JP2001047835A - 能動型サスペンション - Google Patents

能動型サスペンション

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JP2001047835A
JP2001047835A JP11227620A JP22762099A JP2001047835A JP 2001047835 A JP2001047835 A JP 2001047835A JP 11227620 A JP11227620 A JP 11227620A JP 22762099 A JP22762099 A JP 22762099A JP 2001047835 A JP2001047835 A JP 2001047835A
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control
transfer function
vehicle body
vibration
road surface
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JP11227620A
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English (en)
Inventor
Takeshi Kimura
健 木村
Shigeki Sato
佐藤  茂樹
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Nissan Motor Co Ltd
Original Assignee
Nissan Motor Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】いわゆる予見制御を実行するようになっている
能動型サスペンションの性能をさらに向上したい。 【解決手段】能動型サスペンションを制御するコントロ
ーラ30を、A/D変換器41と、パルス変換器42
と、路面起伏演算部43と、路面高さhL 、hR 及び上
下方向加速度検出値ZGFL 〜ZGRR を記憶する記憶部4
4と、路面高さhL、hR 及び上下方向加速度検出値Z
GFL 〜ZGRR に基づいて適応制御を実行して制御指令信
号PFL〜PRRを演算する指令信号演算部45と、制御指
令信号PFL、PFR、PRL、PRR及び上下方向加速度検出
値ZGFL 〜ZGRR との間の伝達関数をモデル化した伝達
関数フィルタC^を記憶した伝達関数フィルタ記憶部4
6と、制御指令信号PFL、PFR、PRL、PRRを指令電流
FL〜iRRに変換し出力する駆動回路47と、を備えた
構成とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、能動型サスペン
ションに関し、特に、走行中の車両前方等から車両振動
に影響を与える情報を検出し、その検出された情報に基
づいて能動的な制御力を発生することにより車両の振動
を低減する制御(いわゆる予見制御)を実行するように
なっている能動型サスペンションにおいて、その性能向
上を図ったものである。
【0002】
【従来の技術】走行中の車両前方の路面情報を検出し、
その情報に基づいてサスペンション特性を変更する従来
の技術として、特開平1−90811号公報に開示され
たものがある。この従来の技術は、路面起伏状態を検出
するセンサと、各輪サスペンション毎に対応してバネ上
・バネ下間に介在する油圧アクチュエータと、を備え、
センサが検出した路面起伏状態に応じた制御信号を、そ
のセンサ検出位置と各車輪との間の距離及びそのときの
車速に応じた時間だけ遅延させて各油圧アクチュエータ
に供給することにより、路面起伏に起因する車体振動を
低減させる、というものである。
【0003】また、前輪位置における車体振動を検出す
ることにより走行中の路面起伏状態を検出し、その路面
起伏状態に応じて後輪のサスペンション特性を変更する
技術として、特公昭49−2046号公報に開示された
ものがある。この従来の技術は、前輪位置での車体振動
を検出するセンサと、後輪サスペンション毎に対応して
バネ上・バネ下間に介在するアクチュエータと、を備
え、センサが検出した路面起伏状態に応じた制御信号
を、ホイールベース及びそのときの車速に応じた時間だ
け遅延させて後輪のアクチュエータに供給することによ
り、路面起伏に起因する車体振動を低減させる、という
ものである。なお、この従来の技術では、演算に要する
時間やアクチュエータの応答遅れ等(τ)を考慮するよ
うになっている。つまり、車速V、ホイールベースLか
ら演算される遅延時間は(L/V)であるが、これから
上記τを減じた(L/V−τ)を遅延時間とすることに
より、最適なタイミングでアクチュエータを制御でき
る、というものであった。
【0004】しかしながら、実際には、路面入力の性質
や温度等の環境条件によってもサスペンションの特性が
変化し、最適なタイミングも変化することがある。そこ
で、本出願人は、流体圧シリンダの作動流体の温度に応
じて遅延時間を補正するようにした能動型サスペンショ
ン(特開平5−319054号公報参照)、流体圧シリ
ンダの作動流体の圧力に応じて遅延時間を補正するよう
にした能動型サスペンション(特開平5−319064
号公報参照)、路面入力の周波数特性に応じて遅延時間
を補正するようにした能動型サスペンション(特開平7
−81364号公報参照)等を既に提案している。な
お、これら本出願人の先願に係る公開公報には、遅延時
間と共に又は遅延時間に代えて、流体圧シリンダ制御用
の圧力制御弁に対する圧力指令値を補正することも開示
されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】確かに、上記のように
本出願人が先に提案した遅延時間を補正する技術を適用
すれば、能動型サスペンションにおける予見制御のタイ
ミングをより的確に設定することができた。しかし、上
記遅延時間や圧力指令値を補正する上で考慮すべき要因
は、上記のような作動流体の温度、流体圧シリンダの圧
力、路面入力の周波数特性以外にも多数あることが判っ
てきているが、考慮すべき全ての要因を制御に取り込む
ために多数のセンサを設けて演算処理を行うのは極めて
困難であり、従って、常に最適な制御状態を維持するこ
とが困難であった。
【0006】本発明は、このような従来の技術が有する
未解決の課題に着目してなされたものであって、より的
確なタイミングで予見制御を実行することができる能動
型サスペンションを提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、請求項1に係る発明は、制御対象車輪と車体との間
に介装されたアクチュエータと、制御指令信号に応じて
前記アクチュエータを駆動制御する駆動手段と、前記制
御対象車輪より前方の路面起伏状態を検出又は推定し路
面起伏信号を生成する路面起伏検出手段と、前記車体の
所定位置における振動を検出し車体振動信号を生成する
車体振動検出手段と、前記路面起伏信号及び前記車体振
動信号に基づき前記車体の振動が低減するように前記制
御指令信号を生成し出力する制御手段と、を備え、前記
制御手段は適応制御を実行するようにした。
【0008】請求項2に係る発明は、上記請求項1に係
る発明である能動型サスペンションにおいて、前記制御
対象車輪は、車両の右前輪、左前輪、右後輪及び左後輪
であり、前記路面起伏検出手段は、前記右前輪及び左前
輪より前方の路面起伏状態を検出又は推定するようにし
た。請求項3に係る発明は、上記請求項1に係る発明で
ある能動型サスペンションにおいて、前記制御対象車輪
は、車両の右後輪及び左後輪であり、前記路面起伏検出
手段は、前輪位置における振動情報に基づいて前記路面
起伏信号を生成するようにした。
【0009】請求項4に係る発明は、上記請求項3に係
る発明である能動型サスペンションにおいて、前記振動
情報は、前記前輪位置におけるバネ下振動とした。ま
た、請求項5に係る発明は、上記請求項4に係る発明で
ある能動型サスペンションにおいて、前記路面起伏検出
手段は、前記前輪位置におけるバネ上及びバネ下間の上
下方向相対速度から、前記前輪位置におけるバネ上上下
方向加速度の積分値を減じることにより、前記バネ下振
動を求めるようにした。
【0010】そして、請求項6に係る発明は、上記請求
項1〜5に係る発明である能動型サスペンションにおい
て、前記車体振動検出手段は、前記制御対象車輪位置に
おけるバネ上の上下方向振動を検出するようにした。こ
れに対し、請求項7に係る発明は、上記請求項1〜5に
係る発明である能動型サスペンションにおいて、前記車
体振動検出手段は、車両乗員位置における車体の上下方
向振動を検出するようにした。
【0011】一方、請求項8に係る発明は、上記請求項
1〜7に係る発明である能動型サスペンションにおい
て、前記制御手段は、前記制御指令信号及び前記振動検
出手段間の伝達関数をモデル化した伝達関数フィルタ
と、前記路面起伏信号を前記伝達関数フィルタでフィル
タ処理することにより更新用基準信号を生成する更新用
基準信号生成手段と、フィルタ係数可変の適応ディジタ
ルフィルタと、前記路面起伏信号を前記適応ディジタル
フィルタでフィルタ処理することにより前記制御指令信
号を生成する制御指令信号生成手段と、前記更新用基準
信号及び前記車体振動信号に基づき適応アルゴリズムに
従って前記適応ディジタルフィルタのフィルタ係数を更
新するフィルタ係数更新手段と、を備えた。
【0012】また、請求項9に係る発明は、上記請求項
8に係る発明である能動型サスペンションにおいて、前
記適応ディジタルフィルタを、前記制御対象車輪毎に備
えることとした。そして、請求項10に係る発明は、上
記請求項8、9に係る発明である能動型サスペンション
において、前記駆動手段に対する第2の制御指令信号を
生成する、制御特性可変の第2の制御手段を備え、前記
第2の制御手段の制御特性に応じて前記伝達関数フィル
タの特性を変更するようにした。
【0013】請求項11に係る発明は、上記請求項10
に係る発明である能動型サスペンションにおいて、前記
第2の制御手段は、車体振動をフィードバックして前記
駆動手段に対する第2の制御指令信号を生成する手段で
ある。請求項12に係る発明は、上記請求項11に係る
発明である能動型サスペンションにおいて、前記第2の
制御手段はフィードバックのゲイン特性及び位相特性の
少なくとも一方が可変であり、前記ゲイン特性及び位相
特性の少なくとも一方に応じて前記伝達関数フィルタの
特性を変更するようにした。
【0014】請求項13に係る発明は、上記請求項1
1、12に係る発明である能動型サスペンションにおい
て、前記車体振動は、前記制御対象車輪位置におけるバ
ネ上の上下方向加速度、前記制御対象車輪位置における
バネ上及びバネ下間の上下方向相対速度、前記制御対象
車輪位置におけるバネ上及びバネ下間の上下方向相対変
位のうちの少なくとも一つとした。
