JP2979767B2 - 発酵法によるリボフラビンの製造法 - Google Patents

発酵法によるリボフラビンの製造法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は発酵法によるリボフラビ
ンの製造法に関する。リボフラビンは医薬、飼料添加
剤、食品用の着色剤等として有用な物質である。
【0002】
【従来の技術】従来、発酵法によるリボフラビンの製造
法としては、エレモテシウム・アシュビイ、アシュビア
・ゴシッビイ、キャンディダ・フラレリイあるいはバチ
ルス・ズブチリス等を糖質含有培地中で培養して、培養
液中にリボフラビンを生成蓄積せしめる方法が知られて
いる(プログレス・インダストリアル・ミクロバイオロ
ジー、第1巻、139頁、1959年、ベルギー国特許
第890917号、特公昭53−10155号公報)。
しかし、これらの方法で使用される微生物はリボフラビ
ンの蓄積濃度あるいは生産速度が低く、リボフラビンの
工業生産において満足できるものではなかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、リボ
フラビンの生産能の向上した菌株を得ることにより、安
価かつ効率的な発酵法によるリボフラビンの製造法を提
供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、リボフラ
ビンを効率よく発酵生産する方法を開発するために鋭意
研究を重ねた結果、バチルス属に属し、5′−グアニル
酸(以下、5′−GMPと記す)より燐酸を遊離する活
性が低下し、リボフラビン生産能を有する変異株の使用
がその目的に適合し得ることを見いだし、この知見に基
づいて本発明を完成させるに至った。
【0005】すなわち、本発明は、バチルス属に属し、
5′−GMPより燐酸を遊離する活性が低下し、リボフ
ラビン生産能を有する変異株を液体培地中で培養し、培
養液中にリボフラビンを生成蓄積せしめ、これを採取す
ることを特徴とする発酵法によるリボフラビンの製造法
を提供するものである。
【0006】本発明で使用する変異株は、バチルス属に
属し、5′−GMPより燐酸を遊離する活性が低下し、
リボフラビン生産能を有する変異株である。また、これ
らの性質に加えて、核酸塩基アナログ耐性等、リボフラ
ビンの生産能を高めることが従来知られている他の性質
(特公昭53−10155号公報参照)を付与すること
により、更に生産能の高い変異株を得ることもできる。
【0007】本発明で使用する変異株を具体的に例示す
れば以下のものがある。 バチルス・ズブチリス AJ12644(FERM P
−12455) (アデニン要求性、GMPレダクターゼ欠損、(プリン
+8−アザキサンチン)耐性、5′−GMPより燐酸を
遊離する活性低下)
【0008】このような変異株を得る際に使用される親
株としては、バチルス属に属する菌株を使用することが
できる。具体的に例示すると次のようなリボフラビン生
産菌が用いられる。 バチルス・ズブチリス AJ12643(FERM P
−12456) (アデニン要求性、GMPレダクターゼ欠損、(プリン
+8−アザキサンチン)耐性)
【0009】親株を変異処理する方法は、例えばX線や
紫外線の照射あるいはN−メチル−N′−ニトロ−N−
ニトロソグアニジン等の変異誘導剤に接触せしめる等の
通常の変異処理法が適用できる。
【0010】本発明の変異株の取得のより具体的な実験
例を以下に示す。
【0011】バチルス・ズブチリス ATCC1395
2より誘導したアデニン要求性、GMPレダクターゼ欠
損、(プリン+8−アザキサンチン)耐性のリボフラビ
ン生産菌バチルス・ズブチリス AJ12643(FE
RM P−12456)を、可溶性でんぷん2.5%、
酵母エキス0.3%、ポリペプトン0.3%、塩化ナト
リウム0.1%(pH7.0)を含む液体栄養培地に接
種し、34℃で16時間振とう培養して得た培養液1m
lを同様の栄養培地4mlに接種し、34℃で振とう培
養を行った。培養液の562nmにおける濁度が0.8
になった時点で遠心集菌し、得られた菌体を50mM燐
酸緩衝液(pH7.0)で洗浄した。次いで洗浄菌体を
同緩衝液5mlに懸濁し、N−メチル−N′−ニトロ−
N−ニトロソグアニジン500μg/50mM燐酸緩衝
液(pH7.0)5mlを添加して氷冷下で40分静置
した。処理後の菌体を同緩衝液で洗浄した後5mlの同
緩衝液に懸濁し、上記組成の栄養培地の寒天平板培地に
塗抹した。34℃で2日間培養してコロニーの生育を確
認した後、4−ニトロフェニル燐酸二ナトリウム溶液/
50mMトリス緩衝液(pH8.8)に浸した濾紙をプ
レートにのせ、室温で5分間放置した。5′−GMPよ
り燐酸を遊離する活性が強い菌株のコロニーは生成した
4−ニトロフェノールにより黄色く発色するため、黄色
の発色が弱いコロニーを5′−GMPより燐酸を遊離す
る活性が低下した菌株として選択した。
【0012】次に親株であるバチルス・ズブチリス A
J12643と得られた変異株のそれぞれを上記組成の
液体栄養培地に接種し、34℃で16時間振とう培養し
た。生育した菌体を遠心集菌し生理食塩水で洗浄した
後、菌体懸濁液を200W、7分の条件で超音波破砕し
た。この菌体破砕液を40mM(最終濃度)5′−GM
P溶液/200mMMOPS緩衝液(pH7.0)に加
えて34℃で2時間反応させ、生成したグアノシンをH
PLC(カラム:三菱化成工業社製CPK−08、溶離
液:3%ギ酸リチウム(pH4.75)、検出法:UV
