JP3558680B2 - リン酸四カルシウムの製造方法及びこの方法によって得られたリン酸四カルシウム、並びにこのリン酸四カルシウムを含有するセメント用組成物 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、リン酸四カルシウムの製造方法及びこの方法によって得られたリン酸四カルシウム、並びにこのリン酸四カルシウムを含有するセメント用組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
リン酸四カルシウム(以下、4CPと略す)は、我々の生体における骨や歯の主成分であるリン酸カルシウム系の化合物であるが、化学的な活性が高く、常温で各種無機酸、不飽和有機酸の単独重合体及び共重合体などの水溶液、生理食塩水などに容易に反応して硬化する性質が知られており、医科用分野や歯科用分野への用途が期待されている。
【0003】
たとえば、医科用としては、外科・整形外科領域において、交通事故、骨腫瘍切除などによる骨欠損部あるいは空隙部に生じた修復材又は骨補填材としての利用が考えられており、歯科用としては、インレー、クラウンなどの接着に用いられる合着材、窩洞修復などに用いられるコンポジットレジンのフィラー材、歯髄保護あるいは象牙質代替層の役割などに用いられる裏装材及び覆卓材、根管治療に用いられる根管充填材、幼児の初期う蝕予防に用いられる小窩裂溝填塞材、治療中の仮充填材として用いられる仮封材、歯周病治療に用いられる歯周ポケット充填材、辺縁歯槽骨の欠損修復用としての骨移植材としての利用が考えられている。
【0004】
ところで従来、医科用分野における骨補填材としては、ハイドロキシアパタイト(以下、HAPという)、リン酸三カルシウム(以下、TCPという)等が用いられている。しかしながら、HAPは生体親和性が高いが、それ自身が安定な物質であるため、酸と反応せず従って自己硬化型セメント用組成物に用いることはできないという欠点がある。一方、TCPはHAPより生体親和性は低いが、酸と反応し自己硬化型セメント用組成物として用いられるが、新生骨形成能力の点では4CPの方が優れているといわれている。
【0005】
また歯科用分野においては、従来よりZnO、SiO2とリン酸、ポリアクリル酸とを合わせた修復材が用いられてきたが、これらの組成物からなる硬化体ではいずれも歯や骨の成分と異なるため、生体親和性がないという問題点がある。
【0006】
そこで近年では、HAPやTCPと同等以上に生体親和性が高く、かつHAPやTCPより新生骨形成能力の優れているといわれている4CPが注目されている。
この4CPは人体を構成している骨や歯の主成分であるHAPの前駆体といわれており、生体内において徐々に吸収されHAPに置換される性質があることが知られている。
【0007】
この4CPの製造に際しては、カルシウム原料としてCaCO3、CaO、
Ca(OH)2、リン原料としてP2O5、H3PO4、(NH4)H2PO4、(NH4)2HPO4、Ca源とP源の両方を含有する物質として、CaHPO4・2H2O、
CaHPO4、Ca2P2O7などが用いられている。
これらの原料を用いた4CPの製造方法としては、例えば、
1) CaHPO4・2H2O(以下、ブルッシャイトという)を 500℃で2時間加熱して得たγ−Ca2P2O7(以下、ピロリン酸カルシウムという)に、CaCO3を2倍モル配合し、1680℃で1時間焼成する方法(特開昭61−270249号参照)、
2) CaCO3とCaHPO4あるいはCaHPO4・2H2Oとを等モル比混合し、1500℃以上で1時間以上焼成する乾式製造法(例えば特開昭64−61408号公報、特開平1−96006号公報等)等
が知られている。
上記前者の方法では、一度ブルッシャイトを 500℃付近で焼成して得たピロリン酸カルシウムを粉末化し、さらにCaCO3とモル比にて焼成するという2段階反応を経るため、効率的ではない。
