JP2005102694A - 末梢血液細胞に示差的に発現されている遺伝子群、およびそれを用いた診断方法とアッセイ方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 哺乳動物血液中に存在する細胞の異常に起因する種々の疾患の診断・治療などに有用な手段、並びにこれら疾患の診断・治療などの精度を向上させる手段を提供すること。
【解決手段】 哺乳動物血液中に存在する細胞に特異的に発現している遺伝子群の各遺伝子の核酸配列又はその部分配列をそれぞれ有する核酸分子を含む、核酸分子の群;哺乳動物血液中に存在する細胞に特異的に発現している遺伝子群の各遺伝子の翻訳産物に特異的に結合する抗体を含む、抗体の群;並びに、哺乳動物血液中に存在する細胞に特異的に発現している遺伝子群を解析することを特徴とする、哺乳動物における疾患マーカー遺伝子の探索方法、診断方法、疾患の治療薬の同定方法、及び診断基準用データの作成方法及び当該作成方法により得られうる診断基準データなど。
【選択図】 なし
【解決手段】 哺乳動物血液中に存在する細胞に特異的に発現している遺伝子群の各遺伝子の核酸配列又はその部分配列をそれぞれ有する核酸分子を含む、核酸分子の群;哺乳動物血液中に存在する細胞に特異的に発現している遺伝子群の各遺伝子の翻訳産物に特異的に結合する抗体を含む、抗体の群;並びに、哺乳動物血液中に存在する細胞に特異的に発現している遺伝子群を解析することを特徴とする、哺乳動物における疾患マーカー遺伝子の探索方法、診断方法、疾患の治療薬の同定方法、及び診断基準用データの作成方法及び当該作成方法により得られうる診断基準データなど。
【選択図】 なし
Description
本発明は、哺乳動物血液中に存在する細胞に特異的に発現している遺伝子群の各遺伝子の核酸配列又はその部分配列をそれぞれ有する核酸分子を含む、核酸分子の群;当該遺伝子群の翻訳産物に特異的に結合する抗体を含む、抗体の群;並びに、哺乳動物血液中に存在する細胞に特異的に発現している遺伝子群を解析することを特徴とする、哺乳動物における疾患マーカー遺伝子の探索方法、診断方法、疾患の治療薬の同定方法、及び診断基準用データの作成方法及び使用方法などに関する。
血液中には様々な種類の細胞が存在し、それぞれの機能を発揮しながら協調して生体を維持している。中でも免疫機能にかかわる細胞群は、それぞれ複雑なネットワークを形成しお互いに連携し合いながら機能を発揮している。血液細胞の中でもリンパ球は、獲得免疫応答を担当しており、特異的に病原体を認識する能力を持つ。リンパ球は、T細胞とB細胞の2つのカテゴリーに分類することができる。B細胞はさまざまな抗原に結合する抗体を産生し、侵入してきた病原体を攻撃する。T細胞はさらにいくつかのタイプにわかれる。ヘルパーT細胞は、B細胞の分化や抗体の産生を調節し、マクロファージなどの食細胞と協調して病原体を破壊する。この細胞は細胞表面のCD4がマーカーとなる。細胞障害性T細胞は、自己の細胞がウイルスなどに感染した場合、それを破壊する機能を持つ。この細胞は細胞表面のCD8がマーカーとなる。
獲得免疫応答を作動させるには、抗原提示細胞(APC)が必要である。この細胞に提示される抗原を、ヘルパーT細胞が認識することにより、さまざまな免疫応答が開始される。APCは、抗原をT細胞が認識できるようにプロセッシングし主要組織適合性抗原複合体(MHC)に結合させて提示する。抗原提示を受けたヘルパーT細胞は、病原体を攻撃するエフェクター細胞を選択し増殖・活性化させる。エフェクター細胞の選択は、細胞間の直接接触による作用と、サイトカイン生産を介した間接作用により行われる。細胞傷害性T細胞、NK細胞、マクロファージはヘルパーT細胞により生産されるサイトカインによって活性化する。抗原を認識したB細胞もサイトカインによる刺激を受けて分裂・増殖し形質細胞に分化し、大量の抗体を産生する。
さらに、ヘルパーT細胞は、TH1およびTH2細胞サブ集団と呼ばれる少なくとも2種の異なるサブ集団からなることが知られている。TH1様およびTH2様細胞は、免疫系の種々のエフェクター機能の一部として作用する(例えば、非特許文献1参照)。特にTH1様細胞は食細胞介在宿主防御を誘発して細胞性免疫の発生を指令し、遅延型過敏性と関連する。それゆえに、細胞内微生物による感染はTH1型応答を引き出す傾向がある。TH2細胞は体液性免疫応答を誘導し、それは例えば、ある種の蠕虫寄生体に対する防御と関連し、抗体およびアレルギー性応答に関与する。異なるTH細胞型が異なる免疫エフェクター応答を作動させる能力は、特定のTH細胞サブ集団内で発現されるサイトカインの排他的組合せによることが示された。例えば、TH2細胞はインターロイキン−4(IL−4)、インターロイキン−5(IL−5)およびインターロイキン−10(IL−10)を分泌し、TH1細胞はインターロイキン−2(IL−2)、インターフェロン−γ(IFN−γ)、およびリンフォトキシンを分泌することが知られている。
TH1およびTH2サブ集団は共通のナイーブな前駆体(THPと呼ばれる)から生じると考えられる。例えば、1つのトランスジェニックT細胞受容体を発現するマウス由来のナイーブCD4+細胞はTH1またはTH2細胞型のいずれかへ発達するよう誘導され
得る。関与する抗原の性質および量をはじめとする抗原刺激の条件、抗原提示細胞のタイプ、および存在するホルモンおよびサイトカイン分子のタイプはすべてTH1対TH2分化のパターンの決定因子に該当すると思われる。かかる複雑な一連の可能性のある決定因子に関して、TH1またはTH2分化を駆動する際に重要な厳密な因子の完全な説明はまだ十分にはわかっていない。
得る。関与する抗原の性質および量をはじめとする抗原刺激の条件、抗原提示細胞のタイプ、および存在するホルモンおよびサイトカイン分子のタイプはすべてTH1対TH2分化のパターンの決定因子に該当すると思われる。かかる複雑な一連の可能性のある決定因子に関して、TH1またはTH2分化を駆動する際に重要な厳密な因子の完全な説明はまだ十分にはわかっていない。
ひとたびTH1またはTH2サブ集団が増えると、細胞型は各々に対して独特なサイトカインの作用により、互いを負に調節する傾向がある。例えば、TH2産生IL−10はTH1細胞を負に調節する一方、TH1産生IFN−γはTH2細胞を負に調節する。さらにTH1およびTH2により産生されるサイトカインは互いのエフェクター機能を拮抗させる(例えば、非特許文献2参照)。
不十分な免疫応答ではなくむしろ不適切な免疫応答に起因する可能性がある、様々な免疫疾患が存在する。かかる疾患としては、例えば喘息、アレルギー性鼻炎を含むアレルギーなどのアトピー性疾患(すなわちIgE−介在アレルギー性疾患)、乾癬を含む皮膚炎、病原体への罹病性、慢性炎症性疾患、器官特異的自己免疫疾患、移植拒絶反応および移植片対宿主病が挙げられる。例えば、ヒトおよびネズミの非治癒型のリーシュマニア症は強力でしかも逆効果のTH2様優先免疫応答に起因する。らい腫ハンセン病もまた、優勢なTH2様応答を特徴とするようである。
さらに、多数の病原性微生物に対するTH1介在炎症性応答は有効であるが、自己抗原に対するかかる応答は通常有害である。TH1様の応答の優先的活性化は、多発性硬化症およびインスリン依存性糖尿病などのヒト炎症性自己免疫疾患の病原の中枢であることが示唆されている。例えば、TH1型サイトカインは、多発性硬化症患者の髄液、インスリン依存糖尿病患者の膵臓、橋本甲状腺炎の甲状腺、およびクローン病患者の消化管に優勢に存在し、このことは患者が上記疾患の病因に関連する抗原に対する、TH1様の応答を高めることを示唆している。以上の通り、血液中に存在する細胞は、哺乳動物における種々の生体機能の調節に重要である。
ところで、発現レベル情報が疾患の診断にあるいは治療に有益な情報を提供する遺伝子(マーカー遺伝子)は、これまで種々の疾患に対し同定されてきた。さらには、複数のマーカー遺伝子を組み合わせて遺伝子群として情報を処理することにより、診断および/または治療における効果の精度を飛躍的に高められることが、明らかになっている。例えば、Golubらは、約6000種に及ぶ遺伝子について、リンパ球の内での発現状態をDNAアレイを用いて測定し、ALLとAMLの判別に必要な約200種の遺伝子群を同定した(非特許文献3参照)。また、L.J.van't Veerらは約30000種に及ぶ遺伝子について、乳癌組織の内での発現状態をDNAアレイを用いて測定し、予後の転移の有無の判別に必要な約70種の遺伝子群を同定し、次いで、これらの遺伝子群の発現状態を総合的に処理することにより、単一の遺伝子の発現状態で予測された診断結果に対し、その精度を飛躍的に高めることに成功している(非特許文献4参照)。しかし、これらの遺伝子群を同定するためには、莫大な数の遺伝子の発現状態を解析せねばならず、またその解析手段も複雑なため、多大な労力を必要としていた。
これまでに特異的発現をしている遺伝子群のクローニング法として、サブトラクション法が知られていたが、従来のサブトラクション法では、実際に特異的に発現している遺伝子群を網羅的に捕捉することは不可能に近く、発現量の差異が大きい幾つかの遺伝子のみがクローニングされる場合がほとんどであった。一方、本発明者らが開発した段階的サブトラクション法は、サブトラクション後のライブラリーから、更にサブトラクションを繰り返すことにより、2つのライブラリー間で特異的に発現している遺伝子をほぼ網羅的に捕捉することが可能である(例えば、非特許文献5、特許文献1参照)。しかしながら、
リンパ球を始めとする血液中に存在する細胞が関連していると思われる多くの疾患について、その診断、あるいは治療に、その発現レベルの情報が有益な手段を提供するであろう遺伝子群の網羅的な同定はいまだになされていない。
特開2003-061666号公報
Annual Review of Immunology, 米国, 1989年, 第7巻, pp.145
Immunology Today, オランダ, 1991年, 第12巻, pp.49
Science, 米国, 1999年, 第286巻, pp.531-537
Nature, 英国, 2002年, 第415巻, pp.530-536
EMBO Reports, 英国, 2002年, 第3巻, pp.367-372
リンパ球を始めとする血液中に存在する細胞が関連していると思われる多くの疾患について、その診断、あるいは治療に、その発現レベルの情報が有益な手段を提供するであろう遺伝子群の網羅的な同定はいまだになされていない。
本発明の目的は、哺乳動物血液中に存在する細胞の異常に起因する種々の疾患の診断・治療などに有用な手段を提供することである。また、本発明の別の目的は、これら疾患の診断・治療などの精度を向上させる手段を提供することである。
本発明者は、鋭意検討の結果、段階的サブトラクション法を用い、リンパ球を始めとした血液中に存在する細胞において特異的に発現している遺伝子群を網羅的に捕捉・同定することに成功し、もって上記課題の解決をはかることを達成した。
即ち、本発明は、哺乳動物血液中に存在する細胞に特異的に発現している遺伝子群の各遺伝子の核酸配列又はその部分配列をそれぞれ有する核酸分子を含む、核酸分子の群、特に、当該核酸分子の群が固定された核酸アレイを提供する。
本発明はまた、哺乳動物血液中に存在する細胞に特異的に発現している遺伝子群の各遺伝子の翻訳産物に特異的に結合する抗体を含む、抗体の群、特に、当該抗体の群が固定された抗体アレイを提供する。
本発明はさらに、哺乳動物血液中に存在する細胞に特異的に発現している遺伝子群の中から疾患のマーカー遺伝子を探索することを特徴とする、哺乳動物の疾患マーカー遺伝子の探索方法を提供する。
本発明は、哺乳動物血液中に存在する細胞に特異的に発現している遺伝子群の発現状態を測定することを特徴とする、哺乳動物の診断方法を提供する。本発明はまた、哺乳動物血液中に存在する細胞に特異的に発現している遺伝子群の変異及び/又は多型を検出することを特徴とする、哺乳動物の診断方法を提供する。
本発明はまた、哺乳動物血液中に存在する細胞に特異的に発現している遺伝子群の発現量を測定することを特徴とする、当該細胞の異常に起因する疾患を治療し得る物質の同定方法を提供する。
本発明はさらに、哺乳動物血液中に存在する細胞に特異的に発現している遺伝子群を解析し、当該細胞の異常に起因する疾患の有無及び/又は進行度の診断の指標となり得るパターンを見出すことを特徴とする、診断基準用データの作成方法、及び当該方法により得られうる診断基準用データなどを提供する。
本発明により、哺乳動物血液中に存在する細胞において示差的に発現しているという特徴を有する、医療分野等の産業や学術的に非常に意義のある遺伝子群が提供される。また、この遺伝子群は段階的サブトラクション法によって同定されたものであるゆえ、示差的
に発現されている遺伝子の全てを実質的に網羅しているという特徴をも有する。従って、本発明は、哺乳動物血液中に存在する細胞の異常に起因する種々の疾患、特に当該細胞における遺伝子の発現状態及び/又は当該遺伝子の遺伝子産物の機能の異常に起因すると考えられる種々の疾患の診断・治療、当該疾患のマーカーとなる遺伝子の探索、当該疾患の治療薬の開発、当該疾患の診断基準用データの作成などに有用である。特に、哺乳動物血液中に存在する細胞において示差的に発現している遺伝子群が初めて網羅的に同定されたことから、当該遺伝子群を利用することで、種々の疾患の診断・治療の精度を飛躍的に向上させることができるため、本発明は極めて有用である。
に発現されている遺伝子の全てを実質的に網羅しているという特徴をも有する。従って、本発明は、哺乳動物血液中に存在する細胞の異常に起因する種々の疾患、特に当該細胞における遺伝子の発現状態及び/又は当該遺伝子の遺伝子産物の機能の異常に起因すると考えられる種々の疾患の診断・治療、当該疾患のマーカーとなる遺伝子の探索、当該疾患の治療薬の開発、当該疾患の診断基準用データの作成などに有用である。特に、哺乳動物血液中に存在する細胞において示差的に発現している遺伝子群が初めて網羅的に同定されたことから、当該遺伝子群を利用することで、種々の疾患の診断・治療の精度を飛躍的に向上させることができるため、本発明は極めて有用である。
以下、本発明について詳述する。なお、初めに、本明細書中で用いられる用語の意味を説明し、次いで、本発明の各局面について述べる。
哺乳動物としては、例えば、霊長類、実験用動物、家畜、ペット等が挙げられ特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、ヒト、サル、ラット、マウス、ウサギ、ウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、イヌ、ネコなどが挙げられる。好ましくは、哺乳動物はヒトである。
哺乳動物の「血液中に存在する細胞」とは、哺乳動物の血液中に見出される限り特に限定されず、血液中に通常存在する細胞、特定の条件下でのみ血液中に存在する他の組織由来の細胞、並びに外来の細菌、真菌、ウイルス、リケッチアなどを包括的に意味する。
血液中に通常存在する細胞とは、健康・疾患の状態にかかわらず、血液中に見出される細胞をいい、例えば、多能性造血幹細胞、骨髄性幹細胞、赤芽球前駆細胞、赤芽球、赤血球、顆粒球前駆細胞、顆粒球、単球前駆細胞、単球、マクロファージ前駆細胞、骨髄芽球、分葉核球、巨核球前駆細胞、巨核球、血小板、リンパ球(例えば、リンパ球系幹細胞、T前駆細胞、T細胞、B前駆細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、NKT細胞)等が挙げられる。
特定の条件下でのみ血液中に存在する他の組織由来の細胞とは、ある状況下(例えば、疾患の状態など)でのみ血液中に見出される細胞をいい、例えば、血管中に浸潤した癌細胞などが挙げられる。
