JP2801691B2 - 工業化住宅におけるキャンティバルコニーと下屋の連結施工方法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、ユニット工法で建てられる工業化住宅のキ
ャンティバルコニー（支柱なしバルコニー）と下屋とを
連結するための方法に関する。

〔背景技術〕

予め工場で複数の箱型住宅ユニットを生産し、これら
の住宅ユニットを建設現場で組み合わせることによって
ユニット工法で建てられる工業化住宅が広く普及してい
る。この工業化住宅では、住宅ユニットの床材や天井
材、壁材等の取り付けは工場で行われるため、工業化率
が高められて建設現場での作業割合が低下し、工期の短
縮、コストの低減を達成できる。

〔発明が解決しようとする課題〕

以上の工業化住宅にキャンティバルコニーと下屋とを
連結させて設ける場合がある。

このように工業化住宅にキャンティバルコニーと下屋
とを連続させて設ける場合、ユニット工法による工業化
住宅の利点、すなわち大部分の作業を工場で終えて建設
現場での作業を少なくできるという利点をそのまま確保
できるようにすることが望まれる。また、キャンティバ
ルコニーには支柱がないため、下屋との間で高さレベル
のずれが生じやすく、このためこのようなずれをなくし
ながらキャンティバルコニーと下屋とを連結することが
必要になる。また、キャンティバルコニーと下屋とは連
結されるため、これらの防水構造を同一構造とし、連続
性を有するものとすることが必要になる。

本発明の目的は、ユニット工法による工業化住宅の利
点をそのまま確保しながら、キャンティバルコニーと下
屋とを高さレベルのずれをなくして連結できること、お
よびキャンティバルコニーと下屋との連続性を有する防
水構造を得られる工業化住宅におけるキャンティバルコ
ニーと下屋の連結施工方法を提供するところにある。

〔課題を解決するための手段〕

本発明は、予め工場で生産された複数の住宅ユニット
を建設現場で組み合わせることにより建てられる工業化
住宅において、工場では、複数のバルコニー梁上に面材
を敷設する作業、この面材の上面に下屋用住宅ユニット
側端部が延長端部となった防水シートを張設する作業、
キャンティバルコニー用住宅ユニットにバルコニー梁を
取り付ける作業、および下屋用住宅ユニットの上部面材
の上面にキャンティバルコニー用住宅ユニット側端部が
延長端部となった防水シートを張設する作業を行い、建
設現場では、下屋用住宅ユニットに近いバルコニー梁と
下屋用住宅ユニットの上部梁と連結金具で連結する作
業、バルコニー梁上の前記面材と下屋用住宅ユニットの
上部面材との間に連結用面材を配設する作業、および前
記両方の防水シートの延長端部を連結用面材上で上下に
重合する作業を行うことを特徴とする。

〔作用〕

以上のことから、工業化住宅に連続したキャンティバ
ルコニーと下屋とを設けるために必要な作業のうち大部
分の作業は工場で終了し、建設現場ではキャンティバル
コニーと下屋の連結部に関する簡単な作業だけを行えば
よい。また、連結金具でキャンティバルコニー用住宅ユ
ニットのバルコニー梁と下屋用住宅ユニットの上部梁と
を連結することによりこれらの梁の高さレベルが揃えら
れることになり、キャンティバルコニーと下屋との高さ
レベルのずれが解消される。さらに、前記両方の防水シ
ートの延長端部相互を前記連結用面材上で上下に重合す
ることにより、キャンティバルコニーと下屋との防水構
造は防水シートによる連続性を有する同一構造のものと
して仕上がる。

〔実施例〕

以下に本発明に係る施工方法の一実施例を添付図面に
基づいて説明する。

第１図は本実施例に係る施工方法が適用された工業化
住宅を示す。この工業化住宅は、予め工場で生産された
複数の住宅ユニット１を建設現場で前後、左右、上下に
組み合わせることにより、ユニット工法で建てられる。
住宅ユニット１のうちには、キャンティバルコニー２が
設けられたキャンティバルコニー用住宅ユニット1Aと、
内部に居室空間を有する下屋３を設けるための下屋用住
宅ユニット1Bとがある。それぞれの住宅ユニット１の骨
組みは、下屋用住宅ユニット1Bについて示すように、四
隅の４本の柱４と、これらの柱４の上下端を結合する各
４本の上部梁５、下部梁６とで構成されている。

以上のように工業化住宅に連続したキャンティバルコ
ニー２と下屋３とを設けるために必要な作業のうち、キ
ャンティバルコニー２と下屋３との連結部分についての
作業は建設現場作業として行われるが、それ以外の大部
分の作業は予め工場で行われる。

