【発明の詳細な説明】APPのエンドサイトーシスを阻害し得るペプチド及び対応するヌクレオチド配 列
本発明は、新規なペプチド及びヌクレオチド配列とそれらの医薬的使用に関す
る。より特定的には本発明は、APPのエンドサイトーシス現象を少なくとも部
分的に阻害し得る新規なペプチドに関する。
アミロイド斑の主要な構成成分であるアミロイドβペプチドは、APP(アミ
ロイド前駆ペプチド)の開裂によって生成され、約40個のアミノ酸から成る4
kDaのペプチドである。このペプチドはアルツハイマー病及びトリソミー21
症候群という通称のダウン症候群の患者の脳に大量に蓄積される。
APPはトランスメンブラン領域、細胞外ドメイン及び細胞質ドメインを含む
複数のドメインを有する100〜140kDaの糖タンパク質である。アミロイ
ドβペプチド発現に特に関与する分子の領域はトランスメンブランドメインに部
分的にオーバーラップし、また細胞外ドメインの内部に伸びている。APPは選
択的スプライシングによ
って主として3つの形態で形成され、これらの形態は特性決定されている。AP
Pの遺伝子は染色体21に局在し、家族性形態のアルツハイマー病患者の3〜5
%で染色体21の突然変異が同定されている。
APPの生理学的作用は現状ではまだ完全には解明されていない。しかしなが
ら、APPはシナプス接触に関与し、成長調節因子として作用し、ニューロン保
護作用を有すると考えられている。
最近の文献のデータは、APPのエンドサイトーシスがアミロイドβペプチド
の産生に重要な役割を果たすこと、及び、エンドサイトーシスシグナルとして使
用される配列要素が細胞質領域の内部で同定されたことを示している。例えば、
APPのサイトゾルのC末端ドメインの欠失したcDNAの構築物がトランスフ
ェクトされた細胞は、可溶性形態のAPPを産生することはできるが、アミロイ
ドβペプチドを産生することはできない。しかしながら、APPのエンドサイト
ーシスの活性化とエンドサイトーシス関連シグナルの形質導入とを生じさせるi
n vivoイベントは未だ詳細には解明されていない。
従って、アルツハイマー病及びより普遍的な神経変性疾患を理解しその治療方
法を開発するためには、細胞内のエンドサイトーシスに関連する上記シグナルの
正確な役割、それらの作用方法及び特性を解明することが最も重要である。
出願人は、FE65タンパク質が、脳内で転写活性タンパク質として作用する
だけでなく、APPの細胞質領域レベルにも相互作用してAPPのエンドサイト
ーシスの調節に干渉することを知見し、本発明に到達した。
より特定的には本発明は、APPのエンドサイトーシスの活性化シグナルの形
質導入に関与するFE65タンパク質の特定領域(いわゆるエフェクター領域)
の同定及びキャラクタリゼーションに基づく。このような領域の存在が証明され
たので、医薬として有用な新規なペプチドの製造が実現可能になったのである。
本文中で使用した“FE65タンパク質”なる用語は、FE65タンパク質自
体及びそのすべての相同形態を含む。“相同形態”なる用語は、種々の細胞、特
にヒトまたは他の生物の細胞に由来するタンパク質であって、FE65タンパク
質と同じタイプの活性を有しているFE65タンパク質に等価のすべて
のタンパク質を意味する。このような相同配列はハイブリダイゼーション実験に
よって得られる。ここで“等価の”と呼ばれるタンパク質は、請求の範囲に記載
のFE65タンパク質と同等の生理的挙動を示すタンパク質を意味しており、同
等の生理的挙動を示すために有効な値の相同性(%)を有していればよい。
従って、本発明の第一の目的は、FE65タンパク質またはその相同形態の1
つとAPPの細胞質領域との相互作用レベルに少なくとも部分的に干渉し得るペ
プチドを提供することである。
本発明のペプチドによるこのような干渉は種々の形態で出現し得る。本発明の
ペプチドは、FE65タンパク質またはその相同形態の1つとAPPの細胞質領
域との相互作用を少なくとも部分的に低減、阻害または刺激し得る。このような
相互作用に少なくとも部分的に拮抗し得るペプチドが好ましい。
本発明の特定実施態様によれば、ペプチドはFE65タンパク質またはその相
同形態の1つとAPPの細胞質領域との相互作用ドメインのレベルに関与し得る
。
より好ましくは、本発明のペプチドは、配列1、配列2また
はその誘導体の1つに存在するFE65タンパクをコードするペプチド配列の全
部または一部を含む。
本発明で使用された“誘導体”なる用語は、1つまたは複数の遺伝的特性及び
/または化学的特性の修飾によって遺伝コードが変性され、本発明の配列とは異
なる配列をもつすべての配列を意味する。“誘導体”なる用語はまた、これらの
配列またはそのフラグメントとハイブリダイズする配列であってFE65タンパ
ク質またはその相同形態の1つとAPPの細胞質領域との相互作用レベルに作用
