JP2988973B2 - シャドウマスク材 - Google Patents

シャドウマスク材

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、カラーブラウン管用シャドウマスク材に関
するものであり、特にシャドウマスクを製造する工程で
のプレス成形前に行なわれる軟化焼鈍工程を必要としな
いように調整したシャドウマスク材に関する。
〔従来の技術〕
カラーブラウン管のシャドウマスク材としては長年ア
ルミキルド鋼が使用されてきたが、最近ではカラーテレ
ビの大型化、ディスプレイの超高精細化等の要求によ
り、熱膨張率の低いNi−Fe系合金であるアンバー合金が
用いられるようになってきている。
このようなアンバー合金を用いたシャドウマスクの製
造工程は一般に次の通りである。
まず、材料の溶解および鋳造後適宜の圧延工程を経由
し、最終冷間加工にて所定の厚さを有するシャドウマス
ク材を得る。次にシャドウマスク材はエッチング穿孔加
工されてフラットマスクとなり、このフラットマスクは
軟化焼鈍されてプレス成形性に付与され、その後プレス
によりシャドウマスクの形状に応じた球面に成形され
る。球面成形されたマスクは黒化処理を施されシャドウ
マスクとなる。
上記工程のうち、プレス成形性を付与するために行な
われる軟化焼鈍工程は、フラットマスクを数十枚重ね合
わせるか、1枚1枚吊り下げた状態で行なわれるため、
生産性に問題があった。
また、軟化焼鈍工程において、フラットマスク同士の
密着による焼付あるいは焼鈍むらが発生するという問題
もあった。
このような問題に対し、特開昭62−238003号公報ある
いは特開平2−25201号公報には、シャドウマスク材の
表面粗さを大きくして、焼鈍時の材料同士の密着を防ぎ
焼付を低減することが提案されている。
また、シャドウマスク材にSi、Mn、Al等の酸化し易い
元素を添加することによって、表面に酸化膜を形成し、
焼付を防止することも知られている。
また、プレス成形前の焼鈍をなくすことも試みられて
いる。たとえば、特開昭62−149819号公報では、材料の
強さをビッカース硬さ(以下Hvという)Hv180〜220と
し、10%以上の伸びを有するアンバー合金を得ることに
より、エッチング工程での材料の蛇行の防止とプレス成
形性を両立させプレス成形前の軟化焼鈍工程を省略しよ
うとしている。
〔発明が解決しようとする課題〕
上述したような表面粗さを大きくする方法では、エッ
チングは表面粗さに影響されるのでエッチング穿孔部の
形状が不足となる問題がある。また、添加元素を加える
方法では、Si、Mn、Alなどによりエッチングの均一性が
得られなかったり、黒化処理の劣化を招くという問題が
あった。
このように軟化焼鈍工程で発生する問題を解決する従
来の方法では、他の特性を犠牲にする必要があった。
超高精細のシャドウマスク材に要求されるプレス成形
性とは成形精度が確保されることと超微細なエッチング
孔に破断等が発生しないことであるが、Hv180以上の特
開昭62−149819号公報に記載されるような前述の材料で
は、材料の弾性に起因するスプリングバックが大きく、
そのままではプレス成形による成形精度が得られない。
また、超高精細のシャドウマスク材のエッチング性と
しては、特に得られた細孔の形状がすべて均一に揃って
いることが必要とされる。
本発明の目的は、軟化焼鈍工程を省略しても良好なプ
レス成形性を有し、しかも超高精細のシャドウマスク材
の穿孔にも対応できるシャドウマスク材を提供すること
である。
〔課題を解決するための手段〕
本発明は、結晶粒がJISによるオーステナイト結晶粒
度番号7より細粒であり、ビッカース硬さ140以下、フ
ラットマスク状態におけるシャドウマスク構成面積内の
ビッカース硬さの最大値と最小値の差が10以下のアンバ
ー合金からなることを特徴とするシャドウマスク材であ
る。
また本発明は、重量%でC≦0.005%、Si≦0.05%、M
n≦0.40%、P≦0.005%、S≦0.005%、O≦0.010%、
Ni35.5〜36.5%、残部実質的にFeのアンバー合金からな
ることを特徴とする特許請求の範囲第1項に記載のシャ
ドウマスク材である。
本発明は、アンバー合金よりなるシャドウマスク材の
結晶粒度、硬さおよび硬さのバラツキを所定の範囲内に
することによって、プレス成形前の軟化焼鈍を省略で
き、しかもエッチング性とプレス成形性に優れたシャド
ウマスクが得られることを見い出したものである。
結晶粒度をJISによるオーステナイト結晶粒度番号7
より細かくするのは、エッチングにより得られる細孔の
形状を均一なものとするためである。結晶粒が5〜7番
程度であると、エッチングによって得られた細孔のエッ
チング面の滑らかさが損なわれ、エッチング面の粗さに
起因する乱反射によるギラツキ(いわゆるアラビ)が確
認されて形状不良となる。
また、硬さをHv140以下としたのは、Hv140を越えると
材料のスプリングバックが大きく、また伸びも小さいた
めプレス成形で所望の形状が得られなかったり、エッチ
ングによって得た細孔に裂け目、破断等が発生してしま
うためである。
Hv140以下でも1枚の素材のシャドウマスク構成面積
