JPWO2002033069A1 - アレルギー性疾患の検査方法 - Google Patents
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Abstract
ディファレンシャルディスプレイ法により、アトピー性皮膚炎患者の好酸球において発現に差の見られる遺伝子を探索した。その結果、軽症の患者の好酸球において、有意に発現が上昇している17の遺伝子が単離された。本発明者らは、これらの遺伝子をアレルギー性疾患の検査、および治療薬候補化合物のスクリーニングに使用できることを見出した。
Description
技術分野
本発明は、初期アレルギー性疾患に関連する遺伝子、並びに該遺伝子の発現を指標としたアレルギー性疾患の検査方法およびアレルギー性疾患治療薬候補化合物のスクリーニング方法に関する。
背景技術
アトピー性皮膚炎等のアレルギー性疾患は、多因子性の病気(multifactorial diseases)と考えられている。これらの病気は多くの異なる遺伝子の発現の相互作用によって起こり、これらの個々の遺伝子の発現は、複数の環境要因によって影響を受ける。このため、特定の病気を起こす特定の遺伝子を解明することは、非常に困難である。
またアレルギー性疾患には、変異や欠陥を有する遺伝子の発現や、特定の遺伝子の過剰発現や発現量の減少が関わっていると考えられている。病気に関して遺伝子発現が果たしている役割を解明するためには、遺伝子が発症にどのように関わり、薬剤などの外的な刺激が遺伝子発現をどのように変化させるのかを理解する必要がある。
近年の遺伝子発現の解析技術の発達により、多くの臨床試料で、遺伝子の発現を解析・比較することが可能となった。このような方法としては、ディファレンシャルディスプレイ(DD)法が有用である。ディファレンシャルディスプレイ法は、ライアンおよびパディー(Liang and Pardee)によって1992年に最初に開発された(Science,1992,257:967−971)。この方法を用いることによって、1回に数十種類以上のサンプルをスクリーニングすることができ、それらのサンプル中で発現が変化した遺伝子を検出することが可能である。このような方法を用いて、変異が生じた遺伝子や、時間や環境とともに発現が変わるような遺伝子を調べることによって、病因遺伝子の解明のために重要な情報がもたらされることが期待される。これらの遺伝子には、環境要因によって発現に影響を受けるような遺伝子も含まれる。
さて、現在アレルギー疾患の診断においては、一般に、問診、家族歴、そして本人の既往症の確認が重要な要素となっている。またアレルギーをより客観的な情報に基づいて診断するために、血液を試料とする試験方法や、アレルゲンに対する患者の免疫学的な応答を観察する方法も実施されている。前者の例として、アレルゲン特異的IgE測定、白血球ヒスタミン遊離試験、あるいはリンパ球幼若化試験等が挙げられる。アレルゲン特異的IgEの存在は、そのアレルゲンに対するアレルギー反応の証明である。しかし患者によっては、必ずしもアレルゲン特異的なIgEを検出できるとは限らない場合もある。また、その測定原理上、診断に必要なアレルゲンの全てに対して、試験を実施しなければならない。白血球ヒスタミン遊離試験やリンパ球幼若化試験は、免疫システムのアレルゲンに対する反応をin vitroで観察する方法である。これらの方法は、操作が煩雑である。
一方、患者を実際にアレルゲンに接触させたときに観察される免疫応答をアレルギーの診断に役立てる方法(後者)も公知である。ブリック・テスト、スクラッチ・テスト、パッチ・テスト、皮内反応、あるいは誘発試験等が、この種の試験に含まれる。これらの試験では、患者のアレルギー反応を直接診断することができる反面、実際に被検者をアレルゲンに曝露する侵襲性の高い検査であると言うことができる。
この他、アレルゲンに関わらず、アレルギー反応の関与を証明するための試験方法も試みられている。たとえば、血清IgE値が高値である場合、その患者にはアレルギー反応が起きていると推定することができる。血清IgE値は、アレルゲン特異IgEの総量に相当する情報である。アレルゲンの種類に関わらずIgEの総量を決定することは容易であるが、非アトピー型気管支炎等の疾患を持つ患者では、IgEが低値となる場合がある。
好酸球数とECP値は、I型アレルギーに引き続いて起きる遅延型反応や、アレルギー性炎症反応に関連する診断項目である。好酸球の数は、アレルギー症状の進展を反映するとされている。また、好酸球の顆粒に含まれる蛋白質であるECP(eosinophil cationic protein)も、喘息患者の発作に伴って強く活性化される。これらの診断項目は、確かにアレルギー症状を反映するものではある。しかし現実には、好酸球の増多はアレルギー症状の進行にともなって顕著に表れてくるのが一般的な所見である。したがって好酸球の明らかな増多が見られる時期には、顕著なアレルギー症状を伴っているケースが多い。そのため、初期のアレルギー性疾患の指標として好酸球数を用いることはできない。
したがって、患者に対する危険が少なく、しかも早期の診断に必要な情報を容易に得ることができる、アレルギー性疾患のマーカーが提供されれば有用である。このようなマーカーは、アレルギー性疾患の発症に深く関与していると考えられるので、診断のみならず、アレルギー症状のコントロールにおいても、重要な標的となる可能性がある。
発明の開示
本発明は、特に初期アレルギー性疾患の指標とすることができる新たな遺伝子の提供を課題とする。さらに、本発明は該指標に基づく、初期アレルギー性疾患の検査方法およびアレルギー性疾患治療薬候補化合物のスクリーニング方法を提供することを課題とする。
初期アレルギー性疾患に関与する遺伝子は、アレルギー症状の、より上流にあって、他の遺伝子の発現を誘導していく役割を果たしていると考えられる。本発明者らは、このような遺伝子を特定することができれば、その発現状態を調べることによって初期アレルギー性疾患の診断が可能となると考えた。
また本発明者らは、このような遺伝子が、アレルギー性疾患の治療においても、重要な標的となりうると考えた。初期アレルギー性疾患に有効な薬剤は、アレルギーの初期の段階のみならず、重症化した後においても、病態の本質的な原因に対して有効な治療薬となる可能性がある。このような治療薬には、単なる対症療法ではなく、アレルギーの根治につながる薬理作用を期待できる。
まず本発明者らは、健常者とアトピー性皮膚炎の患者から得られた末梢血好酸球において発現に差の見られる遺伝子を単離した。発現レベルの違いに基づいて遺伝子を取得する方法としては、本発明者らが開発したDDシステム(WO 00/65046)を応用した。この方法は、既に確立された「蛍光DD(Fluorescent DD)法」(T.Itoら,1994,FEBS Lett.351:231−236)の手順に基づき、複数のヒトの血液から調製した白血球細胞RNAサンプルを解析できるDDシステムである。一方、遺伝子の発現状態を比較する対象としては、好酸球を選択した。好酸球は、アレルギー症状の重要な指標とされている。したがって、好酸球細胞において、発現レベルに差を生じる遺伝子は、アレルギー症状と密接に関連していると考えられる。
続いて本発明者らは、DDシステムによって取得した遺伝子について、進行度の異なるアレルギー性疾患患者と健常者でその発現レベルを比較した。進行度の異なる患者と健常者との比較によって、初期アレルギー性疾患患者と健常者とで好酸球における発現レベルに差がある遺伝子を選択すれば、初期アレルギー性疾患に関連する遺伝子を見出すことができると考えた。
このような戦略に基づいて末梢血好酸球における遺伝子の発現状態を解析した結果、本発明者らは、以下に記載する17の遺伝子がいずれも初期のアレルギー性疾患患者の好酸球において、有意に発現が増加していることを確認した。これらの遺伝子は、それぞれ以下の配列番号に記載された塩基配列を含む。
「1858−05」/配列番号:1
「1901−21」/配列番号:2
「1913−17」/配列番号:3
「1852−09」/配列番号:4
「1945−03」/配列番号:5
「1948−16」/配列番号:6
「1833−02」/配列番号:7
「1873−30」/配列番号:8
「1937−03」/配列番号:9
「1949−02」/配列番号:10
「1956−04」/配列番号:11
「1919−13」/配列番号:12
「1917−03」/配列番号:13
「1941−20」/配列番号:14
「1930−03」/配列番号:15
「1921−05」/配列番号:16
「1925−08」/配列番号:17
以下、本明細書中では、これらの遺伝子を各々「1858−05」遺伝子、「1901−21」遺伝子、「1913−17」遺伝子、「1852−09」遺伝子、「1945−03」遺伝子、「1948−16」遺伝子、「1833−02」遺伝子、「1873−30」遺伝子、「1937−03」遺伝子、「1949−02」遺伝子、「1956−04」遺伝子、「1919−13」遺伝子、「1917−03」遺伝子、「1941−20」遺伝子、「1930−03」遺伝子、「1921−05」遺伝子、および「1925−08」遺伝子と言う。また、これらの遺伝子によりコードされるタンパク質を各々「1858−05」タンパク質、「1901−21」タンパク質、「1913−17」タンパク質、「1852−09」タンパク質、「1945−03」タンパク質、「1948−16」タンパク質、「1833−02」タンパク質、「1873−30」タンパク質、「1937−03」タンパク質、「1949−02」タンパク質、「1956−04」タンパク質、「1919−13」タンパク質、「1917−03」タンパク質、「1941−20」タンパク質、「1930−03」タンパク質、「1921−05」タンパク質、「1925−08」タンパク質と呼ぶ。これらの遺伝子についてデータベース検索を行ったところ、以下の遺伝子については、相同性を有する塩基配列を含む遺伝子が見出された。
「1833−02」遺伝子:機能未知(KIAA0006、Accession No D13631)
「1873−30」遺伝子:塩基配列NM 017719.1、
「1949−02」遺伝子:塩基配列HSA23852、
「1917−03」遺伝子:分泌タンパクをコードすると思われる塩基配列(KIAA1245;GenBank AB033071)そして、
「1925−08」遺伝子:同じく分泌タンパク質をコードすると考えられる塩基配列(X97610;GenBank Z09912)
これらの遺伝子はいずれもアレルギー性疾患との関連性は示唆されていない。
その他の遺伝子は、公知の遺伝子データベースに同一の塩基配列を見出すことができず、いずれも新規な遺伝子であると考えられた。さらに本発明者らは、これらの遺伝子の発現量を指標として、アレルギー性疾患の検査、およびアレルギー性疾患治療薬候補化合物のスクリーニングを行うことが可能であることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、初期アレルギー性疾患において高い発現を示す遺伝子とその応用に関する。より具体的には、該遺伝子の発現を指標としたアレルギー性疾患の検査方法、および候補化合物の該遺伝子の発現に与える影響を検出する方法、更にこの検出方法に基づくアレルギー性疾患治療薬候補化合物のスクリーニング方法に関する。
〔1〕次の工程を含む、初期アレルギー性疾患の検査方法。
a)被検者の好酸球細胞における、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、および配列番号:17に記載の塩基配列のいずれかを含む遺伝子の発現レベルを測定する工程
b)健常者の好酸球細胞における前記遺伝子の発現レベルと比較する工程
〔2〕アレルギー性疾患がアトピー性皮膚炎である、〔1〕に記載の検査方法。
〔3〕遺伝子の発現レベルを、cDNAのPCRによって測定する〔1〕に記載の検査方法。
〔4〕配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、および配列番号:17に記載の塩基配列のいずれかを含むポリヌクレオチド、またはその相補鎖に相補的な塩基配列を有する少なくとも15塩基の長さを有するオリゴヌクレオチドからなる、初期アレルギー性疾患検査用試薬。
〔5〕次の工程を含む、候補化合物が下記(a)または(b)に記載のポリヌクレオチドの発現レベルに与える影響を検出する方法。
(1)下記(a)または(b)に記載のポリヌクレオチドを発現する細胞に候補化合物を接触させる工程
(a)配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、および配列番号:17に記載の塩基配列のいずれかを含むポリヌクレオチド。
(b)配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、および配列番号:17に記載の塩基配列のいずれかを合むDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、初期のアレルギー性疾患患者の好酸球において発現が増加する蛋白質をコードするポリヌクレオチド。
(2)前記(a)または(b)に記載のポリヌクレオチドの発現レベルを測定する工程、
〔6〕細胞が株化白血球細胞である〔5〕に記載の方法。
〔7〕次の工程を含む、候補化合物が下記(a)または(b)に記載のポリヌクレオチドの発現レベルに与える影響を検出する方法。
(a)配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、および配列番号:17に記載の塩基配列のいずれかを含むポリヌクレオチド。
(b)配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、および配列番号:17に記載の塩基配列のいずれかを含むDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、初期のアレルギー性疾患患者の好酸球において発現が増加する蛋白質をコードするポリヌクレオチド。
(1)被験動物に候補化合物を投与する工程、および
(2)被験動物の好酸球細胞における前記(a)または(b)に記載のポリヌクレオチドの発現強度を測定する工程、
〔8〕〔5〕、または〔7〕に記載の方法によって、前記発現レベルに与える影響を検出し、対照と比較して前記発現レベルを低下させる化合物を選択する工程を含む、前記(a)または(b)に記載のポリヌクレオチドの発現レベルを低下させる化合物のスクリーニング方法。
〔9〕次の工程を含む、候補化合物が配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、および配列番号:17に記載の塩基配列のいずれかを含む遺伝子の転写調節領域の活性に与える影響を検出する方法。
(1)配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、および配列番号:17に記載の塩基配列のいずれかを含む遺伝子の転写調節領域と、この転写調節領域の制御下に発現するレポーター遺伝子とを含むベクターを導入した細胞と候補物質を接触させる工程、および
(2)前記レポーター遺伝子の活性を測定する工程
〔10〕〔9〕に記載の方法によって、候補化合物の前記活性に与える影響を検出し、対照と比較して前記活性を低下させる化合物を選択する工程を含む、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、および配列番号:17に記載の塩基配列のいずれかを含む遺伝子の転写調節領域の活性を低下させる化合物のスクリーニング方法。
〔11〕配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、および配列番号:17に記載の塩基配列のいずれかを含む遺伝子の転写調節領域と、この転写調節領域の制御下に発現するレポーター遺伝子とを含むベクター。
〔12〕〔11〕に記載のベクターを導入した細胞。
〔13〕〔8〕、または〔10〕に記載のスクリーニング方法によって得ることができる化合物を有効成分として含有する、アレルギー性疾患の治療薬。
〔14〕配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、および配列番号:17に記載の塩基配列のいずれかを含むポリヌクレオチド、またはその一部のアンチセンスDNAを主成分として含む、アレルギー性疾患の治療薬。
〔15〕「1858−05」、「1901−21」、「1913−17」、「1852−09」、「1945−03」、「1948−16」、「1833−02」、「1873−30」、「1937−03」、「1949−02」、「1956−04」、「1919−13」、「1917−03」、「1941−20」、「1930−03」、「1921−05」、「1925−08」タンパク質のアミノ酸配列からなるペプチドを認識する抗体を主成分として含む、アレルギー性疾患の治療薬。
〔16〕下記の(a)または(b)に記載のポリヌクレオチド。
(a)配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、および配列番号:17に記載の塩基配列のいずれかを含むポリヌクレオチド。
(b)配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、および配列番号:17に記載の塩基配列のいずれかを含むDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、初期のアレルギー性疾患患者の好酸球において発現が増加する蛋白質をコードするポリヌクレオチド。
〔17〕〔16〕に記載のポリヌクレオチドによってコードされる蛋白質。
〔18〕〔16〕に記載のポリヌクレオチドを発現可能に保持するベクター。
〔19〕〔16〕に記載のポリヌクレオチド、または〔18〕に記載のベクターを保持する形質転換細胞。
〔20〕〔19〕に記載の形質転換細胞を培養し、その発現産物を回収する工程を含む、〔17〕に記載の蛋白質の製造方法。
〔21〕〔17〕に記載の蛋白質に対する抗体。
〔22〕〔21〕に記載の抗体と、〔17〕に記載の蛋白質の免疫学的な反応を観察する工程を含む、〔17〕に記載の蛋白質の免疫学的測定方法。
〔23〕配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、および配列番号:17に記載の塩基配列のいずれかを含むポリヌクレオチド、またはその相補鎖に相補的な塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであって、少なくとも15塩基の長さを持つオリゴヌクレオチド。
〔24〕〔23〕に記載のオリゴヌクレオチドと、〔16〕に記載のポリヌクレオチドとのハイブリダイズを観察する工程を含む、〔16〕に記載のポリヌクレオチドの測定方法。
〔25〕下記の(a)または(b)に記載のポリヌクレオチドの好酸球細胞における発現強度を増加させたトランスジェニック非ヒト脊椎動物からなる初期アレルギー性疾患モデル動物。
(a)配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、および配列番号:17に記載の塩基配列のいずれかを含むポリヌクレオチド。
(b)配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、および配列番号:17に記載の塩基配列のいずれかを含むDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、初期のアレルギー性疾患患者の好酸球において発現が増加する蛋白質をコードするポリヌクレオチド。
〔26〕配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、および配列番号:17のいずれかに記載の塩基配列、またはその相補配列にハイブリダイズする少なくとも15塩基の長さを有するポリヌクレオチドと、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、および配列番号:17のいずれかに記載の塩基配列からなる遺伝子を発現する細胞からなる、アレルギー性疾患の治療薬候補化合物をスクリーニングするためのキット。
〔27〕「1858−05」、「1901−21」、「1913−17」、「1852−09」、「1945−03」、「1948−16」、「1833−02」、「1873−30」、「1937−03」、「1949−02」、「1956−04」、「1919−13」、「1917−03」、「1941−20」、「1930−03」、「1921−05」、「1925−08」タンパク質のアミノ酸配列からなるペプチドを認識する抗体と、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、または配列番号:17に記載の塩基配列からなる遺伝子を発現する細胞からなる、アレルギー性疾患の治療薬候補化合物をスクリーニングするためのキット。
本発明は、新規なアレルギー性疾患関連遺伝子、並びに好酸球細胞におけるこれらの遺伝子の発現レベルを指標とする、初期アレルギー疾患の検査方法に関する。以下、これら17種類の遺伝子をまとめて本発明の遺伝子と記載する。本発明の遺伝子は、それぞれ配列番号:1〜配列番号:17に示す塩基配列を含む。
配列番号:1〜配列番号:17に示す塩基配列は、全長cDNAの部分配列である。この部分配列を含む全長cDNAは、白血球細胞のcDNAライブラリーを、配列番号:1〜配列番号:17に示した塩基配列から選択された塩基配列からなるプローブでスクリーニングすることによって取得することができる。本発明の遺伝子は、好酸球で発現している。したがって、好酸球細胞や、好酸球を含む細胞集団に由来するcDNAライブラリーは、いずれも本発明の遺伝子の取得に利用することができる。更に本発明の遺伝子には、好酸球以外の細胞においても発現が確認されたものが含まれる。これらの遺伝子については、好酸球以外の細胞に由来するcDNAライブラリーを利用して、当該遺伝子を得ることもできる。たとえば1913−17、1956−04、並びに1921−05等は、好中球でも発現がみられる。あるいは、1873−30や1917−03のように好酸球以外に、好中球、B細胞、T細胞、そして単球を含む幅広い細胞において発現が見られる遺伝子もある。
また、RACE法(Frohman,M.A.et al.:Proc.Natl.Acad.Sci.USA,85:8992,1988)によって本発明の遺伝子の配列を延長することもできる。すなわち、本発明の遺伝子由来の配列をプライマーとして用いて、白血球細胞などのmRNAを一本鎖cDNAに変換し、末端にオリゴマーを付加してからPCRを行えば、延長されたcDNAを取得することができる。
本発明における「配列番号:1〜配列番号:17に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド」には、このように配列番号:1〜配列番号:17に記載の本発明によるcDNAの配列情報を基に単離しうる、本発明の遺伝子の全長cDNAが含まれる。更にこのようにして取得したcDNAの塩基配列に基づいて、cDNAによってコードされるアミノ酸配列を決定することができる。
本発明は、配列番号:1〜配列番号:17に示す塩基配列のいずれかを含むポリヌクレオチドに関する。本発明はまた、このポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、このポリヌクレオチドによってコードされる蛋白質と機能的に同等な蛋白質をコードするポリヌクレオチドに関する。本発明において、ポリヌクレオチドとは、DNAやRNAのような天然の核酸分子の他、標識を付した分子や、各種のヌクレオチド誘導体によって構成された人工的な分子をも含む。人工的なポリヌクレオチドには、ホスホロチオエート結合やペプチド結合をバックボーンとするポリヌクレオチドが含まれる。
