう250 μl加え、上記の操作を繰り返してTEを除いた。プローブ1個について、このカラムを2個作製した。
1.10.4:プローブのラベリング
サブトラクションライブラリー中、インサートが0.4 kb以上であるクローンについて、Sma IとNot Iで切断し、インサートを含むDNA断片を精製した(前述)。Random Primer DNA Labeling Kit Ver.2(宝酒造)を用い、以下の様にしてプローブのラベリングを行った。精製したDNA断片25〜50 ng程度に1 μlのRandom Primerを加え、2.5 μlとした。95℃で5分加熱後、急冷し、DNAを変性させた。ここに1.25 μlの10×buffer、1.25 μlのdNTP mixture、2 μlの[α-32P] dCTP(3000 Ci/mmol;Amersham)、0.5 μlのExo-free klenow(2 U/μl)を加え、滅菌MilliQ水で総容量を12.5 μlとした。37℃で30分反応した後、65℃で10分加熱してKlenowを変性させた。反応液にTEを38 μl加えて約50 μlとし、このうちから1 μlをとり、[α-32P]dCTPの取り込み率の測定に使用した。残りの反応液を1.10.3で作製したカラムに加え、遠心(室温、3000 rpm、5 min)した。溶出液を新しいカラムに加え、遠心(室温、3000 rpm、5 min)後、溶出液のうち1 μlを取り込み率の測定に使用した。カラム処理の前後で反応液の放射能活性を測定することで、[α-32P]dCTPの取り込み効率を測定した。残りの反応液はハイブリダイゼーションに用いるまで-20℃で保存した。
1.10.5:プレハイブリダイゼーション、ハイブリダイゼーション
1.10.2で作製したハイブリバッグに入ったメンブレンに、直前に調整したハイブリダイゼーション液を加えた。このとき、6×1.5 cm程度の短冊型メンブレンの場合には、1枚あたり2 ml加えた。泡ができるだけ入らないようにシーリングし、42℃の湯浴中に2時間以上おいてプレハイブリダイゼーションを行った。1.10.4で調整したプローブを95℃で5分加熱後、急冷し、変性させた。これを0.2 mlのハイブリダイゼーション液と混合し、プレハイブリダイゼーション後のメンブレンに加えた(0.2m/枚)。泡ができるだけ入らないようシーリングし、42℃の湯浴中で24時間以上、ハイブリダイゼーションを行った。
1.10.6:洗浄、オートラジオグラフィー
メンブレンをハイブリバッグから注意深く取り出し、2×SSC/0.1 % SDSの入ったガラストレイ(乾熱滅菌したもの)に移した。50℃で10分を2回ゆっくり振とうしてハイブリダイゼーション液をできるだけ除いた後、0.1×SSC/0.1 % SDS中、50℃で10〜20分2〜3回洗浄した。メンブレンをサランラップに包み、増感紙2枚を用いて-80℃で数時間から一晩、X線フィルムに感光させた。
1.11:一次差分化・・・段階的サブトラクション(重差分)化(1回目)
1.11.1:材料
Figure 0003898009
1.11.2:解析クローンからのRNAの合成とビオチン化
作製したサブトラクションライブラリー中、ノーザン解析を行った約30クローンのプラスミドを混合し、フェノール/クロロホルム処理、クロロホルム処理、エタノール沈殿により精製した。このうち20 μgをとり、10 μlの10×NEB buffer 4、10 μlの10×BSA(NEB)、5 μlのNot I(10U/μl;NEB)および滅菌MilliQ水を加えて総容量を100 μlとした。37℃で終夜反応させ、Not Iで切断した。このうち1 μlを電気泳動して切断を確認した後、フェノール/クロロホルム処理、クロロホルム処理を行った。上清をミリポアフィルター(UFCP3TK50)の上室にのせ、溶液が全て下に流れ落ちるまで遠心(4℃、10000 rpm)した。下室のTEを除き、新たに上室に300 μlのTEを加え、溶液が全て下に流れ落ちるまで遠心(4℃、10000 rpm)してフィルターを洗浄した。この操作をもう一度行い、フィルターを洗浄した。30 μlのTEをフィルターの上室に加え、しつこくピペッティングとvortexを行いフィルターに付着したNot I切断プラスミドを溶かし出した。