【0015】また、請求項14に係る発明は、上記請求
項10に係る発明である能動型サスペンションにおい
て、前記第2の制御手段は、車両運動に基づいて前記駆
動手段に対する第2の制御指令信号を生成するようにし
た。請求項15に係る発明は、上記請求項14に係る発
明である能動型サスペンションにおいて、前記車両運動
は車体の前後方向加速度であり、前記第2の制御手段
は、前記前後方向加速度に基づいて車体のピッチング運
動が抑制されるような前記第2の制御指令信号を生成す
るようにした。
【0016】これに対し、請求項16に係る発明は、上
記請求項14に係る発明である能動型サスペンションに
おいて、前記車両運動は車体の横方向加速度であり、前
記第2の制御手段は、前記横方向加速度に基づいて車体
のロール運動が抑制されるような前記第2の制御指令信
号を生成するようにした。請求項17に係る発明は、上
記請求項10に係る発明である能動型サスペンションに
おいて、前記第2の制御手段は、目標車高可変の車高制
御手段であり、前記目標車高に応じて前記伝達関数フィ
ルタの特性を変更するようにした。
【0017】そして、請求項18に係る発明は、上記請
求項10に係る発明である能動型サスペンションにおい
て、前記アクチュエータは流体圧アクチュエータであ
り、前記第2の制御手段は、前記流体圧アクチュエータ
の作動中立圧を調整する中立圧力調整手段を備え、前記
作動中立圧に応じて前記伝達関数フィルタの特性を変更
するようにした。
【0018】さらに、請求項19に係る発明は、上記請
求項8〜18に係る発明である能動型サスペンションに
おいて、前記アクチュエータは流体圧アクチュエータで
あり、作動流体の温度を検出する作動流体温度検出手段
を備え、前記作動流体の温度に応じて前記伝達関数フィ
ルタの特性を変更するようにした。ここで、請求項1に
係る発明にあっては、路面起伏検出手段が検出又は推定
した路面起伏状態を表す路面起伏信号と、車体振動検出
手段が検出した車体(バネ上)所定位置の振動を表す車
体振動信号とに基づき、車体(バネ上)の振動が低減す
るように、制御手段が適応制御を実行し駆動手段に対す
る制御指令信号を生成し出力する。このため、車体振動
に影響を与える要因を直接検出しそれを考慮して制御指
令信号を補正する構成でなくても、車体の振動を良好に
低減し得る制御指令信号が生成されて駆動手段に供給さ
れる。
【0019】そして、請求項2に係る発明にあっては、
車両の四輪全てに対応してアクチュエータが設けられ、
路面起伏検出手段は、前輪より前方の路面起伏状態を検
出又は推定するから、前輪より前方の路面起伏情報が四
輪全てのアクチュエータの制御に用いられる。つまり、
前輪より前方の路面起伏情報と、これから前輪位置で発
生する振動との間には、高い相関関係があり、また、走
行中の車両は多くの場合前輪と後輪との通過位置は略一
致するため、前輪より前方の路面起伏情報と、これから
後輪位置で発生する振動との間にも、高い相関関係があ
る。よって、路面起伏信号が前輪より前方の路面起伏情
報を表していれば、制御手段において良好な適応制御が
実行可能である。
【0020】なお、この請求項2に係る発明における路
面起伏検出手段としては、車体の左右前端部に下向きに
配設されて車体及び路面間の距離を測定する超音波セン
サ等を含んで構成することができる。なお、かかる超音
波センサ等の距離測定手段の出力信号には、路面の起伏
情報の他に、車体(バネ上)の上下方向振動情報も含ま
れているため、正確な路面起伏信号を生成するために
は、超音波センサ等の出力信号から、バネ上の上下方向
振動分を差し引くことが望ましい。
【0021】また、請求項3に係る発明にあっては、左
右の後輪に対応してアクチュエータが設けられ、路面起
伏検出手段は、前輪位置における振動情報に基づいて路
面起伏信号を生成するから、前輪位置における振動情報
が、後輪のアクチュエータの制御に用いられる。つま
り、走行中の車両は多くの場合前輪と後輪との通過位置
は略一致するため、前輪位置で観測された振動と、これ
から後輪位置で発生する振動との間には、高い相関関係
があるといえる。よって、路面起伏信号が前輪位置にお
ける振動情報に基づいて生成されれば、制御手段におい
て良好な適応制御が実行可能である。
【0022】そして、請求項3に係る発明における前輪
位置における振動情報としては、例えば請求項4に係る
発明のように、前輪位置におけるバネ下振動が適用可能
である。かかるバネ下振動は、例えば請求項5に係る発
明のように、バネ上及びバネ下間の上下方向相対速度
(例えば、バネ上及びバネ下間のストローク変化速度)
から、バネ上上下方向加速度の積分値(つまり、バネ上
の上下方向速度)を減じることにより求めることができ
る。
【0023】一方、請求項6に係る発明にあっては、車
体振動検出手段は、制御対象車輪位置におけるバネ上の
上下方向振動を検出するため、その制御対象車輪位置に
おけるバネ上の上下方向振動を低減するように、制御手
段における制御内容が適応していく。これに対し、請求
項7に係る発明にあっては、車体振動検出手段は、車両
乗員位置における車体(例えば、乗員足元位置のフロア
部材)の上下方向振動を検出するため、その車両乗員位
置における上下方向振動を低減するように、制御手段の
制御内容が適応していく。
【0024】そして、請求項8に係る発明は、制御手段
の構成をより具体的にしたものであって、この場合の制
御系全体をブロック線図で表すと図1のようになる。な
お、図1中の各記号の意味は、下記の通りである。 x………路面起伏信号 W………適応ディジタルフィルタ P………制御指令信号(路面起伏信号xを適応ディジタ
ルフィルタWでフィルタ処理した結果) C………制御指令信号から車体振動検出手段に至る間
(駆動手段やアクチュエータを含む)伝達関数 C^……伝達関数Cをモデル化した伝達関数フィルタ R………更新用基準信号(路面起伏信号xを伝達関数フ
ィルタC^でフィルタ処理した結果) e………車体振動信号(車体振動検出手段の出力) G………車両の振動伝達経路(路面起伏が、車輪やサス
ペンション等を介して車体振動検出手段に至るまでの経
路)の伝達関数 なお、路面起伏検出手段としては、請求項2に係る発明
のように、前輪より前方の路面起伏状態を検出又は推定
する手段であってもよいし、請求項3に係る発明のよう
に、前輪位置における振動情報に基づいて路面起伏信号
を生成する手段であってもよく、いずれを採用しても発
明の本質的な部分は変わらないので、特に必要がある場
合を除き両者は区別しない。
【0025】そして、車体振動検出手段の出力である車
体振動信号eは、二つの経路(G、WC)それぞれを通
じた振動を合わせたものであるから、 e=(G+WC)x と表される。なお、車体振動信号eは“0”が望ましい
のであるから、この車体振動信号eは、誤差信号(エラ
ー信号)とも称す。
【0026】そして、適応アルゴリズムとして例えばL
MSアルゴリズムを考えた場合、そのLMSアルゴリズ
ムによれば、車体振動信号eを最小にする適応ディジタ
ルフィルタWは、評価関数Jとして、 J=e2 を定義し、その評価関数Jを適応ディジタルフィルタW
で微分した値が“0”、つまり、 として求めることができる。
【0027】かかる理論に基づき、評価関数Jを減少さ
せる方向、即ち、 W(更新後)=W(更新前)−αeCx ……(1) という式に更新式に従って、適応ディジタルフィルタW
のフィルタ係数を逐次更新していけば、適応ディジタル
フィルタWを最適値(車体振動信号eを“0”にできる
値)に近づける又は収束させることが可能となる。
【0028】なお、伝達関数Cは、制御出力系の伝達特
性であるから、実際に計測しなければその正確な値は判
らない。このため、実際の制御では、予め計測しておい
た伝達関数Cをモデル化した伝達関数フィルタC^を、
上記(1)式に用いるのが一般的となる。つまり、 W(更新後)=W(更新前)−αeC^x ……(2) とする。
【0029】このように、適応ディジタルフィルタWの
更新演算は、伝達関数フィルタC^で路面起伏信号xを
フィルタ処理してなる更新用基準信号R(=C^x)
と、車体振動検出手段によって検出された車体振動信号
eと、所定の収束係数αとから更新量αeC^xを算出
し、その更新量を、現在の適応ディジタルフィルタWか
ら減じる、という演算になる。
【0030】そして、この請求項8に係る発明にあって
は、車体振動信号eに応じて適応ディジタルフィルタW
がその車体振動を低減させる方向に変化するため、様々
な状態変化があったとしても、車体振動を効果的に低減
している状態を維持することが可能となる。なお、適応
ディジタルフィルタは、請求項9に係る発明のように、
制御対象車輪毎に個別に備えることが望ましい。これ
は、各制御対象車輪毎に伝達関数Cや伝達関数Gが異な
り適応ディジタルフィルタWの最適値が異なる、という
のが通常だからである。
【0031】一方、請求項10に係る発明は、上記した
制御手段における適応制御(予見制御)の他に、駆動手
段に対する別の制御指令信号(第2の制御指令信号)を
生成する制御を実行するようになっている発明であっ
て、その別の制御指令信号によって伝達関数Cが変化し
ても、適応制御に用いられる伝達関数フィルタC^の精
度ができるだけ劣化しないようにしたものである。
【0032】つまり、伝達関数Cは、駆動手段やアクチ
ュエータの特性を含んでいるため、例えばアクチュエー
タが油圧アクチュエータであればその減衰係数やバネ定
数が第2の制御指令信号を生成する第2の制御手段の制
御特性に応じて変化することがあり、伝達関数Cが変化
すれば、伝達関数フィルタC^が固定であるとその伝達
関数フィルタC^の精度がそれだけ劣化したことと同じ
である。そして、伝達関数フィルタC^の精度が劣化す
れば、それだけ適応制御の性能が低下することになる。
【0033】そこで、この請求項10に係る発明のよう
に、第2の制御手段の制御特性に応じて伝達関数フィル
タC^の特性(ゲイン特性や位相特性)が変更されれ
ば、伝達関数フィルタC^の精度劣化を抑制でき、制御
手段における適応制御の性能低下を抑制できるのであ
る。請求項11乃至請求項13に係る発明は、請求項1
0に係る発明における第2の制御手段を具体的にした例
であって、車体(バネ上)振動をフィードバックして第
2の制御指令信号を生成する、いわゆるスカイフック制
御を実行する第2の制御手段を備えている。
【0034】スカイフック制御を実行すると、バネ上振
動が低減されるように、そのバネ上振動に応じて例えば
サスペンションの減衰定数やバネ定数等が適宜制御され
るから、スカイフック制御を実行する第2の制御手段の
制御特性に応じて、アクチュエータの伝達関数が変化
し、伝達関数Cが変化する。例えば、第2の制御手段
が、車体振動として、制御対象車輪位置のバネ上上下方
向加速度を取り込み、その上下方向加速度をフィードバ
ックして第2の制御指令信号を生成する、いわゆるスカ
イフックダンパ制御を実行するようになっているものと
する。フィードバック制御としては、例えば積分制御等
