JP2007006800A - 正常ヒト肝臓細胞特異的遺伝子群 - Google Patents

正常ヒト肝臓細胞特異的遺伝子群 Download PDF

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Morihito Kadota
守人 門田
Yoshito Sakon
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Hiroaki Onda
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Abstract

【課題】 肝臓疾患の診断・予防・治療などに有用な手段、並びに肝臓疾患の診断・治療などの精度を向上させる手段を提供すること。および薬効・毒性評価DNAチップとして用いること。
【解決手段】 本発明は、正常肝臓細胞に特異的に発現している遺伝子群から選ばれる複数の遺伝子の各ヌクレオチド配列若しくはその部分配列又はそれらの相補配列をそれぞれ有するヌクレオチド配列を含む、核酸分子の群;正常肝臓細胞に特異的に発現している遺伝子群から選ばれる複数の遺伝子の各翻訳産物にそれぞれ特異的に結合する抗体を含む、抗体の群;並びに、肝臓中に存在する細胞に特異的に発現している遺伝子群を解析することを特徴とする、薬物による肝毒性、肝臓疾患、肝機能又は肝臓疾患に対する薬物の奏効性の検査方法、肝臓疾患の予防又は治療薬の同定方法、及び検査基準用データの作成方法などを提供する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、正常肝臓細胞に特異的に発現している遺伝子群から選ばれる1又は2以上の遺伝子の各ヌクレオチド配列若しくはその部分配列又はそれらの相補配列を有する核酸分子又はその群;当該遺伝子群から選ばれる1又は2以上の遺伝子の各翻訳産物に特異的に結合する抗体又はその群;薬物による肝毒性、肝臓疾患、肝機能又は肝臓疾患に対する薬物の奏効性の検査方法及び試薬、検査基準用データの作成方法、肝臓疾患の予防又は治療剤の同定方法及び試薬、肝臓疾患の予防又は治療剤等に関する。
発現レベル情報が疾患の診断にあるいは治療に有益な情報を提供する遺伝子(マーカー遺伝子)は、これまで種々の疾患に対し同定されてきた。さらには、複数のマーカー遺伝子を組み合わせて遺伝子群として情報を処理することにより、診断および/または治療における効果の精度を飛躍的に高められることが、明らかになっている。例えば、Golubらは、約6000種に及ぶ遺伝子について、リンパ球の内での発現状態をDNAアレイを用いて測定し、ALLとAMLの判別に必要な約200種の遺伝子群を同定した(非特許文献1参照)。また、L.J.van't Veerらは約30000種に及ぶ遺伝子について、乳癌組織の内での発現状態をDNAアレイを用いて測定し、予後の転移の有無の判別に必要な約70種の遺伝子群を同定し、次いで、これらの遺伝子群の発現状態を総合的に処理することにより、単一の遺伝子の発現状態で予測された診断結果に対し、その精度を飛躍的に高めることに成功している(非特許文献2参照)。しかし、これらの遺伝子群を同定するためには、莫大な数の遺伝子の発現状態を解析せねばならず、またその解析手段も複雑なため、多大な労力を必要としていた。
これまでに特異的発現をしている遺伝子群のクローニング法として、サブトラクション法が知られていたが、従来のサブトラクション法では、実際に特異的に発現している遺伝子群を網羅的に捕捉することは不可能に近く、発現量の差異が大きい幾つかの遺伝子のみがクローニングされる場合がほとんどであった。一方、本発明者らが開発した段階的サブトラクション法は、サブトラクション後のライブラリーから、更にサブトラクションを繰り返すことにより、2つのライブラリー間で特異的に発現している遺伝子をほぼ網羅的に捕捉することが可能である(非特許文献3、特許文献1参照)。
しかしながら、正常肝臓細胞に特異的に発現している遺伝子群の網羅的な同定はいまだになされていない。
特開2003-061666号公報 Science, (米国), 第286巻, p.531-537, 1999年 Nature, (英国), 第415巻, p.530-536, 2002年 EMBO Reports, (英国), 第3巻, p.367-372, 2002年
本発明の目的は、肝臓の異常に起因する種々の疾患の診断・治療などに有用な手段を提供することである。また、本発明の別の目的は、これら疾患の診断・治療などの精度を向上させる手段を提供することである。
本発明者等は、鋭意検討の結果、段階的サブトラクション法およびDNAチップを用い、肝臓において特異的に発現している遺伝子群を網羅的に捕捉・同定することに成功し、もって上記課題を解決することに成功した。
即ち、本発明は、以下の通りである:
(1)正常肝臓細胞に特異的に発現している遺伝子群LIV−001〜LIV−104から選ばれる1又は2以上の遺伝子の各ヌクレオチド配列若しくはその部分配列又はそれらの相補配列を有する核酸分子又はその群が固定化された、核酸アレイ、
(2)正常肝臓細胞に特異的に発現している遺伝子群LIV−001〜LIV−104から選ばれる1又は2以上の遺伝子の各翻訳産物に特異的に結合する抗体又はその群が固定化された、抗体アレイ、
(3)対象から採取された肝臓細胞を含む生体試料において、正常肝臓細胞に特異的に発現している遺伝子群LIV−001〜LIV−104から選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現量を測定することを含む、薬物による肝毒性、肝臓疾患、肝機能又は肝臓疾患に対する薬物の奏効性の検査方法、
(4)対象から採取された生体試料において、正常肝臓細胞に特異的に発現している遺伝子群LIV−001〜LIV−104から選ばれる1又は2以上の遺伝子の変異及び/又は多型を検出することを含む、薬物による肝毒性、肝臓疾患、肝機能又は肝臓疾患に対する薬物の奏効性の検査方法、
(5)正常肝臓細胞に特異的に発現している遺伝子群LIV−001〜LIV−104から選ばれる1又は2以上の遺伝子の測定用物質を含有する、薬物による肝毒性、肝臓疾患、肝機能又は肝臓疾患に対する薬物の奏効性の検査用試薬、
(6)正常肝臓細胞に特異的に発現している遺伝子群LIV−001〜LIV−104から選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現量、並びに/又は当該遺伝子の変異及び/若しくは多型について、薬物による肝毒性、肝臓疾患、肝機能又は肝臓疾患に対する薬物の奏効性との相関を見出し、当該相関を薬物による肝毒性、肝臓疾患、肝機能又は肝臓疾患に対する薬物の奏効性の検査基準用データとして取得する、薬物による肝毒性、肝臓疾患、肝機能又は肝臓疾患に対する薬物の奏効性の検査基準用データの作成方法、
(7)被験物質が、正常肝臓細胞に特異的に発現している遺伝子群LIV−001〜LIV−104から選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現又は活性を調節するか否かを評価することを含む、肝毒性を有し得る物質或いは肝臓疾患を予防又は治療し得る物質の同定方法、
(8)細胞に被験物質を接触させ、遺伝子群LIV−001〜LIV−104から選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現量を測定し、測定された発現量に基づき、被験物質が肝毒性を有し得るか否か或いは肝臓疾患を予防又は治療し得るか否かを評価することを含む、上記(7)記載の方法、
(9)非ヒト哺乳動物に被験物質を投与し、当該非ヒト哺乳動物由来の生体試料における、当該遺伝子群LIV−001〜LIV−104から選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現量を測定し、測定された発現量に基づき、被験物質が肝毒性を有し得るか否か或いは肝臓疾患を予防又は治療し得るか否かを評価することを含む、上記(7)記載の方法、
(10)当該遺伝子群LIV−001〜LIV−104から選ばれるいずれかの遺伝子の翻訳産物と被験物質を接触させ、当該翻訳産物の活性を測定し、測定された活性に基づき、被験物質が肝毒性を有し得るか否か或いは肝臓疾患を予防又は治療し得るか否かを評価することを含む、上記(7)記載の方法、
(11)正常肝臓細胞に特異的に発現している遺伝子群LIV−001〜LIV−104から選ばれるいずれかの遺伝子に対する阻害性核酸分子、
(12)前記核酸分子が、アンチセンス核酸、デコイ核酸、リボザイム及びRNAi誘導性核酸からなる群から選ばれる、上記(11)記載の阻害性核酸分子、
(13)正常肝臓細胞に特異的に発現している遺伝子群LIV−001〜LIV−104から選ばれるいずれかの遺伝子の発現又は活性を調節する物質を有効成分として含有する、肝臓疾患の予防又は治療剤、
(14)正常肝臓細胞に特異的に発現している遺伝子群LIV−001〜LIV−104から選ばれる1又は2以上の遺伝子が改変された非ヒト哺乳動物、
(15)前記改変は当該遺伝子の発現を増強または減弱させる改変である、上記(14)記載の非ヒト哺乳動物、
(16)肝臓疾患のモデル動物、薬物の奏効性の評価用動物又は薬物による肝毒性の評価用動物である、上記(14)記載の非ヒト哺乳動物。
本発明により、肝臓細胞において示差的に発現しているという特徴を有する、医療分野等の産業や学術的に非常に意義のある遺伝子群が提供される。また、この遺伝子群は段階的サブトラクション法およびDNAチップによって同定されたものであるゆえ、示差的に発現されている遺伝子の全てを実質的に網羅しているという特徴をも有する。従って、本発明は、肝臓の異常に起因する種々の疾患の診断・治療、当該疾患のマーカーとなる遺伝子の探索、当該疾患の治療薬の開発、当該疾患の検査基準用データの作成などに有用である。特に、肝臓細胞において示差的に発現している遺伝子群が初めて網羅的に同定されたことから、当該遺伝子群を利用することで、当該疾患の診断・治療の精度を飛躍的に向上させることができるため、本発明は極めて有用である。
以下、本発明について詳述する。なお、初めに、本明細書中で用いられる用語の意味を説明し、次いで、本発明の各局面について述べる。
肝臓疾患としては、例えば、急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変、脂肪肝(例えば、アルコール性脂肪肝)、ウイルス肝炎(例えば、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、E型肝炎)、肝癌、肝障害、肝不全、黄疸、胆汁うっ帯、肝腫大、門脈圧亢進症、腹水、肝性脳症等が挙げられる。
哺乳動物としては、例えば、霊長類、げっ歯類、実験用動物、家畜、ペット等が挙げられ特に限定されるものではないが、詳細には、例えば、ヒト、サル、ラット、マウス、ウサギ、ウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、イヌ、ネコなどが挙げられる。好ましくは、哺乳動物はヒトである。
対象、例えば哺乳動物個体に由来する生体試料としては、例えば、組織、細胞、液体成分等が挙げられ、特に限定されない。
組織としては、遺伝子を発現し得る組織であれば特に限定されず、例えば、脳、脊髄、下垂体、胃、膵臓、腎臓、肝臓、生殖腺、甲状腺、胆のう、骨髄、副腎、皮膚、筋肉、肺、消化管(例、大腸、小腸)、血管、心臓、胸腺、脾臓、顎下腺、末梢血液、前立腺、睾丸、卵巣、胎盤、子宮、骨、関節、骨格筋、リンパ節などが挙げられる。組織は、好ましくは、肝臓である。
細胞としては、遺伝子を発現し得る細胞であれば特に限定されず、脾細胞、神経細胞、グリア細胞、膵臓β細胞、骨髄細胞、メサンギウム細胞、ランゲルハンス細胞、表皮細胞、上皮細胞、杯細胞、内皮細胞、平滑筋細胞、線維芽細胞、線維細胞、筋細胞、脂肪細胞、血液細胞、滑膜細胞、軟骨細胞、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、乳腺細胞、肝臓細胞もしくは間質細胞、またはこれら細胞の前駆細胞、幹細胞もしくは癌細胞などが挙げられる。好ましくは、細胞は肝臓細胞である。
哺乳動物の肝臓細胞とは、哺乳動物の肝臓中に存在する細胞である限り特に限定されず、肝臓中に通常存在する細胞、特定の条件下でのみ肝臓中に存在する他の組織由来の細胞、並びに外来の細菌、真菌、ウイルス、リケッチアなどを包括的に意味する。
肝臓中に通常存在する細胞とは、健康・疾患の状態にかかわらず、肝臓中に主として見出される細胞をいい、例えば、肝実質細胞、クッパー細胞、類洞内皮細胞等が挙げられる。
特定の条件下でのみ肝臓中に存在する他の組織由来の細胞とは、例えば肝臓疾患を罹患した状態でのみ肝臓中に見出される細胞をいう。
本発明においては、上述した肝臓細胞のなかでも、肝臓中に通常存在する細胞が好ましい。
液体成分としては、遺伝子の解析を可能とする液体成分であれば特に限定されず、例えば、血液、血清、血漿、精液、唾液、尿、汗等が挙げられる。
細胞に「特異的に発現している遺伝子群」とは、特定の細胞で発現しており、比較対照の細胞で発現していない遺伝子の集合、又は特定の細胞と比較対照となる細胞との間で発現量に差異が認められる遺伝子の集合をいう。従って、哺乳動物の肝臓中に存在する細胞に特異的に発現している遺伝子群としては、i)肝臓以外に存在する細胞には発現していないが、肝臓中に存在する細胞には発現している遺伝子の集合、ii)肝臓以外に存在する細胞と比較して、肝臓中に存在する細胞で高発現している遺伝子の集合、iii)肝臓以外に存在する細胞と比較して、肝臓中に存在する細胞で低発現している遺伝子の集合が挙げられる。本発明では、哺乳動物の肝臓中に存在する細胞に特異的に発現している遺伝子群としては、上述のi)、ii)が好ましい。発現の有無及び発現量は、当該分野で周知の方法、例えば後述の方法Iにおいて用いられる方法により、遺伝子産物の発現量を測定することで決定できる。
特異的な発現における発現量の差異は、発現量に有意差がある限り特に限定されないが、例えば、約2倍以上、好ましくは約3倍以上、より好ましくは約5倍以上、最も好ましくは約10倍以上の発現量の差異をいう。発現量に有意差があるか否かは、当該分野で周知の方法により遺伝子産物の発現量を測定し、次いでこれら発現量の差異を統計学的方法により解析することで決定できる。
比較対照としては、肝臓以外に存在する細胞であれば特に限定されないが、好ましくは健常である対象の血液細胞、線維芽細胞、上皮細胞である。
正常肝臓細胞に特異的に発現している遺伝子群としては、当該分野で周知の方法により同定したものを用いることができるが、例えば、2種の細胞間で示差的に発現している実質的に全ての遺伝子を網羅的に同定できる段階的サブトラクション法により、あるいはDNAチップを用いる方法により同定したものがあげられる。
段階的サブトラクション法は、異なる生物現象を示す2つの対象においてサブトラクション(差分化)を段階的に繰り返すことで、当該対象に示差的に発現している実質的に全ての遺伝子のcDNAを網羅的にクローニングする、というものである。以下、段階的サブトラクション法について、差分化対象として正常肝臓細胞を、比較対照として血液細胞、線維芽細胞、上皮細胞を用いた場合を例に挙げて詳述する。
段階的サブトラクション法では、サンプルは、下記の通りに回収できる。肝臓細胞は、インフォームド・コンセントを取って採取した肝臓癌患者(10人)の正常部分を用意し、mRNA を採取する。また、血液細胞、線維芽細胞、上皮細胞についても用意する。例えば、血液細胞は、健常人から採血し、血液をフィコール溶液の上に重層し、低速にて遠心分離を行い、赤血球より上部、血漿の下部において白い帯状に血液細胞(例えばリンパ球)を得ることができる。これを注射器で抜き取り、遠心分離によりペレットとした後、PBS等の等張な緩衝液で洗浄し、さらに遠心分離を繰り返す。これを次工程で細胞サンプルとして用いる。なお、発現量の個体差を考慮して、10個体分程度のサンプルを混合してもよい。なお、次工程以降の作業の質を維持するために、それぞれ10〜10程度の細胞数を調製することが望ましい。