本発明においては、上述した血液中に存在する細胞のなかでも、血液中に通常存在する細胞が好ましい。また、上述した血液中に存在する細胞のなかでも、核DNAを保有し、且つ内因性因子等の刺激に応じてmRNAの発現量が変動する細胞(本明細書中、「mRNA発現細胞」と呼ぶ)が好ましい。mRNA発現細胞としては、上述した血液中に通常存在する細胞のうち、血小板、赤血球などを除いた細胞が挙げられる。また、上述した血液中に存在する細胞としては、mRNA発現細胞のなかでも、リンパ球(例えば、リンパ球系幹細胞、T前駆細胞、T細胞、B前駆細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、NKT細胞)がより好ましい。
細胞に「特異的に発現している遺伝子群」とは、特定の細胞で発現しており、比較対照の細胞で発現していない遺伝子の集合、又は特定の細胞と比較対照となる細胞との間で発現量に差異が認められる遺伝子の集合をいう。従って、哺乳動物血液中に存在する細胞に特異的に発現している遺伝子群としては、i)哺乳動物の血液中に存在しない細胞では発現していないが、哺乳動物の血液中に存在する細胞では発現している遺伝子の集合、ii)哺乳動物の血液中に存在しない細胞と比較して、哺乳動物の血液中に存在する細胞で高発現している遺伝子の集合、iii)哺乳動物の血液中に存在しない細胞と比較して、哺乳動物の血液中に存在する細胞で低発現している遺伝子の集合が挙げられる。本発明では
、哺乳動物血液中に存在する細胞に特異的に発現している遺伝子群としては、上述のi)、ii)が好ましい。発現の有無及び発現量は、当該分野で周知の方法により、遺伝子産物の発現量を測定することで決定することができる。
、哺乳動物血液中に存在する細胞に特異的に発現している遺伝子群としては、上述のi)、ii)が好ましい。発現の有無及び発現量は、当該分野で周知の方法により、遺伝子産物の発現量を測定することで決定することができる。
特異的な発現における発現量の差異は、発現量に有意差がある限り特に限定されないが、例えば、約2倍以上、好ましくは約3倍以上、より好ましくは約5倍以上、最も好ましくは約10倍以上の発現量の差異をいう。発現量に有意差があるか否かは、当該分野で周知の方法により遺伝子産物の発現量を測定し、次いでこれら発現量の差異を統計学的方法により解析することで決定することができる。
遺伝子群における遺伝子の数は、哺乳動物血液中に存在する細胞の異常に起因する疾患の診断などに十分な数(例えば、約10%以上)である限り特に限定されないが、診断・治療等の精度向上のため、哺乳動物血液中に存在する細胞に特異的に発現している遺伝子群の内、例えば50%以上、好ましくは約60%の遺伝子、より好ましくは約70%の遺伝子、さらに好ましくは約80%の遺伝子、さらにより好ましくは約90%の遺伝子、一層より好ましくは約95%の遺伝子、最も好ましくは約100%の遺伝子(即ち、哺乳動物血液中に存在する細胞に特異的に発現している実質的に全ての遺伝子)である。また、別の観点では、遺伝子群における遺伝子の数は、哺乳動物血液中に存在する細胞に特異的に発現している遺伝子群の内、例えば約10個、好ましくは約30個、より好ましくは約50個、さらにより好ましくは約100個、一層より好ましくは約200個、最も好ましくは約300個の遺伝子である。なお、今回同定された遺伝子群のなかには、哺乳動物血液中に存在する細胞での特異的な発現が初めて確認された遺伝子が多数含まれており、このような遺伝子は単独でも有用であることから、本発明では、場合に応じて、複数の遺伝子からなる遺伝子群の使用のみならず、単一遺伝子の使用もまた意図される。
比較対照の細胞としては、哺乳動物血液中に存在しない細胞であれば特に限定されないが、好ましくは繊維芽細胞(初代培養、細胞株を含む)である。なお、これら繊維芽細胞の由来する組織は特に限定されないが、皮膚組織由来のものが好ましい。比較対照の細胞は、当該分野で周知の方法を用いて哺乳動物より単離・調製してもよいし、又は市販のものを用いてもよく、若しくは細胞バンク(例えば、ATCCなど)などより入手してもよい。
哺乳動物血液中に存在する細胞に特異的に発現している遺伝子群としては、当該分野で周知の方法により同定したものを用いることができるが、2種の細胞間で示差的に発現している実質的に全ての遺伝子を網羅的に同定できる点を考慮すれば、段階的サブトラクション法により同定したものが好ましい。
段階的サブトラクション法は、異なる生物現象を示す2つの細胞においてサブトラクション(差分化)を段階的に繰り返すことで、当該細胞に示差的に発現している実質的に全ての遺伝子のcDNAを網羅的にクローニングする、というものである。以下、段階的サブトラクション法について、血液中に存在する細胞としてリンパ球を例に挙げて詳述する。
段階的サブトラクション法では、サンプルは、下記の通りに回収することができる。即ち、哺乳動物から採血し、血液をフィコール溶液の上に重層し、低速にて遠心分離を行い、赤血球より上部、血漿の下部において白い帯状にリンパ球を得ることができる。これを注射器で抜き取り、遠心分離によりペレットとした後、PBS等の等張な緩衝液で洗浄し、さらに遠心分離を繰り返す。これを次工程で細胞サンプルとして用いる。なお、発現量の個体差を考慮して、10個体分程度のサンプルを混合することが望ましい。また、比較対照の細胞についても用意する。なお、次工程以降の作業の質を維持するために、それぞ
れ106〜107程度の細胞数を調製することが望ましい。
れ106〜107程度の細胞数を調製することが望ましい。
次いで、異なる2つの細胞間で示差的に発現している遺伝子を同定するために、各細胞からmRNAを単離する。mRNAの単離に際しては、当該分野で周知のRNA単離方法を用いることができる(例えば、Ausubel, F.M.ら編, 1987-1993, Current Protocols in
Molecular Biology, John Wiley & Sons, Inc. New York)。また、多数の細胞サンプルを扱う場合には、例えば、米国特許第4,843,155号に記載の一段階RNA単離方法などを用いることで、細胞サンプルを容易に処理することができる。
Molecular Biology, John Wiley & Sons, Inc. New York)。また、多数の細胞サンプルを扱う場合には、例えば、米国特許第4,843,155号に記載の一段階RNA単離方法などを用いることで、細胞サンプルを容易に処理することができる。
次に、差分化対象となるリンパ球のmRNAからcDNA(cDNAライブラリー)を合成する。得られたcDNAを、f1ヘルパーファージを用いて単鎖化する。一方で、比較対照の細胞から調製したmRNAをビオチン化する。これら2者をハイブリダイズさせ、同一あるいは類似の核酸配列を持つものについて、DNA/RNAハイブリッドを形成させる。次いで、アビジンを固定化したビーズをこれに混合し、ビオチンとアビジンを結合させる。遠心分離により、アビジンが固定化されたビーズを取り除くと、同時にこれに結合したDNA/RNAハイブリッドが除去される。これにより、系中には、DNA/RNAハイブリッドを形成しなかった単鎖cDNAクローン(即ち、リンパ球に存在し、繊維芽細胞には存在しないmRNAに相当するcDNA)が残っていることになる。このcDNAクローンを2本鎖化し、大腸菌に導入して、1次差分化cDNAライブラリーを構築する。
次に、1次差分化cDNAライブラリーから、数百個、好ましくは300から600個のcDNAクローンを無作為に抽出し、その核酸配列を決定する。抽出されたcDNAクローンの中には、リンパ球と繊維芽細胞との間で発現量の差が大きいクローンが重複して存在している。核酸配列の比較により重複しているcDNAクローンを除いた後、残りのcDNAクローンについて、リンパ球由来のRNA、繊維芽細胞由来のRNAに対してノザンブロットを行い、リンパ球に示差的に発現しているcDNAクローンを特定し、1次差分化cDNAライブラリーを得る。
次いで、先に無作為に抽出した数百個のcDNAクローンについて、f1ヘルパーファージを用いて単鎖化し、さらにビオチン化する。また、上記で得られた1次差分化cDNAライブラリーについてもf1ヘルパーファージを用いて単鎖化しておく。これら2者をハイブリダイズさせ、同一あるいは類似の核酸配列を持つものについて、2本鎖DNAを形成させる。ついで、アビジンを固定化したビーズをこれに混合し、ビオチンとアビジンを結合させる。遠心分離により、アビジンが固定化されたビーズを取り除くと、ビーズに結合した2本鎖DNAが同時に除去される。これにより、系中には、2本鎖DNAを形成しなかった単鎖cDNAクローン(即ち、1次差分化cDNAライブラリーに存在し、先に無作為に抽出した数百個のcDNAクローンに含まれなかった単鎖cDNAクローン)が残っていることになる。このcDNAクローンを2本鎖化し、大腸菌に導入して、2次差分化cDNAライブラリーを構築する。
この2次差分化cDNAライブラリーについて、数百個のcDNAクローンを無作為に抽出し、1次差分化cDNAライブラリーの場合と同様にリンパ球に示差的に発現しているクローンを特定する。この場合、新たに同定されるcDNAクローン数は、1次差分化cDNAライブラリーを解析して得られたcDNAクローン数と比して減少しているはずである。
2次差分化cDNAライブラリーについて、1次差分化cDNAライブラリーからの場合と同様に、無作為に抽出した数百個のcDNAクローンをサブトラクションすることにより、3次差分化cDNAライブラリーを構築する。
さらに、数百個のcDNAクローンを無作為に抽出し、リンパ球に示差的に発現しているクローンを上述と同様にして特定する。新たに同定されるクローンが数個になるまで、これらの操作を繰り返せば、リンパ球に示差的に発現しているクローンを網羅的に同定することができる。
なお、最初の0次ライブラリーを構築する際に用いるベクターは特に限定されないが、段階的サブトラクション法においては1本鎖化が必要なため、f1ファージ由来の1本鎖化シグナルを有していることが好ましい。また、cDNAクローンからタンパク質を発現させるため、当該ベクターは、選択される宿主細胞に適切な発現調節配列を有することが好ましい。このような発現調節配列としては、宿主細胞として大腸菌内を用いる場合にはlac、taqなどのプロモーターが挙げられ、宿主細胞として哺乳動物由来の細胞を用いる場合にはサイトメガロウイルスhCMV前初期遺伝子、SV40又はアデノウイルスの初期又は後期プロモーターが挙げられる。なお、段階的サブトラクション法の詳細については、例えば、特開2003-061666号公報、EMBO Reports, vol.3, pp.367-372 (2002) などの文献や下記実施例を参照のこと。
哺乳動物血液中に存在する細胞に特異的に発現している遺伝子群としては、例えば、哺乳動物としてヒトを、血液中に存在する細胞としてリンパ球を、比較対照の細胞として繊維芽細胞を、遺伝子群の同定方法として段階的サブトラクション法を用いて同定された下記の表1に示されるPREB(predominantly expressed in blood cells)遺伝子群であるPREB-001〜PREB-305に対応する核酸配列に相当するものを用いることができる。また、本発明では、PREB-001〜PREB-305と実質的に同一の核酸配列も、PREB-001〜PREB-305に対応する核酸配列に相当するとみなされる。実質的に同一とは、例えば、NCBI(National Center for Biotechnology Information)において初期設定のままBLAST検索をした場合、PREB-001〜PREB-305のいずれかと約85%以上、好ましくは約90%以上、より好ましくは約95%以上、さらにより好ましく約98%以上、最も好ましくは約99%以上の同一性を意味する。なお、同一性の決定の際、長さの異なる2つの核酸配列を比較すると、その2つの核酸配列間の同一性が低く評価されるが、本発明ではこのような比較は意図されない。本発明が意図する核酸配列の比較は、比較されるべき2つの核酸配列の内、より短い核酸配列に長さを合わせて比較するものである。また、PREB-001〜PREB-305に対応する核酸配列をGenBank等の遺伝子バンクに照合することで、哺乳動物血液中に存在する細胞に特異的に発現している遺伝子群として、ヒト以外の哺乳動物のオルソログを得ることもできる。
哺乳動物血液中に存在する細胞の異常に起因する疾患(本明細書中、必要に応じて「疾患」と省略する)とは、哺乳動物血液中に存在する細胞に特異的に発現している遺伝子群の発現量又は機能の異常により生じる疾患をいい、例えば、増殖性疾患、免疫疾患が挙げられる。増殖性疾患とは、細胞の異常な増殖により特徴付けられる疾患をいい、例えば、癌、白血病などが挙げられる。また、免疫疾患とは、リンパ球等の免疫細胞の異常により生じる疾患をいい、例えば、糖尿病、肝障害、宿主対移植片反応、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、自己免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)、血管炎、高安病、慢性腎炎、クローン病、多発性硬化症、動脈硬化、乾癬、白血病、喘息、皮膚炎、アレルギー疾患などが挙げられる。
遺伝子産物とは、転写産物及び翻訳産物を包括的に意味するものである。転写産物とは、哺乳動物血液中に存在する細胞に特異的に発現している遺伝子群から、転写の過程を経て生じるRNAをいうが、好ましくは、転写・プロセシングの過程を経て生じるmRNAをいう。翻訳産物とは、哺乳動物血液中に存在する細胞に特異的に発現している遺伝子群から転写・翻訳の過程を経て生じるタンパク質をいう。翻訳産物は、未修飾であっても翻
訳後修飾されていてもよい。翻訳後修飾としては、例えば、リン酸、糖または糖鎖、リン脂質、脂質、ヌクレオチド等による修飾などが挙げられる。
訳後修飾されていてもよい。翻訳後修飾としては、例えば、リン酸、糖または糖鎖、リン脂質、脂質、ヌクレオチド等による修飾などが挙げられる。
変異とは、哺乳動物血液中に存在する細胞に特異的に発現している遺伝子又は当該遺伝子を含むゲノムDNAの特定のヌクレオチドが一定の頻度で修飾されており(例えば、置換、欠失、付加、反復、逆位、転座など)、且つ当該修飾が、体細胞のゲノムDNAの修飾等の後発的な原因によるものをいう。
多型とは、ある集団において、哺乳動物血液中に存在する細胞に特異的に発現している遺伝子又は当該遺伝子を含むゲノムDNAの特定のヌクレオチドが一定の頻度で修飾されており(例えば、置換、欠失、付加、反復、逆位、転座など)、且つ当該修飾が、生殖系列細胞のゲノムDNAの修飾等の先天的な原因(例えば、人種差、家系等の遺伝的要素)によるものをいう。
以下、本発明の各局面について詳述する。
1.核酸分子の群
本発明で提供される核酸分子の群は、哺乳動物血液中に存在する細胞に特異的に発現している遺伝子群の各遺伝子の核酸配列又はその部分配列をそれぞれ有する複数の核酸分子を含むことを特徴とする。なお、哺乳動物、血液中に存在する細胞、特異的に発現している遺伝子群は、上述したものと同義である。
本発明で提供される核酸分子の群は、哺乳動物血液中に存在する細胞に特異的に発現している遺伝子群の各遺伝子の核酸配列又はその部分配列をそれぞれ有する複数の核酸分子を含むことを特徴とする。なお、哺乳動物、血液中に存在する細胞、特異的に発現している遺伝子群は、上述したものと同義である。
核酸分子の群とは、単離された核酸分子の集合を意味し、特に限定されるものではないが、一度にその用に供することができる状態であるもの、例えば、単一又は複数の固相上に各核酸分子が固定されているもの、単一又は複数の液相中に各核酸分子が溶解しているものなどであり得る。例えば、核酸分子の群は、例えば、マイクロタイタープレートのようなプレート上に各核酸分子が個別に分注された状態で群となっているものでもよい。核酸分子の群における各核酸分子は1本鎖であっても、2本鎖であってもよい。
核酸分子の群における各核酸分子は、DNAであってもRNAであってもよい。RNAの場合はDNAにおいてT(チミジン)で記載されている塩基はU(ウリジン)に読み替えられるものとする。また、各核酸分子の核酸配列は、全長の核酸配列であってもよいし、又はその部分配列(即ち、オリゴヌクレオチド)であってもよい。核酸分子の部分配列の長さは、標的核酸分子の検出に十分な長さであれば特に限定されないが、例えば、少なくとも15bp、好ましくは少なくとも20bp、より好ましくは少なくとも25bp、さらにより好ましくは少なくとも30bp以上であり得る。
