JP2947004B2 - 能動型サスペンション - Google Patents

能動型サスペンション

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JP2947004B2
JP2947004B2 JP15372493A JP15372493A JP2947004B2 JP 2947004 B2 JP2947004 B2 JP 2947004B2 JP 15372493 A JP15372493 A JP 15372493A JP 15372493 A JP15372493 A JP 15372493A JP 2947004 B2 JP2947004 B2 JP 2947004B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、車体と車輪との間に油
圧シリンダ等の流体圧シリンダを介装し、この流体圧シ
リンダの流体圧を制御することで車体の上下方向の揺動
を減衰可能とした能動型サスペンションに関するもので
ある。
【0002】
【従来の技術】従来、車体と車輪との間に介装した流体
圧シリンダをアクティブに制御して車体の上下方向への
振動を低減する能動型サスペンションとしては、例えば
特開平4−201615号公報に記載されるものがあ
る。この能動型サスペンションは、車体の上下方向に発
生する上下加速度を加速度センサ等により検出し、この
上下加速度を一次のローパスフィルタで積分して車体の
上下速度を演算し、この上下速度に適宜制御ゲインを乗
じて指令値を演算し、この指令値によって制御弁を制御
することにより,油圧シリンダ等の流体圧に供給される
油圧等の供給流体圧を制御して車体の姿勢変化を減衰・
抑制しようとするものである。
【0003】更にこの能動型サスペンションでは、前記
上下加速度積分器として使用されるローパスフィルタの
カットオフ周波数を可変とし、前記上下加速度のパワー
スペクトルを演算し、乗心地の良否に支配的な周波数域
のパワースペクトルの和であるオーバオールパワーを演
算し、この演算値が大きくなるほど前記ローパスフィル
タのカットオフ周波数を上昇させると同時に,それに伴
って発生するローパスフィルタのゲインの上昇を抑制す
るために前記制御ゲインを低下して全体的なゲインの変
動を抑制する。この能動型サスペンションによれば、従
来,バネ上共振周波数で制振効果を高めるように決定さ
れていたローパスフィルタのカットオフ周波数の影響
で,不整路面等の比較的小さな凹凸の路面(通常,バネ
上共振点よりも高い周波数の振動を生じる)を走行した
場合、制御弁の応答遅れが大きくなることに起因した加
振作用が大きくなって乗心地が低下するという問題を回
避することができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記従
来の能動型サスペンションにあっては,車体振動に応じ
てのみ積分器,即ちローパスフィルタのカットオフ周波
数を変更しているため、例えば旋回・高速走行時等の車
両走行状況や運転操作状況に関わらず乗心地を重視した
制御が行われてしまい、こうした旋回・高速走行時等に
要求される走行安定性が不十分になるという虞れがあ
る。
【0005】本発明はこれらの諸問題に鑑みて開発され
たものであり、車両走行状況や運転操作状況等に応じ
て,例えば旋回・高速走行時等には走行安定性を重視
し、また直進・低速走行時等にあって不整路面等の走行
時には乗心地を重視した制御を可能とする能動型サスペ
ンションを提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明のうち請求項1に
係る能動型サスペンションは、図1aの概念図に示すよ
うに,車体側部材と車輪側部材との間に介装された流体
圧シリンダと、各流体圧シリンダの作動を指令値に応じ
て制御する制御弁と、車体の上下方向に発生する加速度
を検出する上下加速度検出手段と、この上下加速度検出
手段の検出値に基づいて車体の上下方向の速度を演算す
る上下速度演算手段と、この上下速度演算手段の演算値
に制御ゲインを乗じて前記指令値を演算し出力する指令
値演算手段とを備えた能動型サスペンションにおいて、
前記上下速度演算手段を,カットオフ周波数の可変なロ
ーパスフィルタで構成すると共に、車両走行状況や運転
操作状況等の状況を検出する状況検出手段と、この状況
検出手段で検出された状況から得られる,走行安定性を
重視すべき状況か乗心地を重視すべき状況かに応じて,
前記ローパスフィルタのカットオフ周波数を変更設定す
るカットオフ周波数変更手段を設けたことを特徴とする
ものである。
【0007】本発明のうち請求項2に係る能動型サスペ
ンションは、図1bの概念図に示すように,車体側部材
と車輪側部材との間に介装された流体圧シリンダと、各
流体圧シリンダの作動を指令値に応じて制御する制御弁
と、車体の上下方向に発生する加速度を検出する上下加
速度検出手段と、この上下加速度検出手段の検出値に基
づいて車体の上下方向の速度を演算する上下速度演算手
段と、この上下速度演算手段の演算値に制御ゲインを乗
じて前記指令値を演算し出力する指令値演算手段とを備
えた能動型サスペンションにおいて、前記上下速度演算
手段を,複数のローパスフィルタと,それらの出力の線
形和を演算する線形和演算手段とで構成すると共に、車
両走行状況や運転操作状況等の状況を検出する状況検出
手段と、この状況検出手段で検出された状況から得られ
る,走行安定性を重視すべき状況か乗心地を重視すべき
状況かに応じて,前記線形和演算手段の線形和比率を変
更設定する線形和比率変更手段を設けたことを特徴とす
るものである。
【0008】
【作用】本発明のうち請求項1に係る能動型サスペンシ
ョンでは、図1aの概念図に示すように,上下加速度検
