JP2854916B2 - セラミック―銅合金複合材 - Google Patents

セラミック―銅合金複合材

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【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、銅を主体として合金を形成する金属と、セ
ラミックを形成する元素の単体とを混合し、これらを焼
成することで耐摩耗性および耐蝕性に優れたセラミック
−銅合金複合材に関する。
[従来の技術] 銅を主体とした合金に対してセラミック材料を適用し
た耐摩耗性の高い複合材が種々の分野で利用されてい
る。
例えば、抵抗溶接機の場合においてもこの種の複合材
が用いられるに至っている。抵抗溶接機は一対の電極チ
ップで溶接対象物の溶接個所を挟持した状態で通電する
ことにより、前記溶接個所を溶融させて異なるワークを
接合する。この場合、前記電極チップは過酷な状態で使
用されるため、耐久性の高いセラミック−銅合金複合材
が用いられる。なお、このような耐久性の要求される部
材としては、電極チップ以外にも、例えば、ブレーカー
の接点等のように常時大電流が供給されるものも好例と
して掲げられよう。
以上の点に鑑み、前記セラミック−銅合金複合材を用
いた電極チップとして、特開平1−152232号に開示され
ているように、銅合金からなる電極チップの外周上に酸
化アルミニウム(Al2O3)等のセラミックをレーザビー
ム等を用いて溶射し、セラミックの被膜を形成した技術
的思想がある。
また、特開昭64−78683号に開示されているように、
銅合金からなる電極チップの先端部にセラミックを埋設
し、これによって耐久性を向上させるようにした技術的
思想がある。
さらに、特開昭60−184479号に開示されているよう
に、銅合金に対してセラミックを混合したものを焼結す
ることで耐久性を向上させるようにしたものがある。
[発明が解決しようとする課題] 上記の特開平1−152232号に開示された従来例の場
合、銅合金とセラミックとは濡れ性が悪く、従って、セ
ラミックが剥離し易いとという欠点がある。
また、特開昭64−78683号に開示された従来例の場
合、銅合金とセラミックとの間で放電が発生し易く、従
って、電極チップの耐蝕性がさほどに期待できないとい
う欠点がある。
さらにまた、特開昭60−184479号に開示された従来例
の場合、セラミックを含まない銅合金に対して2〜3割
程度の耐久性の向上が見られるにすぎず、所望の耐久性
を備えた電極チップが得られるには至っていない。
すなわち、これらの従来技術においては、例えば、電
極チップの主材料に銅粉粒子を使用すると、これらは樹
枝状のデントライト結晶構造である場合が多く、その樹
枝状構造の間隙に他の組成成分の粒子が入り込むことは
難しい。
また、銅粉粒子が球状であっても、従来のセラミック
ス粉の添加方法ではμmオーダー程度の粒径の粒子を分
散させることしか可能ではなく、抵抗を増加させること
なくセラミックスの添加量を増量させることは不可能で
あった。
さらにまた、合金酸化法では、微細なセラミックスの
分散は可能であるものの、有効に酸素の拡散が粒子内部
に到達し得ず、実質的抵抗を増加させることなくセラミ
ックスの添加量を増量させるには至っていない。
従って、緻密なセラミックスの分散析出を得ることが
できず、被加工物の組成成分である金属粒子の電極チッ
プへの拡散を容易に許容してしまう。
さらに、未反応の炭素粒子の単体が成形体中に残留す
るため、焼成に際してもセラミック化することなく炭素
単体のまま析出したり、また、緻密なセラミックの分散
析出を阻害して、なお一層被加工物の金属粒子の電極チ
ップへの拡散を促進してしまう。
一方、炭素粒子は伝導率を下げる特性があるため、空
隙を埋めるために多量に用いることも不可能である。
本発明は上記の不都合を克服し、一方の材料に対し他
方の材料からの金属成分の拡散を抑制させ、他方の材料
の金属成分と一方の材料とが反応して合金あるいは固溶
体を形成すること、および酸化物が形成されることを阻
止することにより、耐摩耗性、耐蝕性に優れたセラミッ
ク−銅合金複合材を提供することを目的とする。
[課題を解決するための手段] 前記の課題を解決するために、本発明に係るセラミッ
ク−銅合金複合材は、粒径が100μm以下の粉末状の電