核酸分子の群における各核酸分子は、上述した核酸配列又はその部分配列を個別に有している限り特に限定されない。例えば、当該各核酸分子は、i)上述した核酸配列又はその部分配列自体からなる核酸分子、ii)上述した核酸配列又はその部分配列に加え、さらに任意の核酸配列を含む核酸分子であり得る。
上述したii)の核酸分子の一態様としては、例えば、当該核酸分子がインサートとして任意のベクター(例えば、サブクローニング用ベクター、発現ベクターなど)に導入されたものを挙げることができる。例えば、上記の任意のベクターとして発現ベクターを用いる場合、インサートとしての核酸分子は、機能可能であるように発現調節エレメントに連結されていてもよい。発現調節エレメントとしては、例えば、任意のプロモーターを挙げることができ、なかでも、サイトメガロウイルスhCMV前初期プロモーター、SV40及びアデノウイルスの初期又は後期プロモーターが好ましい。
核酸分子の群における各核酸分子は、当該分野で周知の方法により作製することができる。例えば、オリゴヌクレオチドであれば有機化学的方法により作製することができる。また、核酸分子のサイズが大きい場合には、生物学的方法(細胞系、無細胞系を含む)により作製することも可能である。具体的には、生物学的方法としては、核酸合成酵素を用いる方法(例えば、PCR、ICAN(Isothermal and Chimeric primer-initiated Amplification of Nucleic acids)(例えば国際公開第00/56877号パンフレット参照)、LAMP(Loop-mediated isothermal amplification)(例えば国際公開第00/28082号パンフレット参照)など)、核酸分子の群における各核酸分子をインサートとして含む任意のベクター(例えば、プラスミド、BAC、YAC、ファージDNAなど)を細菌に導入し、当該ベクターを増幅させる方法などが挙げられる。
一実施態様では、本発明の核酸分子の群は核酸アレイとして用いられる。核酸アレイにおける各核酸分子は、2本鎖であってもよいが、1本鎖が好ましい。また、核酸アレイの支持体としては、当該分野で通常用いられている支持体であれば特に限定されず、例えば、メンブレン(例えば、ナイロン膜)、ガラス、プラスチック、金属などが挙げられる。
本発明における核酸アレイの形態としては、当該分野で周知の形態を用いることができ、例えば、支持体上で核酸が直接合成されるアレイ(いわゆるアフィメトリクス方式)、支持体上に核酸が固定化されるアレイ(いわゆるスタンフォード方式)、繊維型アレイ、電気化学的アレイ(ECA)等が挙げられる。
アフィメトリクス方式のアレイとは、光リソグラフィー技術及び固相法核酸合成技術によりシリコン支持体上に一定の長さの核酸プローブを搭載した核酸チップをいう。本アレイは、例えば、支持体をマスクと呼ばれる遮光板で覆って露光させるという工程を繰り返すことによって、核酸分子を支持体上で1塩基ずつ合成することにより作製することができる。本アレイは、目的の核酸配列を有する核酸プローブを高密度で固定できるため遺伝子を網羅的に検出できる、核酸プローブを支持体に対し垂直に固定できるのでハイブリダイゼーション効率が高い、定量性や再現性に優れるなどの利点を有する。
スタンフォード方式のアレイとは、支持体上に核酸プローブが共有結合により又は非共有結合により貼り付けられている核酸アレイをいう。本アレイは、例えば、予め調製されたcDNAや合成オリゴDNAなどの核酸プローブを支持体上にスポットすることによって作製される。本アレイは、アフィメトリクス方式のアレイと比較して、1スポット中に大量の未精製cDNA等が含まれている場合にはクロスハイブリダイゼーションが多い、ハイブリダイゼーションが生じにくい、洗浄操作の際に核酸プローブが支持体上から剥がれやすいため定量性・再現性が低いなどの欠点を有するものの、これらの欠点は、核酸プローブとして精製した合成オリゴDNAを用いたり、核酸プローブを支持体上に共有結合によって固定することによって改善することができる。一方、本アレイは、アフィメトリクス方式のアレイと比較して、任意の核酸プローブを搭載できる、ランニングコストが安いなどの利点を有する。また、スタンフォード方式のDNAチップは自作が容易という利点も有する。
繊維型アレイとは、核酸プローブを含む繊維が集合してなるアレイをいう。本アレイは、例えば、中空繊維に核酸プローブを染み込ませ、異なる核酸プローブが染み込んだ中空繊維を束ね、この中空繊維の集合体をスライスすることによって作製することができる。本アレイは、同品質で大量に生産できるため再現性に優れる、DNAが自由度のある構造で固定されておりハイブリダイゼーションの効率が高いため高感度であるなどの利点を有する。
電気化学的アレイ(ECA)とは、ハイブリダイゼーションの検出を電気化学的に行う
核酸アレイをいう。本アレイは、他の核酸アレイとは異なり、核酸を標識せずに、例えば、インターカレート剤(intercalator)を用いることによって核酸を検出する。検出方法としては、例えば、インターカレート剤が挿入したときに生じる電流の差を測定する方法、電圧差が発生すると発光するインターカレート剤から生じる発光を検出する方法などが挙げられる。本アレイは、mRNAにおいて直接測定が可能であり感度や定量性に優れる、PCRが不要、サンプル標識をしないためハイブリダイゼーションの効率が高いなどの利点を有する。
核酸アレイをいう。本アレイは、他の核酸アレイとは異なり、核酸を標識せずに、例えば、インターカレート剤(intercalator)を用いることによって核酸を検出する。検出方法としては、例えば、インターカレート剤が挿入したときに生じる電流の差を測定する方法、電圧差が発生すると発光するインターカレート剤から生じる発光を検出する方法などが挙げられる。本アレイは、mRNAにおいて直接測定が可能であり感度や定量性に優れる、PCRが不要、サンプル標識をしないためハイブリダイゼーションの効率が高いなどの利点を有する。
核酸アレイによる遺伝子群の転写産物の測定は、使用する核酸アレイの形態によっても異なるが、例えば、サンプルのmRNAを標識し、次いでこれを核酸アレイにハイブリダイズさせることにより行なうことができる。標識は、直接検出可能なシグナルを発するものでもよいし、検出可能なシグナルを発する物質に特異的に結合する物質でもよい。直接検出可能なシグナルを発する標識の例としては、蛍光性物質、アルカリフォスファターゼ、放射性同位元素などが挙げられる。検出可能なシグナルを発する物質に特異的に結合する物質の例としては、ビオチン、アビジン、ジゴキシゲニン、抗体などが挙げられる。標識の方法としては、核酸合成酵素を用いて、サンプルの核酸を複製しつつ、標識されたヌクレオチドを取りこませる方法、化学反応でサンプルの核酸に直接結合させる方法などが挙げられる。また、電気化学的に検出する場合には、核酸の標識は必要とされず、例えば、インターカレート剤を用いて電流の差を測定することによって、又は電圧差が発生すると発光するインターカレート剤から生じる発光を検出することによって、遺伝子群の転写産物を測定することができる。
当業者は、アッセイの目的に応じて、上述した核酸アレイの内、適切な核酸アレイを適宜選択することができ、また、当該分野で周知の方法により、例えば、上述したように、これら核酸アレイを作製することができる。
本発明の核酸の群、特に核酸アレイは、哺乳動物血液中に存在する細胞に特異的に発現している遺伝子群の転写産物の発現を網羅的に解析することを可能とし、哺乳動物血液中に存在する細胞の異常に起因する種々の疾患の診断などに利用することができるため極めて有用である。
2.抗体の群
本発明で提供される抗体の群は、哺乳動物血液中に存在する細胞に特異的に発現している遺伝子群の各遺伝子の翻訳産物に特異的に結合する抗体を複数含むことを特徴とする。なお、哺乳動物、血液中に存在する細胞、特異的に発現している遺伝子群、翻訳産物は、上述したものと同義である。
本発明で提供される抗体の群は、哺乳動物血液中に存在する細胞に特異的に発現している遺伝子群の各遺伝子の翻訳産物に特異的に結合する抗体を複数含むことを特徴とする。なお、哺乳動物、血液中に存在する細胞、特異的に発現している遺伝子群、翻訳産物は、上述したものと同義である。
抗体の群とは、単離された抗体の集合を意味し、特に限定されるものではないが、一度にその用に供することができる状態であるもの、例えば、単一又は複数の固相上に各抗体が固定されているもの、単一又は複数の液相中に各抗体が溶解しているものなどであり得る。例えば、抗体の群は、例えば、マイクロタイタープレートのようなプレート上に各抗体が個別に分注された状態で群となっているものでもよい。
本発明の抗体の群における各抗体の種類は特に限定されない。例えば、抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体のいずれであってもよい。また、本発明の抗体の群における各抗体は、キメラ抗体、ヒト型抗体、ヒト抗体、又はこれらのエピトープ結合フラグメントであり得る。なお、本発明の抗体の群における各抗体は、その種類がそれぞれ異なっていてもよい。また、翻訳産物の翻訳後修飾がその機能に重要な役割を果たす場合は、抗体は、未修飾の翻訳産物と修飾後の翻訳産物を識別できるものが好ましい。
哺乳動物血液中に存在する細胞に特異的に発現している遺伝子群における少なくとも一部の遺伝子は既知であると考えられ、これら既知遺伝子の翻訳産物に対する抗体の一部は、ポリクローナル抗体あるいはモノクローナル抗体として市販されている。従って、本発明の抗体の群における一部の抗体に関しては、これら市販物を用いることができる。また、ポリクローナル抗体あるいはモノクローナル抗体は、当該分野で周知の方法によって作製することもできる。具体的には、ポリクローナル抗体は、例えば、哺乳動物血液中に存在する細胞に特異的に発現している遺伝子群の各遺伝子の翻訳産物を抗原として、必要に応じてフロイントアジュバント(Freund's Adjuvant)とともに、哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ)に免疫し、この免疫した哺乳動物(免疫感作動物)から血清を回収することにより作製することができる。また、モノクローナル抗体は、上記免疫感作動物から得た抗体産生細胞と骨髄腫細胞(ミエローマ細胞)からハイブリドーマ(融合細胞)を調製し、該ハイブリドーマをクローン化し、哺乳動物の免疫に用いた抗原に対して特異的親和性を示すモノクローナル抗体を産生するクローンを選択することによって作製することができる。
キメラ抗体は、遺伝子工学的に作製されるモノクローナル抗体であって、具体的には、例えば、可変領域がマウスイムノグロブリン由来の可変領域であり、かつ定常領域がヒトイムノグロブリン由来の定常領域であるマウス/ヒトキメラモノクローナル抗体等の抗体を意味する。キメラ抗体は、当該分野で周知の方法により作製することができる(例えば、特公平3-73280号公報を参照のこと)。
ヒト型抗体(CDR-grafted抗体)は、遺伝子工学的に作製されるモノクローナル抗体であって、具体的には、その超可変領域の相補性決定領域の一部または全部がマウスモノクローナル抗体に由来する超可変領域の相補性決定領域であり、その可変領域の枠組領域がヒトイムノグロブリン由来の可変領域の枠組領域であり、かつその定常領域がヒトイムノグロブリン由来の定常領域である抗体等を意味する。ヒト型抗体は、当該分野で周知の方法により作製することができる(例えば、特表平4-506458号公報、特開昭62-296890号公報を参照のこと)。
ヒト抗体とは、イムノグロブリンを構成するH鎖の可変領域及びH鎖の定常領域並びにL鎖の可変領域及びL鎖の定常領域を含む全ての領域がヒトイムノグロブリンをコードする遺伝子に由来する抗体をいう。ヒト抗体は、当該分野で周知の方法により、ヒト抗体を産生するトランスジェニック動物を作製し、当該トランスジェニック動物を抗原で免疫感作することにより、前述したポリクローナル抗体あるいはモノクローナル抗体の作製法と同様にして製造することができる。ヒト抗体を産生するトランスジェニック動物の作製方法については、例えば、Nature Genetics, Vol.15, p.146-156, 1997; Nature Genetics,Vol.7, p.13-21, 1994; 特表平4-504365号公報;国際公開第94/25585号パンフレット; Nature, Vol.368, p.856-859, 1994; 及び特表平6-500233号公報等に記載されている。
エピトープ結合フラグメントとは、上述した抗体の抗原結合領域を含む部分又は当該領域から誘導された部分をいい、具体的にはF(ab')2、Fab'、Fab、Fv(variable fragment
of antibody)、scFv(single chain Fv)、dsFv(disulphide stabilised Fv)等が挙げられる。
of antibody)、scFv(single chain Fv)、dsFv(disulphide stabilised Fv)等が挙げられる。
一実施態様では、本発明の抗体の群は抗体アレイとして用いられる。抗体アレイの支持体としては、当該分野で通常用いられている支持体であれば特に限定されず、例えば、メンブレン(例えば、ニトロセルロース膜、ナイロン膜)、ガラス、プラスチック、金属(例えば、金薄膜)などが挙げられる。
抗体アレイによる遺伝子群の翻訳産物(例えば、翻訳後修飾されたタンパク質、未修飾
のタンパク質)の測定は、使用する抗体アレイの形態によっても異なるが、例えば、サンプルから抽出された翻訳産物を標識し、次いでこれを抗体アレイ上の各抗体に反応させることにより行なうことができる。標識は、直接検出可能なシグナルを発するものでもよいし、検出可能なシグナルを発する物質に特異的に結合する物質でもよい。直接検出可能なシグナルを発する標識の例としては、蛍光性物質、アルカリフォスファターゼ、放射性同位元素などが挙げられる。検出可能なシグナルを発する物質に特異的に結合する物質の例としては、ビオチン、アビジン、ジゴキシゲニン、抗体などが挙げられる。標識の方法としては、化学反応で翻訳産物に直接結合させる方法などが挙げられる。また、抗体アレイを金薄膜上に作製した場合には、翻訳産物を標識することなく、表面プラズモン共鳴等の周知の方法により、翻訳産物の抗体への結合の有無を検出することができる。
のタンパク質)の測定は、使用する抗体アレイの形態によっても異なるが、例えば、サンプルから抽出された翻訳産物を標識し、次いでこれを抗体アレイ上の各抗体に反応させることにより行なうことができる。標識は、直接検出可能なシグナルを発するものでもよいし、検出可能なシグナルを発する物質に特異的に結合する物質でもよい。直接検出可能なシグナルを発する標識の例としては、蛍光性物質、アルカリフォスファターゼ、放射性同位元素などが挙げられる。検出可能なシグナルを発する物質に特異的に結合する物質の例としては、ビオチン、アビジン、ジゴキシゲニン、抗体などが挙げられる。標識の方法としては、化学反応で翻訳産物に直接結合させる方法などが挙げられる。また、抗体アレイを金薄膜上に作製した場合には、翻訳産物を標識することなく、表面プラズモン共鳴等の周知の方法により、翻訳産物の抗体への結合の有無を検出することができる。
抗体アレイは、当該分野で周知の方法によって、抗体を支持体上に固定することにより作製することができる。抗体を支持体上に固定する方法としては、例えば、共有結合により固定する方法、静電的結合により固定する方法が挙げられるが、実験の再現性を考慮すれば共有結合により固定する方法が好ましい。また、支持体がガラス、プラスチック、金薄膜などの場合は、支持体表面上の官能基に、抗体に含まれるアミノ酸の官能基を反応・結合させることにより、抗体を支持体上に固定することもできる。
