JP2801729B2 - 光記録媒体用保護膜とそれを用いた光記録媒体 - Google Patents

光記録媒体用保護膜とそれを用いた光記録媒体

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Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は、光記録媒体用の新規な保護膜及びそれを構
造中に備えた光記録媒体に関するものである。さらに、
詳しくいえば、本発明は、高温、高湿の過酷な環境下で
の使用が可能な光記録媒体を提供しうる、高い機械的強
度を有し、かつ剥離やクラックの発生が抑制された光記
録媒体用保護膜及びそれを備えた光記録媒体に関するも
のである。
従来の技術 近年、レーザーなどの光ビームを利用した光記録媒体
は、記録密度が高い、高速アクセスが可能である、信頼
性が高い、非接触型であるなどの理由により、高度情報
社会における記録媒体の中心的役割の担い手として注目
され、積極的に研究が進められている。この記録媒体に
は、コンパクトディスクやCD−ROMなどで代表される再
生専用型、文書・画像フィルムなどとしての情報の記録
・再生が可能な追記型、フロッピーディスクで代表され
る情報の記録、消去、再生が可能な書換え型の3種類が
あり、いずれも実用に供されている。
ところで、前記の追記型や書換え型の光記録媒体にお
いては、基板上に記録層が設けられており、この記録層
については、記録方法の原理や態様の異なった種々のも
のが開発されている。例えば追記型の場合にはナフトキ
ノンなどの有機色素や、Se、Teなどのカルコゲン元素を
主体とした合金や酸化物などを用いた開孔方式のもの、
あるいはGa、Ge、Se、In、Sn、Sb、Te、Pb、Biなどを主
体とする合金などを用いた相変化方式のものが開発され
ている。また、書換え型においては、前記の相変化方式
の外、遷移金属と重希土類との合金やガーネットを主体
とする垂直磁化薄膜による光磁気方式のものなどが開発
されている。
ところで、これらの記録層に用いられる感材は、化学
的に不安定なものが多い上、薄膜で使用されるため、空
気中の酸素や水により酸化を受けやすく、記録や再生の
性能に関し、経時的に信頼性が低下するのを免れない。
このような欠点を解決するために、通常光記録媒体に
おける記録層の上又は下若しくはその両方に保護層を設
けることが行われている。この保護層には、一般に、酸
素や水の侵入を効果的に防止しうるバリア性に優れ、か
つそれ自体も化学的に安定な誘電体薄膜を用いることが
有利であることが知られており、その材料としては例え
ばマグネシウム、ケイ素、アルミニウムなどの酸化物、
窒化物、酸窒化物やこれらの複合体、亜鉛などの金属の
硫化物やセレン化合物、さらにはこれらの混合物などの
使用が試みられている。
しかしながら、これらの材料から成る保護膜において
は、基板との密着性が乏しくて剥離が生じやすい上、脆
くてクラックを生じやすいなどの欠点がある。このよう
な剥離やクラックを生じると、その部分の反射率が低下
してエラーをひき起こすとともに、酸素や水が記録層に
侵入して腐食の原因となる。特に、光記録媒体を高温、
高湿環境下で使用する場合、該媒体の構成要素である基
板、保護層、記録層などの膨張率の差や残留応力による
歪が保護層と基板との間の剥離や保護層のクラックを誘
発しやすいなどの問題を生じ、光記録媒体の利用範囲が
制限されるのを免れない。
前記材料の中で、ケイ素の酸窒化物は比較的剥離やク
ラックを生じにくい材料であるが、これのみから成る保
護層ではまだ不十分であるので、酸化ケイ素と組み合わ
せて2層化する方法が提案されている(特開昭63−1660
46号公報)。しかしながら、このような方法を用いて
も、耐剥離性や耐クラック性は必ずしも十分ではない上
に、2層化するための製造プロセスが1工程増え、工業
的に実施する場合不利となる。
発明が解決しようとする課題 本発明は、このような光記録媒体に用いられる従来の
保護膜が有する欠点を克服し、高い機械的強度を有し、
かつ剥離やクラックが発生しにくく、これを用いること
により、高温、高湿の苛酷な環境下での使用が可能な光
記録媒体を与えうる光記録媒体用保護膜を提供すること
を目的としてなされたものである。
課題を解決するための手段 本発明者らは、光記録媒体用保護膜について種々研究
を重ねた結果、その中のケイ素、窒素及び酸素の原子数
比が特定の範囲にあるケイ素の酸窒化物から成り、かつ
特定の膜組織を有する保護膜の使用、あるいはこれと最