する能力を維持しているすべての配列を意味する。“遺伝的特性及び/または化
学的特性の修飾”なる用語は、1つまたは複数の残基の突然変異、置換、欠失、
付加及び/または修飾を意味する。“誘導体”なる用語はまた、他の細胞ソース
に由来する配列、特にヒトまたは他の生物の細胞に由来する配列であって、本発
明の配列と同じタイプの活性を有している本発明の配列に相同の配列を含む。こ
のような相同配列は、ハイブリダイゼーション実験によって得られる。ハイブリ
ダイゼーションは、核酸バンクを出発材料とし、天然型(native)配列ま
たはそのフラグメントをプローブとして用い、種々のハイブリダイゼーション条
件で行
う(分子生物学の汎用技術に関しては、Maniatisら,参照)。
このような誘導体は種々の目的、特に、治療効率の向上、副作用の抑制、また
は、薬剤動態学的及び/または生物学的な新規な特性の付与、などの目的で製造
される。
FE65タンパク質及びその相同形態に由来のペプチドとしては特に、APP
の細胞質領域と相互作用する能力を有しているか非機能のエフェクター領域を有
しているペプチドがある。このようなペプチドは、FE65タンパク質及びその
相同形態のエフェクター領域の欠失、突然変異または破壊によって得られる。こ
のような修飾は例えば、in vitro突然変異誘発、付加要素もしくは合成
配列の導入、または、初期要素の欠失もしくは置換によって得られる。このよう
にして得られた誘導体は、FE65タンパク質及びその相同形態がAPP結合部
位に結合することを部分的に阻害する活性を有することが証明されている。勿論
、このために当業者に公知のいかなる技術を使用してもよい。
本発明のペプチドはまた、上記に定義の配列のフラグメントであってもよい。
このようなフラグメントは種々の方法で作製
できる。特に、当業者に公知のペプチドシンセサイザーを使用し本発明の配列に
基づいて化学的方法で合成できる。また、所望のペプチドをコードするヌクレオ
チド配列を細胞宿主中で発現させる遺伝的方法で合成できる。このヌクレオチド
配列は、本発明のペプチド配列及び遺伝コードに基づいてオリゴヌクレオチドシ
ンセサイザーを使用して化学的に合成できる。このヌクレオチド配列はまた、当
業者に公知の技術を用いて本発明の配列を酵素的切断、結合、クローニングなど
で処理することによって作製することもでき、または、本発明の配列から作製し
たプローブでDNAバンクをスクリーニングすることによって作製することもで
きる。
更に、本発明のペプチド、即ち、FE65タンパク質及びその相同形態とAP
Pの細胞質領域との相互作用を少なくとも部分的に低減または阻害し得るペプチ
ドはまた、該ペプチドの配列がFE65タンパク質及びその相同形態の配列中の
APPの細胞質領域に相互作用する部位の配列に一致するようなペプチドであっ
てもよい。
また、上記に定義のペプチドと競合的に標的細胞に相互作用し得るペプチドも
本発明に包含される。本発明のペプチドの配
列に基づいてこのようなペプチドを合成し、得られたペプチドと上記に定義のペ
プチドとの競合能力を測定する。
本発明の別の目的は、上記に定義のペプチドに対するポリクローナル抗体もし
くはモノクローナル抗体またはこれらの抗体のフラグメントを提供することであ
る。このような抗体は当業者に公知の方法によって得られる。特に、動物を本発
明のペプチドで免疫感作し、血液を採取し、抗体を単離することによって目的の
抗体が得られる。また、当業者に公知の技術でハイブリドーマを調製することに
よって目的の抗体が得られる。
より好ましくは、本発明の抗体または抗体フラグメントは、本発明のペプチド
とAPPの細胞質領域との相互作用を少なくとも部分的に阻害する能力を有して
いる。従って、これらの抗体または抗体フラグメントは、APPのエンドサイト
ーシスを変調するために使用できる。
更に、これらの抗体はまた、生物サンプル中のAPPの発現または超発現を検
出及び/または定量するために使用でき、その結果としてAPPの活性化状態に
関する情報を得るために使用できる。
本発明はまた、医薬として有用な非ペプチド化合物または非
ペプチド単独化合物を提供する。実際、本発明に記載の活性タンパク質モチーフ
に基づいて、医薬用途に適性の非ペプチド単独化合物を、FE65タンパク質依
存性シグナル伝達経路の阻害分子として作製し得る。
本発明の目的はまた、本発明のペプチドをコードするヌクレオチド配列を提供
することである。特に、配列1、配列2またはそれらの誘導配列の1つに存在す
る配列の全部または一部を含む配列を提供する。本文中で使用された“誘導配列
”なる用語は、配列1または配列2またはそれらのフラグメントとハイブリダイ
ズしており本発明のペプチドをコードしている配列、及び、これらの配列から遺
伝コードの変性によって得られた配列を意味する。本発明の種々のヌクレオチド
