JP2784665B2 - 織機の緯入れ制御装置 - Google Patents

織機の緯入れ制御装置

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【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 この発明は、ジェットルームにおいて、緯糸の飛走特
性が変動したときにも安定な緯入れ動作を継続するため
の織機の緯入れ制御装置に関する。
従来技術 ジェットルーム、殊に、エアジェットルームにおいて
は、製織に使用する緯糸の飛走特性が変化することによ
り、緯入れが不安定になることがある。これは、緯糸の
長さ方向に、糸の太さや毛羽の大小等の糸物性の変動が
あるために、糸の空気抵抗が変化することに主な原因が
あると考えられている。
そこで、緯糸の飛走特性が変化したときにも安定な緯
入れ動作を継続するために、種々の手法が提案されてい
る。その最も代表的なものは、緯入れに際し、所定長さ
の緯糸が織布の反緯入れ側に到達する織機機械角(以
下、到達角度という)を監視し、到達角度の変化によっ
て緯糸の飛走特性の変動を把握した上、これに対応し
て、緯入れ動作を開始する織機機械角(以下、開始角度
という)と、緯入れ用の主ノズル、サブノズルの噴射圧
力との双方を制御するものである。
このものは、緯糸の飛走特性が低下して到達角度の遅
れが検出されると、それを修正するために、開始角度を
早めるとともに噴射圧力を高めるように制御する一方、
到達角度の進みに対しては、両者を逆方向に制御するこ
とにより、到達角度を一定に維持するものであり、開始
角度と噴射圧力の一方のみを制御対象とする場合より良
好な結果を得ることができる。すなわち、開始角度のみ
を修正する場合は、経糸開口との時期的平衡が崩れるこ
とにより、いわゆる経糸掛かりや緯糸の吹切れ等の緯入
れ不良が発生し易く、また、噴射圧力のみを修正する場
合は、その応答が遅いために、緯糸の飛走特性の変動に
追随できないことも少なくないが、この技術によれば、
これらの問題によく対処することができるという。
発明が解決しようとする課題 しかしながら、かかる従来技術によるときは、到達角
度の遅速に基づく修正情報は、開始角度と噴射圧力とを
制御する各制御系に対し、単に並列に加えられるに過ぎ
ないので、現実に、安定な緯入れ動作を継続することは
困難である。すなわち、一般に、開始角度の変化に対す
る緯入れ部材の応答は、極めて速応性がある一方、噴射
圧力の変化は、その応答性に限界があるから、到達角度
に遅速が生じ、その情報が双方の制御系に並列に加えら
れると、まず、応答性に優れた開始角度の修正が行なわ
れ、次いで、噴射圧力が修正されることになる。そこ
で、開始角度の修正によって到達角度が正常に復帰する
と、その後の噴射圧力の修正は、何ら行なわれることが
ない。換言すれば、噴射圧力の修正が行なわれるのは、
開始角度が、経糸開口との関係で決まる修正限界にまで
修正されてもなお到達角度に遅速が残存する場合のみで
あり、しかも、この噴射圧力の修正によって到達角度の
遅速が解消されても、開始角度は、その修正限界から引
き戻されることがない。したがって、その後の織機の運
転は、開始角度が修正限界にある状態で行なわれること
になり、安定な緯入れ動作の継続を実現することは極め
て難しい。
そこで、この発明の目的は、かかる従来技術の問題に
鑑み、応答性が悪い噴射圧力に対する修正は、到達角度
の遅速に代えて、それに基づいて修正された開始角度の
偏差に関する情報を使用することにより、開始角度は、
一時的に大きく偏移したとしても、噴射圧力の修正動作
の追随に伴なって、再びその正規の値に引き戻されるよ
うにし、安定な緯入れ動作の継続を実現することができ
るようにした織機の緯入れ制御装置を提供することにあ
る。
課題を解決するための手段 かかる目的を達成するためこの発明の構成は、緯入れ
ノズルの噴射圧力を制御する圧力コントローラと、緯入
れ部材の作動時期を制御するタイミングコントローラ
と、条件設定部とからなり、この条件設定部は、緯糸の
到達角度と設定到達角度とから到達角度偏差を算出する
到達角度偏差検出手段と、到達角度偏差によって設定開
始角度を修正し、指令開始角度をタイミングコントロー
ラに出力する開始角度補正手段と、設定開始角度と指令
開始角度とから開始角度偏差を算出して圧力コントロー
ラに出力する開始角度偏差検出手段とを備えることをそ
の要旨とする。