本発明の抗体の群、特に抗体アレイは、哺乳動物血液中に存在する細胞に特異的に発現している遺伝子群の翻訳産物の発現を網羅的に解析することを可能とし、哺乳動物血液中に存在する細胞の異常に起因する種々の疾患の診断などに利用することができるため極めて有用である。
3.疾患マーカー遺伝子の探索方法(方法I)
本発明で提供される哺乳動物の疾患マーカー遺伝子の探索方法(方法I)は、哺乳動物血液中に存在する細胞に特異的に発現している遺伝子群の中から疾患のマーカー遺伝子を探索することを特徴とする。なお、哺乳動物、血液中に存在する細胞、特異的に発現している遺伝子群、疾患は、上述したものと同義である。
本発明で提供される哺乳動物の疾患マーカー遺伝子の探索方法(方法I)は、哺乳動物血液中に存在する細胞に特異的に発現している遺伝子群の中から疾患のマーカー遺伝子を探索することを特徴とする。なお、哺乳動物、血液中に存在する細胞、特異的に発現している遺伝子群、疾患は、上述したものと同義である。
疾患のマーカー遺伝子としては、疾患の指標となり得る遺伝子であれば特に限定されず、例えば、疾患の有無及び/又は進行度に応じてその発現量が変動する遺伝子、遺伝性疾患(単一性遺伝性疾患、多因子性遺伝性疾患を含む)等の疾患の発症リスクの指標となり得る変異や多型が認められる遺伝子などが挙げられる。また、複数の遺伝子を総合的に考慮することで疾患の指標となり得る場合には、疾患のマーカー遺伝子として複数の遺伝子の遺伝子産物における発現量の変動、変異及び多型を総合的に考慮するのが好ましい。なお、遺伝子産物、変異、多型は、上述したものと同義である。
疾患の有無及び/又は進行度に応じてその発現量が変動する遺伝子の探索は、疾患の哺乳動物、好ましくは患者から採取したサンプルなどにおいて、哺乳動物血液中に存在する細胞に特異的に発現している遺伝子群の遺伝子産物、具体的には、転写産物や翻訳産物の発現量を測定することによって行なわれる。この場合、サンプルとしては、血液、特に上述した血液中に存在する細胞が好ましい。
一実施態様では、本方法(方法I)は、i)疾患の哺乳動物から採取したサンプルから、哺乳動物血液中に存在する細胞で特異的に発現している遺伝子群の遺伝子産物を調製し、ii)当該遺伝子群の発現量を測定し、iii)測定された発現量に基づき、当該遺伝子群における特定の遺伝子が疾患の指標となり得るか否かを評価することを含む。好ましくは、本方法では、疾患の哺乳動物から採取したサンプルと正常な哺乳動物から採取したサンプルを検体として、両サンプル間において、哺乳動物血液中に存在する細胞に特異的に発現している遺伝子群の発現量を測定し、両サンプル間における発現量の差異に基づき
、当該遺伝子群における特定の遺伝子が疾患の指標となり得るか否かが評価される。
、当該遺伝子群における特定の遺伝子が疾患の指標となり得るか否かが評価される。
また、遺伝性疾患等の疾患の発症リスクの指標となり得る遺伝子の変異や多型の探索は、標的とする疾患の哺乳動物、好ましくはヒト患者から採取したサンプルなどにおいて、哺乳動物血液中に存在する細胞に特異的に発現している遺伝子群のゲノムや転写産物を解析することによって行なわれる。この場合、サンプルとしては、任意の組織を用いることができるが、入手の容易性を考慮すれば、血液、毛髪、つめ、皮膚、粘膜が好ましい。
別の実施態様では、本方法(I)は、i’)疾患の哺乳動物から採取したサンプルから、哺乳動物血液中に存在する細胞で特異的に発現している遺伝子群の転写産物又はゲノムDNAを調製し、ii’)当該遺伝子群の転写産物若しくはゲノムDNAの核酸配列を決定し、iii’)決定された核酸配列に基づき、当該遺伝子群における特定の遺伝子が疾患又は疾患の発症リスクの指標となり得るか否かを評価することを含む。好ましくは、本方法では、疾患の哺乳動物から採取したサンプルと正常な哺乳動物から採取したサンプルを検体として、両サンプル間において、哺乳動物血液中に存在する細胞に特異的に発現している遺伝子群の転写産物又はゲノムDNAの核酸配列を決定し、両サンプル間における核酸配列の差異に基づき、当該遺伝子群における特定の遺伝子が疾患又は疾患の発症リスクの指標となり得るか否かが評価される。
方法Iの工程i)、i’)では、サンプルからのゲノムDNA、遺伝子産物の調製は、当該分野で周知の方法によって行なうことができ、また、市販のキットを用いて、ゲノムDNA、遺伝子産物を抽出してもよい。
方法Iの工程ii)では、遺伝子群の発現量は、当該分野で周知の方法により測定することができる。例えば、転写産物の発現量は、RT−PCR、ノザンブロット法、上述した核酸アレイ等によって測定することができる。また、翻訳産物の発現量は、免疫学的方法(例えば、ELISA、ウエスタンブロット法)、表面プラズモン共鳴、上述した抗体アレイ等によって測定することができる。
方法Iの工程iii)では、同一遺伝子において、疾患の哺乳動物において測定された発現量と正常な哺乳動物における発現量との間に有意差が認められたときに、その遺伝子が疾患の指標となり得ると判定される。また、複数の遺伝子の相対的な発現において有意差が認められたときに、当該複数の遺伝子が疾患の指標となり得ると判定する。なお、正常な哺乳動物における発現量としては、予め蓄積されていた発現量データ、及び同時に測定した発現量データを用いることができるが、実験の精度・再現性の観点から、実験条件の詳細については極力一致させることが望ましいので、同時に測定した発現量データを用いることが好ましい。
方法Iの工程ii’)では、遺伝子の変異や多型は、上述のようにして得られたゲノム又は転写産物の核酸配列を解析することによって同定することができる。例えば、ゲノムのDNA配列を解析する場合には、適切なプライマーを設計することで直接的にゲノムのDNA配列を読むことが可能である。一方、転写産物のヌクレオチド配列を解析する場合には、逆転写酵素によってcDNAに変換し、当該cDNAを適当なベクターに挿入した後、又はcDNAを直接的に配列決定(sequencing)に供することで核酸配列を決定することができる。
方法Iの工程iii’)では、疾患の有無により遺伝子の変異や多型の発生頻度に有意差が認められたときに、その遺伝子における変異や多型が疾患の指標となり得ると判定される。また、単一又は複数の遺伝子における複数の変異や多型を総合的に考慮することで有意差が認められたときには、当該遺伝子における複数の変異や多型が疾患の指標となり
得ると判定する。
得ると判定する。
本方法(方法I)は、哺乳動物において、血液中に存在する細胞の異常に起因する種々の疾患又は当該疾患の発症リスクの簡便かつ高い精度の判定に用いられる疾患マーカー遺伝子を提供し得るので極めて有用である。
また、本発明は、本方法(方法I)を行い得る診断用キットを提供する。本診断用キットは、構成成分として、方法Iで用いられ得る種々の試薬(例えば、ゲノムDNA調製試薬、遺伝子産物調製試薬、遺伝子産物発現量解析用試薬、変異・多型解析用試薬、疾患に応じた変異・多型データのリスト、疾患に応じた発現量データのリストなど)を含む。本診断用キットは、方法Iを簡便に実施することを可能とするため極めて有用である。
4.発現量の測定による診断方法(方法II)
本発明で提供される発現量の測定による診断方法(方法II)は、哺乳動物血液中に存在する細胞に特異的に発現している遺伝子群の発現量を測定することを特徴とする。なお、哺乳動物、血液中に存在する細胞、特異的に発現している遺伝子群、診断の対象となる疾患は、上述したものと同義である。
本発明で提供される発現量の測定による診断方法(方法II)は、哺乳動物血液中に存在する細胞に特異的に発現している遺伝子群の発現量を測定することを特徴とする。なお、哺乳動物、血液中に存在する細胞、特異的に発現している遺伝子群、診断の対象となる疾患は、上述したものと同義である。
具体的には、本方法(方法II)は、i)哺乳動物から採取したサンプルから、哺乳動物血液中に存在する細胞で特異的に発現している遺伝子群の遺伝子産物を調製し、ii)当該遺伝子群の発現量を測定し、iii)測定された発現量に基づき、哺乳動物が疾患を患っているか否かを評価することを含む。
方法IIの工程i)では、サンプルからの遺伝子産物の調製は、当該分野で周知の方法によって行なうことができ、また、市販のキットを用いて、ゲノムDNA、遺伝子産物を抽出してもよい。サンプルとしては、哺乳動物、好ましくはヒトの被験体の血液、特に上述した血液中に存在する細胞を用いるのが好ましい。
方法IIの工程ii)では、遺伝子群の発現量は、当該分野で周知の方法により測定することができる。例えば、転写産物の発現量は、RT−PCR、ノザンブロット法、上述した核酸アレイ等によって測定することができる。また、翻訳産物の発現量は、免疫学的方法(例えば、ELISA、ウエスタンブロット法)、表面プラズモン共鳴、上述した抗体アレイ等によって測定することができる。
方法IIの工程iii)では、測定された発現量に基づき、哺乳動物が疾患を患っているか否かが評価される。測定された発現量は、好ましくは、予め蓄積されていた発現量データと照合され、単独又は複数の遺伝子の絶対的又は相対的な発現量の有意差などに基づいて哺乳動物が疾患を患っているか否かが評価される。予め蓄積されていた発現量データとしては、本発明で提供される遺伝子群の各遺伝子に関する既存の如何なる発現量データを用いることができ、例えば、本発明の方法(方法I)で提供される疾患マーカー遺伝子の発現量データを用いてもよい。
本方法(方法II)は、哺乳動物において、血液中に存在する細胞の異常に起因する種々の疾患を簡便かつ高い精度で判定し得るので極めて有用である。
また、本発明は、本方法(方法II)を行い得る診断用キットを提供する。本診断用キットは、構成成分として、方法IIで用いられ得る種々の試薬(例えば、遺伝子産物調製試薬、遺伝子産物発現量解析用試薬、疾患に応じた発現量データのリストなど)を含む。本診断用キットは、方法IIを簡便に実施することを可能とするため極めて有用である。
5.変異及び/又は多型の検出による診断方法(方法III)
本発明は、哺乳動物血液中に存在する細胞に特異的に発現している遺伝子群の変異及び/又は多型を検出することを含む、哺乳動物の診断方法を提供する。なお、哺乳動物、血液中に存在する細胞、特異的に発現している遺伝子群、変異、多型、診断の対象となる疾患は、上述したものと同義である。
本発明は、哺乳動物血液中に存在する細胞に特異的に発現している遺伝子群の変異及び/又は多型を検出することを含む、哺乳動物の診断方法を提供する。なお、哺乳動物、血液中に存在する細胞、特異的に発現している遺伝子群、変異、多型、診断の対象となる疾患は、上述したものと同義である。
本方法で検出される変異及び/又は多型としては、哺乳動物血液中に存在する細胞に特異的に発現している遺伝子群の変異及び/又は多型であれば特に限定されないが、当該遺伝子群の機能に影響を与えるものが好ましい。
具体的には、本方法(方法III)は、i)哺乳動物から採取したサンプルから、哺乳動物血液中に存在する細胞で特異的に発現している遺伝子群の転写産物又はゲノムDNAを調製し、ii)当該遺伝子群の転写産物若しくはゲノムDNAが変異及び/又は多型を有するか否かを決定し、iii)決定されたii)の結果に基づき、哺乳動物における疾患の有無及び/又は発症リスクを評価することを含む。
方法IIIの工程i)では、サンプルからのゲノムDNA、遺伝子産物の調製は、当該分野で周知の方法によって行なうことができ、また、市販のキットを用いて、ゲノムDNA、遺伝子産物を抽出してもよい。なお、標的とする哺乳動物、好ましくはヒト被験体の任意の組織をサンプルして用いることができるが、入手の容易性を考慮すれば、サンプルとしては、血液、毛髪、つめ、皮膚、粘膜が好ましい。また、変異の解析という観点からは、サンプルとしては、哺乳動物、好ましくはヒト被験体の血液が好ましく、上述した血液中に存在する細胞がより好ましい。
方法IIIの工程ii)では、上述のようにして得られたゲノムDNA又は転写産物における変異や多型は、当該分野で周知の方法によって解析することができる。当該方法としては、例えば、RFLP(制限酵素切断断片長多型)法、PCR−SSCP(一本鎖DNA高次構造多型解析)法(例えば、Biotechniques, 16, 296-297 (1994)参照)、ASO(Allele Specific Oligonucleotide)ハイブリダイゼーション法(例えば、Clin. Chim. Acta, 189, 153-157 (1990)参照)、ダイレクトシークエンス法(例えば、Biotechniques, 11, 246-249 (1991)参照)、ARMS(Amplification Refracting Mutation System)法(例えば、Nuc. Acids. Res., 19, 3561-3567 (1991)参照)、変性濃度勾配ゲル電気泳動(Denaturing Gradient Gel Electrophoresis)法(例えば、Biotechniqus, 27, 1016-1018 (1999)参照)、RNaseA切断法(例えば、DNA Cell. Biol., 14, 87-94 (1995)参照)、化学切断法(例えば、Biotechniques, 21, 216-218 (1996)参照)、DOL(Dye-labeled Oligonucleotide Ligation)法(例えば、Genome Res., 8, 549-556 (1998)参照)、TaqMan PCR法(例えば、Genet. Anal., 14, 143-149 (1999)参照)、インベーダー法(例えば、Science, 5109, 778-783 (1993); Nat. Biotechnol., 17, 292-296 (1999) 参照)、MALDI−TOF/MS法(Matrix Assisted Laser Desorption-time of Flight/Mass Spectrometry)法(Genome Res., 7, 378-388 (1997)参照)、TDI(Template-directed Dye-terminator Incorporation)法(例えば、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 94, 10756-10761 (1997))等が挙げられる。
方法IIIの工程iii)では、上述した工程ii)の結果に基づき、哺乳動物における疾患の有無及び/又は発症リスクが評価される。工程ii)で決定された変異や多型は、好ましくは、予め蓄積されていた変異や多型のデータと照合され、単独又は複数の変異や多型を総合的に考慮することで哺乳動物における疾患の有無及び/又は疾患の発症リスクが評価される。予め蓄積されていた変異や多型のデータとしては、本発明で提供される遺伝子群の各遺伝子に関する既存の如何なる変異や多型のデータを用いることができ、例えば、本発明の方法(方法I)で提供される疾患マーカー遺伝子の変異や多型のデータを
用いてもよい。
用いてもよい。
本方法(方法III)は、哺乳動物において、血液中に存在する細胞の異常に起因する種々の疾患を、又は当該疾患の発症リスクを簡便かつ高い精度で判定し得る。従って、例えば、本方法によって、疾患の発症リスクが高いことが判明した被験体に対しては、その旨を告知し、疾患を予防するための対策(例えば、生活習慣の改善)を講じることができるので、本発明はこの疾患を予防するための検査方法としてきわめて有用である。
また、本発明は、本方法(方法III)を行い得る診断用キットを提供する。本診断用キットは、構成成分として、方法IIIで用いられ得る種々の試薬(例えば、ゲノムDNA調製試薬、遺伝子産物調製試薬、変異・多型解析用試薬、疾患に応じた変異・多型データのリストなど)を含む。本診断用キットは、方法IIIを簡便に実施することを可能とするため極めて有用である。
6.疾患治療用物質の同定方法(方法IV)
本発明で提供される疾患治療用物質の同定方法は、哺乳動物血液中に存在する細胞に特異的に発現している遺伝子群の発現量を測定することを特徴とする。本方法(方法IV)は、哺乳動物血液中に存在する細胞で特異的に発現している遺伝子の転写産物(mRNA)に結合(必要に応じて、切断)し、又は当該遺伝子の発現調節部位に結合し、あるいは当該遺伝子の発現を制御する他の遺伝子の発現又は機能を調節することなどにより、当該遺伝子の転写産物又は翻訳産物の発現量を増加・減少させ得る物質の同定を可能にする。なお、哺乳動物、血液中に存在する細胞、特異的に発現している遺伝子群、疾患は、上述したものと同義である。
