JP3370467B2 - セラミックス析出銅合金およびその製造方法 - Google Patents

セラミックス析出銅合金およびその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、特に種々の被溶接材に
対して好適な溶接作業を施すための溶接用電極や電気接
点等に用いられるセラミックス析出銅合金およびその製
造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】通常、銅合金からなる溶接用電極や電気
接点は、その接点部において比較的大電流が流れるた
め、両者共に耐熱性、高温強度および高導電性等が要求
されている。以下に溶接用電極を例にとって説明する
と、特に、被溶接材としてアルミニウムが用いられる
際、このアルミニウムの熱伝導率が高いため、電極には
短時間で大電流を流す必要があり、該電極の損傷がきわ
めて大きくなるという弊害が生じている。
【0003】そこで、特開平6−210463号公報に
開示されているように、溶融Alに対して濡れ易いCr
−Cu合金基地中にWを分散させることにより、溶融A
lに対する耐濡れ性を向上させた電極を得ようとするも
のが知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
従来技術では、アルミニウムの抵抗溶接時には、溶融A
lに対する耐濡れ性の改善によって、ある程度の効果が
認められるものの、種類の異なる被溶接材、例えば、自
動車等に広く用いられている亜鉛メッキ鋼板の溶接には
適さないという問題点が指摘されている。すなわち、亜
鉛メッキ鋼板の溶接時には、電極先端の温度が1000
℃以上になるのに対し、電極中の析出クロムは500℃
程度で軟化するため、この析出クロムが再固溶してしま
う。これによって、電極先端が軟化し、この先端直径が
拡大して電流密度が低下してしまい、電極として使用す
ることができないという問題が露呈している。
【0005】本発明は、この種の問題を解決するもので
あり、アルミニウムや亜鉛メッキ鋼板等の種々の被溶接
材に対して効果的に使用することができ、高電流化およ
び高サイクル化が可能な溶接用電極や電気接点に適する
セラミックス析出銅合金およびその製造方法を提供する
ことを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】前記の課題を解決するた
めに、本発明に係るセラミックス析出銅合金は、銅合金
中にセラミックスを含有するセラミックス析出銅合金で
あって、0.6重量%以上3.5重量%以下のCrと、
0.03重量%以上0.3重量%以下のAgと、0.0
5重量%以上1.0重量%以下のO2と、0.03重量
%以上0.5重量%以下のN2と、0.05重量%以上
0.5重量%以下のTiと、0.1重量%以上0.5重
量%以下のAlと、0.01重量%以上0.3重量%以
下のCとを含有し、残部がCuおよび不可避不純物であ
り、前記セラミックスは、Crの酸化物、炭化物および
窒化物、Tiの酸化物、炭化物および窒化物、Alの酸
化物であり、かつその量が0.1重量%以上3重量%以
下であることを特徴とする。
【0007】ここで、Crの割合は、酸化クロム、炭化
クロム、窒化クロムとして存在するもの、Cr単体とし
て存在するもの、Cuとともに合金を形成しているもの
等の全てを合わせて0.6重量%以上3.5重量%以下
であればよい。他の元素についても同様に、合金の構成
元素として存在していてもよく、酸化物や窒化物、炭化
物等の化合物として存在していてもよい。
【0008】さらに、本発明は、上記したセラミックス
析出銅合金の製造方法であって、 Ag粉末と、有機物
と、Cu粉末とが混合され、かつ所定量のCr、Ti、
Alを含有する原料粉末を調製する工程と、 前記原料粉
末を成形して成形体を得る工程と、120℃〜350℃
において前記成形体に酸化処理を15分〜180分施す
ことによりAgを酸化して酸化銀とする工程と、酸化処
理が施された前記成形体を窒素雰囲気中で焼結して焼結
体とするとともに、CrおよびTiをそれぞれ窒化また
は炭化させて窒化クロム、窒化チタン、炭化クロムおよ
び炭化チタンとする工程と、を有し、前記酸化銀から酸
素を放出させ、前記酸素をCr、AlおよびTiにそれ
ぞれ化合させて酸化クロム、酸化アルミニウム、酸化チ
タンとし、かつ窒化クロム、窒化チタン、炭化クロム、
炭化チタン、酸化クロム、酸化アルミニウム、酸化チタ
ンの析出量が0.1重量%以上3重量%以下となるよう
に前記酸化処理および前記焼結の条件を制御することを
特徴とする。
【0009】
【作用】本発明に係るセラミックス析出銅合金およびそ
の製造方法では、Cu−Crを主要成分とし、Ag、O
2およびN2の他、Crと共にセラミックス化するTiお
よびAlを備えている。
【0010】Agは、酸素をまず固溶する。このAg中
に固溶された酸素を、後述するように、Cr、Al、T
iのセラミックス化元素として利用する。すなわち、C
r、AlおよびTiは、Ag中に固溶された酸素を酸素
源として酸化し、その結果、酸化クロム、酸化アルミニ
ウム(アルミナ)、酸化チタン(チタニア)として銅合
金中に析出される。
【0011】Agは、0.03重量%以上0.3重量%
以下の組成範囲とする。AgのCu中への固溶量は、室
温近傍で0.35重量%程度であるが、他にCr、Ti
およびAlを請求の範囲内で添加すると、約0.25重
量%に低下する。このため、Agを0.25重量%以上
加えても効果に影響はなく、費用の高騰を招くだけであ
る。但し、粉末焼結の場合、添加効率が100%ではな
く、拡散律速のため焼結温度が1050℃から融点まで
の温度範囲でかつ粉末の粒径が50μm以下の時、その
効率は約70%となる。従って、Agの添加量は、0.