ここに、10 μlの10×TRL buffer(T7 RNA polymeraseに付属のもの)、10 μlの10 mM rATP、10 μlの10 mM rCTP、10 μlの10 mM rGTP、10 μlの10 mM rUTP、1 μlのRNase inhibitor(40 U/μl;東洋紡績)、3 μlのT7 RNA polymerase(160 U/μl;東洋紡績)を加え、滅菌MilliQ水で総容量を100 μlとし、37℃で90分反応させた。1 μlのDNase I(70 U/μl;宝酒造)を加え、37℃で15分保温して鋳型DNAを分解した。等量のフェノール/クロロホルムを加え処理した後、更に等量のクロロホルムで処理を行った。上清を回収後、これに総容量が330 μlとなるようにTEを加え、13 μlの5 M NaClと1 μlのglycogen、990 μlの100 %エタノールを加え、-80℃に30分静置した。これを遠心(4℃、15000 rpm、15 min)後、沈殿に70 %エタノールを加え洗浄し、更に遠心4℃、15000 rpm、5 min)によりエタノールを完全に除去後、50 μlのTEに溶解した。20 μgの鋳型DNAから約100 μgのRNAが合成された。このうちの5 μgとLog由来のpoly(A)+RNA 5 μgを、前述の方法に従って、ビオチン化した。
1.11.3:ハイブリダイゼーション、サブトラクション
Log由来のpoly(A)+RNAとサブトラクションで解析済みのクローン由来のRNA各5μgをビオチン化したものに滅菌MilliQ水を加え、総容量を10 μlとした。このうちの6 μl(理論的には、各々のRNAが3 μg含まれていることになる)に1.2 μlのマスキングオリゴ(100 pmol/μl)を加え、滅菌MilliQ水で総容量を12 μlとした。65℃で10分加熱した後、室温に30分置き、ビオチン化RNAにマスキングオリゴをアニーリングさせた。ここに20 μlの2×HB(通常のサブトラクション時に用いるもの)、4 μlの2 M NaCl、2 μlのpoly(A)、1 μlのssDNA(0.1 μg/μl;G0-Log ssDNA subtracted library)を加えた。65 ℃で変性せず、そのまま42℃のヒートブロックに移し、48時間ハイブリダイゼーションを行った。以下、通常のサブトラクション時と同様にしてssDNAを回収し、2本鎖DNAとした。これから、G0-Log 1次差分化ds-、ss-cDNAライブラリーを前述と同様の方法により作製した。
1.12:二次差分化・・・段階的サブトラクション(重差分)化(2回目)
2回目の重差分化を行うにあたっては、1次重差分化ssDNAライブラリーからRNA化1次重差分化cDNAライブラリー解析クローンを引くか、または、最初のサブトラクションssDNAライブラリーからRNA化サブトラクションcDNAライブラリー解析クローンとRNA化1次重差分化cDNAライブラリー解析クローンを差し引く方法があるが、先に述べた方法で行ったところ、作成したcDNAライブラリー中のコロニーが非常に多かったため、あまりうまく差分化されていないと判断し、後に述べた方法で行った。なお、念のため、Log由来poly(A)+RNAも差し引いた。
1.12.1:1次重差分化cDNAライブラリー解析クローンからのRNAの合成とビオチン化
作製したサブトラクションライブラリー中、ノーザン解析を行った216クローンのプラスミドを混合し、フェノール/クロロホルム処理、クロロホルム処理、エタノール沈殿により精製した。このうち20 μgをとり、10 μlの10×NEB buffer 4、10 μlの10×BSA (NEB)、5 μlのNot I(10 U/μl;NEB)および滅菌MilliQ水を加えて総容量を100 μlとした。37℃で終夜反応させ、Not Iで切断した。このうち1 μlを電気泳動して切断を確認した後、フェノール/クロロホルム処理、クロロホルム処理を行った。上清をミリポアフィルター(UFCP3TK50)の上室にのせ、溶液が全て下に流れ落ちるまで遠心(4℃、10000 rpm)した。