配列は人工配列でもよくそうでなくてもよい。配列はゲノム配列、cDNA配列
、RNA配列、ハイブリッド配列、合成配列、半合成配列のいずれでもよい。こ
れらの配列は、DNAバンク(cDNAバンク、ゲノムDNAバンク)のスクリ
ーニング、化学的合成、バンクスクリーニングによって得られた配列の化学的ま
たは酵素的修飾を含む混成方法、などによって得られる。
このようなヌクレオチド配列は本発明のペプチドを産生させ
るために使用できる。従って本発明はまた、本発明のヌクレオチド配列を含む細
胞を該配列の発現条件下で培養し、産生されたペプチドを回収するペプチドの製
造方法を提供する。この方法では一般に、ペプチドをコードする部分が宿主細胞
中で該ペプチドを発現させるシグナルのコントロール下に配置される。これらの
シグナル(プロモーター、ターミネーター、分泌“リーダー”配列、など)の選
択は、使用される宿主細胞次第で異なっている。更に、本発明のヌクレオチド配
列が、自律複製型ベクターまたは一体型ベクターの構成要素となってもよい。自
律複製型ベクターは例えば、選択された宿主体内の自律複製配列を利用すること
によって得られる。一体型ベクターは例えば、宿主のゲノムのいくつかの領域の
相同配列を利用し、相同組換えによってベクターを組込むことによって得られる
。
組換え法によって本発明のペプチドを産生するために使用される宿主細胞は真
核細胞でもよく原核細胞でもよい。適当な真核細胞宿主としては、動物細胞、酵
母または菌類がある。酵母としては特に、Saccharomyces,Klu
yveromyces,Pichia,Schwanniomyces
またはHansenulaがある。動物細胞としては、COS、CHO、C12
7などの細胞がある。菌類細胞としては特に、Aspergillus種または
Trichoderma種がある。原核細胞宿主としてはE.coli、Bac
illusまたはStrePtomycesのような細菌の使用が好ましい。
本発明の核酸配列はまた、医薬として有用なアンチセンスオリゴヌクレオチド
またはアンチセンス遺伝子配列の作製に使用できる。アンチセンス配列は、所与
の遺伝子のコーディング鎖に相補的であり従って転写されたmRNAと特異的に
ハイブリダイズできその結果として該mRNAがタンパク質に翻訳されることを
阻害する短いオリゴヌクレオチドである。従って、APPの細胞質領域とFE6
5タンパク質との相互作用を少なくとも部分的に阻害し得るアンチセンス配列を
提供することも本発明の目的である。このような配列は上記に定義の核酸配列の
全部または一部から成る。一般には、APPの細胞質領域と相互作用するペプチ
ドをコードする配列の相補的配列またはそのフラグメントから成る。このような
オリゴヌクレオチドは例えば、断片化などの方法または化学合成によ
って得られる。
本発明の配列は遺伝子治療の分野で、APPの細胞質領域とFE65タンパク
質との相互作用を変調し得るアンチセンス配列またはペプチドをin vivo
で導入するかまたは発現させるために使用され得る。このためにin vivo
投与が可能なウイルス性または非ウイルス性のベクターに配列を組込む(Med
ecine et Sciences 7(1991)705)。本発明に好適
なウイルスベクターとしては特に、アデノウイルス、レトロウイルス、アデノ関
連ウィルスまたはヘルペスウイルス型のベクターがある。本発明の目的はまた、
本発明のポリペプチドをコードするヘテロロガス核酸配列を含む欠陥組換えウイ
ルスを提供することである。
本発明はまた、上記に定義のヌクレオチド配列とハイブリダイズでき遺伝子治
療の分野で有用な合成または非合成のヌクレオチドプローブを提供し得る。この
ようなプローブは、APPの発現または超発現を検出するため、あるいは、遺伝
的異常(誤ったスプライシング、多形性、点突然変異、など)を検出するための
in vitro診断ツールとして使用され得る。これらのプローブはまた、別
の細胞ソース及び好ましくはヒト起原
の細胞から上記に定義のペプチドをコードするホモロガス核酸配列を検出及び単
離するために使用され得る。本発明のプローブは一般に、少なくとも10個の塩
基を含み、例えば上記配列の1つまたはその相補鎖全部を含み得る。好ましくは
これらのプローブを使用に先立って標識する。このために、当業者に公知の種々
の技術(放射性標識、酵素標識、など)を使用し得る。
本発明の目的は更に、少なくとも1つの上記に定義のペプチドを有効成分とし
て含む医薬組成物を提供することである。
本発明の目的はまた、少なくとも1つの上記に定義の抗体及び/または抗体フ
ラグメントを有効成分として含む医薬組成物並びに、少なくとも1つの上記に定
義のヌクレオチド配列を有効成分として含む医薬組成物を提供することである。
更に、本発明の目的はまた、上記に定義のペプチド、抗体及びヌクレオチド配