出手段で検出された車体上下加速度から車体上下速度を
演算する上下速度演算手段を,カットオフ周波数の可変
なローパスフィルタで構成し、車両走行状況や運転操作
状況等の状況を状況検出手段で検出し、その検出信号に
基づいて得られる走行安定性を重視すべきか或いは乗心
地を重視すべきかの判断に応じて,前記上下速度演算手
段のローパスフィルタのカットオフ周波数を,カットオ
フ周波数変更手段で変更設定する構成としたために、例
えば車両走行状況を検出するための手段として車速セン
サを設けて車速を検出し、また例えば運転操作状況を検
出するための手段として操舵角センサを設けて操舵角を
検出し、これらによって例えば車両が旋回中であるとか
高速走行中であると判断された場合には,走行安定性を
重視すべき状況であると判断し、この判断に基づいて前
記カットオフ周波数変更手段は具体的にローパスフィル
タのカットオフ周波数を相対的に下降する側に変更設定
し、これによりローパスフィルタの出力が所定の位相遅
れを生じて減衰作用の発生する周波数領域が低域側に移
行するから、この出力に制御ゲインを乗じて指令値と
し、この指令値に基づいて制御弁の作動を制御すること
により車体側部材と車輪側部材との間に介装された油圧
シリンダ等の流体圧シリンダへの供給流体圧を制御すれ
ば,車体の揺動が抑制されて車両の走行安定性が向上す
る。一方、前記車速センサや操舵角センサ等を介した状
況検出手段により,例えば車両が低速直進走行中である
と判断された場合には乗心地を重視すべき状況であると
判断し、この判断に基づいて前記カットオフ周波数変更
手段は,不整路面の走行中等にあって具体的にローパス
フィルタのカットオフ周波数を相対的に上昇する側に変
更設定し、これによりローパスフィルタの出力が所定の
位相遅れを生じて減衰作用の発生する周波数領域が高域
側に移行するから,路面から車体に伝わす振動が減衰さ
れて車両の乗心地が向上する。
【0009】本発明のうち請求項2に係る能動型サスペ
ンションでは、図1bの概念図に示すように,上下加速
度検出手段で検出された車体上下加速度から車体上下速
度を演算する上下速度演算手段を,例えばカットオフ周
波数の異なる複数のローパスフィルタと,その出力の線
形和を演算する線形和演算手段とで構成し、車両走行状
況や運転操作状況等の状況を状況検出手段で検出し、そ
の検出信号に基づいて得られる走行安定性を重視すべき
か或いは乗心地を重視すべきかの判断に応じて,前記上
下速度演算手段の線形和演算手段の線形和比率を,線形
和比率変更手段で変更設定する構成としたために、例え
ばカットオフ周波数が相対的に高域及び相対的に低域の
複数のローパスフィルタの出力に,夫々係数として乗じ
られる線形和比率の総和が1となるようにし、前記車速
センサや操舵角センサ等を介した状況検出手段により,
車両が旋回中であるとか高速走行中であると判断された
場合には,走行安定性を重視すべき状況であると判断
し、この判断に基づいて前記線形和比率変更手段は具体
的に低域カットオフ周波数のローパスフィルタの出力線
形和比率を上昇し,同時に高域カットオフ周波数のロー
パスフィルタの出力線形和比率を下降し、結果的に低域
カットオフ周波数のローパスフィルタの出力が重視され
て全体的なローパスフィルタのカットオフ周波数を低域
側に下降するように前記各線形和比率を変更設定し、こ
れにより全体的なローパスフィルタの出力が所定の位相
遅れを生じて減衰作用の発生する周波数領域が低域側に
移行するから,車体の揺動が抑制されて車両の走行安定
性が向上する。一方、前記車速センサや操舵角センサ等
を介した状況検出手段により,例えば車両が低速直進走
行中であると判断された場合には乗心地を重視すべき状
況であると判断し、この判断に基づいて前記線形和比率
変更手段は,不整路面の走行中等にあって具体的に高域
カットオフ周波数のローパスフィルタの出力が重視され
て全体的なローパスフィルタのカットオフ周波数を高域
側に上昇するように前記各線形和比率を変更設定し、こ
れにより全体的なローパスフィルタの出力が所定の位相
遅れを生じて減衰作用の発生する周波数領域が高域側に
移行するから,路面から車体に伝わる振動が減衰されて
車両の乗心地が向上する。
【0010】
【実施例】以下、本発明の能動型サスペンションの第1
実施例を添付図面の図2乃至図8に基づいて説明する。
図2において、10は車体側部材を示し、11FL〜1
1RRは前左〜後右車輪を示し、12は能動型サスペン
ションを示す。
【0011】能動型サスペンション12は、車体側部材
10と車輪11FL〜11RRの各車輪側部材16との
間に各々介装された流体圧シリンダとしての油圧シリン
ダ18FL〜18RRと、この油圧シリンダ18FL〜
18RRの作動流体圧,即ち作動油圧を個別に調整制御
する制御弁としての圧力制御弁20FL〜20RRと、
この油圧系の油圧源22と、この油圧源22及び圧力制
御弁22FL〜22RR間に介装された蓄圧用のアキュ
ームレータ24とを有すると共に、車体の上下方向に作
用する上下加速度を検出する上下加速度センサ26FL
〜26RRと、圧力制御弁20FL〜20RRの出力圧
を個別に制御するコントローラ30とを有している。ま
た、車輪及び車体間には,比較的低いバネ定数であって
車体の静荷重を支持するコイルスプリング31が併設さ
れている。
【0012】前記油圧シリンダ18FL〜18RRの各
々はシリンダチューブ18aを有し、このシリンダチュ
ーブ18aには,ピストン18cにより隔設された下側
の圧力室Lが形成されている。そして、シリンダチュー
ブ18aの下端が車輪側部材16に取付けられ、ピスト
ンロッド18bの上端が車体側部材10に取付けられて
いる。また、圧力室Lの各々は,一部がピストンロッド