上層に設けられ、かつ特定の硬化収縮率を有する紫外線
硬化樹脂から成る層の併用により、その目的を達成しう
ることを見い出し、この知見に基づいて本発明を完成す
るに至った。
すなわち、本発明は、光記録媒体における記録層の少
なくとも一方の面に設けられるケイ素の酸窒化物から成
る保護膜であって、その原子数比が(Si100N0O0)、(S
i0N100O0)及び(Si0N0O100)を頂点とする三角座標に
おいて、A(Si60N0O40)、B(Si33.3N0O66.7)及びC
(Si39.134.826.1)の各点を順次線分で結んだ三角
形より内側の領域で表わされ、かつその微視的な膜組織
において、粒界で囲まれた粒組織の密度が1μm2当り10
個以下であることを特徴とする光記録媒体用保護膜又は
前記保護膜から成る層と、光記録媒体の最上層に設けら
れ、かつ硬化収縮率が5〜10%の紫外線硬化樹脂から成
る層とから構成される光記録媒体用保護膜及びこれらの
保護膜を有する光記録媒体を提供するものである。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の保護膜におけるケイ素の酸窒化物は、その中
のケイ素、窒素及び酸素の原子数比が(Si100N0O0)、
(Si0N100O0)及び(Si0N0O100)を頂点とする三角座標
において、前記したA,B,Cの3点を結ぶ線で囲まれた領
域内の組成を有することが必要である。
一般に、ケイ素の酸窒化物は、比較的広い組成範囲内
で水や酸素に対するバリア性、化学的安定性、高温、高
湿環境下での安定性、過酷な使用環境下での機械的強度
が優れたものを与えるという特徴を有しているが、本発
明においては、前記三角座標において、2つの化学量論
化合物であるSiO2とSi3N4とを結ぶ線分よりSi側で表わ
される組成範囲にあるものを用いることが必要である。
この組成範囲を逸脱すると膜中に過剰の酸素や窒素が存
在することになり、これらが徐々に記録層中へ拡散し、
むしろ記録層の安定性をそこなう傾向がある。また、酸
素に対するケイ素の原子数比は1.5未満であることが必
要である。この原子数比が1.5以上では相対的に酸素が
欠損した酸窒化物となり、このような組成では未反応の
ケイ素が経時的に酸素と結合して体積が増加するため、
圧縮応力を生じて保護膜の剥離をひき起こすおそれがあ
る。
第1図は、ケイ素と窒素と酸素との原子数比を示す三
角座標グラフであるが、本発明においては、この図のA
(Si60N0O40)、B(Si33.3N0O66.7)及びC(Si39.1
34.826.1)の3点を順次線分で結んだ三角形より内側
の領域の組成をもつケイ素の酸窒素化物を用いることが
必要である。
さらに、本発明保護膜においては、使用するケイ素の
酸窒化物の組成が前記条件を満たすとともに、その微視
的な膜組織において、粒界で囲まれた粒組織の密度が1
μm2当り10個以下になっていることが必要である。ここ
でいう粒組織とは、粒界で完全に囲まれた膜の構造単位
を示す。
膜の作成方法が不適切であると、膜における上記の構
造単位が多数生成し、単位体積当りに多数の粒界を含む
ことになる。膜の作成方法を改善することにより、前記
の粒組織を仕切っている粒界は次第に不連続になり、別
々であった粒組織同士がつながって、その総数は減少す
る。これがさらに進むと、もはや1つの粒組織を完全に
囲むような連続した粒界は存在しなくなり、あたかも膜
全体が1つの粒組織であるかのような構造を呈する。理
想的には、膜組織内に粒組織を形成するような連続した
粒界が1つも存在せず、全体が均一な膜構造となってい
るのが望ましいが、本発明の目的を達成するには、保護
膜の粒組織の密度が1μm2当り10個以下であればよい。
通常の薄膜形成法では保護膜における微視的な膜組織が
島状になりやすく、クラックはこの組織と組織の粒界か
ら生じると考えられる。したがって、前記のように粒組
織の密度を1μm2当り10個以下とすることにより、本発
明保護膜はクラックが発生しにくくなり、かつ機械的強
度の高いものとなる。
本発明保護膜を形成する方法としては、例えばスパッ
タ法、蒸着法、CVD法、イオンプレーティング法など、
公知の方法を用いることができるが、本発明の効果を十
分に発揮させるにはスパッタ法が好適である。また、ス
パッタ法により、所望の組成の酸窒化物を得るには、反
応性スパッタ法で膜を形成するのが有利である。
このようなスパッタ法で形成された薄膜の粒組織の大
きさは、主にガス圧とパワーに左右され、また、薄膜形
