JP2774987B2 - 医科用および歯科用硬化性材料 - Google Patents

医科用および歯科用硬化性材料

Info

Publication number
JP2774987B2
JP2774987B2 JP50705889A JP50705889A JP2774987B2 JP 2774987 B2 JP2774987 B2 JP 2774987B2 JP 50705889 A JP50705889 A JP 50705889A JP 50705889 A JP50705889 A JP 50705889A JP 2774987 B2 JP2774987 B2 JP 2774987B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
acid
collagen
weight
parts
organic acid
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP50705889A
Other languages
English (en)
Inventor
啓靖 大西
富人 杉原
孝 石井
銀男 鈴木
聖子 羽多
俊和 高野
Original Assignee
新田ゼラチン 株式会社
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by 新田ゼラチン 株式会社 filed Critical 新田ゼラチン 株式会社
Priority to JP50705889A priority Critical patent/JP2774987B2/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP2774987B2 publication Critical patent/JP2774987B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Dental Preparations (AREA)
  • Materials For Medical Uses (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】 〔技術分野〕 この発明は、骨セメント、歯科用セメント、根管充填
材などに用いられる医科用および歯科用硬化性材料(以
下、単に「硬化性材料」と記す)に関する。
〔背景技術〕
歯科用セメントでは、近年、粉末としてハイドロキシ
アパタイト(以下、「HAp」と記す)やα−リン酸三カ
ルシウム〔α−Ca3(PO4)2:以下、「α‐TCP」と記す〕
が用いられ、硬化溶液としてポリアクリル酸水溶液が用
いられている。粉末と硬化溶液とを混和し、練和して硬
化物を形成する。ところが、硬化未反応のポリアクリル
酸が残存することがあり、これの溶出による生体為害性
が問題として残されている。
また、歯科用セメントや根管充填材には、鎮痛効果を
も目的として硬化液にユージノールを配合した酸化亜鉛
ユージノール系セメント・根管充填材もある。しかし、
このユージノールには、細胞毒性があると報告されてお
り、しかも、歯冠部修復材であるコンポジットレジンの
重合阻害をも引き起こすので、ユージノール系歯科材料
には問題が多い。
骨セメントは、従来、ポリメチルメタクリレート(PM
MA)やメチルメタクリレート(MMA)などの高分子材料
を用いたものが市販されている。しかし、高分子材料を
用いた骨セメントは、次の3つの問題点がある。まず第
1に、埋入する宿主側の骨組織と骨セメントとが直接結
合せず、繊維性組織の介在により、長期間生体内に埋入
した場合、ルーズニング等の問題がある。第2に、硬化
時の発熱により90〜100℃程度の温度になるため、周囲
の細胞の壊死をもたらすという問題点がある。第3に、
未反応のモノマーやオリゴマーが溶出し、骨に悪影響を
及ぼすという問題点がある。
他方、生体硬組織の無機主要成分であるHApの類似物
質である、α‐TCPやリン酸四カルシウム〔Ca4(PO4)
2O:以下、「4CP」と記す〕粉末と、1つの有機酸の溶
液からなる硬化液とを備えた硬化性材料が多数提案され
ている。たとえば、特開昭60-36404号公報には、α‐TC
Pを粉成分とし、1M−タンニン酸溶液を硬化液とするも
のが記載されている。特開昭62-12705号公報には、α‐
TCP粉末と30〜60重量%クエン酸水溶液とを備えた硬化
性材料が記載されている。また、特開昭62-83348号公報
には、α‐TCP粉末と45重量%リンゴ酸水溶液とを備え
た硬化性材料が記載されている。α‐TCPや4CPは、化学
的活性が高く、生体内または口腔内と同等の条件下でHA
pに変化しうるものである。
上記各公報に記載されている硬化性材料は、生体為害
性がほとんどなく、しかも、生体硬組織類似の硬化物を
生成し、生体硬組織と結合するという特性を有してい
る。α‐TCPや4CPを粉成分とし、有機酸溶液を硬化液成
分とする硬化性材料は、医科用途および歯科用途に有用
であり、その実用化が期待されている。
前記硬化性材料およびその硬化物は、生体為害性はな
いが、強度を高めるため、リン酸カルシウム粉末/硬化
溶液比(以下、単に「粉/液比」と称する)を大きくす
ると、硬化時間が極端に短くなり、実用できないという
問題点がある。
硬化性材料は、たとえば、下記(a)および(b)の
2つに大きく分類される。
(a) 充填剤…その使用部位があまり大きな力の加わ
らない部位であり、欠損の隙間を埋めたり封鎖したりあ
るいはある物質の固定担体として用いられ、その作業性
を良くするために、硬化時間を非常に長くとる必要があ
るが、その硬化物の物性、特に破砕抗力について、それ
ほど高いものを要求されないもの。好ましくは、併せ
て、鎮痛効果のある物質を徐放化しうるもの。たとえ
ば、骨充填剤、根管充填剤などである。
(b)セメント…その使用部位がある一定の荷重の加わ
る部位であり、欠損の隙間を埋めたり封鎖したり、ある
いは、生体硬組織同士・生体硬組織と他の材料・他の材
料と他の材料との接着などを目的に用いられ、使用者が
練和するにあたり、適度な長さの硬化時間が必要である
が、隙間充填等の後は、比較的早い時間で硬化し、硬化
後の硬化性材料の物性、特に破砕抗力についてもある一
定の高さを要求されるもの。併せて、好ましくは、生体
硬組織と強固に化学的結合をするもので、たとえば、骨
セメント(ボーンセメント)、歯科用セメント(デンタ
ルセメント)、歯科用接着剤などである。
以上のことに鑑みて、この発明は、室温または生体の
体温付近の温度で硬化し、生体為害性がほとんどなく、
しかも、生体硬組織類似の硬化物を生成して生体硬組織
と結合する性質を有しながら、硬化時間が非常に長くて
上記(a)の充填剤などに応用することができる医科用
歯科用硬化性材料、および、硬化物の硬度が高く、しか
も練和作業性を低下させない適度な硬化時間を有し、か
つ硬化物が口腔内または生体内で崩壊しにくいので上記
(b)のセメントなどに応用することができる医科用歯
科用硬化性材料を提供することを目的とする。
〔発明の開示〕
この発明にかかる硬化性材料は、α‐TCPおよび4CPの
うちの少なくとも一方を含むリン酸カルシウム粉末を必
須とする医科用歯科用硬化性材料において、コラーゲン
および/またはタンニンを巧みに用いるか、または、有
機酸を巧みに組み合わせることにより、硬化機構を調整
して上記課題を解決するようにしたものである。
以下に、この発明における、硬化機構を調整するため
の構成上の特徴を要約して述べる。
コラーゲンおよび/またはタンニンを硬化調整剤として
用いる系 アルカリ処理コラーゲン、中性塩可溶化コラーゲ
ン、酵素可溶化コラーゲンおよびコラーゲン誘導体のう
ちの少なくとも1つの化合物と、タンニンおよびタンニ
ン誘導体のうちの少なくとも1つの化合物とを硬化調整
剤とする。
1つ以上の有機酸に対し、アルカリ処理コラーゲ
ン、中性塩可溶化コラーゲン、酵素可溶化コラーゲンお
よびコラーゲン誘導体のうちの少なくとも1つの化合物
を硬化調整剤とする。
1つ以上の有機酸に対し、アルカリ処理コラーゲ
ン、中性塩可溶化コラーゲン、酵素可溶化コラーゲンお
よびコラーゲン誘導体のうちの少なくとも1つの化合物
とタンニンおよびタンニン誘導体のうちの少なくとも1
つの化合物とを硬化調整剤とする。
有機酸に対しタンニン酸を硬化調整剤とする。有機
酸はクエン酸およびマロン酸のうちの少なくともクエン
酸であり、有機酸とタンニン酸との合計量が、有機酸と
タンニン酸と水との合計量に対して、40〜48重量%であ
り、クエン酸、マロン酸およびタンニン酸の相互の割合
が、これら3者の合計100重量部中、クエン酸60〜90重
量部、マロン酸0〜35重量部、タンニン酸30重量部以下
(ただし、マロン酸0重量部のときにはクエン酸70〜89
重量部、タンニン酸30〜11重量部)とされている。
有機酸に対しタンニン酸を硬化調整剤とする。有機
酸は、クエン酸およびリンゴ酸のうちの少なくともリン
ゴ酸であり、有機酸とタンニン酸との合計量が、有機酸
とタンニン酸と水との合計量に対して、40〜48重量%で
あり、クエン酸、リンゴ酸およびタンニン酸の相互の割
合が、これら3者の合計100重量部中、クエン酸0〜65
重量部、リンゴ酸20〜90重量部、タンニン酸15重量部以
下とされている。
クエン酸およびマロン酸を特定の配合で組み合わせ
で硬化調整をする。有機酸の合計量が、有機酸と水との
合計量に対して、40〜48重量%であり、クエン酸および
マロン酸の相互の割合が、これら2者の合計100重量部
中、クエン酸65〜90重量部、マロン酸10〜35重量部とさ
れている。
クエン酸およびリンゴ酸を特定の配合で組み合わせ
で硬化調整をする。有機酸の合計量が、有機酸と水との
合計量に対して、40〜48重量%であり、クエン酸および
リンゴ酸の相互の割合が、これら2者の合計100重量部
中、クエン酸10〜65重量部、リンゴ酸35〜90重量部とさ
れている。
この発明にかかる硬化性材料は、室温または生体の体
温付近の温度で、混和し練和することによって硬化させ
ることができ、これにより、反応熱による細胞の壊死な
どの問題がない。硬化調整剤として、上述のとおり、コ
ラーゲンを必須成分に用いるか、または、有機酸を組み
合わせて用いることにより、練和時の操作性が良くな
り、また、粉/液比を高めることができる。
上に見たように、この発明における硬化調整機構の一
つは、上記の場合であって、アルカリ処理コラーゲ
ン、中性塩可溶化コラーゲン、酵素可溶化コラーゲンお
よびコラーゲン誘導体のうちの少なくとも1つの化合物
と、タンニンおよびタンニン誘導体のうちの少なくとも
1つの化合物とを硬化調整剤とすることにより、従来
(数分程度)に比べて、極めて長い時間(たとえば、1
時間以上)かけて硬化を起きさせるようにするものであ
る。この場合は、高い硬度を必要としない医科歯科用硬
化性材料となる。
この発明におけるあと一つの硬化調整機構は、上記
〜の場合であって、この場合は有機酸を硬化剤として
用いることにより高い硬度の医科歯科用硬化性材料を得
ようとする場合の問題を解消したものである。
α‐TCPおよび/または4CP、水、および1種類の有機
酸よりなる硬化性材料(たとえばα‐TCP100%/クエン
酸45%水溶液)において、単に硬化遅延を起きさせるだ
けであれば、次の2つが考えられる。第1は、第7図
(c)にみるように、硬化剤溶液の濃度を高める方法で
あるが、これは有機酸濃度を高めれば高めるほど練和す
るのに力が必要となり使用者とって操作性の非常に悪い
ものとなるという問題がある。第2は、第8〜12図の各
(c)にみるように、粉/液比を低くする方法である
が、これは粉/液比を低くすれば低くするほど強度が低
下し崩壊率が高くなるなど硬化後の材料の物性を著しく
低下させるという問題がある。
この発明の第2の硬化調整機構は、これらの問題(練
和時の操作性低下、硬化後の物性低下)を生じさせない
で硬化を遅延させることが出来るのである。すなわち、
コラーゲン単独もしくはコラーゲンとタンニンを硬化調
整剤として添加するか、または、前記有機酸として特定
の組み合わせを選ぶとともに場合によりタンニン酸を配
合してこれらを特定比率で用いることで、硬化遅延を起
きさせるようにするので、有機酸濃度を高める必要がな
く、そのため練和作業性を低下させることがない。ま
た、粉/液比を大きくすることも出来るのである。
第2の硬化調整機構のうち、有機酸併用の場合につい