下室のTEを除き、新たに上室に300 μlのTEを加え、溶液が全て下に流れ落ちるまで遠心(4℃、10000 rpm)してフィルターを洗浄した。この操作をもう一度行い、フィルターを洗浄した。30 μlのTEをフィルターの上室に加え、しつこくピペッティングとvortexを行いフィルターに付着したNot I切断プラスミドを溶かし出した。ここに、10 μlの10×TRL buffer(T7 RNA polymeraseに付属のもの)、10 μlの10 mM rATP、10 μlの10 mM rCTP、10 μlの10 mM rGTP、10 μlの10 mM rUTP、1 μlのRNase inhibitor(40 U/μl;東洋紡績)、3 μlのT7 RNA polymerase(160 U/μl;東洋紡績)を加え、滅菌MilliQ水で総容量を100 μlとし、37℃で90分反応させた。1 μlのDNase I(70 U/μl;宝酒造)を加え、37℃で15分保温して鋳型DNAを分解した。等量のフェノール/クロロホルムを加え処理した後、更に等量のクロロホルムで処理を行った。上清を回収後、これに総容量が330 μlとなるようにTEを加え、13 μlの5 M NaClと1 μlのglycogen、990 μlの100 %エタノールを加え、-80℃に30分静置した。これを遠心(4℃、15000 rpm、15 min)後、沈殿に70 %エタノールを加え洗浄し、更に遠心(4℃、15000 rpm、5 min)によりエタノールを完全に除去後、50 μlのTEに溶解した。20 μgの鋳型DNAから約100 μgのRNAが合成された。このうちの5 μgとすでにRNA化済みの1次重差分解析クローン 5 μg、最初のサブトラクションcDNAライブラリー解析クローン5 μgおよびLog由来のpoly(A)+RNA 5 μgを、前述の方法に従って、ビオチン化した。
1.12.2:ハイブリダイゼーション、サブトラクション
前述の通りビオチン化した各RNA 5 μg相当量を含んだ混合液10 μlから6 μl(理論的には、各々のRNAが3 μg含まれていることになる)をとり、そこに1.2 μlのマスキングオリゴ(100 pmol/μl)を加え、滅菌MilliQ水で総容量を12 μlとした。65℃で10分加熱した後、室温に30分置き、ビオチン化RNAにマスキングオリゴをアニーリングさせた。ここに20 μlの2×HB(通常のサブトラクション時に用いるもの)、4 μlの2 M NaCl、2 μlのpoly(A)、1 μlのssDNA(0.1 μg/μl;G0-Log ssDNA subtracted library)を加えた。65℃で変性せず、そのまま42℃のヒートブロックに移し、48時間ハイブリダイゼーションを行った。以下、通常のサブトラクション時と同様にしてssDNAを回収し、2本鎖DNAとした。これから、G0-Log 2次重差分化ds-、ss-cDNAライブラリーを前述と同様の方法により作製した。
1.13:三次差分化・・・段階的サブトラクション(重差分)化(3回目)
3回目の重差分化cDNAライブラリーは、2次重差分化ssDNAライブラリーからRNA化したサブトラクションcDNAライブラリー解析クローン、1次重差分化cDNAライブラリー解析クローン、2次重差分化cDNAライブラリー解析クローンを差し引いて作成した。
1.13.1:2次重差分化cDNAライブラリー解析クローンからのRNAの合成とビオチン化
作製したサブトラクションライブラリー中、ノーザン解析を行った146クローンのプラスミドを混合し、1次重差分化cDNAライブラリー解析クローンと同様の手順に従ってRNAの合成を行った。続いて、RNA化した2次重差分化cDNAライブラリー解析クローンおよびRNA化済みのサブトラクションcDNAライブラリー解析クローン、1次重差分化cDNAライブラリー解析クローンおよび2次重差分化cDNAライブラリー解析クローン各5 μgを前述と同様の方法によりビオチン化を行った。
1.13.2:ハイブリダイゼーション、サブトラクション