気銅粉末あるいは無酸素銅を主体として、 0.1≦Cr< 2重量% 0.1≦Ni<10重量% の組成範囲を有するCr、Niを必須成分として含有し、且
つ、 0 <Fe< 5重量% 0 ≦Co< 5重量% 0 ≦Al<10重量% 0 ≦Ti<20重量% 0 ≦Mo< 3重量% 0 ≦Si< 3重量% 0 ≦V < 3重量% 0 ≦Mg< 1重量% 0 ≦C < 5重量% の組成比よりなる群から選ばれた少なくとも一種以上の
添加物を含有し、且つ、 0 <O2<10重量% 0 <N2< 5重量% 0 <B <10重量% の組成比よりなる群から選ばれた少なくとも一種以上の
組成範囲を有することを特徴とする。
また、本発明に係るセラミック−銅合金複合材は、粒
径が100μm以下の粉末状の電気銅粉末あるいは無酸素
銅を主体として、 0.1≦Cr< 2重量% 0.1≦Ni<10重量% の組成範囲を有するCr、Niを必須成分として含有し、且
つ、 0 <Fe< 5重量% 0 ≦Co< 5重量% 0 ≦Al<10重量% 0 ≦Ti<20重量% 0 ≦Mo< 3重量% 0 ≦Si< 3重量% 0 ≦V < 3重量% 0 ≦Mg< 1重量% 0 ≦C < 5重量% の組成比よりなる群から選ばれた少なくとも一種以上の
添加物を含有し、且つ、 0 <O2<10重量% 0 <N2< 5重量% 0 <B <10重量% の組成比よりなる群から選ばれた少なくとも一種以上の
組成範囲を有しており、前記Ti、Al、Siは、一般式Ti
(OR)、Al(OR)、Si(OR)の式で表される有機
化合物であることを特徴とする。
[構成の具体的説明] 一方の材料としての使用後の電極チップを解析する
時、前記の従来例で用いられた電極チップでは被加工物
からの金属の拡散が多大にある。
そして、この電極チップ中に拡散した金属は電極チッ
プの素材と反応を起こし合金あるいは固溶体を形成す
る。このため、電気抵抗が増大し、チップ先端部での発
熱が生じ、さらに拡散が助長し、ついには電極チップに
酸化物を生成する。従って、電極チップの耐摩耗性、耐
蝕性を向上させるためには、電極チップを構成する素材
中に予め被加工物から拡散乃至固溶してくるものを抑制
する構成成分を含有させる必要がある。
すなわち、電極チップの主材料である銅粉粒子の樹枝
状のデントライト構造の空隙に、粒径が小さく空隙を埋
めることが可能な酸化物粉末あるいは炭素粉末、金属粉
末を配し、焼成反応において金属、炭素等を拡散させな
がら自身が酸素供給源、炭素供給源乃至は反応の予備的
役割を担い自らは金属化し、その際に放出される酸素
は、活性金属を酸化しセラミック粒子を形成する。
さらには、メタル析出セラミックを応用してマトリッ
クスとセラミックスを結合させ、セラミック形成メタル
を作り、換言すれば、セラミック粒子の肥大化を図り、
焼結による緻密化を可能とする。
[実施例1] 次に、本発明に係るセラミック−銅合金複合材につい
て好適な実施例を挙げ、添付の図面を参照しながら以下
詳細に説明する。
主原料として−325メッシュの粒径を有し、樹枝状に
発達したデントライト結晶の形状を有する電解銅粉と、
析出強化材としてのCrを0〜1.5重量%、拡散材として
のNiを0〜0.7重量%、Al2O3を0.5〜1.5重量%、TiO2
0.5〜1.5重量%、Siを0〜0.3重量%、SiCを0〜3重量
%、析出強化材としてのCoを0〜0.8重量%、Tiを0〜
0.5重量%、固溶析出強化材としてのFeを0〜0.8重量
%、TiCを0〜0.3重量%、TiNを0〜0.5重量%、TiB2
0〜10重量%、ZrB2を0〜10重量%、分散強化材として
のチタニウムイソプロポキシドを1〜10重量%、分散強
化材としてのアルミニウムイソプロポキシドを0〜3重
量%を原料として秤取した。
次いで、ミキサーを用い、前記原料に湿分が10〜15%
になるように調整し、10〜30分かけ混合した。
次に、成形器を用い、1〜2t/cm2の圧力をかけ一軸加
圧成形によりプレス成形を行った。そして、成形体を乾
燥温度80〜120℃で2時間以上乾燥した。次に、真空焼
結炉を用い、焼結温度980〜1060℃で3〜5時間焼成
し、さらに溶体化処理を1000℃で1〜2時間熱処理を行
った。
次に、溶体化処理後、窒素ガス存在下でガス冷却処理
を行った。
次いで、500℃の温度で1〜2時間時効処理を行っ
た。そして、精密抵抗測定器を用い端子間距離30mmで0.