が適用可能である。一方、制御手段においては、上述し
た適応ディジタルフィルタWを用いた予見制御が実行さ
れる。
【0035】そして、上記スカイフックダンパ制御が作
用していない状態での能動型サスペンションの運動方程
式は、 mz''+c(z' −r' )+k(z−r)=f m:車体質量 z:車体の上下変位 c:減衰定数 r:路面変位 k:バネ定数 f:制御力 「' 」は一次微分、「''」は二次微分を表す。 と考えることができ、この場合の伝達関数Cは、ラプラ
ス演算子sを用いて、 C=z/f =1/(ms2 +cs+k) となる(但し、路面入力が加わらない場合を想定してい
る。)。
【0036】一方、上記のようなスカイフックダンパ制
御も作用している場合には、サスペンションの運動方程
式は、 mz''+c(z' −r' )+k(z−r)=f+fS 但し、fS =−cs z' ,cs はフィードバック定数で
ある。となり、伝達関数Cは、 C=z/f =1/(ms2 +(c+cs )s+k) となる。
【0037】よって、上記のような伝達関数Cの変化を
考慮し、第2の制御手段の制御特性(上記説明の場合
は、スカイフックダンパ制御の特性)に応じて伝達関数
フィルタC^を変更すれば、それだけ適応制御の性能低
下を抑制できるのである。請求項12に係る発明は、請
求項11に係る発明をより具体的にしたものであって、
第2の制御手段におけるフィードバックのゲイン特性及
び位相特性の少なくとも一方が可変になっている場合で
ある。ゲイン特性等は、例えば、車速、前後加速度、横
加速度、バネ上上下加速度等に応じて可変にすることが
できる。また、請求項13に係る発明は、スカイフック
制御においてフィードバックする車体振動を具体的に特
定したものである。
【0038】そして、請求項14乃至請求項16に係る
発明は、請求項10に係る発明における第2の制御手段
を具体的にした他の例であって、例えば車体の前後方向
加速度(請求項15)や車体の横方向加速度(請求項1
6)のような車両運動に基づいて、車体姿勢の変化を抑
制するような制御を実行する第2の制御手段を備えてい
る。つまり、前後方向加速度や横方向加速度に応じて車
体姿勢変化を抑制するための制御を第2の制御手段が実
行するようになっていて、しかも、その第2の制御手段
の例えば制御ゲインが運転者の選択や車高等に応じて可
変になっている場合には、その制御ゲインが変化するこ
とにより伝達関数Cも変化するため、それを考慮して伝
達関数フィルタC^の特性を変更すれば、それだけ適応
制御の性能低下を抑制できるのである。
【0039】請求項17に係る発明は、請求項10に係
る発明における第2の制御手段を具体的にした他の例で
あって、目標車高となるように車高制御を行う車高制御
手段を備え、その車高制御における目標車高が可変にな
っている。つまり、目標車高が例えば運転者の選択や車
速等に応じて変化した場合、それに応じてアクチュエー
タの中立位置も変化するため、伝達関数Cが変化する。
よって、目標車高に応じて伝達関数フィルタC^の特性
を変更すれば、それだけ適応制御の性能低下を抑制でき
るのである。
【0040】請求項18に係る発明は、制御対象車輪に
設けられたアクチュエータが油圧アクチュエータ等の流
体圧アクチュエータであり、その流体圧アクチュエータ
の中立圧力を調整する中立圧力調整手段を備えている。
そして、流体圧アクチュエータの中立圧力が変化すれ
ば、伝達関数Cも変化するため、それを考慮して伝達関
数フィルタC^の特性を変更すれば、それだけ適応制御
の性能低下を抑制できるのである。
【0041】そして、請求項19に係る発明も、請求項
18に係る発明と同様に、制御対象車輪に設けられたア
クチュエータが油圧アクチュエータ等の流体圧アクチュ
エータである場合を前提としている。そして、作動流体
の温度が変化すると、その粘性等が変化して伝達関数C
も変化することに着目しており、作動流体の温度に応じ
て伝達関数フィルタC^の特性を変更するから、それだ
け適応制御の性能低下を抑制できるのである。
【0042】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
制御手段において適応制御を実行するようにしたため、
車体の振動を良好に低減し得る制御指令信号を適切なタ
イミングで駆動手段に供給することができるから、高性
能の予見制御を実行することができるという効果があ
る。
【0043】特に、請求項10〜19に係る発明にあっ
ては、伝達関数フィルタの特性を適宜変更するようにし
たため、制御指令信号及び振動検出手段間の伝達関数が
変化しても、適応制御の性能低下を抑制できるから、さ
らに良好な予見制御を実行することができるという効果
がある。
【0044】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面
に基づいて説明する。図2は、本発明の第1の実施の形
態を示す概略構成図であり、図中、10は車体側部材
を、11FL〜11RRは前左〜後右車輪を、12は能
動型サスペンションをそれぞれ示す。
【0045】能動型サスペンション12は、車体側部材
10と車輪11FL〜11RRの各車輪側部材14との
間に各々介装されたアクチュエータとしての油圧シリン
ダ18FL〜18RRと、これら油圧シリンダ18FL
〜18RRの作動圧を個別に調整する圧力制御弁20F
L〜20RRと、これら圧力制御弁20FL〜20RR
に所定圧力の作動油を供給側配管21Sを介して供給す
ると共に、圧力制御弁20FL〜20RRからの戻り油
を戻り側配管21Rを通じて回収する油圧源22と、こ
の油圧源22及び圧力制御弁20FL〜20RR間の供
給圧側配管21Sに介挿された蓄圧用のアキュムレータ
24F,24Rと、車速を検出してこれに応じたパルス
信号を出力する車速センサ26と、各車輪11FL〜1
1RRにそれぞれ対応する位置における車体の上下方向
加速度をそれぞれ個別に検出する上下方向加速度センサ
28FL〜28RRと、左右前輪の前方に位置するよう
に車体側部材10の車両前端部左右にそれぞれ固定さ
れ、車体及び路面間の距離を検出する路面センサ27L
及び27Rと、各センサ26,27L,27R及び28
FL〜28FRの検出値に基づき各圧力制御弁20FL
〜20RRに対する予見制御を行うコントローラ30
と、を備えている。
【0046】油圧シリンダ18FL〜18RRのそれぞ
れは、シリンダチューブ18aを有し、このシリンダチ
ューブ18aには、軸方向に貫通孔を有するピストン1
8cにより隔設された下側の圧力室Lが形成され、ピス
トン18cの上下面の受圧面積差と内圧とに応じた推力
を発生する。そして、シリンダチューブ18aの下端が
車輪側部材14に取付けられ、ピストンロッド18bの
上端が車体側部材10に取付けられている。また、圧力
室Lの各々は、油圧配管38を介して圧力制御弁20F
L〜20RRの出力ポートに接続されている。また、油
圧シリンダ18FL〜18RRの圧力室Lの各々は、絞
り弁32を介してバネ下振動吸収用のアキュムレータ3
4に接続されている。また、油圧シリンダ18FL〜1
8RRの各々のバネ上,バネ下相当間には、比較的低い
バネ定数であって車体の静荷重を支持するコイルスプリ
ング36が配設されている。
【0047】圧力制御弁20FL〜20RRのそれぞれ
は、スプールを摺動自在に内装した円筒状の弁ハウジン
グとこれに一体的に設けられた比例ソレノイドとを有す
る、従来周知の3ポート比例電磁減圧弁(例えば、特開
昭64−74111号公報参照)で構成されている。そ
して、比例ソレノイドの励磁コイルに供給する指令電流
i(指令値)を調整することにより、弁ハウジング内に
収容されたポペットの移動距離、即ちスプールの位置を
制御し、供給ポート及び出力ポート又は出力ポート及び
戻りポートを介して油圧源22と油圧シリンダ18FL
〜18RRとの間で流通する作動油を制御できるように
なっている。
【0048】ここで、励磁コイルに加えられる指令電流
i(:iFL〜iRR)と圧力制御弁20FL(〜20R
R)の出力ポートから出力される制御圧Pとの関係は、
図3に示すように、ノイズを考慮した最小電流値iMIN
のときには最低制御圧PMIN となり、この状態から電流
値iを増加させると、電流値iに比例して直線的に制御
圧Pが増加し、最大電流値iMAX のときには油圧源22
の設定ライン圧に相当する最高制御圧PMAX となる。こ
の図3で、iN は中立指令電流,PN は中立制御圧であ
る。
【0049】前記上下方向加速度センサ28FL〜28
RLのそれぞれは、図4に示すように、上下方向加速度
FL〜GRRが零であるときに零の電圧、上方向の加速度
FL〜GRRを検出したときにその加速度値に応じた正の
アナログ電圧、下方向の加速度GFL〜GRRを検出したと
きに、その加速度値に応じた負のアナログ電圧でなる車
体上下方向加速度検出値ZGFL 〜ZGRR を出力するよう
になっている。ここでは、上下方向加速度GFL〜GRR
対して上下方向加速度検出値ZGFL 〜ZGRR は何らの係
数も介さない(即ち係数が“1”である)リニアな関数
であるとして,この上下方向加速度検出値ZGFL 〜Z
GRR を上下方向加速度GFL〜GRRと同等のものとしてい
る。
【0050】また、前記路面センサ27L及び27Rの
それぞれは、図5に示すように、車体側部材10の車両
前端部左右位置と路面との間の上下方向の相対距離を検
出するために、これら路面センサ27L及び27Rから
は、前記相対距離が予め設定された目標車高に相当する
所定距離に一致するときに零の中立電圧、相対距離が前
記所定距離よりも小さくなるとその偏差に応じた正の電
圧、相対距離が前記所定距離よりも大きくなるとその偏
差に応じた負の電圧でなる距離検出値dL 及びdR を出
力するようになっている。ここでは、前記相対距離に対
して距離検出値dL 及びdR は何らの係数も介さない
(即ち係数が“1”である)リニアな関数であるとし
て,この距離検出値dL 及びdR を前記相対距離と同等
のものとしている。なお、路面センサ27L及び27R
としては、超音波を利用したもの、レーザーを利用した
もの等が適用可能である。
【0051】そして、コントローラ30は、実際にはマ
イクロコンピュータや必要なインタフェース回路等から
構成されていて、各種演算処理はソフトウェアによって
実現されているが、その構成を機能ブロック図で表すと
図6のようになる。即ち、コントローラ30は、上下方
向加速度検出値ZGFL 〜ZGRR 及び距離検出値dL ,d
R をディジタル値に変換するA/D変換器41と、車速
センサ26から供給されるパルス信号を速度値(車速)
Vに変換するパルス変換器42と、を備えていて、これ
らを通じて外部の信号が供給されるようになっている。
【0052】A/D変換器41でディジタル値に変換さ
れた上下方向加速度検出値ZGFL 〜ZGRR 及び距離検出
値dL ,dR は、路面起伏演算部43に供給されるよう
になっている。路面高さ演算部43は、入力される各検