前述の通りビオチン化した各RNA 5 μg相当量を含んだ混合液10 μlから6 μl(理論的には、各々のRNAが3 μg含まれていることになる)をとり、そこに1.2 μlのマスキングオリゴ(100 pmol/μl)を加え、滅菌MilliQ水で総容量を12 μlとした。65℃で10分加熱した後、室温に30分置き、ビオチン化RNAにマスキングオリゴをアニーリングさせた。ここに20 μlの2×HB(通常のサブトラクション時に用いるもの)、4 μlの2 M NaCl、2 μlのpoly(A)〔1 μg/μl〕、1 μlのssDNA(0.1 μg/μl; G0-Log二次重差分化ssDNAライブラリー)を加えた。65℃で変性させず、そのまま42℃のヒートブロックに移し、48時間ハイブリダイゼーションを行った。以下、通常のサブトラクション時と同様にしてssDNAを回収し、2本鎖DNAとした。これから、G0-Log2次重差分化ds-、ss-cDNAライブラリーを前述と同様の方法により作製した。
2. 結果と考察
2.1:一次重差分化(重差分の1回目)
重差分化法は、ライブラリー中に含まれる各クローンのノーザン解析を効率的に行うことを目的とした方法である。つまり、ノーザン解析を行ったクローン(プラスミド)の混合物を鋳型としてインサート由来のRNAを合成、1本鎖DNAとハイブリし、それらを有するssDNAを除去したライブラリーを作製する。この原理に従い、先に作成したサブトラクションライブラリーで解析を行った約30クローン(プラスミド)を混合し、それらに含まれるインサート由来のRNAを合成し、ハイブリダイゼーションに使用した。また、このサブトラクションライブラリーでは、G0期特異的な遺伝子が十分に濃縮されていなかったことから、ssDNAの約30倍量に相当するpoly(A)+RNA (Log)も同時に加え、1次重差分化cDNAライブラリーの作製を行った。その結果、作製した同ライブラリーの複雑度は、約1×105となった。つまり、1次重差分化cDNA ライブラリーは前ライブラリー(サブトラクションライブラリー)の約10倍程度の濃縮がかかったライブラリーであると考えられた。
【0040】
最初のサブトラクションライブラリーの場合と同様に、まず任意の約30クローンからプラスミドをピックアップし、続いてインサートを回収し、それらをプローブとしてノーザン解析を行った。その結果、これらの中にはgrowth arrest(G0)特異的に発現量が上昇しているものが含まれていた。この結果より、1次重差分化cDNAライブラリー中の解析クローン数を増やし、最終的に400クローンからプラスミド、更にインサートを回収し、ノーザン解析を行った。その結果、400クローン中、0.4 kb以上のインサートを含むものが218個であった(インサートの挿入率;54.5 %)。これらについて、静止期で発現が上昇しているものをノーザンスクリーニングしたところ、そのようなクローンを20個単離することができた。これらのクローンについて、その再現性の確認も兼ね、更にTime course northern (Serum starve)を行った。その結果を図7に示す。前述の約30クローンのうちの15個については再現性が確認された。
2.2:二次重差分化
1次重差分化cDNAライブラリーの解析もある程度解析クローン数が増えてくるとノーザンスクリーニングを繰り返しても(1)重複するクローンが増えてくる、(2)あまり差のあるものがとれなくなってくる、(3)あるいはその両方が原因で効率が落ちてくる時期が来る。1次重差分化cDNAライブラリーの解析では(2)が原因と考えられる状態になってきた。従って、このまま1次重差分化cDNAライブラリーの解析を続けるより次の重差分化に移行した方が効率がよいと考え、1次重差分化cDNAライブラリーの作成手順と同様にして、2次重差分化を行った(1.材料と方法の項参照)。実際には、1つの重差分化ライブラリーについて150〜200個の解析を行えば次の重差分化に移行した方が遙かに効率的である。あまり1つのライブラリーにこだわって数をこなすのは逆に非効率的で、それでは重差分をしている意味がなくなる。
【0041】