てさらに詳しく述べる。第5図(c)はクエン酸とリン
ゴ酸の組み合わせの場合を示し、有機酸の合計濃度が一
定(たとえば、45%)のときには、リンゴ酸/(リンゴ
酸+クエン酸)≧0.5の割合であれば、クエン酸単独の
場合よりも併用の方が凝固時間が長くなる。クエン酸濃
度9%以下で、リンゴ酸を併用した場合にも、クエン酸
単独のときより凝固時間が長くなる。また、リンゴ酸に
クエン酸を併用しても、リンゴ酸単独のときよりも凝固
時間が長くなる。第5図(c)において、一点鎖線はク
エン酸単独の凝固時間を示し、破線はリンゴ酸単独の凝
固時間を示す。第6図はクエン酸とマロン酸の組み合わ
せの場合を示し、有機酸の合計濃度が一定(たとえば、
45%)のときには、クエン酸やマロン酸が単独のときよ
りも併用の方が凝固時間が長くなる。第6図において、
一点鎖線は、クエン酸単独の場合の凝固時間を示し、破
線はマロン酸単独の場合の凝固時間を示す。
前記の系の材料では、タンニンはコラーゲンにも作
用して架橋を行う。この系の材料の硬化物は、タンニン
の徐放体にもなる。コラーゲンが含まれていることによ
り、周囲の生体組織との親和性が良好である。コラーゲ
ンは、タンニン溶液とは別の溶液にして用いてもよい
し、タンニン溶液に溶解させて用いてもよいし、粉末の
状態で用いてもよい。
の系の材料の使用割合は、特に限定されないが、リ
ン酸カルシウム粉末10〜80重量部に対して、タンニン0.
01〜20重量部およびコラーゲン0.01〜20重量部の各範囲
が好ましい。タンニンがその範囲を下回ると硬化が不充
分となったり、硬化体からの一定濃度のタンニンの徐放
ができなくなったりすることがあり、その範囲を上回る
と、練和時にリン酸カルシウム粉末を充分練和できなく
なることがある。コラーゲンがその範囲を下回ると、硬
化物の強度が低すぎることがあり、その範囲を上回る
と、室温下で充分練和できなくなることがある。
の系の反応機構は、X線粉末回折、赤外吸収スペク
トルおよび走査電子顕微鏡像等による解析結果から、た
とえば、つぎのようなものであると考えられる。リン酸
カルシウム粉末、タンニン溶液およびコラーゲンを室温
または生体の体温付近の温度で混和し、練和すると、粉
末中の4CPに水が配位してOCPを生成し、α‐TCPを含む
場合には、α‐TCPに水が配位してACPを生成する。他
方、コラーゲンとタンニンとの架橋構造化した複合体が
形成される。この複合体(繊維状のものと考えられる)
に、OCPやACPから転化したHApが結晶化して凝集し、硬
化が進む。
の系の材料は、上記のように混和して練和すると、
硬化剤として有機酸を用いたものよりも硬化の進行が著
しく遅く、軟質の硬化物が得られる。たとえば、室温ま
たは生体の体温付近の温度で、練和開始後1〜2日間程
度で硬化する。このため、の系の材料は、充填に比較
的長い時間を要する用途、たとえば、歯根管内の空洞に
充填される根管充填材として利用することができる。
前記の系では、コラーゲンは、有機酸溶液とは別の
溶液にして用いてもよいし、有機酸溶液に溶解させて用
いてもよいし、粉末状態で用いてもよい。
の系の材料の使用割合は、特に限定されないが、リ
ン酸カルシウム粉末30〜80重量部に対して、有機酸5〜
70重量部およびコラーゲン0.01〜30重量部の各範囲が好
ましい。有機酸がその範囲を下回ると、硬化が不充分と
なることがあり、その範囲を上回ると、コラーゲンによ
る硬化遅延効果が発揮されないことがある。コラーゲン
がその範囲を下回ると、硬化物の強度が向上しないこと
があり、その範囲を上回ると、室温下で充分練和できな
くなることがある。
の系の材料の反応機構は、X線粉末回折、赤外吸収
スベクトルおよび走査電子顕微鏡像等による解析結果か
ら、たとえば、つぎのように生体硬組織のコラーゲン石
灰化モデルに準ずるものであると考えられる。リン酸カ
ルシウム粉末、有機酸溶液およびコラーゲンを室温また
は生体の体温付近の温度で混和し、練和すると、粉末中
の4CPのCaやα‐TCPのCaと有機酸のカルボキシル基との
間にキレート結合が生じ、中和反応が進む。他方、コラ
ーゲンが繊維化し、そのキレート化物がコラーゲン繊維
に凝集する。水の存在下、室温または生体の体温付近の
温度で硬化体表面および細孔表面のキレート化物および
未反応の4CPやα‐TCPがそれぞれ水和反応することによ
りOCPやACPを生成し、このOCPやACPがHApに転化し、HAp
がコラーゲン繊維に結晶化し、硬化が進む。
前記の系の材料の硬化物は、タンニンの徐放体にも
なる。タンニンおよびコラーゲンは、それぞれ、有機酸
溶液とは別の溶液にして用いてもよいし、有機酸溶液に
溶解させて用いてもよいし、タンニンおよびコラーゲン
の両方を含む溶液にして用いてもよい。また、コラーゲ
ンは、粉末状態で用いてもよい。
の系の材料の使用割合は、特に限定されないが、リ
ン酸カルシウム粉末30〜80重量部に対して、有機酸5〜
60重量部、タンニン0.05〜10重量部およびコラーゲン0.
05〜30重量部の各範囲が好ましい。有機酸がその範囲を
下回ると、硬化が不充分となることがあり、その範囲を
上回ると、未反応の有機酸が多量に溶出することがあ
る。タンニンがその範囲を下回ると、硬化物の強度が低
下し、しかも硬化遅延効果が発揮されないことがあり、
その範囲を上回ると、室温下で十分練和できなくなるこ
とがある。コラーゲンがそのその範囲を下回ると、硬化
物の強度が低下し、しかも、硬化遅延効果が発揮されな
いことがあり、その範囲を上回ると、室温下で充分練和
できなくなることがある。
の系の材料の反応機構は、X線粉末回折、赤外吸収
スペクトルおよび走査電子顕微鏡像等による解析結果か
ら、たとえば、つぎのように骨組織のコラーゲン石灰化
モデルに準ずるものであると考えられる。リン酸カルシ
ウム粉末、有機酸溶液、タンニンおよびコラーゲンを室
温または生体の体温付近の温度で混和し、練和すると、
粉末中の4CPやα‐TCPのCaと有機酸のカルボキシル基と
の間にキレート結合が生じ、中和反応が進む。他方、タ
ンニンとコラーゲンとが架橋構造化した複合体(繊維状
のものと考えられる)を形成する。そのキレート化物が
その複合体に凝集する。水の存在下、室温または生体の
体温付近の温度で硬化体表面および細孔表面のキレート
化物および未反応の4CPやα‐TCPがそれぞれ水和反応を
することによりOCPやACPを生成し、このOCPやACPがHAp
に転化し、HApが前記複合体に結晶化し、硬化が進む。
前記およびの系の材料の硬化物は、タンニンの徐
放体にもなる。タンニンは、有機酸溶液とは別の溶液に
して用いてもよいし、有機酸溶液に溶解させて用いても
よい。
およびの系の反応機構は、X線粉末回折、赤外吸
収スペクトルおよび走査電子顕微鏡像等による解析結果
から、たとえば、つぎのようなものであると考えられ
る。リン酸カルシウム粉末、有機酸溶液およびタンニン
を室温または生体の体温付近の温度で混和し、練和する
と、粉末中の4CPのCaや、α‐TCPのCaと有機酸のカルボ
キシル基との間にキレート結合が生じ、中和反応が進
む。他方、タンニンが会合体(繊維状のものと考えられ
る)を形成し、そのキレート化物がその会合体に凝集す
る。水の存在下、室温または生体の体温付近の温度でそ
のキレート化物および未反応の4CPやα‐TCPがそれぞれ
水和反応をすることによりOCPやACPを生成し、このOCP
やACPがHApに転化し、HApがタンニン会合体に結晶化し
て硬化が進む。
前記およびの系の材料では、2種以上の有機酸
は、同じ溶液に溶解して用いてもよいし、別々の溶液に
して用いてもよい。2種以上の有機酸の配合割合は、有
機酸の組み合わせによって異なる。たとえば、上で第5
図(c)および第6図を参照しながら説明したとおりで
ある。
上記、、およびの各系の硬化性材料は、粉成
分と液成分とを所望の温度、たとえば、室温下で混和・
練和してスラリーまたはペーストとし、同スラリー、ペ
ーストを治療部に、塗布したり、注入・充填したりす
る。同スラリー、ペーストは、生体内環境下で、化学反
応を生じ、α‐TCPのCaと有機酸のカルボキシル基との
間にキレート結合が生じ、中和反応が進み、硬化する。
水の存在下、室温または生体の体温付近の温度で、硬化
体の表面および細孔表面のキレート化物および未反応の
α‐TCPがそれぞれ水和反応することにより、ACPを生成
し、このACPがHApに転化する。生成した硬化物は生体硬
組織類似の構造であり、しかも、生体硬組織と結合す
る。また、タンニンを硬化物組成に用いている場合は、
タンニンの徐放体にもなる。
前記、、およびの各系の硬化性材料は、たと
えば、歯周病治療材、根管充填材、骨欠損部充填材、硬
組織接着材など生体硬組織の充填材・接着材などとして
利用できる。
前記〜の各系の材料をそれぞれ混和して練和する
と、タンニンやコラーゲンを用いず有機酸だけを用いた
場合よりも硬化の進行が遅くなる。たとえば、室温また
は生体の体温程度の温度で、練和開始後5〜60分間で硬
化し、硬質の硬化物が得られる。このため、リン酸カル
シウム粉末/有機酸比を高めることができ、これによ
り、硬化物の強度を強くすることができる。特に、コラ
ーゲンを用いると、リン酸カルシウム粉末/有機酸比を
高めなくても、圧縮強度が高まり、しかも、上記硬化後
も経時的に圧縮強度が高まり、弾性に富むようになる。
〜の各系の材料は、たとえば、骨セメント、歯科用
セメントなど生体硬組織の充填用、接着用、補綴用材料
として利用することができる。
前記およびの各材料をそれぞれ混和し練和して得
た初期硬化物を37℃のリン酸バッファー化生理的食塩水
(PBS:Phosphate Buffered Saline)中に浸漬しておく
と、経時的に破砕抗力が向上する。すなわち、上記お
よびの各材料は、骨セメントとして用いると、埋入後
も経時的に強度が向上するのである。これは、コラーゲ
ンを用いたことによるものと考えられる。
〜の材料を骨セメントとし、生体の骨に埋入する
と、セメントが生体活性であり、それ自体が骨様構造と
なり、骨組織と一体化してしまう。α‐TCPを用いた場
合には、α‐TCPが生体溶解性(Biodegradable)である
ため、6か月ないし1年程度で次第に新生骨に置換され
うる。すなわち、この発明にかかる硬化性材料のうち、
有機酸を硬化剤として使用し、硬化調整剤としてタンニ
ンおよびコラーゲンの少なくとも一方を用いるようにし
たものを骨セメントとして利用すると、埋入してから経
時的に骨組織と置換し、既存部分と一体化する。
前記〜の各材料は、硬化調整剤を用いていること
により、練和作業性をほとんど低下させずに、硬化時間
を適度な長さにすることができる。
なお、上記〜の各系の材料は、いずれも、この発
明の目的達成を妨げないならば、上述したもの以外の材
料を含むことが可能である。たとえば、この発明の硬化
性材料の粉剤および/または硬化液には、アルギン酸、
カラギーナン、ペクチン、キサンタンガム、ローカスト
ビーンガム、ジェランガムなどカルシウムイオンによっ
てゲル化する多糖類、ムコ多糖、キチン、キトサンなど
のいずれか1つ以上が必要に応じて添加されるようであ
ってもよい。また、操作時に粘性を加味し、操作性を改
善するため、前記粉剤および/または硬化液に粘結剤と
して、ポリアルキレングリコール、ポリエチレングリコ
ール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、
デキストランなどを反応に関与しない程度、または、物
性に悪影響を及ぼさない程度添加することができる。
また、上記〜の各系の材料の用途も上記の例に限
らない。
この発明にかかる硬化性材料は、少なくともリン酸カ
ルシウム粉末と硬化液の組み合わせからなる。
リン酸カルシウム粉末の一部または全部をα‐TCPお
よび4CPのうちの少なくとも一方が占める。粉末の残部
はHAp、炭酸アパタイト、β−リン酸三カルシウム(以
下、「β‐TCP」と記す)、リン酸水素カルシウム二水
和物などが占める。
リン酸カルシウム粉末は、4CPを含む場合には、その1
0〜100重量%が4CPであり、0〜90重量%がα‐TCPであ
り、0〜30重量%がHApであることが好ましい。4CPがリ
ン酸カルシウム粉末の10重量%未満だと、練和後の硬化
物の物理的強度が極端に低下するという問題を生じるこ
とがある。HApがリン酸カルシウム粉末の30重量%を上
回ると、硬化時間が短くなり、充分練和できないという