本発明で提供される疾患治療用物質の同定方法は、哺乳動物血液中に存在する細胞に特異的に発現している遺伝子群の発現量を測定することを特徴とする。本方法(方法IV)は、哺乳動物血液中に存在する細胞で特異的に発現している遺伝子の転写産物(mRNA)に結合(必要に応じて、切断)し、又は当該遺伝子の発現調節部位に結合し、あるいは当該遺伝子の発現を制御する他の遺伝子の発現又は機能を調節することなどにより、当該遺伝子の転写産物又は翻訳産物の発現量を増加・減少させ得る物質の同定を可能にする。なお、哺乳動物、血液中に存在する細胞、特異的に発現している遺伝子群、疾患は、上述したものと同義である。
具体的には、本方法(方法IV)は、i)哺乳動物の血液中に存在する細胞又は当該細胞から誘導された細胞に被験物質を接触させ、ii)当該細胞に特異的に発現している遺伝子群の発現量を測定し、iii)測定された発現量に基づき、被験物質が当該細胞の異常に起因する疾患を治療し得るか否かを評価することを含む。
本方法IVの工程i)では、哺乳動物の血液中に存在する細胞は、正常な哺乳動物の血液中に存在する細胞であっても、疾患の哺乳動物の血液中に存在する細胞であってもよい。哺乳動物の血液中に存在する細胞は、哺乳動物の血液中に存在する細胞の初代培養物を、当該分野で周知の方法により調製してそのまま用いることができる。また、哺乳動物の血液中に存在する細胞から誘導された細胞としては、哺乳動物の血液中に存在する細胞に由来し、且つ増殖因子等の誘導剤により形質が改変された細胞、クローニングにより当該初代培養細胞から株化された細胞、哺乳動物の血液中に存在する細胞に任意の遺伝子を導入した細胞などが挙げられる。これら細胞は、当該分野で周知の方法により作製することができる。また、哺乳動物の血液中に存在する細胞から誘導された細胞としては、細胞バンク(例えば、ATCC)から入手可能な細胞若しくは市販されている細胞であって、その由来が哺乳動物の血液である細胞を用いることもできる。
方法IVの工程i)で用いられる被験物質は特に限定されず、例えば、当該被験物質としては、核酸分子、ペプチド系化合物、糖質、脂質、低分子有機化合物、無機化合物、またそれらの混合液、天然物や合成品、動植物や菌類、藻類、微生物からの抽出液が挙げられる。
被験物質が核酸分子である場合は、DNAでもRNAでもよく、その塩基は一般的なA、G、C、T以外にも、天然に存在する他のヌクレオチド又は人工的に合成されたヌクレオチドを含んでもよい。また、PNA(peptide nucleic acid)やチオ化DNA等の分解抵抗性核酸ミミックを用いてもよい。
被験物質として用いられる核酸分子の好ましい1例は、アンチセンス核酸である。アンチセンス核酸とは、任意のmRNAに対する相補的なオリゴヌクレオチド(DNAまたはRNAのいずれか)をいい、細胞質に導入され、mRNAに結合することで、任意の遺伝子の翻訳を阻止し得る。アンチセンス核酸は、mRNAとハイブリダイズして安定な二重らせんを形成するのに十分な相補性を有すればよく、完全な相補性は必ずしも必要とはされない。なお、アンチセンス核酸分子の標的mRNAとしては、哺乳動物血液中に存在する細胞に特異的に発現している遺伝子のmRNA、又は当該遺伝子の発現を制御している遺伝子のmRNAが好ましい。
被験物質として用いられる核酸分子の好ましい別の例は、リボザイムである。リボザイムは、mRNAの特異的開裂を触媒することができる酵素核酸分子である(概説として例えばRossi,J.,1994,Current Biology 4:469-471参照)。リボザイム作用のメカニズムは、標的RNAへのリボザイム分子の配列特異的ハイブリダイゼーションと、これに続くエンドヌクレアーゼ的(endonucleolytic)開裂とを伴う。なお、リボザイムの標的mRNAとしては、哺乳動物血液中に存在する細胞に特異的に発現している遺伝子のmRNA、又は当該遺伝子の発現を制御している遺伝子のmRNAが好ましい。
被験物質として用いられるペプチド系化合物としては、天然アミノ酸からなるペプチド、非天然アミノ酸からなるペプチド及び天然アミノ酸・非天然アミノ酸からなるペプチド、並びに抗体及びその断片が挙げられる。非天然アミノ酸としては、天然アミノ酸のD体、β−アミノ酸、γ−アミノ酸などが挙げられる。また、被験物質として、これらの混合物も用いることができる。従って、被験物質として、例えば、ランダム・ペプチド・ライブラリーのメンバー(例えば、Lam,K.S.ら、1991,Nature 354:82-84;Houghten,R.ら、1991,Nature 354:84-86参照)、及びD/L-の立体配置アミノ酸からなる組合せの(combinatorial)化学誘導分子ライブラリーを含む可溶性ペプチド、リンペプチド(phosphopeptide)などを用いることができる。
また、被験物質として抗体を用いることもできる。抗体としては、上述した抗体と同様のものを用いることができる。
細胞の被験物質への接触は、培養培地にて行なわれる。培養培地としては、例えば約5〜20%の胎児牛血清を含むMEM培地(Science, Vol.122, p.501, 1952)、DMEM培地(Virology, Vol.8, p.396, 1959)、RPMI1640培地(J. Am. Med. Assoc., Vol.199, p.519, 1967)、199培地(proc. Soc. Exp. Biol. Med., Vol.73, p.1, 1950)等を用いることができる。培地のpHは約6〜8であるのが好ましく、培養は通常約30〜40℃で約15〜72時間行なわれ、必要により通気や撹拌を行うこともできる。なお、被験物質は、細胞が播種されていない培養培地に予め添加されていてもよく、また、培養培地中に細胞が播種された後に添加されてもよい。なお、被験物質が脂溶性の有機低分子である場合には特に必要とされないが、被験物質が核酸やポリペプチドのような大きな高分子、又は低分子であっても細胞透過性が低いものである場合には、これら被験物質を細胞内に送達させるために当該分野で周知の方法、例えば、リポソーム法、エレクトロポレーション法などを用いることもできる。
方法IVの工程ii)では、遺伝子群の発現量の測定は、当該遺伝子群の遺伝子産物(即ち、転写産物、翻訳産物)の発現量を測定することによって行なわれる。遺伝子群の発現量は、当該分野で周知の方法により測定することができる。例えば、転写産物の発現量は、RT−PCR、ノザンブロット法、上述した核酸アレイ等によって測定することができる。また、翻訳産物の発現量は、免疫学的方法(例えば、ELISA、ウエスタンブロット法)、表面プラズモン共鳴、上述した抗体アレイ等によって測定することができる。
方法IVの工程iii)では、方法IVの工程ii)で測定された発現量に基づき、被験物質が当該細胞の異常に起因する疾患を治療し得るか否かが評価される。測定された発現量は、被験物質の不在下で測定された発現量と比較され、哺乳動物血液中に存在する細胞に特異的に発現している遺伝子群の内、単独又は複数の遺伝子、例えば、本発明の方法(方法I)で提供される疾患マーカー遺伝子の絶対的又は相対的な発現量の有意差などに基づいて評価される。被験物質の不在下で測定された発現量としては、予め蓄積されていた発現量データ、及び同時に測定した被験物質の不在下の発現量データを用いることができるが、実験の精度・再現性の観点から、実験条件の詳細については極力一致させることが望ましいので、同時に測定した被験物質の不在下の発現量データを用いることが好ましい。
本方法(方法IV)は、哺乳動物血液中に存在する細胞の異常に起因する種々の疾患を治療し得る物質の同定を可能にし、また、同定された物質をリード化合物としてより優れた治療薬の開発を可能にするため極めて有用である。
また、本発明は、本方法(方法IV)により得られうる疾患治療用物質を提供する。当該物質は、それ自体疾患の治療に用いることができ、また、疾患治療薬のリード化合物として極めて有用である。
7.診断基準用データの作成方法(方法V)
本発明で提供される診断基準用データの作成方法は、哺乳動物血液中に存在する細胞に特異的に発現している遺伝子群を解析し、当該細胞の異常に起因する疾患の有無及び/又は進行度の診断の指標となり得るパターンを見出すことを特徴とする。なお、哺乳動物、血液中に存在する細胞、特異的に発現している遺伝子群、疾患は、上述したものと同義である。
本発明で提供される診断基準用データの作成方法は、哺乳動物血液中に存在する細胞に特異的に発現している遺伝子群を解析し、当該細胞の異常に起因する疾患の有無及び/又は進行度の診断の指標となり得るパターンを見出すことを特徴とする。なお、哺乳動物、血液中に存在する細胞、特異的に発現している遺伝子群、疾患は、上述したものと同義である。
具体的には、本方法(方法V)は、i)哺乳動物血液中に存在する細胞に特異的に発現している遺伝子群の発現量、並びに/又は当該遺伝子群の変異及び/若しくは多型について疾患に特有のパターンを見出し、ii)当該パターンが当該疾患の有無及び/又は進行度の診断の指標となり得るか否かを評価し、iii)診断の指標となり得るパターンを診断基準用データとして取得することを含む。
方法Vの工程i)では、遺伝子群の発現量に関する疾患に特有のパターンの解析は、単独又は複数の遺伝子の絶対的及び/又は相対的な発現量のいずれかに基づいて行なうこともできるが、遺伝子の種類によってはその発現量の絶対値は個人差や生活習慣などにより影響を受けやすいものもあると考えられるため、好ましくは、複数の遺伝子の絶対的及び/又は相対的な発現量を総合的に考慮する。また、遺伝子群の変異及び/若しくは多型に関する疾患に特有のパターンの解析は、単独又は複数の遺伝子の変異や多型のいずれかに基づいて行なうこともできるが、変異や多型の種類によっては疾患に何ら影響を及ぼさないものも多いと考えられるため、好ましくは、複数の遺伝子の変異や多型を総合的に考慮する。さらに、より精度を向上させるため、疾患に特有のパターンの解析は、遺伝子群の発現量、並びに当該遺伝子群の変異や多型を総合的に考慮するのが好ましい。
具体的には、初めに、ある疾患の哺乳動物及び正常な哺乳動物からサンプル(例えば、血液、毛髪、つめ、皮膚、粘膜、好ましくは血液)を採取し、当該サンプルを適宜処理した上で、哺乳動物血液中に存在する細胞に特異的に発現している遺伝子群の発現量及び/又は当該遺伝子群の変異や多型について網羅的に解析する。遺伝子群の発現量の測定及び変異や多型の検出は、上述した本発明の方法と同様にして行なわれる。
次いで、疾患に特有のパターン(例えば、遺伝子群の発現量について疾患に特有のパターン、遺伝子群の変異や多型について疾患に特有のパターン及びこれらパターンの組合わせ)は、当該分野で周知の方法により数学的に解析することで見出すことができる。
方法Vの工程ii)では、工程i)で得られたパターンが当該疾患の有無及び/又は進行度の診断の指標となり得るか否かが評価される。具体的には、疾患の哺乳動物では有意に認められるのに対し、正常な哺乳動物では認められない一定のパターンが見出された場合に、当該パターンが疾患の有無の指標になり得るものと評価される。また、疾患の特定の進行度では有意に認められるのに対し、同疾患の異なる進行度では認められない一定のパターンが見出された場合に、当該パターンが疾患の進行度の指標になり得るものと評価される。
方法Vの工程iii)では、診断の指標となり得るパターンが診断基準用データとして取得される。取得された診断基準用データは、記録媒体、例えば書面やコンピュータ読み取り可能な記録媒体などに記録される。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、電子データを記録することができ、且つ必要に応じてコンピュータが読み出すことができる任意の記録媒体をいい、例えば、磁気テープ、磁気ディスク、磁気ドラム、ICカード、光読み取り式ディスク(例えば、CD、DVD)、ハードディスクなどが挙げられる。
本方法(方法V)は、哺乳動物において、血液中に存在する細胞の異常に起因する種々の疾患の有無及び進行度を評価し得る精度の高い診断基準用データを提供し得るため極めて有用である。
また、本発明は、本方法(方法V)により作成されうる診断基準用データを提供する。本診断基準データは、記録媒体などに記録された形態で提供される。本診断基準用データは、例えば、本発明の方法(例えば、方法I、方法II、方法III)に用いることができ、また、当該方法を行い得る診断用キットの構成要素として用いることができるため極めて有用である。
以下、段階的サブトラクション法を用いる、血液中に存在する細胞で特異的に発現している遺伝子群の単離について詳述する。
細胞サンプルの調製
細胞サンプルは次のようにして集めた。すなわち、正常人の血液8人分を100mlずつ採取し20mlずつ5本に分割した後、フィコプラーク 15ml (アマシャムファルマシア) の上に重層し、1000-2000xg程度の低速で遠心分離を行った。白い帯状のバンドとして観察されるリンパ球含有部分を注射器で抜き取り、PBS 50μlを加え遠心分離によりペレットとした。さらにPBS 20mlに懸濁、洗浄し、さらに遠心分離を繰り返した。
また、繊維芽細胞は市販の正常皮膚繊維芽細胞株CCD-41SK株(大日本製薬)を仔牛血清10%を含むDMEM培地で培養した。100mmディッシュにスプリットレシオ 1:4で5-7日に1度継代し、70-80% コンフルエントまで培養した。これらの細胞は0.05% トリプシン/0.02% EDTAを加えることによりディッシュよりはがし、これに仔牛血清10%を含むDMEM培地を加え、懸濁後、遠心分離 (1000rpm、5分) して回収した。さらにPBSを加え遠心分離を繰り返し洗浄し、これにより107個の細胞数を得た。この細胞を以下の工程に用いた。
細胞サンプルは次のようにして集めた。すなわち、正常人の血液8人分を100mlずつ採取し20mlずつ5本に分割した後、フィコプラーク 15ml (アマシャムファルマシア) の上に重層し、1000-2000xg程度の低速で遠心分離を行った。白い帯状のバンドとして観察されるリンパ球含有部分を注射器で抜き取り、PBS 50μlを加え遠心分離によりペレットとした。さらにPBS 20mlに懸濁、洗浄し、さらに遠心分離を繰り返した。
また、繊維芽細胞は市販の正常皮膚繊維芽細胞株CCD-41SK株(大日本製薬)を仔牛血清10%を含むDMEM培地で培養した。100mmディッシュにスプリットレシオ 1:4で5-7日に1度継代し、70-80% コンフルエントまで培養した。これらの細胞は0.05% トリプシン/0.02% EDTAを加えることによりディッシュよりはがし、これに仔牛血清10%を含むDMEM培地を加え、懸濁後、遠心分離 (1000rpm、5分) して回収した。さらにPBSを加え遠心分離を繰り返し洗浄し、これにより107個の細胞数を得た。この細胞を以下の工程に用いた。
total RNAの抽出
各細胞のtotal RNAをグアニジンイソチオシアネート/セシウム・トリフルオロ酢酸法にて抽出した(岡山ら、Methods of Enzymology 154, 3-28 (1987))。各細胞を5.5M GTC溶
液 1mlに溶解した。
具体的には、グアニジンイソチオシアネート 64.9g、クエン酸ナトリウム2水和物 0.74g、ラウリルサルコシンナトリウム 0.5gを滅菌ミリQ水 100mlに溶解して5.5M GTC溶液を調製し、使用直前に2-メルカプトエタノール 1/71を添加した。次いで、この溶液を18Gの注射針に粘性が減少するまで数回通した。遠心分離により細胞破片を除去した後、CsTFA溶液15ml上に重層した。なお、CsTFA溶液は、CsTFA 100ml (アマシャムファルマシア)、0.5M EDTA 39.5ml、滅菌ミリQ水 58.15mlを合わせて調製した。