なお、開始角度補正手段とタイミングコントローラと
の間にリミッタ要素を介装してもよく、また、開始角度
偏差検出手段と圧力コントローラとの間にデッドバンド
要素を介装することもできる。
作 用 而して、この構成によるときは、緯糸の飛走特性が変
動し、その到達角度に遅速が生じると、到達角度偏差が
発生するから、開始角度補正手段により、まず、開始角
度の修正動作が行なわれる。一方、このようにして、開
始角度の修正動作が行なわれると、開始角度偏差が生じ
るから、これを圧力コントローラに送出することによ
り、噴射圧力の修正がなされる。そこで、このときの圧
力コントローラは、たとえば、開始角度偏差のピーク値
または積分値に対応して噴射圧力を修正するものとすれ
ば、圧力コントローラによる噴射圧力の修正動作は、開
始角度偏差が解消されるまで継続されることになり、最
終的に、噴射圧力のみが飛走特性の変動分に対応して偏
移し、開始角度は、正規の設定開始角度に復帰した状態
で安定な運転を継続することができる。
開始角度補正手段とタイミングコントローラとの間に
リミッタ要素を介装すれば、大きな到達角度偏差が発生
したときにも、指令開始角度が極端に偏移することを阻
止することができ、経糸開口との時期的平衡が失われて
しまうおそれがない。
また、開始角度偏差検出手段と圧力コントローラとの
間にデッドバンド要素を介装すれば、微少な開始角度偏
差に対する圧力コントローラの応答を排除し、圧力調整
弁等のメカニカル部品の不要な損耗をなくすることがで
きる。
実施例 以下、図面を以って実施例を説明する。
織機の緯入れ制御装置は、圧力コントローラ10と、タ
イミングコントローラ20と、条件設定部30とからなり
(第1図)、条件設定部30は、到達角度偏差検出手段31
と、開始角度補正手段32と、開始角度偏差検出手段33と
を主要部材としてなる。
織機は、エアジェットルームであるものとし(第2
図)、給糸体W1から解舒される緯糸Wは、ドラム式緯糸
測長貯留装置(以下、単に、貯留装置という)Dと、主
ノズルMNとを経て経糸開口WPに緯入れされる。また、緯
糸Wの走行経路に沿って、複数群に分割されたサブノズ
ルSNi、SNi…(i=a、b…n)が配設されている。
貯留装置Dには、係止ピンD1と解舒センサD2とが付属
し、ドラムD3に巻き付けられて貯留された緯糸Wは、タ
イミングコントローラ20からの緯入れ信号Sd、Sm、Ssi
(i=a、b…n)により、係止ピンD1を解舒位置に駆
動するとともに、開閉弁Vm、Vsi(i=a、b…n)を
開き、主ノズルMN、サブノズルSNi、SNi…を作動させる
とによって緯入れされ、その緯入れ長さWnは、解舒セン
サD2によって計測される。
主ノズルMN、サブノズルSNi、SNi…は、それぞれ、開
閉弁Vm、Vsiと、圧力調整弁PVm、PVsとを経て、共通の
エア源ACに接続され、それぞれの噴射圧力Pm、Psは、圧
力コントローラ10からの制御信号Spm、Spsによって制御
される。また、織布の反緯入れ側には、緯入れされた緯
糸Wの到達角度θeを検出するための到達角度センサES
が配設されており、さらに、エンコーダENからの織機機
械角θが、タイミングコントローラ20に入力されてい
る。
圧力コントローラ10は、噴射圧力設定器11と、噴射圧
力補正手段12と、2台の制御増幅器13、13とを縦続して
なり(第1図)、その出力は、制御信号Spm、Spsとし
て、圧力調整弁PVm、PVsに入力されている。ただし、こ
こでは、サブノズルSNi、SNi…に対する織機側の制御系
は、その図示を省略してある。
条件設定部30の到達角度偏差検出手段31には、到達角
度センサESからの到達角度θeと、到達角度設定器34か
らの設定到達角度θeoとが入力され、その出力は、到達
角度偏差Δθeとして、開始角度補正手段32に入力され
ている。また、開始角度補正手段32と開始角度偏差検出
手段33とには、開始角度設定器35からの設定開始角度θ
soが分岐入力されている。開始角度補正手段32の出力
は、指令開始角度θsとして、タイミングコントローラ
20に出力される他、開始角度偏差検出手段33にも分岐入
力され、その出力は、開始角度偏差Δθsとして、圧力
コントローラ10の噴射圧力補正手段12に出力されてい
る。
タイミングコントローラ20は、条件設定部30から与え
られる指令開始角度θsと、エンコーダENからの織機機
械角θとを比較して、緯入れ信号Sd、Sm、Ssiを出力
し、θ=θsにおいて緯入れを開始する。また、解舒セ