次いで、異なる2つの細胞間で示差的に発現している遺伝子を同定するために、各細胞からmRNAを単離する。mRNAの単離に際しては、当該分野で周知のRNA単離方法を用いることができる(例えば、Okayama, H. ら、Methods in Enzymol., 154, 3-28, 1987.)。また、多数の細胞サンプルを扱う場合には、例えば、米国特許第4,843,155号に記載の一段階RNA単離方法などを用いることで、細胞サンプルを容易に処理できる。
次に、差分化対象となる正常肝臓細胞のmRNAからcDNA(cDNAライブラリー)を合成する。得られたcDNAを、f1ヘルパーファージを用いて単鎖化する。一方で、比較対照の血液細胞、線維芽細胞、上皮細胞から調製したmRNAをビオチン化する。これら2者をハイブリダイズさせ、同一あるいは類似のヌクレオチド配列を持つものについて、DNA/RNAハイブリッドを形成させる。次いで、アビジンを固定化したビーズをこれに混合し、ビオチンとアビジンを結合させる。遠心分離により、アビジンが固定化されたビーズを取り除くと、同時にこれに結合したDNA/RNAハイブリッドが除去される。これにより、系中には、DNA/RNAハイブリッドを形成しなかった単鎖cDNAクローン(即ち、正常肝臓細胞に存在し、血液細胞、線維芽細胞、上皮細胞には存在しないmRNAに相当するcDNA)が残っていることになる。このcDNAクローンを2本鎖化し、大腸菌に導入して、1次差分化cDNAライブラリーを構築する。
次に、1次差分化cDNAライブラリーから、数百個、好ましくは300から600個のcDNAクローンを無作為に抽出し、そのヌクレオチド配列を決定する。抽出されたcDNAクローンの中には、正常肝臓細胞と血液細胞、線維芽細胞、上皮細胞との間で発現量の差が大きいクローンが重複して存在している。ヌクレオチド配列の比較により重複しているcDNAクローンを除いた後、残りのcDNAクローンについて、正常肝臓細胞由来のRNA、血液細胞、線維芽細胞、上皮細胞のRNAに対してノザンブロットを行い、正常肝臓細胞に示差的に発現しているcDNAクローンを特定し、1次差分化cDNAライブラリーを得る。
次いで、先に無作為に抽出した数百個のcDNAクローンについて、f1ヘルパーファージを用いて単鎖化し、さらにビオチン化する。また、上記で得られた1次差分化cDNAライブラリーについてもf1ヘルパーファージを用いて単鎖化しておく。これら2者をハイブリダイズさせ、同一あるいは類似のヌクレオチド配列を持つものについて、2本鎖DNAを形成させる。ついで、アビジンを固定化したビーズをこれに混合し、ビオチンとアビジンを結合させる。遠心分離により、アビジンが固定化されたビーズを取り除くと、ビーズに結合した2本鎖DNAが同時に除去される。これにより、系中には、2本鎖DNAを形成しなかった単鎖cDNAクローン(即ち、1次差分化cDNAライブラリーに存在し、先に無作為に抽出した数百個のcDNAクローンに含まれなかった単鎖cDNAクローン)が残っていることになる。このcDNAクローンを2本鎖化し、大腸菌に導入して、2次差分化cDNAライブラリーを構築する。
この2次差分化cDNAライブラリーについて、数百個のcDNAクローンを無作為に抽出し、1次差分化cDNAライブラリーの場合と同様に正常肝臓細胞に示差的に発現しているクローンを特定する。この場合、新たに同定されるcDNAクローン数は、1次差分化cDNAライブラリーを解析して得られたcDNAクローン数と比して減少しているはずである。
2次差分化cDNAライブラリーについて、1次差分化cDNAライブラリーからの場合と同様に、無作為に抽出した数百個のcDNAクローンをサブトラクションすることにより、3次差分化cDNAライブラリーを構築する。
さらに、数百個のcDNAクローンを無作為に抽出し、正常肝臓細胞に示差的に発現しているクローンを上述と同様にして特定する。新たに同定されるクローンが数個になるまで、これらの操作を繰り返せば、正常肝臓細胞に示差的に発現しているクローンを網羅的に同定できる。
なお、最初の0次ライブラリーを構築する際に用いるベクターは特に限定されないが、段階的サブトラクション法においては1本鎖化が必要なため、f1ファージ由来の1本鎖化シグナルを有していることが好ましい。また、cDNAクローンからタンパク質を発現させるため、当該ベクターは、選ばれる宿主細胞に適切な発現調節配列を有することが好ましい。このような発現調節配列としては、宿主細胞として大腸菌を用いる場合にはlac、taqなどのプロモーターが挙げられ、宿主細胞として哺乳動物由来の細胞を用いる場合にはサイトメガロウイルスhCMV前初期遺伝子、SV40又はアデノウイルスの初期又は後期プロモーターが挙げられる。なお、段階的サブトラクション法の詳細については、例えば、特許文献1、非特許文献3などの文献や下記実験例を参照のこと。
正常肝臓細胞に特異的に発現している遺伝子群としては、例えば、対象として正常肝臓細胞を、比較対照として血液細胞、線維芽細胞、上皮細胞を、遺伝子群の同定方法として上述の段階的サブトラクション法およびDNAチップを用いる方法により単離・同定された下記の表1に示される遺伝子群LIV−001〜LIV−104を用いることができる。
以下、遺伝子群LIV−001〜LIV−104をLIV遺伝子群と、LIV遺伝子群から選ばれるいずれか不特定の遺伝子をLIV遺伝子と呼ぶ場合がある。
遺伝子群LIV−001〜LIV−104の各遺伝子は、それぞれ表1に示されるGenBank登録番号、或いは当該GenBank登録番号で特定される各ヌクレオチド配列に相当する遺伝子をいう。
また、本発明では、LIV遺伝子群の各遺伝子において、上述のGenBank登録番号で特定されるヌクレオチド配列と実質的に同一のヌクレオチド配列に相当する遺伝子も、LIV遺伝子群の各遺伝子に含まれるとみなされる。実質的に同一とは、例えば、相同性計算アルゴリズムNCBI BLAST(National Center for Biotechnology Information Basic Local Alignment Search Tool)を用い、以下の条件(期待値=10;ギャップを許す;フィルタリング=ON;マッチスコア=1;ミスマッチスコア=-3)にて検索をした場合、上述のGenBank登録番号で特定されるヌクレオチド配列と約85%以上、好ましくは約90%以上、より好ましくは約95%以上、さらにより好ましくは約98%以上、最も好ましくは約99%以上の同一性を意味する。なお、同一性の決定の際、長さの異なる2つのヌクレオチド配列を比較すると、その2つのヌクレオチド配列間の同一性が低く評価されるが、本発明ではこのような比較は意図されない。本発明が意図するヌクレオチド配列の比較は、比較されるべき2つのヌクレオチド配列の内、より短いヌクレオチド配列に長さを合わせて比較するものである。
また、LIV遺伝子群の各遺伝子において、上述のGenBank登録番号で特定されるヌクレオチド配列をGenBank等の遺伝子バンクに照合することで、ヒト以外の哺乳動物のオルソログ遺伝子を得ることが可能であり、当該オルソログ遺伝子も、LIV遺伝子群の各遺伝子に含まれる。
LIV遺伝子群の各遺伝子において、上述のGenBank登録番号で特定されるヌクレオチド配列等に基づいて、当業者は各遺伝子の全長ヌクレオチド配列(cDNA配列、染色体DNA配列等)を明らかにできる。全長ヌクレオチド配列は、たとえばin silicoクローニングによって取得できる。例えば、公共データベースに集積されている膨大なEST情報を対象として、上述のGenBank登録番号で特定されるヌクレオチド配列(クエリー配列)を照合する。照合の結果に基づいて、クエリー配列と一定の長さに渡ってヌクレオチド配列が一致する他のEST情報を取得する。得られたほかのEST情報を新たなクエリー配列として、更に他のEST情報の取得を繰り返す。この操作の繰り返しによって、部分的なヌクレオチド配列を共有する複数のESTのセットを得ることができる。ESTのセットはクラスターと呼ばれる。クラスターを構成するESTのヌクレオチド配列を重ね合わせて一つのヌクレオチド配列に統合することにより、目的とする遺伝子の全長ヌクレオチド配列を明らかにできる。
更に当業者は、in silicoクローニングによって決定されたヌクレオチド配列に基づいて、PCR用のプライマーをデザインできる。このプライマーを使ったRT−PCRによって、設計どおりの長さを有する遺伝子断片が増幅されることを確認すれば、決定されたヌクレオチド配列からなる遺伝子が実際に存在することを裏付けることができる。
あるいは、ノザンブロッティングによって、in silicoクローニングの結果を評価することもできる。決定されたヌクレオチド配列情報に基づいてデザインされたプローブを使ってノザンブロッティングを行う。その結果、上記ヌクレオチド配列情報と一致するバンドが検出できれば、決定されたヌクレオチド配列を有する遺伝子の存在を確認できる。
in silicoクローニングの他、実験的に目的とする遺伝子の全長を単離することもできる。部分ヌクレオチド配列に基づいて、当該遺伝子のヌクレオチド配列が未知の部分を取得し、全長ヌクレオチド配列を決定する方法は公知である。たとえば、上述のGenBank登録番号で特定されるヌクレオチド配列を有する核酸をプローブとしてcDNAライブラリーをスクリーニングすることにより、より長いヌクレオチド配列を明らかにできる場合がある。cDNAライブラリーとして、全長cDNAを多く含むライブラリーを用いれば、容易に全長cDNAクローンを単離できる。たとえば、オリゴキャップ法の原理に基づいて合成されたcDNAライブラリーは、全長cDNAを多く含むとされている。
更に、部分的なヌクレオチド配列情報に基づいて、遺伝子のヌクレオチド配列が未知の領域を合成するための手法が公知である。たとえばRACE法は、未知ヌクレオチド配列を含む遺伝子の単離のための代表的な手法である。RACE法においては、cDNAの末端に人為的にオリゴヌクレオチドリンカーが連結される。このオリゴヌクレオチドリンカーのヌクレオチド配列は予めわかっている。したがって、上述のGenBank登録番号で特定されるヌクレオチド配列等と、オリゴヌクレオチドリンカーのヌクレオチド配列情報に基づいて、PCR用のプライマーをデザインできる。こうしてデザインされたプライマーを使ったPCRによって、ヌクレオチド配列が未知の領域が特異的に合成され、各遺伝子の全長cDNAを得ることができる。
遺伝子産物とは、転写産物及び翻訳産物を包括的に意味するものである。転写産物とは、遺伝子から、転写の過程を経て生じるRNAをいうが、好ましくはmRNA(未成熟mRNA、成熟mRNA等)をいい、より好ましくは、未成熟mRNAより転写・プロセシングの過程を経て生じる成熟mRNAをいう。翻訳産物とは、遺伝子から転写・翻訳の過程を経て生じるタンパク質(ポリペプチド)をいう。翻訳産物は、未修飾であっても翻訳後修飾されていてもよい。翻訳後修飾としては、例えば、リン酸、糖または糖鎖、リン脂質、脂質、ヌクレオチド等による修飾などが挙げられる。
変異とは、特定の遺伝子又は当該遺伝子を含む染色体DNAの特定のヌクレオチドが一定の頻度で修飾されており(例えば、置換、欠失、付加、反復、逆位、転座など)、且つ当該修飾が、体細胞の染色体DNAの修飾等の後発的な原因によるものをいう。
多型とは、ある集団において、特定の遺伝子又は当該遺伝子を含む染色体DNAの特定のヌクレオチドが一定の頻度で修飾されており(例えば、置換、欠失、付加、反復、逆位、転座など)、且つ当該修飾が、生殖系列細胞の染色体DNAの修飾等の先天的な原因(例えば、人種差、家系等の遺伝的要素)によるものをいう。
以下、本発明の各局面について詳述する。
1.核酸分子又はその群
本発明は、LIV遺伝子群から選ばれる1又は2以上の遺伝子の各ヌクレオチド配列若しくはその部分配列又はそれらの相補配列を有する核酸分子又はその群を提供する。
本発明の核酸分子の群に含まれる核酸分子の数(即ち、核酸分子の種類の数)は、特に限定されないが、上記遺伝子群LIV−001〜LIV−104から選ばれる、通常2以上、好ましくは10以上、より好ましくは30以上、更に好ましくは50以上、更により好ましくは80以上、さらにより好ましくは100以上、最も好ましくは104(即ち、正常肝臓細胞に発現している実質的に全て)の遺伝子の各ヌクレオチド配列若しくはその部分配列又はそれらの相補配列をそれぞれ有する核酸分子を含む。また、別の観点では、本発明の核酸分子の群は、表1の「配列の説明」において「未知」と記載されている遺伝子をコードする核酸分子の群であり得る。
核酸分子の群とは、単離された核酸分子の集合を意味し、特に限定されるものではないが、一度にその用に供できる状態であるもの、例えば、単一又は複数の固相上に各核酸分子が固定されているもの、単一又は複数の液相中に各核酸分子が溶解しているものなどであり得る。例えば、核酸分子の群は、例えば、マイクロタイタープレートのようなプレート上に各核酸分子が個別に分注された状態で群となっているものでもよい。核酸分子の群における各核酸分子は1本鎖であっても、2本鎖であってもよい。
「遺伝子のヌクレオチド配列」とは、遺伝子がコードされる染色体DNA、mRNA、又はcDNAの全長ヌクレオチド配列であり、特に限定されない。各遺伝子は、タンパク質をコードする構造遺伝子とその発現を調節している調節遺伝子からなり、特に限定されないが、好ましくは各遺伝子の構造遺伝子である。上記mRNAは、未成熟mRNA又は成熟mRNAであり、特に限定されないが、好ましくは成熟mRNAである。
本発明の核酸分子の群における核酸分子が上記遺伝子のヌクレオチド配列の部分配列を有する場合、当該部分配列の長さは特に限定されず、核酸分子の用いられる目的等に応じて適宜選択できるが、例えば15bp以上に設定される。核酸分子の用いられる目的としては、特に限定されないが、プローブとしての使用、プライマーとしての使用、各遺伝子産物の発現等であり得る。
プローブとは、標的核酸分子(例えばLIV遺伝子のmRNA、cDNA、染色体DNA等)に対する特異的なハイブリダイゼーションによって、標的核酸分子の検出の用に供される核酸分子をいう。核酸分子がプローブとして用いられる場合、各核酸分子が有する部分配列の長さは、標的核酸分子の検出、或いは標的核酸分子に対して特異的ハイブリダイゼーションを達成するのに十分な長さであれば特に限定されないが、例えば、少なくとも15bp、好ましくは少なくとも20bp、より好ましくは少なくとも25bp、さらにより好ましくは少なくとも30bp以上であり得る。
プライマーとは、核酸の合成反応にあたりポリヌクレオチド鎖が伸長して行く出発点として働く核酸分子をいう。核酸分子がPCR等におけるプライマーとして用いられる場合、当該核酸分子に含まれる部分配列の長さは、標的核酸分子の伸長反応に十分な長さであれば特に限定されないが、通常15〜100bp、好ましくは18〜50bp、更に好ましくは18〜35bpである。
核酸分子が各遺伝子産物の発現を目的として用いられる場合、各核酸分子が有する部分配列は、それぞれの遺伝子のタンパク質コード領域の全長、あるいは発現が所望されるタンパク質コード領域の一部を含む様に(通常15bp以上、好ましくは30bp以上、より好ましくは60bp以上)設定され得る。
核酸分子の群における各核酸分子は、DNAであってもRNAであってもよい。RNAの場合はDNAにおいてT(チミジン)で記載されている塩基はU(ウリジン)に読み替えられるものとする。