上記後者の方法は、このような2段階反応を回避するためのものであるが、この方法では焼成後 500℃までは10℃/分以上の速度で急冷しなければ4CP単体とはならず、しかも多量のHAPを含有するもので、高純度な4CPを安定して得られない等の問題がある。
【0008】
また、最近においては、4CP製造時に少量のアルミニウム化合物を添加し、HAP含有割合を減少させる知見がみられる(特開平2-180705号公報、特開平3-159946号公報等)が、これにより得られる4CPにおいても結晶性が低く、保存性が悪いという欠点がある。さらに、このようにして製造された4CPにおいても嵩密度が低く成型体の圧縮強度という点において歯科材料としては十分とは言えず、また、その焼成体の色は歯科材料として用いるには青白く、歯質の色調とは異なっており問題であった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明の解決しようとする課題は、公知のカルシウム原料及びリン原料を用いて高純度でかつ高硬度のリン酸四カルシウムを簡単に製造できる方法、及びこのリン酸四カルシウムを主成分とするセメント用組成物を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
かくして本願『請求項1』にかかる発明によれば、『カルシウム原料粉末及びリン原料粉末からリン酸四カルシウムを製造する方法であって、これらの両原料をCa/P=2モル比となるように配合すると共に、リン酸四カルシウムの理論生成量 100重量部に対して酸化チタンを0.1〜10重量部添加・混合し、この混合物を1350℃以上の雰囲気下で1時間以上焼成することにより、粒径30μm以下で嵩密度1.0〜2.0g/cm3の粉末状のリン酸四カルシウムを得ることを特徴とするリン酸四カルシウムの製造方法』が提供される。
【0011】
本発明はまた塊状のリン酸四カルシウムを製造する方法、すなわち本願『請求項2』に示すように、『カルシウム原料粉末及びリン原料粉末からリン酸四カルシウムを製造する方法であって、これらの両原料をCa/P=2モル比となるように配合すると共に、リン酸四カルシウムの理論生成量 100重量部に対して酸化チタンを0.1〜10重量部添加・混合し、この混合物をプレス成型した後、1350℃以上の雰囲気下で1時間以上焼成することにより、嵩密度2.5〜3.5g/cm3の塊状のリン酸四カルシウムを得ることを特徴とするリン酸四カルシウムの製造方法』をも提供することができる。
【0012】
本発明の上記いずれの製造方法においても、カルシウム原料粉末及びリン原料粉末としては、例えばCaCO3、CaO、Ca(OH)2、P2O5、H3PO4、
(NH4)H2PO4、(NH4)2HPO4、CaHPO4・2H2O、CaHPO4、
Ca2P2O7等の当該分野における公知のものがそのまま用いられる。
このうち、CaHPO4・2H2O及びCaCO3の組合わせが安全性及び原料費の点で好ましい。
【0013】
上記カルシウム原料粉末及びリン原料粉末の粒径については、本願『請求項3』に示すように、カルシウム原料粉末については平均粒径 1〜30μmのものが、また上記リン原料粉末については平均粒径 1〜40μmのものが、最終的に得られるリン酸四カルシウム(以下、4CPと略す)の結晶性、純度及び硬度の点で好ましい。
【0014】