出値に基づき、路面センサ27L及び27Rの配設位置
における路面高さhL 、hR を、順次演算するようにな
っている。路面高さ演算部43における具体的な演算内
容については、後述する。
【0053】そして、路面高さ演算部43が演算した路
面高さhL 、hR と、A/D変換器41でディジタル値
に変換された上下方向加速度検出値ZGFL 〜ZGRR
は、記憶部44に供給されそこに記憶されるようになっ
ている。記憶部44は、後述の適応処理に必要な個数の
路面高さhL 、hR 及び上下方向加速度検出値ZGFL
GRR を記憶するのに充分な容量を有したメモリであ
り、それら記憶した路面高さhL 、hR 及び上下方向加
速度検出値ZGFL 〜ZGRR を、適応処理に必要なタイミ
ングで制御指令信号演算部45に供給するようになって
いる。
【0054】制御指令信号演算部45には、路面高さh
L 、hR 及び上下方向加速度検出値ZGFL 〜ZGRR の他
に、パルス変換器42から車速信号Vも供給されるよう
になっている。また、コントローラ30内には、予め実
験やシミュレーション等を行うことにより求められた伝
達関数CFL、CFR、CRL、CRRをモデル化してなる伝達
関数フィルタCFL^、CFR^、CRL^、CRR^を記憶し
た伝達関数フィルタ記憶部46が設けられていて、制御
指令信号演算部45は、その伝達関数フィルタ記憶部4
6から伝達関数フィルタCFL^〜CRR^を適宜読み込め
るようになっている。
【0055】なお、上記伝達関数CFL、CFR、CRL、C
RRのそれぞれは、制御指令信号演算部45で生成され出
力された制御指令信号PFL、PFR、PRL、PRRと、上下
方向加速度センサ28FL〜28RLの出力との間の伝
達関数であり、制御指令信号PFL、PFR、PRL、PRR
指令電流iFL〜iRRに変換し出力する駆動回路47、そ
の指令電流iFL〜iRRに応じて作動する圧力制御弁20
FL〜20RR、並びに油圧シリンダ18FL〜18RR等
の特性を含んでいる。
【0056】ここで、路面高さ演算部43における具体
的な演算内容について説明する。即ち、路面センサ27
F、27Rの出力である距離検出値dL ,dR は、路面
の高さ情報だけではなく、その路面センサ27F、27
R配設位置における車体側部材10の上下方向の振動情
報も含んでいる。そこで、路面高さ演算部43において
は、下記式に従って路面高さhL 、hR を演算するよう
になっている。
【0057】 hL =zSL+dL ' ……(3) hR =zSR+dR ' ……(4) 但し、dL ' 、dR ' は、それぞれ距離検出値dL ,d
R の微分値(速度値)であり、また、zSL、zSRは、路
面センサ27F、27R配設位置における車体側部材1
0の上下方向速度であって、下記式に従って演算される
路面センサ27F、27R配設位置における車体側部材
10の上下方向加速度zGL、zGRを、積分することによ
り求められる。なお、下記式中、LS は路面センサ27
F、27R配設位置と前輪側車軸(厳密には、前側の加
速度センサ28FL,28FR)との間の車両前後方向
距離、Lはホイールベース(厳密には、前側の加速度セ
ンサ28FL,28FRと後側の加速度センサ28R
L,28RRとの間の車両前後方向距離)である。
【0058】 zGL=ZGFL +(ZGFL −ZGRL )×LS /L zGR=ZGFR +(ZGFR −ZGRR )×LS /L 次に、制御指令信号演算部45における演算内容につい
て説明する。即ち、制御指令信号演算部45では、先
ず、車速検出値Vに基づき、制御指令信号PFL〜PRR
演算する処理を実行するか、実行しないかを決定する。
ここでは、車速検出値Vが、下限値V0 と上限値V1
の間にある場合にのみ、制御指令信号PFL〜PRRを演算
する処理を実行し、その範囲外にある場合には、適応デ
ィジタルフィルタWをクリアして制御指令信号PFL〜P
RRを生成せず、指令電流iFL〜iRRを中立指令電流iN
に固定するようになっている。
【0059】車速検出値Vが下限値V0 未満の場合に制
御指令信号PFL〜PRRを生成しない理由は、車両が低速
で走行している場合には、路面センサ27F、27R配
設位置における路面起伏情報の検出してから、その路面
起伏情報に応じた振動が車輪及びサスペンションを通じ
て車体側部材に入力されるまでの間の時間差が非常に大
きく、そのような大きな時間差を模擬するような適応デ
ィジタルフィルタWを適応演算によって求めることが困
難になるためである。
【0060】また、車速検出値Vが上限値V1 を越える
場合に制御指令信号PFL〜PRRを生成しない理由は、車
両が高速で走行している場合には、逆に上記時間差が非
常に小さく、制御演算が間に合わなくなり、制御指令信
号PFL〜PRRを生成することにより却って車体側振動が
悪化する可能性があるからである。そして、制御指令信
号演算部45は、車速検出値Vが上記範囲(V0
1 )内にある場合に制御指令信号PFL〜PRRを生成す
るのであるが、かかる制御指令信号PFL〜PRRを生成す
るための処理は、大きく別けて、適応ディジタルフィル
タWを用いて制御指令信号PFL〜PRRを生成する処理
と、その適応ディジタルフィルタWの各フィルタ係数W
i を適応アルゴリズムとしてのLMSアルゴリズムに従
って更新する処理とから構成されている。
【0061】適応ディジタルフィルタWは複数J個のフ
ィルタ係数Wj (j=0、1、2、…、J−1)を構成
要素としたディジタルフィルタである。なお、適応ディ
ジタルフィルタWは、油圧シリンダ18FL〜18RR
毎に(適応ディジタルフィルタWFL、WFR、WRL、WRR
という具合に)個別に備えられているが、特に区別する
必要がない場合には、適応ディジタルフィルタWとして
説明する。また、伝達関数フィルタC^FL〜C^RRにつ
いても、特に区別する必要がない場合には、伝達関数フ
ィルタC^として説明する。
【0062】そして、低減したい振動(この実施の形態
では、各車輪位置におけるバネ上振動)に相関の高い信
号(基準信号)を、適応ディジタルフィルタWでフィル
タ処理することにより制御指令信号PFL〜PRRを生成す
るのであるが、ここでは、上記基準信号として、制御指
令信号PFL、PRLの生成には路面高さhL を、制御指令
信号PFR、PRRの生成には路面高さhR を、それぞれ用
いる。
【0063】つまり、記憶部44には、路面高さhL
R のそれぞれが、現在から過去の所定時点に至る間の
所定個数分記憶されているから、その路面高さhL 、h
R の最新の値を基準信号としての路面起伏信号xの最後
の要素x(I−1)とし、その一つ前の路面高さhL
R を路面起伏信号xの最後から二番目の要素x(I−
2)とし、という具合に定めていて、最新の値から(I
−1)個前の路面高さhL 、hR を路面起伏信号xの一
番目の要素x(0)とするようになっている。従って、
路面起伏信号xは、図7(2)に示すように時間関数と
して表される信号となる。なお、Iは、伝達関数フィル
タC^のタップ数であり、伝達関数Cを測定する場合の
インパルス応答の残響時間をサンプリング・クロックの
間隔Δtで割ることにより求められる。
【0064】上記のような適応ディジタルフィルタW
で、上記のような路面起伏信号xをフィルタ処理すると
いうことは、畳み込み演算をするということであるか
ら、そのフィルタ処理の結果である信号yは、下記のよ
うになる。 このようにして求められた信号y(yFL、yFR、yRL
RR)が、制御指令信号PFL〜PRRとして駆動回路47
に出力される。
【0065】これに対し、LMSアルゴリズムに従った
適応ディジタルフィルタWの更新処理は、先ず、更新用
基準信号Rの演算が必要であり、更新用基準信号Rは、
上記(2)式及びその説明からも明らかなように、路面
起伏信号xを、伝達関数フィルタC^でフィルタ処理し
た値であり、伝達関数フィルタC^は、伝達関数Cをモ
デル化したものであり、ここでは時間領域の演算である
から、図7(1)に示すように時間関数としてのインパ
ルス応答で伝達関数Cをモデル化して、伝達関数フィル
タC^としている。よって、路面起伏信号xを伝達関数
フィルタC^でフィルタ処理するということは、畳み込
み演算をするということであるから、更新用基準信号R
は下記式に従って演算される。なお、C^(i)は、伝
達関数フィルタC^のフィルタ係数であり、i=0、
1、2、…、I−1である。
【0066】 そして、適応ディジタルフィルタWの更新演算には、上
記(2)式からも判るように、上記更新用基準信号Rの
他に、車体振動信号(エラー信号)eと、収束係数αと
が必要であるが、収束係数αは、制御の発散を招かない
範囲で且つ最適値への収束速度がある程度確保される値
をシミュレーション等の結果に基づいて予め決定してお
く。また、車体振動信号eには、上下方向加速度検出値
GFL 〜ZGRR を適用する。ただし、左前輪11FL用
の適応ディジタルフィルタWFLの更新演算には、車体振
動信号eとして上下方向加速度検出値ZGFL を用い、右
前輪11FR用の適応ディジタルフィルタWFRの更新演
算には、車体振動信号eとして上下方向加速度検出値Z
GFR を用い、左後輪11RL用の適応ディジタルフィル
タWRLの更新演算には、車体振動信号eとして上下方向
加速度検出値ZGRLを用い、右後輪11RR用の適応デ
ィジタルフィルタWRRの更新演算には、車体振動信号e
として上下方向加速度検出値ZGRR を用いる。
【0067】よって、適応ディジタルフィルタWのフィ
ルタ係数Wj の更新式は、下記のようになる。なお、下
記式の右辺のWj (n)は、更新前のj番目のフィルタ
係数であり、下記式の左辺のWj (n+1)は、更新後
のj番目のフィルタ係数である。 Wj (n+1)=Wj (n)−α・e・R(J−I−j) ……(7) つまり、制御指令信号演算部45では、上記(7)式に
従って適応ディジタルフィルタWを逐次更新する一方
で、その適応ディジタルフィルタWと路面起伏信号xと
を上記(5)式に従って畳み込むことにより信号yFL
FR、yRL、yRRを演算し、それらを制御指令信号PFL
〜PRRとして駆動回路47に出力するようになってい
る。
【0068】次に、本実施の形態の動作を、コントロー
ラ30内における処理の概要を示すフローチャートであ
る図8に従って説明する。先ず、ステップ101におい
て、各センサから供給される上下方向加速度検出値Z
GFL 〜ZGRR 、距離検出値dL 、dR 、車速検出値Vの
それぞれを、A/D変換器41或いはパルス変換器42
を介して読み込む。
【0069】次いで、ステップ102に移行し、上記
(3)式、(4)式に従って、路面高さhL 、hR を演
算し、演算された路面高さhL 、hR は、過去に演算さ
れた値とともに、所定の記憶領域に記憶される。なお、
ステップ101で読み込んだ上下方向加速度検出値Z
GFL 〜ZGRR も、過去に読み込まれた検出値とともに、
所定の記憶領域に記憶される。