核酸分子の群における各核酸分子は、上述したヌクレオチド配列若しくはその部分配列又はそれらの相補配列を個別に有している限り特に限定されない。例えば、当該各核酸分子は、i)上述したヌクレオチド配列若しくはその部分配列又はそれらの相補配列自体からなる核酸分子、ii)上述したヌクレオチド配列若しくはその部分配列又はそれらの相補配列に加え、さらに任意のヌクレオチド配列を含む核酸分子であり得る。
上述したii)の核酸分子の一例としては、例えば、当該核酸分子がインサートとして任意のベクター(例えば、サブクローニング用ベクター、発現ベクターなど)に導入されたものを挙げることができる。例えば、上記の任意のベクターとして発現ベクターを用いる場合、インサートとしての核酸分子は、機能可能であるように発現調節エレメントに連結されていてもよい。発現調節エレメントとしては、例えば、任意のプロモーターを挙げることができ、例えば大腸菌における発現が意図された場合、lac、taqなどのプロモーターが好適に用いられ、哺乳動物由来の細胞における発現が意図された場合、CAGプロモーター、CMVプロモーター、SV40プロモーター、アデノウイルスの初期又は後期プロモーターなどのプロモーターが好適に用いられる。
核酸分子の群における各核酸分子は、当該分野で周知の方法により作製できる。例えば、約100bp以下の大きさの核酸分子であれば有機化学的方法により作製できる。また、核酸分子のサイズが大きい場合には、生物学的方法(細胞系、無細胞系を含む)により作製することも可能である。詳細には、生物学的方法としては、核酸合成酵素を用いる方法(例えば、PCR、ICAN(Isothermal and Chimeric primer-initiated Amplification of Nucleic acids)(例えば国際公開第00/56877号パンフレット参照)、LAMP(Loop-mediated isothermal amplification)(例えば国際公開第00/28082号パンフレット参照)など)、核酸分子の群における各核酸分子をインサートとして含む任意のベクター(例えば、プラスミド、BAC、YAC、ファージDNAなど)を細菌に導入し、当該ベクターを増幅させる方法などが挙げられる。
核酸分子の群における各核酸分子は、修飾されていてもよい。当該修飾としては、特に限定されないが、例えば、蛍光(FITC、ローダミン、テキサスレッド、6-カルボキシ-フルオレッセイン(FAM)、テトラクロロ-6-カルボキシフルオレッセイン(TET)、2,7-ジメトキシ-4,5-ジクロロ-6-カルボキシフルオレッセイン(JOE)、ヘキソクロロ-6-カルボキシフルオレッセイン(HEX)、6-カルボキシ-テトラメチル-ローダミン(TAMRA)等)標識、ビオチン標識、ジゴキシゲニン標識、アルカリフォスファターゼ標識、放射性同位体(32P、H)標識等が挙げられる。
一実施形態では、本発明の核酸分子の群は核酸アレイとして用いられる。核酸アレイにおける各核酸分子は、2本鎖であってもよいが、1本鎖が好ましい。また、核酸アレイの支持体としては、当該分野で通常用いられている支持体であれば特に限定されず、例えば、メンブレン(例えば、ナイロン膜)、ガラス、プラスチック、金属などが挙げられる。
本発明における核酸アレイの形態としては、当該分野で周知の形態を用いることができ、例えば、支持体上で核酸が直接合成されるアレイ(いわゆるアフィメトリクス方式)、支持体上に核酸が固定化されるアレイ(いわゆるスタンフォード方式)、繊維型アレイ、電気化学的アレイ(ECA)等が挙げられる。
アフィメトリクス方式のアレイとは、光リソグラフィー技術及び固相法核酸合成技術によりシリコン支持体上に一定の長さの核酸プローブを搭載した核酸チップをいう。本アレイは、例えば、支持体をマスクと呼ばれる遮光板で覆って露光させるという工程を繰り返すことによって、核酸分子を支持体上で1塩基ずつ合成することにより作製できる。本アレイは、目的のヌクレオチド配列を有する核酸プローブを高密度で固定できるため遺伝子を網羅的に検出できる、核酸プローブを支持体に対し垂直に固定できるのでハイブリダイゼーション効率が高い、定量性や再現性に優れるなどの利点を有する。
スタンフォード方式のアレイとは、支持体上に核酸プローブが共有結合により又は非共有結合により貼り付けられている核酸アレイをいう。本アレイは、例えば、予め調製されたcDNAや合成オリゴDNAなどの核酸プローブを支持体上にスポットすることによって作製される。本アレイは、アフィメトリクス方式のアレイと比較して、1スポット中に大量の未精製cDNA等が含まれている場合にはクロスハイブリダイゼーションが多い・ハイブリダイゼーションが生じにくい、洗浄操作の際に核酸プローブが支持体上から剥がれやすいため定量性・再現性が低いなどの欠点を有するものの、これらの欠点は、核酸プローブとして精製した合成オリゴDNAを用いたり、核酸プローブを支持体上に共有結合によって固定することによって改善できる。一方、本アレイは、アフィメトリクス方式のアレイと比較して、任意の核酸プローブを搭載できる、ランニングコストが安いなどの利点を有する。また、スタンフォード方式のDNAチップは自作が容易という利点も有する。
繊維型アレイとは、核酸プローブを含む繊維が集合してなるアレイをいう。本アレイは、例えば、中空繊維に核酸プローブを染み込ませ、異なる核酸プローブが染み込んだ中空繊維を束ね、この中空繊維の集合体をスライスすることによって作製できる。本アレイは、同品質で大量に生産できるため再現性に優れる、DNAが自由度のある構造で固定されておりハイブリダイゼーションの効率が高いため高感度であるなどの利点を有する。
電気化学的アレイ(ECA)とは、ハイブリダイゼーションの検出を電気化学的に行う核酸アレイをいう。本アレイは、他の核酸アレイとは異なり、核酸を標識せずに、例えば、インターカレート剤(intercalator)を用いることによって核酸を検出する。検出方法としては、例えば、インターカレート剤が挿入したときに生じる電流の差を測定する方法、電圧差が発生すると発光するインターカレート剤から生じる発光を検出する方法などが挙げられる。本アレイは、mRNAにおいて直接測定が可能であり感度や定量性に優れる、PCRが不要、サンプル標識をしないためハイブリダイゼーションの効率が高いなどの利点を有する。
核酸アレイによるLIV遺伝子の転写産物の測定は、使用する核酸アレイの形態によっても異なるが、例えば、サンプルのmRNAを標識し、次いでこれを核酸アレイにハイブリダイズさせることにより行なうことができる。標識は、直接検出可能なシグナルを発するものでもよいし、検出可能なシグナルを発する物質に特異的に結合する物質でもよい。直接検出可能なシグナルを発する標識の例としては、蛍光性物質、アルカリフォスファターゼ、放射性同位元素などが挙げられる。検出可能なシグナルを発する物質に特異的に結合する物質の例としては、ビオチン、アビジン、ジゴキシゲニン、抗体などが挙げられる。標識の方法としては、核酸合成酵素を用いて、サンプルの核酸を複製しつつ、標識されたヌクレオチドを取りこませる方法、化学反応でサンプルの核酸に直接結合させる方法などが挙げられる。また、電気化学的に検出する場合には、核酸の標識は必要とされず、例えば、インターカレート剤を用いて電流の差を測定することによって、又は電圧差が発生すると発光するインターカレート剤から生じる発光を検出することによって、LIV遺伝子の転写産物を測定できる。
当業者は、アッセイの目的に応じて、上述した核酸アレイの内、適切な核酸アレイを適宜選択することができ、また、当該分野で周知の方法により、例えば、上述したように、これら核酸アレイを作製できる。
別の実施形態では、本発明の核酸分子の群は、LIV遺伝子群から選ばれる2以上の遺伝子を各々特異的に増幅し得るプライマー(又はプライマーセット)の群であり得る。プライマーセットは、特に限定されないが、遺伝子増幅の反応効率の観点から、好ましくは特異的遺伝子増幅産物の大きさが50〜1000bp、より好ましくは100〜600bpとなるように選ばれる。上記プライマー(又はプライマーセット)は、増幅対象であるLIV遺伝子のヌクレオチド配列に基づき、当業者であれば容易にデザインすることが可能である。
本発明の核酸分子又はその群、特に核酸アレイは、LIV遺伝子群の転写産物の発現を網羅的に解析することを可能とし、薬物による肝毒性、肝臓疾患、肝機能又は肝臓疾患に対する薬物の奏効性の検査などに利用できるため極めて有用である。
2.抗体又はその群
本発明は、LIV遺伝子群から選ばれる1又は2以上の遺伝子の各翻訳産物に特異的に結合する抗体又はその群を提供する。
本発明の抗体の群に含まれる抗体の数(即ち、抗体の種類の数)は、特に限定されないが、上記LIV遺伝子群から選ばれる、通常2以上、好ましくは10以上、より好ましくは30以上、更に好ましくは50以上、更により好ましくは80以上、さらにより好ましくは100以上、最も好ましくは104(即ち、正常肝臓細胞に発現している実質的に全て)の遺伝子の各翻訳産物にそれぞれ特異的に結合する抗体を含む。また、別の観点では、本発明の抗体の群は、表1の「配列の説明」において「未知」と記載されている遺伝子の各翻訳産物にそれぞれ特異的に結合する抗体の群であり得る。
抗体の群とは、単離された抗体の集合を意味し、特に限定されるものではないが、一度にその用に供することができる状態であるもの、例えば、単一又は複数の固相上に各抗体が固定されているもの、単一又は複数の液相中に各抗体が溶解しているものなどであり得る。例えば、抗体の群は、例えば、マイクロタイタープレートのようなプレート上に各抗体が個別に分注された状態で群となっているものでもよい。
本発明の抗体の群における各抗体の種類は特に限定されない。例えば、抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体のいずれであってもよい。また、本発明の抗体の群における各抗体は、キメラ抗体、ヒト型抗体、ヒト抗体、又はこれらのエピトープ結合フラグメントであり得る。なお、本発明の抗体の群における各抗体は、その種類がそれぞれ異なっていてもよい。また、翻訳産物の翻訳後修飾がその機能に重要な役割を果たす場合は、抗体は、未修飾の翻訳産物と修飾後の翻訳産物を識別できるものが好ましい。
上記LIV遺伝子群において、既知遺伝子が含まれていて、当該既知遺伝子の翻訳産物に対する抗体の一部が、ポリクローナル抗体あるいはモノクローナル抗体として市販されている場合には、これら市販物を用いることができる。また、ポリクローナル抗体あるいはモノクローナル抗体は、当該分野で周知の方法によって作製することもできる。詳細には、ポリクローナル抗体は、例えば、上記LIV遺伝子群の各遺伝子の翻訳産物又はその部分ペプチド(長さは通常6アミノ酸以上、例えば8アミノ酸以上、好ましくは10アミノ酸以上、より好ましくは12アミノ酸以上である)を抗原として、必要に応じてフロイントアジュバント(Freund's Adjuvant)とともに、哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ)に免疫し、この免疫した哺乳動物(免疫感作動物)から血清を回収することにより作製できる。また、モノクローナル抗体は、上記免疫感作動物から得た抗体産生細胞と骨髄腫細胞(ミエローマ細胞)からハイブリドーマ(融合細胞)を調製し、該ハイブリドーマをクローン化し、哺乳動物の免疫に用いた抗原に対して特異的親和性を示すモノクローナル抗体を産生するクローンを選択することによって作製できる。
キメラ抗体は、遺伝子工学的に作製されるモノクローナル抗体であって、詳細には、例えば、可変領域がマウスイムノグロブリン由来の可変領域であり、かつ定常領域がヒトイムノグロブリン由来の定常領域であるマウス/ヒトキメラモノクローナル抗体等の抗体を意味する。キメラ抗体は、当該分野で周知の方法により作製できる(例えば、特公平3-73280号公報を参照のこと)。
ヒト型抗体(CDR-grafted抗体)は、遺伝子工学的に作製されるモノクローナル抗体であって、詳細には、その超可変領域の相補性決定領域の一部または全部がマウスモノクローナル抗体に由来する超可変領域の相補性決定領域であり、その可変領域の枠組領域がヒトイムノグロブリン由来の可変領域の枠組領域であり、かつその定常領域がヒトイムノグロブリン由来の定常領域である抗体等を意味する。ヒト型抗体は、当該分野で周知の方法により作製できる(例えば、特表平4-506458号公報、特開昭62-296890号公報を参照のこと)。
ヒト抗体とは、イムノグロブリンを構成するH鎖の可変領域及びH鎖の定常領域並びにL鎖の可変領域及びL鎖の定常領域を含む全ての領域がヒトイムノグロブリンをコードする遺伝子に由来する抗体をいう。ヒト抗体は、当該分野で周知の方法により、ヒト抗体を産生するトランスジェニック動物を作製し、当該トランスジェニック動物を抗原で免疫感作することにより、前述したポリクローナル抗体あるいはモノクローナル抗体の作製法と同様にして製造できる。ヒト抗体を産生するトランスジェニック動物の作製方法については、例えば、Nature Genetics, Vol.15, p.146-156, 1997; Nature Genetics,Vol.7, p.13-21, 1994; 特表平4-504365号公報;国際公開第94/25585号パンフレット; Nature, Vol.368, p.856-859, 1994; 及び特表平6-500233号公報等に記載されている。
エピトープ結合フラグメントとは、上述した抗体の抗原結合領域を含む部分又は当該領域から誘導された部分をいい、詳細にはF(ab')、Fab'、Fab、Fv(variable fragment of antibody)、scFv(single chain Fv)、dsFv(disulphide stabilised Fv)等が挙げられる。
一実施形態では、本発明の抗体の群は抗体アレイとして用いられる。抗体アレイの支持体としては、当該分野で通常用いられている支持体であれば特に限定されず、例えば、メンブレン(例えば、ニトロセルロース膜、ナイロン膜)、ガラス、プラスチック、金属(例えば、金薄膜)などが挙げられる。
抗体アレイによる遺伝子群の翻訳産物(例えば、翻訳後修飾されたタンパク質、未修飾のタンパク質)の測定は、使用する抗体アレイの形態によっても異なるが、例えば、サンプルから抽出された翻訳産物を標識し、次いでこれを抗体アレイ上の各抗体に反応させることにより行なうことができる。標識は、直接検出可能なシグナルを発するものでもよいし、検出可能なシグナルを発する物質に特異的に結合する物質でもよい。直接検出可能なシグナルを発する標識の例としては、蛍光性物質、アルカリフォスファターゼ、放射性同位元素などが挙げられる。検出可能なシグナルを発する物質に特異的に結合する物質の例としては、ビオチン、アビジン、ジゴキシゲニン、抗体などが挙げられる。標識の方法としては、化学反応で翻訳産物に直接結合させる方法などが挙げられる。また、抗体アレイを金薄膜上に作製した場合には、翻訳産物を標識することなく、表面プラズモン共鳴等の周知の方法により、翻訳産物の抗体への結合の有無を検出できる。
抗体アレイは、当該分野で周知の方法によって、抗体を支持体上に固定することにより作製できる。抗体を支持体上に固定する方法としては、例えば、共有結合により固定する方法、静電的結合により固定する方法が挙げられるが、実験の再現性を考慮すれば共有結合により固定する方法が好ましい。また、支持体がガラス、プラスチック、金薄膜などの場合は、支持体表面上の官能基に、抗体に含まれるアミノ酸の官能基を反応・結合させることにより、抗体を支持体上に固定することもできる。
本発明の抗体又はその群、特に抗体アレイは、LIV遺伝子群の翻訳産物の発現を網羅的に解析することを可能とし、薬物による肝毒性、肝臓疾患、肝機能又は肝臓疾患に対する薬物の奏効性の検査などに利用できるため極めて有用である。