1〜100μΩ・cmの抵抗測定をし、さらに夫々の物性値の
確認をした後、精度打出加工を行い、テスト用電極チッ
プを得た。
以上のようにして得た表1に示す実験例1乃至実験例
9、比較例1および比較例2のテスト用電極チップに対
して、加圧力200kg/cm2、溶接電流1IKA、溶接サイクル1
2秒の試験条件下で45g/m2の両面溶融亜鉛めっき銅板を
用いて連続打点の耐用性を試験した。
なお、用いたテスト用電極チップの先端径は6mmであ
り、溶接性の判定はナゲット径の下限を3.6mmと設定し
た判定した。
その結果、表1のデータから明らかなように、従来技
術を用いた比較例1および比較例2において、電極チッ
プとワークとの張り付きが起こるまでの溶接回数が600
回、800回であるのに比して、本発明に係る実施例1乃
至実験例9においては、最低でも2500回、概ね3000回〜
3500回であった。従って、連続的に打点する際、電極チ
ップの耐用性が向上したと判定できる。
さらに、本発明の典型的実施例として、実験例7を用
いてテスト用電極チップおよび夫々のテストの結果につ
いてより具体的な説明を加え、解析した。
主原料として−325メッシュの粒径を有し、樹枝状に
発達したデントライト結晶状の電解銅粉を94.7重量%、
析出強化材として粒径10μm以下のCrを0.3重量%、拡
散材として粒径5μm以下のNiを5重量%、分散強化材
としてチタンプロポキシドを5重量%、分散強化材とし
てアルミニウムイソプロポキシドを1重量%、分散強化
材としてポリカルボシラン0.2重量%を原料として秤取
した。
原料として秤取したもののうち、分散強化材としてア
ルミニウムイソプロポキシド、ポリカルボシランは予め
エタノールおよびキシレンを溶媒として用い溶解した
後、他の原料に加え再びエタノールを用いて全量をミキ
サーを湿式混合した。
湿式混合の後、60℃の乾燥器内で溶媒量を前記の秤取
した粉体原料100重量部に対して12重量部になるように
調整した。
次に、成形器を用い、1〜2t/cm2の圧力で加圧し、一
軸加圧成形によりプレス成形を行い、20×20×75mmの棒
状に成形した。
そして、成形体を80℃で6時間、次いで、110℃で6
時間乾燥した。
次に、真空焼結炉を用い、先ず、窒素ガスを50ml/min
で流通させ、10℃/minの昇温速度で、250℃で30分間、3
20℃で15分間、380℃で15分間、485℃で30分間夫々保持
し、昇温を続け、650℃で1時間保持した。
次いで、昇温速度を15℃/minの昇温速度に変更して、
750℃で30分、880℃で30分、920℃で30分、970℃で30
分、1030℃で30分、1050℃で1時間、1060℃で1時間焼
成処理を行った。
そして、80℃/minの降温速度で1020℃まで降温し、1
時間保持した後、窒素ガスを用いてガス冷却し、続いて
直ちに500℃で2時間時効処理をしテスト用電極チップ
を得た。
以上のようにして得たテスト用電極チップを用いて物
性値の測定をしたところ、以下のような結果を得た。
テスト用電極チップの密度は8.87g/cm3であり、硬度
はHRB65〜68であり、線収縮率は15.6%、電気抵抗値は
2μΩであった。
また、連続打点の耐用テストをしたところ、張り付き
が起こるまでに3500回の溶接回数を要した。さらに、テ
スト後のテスト用電極チップをX線回析により分析した
ところ、含有成分としてAl2O3、TiC、TiN、TiO2の存在
が確認された。
また、生成したセラミックスの粒径を電子顕微鏡を用