成時の組織の成長速度が核生成速度に比べて遅いと粒組
織は小さくなり、所望の保護膜が得られない。したがっ
て、スパッタのパワーを上げるか圧力を下げてレートを
上げるのが効果的であるが、一般にパワーによる粒組織
の制御法は、基板温度の上昇をもたらすなどの好ましく
ない事態を招来するおそれがあるので、ガス圧コントロ
ールによる制御法が有利である。ガス圧の具体的な値に
ついては、スパッタ装置により異なり、一概に定めるこ
とはできないが、通常0.8Pa以下、好ましくは0.5Pa以下
で所望の膜組織を得ることができる。
また、ターゲットとしてはケイ素化合物を用いてもケ
イ素元素を用いてもよいが、一般にはケイ素化合物の方
が所望の膜を形成しやすいので有利である。ケイ素元素
を用いる場合、基板上で反応と組織の成長とが平行して
進むため、相対的に核生成の速度が遅くなり、所望の粒
組織を形成するためのスパッタ条件(特にガス圧)の範
囲を狭くする必要があり、好ましくない。この方法を採
用する場合、反応ガスの分圧を過剰にし、Siターゲット
の表面を化合物の形にするのが望ましい。なお、Si3N4
ターゲットを用い、流量比を調節したアルゴンと酸素と
の混合ガスでスパッタする方法では、本発明の酸窒化物
の組成より窒素が不足した膜になることがあるが、この
ような場合には窒素ガスを混合すればよい。
このようにして成膜した保護膜が、所望の粒組織の大
きさを有しているかどうかを確認するには、サブミクロ
ンオーダーの分解能を有する透過型電子顕微鏡を用いて
観察するのがよい。この方法によると、通常1nm程度の
分解能、若しくはそれ以上の分解能が得られる。本発明
でいう粒組織はコントラストのはっきりした粒界で区切
られているので、容易にその数を求めることができる。
スパッタ法で形成される保護膜において、形成時のガス
圧を下げていくと、粒界のコントラストが次第に小さく
なり、粒組織と粒組織とが連続的につながっていく様子
がはっきり認められる。
本発明の目的である剥離やクラックをより効果的に防
止するには、光記録媒体の最上層に紫外線硬化樹脂から
成る保護膜を形成するのが有効である。この場合、該紫
外線硬化樹脂から保護膜は、その硬化収縮率が5〜10%
の範囲にあることが必要である。この硬化収縮率が前記
の範囲を逸脱するとその効果が十分に発揮されなくな
る。これは、剥離やクラックを抑制するのに必要な応力
の値が不適切になるためである。すなわち、該紫外線硬
化樹脂の硬化収縮率が5%未満では剥離やクラックを抑
制するだけの応力が得られないし、10%を超えると応力
が高くなりすぎ、むしろ剥離やクラックを誘発するおそ
れが生じる。
該紫外線硬化樹脂層の膜厚は、通常15〜30μmの範囲
で選ばれる。この膜厚が15μm未満では薄すぎて、該紫
外線硬化樹脂の硬化収縮率による応力の調節が困難であ
るし、30μmを超えると光重合反応が不十分となるおそ
れが生じる。
本発明において、好適に用いられる該紫外線硬化樹脂
のモマノーとしては、例えばスチレン、エチルアクリレ
ート、エチレングリコールジアクリレート、エチレング
リコールメタクリレート、ペンタエリスリトールアクリ
レート、ペンタエリスリトールメタクリレート、ペンタ
エリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリト
ールテトラメタクリレート、トリメチロールプロパント
リアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリ
レート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリ
メチロールプロパンジメタクリレート、あるいはこれら
の誘導体などが挙げられる。これらのモノマーは1種用
いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
該紫外線硬化樹脂モノマーを塗布する方法としては、公
知の方法、例えばスピンコート、グラビア塗布、スプレ
ーコート、ディッピングなどの方法を用いることができ
るが、生産性の点からスピンコート法が特に好適であ
る。
このようにして形成された保護膜の機械的強度の向上
によっているので、この保護膜が施される光記録媒体は
方式、種類、材料について特に制限はない。例えば種類
としては、再生専用型、追記型、書換え型のいずれであ
ってもよいし、方式も開孔方式、相変化方式、光磁気方
式などのいずれであってもよく、また、材料について
は、再生専用型で一般に用いられるアルミニウムなどの