これら本発明のポリヌクレオチドは、化学的に合成することもできるし、mRNA、cDNAライブラリー、あるいはゲノムライブラリー等の天然の核酸から単離することもできる。本発明のポリヌクレオチド分子は、それによってコードされる蛋白質の生産、本発明の遺伝子の発現を阻害するためのアンチセンス核酸、あるいはその存在をハイブリダイゼーションによって検出するためのプローブ等として有用である。
また本発明において、ある蛋白質が初期のアレルギー性疾患患者、あるいは初期のアレルギー疾患動物の好酸球において発現が増加するとき、本発明の蛋白質と機能的に同等と言う。ある蛋白質が、好酸球において発現が増加することは、採取された好酸球における当該蛋白質をコードする遺伝子の発現レベルを比較することによって確認することができる。
本発明のポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、機能的に同等な蛋白質をコードするポリヌクレオチドは、配列番号:1〜配列番号:17に記載の塩基配列に基づいて、ハイブリダイズやPCRなどの公知の手法によって取得することができる。たとえば、配列番号:1〜配列番号:17に記載の塩基配列から選択されたいずれかの塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをプローブとして用い、ストリンジェントな条件下で、白血球細胞のcDNAライブラリーをスクリーニングすることにより、配列番号:1〜配列番号:17に記載の塩基配列と同一性の高い塩基配列からなるcDNAを取得することができる。あるポリヌクレオチドがストリンジェントな条件下で配列番号:1〜配列番号:17に示す塩基配列のいずれかを含むポリヌクレオチドとハイブリダイズするとき、このポリヌクレオチドがコードする蛋白質は本発明の蛋白質と類似した活性を持つものが多いと考えられる。ストリンジェントな条件とは、一般的には以下のような条件を示すことができる。すなわち、4×SSC、65℃でハイブリダイゼーションさせ、0.1×SSCを用いて65℃で1時間洗浄する。ストリンジェンシーを大きく左右するハイブリダイゼーションや洗浄の温度条件は、融解温度(Tm)に応じて調整することができる。Tmはハイブリダイズする塩基対に占める構成塩基の割合、ハイブリダイゼーション溶液組成(塩濃度、ホルムアミドやドデシル硫酸ナトリウム濃度)によって変動する。したがって、当業者であればこれらの条件を考慮して同等のストリンジェンシーを与える条件を経験的に設定することができる。
同一性の高い塩基配列からなるcDNAによってコードされる蛋白質は、本発明における機能的に同等な蛋白質である可能性が高い。本発明において、同一性が高い塩基配列とは、一般的に70%以上、通常は80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、更に好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上の同一性を示す塩基配列を言う。塩基配列の同一性は、BLASTN等の公知のアルゴリズムによって計算することができる。
あるいは「1858−05」、「1901−21」、「1913−17」、「1852−09」、「1945−03」、「1948−16」、「1833−02」、「1873−30」、「1937−03」、「1949−02」、「1956−04」、「1919−13」、「1917−03」、「1941−20」、「1930−03」、「1921−05」、「1925−08」タンパク質のアミノ酸配列に対して、たとえば90%以上、望ましくは95%以上、更に望ましくは99%以上の相同性を有するタンパク質をコードする遺伝子は、「1858−05」、「1901−21」、「1913−17」、「1852−09」、「1945−03」、「1948−16」、「1833−02」、「1873−30」、「1937−03」、「1949−02」、「1956−04」、「1919−13」、「1917−03」、「1941−20」、「1930−03」、「1921−05」、「1925−08」遺伝子と機能的に同等な遺伝子として示すことができる。
配列番号:1〜配列番号:17に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをプライマーとして用い、やはり白血球細胞のcDNAライブラリーを鋳型としてPCRを行うことにより、同一性の高いcDNAを取得することもできる。cDNAのソースとしてヒトの細胞を用いれば、ヒトのcDNAを取得することができる。またヒト以外の、脊椎動物細胞を利用すれば、異種動物におけるカウンターパートを取得することができる。このような非ヒト動物としては、マウス、ラット、イヌ、ブタ、ヤギなどの多くの実験動物を例示することができる。実験動物における本発明の遺伝子のカウンターパートは、各動物種におけるアレルギーモデル動物の作成や、アレルギーの治療薬の開発におけるマーカーとして有用である。
また、実施例において用いた配列番号:1〜配列番号:17に記載の塩基配列から選択された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをプライマーとして増幅することができる遺伝子であって、初期のアレルギー性疾患患者の好酸球において有意に発現が増加する蛋白質をコードする遺伝子も、機能的に同等な遺伝子である。本発明において、配列番号:1〜配列番号:17に記載の塩基配列を含む遺伝子、あるいはこれらの遺伝子と機能的に同等な遺伝子を指標遺伝子という。そして、指標遺伝子によってコードされる蛋白質を指標蛋白質という。
本発明はまた、配列番号:1〜配列番号:17に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド、またはその相補鎖に相補的な塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであって、少なくとも15塩基の長さを持つオリゴヌクレオチドに関する。ここで「相補鎖」とは、A:T(RNAにおいてはTをUに読みかえる)、G:Cの塩基対からなる2本鎖ポリヌクレオチドの一方の鎖に対する他方の鎖を指す。また、「相補的」とは、少なくとも15個の連続したヌクレオチド領域で完全に相補配列である場合に限られず、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは90%、さらに好ましくは95%以上の塩基配列上の相同性を有すればよい。塩基配列の相同性は、BLAST等の公知のアルゴリズムにより決定することができる。
本発明のオリゴヌクレオチドは、本発明のポリヌクレオチドの検出や合成に有用である。オリゴヌクレオチドをプローブやプライマーとして、標的ポリヌクレオチドを検出、あるいは合成する手法は公知である。たとえば、mRNAを標的ポリヌクレオチドとするノーザンブロット法は、RNAの代表的な検出方法である。mRNAを鋳型としてRT−PCRを行えば、本発明のポリヌクレオチドを合成することができる。また、その合成産物の有無や量を指標としてmRNAの有無やその発現レベルを知ることができる。あるいは、好酸球中に発現している本発明のポリヌクレオチドを、in situハイブリダイゼーションによって検出することもできる。
更に本発明のポリヌクレオチドを利用して、それがコードする蛋白質を組み換え体として製造することができる。より具体的には、配列番号:1〜配列番号:17の塩基配列を含むポリヌクレオチドのコード領域を公知の発現ベクターに組み込み、適切な宿主に形質転換することによって形質転換体を得る。あるいは、前記コード領域を含むポリヌクレオチドを適切な宿主のゲノムにインテグレートすることにより、形質転換体とすることもできる。
得られた形質転換体を、導入された本発明のポリヌクレオチドが発現可能な条件下で培養し、発現生成物を回収することにより、本発明の蛋白質を得ることができる。発現生成物は、公知の方法によって精製蛋白質とすることができる。
加えて本発明は、本発明のポリヌクレオチドによってコードされる蛋白質に関する。本発明の蛋白質は、アトピー性皮膚炎等のアレルギー疾患の診断のための指標として有用である。
あるいは本発明の蛋白質やその断片は、本発明の蛋白質に対する抗体を作成するための免疫原として有用である。与えられた免疫原を利用して抗体を得る手法は、公知である。すなわち、蛋白質、あるいはその断片を、適切なアジュバントと混合して免疫原とし、免疫動物に接種する。免疫動物は限定されない。代表的な免疫動物としては、マウス、ラット、ウサギ、あるいはヤギ等の動物が挙げられる。抗体価の上昇を確認した後に採血し、血清を分取すれば抗血清とすることができる。あるいは、更にIgG分画を精製することにより、精製抗体を取得することもできる。抗体の精製には、硫安塩析、イオン交換クロマトグラフィー、プロテインA結合セファロースや本発明の蛋白質をリガンドとするイムノアフィニティクロマトグラフィー等の手法を利用することができる。
更に、抗体産生細胞を細胞融合などの手法によって形質転換し、クローン化することによって、モノクローナル抗体を得ることもできる。あるいは、抗体産生細胞の遺伝子を取得し、ヒト化抗体やキメラ抗体を構築する方法も公知である。このようにして得ることができる抗体は、本発明の蛋白質を免疫学的に測定するためのツールとして有用である。本発明の蛋白質をその抗体と接触させ、両者の免疫学的な反応を観察することにより、本発明の蛋白質を免疫学的に測定することができる。本発明の免疫学的な測定には、公知の多くのアッセイフォーマットを応用することができる。たとえば、血清等に含まれる蛋白質であれば、ELISA等の手法によって測定することができる。あるいは好酸球に発現する蛋白質を抗体によって検出するには、免疫組織学的な手法や、あるいは蛍光標識抗体を用いたFACS等を利用することができる。
本発明において、アレルギー性疾患(allergic disease)とはアレルギー反応の関与する疾患の総称である。より具体的には、アレルゲンが同定され、アレルゲンへの曝露と病変の発症に深い結びつきが証明され、その病変に免疫学的な機序が証明されることと定義することができる。ここで、免疫学的な機序とは、アレルゲンの刺激によって白血球細胞が免疫応答を示すことを意味する。アレルゲンとしては、ダニ抗原や花粉抗原等を例示することができる。
代表的なアレルギー性疾患には、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、花粉症、あるいは昆虫アレルギー等を示すことができる。アレルギー素因(allergic diathesis)とは、アレルギー性疾患を持つ親から子に伝えられる遺伝的な因子である。家族性に発症するアレルギー性疾患はアトピー性疾患とも呼ばれ、その原因となる遺伝的に伝えられる因子がアトピー素因である。アトピー性皮膚炎は、アトピー性疾患のうち、特に皮膚炎症状を伴う疾患に対して与えられた総称である。
本発明の遺伝子は、健常者との比較において、いずれも軽症のアトピー性皮膚炎患者の好酸球で発現量の増加を示した。従って、本発明の遺伝子の発現レベルを指標として、アレルギー性疾患の検査を行うことができる。本発明による検査方法においては、本発明の17の遺伝子から選択されるいずれか1つ、あるいは複数の遺伝子の発現レベルを指標として測定する。なお本発明の検査方法においては、本発明の遺伝子のみならず他のアレルギー疾患の指標を組み合わせることもできる。複数の指標に基づいて検査を行うことにより、より正確な判断を行うことができる。
本発明におけるアレルギー疾患の検査とは、たとえば以下のような検査が含まれる。すなわち、アレルギー性疾患が疑われる初期症状を示す患者における本発明の遺伝子の発現の上昇は、その患者の初期症状の原因がアレルギー性疾患であることを裏付けている。
本発明において、本発明の遺伝子の発現レベルとは、これらの遺伝子のmRNAへの転写、並びに蛋白質への翻訳を含む。したがって本発明によるアレルギー疾患の検査方法は、前記遺伝子に対応するmRNAの発現強度、あるいは前記遺伝子によってコードされる蛋白質の発現レベルの比較に基づいて行われる。
本発明におけるアレルギー性疾患の検査における本発明の遺伝子の発現レベルの測定は、公知の遺伝子解析方法にしたがって実施することができる。具体的には、たとえばこの遺伝子にハイブリダイズする核酸をプローブとしたハイブリダイゼーション技術、または本発明の遺伝子にハイブリダイズするDNAをプライマーとした遺伝子増幅技術等を利用することができる。
本発明の検査に用いられるプローブまたはプライマーとしては、配列番号:1〜配列番号:17に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド、またはその相補鎖に相補的な少なくとも15ヌクレオチドを含むポリヌクレオチドを利用することができる。ここで「相補鎖」とは、A:T(RNAの場合はU)、G:Cの塩基対からなる2本鎖DNAの一方の鎖に対する他方の鎖を指す。また、「相補的」とは、少なくとも15個の連続したヌクレオチド領域で完全に相補配列である場合に限られず、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは90%、さらに好ましくは95%以上の塩基配列上の相同性を有すればよい。塩基配列の相同性は、BLAST等のアルゴリズムにより決定することができる。
このようなポリヌクレオチドは、本発明の蛋白質をコードするポリヌクレオチドを検出、単離するためのプローブとして、また、本発明のポリヌクレオチドを増幅するためのプライマーとして利用することが可能である。プライマーとして用いる場合には、通常、15bp〜100bp、好ましくは15bp〜35bpの鎖長を有する。また、プローブとして用いる場合には、本発明のポリヌクレオチドの少なくとも一部若しくは全部の配列を有し、少なくとも15bpの鎖長のDNAが用いられる。プライマーとして用いる場合、3’側の領域は相補的である必要があるが、5’側には制限酵素認識配列やタグなどを付加することができる。
なお、本発明における「ポリヌクレオチド」は、DNAあるいはRNAであることができる。これらポリヌクレオチドは、合成されたものでも天然のものでもよい。また、ハイブリダイゼーションに用いるプローブDNAは、通常、標識したものが用いられる。標識方法としては、例えば次のような方法を示すことができる。なお用語オリゴヌクレオチドは、ポリヌクレオチドのうち、重合度が比較的低いものを意味している。オリゴヌクレオチドは、ポリヌクレオチドに含まれる。
・DNAポリメラーゼIを用いるニックトランスレーションによる標識
・ポリヌクレオチドキナーゼを用いる末端標識
・クレノーフラグメントによるフィルイン末端標識(Berger SL,Kimmel AR.(1987)Guide to Molecular Cloning Techniques,Method in Enzymology,Academic Press;Hames BD,Higgins SJ(1985)Genes Probes:A Practical Approach.IRL Press;Sambrook J,Fritsch EF,Maniatis T.(1989)Molecular Cloning:a Laboratory Manual,2nd Edn.Cold Spring Harbor Laboratory Press)
・RNAポリメラーゼを用いる転写による標識(Melton DA,Krieg,PA,Rebagkiati MR,Maniatis T,Zinn K,Green MR.(1984)Nucleic Acid Res.,12,7035−7056)
・放射性同位体を用いない修飾ヌクレオチドをDNAに取り込ませる方法(Kricka LJ.(1992)Nonisotopic DNA Probing Techniques.Academic Press)
ハイブリダイゼーション技術を利用したアレルギー性疾患の検査は、例えば、ノーザンハイブリダイゼーション法、ドットブロット法、DNAマイクロアレイを用いた方法などを使用して行うことができる。さらには、RT−PCR法等の遺伝子増幅技術を利用することができる。RT−PCR法においては、遺伝子の増幅過程においてPCR増幅モニター法を用いることにより、本発明の遺伝子の発現について、より定量的な解析を行うことが可能である。
PCR遺伝子増幅モニター法においては、両端に互いの蛍光を打ち消し合う異なった蛍光色素で標識したプローブを用い、検出対象(DNAもしくはRNAの逆転写産物)にハイブリダイズさせる。PCR反応が進んでTaqポリメラーゼの5’−3’エクソヌクレアーゼ(exonuclease)活性により同プローブが分解されると二つの蛍光色素が離れ、蛍光が検出されるようになる。この蛍光の検出をリアルタイムに行う。検出対象についてコピー数の明らかな標準試料について同時に測定することにより、PCR増幅の直線性のあるサイクル数で目的試料中の検出対象のコピー数を決定する(Holland,P.M.et al.,1991,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:7276−7280;Livak,K.J.et al.,1995,PCR Methods and Applications 4(6):357−362;Heid,C.A.et al.,Genome Research 6:986−994;Gibson,E.M.U.et al.,1996,Genome Research 6:995−1001)。PCR増幅モニター法においては、例えば、ABI PRISM7700(PEバイオシステムズ社)を用いることができる。
また本発明のアレルギー性疾患の検査方法は、本発明の遺伝子によりコードされる蛋白質を検出することにより行うこともできる。このような検査方法としては、例えば、これら遺伝子でコードされる蛋白質に結合する抗体を利用したウェスタンブロッティング法、免疫沈降法、ELISA法などを利用することができる。
この検出に用いる本発明の遺伝子によってコードされる蛋白質に結合する抗体は、当業者に周知の技法を用いて得ることができる。本発明に用いる抗体は、ポリクローナル抗体、あるいはモノクローナル抗体(Milstein C,et al.,1983,Nature 305(5934):537−40)であることができる。例えば、本発明の遺伝子によってコードされる蛋白質に対するポリクローナル抗体は、抗原を感作した哺乳動物の血液を取り出し、この血液から公知の方法により血清を分離する。ポリクローナル抗体としては、ポリクローナル抗体を含む血清を使用することができる。あるいは必要に応じてこの血清からポリクローナル抗体を含む画分をさらに単離することもできる。また、モノクローナル抗体を得るには、上記抗原を感作した哺乳動物から免疫細胞を取り出して骨髄腫細胞などと細胞融合させる。こうして得られたハイブリドーマをクローニングして、その培養物から抗体を回収しモノクローナル抗体とすることができる。
本発明の遺伝子によってコードされる蛋白質の検出には、これらの抗体を適宜標識して用いればよい。また、この抗体を標識せずに、該抗体に特異的に結合する物質、例えば、プロテインAやプロテインGを標識して間接的に検出することもできる。具体的な検出方法としては、例えば、ELISA法を挙げることができる。
抗原に用いる蛋白質もしくはその部分ペプチドは、例えばこれら遺伝子もしくはその一部を発現ベクターに組込み、これを適当な宿主細胞に導入して、形質転換体を作成し、該形質転換体を培養して組み換え蛋白質を発現させ、発現させた組み換え蛋白質を培養体または培養上清から精製することにより得ることができる。あるいは、これらの遺伝子によってコードされるアミノ酸配列、あるいは配列番号:1〜配列番号:17に基づいて得られる全長cDNAによってコードされるアミノ酸配列の部分アミノ酸配列からなるオリゴペプチドを化学的に合成し、免疫原として用いることもできる。
本発明においては、被検者の好酸球細胞を試料とする。好酸球細胞は、末梢血から公知の方法によって調製することができる。すなわち、たとえばヘパリン採血した血液を遠心分離によって分画し、白血球細胞を分離する。次に白血球細胞から、フィコールによる遠心分離等によって顆粒球細胞を分取し、更にCD16抗体を用いた好中球のディプリーション等によって好酸球細胞を分離することができる。分離された好酸球を破壊してライセートとすれば、前記蛋白質の免疫学的な測定のための試料とすることができる。あるいはこのライセートからmRNAを抽出すれば、前記遺伝子に対応するmRNAの測定のための試料とすることができる。好酸球のライセートやmRNAの抽出には、市販のキットを利用すると便利である。
あるいは、好酸球の分離を行わず、全血や、末梢血白血球集団を対象として、本発明において指標とすべき遺伝子の発現レベルを測定しても良い。この場合には、測定値の補正を行うことによって、細胞における遺伝子の発現レベルの変化を求めることができる。たとえば好酸球に特異的に発現し、かつ細胞の状態に関わらず発現レベルが大きく変動しない遺伝子(ハウスキーピング遺伝子)の発現レベルの測定値に基づいて、本発明において指標とすべき遺伝子の発現レベルの測定値を補正することができる。
また検出すべき蛋白質が分泌型の蛋白質である場合には、被検者の血液や血清などの体液試料に含まれる目的とする蛋白質の量を測定することによって、それをコードする遺伝子の発現レベルの比較が可能である。
本発明によるアレルギー性疾患の検査方法においては、軽症のアレルギー性疾患で発現の上昇するこれら遺伝子がアレルギー性疾患の初期症状の指標となる。
また本発明は、下記の(a)または(b)に記載のポリヌクレオチドの好酸球細胞における発現レベルを上昇させたトランスジェニック非ヒト動物からなるアレルギー疾患モデル動物に関する。
(a)配列番号:1〜配列番号:17に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド。
(b)配列番号:1〜配列番号:17に記載の塩基配列を含むDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、初期のアレルギー性疾患患者の好酸球において発現が増加する蛋白質をコードするポリヌクレオチド。
本発明によって、前記指標遺伝子の好酸球細胞における発現レベルが、初期のアトピー性皮膚炎患者の好酸球において上昇することが明らかとなった。したがって、好酸球細胞においてこれら遺伝子、またはこれらの遺伝子と機能的に同等な遺伝子の発現レベルを人為的に増強した動物は、初期アレルギー性疾患のモデル動物として利用することができる。なお好酸球における発現レベルの上昇とは、白血球集団全体における標的遺伝子の発現レベルの上昇を含む。すなわち、前記遺伝子の発現レベルを上昇させるのは好酸球のみである場合のみならず、白血球集団全体において前記遺伝子の発現レベルが上昇している場合を含む。本発明において機能的に同等な遺伝子とは、各指標遺伝子によってコードされる蛋白質において明らかにされている活性と同様の活性を備えた蛋白質をコードする遺伝子である。機能的に同等な遺伝子の代表的なものとしては、トランスジェニック動物が本来備えている、その動物種における指標遺伝子のカウンターパートを挙げることができる。
初期アレルギー性疾患において発現が増加する遺伝子は、アレルギー性疾患の病態を上流で制御している遺伝子と言うことができる。言いかえれば、初期アレルギー性疾患において発動を開始する遺伝子の影響下に、下流に位置する様々な遺伝子の発現や抑制が起きることにより、アレルギーの病態が形成されると考えられる。つまり、初期アレルギー性疾患において発現が増加する遺伝子は、アレルギーの病態形成において重要な役割を果たす遺伝子と言える。したがって、この遺伝子の発現を抑制したり、あるいは活性を阻害する薬剤は、アレルギーの治療において、単にアレルギー症状を改善するのみならず、アレルギーの病態形成の本質的な原因を取り除く作用が期待できる。