18bの内部の軸方向に設けられた油圧配管38を介し
て圧力制御弁20FL〜20RRの出力ポートに連通さ
れ、これによって圧力室L内の作動油圧が制御され得る
ようになっている。各圧力室Lは絞り弁32を介して,
バネ下共振域相当の振動を吸収するアキュームレータ3
4に連結されている。
【0013】また、圧力制御弁20FL〜20RRの各
々は、円筒状の弁ハウジングとこれに一体に設けられた
比例ソレノイドとを有するパイロット方式の比例電磁減
圧弁で構成されている。そして、比例ソレノイドの励磁
コイルに供給する指令電流i(:iFL〜iRR)を制御す
ることにより、弁ハウジング内の挿通孔に収容されたポ
ペットの移動距離,即ちスプールの位置を制御し、出力
ポートから油圧シリンダ18FL〜18RRに供給する
出力圧Pを、指令電流iの値に比例して制御できるよう
になっている。なお、図2中に示す40,42は油圧源
22と圧力制御弁20FL〜20RRとを接続する配管
である。また、前記圧力制御弁20FL〜20RRによ
る油圧シリンダ18FL〜18RRの油圧制御の態様
や、油圧源22〜圧力制御弁20FL〜20RR間の具
体的な油圧系回路の構成については、例えば本出願人が
先に提案した特開平4−201615号公報等を参照さ
れたい。
【0014】各車輪11FL〜11RRの略直上部に相
当する車体側部材10には、前述した上下加速度センサ
26FL〜26RRが各々固設されており、これらの上
下加速度センサ26FL〜26RRは車体に作用する上
下方向の加速度を検出し、その大きさ及び方向に応じた
アナログ電圧値でなる信号GZFL 〜GZRR をコントロー
ラ30に出力するようになっている。
【0015】一方、ここでは車両に対する設置箇所を詳
述しないが,車両の前後方向速度(車速)を検出するた
めの車速センサ71、車体に作用する前後方向の加速度
を検出するための前後加速度センサ72、車体に作用す
る左右方向(横方向)の加速度を検出するための横加速
度センサ73、各車輪の車体に対する相対変位(車体が
中立状態にある場合を零とする)を検出するためのスト
ロークセンサ74が,夫々,車両走行状況を検出するた
めの検出センサとして設けられており、夫々のセンサ7
1〜74からは,検出された値の大きさ及び方向に応じ
たアナログ電圧値でなる信号が,A/D変換器79A〜
79Dでディジタル変換されて前記コントローラ30に
向けて出力されるようになっている。
【0016】また、ステアリングホイールの操舵角を検
出するための操舵角センサ75、ステアリングホイール
の操舵角速度を検出するための操舵角速度センサ76、
アクセルペダルの踏込み量,即ちスロットルの開度を検
出するためのアクセル開度センサ77、ブレーキランプ
のON/OFFを検出するためのブレーキランプスイッ
チ(SW)78が,夫々,運転操作状況を検出するため
の検出センサとして設けられており、夫々のセンサ75
〜78からは,検出された値の大きさ及び/又は方向に
応じたアナログ電圧値でなる信号が,A/D変換器79
E〜79Hでディジタル変換されて前記コントローラ3
0に向けて出力されるようになっている。
【0017】前記コントローラ30は図3に示すよう
に、マイクロコンピュータ50と、入力するアナログ量
の上下加速度信号GZFL 〜GZRR をディジタル量に変換
してマイクロコンピュータ50に出力するA/D変換器
51A〜51Dと、マイクロコンピュータ50から出力
されるディジタル量の圧力指令値DVFL〜DVRRをアナ
ログ量に変換するD/A変換器53A〜53Dと、この
D/A変換器53A〜53Dの出力に応じた指令電流i
FL〜iRRを前記圧力制御弁20FL〜20RRに個別に
出力する駆動回路54FL〜54RRとを有している。
【0018】このうち,マイクロコンピュータ50は、
少なくともインターフェイス回路56,中央処理装置
(CPU)58,RAM,ROM等からなるメモリとし
ての記憶装置62とを含んで構成され、インターフェイ
ス回路56を介して読込んだ前記各センサからの検出信
号に基づいて前記ディジタル量の圧力指令値DVFL〜D
RRを算出し出力する。
【0019】図4は本実施例の能動型サスペンションに
おいて、上下加速度に対して行われる処理をブロック図
的に表したものである。まず、入力された上下加速度検
出値に対してはハイパスフィルタによってオフセット分
の除去が行われる。これは、ハイパスフィルタが有する
基線削除効果によるものであることは周知である。次い
で、ローパスフィルタの積分要素によってこの上下加速
度検出値の積分が行われ、これにより単位時間当たりの
車体上下速度が算出される。これは、後述するようにデ
ィジタル演算によって離散時間処理される一次遅れ系の
ディジタルローパスフィルタにおいては、Z変換された
特性が積分要素を有することからも周知である。この上
下速度演算値に対して,後述する時定数TL とアンプの
ゲインとが乗算されて出力される。この出力値に対し
て,前記圧力制御弁は所定の特性(図では一次遅れ系)
で,油圧シリンダに制御力を付与する。このような一連
の処理で,ハイパスフィルタ,ローパスフィルタ,アン
プに相当する処理を前記マイクロコンピュータで行う。
こうしたマイクロコンピュータ内での処理は,今日では
ディジタルに行うのが通例であるため、当然,プログラ
ミングで構成される各処理ブロックは,ディジタルハイ
パスフィルタであり、ディジタルローパスフィルタであ
り、ディジタルアンプである。このうち、本実施例では
後述する理由によりディジタルフィルタのカットオフ周
波数fC を可変としなければならないが、カットオフ周
波数fC は同図に示すローパスフィルタの伝達関数に関
与する時定数TL に対してfC =(2πTL -1の関係
にあるため、当該時定数TL を,実行されるプログラム