次に、この溶液を遠心分離(17℃、25000rpm、24時間)に供し、得られた沈殿を4M GTC溶液 600μlに溶解した。溶解後、遠心分離にて不溶物を除去し、1M 酢酸 15μl、エタノール 450μlを加え、混合後-20℃で3時間冷却した。遠心分離(4℃、15000rpm、10分)後、上清を除き沈殿をTE 330μlに溶解した。次に2M NaCl 33μl, エタノール990μlを加え、混合後-20℃で3時間冷却した。遠心分離(4℃、15000rpm、10分)後、上清を除き、沈殿をTE 330μlに溶解した。
各細胞のtotal RNAをグアニジンイソチオシアネート/セシウム・トリフルオロ酢酸法にて抽出した(岡山ら、Methods of Enzymology 154, 3-28 (1987))。各細胞を5.5M GTC溶
液 1mlに溶解した。
具体的には、グアニジンイソチオシアネート 64.9g、クエン酸ナトリウム2水和物 0.74g、ラウリルサルコシンナトリウム 0.5gを滅菌ミリQ水 100mlに溶解して5.5M GTC溶液を調製し、使用直前に2-メルカプトエタノール 1/71を添加した。次いで、この溶液を18Gの注射針に粘性が減少するまで数回通した。遠心分離により細胞破片を除去した後、CsTFA溶液15ml上に重層した。なお、CsTFA溶液は、CsTFA 100ml (アマシャムファルマシア)、0.5M EDTA 39.5ml、滅菌ミリQ水 58.15mlを合わせて調製した。
次に、この溶液を遠心分離(17℃、25000rpm、24時間)に供し、得られた沈殿を4M GTC溶液 600μlに溶解した。溶解後、遠心分離にて不溶物を除去し、1M 酢酸 15μl、エタノール 450μlを加え、混合後-20℃で3時間冷却した。遠心分離(4℃、15000rpm、10分)後、上清を除き沈殿をTE 330μlに溶解した。次に2M NaCl 33μl, エタノール990μlを加え、混合後-20℃で3時間冷却した。遠心分離(4℃、15000rpm、10分)後、上清を除き、沈殿をTE 330μlに溶解した。
polyA+ RNAの抽出
オリゴdTセルロースカラムを用いてmRNAの抽出を行なった。具体的には、0.2gのオリゴdTセルロース(Collaborative Research)に20mlの滅菌水を加え、室温で10分間放置した。上清を除き、再度滅菌水10mlを加え、カラム(0.6cm径)に注ぎ、高さが約1cmになるようにした。これを約8mlのTE/NaCl(TEと1M NaClを等量混合した液)で平衡化した。
実施例2で得られたtotal RNAに2倍量の1M NaClを加え上記平衡化したカラムに通した。スルー液を再度カラムに通し約8mlのTE/NaClで洗浄した。これにTE 0.5mlを合計6回通し、各フラクションを回収した。各画分について、その一部にエチジウムブロミドを添加し、RNAの有無を調べ、RNAを含む画分を回収した。RNA画分はエタノール沈殿により精製され、最終的に、それぞれ約50μgのpolyA+ RNAを得た。
オリゴdTセルロースカラムを用いてmRNAの抽出を行なった。具体的には、0.2gのオリゴdTセルロース(Collaborative Research)に20mlの滅菌水を加え、室温で10分間放置した。上清を除き、再度滅菌水10mlを加え、カラム(0.6cm径)に注ぎ、高さが約1cmになるようにした。これを約8mlのTE/NaCl(TEと1M NaClを等量混合した液)で平衡化した。
実施例2で得られたtotal RNAに2倍量の1M NaClを加え上記平衡化したカラムに通した。スルー液を再度カラムに通し約8mlのTE/NaClで洗浄した。これにTE 0.5mlを合計6回通し、各フラクションを回収した。各画分について、その一部にエチジウムブロミドを添加し、RNAの有無を調べ、RNAを含む画分を回収した。RNA画分はエタノール沈殿により精製され、最終的に、それぞれ約50μgのpolyA+ RNAを得た。
cDNAライブラリーの作製
4.1.first strandの作製
上記で得られた各polyA+RNAを4.5μg相当分チューブに取り、65℃で5分間加熱後、氷上で急冷した。ここに10X first strand buffer 2.5μl、0.1M DTT 2.5μl、first strand methyl nucleotide mix 1.5μl (いずれもZAP cDNA Synthesis Kit (ストラタジーン)) およびリンカープライマー: (GA) 10ACGCGTCGACTCGAGCGGCCGCGGACCG(T)18 1.0μl (1.6μg/μl)、RNase Inhibitor 0.5μl (40unit/μl) (東洋紡)、滅菌水 8.5μlを加え、室温で10分放置し、プライマーをアニールさせた。次に逆転写酵素 2μl (20unit/μl) (生化学工業)を加え、37℃で40分、さらにSuperscriptII (200unit/μl) (GIBCO BRL)を加え、48℃で40分反応させた。
4.1.first strandの作製
上記で得られた各polyA+RNAを4.5μg相当分チューブに取り、65℃で5分間加熱後、氷上で急冷した。ここに10X first strand buffer 2.5μl、0.1M DTT 2.5μl、first strand methyl nucleotide mix 1.5μl (いずれもZAP cDNA Synthesis Kit (ストラタジーン)) およびリンカープライマー: (GA) 10ACGCGTCGACTCGAGCGGCCGCGGACCG(T)18 1.0μl (1.6μg/μl)、RNase Inhibitor 0.5μl (40unit/μl) (東洋紡)、滅菌水 8.5μlを加え、室温で10分放置し、プライマーをアニールさせた。次に逆転写酵素 2μl (20unit/μl) (生化学工業)を加え、37℃で40分、さらにSuperscriptII (200unit/μl) (GIBCO BRL)を加え、48℃で40分反応させた。
4.2.second strandの作製
上記反応液に10X second strand buffer 20μl、0.1M DTT 7.5μl、second strand methyl nucleotide mix 3μl (いずれもZAP cDNA Synthesis Kit (ストラタジーン)、ミリQ滅菌水 132.5μlを加えていった。そこにRNaseH (1.5unit/μl) 1.5μl (東洋紡)、E.coli DNA pol I 6μl (9unit/μl) (東洋紡)を加え、16℃で150分反応させた。反応終了後、フェノール/クロロホルム 200μlを加え、混合後、遠心分離(4℃、15000rpm、10分)し上層を取った。これをさらにクロロホルム200μlと混合後、遠心分離(4℃、15000rpm、10分)し上層を取った。これをミリポアフィルター:UFCP3TK50にのせ、遠心分離し(4℃、10000rpm、20分)溶液をすべて落とした。さらに上室にTE 100μlを加え、遠心分離し(4℃、10000rpm、20分)溶液をすべて落とし洗浄する操作を2回繰り返した。この後、上室のフィルターに30μlの1/10 TEを加え、よく攪拌しcDNAを溶出した。
上記反応液に10X second strand buffer 20μl、0.1M DTT 7.5μl、second strand methyl nucleotide mix 3μl (いずれもZAP cDNA Synthesis Kit (ストラタジーン)、ミリQ滅菌水 132.5μlを加えていった。そこにRNaseH (1.5unit/μl) 1.5μl (東洋紡)、E.coli DNA pol I 6μl (9unit/μl) (東洋紡)を加え、16℃で150分反応させた。反応終了後、フェノール/クロロホルム 200μlを加え、混合後、遠心分離(4℃、15000rpm、10分)し上層を取った。これをさらにクロロホルム200μlと混合後、遠心分離(4℃、15000rpm、10分)し上層を取った。これをミリポアフィルター:UFCP3TK50にのせ、遠心分離し(4℃、10000rpm、20分)溶液をすべて落とした。さらに上室にTE 100μlを加え、遠心分離し(4℃、10000rpm、20分)溶液をすべて落とし洗浄する操作を2回繰り返した。この後、上室のフィルターに30μlの1/10 TEを加え、よく攪拌しcDNAを溶出した。
4.3.末端の平滑化
上記のcDNA溶液に10X second strand buffer 10μl、blunting nucleotide mix 5μl (いずれもZAP cDNA Synthesis Kit (ストラタジーン))、ミリQ滅菌水 51.5μlを加えていった。ここにPfu DNA pol (2.5unit/μl) 3.5μl (ストラタジーン) を加え、37℃で30分反応させた。反応終了後、フェノール/クロロホルム 200μlを加え、混合後、遠心分離(4℃、15000rpm、10分)し上層を取った。これをさらにクロロホルム 200μlと混合後、遠心分離(4℃、15000rpm、10分)し上層を取った。これをミリポアフィルター:UFCP3TK50にのせ、遠心分離し(4℃、10000rpm、20分)溶液をすべて落とした。さらに上室にTE 100μlを加え、遠心分離し(4℃、10000rpm、20分)溶液をすべて落とし洗浄する操作を2回繰り返した。この後、上室のフィルターにTE 20μlを加え、よく攪拌しcDNAを溶出した。
上記のcDNA溶液に10X second strand buffer 10μl、blunting nucleotide mix 5μl (いずれもZAP cDNA Synthesis Kit (ストラタジーン))、ミリQ滅菌水 51.5μlを加えていった。ここにPfu DNA pol (2.5unit/μl) 3.5μl (ストラタジーン) を加え、37℃で30分反応させた。反応終了後、フェノール/クロロホルム 200μlを加え、混合後、遠心分離(4℃、15000rpm、10分)し上層を取った。これをさらにクロロホルム 200μlと混合後、遠心分離(4℃、15000rpm、10分)し上層を取った。これをミリポアフィルター:UFCP3TK50にのせ、遠心分離し(4℃、10000rpm、20分)溶液をすべて落とした。さらに上室にTE 100μlを加え、遠心分離し(4℃、10000rpm、20分)溶液をすべて落とし洗浄する操作を2回繰り返した。この後、上室のフィルターにTE 20μlを加え、よく攪拌しcDNAを溶出した。
4.4.アダプターライゲーション
上記反応液の内4μlをとり、10X ligation buffer 2μl、ATP 2μl、BglII-SmaIアダプター 1μl、滅菌ミリQ水 10μlを加えた。これを氷上に5分置いた後、T4 DNA ligase (4unit/μl) 1.5μl (東洋紡)を加え、8℃で24時間反応させた。終了後、70℃で30分加熱し、氷冷した。ここにNotI補充液 27μlおよびNotI 3μl (10unit/μl) (NEB) を加え37℃で90分間反応させた。なお、NotI 補充液の組成は、278mM NaCl、8mM MgCl2、1.8mM DTT、0.018% BSA、0.018% Triton X-100である。
次いで、この反応液に10X STE 5μl、tRNA (2μg/μl) 5μlを加え、10μlずつCLOMA SPIN-400(クロンテック)にアプライした。遠心分離(4℃、2100rpm、5分)後、溶出液に等量のフェノールクロロホルムを加え、混合後、遠心分離(4℃、15000rpm、10分)し上層を取った。これをさらに等量のクロロホルムと混合後、遠心分離(4℃、15000rpm、10分)し上層を取った。これに5M NaCl 4μl、エタノール100μlを加え、混合後、-80℃に3時間放置した。遠心分離(4℃、15000rpm、10分)し上清を除き、さらに70% エタノール100μlを加え遠心分離(4℃、15000rpm、10分)し上清を除いた。
上記反応液の内4μlをとり、10X ligation buffer 2μl、ATP 2μl、BglII-SmaIアダプター 1μl、滅菌ミリQ水 10μlを加えた。これを氷上に5分置いた後、T4 DNA ligase (4unit/μl) 1.5μl (東洋紡)を加え、8℃で24時間反応させた。終了後、70℃で30分加熱し、氷冷した。ここにNotI補充液 27μlおよびNotI 3μl (10unit/μl) (NEB) を加え37℃で90分間反応させた。なお、NotI 補充液の組成は、278mM NaCl、8mM MgCl2、1.8mM DTT、0.018% BSA、0.018% Triton X-100である。
次いで、この反応液に10X STE 5μl、tRNA (2μg/μl) 5μlを加え、10μlずつCLOMA SPIN-400(クロンテック)にアプライした。遠心分離(4℃、2100rpm、5分)後、溶出液に等量のフェノールクロロホルムを加え、混合後、遠心分離(4℃、15000rpm、10分)し上層を取った。これをさらに等量のクロロホルムと混合後、遠心分離(4℃、15000rpm、10分)し上層を取った。これに5M NaCl 4μl、エタノール100μlを加え、混合後、-80℃に3時間放置した。遠心分離(4℃、15000rpm、10分)し上清を除き、さらに70% エタノール100μlを加え遠心分離(4℃、15000rpm、10分)し上清を除いた。
4.5.ベクターライゲーション
沈殿に10X ligation buffer 3μl、10mM ATP 3μl、ミリQ滅菌水 22μlを加え溶解し、予めNotI、BglII、BAPで処理したpAP3neo 1μl (1μg/μl) を加えた。氷上に5分間置いた後、T4 DNA ligase 1μl (4unit/μl) (東洋紡) を加え、12℃で40時間反応させた。終了後、70℃で30分加熱し、氷冷した。反応終了後、フェノールクロロホルム 200μlを加え、混合後、遠心分離(4℃、15000rpm、10分)し上層を取った。これをさらにクロロホルム200μlと混合後、遠心分離(4℃、15000rpm、10分)し上層を取った。これをミリポアフィルター:UFCP3TK50にのせ、遠心分離し(4℃、10000rpm、20分)溶液をすべて落とした。さらに上室にTE 100μlを加え、遠心分離し(4℃、10000rpm、20分)溶液をすべて落とし洗浄する操作を2回繰り返した。この後、上室のフィルターにTE 30μlを加え、よく攪拌しcDNAを溶出した。
沈殿に10X ligation buffer 3μl、10mM ATP 3μl、ミリQ滅菌水 22μlを加え溶解し、予めNotI、BglII、BAPで処理したpAP3neo 1μl (1μg/μl) を加えた。氷上に5分間置いた後、T4 DNA ligase 1μl (4unit/μl) (東洋紡) を加え、12℃で40時間反応させた。終了後、70℃で30分加熱し、氷冷した。反応終了後、フェノールクロロホルム 200μlを加え、混合後、遠心分離(4℃、15000rpm、10分)し上層を取った。これをさらにクロロホルム200μlと混合後、遠心分離(4℃、15000rpm、10分)し上層を取った。これをミリポアフィルター:UFCP3TK50にのせ、遠心分離し(4℃、10000rpm、20分)溶液をすべて落とした。さらに上室にTE 100μlを加え、遠心分離し(4℃、10000rpm、20分)溶液をすべて落とし洗浄する操作を2回繰り返した。この後、上室のフィルターにTE 30μlを加え、よく攪拌しcDNAを溶出した。
4.6.形質転換
前記ライゲーション液の内、15μl (5μlX3) をエレクトロポレーション用大腸菌DH12Sに導入した。SOC培地 2mlを加え、37℃で1時間培養した後、アンピシリンを含むLB培地 500mlに移した。約6時間37℃で培養した後、200mlを取り、ヘルパーファージ (R408) を加え、さらに37℃で終夜培養した。翌日、当業者に周知の方法で、1本鎖プラスミドDNAを抽出した。一方、残りの300mlはそのままLB培地で終夜培養し、翌日当業者に周知の方法で2本鎖プラスミドDNAを抽出した。