問題を生じることがある。4CPはα‐TCPよりも反応性が
高く、ポットライフが短くなって使用しにくくなること
があるので、α‐TCPと併用することにより、その反応
性を抑えることができる。
また、リン酸カルシウム粉末は、α‐TCPを必須成分
とする場合には、その60〜100重量%がα‐TCPであり、
0〜30重量%がHApであることが好ましい。α‐TCPがリ
ン酸カルシウム粉末の60重量%未満だと、練和後の硬化
物の物理的強度が極端に低下するという問題を生じるこ
とがある。α‐TCPおよびHAp以外のリン酸カルシウムが
粉末の10重量%を上回ると、硬化が不充分であったり、
あるいは、硬化時間が短くなり、充分練和できなかった
りするという問題を生じることがある。
なお、4CP、α‐TCPおよびHAp以外の粉末は、リン酸
カルシウム粉末の40重量%以下であることが好ましい。
これらのものがこの割合を超えると、練和硬化物の物理
的強度が極端に低下することがある。
また、上記リン酸カルシウム以外の粉末であっても、
反応を阻害しない場合において、粉剤全体の30重量%ま
では置き換えることができる。リン酸カルシウム以外の
粉末というのは、たとえば、X線造影性を付加するため
のバリウム塩・ビスマス塩・亜鉛塩・これらの酸化物で
あったり、あるいは、β−カロチンなどの色素やTiO2
どの顔料やCaF2などのフッ化物などのことであり、反応
に関与しない限りあるいは物性に悪影響を及ぼさない限
り、これら以外の目的で置き換えうるすべての粉末を言
う。
粉末は、平均粒子径が1〜25μmであることが好まし
い。粉末の平均粒子径が1μm未満だと、硬化物の物理
的強度は向上するものの、硬化時間が短くなるという問
題を生じることがあり、25μmを上回ると、特に歯科用
セメントに用いる場合、その硬化物の被膜厚みが30μm
以下にならないという問題を生じることがある。
4CPは、たとえば、γ‐Ca2P2O7とCaCO3との1:2モル比
混合物を1300℃以上で焼成した後、粉砕して得られる
が、その他の方法で得られたものでも使用できる。α‐
TCPは、たとえば、γ‐Ca2P2O7とCaCO3との等モル混合
物を1200℃以上で焼成した後、粉砕して得られるが、そ
の他の方法で得られたものでも使用できる。HAp等は、
骨粉をはじめとする生体由来のリン酸カルシウム、もし
くは、周知または公知の方法で得られる合成HAp、炭酸
アパタイト、β‐TCP等であってもよい。これらのリン
酸カルシウムは、いずれも生体為害性を持たない。
〔硬化調整機構〜についての詳しい説明〕 硬化溶液としては、たとえば、有機酸や生体関連物質
の溶液が用いられる。生体関連物質としては、タンニ
ン、タンニン誘導体、および、生体関連有機酸からなる
群の中から選ばれた少なくとも1種が用いられる。タン
ニン、タンニン誘導体、および、前記生体関連有機酸
は、いずれも生体関連物質であり、生体為害性を持たな
い。
タンニンとしては、たとえば、タンニン酸が用いられ
る。タンニン誘導体とは、タンニン酸の金属塩(たとえ
ば、タンニン酸亜鉛、タンニン酸アルミニウム)、タン
ニン酸アルブミン、ピロガロールなどを意味する。タン
ニンおよびタンニン誘導体としては、どのようなものを
用いてもよい。以下では、タンニンを例に挙げて説明す
るが、タンニン誘導体も同様に用いることが可能であ
る。タンニンは、従来の硬化剤に比べてはるかに硬化速
度が遅く、しかも、練和作業性のほとんど低下しない硬
化剤、すなわち、硬化調整剤となる。また、歯科用硬化
性材料にタンニンを用いると、硬化物からの一定濃度の
タンニンの徐放化により、口腔・咽頭粘膜の炎症治癒効
果、歯質たんぱくの溶解阻止による虫歯予防効果が期待
できる。タンニン溶液のタンニン濃度は、特に限定され
ないが、硬化物からの一定濃度のタンニンの徐放化も考
慮すると、0.1〜70重量%の範囲が好ましく、有機酸の
共存下では0.1〜30重量%の範囲が好ましく、コラーゲ
ンの共存下では0.1〜20重量%の範囲が好ましく、有機
酸およびコラーゲンの共存下では0.1〜10重量%の範囲
が好ましい。これらの各範囲を下回ると、硬化遅延効果
が発揮されない場合や、硬化物からの一定濃度のタンニ
ンの徐放化ができない場合があり、これらの各範囲を上
回ると、硬化物が水溶液中で崩壊してしまうことがあ
る。
有機酸は、たとえば、クエン酸、リンゴ酸、マロン
酸、グリセリン酸およびグルタル酸などの生体関連有機
酸からなる群の中から選ばれた1種が単独で、あるい
は、2種以上が混合されて使用される。これら有機酸
は、リン酸カルシウム粉末と混和して練和することによ
り、硬質の硬化物を生成する。有機酸溶液の有機酸濃度
は、特に限定されないが、0.1〜90重量%の範囲が好ま
しく、タンニンの共存下では0.1〜90重量%の範囲が好
ましく、コラーゲンの共存下では0.1〜70重量%の範囲
が好ましく、タンニンおよびコラーゲンの共存下では0.
1〜70重量%の範囲が好ましい。これらの各範囲を下回
ると、練和後、硬化物の物理的強度が極端に低下し、水
溶液中で崩壊してしまうことがあり、これらの各範囲を
上回ると、練和前に硬化溶液中に結晶が析出することが
ある。
この発明では、コラーゲンおよび/またはコラーゲン
誘導体(以下、単に「コラーゲン」という)を、粉末ま
たは溶解した状態で用いる。この選択は、術式に応じ
て、適宜選択すればよい。いずれにしても、粉末成分と
液成分とを混和・練和するときには、コラーゲンは一旦
溶解し、硬化に伴い線維化が起こることが好ましい。混
和・練和時にコラーゲンがすでに線維化していると、そ
の線維が分離するという問題が生じることがある。
コラーゲンを溶解した状態で用いる場合、前記硬化液
にコラーゲンを溶解させて用いたり、硬化液とは別にコ
ラーゲン溶液を調製して用いたりすることができる。コ
ラーゲンを溶解させる場合、水や希薄濃度の硬化溶液に
溶解させて水溶液とする。コラーゲンを粉末の状態で用
いる場合、前記リン酸カルシウム粉末に混合して用いた
り、リン酸カルシウム粉末とは別にしておいてもよい。
コラーゲンの使用割合は、リン酸カルシウム粉末100
重量部に対して0.02〜100重量部であることが好まし
い。コラーゲンの使用割合がこの範囲を外れると、凝結
・硬化物と生体硬組織との界面での化学結合が弱くなっ
たり、混和・練和操作が困難になったりするという問題
が生じることがある。
コラーゲンとしては、アルカリ処理コラーゲン、中性
塩可溶化コラーゲン、酵素可溶化コラーゲン、および、
これらの各誘導体の中から選ばれた1種または2種以上
が使用される。
一部のコラーゲンは、一般に、生理的条件下(たとえ
ば、pH7.0〜7.4、温度36〜37℃、食塩濃度0.14M)では
ごく短時間のうちに線維化が起こる。このため、硬化調
整剤として、そのようなコラーゲンを用いると、線維化
したコラーゲンが凝集してしまい、リン酸カルシウムの
凝結体と分離することがある。この分離が生じると、HA
pとコラーゲンとが化学的に結合した複合体を得られな
くなる。したがって、この複合体を得るためには、線維
化しないコラーゲンか、または、ごく短時間のうちに線
維化することのないコラーゲンを用いることが好ましい
のである。ただし、この性質を有するコラーゲン種なら
ば、タイプIコラーゲンに限定されず、タイプIIコラー
ゲン、タイプIIIコラーゲン、タイプIVコラーゲンなど
も使用することができる。前記ごく短時間とは、8分
間、より好ましくは10分間程度の時間を言う。
生理的条件下で線維化しないコラーゲンとしては、た
とえば、分解ゼラチン(新田ゼラチン株式会社製の水溶
性ゼラチンまたはゼラチン21など)、タイプIVコラーゲ
ン(コラーゲン・コーポレーション製のタイプIVコラー
ゲンなど)、中性塩可溶性コラーゲン(タイプIコラー
ゲン)、アルカリ処理コラーゲン(タイプIコラーゲ
ン)、コハク化コラーゲン(タイプIコラーゲン)、メ
チル化コラーゲン(タイプIコラーゲン)がある。ま
た、生理的条件下で8分間よりも長い時間かかって線維
化するコラーゲンとしては、たとえば、アテロコラーゲ
ン(タイプIコラーゲン:新田ゼラチン株式会社製のセ
ルマトリックスLA、(株)高研製のCellgen、コラーゲ
ン・コーポレーション製のVitrogen-100など)、酵素可
溶性コラーゲン(タイプIコラーゲン:新田ゼラチン株
式会社製のセルマトリックスType I-Pなど)、タイプII
コラーゲン(新田ゼラチン株式会社製のセルマトリック
スType IIなど)、タイプIIIコラーゲン(新田ゼラチン
株式会社製セルマトリックスType IIIなど)、タイプIV
コラーゲン(新田ゼラチン株式会社製セルマトリックス
Type IVなど)が挙げられる。この発明では、これらの
コラーゲンを適宜選択して使用することができる。
この発明においてコラーゲンを使用する場合、コラー
ゲンの線維化とリン酸カルシウムの凝結・硬化とが並行
またはほぼ並行して進むようになり、コラーゲン線維と
リン酸カルシウム硬化物との一体化した硬化物を得るこ
とができる。これにより、得られた硬化物が生体硬組織
と化学的に充分結合するのである。
コラーゲンとしては、アテロコラーゲンを用いるのが
好ましい。アテロコラーゲンは、たとえば、酵素処理に
より分子末端のテロペプタイドが一部または全部除去さ
れているコラーゲンであり、生体為害性を持たないもの
である。コラーゲンは、硬化溶液に溶解して用いてもよ
いし、硬化溶液とは別の溶液にして用いてもよいし、粉
末状態で用いてもよい。コラーゲン溶液のコラーゲン濃
度は、特に限定されないが、0.01〜35重量%の範囲が好
ましく、有機酸の共存下では0.05〜35重量%の範囲が好
ましく、タンニンの共存下では0.01〜30重量%の範囲が
好ましく、有機酸およびタンニンの共存下では0.01〜30
重量%の範囲が好ましい。これらの各範囲を下回ると、
コラーゲン,タンニンによる硬化遅延効果が発揮されな
くなることがあり、これらの各範囲を上回ると、練和前
の有機酸溶液中でコラーゲンが分解されたり、溶液粘度
が上がりすぎたりすることがある。コラーゲンを粉末状
態で用いる場合には、上記の理由により上記平均粒子径
であることが好ましい。前記コラーゲン誘導体として
は、たとえば、ゼラチン、分解ゼラチン(またはポリペ
プタイド)、コハク化コラーゲン、メチル化コラーゲン
などが挙げられる。
〔硬化調整機構〜についての詳しい説明〕 この発明の硬化性材料をボーンセメントやデンタルセ
メントなどに用いる場合には、下記(i)〜(iv)のよ
うな成分配合にすることが好ましい。これは後述するよ
うに、硬化物の強度および崩壊性、ならびに、硬化時間
がすべて実用に適した範囲に収まるからである。下記
(i)および(ii)の硬化性材料は前記の材料であ
り、(iii)および(iv)の硬化性材料は前記の材料
である。
(i) α‐TCPと有機酸と水とを必須成分とし、前記
水と有機酸とタンニン酸の配合比率が有機酸とタンニン
酸の合計40〜48重量%(以下、「重量%」を単に「%」
と記す)で残部を水とされていて、前記有機酸がクエン
酸および/またはマロン酸であり、クエン酸、マロン酸
およびタンニン酸の相互の割合が、これら3者の合計10
0重量部(以下、「重量部」を単に「部」と記す)中、
クエン酸60〜90部、マロン酸0〜35部、タンニン酸30部
以下、ただし、マロン酸0部のときにはクエン酸70〜89
部、タンニン酸30〜11部とされている硬化性材料。
(ii) α‐TCPと有機酸と水とを必須成分とし、前記
水と有機酸とタンニン酸の配合比率が有機酸とタンニン
酸の合計40〜48%で残部を水とされていて、前記有機酸
がクエン酸および/またはリンゴ酸であり、クエン酸、
リンゴ酸およびタンニン酸の相互の割合が、これら3者
の合計100部中、クエン酸0〜65部、リンゴ酸20〜90
部、タンニン酸15部以下とされている硬化性材料。
(iii) α‐TCPと有機酸と水とを必須成分とし、前記
水と有機酸との配合比率が有機酸40〜48%で残部を水と
されていて、前記有機酸がクエン酸およびマロン酸であ
り、これらの有機酸の相互の割合が、同有機酸100部
中、クエン酸65〜90部、マロン酸10〜35部とされている
硬化性材料。
(iv) α‐TCPと有機酸と水とを必須成分とし、前記
水と有機酸との配合比率が有機酸40〜48%で残部を水と
されていて、前記有機酸がクエン酸およびリンゴ酸であ
り、これらの有機酸の相互の割合が、同有機酸100部
中、クエン酸10〜65部、リンゴ酸35〜90部とされている
硬化性材料。