2次重差分化cDNAライブラリーでは、はじめに任意の160個のコロニーをピックアップし、インサートのチェックを行った。その結果、約50 %の確率でインサートが挿入されていた。1次重差分化cDNAライブラリーより約5 %程低い値になっているが、これは、重差分を繰り返すほどよけいなものが引かれて取り除かれるので理にかなった結果だと考えられる。最終的に解析したクローンは約150クローンでそのうちノーザンスクリーニングで静止期に発現上昇がみられたものが約30個あり1次重差分と同様にこれらのクローンについて、その再現性の確認も兼ね、Time course northern (Serum starve)を行った。その結果、これら約30個のクローンのうち12クローンについて再現性が確認された。
【0042】
次に単離された各クローンの塩基配列を決定し、それらとデータベース間でホモロジーサーチを行った。その結果、これらのクローンの中には、
(i)規遺伝子であると考えられるものが1種、
(ii)制遺伝子、或いはそのcandidateである可能性が示唆されているものが2種類、
が含まれていた。
2.3:三次重差分化法
2次重差分化cDNAライブラリーの解析では解析クローン数が増えてくるに従って、重複するクローンが増えてきた。従って、このまま続けていくよりも次の差分化に移行した方が効率がよいと考え、3次重差分化cDNAライブラリーの作成に取りかかった。3次重差分化では2次重差分化ssDNAライブラリーからこれまで解析してきた各差分化cDNAライブラリー解析クローン(RNA化済み)を差し引いて作成した(1.材料と方法の項参照)。
【0043】
3次重差分化cDNAライブラリーでは、2次重差分化cDNAライブラリーと同様に、はじめに任意の160個のコロニーをピックアップし、インサートのチェックを行った。その結果、約45 %の確率でインサートが挿入されていた。2次重差分化cDNAライブラリーより約5 %程低い値になっているが、これも、2次重差分化時と同様に、よけいなものが差し引かれて取り除かれた結果だと考えられる。また、これらのインサートを回収して、30個のクローンについてノーザンスクリーニングを行ったところ目的とするクローンの候補が7個とれてきた。この結果からも、この3次重差分化cDNAライブラリーは、目的とするcDNAが濃縮されており、ライブラリーの作成は成功したと考えられる。従って、このライブラリーから次々と解析を進めていくことにした。最終的に解析したクローンは約240 クローンでそのうちノーザンスクリーニングで静止期に発現上昇がみられたものが約45個あり1、2次重差分と同様にこれらのクローンについて、その再現性の確認も兼ね、Time course northern (Serum starved)を行った。その結果、これら約45個のクローンのうち14クローンについて再現性が確認された。
【0044】
次に単離された各クローンの塩基配列を決定し、それらとデータベース間でホモロジーサーチを行った。その結果、これらのクローンの中には、新規遺伝子と考えられるものが2種類、機能など未解析のものが5種類が含まれていた。様々な方法で遺伝子解析プロジェクトが行われてきているため、検索を行うと種々のプロジェクトcDNAライブラリーでクローニングされたものが検索されてくるが、その殆どは機能など未解析のものが多かった。従って、これら未解析の遺伝子は、新規の遺伝子と考えることもできる。癌抑制遺伝子、或いはそのcandidateである可能性が示唆されているものは今回とれてこなかった。しかし、これら新規或いは機能未解析のものの中には新規の癌抑制遺伝子、或いはそのcandidate遺伝子が存在する可能性は十分にあり、非常に興味深い遺伝子であるといえる。こうして最終的にクローニングした20種類の遺伝子をTIGA3-TIGA22と名づけた。そのノーザンブロット解析の結果をまとめて図7に示す。
【0045】
【参照文献】
Kobori, M., Ikeda, Y., Nara, H., Kato, M., Kumegawa, M., Nojima, H. & Kawashima, H. Large scale isolation of osteoclast-specific genes by an improved method involving the preparation of a subtracted cDNA library. Genes Cells,
Genes Cells 3, 459-475 (1998).