【0070】そして、ステップ103に移行し、ステッ
プ101で読み込んだ車速検出値Vが、所定範囲V0
1 内にあるか否かを判定する。この判定が「NO」の
場合には、上述した理由から制御指令信号PFL〜PRR
出力を行わないこととし、ステップ104に移行して適
応ディジタルフィルタWをクリア(フィルタ係数Wj
0にする)とともに、ステップ105に移行して各制御
指令信号PFL〜PRRを0にする。ステップ104で適応
ディジタルフィルタWをクリアするのは、次にステップ
103の判定が「YES」となって予見制御が実行され
る状況になった場合、適応ディジタルフィルタWが残っ
ていても、却ってバネ上振動を悪化させる制御力が発生
する可能性が高いからである。
【0071】一方、ステップ103の判定が「YES」
の場合には、ステップ106に移行し、上記(6)式に
従って更新用基準信号Rを演算し、次いでステップ10
7に移行し、上記(7)式に従って適応ディジタルフィ
ルタWのフィルタ係数Wj を更新する。なお、このステ
ップ107では、全ての適応ディジタルフィルタWFL
RRの全てのフィルタ係数Wj を更新することが望まし
いが、演算時間が間に合わないような場合には、今回の
ステップ107の処理では適応ディジタルフィルタ
FL、WFRのフィルタ係数を更新し、次回ステップ10
7の処理では適応ディジタルフィルタWRL、WRRのフィ
ルタ係数を更新する、といった具合に複数回に分けて全
フィルタ係数を更新するようにしてもよい。
【0072】ステップ107の処理を終えたら、ステッ
プ108に移行し、上記(5)式に従って信号yFL〜y
RRを演算し、次いでステップ109に移行して、それら
信号yFL〜yRRを制御指令信号PFL〜PRRとする。そし
て、ステップ105又はステップ109から、ステップ
110に移行し、制御指令信号PFL〜PRRを出力する。
ステップ110の処理を終えたら、今回の図8の処理を
終了し、次のサンプリング・クロックのタイミングで再
びステップ101以降の処理を実行する。
【0073】この図8の処理が繰り返し実行されると、
コントローラ30からは、指令電流iFL〜iRRが所定の
サンプリング・クロックの間隔で次々と各圧力制御弁2
0FL〜20RRの励磁コイルに供給されるが、制御が
開始された直後は、適応ディジタルフィルタWFL〜WRR
のフィルタ係数Wj は最適値に収束しているとは限らな
いので、バネ上振動が低減されない場合もある。
【0074】しかし、制御が開始されてからある程度時
間が経過すると、適応ディジタルフィルタWFL〜WRR
フィルタ係数Wj が上記(7)式に従って更新される結
果、最適値に収束又は近づくため、制御指令信号PFL
RRはバネ上振動を低減するのに適切な制御信号とな
る。この結果、バネ上振動が低減し、車両乗り心地がさ
らに良好になる。
【0075】つまり、能動型サスペンションにおける従
来の予見制御では、路面起伏情報に基づいて制御指令信
号PFL〜PRRを演算する一方で、その路面起伏情報の検
出位置と制御力の発生位置との間の距離や、車速検出値
V等に応じた遅延時間に基づいて制御指令信号PFL〜P
RRの適切な出力タイミングをも演算し、その制御指令信
号PFL〜PRRを出力する必要があるのに対し、本実施の
形態の上記のような予見制御であれば、適応ディジタル
フィルタWFL〜WRRが自動的に更新されて適切なタイミ
ングで適切な大きさの制御指令信号PFL〜PRRを出力す
ることができるのである。
【0076】図9は、本実施の形態における予見制御を
実行することによりバネ上振動が低減される様子を示す
波形図であり、図9(1)は、時速30kmで走行した
場合に取り込まれた路面起伏を示している。そして、横
軸の時刻が0の時点で、適応制御による予見制御を開始
していて、制御力の波形である図9(2)に示すよう
に、徐々に制御力が大きくなっていることが判る。これ
は、制御開始直後は適応ディジタルフィルタWがさほど
成長していないため制御力が小さいが、ある程度の時間
が経過して適応ディジタルフィルタWが成長した後には
適切な大きさの制御力が発生するからである。そして、
図9(3)は、バネ上振動(変位)を示しており、細実
線は予見制御を実行しなかった非制御時を、太実線は本
実施の形態と同様の適応制御による予見制御を実行した
制御時を、それぞれ示している。この図9からも、本実
施の形態のような適応制御による予見制御が極めて有効
であることが判る。
【0077】ここで、本実施の形態では、駆動回路47
が駆動手段に対応し、路面センサ27L,27R及び路
面起伏演算部43が路面起伏検出手段に対応し、上下方
向加速度センサ28FL〜28RRが車体振動検出手段
に対応し、制御指令信号演算部45が制御手段に対応
し、車輪11FL〜11RRのそれぞれが制御対象車輪
であり、ステップ106における処理が更新用基準信号
生成手段に対応し、ステップ108の処理が制御指令信
号生成手段に対応し、ステップ107における処理がフ
ィルタ係数更新手段に対応する。
【0078】図10は本発明の第2の実施の形態を示す
図であって、上記第1の実施の形態における図8と同様
にコントローラ30内における処理の概要を示すフロー
チャートであり、その図8における処理と同様の処理に
は同じ符号を付し、その重複する説明は省略する。ま
た、全体的な構成等は上記第1の実施の形態と同様であ
るため、その図示及び説明は省略する。
【0079】即ち、上記第1の実施の形態では、車速検
出値Vが、所定範囲V0 〜V1 内にある場合のみ予見制
御を実行し、その範囲外にある場合には予見制御を実行
しない、という具合に、下限値V0 及び上限値V1 を境
として制御のオン・オフを切り換えるようにしている
が、本実施の形態では、その制御のオン・オフの切り換
えを滑らかにしている。
【0080】具体的には、図10に示すように、ステッ
プ101、102の処理を終えたらステップ201に移
行し、車速検出値Vに対して図11に示すような関係を
有する係数βを算出する。係数βは、車速検出値Vが所
定範囲V0 〜V1 外にある場合には“1”をとる一方、
車速検出値Vが下限値V1 を越えると同時に比較的急峻
に低下して“0”になり、また、上限値V1 の少し手前
で“0”から立ち上がって急峻に増加し上限値V1 に達
した時点で“1”になる、という係数である。
【0081】そして、ステップ106を経てステップ1
07に移行し、適応ディジタルフィルタWのフィルタ係
数Wj を更新するのであるが、ここでは、上記(7)式
に代えて、下記の(8)式に従って更新演算を行う。 Wj (n+1)=Wj (n)−α・e・R(J−I−j)−βy ……(8) 上記(8)式は、上記(7)式と比較して、右辺第3項
が追加されている点が相違しているが、その右辺第3項
は、係数βと、上記(5)式で演算された信号y(つま
り、制御指令信号PFL〜PRR)とを掛け合わせたものを
減じる、という項であるから、係数βが“0”であれ
ば、上記(8)式は上記(7)式と同じである。
【0082】しかし、係数βが0より大きければ、上記
(8)式の右辺第3項は、係数β及び信号yの大きさに
応じた強さで、フィルタ係数Wj を原点(0)に近づけ
る作用を発揮する補正項となる。よって、係数βを図1
1に示すように車速検出値Vに応じて決定すれば、車速
検出値Vが所定範囲V0 〜V1 外にある場合には、フィ
ルタ係数Wj は極短い時間で原点付近に張り付くから、
制御指令信号PFL〜PRRは殆ど出力されない。これに対
し、車速検出値Vが低速側から増加して下限値V0 を越
えるか、又は、車速検出値Vが高速側から減少して上限
値V1 を下回ると、フィルタ係数Wj が徐々に成長する
から、制御指令信号PFL〜PRRは段々と出力されるよう
になり、係数βが“0”になる範囲では上記第1の実施
の形態の場合と同様に充分に大きい制御指令信号PFL
RRが出力されるようになる。
【0083】なお、路面センサ27F、27R及び前輪
11FL、11FR間の距離と、路面センサ27F、2
7R及び後輪11RL、11RR間の距離とを比較する
と、前者<後者であるから、低速走行時の制御は、後輪
側に比べて前輪側の余裕は大きいし、逆に、高速走行時
の制御は、前輪側に比べて後輪側の余裕は大きい。そこ
で、係数βを、前輪側の係数βf 、後輪側の係数βr
して別々に用意し、これら係数βf 、係数βr を、図1
2に示すように車速検出値Vに応じて決定してもよい。
即ち、図12に示す例では、前輪側の下限値V0fを後輪
側の下限値V0rよりも小さく、もって前輪側の予見制御
は後輪側に比べてより低速側でも働くようにし、また、
後輪側の上限値V1rを前輪側の上限値V1fよりも大きく
し、もって後輪側の予見制御は前輪側に比べてより高速
側でも働くようにしている。
【0084】その他の作用効果は、上記第1の実施の形
態と同様である。図13は、本発明の第3の実施の形態
を示す図である。なお、上記第1の実施の形態と同様の
構成には同じ符号を付し、その重複する説明は省略す
る。また、コントローラ30の構成及び処理の概要は、
基本的に上記第1の実施の形態と同様であるため、相違
する点のみ詳細に説明する。
【0085】即ち、上記第1の実施の形態では、前輪1
1FL、11FRよりもさらに前方の車体側部材10に
路面センサ27F、27Rを設け、その路面センサ27
F、27Rの距離検出値dL 、dR と上下方向加速度検
出値ZGFL 〜ZGRR とに基づいて路面高さhL 、hR
演算し、その路面高さhL 、hR に基づき、前輪側及び
後輪側の能動型サスペンション12において予見制御を
実行するようにしていたが、本実施の形態では、路面セ
ンサ27F、27Rに代えて、左右の前輪11FL、1
1FR位置に対応してバネ上及びバネ下間の上下方向距
離を測定するストロークセンサ50FL、50FRを設
けていて、それらストロークセンサ50FL、50FR
のストローク検出値SFL、SFRと上下方向加速度検出値
GFL 、ZGFR とに基づいて前輪11FL、11FRの
振動情報を検出するようになっている。
【0086】ストロークセンサ50FL、50FRは、
図5に示した路面センサ27L及び27Rの出力特性と
同様に、バネ上及びバネ下間の相対距離が予め設定され
た目標車高に相当する所定距離に一致するときに零の中
立電圧、相対距離が前記所定距離よりも小さくなる(縮
む)とその偏差に応じた正の電圧、相対距離が前記所定
距離よりも大きくなる(伸びる)とその偏差に応じた負
の電圧でなるストローク検出値SFL及びSFRを出力する
ようになっている。
【0087】そして、コントローラ30の制御指令信号
演算部45は、路面起伏信号xF 、xR として前輪11
FL、11FRの振動情報を用いることにより、適応処
理を実行し、後輪側の能動型サスペンション12におけ
る予見制御を実行するようになっている。具体的には、
本実施の形態では、図14に示すように、コントローラ
30は路面高さ演算部43の代わりに、路面起伏検出手