上記水と有機酸の配合比率において、有機酸の配合比
率が、両者の合計重量中、40%未満だと、混和したとき
に急激に硬化して使用困難になり、48%を越えると、崩
壊率が高くなったり、粘度が高くなって練和しにくくな
ったり、また、未反応の酸が溶出して生体を刺激し、炎
症反応を起こしたりする。
上記各有機酸相互の併用割合が上記各範囲を外れる
と、併用する効果が得られなくなる。
発明者らが、上記のような有機酸の組合せを見出すに
到った経過を以下に詳しく説明する。
発明者らは、上記課題を解決するため、実用化されて
いない理由を追究した結果、従来の硬化性材料が下記
(1)〜(3)の性能をすべて満足しておらず、いずれ
かを欠いているためであることを見出した。
(1) 硬化物の強度が高いこと。
(2) 硬化物の生理的条件下での安定性が高く、崩壊
性が低いこと。
(3) 混和・練和時に、硬化が適度な遅さで進行し、
操作性に優れること。
発明者らは、これら(1)〜(3)の性能をすべて満
足し、しかも、生体硬組織との適合性も良好とするた
め、α‐TCP以外のリン酸カルシウムを使用したり、硬
化液に有機酸とは別の成分を添加したりするよりも、従
来からの研究で生体為害性のほとんどないことがわかっ
ている有機酸を用い、その最適な濃度範囲を設定するの
がよいと考えて研究を進めた。
硬化性材料に使用できる可能性の高い有機酸として、
モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸があ
る。特に、クレブス(Krebs)回路のジカルボン酸とト
リカルボン酸は、カルシウム(Ca)の優れた錯化剤であ
り、使用可能性が高いと期待される。モノカルボン酸の
殆どおよびジカルボン酸は、キレート結合力が弱くなる
ため、硬化後の崩壊率が極端に高くなることが多い(た
とえば、ピルビン酸、グリセリン酸、乳酸、また、ジカ
ルボン酸ではマレイン酸など)。キレート結合力が弱い
ため、凝固時間が長くなるものもある(たとえば、乳
酸、グルクロン酸など)。キレート結合力が弱いため、
短時間でCa塩ができ、その結果凝固時間が極端に短くな
るというものもある(たとえば、モノカルボン酸ではピ
ルビン酸、ジカルボン酸では、酒石酸、シュウ酸、グリ
コール酸など)。トリカルボン酸は、比較的キレート結
合力が強く、硬化後の物性(強度、崩壊率など)も良い
ものが多いと期待されるが、その多くは、水に対する溶
解度が低く、適度な濃度調整ができない(たとえば、ア
コニット酸、オキザロ酢酸、オキザロコハク酸な
ど、)。また、ジカルボン酸でも溶解度の低いものがあ
る(たとえば、コハク酸、フマル酸など)。これらのこ
とを考慮すると、ジまたはトリカルボン酸のうち、水に
対する溶解度の高いものが、実用可能であると期待でき
る。また、タンニンの中でも、タンニン酸は、キレート
結合力が弱いため、凝固時間が長くなるが、上述のよう
に硬化剤としての働きがあるので、検討の対象にあげ
た。
そこで、まず、硬化性材料に使用可能であるとされて
いる多数の有機酸の中で生体為害性のないもの、すなわ
ち、第1表に示す各有機酸(ここでは、タンニン酸も有
機酸に含めて述べていく。)をそれぞれ単独の水溶液を
硬化液に用いたときに、上記(1)〜(3)の性能をす
べて満足する濃度範囲が設定できるか否かを検討した。
まず、各有機酸の水に対する溶解性を検討し、易溶性は
○、難溶性は×で第1表に示した。難溶性のものは検討
の対象から除外し、易溶性の有機酸について、検討を続
けた。第7図(a)はクエン酸の濃度を変えていったと
きの破砕抗力〔kg f/cm2〕の変化を、第7図(b)はそ
のときの崩壊率〔%〕の変化を、第7図(c)はそのと
きの凝固時間〔分〕の変化を、それぞれ表す。これらの
グラフをもとにして前記濃度範囲を検討した。他の有機
酸についても同様に行った。第1表中、破砕強度が上記
(1)の性能に、崩壊率が上記(2)の性能に、凝固時
間が上記(3)の性能にそれぞれ相当する。これらの性
能は、α‐TCP粉末との粉/液比=2.5とし手作業で混和
・練和を行い、JIS T6602に準拠して調べた。結果の表
示は、各性能について、実用的なレベルを○で、到底実
用できないレベルを×で、実用的レベルからやや劣る程
度のものを△で、また、3つの性能を同時に実用的レベ
ルで満足する濃度範囲を有するものを○、ないものを×
で示した。
第1表からわかるように、従来提案されている有機酸
は、いずれも、上記3つの性能をすべて満足する濃度を
持たない。ただし、クエン酸、リンゴ酸およびマロン酸
の3種は、上記(1)〜(3)の性能の点を一応満足す
る(すなわち、「×」レベルの性能がない)が、他の有
機酸は、いずれかの性能の点で問題がある。(すなわ
ち、「×」レベルを有する)ことがわかった。また、有
機酸は、その種類によって上記(1)〜(3)の性能に
与える影響が異なっていることもわかった。この差異
は、有機酸の脱灰力、Ca2+とのキレート反応の速さおよ
びその結合力、混和・練和物のpHおよびそのときのCa2+
との安定度、分子量、硬化密度変化率の違いによって生
じると考えられる。
他方、硬化液の有機酸濃度が高いと、破砕抗力は高く
なり、凝固時間も長くなる傾向があるが、崩壊率も高く
なる傾向があり、練和操作に相当の力が必要となった
り、生体の小さな隙間へ充填するのが困難になったりす
る。しかも、酸の濃度が高いと、未反応の酸が溶出して
生体を刺激し、炎症反応を起こす場合がある。反対に有
機酸の濃度が低いと、混和後早い時期に急激に硬化する
場合があり、使用困難になる傾向が見られる。これらの
ことを考慮すると、硬化液の有機酸濃度は、約35〜50%
とすることが望ましい。
つぎに、発明者らは、有機酸を単独で使用するのでは
なく2種以上併用することにより、上記(1)〜(3)
の性能を満足させることを考えた。
単独では実用不可であっても、他の有機酸との併用に
より、使用可能性を示す有機酸がありうると考えたから
である。たとえば、上述のごとく、単独では水に対する
溶解度が少なくとも30%以上必要になるが、トリカルボ
ン酸またはジカルボン酸であってそれ自身の溶解度は低
くても、これと併用される酸の種類によっては、それ自
身の溶解度が10%以上あれば、主要成分のひとつとして
充分実用可能になりうるのである。また、単独では、実
用不可能である、キレート結合力の弱い有機酸であって
も、同時に併用する有機酸のキレート力が強い場合、主
要成分のひとつとして使うことができるのである。
そこで、有機酸の合計濃度が35〜50%となるように
し、2種の有機酸の比率を変えることにより、上記
(1)〜(3)の性能をすべて満足させることができる
か否かを検討した。上記20種あまりの有機酸の中で特に
優れた3種の有機酸(クエン酸、リンゴ酸およびマロン
酸)を使用し、それぞれ、別の有機酸と併用することに
より、単独使用のときの性能が損なわれず、しかも、単
独使用のときには見られなかった性能が発現されないか
否かを確かめた。それはつぎのように行った。
まず、2種の有機酸を併用することにより、単独使用
時の性能を悪化させる有機酸を除去する作業を行った。
試験方法は、有機酸中に、クエン酸、リンゴ酸およびマ
ロン酸をそれぞれ90%、他の有機酸を残り10%という割
合とし、有機酸の合計濃度を45%として上記のやり方に
準じて行った。その結果、タンニン酸、フィチン酸、マ
レイン酸、ピルビン酸、酒石酸、シュウ酸、グリコール
酸の7種は、クエン酸、リンゴ酸およびマロン酸とそれ
ぞれ併用したときにクエン酸、リンゴ酸およびマロン酸
の単独使用時の性能を損なわず、また、クエン酸、リン
ゴ酸およびマロン酸も、互いに2種ずつ併用したとき
に、単独使用時の性能を損なわないことがわかった。
そこで、これら10種の有機酸、クエン酸、リンゴ酸、
マロン酸、タンニン酸、フィチン酸、マレイン酸、ピル
ビン酸、酒石酸、シュウ酸、グリコール酸の中から2種
ずつ選んで併用し、そのときに、上記3つの性能をすべ
て向上させる使用比率(重量比)の有無を調べた。試験
方法は、有機酸の合計濃度を35,40,45,50%として、上
記のやり方に準じた。第5図(a)はリンゴ酸とクエン
酸とを併用し、合計濃度を45%とした場合の破砕抗力を
表し、第5図(b)はその場合の崩壊率を表し、第5図
(c)はその場合の凝固時間を表す。この併用の場合、
クエン酸/リンゴ酸〔%〕=10/90〜50/50の使用割合に
おいて、上記(1)〜(3)の性能が、それぞれの単独
使用時に比べて同等以上に良くなっている。他の組み合
わせによる併用の場合も、同様にして、上記(1)〜
(3)の性能が、それぞれの単独使用時に比べて同等以
上に良くなっている使用割合を調べた。
これらの結果から、フィチン酸、マレイン酸、ピルビ
ン酸、酒石酸、シュウ酸、グリコール酸の使用において
は、上記3つの性能をすべて満足する使用比率がない
が、クエン酸、リンゴ酸、マロン酸、タンニン酸の4種
の中から任意に2種を選んで併用すると、第2表にみる
ように、上記3つの性能をすべて満足する使用比率があ
ることがわかった。
つぎに、上記4種の有機酸の中から任意に3種を選
び、第2表の数値を元に、上記と同様にして上記3つの
性能をすべて満足する有機酸の使用割合を検討した。第
4図は、クエン酸−リンゴ酸−タンニン酸の3成分系
(有機酸の合計濃度35%)のものである。他の3成分系
についても同様に作成した。そして、2成分系の使用割
合の数値を結ぶ線で囲まれた領域C外において、上記3
つの性能を調べたところ、同領域Cを離れていくと、性
能改善ができないことが判明した。これらの結果から、
3種の有機酸を併用する場合には、第2表から求められ
る領域内において、上記3つの性能を改善する最良の使
用割合を見出すことができると考えた。
他方、第2表から、特に上記3つの性能が良い使用割
合は、有機酸全体の濃度が40〜48%にあると考えられ
る。そこで、有機酸全体の濃度を42.5%に設定し、第2
表の40%および45%における両方の使用割合において、
上記3つの性能を、次の目安をもとに調べた。
(A) 破砕抗力が1100kg f/cm2を越える使用割合。こ
の数値は、現在市販されている硬化性材料で実現される
一般的なものである。
(B) 崩壊率が2%を越えない使用割合。この数値
は、生体へ施術したときに、未反応の酸が生体へ溶出し
て刺激を与えたり、唾液または体液中で硬化物が崩壊
し、その強度が短時間に劣化することを防ぐために設定
された。
(C) 凝固時間が2.5〜8.0分間の範囲にある使用割
合。この数値範囲は、ユーザーが硬化性材料を混和・練
和するときの作業性などから導かれたものである。
クエン酸−マロン酸−タンニン酸の3成分系(有機酸
合計の濃度42.5%)について、上記性能(A)を満たす
領域Dを第3図(a)に、上記性能(B)を満たす領域
Eを第3図(b)に、上記性能(C)を満たす領域Fを
第3図(c)にそれぞれ示した。第3図中、領域Gは、
第2表から導かれる使用割合を示す。クエン酸−リンゴ
酸−タンニン酸の3成分系、リンゴ酸−マロン酸−タン
ニン酸の3成分系、クエン酸−リンゴ酸−マロン酸の3
成分系についても同様に行い、上記性能(A)〜(C)
をすべて満たす使用割合を第1図および第2図に示し
た。すなわち、第1図にみるように、クエン酸−マロン
酸−タンニン酸の3成分系、および、第2図にみるよう
に、クエン酸‐リンゴ酸‐タンニン酸の3成分系の2つ
の系でしか、上記性能(A)〜(C)はすべて満足され
ないことがわかった。
さらに、第1図および第2図に示す各領域A,B内の任
意の点において、有機酸全体の濃度を35%、40%、45
%、50%としてそれぞれ性能を調べたところ、35%の場
合、強度および凝固時間が40%の場合よりも劣り、50%
の場合には崩壊率が45%よりも劣り、40〜48%の範囲に
おいて良好であることがわかった。
以上の結果、第1図および第2図にそれぞれみるよう
に、非常に限られた範囲の前記有機酸の組合せに到達し
たものである。
上記(i)〜(iv)の各硬化性材料は、上記必須成分
に加えて、前記性能(A)〜(C)に悪影響を及ぼさな
い程度に他の材料が配合されていてもよい。ここで他の
材料とは、たとえば、水、α‐TCP以外のリン酸カルシ
ウム(4CP、HAp、OCPなど)、X線造影剤(BaSO4、ビス
マス塩など)、顔料(TiO2など)、色素(β−カロチン
など)、その他の無機酸化物・無機塩(MgO、MgCO3、Al
3O3など)、Caゲル化剤(ジェランガム、キトサンな