2. Kobori, M. & Nojima, H. A simple treatment of DNA in a ligation mixture
prior to electroporation improves transformation frequency. Nucleic Acids Res. 21,
2782 (1993).
3. Sive, H. L. & St John, T. A simple subtractive hybridization technique employing photoactivatable biotin and phenol extraction. Nucleic Acids Res. 16,10937 (1988).
【0046】
【配列表】
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【図面の簡単な説明】
【図1】静止期特異的に転写誘導される遺伝子群の転写産物(mRNA:cDNA)が濃縮されたサブトラクティッドcDNAライブラリーの作製の手順である。
【図2】段階的サブトラクションにおけるプラスミド解析の手順である。
【図3】3種類のTIGA遺伝子のノーザン解析の結果である。
【図4】段階的サブトラクションの結果をプロットして得られると思われる曲線の予想図である。
【図5】高次サブトラクションcDNAライブラリー作成の概略図である。
【図6】実施例例において得られた段階的サブトラクション曲線である。
【図7】実施例でクローニングした20種のTIGA遺伝子のノーザン解析の結果である。

Claims (11)

  1. 異なる生理現象を示す細胞Xと細胞Yから、細胞Xで特異的に発現する遺伝子群を特定する方法であって、以下の工程:
    (1) 細胞Xと細胞Yでそれぞれ発現する遺伝子の差分化によって、細胞Xでのみ発現する遺伝子群のcDNA群が濃縮された一次差分化cDNAライブラリーを作成し、
    (2) 一次差分化cDNAライブラリーの一部のcDNA群をプローブとするノーザン解析によって、一次差分化cDNAライブラリーの当該一部における細胞X特異的なcDNA群を特定し、
    (3) 工程(2)で特定したcDNA群と一次差分化cDNAライブラリーとの差分化によって、細胞X特異的なcDNA群がさらに濃縮された二次差分化cDNAライブラリーを作成し、
    (4) 上記工程(2)、(3)をさらに1回以上繰り返すことによって、細胞Xで特異的に発現する30種類以下の遺伝子群を特定する、
    ことを特徴とする多段階差次的クローニング方法。
  2. 細胞Xが細胞周期静止期のヒト細胞であり、細胞Yが細胞周期増殖期のヒト細胞である請求項1の多段階差次的クローニング方法。
  3. 細胞周期増殖期のヒト細胞では発現せず、細胞周期静止期のヒト細胞で特異的に発現する遺伝子群のそれぞれのcDNAの集合であって、 cDNA の塩基配列がそれぞれ配列番号1−39の奇数配列番号であるcDNA群。
  4. 請求項3のcDNA群のそれぞれの相補配列からなるポリヌクレオチド群。
  5. 請求項3のcDNA群を構成する各cDNAをそれぞれ保有する組換えベクター群。
  6. 請求項5の組換えベクター群を構成する各組換えベクターによる形質転換体細胞群。
  7. 請求項3のcDNA群を構成する各cDNAの発現産物であり、それぞれ配列番号2−40の偶数配列番号のアミノ酸配列からなるタンパク質群。
  8. 請求項6の形質転換体細胞群を構成する各形質転換細胞によってそれぞれ産生される請求項7のタンパク質群。
  9. 請求項7または8のタンパク質群を構成する各タンパク質をそれぞれ認識する抗体群。
  10. 請求項3のcDNA群および請求項4のポリヌクレオチド群の少なくとも一方と、担体とからなる組成物。
  11. 請求項10の組成物を備えた検索・診断キット。
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