以上のように、初期アレルギー性疾患において発現が増加する遺伝子には重要な意味がある。そのため、この遺伝子の発現レベルを上昇させることによって得ることができるトランスジェニック動物を初期アレルギー性疾患モデル動物として使用し、遺伝子の役割や、遺伝子を標的とする薬剤を評価することには大きな意義がある。
また本発明による初期アレルギー性疾患モデル動物は、後に述べる初期アレルギー性疾患の治療または予防のための医薬品のスクリーニングに加えて、初期アレルギー性疾患のメカニズムの解明、さらにはスクリーニングされた化合物の安全性の試験に有用である。
たとえば本発明による初期アレルギー疾患モデル動物が皮膚炎を発症したり、何らかのアレルギー性疾患に関連した測定値の変化を示せば、それを回復させる作用を持った化合物を探索するスクリーニングシステムが構築できる。
本発明において、発現レベルの上昇とは、目的とする遺伝子が外来遺伝子として導入され強制発現している状態、あるいは宿主が備える遺伝子の転写と蛋白質への翻訳が増強されている状態、並びに翻訳産物である蛋白質の分解が抑制された状態のいずれかを意味する。遺伝子の発現レベルは、たとえば実施例に示すような定量的なPCRにより確認することができる。また翻訳産物であるタンパク質の活性は、正常な状態と比較することにより確認することができる。
代表的なトランスジェニック動物は、目的とする遺伝子を導入し強制発現させた動物である。この他のトランスジェニック動物には、たとえば遺伝子のコード領域に変異を導入し、その活性を増強したり、あるいは分解されにくいアミノ酸配列に改変した動物などを示すことができる。アミノ酸配列の変異には、置換、欠失、挿入、あるいは付加を示すことができる。その他、遺伝子の転写調節領域を変異させることにより、本発明の遺伝子の発現そのものを調節することもできる。
特定の遺伝子を対象として、トランスジェニック動物を得る方法は公知である。すなわち、遺伝子と卵を混合してリン酸カルシウムで処理する方法や、位相差顕微鏡下で前核期卵の核に、微小ピペットで遺伝子を直接導入する方法(マイクロインジェクション法、米国特許第4873191号)、胚性幹細胞(ES細胞)を使用する方法などによってトランスジェニック動物を得ることができる。その他、レトロウィルスベクターに遺伝子を挿入し、卵に感染させる方法、また、精子を介して遺伝子を卵に導入する精子ベクター法等も開発されている。精子ベクター法とは、精子に外来遺伝子を付着またはエレクトロポレーション等の方法で精子細胞内に取り込ませた後に、卵子に受精させることにより、外来遺伝子を導入する遺伝子組換え法である(M.LavitranoetらCell,57,717,1989)。
本発明の初期アレルギー性疾患モデル動物として用いるトランスジェニック動物は、ヒト以外のあらゆる脊椎動物を利用して作成することができる。具体的には、マウス、ラット、ウサギ、ミニブタ、ヤギ、ヒツジ、あるいはウシ等の脊椎動物において様々な遺伝子の導入や発現レベルを改変されたトランスジェニック動物が作り出されている。
更に本発明は、候補化合物が本発明のポリヌクレオチドの発現レベルに与える影響を検出する方法に関する。本発明において、本発明の遺伝子は、軽症のアトピー性皮膚炎患者の好酸球において有意に発現レベルが上昇している。したがって、これらの遺伝子の発現レベルに与える影響を検出する方法に基づいて、その発現レベルを低下させることができる化合物を選択することによって、アレルギー疾患の治療薬を得ることができる。本発明において遺伝子の発現レベルを低下させる化合物とは、遺伝子の転写、翻訳、蛋白質の活性発現のいずれかのステップを阻害する作用を持つ化合物である。
候補化合物が本発明のポリヌクレオチドの発現レベルに与える影響の検出方法は、in vivoで行なうこともin vitroで行うこともできる。in vivoでの影響を検出するには、適当な被験動物を利用する。被験動物には、たとえばアレルギー疾患モデル動物や、前記(a)または(b)に記載の遺伝子の好酸球細胞における発現が増強されたトランスジェニック非ヒト動物からなるアレルギー性疾患モデル動物を利用することができる。本発明に基づくin vivoでの発現レベルに与える影響の検出は、たとえば以下のような工程にしたがって実施することができる。
(1)被験動物に候補化合物を投与する工程、
(2)被験動物の好酸球細胞における前記(a)または(b)に記載のポリヌクレオチドの発現レベルを測定する工程、
このようにして本発明の遺伝子の発現を増強したモデル動物に薬剤候補化合物を投与し、モデル動物の好酸球における本発明の遺伝子の発現に対する化合物の作用をモニターすることにより、本発明の遺伝子の発現レベルに与える薬剤候補化合物の影響を検出することができる。更にこの検出の結果に基づいて、本発明の遺伝子の発現レベルを低下させる薬剤候補化合物を選択すれば、薬剤候補化合物をスクリーニングすることができる。
このようなスクリーニングにより、本発明の遺伝子の発現に様々な形で関与する薬剤を選択することができる。具体的には、たとえば次のような作用点を持つ薬剤候補化合物を見出すことができる。
本発明の遺伝子の発現をもたらすシグナル伝達経路の抑制、
本発明の遺伝子の転写活性の抑制、
本発明の遺伝子の転写産物の分解の促進等、
また、in vitroにおいては、例えば、前記(a)または(b)に記載した遺伝子を発現する細胞に候補化合物を接触させ、これら遺伝子の発現レベルを検出する方法を利用することができる。具体的には、たとえば以下のような工程にしたがって実施することができる。
(1)前記(a)または(b)に記載したポリヌクレオチドを発現する細胞に候補化合物を接触させる工程
(2)前記(a)または(b)に記載したポリヌクレオチドの発現レベルを測定する工程、
本発明において、工程(1)に用いるための細胞は、これらポリヌクレオチドを適当な発現ベクターに挿入し、該ベクターを適当な宿主細胞に導入することにより得ることができる。利用できるベクター、および宿主細胞は、本発明の遺伝子を発現し得るものであればよい。宿主−ベクター系における宿主細胞としては、大腸菌、酵母、昆虫細胞、動物細胞等が例示でき、それぞれ利用できるベクターを適宜選択することができる。
ベクターの宿主への導入方法としては、生物学的方法、物理的方法、化学的方法などを示すことができる。生物学的方法としては、例えば、ウイルスベクターを使用する方法、特異的受容体を利用する方法、細胞融合法(HVJ(センダイウイルス)、ポリエチレングリコール(PEG)、電気的細胞融合法、微少核融合法(染色体移人))が挙げられる。また、物理的方法としては、マイクロインジェクション法、エレクトロポレーション法、ジーンパーティクルガン(gene gun)を用いる方法が挙げられる。化学的方法としては、リン酸カルシウム沈殿法、リポソーム法、DEAEデキストラン法、プロトプラスト法、赤血球ゴースト法、赤血球膜ゴースト法、マイクロカプセル法が挙げられる。
本発明の検出方法においては、前記(a)または(b)に記載したポリヌクレオチドを発現する細胞として、株化白血球細胞を用いることもできる。株化白血球細胞としては、Eol、YY−1、HL−60、TF−1、およびAML14.3D10など白血球由来の株化細胞を例示できる。白血球細胞株の中でも、好酸球に由来する細胞株は、本発明の検出方法に好適である。好酸球に由来する細胞株は以下に示すとおりである。
Eol
YY−1
AML14.3D10
Eol(Eol−1:Saito H et al,Establishment and characterization of a new human eosinophilic leukemia cell line.Blood 66,1233−1240,1985)は、林原研究所より入手することができる。同様にYY−1(Ogata N et al,The activation of the JAK2/STAT5 pathway is commonly involved in signaling through the human IL−5 receptor.Int.Arch.Allergy Immunol.,Suppl 1,24−27,1997)は、サイトシグナル研究所より分与される。またAML14.3D10(Baumann MA et al,The AML14 and AML14.3D10 cell lines:a long−overdue model for the study of eosinophils and more.Stem Cells,16,16−24,1998)は、米国オハイオ州、Research Service,VA Medical Center DaytonのPaul CCより、商業的に入手可能である。
その他、未分化白血球細胞株であるHL−60クローン15(ATCC CRL−1964)は、酪酸存在下で1週間程度培養すれば、好酸球に分化し好酸球細胞株とすることができる。好酸球であることは、形態的に、多形核で好酸球顆粒が認められることにより判別することができる。形態的な観察は、ギムザ染色やディフクイック染色によって行われる。一般に、好酸球を含むヒト白血球細胞株は、白血病の患者サンプルから不死化した細胞をクローニングすることにより樹立することができる。したがって、当業者は、必要に応じて好酸球細胞株を公知の方法によって得ることもできる。
スクリーニングの方法は、まず前記株化白血球細胞に候補化合物を添加する。その後、該株化白血球細胞における前記(a)または(b)に記載のポリヌクレオチドの発現レベルを測定し、該遺伝子の発現レベルを低下させる化合物を選択する。
なお本発明の方法において、前記(a)または(b)に記載のポリヌクレオチドの発現レベルは、これらの遺伝子がコードする蛋白質の発現レベルのみならず、対応するmRNAを検出することにより比較することもできる。mRNAによって発現レベルを比較するには、蛋白質試料の調製工程に代えて、先に述べたようなmRNA試料の調製工程を実施する。mRNAや蛋白質の検出は、先に述べたような公知の方法によって実施することができる。
さらに本発明の開示に基づいて本発明の遺伝子の転写調節領域を取得し、レポーターアッセイ系を構築することができる。レポーターアッセイ系とは、転写調節領域の下流にこの転写調節領域の制御下に発現するレポーター遺伝子の発現量を指標として、該転写調節領域に作用する転写調節因子をスクリーニングするアッセイ系をいう。
すなわち本発明は、次の工程を合む、アレルギー性疾患の治療薬のスクリーニング方法であって、指標遺伝子が、「1858−05」、「1901−21」、「1913−17」、「1852−09」、「1945−03」、「1948−16」、「1833−02」、「1873−30」、「1937−03」、「1949−02」、「1956−04」、「1919−13」、「1917−03」、「1941−20」、「1930−03」、「1921−05」、「1925−08」、およびこれらの遺伝子と機能的に同等な遺伝子からなる群から選択されるいずれかの遺伝子である方法に関する。
(1)指標遺伝子の転写調節領域と、この転写調節領域の制御下に発現するレポーター遺伝子を含むベクターを導入した細胞と候補物質を接触させる工程、
(2)前記レポーター遺伝子の活性を測定する工程、および
(3)対照と比較してレポーター遺伝子の発現レベルを低下させる化合物を選択する工程
転写調節領域としては、プロモーター、エンハンサー、さらには、通常プロモーター領域に見られるCAATボックス、TATAボックス等を例示することができる。またレポーター遺伝子としては、CAT(chloramphenicol acetyltransferase)遺伝子、ルシフェラーゼ(luciferase)遺伝子、成長ホルモン遺伝子等を利用することができる。
本発明の遺伝子の転写調節領域は、次のようにして取得することができる。すなわち、まず本発明で開示したcDNAの塩基配列に基づいて、BACライブラリー、YACライブラリー等のヒトゲノムDNAライブラリーから、PCRまたはハイブリダイゼーションを用いる方法によりスクリーニングを行い、該cDNAの配列を含むゲノムDNAクローンを得る。得られたゲノムDNAの配列を基に、本発明で開示したcDNAの転写調節領域を推定し、該転写調節領域を取得する。得られた転写調節領域を、レポーター遺伝子の上流に位置するようにクローニングしてレポーターコンストラクトを構築する。得られたレポーターコンストラクトを培養細胞株に導入してスクリーニング用の形質転換体とする。この形質転換体に候補化合物を接触させ、レポーター遺伝子の発現を検出することによって、転写調節領域に対する候補化合物の作用を評価することができる。
本発明の前記ポリヌクレオチドの発現レベルに与える影響を検出する方法に基づいて、前記ポリヌクレオチドの発現レベルを変化させる化合物のスクリーニングを行うことができる。本発明は、次の工程を含む前記(a)または(b)に記載のポリヌクレオチドの発現レベルを変化させる化合物のスクリーニング方法に関する。
すなわち本発明は、in vivoおよび/またはin vitroにおいて、候補化合物による前記ポリヌクレオチドの発現レベルに与える影響を検出し、対照と比較して前記発現レベルを低下させる化合物を選択する工程を含む、前記(a)または(b)に記載のポリヌクレオチドの発現レベルを低下させる化合物のスクリーニング方法に関する。
あるいは本発明は、配列番号:1〜配列番号:17に示す塩基配列のいずれかを含む遺伝子の転写調節領域を利用するレポーターアッセイによる、転写調節領域に作用する化合物のスクリーニング方法に関する。本発明によるレポーターアッセイの結果に基づいて、対象と比較してレポーター遺伝子の発現を低下させる化合物を選択することにより、配列番号:1〜配列番号:17に示す塩基配列のいずれかを含む遺伝子の発現を抑制する化合物を取得することができる。
本発明による各種のスクリーニング方法に必要な、ポリヌクレオチド、抗体、細胞株、あるいはモデル動物は、予め組み合わせてキットとすることができる。より具体的には、たとえば指標遺伝子を発現する細胞と、これらの遺伝子の発現レベルを測定するための試薬とで構成される。指標遺伝子の発現レベルを測定するための試薬としては、たとえば少なくとも1つの指標遺伝子の塩基配列を含むポリヌクレオチド、若しくはその相補鎖に相補的な塩基配列を有する少なくとも15塩基の長さを有するオリゴヌクレオチドが用いられる。あるいは、少なくとも1つの指標蛋白質のアミノ酸配列を含むペプチドを認識する抗体を試薬として用いることができる。これらのキットには、標識の検出に用いられる基質化合物、細胞の培養のための培地や容器、陽性や陰性の標準試料、更にはキットの使用方法を記載した指示書等をパッケージしておくこともできる。本発明に基づく候補化合物の本発明の遺伝子の発現レベルに与える影響を検出するためのキットは、本発明の遺伝子の発現レベルを修飾する化合物のスクリーニング用キットとして利用することができる。
これらの方法に用いる被験候補化合物としては、ステロイド誘導体等既存の化学的方法により合成された化合物標品、コンビナトリアルケミストリーにより合成された化合物標品のほか、動・植物組織の抽出物もしくは微生物培養物等の複数の化合物を含む混合物、またそれらから精製された標品などが挙げられる。
本発明のスクリーニング方法によって選択される化合物は、アレルギー性疾患の治療薬として有用である。本発明の遺伝子は、初期のアレルギー性疾患患者の好酸球において発現が増加する。したがって、この遺伝子の発現を増強することができる化合物には、アトピー性皮膚炎の症状を抑える作用が期待できる。本発明のアレルギー性疾患の治療薬は、前記スクリーニング方法によって選択された化合物を有効成分として含み、生理学的に許容される担体、賦形剤、あるいは希釈剤等と混合することによって製造することができる。本発明のアレルギー性疾患の治療剤は、アレルギー症状の改善を目的として、経口、あるいは非経口的に投与することができる。
経口剤としては、顆粒剤、散剤、錠剤、カプセル剤、溶剤、乳剤、あるいは懸濁剤等の剤型を選択することができる。注射剤には、皮下注射剤、筋肉注射剤、あるいは腹腔内注射剤等を示すことができる。
また、投与すべき化合物がタンパク質からなる場合には、それをコードする遺伝子を遺伝子治療の手法を用いて生体に導入することにより、治療効果を達成することができる。治療効果をもたらすタンパク質をコードする遺伝子を生体に導入し、発現させることによって、疾患を治療する手法は公知である。
あるいはアンチセンスDNAは、適当なプロモーター配列の下流に組み込み、アンチセンスRNA発現ベクターとして投与することができる。この発現ベクターをアレルギー疾患患者の好酸球へ導入すれば、これらの遺伝子のアンチセンスを発現し、当該遺伝子の発現レベルの低下によってアレルギーの治療効果を達成することができる。好酸球細胞への発現ベクターの導入としては、in vivo、あるいはex vivoで行う方法が公知である。
更に、本発明の指標遺伝子の発現産物である蛋白質(すなわち指標蛋白質)の活性を阻害する化合物にも、アレルギー疾患の治療効果が期待できる。たとえば、本発明の指標蛋白質を認識し、その活性を抑制する抗体は、アレルギー性疾患の治療のための薬剤として有用である。蛋白質の活性を抑制する抗体の調製方法は公知である。抗体をヒトに投与する場合には、キメラ抗体やヒト化抗体、あるいはヒト型抗体とすることにより、安全性の高い薬剤とすることができる。
投与量は、患者の年齢、性別、体重および症状、治療効果、投与方法、処理時間、あるいは該医薬組成物に含有される活性成分の種類などにより異なるが、通常成人一人あたり、一回につき0.1mgから500mgの範囲で、好ましくは0.5mgから20mgの範囲で投与することができる。しかし、投与量は種々の条件により変動するため、上記投与量よりも少ない量で充分な場合もあり、また上記の範囲を超える投与量が必要な場合もある。
発明を実施するための最良の形態
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
[実施例1] ディファレンシャルディスプレイ解析
健常者とアトピー性皮膚炎患者の末梢血より単離した血球細胞を比較して、発現変動している新しい治療関連遺伝子あるいは診断に有用な遺伝子を見出すことを目的としてスクリーニングを行った。
(1)被検者
健常者(レーン1〜6)およびアトピー性皮膚炎(レーン8〜29)の症状、病態、喘息の有無、ダニ特異的IgE値、好酸球数、全IgE値を表1に示す。アレルゲン非特異的(Total IgE)、ダニおよびスギ特異的IgEはEIA法により測定した。すなわち、抗ヒトIgE抗体を結合させたキャップに被検血清を反応させ、血清中のアレルゲン非特異的IgE抗体、またはダニ、スギ特異的IgE抗体を結合させた。次に、β−D−ガラクトシダーゼ標識抗ヒトIgE抗体と基質液(4−メチルウンベルフェリル−β−D−ガラクトピラノシド)を加え、反応させて蛍光物質を生成させた。反応停止液を加えて反応を停止させ、同時測定の標準IgEの蛍光強度より抗体濃度を決定した。LDHの測定は、UV法(Wroblewski−La Due法)により、ピルビン酸とNADHの反応によるNADHの減少速度を吸光度の減少から算出した。LDH値の測定には、LタイプワコーLDH(和光純薬)と7170型自動分析装置(日立)を用いた。好酸球数は、EDTA添加血液2mlを試料として鏡検法と自動血球分析装置SE−9000(RF/DCインピーダンス方式、Sysmex製造)により測定した。
表中、病態の「○」は寛解期、「●」は増悪期であることを示す。特異的IgE(S IgE)は抗ダニIgEにおいてClass0〜2を「−」、Class3〜6を「+」とした。全IgE(T IgE)は1000IU/ml以下を「Low(L)」、1000IU/mlより大きい場合を「High(H)」とした。好酸球は3%未満を「A」、3〜7%を「B」、7%より大きい場合を「C」とした。
(2)ディファレンシャルディスプレイ解析
健常者、および患者から採取した全血に3%デキストラン溶液を加えて30分室温放置し、赤血球を沈降させた。上層の白血球画分を回収し、フィコール溶液(Ficoll−Paque PLUS;アマシャムファルマシアバイオテク)の上に載せて1500rpm、30分室温で遠心した。下層に回収された顆粒球画分をCD16抗体磁気ビーズと4℃で30分反応させ、MACSを用いた分離でトラップさせずに溶出する細胞を好酸球として実験に用いた。
上記のように調製した好酸球をIsogen(日本ジーン;和光純薬)に溶解し、この溶液から、Isogenに添付されているプロトコルに従ってRNAを分離した。クロロホルムを加え、攪拌遠心して水層を回収した。次にイソプロパノールを加え、攪拌遠心して沈殿の全RNAを回収した。回収した全RNAは、DNase(日本ジーン;和光純薬)を加えて37℃15分反応させ、フェノール−クロロホルム抽出してエタノール沈殿でRNAを回収した。
このように調製した全RNAを用いて蛍光ディファレンシャルディスプレイ(Fluorescent Differential Display,「DD」と略記する)解析を行った。DD解析は文献(T.Itoら,1994,FEBS Lett.351:231−236)に記載の方法に準じて行った。まず全RNAを逆転写し、cDNAを得た。第一次DD−PCR反応用には3種のアンカープライマーの各々について全RNAの各0.2μgを用いてcDNAを調製した。第二次DD−PCR反応用には、3種のアンカープライマーの各々についてRNA0.4μgを用いてcDNAを調製した。いずれのcDNAも、0.4ng/μl RNA相当の最終濃度に希釈し、実験に用いた。1反応あたり1ng RNA相当のcDNAを用いてDD−PCR反応を行った。反応液の組成は表2の通りである。
PCRの反応条件は、「95℃3分、40℃5分、72℃5分」を1サイクル、続いて、「94℃15秒、40℃2分、72℃1分」を30サイクルの後、72℃5分、その後連続的に4℃にした。
使用したプライマー対はアンカープライマーであるGT15A(配列番号:18)、GT15C(配列番号:19)、およびGT15G(配列番号:20)に対して任意プライマーをそれぞれAG 1〜110、AG 111〜199、およびAG 200〜287を組み合わせ、計287組の反応をおこなった。なお、任意プライマーとしてはGC含量50%の10ヌクレオチドからなるオリゴマーを設計し、合成して用いた。
ゲル電気泳動は、6%変性ポリアクリルアミドゲルを作製し、2.5μlの試料をアプライし、40Wで210分間泳動した。その後、日立製蛍光イメージアナライザーFMBIO IIを用いてゲル板をスキャンし、蛍光検出によって泳動画像を得た。
健常者と患者の両サンプルを並べて泳動し、各試料間で発現の変動するバンドを分離した。目視判定により選抜され、重要検定にて0.1以下のバンドについて配列を決定した。更に画像解析ソフトBio−Imageを用いて選抜されたバンドについても配列を決定した。各バンドにおける同配列クローンをグループ化しコンセンサス配列とした。この結果、配列決定したバンドのうち一意的に「dominant配列」が定義できるバンドを選別した。
選別されたコンセンサス配列をqueryとしてGCG上でgenembl、dbESTに対しBLASTによる相同性検索を行った。ここでidentity95%以上を「有意な相同性有り」と判断した。
このような解析の結果、患者で特異的に発現が上昇するバンドを同定した。同定された各バンドの増幅に用いたプライマーセットを表3に示す。任意プライマーの配列に付けた()内の番号は、配列番号である。また各バンドの塩基配列は次の配列番号に示すとおりであった。