ど)、粘結剤(ポリアルキレングリコール、ポリビニル
アルコールなど)、無機酸(ビロリン酸、正リン酸、ポ
リリン酸、塩酸など)、高分子材料(アクリル酸、ポリ
アクリル酸など)、有機酸塩(クエン酸ナトリウム、ク
エン酸カルシウムなど)である。これらは、単独でまた
は2以上で使用される。
以下に、この発明にかかる硬化性材料の作用効果を述
べる。
請求項1の発明にかかる硬化性材料は、コラーゲンと
タンニンを硬化調整剤として用いることにより、生体為
害性がほとんどなく、しかも、生体硬組織類似の硬化物
を生成し、生体硬組織と結合するという特性を有する硬
化性材料であって、硬化時間の極めて長いものとなって
いる。
請求項2、3の各発明にかかる硬化性材料は、有機酸
に対し、コラーゲンまたはコラーゲンとタンニンを硬化
調整剤として用いることにより、生体為害性がほとんど
なく、しかも、生体硬組織類似の硬化物を生成し、生体
硬組織と結合するという特性を有する硬化性材料であっ
て、硬化物の強度および凝固時間が実用できるものとな
っている。
請求項4〜7の各発明にかかる硬化性材料は、水と有
機酸(または水と有機酸とタンニン酸)の配合比率、お
よび、有機酸の種類と、有機酸およびタンニン酸の併用
比率を上記のようにすることにより、各有機酸単独使用
の場合に劣る物性を互いに補うことができ、その結果、
硬化物強度が高く、硬化物崩壊率が低く、しかも、凝固
時間が適度に長いものとなっている。さらに、タンニン
酸を用いている場合には、硬化体からのタンニン酸の徐
放化も可能であり、鎮痛効果が期待できる。
請求項4〜7の各発明にかかる硬化性材料は、有機酸
として、上記4種以外にも、たとえば、第1表に示され
る有機酸、あるいは、第1表に示されていない有機酸、
もしくは、これらの塩であっても、この発明の効果を損
なわない程度の微量成分として、有機酸全体の5%まで
置き換えることができる。また、ピロリン酸など微量で
反応に関与する無機酸,無機塩、および、アクリル酸,
ポリアクリル酸,アルギン酸などの高分子材料も、有機
酸と水とを混合した場合のその溶液の1%まで添加する
ことができる。また、反応に直接的に関与しなくても生
体に対し良好な結果を与えうる、コラーゲン、コラーゲ
ン誘導体などのタンパク物質やビタミン類、多糖類など
も物性に悪影響を与えない程度で、有機酸と水とを混合
した場合のその溶液の2%まで添加することができる。
請求項4〜7の各発明では、リン酸カルシウムと、有
機酸を水に溶解してなる硬化液との配合割合は、重量比
で、リン酸カルシウム/硬化液(g/ml)(いわゆる、粉
/液比)=1.0〜3.3とするのが好ましい。この範囲を外
れると、凝結・硬化が起こらなかったり、混和・練和お
よび充填操作が困難になるという問題が生じることがあ
る。
請求項4〜7の各発明にかかる硬化性材料は、以上に
述べたように特定の配合の硬化調整剤を用いたものであ
るので、生体為害性がほとんどなく、しかも、生体硬組
織類似の硬化物を生成し、生体硬組織と結合するという
特性を有する硬化性材料であって、硬化物の強度および
崩壊率、凝固時間が実用できるものとなっている。
なお、請求項4〜7の各発明によれば、粉/液比をか
なり広い範囲で変化させても、前記(1)〜(3)の性
能があまり変動しないという利点も得ることができる。
特に、タンニン酸の入った3成分系では、実用的な粉/
液の範囲(粉/液=1.5〜2.7)において、2成分系より
も上記3つの性能が安定している。これは、通常、硬化
性材料を使用する場合、正確な計量をせずに、粉はスプ
ーンではかり、液は滴数によってはかるため、実用にお
いては、粉/液比がかなりばらつくことが多いので、特
筆すべき利点である。また、タンニン酸の入った3成分
系では、硬化体からタンニン酸を徐放化する系にもなっ
ているので、口腔・咽頭粘膜の炎症性疾患の収斂などの
薬理効果も期待できる。
この発明にかかる硬化性材料は、以上のように、4CP
およびα‐TCPのうちの少なくとも一方を必須成分とす
るリン酸カルシウム粉末を主材料とする硬化性材料にお
いて、前記のごとき硬化調整機構を採用しているため、
室温または生体の体温付近の温度で硬化し、しかも、練
和作業性をほとんど低下させずに硬化時間を十分長くす
ることができるのである。
このため、この発明にかかる硬化性材料は、硬化に長
時間を要する用途に利用したり、リン酸カルシウム粉末
/硬化液の比を高めて強度の強い硬化物を必要とする用
途に利用したりすることができる。
〔図面の簡単な説明〕
第1図および第2図はこの発明における有機酸の使用
比率を表す三角座標であり第3図は有機酸の使用比率を
表す三角座標であり、図(a)は破砕抗力、図(b)は
崩壊率、図(c)は凝固時間であり、第4図は第2表を
もとに作成した3種の有機酸の使用比率を表す三角座標
であり、第5図は2種の有機酸を併用したときの使用比
率を表し、図(a)は破砕抗力、図(b)は崩壊率、図
(c)は凝固時間であり、第6図は2種の有機酸を併用
したときの使用比率と凝固時間の関係を表すグラフであ
り、第7図は有機酸を単独で使用したときの濃度を表
し、図(a)は破砕抗力、図(b)は崩壊率、図(c)
は凝固時間であり、第8図から第12図までの各図は実施
例での粉/液比に対する性能の変化を表すグラフであ
り、各図(a)は破砕抗力の変化、各図(b)は崩壊率
の変化、各図(c)は凝固時間の変化である。
〔発明を実施するための最良の形態〕
以下に、この発明の実施例を比較例とともに示すが、
この発明は下記実施例に限定されない。
−実施例1〜13および比較例1〜4− タンニン酸、コラーゲン、および、有機酸を第3,4表
に示す濃度で含む溶液を調整し、この溶液と第3,4表に
示す配合のリン酸ルシウム粉末とを第3,4表に示す粉/
液比で混和し、手動で約1分間練和した。この練和泥を
用いて、下記の測定を行って、結果を第3,4表に示し
た。粉は、平均粒径7μmのものを使用し、コラーゲン
としてはアテロコラーゲン(新田ゼラチン株式会社製の
セルマトリックスLA)を用いた。なお、下記の測定で
は、すべて、温度23±2℃、相対湿度50±10%の条件下
で、ADAS No.61に準じて行った。ただし、実施例1,およ
び8は、ADAS No.57による測定を行った。
(a)初期硬化時間測定 各練和泥を、縦横厚みが15mm×15mm×15mmであるガラ
ス板上に置いた内径10mm、高さ5mmの円筒形ステンレス
金型内に流し込んで表面を平らにし、練和を終了した時
から1分後に、温度37±1℃、相対湿度100%の高温器
中に移し、試験片とした。質量2.94N(300g)のビッカ
ー針(針の断面積1mm2)をその試験片の表面に静かに
落とし、針跡を残さなくなった時を、練和開始から起算
して初期硬化時間とした。初期硬化時間は、3回の測定
値の平均を15秒単位で丸めて表した。
(b)破砕抗力測定 内径6mm、高さ12mmの円筒状ステンレス金型に各練和
泥を充填し、両端を肉厚のガラス板で挟み、加圧した。
練和開始2.5分後、加圧したまま温度37±1℃、相対湿
度100%の恒温器中に移した。1時間後、硬化物を金型
から取り出し、37±1℃の蒸留水中に浸漬し、練和開始
24時間後に蒸留水から取り出し、試験片とした。この試
験片を島津オートグラフAG-2000Aを用いて破砕抗力を測
定した。クロスヘッドスピードは1mm/分、測定は6個の
試験片について行い、その総平均値の−15%以下の数値
を除いた残りの数値の平均値を測定値とした。ただし、
総平均値の−15%以下の数値が2個以上の時は、再試験
を行った。
第3,4表にみるように、実施例1および8の材料は、
有機酸を硬化調整剤に用いたものよりも初期硬化の進行
が遅く、根管充填材に適した初期硬化時間を示した。実
施例2〜7と比較例1,2とを、実施例9〜13と比較例3,4
とを、それぞれ、対比すると、実施例の方が初期硬化時
間が長かった。また、比較例1〜4のものは、1種類の
有機酸を含む硬化液を用いているので、硬化時間を遅ら
せるためには、濃度を高めるか、あるいは、粉/液比を
低くすればよい。しかし、硬化液の濃度を高めると、練
和するのにより大きな力が必要となり、粉/液比を低く
すると、初期破砕抗力が低くなる傾向を示した。実施例
7,13のように粉/液比を高めて硬化物の破砕抗力を高め
ても、初期硬化時間が実用上問題ない程度の長さであっ
た。また、コラーゲンを用いているので、実施例2〜7,
9〜13で、初期硬化物の破砕抗力が明らかに向上してお
り、タンニン酸と併用した場合は、それが特に著しかっ
た。
実施例2〜7,9〜13、および、比較例1〜4の各材料
をそれぞれPBSに浸漬しておいたところ、コラーゲンを
用いたものでは、初期硬化の後も経時的に破砕抗力が向
上していた。
また、実施例2〜7,9〜13の各材料をそれぞれφ6mm×
長さ12mmの円柱状ピースに初期硬化させて、犬の大腿骨
欠損部に埋入し、2週間、4週間、6週間それぞれ経過
した後取り出し、骨組織との接着面の組織観察および骨
との固着力を押し出し法で評価した。その結果、実施例
2〜7および9〜13の材料では、骨との直接結合が始ま
っていたものの軽度の円形細胞浸潤が見られた。また、
実施例3〜13および20〜27の各材料では、そのような炎
症反応がなく、すでに骨との直接結合が進んでいた。移
植4週間後および6週間後、実施例2〜7および9〜13
の各材料では、骨組織との界面部に骨細胞も存在してい
た。特に、コラーゲンを用いたもの(実施例2〜7,9〜1
3)では、多数の骨細胞がその界面部周辺に存在してお
り、骨との固着力も飛躍的に増強されていた。
−実施例14− 4CP80%およびα‐TCP20%からなる粉剤と、リンゴ酸
40%、クエン酸10%、タイプIIコラーゲン(新田ゼラチ
ン株式会社製のセルマトリックスType II:生理的条件下
で線維化しない)0.5%、および、分解ゼラチン(新田
ゼラチン株式会社製の水溶性ゼラチン:生理的条件下で
線維化しない)1%の各割合で水に溶解されてなる硬化
液(液剤)との組み合わせからなる硬化性材料を調製し
た。この実施例では、リンゴ酸、クエン酸、タイプIIコ
ラーゲンおよび分解ゼラチンが硬化調整剤である。
−実施例15− α‐TCP34.6%、4CP20.4%、HAp28.0%、TiO22%、B
aSO410%、β−カロチン0.5%、次没食子酸ビスマス2
%、MgO0.5%、および、クエン酸カルシウム2%からな
る粉剤と、クエン酸1.0%、マロン酸2.0%、リンゴ酸2.
0%、グルコン酸2.0%、キトサン1.0%、カルボキシメ
チルキチン1.0%、ジェランガム1.0%、ポリアルキレン
グリコール1.0%、ポリリン酸0.5%、タンニン酸15%、
アテロコラーゲン(新田ゼラチン株式会社製のセルマト
リックスLA:生理的条件下で8分間よりも長い時間かか
って線維化する)2%、グリコール酸0.5%、ピルビン
酸0.5%、および、フィチン酸0.5%の各割合で水に溶解
されてなる硬化液(液剤)との組み合わせからなる硬化
性材料を調製した。この実施例では、次没食子酸ビスマ
ス、クエン酸、マロン酸、リンゴ酸、グルコン酸、タン
ニン酸、アテロコラーゲン、グリコール酸、ピルビン酸
およびフィチン酸が硬化調整剤である。
実施例14,15の各硬化性材料について、第5表に示す
粉/液比で混和し、実施例1と同様にして練和し、実施
例1と同様にして初期硬化時間および破砕抗力を調べ
た。結果を第5表に示した。
操作性が悪化せず、第5表にみるように、初期硬化時
間が調整された(参考:第3表の比較例1,2)。
以下に、請求項6,7,8および9の各発明にかかる硬化
性材料の具体的な実施例と比較例を示すが、これらの発
明は下記実施例に限定されない。
粉末は、すべて平均粒子径1〜20μmの範囲内にある
ものを用いた。
−実施例16〜25、比較例5,6− 第6表による配合で硬化性材料を調製した。
−実施例26〜31、比較例7,8− 第7表による配合で硬化性材料を調製した。
上記実施例および比較例の硬化性材料について、粉末
と液とを室温下で混和・練和し、JIST6602に準じて、破
砕抗力、崩壊率および凝固時間を求めた。結果を第6,7
表に示す。第6,7表には、硬化性材料の配合も示した。
第6,7表からわかるように、実施例の硬化性材料は、
破砕抗力が高く、崩壊率の低い硬化物を生成しており、
凝固時間が適度に遅かった。
比較例では、破砕抗力が小さかったり、崩壊率が大き
かったり、凝固時間が短すぎたりあるいは長すぎたりし
た。
−実施例32− クエン酸39%およびマロン酸6%の各割合で水に溶解