ンサD2からの緯入れ長さWnが所定値になると、緯入れを
完了させるものとする。すなわち、タイミングコントロ
ーラ20は、係止ピンD2、主ノズルMN、サブノズルSNi、S
Ni…からなる緯入れ部材の作動時期を制御している。
いま、正常に緯入れ動作が実行されているときは、緯
糸Wは、開始角度設定器35に設定される設定開始角度θ
soにおいて緯入れが開始され、到達角度設定器34に設定
される設定到達角度θeoにおいて、反緯入れ側に到達す
る。すなわち、このときは、到達角度θe=θeoである
から、到達角度偏差Δθe=θeo−θe=0であり、し
たがって、開始角度偏差Δθs=θso−θs=0が成立
している。そこで、圧力調整弁PVm、PVsによって実現さ
れる主ノズルMN、サブノズルSNi、SNi…からの噴射圧力
Pm、Psも、噴射圧力設定器11に設定される設定噴射圧力
Poに一致している。
何らかの原因で緯糸Wの飛走特性が低下し、到達角度
θeが設定到達角度θeoより遅れると、到達角度偏差検
出手段31は、到達角度偏差Δθe=θeo−θe<0を検
出し、これを開始角度補正手段32に出力する(第3
図)。そこで、開始角度補正手段32は、たとえば、θs
=θso+f(Δθe)<θso(ただし、fは、比例・微
分・積分要素の一部または全部を含む任意の制御関数)
として、指令開始角度θsを算出し、これをタイミング
コントローラ20に出力するから、タイミングコントロー
ラ20は、このようにして与えられる指令開始角度θsに
おいて緯入れを開始することにより、速やかに到達角度
偏差Δθeを除去することができる。
一方、開始角度偏差検出手段33は、このときの開始角
度偏差Δθs=θso−θs>0を算出し、これを圧力コ
ントローラ10に出力するので、圧力コントローラ10の噴
射圧力補正手段12は、噴射圧力設定器11から与えられる
設定噴射圧力Poに対し、開始角度偏差Δθsが消去され
る方向に補正を加え、その結果を指令噴射圧力Pとし
て、制御増幅器13、13を介し圧力調整弁PVm、PVsに出力
する。すなわち、到達角度偏差Δθe<0のときは、開
始角度偏差Δθs>0であるから、これに対応して、P
>Poとなるように補正の方向を選定する。この結果、圧
力調整弁PVm、PVsは、主ノズルMN、サブノズルSNi、SNi
…からの噴射圧力Pm、Psを、Pm=Ps=P>Poとなるよう
に変更する。
ここで、圧力調整弁PVm、PVsを含む圧力コントローラ
10の応答性は、タイミングコントローラ20のそれより格
段に遅いのが普通であるが、このような場合にも、最終
的に、噴射圧力Pm、Psが確実にPm=Ps=Pに修正され、
それに対応して、指令開始角度θs、開始角度偏差Δθ
sは、θs=θso、Δθs=0に復帰することが好まし
い。そこで、噴射圧力補正手段12としては、少なくとも
積分要素Iを含む任意の制御要素12aと加え合せ点12bと
の組合せ(第4図(A))、または、ピークホールド要
素12cと比例要素を含んだ制御要素12dと加え合せ点12b
との組合せ(同図(B))を使用するのがよい。前者に
おいては、積分要素Iの時定数を十分長くとることによ
り、また、後者においては、ピークホールド要素12c
が、開始角度偏差Δθsのピーク値をホールドすること
により、確実にPm=Ps=Pを達成させることができる
(第3図)。ただし、ピークホールド要素12cは、Δθ
s=0において、そのホールド内容をクリアするものと
する。
緯糸Wの飛走特性が高くなり、到達角度θeがθe<
θeoの方向に偏移したときの全体動作は、以上の説明と
逆となり、最終的に、噴射圧力Pm、Psは、Pm=Ps=P<
Poが達成されるとともに、指令開始角度θs、開始角度
偏差Δθsは、θs=θso、Δθs=0に復帰する。
他の実施例 開始角度補正手段32とタイミングコントローラ20との
間には、リミッタ要素を介装することができる。到達角
度偏差Δθeが過大な場合にも、指令開始角度θsが極
端に偏移し、経糸開口との時期的平衡が失われてしまう
おそれを排除することができる。
開始角度偏差検出手段33と圧力コントローラ10との間
に、デッドバンド要素を介装することもでき、これによ
れば、デッドバンド要素は、そのデッドバンド幅内にお
ける微少な開始角度偏差Δθsを圧力コントローラ10に
送出されないようにすることができるから、圧力コント
ローラ10と、これに付属する圧力調整弁PVm、PVsが、不
必要な微少動作をする機会を少なくすることが可能であ