「1858−05」/配列番号:1
「1901−21」/配列番号:101
「1913−17」/配列番号:102
「1852−09」/配列番号:103
「1945−03」/配列番号:104
「1948−16」/配列番号:6
「1833−02」/配列番号:7
「1873−30」/配列番号:8
「1937−03」/配列番号:9
「1949−02」/配列番号:10
「1956−04」/配列番号:105
「1919−13」/配列番号:12
「1917−03」/配列番号:13
「1941−20」/配列番号:14
「1930−03」/配列番号:15
「1921−05」/配列番号:16
「1925−08」/配列番号:17
[実施例2] ABI7700による発現定量
実施例1で同定された遺伝子の発現を、ABI7700を用いたTaqMan法により解析した。新たに健常者、アトピー性皮膚炎患者の軽症、中症、重症各10検体から好酸球を収集し、実施例1と同じようにRNAを調製した。健常者、患者の検査値profileを表4に示す。実施例1で同定したバンド、並びに補正用内部標準として既知遺伝子であるβ−アクチン(actin)について発現レベルを定量した。
健常者、アトピー性皮膚炎患者の軽症、中症、重症各10検体の検査値プロファイルを基に、各群の検査値をプロットしたのが図1(好酸球数)および図2(全IgE)である。アトピー性皮膚炎患者の好酸球数の評価ランクはB〜Cとなっているが、実際の測定値で比較すると、重症者の測定値のみが突出していることが図1から明らかである。このことは、好酸球数は、軽症、あるいは中症のアトピー性皮膚炎の診断指標としては利用しにくいことを示している。
全IgEの測定値(図2)についても同様の傾向が見られる。すなわち全IgE値の顕著な上昇が見られるのは、重症患者であり、軽症〜中症の患者においては健常者と大きな違いは見られない。したがって全IgE値も、軽症のアレルギー性疾患の指標としにくいことがわかる。
ABI 7700による測定に用いたプライマーおよびTaqManプローブは、各遺伝子の配列情報に基づいてPrimer Express(PEバイオシステムズ)により設計した。TaqManプローブの5’末端はFAM(6−carboxy−fluorescein)で、また3’末端はTAMRA(6−carboxy−N,N,N’,N’−tetramethylrhodamine)で標識されている。実験に用いたプライマー、およびTaqMan probeの塩基配列は、それぞれ表5に記載の配列番号に示すとおりである。βアクチン測定用のプライマーとプローブには、TaqMan β−actin Control Reagents(PEバイオシステムズ)に添付のものを用いた。測定結果を図3〜図19に示す。また、平均発現量を表6にまとめた。
上記のデータを利用して、パラメトリック多重比較検定、およびノンパラメトリック多重比較検定を行った。統計解析は、The SAS SYSTEMのSAS前臨床パッケージVersion 4.0(SAS Institute Inc.)を用いて行った。結果を表7に示す。
表7から明らかなように、本発明で同定された各遺伝子はアトピー性皮膚炎(軽症)により発現が有意に上昇している。つまり、これらの遺伝子の発現を測定することが、アトピー性皮膚炎において診断的価値をもつことを裏付けている。
[実施例3] 各種血液細胞での本発明の遺伝子の発現
5人の健常者の末梢血から分離した細胞での各遺伝子の発現を調べた。好酸球(E)の分離は上記の通り行った。好中球(N)は好酸球を溶出させた後、CD16抗体磁気ビーズでトラップされた細胞を磁界から外して溶出、回収して調製した。一方、フィコール遠心分離で中間層に回収される単球画分を、MACS CD3抗体磁気ビーズにより溶出画分(M:monocyteとB cellの混合物)とトラップされる画分(T cell画分)に分離した。次に、溶出画分をMACS CD14抗体磁気ビーズにより、溶出画分(B cell画分)とトラップされる画分(moocyte画分)に分け、それぞれを精製T細胞、精製B細胞、そして精製単球とした。
好酸球はIsogen、好中球、T細胞、B細胞、そして単球はRNeasy(Qiagen)を用いて可溶化し、全RNA抽出、DNase処理後(方法は前述の通り)遺伝子発現解析に供した。用いたプライマー、プローブ等は上記と同一である。これらの血球細胞での平均発現量(AVERAGE:copy/ng(補正値))は表8に示す通りであった。
[実施例4]遺伝子塩基配列の延長(1901−21)
Human Leukocyte Marathon−Ready cDNA(CLONTECH)を鋳型にMarathon cDNA Amplification Kit(CLONTECH)を用いて、キット付属のAP1プライマーと1901−21に特異的な塩基配列からなるプライマー1901−21 ForでPCRを行った。増幅した断片をサブクローニングし配列決定をしたところ1901−21の塩基配列を含む約0.7kbの塩基配列が得られた。同様に、キット付属のAP1プライマーとB1901−21特異的なプライマー1901MRでPCRを行った。増幅した断片をサブクローニングし配列決定をしたところ1901−21の塩基配列を含む約0.5kbの塩基配列が得られ、合計1043bp(配列番号:2)となった。
プライマー配列
[実施例5]遺伝子塩基配列の延長(1913−17)
Human Leukocyte Marathon−Ready cDNA(CLONTECH)を鋳型にMarathon cDNA Amplification Kit(CLONTECH)を用いて、キット付属のAP1プライマーとB1913に特異的な塩基配列からなるプライマー1913−17FでPCRを行った。増幅した断片をサブクローニングし配列決定をしたところ1913−17の塩基配列を含む約0.5kbの塩基配列が得られた。同様に、キット付属のAP1プライマーと1913−17特異的な塩基配列からなるプライマー1913−17RでPCRを行った。増幅した断片をサブクローニングし配列決定をしたところ1913−17の塩基配列を含む約0.4kbの塩基配列が得られ、合計756bp(配列番号:3)となった。プライマー配列
[実施例6]遺伝子塩基配列の延長(1852−09)
GENETRAPPER cDNA Positive Selection System(GIBCO BRL)を用いて、1852−09に特異的な塩基配列(ACATTGGACAAGTGGCACG;配列番号:96)からなるオリゴヌクレオチドをプローブとし、キット添付のビオチン−14−dCTPとTdTによりビオチン化オリゴヌクレオチドとした。TimeSaver cDNA Synthesis Kit(Pharmacia Biotech)により作製したYY−1 cDNA libraryはキット添付のGeneII蛋白質とエクソヌクレアーゼIIIにより一本鎖に分解し、ビオチン化ヌクレオチドを加え標的遺伝子とハイブリダイズさせた。ここにストレプトアビジン−パラマグネティックビーズを加え、マグネットで捕捉することにより1852−09の塩基配列を含むクローンを得た。選択したクローンの持つ断片の配列決定をしたところ1852−09の塩基配列を含む1931bp(配列番号:4)の塩基配列が得られた。
[実施例7]遺伝子塩基配列の延長(1945−03)
Human Leukocyte Marathon Ready cDNAを鋳型にMarathon cDNA Amplification Kit(CLONTECH)用いて、キット付属のAP1プライマーと1945−03特異的な塩基配列からなるプライマー1945−03ForでPCRを行った。さらに、この増幅断片を鋳型にアタプター内の塩基配列[AP2]とプライマー1945−03Forを用いてPCRを行った。増幅した断片をサブクローニングし配列決定をしたところ1945−03の塩基配列を含む約2.2kbの塩基配列がえられた。同様に、キット付属のAP1プライマーと1945−03特異的なプライマー1945−03RevでPCRを行った。さらに、この増幅断片を鋳型にアダプター内の塩基配列[AP2]とプライマー1945−03Revを用いてPCRを行った。増幅した断片をサブクローニングし配列決定をしたところB1945の塩基配列を含む1.6kbの塩基配列がえられ、合計2276bp(配列番号:5)となった。
プライマー配列
[実施例8]遺伝子塩基配列の延長(1956−04)
1956のDD配列を含むプラスミドを鋳型とし、1956−04に特異的な塩基配列からなるプライマー1956−04 senseと1956−04 antisenseを用いてPCRを行った。増幅した断片をClonCapture cDNA Selection Kit(CLONTECH)添付のビオチン−21−dUTPを用いてビオチン化し、このビオチン化プローブとキット添付のRecA蛋白質に複合体を形成させた。ビオチン化プローブ−RecA複合体は、SMART cDNA Library Construction Kit(CLONTECH)を利用して作製した末梢血好酸球cDNA library(二本鎖plasmid library)の相同配列部分と相互作用させ、三本鎖の複合体を形成させた。ここにストレプトアビジンを固相化した磁気ビーズを加え、マグネットで捕捉することにより1956−04の塩基配列を含むクローンを得た。選択したクローンの持つ断片の配列決定をしたところ1956−04の塩基配列を含む293bpの塩基配列(配列番号:11)が得られた。
プライマー配列
[実施例9]]ヒト末梢血好酸球のサイトカイン刺激による遺伝子の発現変化
好酸球はアレルギー性炎症における中心的な炎症細胞と考えられているので、その増殖、分化、局所への遊走・集積、及び活性化に関するサイトカインの遺伝子発現への影響を検討した。
健常者の末梢血100mlから分離した好酸球でのサイトカイン刺激による遺伝子発現の変化を調べた。好酸球の分離は上記の通りに行った。24穴シャーレ上に好酸球を1×105/mLまいた。シャーレは、好酸球の吸着による活性化を防ぐことを目的として、予め1%BSA(非動化ブロッキングバッファー)により室温で2時間かけてコートした。サイトカインとしてインターロイキン5(IL−5)、インターロイキン4(IL−4)、インターフェロンγ(IFNγ)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)並びにエオタキシン(eotaxin)を、各々、0.1、1、及び10ng/mlずつシャーレの各ウェルに添加し、10%FCSを補ったDMEM中で、3時間培養した。これらのサイトカイン類は、いずれも好酸球の活性化やアレルギーの発症に関わるとされるサイトカイン類である。
各処理を行った好酸球について、実施例1と同じようにRNAを調製し、遺伝子発現解析に供した。「1858−05」遺伝子、「1901−21」遺伝子、「1913−17」遺伝子、「1852−09」遺伝子、「1945−03」遺伝子、「1948−16」遺伝子、「1833−02」遺伝子、「1873−30」遺伝子、「1949−02」遺伝子、「1956−04」遺伝子、「1919−13」遺伝子、「1917−13」遺伝子、「1941−20」遺伝子、「1930−03」遺伝子、「1921−05」遺伝子及び「1925−08遺伝子」について発現の解析を行った。各々、用いたプライマー、プローブ等は上記と同一である。各遺伝子について得られた結果を図20〜図35(いずれもRNA1ng当たりのコピー数をGAPDHで補正した値)に示す。
実験に用いたサイトカイン類のうち、IL−5は好酸球を活性化し好酸球の寿命を延ばす。そのためIL−5処理は、好酸球において抗アポトーシス遺伝子のbcl−2やbaxの発現レベルの上昇をもたらす。図20〜図35に示すようにこれらの遺伝子の多くも同様に上昇しているので、好酸球の寿命延長と相関して発現すると考えられ、アレルギーの病態の誘導や増悪との関連性が示唆された。
またこれらの遺伝子の多くは、IFNγ、IL−4、GM−CSFによっても発現が誘導された。これらのサイトカイン類については、好酸球における遺伝子発現に関する知見はこれまであまりない。しかし、いずれもアレルギーの発症にとって重要な因子であることから、これらのサイトカインで好酸球において発現が誘導される遺伝子であるということは、これらの遺伝子が、アレルギー性疾患の病態や増悪に関連している可能性を示唆するものと考えられた。
IL−5によって発現が誘導された遺伝子:
「1858−05」、「1913−17」、「1945−03」、「1948−16」、「1833−02」、「1873−30」、「1949−02」、「1956−04」、「1917−13」、「1930−03」、「1921−05」
IL−4によって発現が誘導された遺伝子:
「1945−03」を除く全ての遺伝子で、発現の増強が観察された。
IFN−γによって発現が誘導された遺伝子:
「1858−05」、「1901−21」、「1852−09」、「1948−16」、「1833−02」、「1873−30」、「1949−02」、「1956−04」、「1919−13」、「1917−13」、「1930−03」、「1921−05」
GM−CSFによって発現が誘導された遺伝子:
「1945−03」
産業上の利用の可能性
本発明により、初期アトピー性皮膚炎患者の好酸球において発現が増加する遺伝子が提供された。好酸球の増加に先だって発現が高まる遺伝子は、アレルギー症状の、きわめて鋭敏な指標として利用することができる。好酸球の増加が見られない段階でアレルギー症状を診断することは、通常は困難である。しかし本発明によって提供された指標は、これまでの診断指標では困難な早期の診断を可能とする。早期の診断が可能となったことにより、初期アレルギー性疾患であっても、的確な治療方法を選択することができる。
好酸球の増加はアレルギー反応の重要なステップである。したがって、好酸球の増加に先だって、好酸球において発現が増加する遺伝子は、アレルギー性疾患の、特に初期の段階において重要な役割を果たしていると考えられる。したがって本発明の遺伝子の発現や活性を抑えることがアレルギー性疾患の治療戦略のターゲットとなるとともに、そのような新しい治療法におけるモニタリングのための新しい臨床診断指標としての有用性が期待できる。
本発明によって提供された指標遺伝子は、アレルゲンの種類に関わらず、簡便にその発現レベルを知ることができる。したがって、アレルギー反応の病態を総合的に把握することができる。
また本発明によるアレルギーの検査方法は、末梢血好酸球を試料としてその発現レベルを解析することができるので、患者に対する侵襲性が低い。しかも遺伝子発現解析に関しては、たとえばECPなどの蛋白質測定と異なって、微量サンプルによる高感度な測定が可能である。遺伝子解析技術は、年々ハイスループット化、低価格化が進行している。したがって本発明によるアレルギーの検査方法は、近い将来、ベッドサイドにおける重要な診断方法となることが期待される。この意味でこれらの病態関連遺伝子の診断的価値は高い。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
図1は、健常者および症状別アトピー性皮膚炎患者における末梢血好酸球数(cells/μL)の分布を示す図。
図2は、健常者および症状別アトピー性皮膚炎患者における全IgE濃度(UA/mL)の分布を示す図。
図3は、健常者および症状別アトピー性皮膚炎患者における1858−05遺伝子の発現量(copy/ng RNA)の分布を示す図。
図4は、健常者および症状別アトピー性皮膚炎患者における1901−21遺伝子の発現量(copy/ng RNA)の分布を示す図。
図5は、健常者および症状別アトピー性皮膚炎患者における1913−17遺伝子の発現量(copy/ng RNA)の分布を示す図。
図6は、健常者および症状別アトピー性皮膚炎患者における1852−09遺伝子の発現量(copy/ng RNA)の分布を示す図。
図7は、健常者および症状別アトピー性皮膚炎患者における1945−03遺伝子の発現量(copy/ng RNA)の分布を示す図。
図8は、健常者および症状別アトピー性皮膚炎患者における1948−16遺伝子の発現量(copy/ng RNA)の分布を示す図。
図9は、健常者および症状別アトピー性皮膚炎患者における1833−02遺伝子の発現量(copy/ng RNA)の分布を示す図。
図10は、健常者および症状別アトピー性皮膚炎患者における1873−30遺伝子の発現量(copy/ng RNA)の分布を示す図。
図11は、健常者および症状別アトピー性皮膚炎患者における1937−03遺伝子の発現量(copy/ng RNA)の分布を示す図。
図12は、健常者および症状別アトピー性皮膚炎患者における1949−02遺伝子の発現量(copy/ng RNA)の分布を示す図。
図13は、健常者および症状別アトピー性皮膚炎患者における1956−04遺伝子の発現量(copy/ng RNA)の分布を示す図。
図14は、健常者および症状別アトピー性皮膚炎患者における1919−13遺伝子の発現量(copy/ng RNA)の分布を示す図。
図15は、健常者および症状別アトピー性皮膚炎患者における1917−03遺伝子の発現量(copy/ng RNA)の分布を示す図。
図16は、健常者および症状別アトピー性皮膚炎患者における1941−20遺伝子の発現量(copy/ng RNA)の分布を示す図。
図17は、健常者および症状別アトピー性皮膚炎患者における1930−03遺伝子の発現量(copy/ng RNA)の分布を示す図。
図18は、健常者および症状別アトピー性皮膚炎患者における1921−05遺伝子の発現量(copy/ng RNA)の分布を示す図。
図19は、健常者および症状別アトピー性皮膚炎患者における1925−08遺伝子の発現量(copy/ng RNA)の分布を示す図。
図20は、横軸に示した各種サイトカイン存在下で培養した、健常者の末梢血好酸球中で発現される1858−05遺伝子の発現量(copy/ng RNA、GAPDH補正値)を示す図。
図21は、図20と同じ条件下における1901−21遺伝子の発現量を示す図。
図22は、図20と同じ条件下における1913−17遺伝子の発現量を示す図。
図23は、図20と同じ条件下における1852−09遺伝子の発現量を示す図。
図24は、図20と同じ条件下における1945−03遺伝子の発現量を示す図。
図25は、図20と同じ条件下における1948−16遺伝子の発現量を示す図。
図26は、図20と同じ条件下における1833−02遺伝子の発現量を示す図。
図27は、図20と同じ条件下における1873−30遺伝子の発現量を示す図。
図28は、図20と同じ条件下における1949−02遺伝子の発現量を示す図。
図29は、図20と同じ条件下における1956−04遺伝子の発現量を示す図。
図30は、図20と同じ条件下における1919−13遺伝子の発現量を示す図。
図31は、図20と同じ条件下における1917−13遺伝子の発現量を示す図。
図32は、図20と同じ条件下における1941−20遺伝子の発現量を示す図。
図33は、図20と同じ条件下における1930−03遺伝子の発現量を示す図。
図34は、図20と同じ条件下における1921−05遺伝子の発現量を示す図。
図35は、図20と同じ条件下における1925−08遺伝子の発現量を示す図。
本発明は、初期アレルギー性疾患に関連する遺伝子、並びに該遺伝子の発現を指標としたアレルギー性疾患の検査方法およびアレルギー性疾患治療薬候補化合物のスクリーニング方法に関する。
背景技術
アトピー性皮膚炎等のアレルギー性疾患は、多因子性の病気(multifactorial diseases)と考えられている。これらの病気は多くの異なる遺伝子の発現の相互作用によって起こり、これらの個々の遺伝子の発現は、複数の環境要因によって影響を受ける。このため、特定の病気を起こす特定の遺伝子を解明することは、非常に困難である。
またアレルギー性疾患には、変異や欠陥を有する遺伝子の発現や、特定の遺伝子の過剰発現や発現量の減少が関わっていると考えられている。病気に関して遺伝子発現が果たしている役割を解明するためには、遺伝子が発症にどのように関わり、薬剤などの外的な刺激が遺伝子発現をどのように変化させるのかを理解する必要がある。
近年の遺伝子発現の解析技術の発達により、多くの臨床試料で、遺伝子の発現を解析・比較することが可能となった。このような方法としては、ディファレンシャルディスプレイ(DD)法が有用である。ディファレンシャルディスプレイ法は、ライアンおよびパディー(Liang and Pardee)によって1992年に最初に開発された(Science,1992,257:967−971)。この方法を用いることによって、1回に数十種類以上のサンプルをスクリーニングすることができ、それらのサンプル中で発現が変化した遺伝子を検出することが可能である。このような方法を用いて、変異が生じた遺伝子や、時間や環境とともに発現が変わるような遺伝子を調べることによって、病因遺伝子の解明のために重要な情報がもたらされることが期待される。これらの遺伝子には、環境要因によって発現に影響を受けるような遺伝子も含まれる。
さて、現在アレルギー疾患の診断においては、一般に、問診、家族歴、そして本人の既往症の確認が重要な要素となっている。またアレルギーをより客観的な情報に基づいて診断するために、血液を試料とする試験方法や、アレルゲンに対する患者の免疫学的な応答を観察する方法も実施されている。前者の例として、アレルゲン特異的IgE測定、白血球ヒスタミン遊離試験、あるいはリンパ球幼若化試験等が挙げられる。アレルゲン特異的IgEの存在は、そのアレルゲンに対するアレルギー反応の証明である。しかし患者によっては、必ずしもアレルゲン特異的なIgEを検出できるとは限らない場合もある。また、その測定原理上、診断に必要なアレルゲンの全てに対して、試験を実施しなければならない。白血球ヒスタミン遊離試験やリンパ球幼若化試験は、免疫システムのアレルゲンに対する反応をin vitroで観察する方法である。これらの方法は、操作が煩雑である。
一方、患者を実際にアレルゲンに接触させたときに観察される免疫応答をアレルギーの診断に役立てる方法(後者)も公知である。ブリック・テスト、スクラッチ・テスト、パッチ・テスト、皮内反応、あるいは誘発試験等が、この種の試験に含まれる。これらの試験では、患者のアレルギー反応を直接診断することができる反面、実際に被検者をアレルゲンに曝露する侵襲性の高い検査であると言うことができる。
この他、アレルゲンに関わらず、アレルギー反応の関与を証明するための試験方法も試みられている。たとえば、血清IgE値が高値である場合、その患者にはアレルギー反応が起きていると推定することができる。血清IgE値は、アレルゲン特異IgEの総量に相当する情報である。アレルゲンの種類に関わらずIgEの総量を決定することは容易であるが、非アトピー型気管支炎等の疾患を持つ患者では、IgEが低値となる場合がある。
好酸球数とECP値は、I型アレルギーに引き続いて起きる遅延型反応や、アレルギー性炎症反応に関連する診断項目である。好酸球の数は、アレルギー症状の進展を反映するとされている。また、好酸球の顆粒に含まれる蛋白質であるECP(eosinophil cationic protein)も、喘息患者の発作に伴って強く活性化される。これらの診断項目は、確かにアレルギー症状を反映するものではある。しかし現実には、好酸球の増多はアレルギー症状の進行にともなって顕著に表れてくるのが一般的な所見である。したがって好酸球の明らかな増多が見られる時期には、顕著なアレルギー症状を伴っているケースが多い。そのため、初期のアレルギー性疾患の指標として好酸球数を用いることはできない。
したがって、患者に対する危険が少なく、しかも早期の診断に必要な情報を容易に得ることができる、アレルギー性疾患のマーカーが提供されれば有用である。このようなマーカーは、アレルギー性疾患の発症に深く関与していると考えられるので、診断のみならず、アレルギー症状のコントロールにおいても、重要な標的となる可能性がある。