段として、前輪振動演算部48を有していて、かかる前
輪振動演算部48では、上記前輪11FL、11FRの
振動情報として、前輪11FL、11FR位置における
バネ下振動を演算するようになっている。
【0088】さらに具体的には、前輪振動演算部48
は、前輪11FL、11FR位置におけるバネ下振動と
して、ストロークセンサ50FL、50FRが検出した
ストローク検出値SFL、SFRと、前輪側の上下方向加速
度センサ28FL、28FRが検出した上下方向加速度
検出値ZGFL 、ZGFR とに基づいて、下記式に従って、
バネ下の上下方向速度zUFL ' 、zUFR ' を演算するよ
うになっている。
【0089】zUFL ' =SFL' +zSFLUFR ' =SFR' +zSFR ただし、SFL' 、SFR' は、ストローク検出値SFL、S
FRの微分値(つまり、前輪11FL、11FR位置にお
けるバネ上及びバネ下間の上下方向相対速度)である。
また、zSFL 、zSFR は前輪11FL、11FR位置に
おけるバネ上の上下方向速度であり、上下方向加速度検
出値ZGFL 、ZGFR を積分することにより求められる。
なお、本実施の形態では、ストロークセンサ50FL、
50FRの出力を、伸び側(バネ上が持ち上がる側)で
負とし、上下方向加速度センサ28FL、28FRの出
力値が上向きを正としていることと逆になっているた
め、上記上下方向速度zUFL ' 、zUFR ' の演算式は、
形は加算となっているが、実質的には減算である。
【0090】なお、本実施の形態では、上下方向速度z
UFL ' 、zUFR ' の演算式は上記のようになっているた
め、前輪振動演算部48には、上下方向加速度検出値Z
GFL〜ZGRR のうち前輪側の上下方向加速度検出値Z
GFL 、ZGFR のみが供給されるようになっており、ま
た、後輪側についてのみ予見制御を実行することから、
記憶部44には上下方向加速度検出値ZGFL 〜ZGRR
うち後輪側の上下方向加速度検出値ZGRL 、ZGRR のみ
が供給されるようになっている。
【0091】本実施の形態の構成であれば、後輪側の能
動型サスペンション12に対して、上記第1の実施の形
態と同様の予見制御を実行できるから、後輪側のバネ上
振動を良好に低減することができる。しかも、路面セン
サ27L、27Rのようなストロークセンサ50FL、
50FRに比べて特殊なセンサが不要であるという利点
があり、かかる構成は、特にタクシーやハイヤー等のよ
うに後部座席にお客が乗車する場合が多い車両に適用さ
れると好適である。
【0092】なお、前輪側のバネ下に上下加速度センサ
を設け、その上下加速度センサの出力値の積分値に基づ
いてバネ下の上下方向速度zUFL ' 、zUFR ' を求める
ようにしても構わない。図15は、本発明の第4の実施
の形態を示す図であって、コントローラ30の機能構成
を示すブロック線図である。なお、上記各実施の形態と
同様の構成には同じ符号を付し、その重複する説明は省
略する。また、全体的な構成等は上記第3の実施の形態
と同様であるため、その図示及び説明は省略する。
【0093】即ち、本実施の形態のコントローラ30
は、いわゆるスカイフックダンパ制御を実行する第2の
制御指令信号演算部60を備えていて、この第2の制御
指令信号演算部60には、上下方向加速度検出値ZGFL
〜ZGRR 及び車速検出値Vが供給されるようになってい
る。そして、第2の制御指令信号演算部60の機能構成
は、図16に示すように、各上下方向加速度検出値Z
GFL 〜ZGRR を積分して上下方向速度ZSFL 〜ZSRR
演算する積分器61と、その上下方向速度ZSFL 〜Z
SRR を制御ゲインcS 倍して第2の制御指令信号
SFL 、PSFR 、PSRL 、PSRR を演算する乗算器62
と、車速検出値Vに応じて乗算器62の制御ゲインcS
を演算し変更するゲイン演算部63と、を備えている。
【0094】ゲイン演算部63における車速検出値Vに
応じた制御ゲインcS の演算は、図17に示すように、
制御ゲインcS が、車速検出値Vが上昇するに従って徐
々に大きくなり、車速検出値Vがある程度の高速になっ
た後は最大値を維持するようになっている。これは、ス
カイフックダンパの特性を、低速走行時には比較的軟ら
かく、高速走行時には比較的硬くになる傾向で、車速に
応じて連続的に変化させることを意図しているからであ
る。
【0095】そして、第2の制御指令信号PSFL 〜P
SRR は、加算器64において、制御指令信号演算部45
から出力された制御指令信号PRL、PRRと加算されて、
その加算結果が、制御指令信号PFL〜PRRとして駆動回
路47に供給されるようになっている。なお、本実施の
形態の場合、後輪側についてのみ予見制御を実行するよ
うになっているから、制御指令信号演算部45から出力
されるのは制御指令信号PRL、PRRであり、制御指令信
号演算部45から出力される制御指令信号PFL、P
FRは、いずれも0である。
【0096】一方、コントローラ30の伝達関数フィル
タ記憶部46には、上記制御ゲインcS の大中小三段階
に対応して、伝達関数フィルタC^(CRL^、CRR^)
として、伝達関数フィルタCL ^(CL.RL^、C
L.RR^)、伝達関数フィルタCM ^(CM.RL^、CM.RR
^)、伝達関数フィルタCH ^(CH.RL^、CH.RR^)
という具合に、後輪側の能動型サスペンション12のそ
れぞれについて三種類ずつ記憶している。これは、制御
ゲインcS が変更されると能動型サスペンション12の
減衰特性も変化して伝達関数Cも変化するから、それを
モデル化した伝達関数フィルタC^も変更しないと、制
御指令信号演算部45における適応処理の精度が低下し
てしまうからである。
【0097】そこで、コントローラ30は、伝達関数フ
ィルタ選択部49を有していて、この伝達関数フィルタ
選択部49には、第2の制御指令信号演算部60からゲ
イン情報GC が供給されるようになっていて、伝達関数
フィルタ選択部49は、供給されるゲイン情報GC に応
じてそのときの伝達関数Cのモデルとして最適な伝達関
数フィルタCL ^、CM ^、CH ^を選択し、選択され
たものを伝達関数フィルタC^として制御指令信号演算
部45に供給するようになっている。なお、ゲイン情報
C は、制御ゲインcS そのものでもよいし、或いは、
制御ゲインcSが大中小のいずれであるかを表す情報の
みであってもよい。
【0098】本実施の形態であれば、制御指令信号演算
部45及び第2の制御指令信号演算部60を備え、両者
で演算された制御指令信号を合算したものを駆動回路4
7に出力するようにしているため、後輪側の能動型サス
ペンション12に対する予見制御と、前輪側及び後輪側
の能動型サスペンション12に対するスカイフックダン
パ制御とを、同時に実行することができる。
【0099】このため、予見制御としては上記第3の実
施の形態と同様の作用効果が発揮される。また、スカイ
フックダンパ制御により、バネ上を、バネ下(路面)に
ではなく絶対空間に対して支持させたような作用効果を
得ることができる。しかも、そのスカイフックダンパ制
御における制御ゲインcS を車速検出値Vに応じて可変
としているため、低速走行から高速走行に渡って適宜減
衰力を可変とすることができるから、低速・中速走行時
の車両乗り心地や、高速走行時の走行安定性を適宜両立
することができる。
【0100】そして、本実施の形態では、制御ゲインc
S に応じて伝達関数フィルタC^を変更するようにして
いるから、伝達関数Cが変化してもそれに対応するよう
に伝達関数フィルタC^を変更することができる。この
ため、伝達関数フィルタC^の精度が大きく低下するこ
とを防止できるから、制御指令信号演算部45における
適応処理の精度を良好に保つことが可能になる、という
利点がある。
【0101】なお、この第4の実施の形態では、制御ゲ
インcS に応じて伝達関数フィルタC^を三段階に変更
するようにしているが、その種類は、伝達関数フィルタ
記憶部46のメモリ容量は必要な制御精度等に応じて適
宜選定されるものである。また、この第4の実施の形態
では、スカイフックダンパ制御を実行する第2の制御指
令信号演算部60の制御ゲインcS (フィードバックゲ
イン)を、車速検出値Vに応じて可変としているが、こ
れに限定されるものではなく、バネ上の上下方向加速
度、前後方向加速度、横方向加速度等、他の情報に応じ
て可変としても構わない。さらに、各能動型サスペンシ
ョン12に対するスカイフック制御の制御ゲインc
S を、それら能動型サスペンション12毎に個別に可変
とする構成であっても構わないが、かかる場合には、伝
達関数フィルタC^の選択も各能動型サスペンション1
2毎に個別に行う必要がある。
【0102】図18は、本発明の第5の実施の形態を示
す図であって、コントローラ30の機能構成を示すブロ
ック線図である。なお、上記各実施の形態と同様の構成
には同じ符号を付し、その重複する説明は省略する。ま
た、全体的な構成等は、各輪毎にストロークセンサ50
FL、50FR、50RL、50RRを備えていて、各
輪毎のストローク検出値SFL、SFR、SRL、SRRがコン
トローラ30に供給されるようになっていることを除い
ては上記第3の実施の形態と同様であるため、その図示
及び説明は省略する。
【0103】即ち、本実施の形態のコントローラ30
は、いわゆるストロークフィードバック制御を実行する
第2の制御指令信号演算部60を備えていて、この第2
の制御指令信号演算部60には、ストローク検出値
FL、SFR、SRL、SRR及び車速検出値Vが供給される
ようになっている。そして、第2の制御指令信号演算部
60の機能構成は、図19に示すように、ストローク検
出値SFL〜SRRを微分して各車輪位置におけるバネ上及
びバネ下間の上下方向相対変位速度SFL' 〜SRR' を演
算する微分器65と、その上下方向相対変位速度SFL'
〜SRR' を速度ゲインc1 倍する乗算器66と、ストロ
ーク検出値SFL〜SRRを変位ゲインc2 倍する乗算器6
7と、乗算器66及び67の出力を加算して第2の制御
指令信号PSFL 〜PSRR を演算する加算器68と、車速
検出値Vに応じて速度ゲインc1 及び変位ゲインc2
演算し変更するゲイン演算部69と、を備えている。な
お、車速検出値Vと、速度ゲインc1 及び変位ゲインc
2 との関係は、上記第4の実施の形態におけるゲイン演
算部63の場合と同様に、車速検出値Vが上昇するに従
って速度ゲインc1 及び変位ゲインc2が大きくなる傾
向となっている。
【0104】そして、コントローラ30の伝達関数フィ
ルタ記憶部46には、上記第4の実施の形態と同様に、
後輪側の能動型サスペンション12のそれぞれについて
三種類ずつの伝達関数フィルタCL ^、CM ^、CH
が記憶されていて、伝達関数フィルタ選択部49は、ゲ
イン情報GC に含まれる速度ゲインc1 及び変位ゲイン
2 の大中小の関係に基づき、例えば、 という関係で、伝達関数フィルタCL ^、CM ^、CH