る。
以上の説明において、主ノズルMN、サブノズルSNi、S
Ni…の噴射圧力Pm、Psは、常に、Pm=Ps=Pが成立する
としたが、これは、たとえば、制御増幅器13、13の入力
側に適当な比率設定要素を介装することにより、Pm=aP
s(aは1でない定数)として、噴射圧力Pm、Psを異な
るものとしてよいものとする。また、圧力調整弁PVs
は、サブノズルSNi、SNi…の各群ごとに配設し、その各
群ごとに異なる噴射圧力を実現するようにしてもよい。
すなわち、主ノズルMN、サブノズルSNi、SNi…からなる
各緯入れノズルの噴射圧力は、その全体を一括して、ま
たは、主ノズルMNのみ、あるいは、サブノズルSNi、SNi
…を任意の群に分割して、圧力コントローラ10の制御対
象とすることができるものとする。
また、条件設定部30を含む第1図の全体制御系は、ア
ナログ系、ディジタル系のいずれによっても実現するこ
とができ、殊に後者によるときは、織機のピック動作に
対応して作動させることができる。さらに、後者におい
ては、到達角度偏差Δθeは、複数回のピック動作にお
ける到達角度θe、θe…の移動平均値に基づいて算出
してもよい。
さらに、タイミングコントローラ20は、織機機械角θ
が、指令開始角度θsに一致した時点で、主ノズルMN、
サブノズルSNi、SNi…および係止ピンD2からなる緯入れ
部材の作動を開始するようにしたが、必要ならば、これ
らの緯入れ部材の作動時期に所定の時間差を持たせるよ
うにしてもよい。すなわち、係止ピンD2の作動よりも所
定の時間だけ先だって、主ノズルMNの作動を開始させる
ようにしてもよく、あるいは、この逆にしてもよい。
発明の効果 以上説明したように、この発明によれば、圧力コント
ローラと、タイミングコントローラとに対し、到達角度
偏差検出手段と、開始角度補正手段と、開始角度偏差検
出手段とを備える条件設定部を組み合わせ、緯入れ時に
おいて到達角度の遅速が発生したときは、まず、開始角
度を変更することによって速やかにこれを是正する一
方、速応性のない緯入れノズルの噴射圧力は、このとき
発生する開始角度偏差に基づいて修正するようにするこ
とによって、最終的に、開始角度は、正規の設定開始角
度に復帰することができるので、開始角度のみが極端に
偏移した不安定な状態での運転を排除することができ、
安定な緯入れ動作の継続を実現することができるという
優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
第1図ないし第4図は実施例を示し、第1図は全体系統
図、第2図は全体構成概念図、第3図は動作説明線図、
第4図(A)、(B)は、それぞれ別の態様による第1
図の要部詳細図である。 W……緯糸、Pm、Ps……噴射圧力 θs……指令開始角度、θso……設定開始角度 Δθs……開始角度偏差 θe……到達角度、θeo……設定到達角度 Δθe……到達角度偏差 10……圧力コントローラ 20……タイミングコントローラ 30……条件設定部 31……到達角度偏差検出手段 32……開始角度補正手段 33……開始角度偏差検出手段

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】緯入れノズルの噴射圧力を制御する圧力コ
    ントローラと、緯入れ部材の作動時期を制御するタイミ
    ングコントローラと、条件設定部とからなり、該条件設
    定部は、緯糸の到達角度と設定到達角度とから到達角度
    偏差を算出する到達角度偏差検出手段と、到達角度偏差
    によって設定開始角度を修正し、指令開始角度を前記タ
    イミングコントローラに出力する開始角度補正手段と、
    設定開始角度と指令開始角度とから開始角度偏差を算出
    し、前記圧力コントローラに出力する開始角度偏差検出
    手段とを備えてなる織機の緯入れ制御装置。
  2. 【請求項2】前記開始角度補正手段と前記タイミングコ
    ントローラとの間にリミッタ要素を介装することを特徴
    とする特許請求の範囲第1項記載の織機の緯入れ制御装
    置。
  3. 【請求項3】前記開始角度偏差検出手段と前記圧力コン
    トローラとの間にデッドバンド要素を介装することを特
    徴とする特許請求の範囲第1項または第2項記載の織機
    の緯入れ制御装置。
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