の一時変数として設定変更することにより実行される。
【0020】ここで、本実施例に関わる技術的背景につ
いて説明する。図5はディジタルフィルタによって構成
されるローパスフィルタのゲイン及び位相特性を定性的
に示す(カットオフ周波数は便宜的にゲイン=0dBの
位置で示す)。このローパスフィルタの周波数伝達特性
は、前記時定数:TL ,ラプラス演算子:sとして、G
(s)=1/(1+TL s)で表され、ゲインは上下速
度信号のゲイン=|フィルタ出力/フィルタ入力|を表
し、位相は車体の上下加速度信号に対する上下速度信号
の位相遅れを表している。同図中、曲線aは理想的な積
分特性であり、−20dB/dec である。また、曲線b
はカットオフ周波数fC =f1 (本実施例では0.5Hz
程度≦f1 ≦2Hz程度)時のもので、バネ上制振重視の
通常特性である。更に、曲線cはカットオフ周波数fC
=f2 (本実施例では2Hz程度≦f2 ≦8Hz程度)時の
もので、乗心地重視の特性である。
【0021】このようにローパスフィルタのカットオフ
周波数をf1 からf2 に上げると、車体上下速度信号の
位相遅れが小さくなるから,位相遅れが−90°近傍と
なって減衰作用の働く周波数領域が高域側に移行し、乗
心地に支配的な周波数域(3〜8Hz)における制振効果
が高められる。この詳細については前述した特開平4−
201615号公報を参照されたい。
【0022】しかしながら常に乗心地を重視する制御を
行うと、旋回時や高速走行時等のように走行安定性を重
視すべき状況下において車両の挙動が不安定になる虞れ
がある。そこで本実施例では、車両走行状況や運転操作
状況等の夫々の状況に応じて乗心地を重視すべきか走行
安定性を重視すべきかを判断し、この判断結果に応じて
前記可変としたローパスフィルタのカットオフ周波数を
変更設定する。
【0023】次にこのような発明原理に基づいて前記マ
イクロコンピュータ内で行われる処理について説明す
る。このマイクロコンピュータ50のCPU58は、記
憶装置62に予め記憶された図6の処理を,一定時間
(例えば5〜10msec)毎且つ各輪毎にタイマ割込で実
施する。なお、この処理に対応するテーブルとして下記
表1に示す状況判断基準が記憶装置62に記憶されてい
る。
【0024】
【表1】
【0025】同図のステップS1において、CPU58
はA/D変換器79A〜79Dの出力信号,即ち車両走
行状況を検出するための車速センサ71の車速検出信
号,前後加速度センサ72の前後加速度検出信号,横加
速度センサ73の横加速度検出信号,ストロークセンサ
74のストローク検出信号をインターフェイス回路56
を介して読込む。
【0026】次いでステップS2に移行して、前記車両
走行状況検出センサ群の各検出信号から各車両走行状況
検出値を,予め設定された算出式に基づいて演算する。
次いでステップS3に移行して、A/D変換器79E〜
79Hの出力信号,即ち運転操作状況を検出するための
操舵角センサ75の操舵角検出信号,操舵角速度センサ
76の操舵角速度検出信号,アクセル開度センサ77の
アクセル開度検出信号,ブレーキランプSW78のブレ
ーキランプ検出信号をインターフェイス回路56を介し
て読込む。
【0027】次いでステップS4に移行して、前記運転
操作状況検出センサ群の各検出信号から各運転操作状況
検出値を,予め設定された算出式に基づいて演算する。
次いでステップS5に移行して、前記ステップS2及び
S4で演算された各状況検出値から前記表1に示すテー
ブルに基づいて,ローパスフィルタのカットオフ周波数
C (1or4Hz)を設定し、これを記憶装置62のRA
Mエリアに更新記憶してから,タイマ割込を終了してメ
インプログラムに復帰する。このカットオフ周波数fC
の設定に際しては、例えば夫々の状況検出値に対して設
定されるカットオフ周波数に適宜重み付けを行い、この
重み付けされたカットオフ周波数の平均値と予め設定さ
れた閾値との比較を行い、当該平均値が閾値より小さい
場合にはカットオフ周波数fC を1Hzに設定し、そうで
ない場合にはカットオフ周波数fC を4Hzに設定する。
このカットオフ周波数の設定方法はこれに限定されず、
適宜の方法を選定できる。
【0028】一方、マイクロコンピュータ50のCPU
58は、記憶装置62に予め記憶された図7aの処理
を,一定時間(例えば7.8msec)毎且つ各輪毎にタイ
マ割込で実施する。同図のステップS11において、C
PU58はA/D変換器51A〜51Dの出力信号,即
ち上下加速度センサ26FL〜26RRの検出信号G
ZFL 〜GZRRをインターフェイス回路56を介して読込
み、その信号値を上下加速度GFL〜G RRとして記憶装置
62のRAMエリアに書き込んだ後、ステップS12に
移行する。
【0029】前記ステップS12では、ローパスフィル
タの最新のカットオフ周波数fC の更新値を記憶装置6
2のRAMエリアから読み出して一時記憶した後,ステ
ップS13に移行する。なお、カットオフ周波数fC
ローパスフィルタの時定数T L を変化させることで変わ
るから、実際にはディジタルフィルタの一時変数を変化
させることで行われる。
【0030】前記ステップS13では、前記ステップS
12で読み出した最新のカットオフ周波数fC に設定さ
れたディジタルローパスフィルタを用いて、ステップS
11で読み込んだ上下加速度検出値を積分して車体の上
下速度VFL〜VRRを演算する。次いでステップS14に
移行して、前記ステップS11で求めた車体の上下加速
度GFL〜GRR,上下速度VFL〜VRRを記憶装置62のR
AMエリアに記憶し、タイマ割込を終了してメインプロ
グラムに復帰する。
【0031】また、マイクロコンピュータ50のCPU
58は、記憶装置62に予め記憶された能動型サスペン
