JP2906831B2 - エアブレーキシステム - Google Patents

エアブレーキシステム

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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、補助ブレーキを備えた
車両のエアブレーキシステムに関する。
【0002】
【従来の技術】従来の車両は、制動時に運動エネルギを
摩擦エネルギに変えて大気に放散している。しかしなが
ら、省エネルギ及び排出ガスの低減を図るために、車両
の減速時の制動エネルギを活かして発進・加速時に再利
用するようにした制動エネルギ回生システムが実用化に
向けて開発されつつある。
【0003】図1は、補助ブレーキとしての蓄圧式の制
動エネルギ回生シテスムの構成例を示し、車軸1にギヤ
ボックス2を介して油圧ポンプ/モータ3を接続し、油
圧ポンプ/モータ3の一方のポート3aを作動油タンク
4に、他方のポート3bを切換弁(逆止弁)5を介して
アキュームレータ6に接続し、ブレーキペダル7、アク
セルペダル8からのブレーキ信号、アクセル信号に応じ
てコントロールユニット9により油圧ポンプ/モータ3
の傾転角(斜板の傾斜角)、切換弁5を制御するもので
ある。このようにして制動エネルギ回生システム10が
構成されている。
【0004】制動時にブレーキペダル7が踏まれると、
コントロールユニット9が油圧ポンプ/モータ3の傾転
角を制御する。油圧ポンプ/モータ3は、車輪により駆
動されてポンプとして作動し、作動油タンク4から切換
弁5を通してアキュームレータ6のオイル室6aにオイ
ルを圧送し、ピストン6bを図中左方に押圧してガス室
6cに封入されている窒素ガス(N2 )を圧縮する。こ
れにより減速時における車両の運動エネルギが油圧を介
してアキュームレータ6に蓄積される。そして、制動エ
ネルギ回生システム10は、補助ブレーキとして機能す
る。
【0005】発進・加速時には、コントロールユニット
9は、トランスミッションギヤ位置、クラッチペダルの
踏み代、アクセル開度等の運転者の発進操作を検知し、
切換弁5を開弁させると共に油圧ポンプ/モータ3の傾
転角を制御し、アキュームレータ6に蓄積されたオイル
を前記制動時と反対方向に流し、油圧ポンプ/モータ3
にトルクを発生させて油圧モータとし、車輪を駆動して
エンジンが発生する駆動力を補助する。これにより発進
・加速時における排出ガス中のNOX、CO2の低減、燃
費、黒煙の低減等が図られる。この制動エネルギ回生シ
ステム10は、発進・停止の多い市街地を走行する路線
バス等に有効である。
【0006】図2は、サービスブレーキ15としてエア
ブレーキを使用し、補助ブレーキとして図1に示す制動
エネルギ回生システム10を使用したブレーキシステム
を示し、ブレーキペダル7が踏まれると、踏込量に応じ
て開弁するブレーキバルブ11を通してエアタンク12
からエア圧が差圧弁13に供給される。差圧弁13には
バイパス通路18が設けられ、途中にバイパス通路18
を開閉するバイパス弁(オン−オフ電磁弁)19が接続
されている。差圧弁13は、入力ポート13aのエア圧
が出力ポート13bのエア圧よりも高くなりその差圧が
設定圧を超えると開弁する。また、イパス弁19は、
非通電時に開弁され、通電時に閉弁される。
【0007】コントロールユニット9は、ブレーキバル
ブ11の吐出圧を検出する圧力センサ14から信号(ブ
レーキ信号)が入力されると制動エネルギ回生システム
(以下「補助ブレーキ」という)10を作動させると共
に、バイパス弁19を閉弁させてバイパス通路18を閉
じ、差圧弁13が作動する前即ち、サービスブレーキ1
5が作動する前に補助ブレーキ10を作動させて制動エ
ネルギを有効に回収し得るようになっている。このとき
車両は、補助ブレーキ10のみにより制動される。
【0008】ブレーキペダル7の踏込量が多くなりブレ
ーキバルブ11から吐出されるエア圧が高くなり、差圧