金属の外、カルコゲン系の合金や酸化物、希土類−遷移
金属合金、有機色素など、いずれにも適用できる。さら
に、基板材料の種類についても特に制限はなく、例えば
ガラス、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキ
シ樹脂など、いずれのものであってもよいが、これらの
中で高温、高湿で膨張率の大きいプラスチック基板に対
し、本発明保護膜は特に有用である。
本発明においては、ケイ素の酸窒化物から成る本発明
の保護膜を前記の光記録媒体における記録層の上又は
下、若しくはその両側に設け、さらに場合により、光記
録媒体の最上層に、本発明に係る紫外線硬化樹脂から成
る保護膜を設けることにより、高温、高湿の過酷な環境
下での使用が可能な光記録媒体が得られる。
次に、添付図面に従って、本発明の光記録媒体の構造
を説明する。
第2図ないし第4図は、本発明の光記録媒体それぞれ
異なった構造例を示す拡大断面図であって、第2図にお
いては、基板1上に干渉層2、記録層3及び保護層が順
次積層され、4層から成る光記録媒体が形成されてい
る。次に第3図においては、保護層4の上にさらに反射
層5が設けられ、5層から成る光記録媒体が形成されて
いる。また、第4図においては、上記の反射層5の上に
さらに紫外線硬化樹脂から成る保護層6が設けられ、6
層から成る光記録媒体が形成されている。
発明の効果 光記録媒体における記録層の少なくとも一方の面に設
けられる本発明の光記録媒体用保護膜は、ケイ素の酸窒
化物から成るものであって、特定の組成及び微視的な膜
組織を有するように成膜することにより、水や酸素に対
するバリア性、化学的安定性、過酷な条件下での機械的
強度などが優れ、かつ剥離やクラックが発生しにくいも
のとなる。
このような優れた特性を有する本発明保護膜を、光記
録媒体における記録層の少なくとも片側に設けることに
より、該光記録媒体は、高温、高湿の過酷な環境下での
使用が可能な耐環境性に優れたものとなる。
さらに、この光記録媒体の最上層に、特定の硬化収縮
率を有する紫外線硬化樹脂から成る保護膜を設けること
により、該光記録媒体は、より耐環境性に優れたものと
なる。
実施例 次に実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、
本発明はこれらの例によってなんら限定されるものでは
ない。
実施例1 直径130mmの案内溝付きポリカーボネート基板(厚さ
1.2mm)1上に、膜厚80nmのSiNxOyから成る干渉層2、
膜厚80nmのTb20Fe70Co10から成る記録層3及び膜厚80nm
のSi45N20O35から成る保護層4を順次設けることによ
り、第2図に示す構造の光磁気ディスク媒体を作成し
た。前記記録層は合金ターゲットによるDCマグネトロン
スパッタ(ガス圧0.4Pa、パワー200W)、保護層はSiタ
ーゲットによる反応性RFマグネトロンスパッタ(ガス圧
0.4Pa、N2分圧0.04Pa、O2分圧0.05Pa、パワー400W)に
より形成し、保護層を兼ねた干渉層はSiターゲットを用
いて成膜条件を種々設定して形成した。この際スパッタ
ガスはAr、N2、O2の混合ガスを使用し、ガスの分圧は形
成される干渉層の組成がSi45N20O35となるように調節し
た。
次に、デイスクの耐環境性を評価するため、ホットメ
ルト系接着剤により、このディスクを2枚貼合わせたの
ち、これを80℃、90%RHの加速寿命試験環境下に200時
間放置した。
また、これとは別に、干渉層の膜構造を観察するた
め、前記と同一の基板上に干渉層のみを形成したものを
用意し、分解能0.6nmの透過型電子顕微鏡(以下TEMと略
す)により粒組織を観察した。使用した機器は日立製作
所製H−500である。第1表に、成膜条件とクラック発
生の有無との関係を示す。
ガス圧の高い条件(No.1)では、50〜100時間で媒体
にクラックが多数発生し、記録、再生ができなかった。
第5図ないし第7図は、上記の試料の膜組織のTEM写
真であるが、この第5図の試料No.1では多数の粒界がは
っきり認められるのに対し、第6図の試料No.5では、1
μm2の断面内に粒組織が1個しかなく、粒界のない均一
なものになっている。さらに、第7図の試料No.3では、
No.1と類似した粒界が認められるが、連続した粒界が粒
組織を囲むに至っておらず、1μm2断面内の粒組織の数
は数個である。
以上の検討結果より、クラックの発生は粒界で完全に
囲まれた粒組織を断面1μm2当り数個以内にすることに