次にこの工場で行われる作業について説明する。

工場でのキャンティバルコニー用住宅ユニット1Aの生
産時に、キャンティバルコニー２も生産されてこのキャ
ンティバルコニー２は住宅ユニット1Aに取り付けられ
る。具体的には、桁８と共にキャンティバルコニー２の
骨組を構成するそれぞれのバルコニー梁７の上面には、
第２図の通り、受け金具９をテックスボルトや溶接で取
り付け、この受け金具９の上面にバルコニー２の床を構
成する例えばセメント版による面材10をテックス釘で固
定し、これによりバルコニー梁７上に面材10を敷設す
る。この面材10の上面には防水シート11（第４図参照）
を接着しながら張設する。この防水シート11の下屋用住
宅ユニット1B側の端部11Aは面材10から突出した長さを
有する延長端部となっている。この後、それぞれのバル
コニー梁７をキャンティバルコニー用住宅ユニット1Aの
骨組みに片持ちで結合する。

下屋用住宅ユニット1Bの上部には、工場で例えば軽量
気泡コンクリート（ALC）による上部面材12が取り付け
られる。この上部面材12の上面に防水シート13を接着し
ながら張設する。キャンティバルコニー２との連結が行
われる箇所では、防水シート13のキャンティバルコニー
用住宅ユニット1A側の端部13Aは上部面材12から突出し
た長さを有する延長端部となっている。本実施例では、
第１図の通り、下屋用住宅ユニット1Bの両側にキャンテ
ィバルコニー用住宅ユニット1Aが配置されるため、この
延長端部13Aは防水シート13の両端部に設けられる。

下屋用住宅ユニット1Bの第１図で示した上部梁５のう
ち、左右両側の上部梁5Aの上面には第２図の通り受け金
具14をボルトや溶接で取り付ける。また、この上部梁5A
の上面には連結金具15をキャンティバルコニー用住宅ユ
ニット1A側に突出させてボルトや溶接で取り付ける。こ
の連結金具15の先端と、前記複数のバルコニー梁７のう
ち下屋用住宅ユニット1Bに近いバルコニー梁7Aとに孔1
6,17を形成する。

以上が工場で行う作業であり、次に建設現場で行う作
業を説明する。なお、それぞれの住宅ユニットを建設現
場に運搬するときには、前記防水シート11,13の延長端
部11A,13Aは丸められている。

建設現場でそれぞれの住宅ユニットを所定位置に配置
して組み合わせたとき、バルコニー梁７は、キャンティ
バルコニー用住宅ユニット1Aに片持ちで取り付けられて
いることから、撓んでいる。このため、第２図の通り、
バルコニー梁7Aの先端部と下屋用住宅ユニット1Bの前記
上部梁5Aとは上下にずれており、これらの梁7A,5Aには
高さレベルのずれＨがある。

そこで、第３図の通り、それぞれのバルコニー梁７の
先端部を押し上げて前記孔16,17にボルト18を挿通し、
ボルト18、ナット19でバルコニー梁7Aと連結金具15とを
締結する。これによりバルコニー梁7Aと上部梁5Aとが連
結されるため、キャンティバルコニー２と下屋３とは同
じ高さになる。

次いで、第４図の通り、キャンティバルコニー２の前
記面材10と下屋用住宅ユニット1Bの前記上部面材12との
間に例えばセメント版による連結用面材20を配置し、こ
の連結用面材20を前記受け金具9,14にテックス釘21で固
定する。これによりバルコニー梁7Aと上部梁5Aとの間の
隙間が塞がれる。

この後、第５図の通り、前記防水シート11,13の延長
端部11A,13Aを展開し、これらの延長端部11A,13Aを上下
に重合するとともに、例えば熱溶着や接着で結合する。
これによりキャンティバルコニー２と下屋３とは連続性
を有する同じ構造で防水されることになる。