ションのバウンス制御に関する図7bの処理を,一定時
間(例えば10msec)毎且つ各輪毎にタイマ割込で実施
する。同図のステップS21において、割込時点で記憶
装置62に記憶されている最新の上下速度VFL〜VRR
ワークエリアに読み出す。
【0032】次いでステップS22に移行して、記憶装
置62に記憶されている制御ゲインAを読み出す。次い
でステップS23に移行して、前記ステップS21,S
22の読出し値V FL〜VRR及びAを用いて、DV=A・
Z の演算式に基づいて制御指令値DVFL〜DVRRを演
算する。
【0033】次いでステップS24に移行して、前記制
御指令値DVFL〜DVRRをD/A変換器53A〜53D
に出力値、その後,タイマ割込を終了してメインプログ
ラムに復帰する。これにより、駆動回路54A〜54D
から圧力指令値DVに対応した指令電流iFL〜iRRが圧
力制御弁20FL〜20RRに各々出力され、油圧シリ
ンダ18FL〜18RRの作動圧Pが上下方向速度の大
小に応じて周知の如く制御され、バウンス減衰効果が得
られる。
【0034】ここで本実施例において、前記各状況検出
センサ群の中から車速センサで検出される車速検出値に
よって制御の切換えを行う場合について考察する。車速
センサで検出された車速検出値が大きい場合,即ち高速
走行時にあっては、前記表1に示すようにローパスフィ
ルタのカットオフ周波数は低域側に設定される。このと
きのカットオフ周波数fC を1Hzとした場合、上下加速
度が入力されてから制御力が発生されるまでのゲイン並
びに位相の出力応答特性は図8に示すようになる。そし
て同図に示すように,また前述した減衰作用の説明の如
く、2Hz前後の比較的低い周波数で位相遅れが−90°
となり、これにより本周波数領域で減衰作用が発生す
る。この2Hz程度の周波数領域はバネ上制振効果に支配
的な領域であるから、多少,路面のゴツゴツ感があって
も車両の走行安定性は高いと言え、車体の挙動が抑制さ
れて運転者にはむしろきびきびした感じが与えられる。
【0035】一方、車速センサで検出された車速検出値
が小さい場合,即ち低速走行時にあっては、前記表1に
示すようにローパスフィルタのカットオフ周波数は高域
側に設定される。このときのカットオフ周波数fC を4
Hzとした場合、図8のゲイン並びに位相の応答特性に示
すように、5Hz前後の周波数で位相遅れが−90°とな
り、これにより本周波数領域で減衰作用が発生する。こ
の5Hz前後の周波数領域は乗心地に支配的な領域である
から、微小振動が抑制されて車両の乗心地は向上し、特
に細かな凹凸路面等で良好な乗心地が得られる。
【0036】なお、本図において,カットオフ周波数f
C を低域側に設定した場合、制御力の定常ゲインが増加
しているのは、カットオフ周波数fC の減少に伴い時定
数T L (=(2πfC -1)が増加するためである。つ
まり、図4に基づいて説明したように,ローパスフィル
タの出力値に乗じられる時定数TL が増加することによ
り制御力の定常ゲインは増加する。これにより、低域側
に存在するバネ上共振を抑制するのに必要な大きな制御
力の出力を可能としている。
【0037】この他にも本実施例では、前記表1によれ
ば上下G,前後G,横G,ストローク等の車両走行状況
並びに操舵角,操舵角速度,アクセル開度,ブレーキラ
ンプSW等の運転操作状況に応じて、カットオフ周波数
を高域側に設定するか低域側に設定するか,即ち乗心地
を重視するか走行安定性を重視するかを判断(選定)可
能としてあるから、例えば前記カットオフ周波数設定の
際の,平均値の演算に用いる重みを適宜に選定すること
で、状況に応じたより細やかな制御が可能である。
【0038】以上より本実施例は本発明のうち請求項1
に係る能動型サスペンションに相当し、上下加速度セン
サ26FL〜26RR及び図7aのステップS11の処
理が上下加速度検出手段を構成し、図7aのステップS
12〜S14の処理が上下速度演算手段を構成し、図7
bのステップS21〜S24の処理及びD/A変換器5
3A〜53D,駆動回路54A〜54Dが指令値演算手
段を構成する。また、各センサ及びSW71〜78,A
/D変換器79A〜79H及び図6のステップS1〜S
4の処理が状況検出手段を構成し、図6のステップS5
の処理がカットオフ周波数変更手段を構成する。
【0039】なお、前記ローパスフィルタの設定カット
オフ周波数は車両の固有振動数やアクチュエータの応答
特性に応じて適切に設定される。また、本実施例では設
定カットオフ周波数を1Hzの低域側か4Hzの高域側かの
二者択一としたが、選択のレンジや段階値は適宜選定す
ればよく、例えば前記重み付け平均した値をそのまま,
即ちアナログ的に(現実的には非常に細かいステップと
なる)採用することも可能である。また、状況検出の対
象物理量には前記以外の物理量や制御量を用いることも
可能であるし、或いは前記のうちの一つ乃至複数だけを
対象としてもよい。
【0040】次に本発明の能動型サスペンションの第2
実施例を添付図面の図9乃至図12を用いて説明する。
本実施例において図2に示す車両構成並びに図3に示す
電気−油圧回路構成については、前記マイクロコンピュ
ータで行われる処理を除いて前記第1実施例と同様であ
る。
【0041】図9は本実施例の能動型サスペンションに
おいて、上下加速度に対してマイクロコンピュータ内及
び圧力制御弁で行われる処理をブロック図的に表したも
のである。まず、入力された上下加速度検出値に対して
は,前記図4のそれと同様にディジタルハイパスフィル
タによってオフセット分の除去が行われる。次いで、こ
のオフセット除去された上下加速度検出値は二つのディ
ジタルローパスフィルタに入力される。これらのディジ