より防止できること、このような粒界の少ない膜を形成
するにはガス圧を下げるのが有効(本実施例の条件では
0.45Pa以下)であることが分る。なお、これらのTEM写
真で波打つような濃淡の見られるものがあるが、これは
観察用のサンプルが完全に平らでないために見かけ上コ
ントラストがついたためであり、本発明でいうところの
粒界や粒組織とは無関係である。
実施例2 直径130mmの案内溝付きポリカーボネート基板(厚さ
1.2mm)1上に、膜厚120nmのSiNxOyから成る干渉層2、
膜厚30nmのTb20Fe70Co10から成る記録層3、膜厚35nmの
Si45N20O35から成る保護層4及び膜厚40nmのアルミニウ
ムから成る反射層5を順次設けることにより、第4図に
示す構造をもつ光磁気ディスク媒体を作成した。
前記記録層は合金ターゲットによるDCマグネトロンス
パッタ(ガス圧0.4Pa、パワー200W)、保護層はSiター
ゲットによる反応性RFマグネトロンスパッタ(ガス圧0.
4Pa、N2分圧0.04Pa、O2分圧0.05Pa、パワー400W)、反
射層はAlターゲットによるRFマグネトロンスパッタ(ガ
ス圧0.4Pa、パワー200W)により形成した。保護層を兼
ねた干渉層は、Siターゲットの反応性スパッタ及びSiN3
N4ターゲットを用いて成膜し、それぞれスパッタ条件を
種々設定した。この際、スパッタガスはAr、N2、O2の混
合ガスを使用し、ガスの分圧は形成される干渉層の組成
がSi45N20O35となるように調節した。
次に、ディスクの耐環境性を評価するため、ホットメ
ルト系接着剤により、このディスクを2枚貼合わせたの
ち、これを80℃、90%RHの加速寿命試験環境下に200時
間放置した。
第2表に成膜条件とクラック発生の有無との関係を示
す。
実施例1と同様に、ガス圧が高い条件、すなわち多数
の粒界が認められる条件では50〜100時間で媒体にクラ
ックが多数発生し、記録、再生ができなかった。粒界の
少ない膜を形成するためのガス圧はターゲットがSiであ
るかSi3N4であるかによって異なり、前者の場合は0.45P
a以下、後者の場合は0.65Pa以下が好ましい。
実施例3 直径130mmの案内溝付きポリカーボネート基板(厚さ
1.2mm)上に、実施例2と同じ構成の光磁気ディスク媒
体を形成した。このうち記録層は合金ターゲットによる
DCマグネトロンスパッタ(ガス圧0.4Pa、パワー200
W)、保護層はSiターゲットによる反応性RFマグネトロ
ンスパッタ(ガス圧0.4Pa、N2分圧0.04Pa、O2分圧0.05P
a、パワー400W)、反射層AlターゲットによるRFマグネ
トロンスパッタ(ガス圧0.4Pa、パワー200W)により形
成した。保護層を兼ねた干渉層はSi3N4ターゲットをAr
とN2とO2との混合ガスにより反応性スパッタして成膜
し、ガスの分圧を調節して種々の組成のものを作成し
た。スパッタ条件はガス圧0.4Pa、パワー200Wに固定し
た。
次に、ディスクの耐環境性を評価するため、ホットメ
ルト系接着剤により、このディスクを2枚貼合わせたの
ち、これを80℃、90%RHの加速寿命試験環境下に500時
間放置した。
また、これとは別に、干渉層の膜構造を観察するた
め、前記と同一の基板上に干渉層のみを形成したものを
用意し、TEMにより粒組織を観察した、第3表に、膜組
成とクラッチ発生の有無及び剥離発生の有無との関係を
示す。
本実施例においては、すべてのディスクについて500
時間経過してもクラックは発生しなかった。
第5図はこの例におけるNo.17の膜組織のTEM写真であ
る。この写真図から明らかなように、粒組織は1μm2
断面内に粒組織が1個しかなく、粒界のない均一な膜に
なっていることが分る。しかし、三角座標において、2
つの化学量論化合物であるSiO2とSi3N4を結ぶ線分よりS
i側で表わされる組成範囲にあり、かつ酸素に対するケ
イ素の原子数比が1.5以上のものでは、200時間経過後よ
り、基板と干渉層との間に剥離が発生し、記録、再生が
できなくなった。
以上の結果より、本実施例のいずれの組成であっても
粒界を減少させることによりクラックを防ぐことはでき
るが、第1図の範囲を逸脱した組成では剥離が発生して
しまい、記録・再生に支障をきたすことが分る。なお、
第5図のTEM写真で波打つような濃淡が見られるが、こ
れも実施例1と同様、本発明でいうところの粒界や粒組
織とは無関係である。
実施例4 直系86mmの案内溝付きポリカーボネート基板(厚さ1.