前記ライゲーション液の内、15μl (5μlX3) をエレクトロポレーション用大腸菌DH12Sに導入した。SOC培地 2mlを加え、37℃で1時間培養した後、アンピシリンを含むLB培地 500mlに移した。約6時間37℃で培養した後、200mlを取り、ヘルパーファージ (R408) を加え、さらに37℃で終夜培養した。翌日、当業者に周知の方法で、1本鎖プラスミドDNAを抽出した。一方、残りの300mlはそのままLB培地で終夜培養し、翌日当業者に周知の方法で2本鎖プラスミドDNAを抽出した。
サブトラクションライブラリーの作製
5.1.繊維芽細胞のpolyA+RNAのビオチン化
繊維芽細胞のpolyA+ RNA 10μg相当をチューブに取り、ミリQ滅菌水で希釈して20μlとした。ここにPHOTOPROBE BIOTIN 10μl (1μg/μl)を加え混合後、約10cmの高さから水銀灯を20分照射しビオチン化を行った。Tris-HCl (pH9.5)/1mM EDTA 70μlを加え、さらに水飽和ブタノール 100μlを加えよく混合した。遠心分離後(4℃、10000rpm、10分)水層をとり、さらにクロロホルムでの抽出を行った。水層に10分の1量の 3M 酢酸アンモニウム、3倍量のエタノール、1μgのグリコーゲンを加え、-80℃で30分放置後、遠心分離し(4℃、15000rpm、10分)、上清を除いた。さらに70%エタノール 100μlを加え遠心分離(4℃、15000rpm、10分)し上清を除いた。沈殿をミリQ滅菌水 20μlで溶解し、さらにここにPHOTOPROBE BIOTIN 10μl (1μg/μl)を加え上記の操作をもう一度繰り返した。
5.1.繊維芽細胞のpolyA+RNAのビオチン化
繊維芽細胞のpolyA+ RNA 10μg相当をチューブに取り、ミリQ滅菌水で希釈して20μlとした。ここにPHOTOPROBE BIOTIN 10μl (1μg/μl)を加え混合後、約10cmの高さから水銀灯を20分照射しビオチン化を行った。Tris-HCl (pH9.5)/1mM EDTA 70μlを加え、さらに水飽和ブタノール 100μlを加えよく混合した。遠心分離後(4℃、10000rpm、10分)水層をとり、さらにクロロホルムでの抽出を行った。水層に10分の1量の 3M 酢酸アンモニウム、3倍量のエタノール、1μgのグリコーゲンを加え、-80℃で30分放置後、遠心分離し(4℃、15000rpm、10分)、上清を除いた。さらに70%エタノール 100μlを加え遠心分離(4℃、15000rpm、10分)し上清を除いた。沈殿をミリQ滅菌水 20μlで溶解し、さらにここにPHOTOPROBE BIOTIN 10μl (1μg/μl)を加え上記の操作をもう一度繰り返した。
5.2.cDNAとビオチン化RNAのハイブリダイゼーション
前記ビオチン化RNA 5μg分を8μlのミリQ滅菌水に溶解し、2XHB 12.5μl、2M NaCl 2.5μl、poly(A) 1μl (1μg/μl) (アマシャムファルマシア)、およびリンパ球ライブラリー由来のssDNA 1μl (0.5μg/μl)を加えた。65℃で10分加熱した後、42℃で48時間ハイブリダイゼーションを行った。終了後、SB溶液 400μl、ストレプトアビジン 5μl (2μg/μl) (GIBCO BRL)を加え、室温で5分間放置した。フェノールクロロホルム処理を行い、TE 100μl加えて再抽出を行った後、上清にストレプトアビジン 5μl (2μg/μl)を加えた。再度フェノールクロロホルム処理を2回、クロロホルム処理を1回行った。これをミリポアフィルター:UFCP3TK50にのせ、遠心分離し(4℃、10000rpm、20分)溶液をすべて落とした。さらに上室にTE 100μlを加え、遠心分離し(4℃、10000rpm、20分)溶液をすべて落とし洗浄する操作を2回繰り返した。この後、上室のフィルターにTE 30μlを加え、よく攪拌しcDNAを溶出した。これを真空乾燥し、ミリQ滅菌水で9μlに調製した。
この溶液に対して上記ハイブリダイゼーション以降の処理を再度行った。最終液はTE 30μlで溶出した。
前記ビオチン化RNA 5μg分を8μlのミリQ滅菌水に溶解し、2XHB 12.5μl、2M NaCl 2.5μl、poly(A) 1μl (1μg/μl) (アマシャムファルマシア)、およびリンパ球ライブラリー由来のssDNA 1μl (0.5μg/μl)を加えた。65℃で10分加熱した後、42℃で48時間ハイブリダイゼーションを行った。終了後、SB溶液 400μl、ストレプトアビジン 5μl (2μg/μl) (GIBCO BRL)を加え、室温で5分間放置した。フェノールクロロホルム処理を行い、TE 100μl加えて再抽出を行った後、上清にストレプトアビジン 5μl (2μg/μl)を加えた。再度フェノールクロロホルム処理を2回、クロロホルム処理を1回行った。これをミリポアフィルター:UFCP3TK50にのせ、遠心分離し(4℃、10000rpm、20分)溶液をすべて落とした。さらに上室にTE 100μlを加え、遠心分離し(4℃、10000rpm、20分)溶液をすべて落とし洗浄する操作を2回繰り返した。この後、上室のフィルターにTE 30μlを加え、よく攪拌しcDNAを溶出した。これを真空乾燥し、ミリQ滅菌水で9μlに調製した。
この溶液に対して上記ハイブリダイゼーション以降の処理を再度行った。最終液はTE 30μlで溶出した。
5.3.2本鎖DNAの合成、大腸菌への導入
上記ssDNA溶液 15μlにミリQ滅菌水 14μl、5'APプライマー 1μl (0.2μg/μl) を加え、65℃で10分間加熱した。室温に5分放置し、プライマーをアニールさせ、10X buffer 5μl (宝酒造, Bcabest sequencing kit用)、1mM dNTP 10μl、SSB 0.5μl (3μg/μl)、Bca Best DNA pol 2μl (2unit/μl)、ミリQ滅菌水 3μlを加えた。これを65℃で1時間反応させ2本鎖DNAを合成した。反応液にTE 50μlを加え、フェノール/クロロホルム処理を行った。TEを100μl加えて再抽出を行った後、これをミリポアフィルター:UFCP3TK50にのせ、遠心分離し(4℃、10000rpm、20分)溶液をすべて落とした。さらに上室にTE 100μlを加え、遠心分離し(4℃、10000rpm、20分)溶液をすべて落とし洗浄する操作を2回繰り返した。この後、上室のフィルターにTE 25μlを加え、よく攪拌しcDNAを溶出した。これを6.25μlずつ4本に分割しエレクトロポレーションで大腸菌に導入した。各々に対しSOC培地 1.5mlを加え、37℃で1時間培養した後、1本にまとめ、アンピシリンを含むLB培地 500mlに移した。約6時間37℃で培養した後、470mlを取り、ヘルパーファージ(R408)を加え、さらに37℃で終夜培養した。翌日、当業者に周知の方法で、1本鎖プラスミドDNAを抽出した。一方、残りの30mlはそのままLB培地で終夜培養し、翌日、周知の方法で2本鎖プラスミドDNAを抽出した。
上記ssDNA溶液 15μlにミリQ滅菌水 14μl、5'APプライマー 1μl (0.2μg/μl) を加え、65℃で10分間加熱した。室温に5分放置し、プライマーをアニールさせ、10X buffer 5μl (宝酒造, Bcabest sequencing kit用)、1mM dNTP 10μl、SSB 0.5μl (3μg/μl)、Bca Best DNA pol 2μl (2unit/μl)、ミリQ滅菌水 3μlを加えた。これを65℃で1時間反応させ2本鎖DNAを合成した。反応液にTE 50μlを加え、フェノール/クロロホルム処理を行った。TEを100μl加えて再抽出を行った後、これをミリポアフィルター:UFCP3TK50にのせ、遠心分離し(4℃、10000rpm、20分)溶液をすべて落とした。さらに上室にTE 100μlを加え、遠心分離し(4℃、10000rpm、20分)溶液をすべて落とし洗浄する操作を2回繰り返した。この後、上室のフィルターにTE 25μlを加え、よく攪拌しcDNAを溶出した。これを6.25μlずつ4本に分割しエレクトロポレーションで大腸菌に導入した。各々に対しSOC培地 1.5mlを加え、37℃で1時間培養した後、1本にまとめ、アンピシリンを含むLB培地 500mlに移した。約6時間37℃で培養した後、470mlを取り、ヘルパーファージ(R408)を加え、さらに37℃で終夜培養した。翌日、当業者に周知の方法で、1本鎖プラスミドDNAを抽出した。一方、残りの30mlはそのままLB培地で終夜培養し、翌日、周知の方法で2本鎖プラスミドDNAを抽出した。
1次サブトラクションライブラリーのインサート核酸配列チェック
上記で得られた1次サブトラクションライブラリーより任意の500個のクローンを選び当業者に周知のアルカリ-SDS法でプラスミドを抽出した。この内、1μgを用い核酸配列の決定を行った。すなわち、プラスミド溶液 10μlにBigDye試薬 4μl(ABI)、シーケンシングプライマー 1μl (3.2pmole/μl)を加え、サーマルサイクラーにて95℃20秒-50℃20秒-60℃4分の反応を25サイクル行った。反応液をセファデックスG100で精製し、ABIオートシークエンサーにて電気泳動し、核酸配列を得た。
上記で得られた1次サブトラクションライブラリーより任意の500個のクローンを選び当業者に周知のアルカリ-SDS法でプラスミドを抽出した。この内、1μgを用い核酸配列の決定を行った。すなわち、プラスミド溶液 10μlにBigDye試薬 4μl(ABI)、シーケンシングプライマー 1μl (3.2pmole/μl)を加え、サーマルサイクラーにて95℃20秒-50℃20秒-60℃4分の反応を25サイクル行った。反応液をセファデックスG100で精製し、ABIオートシークエンサーにて電気泳動し、核酸配列を得た。
ノザンブロット
上記で得られたクローンのうち、重複の無いクローンについて、それぞれのプラスミド0.5μgをSmaI/NotIで切断し、0.8% アガロースゲル電気泳動にてインサートを切り出した。Quiaquick Gel Extraction kitにてゲルから最終液量30μlのDNAフラグメントを回収した。このうち、10μlずつを混合し、Random Primer labeling kit (宝酒造) にてプローブのラベリングをおこなった。すなわち、混合したDNA断片 50ngにランダムプライマー1μlを加え、95℃で5分間加熱後、急冷しDNAを変性させた。ここに、10X buffer 1.25μl、dNTP mix 1.25μl、(a-32P)dCTP 2μl (3000Ci/mmole) (アマシャムファルマシア)、klenow 0.5μl (2unit/μl)を加え、37℃で30分反応した。ついで65℃で10分加熱しklenowを変成させた。反応液をセファデックスG-50にかけ、未反応の(a-32P)dCTPを除いた。
リンパ球および繊維芽細胞由来のtotal RNAをそれぞれ3μgずつ電気泳動したホルムアミド変性アガロースゲルから、バイオダインAにRNAを転写した。80℃で2時間ベイクしRNAを膜に固定化した。
これをハイブリバッグに入れハイブリダイゼーションバッファー 2mlを加え42℃で2時間プレハイブリダイゼーションを行った。ここに95℃で5分加熱後急冷し変成した上記標識プローブを加え42℃で24時間ハイブリダイゼーションを行った。
ハイブリダイゼーションの終了した膜を2X SSC/0.1% SDS 10ml中で3回、0.1X SSC/0.1% SDS 10ml中で3回洗浄後、オートラジオグラフィーを行った。
ここで、血液リンパ球を始めとした哺乳動物血液中に存在する細胞、特にmRNA発現細胞に特異的に発現している遺伝子(PREB:predominantly expressed in blood cells)を特定した。
上記で得られたクローンのうち、重複の無いクローンについて、それぞれのプラスミド0.5μgをSmaI/NotIで切断し、0.8% アガロースゲル電気泳動にてインサートを切り出した。Quiaquick Gel Extraction kitにてゲルから最終液量30μlのDNAフラグメントを回収した。このうち、10μlずつを混合し、Random Primer labeling kit (宝酒造) にてプローブのラベリングをおこなった。すなわち、混合したDNA断片 50ngにランダムプライマー1μlを加え、95℃で5分間加熱後、急冷しDNAを変性させた。ここに、10X buffer 1.25μl、dNTP mix 1.25μl、(a-32P)dCTP 2μl (3000Ci/mmole) (アマシャムファルマシア)、klenow 0.5μl (2unit/μl)を加え、37℃で30分反応した。ついで65℃で10分加熱しklenowを変成させた。反応液をセファデックスG-50にかけ、未反応の(a-32P)dCTPを除いた。
リンパ球および繊維芽細胞由来のtotal RNAをそれぞれ3μgずつ電気泳動したホルムアミド変性アガロースゲルから、バイオダインAにRNAを転写した。80℃で2時間ベイクしRNAを膜に固定化した。
これをハイブリバッグに入れハイブリダイゼーションバッファー 2mlを加え42℃で2時間プレハイブリダイゼーションを行った。ここに95℃で5分加熱後急冷し変成した上記標識プローブを加え42℃で24時間ハイブリダイゼーションを行った。
ハイブリダイゼーションの終了した膜を2X SSC/0.1% SDS 10ml中で3回、0.1X SSC/0.1% SDS 10ml中で3回洗浄後、オートラジオグラフィーを行った。
ここで、血液リンパ球を始めとした哺乳動物血液中に存在する細胞、特にmRNA発現細胞に特異的に発現している遺伝子(PREB:predominantly expressed in blood cells)を特定した。
解析クローンからのRNA合成とビオチン化
ノザンハイブリダイゼーションを行った個々のクローンについて、これらを1次サブトラクションライブラリーから差し引くためのビオチン化RNAを作製した。すなわちこれらのプラスミドを混合し、そのうち20μgをとり、10X buffer 4 (NEB) 10μl、BSA (NEB) 10μl、NotI 5μl (10unit/μl) (NEB)を加え、ミリQ滅菌水で全量を100μlとし、37℃で20時間反応させた。
次いで、反応液にTE 100μlを加え、フェノール/クロロホルム処理を行った。TE 100μlを加えて再抽出を行った後、これをミリポアフィルター:UFCP3TK50にのせ、遠心分離し(4℃、10000rpm、20分)溶液をすべて落とした。さらに上室にTE 100μlを加え、遠心分離し(4℃、10000rpm、20分)溶液をすべて落とし洗浄する操作を2回繰り返した。この後、上室のフィルターにTE 30μlを加え、よく攪拌しcDNAを溶出した。これに10X buffer 10μl (T7RNAポリメラーゼに附属,東洋紡)、10mM rNTP 10μl、RNase Inhibitor 1μl (40unit/μl) (東洋紡)、T7 RNAポリメラーゼ 3μl (160unit/μl) (東洋紡)を加え、ミリQ滅菌水で全量を100μlとし、37℃で1.5時間反応した。これにDNase 1μl (70unit/μl) (宝酒造) を加え、37℃で15分間反応し鋳型DNAを分解した。反応液をフェノール/クロロホルム処理1回、クロロホルム処理1回した後、エタノール沈殿し、70% エタノールでリンス後、TE 50μlに溶解した。この操作により100μgのRNAが得られた。
ノザンハイブリダイゼーションを行った個々のクローンについて、これらを1次サブトラクションライブラリーから差し引くためのビオチン化RNAを作製した。すなわちこれらのプラスミドを混合し、そのうち20μgをとり、10X buffer 4 (NEB) 10μl、BSA (NEB) 10μl、NotI 5μl (10unit/μl) (NEB)を加え、ミリQ滅菌水で全量を100μlとし、37℃で20時間反応させた。