本発明の製造方法において、上記カルシウム原料粉末とリン原料粉末との配合物にはチタン化合物として酸化チタン ( TiO 2 )が添加される。この酸化チタンの添加は、本発明の特徴の1つであり、従来4CPの製造の際必須とされていた急冷操作(すなわち焼成後 500℃までの範囲で10℃/分程度の速度で冷却する操作)を必要としなくなる上、比較的低温で4CPが生成でき、HAPの多量含有等も押さえられ、高純度の4CPを製造できる。なお、本発明に用いられる酸化チタンの代わりとしては、M g 2 T i O 4 、PbTiO3、CaTiO3、FeTiO3、TiN、TiC、TiB、TiB2、TiSi等が挙げられる。これらは1種又は2種以上で用いられる。しかしながら、上記チタン化合物のうち酸化チタン (TiO2 ) のみが日本薬局方基準を満たしており、得られる4CPを医科用分野や歯科用分野でのいわゆる生体用修復材料として用いる場合の安全性を勘案すると、チタン化合物として酸化チタンを用いるのが好ましい。本発明の製造方法において、酸化チタンの粒径は、本願『請求項3』に示すように、粒径0.1〜1.0μmのものが好ましい。0.1μmよりも小さい場合は経済的ではなく、1.0μm以上の場合は多量に用いなければならずこれにより多量の不純物混入を許すこととなり、これらの点で好ましくない。
【0015】
本発明の製造方法において、上記カルシウム原料とリン原料とは、Ca/P=2モル比となるように配合される。2モル比よりも小さい場合はHAPが生成し、2モル比よりも多い場合はCaOが生成し、それぞれ好ましくない。
【0016】
上記酸化チタンは、4CPの理論生成量100重量部に対して 0.1〜10重量部の割合で用いられる。酸化チタンの添加量が上記 0.1重量部よりも少なくい場合は、焼成後炉内にて室温まで自然放冷したときに得られる焼成体が4CP単独とはならず、多量のHAPを含有することになる。また酸化チタンの添加量が、上記10重量部よりも多い場合は、得られる焼成体中のチタン化合物の影響が大きくなって生体親和性が減少することが考えられるばかりか、焼成が促進され過ぎて溶融を起こすこともあり得る。
【0017】
本願『請求項1』及び『請求項2』の製造方法において、上記カルシウム原料及びリン原料並びにチタン化合物は、例えばボールミル等で均一に混合された後焼成処理に付される。
本願『請求項2』にかかる製造方法の場合、上記混合物は、焼成処理に付す前に、プレス成型に付される。このプレス成型の圧力としては10〜500kgf/cm2が挙げられる。なお、プレス圧は高ければ高いほど密度は高くなるが、プレス成型後の焼成体を粉砕して得られる粉末の嵩密度からみれば、通常使用される圧力範囲で十分である。
上記プレス成型する場合は、上記混合物に少量の精製水やCMC溶液、MC溶液等の生体に無害な物質が一般的にバインダーとして用いられる。
本発明の製造方法において、焼成処理は、温度が1350℃以上で処理時間が1時間以上とされる。
温度が1350℃より低く又は処理時間が1時間より短い場合はいずりれも未反応部分が残存する可能性があり好ましくない。また1600℃以上では、溶融してしまうので好ましくない。
上記焼成処理の後は、炉内にて室温まで自然放冷されるが、この冷却操作を従来のように10℃/分程度の速度で急冷するものとしてもよい。
【0018】
以上のようにして得られる4CPは、HAPの含有が非常に少なく、高純度であり、気孔が少なく、結晶性に優れており、粉末状や顆粒状や塊状等のいずれの形態とすることもできる。
しかも塊状(すなわち焼成成型体)では嵩密度が2.5〜3.5g/cm3、平均粒径30μm以下の粉体の場合では嵩密度が1.0〜2.0g/cm3であり、従来の製法により得られる4CPと比べて高く、非常に固く焼き締まっており、圧縮強度に優れており、さらに審美性の高い淡黄色のものである。
【0019】
上記方法にて得られた4CPは、純度、硬度、色調等から医科用分野や歯科用分野等で使用される生体修復材料の原料として提供できる。従って、本願『請求項5』にかかる発明によれば、上記の方法にて得られた4CPを必要に応じて平均粒径30μm以下に粉砕して得られる粉末と、無機酸、カルボキシル基を2個以上含む有機酸、ポリアクリル酸の単独重合体及びその共重合体からなる群から選択される1種以上の酸成分とを主成分とし、上記酸成分が上記リン酸四カルシウム粉末に対して20〜40重量%の割合で用いられてなるセメント用組成物が提供される。