発明の開示
本発明は、特に初期アレルギー性疾患の指標とすることができる新たな遺伝子の提供を課題とする。さらに、本発明は該指標に基づく、初期アレルギー性疾患の検査方法およびアレルギー性疾患治療薬候補化合物のスクリーニング方法を提供することを課題とする。
初期アレルギー性疾患に関与する遺伝子は、アレルギー症状の、より上流にあって、他の遺伝子の発現を誘導していく役割を果たしていると考えられる。本発明者らは、このような遺伝子を特定することができれば、その発現状態を調べることによって初期アレルギー性疾患の診断が可能となると考えた。
また本発明者らは、このような遺伝子が、アレルギー性疾患の治療においても、重要な標的となりうると考えた。初期アレルギー性疾患に有効な薬剤は、アレルギーの初期の段階のみならず、重症化した後においても、病態の本質的な原因に対して有効な治療薬となる可能性がある。このような治療薬には、単なる対症療法ではなく、アレルギーの根治につながる薬理作用を期待できる。
まず本発明者らは、健常者とアトピー性皮膚炎の患者から得られた末梢血好酸球において発現に差の見られる遺伝子を単離した。発現レベルの違いに基づいて遺伝子を取得する方法としては、本発明者らが開発したDDシステム(WO 00/65046)を応用した。この方法は、既に確立された「蛍光DD(Fluorescent DD)法」(T.Itoら,1994,FEBS Lett.351:231−236)の手順に基づき、複数のヒトの血液から調製した白血球細胞RNAサンプルを解析できるDDシステムである。一方、遺伝子の発現状態を比較する対象としては、好酸球を選択した。好酸球は、アレルギー症状の重要な指標とされている。したがって、好酸球細胞において、発現レベルに差を生じる遺伝子は、アレルギー症状と密接に関連していると考えられる。
続いて本発明者らは、DDシステムによって取得した遺伝子について、進行度の異なるアレルギー性疾患患者と健常者でその発現レベルを比較した。進行度の異なる患者と健常者との比較によって、初期アレルギー性疾患患者と健常者とで好酸球における発現レベルに差がある遺伝子を選択すれば、初期アレルギー性疾患に関連する遺伝子を見出すことができると考えた。
このような戦略に基づいて末梢血好酸球における遺伝子の発現状態を解析した結果、本発明者らは、以下に記載する17の遺伝子がいずれも初期のアレルギー性疾患患者の好酸球において、有意に発現が増加していることを確認した。これらの遺伝子は、それぞれ以下の配列番号に記載された塩基配列を含む。
「1858−05」/配列番号:1
「1901−21」/配列番号:2
「1913−17」/配列番号:3
「1852−09」/配列番号:4
「1945−03」/配列番号:5
「1948−16」/配列番号:6
「1833−02」/配列番号:7
「1873−30」/配列番号:8
「1937−03」/配列番号:9
「1949−02」/配列番号:10
「1956−04」/配列番号:11
「1919−13」/配列番号:12
「1917−03」/配列番号:13
「1941−20」/配列番号:14
「1930−03」/配列番号:15
「1921−05」/配列番号:16
「1925−08」/配列番号:17
以下、本明細書中では、これらの遺伝子を各々「1858−05」遺伝子、「1901−21」遺伝子、「1913−17」遺伝子、「1852−09」遺伝子、「1945−03」遺伝子、「1948−16」遺伝子、「1833−02」遺伝子、「1873−30」遺伝子、「1937−03」遺伝子、「1949−02」遺伝子、「1956−04」遺伝子、「1919−13」遺伝子、「1917−03」遺伝子、「1941−20」遺伝子、「1930−03」遺伝子、「1921−05」遺伝子、および「1925−08」遺伝子と言う。また、これらの遺伝子によりコードされるタンパク質を各々「1858−05」タンパク質、「1901−21」タンパク質、「1913−17」タンパク質、「1852−09」タンパク質、「1945−03」タンパク質、「1948−16」タンパク質、「1833−02」タンパク質、「1873−30」タンパク質、「1937−03」タンパク質、「1949−02」タンパク質、「1956−04」タンパク質、「1919−13」タンパク質、「1917−03」タンパク質、「1941−20」タンパク質、「1930−03」タンパク質、「1921−05」タンパク質、「1925−08」タンパク質と呼ぶ。これらの遺伝子についてデータベース検索を行ったところ、以下の遺伝子については、相同性を有する塩基配列を含む遺伝子が見出された。
「1833−02」遺伝子:機能未知(KIAA0006、Accession No D13631)
「1873−30」遺伝子:塩基配列NM 017719.1、
「1949−02」遺伝子:塩基配列HSA23852、
「1917−03」遺伝子:分泌タンパクをコードすると思われる塩基配列(KIAA1245;GenBank AB033071)そして、
「1925−08」遺伝子:同じく分泌タンパク質をコードすると考えられる塩基配列(X97610;GenBank Z09912)
これらの遺伝子はいずれもアレルギー性疾患との関連性は示唆されていない。
その他の遺伝子は、公知の遺伝子データベースに同一の塩基配列を見出すことができず、いずれも新規な遺伝子であると考えられた。さらに本発明者らは、これらの遺伝子の発現量を指標として、アレルギー性疾患の検査、およびアレルギー性疾患治療薬候補化合物のスクリーニングを行うことが可能であることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、初期アレルギー性疾患において高い発現を示す遺伝子とその応用に関する。より具体的には、該遺伝子の発現を指標としたアレルギー性疾患の検査方法、および候補化合物の該遺伝子の発現に与える影響を検出する方法、更にこの検出方法に基づくアレルギー性疾患治療薬候補化合物のスクリーニング方法に関する。
〔1〕次の工程を含む、初期アレルギー性疾患の検査方法。
a)被検者の好酸球細胞における、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、および配列番号:17に記載の塩基配列のいずれかを含む遺伝子の発現レベルを測定する工程
b)健常者の好酸球細胞における前記遺伝子の発現レベルと比較する工程
〔2〕アレルギー性疾患がアトピー性皮膚炎である、〔1〕に記載の検査方法。
〔3〕遺伝子の発現レベルを、cDNAのPCRによって測定する〔1〕に記載の検査方法。
〔4〕配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、および配列番号:17に記載の塩基配列のいずれかを含むポリヌクレオチド、またはその相補鎖に相補的な塩基配列を有する少なくとも15塩基の長さを有するオリゴヌクレオチドからなる、初期アレルギー性疾患検査用試薬。
〔5〕次の工程を含む、候補化合物が下記(a)または(b)に記載のポリヌクレオチドの発現レベルに与える影響を検出する方法。
(1)下記(a)または(b)に記載のポリヌクレオチドを発現する細胞に候補化合物を接触させる工程
(a)配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、および配列番号:17に記載の塩基配列のいずれかを含むポリヌクレオチド。
(b)配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、および配列番号:17に記載の塩基配列のいずれかを合むDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、初期のアレルギー性疾患患者の好酸球において発現が増加する蛋白質をコードするポリヌクレオチド。
(2)前記(a)または(b)に記載のポリヌクレオチドの発現レベルを測定する工程、
〔6〕細胞が株化白血球細胞である〔5〕に記載の方法。
〔7〕次の工程を含む、候補化合物が下記(a)または(b)に記載のポリヌクレオチドの発現レベルに与える影響を検出する方法。
(a)配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、および配列番号:17に記載の塩基配列のいずれかを含むポリヌクレオチド。
(b)配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、および配列番号:17に記載の塩基配列のいずれかを含むDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、初期のアレルギー性疾患患者の好酸球において発現が増加する蛋白質をコードするポリヌクレオチド。
(1)被験動物に候補化合物を投与する工程、および
(2)被験動物の好酸球細胞における前記(a)または(b)に記載のポリヌクレオチドの発現強度を測定する工程、
〔8〕〔5〕、または〔7〕に記載の方法によって、前記発現レベルに与える影響を検出し、対照と比較して前記発現レベルを低下させる化合物を選択する工程を含む、前記(a)または(b)に記載のポリヌクレオチドの発現レベルを低下させる化合物のスクリーニング方法。
〔9〕次の工程を含む、候補化合物が配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、および配列番号:17に記載の塩基配列のいずれかを含む遺伝子の転写調節領域の活性に与える影響を検出する方法。
(1)配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、および配列番号:17に記載の塩基配列のいずれかを含む遺伝子の転写調節領域と、この転写調節領域の制御下に発現するレポーター遺伝子とを含むベクターを導入した細胞と候補物質を接触させる工程、および
(2)前記レポーター遺伝子の活性を測定する工程
〔10〕〔9〕に記載の方法によって、候補化合物の前記活性に与える影響を検出し、対照と比較して前記活性を低下させる化合物を選択する工程を含む、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、および配列番号:17に記載の塩基配列のいずれかを含む遺伝子の転写調節領域の活性を低下させる化合物のスクリーニング方法。
〔11〕配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、および配列番号:17に記載の塩基配列のいずれかを含む遺伝子の転写調節領域と、この転写調節領域の制御下に発現するレポーター遺伝子とを含むベクター。
〔12〕〔11〕に記載のベクターを導入した細胞。
〔13〕〔8〕、または〔10〕に記載のスクリーニング方法によって得ることができる化合物を有効成分として含有する、アレルギー性疾患の治療薬。
〔14〕配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、および配列番号:17に記載の塩基配列のいずれかを含むポリヌクレオチド、またはその一部のアンチセンスDNAを主成分として含む、アレルギー性疾患の治療薬。
〔15〕「1858−05」、「1901−21」、「1913−17」、「1852−09」、「1945−03」、「1948−16」、「1833−02」、「1873−30」、「1937−03」、「1949−02」、「1956−04」、「1919−13」、「1917−03」、「1941−20」、「1930−03」、「1921−05」、「1925−08」タンパク質のアミノ酸配列からなるペプチドを認識する抗体を主成分として含む、アレルギー性疾患の治療薬。
〔16〕下記の(a)または(b)に記載のポリヌクレオチド。
(a)配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、および配列番号:17に記載の塩基配列のいずれかを含むポリヌクレオチド。
(b)配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、および配列番号:17に記載の塩基配列のいずれかを含むDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、初期のアレルギー性疾患患者の好酸球において発現が増加する蛋白質をコードするポリヌクレオチド。
〔17〕〔16〕に記載のポリヌクレオチドによってコードされる蛋白質。
〔18〕〔16〕に記載のポリヌクレオチドを発現可能に保持するベクター。
〔19〕〔16〕に記載のポリヌクレオチド、または〔18〕に記載のベクターを保持する形質転換細胞。
〔20〕〔19〕に記載の形質転換細胞を培養し、その発現産物を回収する工程を含む、〔17〕に記載の蛋白質の製造方法。
〔21〕〔17〕に記載の蛋白質に対する抗体。
〔22〕〔21〕に記載の抗体と、〔17〕に記載の蛋白質の免疫学的な反応を観察する工程を含む、〔17〕に記載の蛋白質の免疫学的測定方法。
〔23〕配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、および配列番号:17に記載の塩基配列のいずれかを含むポリヌクレオチド、またはその相補鎖に相補的な塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであって、少なくとも15塩基の長さを持つオリゴヌクレオチド。
〔24〕〔23〕に記載のオリゴヌクレオチドと、〔16〕に記載のポリヌクレオチドとのハイブリダイズを観察する工程を含む、〔16〕に記載のポリヌクレオチドの測定方法。
〔25〕下記の(a)または(b)に記載のポリヌクレオチドの好酸球細胞における発現強度を増加させたトランスジェニック非ヒト脊椎動物からなる初期アレルギー性疾患モデル動物。
(a)配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、および配列番号:17に記載の塩基配列のいずれかを含むポリヌクレオチド。
(b)配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、および配列番号:17に記載の塩基配列のいずれかを含むDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、初期のアレルギー性疾患患者の好酸球において発現が増加する蛋白質をコードするポリヌクレオチド。
〔26〕配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、および配列番号:17のいずれかに記載の塩基配列、またはその相補配列にハイブリダイズする少なくとも15塩基の長さを有するポリヌクレオチドと、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、および配列番号:17のいずれかに記載の塩基配列からなる遺伝子を発現する細胞からなる、アレルギー性疾患の治療薬候補化合物をスクリーニングするためのキット。
〔27〕「1858−05」、「1901−21」、「1913−17」、「1852−09」、「1945−03」、「1948−16」、「1833−02」、「1873−30」、「1937−03」、「1949−02」、「1956−04」、「1919−13」、「1917−03」、「1941−20」、「1930−03」、「1921−05」、「1925−08」タンパク質のアミノ酸配列からなるペプチドを認識する抗体と、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、または配列番号:17に記載の塩基配列からなる遺伝子を発現する細胞からなる、アレルギー性疾患の治療薬候補化合物をスクリーニングするためのキット。
本発明は、新規なアレルギー性疾患関連遺伝子、並びに好酸球細胞におけるこれらの遺伝子の発現レベルを指標とする、初期アレルギー疾患の検査方法に関する。以下、これら17種類の遺伝子をまとめて本発明の遺伝子と記載する。本発明の遺伝子は、それぞれ配列番号:1〜配列番号:17に示す塩基配列を含む。
配列番号:1〜配列番号:17に示す塩基配列は、全長cDNAの部分配列である。この部分配列を含む全長cDNAは、白血球細胞のcDNAライブラリーを、配列番号:1〜配列番号:17に示した塩基配列から選択された塩基配列からなるプローブでスクリーニングすることによって取得することができる。本発明の遺伝子は、好酸球で発現している。したがって、好酸球細胞や、好酸球を含む細胞集団に由来するcDNAライブラリーは、いずれも本発明の遺伝子の取得に利用することができる。更に本発明の遺伝子には、好酸球以外の細胞においても発現が確認されたものが含まれる。これらの遺伝子については、好酸球以外の細胞に由来するcDNAライブラリーを利用して、当該遺伝子を得ることもできる。たとえば1913−17、1956−04、並びに1921−05等は、好中球でも発現がみられる。あるいは、1873−30や1917−03のように好酸球以外に、好中球、B細胞、T細胞、そして単球を含む幅広い細胞において発現が見られる遺伝子もある。
また、RACE法(Frohman,M.A.et al.:Proc.Natl.Acad.Sci.USA,85:8992,1988)によって本発明の遺伝子の配列を延長することもできる。すなわち、本発明の遺伝子由来の配列をプライマーとして用いて、白血球細胞などのmRNAを一本鎖cDNAに変換し、末端にオリゴマーを付加してからPCRを行えば、延長されたcDNAを取得することができる。
本発明における「配列番号:1〜配列番号:17に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド」には、このように配列番号:1〜配列番号:17に記載の本発明によるcDNAの配列情報を基に単離しうる、本発明の遺伝子の全長cDNAが含まれる。更にこのようにして取得したcDNAの塩基配列に基づいて、cDNAによってコードされるアミノ酸配列を決定することができる。
本発明は、配列番号:1〜配列番号:17に示す塩基配列のいずれかを含むポリヌクレオチドに関する。本発明はまた、このポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、このポリヌクレオチドによってコードされる蛋白質と機能的に同等な蛋白質をコードするポリヌクレオチドに関する。本発明において、ポリヌクレオチドとは、DNAやRNAのような天然の核酸分子の他、標識を付した分子や、各種のヌクレオチド誘導体によって構成された人工的な分子をも含む。人工的なポリヌクレオチドには、ホスホロチオエート結合やペプチド結合をバックボーンとするポリヌクレオチドが含まれる。
これら本発明のポリヌクレオチドは、化学的に合成することもできるし、mRNA、cDNAライブラリー、あるいはゲノムライブラリー等の天然の核酸から単離することもできる。本発明のポリヌクレオチド分子は、それによってコードされる蛋白質の生産、本発明の遺伝子の発現を阻害するためのアンチセンス核酸、あるいはその存在をハイブリダイゼーションによって検出するためのプローブ等として有用である。
また本発明において、ある蛋白質が初期のアレルギー性疾患患者、あるいは初期のアレルギー疾患動物の好酸球において発現が増加するとき、本発明の蛋白質と機能的に同等と言う。ある蛋白質が、好酸球において発現が増加することは、採取された好酸球における当該蛋白質をコードする遺伝子の発現レベルを比較することによって確認することができる。
本発明のポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、機能的に同等な蛋白質をコードするポリヌクレオチドは、配列番号:1〜配列番号:17に記載の塩基配列に基づいて、ハイブリダイズやPCRなどの公知の手法によって取得することができる。たとえば、配列番号:1〜配列番号:17に記載の塩基配列から選択されたいずれかの塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをプローブとして用い、ストリンジェントな条件下で、白血球細胞のcDNAライブラリーをスクリーニングすることにより、配列番号:1〜配列番号:17に記載の塩基配列と同一性の高い塩基配列からなるcDNAを取得することができる。あるポリヌクレオチドがストリンジェントな条件下で配列番号:1〜配列番号:17に示す塩基配列のいずれかを含むポリヌクレオチドとハイブリダイズするとき、このポリヌクレオチドがコードする蛋白質は本発明の蛋白質と類似した活性を持つものが多いと考えられる。ストリンジェントな条件とは、一般的には以下のような条件を示すことができる。すなわち、4×SSC、65℃でハイブリダイゼーションさせ、0.1×SSCを用いて65℃で1時間洗浄する。ストリンジェンシーを大きく左右するハイブリダイゼーションや洗浄の温度条件は、融解温度(Tm)に応じて調整することができる。Tmはハイブリダイズする塩基対に占める構成塩基の割合、ハイブリダイゼーション溶液組成(塩濃度、ホルムアミドやドデシル硫酸ナトリウム濃度)によって変動する。したがって、当業者であればこれらの条件を考慮して同等のストリンジェンシーを与える条件を経験的に設定することができる。
同一性の高い塩基配列からなるcDNAによってコードされる蛋白質は、本発明における機能的に同等な蛋白質である可能性が高い。本発明において、同一性が高い塩基配列とは、一般的に70%以上、通常は80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、更に好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上の同一性を示す塩基配列を言う。塩基配列の同一性は、BLASTN等の公知のアルゴリズムによって計算することができる。
あるいは「1858−05」、「1901−21」、「1913−17」、「1852−09」、「1945−03」、「1948−16」、「1833−02」、「1873−30」、「1937−03」、「1949−02」、「1956−04」、「1919−13」、「1917−03」、「1941−20」、「1930−03」、「1921−05」、「1925−08」タンパク質のアミノ酸配列に対して、たとえば90%以上、望ましくは95%以上、更に望ましくは99%以上の相同性を有するタンパク質をコードする遺伝子は、「1858−05」、「1901−21」、「1913−17」、「1852−09」、「1945−03」、「1948−16」、「1833−02」、「1873−30」、「1937−03」、「1949−02」、「1956−04」、「1919−13」、「1917−03」、「1941−20」、「1930−03」、「1921−05」、「1925−08」遺伝子と機能的に同等な遺伝子として示すことができる。
配列番号:1〜配列番号:17に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをプライマーとして用い、やはり白血球細胞のcDNAライブラリーを鋳型としてPCRを行うことにより、同一性の高いcDNAを取得することもできる。cDNAのソースとしてヒトの細胞を用いれば、ヒトのcDNAを取得することができる。またヒト以外の、脊椎動物細胞を利用すれば、異種動物におけるカウンターパートを取得することができる。このような非ヒト動物としては、マウス、ラット、イヌ、ブタ、ヤギなどの多くの実験動物を例示することができる。実験動物における本発明の遺伝子のカウンターパートは、各動物種におけるアレルギーモデル動物の作成や、アレルギーの治療薬の開発におけるマーカーとして有用である。