2mm)上に、実施例2と同じ構成の光磁気ディスク媒体
を形成した。このうち記録層は合金ターゲットによるDC
マグネトロンスパッタ(ガス圧0.4Pa、パワー200W)、
保護層はSiターゲットによる反応性RFマグネトロンスパ
ッタ(ガス圧0.4Pa、N2分圧0.04Pa、O2分圧0.05Pa、パ
ワー400W)、反射層はAlターゲットによるRFマグネトロ
ンスパッタ(ガス圧0.4Pa、パワー200W)により形成し
た。保護層を兼ねた干渉層は、Si3N4ターゲットをArとN
2とO2の混合ガスにより反応性スパッタして成膜し、ガ
スの分圧を調節して組成をSi40N30O30となるようにし
た。スパッタ条件はガス圧0.4Pa、パワー200Wに固定し
た。
この光磁気ディスク媒体の最上層としてペンタエリス
リトールトリメタクリレートのイソプロパノール溶液を
スピンコートし、これを紫外線硬化させて保護層とし
た。その際、紫外線の照射強度と照射時間を変化させ
て、種々の硬化収縮率のものを作成した。膜厚はすべて
20μmとした。以上のようにして作成した光磁気ディス
クの構造を第6図に示す。
次に、ディスクの耐環境性を評価するため、80℃、90
%RHの加速寿命試験環境下に2000時間放置した。本実施
例ではディスクを貼り合わせることはせず、単板構造と
した。その結果を第4表に示す。
本実施例で明らかなように、ディスクの最上層に紫外
線硬化樹脂から成る保護層を追加することによって、単
板構造でも2000時間まで剥離、クラックの発生が抑制さ
れるが、紫外線硬化樹脂の硬化収縮率が5.0%より低い
場合はクラックが、10.0%より高い場合は剥離が発生す
ることが和分る。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の光記録媒体用保護膜の組成範囲を示す
三角座標図、第2図、第3図及び第4図は、それぞれ本
発明光記録媒体の異なった構造例を示す断面図、第5図
ないし第7図は、それぞれ光記録媒体用保護膜の結晶の
構造を示す電子顕微鏡写真図である。 図中符号1は基板、2は干渉層、3は記録層、4は保護
層、5は反射層、6は紫外線硬化樹脂から成る保護層で
ある。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) G11B 7/24 G11B 11/10

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】光記録媒体における記録層の少なくとも一
    方の面に設けられるケイ素の酸窒化物から成る保護膜で
    あって、その原子数比が(Si100N0O0)、(Si0N100O0
    及び(Si0N0O100)を頂点とする三角座標において、A
    (Si60N0O40)、B(Si33.3N0O66.7)及びC(Si39.1
    34.826.1)の各点を順次線分で結んだ三角形より内側
    の領域で表わされ、かつその微視的な膜組織において、
    粒界で囲まれた粒組織の密度が1μm2当り10個以下であ
    ることを特徴とする光記録媒体用保護膜。
  2. 【請求項2】請求項1記載の保護膜から成る層と、光記
    録媒体の最上層に設けられ、かつ硬化収縮率が5〜10%
    の紫外線硬化樹脂から成る層とから構成される光記録媒
    体用保護膜。
  3. 【請求項3】記録層の少なくとも一方の面に請求項1記
    載の保護膜を有することを特徴とする光記録媒体。
  4. 【請求項4】請求項2記載の保護膜を有することを特徴
    とする光記録媒体。
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