3.発現量の測定による薬物による肝毒性、肝臓疾患、肝機能又は肝臓疾患に対する薬物の奏効性の検査方法(方法I)
本発明は、発現量の測定による薬物による肝毒性、肝臓疾患、肝機能又は肝臓疾患に対する薬物の奏効性の検査方法を提供する。該検査方法は、対象から採取された肝臓細胞を含む生体試料において、遺伝子群LIV−001〜LIV−104から選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現量を測定することを含む。
「薬物による肝毒性」とは、例えば、薬物により肝機能が損なわれることをいい、「肝臓疾患に対する薬物の奏効性」とは、例えば、薬物により肝臓疾患が改善することをいう。
本発明の方法(方法I)において発現量が測定される遺伝子の数は、特に限定されず、上記LIV遺伝子群から選ばれる少なくとも1つの遺伝子の発現量を測定すればよい。検査の精度を向上させる目的で、上記LIV遺伝子群から選ばれる、例えば2以上、好ましくは10以上、より好ましくは30以上、更に好ましくは50以上、更により好ましくは80以上、さらにより好ましくは100以上、最も好ましくは104(即ち、正常肝臓細胞に発現している実質的に全て)の遺伝子の発現量を測定してもよい。
詳細には、本方法(方法I)は、i)被験哺乳動物から採取した肝臓細胞を含む生体試料における、LIV遺伝子群から選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現量を測定し、ii)測定された発現量に基づき、被験哺乳動物の薬物による肝毒性、肝臓疾患、肝機能又は肝臓疾患に対する薬物の奏効性を検査することを含む。遺伝子の発現量の測定は、各遺伝子の遺伝子産物(転写産物又は翻訳産物)の発現量を測定することにより行われる。
本方法により、薬物による肝毒性又は肝臓疾患に対する薬物の奏効性が検査される場合、方法Iの工程i)において、生体試料は、例えば、漢方薬、低分子医薬、タンパク質製剤(例、インターフェロン)等の薬物により処理されてもよい。該処理としては、被験哺乳動物への直接投与、生体試料への接触等が挙げられる。
方法Iの工程i)において遺伝子の転写産物の発現量を測定する場合、まず生体試料より遺伝子の転写産物を調製する。転写産物の調製は、当該分野で周知の方法によって行うことができ、また、市販のキットを用いて行ってもよい。生体試料としては肝臓細胞を、転写産物としては成熟mRNA又はこれを含む全RNAを用いることが好ましい。
転写産物の発現量の測定は当該分野で周知の方法により測定することができ、例えば、ノザンブロット法、ドットブロット法、RT−PCR、核酸アレイ等によって測定できる。ノザンブロット法やドットブロット法においては、「核酸分子の群」の項において記載したプローブを、RT−PCRにおいては、「核酸分子の群」の項において記載したプライマーを、核酸アレイとしては「核酸分子の群」の項において記載した核酸アレイをそれぞれ用いることができる。
転写産物の発現量を測定する場合には、測定値を公知の方法によって補正できる。補正により、独立した複数の生体試料における転写産物の発現量をより正確に比較することが可能となる。測定値の補正は、上記生体試料において、発現レベルが大きく変動しない遺伝子(例えば、ハウスキーピング遺伝子)の発現量の測定値に基づいて、上記遺伝子の発現量の測定値を補正することにより行われる。発現レベルが大きく変動しない遺伝子の例としては、GAPDH、β−アクチン等を挙げることができる。
方法Iの工程i)において遺伝子の翻訳産物の発現量を測定する場合、まず生体試料より翻訳産物の発現量を測定可能なサンプルを調製する。翻訳産物の発現量の測定をELISA、ウェスタンブロット法、上述した抗体アレイ等の免疫学的方法等により行う場合、通常、生体試料より液体サンプルを調製する。例えば、生体試料が組織や細胞の場合、これらを機械的に破砕したり、可溶化剤で処理すること等により可溶化物を調製する。翻訳産物の発現量の測定を免疫学的方法により行う場合は、組織や細胞等の生体試料は適宜固定等の処理に付され、抗体等により染色される。生体試料としては肝臓細胞を用いることが好ましい。このように、免疫学的方法によりLIVの翻訳産物の発現量を測定する場合においては、抗体として「抗体の群」の項に記載したLIV遺伝子の翻訳産物に特異的に結合する抗体を用いることができる。
また、LIV遺伝子の翻訳産物の発現量は、生体試料中のLIV遺伝子の翻訳産物の活性を測定することによっても測定できる。
「翻訳産物の活性」とは、当該翻訳産物が備える生物学的な活性をいう。翻訳産物の活性を測定するための一般的な方法としては、例えば、キナーゼ活性(Park SYら J. Biol. Chem. 275, 19768-19777 (2000))、プロテアーゼ活性(Meng, L, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 96, p. 10403-10408 (1999))、細胞増殖調節活性(Macleod, R. J. et al., Proc. Natl. Acad. Sei. U S A, 88, p. 552-556 (1991))、タンパク質間相互作用(岡田雅人ら編集、「タンパク実験の進めかた」、羊土社、p. 172 (2001))、抗原提示活性(Oosterwegel MA et al., J Immunol., 163, p. 2634-2639 (1999))、ヌクレアーゼ活性(特表2002−519023号公報)、ケモカイン、ケモカインレセプター(Zhou N et al., J. Biol. Chem., 276, p. 42826-42833, (2001))、サイトカイン、サイトカインレセプター(Piek E et al., J. Biol. Chem., 276, p. 19945-19953 (2001))、転写因子(Zhao F et al., J. Biol. Chem., 276, p. 40755-40760 (2001))、細胞接着因子(Fujiwara H et al., J. Biol. Chem., 276, p. 17550-17558 (2001))、細胞外マトリックス蛋白質(Miyazaki K et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 90, p. 11767 (1993))、フォスファターゼ(Aoyama K et al., J. Biol. Chem., 276, p. 27575-27583 (2001))、イオンチャンネル(Hamill, O. P. et al., Pfluegers Arch., 391, p. 85-100 (1981))等が挙げられる。
上記の翻訳産物の発現量の測定は、例えば上述の方法等の当該分野で周知の方法で行うことができるが、特にこれらに限定されるものではない。
方法Iの工程ii)では、測定された発現量に基づき、哺乳動物における薬物による肝毒性、肝臓疾患、肝機能又は肝臓疾患に対する薬物の奏効性が検査される。例えば、測定された遺伝子の発現量を、健常哺乳動物における当該遺伝子の発現量と比較して、有意に発現量が高いまたは低い場合に、測定対象の哺乳動物は薬物により肝毒性が生じている可能性が高い、肝臓疾患を患っている可能性が高い、肝機能に異常がある可能性が高い又は肝臓疾患に対して薬物が有効でない可能性が高いと判断される。発現量の上昇または低下が有意である限り、発現量の変動の程度は特に限定されないが、測定された発現量が、例えば約2倍以上、好ましくは約3倍以上、より好ましくは約5倍以上、最も好ましくは約10倍以上、健常哺乳動物における発現量と比較して高いまたは低い場合に、測定対象の哺乳動物は薬物により肝毒性が生じている可能性、肝臓疾患を患っている可能性、肝機能に異常がある可能性又は肝臓疾患に対して薬物が有効でない可能性があると判断され得る。
あるいは、予め蓄積されていた薬物による肝毒性、肝臓疾患、肝機能又は肝臓疾患に対する薬物の奏効性と、LIV遺伝子の発現量との相関データと照合し、単独又は複数のLIV遺伝子の絶対的又は相対的な発現量の有意差などに基づいて哺乳動物の薬物による肝毒性、肝臓疾患、肝機能又は肝臓疾患に対する薬物の奏効性を評価してもよい。例えば、予め健常である対象におけるLIV遺伝子の発現量を測定し、健常である対象における標準値を設定する。この標準値をもとに、例えば±2S.D.の範囲が許容範囲とされる。遺伝子発現量の測定値に基づいて、標準値や許容範囲を設定する手法は公知である。標準値を設定した後には、被験哺乳動物から採取された生体試料におけるLIV遺伝子の発現量のみを測定し、予め設定された標準値との比較に基づいて、薬物による肝毒性、肝臓疾患、肝機能又は肝臓疾患に対する薬物の奏効性を評価できる。また、予め蓄積されていた発現量データとしては、本発明で提供されるLIV遺伝子群の各遺伝子に関する既存の如何なる発現量データを用いることができ、例えば、後述の本発明の方法(方法III)で提供される薬物による肝毒性、肝臓疾患、肝機能又は肝臓疾患に対する薬物の奏効性の検査基準用データを用いてもよい。
また、方法Iの工程ii)では、測定された発現量の違いに基づき、薬物による肝毒性、肝臓疾患、肝機能又は肝臓疾患に対する薬物の奏効性を検査することもできる。例えば、LIV遺伝子の発現の変動の程度は、肝臓疾患の重症度と正に相関し得る。
本方法(方法I)は、哺乳動物において、薬物により肝毒性が生じている可能性、肝臓疾患を患っている可能性、肝機能に異常がある可能性又は肝臓疾患に対して薬物が有効でない可能性、あるいは薬物による肝毒性の程度、肝臓疾患の程度、肝機能異常の程度又は肝臓疾患に対する薬物の奏効性の程度等を簡便かつ高い精度で判定し得るので極めて有用である。
本発明はまた、本方法(方法I)を行い得る薬物による肝毒性、肝臓疾患、肝機能又は肝臓疾患に対する薬物の奏効性の検査用試薬を提供する。本発明の検査用試薬は、LIV遺伝子群から選ばれる1又は2以上の遺伝子の測定用物質を含有する。
一実施形態では、LIV遺伝子群から選ばれる1又は2以上の遺伝子の測定用物質は、LIV遺伝子群から選ばれる1又は2以上の遺伝子の各ヌクレオチド配列若しくはその部分配列又はそれらの相補配列をそれぞれ有する核酸分子であり得る。当該検査用試薬をプローブやプライマー、核酸アレイ等として用いて、上記遺伝子の転写産物の発現量を測定すること等により、方法(I)を簡便に実施できる。当該「核酸分子」、「核酸分子の群」、「プローブ」、「プライマー」、「核酸アレイ」等は、上述の「核酸分子の群」の項で述べたものと同様のものを用いることができる。
別の実施形態では、LIV遺伝子群から選ばれる1又は2以上の遺伝子の測定用物質は、LIV遺伝子群から選ばれる1又は2以上の遺伝子の各翻訳産物にそれぞれ特異的に結合する抗体であり得る。当該検査用試薬を用いて、上記遺伝子の翻訳産物の発現量を測定することにより、方法(I)を簡便に実施できる。当該「抗体」、「抗体の群」は、上述の「抗体の群」の項で述べたものと同様のものを用いることができる。
本発明の検査用試薬はまた、上述の核酸分子や抗体の他に、検査や保存に必要な付加的な要素と組合せて、薬物による肝毒性、肝臓疾患、肝機能又は肝臓疾患に対する薬物の奏効性の検査用キットとすることもできる。キットを構成できる付加的な要素としては、試薬や生体試料を希釈するための緩衝液、陽性対照、陰性対照、反応容器、検査プロトコールを記載した指示書、薬物による肝毒性、肝臓疾患、肝機能又は肝臓疾患に対する薬物の奏効性の検査基準用データ等が挙げられる。これらの要素は必要に応じて予め混合しておくこともできる。また、必要に応じて保存剤や防腐剤を各要素に加えることもできる。
4.変異及び/又は多型の検出による薬物による肝毒性、肝臓疾患、肝機能又は肝臓疾患に対する薬物の奏効性の検査方法(方法II)
本発明は、変異及び/又は多型の検出による薬物による肝毒性、肝臓疾患、肝機能又は肝臓疾患に対する薬物の奏効性の検査方法を提供する。該検査方法は、対象から採取された生体試料において、遺伝子群LIV−001〜LIV−104から選ばれる1又は2以上の遺伝子の変異及び/又は多型を検出することを含む。本方法で検出される変異及び/又は多型は、LIV遺伝子の機能(例えば当該LIV遺伝子の翻訳産物の活性)に影響を与えるものであり得る。
詳細には、本方法(方法II)は、i)被験哺乳動物から採取した肝臓細胞を含む生体試料から、LIV遺伝子の転写産物又は染色体DNAを調製し、ii)当該遺伝子の転写産物若しくは染色体DNAが変異及び/又は多型を有するか否かを決定し、iii)決定されたii)の結果に基づき、被験哺乳動物における薬物による肝毒性、肝臓疾患、肝機能又は肝臓疾患に対する薬物の奏効性及び/又はそのリスクを評価することを含む。
本方法により、薬物による肝毒性又は肝臓疾患に対する薬物の奏効性が検査される場合、方法IIの工程i)において、生体試料は、例えば、漢方薬、低分子医薬、タンパク質製剤(例、インターフェロン)等の薬物により処理されてもよい。該処理としては、被験哺乳動物への直接投与、生体試料への接触等が挙げられる。
方法IIの工程i)では、サンプルからの転写産物(好ましくは成熟mRNA又はこれを含む全RNA)、染色体DNAの調製は、当該分野で周知の方法によって行なうことができ、また、市販のキットを用いて、転写産物、染色体DNAを抽出してもよい。なお、標的とする哺乳動物、好ましくはヒト被験体の任意の生体試料をサンプルして用いることができるが、入手の容易性を考慮すれば、サンプルとしては、血液、毛髪、つめ、皮膚、粘膜が好ましい。また、変異の解析という観点からは、サンプルとしては、哺乳動物、ヒト被験体の肝臓細胞が好ましい。
方法IIの工程ii)では、上述のようにして得られた染色体DNA又は転写産物における変異や多型は、当該分野で周知の方法によって解析できる。当該方法としては、例えば、RFLP(制限酵素切断断片長多型)法、PCR−SSCP(一本鎖DNA高次構造多型解析)法、ASO(Allele Specific Oligonucleotide)ハイブリダイゼーション法、ダイレクトシークエンス法、ARMS(Amplification Refracting Mutation System)法、変性濃度勾配ゲル電気泳動(Denaturing Gradient Gel Electrophoresis)法、RNaseA切断法、化学切断法、DOL(Dye-labeled Oligonucleotide Ligation)法、TaqMan PCR法、インベーダー法、MALDI−TOF/MS(Matrix Assisted Laser Desorption-time of Flight/Mass Spectrometry)法、TDI(Template-directed Dye-terminator Incorporation)法等が挙げられる。
方法IIの工程iii)では、上述した工程ii)の結果に基づき、被験哺乳動物における薬物による肝毒性、肝臓疾患、肝機能又は肝臓疾患に対する薬物の奏効性及び/又はそのリスクが評価される。工程ii)で決定された変異や多型は、好ましくは、予め蓄積されていた変異や多型のデータと照合され、単独又は複数の変異や多型を総合的に考慮することで哺乳動物における薬物による肝毒性、肝臓疾患、肝機能又は肝臓疾患に対する薬物の奏効性及び/又はそのリスクが評価される。予め蓄積されていた変異や多型のデータとしては、本発明で提供されるLIV遺伝子群の各遺伝子に関する既存の如何なる変異や多型のデータを用いることができ、例えば、本発明の方法(方法III)で提供される薬物による肝毒性、肝臓疾患、肝機能又は肝臓疾患に対する薬物の奏効性の検査基準用データを用いてもよい。