列が互いにまたは別の有効成分と共存している医薬組成物を提供することである
。
本発明の医薬組成物の使用目的は、APPタンパク質の活性化を変調し、その
結果としてそのエンドサイトーシスを変調しアミロイドβペプチドの産生を変調
することである。より特定的にはこれらの医薬組成物は、FE65タンパク質と
APPの
細胞質領域との相互作用を変調する。より好ましくはこれらの医薬組成物は、F
E65タンパク質とAPPの細胞質領域との相互作用を少なくとも部分的に低減
または阻害する。より好ましくはこれらの医薬組成物は、例えばアルツハイマー
病及びトリソミー21症候群のような神経変性疾患を治療する。
本発明の目的は更に、APPのエンドサイトーシスの活性化を変調するためま
たは神経変性疾患の型別を判定するために上記に記載の分子を使用することであ
る。本発明は特に、APPのエンドサイトーシスの活性化を少なくとも部分的に
阻害するためのこれらの分子の使用に関する。
本発明の別の利点は、本発明の非限定的代表例である以下の記載及び実施例か
ら明らかにされるであろう。図面の簡単な説明
図1は、ベクターpGAL4DB−CAPPの構造を表す。
図2は、実施例3で得られたゲル上のプラスミドDNAを表す。
図3は、異なる起原のFE65のヌクレオチドフラグメントの比較を示す。使用した材料及び方法
(1)使用した酵母菌株:
S.cerevisiae属のYCM株(MATa,ura3−52,his
3−200,ade2−101,lys2−801,trp1−901,leu
2−3,112,canr,gal4−542,gal80−538,URA3
::GAL1/10−lacZ,LYS::GAL1/10−HIS3)は、2
ハイブリッド系による脳の融合バンクのスクリーニングツールとして使用した。
S.cerevisiae属のL40株(Mata,his3D200,tr
p1−901,leu2−3,112,ade2,LYS2::(lexAop
)4−HIS3,URA3::(lexAop)8−LacZ,GAL4)は、
一方のタンパク質がLexAタンパク質から成る融合タンパク質が形成されると
きのタンパク質−タンパク質相互作用を確認するために使用した。LexAタン
パク質は、リポーター遺伝子LacZ及びHis3の発現をコントロールする応
答要素LexAを認識し得る。
これらの細胞を以下の培養培地で培養した。
YPD完全培地:
−酵母抽出物(10g/リットル)(Difco);
−バクトペプトン(20g/リットル)(Difco);
−グルコース(20g/リットル)(Merck)。
この培地に20g/リットルの寒天(Difco)を加えて固体培地とした。YNB最小培地:
−酵母窒素塩基(アミノ酸非含有)(6.7g/リットル)(Difco);
−グルコース(20g/リットル)(Merck)。
この培地に20g/リットルの寒天(Difco)を加えて固体培地とした。
酵母の栄養要求株がこの培地で増殖できるためには、培地にアミノ酸または該
アミノ酸を与える窒素含有塩基を50mg/mlで添加する必要がある。細菌汚
染を防止するために培地に100μg/mlのアンピシリンを加える。
(2)使用した細菌株:
遺伝子型supE,hsd△5,thi,△(lac−proAB),F’〔t
raD36 pro A+B+lacIqlacZ△M15〕の大腸菌TGI株
。使用した組換えプラスミドの増幅及び単離手段としてこの菌株を使用した。
この菌株を以下の培地で培養した。
LB培地:
−NaCl(5g/リットル)(Difco);
−バクトトリプトン(10g/リットル)(Difco);
−酵母抽出物(5g/リットル)(Difco)。
この培地に20g/リットルの寒天(Difco)を加えて固体培地とした。
アンピシリンは、アンピシリン耐性遺伝子を含むプラスミドを受容した細菌を
選択するためにマーカーとして使用できるので、100μg/mlのアンピシリ
ンを加えた。
(3)使用したプラスミド:
ベクターpGBT10(Clontech)は、細菌及び酵母の複製起点を有
している5.4kbのシャトルプラスミドであり、細菌及び酵母の双方の体内で
高いコピー数で複製され得る。このプラスミドは、融合タンパク質を形成するた
めにGAL4のDNA結合ドメインをコードする配列の下流でターミネーターの
上流に存在する多重クローニング部位を含む。このプラスミ ドはまた、トリプ
トファン非含有の最小培地でtrp1遺伝子型の酵母を選択するために該遺伝子
型を相補し得るS.sevisiaeのTRP1遺伝子を含む。このベクターは
、アンピシリン含有培地でアンピシリン耐性遺伝子を有する細菌が選択
されるようにアンピシリン耐性遺伝子を含んでいる。
ベクターpGADI10は、Clontechから提供されるベクターであり
、GAL4のトランス作用転写活性ドメインとEcoRI部位に挿入された脳バ