260nm)で定量することにより5′−GMPより燐
酸を遊離する活性を測定した。また、これらの菌株を上
述の液体栄養培地4mlに接種し34℃で16時間培養
して得た培養液を、表1に示す組成のリボフラビン生産
培地に5%の植菌量で接種して34℃で3日間培養を行
い、各菌株のリボフラビンの生産能を測定した。
【0013】
【表1】
【0014】その結果、表2に示すように、親株である
バチルス・ズブチリス AJ12643に比べて、得ら
れた変異株ではいずれも5′−GMPより燐酸を遊離す
る活性が低下している一方、培養液中に蓄積したリボフ
ラビンの量は変異株の方が明らかに向上していた。
【0015】
【表2】
【0016】次いで上記の操作により得られた5′−G
MPより燐酸を遊離する活性が低下した変異株の一つで
あるバチルス・ズブチリスNo.189に同様の方法で
変異処理を行い、5′−GMPより燐酸を遊離する活性
がさらに低下した変異株バチルス・ズブチリス AJ1
2644(FERM P−12455)を取得した。バ
チルス・ズブチリス AJ12644とその親株である
No.189の5′−GMPより燐酸を遊離する活性と
培養液中に蓄積したリボフラビンの量は表3の通りであ
る。
【0017】
【表3】
【0018】リボフラビンは5′−IMP、5′−GM
P、5′−GTP等のヌクレオチドを経由して生合成さ
れるが、5′−ヌクレオチドより燐酸を遊離する活性が
高いと脱燐酸してヌクレオシドに変換され菌体外に放出
されてしまうのに対し、本発明で使用される変異株では
5′−ヌクレオチドより燐酸を遊離する活性が低下した
結果、より多くのリボフラビン生合成の前駆体が供給さ
れ、リボフラビンの蓄積量の向上につながったものと考
えられる。
【0019】本発明の変異株を用いてリボフラビンを生
産せしめるには、炭素源、窒素源、無機塩類、その他必
要に応じて有機微量栄養素及び使用する微生物が要求す
る栄養物質を含有する通常の液体培地が使用される。炭
素源としては、使用する変異株が利用可能なものであれ
ばよく、例えばグルコース、シュクロース、糖蜜、デン
プン加水分解液等が使用される。また窒素源としては、
硫安、尿素、アンモニア等が使用できる。有機微量栄養
素としては、アミノ酸、ビタミン、脂肪酸、核酸、さら
にこれらのものを含有する酵母エキス、ペプトン、カザ
ミノ酸、大豆蛋白加水分解物等が使用される。
【0020】培養方法は、発酵温度30〜40℃、好ま
しくは34〜37℃に制御しつつ通気培養を行う。培養
開始時及び培養中のpHは6.0〜7.5、好ましくは
6.5〜7.0に保つのがよく、pHの調整には無機あ
るいは有機の酸性あるいはアルカリ性物質、更には尿
素、炭酸カルシウム、アンモニアガス等を使用すること
ができる。かくして1ないし5日間培養を行うことによ
り、培養液中に著量のリボフラビンが生成蓄積される。
【0021】培養終了後の培養液からのリボフラビンを
採取する方法は公知の方法に従って行えばよい。例え
ば、培養液より菌体を除去した後、ハイドロサルファイ
トを適当量添加し、軽く撹拌して20℃にて遠心分離し
てリボフラビンの還元型粗結晶を採取する。この粗結晶
を1N酢酸溶液に懸濁し加熱溶解した後、濾過により不
溶物を除去し冷却することにより結晶を析出させる。こ
の結晶を濾別し、乾燥させることによりリボフラビン結
晶を得ることができる。
【0022】
【実施例】次に実施例により本発明を更に詳細に説明す
る。
【0023】
【実施例1】表4に示す組成のリボフラビン生産培地を
5l容発酵槽に2l分注し、121℃、15分加熱殺菌
した。この培地に、あらかじめ液体栄養培地で34℃、
16時間培養したバチルス・ズブチリス AJ1264
4の種培養液100mlを接種し、発酵温度34℃、通
気量0.5vvm、撹拌数700rpmの条件で、アン
モニアによりpHを6.5に制御しつつ3日間培養を行
った。その結果、リボフラビン1.05g/lを含む培
養液1.8lを得た。培養液より遠心分離により菌体を
除去した後、ハイドロサルファイトを20g添加し軽く
撹拌して遠心分離を行い、リボフラビン粗結晶1.8g
を得た。この粗結晶を1N酢酸溶液500mlに懸濁
し、少量の飽和過マンガン酸溶液を加えて酸化した。次
いで煮沸溶解し熱時濾過し、放冷後析出してきた結晶を
濾過してリボフラビン結晶750mgを採取した。これ
を更に再結することによりリボフラビンの純結晶560
mgが得られた。
【0024】
【表4】
【0025】
【発明の効果】本発明で使用する変異株は、親株に比べ
てリボフラビンの生産能が向上しており、著量のリボフ
ラビンを培養液中に生成蓄積させることができるため、
本発明の方法は、安価かつ効率的な発酵法によるリボフ
ラビンの製造法として好適である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C12P 25/00 BIOSIS(DIALOG) CA(STN) WPI(DIALOG)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 バチルス属に属し、5′−グアニル酸よ
    り燐酸を遊離する活性が低下し、リボフラビン生産能を
    有する変異株を液体培地中で培養し、培養液中にリボフ
    ラビンを生成蓄積せしめ、これを採取することを特徴と
    する発酵法によるリボフラビンの製造法。
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