本方法(方法II)は、哺乳動物において、薬物による肝毒性、肝臓疾患、肝機能又は肝臓疾患に対する薬物の奏効性及び/又はそのリスクを簡便かつ高い精度で判定し得る。従って、例えば、本方法によって、肝臓疾患の発症リスクが高いことが判明した被験体に対しては、その旨を告知し、当該疾患を予防するための対策(例えば、生活習慣の改善)を講じることができるので、本発明は肝臓疾患を予防するための検査方法として極めて有用である。
本発明はまた、本方法(方法II)を行い得る、薬物による肝毒性、肝臓疾患、肝機能又は肝臓疾患に対する薬物の奏効性の検査用キットを提供する。本検査用キットは、構成成分として、方法IIで用いられ得る種々の試薬(例えば、染色体DNA調製試薬、転写産物調製試薬、LIV遺伝子の変異・多型測定用物質(例えば、3’端に変異・多型部分を含むプライマー、ASOハイブリダイゼーションを可能とするプローブ、RFLPを可能とする制限酵素)、試薬や生体試料を希釈するための緩衝液、陽性対照、陰性対照、反応容器、検査プロトコールを記載した指示書、薬物による肝毒性、肝臓疾患、肝機能又は肝臓疾患に対する薬物の奏効性の検査基準用である変異・多型に関するデータなど)を含む。これらの要素は必要に応じて予め混合しておくこともできる。また、必要に応じて保存剤や防腐剤を各要素に加えることもできる。本検査用キットは、方法IIを簡便に実施することを可能とするため極めて有用である。
5.薬物による肝毒性、肝臓疾患、肝機能又は肝臓疾患に対する薬物の奏効性の検査基準用データの作成方法(方法III)
本発明は、LIV遺伝子群から選ばれる1又は2以上の遺伝子について、薬物による肝毒性、肝臓疾患、肝機能又は肝臓疾患に対する薬物の奏効性との相関を見出すことを含む、検査基準用データの作成方法を提供する。
詳細には、本方法(方法III)は、i)正常肝臓細胞に特異的に発現しているLIV遺伝子群から選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現量、並びに/又は当該遺伝子の変異及び/若しくは多型について、薬物による肝毒性、肝臓疾患、肝機能又は肝臓疾患に対する薬物の奏効性との相関を見出し、ii)当該相関を薬物による肝毒性、肝臓疾患、肝機能又は肝臓疾患に対する薬物の奏効性の検査基準用データとして取得することを含む。
方法IIIの工程i)における、LIV遺伝子の発現量、並びに/又は当該遺伝子の変異及び/又は多型と薬物による肝毒性、肝臓疾患、肝機能又は肝臓疾患に対する薬物の奏効性との相関の解析では、解析の対象となるLIV遺伝子の数は、特に限定されず、LIV遺伝子群から選ばれる少なくとも1つの遺伝子の絶対的及び/又は相対的な発現量に基づけばよい。しかし、遺伝子の種類によってはその発現量の絶対値は個人差や生活習慣などにより影響を受けやすいものもあると考えられる。また、遺伝子の種類や、変異、多型の種類によっては、薬物による肝毒性、肝臓疾患、肝機能又は肝臓疾患に対する薬物の奏効性に何ら影響を及ぼさないものもあり得ると考えられるため、好ましくは、LIV遺伝子群から選ばれる複数の遺伝子、例えば2以上、好ましくは10以上、より好ましくは30以上、更に好ましくは50以上、更により好ましくは80以上、さらにより好ましくは100以上、最も好ましくは104(即ち、正常肝臓細胞に発現している実質的に全て)の遺伝子の絶対的及び/又は相対的な発現量、変異、多型等を測定し、総合的に考慮してもよい。
詳細には、初めに、薬物による肝毒性、肝臓疾患、肝機能異常又は肝臓疾患に対する薬物の奏効性を示す哺乳動物及び健常哺乳動物から生体試料(例えば、肝臓細胞、血液細胞、毛髪、つめ、皮膚、粘膜、好ましくは肝臓細胞)を採取し、当該試料を適宜処理した上で、LIV遺伝子の発現量及び/又は当該遺伝子群の変異や多型について網羅的に解析する。LIV遺伝子の発現量の測定及び変異や多型の検出は、上記本発明の方法(方法I及び方法II)において用いられた方法と同様にして行なわれる。
次いで、測定されたLIV遺伝子の発現量や変異、多型と、薬物による肝毒性、肝臓疾患、肝機能又は肝臓疾患に対する薬物の奏効性との相関(例えばLIV遺伝子の発現量と薬物による肝毒性、肝臓疾患、肝機能又は肝臓疾患に対する薬物の奏効性との相関、LIV遺伝子の変異及び/若しくは多型の種類、頻度等と薬物による肝毒性、肝臓疾患、肝機能又は肝臓疾患に対する薬物の奏効性との相関、並びにこれらの相関の組合わせ)を解析する。当該相関は、当該分野で周知の方法により数学的に解析することで見出すことができる。
LIV遺伝子は、正常肝臓細胞に特異的に発現しているという点で、LIV遺伝子の発現量及び/又は当該遺伝子の変異や多型と薬物による肝毒性、肝臓疾患、肝機能異常又は肝臓疾患に対する薬物の奏効性との間に有意な相関があり得るが、方法IIIの工程i)により、更に詳細な相関を見出すことが可能となる。
方法IIIの工程ii)では、工程i)にて見出された相関が、薬物による肝毒性、肝臓疾患、肝機能又は肝臓疾患に対する薬物の奏効性の検査基準用データとして取得される。取得された検査基準用データは、記録媒体、例えば書面やコンピュータ読み取り可能な記録媒体などに記録される。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、電子データを記録することができ、且つ必要に応じてコンピュータが読み出すことができる任意の記録媒体をいい、例えば、磁気テープ、磁気ディスク、磁気ドラム、ICカード、光読み取り式ディスク(例えば、CD、DVD)、ハードディスクなどが挙げられる。
本方法(方法III)は、LIV遺伝子の発現、変異、多型に基づき、薬物による肝毒性、肝臓疾患、肝機能又は肝臓疾患に対する薬物の奏効性を評価し得る、より精度の高い検査基準用データを提供し得るため極めて有用である。
また、本発明は、本方法(方法III)により作成されうる薬物による肝毒性、肝臓疾患、肝機能又は肝臓疾患に対する薬物の奏効性の基準用データを提供する。本診断基準データは、記録媒体などに記録された形態で提供される。本検査基準用データは、例えば、本発明の方法(例えば、方法I、方法II)に用いることができ、また、当該方法を行い得る薬物による肝毒性、肝臓疾患、肝機能又は肝臓疾患に対する薬物の奏効性の検査用キットの構成要素として用いることができるため極めて有用である。
6.肝毒性を有し得る物質或いは肝臓疾患を予防又は治療し得る物質の同定方法(方法IV)
本発明は、肝毒性を有し得る物質或いは肝臓疾患を予防又は治療し得る物質の同定方法を提供する。本発明の同定方法は、被験物質が遺伝子群LIV−001〜LIV−104から選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現又は活性を調節するか否かを評価することを含む。LIV遺伝子は正常肝臓細胞において特異的に発現しているので、LIV遺伝子の発現量又は活性を低下又は上昇させることができる物質を選択することによって、肝毒性を有し得る物質或いは肝臓疾患を予防又は治療し得る物質を獲得することが可能である。
本発明の方法(方法IV)において発現量又は活性が測定される遺伝子の数は、特に限定されず、上記LIV遺伝子群から選ばれる少なくとも1つの遺伝子の発現量を測定すればよい。肝毒性がより高い物質或いは肝臓疾患を予防又は治療する効果がより高い物質を、より確実に同定する目的で、上記LIV遺伝子群から選ばれる、例えば2以上、好ましくは10以上、より好ましくは30以上、更に好ましくは50以上、更により好ましくは80以上、さらにより好ましくは100以上、最も好ましくは104(即ち、正常肝臓細胞に発現している実質的に全て)の遺伝子の発現量又は活性を測定してもよい。
被験物質は特に限定されず、例えば、当該被験物質としては、核酸分子、ペプチド系化合物、糖質、脂質、低分子有機化合物、無機化合物、またそれらの混合液、コンビナトリアルケミストリーにより合成された化合物、天然物や合成品、動植物や菌類、藻類、微生物からの抽出液が挙げられる。
本発明の同定方法(方法IV)は、インビトロで行うことも、インビボで行うことも可能である。以下、インビトロ、インビボそれぞれの方法について述べる。
6.1.インビトロでの同定方法−1(方法IV−1)
本方法(方法IV−1)は、例えば、i)細胞に被験物質を接触させ、ii)LIV遺伝子群から選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現量を測定し、iii)測定された発現量に基づき、被験物質が肝毒性を有し得るか否か或いは肝臓疾患を予防又は治療し得るか否かを評価することを含む。
方法IV−1の工程i)では、被験物質を接触させる細胞は、LIV遺伝子群から選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現を測定可能な細胞であり得る。該発現を測定可能な細胞としては、例えば、哺乳動物由来の細胞、好ましくは肝臓細胞を用いることができる。当該細胞は、健常な哺乳動物に由来する細胞であっても、肝臓疾患である哺乳動物に由来する細胞であってもよい。また、初代培養細胞、初代培養細胞から誘導された細胞のいずれでもよい。初代培養細胞から誘導された細胞としては、例えば、増殖因子等の誘導剤により形質が改変された細胞、クローニングにより当該初代培養細胞から株化された細胞、初代培養細胞に任意の遺伝子を導入した細胞などが挙げられ、また、細胞バンク(例えば、ATCC)から入手可能な細胞若しくは市販されている細胞を用いることもできる。さらに、LIV遺伝子群から選ばれる1又は2以上の遺伝子の転写調節領域がレポーター遺伝子(例えば、GFP、ルシフェラーゼ)に機能可能に連結された発現ベクターで形質転換された細胞を用いることもできる。
細胞の被験物質への接触は、培養培地にて行なわれる。培養培地としては、例えば約5〜20%の胎児牛血清を含むMEM培地、DMEM培地、RPMI1640培地、199培地等を用いることができる。培地のpHは約6〜8であるのが好ましく、培養は通常約30〜40℃で約15〜72時間行なわれ、必要により通気や撹拌を行うこともできる。なお、被験物質は、細胞が播種されていない培養培地に予め添加されていてもよく、また、培養培地中に細胞が播種された後に添加されてもよい。なお、被験物質が脂溶性の有機低分子である場合には特に必要とされないが、被験物質が核酸やポリペプチドのような大きな高分子、又は低分子であっても細胞透過性が低いものである場合には、これら被験物質を細胞内に送達させるために当該分野で周知の方法、例えば、リポソーム法、エレクトロポレーション法などを用いることもできる。
方法IV−1の工程ii)では、LIV遺伝子の発現量の測定は、当該遺伝子の遺伝子産物(即ち、転写産物、翻訳産物)の発現量を測定することによって行なわれる。遺伝子産物の発現量の測定方法は方法Iにおいて用いられた方法と同様に行うことが可能である。
方法IV−1の工程iii)では、方法IVの工程ii)で測定された発現量に基づき、被験物質が肝毒性を有し得るか否か或いは肝臓疾患を予防又は治療し得るか否かが評価される。測定された発現量は、被験物質の不在下で測定された発現量と比較され、LIV遺伝子群から選ばれる1又は2以上の遺伝子の絶対的又は相対的な発現量の有意差などに基づいて評価される。被験物質の不在下で測定された発現量としては、予め蓄積されていた発現量データ、及び同時に測定した被験物質の不在下の発現量データを用いることができるが、実験の精度・再現性の観点から、実験条件の詳細については極力一致させることが望ましいので、同時に測定した被験物質の不在下の発現量データを用いることが好ましい。
比較の結果、LIV遺伝子群から選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現量を変動させる化合物を選択することにより、肝毒性を有し得る物質或いは肝臓疾患を予防又は治療し得る物質を同定できる。LIV遺伝子群に含まれるより多くの遺伝子の発現量を変動させる化合物を、肝毒性がより高い物質として或いは肝臓疾患を予防又は治療する効果がより高い物質として選択してもよい。
6.2.インビトロでの同定方法−2(方法IV−2)
本方法(方法IV−2)は、例えば、i)LIV遺伝子群のいずれかの遺伝子の翻訳産物と被験物質を接触させ、ii)当該翻訳産物の活性を測定し、iii)測定された活性に基づき、被験物質が肝毒性を有し得るか否か或いは肝臓疾患を予防又は治療し得るか否かを評価することを含む。
LIV遺伝子の翻訳産物は、LIV遺伝子を発現している生体試料から調製するか、あるいはLIV遺伝子を発現ベクターに組み込み、適切な宿主細胞に導入することにより発現させることで調製することが可能である。
方法IV−2の工程i)では、LIV遺伝子群のいずれかの遺伝子の翻訳産物が被験物質と接触される。翻訳産物は、LIV遺伝子を発現している生体試料から調製するか、あるいはLIV遺伝子を発現ベクターに組み込み、適切な宿主細胞に導入することにより発現させることで調製できる。
方法IV−2の工程ii)では、LIV遺伝子の翻訳産物の活性は、上記方法Iにおいて記載された方法と同様に測定できる。
方法IV−2の工程iii)では、工程ii)で測定された活性に基づき、被験物質が肝毒性を有し得るか否か或いは肝臓疾患を予防又は治療し得るか否かが評価される。測定された翻訳産物の活性は、被験物質を接触させていない翻訳産物について測定された活性と比較され、絶対的又は相対的な活性の有意差などに基づいて評価される。被験物質の不在下で測定された活性としては、予め蓄積されていた活性データ、及び同時に測定した被験物質の不在下の活性データを用いることができるが、実験の精度・再現性の観点から、実験条件の詳細については極力一致させることが望ましいので、同時に測定した被験物質を接触させていないLIV遺伝子の翻訳産物の活性データを用いることが好ましい。
比較の結果、LIV遺伝子群の翻訳産物の活性を変動させる化合物を選択することにより、肝毒性を有し得る物質或いは肝臓疾患を予防又は治療し得る物質を同定できる。
6.3.インビボでの同定方法(方法IV−3)
本方法(方法IV−3)は、例えば、i)非ヒト哺乳動物に被験物質を投与し、ii)当該非ヒト哺乳動物から生体試料を採取し、iii)当該生体試料におけるLIV遺伝子群から選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現量を測定し、iv)測定された発現量に基づき、被験物質が肝毒性を有し得るか否か或いは肝臓疾患を予防又は治療し得るか否かを評価することを含む。
本方法IV−3の工程i)では、被験物質が投与される非ヒト哺乳動物は、特に限定されないが、例えば、肝臓疾患のモデル動物又は薬物による肝毒性の評価用動物が挙げられる。肝臓疾患のモデル動物又は薬物による肝毒性の評価用動物は公知のものを用いることができる。あるいは、被験物質が投与される非ヒト哺乳動物として、後述「LIV遺伝子改変非ヒト哺乳動物」の項に記載されたLIV遺伝子改変動物(LIV遺伝子の発現を増強または低下させた改変動物)を用いてもよい。非ヒト哺乳動物の被験物質への投与は自体公知の方法により行われ、例えば経口/非経口にて、被験物質が非ヒト哺乳動物へ投与される。
方法IV−3の工程ii)では、採取される生体試料としては、特に限定されないが、好ましくはLIV遺伝子群から選ばれる1又は2以上の遺伝子を発現し得る生体試料である。当該生体試料としては、例えば肝臓細胞が挙げられる。
方法IV−3の工程iii)では、生体試料におけるLIV遺伝子の発現量の測定は、方法IV−1と同様に、当該遺伝子の遺伝子産物(即ち、転写産物、翻訳産物)の発現量を測定することによって行なわれる。