ンク由来のcDNAでコードされたタンパク質との融合タンパク質を酵母の体内
で発現させ得る。
ベクターpLex9(pBTM116)(Bartelら,D.A Hart
ley Ed,Oxford University press,153頁)
は、pGBT10に相同の5kbのベクターであり、融合タンパク質を形成する
ために細菌リプレッサーLexAをコードする配列の下流でターミネーターの上
流に存在する多重クローニング部位を含む。
(4)使用した合成オリゴヌクレオチド:
CAA GTC GAC CTA GTT CTG CATCTG CTC(配
列3);
CAA GAA TTC AAG AAA CAG TACACA TCC(配
列4)。
これらのオリゴヌクレオチドから、EcoRI部位及びSaII部位をもつCA
PPに対応するPCRフラグメントが得ら
れた。
Applied System ABI 394−08でオリゴヌクレオチド
を合成する。オリゴヌクレオチドをアンモニアによって合成マトリックスから分
離し、10倍量のn−ブタノールによって2回沈殿させ、次いで水に戻す。光学
密度の測定によって定量する(1ODは30μg/mlに相当する)。
(5)プラスミドDNAの調製:
大量のDNAはPromegaの高速DNA調製キットを使用して調製する。
少量のDNAは以下の手順で調装する。プラスミドを含む細菌を2mlのLB
培地に入れ、撹拌振盪装置内で少なくとも4時間培養する。次いで細菌をエッペ
ンドルフ管で14,000rpmで2分間遠心し、沈渣を100μlの溶液I(
50mMのグルコース、25mMのトリス−HCIバッファ,pH8、10mM
のEDTA,pH8)に再度懸濁させ、200μlの溶液II(0.2MのNa
OH、1%のSDS)によって溶菌する。溶菌液を次に、150μlの溶液II
I(3Mの酢酸カリウム、11.5%(v/v)の氷酢酸)で中和する。フレー
ク状沈殿物が得られるまで管を撹拌した後、150μlのフェ
ノール/クロロホルム混合物(水中に飽和した50%フェノールと50%クロロ
ホルム)を添加し、全体を30秒間撹拌する。14,000rpmで2分間遠心
後、DNAを含有する水相を回収する。次に、0.5倍量のイソプロパノールを
添加して沈殿させ、次いで14,000rpmで5分間遠心し、風乾し、最後に
20μlのTE RNアーゼ(50μg/mlのRNアーゼを含む10mMのト
リス−HClと1mMのEDTAの溶液)に戻す。
(6)DNAの酵素的増幅またはPCR(ポリメラーゼ連鎖反応):
DNAマトリックス、dNTP(0.2mM)、PCRバッファ(10mMのト
リス−HCl,pH8.5、1mMのMgCl2、5mMのKCl、0.01%
のゼラチン)、0.5μgの各オリゴヌクレオチド及び2.5IUのAmpli
TaqDNAポリメラーゼ(Perkin Elmer)の存在下、ホルムア
ミド(5%)添加または非添加で、最終容量100μlでPCR反応を行う。サ
ンプルの蒸発を防ぐために混合物を2滴のパラフィン油で被覆する。使用した装
置はAppligeneの“Crocodile II”である。マトリックス
の変性温度として90℃、オリゴヌクレオチドとマトリックスとのハイブリダイ
ゼーション温度としてはオリゴヌクレオチドの分離温度よりも5〜10℃低い温
度、酵素による伸長温度として72℃を使用した。
(7)結合:
すべての結合反応は、100〜200ngのベクター、0.5〜2μgのイン
サート、40IUの酵素T4 DNAリガーゼ(Biolabs)及び結合バッ
ファ(50mMのトリス−HCl,pH7.8;10mMのMgCl2;10m
MのDTT;1mMのATP)の存在下、最終容量10μ1で+14℃で一夜処
理することによって行う。陰性対照として、インサート非存在のベクターを結合
処理する。
(8)プラスミドによる細菌の形質転換プロトコル:
結合反応物全量(10μl)を用いて、Chungら(PNAS,1988
86,2172−2175)の方法によってコンピテントにした細菌TG1を形
質転換させる。液体LB培地中の細菌TG1を撹拌器付きインキュベーターで6
00nmのODが0.6になるまで37℃で数時間培養する。次いで培
地を6,000rpmで10分間遠心する。出発培養培地の十分の一の量に対応
する量のTSB(LB培地+100g/リットルのPEG4,000、5%のD
MSO、10mMのMgCl2、10mMのMgSO4)に細菌沈渣を戻すこと
によってコンピテント細菌を得る。4℃で30〜60分間のインキュベーション
後、200μlの細菌を結合産物に氷土で15分間接触させる。200μlのL
Bを添加した後、細菌を37℃で30分間インキュベートし、次いでLB培地+
アンピシリンで平板培養する。
(9)DNAの分離及び抽出手順:
電気泳動法を用いDNAをサイズに基づいて分離する。このために、分離すべ
きフラグメントのサイズに応じて種々のゲルを使用する。