内の硬度差がビッカース硬さ(Hv)で10を越えると、プ
レス成形時に変形量の違いが発生し、成形ムラや細孔の
破断といったプレス成形不良が生じるためフラットマス
ク状態での1枚のシャドウマスク構成面積内の高度差は
ビッカース硬さで10以下でなければならない。
このような特性は、製品板厚に冷間圧延した材料を70
0℃以上、1000℃以下の温度範囲で連続炉にて焼鈍を行
なうことによって得られる。700℃より低温では長時間
加工しても材料の硬度はHv140以下には軟化しない。ま
た、1000℃以上では、瞬時に結晶粒の粗大化が生じて好
ましくない。生産効率の点から焼鈍時間を5分に設定し
た場合、800℃〜900℃がより好ましい。焼鈍方法にはタ
イトコイルのままバッチ炉に装入する方法と、コイルを
巻き直しながら連続炉で加熱する方法があるがバッチ炉
では温度ムラによる硬度バラツキが生じ易いため、連続
炉処理が好ましい。
また、シャドウマスク材のC、Si、Mn、P、S、O
は、エッチング性に有害な元素であり、エッチング速度
が低下し、開孔部面積が小さくなる原因となるため、そ
れぞれC≦0.005%、Si≦0.05%、Mn≦0.40%、P≦0.0
05%、S≦0.005%、O≦0.010%が好ましい。
また、Niは、36%で熱膨張係数が極小となり、これよ
り低Ni側、高Ni側ともに熱膨張が大きくなるため、Niは
35.5〜36.5%が好ましい。
〔実施例〕
以下、本発明の実施例について詳しく説明する。
第1表に示す組成、結晶粒度、硬さ(Hv)を有する板
厚0.25mm、幅600mmのアンバー合金よりなるシャドウマ
スク材に対して、エッチング性およびプレス成形性を評
価した。
結晶粒度と硬さの調整は、製品板厚に冷間圧延した材
料を焼鈍する条件を変化させることにより行なった。こ
のうち、本発明の実施例No.1〜No.4は冷間圧延したコイ
ルを巻き直しながら連続炉で750℃〜950℃で焼鈍したも
のであり、焼鈍温度と保持時間を変化させることによ
り、結晶粒度番号と硬さの異なるシャドウマスク材が得
られる。
第1表に示すシャドウマスク材のコイルを、FeCl3
液でエッチング加工してから切断し、0.7mmピッチのス
ロット孔を有する29インチテレビ用のフラットマスクを
得た。このフラットマスクを島津製作所製ビッカース硬
度計を用い、幅方向5点、長手方向4点の計20点を荷重
0.5kgで測定し、その最高値(Hv MAX)と最高値と最小
値の差である硬さのバラツキ(Hv R)によって評価し
た。また、エッチング性のうちエッチング速度は得られ
たシャドウマスクのエッチング部を写真撮影し画像解析
によって求めたシャドウマスク25mm角分に占める開孔部
の面積の割合である。
開孔率とエッチング面の精度としてエッチング面のギ
ラツキの発生の有無を目視によって評価した。
次にフラットマスクを軟化焼鈍しないで200℃に加熱
した金型でシャドウマスクに成形した。
プレス成形は、プレス後にスロット孔に破断あるいは
割れ目が発生したものを不良とした。
第1表にその結果を示す。
本発明のシャドウマスク材は、開孔率が大きく、エッ
チング速度が速いことを示している。エッチング速度が
速いことは、それだけエッチング工程が短縮でき、開孔
部面積のバラツキが少なくなることを示す。また、本発
明のシャドウマスク材はギラツキもなく、精度の高いエ
ッチング面が得られたことがわかる。
一方比較例から硬さの最高値(Hv MAX)あるいはバラ
ツキ(Hv R)が本発明例より大きいことによりプレス性
が劣化すること、粒度番号が本発明例より小さいことに
より、ギラツキが発生し、エッチング性が劣化すること
がわかる。
また、P、Sの値が他の本発明例よりもやや高い試料
No.4は開孔率が他の本発明例よりも小さく、P、Sはそ
れぞれ0.005%以下が好ましいことがわかる。
〔発明の効果〕 本発明によれば、従来生産性および品質面でトラブル
の多かったプレス成形前の軟化焼鈍を省略でき、しかも
超高精細のシャドウマスクに応じたエッチング性とプレ
ス性を兼ね備えたシャドウマスク材を提供することがで
きる。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】結晶粒がJISによるオーステナイト結晶粒
    度番号7より細粒であり、ビッカース硬さ140以下、フ
    ラットマスク状態におけるシャドウマスク構成面積内の
    ビッカース硬さの最大値と最小値の差が10以下のアンバ
    ー合金からなることを特徴とするシャドウマスク材。
  2. 【請求項2】重量%でC≦0.005%、Si≦0.05%、Mn≦
    0.40%、P≦0.005%、S≦0.005%、O≦0.010%、Ni3
    5.5〜36.5%、残部実質的にFeのアンバー合金からなる
    ことを特徴とする特許請求の範囲第1項に記載のシャド
    ウマスク材。
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JP2842350B2 (ja) * 1995-12-15 1999-01-06 松下電器産業株式会社 積層コンデンサ

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