JP3185566B2 - サスペンション制御装置 - Google Patents

サスペンション制御装置

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JP3185566B2
JP3185566B2 JP26552594A JP26552594A JP3185566B2 JP 3185566 B2 JP3185566 B2 JP 3185566B2 JP 26552594 A JP26552594 A JP 26552594A JP 26552594 A JP26552594 A JP 26552594A JP 3185566 B2 JP3185566 B2 JP 3185566B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、検出した路面情報に基
づいて制御対象の車輪及び車体間に介装されたアクチュ
エータを予見制御するサスペンション制御装置に関する
ものである。
【0002】
【従来の技術】従来のサスペンション制御装置として
は、例えば、特開昭61−135811号公報や特開昭
61−166715号公報等に記載されているものがあ
る。上記特開昭61−135811号公報に記載された
サスペンション制御装置(以下、第1従来例と呼ぶ)
は、路面に沿って回転駆動される車輪と、該車輪と車体
とを所定ストロークで支持するスピンドル機構とを備
え、路面の凹凸に応じてスピンドル機構を駆動させる車
両のサスペンション装置に対して、上記制御対象の車輪
の走行前方に配設されて上記路面の凹凸を検出する非接
触型センサで構成される検出部と、該検出部の信号と走
行速度信号によって上記所定ストロークの伸縮を指令す
る制御部と、該指令によって上記スピンドル機構に油圧
を注入または排出するように電磁バルブを励磁するバル
ブ駆動機構とを備えて構成されている。
【0003】また、上記特開昭61−166715号公
報に記載されたサスペンション制御装置(以下、第2従
来例と呼ぶ)は、後輪側を制御対象の車輪としたサスペ
ンション制御装置であって、前輪に加わる少なくとも路
面とは垂直方向成分の加速度を検出する前輪加速度検出
手段と、その前輪加速度検出手段により検出された加速
度が所定範囲外であるか否かを判定する判定手段と、そ
の判定手段により加速度が所定範囲外であると判定され
ると、後輪のサスペンション特性,例えば空気バネ定数
等を変更する後輪サスペンション特性変更手段と、を備
えて構成されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
ような従来のサスペンション制御装置において、第1従
来例にあっては、超音波センサや光センサ等の非接触型
センサで対象とする車輪の走行前方の路面情報を得てサ
スペンション制御を行う構成となっているが、該超音波
センサや光センサ等の非接触型センサは高価であり、こ
れによって制御装置のコスト高に繋がる。
【0005】さらに、上記非接触型センサは、埃,泥,
水滴,雪溜まり等によって誤差が生じ易く、このため対
象とする車輪側のサスペンション制御が不正確となる恐
れがある。これにより、目的とした乗り心地に改善され
なかったり、逆に、場合によっては余計が振動を引き起
こす可能性もある。また、上記第2従来例にあっては、
前輪のバネ下運動を検出することで前輪位置の路面の凹
凸状態を検出し、その検出値に基づいて後輪側のサスペ
ンション制御を行う構成であるため、上記のような非接
触型センサを使用していない。しかし、この制御を採用
すると、後輪側の振動だけが低減されて前輪側の振動は
そのままである。このため、後ろの座席での乗り心地は
改善されるが、前側の座席では後ろの座席ほど乗り心地
が向上しない。また、この制御では、車両のピッチング
挙動が大きくなり、乗員に不快感を感じさせる場合があ
る。
【0006】このとき、上記のような従来の制御手段を
利用し、例えば、前輪のバネ下運動を検出し、その検出
値に応じて前輪自身のサスペンション制御を実施するこ
とも考えられるが、コントローラの演算時間の遅れやア
クチュエータ系の応答遅れが問題となる。即ち、前輪側
で検出した路面情報によって後輪側の制御を行う場合に
は、情報の遅延時間を、対象路面のホィールベース通過
時間よりも短く設定することで、上記の制御系の遅れを
補償することができる。しかし、前輪での路面情報で前
輪側の制御や後輪での路面情報で後輪側の制御する場合
には、上記制御系の遅れを補償することができない。こ
のため、特に高周波域での制御力の位相遅れが大きくな
り、振動を十分に抑制できなかったり、余計な振動を引
き起こす結果に繋がる。
【0007】本発明は、上記のような問題点に着目して
なされたもので、対象とする車輪での路面情報に基づい
て当該車輪側のサスペンションを有効に制御することを
目的としている。
【0008】
【0009】
【0010】
【課題を解決するための手段】 上記目的を達成するため
に、本発明のうち 請求項に記載されたサスペンション
制御装置は、車輪と車体との間に介装されて制御信号に
よって該車輪と車体との上下ストロークを制御可能な制
御力を発生するアクチュエータと、サスペンションを介
してバネ下から車体へ伝達する振動入力を推定する振動
入力推定手段と、上記振動入力にローパスフィルタ処理
を実施し、その後の振動入力を打ち消すような制御信号
を上記アクチュエータに供給する制御手段と、を備え、
上記制御手段は、バネ下共振周波数の入力が大きくなる
に応じて上記ローパスフィルタ処理のカットオフ周波数
が低くなるように設定されていることを特徴としてい
る。
【0011】また、本発明のうち請求項に記載された
サスペンション制御装置は、車輪と車体との間に介装さ
れて制御信号によって該車輪と車体との上下ストローク
を制御可能な制御力を発生するアクチュエータと、サス
ペンションを介してバネ下から車体へ伝達する振動入力
を推定する振動入力推定手段と、上記振動入力にローパ
スフィルタ処理を実施し、その後の振動入力を打ち消す
ような制御信号を上記アクチュエータに供給する制御手
段と、を備え、上記制御手段は、バネ上共振周波数の入
力が大きくなるに応じて上記ローパスフィルタ処理のカ
ットオフ周波数が高くなるように設定されていることを
特徴としている。
【0012】また、上記請求項1又は請求項のいずれ
かに記載された構成に対して、請求項に記載されてい
るように、上記振動入力推定手段は、上記アクチュエー
タと並列に介装され車体と車輪との間の相対変位を検出
するストローク検出手段と、車体の上下加速度を検出す
る車体上下加速度検出手段と、上記ストローク検出によ
って検出されるストローク検出値、及び車体上下加速度
検出からの上下加速度検出値からバネ下の運動速度を推
定し、その推定したバネ下の運動速度から振動入力値を
算出する振動入力算出手段と、からなることを特徴とす
る。
【0013】
【作用】対象とする車輪における路面情報として、ばね
下から車体へ伝達される振動入力を振動入力推定手段で
推定し、続いて、その推定した振動入力に基づいて車体
へ伝達される実際の振動入力を打ち消すための制御力を
制御手段で算出し、上記算出した制御力をアクチュエー
が発生することで、車体に入力される振動を低減する
ように制御する。
【0014】このとき、対象とする車輪における路面情
報によって当該車輪のサスペンションを制御しているた
めに、このままでは、前記説明したように制御手段の演
算時間やアクチュエータの応答遅れによる影響が問題と
なる。この応答遅れの影響を確認するために、アクチュ
エータが油圧系によって駆動され、カットオフ周波数6
Z の一時遅れを持つ場合を想定してシミュレーション
すると図10に示すような結果を得た。
【0015】図10は、路面変化に対する車体の上下変
化の伝達特性を示す図であり、破線が上記サスペンショ
ン制御をしない場合であり、実線が上記サスペンション
制御を実施した場合である。これにより、上記一時遅れ
を有したままの制御では、5〜6HZ 以上の周波数帯
(バネ下共振周波数域)で「制御なし」より特性が悪化
し、また、1〜2HZ近傍の周波数帯(バネ上共振周波
数域)では特性が改善されることが分かる。
【0016】
【0017】
【0018】
【0019】次に、請求項及び請求項に記載したサ
スペンション制御の作用について説明する。本願発明の
基本制御は、上述の制御と同様であり、対象とする車輪
における路面情報として、ばね下から車体へ伝達される
振動入力を振動入力推定手段で推定し、その推定した振
動入力に基づいて車体へ伝達される実際の振動入力を打
ち消すための制御力を制御手段で算出し、続いて、アク
チュエータが算出した制御力を発生することで、車体に
入力される振動を低減する。
【0020】このとき、本願発明の制御手段では、振動
入力における高周波成分での悪影響を除去するため、推
定した上記振動入力うち高周波成分をローパスフィルタ
を通すことで除去し、その後の該振動入力に基づいて制
御力を算出している。この場合にあっても、上記と同様
に応答遅れによる影響がある。この応答遅れの影響を確
認するために、アクチュエータが油圧系によって駆動さ
れ、カットオフ周波数6HZ の一時遅れ持つ場合を想定
してシミュレーションし、さらに、上記ローパスフィル
タ処理のカットオフ周波数fcを変更して制御したとし
て求めたところ、図11に示すような結果を得た。図
は、路面変化に対する車体の上下変化の伝達特性を示
す図である。
【0021】この結果から、カットオフ周波数fcを低
く設定するほど、バネ上共振周波数域での制御効果は薄