−DNAの小フラグメント(75〜500bp)の分離には6%、10%及び
20%のプレキャストポリアクリルアミドゲル(Novex)、
−DNAの大フラグメント(500bp以上)の分離にはTBEバッファ(9
0mMのトリス塩基;90mMのホウ酸塩;2mMのEDTA)中の1%アガ
ロースゲル(Gibco BRL)、
−小フラグメント(500bp以下)の分離にはTBEバッファ中の2%Nu
Sieveアガロースゲル(FMC Bioproducts)。
アガロースゲル及びポリアクリルアミドゲルのいずれの場合にも電気泳動はT
BEバッファ中、分子量マーカー(1Kbのladder、Gibco BRL
)の存在下で行う。DNAをゲルに配置する前に、DNAを十分の一の量のデポ
ーブルー(200g/リットルのフィコール、0.5g/リットルのブロモフェ
ノールフルー、50mMのEDTA)と混合する。100ボルトで泳動させ、臭
化エチジウム(ゲル1mlあたり0.5μgの濃度)で染色した後、UVランプ
でバンドを可視化する。
アガロースゲルのバンドからDNAを抽出するために以下の手順の電気溶出を
行う。即ち、DNAフラグメントを含むゲル切片をメスで裁断し、100〜50
0μlのTBEを収容した透析バッグに入れ、2個のクリップで閉鎖する。全体
を電気泳動槽に入れ、100ボルトの電界を作用させる。ゲルから取り出したD
NAを次に、フェノール/クロロホルムで2回抽出し、
次いでクロロホルムで2回抽出することによって精製し、0.3Mの酢酸ナトリ
ウムと2.5倍量の無水エタノールとの存在下で沈殿させる。遠心後(14,0
00rpmで5分間)、DNA沈渣を乾燥し、20μlの水に戻す。
(10)蛍光法によるプラスミドDNAの配列決定
異なる蛍光マーカーを有する4つのジデオキシリボヌクレオチドを用い、Sa
nger法に従って配列決定を行う。いずれか1つのジデオキシリボヌクレオチ
ドが取り込まれると、配列決定すべきDNAのTaqポリメラーゼによる複製が
停止する。この反応によって種々のサイズのDNAが得られる。どのDNAも、
4つのジデオキシリボヌクレオチドのいずれか1つから成る3’末端を有してい
る。1μgのプラスミドと4ピコモルのプライマーとを、Applied Bi
osystemsからPrism(登録商標)として販売されている9.5μl
の“プレミックス”に添加する。96℃で30秒間の変性段階と50℃で15秒
間のハイブリダイゼーション段階と60℃で4分間の伸長段階とから成るサイク
ルを25回繰返すことによってPCRを行うために20μlの最終容量が必要で
ある。
増幅後に得られたDNAフラグメントを、排除カラム(ClontechのC
hromaspin−30)で精製し、次いでSpeed Vacで乾燥する。
全部のフラグメントを、24μlのEDTA(50mM)と120μlの脱イオ
ン化したホルムアミドとから成る混合物5μ1に戻す。96℃で3分間変性した
後、3〜5μlを電気泳動ゲルに配置する。種々のDNAフラグメントをサイズ
に従って分離し、順次にAppareil 370 DNAシークエンサー(A
pplied Biosystems)のレーザー読取装置に通し、種々の蛍光
を検出する。
(11)脳バンク(Clontech(登録商標))のプラスミドの調製:
脳のcDNAの融合バンクは細菌の形態で販売されている。これらの細菌は、
ヒト脳のcDNAに対応するインサートを含むプラスミドpGAD10を含有し
ている。このバンクのcDNAは、オリゴdTの技術及び変性オリゴヌクレオチ
ドの技術によって得られる。後者の技術を用いると、オリゴdTの技術によって
得ることが難しいmRNAの5’部分が得られる。これらのcDNAはベクター
pGAD10のEcoR
I部位のレベルにクローニングされている。
脳の融合バンクの名称を確認し、バンクの2μlの細菌を8mlのLB培地に
予め導入し、バンクとしての適格性を維持するように固体培地で非集密的に平板
培養する。即ち、LB培地+アンピシリンを入れた770cm2容の16個の容
器で平板培養した。出現したコロニーを各容器あたり30mlの液体LB培地+
アンピシリンに戻す。次に、得られた懸濁液を三角フラスコ(Erlen)に入れ
、振盪装置内で37℃で3時間インキュベートする。次にマキシプレップ(Ma
xiprep)の技術によってこれらの菌株からDNAを抽出する。DNAの濃
度を260nmで測定する。
(12)プラスミドによる酵母の形質転換:
100mlの液体培地で予め培養した酵母を、3,000rpmで3分間遠心
後に採取し、1mlの無菌水に懸濁させる。3,000rpmで3分間遠心した
後、細胞沈渣を再度1mlの無菌水に懸濁させ、次いで再度遠心する。培養培地
を痕跡量まで除去するためにこの処理をもう一度繰返す。次に、酵母を1mlの
形質転換溶液I(0.1MのLiAc、10mMのトリス−HCl,pH7.