されてなる硬化液と、α‐TCPとからなる硬化性材料を
調製した。
−実施例33− リンゴ酸36%およびクエン酸9%の各割合で水に溶解
されてなる硬化液と、α‐TCPとからなる硬化性材料を
調製した。
−実施例34− クエン酸35%、マロン酸5%およびタンニン酸5%の
各割合で水に溶解されてなる硬化液と、α‐TCPとから
なる硬化性材料を調製した。
−実施例35− リンゴ酸32%、クエン酸8%およびタンニン酸5%の
各割合で水に溶解されてなる硬化液と、α‐TCPとから
なる硬化性材料を調製した。
−実施例36− α‐TCP47.2%、4CP27.8%、HAp7%、TiO22%、BaSO
410%、CaF21%、β−カロチン0.5%、次没食子酸ビス
マス2%、MgO0.5%、および、クエン酸カルシウム2%
からなる粉剤と、クエン酸32.1%、マロン酸5.4%、リ
ンゴ酸1.3%、グルコン酸0.1%、キトサン0.5%、ジェ
ランガム0.5%、ポリアルキレングリコール0.5%、ポリ
リン酸0.5%、タンニン酸4.5%、アテロコラーゲン(新
田ゼラチン株式会社製のセルマトリックスLA:生理的条
件下で8分間よりも長い時間かかって線維化する)0.5
%、グリコール酸0.5%、ピルビン酸0.1%、および、フ
ィチン酸0.5%の各割合で水に溶解されてなる硬化液
(液剤)との組み合わせからなる硬化性材料を調製し
た。この実施例では、次没食子酸ビスマス、クエン酸、
マロン酸、リンゴ酸、グルコン酸、タンニン酸、アテロ
コラーゲン、グリコール酸、ピルビン酸およびフィチン
酸が硬化調整剤である。
−実施例37− α‐TCP47.2%、4CP27.8%、HAp7%、TiO22%、BaSO
410%、CaF21%、β−カロチン0.5%、次没食子酸ビス
マス2%、MgO0.5%、および、クエン酸カルシウム2%
からなる粉剤と、クエン酸42%、リンゴ酸1.3%、グル
コン酸0.1%、キトサン0.5%、ジェランガム0.5%、ポ
リアルキレングリコール0.5%、ポリリン酸0.5%、アテ
ロコラーゲン(新田ゼラチン株式会社製のセルマトリッ
クスLA:生理的条件下で8分間よりも長い時間かかって
線維化する)0.5%、グリコール酸0.5%、ピルビン酸0.
1%、および、フィチン酸0.5%の各割合で水に溶解され
てなる硬化液(液剤)との組み合わせからなる硬化性材
料を調製した。この実施例では、次没食子酸ビスマス、
クエン酸、リンゴ酸、グルコン酸、アテロコラーゲン、
グリコール酸、ピルビン酸およびフィチン酸が硬化調整
剤である。
−実施例38− α‐TCP47.2%、4CP27.8%、HAp7%、TiO22%、BaSO
410%、CaF21%、β−カロチン0.5%、次没食子酸ビス
マス2%、MgO0.5%、および、クエン酸カルシウム2%
からなる粉剤と、クエン酸32.1%、リンゴ酸1.3%、グ
ルコン酸0.1%、キトサン0.5%、ジェランガム0.5%、
ポリアルキレングリコール0.5%、ポリリン酸0.5%、ア
テロコラーゲン(新田ゼラチン株式会社製のセルマトリ
ックスLA:生理的条件下で8分間よりも長い時間かかっ
て線維化する)0.5%、グリコール酸0.5%、ピルビン酸
0.1%、および、フィチン酸0.5%の各割合で水に溶解さ
れてなる硬化液(液剤)との組み合わせからなる硬化性
材料を調製した。この実施例では、次没食子酸ビスマ
ス、クエン酸、リンゴ酸、グルコン酸、アテロコラーゲ
ン、グリコール酸、ピルビン酸およびフィチン酸が硬化
調整剤である。
実施例32〜28の各硬化性材料の粉/液比を変えたとき
に、破砕抗力、崩壊率および凝固時間がどのように変動
するかを調べた。対比のため、クエン酸(実施例32,34
について)の45%、39%および35%各水溶液、および、
リンゴ酸(実施例33,35について)の45%、36%および3
2%各水溶液を硬化液とし、この硬化液とα‐TCPとから
なる硬化性材料についても粉/液比を変えて、破砕抗
力、崩壊率および凝固時間の変動を調べた。結果を第8
図(実施例32)、第9図(実施例33)、第10図(実施例
34)、第11図(実施例35)および第12図(実施例36〜3
8)にそれぞれ示した。第8〜12図の各図(a)は破砕
抗力〔kg f/cm2〕、第8〜12図の各図(b)は崩壊率
〔%〕、第8〜12図の各図(c)は凝固時間〔分〕の変
化の様子を示す。第8〜11図では、●を繋ぐ曲線が実施
例のもの、○を繋ぐ曲線および△を繋ぐ曲線がクエン酸
またはリンゴ酸のみの水溶液を硬化液としたものであ
る。また、第12図では、●を繋ぐ曲線が実施例36、○を
繋ぐ曲線が実施例37、△を繋ぐ曲線が実施例38をそれぞ
れ示す。
第8〜11図にそれぞれみるように、請求項6,7,8およ
び9の各発明の硬化性材料は、粉/液比の変動による性
能の変化が比較的少ないことがわかる。また、第12図に
みるように、クエン酸、マロン酸およびタンニン酸を上
記特定の配合割合にした場合(実施例36)には、その特
定の配合割合を外れた場合(実施例37,38)と対比する
と、破砕抗力が高い方で、崩壊率が少ない方で、しか
も、凝固時間が長い方になっていた。すなわち、上記特
定の配合割合に他の成分が加わっても、その良好な物性
が発揮されることがわかる。
この発明にかかる硬化性材料を根管充填材に使用する
場合の実施例を比較例とともに以下に示す。
−実施例39− 4CP98%およびカルボキシメチルキチン2%からなる
粉剤と、アテロコラーゲン(新田ゼラチン株式会社製の
セルマトリックスLA)0.5%、リンゴ酸18%および、ク
エン酸4.5%の各割合で水に溶解されてなる硬化液(液
剤)との組み合わせからなる硬化性材料を調製した。
−実施例40− 4CP95%およびアテロコラーゲン(新田ゼラチン株式
会社製のセルマトリックスLA)5%からなる粉剤と、ア
ルギン酸0.5%およびリンゴ酸18%およびクエン酸4.5%
の各割合で水に溶解されてなる硬化液(液剤)との組み
合わせからなる硬化性材料を調製した。
−実施例41− 4CP100%の粉剤と、アテロコラーゲン(新田ゼラチン
株式会社製のセルマトリックスLA)0.3%およびキサン
タンガム0.3%およびリンゴ酸15%およびクエン酸3.7%
の各割合で水に溶解されてなる硬化液(液剤)との組み
合わせからなる硬化性材料を調製した。
−比較例10− 4CP20%およびMgO20%およびロジン20%および次炭酸
ビスマス40%からなる粉剤と、オレイン酸100%の溶剤
との組み合わせからなる根管充填材を調製した。
−比較例11− 4CP43%およびMgO20%および次炭酸ビスマス30%およ
びCa(OH)20.7%からなる粉剤と、ユージノール100%の
溶剤との組み合わせからなる根管充填材を調製した。
−比較例12− 昭和薬品化学工業から市販されている根管充填材(商
標「キャナルス」)を用いた。
実施例39〜41および比較例10〜12の各材料について、
ISO規格(International Organization for Standardiz
ation)6876-1986(E)に準じフロー(圧流度)、硬化
時間、溶解度および崩壊度(崩壊率と略す)および破砕
抗力を測定した。また、崩壊率測定後の水溶液を用い、
溶出したタンニン酸を比色確認した。さらに、成犬の臼
歯歯髄を抜髄後にセメントあるいは根管充填材を加圧充
填し、3ヶ月経過後、抜歯し、固定後、非脱灰研磨切片
をヘマトキシリン−エオシン(H・Eと略す)重染色に
て病理観察した。
1)フロー(圧流度); 練和した根管充填材0.075mlをガラス板上に採り、練
和開始3分後に2.5kg荷重をかけ、その練和泥の拡がり
の直径からフローを求める。
ISO規格ではその値は20mm以上と定められている。
2)硬化時間; 硬化時間は、直径10mm、高さ2mmのリングに練和泥を
満たし、練和開始2分後、常温37℃、相対湿度95%以上
の環境下で荷重100g、直径2mmのギルモア針の圧痕がつ
かなくなるまでの時間とする、と定められている。
3)溶解度および崩壊度(崩壊率); 直径20mm、厚さ約1.5mmのリングに練和泥を満たし、
室温37℃、相対湿度95%以上の環境内に各セメントの硬
化時間の1.5倍の時間放置・硬化させたものを試験片と
する。これを50mlの蒸留水中に37℃で24時間浸漬後、共
栓ビン中の水を150℃で蒸発乾固させ、浸漬前の試料の
重量と共栓ビン中の残渣量から溶解度を測定する。
その規格値は、2w/w%以下である。
なお、この実験では水中に崩れ去る性状も望ましくな
い現象と考え、溶解量と崩壊量を含めて崩壊率として求
めた。
4)破砕抗力; 直径6mm、高さ約12mmの試験片を作製し、室温37℃、
相対湿度100%の中に24時間放置後の破砕抗力を測定し
た。
試験は、島津社製オーグラフIS-5000により、クロス
ヘッドスピード毎分0.5mmで行った。
5)硬化体からのタンニン酸の徐放; 崩壊率試験と同様にして作製した試験片を50mlの蒸留
水中に37℃で24時間浸漬後、共検ビン中の水を試験液と
した。この試験液5mlに塩化第二鉄試液2滴を加え、590
nmで比色定量し、タンニン酸の溶出の有無を確認した。
6)成犬臼歯根管への充填による病理観察; 成犬臼歯歯髄を抜髄後、ガッターパーチャーポイント
などのポイント類を併用せず、洗浄した根管部へ各セメ
ントあるいは根管充填材練和泥を加圧充填し、歯冠部を
グラスアイオノマーセメントにて、充填・修復した。3
ヶ月経過後抜歯し、10%ホルマリンにて固定後、非脱灰
研磨切片を作製した。H・E重染色後、病理観察を行っ
た。
結果を第8表に示した。
第8表にみるように、実施例では問題がなかったが、
比較例では、炎症や膿ほうが確認された。
なお、以上で示した実施例および比較例、ならびに、
下記比較例13〜15の各硬化性材料について、粉および液
を滅菌処理し、約1分間練和した練和泥を各々φ4mm×
長さ10mmの円柱状ピースに各硬化性材料の硬化時間だけ
初期硬化させた。これらのピースを成犬の大腿骨骨幹部
に前記ピースより0.2〜0.3mm大きいドリル孔をあけて挿
入し、各硬化性材料を2,4,6週間埋め込んだ。その後、
各硬化性材料の脱灰および非脱灰研磨切片を作製した。
脱灰切片は、H・E重染色およびトルイジンブルー、非
脱灰研磨切片はH・E重染色により病理観察した。さら
に、骨組織との固着力については、ロードセル型万能試
験機を用い、クロスヘッドスピード0.1mm/分押し出し法
により、剪断力を測定した。結果を第9表に示した。
−比較例13− α‐TCP100%の粉剤と、40%のポリアクリル酸からな
る硬化液(液剤)との組み合わせからなる硬化性材料を
用いた。
−比較例14− α‐TCP61%および4CP36%およびHAp3%からなる粉剤
と、ポリアクリル酸17%およびクエン酸30%の各割合で
水に溶解されてなる硬化液(液剤)との組み合わせから
なる硬化性材料を用いた。
−比較例15− ハウメディカ社から市販されているPMMA系骨セメント
〔商標「サージカル・シンプレックス(Surgical Simpl
ex)〕を用いた。
第9表にみるように、実施例の方が、比較例のものよ
りも、骨組織との固着力が高く、特に、アテロコラーゲ
ンを用いたものが良好であった。
−比較例16− 4CP80%およびα‐TCP20%からなる粉剤と、リンゴ酸
40%、クエン酸10%および酸可溶性コラーゲン(新田ゼ
ラチン株式会社製のセルマトリックスType I-A:生理的
条件下で8分以内に線維化する)0.5%の各割合で水に
溶解されてなる硬化液(液剤)との組み合わせからなる
硬化性材料を調製した。この硬化性材料の粉剤と液剤と
を室温下で混和・練和したところ、セメント泥凝集体と
線維化コラーゲン凝集物とが分離し、初期硬化時間およ
び初期硬化物の破砕抗力は測定不能であった。
〔産業上の利用可能性〕
この発明にかかる硬化性材料は、歯根管充填材、歯科
用セメント・充填材、骨セメント・充填材などに利用す
ることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 鈴木 銀男 奈良県橿原市石原田町167―11 (72)発明者 羽多 聖子 大阪府南河内郡美原町さつき野西3―14 ―13 (72)発明者 高野 俊和 奈良県生駒郡三郷町立野南3―18―7― 110 (56)参考文献 特開 昭62−83348(JP,A) 特開 昭62−217969(JP,A) 特開 昭63−66106(JP,A) 特開 昭63−115568(JP,A) 特開 昭62−12705(JP,A)