また、実施例において用いた配列番号:1〜配列番号:17に記載の塩基配列から選択された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをプライマーとして増幅することができる遺伝子であって、初期のアレルギー性疾患患者の好酸球において有意に発現が増加する蛋白質をコードする遺伝子も、機能的に同等な遺伝子である。本発明において、配列番号:1〜配列番号:17に記載の塩基配列を含む遺伝子、あるいはこれらの遺伝子と機能的に同等な遺伝子を指標遺伝子という。そして、指標遺伝子によってコードされる蛋白質を指標蛋白質という。
本発明はまた、配列番号:1〜配列番号:17に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド、またはその相補鎖に相補的な塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであって、少なくとも15塩基の長さを持つオリゴヌクレオチドに関する。ここで「相補鎖」とは、A:T(RNAにおいてはTをUに読みかえる)、G:Cの塩基対からなる2本鎖ポリヌクレオチドの一方の鎖に対する他方の鎖を指す。また、「相補的」とは、少なくとも15個の連続したヌクレオチド領域で完全に相補配列である場合に限られず、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは90%、さらに好ましくは95%以上の塩基配列上の相同性を有すればよい。塩基配列の相同性は、BLAST等の公知のアルゴリズムにより決定することができる。
本発明のオリゴヌクレオチドは、本発明のポリヌクレオチドの検出や合成に有用である。オリゴヌクレオチドをプローブやプライマーとして、標的ポリヌクレオチドを検出、あるいは合成する手法は公知である。たとえば、mRNAを標的ポリヌクレオチドとするノーザンブロット法は、RNAの代表的な検出方法である。mRNAを鋳型としてRT−PCRを行えば、本発明のポリヌクレオチドを合成することができる。また、その合成産物の有無や量を指標としてmRNAの有無やその発現レベルを知ることができる。あるいは、好酸球中に発現している本発明のポリヌクレオチドを、in situハイブリダイゼーションによって検出することもできる。
更に本発明のポリヌクレオチドを利用して、それがコードする蛋白質を組み換え体として製造することができる。より具体的には、配列番号:1〜配列番号:17の塩基配列を含むポリヌクレオチドのコード領域を公知の発現ベクターに組み込み、適切な宿主に形質転換することによって形質転換体を得る。あるいは、前記コード領域を含むポリヌクレオチドを適切な宿主のゲノムにインテグレートすることにより、形質転換体とすることもできる。
得られた形質転換体を、導入された本発明のポリヌクレオチドが発現可能な条件下で培養し、発現生成物を回収することにより、本発明の蛋白質を得ることができる。発現生成物は、公知の方法によって精製蛋白質とすることができる。
加えて本発明は、本発明のポリヌクレオチドによってコードされる蛋白質に関する。本発明の蛋白質は、アトピー性皮膚炎等のアレルギー疾患の診断のための指標として有用である。
あるいは本発明の蛋白質やその断片は、本発明の蛋白質に対する抗体を作成するための免疫原として有用である。与えられた免疫原を利用して抗体を得る手法は、公知である。すなわち、蛋白質、あるいはその断片を、適切なアジュバントと混合して免疫原とし、免疫動物に接種する。免疫動物は限定されない。代表的な免疫動物としては、マウス、ラット、ウサギ、あるいはヤギ等の動物が挙げられる。抗体価の上昇を確認した後に採血し、血清を分取すれば抗血清とすることができる。あるいは、更にIgG分画を精製することにより、精製抗体を取得することもできる。抗体の精製には、硫安塩析、イオン交換クロマトグラフィー、プロテインA結合セファロースや本発明の蛋白質をリガンドとするイムノアフィニティクロマトグラフィー等の手法を利用することができる。
更に、抗体産生細胞を細胞融合などの手法によって形質転換し、クローン化することによって、モノクローナル抗体を得ることもできる。あるいは、抗体産生細胞の遺伝子を取得し、ヒト化抗体やキメラ抗体を構築する方法も公知である。このようにして得ることができる抗体は、本発明の蛋白質を免疫学的に測定するためのツールとして有用である。本発明の蛋白質をその抗体と接触させ、両者の免疫学的な反応を観察することにより、本発明の蛋白質を免疫学的に測定することができる。本発明の免疫学的な測定には、公知の多くのアッセイフォーマットを応用することができる。たとえば、血清等に含まれる蛋白質であれば、ELISA等の手法によって測定することができる。あるいは好酸球に発現する蛋白質を抗体によって検出するには、免疫組織学的な手法や、あるいは蛍光標識抗体を用いたFACS等を利用することができる。
本発明において、アレルギー性疾患(allergic disease)とはアレルギー反応の関与する疾患の総称である。より具体的には、アレルゲンが同定され、アレルゲンへの曝露と病変の発症に深い結びつきが証明され、その病変に免疫学的な機序が証明されることと定義することができる。ここで、免疫学的な機序とは、アレルゲンの刺激によって白血球細胞が免疫応答を示すことを意味する。アレルゲンとしては、ダニ抗原や花粉抗原等を例示することができる。
代表的なアレルギー性疾患には、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、花粉症、あるいは昆虫アレルギー等を示すことができる。アレルギー素因(allergic diathesis)とは、アレルギー性疾患を持つ親から子に伝えられる遺伝的な因子である。家族性に発症するアレルギー性疾患はアトピー性疾患とも呼ばれ、その原因となる遺伝的に伝えられる因子がアトピー素因である。アトピー性皮膚炎は、アトピー性疾患のうち、特に皮膚炎症状を伴う疾患に対して与えられた総称である。
本発明の遺伝子は、健常者との比較において、いずれも軽症のアトピー性皮膚炎患者の好酸球で発現量の増加を示した。従って、本発明の遺伝子の発現レベルを指標として、アレルギー性疾患の検査を行うことができる。本発明による検査方法においては、本発明の17の遺伝子から選択されるいずれか1つ、あるいは複数の遺伝子の発現レベルを指標として測定する。なお本発明の検査方法においては、本発明の遺伝子のみならず他のアレルギー疾患の指標を組み合わせることもできる。複数の指標に基づいて検査を行うことにより、より正確な判断を行うことができる。
本発明におけるアレルギー疾患の検査とは、たとえば以下のような検査が含まれる。すなわち、アレルギー性疾患が疑われる初期症状を示す患者における本発明の遺伝子の発現の上昇は、その患者の初期症状の原因がアレルギー性疾患であることを裏付けている。
本発明において、本発明の遺伝子の発現レベルとは、これらの遺伝子のmRNAへの転写、並びに蛋白質への翻訳を含む。したがって本発明によるアレルギー疾患の検査方法は、前記遺伝子に対応するmRNAの発現強度、あるいは前記遺伝子によってコードされる蛋白質の発現レベルの比較に基づいて行われる。
本発明におけるアレルギー性疾患の検査における本発明の遺伝子の発現レベルの測定は、公知の遺伝子解析方法にしたがって実施することができる。具体的には、たとえばこの遺伝子にハイブリダイズする核酸をプローブとしたハイブリダイゼーション技術、または本発明の遺伝子にハイブリダイズするDNAをプライマーとした遺伝子増幅技術等を利用することができる。
本発明の検査に用いられるプローブまたはプライマーとしては、配列番号:1〜配列番号:17に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド、またはその相補鎖に相補的な少なくとも15ヌクレオチドを含むポリヌクレオチドを利用することができる。ここで「相補鎖」とは、A:T(RNAの場合はU)、G:Cの塩基対からなる2本鎖DNAの一方の鎖に対する他方の鎖を指す。また、「相補的」とは、少なくとも15個の連続したヌクレオチド領域で完全に相補配列である場合に限られず、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは90%、さらに好ましくは95%以上の塩基配列上の相同性を有すればよい。塩基配列の相同性は、BLAST等のアルゴリズムにより決定することができる。
このようなポリヌクレオチドは、本発明の蛋白質をコードするポリヌクレオチドを検出、単離するためのプローブとして、また、本発明のポリヌクレオチドを増幅するためのプライマーとして利用することが可能である。プライマーとして用いる場合には、通常、15bp〜100bp、好ましくは15bp〜35bpの鎖長を有する。また、プローブとして用いる場合には、本発明のポリヌクレオチドの少なくとも一部若しくは全部の配列を有し、少なくとも15bpの鎖長のDNAが用いられる。プライマーとして用いる場合、3’側の領域は相補的である必要があるが、5’側には制限酵素認識配列やタグなどを付加することができる。
なお、本発明における「ポリヌクレオチド」は、DNAあるいはRNAであることができる。これらポリヌクレオチドは、合成されたものでも天然のものでもよい。また、ハイブリダイゼーションに用いるプローブDNAは、通常、標識したものが用いられる。標識方法としては、例えば次のような方法を示すことができる。なお用語オリゴヌクレオチドは、ポリヌクレオチドのうち、重合度が比較的低いものを意味している。オリゴヌクレオチドは、ポリヌクレオチドに含まれる。
・DNAポリメラーゼIを用いるニックトランスレーションによる標識
・ポリヌクレオチドキナーゼを用いる末端標識
・クレノーフラグメントによるフィルイン末端標識(Berger SL,Kimmel AR.(1987)Guide to Molecular Cloning Techniques,Method in Enzymology,Academic Press;Hames BD,Higgins SJ(1985)Genes Probes:A Practical Approach.IRL Press;Sambrook J,Fritsch EF,Maniatis T.(1989)Molecular Cloning:a Laboratory Manual,2nd Edn.Cold Spring Harbor Laboratory Press)
・RNAポリメラーゼを用いる転写による標識(Melton DA,Krieg,PA,Rebagkiati MR,Maniatis T,Zinn K,Green MR.(1984)Nucleic Acid Res.,12,7035−7056)
・放射性同位体を用いない修飾ヌクレオチドをDNAに取り込ませる方法(Kricka LJ.(1992)Nonisotopic DNA Probing Techniques.Academic Press)
ハイブリダイゼーション技術を利用したアレルギー性疾患の検査は、例えば、ノーザンハイブリダイゼーション法、ドットブロット法、DNAマイクロアレイを用いた方法などを使用して行うことができる。さらには、RT−PCR法等の遺伝子増幅技術を利用することができる。RT−PCR法においては、遺伝子の増幅過程においてPCR増幅モニター法を用いることにより、本発明の遺伝子の発現について、より定量的な解析を行うことが可能である。
PCR遺伝子増幅モニター法においては、両端に互いの蛍光を打ち消し合う異なった蛍光色素で標識したプローブを用い、検出対象(DNAもしくはRNAの逆転写産物)にハイブリダイズさせる。PCR反応が進んでTaqポリメラーゼの5’−3’エクソヌクレアーゼ(exonuclease)活性により同プローブが分解されると二つの蛍光色素が離れ、蛍光が検出されるようになる。この蛍光の検出をリアルタイムに行う。検出対象についてコピー数の明らかな標準試料について同時に測定することにより、PCR増幅の直線性のあるサイクル数で目的試料中の検出対象のコピー数を決定する(Holland,P.M.et al.,1991,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:7276−7280;Livak,K.J.et al.,1995,PCR Methods and Applications 4(6):357−362;Heid,C.A.et al.,Genome Research 6:986−994;Gibson,E.M.U.et al.,1996,Genome Research 6:995−1001)。PCR増幅モニター法においては、例えば、ABI PRISM7700(PEバイオシステムズ社)を用いることができる。
また本発明のアレルギー性疾患の検査方法は、本発明の遺伝子によりコードされる蛋白質を検出することにより行うこともできる。このような検査方法としては、例えば、これら遺伝子でコードされる蛋白質に結合する抗体を利用したウェスタンブロッティング法、免疫沈降法、ELISA法などを利用することができる。
この検出に用いる本発明の遺伝子によってコードされる蛋白質に結合する抗体は、当業者に周知の技法を用いて得ることができる。本発明に用いる抗体は、ポリクローナル抗体、あるいはモノクローナル抗体(Milstein C,et al.,1983,Nature 305(5934):537−40)であることができる。例えば、本発明の遺伝子によってコードされる蛋白質に対するポリクローナル抗体は、抗原を感作した哺乳動物の血液を取り出し、この血液から公知の方法により血清を分離する。ポリクローナル抗体としては、ポリクローナル抗体を含む血清を使用することができる。あるいは必要に応じてこの血清からポリクローナル抗体を含む画分をさらに単離することもできる。また、モノクローナル抗体を得るには、上記抗原を感作した哺乳動物から免疫細胞を取り出して骨髄腫細胞などと細胞融合させる。こうして得られたハイブリドーマをクローニングして、その培養物から抗体を回収しモノクローナル抗体とすることができる。
本発明の遺伝子によってコードされる蛋白質の検出には、これらの抗体を適宜標識して用いればよい。また、この抗体を標識せずに、該抗体に特異的に結合する物質、例えば、プロテインAやプロテインGを標識して間接的に検出することもできる。具体的な検出方法としては、例えば、ELISA法を挙げることができる。
抗原に用いる蛋白質もしくはその部分ペプチドは、例えばこれら遺伝子もしくはその一部を発現ベクターに組込み、これを適当な宿主細胞に導入して、形質転換体を作成し、該形質転換体を培養して組み換え蛋白質を発現させ、発現させた組み換え蛋白質を培養体または培養上清から精製することにより得ることができる。あるいは、これらの遺伝子によってコードされるアミノ酸配列、あるいは配列番号:1〜配列番号:17に基づいて得られる全長cDNAによってコードされるアミノ酸配列の部分アミノ酸配列からなるオリゴペプチドを化学的に合成し、免疫原として用いることもできる。
本発明においては、被検者の好酸球細胞を試料とする。好酸球細胞は、末梢血から公知の方法によって調製することができる。すなわち、たとえばヘパリン採血した血液を遠心分離によって分画し、白血球細胞を分離する。次に白血球細胞から、フィコールによる遠心分離等によって顆粒球細胞を分取し、更にCD16抗体を用いた好中球のディプリーション等によって好酸球細胞を分離することができる。分離された好酸球を破壊してライセートとすれば、前記蛋白質の免疫学的な測定のための試料とすることができる。あるいはこのライセートからmRNAを抽出すれば、前記遺伝子に対応するmRNAの測定のための試料とすることができる。好酸球のライセートやmRNAの抽出には、市販のキットを利用すると便利である。
あるいは、好酸球の分離を行わず、全血や、末梢血白血球集団を対象として、本発明において指標とすべき遺伝子の発現レベルを測定しても良い。この場合には、測定値の補正を行うことによって、細胞における遺伝子の発現レベルの変化を求めることができる。たとえば好酸球に特異的に発現し、かつ細胞の状態に関わらず発現レベルが大きく変動しない遺伝子(ハウスキーピング遺伝子)の発現レベルの測定値に基づいて、本発明において指標とすべき遺伝子の発現レベルの測定値を補正することができる。
また検出すべき蛋白質が分泌型の蛋白質である場合には、被検者の血液や血清などの体液試料に含まれる目的とする蛋白質の量を測定することによって、それをコードする遺伝子の発現レベルの比較が可能である。
本発明によるアレルギー性疾患の検査方法においては、軽症のアレルギー性疾患で発現の上昇するこれら遺伝子がアレルギー性疾患の初期症状の指標となる。
また本発明は、下記の(a)または(b)に記載のポリヌクレオチドの好酸球細胞における発現レベルを上昇させたトランスジェニック非ヒト動物からなるアレルギー疾患モデル動物に関する。
(a)配列番号:1〜配列番号:17に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド。
(b)配列番号:1〜配列番号:17に記載の塩基配列を含むDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、初期のアレルギー性疾患患者の好酸球において発現が増加する蛋白質をコードするポリヌクレオチド。
本発明によって、前記指標遺伝子の好酸球細胞における発現レベルが、初期のアトピー性皮膚炎患者の好酸球において上昇することが明らかとなった。したがって、好酸球細胞においてこれら遺伝子、またはこれらの遺伝子と機能的に同等な遺伝子の発現レベルを人為的に増強した動物は、初期アレルギー性疾患のモデル動物として利用することができる。なお好酸球における発現レベルの上昇とは、白血球集団全体における標的遺伝子の発現レベルの上昇を含む。すなわち、前記遺伝子の発現レベルを上昇させるのは好酸球のみである場合のみならず、白血球集団全体において前記遺伝子の発現レベルが上昇している場合を含む。本発明において機能的に同等な遺伝子とは、各指標遺伝子によってコードされる蛋白質において明らかにされている活性と同様の活性を備えた蛋白質をコードする遺伝子である。機能的に同等な遺伝子の代表的なものとしては、トランスジェニック動物が本来備えている、その動物種における指標遺伝子のカウンターパートを挙げることができる。
初期アレルギー性疾患において発現が増加する遺伝子は、アレルギー性疾患の病態を上流で制御している遺伝子と言うことができる。言いかえれば、初期アレルギー性疾患において発動を開始する遺伝子の影響下に、下流に位置する様々な遺伝子の発現や抑制が起きることにより、アレルギーの病態が形成されると考えられる。つまり、初期アレルギー性疾患において発現が増加する遺伝子は、アレルギーの病態形成において重要な役割を果たす遺伝子と言える。したがって、この遺伝子の発現を抑制したり、あるいは活性を阻害する薬剤は、アレルギーの治療において、単にアレルギー症状を改善するのみならず、アレルギーの病態形成の本質的な原因を取り除く作用が期待できる。
以上のように、初期アレルギー性疾患において発現が増加する遺伝子には重要な意味がある。そのため、この遺伝子の発現レベルを上昇させることによって得ることができるトランスジェニック動物を初期アレルギー性疾患モデル動物として使用し、遺伝子の役割や、遺伝子を標的とする薬剤を評価することには大きな意義がある。
また本発明による初期アレルギー性疾患モデル動物は、後に述べる初期アレルギー性疾患の治療または予防のための医薬品のスクリーニングに加えて、初期アレルギー性疾患のメカニズムの解明、さらにはスクリーニングされた化合物の安全性の試験に有用である。
たとえば本発明による初期アレルギー疾患モデル動物が皮膚炎を発症したり、何らかのアレルギー性疾患に関連した測定値の変化を示せば、それを回復させる作用を持った化合物を探索するスクリーニングシステムが構築できる。
本発明において、発現レベルの上昇とは、目的とする遺伝子が外来遺伝子として導入され強制発現している状態、あるいは宿主が備える遺伝子の転写と蛋白質への翻訳が増強されている状態、並びに翻訳産物である蛋白質の分解が抑制された状態のいずれかを意味する。遺伝子の発現レベルは、たとえば実施例に示すような定量的なPCRにより確認することができる。また翻訳産物であるタンパク質の活性は、正常な状態と比較することにより確認することができる。
代表的なトランスジェニック動物は、目的とする遺伝子を導入し強制発現させた動物である。この他のトランスジェニック動物には、たとえば遺伝子のコード領域に変異を導入し、その活性を増強したり、あるいは分解されにくいアミノ酸配列に改変した動物などを示すことができる。アミノ酸配列の変異には、置換、欠失、挿入、あるいは付加を示すことができる。その他、遺伝子の転写調節領域を変異させることにより、本発明の遺伝子の発現そのものを調節することもできる。
特定の遺伝子を対象として、トランスジェニック動物を得る方法は公知である。すなわち、遺伝子と卵を混合してリン酸カルシウムで処理する方法や、位相差顕微鏡下で前核期卵の核に、微小ピペットで遺伝子を直接導入する方法(マイクロインジェクション法、米国特許第4873191号)、胚性幹細胞(ES細胞)を使用する方法などによってトランスジェニック動物を得ることができる。その他、レトロウィルスベクターに遺伝子を挿入し、卵に感染させる方法、また、精子を介して遺伝子を卵に導入する精子ベクター法等も開発されている。精子ベクター法とは、精子に外来遺伝子を付着またはエレクトロポレーション等の方法で精子細胞内に取り込ませた後に、卵子に受精させることにより、外来遺伝子を導入する遺伝子組換え法である(M.LavitranoetらCell,57,717,1989)。
本発明の初期アレルギー性疾患モデル動物として用いるトランスジェニック動物は、ヒト以外のあらゆる脊椎動物を利用して作成することができる。具体的には、マウス、ラット、ウサギ、ミニブタ、ヤギ、ヒツジ、あるいはウシ等の脊椎動物において様々な遺伝子の導入や発現レベルを改変されたトランスジェニック動物が作り出されている。
更に本発明は、候補化合物が本発明のポリヌクレオチドの発現レベルに与える影響を検出する方法に関する。本発明において、本発明の遺伝子は、軽症のアトピー性皮膚炎患者の好酸球において有意に発現レベルが上昇している。したがって、これらの遺伝子の発現レベルに与える影響を検出する方法に基づいて、その発現レベルを低下させることができる化合物を選択することによって、アレルギー疾患の治療薬を得ることができる。本発明において遺伝子の発現レベルを低下させる化合物とは、遺伝子の転写、翻訳、蛋白質の活性発現のいずれかのステップを阻害する作用を持つ化合物である。
候補化合物が本発明のポリヌクレオチドの発現レベルに与える影響の検出方法は、in vivoで行なうこともin vitroで行うこともできる。in vivoでの影響を検出するには、適当な被験動物を利用する。被験動物には、たとえばアレルギー疾患モデル動物や、前記(a)または(b)に記載の遺伝子の好酸球細胞における発現が増強されたトランスジェニック非ヒト動物からなるアレルギー性疾患モデル動物を利用することができる。本発明に基づくin vivoでの発現レベルに与える影響の検出は、たとえば以下のような工程にしたがって実施することができる。
(1)被験動物に候補化合物を投与する工程、
(2)被験動物の好酸球細胞における前記(a)または(b)に記載のポリヌクレオチドの発現レベルを測定する工程、
このようにして本発明の遺伝子の発現を増強したモデル動物に薬剤候補化合物を投与し、モデル動物の好酸球における本発明の遺伝子の発現に対する化合物の作用をモニターすることにより、本発明の遺伝子の発現レベルに与える薬剤候補化合物の影響を検出することができる。更にこの検出の結果に基づいて、本発明の遺伝子の発現レベルを低下させる薬剤候補化合物を選択すれば、薬剤候補化合物をスクリーニングすることができる。
このようなスクリーニングにより、本発明の遺伝子の発現に様々な形で関与する薬剤を選択することができる。具体的には、たとえば次のような作用点を持つ薬剤候補化合物を見出すことができる。