【0020】
本発明のセメント用組成物において、4CPは平均粒径30μm以下の粉末で用いられる。
上記無機酸としては当該分野で公知のものが用いられ、例えばリン酸等が挙げられるがこれに限定されず生体に無害なものであれば任意に用いられる。
上記リン酸は、圧縮強度を高める点で好ましいものである。
上記カルボキシル基を2個以上含む有機酸には、例えばリンゴ酸、クエン酸、酒石酸、マロン酸、イタコン酸、乳酸、タンニン酸、コハク酸等が挙げられ、リンゴ酸、クエン酸等が好ましい。
上記ポリアクリル酸の単独重合体又はその共重合体は、平均分子量5,000〜80,000のものが適しており、さらには10,000〜50,000のものが好ましい。
【0021】
上記酸成分は固体のままで用いられてもよく、また当該分野で公知の水溶液として用いられてもよい。いずれにしても酸成分(固体換算)が上記4CP粉末に対して20〜40重量%の割合となるように調製される。
本発明のセメント用組成物は、粉剤や顆粒剤として調製されるものであってもよく、また水性組成物やペースト状組成物に調製されてもよい。
【0022】
水性組成物に調製する場合、本発明の4CPは粉/液比が1.0〜2.0(グラム比)となる範囲に調製されることが好ましい。
水性組成物に調製するときは、上記酸成分を水溶液として用いればよく、この場合当該分野で公知の溶液濃度に調製される。この濃度としては例えば30〜60重量%が挙げられる。この場合、60重量%を越える場合は、得られるセメント用組成物を歯科用セメントとして用いたとき硬化時間の短縮が見られ、30重量%よりも少ない場合は得られるセメント用組成物の硬化体の圧縮強度が低下し、崩壊率も高くなり、好ましくない。
なお、上記水性組成物に調製する場合、比較的機械的強度が要求されないときには、酸成分は上記配合割合よりも十分に少ない割合で用いられるものであってもよく、このときさらに生理食塩水もしくは0.8〜1.0重量%塩化ナトリウム溶液を添加配合するものであってもよい。
また、水性組成物において pHを調整したり反応速度を調整する目的でブルッシャイト等が任意に添加されてもよい。
【0023】
また、本発明のセメント用組成物をペースト状の組成物として用いる場合、とくに一液型硬化性のペースト状の組成物に調製されることが好ましい。この場合の配合例としては、上記4CP粉末を30〜50重量%、有機酸 5〜15重量%、多価アルコール25〜35重量%等が挙げられる。
【0024】
なお、本発明のセメント用組成物には、必要に応じてX線造影性、抗菌性を付与する目的で、BaSO4、BaCO3、(BiO)2CO3、CHI3等が添加されていてもよい。また、本発明のセメント用組成物には、必要に応じてMgO、SiO2、ZiO2、ZrO2等の生体に無害な成分が調製剤として添加されていてもよい。
【0025】
【実施例】
以下、本発明を図示実施例に従って詳述するが、これによって本発明が限定されるものではない。
実施例1
CaHPO4・2H2OとCaCO3とを2モル比で配合し、さらにリン酸四カルシウム理論生成量 100重量部に対してTiO2 1.5重量部を添加したものをボールミルにて均一に混合した後、この混合物をプレス成型(30〜60kgf/cm2)し、次いで焼成炉内で大気圧下、1500℃にて2時間焼成処理に付した後、炉内で室温まで自然放冷した。得られた焼成成型体の嵩密度を表1に示す。
次に、上記焼成成型体を自動乳鉢にて粉砕を7時間行い、粒径27μm以下の粉末に分級した。この分級粉末の嵩密度を表1に示す。
またこの分級粉末のX線回折を行ったところ、図1に示すX線回折チャートを得た。同チャートによれば、4CPピークの内最も高い第1ピーク(A)が非常にシャープに得られている。