5、1mMのEDTA)に戻し、3,000rpmで3分間遠心する。細胞沈渣
を再度1mlの形質転換溶液Iに戻す。50μlのこの酵母懸濁液を50μgの
サケ精子DNA及び1〜5μgのプラスミドDNAに接触させる。次に、300
μlの形質転換溶液II(40%のPEG4000中の0.1MのLiAc、1
0mMのトリス−HCl,pH7.5、1mMのEDTA)を添加し、次いで全
体を28℃で30分間インキュベートする。次に、形質転換混合物に40℃の湯
煎で熱ショックを15分間作用させ、次いで全体を15,000rpmで1分間
遠心して細胞沈渣を回収する。この沈渣を200μlの水に戻し、次いで形質転
換プラスミドに含まれるマーカーアミノ酸を含まないゲル化最小培地で平板培養
する。次に、酵母を28℃で72時間培養する。脳cDNAバンクによって酵母を形質転換させるための処理手順
:
使用した酵母は、APPのC末端部分をコードするCAPPがGAL4のDN
A結合ドメインに融合したプラスミドpGAL4DB−CAPPを含む。この酵
母を250mlのYNB+His+Lys+Ad+Leu最小培地中、撹拌下、
28℃で、
107細胞/mlの密度まで培養する。細胞を3,000rpmで10分間遠心
することによって回収し、250mlの水に戻す。再度遠心した後、細胞沈渣を
100mlの水に戻し、遠心を繰返す。次に、沈渣を10mlの形質転換溶液I
に戻し、撹拌下に28℃で1時間インキュベートする。遠心後、細胞を2.5m
lの形質転換溶液I、100μlの脳cDNAバンク、20mlの形質転換溶液
IIに混合し、次いで撹拌下に28℃で1時間インキュベートする。この形質転
換混合物に42℃で20分間の熱ショックを与える。速心(3,000rpmで
5分間)を3回連続して繰返す。一回の遠心毎に、沈渣を10mlの無菌水に戻
す。3回目の沈渣を2.5mlのPBSに戻す。このようにして細胞毒性PEG
を除去した。得られた懸濁液の2.4mlをアミノ酸His、Lys、Adを含
有する250mlの最小培地に播種するために使用し、28℃の振盪装置で一夜
培養する。残りの懸濁液の100μlを形質転換効率の測定に使用する。測定の
ために、懸濁液を10-2、10-3及び10-4に希釈し、アミノ酸His、Lys
、Adを含有する最小培地で平板培養した。28℃で2日間培養した後に得られ
たコロニーをカウントした。“コ
ロニー数×希釈度”の式を用いて形質転換率を算出する。一夜培養物を遠心し(
3,000rpmで5分間)、無菌水で連続2回洗浄する。次に、沈渣を2.5
m1の水に戻す。2.4mlを無菌水で10mlにし、YNB+Lys+Ad培
地を入れた435cm2容の10個の容器に播種し、3日間インキュベートする
。残りの100μlを形質転換率の測定に使用した場合と同様に処理し、一夜培
養によるコロニー数の増幅率を測定する。酵母からDNA(ゲノム及びプラスミド)を抽出するための処理手順
:
3gの450μm径のガラスビーズ及び200μlのフェノール/クロロホル
ムの存在下、200μ1のTELT溶液(2%のトリトンX100、1%のSD
S、100mMのNaCl、10mMのトリス,pH8、1mMのEDTA)に
、平均的な長さの酵母クローンを導入する。この混合物を渦流によって15分間
撹拌し、次いで14,000rpmで2分間遠心する。上清に含まれているタン
パク質フレーク及びDNAを除去しないで上清を収集し、2.5倍量の無水エタ
ノールで沈殿させる。14,000rpmで2分間遠心した後、DNA沈渣を乾
燥し、
20μlのTE RNアーゼに戻す。このDNA溶液はゲノムDNAとプラスミ
ドDNAとの混合物であり、細菌を形質転換させるために直接使用できる。プラ
スミドDNAだけが細菌中で複製され、ミニプレップの技術で分析され得る。
(13)βガラクトシダーゼの活性試験:
単離した酵母クローンを入れるシャーレにニトロセルロースシートを予め敷込
む。クローンの位置が吸着現象によって正確に転写される。次に、ニトロセルロ
ースシートを液体窒素に30秒間浸漬させて酵母を破裂させ、βガラクトシダー
ゼ活性を遊離させる。解凍後、コロニー担持面を上にしたニトロセルロースシー
トを、1.5mlのPBS溶液(60mMのNa2HPO4、40mMのNaH2
PO4、10mMのKCl、1mMのMgSO4,pH7)とN,N−ジチメル
ホルムアミド中に50mg/mlの濃度で含まれる10〜30μlのX−Gal
(5−ブロモ−4−クロロ−3−インドイル−β−D−ガラクトシド)とを予め
含浸させたワットマンペーパーを敷いた別のシャーレに配置する。次いでシャー
レを37℃のインキュベータに入れ、乾燥しないように蓋を閉じる。青色が呈示
されるまでの所要時間には極めてばらつきがあり、数分間から数時間の範囲にわ
たる。この試験は必ず、相互作用が認識されており迅速に青色を呈示する陽性対
照の存在下で行う必要がある。実施例1:アミロイド前駆ペプチドのC末端部分(CAPP)とGAL4のDN A結合ドメインとの融合タンパク質を発現させ得るベクターの構築
ダブルハイブリッド系を用いるバンクをスクリーニングするためには、APP
のC末端領域(CAPP)をトランス作用転写活性タンパク質GAL4のDNA
結合ドメインに融合させる必要がある。この融合タンパク質を発現させるために
、ベクターpGBT10(マトリックス及び方法参照)を使用し、このベクター
に、配列1で示した配列中に存在するCAPPをコードする配列を、GAL4(
GAL4DB)のDNA結合ドメインに対応する配列と同じ読取り枠で導入した
。
APPの最終46個のアミノ酸に対応する138bpのDNAフラグメント配
列は、末端にEcoRI部位及びSalI部位を導入したオリゴヌクレオチド(
配列3及び配列4)のPCRによって得られた。GAL4DBに対応する配列の
下流でプラスミドpGBT10の多重クローニング部位のEcoRI部位とSa