弁13の入力側のエア圧と出力側のエア圧との差圧が
定圧を超えると、当該差圧弁13が開弁してエアマスタ
16にエア圧を供給する。これにより主ブレーキ装置1
7を駆動してサービスブレーキ15が作動する。このと
きコントロールユニット9は、圧力センサ14からの入
力信号によりブレーキバルブ11の出力側(以下「一次
側」という)のエア圧の増加速度を検出し、所定値より
も大きいときにはバイパス弁19を開弁させてバイパス
通路18を開くと共にタイマをセットし、所定のタイマ
時間t0経過後にバイパス通路18を閉じ、ブレーキペ
ダル7を踏み込んだ際にほんの少しの間(タイマ時間t
0)サービスブレーキ15を作動させて必要な制動力を
付与した後当該サービスブレーキ15を解除させて補助
ブレーキ10のみを作動させ、前述したようにエネルギ
を有効に回収するようにしている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記構
成のブレーキシステムにおいては、図3に示すようにブ
レーキバルブ11の出力側のエア圧即ち、差圧弁13の
入力ポート13aのエア圧P1 と出力ポート13bのエ
ア圧との差圧が設定圧P0を超えないと当該差圧弁13
が開弁せず、エアマスタ16の入力側のエア圧P2が上
昇しない場合差圧弁13→エアマスタ16→主ブレーキ
装置(ブレーキシリンダ)17に至る経路においてヒス
テリシスや摩擦抵抗等に起因する渋りのために差圧弁1
3の設定圧以上にブレーキバルブを踏み込んでもサービ
スブレーキ15側に一瞬の遅れを生じ、補助ブレーキを
持たない車両のブレーキフィーリングと違和感があると
いう問題がある。
【0010】本発明は上述の点に鑑みてなされたもの
で、ブレーキペダルの踏み増し時におけるサービスブレ
ーキの応答性を良くして補助ブレーキを持たない車両の
ブレーキフィーリングと違和感のないようにしたエアブ
レーキシステムを提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に請求項1の発明では、ブレーキペダルの踏み込み量に
応じたエア圧を出力するブレーキバルブとエアマスタと
の間の通路に介装され、前記ブレーキバルブの出力側の
エア圧と前記エアマスタ側のエア圧との差圧が設定圧を
超えたときに前記ブレーキバルブのエア圧を前記エアマ
スタ側に供給可能な差圧弁と、前記差圧弁に並列に接続
され前記ブレーキバルブのエア圧を前記エアマスタに供
給可能なバイパス通路を開閉するバイパス弁と、前記ブ
レーキバルブの出力側のエア圧と前記エアマスタの入力
側のエア圧を検出し、前記ブレーキバルブからエア圧の
出力が検出されると補助ブレーキを作動させると共に、
前記ブレーキバルブの出力側のエア圧と前記エアマスタ
の入力側のエア圧とに応じて前記バイパス弁を開弁する
制御手段とを有することを特徴とする。請求項2の発明
では、前記制御手段が、前記ブレーキバルブの出力側の
エア圧が所定圧よりも高く前記エアマスタの入力側のエ
ア圧が前記所定圧よりも低いときに前記バイパス弁を
弁することを特徴とする。
【0012】
【作用】制御手段は、ブレーキペダルの踏み込み時にブ
レーキバルブの出力側のエア圧とエアマスタの入力側の
エア圧とに応じてバイパス通路を開けてエアマスタに予
圧を付与する。これによりブレーキペダルの踏み増し時
にエアマスタが速やかに作動する。即ち、サービスブレ
ーキの応答性が良くなり、補助ブレーキを装備しない車
両とのブレーキフィーリングの違和感が無くなる。
【0013】
【実施例】以下本発明の一実施例を添付図面に基づいて
詳述する。尚、図2と同一部材には、同一符号を付して
ある。図4においてエアブレーキシステムのブレーキバ
ルブ11は、入力ポートがエアタンク12に、出力ポー
トがエア通路30により差圧弁13の入力ポート13a
に接続されており、当該差圧弁13の出力ポート13b
は、バイパス弁20を介してサービスブレーキ15のエ
アマスタ16に接続可能とされている。そして、エアマ