タルローパスフィルタは,夫々,時定数TL1,TL2に相
当する一時変数を異ならせて、カットオフ周波数fC1
0.5Hz〜2Hz程度(具体的には1Hzに設定した)とし
た低域側ローパスフィルタと、カットオフ周波数fC2
4Hz〜8Hz程度(具体的には5Hzに設定した)とした高
域側ローパスフィルタとで構成される。夫々のディジタ
ルローパスフィルタでは前記上下加速度検出値の積分が
行われ、これに際して各カットオフ周波数に応じたゲイ
ン変動と位相遅れを伴う上下速度が演算される。そして
各ディジタルローパスフィルタの出力のうち,前記低域
側ローパスフィルタの出力に対しては時定数TL1を乗じ
た後、線形和比率αをゲインとするディジタルアンプに
おいて,当該線形和比率α(0≦α≦1とする)が乗算
される。一方、前記高域側ローパスフィルタの出力に対
しては時ているうTL2を乗じた後、線形和比率(1−
α)をゲインとするディジタルアンプにおいて,当該線
形和比率(1−α)が乗算される。更に各ディジタルア
ンプの出力は加算器で加算され、アンプのゲインが乗算
されて出力される。この出力値に対して,前記圧力制御
弁は所定の特性(図では一次遅れ系)で,油圧シリンダ
に制御力を付与する。このうち、前記ゲインα及び(1
−α)のディジタルアンプは夫々,そのゲインを可変と
してあり、具体的にはゲインを決定するプログラム内の
一時変数を設定変更することにより実行される。
【0042】ここで、本実施例に関わる技術的背景につ
いて説明する。前記図9のブロック図における低域側ロ
ーパスフィルタの出力応答特性と高域側ローパスフィル
タの出力応答特性については前述した通りである。ここ
では、夫々の出力に対して,ゲインを線形和比率α及び
(1−α)とするディジタルアンプ並びに加算器によっ
て線形和が演算される。従って、具体的に線形和比率α
を上昇すれば低域側ローパスフィルタ,即ちカットオフ
周波数を低域側としたローパスフィルタの出力応答特性
が大きく作用し,線形和比率αを下降すれば高域側ロー
パスフィルタ,即ちカットオフ周波数を高域側としたロ
ーパスフィルタの出力応答特性が大きく作用した車両上
下速度を得ることができる。カットオフ周波数fC の変
化に伴う能動型サスペンション応答特性は前記の通りで
あるから、この線形和比率α乃至(1−α)を変化させ
ることで,所望するサスペンション応答特性を得ること
ができる。
【0043】次に前記マイクロコンピュータ内で行われ
る具体的な処理について説明する。なお、ここでは前記
高域側ローパスフィルタのディジタルアンプのゲインと
して設定される線形和比率(1−α)は,他方の線形和
比率αを設定することで一意に設定されるものとする。
このマイクロコンピュータ50のCPU58は、記憶装
置62に予め記憶された図10の処理を,一定時間(例
えば5〜10msec)毎且つ各輪毎にタイマ割込で実施す
る。なお、この処理に対応するテーブルとして下記表2
に示す状況判断基準が記憶装置62に記憶されている。
【0044】
【表2】
【0045】同図のステップS41において、CPU5
8はA/D変換器79A〜79Dの出力信号,即ち車両
走行状況を検出するための車速センサ71の車速検出信
号,前後加速度センサ72の前後加速度検出信号,横加
速度センサ73の横加速度検出信号,ストロークセンサ
74のストローク検出信号をインターフェイス回路56
を介して読込む。
【0046】次いでステップS42に移行して、前記車
両走行状況検出センサ群の各検出信号から各車両走行状
況検出値を,予め設定された算出式に基づいて演算す
る。次いでステップS43に移行して、A/D変換器7
9E〜79Hの出力信号,即ち運転操作状況を検出する
ための操舵角センサ75の操舵角検出信号,操舵角速度
センサ76の操舵角速度検出信号,アクセル開度センサ
77のアクセル開度検出信号,ブレーキランプSW78
のブレーキランプ検出信号をインターフェイス回路56
を介して読込む。
【0047】次いでステップS44に移行して、前記運
転操作状況検出センサ群の各検出信号から各運転操作状
況検出値を,予め設定された算出式に基づいて演算す
る。次いでステップS45に移行して、前記ステップS
2及びS4で演算された各状況検出値から前記表2に示
すテーブルに基づいて,線形和比率αを設定し、これを
記憶装置62のRAMエリアに更新記憶してから,タイ
マ割込を終了してメインプログラムに復帰する。この線
形和比率αの設定に際しては、例えば夫々の検出値に対
して設定される線形和比率の値に適宜重み付けを行い、
この重み付けされた線形和比率の平均値と予め設定され
た閾値との比較を行い、当該平均値が存在する閾値間に
設定された線形和比率α=1,0.8,0.4,0の四
つの値に設定する。この線形和比率の設定方法はこれに
限定されず、適宜の方法を選定できる。
【0048】一方、マイクロコンピュータ50のCPU
58は、記憶装置62に予め記憶された図11aの処理
を,一定時間(例えば7.8msec)毎且つ各輪毎にタイ
マ割込で実施する。同図のステップS51において、C
PU58はA/D変換器51A〜51Dの出力信号,即
ち上下加速度センサ26FL〜26RRの検出信号G
ZFL 〜GZRRをインターフェイス回路56を介して読込
み、その信号値を上下加速度GFL〜G RRとして記憶装置
62のRAMエリアに書き込んだ後、ステップS52に
移行する。
【0049】前記ステップS52では、各ローパスフィ
ルタの出力に対する最新の線形和比率αの更新値を記憶
装置62のRAMエリアから読み出して一時記憶した
後,ステップS53に移行する。なお、各ディジタルア
ンプにおける線形和比率α,(1−α)は当該ディジタ
ルアンプのゲインに関与する一時変数を変化させること
で行われる。
【0050】前記ステップS53では、各ローパスフィ