3重量%以下に設定される。また、0.03重量%未満
であると、固溶酸素量がセラミックス化に必要な量に至
らず、Agの殆どを酸化しておく等の煩雑な工程が必要
となってしまう。
【0012】セラミックス化する元素は、その安定性と
低融点金属との親和性の低いものから選択されるが、主
体となるCu金属と反応して金属間化合物を生成し、か
つセラミックス化するとともに安定度が高く、しかも体
積固有抵抗増を招かないという条件を満たすものであれ
ばよい。このため、安定性の点ではアルミナを生成する
アルミニウムが選択され、ある程度の導電性を維持する
点ではチタニア、炭化チタンおよび窒化チタンを生成す
るチタンが選択される。また、クロムは、酸化物となる
と安定性が高くなり、炭化物および窒化物とも導電性を
有しており、さらに金属間化合物を構成する主体として
も選択される。
【0013】ここで、Crは、0.6重量%以上3.5
重量%以下の組成範囲とする。0.6重量%未満では、
機械的強度が低く、しかも合金化を有効に防止すべく十
分な量のセラミックス量を確保することができない。一
方、4.5重量%以上の添加では、十分な量のセラミッ
クス量を確保することができるものの、導電性が劣化し
(クロム銅以下となる)、回路の導電損失や電極先端部
の発熱を誘起してしまい、不適である。
【0014】Tiは、0.05重量%以上0.5重量%
以下の組成範囲とする。0.05重量%未満であると、
Tiの全てがチタニア、炭化チタンまたは窒化チタンの
ようなセラミックスに転化したとしても、明瞭な効果が
認められない。一方、Tiが0.5重量%を超えると、
合金内に残存して体積固有抵抗の著しい増加を招き、電
極接点の自己発熱量が増大してしまう。
【0015】Alは、0.1重量%以上0.5重量%以
下の組成範囲とする。0.1重量%未満であると、従来
のアルミナ分散銅と差がなく、また、0.5重量%を超
えると焼結時の緻密化が進行しなかったり、物性が安定
せず、しかも鋳造において酸化物化したものの凝集が生
じるために安定せず、不良率が増大してしまう。
【0016】O2は、上記したように、その大部分をA
gに固溶された後に放出され、Crの一部とAlおよび
Tiの殆どをセラミックス化(酸化)する機能を有す
る。その際、セラミックス化を全てO2に担わせると、
焼結時の緻密化の阻害のみならず、機械的強度や導電率
の低下が惹起され易い。N2は、このような事態を回避
するために添加される。すなわち、N2を添加すること
によって、O2量の制御やCr、Ti、Alのセラミッ
クス化量を制御することが可能になる。
【0017】O2は、0.05重量%以上1.0重量%
以下の組成範囲となり、N2は、0.03重量%以上
0.5重量%以下の組成範囲となる。O2およびN2が、
これらの組成範囲未満となると、一般的なアルミナ分散
銅以上の効果が得られず、また、この組成範囲以上とな
ると、物性の低下や導電性の低下により、同様にこのア
ルミナ分散銅以上の効果が得られない。
【0018】O2は、成形後の成形体の表面を酸化する
ことによって該成形体に取り込まれる。Cu中における
2の拡散は、Cu中におけるCuの拡散よりも速いこ
とが知られており、成形後の成形体の表面を酸化し焼結
すると、その体積拡散が容易になるばかりか、酸素原料
の導入も可能となる。
【0019】上記の酸化を行う際には、温度範囲を12
0℃〜350℃とする。この温度範囲を逸脱すると、酸
化が成形体を構成する粒子の内奥まで進行し、焼結の緻
密化を阻害して所望の物性が得られない。また、酸化時
間は、15分〜180分の範囲内とする。15分以下で
は均質に表面酸化が行われず、一方、180分を超える
と作業時間が増加するばかりでなく、成形体の構成粒子
の内奥まで酸化が進行してしまう。
【0020】Cは、成形時に用いられる有機物の分解残
渣を利用するものであり、このCが存在することによっ
てO2量を効率よく制御することができるようになる。
制御効率は、N2に比べて高い。Cの組成範囲は、0.
01重量%以上0.3重量%以下である。
【0021】Cの大部分は、炭化クロムまたは炭化チタ
ンとして銅合金中に含まれている。
【0022】さらに、付加的にZr、Nb、VおよびM
oから選択される少なくとも1種の金属を添加してもよ
い。これらの元素は、Cuへの固溶量は小さいが、金属
間化合物を形成するのに有効であり、さらにこれらを介
してのCr、TiおよびAlのセラミックス化が容易に
なる。添加量が0.05重量%未満であると、その添加
の効果が認められず、また、0.3重量%以上である
と、物性や導電率の低下を招き、実性能も低下してしま
う。このため、0.05重量%以上0.3重量%以下の
組成範囲とする。
【0023】析出セラミックス量は、0.1重量%以上
3重量%以下に設定される。0.1重量%未満となる
と、耐蝕性、耐張り付き性において従来のアルミナ分散
銅と同様となる。一方、析出セラミックス量が3重量%
以上となると、通電抵抗が上昇して電極性能が低下して
しまい、導電性において従来のクロム銅と同様となる。
【0024】本発明に係るセラミックス析出銅合金の製
造は、鋳造および焼結により行うことができる。鋳造で
は、溶解し造塊する前に窒素ガスによるバブリングが必
要となる。すなわち、先ず、温度の比較的低い段階、す
なわち、1100〜1150℃にて酸素をバブリング
し、次いで、温度を50℃程度上昇させた後、窒素をバ
ブリングする。さらに、加炭材を投入し、温度を20〜
50℃程度上げて安定させた後、造塊する。造塊後は急
冷することが望ましい。
【0025】通常、酸化防止のためにアルゴン雰囲気下
で冷却されているが、窒素および酸素ガスのバブリング
によるサイカを防止するため、バブリング量を少なく
し、冷却の雰囲気を窒素ガス圧下として熱交換器の補助
を受けながら、100℃/min以上、好ましくは凝固
点温度から500℃までを200〜300℃/min程
度の冷却速度で冷却することが望ましい。窒素圧力は、
造塊物の大きさにもよるが、窒素の内部拡散を行わしめ
る必要性から、少なくとも2.5bar以上必要であ
る。冷却後は、直ちに造塊物の安定化を図るべく、45
0〜520℃で熱処理を行う。
【0026】焼結による方法は、粉体原料の成形から焼
結熱処理まで、例え20%近くの収縮はあっても、製品
形状に近い状態で物品を構成することができ、形状の小
さなものは製造コストの低下が図られる。
【0027】粉体原料は、鋳造のように融点を超える温
度まで焼結温度を上げることができないため、拡散の遅
い金属では、その粒度を制御する必要がある。このた
め、Cuの原料が44μm以下、Cr、AlおよびTi
は、粉体表面の酸化等を考慮して少なくとも44μm以
下、望ましくはCrが5μm以下、Alが20μm以下
およびTiが20μm以下のものを使用する。特に、T
iについては、酸化が激しくかつ焼結中の拡散が遅いた
め、金属チタン粉に代えて、あるいはその一部を水素化
金属の水素化チタンにして使用すると、より好適であ
る。これにより、金属アルミニウム粉や金属チタン粉の
表面が多少酸化されていたとしても、焼結の際の昇温過
程で還元されるため、より細かい原料粉を使用すること
ができる。
【0028】金属酸化物は、原料粉表面の酸化物および
吸着酸素を酸素源として、または成形や混合時に使用さ
れる有機質添加剤の酸化作用によって得ることができ
る。特に、焼結では、初めからセラミックス化している
酸化物、例えば、アルミナ、チタニア、ジルコニア、窒
化チタン、炭化チタン、クロミナ、窒化クロムおよび炭
化クロム等を粉末冶金的に混合し焼結しても、緻密で性
能のよいものは得られない。これは、セラミックスが極
めて高い安定性を持ち、金属との反応が殆ど生じない
か、または極めて緩慢なためである。このため、十分緻
密化した後、金属中に固溶していたものを反応析出させ
るか、または雰囲気条件を変えてセラミックスが析出す
るような制御が必要になる。
【0029】母材となりかつ主成分を占めるCu中への
C、N2およびO2の固溶量は少なく、耐蝕性や耐摩耗性
の高い電極材を得ることが困難であり、また、焼結によ
り十分な緻密化を達成するためには、その焼成温度を融
点近傍まで高める必要があるが、Cuの蒸発によって炉
内が汚染されてしまう。
【0030】そこで、Cu中のO2の拡散が、Cu中の
Cuの拡散よりも速いことに着目した。すなわち、成形
後の成形体の表面を酸化し焼結すると、その体積拡散が
容易になるばかりか、酸素原料の導入も可能となる。な
お、酸化温度は、上記した理由から120℃〜350℃
の温度範囲とする。
【0031】Cについては、混合時の媒体や成形補助用
添加剤あるいは有機金属の分解物や分解残渣を利用する
一方、N2の添加は、焼結時の雰囲気ガス等を用いて行
われる。
【0032】焼結後の熱処理では、焼結中生成した合金
物や金属間化合物とCuやAg中に過飽和固溶させた酸
素、窒素および炭素と反応させたり、また、窒素、炭素
の拡散の緻密化を高めて反応させたりし、酸化クロム、
酸化アルミニウム、酸化チタン、窒化チタン、窒化クロ
ム、炭化チタンおよび炭化クロム(セラミックス)の析
出を図る。これにより、成形体の緻密化が可能となる。
これらの過程においても、Agが存在することによって
固溶度の低下や緻密化の進行不良等を阻止することがで
きる。
【0033】
【実施例】本発明に係るセラミックス析出銅合金および
その製造方法について実施例を挙げ、以下に詳細に説明
する。
【0034】実施例1 粒径44μm以下(平均粒径20μm)の電解銅粉と、
粒径10μm以下(平均粒径3μm)の水素化チタン
と、粒径10μm以下(平均粒径5μm)の金属クロム
粉と、チタニウムイソプロポキシド(液体)と、アルミ
ニウムエキシド(液体)と、平均粒径5μmのクロム
−チタン粉末(60:40)と、平均粒径5μmのクロ
ム−アルミニウム粉末(70:30)と、平均粒径3μ
mのチタン−アルミニウム粉末(50:50)とを選択
し、表1の実験例1〜27に示す配合組成とした。
【0035】
【表1】
【0036】これらを、アルコールを液媒体として十分
湿式混合した後、金型内静水圧加圧成形によって成形し
た。すなわち、上記の混合材料に液状添加剤を加えて混
合し混合物を得た後、この混合物を一軸加圧成形するこ
とにより余分な液状添加剤を除去して20×20×14
0mmの予備成形体を成形した。なお、成形に際して
は、0.2重量%のステアリン酸アンモニウムが潤滑剤
として添加されている。
【0037】成形後、大気中にて150℃で60分間だ
け乾燥させるとともに、成形体表面を酸化させた。そし
て、10℃/minの昇温速度でそれぞれ350℃で1
5分間、450℃で15分間、650℃で30分間、1
000℃で15分間、1050℃で30分間および10
60℃で60分間保持した。
【0038】次いで、焼結処理が施された。その条件
は、1000℃まで窒素ガスを20l/minで流す減
圧窒素雰囲気であり、それ以上の温度では窒素ガスにて
3.5barまで加圧して焼結した。焼結後に2×10
0×1mmのテストピースを切り出し、導電率の測定、
引張強度の測定および硬度の測定を行った。その結果が
表2に示されている。なお、比較例としては、市販のク
ロム銅およびアルミナ分散銅が使用された。
【0039】
【表2】
【0040】さらに、焼結体から溶接用電極として、φ
12×47mmで水冷部がφ8×32mmの部材を削り
出し、この電極を用い、厚さが1.5mmの両面溶融亜
鉛メッキ鋼板(亜鉛量60g/m)を3枚合わせにした
ワークに対する溶接性を試験した。この時の溶接条件
は、加圧力が250kgf、水冷部の水圧が2kgf/
cmであり、通電時間を20サイクルとし、12kAか
ら0.5kAずつ電流を上げて電極先端にピックアップ
が起こる最低電流(ピックアップ開始電流)、連続20
0打点後の先端摩耗量およびその間にワークと電極が張
り付く回数を検出した。なお、溶接試験は、各試料とも
5組ずつ行い、その平均値を検出した。その結果が表3
に示されている。
【0041】
【表3】
【0042】これにより、本実施例では、亜鉛メッキ鋼
板の溶接に際し、クロム銅製の電極に比べて特性が一挙
に向上するとともに、アルミナ分散銅製の電極に相当す
る、あるいは、それ以上の特性のものが得られた。
【0043】次に、被溶接材としてアルミニウム板を用
い、連続打点性および有効打点数の試験が行われた。電
極材としては、実験例7、13、14および16を用
い、市販材である各種合金電極を比較例1〜7として使
用した(表4参照)。
【0044】具体的には、アルミニウム板がAP 50
52 0であってその板厚が3.0mmであり、溶接条
件としては、加圧力が600kgf、溶接電流が38k
Aおよび溶接サイクルが18/50サイクルに設定され
た。
【0045】ここで、連続打点性の判断は、航空産業や
自動車業界で独自に採用されている規定に基づいて行わ
れた。また、有効打点数は、アルミニウムの溶接で発生
し易い中ちりや外ちり、合金化に伴う溶接用電極の先端
荒れ等によりアルミニウムの打痕部に不良が生じる前ま
での打点数である。
【0046】
【表4】
【0047】表4に示すように、亜鉛メッキ鋼板では性
能が良好とされたアルミナ分散銅電極(比較例7)を用
いても、アルミニウム板の溶接にはさほどの効果が表れ
ていない。これは、アルミニウム板中のMg成分がアル
ミナ分散銅電極先端に拡散して合金化してしまうことに
よると考えられる。このため、単に合金化された電極で
は、Mgの拡散を防止することができない。
【0048】これに対して本実施例では、電極先端にク
ロム等のセラミックス化が有効になされており、このセ
ラミックスによりMgの拡散を防止することができる。
これによって、亜鉛メッキ鋼板の他、アルミニウム板の
溶接作業を効率的かつ確実に遂行することが可能になる
という効果が得られた。
【0049】実施例2 実施例1では、焼結法による製造方法を示したが、以下
に鋳造法による場合について説明する。ここで、実施例
1中、実験例6および16に近い組成のものを実験例A
およびBとして選択した(表5参照)。
【0050】
【表5】
【0051】先ず、銅のブロックを所定量取り、高周波
溶解炉にて1150℃まで加熱した後、クロム、チタ
ン、アルミニウムおよび銀を加えた。成分添加後、溶湯
温度を1350℃まで上げてその均質化を図った。溶解
はスラグアップ防止を図るため、アルゴン雰囲気とし
た。チタンについては、焼結で水素化チタンを一部用い
ているが、鋳造法では全て金属チタンを採用した。
【0052】そこで、1350℃で30分間保持した
後、脱ガスのためにアルゴンガスを溶湯の下部よりバブ
リングし、次いで、Ar:N2=7:3の混合ガス、A
r:O2=9:1の混合ガス、Ar:H2=9:1の混合
ガスおよびArの順でバブリングした。このバブリング
後、1250℃まで温度を下げて造塊した。造塊後、N
2ガスを3.5barまで充填し、熱交換器を用いて1
50℃まで平均冷却速度270℃/minで冷却した。
この造塊物の大きさは、60×60×500mmであっ
た。
【0053】室温まで冷却した後、φ45×450mm
のテストピースを得、鋳肌部分等を除去した後に500
℃まで温度を上げてφ12mmまで加工した。この加工
後、さらに長さを30mmに切断し、実施例1と同様の
溶接試験を行うとともに、1×2×100mmの試験片
を切り出し、導電率の測定、引張強度の測定および硬度
の測定をした。この結果が表6および表7に示されてお
り、さらに、表8には、鋳造体の化学分析値が示されて
いる。
【0054】
【表6】
【0055】
【表7】
【0056】
【表8】
【0057】これにより、本実施例に係る電極は、焼結
法の他、鋳造法によっても製造することができ、いずれ
の場合も同様の効果が得られた。
【0058】実施例3 実施例1中、実験例8および14の配合組成からなるテ
ストピースを用い、さらに、電極としての物性向上を図
るべく塑性加工による物性変化を検出した。塑性加工条
件は、室温でテストピースに上下方向から荷重を印加し
かつ両端面をフリーとする自由塑性加工とした。この時
の加工率と導電率、硬度および引張強度との関係が、実
験例8については表9と図1に、実験例14については
表10と図2に、それぞれ示されている。
【0059】
【表9】
【0060】
【表10】
【0061】これにより、加工率の小さい領域では、物
性の向上が認められるものの、加工率の大きい領域で
は、明らかに物性の低下が惹起されている。従って、室
温における塑性加工率は、上限として約45%となっ
た。
【0062】
【発明の効果】以上のように、本発明に係るセラミック
ス析出銅合金およびその製造方法によれば、以下の効果
が得られる。
【0063】被溶接材としてアルミニウムや亜鉛メッキ
鋼板等を用いる際にも、電極性能を有効に維持して良好
かつ効率的な溶接作業を行うことができる。これによ
り、高電流化、高サイクル化に対応するとともに、耐蝕
性が高く、耐熱性、耐摩耗性および高伝導性に優れた溶
接用電極や電気接点を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実験例8における塑性加工の物性変化を示す図
である。
【図2】実験例14における塑性加工の物性変化を示す
図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 平賀 一仁 埼玉県狭山市新狭山1−10−1 ホンダ エンジニアリング株式会社内 (72)発明者 大石 哲也 埼玉県狭山市新狭山1−10−1 ホンダ エンジニアリング株式会社内 (56)参考文献 特開 平4−251693(JP,A) 特開 昭50−22740(JP,A) 特開 昭48−71323(JP,A) 特開 平5−277755(JP,A) 特開 昭59−193233(JP,A) 特開 昭49−128839(JP,A) 特開 平4−165036(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 1/00 - 49/14 B22F 3/10

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】銅合金中にセラミックスを含有するセラミ
    ックス析出銅合金であって、当該セラミックス析出銅合
    金は、0.6重量%以上3.5重量%以下のCrと、
    0.03重量%以上0.3重量%以下のAgと、0.0
    5重量%以上1.0重量%以下のO2と、0.03重量
    %以上0.5重量%以下のN2と、0.05重量%以上
    0.5重量%以下のTiと、0.1重量%以上0.5重
    量%以下のAlと、0.01重量%以上0.3重量%以
    下のCとを含有し、残部がCuおよび不可避不純物であ
    り、 前記セラミックスは、Crの酸化物、炭化物および窒化
    物、Tiの酸化物、炭化物および窒化物、Alの酸化物
    であり、かつその量が0.1重量%以上3重量%以下で
    あることを特徴とするセラミックス析出銅合金。
  2. 【請求項2】請求項1記載のセラミックス析出銅合金に
    おいて、さらに、Zr、V、NbおよびMoから選択さ
    れる少なくとも1種を0.05重量%以上0.3重量%
    以下含有することを特徴とするセラミックス析出銅合
    金。
  3. 【請求項3】請求項1に記載されたセラミックス析出銅
    合金の製造方法であって、 Ag粉末と、有機物と、Cu粉末とが混合され、かつ所
    定量のCr、Ti、Alを含有する原料粉末を調製する
    工程と、 前記原料粉末を成形して成形体を得る工程と、 120℃〜350℃において前記成形体に酸化処理を1
    5分〜180分施すことによりAgを酸化して酸化銀と
    する工程と、 酸化処理が施された前記成形体を窒素雰囲気中で焼結し
    て焼結体とするとともに、CrおよびTiをそれぞれ窒
    化または炭化させて窒化クロム、窒化チタン、炭化クロ
    ムおよび炭化チタンとする工程と、 を有し、 前記酸化銀から酸素を放出させ、前記酸素をCr、Al
    およびTiにそれぞれ化合させて酸化クロム、酸化アル
    ミニウム、酸化チタンとし、 かつ窒化クロム、窒化チタン、炭化クロム、炭化チタ
    ン、酸化クロム、酸化アルミニウム、酸化チタンの析出
    量が0.1重量%以上3重量%以下となるように前記酸
    化処理および前記焼結の条件を制御することを特徴とす
    るセラミックス析出銅合金の製造方法。
  4. 【請求項4】請求項3記載の製造方法において、前記焼
    結体に対して加工率を45%以下とする塑性加工を施す
    ことを特徴とするセラミックス析出銅合金の製造方法。
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