スタ16は、主ブレーキ装置17に接続されている。
【0014】エア通路30には圧力センサ14が取付ら
れており、差圧弁13にはバイパス通路31が設けられ
ている。バイパス通路31は、一端がエア通路30の圧
力センサ14の下流側に接続されており、他端がバイパ
ス弁20を介してエアマスタ16に接続可能とされてい
る。圧力センサ14、バイパス弁20は、コントロール
ユニット(C/U)9に接続されており、当該コントロ
ールユニット9には補助ブレーキ10が電気的に接続さ
れている。
【0015】ブレーキバルブ11は、ブレーキペダル7
の踏込量に応じて開弁しエアタンク12内のエア圧をエ
ア通路30に供給する。差圧弁13は、入力ポート13
のエア圧が出力ポート13bのエア圧よりも高くなりそ
の差圧が設定圧を超えると開弁してエアマスタ16にエ
ア圧を供給する。エアマスタ16は、エアタンク12か
ら差圧弁13を通して供給されるエア圧に応じて主ブレ
ーキ装置17を駆動して車輪に制動力を付与する。圧力
センサ14は、エア通路30のエア圧(一次側エア圧)
1 を検出して対応する圧力信号(ブレーキ信号)を出
力してコントロールユニット9に加える。
【0016】バイパス弁20は、三方電磁弁でコントロ
ールユニット9により切換制御され、ソレノイド20s
が消勢されているときには復帰スプリングのばね力によ
り位置20Aに切り換えられ、ソレノイド20sが付勢
されると位置20Bに切り換えられる。そして、バイパ
ス弁20は、位置20Aに切り換えられると、差圧弁1
3の出力ポート13bを閉じると共にバイパス通路31
とエアマスタ16とを接続し、位置20Bに切り換えら
れると、差圧弁13の出力ポート13bとエアマスタ1
6とを接続すると共にバイパス通路31を閉じる。
【0017】バイパス弁20の吐出ポートとエアマスタ
16の入力ポートとを接続するエア通路32には圧力セ
ンサ21が設けられている。この圧力センサ21は、エ
アマスタ16に供給されるエア圧(二次側エア圧)P2
を検出して対応する圧力信号をコントロールユニット9
に加える。コントロールユニット9は、圧力センサ14
から信号が入力されると補助ブレーキ10を制御すると
共に、バイパス弁20を制御してエア通路32即ち、エ
アマスタ16の入力側に予圧P3 を付与し、ブレーキペ
ダル7の踏み増し時におけるサービスブレーキ15の応
答遅れを少なくする。
【0018】以下に図5のフローチャートを参照しつつ
作用を説明する。ブレーキバルブ11は、ブレーキペダ
ル7が解放されているときには閉弁されており、圧力セ
ンサ14は、信号を出力しない。そして、コントロール
ユニット9は、補助ブレーキ10を非作動状態に保持す
ると共にバイパス弁20を消勢している。バイパス弁2
0は、消勢されているときには位置20Aに切り換えら
れており、差圧弁13の出力ポート13bが閉じられ、
バイパス通路31がエアマスタ16に接続されている。
【0019】ブレーキペダル7が踏み込まれるとこれに
応じてブレーキバルブ11が開弁し、エアタンク12内
のエア圧がエア通路30に供給される。圧力センサ14
は、この一次側のエア圧力を検出して対応する信号をコ
ントロールユニット9に加える。コントロールユニット
9は、圧力センサ14から入力される信号により補助ブ
レーキ10を作動させて制動エネルギの回収を始めると
共に一次側エア圧P1 が予圧P3 よりも高い(P1 >P
3 )か否かを判別(ステップ1)し、その判別答が肯定
(YES)のときには圧力センサ21から入力される信
号により二次側エア圧P2 が予圧P3 よりも高い(P2
>P3 )か否かを判別(ステップ1)し、その判別答が
否定(NO)のときにはバイパス弁20を消勢して位置
20Aに切り換え、バイパス通路31を開けて(ステッ
プ3)エア通路32に接続し、エアマスタ16に予圧P
3 を付与する。これによりサービスブレーキ15は、差
圧弁20の設定圧以下のブレーキペダル7の踏み増し時
に速やかに応答可能となる。この予圧P3 は、例えば、