^を選択し、伝達関数フィルタC^を設定するようにな
っている。
【0105】本実施の形態であれば、制御指令信号演算
部45及び第2の制御指令信号演算部60を備え、両者
で演算された制御指令信号を合算したものを駆動回路4
7に出力するようにしているため、後輪側の能動型サス
ペンション12に対する予見制御と、前輪側及び後輪側
の能動型サスペンション12に対するストロークフィー
ドバック制御とを、同時に実行することができる。
【0106】このため、予見制御としては上記第3の実
施の形態と同様の作用効果が発揮される。また、ストロ
ークフィードバック制御によって、バネ上及びバネ下間
の上下方向相対変位を所定値近傍に整定することができ
る。そして、本実施の形態では、速度ゲインc1 及び変
位ゲインc2 に応じて伝達関数フィルタC^を変更する
ようにしているから、上記第4の実施の形態と同様に、
伝達関数Cが変化してもそれに対応するように伝達関数
フィルタC^を変更することができ、伝達関数フィルタ
C^の精度が大きく低下することを防止できて制御指令
信号演算部45における適応処理の精度を良好に保つこ
とが可能になる、という利点がある。
【0107】なお、この第5の実施の形態では、速度ゲ
インc1 及び変位ゲインc2 に応じて上記マトリックス
に示すような関係で伝達関数フィルタC^を変更するよ
うにしているが、伝達関数フィルタC^の設定の方法は
任意である。また、この第5の実施の形態では、速度ゲ
インc1 及び変位ゲインc2 (フィードバックゲイン)
を車速検出値Vに応じて可変としているが、これに限定
されるものではなく、バネ上の上下方向加速度、前後方
向加速度、横方向加速度等、他の情報に応じて可変とし
ても構わない。さらに、速度ゲインc1 及び変位ゲイン
2 を、能動型サスペンション12毎に個別に可変とす
る構成であっても構わないが、かかる場合には、伝達関
数フィルタC^の選択も各能動型サスペンション12毎
に個別に行う必要がある。
【0108】図20は、本発明の第6の実施の形態を示
す図であって、コントローラ30の機能構成を示すブロ
ック線図である。なお、上記各実施の形態と同様の構成
には同じ符号を付し、その重複する説明は省略する。ま
た、全体的な構成等は、車体に発生する前後方向加速度
を検出して前後方向加速度検出値Xg をコントローラ3
0に供給する前後加速度センサと、車体に発生する横方
向加速度を検出して横方向加速度検出値Yg をコントロ
ーラ30に供給する横加速度センサと、運転者が手動に
より設定車高H0 を設定することができその設定車高H
0 をコントローラ30に供給する車高設定装置と、を備
えたことを除いては上記第3の実施の形態と同様である
ため、その図示及び説明は省略する。
【0109】即ち、本実施の形態のコントローラ30
は、ストローク検出値SFL〜SRRに基づいた車高調整制
御と、前後方向加速度検出値Xg 及び横方向加速度検出
値Ygに基づいた姿勢変化抑制制御とを実行する第2の
制御指令信号演算部60を備えていて、この第2の制御
指令信号演算部60には、設定車高H0 と、ストローク
検出値SFL〜SRRと、車速検出値Vと、前後方向加速度
検出値Xg と、横方向加速度検出値Yg とが供給される
ようになっている。
【0110】そして、第2の制御指令信号演算部60の
機能構成は、図21に示すように、設定車高H0 と車速
検出値Vとに基づいて、各車輪位置におけるバネ上及び
バネ下間の上下方向相対変位に換算した目標車高
0FL 、S0FR 、S0RL 、S0RR を演算する目標車高設
定部71と、その目標車高S0FL 〜S0RR と実車高に相
当するストローク検出値SFL〜SRRとの偏差ΔSFL(=
0FL −SFL)、ΔSFR(=S0FR −SFR)、ΔS
RL(=S0RL −SRL)、ΔSRR(=S0RR −SRR)を演
算する減算器72と、その偏差ΔSFL〜ΔSRRに基づき
実車高が目標車高S0FL 〜S0RR に近づくような車高制
御指令信号PhFL 〜PhRR を演算する車高制御指令信号
演算部73と、前後方向加速度検出値Xg に制御ゲイン
x を乗じることにより車体のピッチング運動を抑制す
るための指令信号成分を演算するピッチング運動抑制指
令信号成分演算部74と、横方向加速度検出値Yg に制
御ゲインcyを乗じることにより車体のロール運動を抑
制するための指令信号成分を演算するロール運動抑制指
令信号成分演算部75と、それらピッチング運動抑制指
令信号成分演算部74及びロール運動抑制指令信号成分
演算部75の出力を加算して姿勢変化抑制制御指令信号
gFL 〜PgRR を演算する加算器76と、車高制御指令
信号PhFL 〜PhRR 及び姿勢変化抑制制御指令信号P
gFL 〜PgRR を加算して第2の制御指令信号PSFL 〜P
SRR を演算する加算器77と、を備えている。
【0111】目標車高設定部71は、設定車高H0 を基
準とし、低速走行時にはその設定車高H0 に一致するよ
うな目標車高S0FL 〜S0RR を演算する一方、高速走行
時には、低車高に自動的に変更されて走行安定性が増加
するように、低めの目標車高S0FL 〜S0RR を演算する
ようになっている。また、目標車高設定部71は、設定
された目標車高S0FL 〜S0RR を表す目標車高情報HC
を出力するようになっていて、その目標車高情報H
C は、図20に示すように、伝達関数フィルタ選択部4
9に供給されるようになっている。目標車高情報H
C は、目標車高S0FL 〜S0RR そのものでもよいし、或
いは、高、中、低等のように目標車高を段階的に表した
情報であってもよく、要は、伝達関数フィルタ選択部4
9における伝達関数フィルタC^の選択に必要な情報が
含まれていればよい。
【0112】そして、減算器72から出力される偏差Δ
FL〜ΔSRRは、目標車高S0FL 〜S0RR に対する実車
高の偏差であるが、ストロークセンサ50FL〜50R
Rの出力を伸び側(バネ上が持ち上がる側)で負として
いることから、車高制御指令信号演算部73は、偏差Δ
FL〜ΔSRRが正方向に大きい場合には、車高を下げる
方向(油圧シリンダ18FL〜18RRの中立圧力を下
げる方向)の車高制御指令信号PhFL 〜PhRR を出力
し、偏差ΔSFL〜ΔSRRが負方向に大きい場合には、車
高を上げる方向(油圧シリンダ18FL〜18RRの中
立圧力を上げる方向)の車高制御指令信号PhFL 〜P
hRR を出力し、偏差ΔSFL〜ΔSRRの絶対値が小さい場
合には車高を維持する(油圧シリンダ18FL〜18R
Rの中立圧力を維持する)車高制御指令信号PhFL 〜P
hRR を出力するようになっている。
【0113】一方、ピッチング運動抑制指令信号成分演
算部74及びロール運動抑制指令信号成分演算部75
は、前後方向加速度や横方向加速度によって車体が沈む
側の油圧シリンダ18FL〜18RRの中立圧力は増大
し、前後方向加速度や横方向加速度によって車体が浮き
上がる側の油圧シリンダ18FL〜18RRの中立圧力
は減少するように、各指令信号成分を演算するようにな
っている。
【0114】よって、加算器77で演算された第2の制
御指令信号PSFL 〜PSRR は、車速をも考慮した目標車
高に一致する車高が得られると共に、前後方向加速度や
横方向加速度による姿勢変化を抑制できる油圧シリンダ
18FL〜18RRの中立圧力が得られるような信号と
なる。そして、伝達関数フィルタ記憶部46には、車高
に対応して複数種類の伝達関数フィルタC^が記憶され
ていて、伝達関数フィルタ選択部49は、目標車高情報
C に基づいて、伝達関数フィルタ記憶部46に記憶さ
れている伝達関数フィルタC^のうち、目標車高に最も
適当な伝達関数フィルタC^を選択する。
【0115】このため、車高が変化したことに起因して
伝達関数Cが変化しても、それに対応するように伝達関
数フィルタC^が変更されるから、伝達関数フィルタC
^の精度が大きく低下することを防止できて制御指令信
号演算部45における適応処理の精度を良好に保つこと
が可能になる、という利点がある。なお、本実施の形態
では、第2の制御指令信号演算部60において、車高調
整制御と姿勢変化抑制制御とを実行するようになってい
るが、それら制御のうち、制御特性が可変なのは車高調
整制御(具体的には、目標車高)だけであり、姿勢変化
抑制制御における制御ゲインcx 、cy は固定である。
このため、伝達関数フィルタ選択部49においては、目
標車高情報HC にのみ基づいて伝達関数フィルタC^を
選択するようにしているが、仮に制御ゲインcx 、cy
をも例えば車速検出値V等に応じて可変とした場合に
は、伝達関数フィルタ選択部49では、その制御ゲイン
x 、cy の値をも考慮して伝達関数フィルタC^を選
択することが望ましい。そして、伝達関数フィルタ選択
部49に、目標車高情報HC や制御ゲインcx 、cy
別々に供給し、それら供給された値に組合せで伝達関数
フィルタC^を選択してもよいが、実際には油圧シリン
ダ18FL〜18RRの中立圧力が伝達関数Cに影響を
与えるのであり、その中立圧力は第2の制御指令信号P
SFL 〜PSRR から知ることができるから、中立圧力の演
算部(中立圧力検出手段)を設け、その演算部が求めた
中立圧力に関する情報を伝達関数フィルタ選択部49に
供給し、その中立圧力に関する情報のみに基づいて伝達
関数フィルタC^を選択するようにしてもよい。
【0116】図22は、本発明の第7の実施の形態を示
す図であって、コントローラ30の機能構成を示すブロ
ック線図である。なお、上記各実施の形態と同様の構成
には同じ符号を付し、その重複する説明は省略する。ま
た、全体的な構成等は、油圧シリンダ18FL〜18R
Rの作動油の温度を検出しその温度検出信号Tをコント
ローラ30に供給する作動油温度センサ(作動流体温度
検出手段)を備えたことを除いては上記第3の実施の形
態と同様であるため、その図示及び説明は省略する。
【0117】即ち、本実施の形態のコントローラ30
も、伝達関数フィルタ選択部49を備えていて、この伝
達関数フィルタ選択部49に、温度検出信号Tが供給さ
れるようになっていて、伝達関数フィルタ選択部49
は、その温度検出信号Tに基づいて、伝達関数フィルタ
記憶部46に記憶されている伝達関数フィルタC^を選
択するようになっている。
【0118】ここで、作動油の温度が低い状況における
伝達関数Cのゲイン特性及び位相特性は、図23に破線
で示すように、常温時におけるゲイン特性(実線)に比
較して低下し、常温時における位相特性(実線)に比較
して遅れが大きくなる。このため、有限インパルス応答
型フィルタとして伝達関数フィルタC^を表すと、低温
時の伝達関数フィルタC^は、図24に破線で示すよう
に、常温時の伝達関数フィルタC^(実線)とは異なっ
た波形になり、この差は、良好な適応制御を実行する上
では無視できない場合が多い。
【0119】そこで、伝達関数フィルタ記憶部46に、
例えば、低温時、常温時、高温時という具合に、作動油
の温度に対応して複数種類の伝達関数フィルタC^を記
憶しておき、温度検出信号Tに応じて伝達関数フィルタ
選択部49が伝達関数フィルタC^を選択するようにす
れば、伝達関数フィルタC^の精度が大きく低下するこ
とを防止できて制御指令信号演算部45における適応処
理の精度を良好に保つことが可能になる。
【0120】なお、上記各実施の形態にあっては、制御
対象車輪位置におけるバネ上の振動を上下方向加速度セ
ンサ28FL〜28RRによって検出し、その検出信号
を車体振動信号(エラー信号)eとして制御指令信号演
算部45における適応制御を実行するようにしている
が、これに限定されるものではなく、例えば、車両乗員
位置(乗員足元位置や座席位置)の上下加速度を検出す
る加速度センサを設け、その加速度センサの出力信号
を、車体振動信号(エラー信号)eとすることも可能で
あるし、場合によっては、各上下方向加速度センサ28
FL〜28RRの出力に基づいて車両乗員位置の上下加
速度を演算し、その演算された車両乗員位置の上下加速
度を車体振動信号(エラー信号)eとすることも可能で
ある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の基本構成を示すブロック線図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態を示す概略構成図で
ある。
【図3】圧力制御弁における指令電流と制御圧との関係
を示す特性線図である。
【図4】上下方向加速度センサの出力特性図である。
【図5】路面センサの出力特性図である。
【図6】第1の実施の形態のコントローラの機能構成を
示すブロック線図である。
【図7】伝達関数フィルタ及び路面起伏信号の説明図で
ある。
【図8】コントローラ内で実行される処理の概要を示す
フローチャートである。
【図9】実施の形態の作用効果を示す波形図である。
【図10】第2の実施の形態におけるコントローラ内で
実行される処理の概要を示すフローチャートである。
【図11】車速検出値と係数βとの関係を示す特性線図
である。
【図12】車速検出値と係数βとの関係の他の例を示す
特性線図である。
【図13】第3の実施の形態を示す概略構成図である。
【図14】第3の実施の形態のコントローラの機能構成
を示すブロック線図である。
【図15】第4の実施の形態のコントローラの機能構成
を示すブロック線図である。
【図16】第4の実施の形態における第2の制御指令信
号演算部の機能構成を示すブロック線図である。
【図17】車速検出値と制御ゲインとの関係を示す特性
線図である。
【図18】第5の実施の形態のコントローラの機能構成
を示すブロック線図である。
【図19】第5の実施の形態における第2の制御指令信
号演算部の機能構成を示すブロック線図である。
【図20】第6の実施の形態のコントローラの機能構成
を示すブロック線図である。
【図21】第6の実施の形態における第2の制御指令信
号演算部の機能構成を示すブロック線図である。
【図22】第7の実施の形態のコントローラの機能構成
を示すブロック線図である。
【図23】作動油の温度とゲイン特性、位相特性との関
係を示す周波数特性図である。
【図24】作動油の温度と伝達関数フィルタとの関係を
示す波形図である。
【符号の説明】
10 車体側部材 11FL〜11RR 車輪 12 能動型サスペンション 14 車輪側部材 18FL〜18RR 油圧シリンダ 20FL〜20RR 圧力制御弁 22 油圧源 26 車速センサ 27FL,27FR 路面センサ 28FL〜28RR 上下方向加速度センサ 30 コントローラ 43 路面高さ演算部 45 制御指令信号演算部 47 駆動回路 50FL,50FR ストロークセンサ 60 第2の制御指令信号演算部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 3D001 AA02 AA10 BA01 CA01 DA02 DA17 EA01 EA05 EA24 EA32 EA34 EA36 EB22 EB24 EB26 EC06 EC07 EC09 ED04 ED14

Claims (19)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 制御対象車輪と車体との間に介装された
    アクチュエータと、制御指令信号に応じて前記アクチュ
    エータを駆動制御する駆動手段と、前記制御対象車輪よ
    り前方の路面起伏状態を検出又は推定し路面起伏信号を
    生成する路面起伏検出手段と、前記車体の所定位置にお
    ける振動を検出し車体振動信号を生成する車体振動検出
    手段と、前記路面起伏信号及び前記車体振動信号に基づ
    き前記車体の振動が低減するように前記制御指令信号を
    生成し出力する制御手段と、を備え、前記制御手段は適
    応制御を実行するようになっていることを特徴とする能
    動型サスペンション。
  2. 【請求項2】 前記制御対象車輪は、車両の右前輪、左
    前輪、右後輪及び左後輪であり、前記路面起伏検出手段
    は、前記右前輪及び左前輪より前方の路面起伏状態を検
    出又は推定するようになっている請求項1記載の能動型
    サスペンション。
  3. 【請求項3】 前記制御対象車輪は、車両の右後輪及び
    左後輪であり、前記路面起伏検出手段は、前輪位置にお
    ける振動情報に基づいて前記路面起伏信号を生成するよ
    うになっている請求項1記載の能動型サスペンション。
  4. 【請求項4】 前記振動情報は、前記前輪位置における
    バネ下振動である請求項3記載の能動型サスペンショ
    ン。
  5. 【請求項5】 前記路面起伏検出手段は、前記前輪位置
    におけるバネ上及びバネ下間の上下方向相対速度から、
    前記前輪位置におけるバネ上上下方向加速度の積分値を
    減じることにより、前記バネ下振動を求めるようになっ
    ている請求項4記載の能動型サスペンション。
  6. 【請求項6】 前記車体振動検出手段は、前記制御対象
    車輪位置におけるバネ上の上下方向振動を検出するよう
    になっている請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の
    能動型サスペンション。
  7. 【請求項7】 前記車体振動検出手段は、車両乗員位置
    における車体の上下方向振動を検出するようになってい
    る請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の能動型サス
    ペンション。
  8. 【請求項8】 前記制御手段は、前記制御指令信号及び
    前記振動検出手段間の伝達関数をモデル化した伝達関数
    フィルタと、前記路面起伏信号を前記伝達関数フィルタ
    でフィルタ処理することにより更新用基準信号を生成す
    る更新用基準信号生成手段と、フィルタ係数可変の適応
    ディジタルフィルタと、前記路面起伏信号を前記適応デ
    ィジタルフィルタでフィルタ処理することにより前記制
    御指令信号を生成する制御指令信号生成手段と、前記更
    新用基準信号及び前記車体振動信号に基づき適応アルゴ
    リズムに従って前記適応ディジタルフィルタのフィルタ
    係数を更新するフィルタ係数更新手段と、を備えている
    請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の能動型サスペ
    ンション。
  9. 【請求項9】 前記適応ディジタルフィルタを、前記制
    御対象車輪毎に備えている請求項8記載の能動型サスペ
    ンション。
  10. 【請求項10】 前記駆動手段に対する第2の制御指令
    信号を生成する、制御特性可変の第2の制御手段を備
    え、前記第2の制御手段の制御特性に応じて前記伝達関
    数フィルタの特性を変更するようになっている請求項8
    又は請求項9記載の能動型サスペンション。
  11. 【請求項11】 前記第2の制御手段は、車体振動をフ
    ィードバックして前記駆動手段に対する第2の制御指令
    信号を生成するようになっている請求項10記載の能動
    型サスペンション。
  12. 【請求項12】 前記第2の制御手段はフィードバック
    のゲイン特性及び位相特性の少なくとも一方が可変であ
    り、前記ゲイン特性及び位相特性の少なくとも一方に応
    じて前記伝達関数フィルタの特性を変更するようになっ
    ている請求項11記載の能動型サスペンション。
  13. 【請求項13】 前記車体振動は、前記制御対象車輪位
    置におけるバネ上の上下方向加速度、前記制御対象車輪
    位置におけるバネ上及びバネ下間の上下方向相対速度、
    前記制御対象車輪位置におけるバネ上及びバネ下間の上
    下方向相対変位のうちの少なくとも一つである請求項1
    1又は請求項12記載の能動型サスペンション。
  14. 【請求項14】 前記第2の制御手段は、車両運動に基
    づいて前記駆動手段に対する第2の制御指令信号を生成
    するようになっている請求項10記載の能動型サスペン
    ション。
  15. 【請求項15】 前記車両運動は車体の前後方向加速度
    であり、前記第2の制御手段は、前記前後方向加速度に
    基づいて車体のピッチング運動が抑制されるような前記
    第2の制御指令信号を生成するようになっている請求項
    14記載の能動型サスペンション。
  16. 【請求項16】 前記車両運動は車体の横方向加速度で
    あり、前記第2の制御手段は、前記横方向加速度に基づ
    いて車体のロール運動が抑制されるような前記第2の制
    御指令信号を生成するようになっている請求項14記載
    の能動型サスペンション。
  17. 【請求項17】 前記第2の制御手段は、目標車高可変
    の車高制御手段であり、前記目標車高に応じて前記伝達
    関数フィルタの特性を変更するようになっている請求項
    10記載の能動型サスペンション。
  18. 【請求項18】 前記アクチュエータは流体圧アクチュ
    エータであり、前記第2の制御手段は、前記流体圧アク
    チュエータの作動中立圧を調整する中立圧力調整手段を
    備え、前記作動中立圧に応じて前記伝達関数フィルタの
    特性を変更するようになっている請求項10記載の能動
    型サスペンション。
  19. 【請求項19】 前記アクチュエータは流体圧アクチュ
    エータであり、作動流体の温度を検出する作動流体温度
    検出手段を備え、前記作動流体の温度に応じて前記伝達
    関数フィルタの特性を変更するようになっている請求項
    8乃至請求項18のいずれかに記載の能動型サスペンシ
    ョン。
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