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】α−リン酸三カルシウムおよびリン酸四カ
    ルシウムのうちの少なくとも一方を含むリン酸カルシウ
    ム粉末を必須成分とする医科用および歯科用硬化性材料
    であって、アルカリ処理コラーゲン、中性塩可溶化コラ
    ーゲン、酵素可溶化コラーゲンおよびコラーゲン誘導体
    のうちの少なくとも1つの化合物とタンニンおよびタン
    ニン誘導体のうちの少なくとも1つの化合物とが硬化調
    整剤として用いられるようになっているとともに、前記
    コラーゲンおよびコラーゲン誘導体が、生理的条件下で
    は線維化しないものであるかまたは線維化に8分間より
    も長い時間を要するものであることを特徴とする医科用
    および歯科用硬化性材料。
  2. 【請求項2】α−リン酸三カルシウムおよびリン酸四カ
    ルシウムのうちの少なくとも一方を含むリン酸カルシウ
    ム粉末を必須成分とする医科用および歯科用硬化性材料
    であって、1つ以上の有機酸に対し、アルカリ処理コラ
    ーゲン、中性塩可溶化コラーゲン、酵素可溶化コラーゲ
    ンおよびコラーゲン誘導体のうちの少なくとも1つの化
    合物が硬化調整剤として用いられるようになっていると
    ともに、前記コラーゲンおよびコラーゲン誘導体が、生
    理的条件下では線維化しないものであるかまたは線維化
    に8分間よりも長い時間を要するものであることを特徴
    とする医科用および歯科用硬化性材料。
  3. 【請求項3】α−リン酸三カルシウムおよびリン酸四カ
    ルシウムのうちの少なくとも一方を含むリン酸カルシウ
    ム粉末を必須成分とする医科用および歯科用硬化性材料
    であって、1つ以上の有機酸に対し、アルカリ処理コラ
    ーゲン、中性塩可溶化コラーゲン、酵素可溶化コラーゲ
    ンおよびコラーゲン誘導体のうちの少なくとも1つの化
    合物とタンニンおよびタンニン誘導体のうちの少なくと
    も1つの化合物とが硬化調整剤として用いられるように
    なっているとともに、前記コラーゲンおよびコラーゲン
    誘導体が、生理的条件下では線維化しないものであるか
    または線維化に8分間よりも長い時間を要するものであ
    ることを特徴とする医科用および歯科用硬化性材料。
  4. 【請求項4】α−リン酸三カルシウムおよびリン酸四カ
    ルシウムのうちの少なくともα−リン酸三カルシウムを
    含むリン酸カルシウム粉末を必須成分とする医科用およ
    び歯科用硬化性材料であって、1つ以上の有機酸とタン
    ニン酸と水とをも必須成分とし、前記有機酸に対しタン
    ニン酸が硬化調整剤として用いられるようになってい
    て、前記水と有機酸とタンニン酸の配合比率が有機酸と
    タンニン酸の合計40〜48重量%で残部を水とされてい
    て、前記有機酸がクエン酸およびマロン酸のうちの少な
    くともクエン酸であり、クエン酸、マロン酸およびタン
    ニン酸の相互の割合が、これら3者の合計100重量部
    中、クエン酸60〜90重量部、マロン酸0〜35重量部、タ
    ンニン酸30重量部以下、ただし、マロン酸0重量部のと
    きにはクエン酸70〜89重量部、タンニン酸30〜11重量部
    とされていることを特徴とする医科用および歯科用硬化
    性材料。
  5. 【請求項5】α−リン酸三カルシウムおよびリン酸四カ
    ルシウムのうちの少なくともα−リン酸三カルシウムを
    含むリン酸カルシウム粉末を必須成分とする医科用およ
    び歯科用硬化性材料であって、1つ以上の有機酸とタン
    ニン酸と水とをも必須成分とし、前記有機酸に対しタン
    ニン酸が硬化調整剤として用いられるようになってい
    て、前記水と有機酸とタンニン酸の配合比率が有機酸と
    タンニン酸の合計40〜48重量%で残部を水とされてい
    て、前記有機酸がリンゴ酸およびクエン酸のうちの少な
    くともリンゴ酸であり、リンゴ酸、クエン酸およびタン
    ニン酸の相互の割合が、これら3者の合計100重量部
    中、リンゴ酸20〜90重量部、クエン酸0〜65重量部、タ
    ンニン酸15重量部以下とされていることを特徴とする医
    科用および歯科用硬化性材料。
  6. 【請求項6】α−リン酸三カルシウムおよびリン酸四カ
    ルシウムのうちの少なくともα−リン酸三カルシウムを
    含むリン酸カルシウム粉末を必須成分とする医科用およ
    び歯科用硬化性材料であって、少なくとも2つの有機酸
    と水とをも必須成分とし、前記水と有機酸の配合比率が
    有機酸40〜48重量%で残部を水とされていて、前記有機
    酸がクエン酸およびマロン酸であり、クエン酸およびマ
    ロン酸の相互の割合が、これら2者の合計100重量部
    中、クエン酸65〜90重量部、マロン酸10〜35重量部とさ
    れて、前記有機酸による硬化の調整がなされるようにな
    っていることを特徴とする医科用および歯科用硬化性材
    料。
  7. 【請求項7】α−リン酸三カルシウムおよびリン酸四カ
    ルシウムのうちの少なくともα−リン酸三カルシウムを
    含むリン酸カルシウム粉末を必須成分とする医科用およ
    び歯科用硬化性材料であって、少なくとも2つの有機酸
    と水とをも必須成分とし、前記水と有機酸の配合比率が
    有機酸40〜48重量%で残部を水とされていて、前記有機
    酸がクエン酸およびリンゴ酸であり、クエン酸およびリ
    ンゴ酸の相互の割合が、これら2者の合計100重量部
    中、クエン酸10〜65重量部、リンゴ酸35〜90重量部とさ
    れて、前記有機酸による硬化の調整がなされるようにな
    っていることを特徴とする医科用および歯科用硬化性材
    料。
JP50705889A 1988-08-10 1989-06-22 医科用および歯科用硬化性材料 Expired - Fee Related JP2774987B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP50705889A JP2774987B2 (ja) 1988-08-10 1989-06-22 医科用および歯科用硬化性材料