本発明の遺伝子の発現をもたらすシグナル伝達経路の抑制、
本発明の遺伝子の転写活性の抑制、
本発明の遺伝子の転写産物の分解の促進等、
また、in vitroにおいては、例えば、前記(a)または(b)に記載した遺伝子を発現する細胞に候補化合物を接触させ、これら遺伝子の発現レベルを検出する方法を利用することができる。具体的には、たとえば以下のような工程にしたがって実施することができる。
(1)前記(a)または(b)に記載したポリヌクレオチドを発現する細胞に候補化合物を接触させる工程
(2)前記(a)または(b)に記載したポリヌクレオチドの発現レベルを測定する工程、
本発明において、工程(1)に用いるための細胞は、これらポリヌクレオチドを適当な発現ベクターに挿入し、該ベクターを適当な宿主細胞に導入することにより得ることができる。利用できるベクター、および宿主細胞は、本発明の遺伝子を発現し得るものであればよい。宿主−ベクター系における宿主細胞としては、大腸菌、酵母、昆虫細胞、動物細胞等が例示でき、それぞれ利用できるベクターを適宜選択することができる。
ベクターの宿主への導入方法としては、生物学的方法、物理的方法、化学的方法などを示すことができる。生物学的方法としては、例えば、ウイルスベクターを使用する方法、特異的受容体を利用する方法、細胞融合法(HVJ(センダイウイルス)、ポリエチレングリコール(PEG)、電気的細胞融合法、微少核融合法(染色体移人))が挙げられる。また、物理的方法としては、マイクロインジェクション法、エレクトロポレーション法、ジーンパーティクルガン(gene gun)を用いる方法が挙げられる。化学的方法としては、リン酸カルシウム沈殿法、リポソーム法、DEAEデキストラン法、プロトプラスト法、赤血球ゴースト法、赤血球膜ゴースト法、マイクロカプセル法が挙げられる。
本発明の検出方法においては、前記(a)または(b)に記載したポリヌクレオチドを発現する細胞として、株化白血球細胞を用いることもできる。株化白血球細胞としては、Eol、YY−1、HL−60、TF−1、およびAML14.3D10など白血球由来の株化細胞を例示できる。白血球細胞株の中でも、好酸球に由来する細胞株は、本発明の検出方法に好適である。好酸球に由来する細胞株は以下に示すとおりである。
Eol
YY−1
AML14.3D10
Eol(Eol−1:Saito H et al,Establishment and characterization of a new human eosinophilic leukemia cell line.Blood 66,1233−1240,1985)は、林原研究所より入手することができる。同様にYY−1(Ogata N et al,The activation of the JAK2/STAT5 pathway is commonly involved in signaling through the human IL−5 receptor.Int.Arch.Allergy Immunol.,Suppl 1,24−27,1997)は、サイトシグナル研究所より分与される。またAML14.3D10(Baumann MA et al,The AML14 and AML14.3D10 cell lines:a long−overdue model for the study of eosinophils and more.Stem Cells,16,16−24,1998)は、米国オハイオ州、Research Service,VA Medical Center DaytonのPaul CCより、商業的に入手可能である。
その他、未分化白血球細胞株であるHL−60クローン15(ATCC CRL−1964)は、酪酸存在下で1週間程度培養すれば、好酸球に分化し好酸球細胞株とすることができる。好酸球であることは、形態的に、多形核で好酸球顆粒が認められることにより判別することができる。形態的な観察は、ギムザ染色やディフクイック染色によって行われる。一般に、好酸球を含むヒト白血球細胞株は、白血病の患者サンプルから不死化した細胞をクローニングすることにより樹立することができる。したがって、当業者は、必要に応じて好酸球細胞株を公知の方法によって得ることもできる。
スクリーニングの方法は、まず前記株化白血球細胞に候補化合物を添加する。その後、該株化白血球細胞における前記(a)または(b)に記載のポリヌクレオチドの発現レベルを測定し、該遺伝子の発現レベルを低下させる化合物を選択する。
なお本発明の方法において、前記(a)または(b)に記載のポリヌクレオチドの発現レベルは、これらの遺伝子がコードする蛋白質の発現レベルのみならず、対応するmRNAを検出することにより比較することもできる。mRNAによって発現レベルを比較するには、蛋白質試料の調製工程に代えて、先に述べたようなmRNA試料の調製工程を実施する。mRNAや蛋白質の検出は、先に述べたような公知の方法によって実施することができる。
さらに本発明の開示に基づいて本発明の遺伝子の転写調節領域を取得し、レポーターアッセイ系を構築することができる。レポーターアッセイ系とは、転写調節領域の下流にこの転写調節領域の制御下に発現するレポーター遺伝子の発現量を指標として、該転写調節領域に作用する転写調節因子をスクリーニングするアッセイ系をいう。
すなわち本発明は、次の工程を合む、アレルギー性疾患の治療薬のスクリーニング方法であって、指標遺伝子が、「1858−05」、「1901−21」、「1913−17」、「1852−09」、「1945−03」、「1948−16」、「1833−02」、「1873−30」、「1937−03」、「1949−02」、「1956−04」、「1919−13」、「1917−03」、「1941−20」、「1930−03」、「1921−05」、「1925−08」、およびこれらの遺伝子と機能的に同等な遺伝子からなる群から選択されるいずれかの遺伝子である方法に関する。
(1)指標遺伝子の転写調節領域と、この転写調節領域の制御下に発現するレポーター遺伝子を含むベクターを導入した細胞と候補物質を接触させる工程、
(2)前記レポーター遺伝子の活性を測定する工程、および
(3)対照と比較してレポーター遺伝子の発現レベルを低下させる化合物を選択する工程
転写調節領域としては、プロモーター、エンハンサー、さらには、通常プロモーター領域に見られるCAATボックス、TATAボックス等を例示することができる。またレポーター遺伝子としては、CAT(chloramphenicol acetyltransferase)遺伝子、ルシフェラーゼ(luciferase)遺伝子、成長ホルモン遺伝子等を利用することができる。
本発明の遺伝子の転写調節領域は、次のようにして取得することができる。すなわち、まず本発明で開示したcDNAの塩基配列に基づいて、BACライブラリー、YACライブラリー等のヒトゲノムDNAライブラリーから、PCRまたはハイブリダイゼーションを用いる方法によりスクリーニングを行い、該cDNAの配列を含むゲノムDNAクローンを得る。得られたゲノムDNAの配列を基に、本発明で開示したcDNAの転写調節領域を推定し、該転写調節領域を取得する。得られた転写調節領域を、レポーター遺伝子の上流に位置するようにクローニングしてレポーターコンストラクトを構築する。得られたレポーターコンストラクトを培養細胞株に導入してスクリーニング用の形質転換体とする。この形質転換体に候補化合物を接触させ、レポーター遺伝子の発現を検出することによって、転写調節領域に対する候補化合物の作用を評価することができる。
本発明の前記ポリヌクレオチドの発現レベルに与える影響を検出する方法に基づいて、前記ポリヌクレオチドの発現レベルを変化させる化合物のスクリーニングを行うことができる。本発明は、次の工程を含む前記(a)または(b)に記載のポリヌクレオチドの発現レベルを変化させる化合物のスクリーニング方法に関する。
すなわち本発明は、in vivoおよび/またはin vitroにおいて、候補化合物による前記ポリヌクレオチドの発現レベルに与える影響を検出し、対照と比較して前記発現レベルを低下させる化合物を選択する工程を含む、前記(a)または(b)に記載のポリヌクレオチドの発現レベルを低下させる化合物のスクリーニング方法に関する。
あるいは本発明は、配列番号:1〜配列番号:17に示す塩基配列のいずれかを含む遺伝子の転写調節領域を利用するレポーターアッセイによる、転写調節領域に作用する化合物のスクリーニング方法に関する。本発明によるレポーターアッセイの結果に基づいて、対象と比較してレポーター遺伝子の発現を低下させる化合物を選択することにより、配列番号:1〜配列番号:17に示す塩基配列のいずれかを含む遺伝子の発現を抑制する化合物を取得することができる。
本発明による各種のスクリーニング方法に必要な、ポリヌクレオチド、抗体、細胞株、あるいはモデル動物は、予め組み合わせてキットとすることができる。より具体的には、たとえば指標遺伝子を発現する細胞と、これらの遺伝子の発現レベルを測定するための試薬とで構成される。指標遺伝子の発現レベルを測定するための試薬としては、たとえば少なくとも1つの指標遺伝子の塩基配列を含むポリヌクレオチド、若しくはその相補鎖に相補的な塩基配列を有する少なくとも15塩基の長さを有するオリゴヌクレオチドが用いられる。あるいは、少なくとも1つの指標蛋白質のアミノ酸配列を含むペプチドを認識する抗体を試薬として用いることができる。これらのキットには、標識の検出に用いられる基質化合物、細胞の培養のための培地や容器、陽性や陰性の標準試料、更にはキットの使用方法を記載した指示書等をパッケージしておくこともできる。本発明に基づく候補化合物の本発明の遺伝子の発現レベルに与える影響を検出するためのキットは、本発明の遺伝子の発現レベルを修飾する化合物のスクリーニング用キットとして利用することができる。
これらの方法に用いる被験候補化合物としては、ステロイド誘導体等既存の化学的方法により合成された化合物標品、コンビナトリアルケミストリーにより合成された化合物標品のほか、動・植物組織の抽出物もしくは微生物培養物等の複数の化合物を含む混合物、またそれらから精製された標品などが挙げられる。
本発明のスクリーニング方法によって選択される化合物は、アレルギー性疾患の治療薬として有用である。本発明の遺伝子は、初期のアレルギー性疾患患者の好酸球において発現が増加する。したがって、この遺伝子の発現を増強することができる化合物には、アトピー性皮膚炎の症状を抑える作用が期待できる。本発明のアレルギー性疾患の治療薬は、前記スクリーニング方法によって選択された化合物を有効成分として含み、生理学的に許容される担体、賦形剤、あるいは希釈剤等と混合することによって製造することができる。本発明のアレルギー性疾患の治療剤は、アレルギー症状の改善を目的として、経口、あるいは非経口的に投与することができる。
経口剤としては、顆粒剤、散剤、錠剤、カプセル剤、溶剤、乳剤、あるいは懸濁剤等の剤型を選択することができる。注射剤には、皮下注射剤、筋肉注射剤、あるいは腹腔内注射剤等を示すことができる。
また、投与すべき化合物がタンパク質からなる場合には、それをコードする遺伝子を遺伝子治療の手法を用いて生体に導入することにより、治療効果を達成することができる。治療効果をもたらすタンパク質をコードする遺伝子を生体に導入し、発現させることによって、疾患を治療する手法は公知である。
あるいはアンチセンスDNAは、適当なプロモーター配列の下流に組み込み、アンチセンスRNA発現ベクターとして投与することができる。この発現ベクターをアレルギー疾患患者の好酸球へ導入すれば、これらの遺伝子のアンチセンスを発現し、当該遺伝子の発現レベルの低下によってアレルギーの治療効果を達成することができる。好酸球細胞への発現ベクターの導入としては、in vivo、あるいはex vivoで行う方法が公知である。
更に、本発明の指標遺伝子の発現産物である蛋白質(すなわち指標蛋白質)の活性を阻害する化合物にも、アレルギー疾患の治療効果が期待できる。たとえば、本発明の指標蛋白質を認識し、その活性を抑制する抗体は、アレルギー性疾患の治療のための薬剤として有用である。蛋白質の活性を抑制する抗体の調製方法は公知である。抗体をヒトに投与する場合には、キメラ抗体やヒト化抗体、あるいはヒト型抗体とすることにより、安全性の高い薬剤とすることができる。
投与量は、患者の年齢、性別、体重および症状、治療効果、投与方法、処理時間、あるいは該医薬組成物に含有される活性成分の種類などにより異なるが、通常成人一人あたり、一回につき0.1mgから500mgの範囲で、好ましくは0.5mgから20mgの範囲で投与することができる。しかし、投与量は種々の条件により変動するため、上記投与量よりも少ない量で充分な場合もあり、また上記の範囲を超える投与量が必要な場合もある。
発明を実施するための最良の形態
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
[実施例1] ディファレンシャルディスプレイ解析
健常者とアトピー性皮膚炎患者の末梢血より単離した血球細胞を比較して、発現変動している新しい治療関連遺伝子あるいは診断に有用な遺伝子を見出すことを目的としてスクリーニングを行った。
(1)被検者
健常者(レーン1〜6)およびアトピー性皮膚炎(レーン8〜29)の症状、病態、喘息の有無、ダニ特異的IgE値、好酸球数、全IgE値を表1に示す。アレルゲン非特異的(Total IgE)、ダニおよびスギ特異的IgEはEIA法により測定した。すなわち、抗ヒトIgE抗体を結合させたキャップに被検血清を反応させ、血清中のアレルゲン非特異的IgE抗体、またはダニ、スギ特異的IgE抗体を結合させた。次に、β−D−ガラクトシダーゼ標識抗ヒトIgE抗体と基質液(4−メチルウンベルフェリル−β−D−ガラクトピラノシド)を加え、反応させて蛍光物質を生成させた。反応停止液を加えて反応を停止させ、同時測定の標準IgEの蛍光強度より抗体濃度を決定した。LDHの測定は、UV法(Wroblewski−La Due法)により、ピルビン酸とNADHの反応によるNADHの減少速度を吸光度の減少から算出した。LDH値の測定には、LタイプワコーLDH(和光純薬)と7170型自動分析装置(日立)を用いた。好酸球数は、EDTA添加血液2mlを試料として鏡検法と自動血球分析装置SE−9000(RF/DCインピーダンス方式、Sysmex製造)により測定した。
表中、病態の「○」は寛解期、「●」は増悪期であることを示す。特異的IgE(S IgE)は抗ダニIgEにおいてClass0〜2を「−」、Class3〜6を「+」とした。全IgE(T IgE)は1000IU/ml以下を「Low(L)」、1000IU/mlより大きい場合を「High(H)」とした。好酸球は3%未満を「A」、3〜7%を「B」、7%より大きい場合を「C」とした。
(2)ディファレンシャルディスプレイ解析
健常者、および患者から採取した全血に3%デキストラン溶液を加えて30分室温放置し、赤血球を沈降させた。上層の白血球画分を回収し、フィコール溶液(Ficoll−Paque PLUS;アマシャムファルマシアバイオテク)の上に載せて1500rpm、30分室温で遠心した。下層に回収された顆粒球画分をCD16抗体磁気ビーズと4℃で30分反応させ、MACSを用いた分離でトラップさせずに溶出する細胞を好酸球として実験に用いた。
上記のように調製した好酸球をIsogen(日本ジーン;和光純薬)に溶解し、この溶液から、Isogenに添付されているプロトコルに従ってRNAを分離した。クロロホルムを加え、攪拌遠心して水層を回収した。次にイソプロパノールを加え、攪拌遠心して沈殿の全RNAを回収した。回収した全RNAは、DNase(日本ジーン;和光純薬)を加えて37℃15分反応させ、フェノール−クロロホルム抽出してエタノール沈殿でRNAを回収した。
このように調製した全RNAを用いて蛍光ディファレンシャルディスプレイ(Fluorescent Differential Display,「DD」と略記する)解析を行った。DD解析は文献(T.Itoら,1994,FEBS Lett.351:231−236)に記載の方法に準じて行った。まず全RNAを逆転写し、cDNAを得た。第一次DD−PCR反応用には3種のアンカープライマーの各々について全RNAの各0.2μgを用いてcDNAを調製した。第二次DD−PCR反応用には、3種のアンカープライマーの各々についてRNA0.4μgを用いてcDNAを調製した。いずれのcDNAも、0.4ng/μl RNA相当の最終濃度に希釈し、実験に用いた。1反応あたり1ng RNA相当のcDNAを用いてDD−PCR反応を行った。反応液の組成は表2の通りである。
PCRの反応条件は、「95℃3分、40℃5分、72℃5分」を1サイクル、続いて、「94℃15秒、40℃2分、72℃1分」を30サイクルの後、72℃5分、その後連続的に4℃にした。
使用したプライマー対はアンカープライマーであるGT15A(配列番号:18)、GT15C(配列番号:19)、およびGT15G(配列番号:20)に対して任意プライマーをそれぞれAG 1〜110、AG 111〜199、およびAG 200〜287を組み合わせ、計287組の反応をおこなった。なお、任意プライマーとしてはGC含量50%の10ヌクレオチドからなるオリゴマーを設計し、合成して用いた。
ゲル電気泳動は、6%変性ポリアクリルアミドゲルを作製し、2.5μlの試料をアプライし、40Wで210分間泳動した。その後、日立製蛍光イメージアナライザーFMBIO IIを用いてゲル板をスキャンし、蛍光検出によって泳動画像を得た。
健常者と患者の両サンプルを並べて泳動し、各試料間で発現の変動するバンドを分離した。目視判定により選抜され、重要検定にて0.1以下のバンドについて配列を決定した。更に画像解析ソフトBio−Imageを用いて選抜されたバンドについても配列を決定した。各バンドにおける同配列クローンをグループ化しコンセンサス配列とした。この結果、配列決定したバンドのうち一意的に「dominant配列」が定義できるバンドを選別した。
選別されたコンセンサス配列をqueryとしてGCG上でgenembl、dbESTに対しBLASTによる相同性検索を行った。ここでidentity95%以上を「有意な相同性有り」と判断した。
このような解析の結果、患者で特異的に発現が上昇するバンドを同定した。同定された各バンドの増幅に用いたプライマーセットを表3に示す。任意プライマーの配列に付けた()内の番号は、配列番号である。また各バンドの塩基配列は次の配列番号に示すとおりであった。
「1858−05」/配列番号:1
「1901−21」/配列番号:101
「1913−17」/配列番号:102
「1852−09」/配列番号:103
「1945−03」/配列番号:104
「1948−16」/配列番号:6
「1833−02」/配列番号:7
「1873−30」/配列番号:8
「1937−03」/配列番号:9
「1949−02」/配列番号:10
「1956−04」/配列番号:105
「1919−13」/配列番号:12
「1917−03」/配列番号:13
「1941−20」/配列番号:14
「1930−03」/配列番号:15
「1921−05」/配列番号:16
「1925−08」/配列番号:17
[実施例2] ABI7700による発現定量
実施例1で同定された遺伝子の発現を、ABI7700を用いたTaqMan法により解析した。新たに健常者、アトピー性皮膚炎患者の軽症、中症、重症各10検体から好酸球を収集し、実施例1と同じようにRNAを調製した。健常者、患者の検査値profileを表4に示す。実施例1で同定したバンド、並びに補正用内部標準として既知遺伝子であるβ−アクチン(actin)について発現レベルを定量した。
健常者、アトピー性皮膚炎患者の軽症、中症、重症各10検体の検査値プロファイルを基に、各群の検査値をプロットしたのが図1(好酸球数)および図2(全IgE)である。アトピー性皮膚炎患者の好酸球数の評価ランクはB〜Cとなっているが、実際の測定値で比較すると、重症者の測定値のみが突出していることが図1から明らかである。このことは、好酸球数は、軽症、あるいは中症のアトピー性皮膚炎の診断指標としては利用しにくいことを示している。
全IgEの測定値(図2)についても同様の傾向が見られる。すなわち全IgE値の顕著な上昇が見られるのは、重症患者であり、軽症〜中症の患者においては健常者と大きな違いは見られない。したがって全IgE値も、軽症のアレルギー性疾患の指標としにくいことがわかる。
ABI 7700による測定に用いたプライマーおよびTaqManプローブは、各遺伝子の配列情報に基づいてPrimer Express(PEバイオシステムズ)により設計した。TaqManプローブの5’末端はFAM(6−carboxy−fluorescein)で、また3’末端はTAMRA(6−carboxy−N,N,N’,N’−tetramethylrhodamine)で標識されている。実験に用いたプライマー、およびTaqMan probeの塩基配列は、それぞれ表5に記載の配列番号に示すとおりである。βアクチン測定用のプライマーとプローブには、TaqMan β−actin Control Reagents(PEバイオシステムズ)に添付のものを用いた。測定結果を図3〜図19に示す。また、平均発現量を表6にまとめた。
上記のデータを利用して、パラメトリック多重比較検定、およびノンパラメトリック多重比較検定を行った。統計解析は、The SAS SYSTEMのSAS前臨床パッケージVersion 4.0(SAS Institute Inc.)を用いて行った。結果を表7に示す。
表7から明らかなように、本発明で同定された各遺伝子はアトピー性皮膚炎(軽症)により発現が有意に上昇している。つまり、これらの遺伝子の発現を測定することが、アトピー性皮膚炎において診断的価値をもつことを裏付けている。
[実施例3] 各種血液細胞での本発明の遺伝子の発現
5人の健常者の末梢血から分離した細胞での各遺伝子の発現を調べた。好酸球(E)の分離は上記の通り行った。好中球(N)は好酸球を溶出させた後、CD16抗体磁気ビーズでトラップされた細胞を磁界から外して溶出、回収して調製した。一方、フィコール遠心分離で中間層に回収される単球画分を、MACS CD3抗体磁気ビーズにより溶出画分(M:monocyteとB cellの混合物)とトラップされる画分(T cell画分)に分離した。次に、溶出画分をMACS CD14抗体磁気ビーズにより、溶出画分(B cell画分)とトラップされる画分(moocyte画分)に分け、それぞれを精製T細胞、精製B細胞、そして精製単球とした。
好酸球はIsogen、好中球、T細胞、B細胞、そして単球はRNeasy(Qiagen)を用いて可溶化し、全RNA抽出、DNase処理後(方法は前述の通り)遺伝子発現解析に供した。用いたプライマー、プローブ等は上記と同一である。これらの血球細胞での平均発現量(AVERAGE:copy/ng(補正値))は表8に示す通りであった。
[実施例4]遺伝子塩基配列の延長(1901−21)
Human Leukocyte Marathon−Ready cDNA(CLONTECH)を鋳型にMarathon cDNA Amplification Kit(CLONTECH)を用いて、キット付属のAP1プライマーと1901−21に特異的な塩基配列からなるプライマー1901−21 ForでPCRを行った。増幅した断片をサブクローニングし配列決定をしたところ1901−21の塩基配列を含む約0.7kbの塩基配列が得られた。同様に、キット付属のAP1プライマーとB1901−21特異的なプライマー1901MRでPCRを行った。増幅した断片をサブクローニングし配列決定をしたところ1901−21の塩基配列を含む約0.5kbの塩基配列が得られ、合計1043bp(配列番号:2)となった。
プライマー配列