次いで、反応液にTE 100μlを加え、フェノール/クロロホルム処理を行った。TE 100μlを加えて再抽出を行った後、これをミリポアフィルター:UFCP3TK50にのせ、遠心分離し(4℃、10000rpm、20分)溶液をすべて落とした。さらに上室にTE 100μlを加え、遠心分離し(4℃、10000rpm、20分)溶液をすべて落とし洗浄する操作を2回繰り返した。この後、上室のフィルターにTE 30μlを加え、よく攪拌しcDNAを溶出した。これに10X buffer 10μl (T7RNAポリメラーゼに附属,東洋紡)、10mM rNTP 10μl、RNase Inhibitor 1μl (40unit/μl) (東洋紡)、T7 RNAポリメラーゼ 3μl (160unit/μl) (東洋紡)を加え、ミリQ滅菌水で全量を100μlとし、37℃で1.5時間反応した。これにDNase 1μl (70unit/μl) (宝酒造) を加え、37℃で15分間反応し鋳型DNAを分解した。反応液をフェノール/クロロホルム処理1回、クロロホルム処理1回した後、エタノール沈殿し、70% エタノールでリンス後、TE 50μlに溶解した。この操作により100μgのRNAが得られた。
さらなるサブトラクションライブラリーの作製
9.1.2次サブトラクションライブラリーの作製
実施例8で得られたRNAの内、5μgを取り、実施例5記載の方法により2次サブトラクションライブラリーを作製した。このあと実施例6〜7記載の方法により、さらにリンパ球を始めとした血液中に存在するmRNA発現細胞に特異的に発現している遺伝子を特定した。
9.1.2次サブトラクションライブラリーの作製
実施例8で得られたRNAの内、5μgを取り、実施例5記載の方法により2次サブトラクションライブラリーを作製した。このあと実施例6〜7記載の方法により、さらにリンパ球を始めとした血液中に存在するmRNA発現細胞に特異的に発現している遺伝子を特定した。
9.2.3次サブトラクションライブラリーの作製
実施例8記載の方法により、3次サブトラクション用RNAを作製し、実施例5記載の方法により3次サブトラクションライブラリーを作製した。その後、実施例6〜7に記載の方法により、さらに血液リンパ球を始めとした血液に存在するmRNA発現細胞特異的に発現している遺伝子を特定した。3次サブトラクションライブラリーの核酸配列を確認したところ、数種類のクローンしか存在しないことが明らかとなり、ここまでの操作でリンパ球を始めとした血液中に存在するmRNA発現細胞特異的に発現しているPREB遺伝子305個をほぼ網羅的に取得できたと考えられた。取得したPREB遺伝子についての概要を表1に示す。
実施例8記載の方法により、3次サブトラクション用RNAを作製し、実施例5記載の方法により3次サブトラクションライブラリーを作製した。その後、実施例6〜7に記載の方法により、さらに血液リンパ球を始めとした血液に存在するmRNA発現細胞特異的に発現している遺伝子を特定した。3次サブトラクションライブラリーの核酸配列を確認したところ、数種類のクローンしか存在しないことが明らかとなり、ここまでの操作でリンパ球を始めとした血液中に存在するmRNA発現細胞特異的に発現しているPREB遺伝子305個をほぼ網羅的に取得できたと考えられた。取得したPREB遺伝子についての概要を表1に示す。
また、リンパ球を始めとした血液中に存在するmRNA発現細胞特異的に発現している各遺伝子のノザンブロットの結果を、図1〜26に示す。右のレーンがリンパ球を始めとした血液中に存在するmRNA発現細胞由来のRNA、左のレーンが繊維芽細胞由来のRNAである。図1〜26に示される結果より、リンパ球を始めとした血液中に存在するmRNA発現細胞では、表1に示されるPREB遺伝子群が高発現しているのに対し、繊維芽細胞ではPREB遺伝子がほとんど発現していないことが理解される。
以上より、リンパ球を始めとした血液中に存在するmRNA発現細胞に特異的に発現している遺伝子群の網羅的な同定に成功したことが明らかとなった。
以上より、リンパ球を始めとした血液中に存在するmRNA発現細胞に特異的に発現している遺伝子群の網羅的な同定に成功したことが明らかとなった。
本発明は、哺乳動物血液中に存在する細胞の異常に起因する種々の疾患、特に当該細胞における遺伝子の発現状態及び/又は当該遺伝子の遺伝子産物の機能の異常に起因すると考えられる種々の疾患の診断・治療、当該疾患のマーカーとなる遺伝子の探索、当該疾患の治療薬の開発、当該疾患の診断基準用データの作成などに有用である。特に、哺乳動物血液中に存在する細胞で発現している遺伝子群が初めて網羅的に同定されたことから、当該遺伝子群を利用することで、種々の疾患の診断・治療の精度を飛躍的に向上させることができるため、本発明は非常に有用である。本発明により診断・治療などが意図される種々の疾患としては、例えば、糖尿病、肝障害、宿主対移植片反応、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、自己免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)、血管炎、高安病、慢性腎炎、クローン病、多発性硬化症、動脈硬化、乾癬、白血病、癌、喘息、皮膚炎、アレルギー疾患などが挙げられる。
Claims (65)
- 哺乳動物血液中に存在する細胞に特異的に発現している遺伝子群の各遺伝子の核酸配列又はその部分配列をそれぞれ有する核酸分子を含む、核酸分子の群。
- 前記遺伝子群が段階的サブトラクション法によって同定されたものである、請求項1記載の群。
- 前記細胞がmRNA発現細胞である、請求項1又は2記載の群。
- 前記遺伝子群の各遺伝子がPREB−001〜PREB−305に相当する核酸配列をそれぞれ有する、請求項3記載の群。
- 請求項1〜4のいずれか記載の群が固定化された、核酸アレイ。
- 前記アレイが、メンブレン、プラスチック、ガラスからなる群より選ばれる支持体上に構築される、請求項5記載の核酸アレイ。
- 哺乳動物血液中に存在する細胞に特異的に発現している遺伝子群の各遺伝子の翻訳産物にそれぞれ特異的に結合する抗体を含む、抗体の群。
- 前記遺伝子群が段階的サブトラクション法によって同定されたものである、請求項7記載の群。
- 前記細胞がmRNA発現細胞である、請求項7又は8記載の群。
- 前記遺伝子群の各遺伝子がPREB−001〜PREB−305に相当する核酸配列をそれぞれ有する、請求項7〜9のいずれか記載の群。
- 請求項7〜10のいずれか記載の抗体の群が固定化された、抗体アレイ。
- 前記アレイが、メンブレン、プラスチック、ガラスからなる群より選ばれる支持体上に構築される、請求項11記載の抗体アレイ。
- 哺乳動物血液中に存在する細胞に特異的に発現している遺伝子群の中から疾患のマーカー遺伝子を探索することを特徴とする、哺乳動物の疾患マーカー遺伝子の探索方法。
- 前記遺伝子群が段階的サブトラクション法によって同定されたものである、請求項13記載の方法。
- 前記細胞がmRNA発現細胞である、請求項13又は14記載の方法。
- 前記遺伝子群の各遺伝子がPREB−001〜PREB−305に相当する核酸配列をそれぞれ有する、請求項13〜15のいずれか記載の方法。
- 前記疾患が増殖性疾患又は免疫疾患である、請求項13〜16のいずれか記載の方法。
- 前記疾患が糖尿病、肝障害、宿主対移植片反応、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、自己免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)、血管炎、高安病、慢性腎炎、クローン病、多発性硬化症、動脈硬化、乾癬、癌、白血病、喘息、皮膚炎、アレルギ
ー疾患からなる群より選ばれる疾患である、請求項13〜17のいずれか記載の方法。 - 前記遺伝子群の発現量を測定することを含む、請求項13〜18のいずれか記載の方法。
- 前記遺伝子群の発現量の測定が、該遺伝子群の転写産物の発現量を測定することによって行なわれるものである、請求項19記載の方法。
- 核酸アレイを用いる、請求項20記載の方法。
- 前記遺伝子群の発現量の測定が、該遺伝子群の翻訳産物の発現量を測定することによって行なわれるものである、請求項19記載の方法。
- 抗体アレイを用いる、請求項22記載の方法。
- 患者から採取されたサンプルと健常人から採取されたサンプルを検体とし、各遺伝子について両サンプル間の発現量の差異を検出し、差異が認められた遺伝子をマーカー遺伝子であると判定することを特徴とする、請求項13〜23のいずれか記載の方法。
- 前記サンプルが血液である、請求項24記載の方法。
- 哺乳動物血液中に存在する細胞に特異的に発現している遺伝子群の発現量を測定することを特徴とする、哺乳動物の診断方法。
- 前記遺伝子群が段階的サブトラクション法によって同定されたものである、請求項26記載の方法。
- 前記細胞がmRNA発現細胞である、請求項26又は27記載の方法。
- 前記遺伝子群の転写産物がPREB−001〜PREB−305に相当する核酸配列を有する、請求項26〜28のいずれか記載の方法。
- 前記疾患が増殖性疾患又は免疫疾患である、請求項26〜29のいずれか記載の方法。
- 前記疾患が糖尿病、肝障害、宿主対移植片反応、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、自己免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)、血管炎、高安病、慢性腎炎、クローン病、多発性硬化症、動脈硬化、乾癬、癌、白血病、喘息、皮膚炎、アレルギー疾患からなる群より選ばれる疾患である、請求項26〜30のいずれか記載の方法。
- 前記遺伝子群の発現量の測定が、該遺伝子群の転写産物の発現量を測定することによって行なわれるものである、請求項26〜31のいずれか記載の方法。
- 核酸アレイを用いる、請求項32記載の方法。
- 前記遺伝子群の発現量の測定が、該遺伝子群の翻訳産物の発現量を測定することによって行なわれるものである、請求項26〜31のいずれか記載の方法。
- 抗体アレイを用いる、請求項34記載の方法。
- 哺乳動物血液中に存在する細胞に特異的に発現している遺伝子群の変異及び/又は多型
を検出することを含む、哺乳動物の診断方法。 - 前記遺伝子群が段階的サブトラクション法によって同定されたものである、請求項36記載の方法。
- 前記細胞がmRNA発現細胞である、請求項36又は37記載の方法。
- 前記遺伝子群の各遺伝子がPREB−001〜PREB−305に相当する核酸配列をそれぞれ有する、請求項36〜38のいずれか記載の方法。
- 前記疾患が増殖性疾患又は免疫疾患である、請求項36〜39のいずれか記載の方法。
- 前記疾患が糖尿病、肝障害、宿主対移植片反応、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、自己免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)、血管炎、高安病、慢性腎炎、クローン病、多発性硬化症、動脈硬化、乾癬、癌、白血病、喘息、皮膚炎、アレルギー疾患からなる群より選ばれる疾患である、請求項36〜40のいずれか記載の方法。
- 変異及び/又は多型の検出が、患者から採取されたサンプルを検体として行われる、請求項36〜41のいずれか記載の方法。
- 前記サンプルが血液、毛髪、つめ、皮膚、粘膜からなる群より選ばれる、請求項42記載の方法。
- 哺乳動物血液中に存在する細胞の異常に起因する疾患を治療し得る物質を同定する方法であって、哺乳動物の血液中に存在する細胞又は当該細胞から誘導された細胞に被験物質を接触させ、当該細胞に特異的に発現している遺伝子群の発現量を測定し、測定された発現量に基づき、被験物質が当該細胞の異常に起因する疾患を治療し得るか否かを評価することを含む方法。
- 前記遺伝子群が段階的サブトラクション法によって同定されたものである、請求項44記載の方法。
- 前記細胞がmRNA発現細胞である、請求項44又は45記載の方法。
- 前記遺伝子群の各遺伝子がPREB−001〜PREB−305に相当する核酸配列をそれぞれ有する、請求項44〜46のいずれか記載の方法。
- 前記疾患が増殖性疾患又は免疫疾患である、請求項44〜47のいずれか記載の方法。
- 前記疾患が糖尿病、肝障害、宿主対移植片反応、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、自己免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)、血管炎、高安病、慢性腎炎、クローン病、多発性硬化症、動脈硬化、乾癬、癌、白血病、喘息、皮膚炎、アレルギー疾患からなる群より選ばれる疾患である、請求項44〜48のいずれか記載の方法。
- 前記遺伝子群の発現量の測定が、該遺伝子群の転写産物の発現量を測定することによって行なわれるものである、請求項44〜49のいずれか記載の方法。
- 核酸アレイを用いる、請求項50記載の方法。
- 前記遺伝子群の発現量の測定が、該遺伝子群の翻訳産物の発現量を測定することによっ
て行なわれるものである、請求項44〜49のいずれか記載の方法。 - 抗体アレイを用いる、請求項52記載の方法。
- 哺乳動物血液中に存在する細胞に特異的に発現している遺伝子群の発現量、並びに/又は当該遺伝子群の変異及び/若しくは多型について疾患に特有のパターンを見出し、当該パターンが当該疾患の有無及び/又は進行度の診断の指標となり得るか否かを評価し、診断の指標となり得るパターンを診断基準用データとして取得する、診断基準用データの作成方法。
- 前記遺伝子群が段階的サブトラクション法によって同定されたものである、請求項54記載の方法。
- 前記細胞がmRNA発現細胞である、請求項54又は55記載の方法。
- 前記遺伝子群の各遺伝子がPREB−001〜PREB−305に相当する核酸配列をそれぞれ有する、請求項54〜56のいずれか記載の方法。
- 前記疾患が増殖性疾患又は免疫疾患である、請求項54〜57のいずれか記載の方法。
- 前記疾患が糖尿病、肝障害、宿主対移植片反応、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、自己免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)、血管炎、高安病、慢性腎炎、クローン病、多発性硬化症、動脈硬化、乾癬、癌、白血病、喘息、皮膚炎、アレルギー疾患からなる群より選ばれる疾患である、請求項54〜58のいずれか記載の方法。
- 前記遺伝子群の発現量を測定することを含む、請求項54〜59のいずれか記載の方法。
- 前記遺伝子群の発現量の測定が、該遺伝子群の転写産物の発現量を測定することによって行なわれるものである、請求項60記載の方法。
- 核酸アレイを用いる、請求項61記載の方法。
- 前記遺伝子群の発現量の測定が、該遺伝子群の翻訳産物の発現量を測定することによって行なわれるものである、請求項60記載の方法。
- 抗体アレイを用いる、請求項63記載の方法。
- 請求項54〜64のいずれか記載の方法により得られうる、診断基準用データ。
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JP2006333770A (ja) * | 2005-06-01 | 2006-12-14 | Japan Science & Technology Agency | 血管炎(angiitis)患者の血液細胞特異的遺伝子群 |
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-
2004
- 2004-09-09 JP JP2004263092A patent/JP2005102694A/ja active Pending
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