方法IV−3の工程iv)では、方法IVの工程iii)で測定された発現量に基づき、被験物質が肝毒性を有し得るか否か或いは肝臓疾患を予防又は治療し得るか否かが評価される。測定された発現量は、被験物質が投与されていない非ヒト哺乳動物において測定された発現量と比較され、LIV遺伝子群から選ばれる1又は2以上の遺伝子の絶対的又は相対的な発現量の有意差などに基づいて評価される。被験物質の不在下で測定された発現量としては、予め蓄積されていた発現量データ、及び同時に測定した被験物質の不在下の発現量データを用いることができるが、実験の精度・再現性の観点から、実験条件の詳細については極力一致させることが望ましいので、同時に測定した被験物質が投与されていない非ヒト哺乳動物における発現量データを用いることが好ましい。
比較の結果、LIV遺伝子群から選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現量を変動させる化合物を選択することにより、肝毒性を有し得る物質或いは肝臓疾患を予防又は治療し得る物質を同定できる。更に、LIV遺伝子群に含まれるより多くの遺伝子の発現量を変動させる化合物を、肝毒性がより高い物質として或いは肝臓疾患を予防又は治療する効果がより高い物質として選択してもよい。
本方法(方法IV)は、肝臓疾患を治療し得る物質の同定を可能にし、また、同定された物質をリード化合物としてより優れた肝臓疾患の治療薬の開発を可能にするため極めて有用である。
さらに、本発明は、上記方法IVにより得られる肝臓疾患の治療用物質を提供する。当該物質は、それ自体疾患の治療に用いることができ、また、肝臓疾患の治療薬のリード化合物として極めて有用である。
7.LIV遺伝子に対する阻害性核酸分子
本発明はLIV遺伝子群から選ばれるいずれかの遺伝子に対する阻害性核酸分子を提供する。
「阻害性核酸分子」とは、標的遺伝子の転写産物(mRNA)に結合し、これを切断、分解し、あるいは標的遺伝子の発現調節部位に結合することなどにより、標的遺伝子の転写産物又は翻訳産物の発現量や機能を減少させ得る核酸分子をいう。阻害性核酸分子としては、アンチセンス核酸、リボザイム、RNAi誘導性核酸分子、デコイ核酸などが挙げられる。
アンチセンス核酸とは、任意のmRNAに対する相補的なオリゴヌクレオチド(DNAまたはRNAのいずれか)をいい、細胞質に導入され、mRNAに結合することで、任意の遺伝子の翻訳を阻止し、当該遺伝子の発現を抑制し得る。アンチセンス核酸は、mRNAとハイブリダイズして安定な二重らせんを形成するのに十分な相補性を有すればよく、完全な相補性は必ずしも必要とはされない。アンチセンス核酸の大きさは、任意の遺伝子の発現を抑制し得る大きさであれば特に限定されないが、通常15bp以上、例えば20bp以上、好ましくは30bp以上である。なお、アンチセンス核酸分子の標的mRNAとしては、LIV遺伝子のmRNA、又は当該遺伝子の発現を制御している遺伝子のmRNAが好ましい。例えば開始コドンを含む領域にハイブリダイズできるアンチセンス核酸は、当該遺伝子の発現抑制効果が大きいとされている。任意の遺伝子のヌクレオチド配列に基づき、当業者であれば容易に当該遺伝子に対するアンチセンス核酸をデザインすることが可能である。
リボザイムは、mRNAの特異的開裂を触媒できる酵素核酸分子である(概説として例えばRossi,J.,1994,Current Biology 4:469-471参照)。リボザイム作用のメカニズムは、標的RNAへのリボザイム分子の配列特異的ハイブリダイゼーションと、これに続くエンドヌクレアーゼ的(endonucleolytic)開裂とを伴う。リボザイムとしては、例えば、ハンマーヘッド型リボザイム、ヘアピン型リボザイム等が知られているが、これらに特に限定されない。いずれのリボザイムも、切断すべき領域に相補的なヌクレオチド配列と、触媒活性発現に必要な構造を保持するためのヌクレオチド配列部分とで構成されている。なお、リボザイムの標的mRNAとしては、LIV遺伝子のmRNA、又は当該遺伝子の発現を制御している遺伝子のmRNAが好ましい。任意の遺伝子のヌクレオチド配列に基づき、当業者であれば容易に当該遺伝子に対するリボザイムをデザインすることが可能である。
RNAi誘導性核酸分子とは、細胞内に導入されることにより、RNAi効果を誘導し得る核酸分子をいい、好ましくはRNAである。RNAi効果とは、mRNAと同一のヌクレオチド配列(又はその部分配列)を含む2本鎖構造のRNAが、当該mRNAの発現を強力に抑制する現象をいう。RNAi効果を得るには、少なくとも20以上の連続する標的mRNAと同一のヌクレオチド配列(又はその部分配列)を有する2本鎖構造のRNAを用いることが好ましい。2本鎖構造は、異なるストランドで構成されていてもよいし、一つのRNAのステムループ構造によって与えられる2本鎖であってもよい。RNAi誘導性核酸分子としては、たとえばsiRNA、stRNA、miRNAなどが挙げられる。RNAi誘導性核酸分子の標的mRNAとしては、LIV遺伝子のmRNA、又は当該遺伝子の発現を制御している遺伝子のmRNAが好ましい。任意の遺伝子のヌクレオチド配列に基づき、当業者であれば容易に当該遺伝子に対するRNAi誘導性核酸分子をデザインすることが可能である。
デコイ核酸とは、転写因子等のヌクレオチド配列依存的に核酸分子に結合するタンパク質に対して特異的に結合し、当該タンパク質が本来結合すべき内在性の標的核酸分子に対する結合を阻害することによって、当該タンパク質の機能を阻害する核酸分子をいう。分解酵素による分解を受けにくくする目的で、二重鎖ポリヌクレオチドの末端部にアデニンのループをいれ、リボン型構造にしたものも、デコイ核酸に含まれる。デコイ核酸の標的分子としては、LIV遺伝子の翻訳産物のうち配列特異的に核酸分子に結合性を有するもの(転写因子等)、及びLIV遺伝子の発現を正に制御している転写因子が好ましい。任意の転写因子等について、その核酸結合性に関する、ヌクレオチド配列特異性に基づき、当業者であれば容易にデコイ核酸をデザインすることが可能である。
本発明により提供されるLIV遺伝子に対する阻害性核酸分子は、肝臓疾患の予防又は治療剤の有効成分等として極めて有用である。
8.肝臓疾患の予防又は治療剤
本発明の肝臓疾患の予防又は治療剤は、その有効成分として、以下のa)〜d)の化合物を含有することを特徴とする:
a)LIV遺伝子群から選ばれるいずれかの遺伝子に対する阻害性核酸分子;
b)LIV遺伝子群から選ばれるいずれかの遺伝子の翻訳産物に特異的に結合する抗体;
c)LIV遺伝子群から選ばれるいずれかの遺伝子の翻訳産物若しくはその塩;
d)LIV遺伝子群から選ばれるいずれかの遺伝子をコードする核酸分子。
上記a)における阻害性核酸分子は、上記「LIV遺伝子に対する阻害性核酸分子」の項に記載されたものと同様のものを用いることができ、例えば、LIV遺伝子に対するアンチセンス核酸、リボザイム、RNAi誘導性核酸、デコイ核酸などが挙げられる。これらの阻害性核酸分子はそれ自体で用いることも可能であり、あるいは当該阻害性核酸分子を機能可能であるように発現調節エレメントに連結された発現ベクターとして用いられてもよい。
これらの阻害性核酸分子又は発現ベクターを、対象に有効量投与することにより、LIV遺伝子の転写産物又は翻訳産物の発現量や機能が抑制され、LIV遺伝子の転写産物又は翻訳産物の発現量や機能の亢進に起因する肝臓疾患を予防又は治療し得る。
これらの阻害性核酸分子又は発現ベクターは、通常、当該阻害性核酸分子の標的であるLIV遺伝子が発現している細胞、好ましくは肝臓細胞に導入可能な様式で、肝臓疾患患者に投与される。細胞への阻害性核酸分子又は発現ベクターの導入は、インビボあるいはエキソビボで行うことができる。
上記b)における抗体は、LIV遺伝子の翻訳産物の活性を阻害する抗体であり得る。当該抗体の有効量を対象に投与することにより、LIV遺伝子の翻訳産物の活性が阻害され、LIV遺伝子の転写産物又は翻訳産物の発現量や機能の亢進に起因する肝臓疾患を予防又は治療し得る。
上記c)における翻訳産物は、天然蛋白質または組換え蛋白質であり得る。LIV遺伝子の翻訳産物は、自体公知の方法により調製でき、例えば、a)LIV遺伝子の翻訳産物を含む生体試料(例えば、肝臓細胞)からLIV遺伝子の翻訳産物を回収してもよく、b)宿主細胞(例えば、エシェリヒア属菌、バチルス属菌、酵母、昆虫細胞、昆虫、動物細胞)にLIV遺伝子の翻訳産物発現ベクターを導入することにより形質転換体を作製し、該形質転換体により産生されるLIV遺伝子の翻訳産物を回収してもよく、c)ウサギ網状赤血球ライセート、コムギ胚芽ライセート、大腸菌ライセート等を用いる無細胞系によりLIV遺伝子の翻訳産物を合成してもよい。LIV遺伝子の翻訳産物は、塩析や溶媒沈澱法などの溶解度を利用する方法;透析法、限外ろ過法、ゲルろ過法、およびSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法などの主として分子量の差を利用する方法;イオン交換クロマトグラフィーなどの荷電の差を利用する方法;アフィニティークロマトグラフィー、LIV遺伝子の翻訳産物抗体の使用などの特異的親和性を利用する方法;逆相高速液体クロマトグラフィーなどの疎水性の差を利用する方法;等電点電気泳動法などの等電点の差を利用する方法;これらを組合せた方法などにより適宜精製される。
LIV遺伝子の翻訳産物の塩としては、生理学的に許容される酸(例:無機酸、有機酸)や塩基(例:アルカリ金属塩)などとの塩が用いられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸)との塩などが挙げられる。
これらの翻訳産物若しくはその塩を、対象に有効量投与することにより、LIV遺伝子の転写産物又は翻訳産物の発現量や機能が亢進され、LIV遺伝子の転写産物又は翻訳産物の発現量や機能の低下に起因する肝臓疾患を予防又は治療し得る。
上記d)における核酸分子は、上記「核酸分子又はその群」の項に記載されたものと同様のものを用いることができ、mRNA、cDNA、染色体DNA等を用いることができる。該核酸は、DNAであってもRNAであってもよく、あるいはDNA/RNAキメラであってもよいが、好ましくはDNAである。また、該核酸は二本鎖であっても、一本鎖であってもよい。二本鎖の場合は、二本鎖DNA、二本鎖RNA又はDNA:RNAのハイブリッドでもよい。これらの核酸分子はそれ自体で用いることも可能であり、あるいは当該核酸分子を機能可能であるように発現調節エレメントに連結された発現ベクターとして用いられてもよい。
これらの核酸分子又は発現ベクターを、対象に有効量投与することにより、LIV遺伝子の転写産物又は翻訳産物の発現量や機能が亢進され、LIV遺伝子の転写産物又は翻訳産物の発現量や機能の低下に起因する肝臓疾患を予防又は治療し得る。
本発明の肝臓疾患の予防又は治療剤は、上記有効成分と基剤、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、矯味剤、保存剤、安定化剤、懸濁化剤、分散剤、希釈剤、増粘剤、充填剤、保湿剤、着色剤、香料、pH調整剤、増量剤、可溶化剤、緩衝剤、界面活性剤、抗酸化剤、溶解剤、溶解補助剤等の薬理学的に許容される自体公知の担体とを混合することにより製造できる。
また有効成分として上記a)記載の阻害性核酸分子またはd)記載の核酸分子を用いる場合は、更に、当該核酸分子の導入効率を上げる目的で、自体公知の遺伝子導入試薬を添加することもできる。遺伝子導入試薬としては、リポフェクチン、リポフェクタミン等のリポソーム試薬や、ポリブレン、リン酸カルシウム等が挙げられる。
本発明の肝臓疾患の予防又は治療剤はヒトを含む哺乳動物へ自体公知の剤型、例えば、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、ゲルクリーム剤、ローション剤、パスタ剤、リニメント剤、乳剤、外用液剤、硬膏剤、エアゾール剤、吸入剤、スプレー剤、坐剤、浣腸剤、薬浴剤、貼付剤、プラスター剤、テープ剤、点鼻剤、点耳剤、点眼剤、眼軟膏剤等の外用剤、注射剤(液剤、懸濁剤など)、注入剤、点滴剤等の非経口剤、錠剤、顆粒剤、細粒剤、カプセル剤、マイクロカプセル剤、ペレット剤、粉末、散剤、丸剤、飲用液剤、液剤、浸剤、煎剤、エキス剤、懸濁剤(たとえばオリーブ油)、シロップ剤、リモナーデ剤、エリキシル剤、トローチ剤等の経口剤等の剤型で投与される。有効成分として上記a)記載の阻害性核酸分子またはd)記載の核酸分子を用いる場合は、遺伝子銃やハイドロゲルカテーテルのようなカテーテルによって本発明の肝臓疾患の予防又は治療剤を投与し得る。
本発明の肝臓疾患の予防又は治療剤の投与量は、投与対象の年齢、性別、体重、投与ルート、治療効果、有効成分の種類などにより差異はあるが、例えば、経口投与する場合、一般的に成人(60kgとして)においては、一日につき有効成分の重量として約0.1mg〜10000mg投与できる。非経口的に投与する場合(例えば注射剤として投与する場合)は、一般的に成人(60kgとして)においては、一日につき有効成分の重量として約0.01〜3000mg程度を投与できる。
9.LIV遺伝子改変非ヒト哺乳動物
本発明は、LIV遺伝子群から選ばれる1又は2以上の遺伝子が改変された非ヒト哺乳動物を提供する。当該遺伝子改変は、LIV遺伝子の発現を増強させる改変又はLIV遺伝子の発現を減弱させる改変であり得る。
LIV遺伝子の発現の増強とは、LIV遺伝子が外来遺伝子として導入され強制発現している状態、哺乳動物が備えている内在性のLIV遺伝子の転写又は翻訳が増強されている状態、翻訳産物の分解が抑制された状態等を意味する。
LIV遺伝子の発現を増強させた非ヒト哺乳動物は、自体公知の方法で、適当なプロモーターの下流に機能的に連結されたLIV遺伝子を哺乳動物に導入することにより製造できる。プロモーターとしては、哺乳動物細胞において機能可能なプロモーター(CAGプロモーター、SRαプロモーター、EF1αプロモーター、CMVプロモーター、PGKプロモーター、βアクチンプロモーター、U6プロモーター、SV40プロモーター、アデノウイルスの初期又は後期プロモーターなどのプロモーター、tRNAプロモーター等)を用いることができるが、組織特異的プロモーターを用いることにより、組織特異的にLIV遺伝子を強制発現させることができる。LIV遺伝子は正常肝臓細胞に特異的に発現しているので、遺伝子導入に用いる組織特異的なプロモーターとしては、肝臓細胞に特異的なプロモーターを用いることが好ましい。
LIV遺伝子を導入する方法としては、例えば、遺伝子と卵を混合してリン酸カルシウムで処理する方法や、位相差顕微鏡下で前核期卵の核に、微小ピペットで遺伝子を直接導入する方法(マイクロインジェクション法、米国特許第4873191号)、胚性幹細胞(ES細胞)を使用する方法などが挙げられる。その他、レトロウィルスベクターに遺伝子を挿入し、卵に感染させる方法、また、精子を介して遺伝子を卵に導入する精子ベクター法等も開発されている。精子ベクター法とは、精子に外来遺伝子を付着またはエレクトロポレーション等の方法で精子細胞内に取り込ませた後に、卵子に受精させることにより、外来遺伝子を導入する遺伝子組換え法である(M. Lavitranoet et al., Cell, 57, 717, 1989)。
LIV遺伝子は、正常肝臓細胞に特異的に発現しており、その発現量及び/又は変異や多型は肝臓疾患の発症や増悪に関与し得るので、LIV遺伝子の発現を増強させた非ヒト哺乳動物は、肝臓疾患のモデル動物であり得る。また、LIV遺伝子群から選ばれる複数の遺伝子の発現を増強させることにより、より重篤な肝臓疾患モデル動物を製造できる。LIV遺伝子の発現を増強させた非ヒト哺乳動物は、肝臓疾患の治療し得る物質の同定・評価などにおいて極めて有用となり得る。また、薬物による肝毒性の評価又は薬物の奏効性の評価においても極めて有用となり得る。
LIV遺伝子の発現の減弱とは、哺乳動物が備えている内在性のLIV遺伝子の転写又は翻訳が阻害されている状態、哺乳動物が本来備えているべき内在性のLIV遺伝子が欠損した状態、LIV遺伝子の翻訳産物の分解が促進された状態等を意味する。