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP20061788 1988-08-10
JP63-200617 1988-08-10
JP50705889A JP2774987B2 (ja) 1988-08-10 1989-06-22 医科用および歯科用硬化性材料

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2774987B2 true JP2774987B2 (ja) 1998-07-09

Family

ID=26512298

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP50705889A Expired - Fee Related JP2774987B2 (ja) 1988-08-10 1989-06-22 医科用および歯科用硬化性材料

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2774987B2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
RU2545761C1 (ru) * 2014-05-20 2015-04-10 Сергей Владимирович Сирак Паста для пломбирования корневых каналов зубов при лечении периодонтита

Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS6212705A (ja) * 1985-07-10 1987-01-21 Meishin Kk 医科用または歯科用セメント組成物
JPS6283348A (ja) * 1985-10-08 1987-04-16 株式会社アドバンス 医療用硬化性組成物
JPS62217969A (ja) * 1986-03-18 1987-09-25 三金工業株式会社 生体材料用硬化液
JPS6366106A (ja) * 1986-09-08 1988-03-24 Advance Co Ltd 骨誘導生体材料
JPS63115568A (ja) * 1986-11-01 1988-05-20 昭和電工株式会社 人体硬組織代替組成物

Patent Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS6212705A (ja) * 1985-07-10 1987-01-21 Meishin Kk 医科用または歯科用セメント組成物
JPS6283348A (ja) * 1985-10-08 1987-04-16 株式会社アドバンス 医療用硬化性組成物
JPS62217969A (ja) * 1986-03-18 1987-09-25 三金工業株式会社 生体材料用硬化液
JPS6366106A (ja) * 1986-09-08 1988-03-24 Advance Co Ltd 骨誘導生体材料
JPS63115568A (ja) * 1986-11-01 1988-05-20 昭和電工株式会社 人体硬組織代替組成物

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
RU2545761C1 (ru) * 2014-05-20 2015-04-10 Сергей Владимирович Сирак Паста для пломбирования корневых каналов зубов при лечении периодонтита

Similar Documents

Publication Publication Date Title
EP0520690B1 (en) Calcium phosphate type hardening material for repairing living hard tissue
US5223029A (en) Hardening material for medical and dental use
EP2902006B1 (en) Curable composition for dentistry, and method for producing same
JPS6272363A (ja) 医科用または歯科用セメント組成物
JPH05168692A (ja) 生体硬組織修復用硬化性材料
JPS6283348A (ja) 医療用硬化性組成物
JPS6219508A (ja) 歯科用根管充填材
JPH0639372B2 (ja) 生体活性セメント
JP2774987B2 (ja) 医科用および歯科用硬化性材料
JP2780120B2 (ja) 硬化型リン酸カルシウム系歯科用組成物
JPH01163109A (ja) 歯科用セメント組成物
JPH09103478A (ja) 医科用または歯科用硬化性材料
JP2807819B2 (ja) 根管充填用硬化型糊材
JPH0793941B2 (ja) 生体硬組織修復材料の製法
JP2644082B2 (ja) 医科用および歯科用硬化性材料
JP2544075B2 (ja) 医科歯科用硬化体の製造方法
JPH07114804B2 (ja) 医療用硬化性組成物
JPH0331470B2 (ja)
JPS6219507A (ja) 歯科用セメント
JP2544073B2 (ja) 医科歯科用硬化型セメント
JPH0558751B2 (ja)
JPH01166762A (ja) 医科用および歯科用硬化性材料
JPS63115568A (ja) 人体硬組織代替組成物
JP3558680B2 (ja) リン酸四カルシウムの製造方法及びこの方法によって得られたリン酸四カルシウム、並びにこのリン酸四カルシウムを含有するセメント用組成物
CN116850066A (zh) 一种抗溃散的可注射型水凝性糊剂材料及其制备方法和应用

Legal Events

Date Code Title Description
R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees