JP2839263B2 - 顕微鏡対物レンズ - Google Patents

顕微鏡対物レンズ

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、顕微鏡対物レンズに関する。
〔従来の技術〕
顕微鏡対物レンズにおいて、NAが0.3〜0.4以上になる
と、レンズと物体の間にある平行平面ガラス(カバーガ
ラス)による収差の変化が無視できなくなる。特に組織
培養の分野でシャーレの底を通して細胞組織等を観察す
る時のように、平行平面板の厚さが1mm前後あり且つ厚
さが大きくばらついている場合、通常のレンズでは収差
変動が大きくて、像が乱されるという問題がある。そこ
で、適当なレンズ群を選び、このレンズ群を補正環と連
動するカムにより光軸方向に移動させることにより上記
収差変動を打ち消す方法が以前から知られており、現在
もしばしば使われている。
そして、位相差顕微鏡や変調コントラスト顕微鏡で
は、照明系中に特定の形状を有する絞りを設け、対物レ
ンズの瞳位置に該絞りの開口形状に対応した大きさを有
する位相リング(位相差顕微鏡の場合)や濃度パターン
(変調コントラスト顕微鏡の場合)等の光変調器を設け
て物体を透過した光の一部を変調することにより普通の
顕微鏡では見えない物体が見えるようにしているが、従
来の対物レンズでは光変調器が補正に使われるレンズ群
間隔より後側の位置に固定されていたため、補正環によ
って一部のレンズ群を移動させてレンズ群間隔を変えた
時に光変調器が対物レンズの瞳位置から外れてしまうと
いう問題があった。
〔発明が解決しようとする課題〕
そこで、上記従来の対物レンズのように光変調器が瞳
位置から外れてしまうタイプのものでは、瞳から外れた
状態でも充分変調できるように光変調器の大きさに余裕
を持たせているが、そうすると今度は光変調器が瞳にあ
る時は光変調器が大きすぎて変調する必要のない光まで
変調されてしまい、像のコントラストが劣化するという
問題があった。
本発明は、上記問題点に鑑み、補正環によってレンズ
群間隔を変えることにより収差変動を打ち消すようにな
っていても、光変調器によって変調された像のコントラ
ストが良好である顕微鏡用対物レンズを提供することを
目的としている。
〔課題を解決するための手段及び作用〕
本発明による顕微鏡対物レンズは、移動するレンズ群
と一体となって光変調器が移動し得るように構成し、こ
の光変調器よりも像側に、物体側に凹面を向けたメニス
カスレンズを備えたことにより、レンズ群が移動しても
光変調器が対物レンズの瞳位置から外れないようにした
ものである。
即ち、本発明による顕微鏡対物レンズの一つは、第1
図に示すように、3つのレンズ群L1,L2,L3から構成さ
れ、そのうちカバーガラス厚補正のために移動するレン
ズ群L2は、正レンズと平行平面板同士を接合した接合レ
ンズとからなり、平行平面板の接合面にリング状の位相
膜(光変調器)Pが被覆されている。この対物レンズの
射出瞳位置Eは、平行平面板の接合面付近にある。正レ
ンズと接合レンズは一体になって移動するようになって
いる。カバーガラス厚補正のためレンズ群L2の正レンズ
が物体面M側に移動すると、対物レンズの射出瞳位置E
も物体面M側に移動する。その時、接合レンズも物体面
M側に移動するので射出瞳位置Eから位相膜Pが外れな
い。又、レンズ群L2の正レンズが像側に移動する時は、
射出瞳位置Eも像側に移動するが、接合レンズも像側に
移動するので、射出瞳位置Eから位相膜Pが外れない。
その結果、位相膜Pのリングを太くしなくても済むの
で、位相差観察の像のコントラストを良くすることがで
きる。
本発明による顕微鏡対物レンズの他の一つは、第2図
に示すように、これも3つのレンズ群L1,L2,L3から構
成され、そのうちカバーガラス厚補正のために移動する
レンズL2は、接合レンズであって、接合面にリング状の
位相膜Pが被覆されている。この対物レンズの射出瞳位
置EはレンズL2の接合面付近にある。カバーガラス厚補
正のためレンズL2が光軸上を前後に移動すると、対物レ
ンズの射出瞳位置Eも光軸上を前後するが、位相膜Pも
レンズL2に伴って光軸上を前後するので、射出瞳位置E
から位相膜Pが外れない。その結果、位相膜Pのリング
を太くしなくても済むので、位相差観察の像のコントラ
ストを良くすることができる。
〔実施例〕
更に以下に示す実施例に基づき本発明を詳細に説明す
る。
以下に示す実施例は何れも全体として3つのレンズ群
L1,L2,L3から成り、第2レンズ群L2が光軸上を前後に
移動するようになっており、全レンズ系の合成焦点距離
をf、第1レンズ群L1の合成焦点距離をf1としたとき、 0.7<f1<1.7f ……(1) の条件を満足する。
この条件(1)は、光軸上を前後に移動する第2レン
ズ群L2中に、光変調器を配置させるため、即ち射出瞳位
置を第2レンズ群L2中にもってくるために必要な条件で
ある。f1≧1.7fとなると、第1レンズ群L1のパワーが弱
く、射出瞳位置が第2レンズ群L2より後の方にきてしま
うので第2レンズ群L2中に光変調器を配置することがで
きなくなってしまう。又、f1≦0.7fとなると、第1レン
ズ群L1のパワーが強くなりすぎて収差補正が難しくなっ
てしまう。
更に、第3レンズ群L3が4群構成、即ち正レンズと負
レンズを接合してなる第1群L31と、負レンズと正レン
ズを接合してなる第2群L32と、正レンズからなる第3
群L33と、正レンズと負レンズを接合してなる第4群L34
とで構成され、以下の条件を満足することにより、より
一層収差を良好に補正し得るようになっている。
0.6f<r303<f ……(2) −0.7f<r304<−0.4f ……(3) 1.7<n307 ……(4) 0.4f<d309+d310 ……(5) 但し、r303は第1群L31の第3面、r304は第2群L32
第1面、n307は第3群L33のd線の屈折率、d309,d310
は夫々第4群L34の正レンズ,負レンズの肉厚である。
ここで、第3レンズ群L3のうち、第1群L31と第2群L
32は所謂ガウスタイプの群構成であり、条件(2),
(3)は像面湾曲や非点収差等を良好に補正するための
ものである。r303≧f,r304≦−0.7fになると、これらの
面の曲率が緩くなって像面が負方向に倒れる。r303≦0.
6f,r304≧−0.4fになると、曲率がきつくなって像面が
正方向に倒れる。又、条件(4)は球面収差,コマ収差
等を良好に補正するためのもので、射出瞳位置を第2レ
ンズ群L2中にもってきた時でもこの条件があれば、それ
らを良好に補正できる。又、条件(5)は射出瞳位置を
第2レンズ群L2中にもってくるために必要な条件で、d
309+d310≦0.4fになると、射出瞳位置が第2レンズ群L
2よりも後にきてしまい、射出瞳位置から光変調器が外
れてしまう。
各実施例のデータを以下に示す。
第1実施例 本実施例のレンズ構成及び収差曲線は夫々第3図及び
第4図に示す。
β=20×,NA=0.4,f=1, f1=0.897,d0=0.74〜0.57 r101=−10.900 d101=0.27 n101=1.7725 ν101=49.66 r102=−0.870 d102=0.02 r103=1.271 d103=0.11 n102=1.74 ν102=31.70 r104=0.784 d104=0.26 n103=1.456 ν103=90.31 r105=−8.906 d105=0.26〜0.15(可変) r201=1.591 d201=0.26 n201=1.497 ν201=81.61 r202=−4.904 d202=0.01 r203=∞ d203=0.06 n202=1.52287 ν202=59.9 r204=∞ d204=0.06 n203=1.52287 ν203=59.9 r205=∞ d205=0.02〜0.13(可変) r301=2.723 d301=0.40 n301=1.497 ν301=81.61 r302=−0.664 d302=0.11 n302=1.74 ν302=31.7 r303=0.891 d303=0.19 r304=−0.439 d304=0.09 n303=1.74 ν303=31.7 r305=∞ d305=0.33 n304=1.497 ν304=81.61 r306=−0.625 d306=0.01 r307=24.511 d307=0.17 n305=1.80518 ν305=25.43 r308=−1.716 d308=0.01 r309=0.897 d309=0.28 n306=1.67 ν306=57.33 r310=∞ d310=0.17 n307=1.62374 ν307=47.1 r311=0.712 光変調器は、第2レンズ群L2中のr204面に設ける。
第2実施例 本実施例のレンズ構成及び収差曲線は夫々第5図及び
第6図に示す。
β=20×,NA=0.4,f=1, f1=1.186,d0=0.83〜0.66 r101=10.315 d101=0.48 n101=1.883 ν101=40.78 r102=−1.668 d102=0.32 r103=2.738 d103=2.74 n102=1.497 ν102=81.61 r104=−2.838 d104=0.25〜0.18(可変) r201=−11.558 d201=0.45 n201=1.456 ν201=90.31 r202=−0.824 d202=0.12 n202=1.68893 ν202=31.08 r203=−1.221 d203=0.05〜0.13(可変) r301=1.094 d301=0.46 n301=1.456 ν301=90.31 r302=−0.857 d302=0.12 n302=1.74 ν302=31.7 r303=0.877 d303=0.32 r304=−0.467 d304=0.13 n303=1.74 ν303=31.7 r305=−2.849 d305=0.41 n304=1.618 ν304=63.38 r306=−0.716 d306=0.01 r307=3.866 d307=0.30 n305=1.80518 ν305=25.43 r308=−5.664 d308=0.01 r309=0.977 d309=0.48 n306=1.66998 ν306=39.27 r310=−8.609 d310=0.34 n307=1.834 ν307=37.16 r311=0.698 光変調器は、第2レンズ群L2中のr202面に設ける。
第3実施例 本実施例のレンズ構成及び収差曲線は夫々第7図及び
第8図に示す。
β=40×,NA=0.55,f=1, f1=1.49,d0=0.68〜0.36 r101=−2.461 d101=0.55 n101=1.841 ν101=43.23 r102=−1.146 d102=0.02 r103=4.816 d103=0.18 n102=1.74 ν102=31.7 r104=1.599 d104=0.66 n103=1.497 ν103=81.61 r105=−2.096 d105=0.72〜0.34(可変) r201=2.440 d201=0.46 n201=1.456 ν201=90.31 r202=−2.652 d202=0.02 r203=∞ d203=0.16 n202=1.52287 ν202=59.9 r204=∞ d204=0.16 n203=1.52287 ν203=59.9 r205=∞ d205=0.13〜0.51(可変) r301=1.094 d301=0.55 n301=1.497 ν301=81.61 r302=−3.905 d302=0.34 n302=1.74 ν302=31.7 r303=0.695 d303=0.37 r304=−0.592 d304=0.16 n303=1.74 ν303=31.7 r305=∞ d305=0.80 n304=1.497 ν304=81.61 r306=−1.102 d306=0.07 r307=4.824 d307=0.34 n305=1.78472 ν305=25.71 r308=−5.595 d308=0.02 r309=1.464 d309=0.57 n306=1.6425 ν306=58.37 r310=−6.442 d310=0.23 n307=1.816 ν307=46.62 r311=1.289 光変調器は、第2レンズ群L2中のr204面に設ける。
〔発明の効果〕
上述の如く、本発明による顕微鏡対物レンズは、補正
環によってレンズ群間隔を変化させることにより収差変
動を打ち消すようになっていても、光変調器によって変
調された像のコントラストが良好であるという実用上重
要な利点を有している。
【図面の簡単な説明】
第1図及び第2図は夫々本発明による顕微鏡対物レンズ
の一つ及び他の一つの概念図、第3図及び第4図は夫々
第1実施例のレンズ構成図及び収差曲線図、第5図及び
第6図は夫々第2実施例のレンズ構成図及び収差曲線
図、第7図及び第8図は夫々第3実施例のレンズ構成図
及び収差曲線図である。 L1……第1レンズ群、L2……第2レンズ群、L3……第3
レンズ群、L31……第1群、L32……第2群、L33……第
3群、P……位相膜、E……射出瞳位置、M……物体
面。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】複数のレンズ群を備え、これらのレンズ群
    の内の少なくとも一つのレンズ群を光軸に沿って移動さ
    せることによりカバーガラス厚を補正する補正機構を有
    する顕微鏡対物レンズにおいて、移動するレンズ群と一
    体となって光変調器が移動し得るように構成し、該光変
    調器よりも像側に、物体側に凹面を向けたメニスカスレ
    ンズを備えたことを特徴とする顕微鏡対物レンズ。
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