以上説明したように本実施例によれば、工業化住宅に
連続したキャンティバルコニー２と下屋３とを設けるた
めに必要な作業のうち、工場において大部分の作業、す
なわち複数のバルコニー梁７上に面材10を敷設する作
業、面材10の上面に下屋用住宅ユニット1B側の端部が延
長端部11Aとなった防水シート11を張設する作業、キャ
ンティバルコニー用住宅ユニット1Aにバルコニー梁７を
取り付ける作業、および下屋用住宅ユニット1Bの上部面
材12の上面にキャンティバルコニー用住宅ユニット1A側
の端部が延長端部13Aとなった防水シート13を張設する
作業等を行い、建設現場では残された簡単な作業、すな
わちバルコニー梁7Aと下屋用住宅ユニット1Bの上部梁5A
とを連結金具15で連結する作業、面材10と上部面材12と
の間に連結用面材20を配設する作業、および両方の防水
シート11,13の延長端部11A,13Aを連結用面材20上で上下
に重合する作業だけを行えばよく、このため工場化住宅
に求められる建設現場作業割合の低下を達成でき、ユニ
ット工法による工業化住宅の利点をそのまま確保しなが
ら、住宅に連続したキャンティバルコニーと下屋とを設
けることができる。

また、バルコニー梁７が片持ちのための撓んでいて
も、下屋用住宅ユニット1Bに近いバルコニー梁7Aが下屋
用住宅用ユニット1Bの上部梁5Aに連結金具15で連結され
るため、これらの梁7A,5Aが同じ高さに揃えられ、キャ
ンティバルコニー２と下屋３とを同じ高さレベルにでき
る。

さらに、キャンティバルコニー２の防水シート11と下
屋３の防水シート13とは互いに上下に重合する延長端部
11A,13Aを有するものとなっているため、キャンティバ
ルコニー２と下屋３とを同じ防水構造にしてこれらの間
の連結部分を含めた防水構造を連続性を有するものにで
きる。また、建設現場でのこの防水作業は短時間で終了
できるため、建設現場が雨天となっても、引き続き例え
ば下屋用住宅ユニット1B内部の仕上げ作業を行える。

なお、第１図で示した手摺り22をキャンティバルコニ
ー２、下屋３に設ける作業は建設現場で行ってもよい
が、建設現場作業割合を低下させるため、工場でキャン
ティバルコニー２、下屋３に不連続な手摺り22を取り付
け、建設現場で連続させる作業を行うことが好ましい。

以上の本実施例では下屋３の両側にキャンティバルコ
ニー２が設けられていたが、本発明に係る方法は下屋３
の片側だけにキャンティバルコニー２が設けられる場合
にも適用できる。

〔発明の効果〕

本発明によれば、ユニット工法による工業化住宅の利
点をそのまま確保しながら住宅に連続したキャンティバ
ルコニーと下屋とを設けることができ、また、キャンテ
ィバルコニーと下屋とを高さレベルのずれをなくして連
結できるようになり、さらに、キャンティバルコニーと
下屋とを連続性を有する同じ構造で防水できるようにな
る。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の一実施例に係る方法が適用された工業
化住宅を示す斜視図、第２図はキャンティバルコニー用
住宅ユニットのバルコニー梁と下屋用住宅ユニットの上
部梁とに高さレベルのずれが生じることを示す斜視図、
第３図は第２図のバルコニー梁と上部梁とが連結金具で
連結された状態を示す斜視図、第４図はキャンティバル
コニーの防水シートと下屋の防水シートの延長端部相互
が重合される以前を示す正断面図、第５図は第４図の延
長端部相互が重合された後を示す正断面図である。 １……住宅ユニット、1A……キャティバルコニー用住宅
ユニット、1B……下屋用住宅ユニット、２……キャンテ
ィバルコニー、３……下屋、５……上部梁、７……バル
コニー梁、10……面材、12……上部面材、11,13……防
水シート、11A,13A……延長端部、20……連結用面材。

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】工場で生産された複数の住宅ユニットを建
   設現場で組み合わせることにより建てられる工業化住宅
   において、工場にて、複数のバルコニー梁上に面材を敷
   設する作業、この面材の上面に下屋用住宅ユニット側端
   部が延長端部となった防水シートを張設する作業、キャ
   ンティバルコニー用住宅ユニットに前記バルコニー梁を
   取り付ける作業、および前記下屋用住宅ユニットの上部
   面材の上面に前記キャンティバルコニー用住宅ユニット
   側端部が延長端部となった防水シートを張設する作業を
   行い、建設現場にて、前記下屋用住宅ユニットに近い前
   記バルコニー梁と前記下屋用住宅ユニットの上部梁と連
   結金具で連結する作業、前記バルコニー梁上の前記面材
   と前記下屋用住宅ユニットの前記上部面材との間に連結
   用面材を配設する作業、および前記両方の防水シートの
   延長端部をこの連結用面材上で上下に重合する作業を行
   うことを特徴とする工業化住宅におけるキャンティバル
   コニーと下屋の連結施工方法。