ルタにおいて上下加速度を積分し、これに前記ステップ
S52で読み出した最新の線形比率α,(1−α)を乗
じた値を加算して車体の上下速度VFL〜VRRを演算す
る。次いでステップS54に移行して、前記ステップS
51で求めた車体の上下加速度GFL〜GRR,上下速度V
FL〜VRRを記憶装置62のRAMエリアに記憶し、タイ
マ割込を終了してメインプログラムに復帰する。
【0051】また、マイクロコンピュータ50のCPU
58は、記憶装置62に予め記憶された能動型サスペン
ションのバウンス制御に関する図11bの処理を,一定
時間(例えば10msec)毎且つ各輪毎にタイマ割込で実
施する。この処理は、具体的に前記図7bの処理と同様
である。同図のステップS61において、割込時点で記
憶装置62に記憶されている最新の上下速度VFL〜VRR
をワークエリアに読み出す。
【0052】次いでステップS62に移行して、記憶装
置62に記憶されている制御ゲインAを読み出す。次い
でステップS63に移行して、前記ステップS61,S
62の読出し値V FL〜VRR及びAを用いて、DV=A・
Z の演算式に基づいて制御指令値DVFL〜DVRRを演
算する。
【0053】次いでステップS64に移行して、前記制
御指令値DVFL〜DVRRをD/A変換器53A〜53D
に出力値、その後,タイマ割込を終了してメインプログ
ラムに復帰する。これにより、駆動回路54A〜54D
から圧力指令値DVに対応した指令電流iFL〜iRRが圧
力制御弁20FL〜20RRに各々出力され、油圧シリ
ンダ18FL〜18RRの作動圧Pが上下方向速度の大
小に応じて周知の如く制御され、バウンス減衰効果が得
られる。
【0054】ここで本実施例において、前記各状況検出
センサ群の中から車速センサで検出される車速検出値に
よって制御の切換えを行う場合について考察する。車速
センサで検出された車速検出値に応じて、前記表2に示
す線形和比率αは変更設定され、当該線形和比率αの値
に応じた,上下加速度が入力されてから制御力が発生さ
れるまでのゲイン並びに位相の応答特性は図12に示す
ようになる。そして同図に示すように、線形和比率αが
“1”に近づくに従って,即ちカットオフ周波数fC1
1Hzである低域側ローパスフィルタの出力応答特性が重
視されるに従って、2Hz前後のバネ上制振効果に支配的
な周波数領域で減衰作用が発生し、車両の走行安定性が
向上する。一方、線形和比率αが“0”に近づくに従っ
て,即ちカットオフ周波数fC2が5Hzである高域側ロー
パスフィルタの出力応答特性が重視されるに従って、6
Hz前後の乗心地に支配的な周波数領域で減衰作用が発生
し、微小振動が抑制されて車両の乗心地は向上する。し
かも、前記線形和比率αは0〜1間の多段階値に設定さ
れるから,例えば状況検出値の過渡的な変化に対して能
動型サスペンションの出力応答特性の急激な変動が小さ
く、車両の挙動が安定し易い。
【0055】なお、同図においてαが“1”に近づく程
制御力の定常ゲインが増加しているのは低域側ローパス
フィルタの出力に乗じられる低域側の時定数TL1(=
(2πfC1-1)の影響代が増すためである。つまり、
高域側の時定数TL2(=(2πfC2-1)よりも大きな
値となる低域側の時定数TL1が乗じられた値を主として
制御力が決定されるため、当該制御力の定常ゲインは増
加することになる。これにより低域側に存在するバネ上
共振を抑制するのに必要な大きな制御力の出力を可能と
している。
【0056】この他にも本実施例では、前記表2によれ
ば上下G,前後G,横G,ストローク等の車両走行状況
並びに操舵角,操舵角速度,アクセル開度,ブレーキラ
ンプSW等の運転操作状況に応じて線形和比率を設定可
能としてあるから、例えば前記線形和比率算出の際の平
均値の演算に用いる重みを適宜に選定することで状況に
応じたより細やかな制御が可能である。
【0057】以上より本実施例は本発明のうち請求項2
に係る能動型サスペンションに相当し、上下加速度セン
サ26FL〜26RR及び図11aのステップS51の
処理が上下加速度検出手段を構成し、図11aのステッ
プS52〜S54の処理が上下速度演算手段を構成し、
図11bのステップS61〜S64の処理及びD/A変
換器53A〜53D,駆動回路54A〜54Dが指令値
演算手段を構成する。また、図9に示す各ディジタルア
ンプ並びに加算器が線形和演算手段を構成し、各センサ
及びSW71〜78,A/D変換器79A〜79H及び
図10のステップS41〜S44の処理が状況検出手段
を構成し、図10のステップS45の処理が線形和比率
変更手段を構成する。
【0058】なお、前記各ローパスフィルタの設定カッ
トオフ周波数は車両の固有振動数やアクチュエータの応
答特性に応じて適切に設定される。また、本実施例では
線形和比率を四段階値に選択可能としたが、選択のレン
ジや段階値は適宜選定すればよく、例えば前記重み付け
平均した値をそのまま,即ちアナログ的に採用すること
も可能である。このとき、線形和比率を連続とすれば、
前記各状況検出値の過渡的な変化に対する出力応答特性
の変動をより一層円滑なものとすることができる。ま
た、状況検出には前記以外の物理量や制御量を用いるこ
とも可能であるし、或いは前記のうちの一つ乃至複数だ
けを対象としてもよい。
【0059】また、前記各実施例は、ローパスフィルタ
出力に,当該ローパスフィルタの時定数を乗ずる構成と
したが、本発明では前記時定数を乗ずることは必須では
なく、ローパスフィルタのみでもよい。また、本発明の
能動型サスペンションの作動流体は作動油に限定される
ことなく、気体を含む各種の流体を使用可能とする。
【0060】また、乗心地を重視する場合の前記各制御
ゲインの設定に関しては,前記特開平4−201615