0.1 〜0.4 kg/cm2程度の低いエア圧である。
【0020】コントロールユニット9は、ステップ1の
判別答が否定(NO)のとき即ち、一次側エア圧P1
予圧P3 よりも低いとき、又はステップ2の判別答が肯
定(YES)のとき即ち、二次側エア圧P2 が予圧P3
よりも高いときにはバイパス弁20を付勢して位置20
Bに切り換え、バイパス通路31を閉じ(ステップ4)
てエア通路32と遮断する。
【0021】図6は、前記制御による減速度とブレーキ
エア圧P1 、P2 の変化を示し、ブレーキペダル7が僅
かに踏み込まれて減速するときにはエア通路32に予圧
3が付与され、更に減速すべくブレーキペダル7を踏
み増し差圧弁13が開弁したときに二次側のエア圧P2
が直ちに上昇する。これによりサービスブレーキ15の
応答性が良くなる。
【0022】尚、上記実施例においては、バイパス弁2
0として三方電磁弁を使用したが、これに限るものでは
なく、図2に示すようにバイパス通路を単に開閉させる
電磁弁を使用してもよいことは勿論である。
【0023】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、差
圧弁の設定圧以下のブレーキペダルの踏み込み状態から
ブレーキペダルを踏み増したときのサービスブレーキの
応答性が向上し、補助ブレーキを装備しない車両との違
和感が少ないブレーキフィーリングを得ることが可能と
なるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】制動エネルギ回生システムの概要を示す構成図
である。
【図2】図1の制動エネルギ回生システムを装備した車
両のエアブレーキシステムを示す構成図である。
【図3】図2のエアブレーキシステムにおける減速度と
ブレーキエア圧の変化を示す図である。
【図4】本発明に係るエアブレーキシステムの一実施例
を示す構成図である。
【図5】図4のエアブレーキシステムの制御手順を示す
フローチャートである。
【図6】図4のエアブレーキシステムにおける減速度と
ブレーキエア圧の変化を示す図である。
【符号の説明】
1 車軸 2 ギヤボックス 3 油圧ポンプ/モータ 4 作動油タンク 5 切換弁 6 アキュームレータ 7 ブレーキペダル 8 アクセルペダル 9 コントロールユニット 10 制動エネルギ回生システム(補助ブレーキ) 11 ブレーキバルブ 13 差圧弁 14、21 圧力センサ 15 サービスブレーキ 16 エアマスタ 17 主ブレーキ装置 20 バイパス弁(電磁弁)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ブレーキペダルの踏み込み量に応じたエ
    ア圧を出力するブレーキバルブとエアマスタとの間の通
    路に介装され、前記ブレーキバルブの出力側のエア圧と
    前記エアマスタ側のエア圧との差圧が設定圧を超えたと
    きに前記ブレーキバルブのエア圧を前記エアマスタ側に
    供給可能な差圧弁と、 前記差圧弁に並列に接続され前記ブレーキバルブのエア
    圧を前記エアマスタに供給可能なバイパス通路を開閉す
    るバイパス弁と、 前記ブレーキバルブの出力側のエア圧と前記エアマスタ
    の入力側のエア圧を検出し、前記ブレーキバルブからエ
    ア圧の出力が検出されると補助ブレーキを作動させると
    共に、前記ブレーキバルブの出力側のエア圧と前記エア
    マスタの入力側のエア圧とに応じて前記バイパス弁を開
    弁する制御手段とを有することを特徴とするエアブレー
    キシステム。
  2. 【請求項2】 前記制御手段が、前記ブレーキバルブの
    出力側のエア圧が所定圧よりも高く前記エアマスタの入
    力側のエア圧が前記所定圧よりも低いときに前記バイパ
    ス弁を弁することを特徴とする請求項1に記載のエア
    ブレーキシステム。
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