lI部位との間にPCRフラグメントを導入し、ベクターpGAL4DB−CA
PP(図1)を形成した。
所望の構築物が得られたか否かをDNAの配列決定によって確認した。この配
列決定によって、得られたフラグメントがPCR反応中に生じた突然変異を有し
ていないこと、及び、このフラグメントがGAL4DBに対応するフラグメント
と同じ読取り枠に融合したことが確認された。実施例2
:脳融合バンクのスクリーニング
融合バンクのスクリーニングによって、本発明の有益なタンパク質と相互作用
し得るGAL4のトランス作用転写活性ドメインに融合したタンパク質を産生す
るクローンを同定し得る。この相互作用は、YCM菌株中のリポーター遺伝子H
is3及びLacZの発現を誘発できるようにトランス作用因子を再構成する。
スクリーニングを行うために、ヒト脳由来のcDNAから得られた融合バンク
を選択した。このバンクは細菌の形態で提供されたので、バンクから先ずプラス
ミドDNAを精製した。
(2.1)融合バンクのプラスミドDNAの調製:
脳cDNAバンクのプラスミドDNAをClontech(登録商標)プロト
コル(材料及び方法の項11参照)によって抽出した。この調製中には、バンク
としての適格性を維持す
ること、即ち、バンクを構成する独立プラスミドの数を1.2×106に維持す
ることが重要であった。調製中のバンクのプラスミドの損失を配慮して、バンク
としての適格性を維持するコロニー数のほぼ2倍、即ち4×106コロニーに対
応する数の単離細菌コロニーから得られたプラスミドDNAのロットを構築した
。
(2.2)脳バンクによる形質転換及びβガラクトシダーゼ活性試験による選択
スクリーニングのときには、融合バンクの各独立プラスミドが少なくとも1つ
の酵母体内でプラスミドGAL4DB−CAPPと確実に共存していなければな
らない。このような共存を確実にするためには、酵母を十分な効率で形質転換す
る必要がある。従って、酵母の形質転換のために、DNAIμgあたり105の
形質転換細胞という効率が得られるような形質転換プロトコルを選択した。更に
、異なる2つのプラスミドによる酵母の同時形質転換は形質転換効率を低下させ
るので、使用する酵母をプラスミドpGAL4DB−CAPPによって予め形質
転換しておくのが好ましい。表現型His−、Lys−、Leu−のYCM−C
APP菌株を、融合バンクの1
00μgのプラスミドDNAによって形質転換した。この量のDNAから算定す
ると(材料及び方法参照)、107個の形質転換細胞が得られた。これはバンクを
構成する独立プラスミドの数よりもやや多い数である。この結果から、バンクの
プラスミドのほぼ全部が酵母の形質転換に使用されたと考えることができる。機
能性のGAL4トランス作用因子を再構成し得る形質転換細胞をYNB+Lys
+Ad培地で選択した。
この選択によって、表現型His+をもつ1,000個のクローンが得られた
。得られたクローンの数が有効であることを別のリポーター遺伝子LacZの発
現によって確認するためにこれらの形質転換体のβガラクトシダーゼ活性を試験
した。得られた1,000個のクローンのうちの68個のクローンが、タンパク
質−タンパク質相互作用に対応し得るダブル表現型His+、βGal+を有し
ていた。実施例3:バンクのプラスミドの単離
CAPPと相互作用し得るタンパク質を同定するために、ダブルハイブリッド
スクリーニングによって選択された酵母に含まれている融合バンクのプラスミド
を抽出した。このプラスミ
ドを大量に得るためには、単離に先立って大腸菌を陽性酵母菌株のDNA抽出物
によって形質転換しておくことが必要であった。この抽出物に含まれていたバン
クのプラスミドは酵母/大腸菌シャトルプラスミドなので、細菌中で容易に複製
され得る。同じく酵母中に存在するプラスミドGAL4DB−CAPPが単離さ
れないように、該プラスミドを含まない菌株を使用した。
DNA抽出物による酵母の形質転換後に得られた細菌コロニーのプラスミドD
NAを、制限酵素消化及びDNAフラグメントノのアガロースゲル分離によって
分析した。分析した5つのクローン(7D、3E、9A、3H、3G)(図2)
で3つの異なる制限プロフィルが得られた。これらの結果は、クローン7Dの異
なる2つの酵母クローンとクローン3H及び3G中には少なくとも2つの等しい
プラスミドが存在することを示した。クローン3EのDNAは表現型His+及
びβGAL+の菌株から得られる。実施例4
:同定されたプラスミドのインサートの配列の決定
脳cDNAバンクの挿入部位の近傍のEcoRI部位から52bp離れたGA
L4TA領域に相補的なオリゴヌクレオチド(配列5)から配列決定を行った。
3つの配列を所与のバンクGENBank及びEMBL(European
Molecular Biology Lab)に含まれている配列と比較する
と、菌株9A及び3Hに由来のプラスミド中に存在していた配列2で示すcDN
Aの配列がFE65タンパク質をコードするマウス遺伝子に核酸レベルで87%
の相同を有しており、菌株7Dに由来のプラスミドの配列が同じ遺伝子に60%
の相同を有していることが判明した(図3参照)。菌株9A及び3Hに由来のプラ
スミドの配列を分析すると、これらのプラスミドが同一mRNAに対応する2つ
のオーバーラップ領域を含むことが判明する。
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フロントページの続き
(51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考)
A61P 25/00 A61P 25/28
25/28 43/00 111
43/00 111 C07K 14/47
C07K 14/47 16/18
16/18 C12Q 1/68 A
C12Q 1/68 A61K 37/02