LIV遺伝子の発現を減弱させた非ヒト哺乳動物は、自体公知の方法で製造できる。例えば、ターゲッティングベクターを用いた相同的組換え(ジーンターゲッティング法)が挙げられる。即ち、LIV遺伝子の染色体DNAを単離し、そのエキソン部分にネオマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子を代表とする薬剤耐性遺伝子、あるいはβ−ガラクトシダーゼ遺伝子、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子を代表とするレポーター遺伝子等を挿入することによりエキソンの機能を破壊するか、あるいはエキソン間のイントロン部分に遺伝子の転写を終結させるDNA配列(例えば、polyA付加シグナルなど)を挿入し、完全なmRNAを合成できなくすること等によって、結果的にLIV遺伝子を破壊するように構築したDNA配列を有するDNA鎖(ターゲッティングベクター)を、相同組換え法によりES細胞の染色体に導入し、当該LIV遺伝子を欠損したES細胞を選択する。或いは、組織特異的または発達段階特異的な様式で特定の遺伝子を欠失させるCre−loxP系等を用いてもよい(Marth,J.D. et al., Clin. Invest., 97, 1999-2002, 1996; Wagner, K.U. et al., Nucleic Acids Res., 25, 4323-4330, 1997)。
更に、当該LIV遺伝子を欠損したES細胞を宿主胚に導入することによりキメラ胚を獲得し、当該キメラ胚を偽妊娠動物の子宮に導入することによりキメラ動物を獲得し、当該キメラ動物を交配することにより、当該LIV遺伝子をホモ又はヘテロに欠損した動物を獲得できる。
また、LIV遺伝子の発現を減弱させた非ヒト哺乳動物は、LIV遺伝子に対する阻害性核酸分子を機能可能であるように適当なプロモーターに連結された状態で非ヒト哺乳動物に導入することによっても製造することが可能である。当該プロモーターとしては、LIV遺伝子の発現を増強させた非ヒト哺乳動物の製造に用いられ得るプロモーターと同様のものを用いることができる。その他、たとえばドミナントネガティブ型のLIV遺伝子を同様に非ヒト哺乳動物に導入することにより、内在性のLIV遺伝子の翻訳産物の活性を実質的に抑制した遺伝子改変動物を製造することもできる。
LIV遺伝子は、正常肝臓細胞に特異的に発現しており、その発現量及び/又は変異や多型は肝臓疾患の発症、増悪等に関与し得るので、LIV遺伝子の発現を減弱させた非ヒト哺乳動物は、肝臓疾患の研究・治療薬の開発において極めて有用となり得る。また、薬物による肝毒性の評価又は薬物の奏効性の評価においても極めて有用となり得る。
以下、段階的サブトラクション法およびDNAチップを用いる、哺乳動物の肝臓細胞に特異的に発現している遺伝子群の単離について詳述する。
実施例1:LIV遺伝子群の単離
実験例1:細胞サンプルの調製
細胞サンプルは次のようにして集めた。すなわち、インフォームド・コンセントを取って採取した肝臓癌患者(10人)の正常部分を用意し、後述のように mRNA を採取した。
また、市販のヒト肺正常二倍体線維芽細胞、胎児肺由来、TIG-1細胞株(財団法人ヒューマンサイエンス振興財団;PDL=約20)あるいは正常ヒト小腸上皮細胞Cell System-IE Cell株(大日本製薬;Cat# CS-ABI-519)を仔牛血清10%を含むDMEM培地で培養した。100mmディッシュにスプリットレシオ 1:4で5-7日に1度継代し、70-80% コンフルエントまで培養した。これらの細胞はPBSを加えピペットで除く洗浄操作を2回繰り返して洗浄し、これにより約107個の細胞数を得た。このシャーレの中にグアニジンイソチオシアネート/セシウム・トリフルオロ酢酸を直接加え、以下の工程に用いた。
実験例2:total RNAの抽出
各細胞のtotal RNAをグアニジンイソチオシアネート/セシウム・トリフルオロ酢酸法にて抽出した(岡山ら、Methods of Enzymology 154, 3-28 (1987))。各細胞を5.5M GTC溶液 1mlに溶解した。
詳細には、グアニジンイソチオシアネート 64.9g、クエン酸ナトリウム2水 0.74g、ラウリルサルコシンナトリウム 0.5gを滅菌ミリQ水 100mlに溶解して5.5M GTC溶液を調製し、使用直前に2-メルカプトエタノール 1/71を添加した。次いで、この溶液を18Gの注射針に粘性が減少するまで数回通した。遠心分離により細胞破片を除去した後、CsTFA溶液 15ml上に重層した。なお、CsTFA溶液は、CsTFA 100ml (アマシャムファルマシア)、0.5M EDTA 39.5ml、滅菌ミリQ水 58.15mlを合わせて調製した。
次に、この溶液を遠心分離(17℃、25000rpm、24時間)に供し、得られた沈殿を4M GTC溶液 600μlに溶解した。溶解後、遠心分離にて不溶物を除去し、1M 酢酸 15μl、エタノール 450μlを加え、混合後-20℃で3時間冷却した。遠心分離(4℃、15000rpm、10分)後、上清を除き沈殿をTE 330μlに溶解した。次に2M NaCl 33μl, エタノール 990μlを加え、混合後-20℃で3時間冷却した。遠心分離(4℃、15000rpm、10分)後、上清を除き、沈殿をTE 330μlに溶解した。
実験例3:polyA+ RNAの抽出
オリゴdTセルロースカラムを用いてmRNAの抽出を行なった。詳細には、0.2gのオリゴdTセルロース(Collaborative Research)に20mlの滅菌水を加え、室温で10分間放置した。上清を除き、再度滅菌水 10mlを加え、カラム(0.6cm径)に注ぎ、高さが約1cmになるようにした。これを約8mlのTE/NaCl(TEと1M NaClを等量混合した液)で平衡化した。
実験例2で得られたtotal RNAに2倍量の1M NaClを加え上記平衡化したカラムに通した。スルー液を再度カラムに通し約8mlのTE/NaClで洗浄した。これにTE 0.5mlを合計6回通し、各フラクションを回収した。各画分について、その一部にエチジウムブロミドを添加し、RNAの有無を調べ、RNAを含む画分を回収した。RNA画分はエタノール沈殿により精製され、最終的に、それぞれ約50μgのpolyA+ RNAを得た。
実験例4:cDNAライブラリーの作製
4.1.first strandの作製
上記で得られた各polyA+ RNAを4.5μg相当分チューブに取り、65℃で5分間加熱後、氷上で急冷した。ここに10X first strand buffer 2.5μl、0.1M DTT 2.5μl、first strand methyl nucleotide mix 1.5μl (いずれもZAP cDNA Synthesis Kit (ストラタジーン))およびリンカープライマー: (GA)10ACGCGTCGACTCGAGCGGCCGCGGACCG(T)181.0μl (1.6μg/μl)、RNase Inhibitor 0.5μl (40unit/μl) (東洋紡)、滅菌水 8.5μlを加え、室温で10分放置し、プライマーをアニールさせた。次に逆転写酵素 2μl (20unit/μl) (生化学工業)を加え、37℃で40分、さらにSuperscriptII (200unit/μl) (GIBCO BRL)を加え、48℃で40分反応させた。
4.2.second strandの作製
上記反応液に10X second strand buffer 20μl、0.1M DTT 7.5μl、second strand methyl nucleotide mix 3μl (いずれもZAP cDNA Synthesis Kit (ストラタジーン)、ミリQ滅菌水 132.5μlを加えていった。そこにRNaseH (1.5unit/μl) 1.5μl (東洋紡)、E.coli DNA pol I 6μl (9unit/μl) (東洋紡)を加え、16℃で150分反応させた。反応終了後、フェノール/クロロホルム 200μlを加え、混合後、遠心分離(4℃、15000rpm、10分)し上層を取った。これをさらにクロロホルム 200μlと混合後、遠心分離(4℃、15000rpm、10分)し上層を取った。これをミリポアフィルター:UFCP3TK50にのせ、遠心分離し(4℃、10000rpm、20分)溶液をすべて落とした。さらに上室にTE 100μlを加え、遠心分離し(4℃、10000rpm、20分)溶液をすべて落とし洗浄する操作を2回繰り返した。この後、上室のフィルターに30μlの1/10 TEを加え、よく攪拌しcDNAを溶出した。
4.3.末端の平滑化
上記のcDNA溶液に10X second strand buffer 10μl、blunting nucleotide mix 5μl (いずれもZAP cDNA Synthesis Kit (ストラタジーン))、ミリQ滅菌水 51.5μlを加えていった。ここにPfu DNA pol (2.5unit/μl) 3.5μl (ストラタジーン) を加え、37℃で30分反応させた。反応終了後、フェノール/クロロホルム 200μlを加え、混合後、遠心分離(4℃、15000rpm、10分)し上層を取った。これをさらにクロロホルム 200μlと混合後、遠心分離(4℃、15000rpm、10分)し上層を取った。これをミリポアフィルター:UFCP3TK50にのせ、遠心分離し(4℃、10000rpm、20分)溶液をすべて落とした。さらに上室にTE 100μlを加え、遠心分離し(4℃、10000rpm、20分)溶液をすべて落とし洗浄する操作を2回繰り返した。この後、上室のフィルターにTE 20μlを加え、よく攪拌しcDNAを溶出した。
4.4.アダプターライゲーション
上記反応液の内4μlをとり、10X ligation buffer 2μl、ATP 2μl、BglII-SmaIアダプター 1μl、滅菌ミリQ水 10μlを加えた。これを氷上に5分置いた後、T4 DNA ligase (4unit/μl) 1.5μl (東洋紡)を加え、8℃で24時間反応させた。終了後、70℃で30分加熱し、氷冷した。ここにNotI補充液 27μlおよびNotI 3μl (10unit/μl) (NEB) を加え37℃で90分間反応させた。なお、NotI 補充液の組成は、278mM NaCl、8mM MgCl2、1.8mM DTT、0.018% BSA、0.018% Triton X-100である。
次いで、この反応液に10X STE 5μl、tRNA (2μg/μl) 5μlを加え、10μlずつCLOMA SPIN-400(クロンテック)にアプライした。遠心分離(4℃、2100rpm、5分)後、溶出液に等量のフェノールクロロホルムを加え、混合後、遠心分離(4℃、15000rpm、10分)し上層を取った。これをさらに等量のクロロホルムと混合後、遠心分離(4℃、15000rpm、10分)し上層を取った。これに5M NaCl 4μl、エタノール100μlを加え、混合後、-80℃に3時間放置した。遠心分離(4℃、15000rpm、10分)し上清を除き、さらに70% エタノール100μlを加え遠心分離(4℃、15000rpm、10分)し上清を除いた。
4.5.ベクターライゲーション
沈殿に10X ligation buffer 3μl、10mM ATP 3μl、ミリQ滅菌水 22μlを加え溶解し、予めNotI、BglII、BAPで処理したpAP3neo 1μl (1μg/μl) を加えた。氷上に5分間置いた後、T4 DNA ligase 1μl (4unit/μl) (東洋紡) を加え、12℃で40時間反応させた。終了後、70℃で30分加熱し、氷冷した。反応終了後、フェノールクロロホルム 200μlを加え、混合後、遠心分離(4℃、15000rpm、10分)し上層を取った。これをさらにクロロホルム200μlと混合後、遠心分離(4℃、15000rpm、10分)し上層を取った。これをミリポアフィルター:UFCP3TK50にのせ、遠心分離し(4℃、10000rpm、20分)溶液をすべて落とした。さらに上室にTE 100μlを加え、遠心分離し(4℃、10000rpm、20分)溶液をすべて落とし洗浄する操作を2回繰り返した。この後、上室のフィルターにTE 30μlを加え、よく攪拌しcDNAを溶出した。
4.6.形質転換
前記ライゲーション液の内、15μl (5μlX3) をエレクトロポレーション用大腸菌DH12Sに導入した。SOC培地 2mlを加え、37℃で1時間培養した後、アンピシリンを含むLB培地 500mlに移した。約6時間37℃で培養した後、200mlを取り、ヘルパーファージ (R408) を加え、さらに37℃で終夜培養した。翌日、当業者に周知の方法で、1本鎖プラスミドDNAを抽出した。一方、残りの300mlはそのままLB培地で終夜培養し、翌日当業者に周知の方法で2本鎖プラスミドDNAを抽出した。
実験例5:サブトラクションライブラリーの作製
5.1.線維芽細胞/小腸上皮細胞のpolyA+RNAのビオチン化
線維芽細胞/小腸上皮細胞のpolyA+ RNA 10μg相当をチューブに取り、ミリQ滅菌水で希釈して20μlとした。ここにPHOTOPROBE BIOTIN 10μl (1μg/μl)を加え混合後、約10cmの高さから水銀灯を20分照射しビオチン化を行った。Tris-HCl (pH9.5)/1mM EDTA 70μlを加え、さらに水飽和ブタノール 100μlを加えよく混合した。遠心分離後(4℃、10000rpm、10分)水層をとり、さらにクロロホルムでの抽出を行った。水層に10分の1量の 3M 酢酸アンモニウム、3倍量のエタノール、1μgのグリコーゲンを加え、-80℃で30分放置後、遠心分離し(4℃、15000rpm、10分)、上清を除いた。さらに70%エタノール 100μlを加え遠心分離(4℃、15000rpm、10分)し上清を除いた。沈殿をミリQ滅菌水 20μlで溶解し、さらにここにPHOTOPROBE BIOTIN 10μl (1μg/μl)を加え上記の操作をもう一度繰り返した。
5.2.cDNAとビオチン化RNAのハイブリダイゼーション
前記ビオチン化RNA 5μg分を8μlのミリQ滅菌水に溶解し、2XHB 12.5μl、2M NaCl 2.5μl、poly(A) 1μl (1μg/μl) (アマシャムファルマシア)、および肝臓細胞ライブラリー由来のssDNA 1μl (0.5μg/μl)を加えた。65℃で10分加熱した後、42℃で48時間ハイブリダイゼーションを行った。終了後、SB溶液 400μl、ストレプトアビジン 5μl (2μg/μl) (GIBCO BRL)を加え、室温で5分間放置した。フェノールクロロホルム処理を行い、TE 100μl加えて再抽出を行った後、上清にストレプトアビジン 5μl (2μg/μl)を加えた。再度フェノールクロロホルム処理を2回、クロロホルム処理を1回行った。これをミリポアフィルター:UFCP3TK50にのせ、遠心分離し(4℃、10000rpm、20分)溶液をすべて落とした。さらに上室にTE 100μlを加え、遠心分離し(4℃、10000rpm、20分)溶液をすべて落とし洗浄する操作を2回繰り返した。この後、上室のフィルターにTE 30μlを加え、よく攪拌しcDNAを溶出した。これを真空乾燥し、ミリQ滅菌水で9μlに調製した。
この溶液に対して上記ハイブリダイゼーション以降の処理を再度行った。最終液はTE 30μlで溶出した。
5.3.2本鎖DNAの合成、大腸菌への導入
上記ssDNA溶液 15μlにミリQ滅菌水 14μl、5'APプライマー 1μl (0.2μg/μl) を加え、65℃で10分間加熱した。室温に5分放置し、プライマーをアニールさせ、10X buffer 5μl (宝酒造, Bcabest sequencing kit用)、1mM dNTP 10μl、SSB 0.5μl (3μg/μl)、Bca Best DNA pol 2μl (2unit/μl)、ミリQ滅菌水 3μlを加えた。これを65℃で1時間反応させ2本鎖DNAを合成した。反応液にTE 50μlを加え、フェノール/クロロホルム処理を行った。TEを100μl加えて再抽出を行った後、これをミリポアフィルター:UFCP3TK50にのせ、遠心分離し(4℃、10000rpm、20分)溶液をすべて落とした。さらに上室にTE 100μlを加え、遠心分離し(4℃、10000rpm、20分)溶液をすべて落とし洗浄する操作を2回繰り返した。この後、上室のフィルターにTE 25μlを加え、よく攪拌しcDNAを溶出した。これを6.25μlずつ4本に分割しエレクトロポレーションで大腸菌に導入した。各々に対しSOC培地 1.5mlを加え、37℃で1時間培養した後、1本にまとめ、アンピシリンを含むLB培地 500mlに移した。約6時間37℃で培養した後、470mlを取り、ヘルパーファージ(R408)を加え、さらに37℃で終夜培養した。翌日、当業者に周知の方法で、1本鎖プラスミドDNAを抽出した。一方、残りの30mlはそのままLB培地で終夜培養し、翌日、周知の方法で2本鎖プラスミドDNAを抽出した。
実験例6:1次サブトラクションライブラリーのインサートヌクレオチド配列チェック
上記で得られた1次サブトラクションライブラリーより任意の500個のクローンを選び当業者に周知のアルカリ-SDS法でプラスミドを抽出した。この内、1μgを用いヌクレオチド配列の決定を行った。すなわち、プラスミド溶液 10μlにBigDye試薬 4μl(ABI)、シーケンシングプライマー 1μl (3.2pmole/μl)を加え、サーマルサイクラーにて95℃20秒-50℃20秒-60℃4分の反応を25サイクル行った。反応液をセファデックスG100で精製し、ABIオートシークエンサーにて電気泳動し、ヌクレオチド配列を得た。
実験例7:ノザンブロット
上記で得られたクローンのうち、重複の無いクローンについて、それぞれのプラスミド0.5μgをSmaI/NotIで切断し、0.8% アガロースゲル電気泳動にてインサートを切り出した。Quiaquick Gel Extraction kitにてゲルから最終液量30μlのDNAフラグメントを回収した。このうち、10μlずつを混合し、Random Primer labeling kit (宝酒造) にてプローブのラベリングをおこなった。すなわち、混合したDNA断片 50ngにランダムプライマー1μlを加え、95℃で5分間加熱後、急冷しDNAを変性させた。ここに、10X buffer 1.25μl、dNTP mix 1.25μl、(α-32P)dCTP 2μl (3000Ci/mmole) (アマシャムファルマシア)、klenow 0.5μl (2unit/μl)を加え、37℃で30分反応した。ついで65℃で10分加熱しklenowを変性させた。反応液をセファデックスG-50にかけ、未反応の(α-32P)dCTPを除いた。
肝臓細胞及び線維芽細胞/小腸上皮細胞由来のtotal RNAをそれぞれ3μgずつ電気泳動したホルムアミド変性アガロースゲルから、バイオダインAにRNAを転写した。80℃で2時間ベイクしRNAを膜に固定化した。
これをハイブリバッグに入れハイブリダイゼーションバッファー 2mlを加え42℃で2時間プレハイブリダイゼーションを行った。ここに95℃で5分加熱後急冷し変性した上記標識プローブを加え42℃で24時間ハイブリダイゼーションを行った。
ハイブリダイゼーションの終了した膜を2X SSC/0.1% SDS 10ml中で3回、0.1X SSC/0.1% SDS 10ml中で3回洗浄後、オートラジオグラフィーを行った。
ここで、ヒト肝臓細胞、特にヒト正常肝臓細胞に特異的に発現している遺伝子(LIV遺伝子)を特定した。
実験例8:解析クローンからのRNA合成とビオチン化
ノザンハイブリダイゼーションを行った個々のクローンについて、これらを1次サブトラクションライブラリーから差し引くためのビオチン化RNAを作製した。すなわちこれらのプラスミドを混合し、そのうち20μgをとり、10X buffer 4 (NEB) 10μl、BSA (NEB) 10μl、NotI 5μl (10unit/μl) (NEB)を加え、ミリQ滅菌水で全量を100μlとし、37℃で20時間反応させた。
次いで、反応液にTE 100μlを加え、フェノール/クロロホルム処理を行った。TE 100μlを加えて再抽出を行った後、これをミリポアフィルター:UFCP3TK50にのせ、遠心分離し(4℃、10000rpm、20分)溶液をすべて落とした。さらに上室にTE 100μlを加え、遠心分離し(4℃、10000rpm、20分)溶液をすべて落とし洗浄する操作を2回繰り返した。この後、上室のフィルターにTE 30μlを加え、よく攪拌しcDNAを溶出した。これに10X buffer 10μl (T7RNAポリメラーゼに附属,東洋紡)、10mM rNTP 10μl、RNase Inhibitor 1μl (40unit/μl) (東洋紡)、T7 RNAポリメラーゼ 3μl (160unit/μl) (東洋紡)を加え、ミリQ滅菌水で全量を100μlとし、37℃で1.5時間反応した。これにDNase 1μl (70unit/μl) (宝酒造) を加え、37℃で15分間反応し鋳型DNAを分解した。反応液をフェノール/クロロホルム処理1回、クロロホルム処理1回した後、エタノール沈殿し、70% エタノールでリンス後、TE 50μlに溶解した。この操作により100μgのRNAが得られた。
実験例9:さらなるサブトラクションライブラリーの作製
9.1.2次サブトラクションライブラリーの作製
実験例8で得られたRNAの内、5μgを取り、実験例5記載の方法により2次サブトラクションライブラリーを作製した。このあと実験例6〜7記載の方法により、さらにヒト肝臓細胞、特にヒト正常肝臓細胞に特異的に発現している遺伝子を特定した。
9.2.3次サブトラクションライブラリーの作製
実験例8記載の方法により、3次サブトラクション用RNAを作製し、実験例5記載の方法により3次サブトラクションライブラリーを作製した。その後、実験例6〜7に記載の方法により、さらにヒト肝臓細胞、特にヒト正常肝臓細胞に特異的に発現している遺伝子を特定した。3次サブトラクションライブラリーのヌクレオチド配列を確認したところ、数種類のクローンしか存在しないことが明らかとなり、ここまでの操作でヒト肝臓細胞、特にヒト正常肝臓細胞に特異的に発現しているLIV遺伝子25個が得られた。
実施例2:DNAチップによる遺伝子群の同定
実施例1と同じ肝臓細胞を用い、実験例1、2記載の方法により、total RNAを抽出した。肝臓細胞由来のtotal RNAの一部(1.25ml相当)を等量ずつ取って混合し、Cy3標識用およびCy5標識用に各500ng相当取ってcDNA合成に使用した。合成したcDNAはそのままテンプレートとして、Cy3、Cy5を取り込ませながらcRNAの増幅合成と標識を行った。線維芽細胞/小腸上皮細胞由来のtotal RNAにおいても同様の操作を行い、Cy3、Cy5のそれぞれを標識したcRNAの合成を行った。
合成したcRNAは、肝臓細胞由来Cy3標識cRNA 1μg相当と線維芽細胞/小腸上皮細胞由来Cy5標識cRNA 1μg相当を混合して、44K Human Genome microarray(アジラント社)に競合的ハイブリダイゼーションを行った。肝臓細胞由来Cy5標識cRNA 1μg相当と線維芽細胞/小腸上皮細胞由来Cy3標識cRNA 1μg相当を混合して、色素を入れ換えた(Dye swap)cRNAについても同様に、44K Human Genome microarrayに競合的ハイブリダイゼーションを行った。
ハイブリダイゼーション後、これら2枚のマイクロアレイをスキャナーでシグナルを検出して数値化・平均化し、肝臓細胞において線維芽細胞/小腸上皮細胞よりも2倍以上の値のある遺伝子についてリストアップした。
このうち、発現差の大きい順の250遺伝子(塩基配列を入手可能なもの)を選択し、そのcDNA に相当するオリゴヌクレオチドを合成した。肝臓細胞由来および線維芽細胞/小腸上皮細胞由来のRNAから逆転写酵素によってcDNA を生合成し、GAPDHによって量を合わせたうえで、各遺伝子についてPCRによって発現量を検索した。そのうち、肝臓細胞にのみバンドが観察された遺伝子のみを選択し、再度PCRをかけてバンド強度差の再現性を確認した。
ここまでの操作でヒト肝臓細胞、特にヒト正常肝臓細胞に特異的に発現しているLIV遺伝子104個をほぼ網羅的に取得できたと考えられた。取得したLIV遺伝子群についての概要を表1に示す。
また、ヒト肝臓細胞、特にヒト正常肝臓細胞に特異的に発現している各遺伝子のノザンブロッティングの結果を図1に、また、RT−PCRの結果を図2、図3に示す。左のレーンが線維芽細胞/小腸上皮細胞由来のRNA、右のレーンが肝臓細胞由来のRNAである。図1〜3に示される結果より、肝臓細胞では、表1に示されるLIV遺伝子が高発現しているのに対し、線維芽細胞/小腸上皮細胞ではLIV遺伝子がほとんど発現していないことが理解される。
以上より、ヒト肝臓細胞、特にヒト正常肝臓細胞に特異的に発現している遺伝子群の網羅的な同定に成功したことが明らかとなった。
本発明は、肝臓の異常に起因する疾患の診断、治療、治療薬の開発、検査基準用データの作成などに有用である。特に、哺乳類の肝臓細胞に特異的に発現している遺伝子群が初めて網羅的に同定されたことから、当該遺伝子群を利用することで、肝臓の異常に起因する疾患の診断・治療の精度を飛躍的に向上させることができるため、本発明は非常に有用である。
段階的サブトラクション法によりクローンした、ヒト肝臓細胞に特異的に発現している遺伝子群の内、LIV−001〜LIV−025におけるノザンブロッティングを示す。右下の写真はGAPDH遺伝子の発現を示す。左のレーン(NIT)がRNAmix(Normal、Intestine、TIG)、右のレーン(hLiv)が肝臓細胞由来のRNAである。 DNAチップ(アジラント社;Hu44K)によりクローンした、ヒト肝臓細胞に特異的に発現している遺伝子群の内、LIV−026〜LIV−065におけるRT−PCRを示す。再現性をとった実験結果(2回分)を遺伝子ごとに示した。右下の写真はGAPDH遺伝子の発現を示す。左のレーン(NIT)がRNAmix(Normal、Intestine、TIG)、右のレーン(hLiver)が肝臓細胞由来のRNAである。 DNAチップ(アジラント社;Hu44K)によりクローンした、ヒト肝臓細胞に特異的に発現している遺伝子群の内、LIV−066〜LIV−104におけるRT−PCRを示す。右下の写真はGAPDH遺伝子の発現を示す。再現性をとった実験結果(2回分)を遺伝子ごとに示した。左のレーン(NIT)がRNAmix(Normal、Intestine、TIG)、右のレーン(hLiver)が肝臓細胞由来のRNAである。

Claims (16)

  1. 正常肝臓細胞に特異的に発現している遺伝子群LIV−001〜LIV−104から選ばれる1又は2以上の遺伝子の各ヌクレオチド配列若しくはその部分配列又はそれらの相補配列を有する核酸分子又はその群が固定化された、核酸アレイ。
  2. 正常肝臓細胞に特異的に発現している遺伝子群LIV−001〜LIV−104から選ばれる1又は2以上の遺伝子の各翻訳産物に特異的に結合する抗体又はその群が固定化された、抗体アレイ。
  3. 対象から採取された肝臓細胞を含む生体試料において、正常肝臓細胞に特異的に発現している遺伝子群LIV−001〜LIV−104から選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現量を測定することを含む、薬物による肝毒性、肝臓疾患、肝機能又は肝臓疾患に対する薬物の奏効性の検査方法。
  4. 対象から採取された生体試料において、正常肝臓細胞に特異的に発現している遺伝子群LIV−001〜LIV−104から選ばれる1又は2以上の遺伝子の変異及び/又は多型を検出することを含む、薬物による肝毒性、肝臓疾患、肝機能又は肝臓疾患に対する薬物の奏効性の検査方法。
  5. 正常肝臓細胞に特異的に発現している遺伝子群LIV−001〜LIV−104から選ばれる1又は2以上の遺伝子の測定用物質を含有する、薬物による肝毒性、肝臓疾患、肝機能又は肝臓疾患に対する薬物の奏効性の検査用試薬。
  6. 正常肝臓細胞に特異的に発現している遺伝子群LIV−001〜LIV−104から選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現量、並びに/又は当該遺伝子の変異及び/若しくは多型について、薬物による肝毒性、肝臓疾患、肝機能又は肝臓疾患に対する薬物の奏効性との相関を見出し、当該相関を薬物による肝毒性、肝臓疾患、肝機能又は肝臓疾患に対する薬物の奏効性の検査基準用データとして取得する、薬物による肝毒性、肝臓疾患、肝機能又は肝臓疾患に対する薬物の奏効性の検査基準用データの作成方法。
  7. 被験物質が、正常肝臓細胞に特異的に発現している遺伝子群LIV−001〜LIV−104から選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現又は活性を調節するか否かを評価することを含む、肝毒性を有し得る物質或いは肝臓疾患を予防又は治療し得る物質の同定方法。
  8. 細胞に被験物質を接触させ、遺伝子群LIV−001〜LIV−104から選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現量を測定し、測定された発現量に基づき、被験物質が肝毒性を有し得るか否か或いは肝臓疾患を予防又は治療し得るか否かを評価することを含む、請求項7記載の方法。
  9. 非ヒト哺乳動物に被験物質を投与し、当該非ヒト哺乳動物由来の生体試料における、当該遺伝子群LIV−001〜LIV−104から選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現量を測定し、測定された発現量に基づき、被験物質が肝毒性を有し得るか否か或いは肝臓疾患を予防又は治療し得るか否かを評価することを含む、請求項7記載の方法。
  10. 当該遺伝子群LIV−001〜LIV−104から選ばれるいずれかの遺伝子の翻訳産物と被験物質を接触させ、当該翻訳産物の活性を測定し、測定された活性に基づき、被験物質が肝毒性を有し得るか否か或いは肝臓疾患を予防又は治療し得るか否かを評価することを含む、請求項7記載の方法。
  11. 正常肝臓細胞に特異的に発現している遺伝子群LIV−001〜LIV−104から選ばれるいずれかの遺伝子に対する阻害性核酸分子。
  12. 前記核酸分子が、アンチセンス核酸、デコイ核酸、リボザイム及びRNAi誘導性核酸からなる群から選ばれる、請求項11記載の阻害性核酸分子。
  13. 正常肝臓細胞に特異的に発現している遺伝子群LIV−001〜LIV−104から選ばれるいずれかの遺伝子の発現又は活性を調節する物質を有効成分として含有する、肝臓疾患の予防又は治療剤。
  14. 正常肝臓細胞に特異的に発現している遺伝子群LIV−001〜LIV−104から選ばれる1又は2以上の遺伝子が改変された非ヒト哺乳動物。
  15. 前記改変は当該遺伝子の発現を増強または減弱させる改変である、請求項14記載の非ヒト哺乳動物。
  16. 肝臓疾患のモデル動物、薬物の奏効性の評価用動物又は薬物による肝毒性の評価用動物である、請求項14記載の非ヒト哺乳動物。
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