号公報に記載される発明を転用することも可能である。
【0061】
【発明の効果】以上説明したように本発明の能動型サス
ペンションによれば、車両走行状況や運転操作状況等の
各状況に応じて、上下加速度から上下速度を演算するた
めのローパスフィルタのカットオフ周波数や,同じくカ
ットオフ周波数の異なるローパスフィルタの線形和の線
形和比率を変更することにより、能動型サスペンション
全体としての出力応答特性を走行安定性を重視したもの
と乗心地を重視したものに切換え制御可能とし、状況に
応じて乗心地性能と走行安定性を両立することができ
る。また、前記カットオフ周波数や線形和比率の設定変
更段階を密にするとか,或いは連続とすることにより、
状況の過渡的な変化に伴う前記サスペンションの出力応
答特性の急激な変動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の能動型サスペンションのクレーム対応
図であり、(a)は請求項1に係る能動型サスペンショ
ンを示し、(b)は請求項2に係る能動型サスペンショ
ンを示すものである。
【図2】本発明の能動型サスペンションの一例を示す概
略構成図である。
【図3】図2の能動型サスペンションのコントローラの
ブロック図である。
【図4】本発明の能動型サスペンションの第1実施例を
示す上下加速度に対する処理のブロック図である。
【図5】車体の上下速度信号のゲイン,位相を夫々示す
周波数特性図である。
【図6】図4の処理においてローパスフィルタのカット
オフ周波数を設定変更するプログラムのフローチャート
である。
【図7】図4の処理において上下加速度から指令値信号
を出力するプログラムのフローチャートである。
【図8】図4の処理において上下加速度入力から制御力
発生までのゲイン,位相の出力応答を示す周波数特性図
である。
【図9】本発明の能動型サスペンションの第2実施例を
示す上下加速度に対する処理のブロック図である。
【図10】図9の処理において複数のローパスフィルタ
の出力値の線形和比率を設定変更するプログラムのフロ
ーチャートである。
【図11】図9の処理において上下加速度から指令値信
号を出力するプログラムのフローチャートである。
【図12】図9の処理において上下加速度入力から制御
力発生までのゲイン,位相の出力応答を示す周波数特性
図である。
【符号の説明】
10は車体側部材 12は能動型サスペンション 16は車輪側部材 18FL〜18RRは油圧シリンダ 20FL〜20RRは圧力制御弁 26FL〜26RRは上下加速度センサ 30はコントローラ 50はマイクロコンピュータ 58はCPU 62は記憶装置 71は車速センサ 72は前後加速度センサ 73は横加速度センサ 74はストロークセンサ 75は操舵角センサ 76は操舵角速度センサ 77はアクセル開度センサ 78はブレーキランプSW
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 戸畑 秀夫 神奈川県横浜市神奈川区宝町2番地 日 産自動車株式会社内 (72)発明者 平原 道人 神奈川県横浜市神奈川区宝町2番地 日 産自動車株式会社内 (56)参考文献 特開 平4−201615(JP,A) 特開 平4−183625(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) B60G 17/015

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 車体側部材と車輪側部材との間に介装さ
    れた流体圧シリンダと、各流体圧シリンダの作動を指令
    値に応じて制御する制御弁と、車体の上下方向に発生す
    る加速度を検出する上下加速度検出手段と、この上下加
    速度検出手段の検出値に基づいて車体の上下方向の速度
    を演算する上下速度演算手段と、この上下速度演算手段
    の演算値に制御ゲインを乗じて前記指令値を演算し出力
    する指令値演算手段とを備えた能動型サスペンションに
    おいて、前記上下速度演算手段を,カットオフ周波数の
    可変なローパスフィルタで構成すると共に、車両走行状
    況や運転操作状況等の状況を検出する状況検出手段と、
    この状況検出手段で検出された状況から得られる,走行
    安定性を重視すべき状況か乗心地を重視すべき状況かに
    応じて,前記ローパスフィルタのカットオフ周波数を変
    更設定するカットオフ周波数変更手段を設けたことを特
    徴とする能動型サスペンション。
  2. 【請求項2】 車体側部材と車輪側部材との間に介装さ
    れた流体圧シリンダと、各流体圧シリンダの作動を指令
    値に応じて制御する制御弁と、車体の上下方向に発生す
    る加速度を検出する上下加速度検出手段と、この上下加
    速度検出手段の検出値に基づいて車体の上下方向の速度
    を演算する上下速度演算手段と、この上下速度演算手段
    の演算値に制御ゲインを乗じて前記指令値を演算し出力
    する指令値演算手段とを備えた能動型サスペンションに
    おいて、前記上下速度演算手段を,複数のローパスフィ
    ルタと,それらの出力の線形和を演算する線形和演算手
    段とで構成すると共に、車両走行状況や運転操作状況等
    の状況を検出する状況検出手段と、この状況検出手段で
    検出された状況から得られる,走行安定性を重視すべき
    状況か乗心地を重視すべき状況かに応じて,前記線形和
    演算手段の線形和比率を変更設定する線形和比率変更手
    段を設けたことを特徴とする能動型サスペンション。
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