[実施例5]遺伝子塩基配列の延長(1913−17)
Human Leukocyte Marathon−Ready cDNA(CLONTECH)を鋳型にMarathon cDNA Amplification Kit(CLONTECH)を用いて、キット付属のAP1プライマーとB1913に特異的な塩基配列からなるプライマー1913−17FでPCRを行った。増幅した断片をサブクローニングし配列決定をしたところ1913−17の塩基配列を含む約0.5kbの塩基配列が得られた。同様に、キット付属のAP1プライマーと1913−17特異的な塩基配列からなるプライマー1913−17RでPCRを行った。増幅した断片をサブクローニングし配列決定をしたところ1913−17の塩基配列を含む約0.4kbの塩基配列が得られ、合計756bp(配列番号:3)となった。プライマー配列
[実施例6]遺伝子塩基配列の延長(1852−09)
GENETRAPPER cDNA Positive Selection System(GIBCO BRL)を用いて、1852−09に特異的な塩基配列(ACATTGGACAAGTGGCACG;配列番号:96)からなるオリゴヌクレオチドをプローブとし、キット添付のビオチン−14−dCTPとTdTによりビオチン化オリゴヌクレオチドとした。TimeSaver cDNA Synthesis Kit(Pharmacia Biotech)により作製したYY−1 cDNA libraryはキット添付のGeneII蛋白質とエクソヌクレアーゼIIIにより一本鎖に分解し、ビオチン化ヌクレオチドを加え標的遺伝子とハイブリダイズさせた。ここにストレプトアビジン−パラマグネティックビーズを加え、マグネットで捕捉することにより1852−09の塩基配列を含むクローンを得た。選択したクローンの持つ断片の配列決定をしたところ1852−09の塩基配列を含む1931bp(配列番号:4)の塩基配列が得られた。
[実施例7]遺伝子塩基配列の延長(1945−03)
Human Leukocyte Marathon Ready cDNAを鋳型にMarathon cDNA Amplification Kit(CLONTECH)用いて、キット付属のAP1プライマーと1945−03特異的な塩基配列からなるプライマー1945−03ForでPCRを行った。さらに、この増幅断片を鋳型にアタプター内の塩基配列[AP2]とプライマー1945−03Forを用いてPCRを行った。増幅した断片をサブクローニングし配列決定をしたところ1945−03の塩基配列を含む約2.2kbの塩基配列がえられた。同様に、キット付属のAP1プライマーと1945−03特異的なプライマー1945−03RevでPCRを行った。さらに、この増幅断片を鋳型にアダプター内の塩基配列[AP2]とプライマー1945−03Revを用いてPCRを行った。増幅した断片をサブクローニングし配列決定をしたところB1945の塩基配列を含む1.6kbの塩基配列がえられ、合計2276bp(配列番号:5)となった。
プライマー配列
[実施例8]遺伝子塩基配列の延長(1956−04)
1956のDD配列を含むプラスミドを鋳型とし、1956−04に特異的な塩基配列からなるプライマー1956−04 senseと1956−04 antisenseを用いてPCRを行った。増幅した断片をClonCapture cDNA Selection Kit(CLONTECH)添付のビオチン−21−dUTPを用いてビオチン化し、このビオチン化プローブとキット添付のRecA蛋白質に複合体を形成させた。ビオチン化プローブ−RecA複合体は、SMART cDNA Library Construction Kit(CLONTECH)を利用して作製した末梢血好酸球cDNA library(二本鎖plasmid library)の相同配列部分と相互作用させ、三本鎖の複合体を形成させた。ここにストレプトアビジンを固相化した磁気ビーズを加え、マグネットで捕捉することにより1956−04の塩基配列を含むクローンを得た。選択したクローンの持つ断片の配列決定をしたところ1956−04の塩基配列を含む293bpの塩基配列(配列番号:11)が得られた。
プライマー配列
[実施例9]]ヒト末梢血好酸球のサイトカイン刺激による遺伝子の発現変化
好酸球はアレルギー性炎症における中心的な炎症細胞と考えられているので、その増殖、分化、局所への遊走・集積、及び活性化に関するサイトカインの遺伝子発現への影響を検討した。
健常者の末梢血100mlから分離した好酸球でのサイトカイン刺激による遺伝子発現の変化を調べた。好酸球の分離は上記の通りに行った。24穴シャーレ上に好酸球を1×105/mLまいた。シャーレは、好酸球の吸着による活性化を防ぐことを目的として、予め1%BSA(非動化ブロッキングバッファー)により室温で2時間かけてコートした。サイトカインとしてインターロイキン5(IL−5)、インターロイキン4(IL−4)、インターフェロンγ(IFNγ)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)並びにエオタキシン(eotaxin)を、各々、0.1、1、及び10ng/mlずつシャーレの各ウェルに添加し、10%FCSを補ったDMEM中で、3時間培養した。これらのサイトカイン類は、いずれも好酸球の活性化やアレルギーの発症に関わるとされるサイトカイン類である。
各処理を行った好酸球について、実施例1と同じようにRNAを調製し、遺伝子発現解析に供した。「1858−05」遺伝子、「1901−21」遺伝子、「1913−17」遺伝子、「1852−09」遺伝子、「1945−03」遺伝子、「1948−16」遺伝子、「1833−02」遺伝子、「1873−30」遺伝子、「1949−02」遺伝子、「1956−04」遺伝子、「1919−13」遺伝子、「1917−13」遺伝子、「1941−20」遺伝子、「1930−03」遺伝子、「1921−05」遺伝子及び「1925−08遺伝子」について発現の解析を行った。各々、用いたプライマー、プローブ等は上記と同一である。各遺伝子について得られた結果を図20〜図35(いずれもRNA1ng当たりのコピー数をGAPDHで補正した値)に示す。
実験に用いたサイトカイン類のうち、IL−5は好酸球を活性化し好酸球の寿命を延ばす。そのためIL−5処理は、好酸球において抗アポトーシス遺伝子のbcl−2やbaxの発現レベルの上昇をもたらす。図20〜図35に示すようにこれらの遺伝子の多くも同様に上昇しているので、好酸球の寿命延長と相関して発現すると考えられ、アレルギーの病態の誘導や増悪との関連性が示唆された。
またこれらの遺伝子の多くは、IFNγ、IL−4、GM−CSFによっても発現が誘導された。これらのサイトカイン類については、好酸球における遺伝子発現に関する知見はこれまであまりない。しかし、いずれもアレルギーの発症にとって重要な因子であることから、これらのサイトカインで好酸球において発現が誘導される遺伝子であるということは、これらの遺伝子が、アレルギー性疾患の病態や増悪に関連している可能性を示唆するものと考えられた。
IL−5によって発現が誘導された遺伝子:
「1858−05」、「1913−17」、「1945−03」、「1948−16」、「1833−02」、「1873−30」、「1949−02」、「1956−04」、「1917−13」、「1930−03」、「1921−05」
IL−4によって発現が誘導された遺伝子:
「1945−03」を除く全ての遺伝子で、発現の増強が観察された。
IFN−γによって発現が誘導された遺伝子:
「1858−05」、「1901−21」、「1852−09」、「1948−16」、「1833−02」、「1873−30」、「1949−02」、「1956−04」、「1919−13」、「1917−13」、「1930−03」、「1921−05」
GM−CSFによって発現が誘導された遺伝子:
「1945−03」
産業上の利用の可能性
本発明により、初期アトピー性皮膚炎患者の好酸球において発現が増加する遺伝子が提供された。好酸球の増加に先だって発現が高まる遺伝子は、アレルギー症状の、きわめて鋭敏な指標として利用することができる。好酸球の増加が見られない段階でアレルギー症状を診断することは、通常は困難である。しかし本発明によって提供された指標は、これまでの診断指標では困難な早期の診断を可能とする。早期の診断が可能となったことにより、初期アレルギー性疾患であっても、的確な治療方法を選択することができる。
好酸球の増加はアレルギー反応の重要なステップである。したがって、好酸球の増加に先だって、好酸球において発現が増加する遺伝子は、アレルギー性疾患の、特に初期の段階において重要な役割を果たしていると考えられる。したがって本発明の遺伝子の発現や活性を抑えることがアレルギー性疾患の治療戦略のターゲットとなるとともに、そのような新しい治療法におけるモニタリングのための新しい臨床診断指標としての有用性が期待できる。
本発明によって提供された指標遺伝子は、アレルゲンの種類に関わらず、簡便にその発現レベルを知ることができる。したがって、アレルギー反応の病態を総合的に把握することができる。
また本発明によるアレルギーの検査方法は、末梢血好酸球を試料としてその発現レベルを解析することができるので、患者に対する侵襲性が低い。しかも遺伝子発現解析に関しては、たとえばECPなどの蛋白質測定と異なって、微量サンプルによる高感度な測定が可能である。遺伝子解析技術は、年々ハイスループット化、低価格化が進行している。したがって本発明によるアレルギーの検査方法は、近い将来、ベッドサイドにおける重要な診断方法となることが期待される。この意味でこれらの病態関連遺伝子の診断的価値は高い。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
図1は、健常者および症状別アトピー性皮膚炎患者における末梢血好酸球数(cells/μL)の分布を示す図。
図2は、健常者および症状別アトピー性皮膚炎患者における全IgE濃度(UA/mL)の分布を示す図。
図3は、健常者および症状別アトピー性皮膚炎患者における1858−05遺伝子の発現量(copy/ng RNA)の分布を示す図。
図4は、健常者および症状別アトピー性皮膚炎患者における1901−21遺伝子の発現量(copy/ng RNA)の分布を示す図。
図5は、健常者および症状別アトピー性皮膚炎患者における1913−17遺伝子の発現量(copy/ng RNA)の分布を示す図。
図6は、健常者および症状別アトピー性皮膚炎患者における1852−09遺伝子の発現量(copy/ng RNA)の分布を示す図。
図7は、健常者および症状別アトピー性皮膚炎患者における1945−03遺伝子の発現量(copy/ng RNA)の分布を示す図。
図8は、健常者および症状別アトピー性皮膚炎患者における1948−16遺伝子の発現量(copy/ng RNA)の分布を示す図。
図9は、健常者および症状別アトピー性皮膚炎患者における1833−02遺伝子の発現量(copy/ng RNA)の分布を示す図。
図10は、健常者および症状別アトピー性皮膚炎患者における1873−30遺伝子の発現量(copy/ng RNA)の分布を示す図。
図11は、健常者および症状別アトピー性皮膚炎患者における1937−03遺伝子の発現量(copy/ng RNA)の分布を示す図。
図12は、健常者および症状別アトピー性皮膚炎患者における1949−02遺伝子の発現量(copy/ng RNA)の分布を示す図。
図13は、健常者および症状別アトピー性皮膚炎患者における1956−04遺伝子の発現量(copy/ng RNA)の分布を示す図。
図14は、健常者および症状別アトピー性皮膚炎患者における1919−13遺伝子の発現量(copy/ng RNA)の分布を示す図。
図15は、健常者および症状別アトピー性皮膚炎患者における1917−03遺伝子の発現量(copy/ng RNA)の分布を示す図。
図16は、健常者および症状別アトピー性皮膚炎患者における1941−20遺伝子の発現量(copy/ng RNA)の分布を示す図。
図17は、健常者および症状別アトピー性皮膚炎患者における1930−03遺伝子の発現量(copy/ng RNA)の分布を示す図。
図18は、健常者および症状別アトピー性皮膚炎患者における1921−05遺伝子の発現量(copy/ng RNA)の分布を示す図。
図19は、健常者および症状別アトピー性皮膚炎患者における1925−08遺伝子の発現量(copy/ng RNA)の分布を示す図。
図20は、横軸に示した各種サイトカイン存在下で培養した、健常者の末梢血好酸球中で発現される1858−05遺伝子の発現量(copy/ng RNA、GAPDH補正値)を示す図。
図21は、図20と同じ条件下における1901−21遺伝子の発現量を示す図。
図22は、図20と同じ条件下における1913−17遺伝子の発現量を示す図。
図23は、図20と同じ条件下における1852−09遺伝子の発現量を示す図。
図24は、図20と同じ条件下における1945−03遺伝子の発現量を示す図。
図25は、図20と同じ条件下における1948−16遺伝子の発現量を示す図。
図26は、図20と同じ条件下における1833−02遺伝子の発現量を示す図。
図27は、図20と同じ条件下における1873−30遺伝子の発現量を示す図。
図28は、図20と同じ条件下における1949−02遺伝子の発現量を示す図。
図29は、図20と同じ条件下における1956−04遺伝子の発現量を示す図。
図30は、図20と同じ条件下における1919−13遺伝子の発現量を示す図。
図31は、図20と同じ条件下における1917−13遺伝子の発現量を示す図。
図32は、図20と同じ条件下における1941−20遺伝子の発現量を示す図。
図33は、図20と同じ条件下における1930−03遺伝子の発現量を示す図。
図34は、図20と同じ条件下における1921−05遺伝子の発現量を示す図。
図35は、図20と同じ条件下における1925−08遺伝子の発現量を示す図。
Claims (27)
- 次の工程を含む、初期アレルギー性疾患の検査方法。
a)被検者の好酸球細胞における、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、および配列番号:17に記載の塩基配列のいずれかを含む遺伝子の発現レベルを測定する工程
b)健常者の好酸球細胞における前記遺伝子の発現レベルと比較する工程 - アレルギー性疾患がアトピー性皮膚炎である、請求項1に記載の検査方法。
- 遺伝子の発現レベルを、cDNAのPCRによって測定する請求項1に記載の検査方法。
- 配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、および配列番号:17に記載の塩基配列のいずれかを含むポリヌクレオチド、またはその相補鎖に相補的な塩基配列を有する少なくとも15塩基の長さを有するオリゴヌクレオチドからなる、初期アレルギー性疾患検査用試薬。
- 次の工程を含む、候補化合物が下記(a)または(b)に記載のポリヌクレオチドの発現レベルに与える影響を検出する方法。
(1)下記(a)または(b)に記載のポリヌクレオチドを発現する細胞に候補化合物を接触させる工程
(a)配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、および配列番号:17に記載の塩基配列のいずれかを含むポリヌクレオチド。
(b)配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、および配列番号:17に記載の塩基配列のいずれかを含むDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、初期のアレルギー性疾患患者の好酸球において発現が増加する蛋白質をコードするポリヌクレオチド。
(2)前記(a)または(b)に記載のポリヌクレオチドの発現レベルを測定する工程、 - 細胞が株化白血球細胞である請求項5に記載の方法。
- 次の工程を含む、候補化合物が下記(a)または(b)に記載のポリヌクレオチドの発現レベルに与える影響を検出する方法。
(a)配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、および配列番号:17に記載の塩基配列のいずれかを含むポリヌクレオチド。
(b)配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、および配列番号:17に記載の塩基配列のいずれかを含むDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、初期のアレルギー性疾患患者の好酸球において発現が増加する蛋白質をコードするポリヌクレオチド。
(1)被験動物に候補化合物を投与する工程、および
(2)被験動物の好酸球細胞における前記(a)または(b)に記載のポリヌクレオチドの発現強度を測定する工程、 - 請求項5、または請求項7に記載の方法によって、前記発現レベルに与える影響を検出し、対照と比較して前記発現レベルを低下させる化合物を選択する工程を含む、前記(a)または(b)に記載のポリヌクレオチドの発現レベルを低下させる化合物のスクリーニング方法。
- 次の工程を含む、候補化合物が配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、および配列番号:17に記載の塩基配列のいずれかを含む遺伝子の転写調節領域の活性に与える影響を検出する方法。
(1)配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、および配列番号:17に記載の塩基配列のいずれかを含む遺伝子の転写調節領域と、この転写調節領域の制御下に発現するレポーター遺伝子とを含むベクターを導入した細胞と候補物質を接触させる工程、および
(2)前記レポーター遺伝子の活性を測定する工程、 - 請求項9に記載の方法によって、候補化合物の前記活性に与える影響を検出し、対照と比較して前記活性を低下させる化合物を選択する工程を含む、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、および配列番号:17に記載の塩基配列のいずれかを含む遺伝子の転写調節領域の活性を低下させる化合物のスクリーニング方法。
- 配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、および配列番号:17に記載の塩基配列のいずれかを含む遺伝子の転写調節領域と、この転写調節領域の制御下に発現するレポーター遺伝子とを含むベクター。
- 請求項11に記載のベクターを導入した細胞。
- 請求項8、または請求項10に記載のスクリーニング方法によって得ることができる化合物を有効成分として含有する、アレルギー性疾患の治療薬。
- 配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、および配列番号:17に記載の塩基配列のいずれかを含むポリヌクレオチド、またはその一部のアンチセンスDNAを主成分として含む、アレルギー性疾患の治療薬。
- 「1858−05」、「1901−21」、「1913−17」、「1852−09」、「1945−03」、「1948−16」、「1833−02」、「1873−30」、「1937−03」、「1949−02」、「1956−04」、「1919−13」、「1917−03」、「1941−20」、「1930−03」、「1921−05」、「1925−08」タンパク質のアミノ酸配列からなるペプチドを認識する抗体を主成分として含む、アレルギー性疾患の治療薬。
- 下記の(a)または(b)に記載のポリヌクレオチド。
(a)配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、および配列番号:17に記載の塩基配列のいずれかを含むポリヌクレオチド。
(b)配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、および配列番号:17に記載の塩基配列のいずれかを含むDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、初期のアレルギー性疾患患者の好酸球において発現が増加する蛋白質をコードするポリヌクレオチド。 - 請求項16に記載のポリヌクレオチドによってコードされる蛋白質。
- 請求項16に記載のポリヌクレオチドを発現可能に保持するベクター。
- 請求項16に記載のポリヌクレオチド、または請求項18に記載のベクターを保持する形質転換細胞。
- 請求項19に記載の形質転換細胞を培養し、その発現産物を回収する工程を含む、請求項17に記載の蛋白質の製造方法。
- 請求項17に記載の蛋白質に対する抗体。
- 請求項21に記載の抗体と、請求項17に記載の蛋白質の免疫学的な反応を観察する工程を含む、話求項17に記載の蛋白質の免疫学的測定方法。
- 配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番1号:14、配列番:15、配列番号:16、および配列番号:17に記載の塩基配列のいずれかを含むポリヌクレオチド、またはその相補鎖に相補的な塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであって、少なくとも15塩基の長さを持つオリゴヌクレオチド。
- 請求項23に記載のオリゴヌクレオチドと、請求項16に記載のポリヌクレオチドとのハイブリダイズを観察する工程を含む、請求項16に記載のポリヌクレオチドの測定方法。
- 下記の(a)または(b)に記載のポリヌクレオチドの好酸球細胞における発現強度を増加させたトランスジェニック非ヒト脊椎動物からなる初期アレルギー性疾患モデル動物。
(a)配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、および配列番号:17に記載の塩基配列のいずれかを含むポリヌクレオチド。
(b)配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、および配列番号:17に記載の塩基配列のいずれかを含むDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、初期のアレルギー性疾患患者の好酸球において発現が増加する蛋白質をコードするポリヌクレオチド。 - 配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、および配列番号:17のいずれかに記載の塩基配列、またはその相補配列にハイブリダイズする少なくとも15塩基の長さを有するポリヌクレオチドと、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、および配列番号:17のいずれかに記載の塩基配列からなる遺伝子を発現する細胞からなる、アレルギー性疾患の治療薬候補化合物をスクリーニングするためのキット。
- 「1858−05」、「1901−21」、「1913−17」、「1852−09」、「1945−03」、「1948−16」、「1833−02」、「1873−30」、「1937−03」、「1949−02」、「1956−04」、「1919−13」、「1917−03」、「1941−20」、「1930−03」、「1921−05」、「1925−08」タンパク質のアミノ酸配列からなるペプチドを認識する抗体と、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、または配列番号:17に記載の塩基配列からなる遺伝子を発現する細胞からなる、アレルギー性疾患の治療薬候補化合物をスクリーニングするためのキット。
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