いて観察したところ、約20Å〜700Åと微細であり、且
つマトリックス界面との結合もなされていることが確認
された。
以上のデータより比較例2に比して微量のセラミック
スを添加しても電気抵抗値は2μΩと比較例2の6μΩ
を下回っている。
従って、本発明によれば、添加・析出したセラミック
がマトリックス金属と結合することにより粒界抵抗およ
び粒界放電並びに電蝕が低減し、従来より多量のセラミ
ックスを添加することが可能である。
[発明の効果] 本発明に係るセラミック−銅合金複合材は、マトリッ
クスとしての銅合金とセラミックスとの濡れ性を向上さ
せ、マトリックスとの界面結合を図ることにより焼結に
よる緻密化を可能とする。したがって、被加工物の組成
成分が電極チップに拡散することを抑制し、且つマトリ
ックスとしての銅合金とセラミックの間の粒界抵抗、粒
界放電、電蝕を低下させる効果を奏する。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭63−157826(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C22C 9/00 C22C 32/00

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】粒径が100μm以下の粉末状の電気銅粉末
    あるいは無酸素銅を主体として、 0.1≦Cr< 2重量% 0.1≦Ni<10重量% の組成範囲を有するCr、Niを必須成分として含有し、且
    つ、 0 <Fe< 5重量% 0 ≦Co< 5重量% 0 ≦Al<10重量% 0 ≦Ti<20重量% 0 ≦Mo< 3重量% 0 ≦Si< 3重量% 0 ≦V < 3重量% 0 ≦Mg< 1重量% 0 ≦C < 5重量% の組成比よりなる群から選ばれた少なくとも一種以上の
    添加物を含有し、且つ、 0 <O2<10重量% 0 <N2< 5重量% 0 <B <10重量% の組成比よりなる群から選ばれた少なくとも一種以上の
    組成範囲を有することを特徴とするセラミック−銅合金
    複合材。
  2. 【請求項2】粒径が100μm以下の粉末状の電気銅粉末
    あるいは無酸素銅を主体として、 0.1≦Cr< 2重量% 0.1≦Ni<10重量% の組成範囲を有するCr、Niを必須成分として含有し、且
    つ、 0 <Fe< 5重量% 0 ≦Co< 5重量% 0 ≦Al<10重量% 0 ≦Ti<20重量% 0 ≦Mo< 3重量% 0 ≦Si< 3重量% 0 ≦V < 3重量% 0 ≦Mg< 1重量% 0 ≦C < 5重量% の組成比よりなる群から選ばれた少なくとも一種以上の
    添加物を含有し、且つ、 0 <O2<10重量% 0 <N2< 5重量% 0 <B <10重量% の組成比よりなる群から選ばれた少なくとも一種以上の
    組成範囲を有しており、前記Ti、Al、Siは、一般式Ti
    (OR)、Al(OR)、Si(OR)の式で表される有機
    化合物であることを特徴とするセラミック−銅合金複合
    材。
  3. 【請求項3】請求項1または2に記載の複合材におい
    て、 添加物はエトキシド、プロポキシド、ブトキシド、カル
    ボニル化合物であることを特徴とするセラミック−銅合
    金複合材。
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