れるが、バネ下共振周波数域での悪影響も小さくできる
ことが分かった。逆に、カットオフ周波数fcを高く設
定するほど、バネ上共振周波数域での制御効果が大きく
なるが、バネ下共振周波数域での悪影響は大きくなる。
【0022】請求項及び請求項に記載したサスペン
ション制御装置は、上記のようなことに鑑みてなされた
ものある。請求項に記載したサスペンション装置にお
いて、カットオフ周波数が固定(fc=∞)の制御で
は、バネ下共振周波数成分の入力が大きくなるに応じて
制御を行うことによって逆に車体に入力される振動が大
きくなるが、請求項に記載の発明では、該バネ下共振
周波数の入力が大きくなるに応じてカットオフ周波数f
cを小さくすることで、バネ下共振周波数成分が大きく
なることによる悪影響の発生を最小限に抑えながら、車
体に入力される振動が低減される。
【0023】また、請求項に記載したサスペンション
制御では、バネ共振周波数成分の入力が大きくなる
と、バネ共振周波数による影響よりもバネ共振周波
数成分による影響の方が大きくなるので、カットオフ周
波数fcを大きく設定変更することで、バネ共振周波
数成分の振動を有効に制振する。このとき、バネ共振
周波数による悪影響は強調されるが該バネ共振周波数
成分は少ないので、全体として車体に入力される振動は
低減される。
【0024】上記サスペンション制御装置における振動
入力推定手段は、例えば請求項に記載したように構成
する。この振動入力推定手段にあっては、ストローク検
出手段によって車体に対する車輪(バネ下)の相対上下
変位が検出される。一方、車体上下加速度検出手段によ
って検出される車体の上下加速度から車体の上下速度が
検出できる。
【0025】従って、両検出手段による検出値からバネ
下の上下速度のみを正確に推定することができ、この上
下速度から車体への振動入力が正確に推定される。
【0026】
【実施例】本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の第1実施例を示す概略構成図であり、
図中、10は車体側部材を、11FL〜11RRは前左
〜後右車輪を、12はサスペンション制御装置を、それ
ぞれ示している。
【0027】サスペンション制御装置12は車体側部材
10と車輪11FL〜11RRの各車輪11FL〜11
RR側部材14との間に各々介装されたアクチュエータ
としての油圧シリンダ18FL〜18RRと、これら油
圧シリンダ18FL〜18RRの作動圧を個別に調整す
る圧力制御弁20FL〜20RRと、これら圧力制御弁
20FL〜20RRに所定圧力の作動油を供給側配管2
1Sを介して供給すると共に、圧力制御弁20FL〜2
0RRからの戻り油を戻り側配管21Rを通じて回収す
る油圧源22と、この油圧源22及び圧力制御弁20F
L〜20RR間の供給圧側配管21Sに介挿された蓄圧
用のアキュムレータ24F,24Rと、各輪11FL〜
11RRの油圧シリンダ18FL〜18RRと並列に配
設されて各輪11FL〜11RRと車体との間の相対変
位を検出するストロークセンサ27FL〜27RRと、
各車輪11FL〜11RRにそれぞれ対応する位置にお
ける車体の上下方向加速度をそれぞれ個別に検出する上
下方向加速度センサ28FL〜28RRと、各上下方向
加速度センサ28FL〜28RRの上下方向加速度検出
値ZGFL 〜ZGRR に基づいて各圧力制御弁20FL〜2
0RRを能動制御すると共に、各センサ27FL〜27
及び28FL〜28RRの検出値に基づき、各車輪11
FL〜11RRの運動状態に応じて対応する車輪11F
L〜11RRの圧力制御弁20FL〜20RRの出力圧
を個別に予見制御するコントローラ30と、を備えてい
る。
【0028】上記油圧シリンダ18FL〜18RRのそ
れぞれは、シリンダチューブ18aを有し、このシリン
ダチューブ18a内に、軸方向貫通孔を有するピストン
18cにより画成されて下側の圧力室LPが形成され、
ピストン18cの上下面の受圧面積差と内圧に応じた推
力を発生する。そして、シリンダチューブ18aの下端
が車輪側部材14に取り付けられ、ピストンロッド18
bの上端が車体側部材10に取り付けられている。ま
た、圧力室LPの各々は、油圧配管38を介して圧力制
御弁20FL〜20RRの出力ポートに接続されてい
る。また、油圧シリンダ18FL〜18RRの圧力室L
Pの各々は、絞り弁32を介してバネ下振動吸収用のア
キュムレータ34に接続されている。また油圧シリンダ
18FL〜18RRの各々のバネ上、バネ下相当間に
は、比較的低いバネ定数であって車体の静荷重を支持す
るコイルスプリング36が配設されている。
【0029】圧力制御弁20FL〜20RRのそれぞれ
は、スプールを摺動自在に内装した円筒状の弁ハウジン
グと、これに一体的に設けられた比例ソレノイドとを有
してなる、従来から周知の3ポート比例電磁減圧弁(例
えば、特開昭64−74111号公報に記載のもの)で
構成されている。そして、比例ソレノイドの励磁コイル
に供給する指令電流i(指令値)を調整することによ
り、弁ハウジング内に収容されたポペットの移動距離、
即ちスプールの位置を制御し、供給ポート及び出力ポー
ト、又は出力ポート及び戻りポートを介して油圧源22
と油圧シリンダ18FL〜18RRとの間で流通する作
動油を制御できるようになっている。
【0030】ここで、励磁コイルに加えられる指令電流
i(:iFL〜iRR)と圧力制御弁20FL(〜20R
R)の出力ポートから出力される制御圧Pとの関係は、
図3に示すように、ノイズを考慮した最小電流値iMIN
のときに最低制御圧PMIN となり、この状態から電流値
iを増加させると該電流値iに比例して直線的に制御圧
Pが増加し、最大電流値iMAX のときには油圧源22の
設定ライン圧に相当する最高制御圧PMAX となる。この
で、iN は中立指令電流、PN は中立制御圧であ
る。
【0031】ストロークセンサ27FL〜27RRのそ
れぞれは、図4に示すように、車高が予め設定された目
標車高に一致するときに零の中立電圧に、車高が目標車
高より高くなるとその偏差に応じた正の電圧に、車高が
目標車高より低くなるとその偏差に応じた負の電圧でな
るストローク検出値SFL〜SRRを出力するように構成さ
れている。
【0032】上下方向加速度センサ28FL〜28RR
のそれぞれは、図5に示すように、上下方向加速度が零
であるときに零の電圧、上方向の加速度を検出したとき
にその加速度値に応じた正のアナログ電圧、下方向の加
速度を検出したときにその加速度に応じた負のアナログ
電圧でなる上下方向加速度検出値ZGFL 〜ZGRR を出力
するように構成されている。
【0033】コントローラ30は、図2に示されている
ように、各ストロークセンサ27FL〜27RRから
されるストローク検出値SFL〜SRRと各上下方向加速
度センサ28FL〜28RRから出力される車体上下方
向加速度検出値ZGFL 〜ZGRR とをそれぞれデジタル値
に変化するA/D変換器43と、A/D変換器43のA
/D変換出力が入力されるマイクロコンピュータ44
と、このマイクロコンピュータ44から出力される圧力
指令値PFL〜PRRがD/A変換器45を介して供給さ
れ、これらを圧力制御弁20FL〜20RRに対する駆
動電流iFL〜iRRに変換する例えばフローティング形定
電圧回路で構成される駆動回路46FL〜46RRとを
備えている。
【0034】このコントローラ30は、イグニッション
キースイッチがオン状態に切り換わることで電源が投入
されて初期設定が実行される。上記マイクロコンピュー
タ44は、少なくとも、インターフェース回路44a、
演算処理装置44b及び記憶装置44cを有する。イン
ターフェース回路44aには、A/D変換器43の変換
出力が入力されると共に、演算処理装置44bからの各
圧力制御弁20FL〜20RRに対する圧力指令値PFL
〜PRRがD/A変換器45に出力される。
【0035】また、演算処理装置44bは、後述する処
理を実行して、所定のサンプリング時間TS (例えば2
0msec)毎に、対応する車輪11FL〜11RR毎にス
トローク検出値SFL〜SRR及び車体上下方向加速度検出
値ZGFL 〜ZGRR を読み込み、各車輪11FL〜11R
R位置におけるバネ下から車体に伝達する振動入力F FL
〜FRRをそれぞれ推定し、その推定値に基づいて各車輪
11FL〜11RRのアクチュエータとしての油圧シリ
ンダ18FL〜18RRで発生する予見制御力UPFL
PRR を演算すると共に、加速度センサ28FL〜28
RRからの各車体上下方向加速度検出値ZGFL 〜ZGRR
を積分した車体上下速度ZVFL 〜ZVRRに基づいてスカ
イフックダンパ機能を発揮する各輪に対する能動制御用
制御力を算出し、さらに、両制御力を加算した値を、各
圧力制御弁20FL〜20RRに対する圧力指令値PFL
〜PRRとしてD/A変換器45に出力する。
【0036】また、記憶装置44cは、予め演算処理装
置44bの演算処理に必要なプログラムが記憶されてい
ると共に、演算処理装置44bの演算過程で必要な演算
結果を逐次,記憶する。次に、上記実施例の動作を、マ
イクロコンピュータ44における演算処理装置44bの
処理手順を、図7のフローチャートに従って説明する。
【0037】図7の処理は、所定のサンプリング時間T
S (例えば20msec)毎のタイマ割り込み処理として実
行される。先ず、ステップS1で、各車輪11FL〜1
1RRに対応した各ストローク検出値SFL〜SRR及び車
体上下方向加速度検出値ZGFL 〜ZGRR をそれぞれ読み
込み、ステップS2に移行する。
【0038】このステップS2では、上記各車輪11F
L〜11RRに対応したストローク検出値SFL〜SRR
び車体上下方向加速度検出値ZGFL 〜ZGRR に基づい
て、路面形状に正確に追従した各車輪11FL〜11R
Rの路面変化の微分値、即ちバネ下入力速度(dXFL
dt)〜(dXRR/dt)を推定し、ステップS3に移
行する。
【0039】このバネ下入力速度の推定の処理は、スト
ローク検出値SFL〜SRRを微分してストローク速度(d
FL/dt)〜(dSRR/dt)を算出すると共に、車
体上下方向加速度検出値ZGFL 〜ZGRR を積分してバネ
上変位の微分値(dYFL/dt)〜(dYRR/dt)を
算出する。次に、上記ストローク速度とバネ上変位の微
分値とを加算することで、路面形状に正確に追従した各
輪の路面変位の微分値(dXFL/dt)〜(dXRR/d
t)が出力される。
【0040】即ち、ストロークセンサ27FL〜27R
Rから出力されるストローク検出値SFL〜SRRは、下記
(1)式から(4)式で表されるように、バネ下及びバ
ネ上間の相対変位を表すので、各車輪11FL〜11R
Rのバネ下変位XFL〜XRRから車体のばね上変位YFL
RRをそれぞれ減算した値となっている。 SFL =XFL − YFL ・・・(1) SFR =XFR − YFR ・・・(2) SRL =XRL − YRL ・・・(3) SRR =XRR − YRR ・・・(4) 従って、ストローク検出値SFL〜SRRを微分したストロ
ーク速度はそれぞれバネ下変位の微分値からバネ上変位
の微分値を減算した値となるため、これらと上下加速度
検出値ZGFL 〜ZGRR を成分したバネ上変位の微分値と
を加算することにより、バネ上変位の微分値を相殺して
路面変位に追従した真の路面変位の微分値(dXFL/d
t)〜(dXRR/dt)を得ることができる。
【0041】ステップS3では、上記算出した各車輪1
1FL〜11RRのバネ下入力速度を積分してバネ下の
変位(路面変位)XFL〜XRRを算出し、上記バネ下入力
速度及びバネ下の変位に基づき、下記(5)式から
(8)式の演算をそれぞれ行うことで、各車輪11FL
〜11RR位置における、サスペンションを介してバネ
下から車体へ伝達される振動入力FFL〜FRRを算出し、
ステップS4に移行する。
【0042】 FFL=CFL・(dXFL/dt)+KFL・XFL ・・・(5) FFR=CFR・(dXFR/dt)+KFR・XFR ・・・(6) FRL=CRL・(dXRL/dt)+KRL・XRL ・・・(7) FRR=CRR・(dXRR/dt)+KRR・XRR ・・・(8) ここで、CFL,CFR,CRL,CRRは、それぞれ各輪に対
応するショックアブソーバの減衰係数を表し、KFL,K
FR,KRL,KRRは、それぞれ各輪に対応するサスペンシ
ョンのバネ定数を表している。
【0043】この振動入力FFL〜FRRの推定処理につい
て説明すると、本実施例では、個々の車輪11FL〜1
1RRのサスペンションを独立に制御しているので、各
車輪11FL〜11RRの運動モデルは、図6に示すよ
うになる。従って、各車輪11FL〜11RR位置にお
ける、ショックアブソーバの減衰係数をCFL,CFR,C
RL,CRR、サスペンションのバネ定数をKFL,KFR,K
RL,KRRとすると、サスペンションを介してバネ下から
車体に伝達される振動入力FFL〜FRRは、上記(5)か
ら(8)式となる。
【0044】次いで、ステップS4では、制御ゲインα
FL〜αRRを求める。即ち、ステップS1で入力した上下
方向加速度検出値ZGFL 〜ZGRR をそれぞれPSD(パ
ワー・スペクトル・デンシティー)処置することで、
0.5〜5HZ (バネ上共振周波数域)の周波数帯での
ピークレベル値と、6〜10HZ (バネ下共振周波数
域)の周波数帯でのピークレベル値とを求め、その両者
のピークレベル値にそれぞれ所定の重み係数を乗じた各
ピークレベル値Pl,Phを算出する。上記重み係数
は、例えば0.5〜5HZ と6〜10HZ での振動に対
する人間の感度が考えられ、この感度を基準とする場合
には、一般に、0.5〜5HZ よりも6〜10HZ での
人間の感度が高いので、6〜10HZ 側の重み係数を大
きくとる。
【0045】次に、これをそれぞれの周波数域での振動
レベルとみなして、上記PlとPhとを比較し、Pl
(バネ上共振周波数域)の方が大きければ、α=a1と
し、Ph(バネ下共振周波数域)の方が大きければ、α
=a2とする。これを各車輪対応に実施する。上記a
1,a2は、0≦a1≦a2≦1の関係を有し、例え
ば、a1=0.2、a2=0.7に設定しておく。
【0046】次いで、ステップS5に移行して、下記
(9)式から(12)式に従って、各車輪11FL〜1
1RR位置に対応するバネ下からの振動入力FFL〜FRR
を打ち消す予見制御力UPFL 〜UPRR を算出する。 UPFL =−αFL・FFL ・・・(9) UPFR =−αFR・FFR ・・・(10) UPRL =−αRL・FRL ・・・(11) UPRR =−αRR・FRR ・・・(12) 次いで、ステップS6に移行して、下記(13)式から
(16)式に従って、総合制御力を算出する。
【0047】 UFL=UN −KB ・ZVFL +UPFL ・・・(13) UFR=UN −KB ・ZVFR +UPFR ・・・(14) URL=UN −KB ・ZVRL +UPRL ・・・(15) URR=UN −KB ・ZVRR +UPRR ・・・(16) ここで、UN は車高を目標車高に維持するために必要な
制御力を示し、KB はバウンス制御ゲインである。
【0048】次いで、ステップS7に移行して、上記ス
テップS5で算出した各総合制御力UFL〜URRの応じた
値を圧力指令値PFL〜PRRとしてそれぞれD/A変換器
45に出力し、タイマ割り込み処理を終了して所定のメ
イプログラムに復帰する。ここで、上記構成においてス
トロークセンサ27FL〜27RR、上下方向あ速度セ
ンサ28FL〜28RR、演算処理装置44bにおける
ステップS1〜ステップS3の処理までが、振動入力推
定手段を構成する。また、このうち、ステップS2、ス
テップS3の処理が、振動入力算出手段を構成してい
る。
【0049】次に、上記サスペンション制御装置の動作
を説明する。今、車両が平坦な良路を目標車高を維持し
て直進定速走行しているとする。この状態では、車両は
平坦な良路で目標車高を維持していることから、各車輪
11FL〜11RRに配設されたストロークセンサ27
FL〜27RRの各ストローク検出値SFL〜SRRは略零
となっている。また、車体側部材10に揺動が生じない
ので、各上下方向加速度センサ28FL〜28RRの加
速度検出値ZGFL 〜Z GRR も略零となっている。このた
め、演算処理装置44bで算出されるストローク微分値
やバネ上変位の微分値がそれぞれ略零であるため、バネ
上速度ZVFL 〜ZVRR も略零となる。
【0050】従って、平坦な良路走行を継続している状
態では、マイクロコンピュータ44で所定サンプリング
時間TS 毎に実施される図7の処理において、ステップ
S2で算出されるバネ下入力速度は零の状態となり、ス
テップS3で算出する振動入力FFL〜FRRも零の状態を
継続するため、ステップS6で算出する総合制御力U FL
〜URRは目標車高に維持する中立圧制御力UN のみに対
応した値となり、これらがインターフェース回路44a
及びD/A変換器45を介して駆動回路46FL〜46
RRに出力される。
【0051】そして、各駆動回路46FL〜46RRで
圧力指令値PFL〜PRRに対応した指令電流iに変換され
て、それぞれ各車輪11FL〜11RRの圧力制御弁2
0FL〜20RRに供給される。この結果、圧力性制御
弁から目標車高を維持するために必要な中立圧が、各車
輪11FL〜11RRの油圧シリンダ18FL〜18R
Rにそれぞれ出力され、これら油圧シリンダ18FL〜
18RRで車体側部材10及び車輪側部材14との間の
各車輪位置でのストロークを目標車高に維持する推力が
発生する。
【0052】この良路直進走行状態で、例えば左右前輪
11FL,11FRが同時にステップ状に上昇する段差
でなる所謂,ランプステップ路を通過する状態となる
と、前左右輪の段差乗り上げによって、左右前輪11F
L,11FRがバウンドし、これによって、前輪側のス
トロークセンサ27FL〜27RRのストローク検出値
FL〜SRRが零から正方向に急増すると共に、前輪側の
車体側部材10に上方向の加速度が発生し、左右前輪1
1FL,11FRの上下方向加速度センサ28FL〜2
8RRの加速度検出値ZGFL 〜ZGRR が正方向に増加す
る。
【0053】そして、これらストローク検出値SFL〜S
RRと上下方向加速度検出値ZGFL 〜ZGRR とが、マイク
ロコンピュータ44に入力され、マイクロコンピュータ
44で所定の処理が実施される。即ち、この時点では、
ステップS2で算出する後輪側のバネ下入力速度やバネ
下変位は零であるので、ステップS3で算出される後輪
11RL,11RRに対する振動入力FRL,FRRは零の
状態を維持する。一方、前輪側では、上記検出されたス
トローク検出値SFL,SFR及び上下方向加速度検出値Z
GFL ,ZGFR に基づいて、(9)式から(12)式に従
って前輪側の予見制御力UPFL ,UPFR が算出される。
【0054】これによって、ステップS6で算出される
前輪側の総合制御力UFL,UFRは、段差乗り上げよる振
動入力FFL,FFRに応じて中立制御力UN より低下さ
れ、これに応じて、前輪側の駆動回路46FL,46F
Rから出力される指令値が低下する。そして、圧力制御
弁20FL,20FRから出力される前輪側の制御圧P
が中立制御 N より低下して、前輪側の油圧シリンダ
18FL,18FRの推力が低下され、もって、前輪側
のストロークが減少することによって、前輪11FL,
11FRの段差乗り上げによる車体側部材10の揺動を
抑制される。
【0055】さらに、車体側部材10に上方向の加速度
が生じると、ステップS6で、加速度検出値ZGFL 〜Z
GRR によるバネ上速度ZVFL 〜ZVRR に基づいてスカイ
フックダンパ機能が発揮して車体側部材10の上昇を抑
制する能動制御力が発生される。このように、各油圧シ
リンダ18FL〜18RRに供給される油圧が制御され
て、路面凹凸に応じた振動入力FFL〜FRRが、該予見制
御力UPFL 〜UPRR によって打ち消される。このため、
路面凹凸による影響が車体に殆ど伝達されずに、良好な
乗り心地が確保される。
【0056】このとき、前輪11FL,11FRで検出
した路面情報に基づいて前輪11FL,11FR側を制
御しているので、演算処理むだ時間やアクチュエータ系
の遅れ、特に油圧制御弁の応答遅れを有するために、位
相遅れが発生する。しかし、本実施例では、ステップS
4で算出する制御ゲインαFL〜αRRで上記予見制御力U
PFL 〜UPRR が補正されているので、上記位相遅れによ
るサスペンション制御の悪影響が小さく抑えられて、効
果的にバネ下からサスペンションを介して車体側に伝達
される振動が低減される。
【0057】即ち、ステップS4において、バネ下共振
周波数域の入力が大きいと判断された場合には、制御ゲ
インαFL〜αRRは小さな値に設定されて、バネ上共振周
波数域に対する制御効果が低くなるが、バネ下共振周波
数域での悪影響も小さく抑えられる。一方、バネ上共振
周波数域の入力が大きいと判断された場合には、制御ゲ
インαFL〜αRRは大きな値に設定されて、バネ上共振周
波数域に対する制御効果が大きくなる。バネ下共振周波
数域での悪影響も強調されるが、該バネ下共振周波数域
成分は小さいので全体としてサスペンションを介して車
体に伝達される振動入力FFL〜FRRは低減される。
【0058】さらに、車両が走行して後輪側が、上記ス
テップ状に上昇する段差を通過する状態となると、左右
後輪11RL,11RRの段差乗り上げによって、後輪
11RL,11RRがバウンドし、これによって、後輪
11RL,11RR側のストロークセンサ27RL,2
7RRのストローク検出値SRL,SRRが零から正方向に
急増すると共に、車体側部材10に上方向の加速度が発
生し、左右後輪11RL,11RRの上下方向加速度セ
ンサ28RL,28RRの加速度検出値ZGRL,ZGRR
が正方向に増加する。
【0059】これによっても、上記と同様な制御が実施
されて、車体の揺動が抑制される。上記制御は、各車輪
11FL〜11RRを独立して実施しているので、各車
輪11FL〜11RRが個々に一過性の凸部に乗り上げ
た場合であっても、個々独立に上記制御が実施されて、
車体の揺動が抑制される。また、車輪11FL〜11R
Rが一過性に凹部に落ち込んだときには、上記と逆の制
御が実施されて車体の揺動が抑制され、さらに、一過性
の凹凸に限定されず不正路面等の連続的な凹凸路面を走
行する場合でも、各車輪11FL〜11RRが個別に制
御されて、車体の揺動が抑制される。
【0060】さらに、四輪を個別に且つ対象車輪11F
L〜11RRの路面情報を直接,使用してそれぞれ制御
しているので、車両が旋回するなど前輪11FL,11
FRと後輪11RL,11RRの軌跡がずれた場合であ
っても、各車輪11FL〜11RRでの車体に対する振
動入力を有効に抑制することが可能となる。このよう
に、本実施例では、路面情報を検出するのに、高価な非
接触型センサを使用することなく、後輪11RL,11
RR側ばかりか前輪11FL,11FR側も路面変位に
応じて有効に振動低減が可能となる。
【0061】また、四輪全輪を制御することで、後側の
座席ばかりか前側の座席に乗り心地も向上し、且つ、ピ
ッチング挙動の発生も抑えられて快適な乗り心地が確保
される。なお、上記実施例におけるステップS4で実施
する制御ゲインαFL〜αRRの算出手段は、これに限定さ
れるものではなく、例えば、入力した上下加速度検出値
GFL 〜ZGRR に対して、0.5〜5HZ のバンドパス
フィルタ処理と6〜10HZ のバンドパスフィルタ処理
を行い、両処理における一定時間単位の出力の自乗積分
値をとり、さらに、それぞれに適当な重み係数を乗じた
後に比較して、どちらの振動レベルが大きいかを判断し
て、上記制御ゲインαFL〜αRRを使用するか決定しても
よい。このとき、重み係数としては、前記説明した人間
の感度に加えてバンドパスフィルタの幅も考慮して、幅
が広い6〜10HZ 側の重み係数をさらに重くしたほう
が良い。
【0062】また、上記制御ゲインαFL〜αRRの算出で
は、2つのゲイン値a1,a2の一方を選択するように
説明しているが、制御ゲインαFL〜αRRが0〜1の間で
連続的に変化するように構成してもよい。例えば、加速
度検出値ZGFL 〜ZGRR を、PSD処置することで、
0.5〜5HZ (バネ上共振周波数域)の周波数帯での
ピークレベルと、6〜10HZ (バネ下共振周波数域)
の周波数帯でのピークレベルとを求め、その両者のピー
クレベルにそれぞれ所定の重み係数を乗じて各ピークレ
ベル値Pl,Phを算出する。次に、これをそれぞれの
周波数域での振動レベルとみなして、下記(17)式に
基づいて制御ゲインαFL〜αRRを決定する。
【0063】α=Pl/(Ph+Pl)・・・(17) 上記(17)式に基づけば、バネ上共振周波数域のピー
クレベルの方が大きくなるにつれて制御ゲインαFL〜α
RRは1に近づき、バネ下共振周波数域のピークレベルの
方が大きくなるにつれて制御ゲインαFL〜αRRは0に近
づく。または、入力した上下加速度検出値ZGFL 〜Z
GRR に対して、0.5〜5HZのバンドパスフィルタ処
理と6〜10HZ のバンドパスフィルタ処理を行い、両
処理における一定時間単位の出力の自乗積分値をとり、
それぞれに適当な重み係数を乗じた値を、それぞれJ
l,Jhとし、これをそれぞれの周波数での振動レベル
とみなして、下記(18)式に基づいて制御ゲインαFL
〜αRRを決定する。
【0064】α=Jl/(Jh+Jl)・・・(18) 上記(18)式に基づけば、バネ上共振周波数域のピー
クレベルの方が大きくなるにつれて制御ゲインαFL〜α
RRは1に近づき、バネ下共振周波数域のピークレベルの
方が大きくなるにつれて制御ゲインαFL〜αRRは0に近
づく。また、上記実施例では、バネ上共振周波数域の振
動レベルとバネ下共振周波数域の振動レベルとを比較し
て、相対的に、バネ上共振周波数の入力が大きい、又
は、バネ上共振周波数の入力が大きいと判断して制御ゲ
インαFL〜αRRを変化させているが、一方の共振周波数
域の振動レベルだけを検出して、その振動レベルの絶対
的な入力値の変化によって上記制御ゲインαFL〜αRR
変化するように構成してもよい。
【0065】また、上記実施例では、車体側部材10に
設置した車体上下方向加速度センサ28FL〜28RR
による加速度検出値ZGFL 〜ZGRR 、及びストロークセ
ンサ27FL〜27RRによるストローク検出値SFL
RRによってバネ下入力速度を推定して車輪11FL〜
11RR側からの振動入力FFL〜FRRを推定している
が、車輪11FL〜11RR側(バネ下側)に上下加速
度センサを設置して、該上下加速度センサからの加速度
検出値によって、バネ下入力速度やバネ下変位(路面変
位)を算出するようにしてもよい。
【0066】また、上記実施例においては、サスペンシ
ョンの能動制御を上下方向加速度に基づいてのみ行う場
合について説明したが、これに限定されるものではな
く、他の横方向加速度センサ、前後方向加速度センサ等
の加速度検出値に基づくロール、ピッチ、及びバウンス
を抑制する制御信号を算出し、これらを前記圧力指令値
FL〜PRRに加減算してトータル制御を行うようにして
もよい。
【0067】また、上記実施例においては、制御弁とし
て圧力制御弁20FL〜20RRを適用した場合につい
て説明したが、これに限定されるものではなく、他の流
量制御型サーボ弁等を適用しても構わない。また、上記
実施例では、バネ下入力速度等の算出をマイクロコンピ
ュータ44で全ての演算処理を実施しているが、積分器
や微分器等から構成されるアナログ回路で、一旦、バネ
下入力速度等を算出してからA/D変換器43を介して
マイクロコンピュータ44に入力させてもよい。さらに
は、コントローラ30を、マイクロコンピュータ44を
使用せずに、演算回路等の電子回路を組み合わせて構成
するようにしてもよい。
【0068】また、上記実施例では、作動流体として作
動油を適用した場合について説明したが、これに限定さ
れず圧縮率の少ない流体であれば、任意の作動流体を適
用することができる。また、上記実施例では、アクチュ
エータとして能動型サスペンションを適用した場合につ
いて説明したが、これに限定されるものではなく、減衰
力可変型ショックアブソーバ等のサスペンションの減衰
特性やバネ特性を変更し得るもので構成されていてもよ
い。
【0069】次に、第2実施例のサスペンション制御装
置について説明する。なお、第1実施例と同様な部材等
については同一の符号を附して説明する。第2実施例の
サスペンション制御装置の基本構成は、上記第1実施例
と同様な構成を備えており、図8に示すように、コント
ローラ30のマイクロコンピュータ44の演算処理にお
ける第1実施例のステップS5及びステップS6に対応
するステップS15及びステップS16の処理が相違す
るだけである。
【0070】第2実施例では、マイクロコンピュータ4
4のステップS14の処理で、第1実施例における制御
ゲインαFL〜αRRを算出する代わりにローパスフィルタ
処理のカットオフ周波数fcFL〜fcRRを算出し、ステ
ップS15でステップS13で算出した振動入力FFL
RRに対応した力を、上記算出したカットオフ周波数f
FL〜fcRRでローパフィルタ処理を実施して予見制御
力UPFL 〜UPRR を算出している。
【0071】即ち、第2実施例のマイクロコンピュータ
44のマイクロコンピュータ44における演算処理装置
44bの処理手順を、図8のフローチャートに従って説
明すると、所定のサンプリング時間TS (例えば20ms
ec)毎のタイマ割り込み処理として実行され、先ず、ス
テップS11で、各車輪11FL〜11RRに対応した
ストローク検出値SFL〜SRR及び車体上下方向加速度検
出値ZGFL 〜ZGRR を読み込み、ステップS12に移行
する。
【0072】このステップS12では、上記各車輪11
FL〜11RRに対応したストローク検出値SFL〜SRR
及び車体上下方向加速度検出値ZGFL 〜ZGRR に基づい
て、路面形状に正確に追従した各車輪11FL〜11R
Rの路面変化の微分値、即ちバネ下入力速度を推定し、
ステップS13に移行する。このバネ下入力速度の推定
の処理は、上記第1実施例のステップ2の処理と同じで
ある。
【0073】次いで、ステップS13では、上記算出し
た各車輪11FL〜11RRのバネ下入力速度を積分し
てバネ下の変位(路面変位)を算出し、バネ下入力速度
及びバネ下の変位に基づき、各車輪11FL〜11RR
位置におけるバネ下から車体へ伝達される振動入力FFL
〜FRRを算出し、ステップS14に移行する。このステ
ップS13の処理は、第1実施例におけるステップS3
の処理と同じである。
【0074】次いで、ステップS14では、使用さるカ
ットオフ周波数fcFL〜fcRRを求める。即ち、ステッ
プS11で入力した上下方向加速度検出値ZGFL 〜Z
GRR をPSD処置することで、0.5〜5HZ (バネ上
共振周波数域)の周波数帯でのピークレベル値と、6〜
10HZ (バネ下共振周波数域)の周波数帯でのピーク
レベル値とを求め、その両者のピークレベルにそれぞれ
所定の重み係数を乗じて補正後のピークレベル値Pl,
Phを算出する。上記重み係数は、例えば0.5〜5H
Z と6〜10HZ での振動に対する人間の感度が考えら
れ、この感度を基準とする場合には、一般に、0.5〜
5HZ よりも6〜10HZ での人間の感度が高いので、
6〜10HZ 側の重み係数を大きくとる。
【0075】次に、これをそれぞれの周波数域での振動
レベルとみなして、上記PlとPhとを比較し、Pl
(バネ上共振周波数域)の方が大きければ、例えばfc
=8H Z とし、Ph(バネ下共振周波数域)の方が大き
ければ、例えばfc=2HZ とする。次いで、ステップ
S15に移行して、上記バネ下からの振動入力FFL〜F
RRを打ち消す力に対して、上記ステップS14で算出し
たカットオフ周波数fcFL〜fcRRでローパスフィルタ
処理を実施して、高周波成分を除去した各制御力UPF
PRR を算出する。
【0076】次いで、ステップS16に移行して、第1
実施例のステップS6の(13)式から(16)式に従
って、総合制御力UFL〜URRを算出する。次いで、ステ
ップS17に移行して、上記ステップS16で算出した
各制御力UFL〜URRを圧力指令値PFL〜PRRとしてそれ
ぞれD/A変換器45に出力し、タイマ割り込み処理を
終了して所定のメイプログラムに復帰する。
【0077】次に、上記サスペンション制御装置の動作
を説明する。今、車両が平坦な良路を目標車高を維持し
て直進定速走行しているとする。この状態では、車両は
平坦な良路で目標車高を維持していることから、各車輪
11FL〜11RRに配設されたストロークセンナのス
トローク検出値SFL〜SRRは略零となっている。また、
車体側部材10に揺動が生じないので、各上下方向加速
度センサ28FL〜28RRの加速度検出値ZGFL 〜Z
GRR も略零となっている。このため、演算処理装置44
bで算出されるストローク微分値やバネ上変位の微分値
がそれぞれ略零であるため、バネ上速度ZVFL 〜ZVRR
も略零となる。
【0078】従って、平坦な良路走行を継続している状
態では、マイクロコンピュータ44で、所定サンプリン
グ時間TS 毎に実施される図8の処理において、ステッ
プS12で算出されるバネ下入力速度は零の状態とな
り、ステップS13で算出する振動入力FFL〜FRRも零
の状態を継続するため、ステップS16で算出する総合
制御力UFL〜URRは目標車高に維持する中立圧制御力U
N のみに対応した値となり、これらがインターフェース
回路44a及びD/A変換器45を介して駆動回路46
FL〜46RRに出力される。
【0079】このため、駆動回路46FL〜46RRで
圧力指令値PFL〜PRRに対応した指令電流iに変換され
て、それぞれ各車輪11FL〜11RRの圧力制御弁2
0FL〜20RRに供給される。この結果、圧力性制御
弁から目標車高を維持するために必要な中立圧が各車輪
11FL〜11RRの油圧シリンダ18FL〜18RR
に出力され、これら油圧シリンダ18FL〜18RRで
車体側部材10及び車輪側部材14との間のストローク
を目標車高に維持する推力を発生する。
【0080】この良路直進走行状態で、例えば前左右輪
が同時にランプステップ路を通過する状態となると、前
左右輪の段差乗り上げによって、前輪11FL,11F
Rがバウンドし、これによって、前輪11FL,11F
R側のストロークセンサ27FL〜27RRのストロー
ク検出値SFL〜SRRが零から正方向に急増すると共に、
車体側部材10に上方向の加速度が発生し、左右前輪1
1FL,11FRの上下方向加速度センサ28FL,2
8FRの加速度検出値ZGFL ,ZGFR が正方向に増加す
る。
【0081】そして、これらストローク検出値SFL〜S
RRと上下方向加速度検出値ZGFL 〜ZGRR とが、マイク
ロコンピュータ44に入力され、マイクロコンピュータ
44で所定の処理が実施される。即ち、この時点では、
後輪側では、ステップS12で算出するバネ下入力速度
やバネ下変位は零であるので、ステップS13で算出さ
れる後輪11RL,11RRに対する振動入力FRL,F
RRは零の状態を維持する。一方、前輪側では、上記検出
されたストローク検出値SFL,SFR及び上下方向加速度
検出値ZGFL ,Z GFR に基づいて、前輪11FL,11
FR側の予見制御力UPFL ,UPFR が算出される。
【0082】これによって、ステップS14で算出され
る前輪11FL,11FR側の総合制御力UFL,UFR
は、段差乗り上げよる振動入力FFL,FFRに応じて中立
制御力UN より低下され、これに応じて、前輪11F
L,11FR側の駆動回路46FL,46FRから出力
される指令値が低下し、これによって圧力制御弁20F
L,20FRから出力される前輪11FL,11FR側
の制御圧Pが中立制御 N より低下して、前輪11F
L,11FR側の油圧シリンダ18FL〜18RRの推
力が低下され、前輪11FL,11FR側のストローク
が減少することによって、前輪11FL,11FRの段
差乗り上げによる車体側部材10の揺動を抑制される。
【0083】さらに、車体側部材10に上方向の加速度
が生じると、ステップS6で、加速度検出値ZGFL 〜Z
GRR によるバネ上速度ZVFL 〜ZVRR に基づいてスカイ
フックダンパ機能が発揮して車体側部材10の上昇を抑
制する能動制御力が発生される。このとき、前輪11F
L,11FRで検出した路面情報に基づいて前輪11F
L,11FRを制御しているので、演算処理時間やアク
チュエータ系の遅れ、特に油圧制御弁の応答遅れを有す
るために、位相遅れが発生する。この位相遅れは高周波
領域に顕著であることに鑑み、本実施例では、ステップ
S14で算出したカットオフ周波数fcFL〜fcRRによ
って上記予見制御力UPFL 〜UPRR の高周波の制御力を
カットするので、上記位相遅れによる制御の悪影響が小
さく抑えられて、効果的に振動低減が図られている。
【0084】即ち、ステップS14において、バネ下共
振周波数域の入力が大きいと判断された場合には、カッ
トオフ周波数fcFL〜fcRRは小さな値に設定されて、
バネ上共振周波数域に対する制御効果が低くなるが、バ
ネ下共振周波数域での悪影響も小さく抑えられる。一
方、バネ上共振周波数域の入力が大きいと判断された場
合には、カットオフ周波数fcFL〜fcRRは大きな値に
設定されて、バネ上共振周波数域に対する制御効果が大
きくなる。バネ下共振周波数域での悪影響も強調される
が、該バネ下共振周波数域成分は小さいので全体として
サスペンションを介して車体に伝達される振動入力FFL
〜FRRは低減される。
【0085】他の構成、作用及び効果は上記第1実施例
と同様である。なお、上記第2実施例におけるステップ
S14で実施するカットオフ周波数fcFL〜fcRRの算
出手段は、これに限定されるものではなく、例えば、入
力した上下加速度検出値ZGFL 〜ZGRR に対して、0.
5〜5HZ のバンドパスフィルタ処理と6〜10HZ
バンドパスフィルタ処理を行い、両処理における一定時
間単位の出力の自乗積分値をとり、それぞれに適当な重
み係数を乗じた後に比較して、どちらの振動レベルが大
きいかを判断して、上記カットオフ周波数fcFL〜fc
RRを決定してもよい。このとき、重み係数としては、前
記説明した人間の感度に加えてバンドパスフィルタの幅
も考慮して、幅が広い6〜10HZ 側の重み係数をさら
に重くしたほうが良い。
【0086】また、上記カットオフ周波数fcFL〜fc
RRの算出では、2つの値の一方を選択するように説明し
ているが、カットオフ周波数fcFL〜fcRRが連続的に
変化するように構成してもよい。例えば、加速度検出値
GFL 〜ZGRR を、PSD処置することで、0.5〜5
Z (バネ上共振周波数域)の周波数帯でのピークレベ
ルと、6〜10HZ (バネ下共振周波数域)の周波数帯
でのピークレベルとを求め、その両者のピークレベルに
それぞれ所定の重み係数を乗じて補正後のピークレベル
Pl,Phを算出する。次に、これをそれぞれの周波数
域での振動レベルとみなして、下式(20)式に基づい
てカットオフ周波数fcFL〜fcRRを決定する。
【0087】 fc=(2・Ph+8・Pl)/(Ph+Pl)・・・(20) 上記(20)式に基づけば、バネ上共振周波数域のピー
クレベルの方が大きくなるにつれてカットオフ周波数f
FL〜fcRRは2HZ に近づき、バネ下共振周波数域の
ピークレベルの方が大きくなるにつれてカットオフ周波
数fcFL〜fc RRは8HZ に近づく。
【0088】または、入力した上下加速度検出値ZGFL
〜ZGRR に対して、0.5〜5HZのバンドパスフィル
タ処理と6〜10HZ のバンドパスフィルタ処理を行
い、両処理における一定時間単位の出力の自乗積分値を
とり、それぞれに適当な重み係数を乗じた値を、それぞ
れJl,Jhとし、これをそれぞれの周波数での振動レ
ベルとみなして、下記(21)式に基づいてカットオフ
周波数fcFL〜fcRRを決定する。
【0089】 fc=(2・Jh+8・Jl)/(Jh+Jl)・・・(21) 上記(21)式に基づけば、バネ上共振周波数域のピー
クレベルの方が大きくなるにつれてカットオフ周波数f
FL〜fcRRは2HZ に近づき、バネ下共振周波数域の
ピークレベルの方が大きくなるにつれてカットオフ周波
数fcFL〜fc RRは8HZ に近づく。
【0090】また、上記実施例では、バネ上共振周波数
域の振動レベルとバネ下共振周波数域の振動レベルとを
比較して、相対的に、バネ上共振周波数の入力が大き
い、又は、バネ上共振周波数の入力が大きいと判断して
カットオフ周波数fcFL〜fc RRを変化させているが、
一方の共振周波数域の振動レベルだけを検出して、その
振動レベルの絶対的な入力値の変化によってカットオフ
周波数fcFL〜fcRRを変化するように構成してもよ
い。
【0091】次に、第3実施例について説明する。上記
第1実施例と同様な部材については同一の符号を附して
説明する。上記第1実施例及び第2実施例では、左右前
輪11FL,11FR及び左右後輪11RL,11RR
に対して、各車輪11FL〜11RR位置でお路面位置
の情報に基づいて、それぞれの車輪11FL〜11RR
位置でのサスペンション制御をそれぞれ個別に実施して
いる。
【0092】これに対して、第3実施例では、前輪11
FL,11FR側に対するサスペンション制御について
は、上記第1実施例に説明したサスペンション制御を行
うが、後輪11RL,11RR側に対しては、前輪11
FL,11FR側で検出した路面情報に基づいてサスペ
ンション制御を行うものである。第3実施例のサスペン
ション制御装置の基本構成は、第1実施例の構成と同様
であり、コントローラ30による処理が相違していると
共に、車速を検出する車速センサが設けられ、車両速度
に応じた車速信号をコントローラ30に供給可能となっ
ている。但し、後輪11RL,11RR側では車輪11
RL,11RRと車体との間のストロークを検出する必
要がないので、後輪11RL,11RR側にはストロー
クセンサは設置されていない。
【0093】次に、第3実施例におけるコントローラ3
0について説明する。コントローラ30は、図9に示さ
れているように、前輪11FL,11FR側のストロー
クセンサ27FL,27FRから入力されるストローク
検出値SFL,SFRと各四輪位置での上下方向加速度セン
サ28FL〜28RRから出力される車体上下方向加速
度検出値ZGFL 〜ZGRR とをそれぞれデジタル値に変化
するA/D変換器43と、A/D変換器43のA/D変
換出力が入力されるマイクロコンピュータ44と、この
マイクロコンピュータ44から出力される圧力指令値P
FL〜PRRがD/A変換値を介して供給され、これらを圧
力制御弁20FL〜20RRに対する駆動電流iFL〜i
RRに変換する例えばフローティング形定電圧回路で構成
される駆動回路46FL〜46RRとを備えている。
【0094】上記マイクロコンピュータ44は、少なく
とも、インターフェース回路44a、演算処理装置44
b及び記憶装置44cを有する。インターフェース回路
44aには、A/D変換器43の変換出力が入力される
と共に、演算処理装置44bからの各圧力制御弁20F
L〜20RRに対する圧力指令値PFL〜PRRがD/A変
換器45に出力される。
【0095】また、演算処理装置44bは、後述する処
理を実行して、所定のサンプリング時間TS (例えば2
0msec)毎に、ストローク検出値SFL〜SRR及び車体上
下方向加速度検出を読み込み、各前輪11FL,11F
R位置におけるバネ下から車体に伝達する路面変位の微
分値に基づき前輪11FL,11FR側の振動入力F FL
〜FRRをそれぞれ推定し、その推定値に基づいて各前車
輪11FL〜11RRのアクチュエータとしての油圧シ
リンダ18FL〜18RRで発生する予見制御力を演算
する。
【0096】同時に、上記路面変位の微分値を車速検出
値に基づいて算出した前後輪11RL,11RR間の遅
延時間τと共に記憶装置44cに形成した所定段数のシ
フトレジスタに対応する記憶領域に順次シフトしながら
格納し、遅延時間τについてはシフトする際にサンプリ
ング時間TS を順次減算しながら格納し、遅延時間τが
零に達した路面変位の微分値に基づいて後輪11RL,
11RR側のアクチュエータとしての油圧シリンダ18
RL,18RRで発生する予見制御力UPRL, PRR を演
算する。さらに、各車輪11FL〜11RR位置での度
加速度センサ28FL〜28RRからの各車体上下方向
加速度検出値ZGFL 〜ZGRR を積分した車体上下速度Z
VFL 〜ZVRR に基づいてスカイフックダンパ機能を発揮
する各車輪11FL〜11RRに対する能動制御用制御
力を算出し、両制御力を加算した値を、各圧力制御弁2
0FL〜20RRに対する圧力指令値PFL〜PRRとして
D/A変換器45に出力する。
【0097】また、記憶装置44cは、予め演算処理装
置44bの演算処理に必要なプログラムが記憶されてい
ると共に、所定サンプリング時間TS 毎に読み込む路面
変位の微分値を遅延時間τと共に順次シフトしながら所
定数格納可能なシフトレジスタ領域を備え、さらに、演
算処理装置44bの演算過程で必要な演算結果を逐次,
記憶可能となっている。
【0098】次に、上記実施例の動作を、マイクロコン
ピュータ44における演算処理装置44bの処理手順
を、図9のフローチャートに従って説明する。図9の処
理は、所定のサンプリング時間TS (例えば20msec)
毎のタイマ割り込み処理として実行される。先ず、ステ
ップS21で、各前輪11FL,11FRに対応した各
ストローク検出値SFL,SFR及び車体上下方向加速度検
出値をそれぞれ読み込むと共に、車速センサによって検
出された現在の車速検出値を読み込み、ステップS22
に移行する。
【0099】このステップS22では、上記各前輪11
FL,11FRに対応したストローク検出値SFL,SFR
及び車体上下方向加速度検出値ZGFL ,ZGFR に基づい
て、路面形状に正確に追従した各前輪11FL,11F
R位置の路面変化の微分値、即ちバネ下入力速度を推定
し、ステップS23に移行する。このバネ下入力速度の
推定の処理は、ストローク検出値SFL,SFRを微分して
ストローク速度を算出すると共に、車体上下方向加速度
検出値ZGFL ,ZGFR を積分してバネ上変位の微分値を
算出する。次に、上記ストローク速度とバネ上変位の微
分値とを加算することで、路面形状に正確に追従した各
前輪11FL,11FR位置の路面変位の微分値が出力
される。
【0100】ステップS23では、上記算出した各前輪
11FL,11FRのバネ下入力速度を積分してバネ下
の変位(路面変位)を算出し、上記バネ下入力速度及び
バネ下の変位に基づき、下記(17)式及び(18)式
の演算をそれぞれ行うことで、各前輪11FL,11F
R位置における、サスペンションを介してバネ下から車
体へ伝達される振動入力FFL,FFRを算出し、ステップ
S24に移行する。
【0101】 FFL=CFL・(dXFL/dt)+KFL・XFL ・・・(17) FFR=CFR・(dXFR/dt)+KFR・XFR ・・・(18) ここで、CFL,CFRは、それぞれ各前輪11FL,11
FRに対応するショックアブソーバの減衰係数を表し、
FL,KFRは、それぞれ各前輪11FL,11FRに対
応するサスペンションのバネ定数を表している。
【0102】次いで、ステップS24では、制御ゲイン
αFL〜αRRを算出する。即ち、ステップS21で入力し
た各前輪11FL,11FRでの上下方向加速度検出値
GF L ,ZGFR をPSD処置することで、0.5〜5H
Z (バネ上共振周波数域)の周波数帯でのピークレベル
値と、6〜10HZ (バネ下共振周波数域)の周波数帯
でのピークレベル値とを求め、その両者のピークレベル
値にそれぞれ所定の重み係数を乗じた各補正後のピーク
レベル値Pl,Phを算出する。上記重み係数は、例え
ば0.5〜5HZ と6〜10HZ での振動に対する人間
の感度が考えられ、この感度を基準とする場合には、一
般に、0.5〜5HZ よりも6〜10H Z での人間の感
度が高いので、6〜10HZ 側の重み係数を大きくと
る。
【0103】次に、これをそれぞれの周波数域での振動
レベルとみなして、上記PlとPhとを比較し、Pl
(バネ上共振周波数域)の方が大きければ、α=a1と
し、Ph(バネ下共振周波数域)の方が大きければ、α
=a2とする。上記a1,a2は、0≦a1≦a2≦1
の関係を有し、例えば、a1=0.2、a2=0.7に
設定しておく。
【0104】次いで、ステップS25に移行して、下記
(19)式から(20)式に従って、各前輪11FL,
11FR位置に対応するバネ下からの振動入力FFL,F
FRを打ち消す制御力UPFL ,UPFR を算出する。 UPFL =−αFL・FFL ・・・(19) UPFR =−αFR・FFR ・・・(20) 次いで、ステップS26に移行して、上記読み込んだ車
速検出値Vをもとに下記(21)式の演算を行って、前
輪11FL,11FRが通過した路面に後輪11RL,
11RRが到達するまでの遅延時間τを算出する。
【0105】 τ = (L/V) −τS ・・・(21) ここで、Lはホィールベースを示し、τS は制御系の遅
れ時間であって、油圧系の応答遅れとコントローラ30
の演算むだ時間等の加算値で表される。次いで、ステッ
プ27に移行して、今回の車速検出値V(n)あらサン
プリング時間TS だけ前の前回の車速検出値V(n−
1)との偏差でなる単位時間Ts当たりの変化速度ΔV
を算出し、ホィールベースLを変化速度ΔVで除して遅
延時間補正値Δτを算出する。
【0106】次いで、ステップS28に移行して、上記
算出した路面変位の微分値(バネ下入力速度)と遅延時
間τとを記憶装置44cに形成したシフトレジスタ領域
の先頭位置に格納すると共に、前回までに格納されてい
る路面変化の微分値及び遅延時間τとを順次シフトす
る。このとき、遅延時間τについてはシフトする際に、
各シフト位置の遅延時間τからサンプリング時間TS
び上記算出した遅延時間補正値Δτをそれぞれ減殺した
新たな遅延時間τとして更新して格納する。
【0107】次いで、ステップS29に移行して、シフ
トレジスタ領域に格納されている最古即ち遅延時間τが
零となった路面変化の微分値を読み出し、該読みだした
最古の路面変化の微分値及びそれに対する遅延時間τを
シフトレジスタ領域から消去する。次いで、ステップS
30に移行して、ステップS29で読み込んだ路面変化
の微分値を積分して路面変化を推定し、該路面変化の微
分値、及び路面変化に基づいて下記(22)式及び(2
3)式の演算を行い後輪11RL,11RR側で発生す
るであろう後輪11RL,11RRからの振動入力
RL,FRRを算出する。
【0108】 FRL=CRL・(dXRL/dt)+KRL・XRL ・・・(22) FRR=CRR・(dXRR/dt)+KRR・XRR ・・・(23) ここで、CRL,CRRは、それぞれ各後輪11RL,11
RRに対応するショックアブソーバの減衰係数を表し、
RL,KRRは、それぞれ各後輪11RL,11RRに対
応するサスペンションのバネ定数を表している。
【0109】さらに、下記(24)式及び(25)式の
演算を実施して、後輪11RL,11RR側の圧力制御
弁20FL〜20RRに対する予見制御力UPRL ,U
PRR を算出する。 UPRL =−FRL ・・・(24) UPRR =−FRR ・・・(25) 次いで、ステップS31に移行して、下記(26)式か
ら(29)式に従って、各車輪11FL〜11RRに対
する総合制御力UFL〜URRを算出する。
【0110】 UFL=UN −KB ・ZVFL +UPFL ・・・(26) UFR=UN −KB ・ZVFR +UPFR ・・・(27) URL=UN −KB ・ZVRL +UPRL ・・・(28) URR=UN −KB ・ZVRR +UPRR ・・・(29) ここで、UN は車高を目標車高に維持するために必要な
制御力を示し、KB はバウンス制御ゲインである。
【0111】次いで、ステップS32に移行して、上記
ステップS31で算出した各制御力UFL〜URRを圧力指
令値PFL〜PRRとしてそれぞれD/A変換器45に出力
し、タイマ割り込み処理を終了して所定のメイプログラ
ムに復帰する。次に、上記サスペンション制御装置の動
作を説明する。今、車両が平坦な良路を目標車高を維持
して直進定速走行しているとする。この状態では、車両
は平坦な良路で目標車高を維持していることから、各前
輪11FL,11FRに配設されたストロークセンサ2
7FL,27FRのストローク検出値SFL,SFRは略零
となっている。また、車体側部材10に揺動が生じない
ので、各上下方向加速度センサ28FL〜28RRの加
速度検出値ZGFL 〜ZGR R も略零となっている。このた
め、演算処理装置44bで算出されるストローク微分値
やバネ上変位の微分値がそれぞれ略零であるため、バネ
上速度ZVFL ,Z VFR も略零となる。
【0112】従って、平坦な良路走行を継続している状
態では、マイクロコンピュータ44で、所定サンプリン
グ時間TS 毎に実施される図9の処理において、ステッ
プS22で算出されるバネ下入力速度は零の状態とな
り、ステップS23で算出する振動入力FFL,FFRも零
の状態が継続する。このため、ステップS26で算出さ
れる遅延時間τが経過した後の路面変位の微分値も零と
なっていてステップS30だ算出される後輪11RL,
11RR側の予見制御力UPRL ,UPRR も零となり、一
方バネ上速度ZVFL ,ZVFR も零であるので、ステップ
S31で算出される総合制御力UFL〜URRは目標車高に
維持する中立圧制御力UN のみに対応した値となり、こ
れらがインターフェース回路44a及びD/A変換器4
5を介して駆動回路46FL〜46RRに出力される。
【0113】このため、各駆動回路46FL〜46RR
で圧力指令値PFL〜PRRに対応した指令電流iに変換さ
れて、それぞれ各車輪11FL〜11RRの圧力制御弁
20FL〜20RRに供給される。この結果、圧力性制
御弁から目標車高を維持するために必要な中立圧が各車
輪11FL〜11RRの油圧シリンダ18FL〜18R
Rにそれぞれ出力され、これら油圧シリンダ18FL〜
18RRで車体側部材10及び車輪側部材14との間の
ストロークを目標車高に維持する推力が発生する。
【0114】この良路直進走行状態で、例えば左右前輪
11FL,11FRが同時にランプステップ路を通過す
る状態となると、左右前輪11FL,11FRの段差乗
り上げによって、前輪11FL,11FRがバウンド
し、これによって、前輪側に配置されたストロークセン
サ27FL,27FRのストローク検出値SFL,SFR
零から正方向に急増すると共に、前輪側の車体側部材1
0に上方向の加速度が発生し、左右前輪11FL,11
FRの上下方向加速度センサ28FL,28FRの加速
度検出値ZGFL ,ZGFR が正方向に増加する。
【0115】そして、これらストローク検出値SFL,S
FRと上下方向加速度検出値ZGFL ,ZGFR とが、マイク
ロコンピュータ44に入力され、マイクロコンピュータ
44で所定の処理が実施される。即ち、第1実施例にお
けるステップS1〜ステップ5と同様な処理である、ス
テップS21からステップS25までの処理が実施され
ることで、前輪11FL,11FR側に対して、上記検
出されたストローク検出値SFL,SFR及び上下方向加速
度検出値ZGFL ,ZGFR に基づき、予見制御力UPFL
PFR が算出される。
【0116】さらに、ステップS26の処理で、前輪1
1FL,11FRが通過した路面に後輪11RL,11
RRが到達する迄の遅延時間τを算出し、これと路面変
位の微分値とをシフトレジスタ領域の先頭領域に格納す
ると共に、前回までの零の路面変位の微分値と遅延時間
τとを順次1つずつシフトする。このとき、各遅延時間
τからサンプリング時間TS とステップS27で算出さ
れた遅延時間補正値Δτとを減算した値を新たな遅延時
間τとして更新する。
【0117】この時点では、シフトレジスタ領域に格納
されている前回までの各路面変位の微分値は零であるの
で、ステップS30で算出される後輪11RL,11R
Rに対する予見制御力UPRL , PRR は零の状態を維持
する。これによって、ステップS31で算出される前輪
11FL,11FR側の総合制御力UFL,UFRが、段差
乗り上げによる振動入力FFL,FFRに応じて中立制御力
N よりも低下され、これに応じて、前輪11FL,1
1FR側の駆動回路46FL〜46RRから出力される
指令値が低下し、これによって圧力制御弁20FL〜2
0RRから出力される前輪11FL,11FR側の制御
圧Pが中立圧P N よりも低下して、前輪11FL,11
FR側の油圧シリンダ18FL,18FRの推力が低下
され、前輪11FL,11FR側のストロークが減少す
ることによって、スカイフックダンパ機能が発揮して前
輪11FL,11FRの段差乗り上げによる車体側部材
10の揺動を抑制される。
【0118】その後、前輪11FL,11FRがランプ
ステップ路を通過し終わると、再度、前輪11FL,1
1FRについては目標車高を維持する総合制御力UFL
FRの値に復帰する。しかし、後輪11RL,11RR
については、ステップS26で算出した遅延時間τが零
となる時点、即ち、後輪11RL,11RRがランプス
テップ路を通過する時点で、ステップS29の処理で、
上記前輪11FL,11FRが段差乗り上げ時の路面変
化の微分値が読み出され、これらに基づいて後輪11R
L,11RRに対する予見制御力UPRL ,UPRR が算出
されるので、路面凹凸による影響が車体に殆ど伝達され
ずに、良好な乗り心地を確保することができる。
【0119】しかも、後輪11RL,11RR側の車体
側部材10に上下方向の加速度が生じたときには、この
加速度が、後輪11RL,11RR側の上下方向加速度
センサ28FL〜28RRで検出され、各後輪11R
L,11RR位置でのバネ上速度ZVRL , VRR が算出
されて、スカイフックダンパ機能を発揮して車体側部材
10の上昇を抑制する能動制御力が発揮され、これによ
って、圧力制御弁20RL, 20RRが制御されること
で、油圧シリンダ18RL,18RRに供給される油圧
が制御されて、車体の揺動が抑制される。
【0120】なお、上記第3実施例では、前輪11F
L,11FR側の予見制御力UPFL ,UPFR の算出の際
に、第1実施例の処理に基づき、制御ゲインαFL,αFR
を設定変更して求めているが、第2実施例の処理に基づ
き、ローパスフィルタ処理を実施して該ローパスフィル
タのカットオフ周波数fcFL,fcFRを設定変更して、
前輪側の最適なサスペンション制御を実施してもよい。
【0121】また、上記第3実施例では、スカイフック
ダンパ機能の制御を実施するために、後輪11RL,1
1RR側にも上下方向加速度センサ28FL〜28RR
を設けているが、該スカイフックダンパ機能の制御を実
施しない場合には、後輪11RL,11RR側に上下方
向加速度センサ28RL,28RRを設ける必要がな
い。このように、後輪11RL,11RR側にストロー
クセンサ27RL,27RR及び上下方向加速度センサ
28RL,28RRが不要となる分だけ、上記第1実施
例または第2実施例よりもサスペンション制御装置のコ
ストが低減する。
【0122】また、上記全実施例において、各車輪に対
応して4つの上下方向加速度センサ28FL〜28RR
を配設しているが、車両に対して、相互に一直線上に並
ばない任意の位置に3個の上下方向度センサを配設し
て、この3つの上下方向加速度センサからの検出値によ
って各車輪位置の上下加速度を推定するようにしてもよ
い。
【0123】
【発明の効果】以上説明して来たように、本発明のサス
ペンション制御装置では、対象車輪位置の路面情報に基
づいて、当該対象車輪からサスペンションを介して車体
に入力される振動入力を有効に低減することが可能とな
るという効果がある。これによって、前輪・後輪の四輪
全輪に対する各サスペンション制御が、高価な非接触型
センサを使用することなく、また、バネ下から車体に入
力される振動入力によって制御することで、埃,泥,水
滴,雪溜まり等によって誤差の生じない安定して振動の
低減が実施される。
【0124】また、上記サスペンション制御における振
動入力推定手段として、請求項に記載した構成を採用
すると、ストローク検出手段と車体上下加速度検出手段
による検出値から、対象車輪における振動入力が推定可
能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る第1実施例を示す概略構成図であ
る。
【図2】本発明に係る第1実施例のコントローラの一例
を示す概略構成図である。
【図3】本発明に係る実施例の圧力制御弁の指令電流に
対する制御圧の関係を示す特性線図である。
【図4】本発明に係る実施例のストロークセンサの出力
特性を示す特性線図である。
【図5】本発明に係る実施例の上下方向加速度センナの
出力特性を示す特性線図である。
【図6】1輪1自由度の車両モデルを示す説明図であ
る。
【図7】本発明に係る第1実施例のマイクロコンピュー
タの処理手順を示す流れ図である。
【図8】本発明に係る第2実施例のマイクロコンピュー
タの処理手順を示す流れ図である。
【図9】本発明に係る第3実施例のマイクロコンピュー
タの処理手順を示す流れ図である。
【図10】応答遅れの対策がない場合における、路面変
化に対する車体への伝達特性を示す特性線図である。
【図11】ローパスフィルタのカットオフ周波数を変化
させた場合における、路面変化に対する車体への伝達特
性を示す特性線図である。
【符号の説明】
10 車体側部材 11FL〜11RR 車輪 18FL〜18RR 油圧シリンダ 20FL〜20RR 圧力制御弁 22 油圧源 27FL〜27RR ストロークセンサ 28FL〜28RR 上下方向加速度センサ 30 コントローラ 44 マイクロコンピュータ 46FL〜46RR 制御弁駆動回路
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平5−319067(JP,A) 特開 平7−101221(JP,A) 特開 平7−300009(JP,A) 特開 昭61−135811(JP,A) 特開 昭61−166715(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B60G 17/015

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 車輪と車体との間に介装されて制御信号
    によって該車輪と車体との上下ストロークを制御可能な
    制御力を発生するアクチュエータと、サスペンションを
    介してバネ下から車体へ伝達する振動入力を推定する振
    動入力推定手段と、上記振動入力にローパスフィルタ処
    理を実施し、その後の振動入力を打ち消すような制御信
    号を上記アクチュエータに供給する制御手段と、を備
    え、上記制御手段は、バネ下共振周波数の入力が大きく
    なるに応じて上記ローパスフィルタ処理のカットオフ周
    波数が低くなるように設定されていることを特徴とする
    サスペンション制御装置。
  2. 【請求項2】 車輪と車体との間に介装されて制御信号
    によって該車輪と車体との上下ストロークを制御可能な
    制御力を発生するアクチュエータと、サスペンションを
    介してバネ下から車体へ伝達する振動入力を推定する振
    動入力推定手段と、上記振動入力にローパスフィルタ処
    理を実施し、その後の振動入力を打ち消すような制御信
    号を上記アクチュエータに供給する制御手段と、を備
    え、上記制御手段は、バネ上共振周波数の入力が大きく
    なるに応じて上記ローパスフィルタ処理のカットオフ周
    波数が高くなるように設定されていることを特徴とする
    サスペンション制御装置。
  3. 【請求項3】 上記振動入力推定手段は、上記アクチュ
    エータと並列に介装され車体と車輪との間の相対変位を
    検出するストローク検出手段と、車体の上下加速度を検
    出する車体上下加速度検出手段と、上記ストローク検出
    によって検出されるストローク検出値、及び車体上下加
    速度検出からの上下加速度検出値からバネ下の運動速度
    を推定し、その推定したバネ下の運動速度から振動入力
    値を算出する振動入力算出手段と、からなることを特徴
    とする請求項1又は請求項のいずれかに記載されたサ
    スペンション制御装置。
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