上記X線回折チャートから、4CPの第1ピークとHAP(以下、HAPと略す)のピーク(B)とのそれぞれの強度を求め、これらから相対割合を算出し、これを4CPの生成割合として表1に示した。
なお、X線回折チャートにおけるHAPのピーク(B)は、その第1,2,3の各ピークが4CPのピークと重なっているため、第4ピークの回折角(2θ)を用いてその強度を測定した。
以上の生成割合の結果から、この製造法によれば高純度の4CPが生成されていることが分かる。
【0026】
実施例2
焼成後炉外に取り出し、室温まで10℃/分の速度で急冷する以外は実施例1と同様に行って焼成成型体を得た。この焼成成型体の嵩密度を表1に示す。
またこの焼成成型体を実施例1と同様に粒径27μm以下に分級して粉末を得た。この分級粉末の嵩密度も表1に示す。
上記分級粉末についてX線回折を行い、図2に示すX線回折チャートを得た。同チャートから実施例1と同様に4CPの生成割合を求め、表1に示す結果を得た。
この生成割合の結果から、この製造法によれば高純度の4CPが生成されていることが分かる。
【0027】
実施例3
TiO2の添加量を3.0重量部とする以外は実施例1と同様に処理し、焼成成型体及びその分級粉末を得た。これらの嵩密度を表1に示す。
またこの分級粉末についてのX線回折チャートは図3に示すものであり、これから求めた4CPの生成割合を表1に示す。この結果から、この製造法によれば高純度の4CPが生成されていることがわかる。
【0028】
比較例1
チタン化合物(TiO2)を加えない以外は実施例1と同様に処理し、焼成成型体及びその分級粉末を得た。これらの嵩密度を表1に示す。
またこの分級粉末についてのX線回折チャートは図4に示すものであり、HAPの第4ピークの成長が著しく、実質的にHAPと4CPとの複合体であることが分かる。このチャートから求めた4CPの生成割合を表1に示す。
【0029】
比較例2
TiO2をAl2O3に変更する以外は実施例1と同様に処理し、焼成成型体及びその分級粉末を得た。これらの嵩密度を表1に示す。
またこの分級粉末についてのX線回折チャートは図5に示すものであり、4CPの第1ピーク(A)は実施例と比べて低く、結晶性が悪いことが分かる。またHAPの第4ピークは比較的低く抑えられているもののその生成が認められ、このチャートから算出した4CPの生成割合は表1に示すものであった。
【0030】
比較例3
Al2O3の添加量を3.0重量部とする以外は実施例1と同様に処理し、焼成成型体及びその分級粉末を得た。これらの嵩密度を表1に示す。
またこの分級粉末についてのX線回折チャートは図6に示すものであり、4CPの第1ピーク(A)は実施例と比べて低く、結晶性が悪いことが分かる。またHAPのメインピークは比較的低く抑えられているもののその生成が認められ、このチャートから算出した4CPの生成割合は表1に示すものであった。
【0031】
上記結果から、本発明により得られる焼成成型体及び分級粉末は嵩密度が高いので、気孔が少なく、機械的強度が大きいものが得られていることが分かる。
また、従来の粉末であれば嵩が高く液剤と混ぜ合わせにくいのに比べ、本発明の分級粉末を液剤と練和する際、嵩が低くて混ぜ合わせ易く、所望の物性特性の再現性に優れていることが分かる。
さらに本発明では、焼成物に占める不純物(HAP)の割合が従来の製造方法により得られる焼成物に比してより低いものが得られるばかりか、図1〜3と図4〜6とを比較すると、本発明により得られる焼成成型体及び分級粉末はピークが高く結晶性に優れていることが分かる。
【0032】
実施例4
前記実施例1〜3及び比較例1〜3でそれぞれ得られた各分級粉末と、下記の2種の水溶液:
a)45重量%リンゴ酸水溶液
b)20重量%リンゴ酸+20重量%クエン酸+6重量%ポリアクリル酸共重 合体(共重合比=アクリル酸6:イタコン酸4)水溶液
とを、下記表2に示す〔粉/液〕比(グラム比)にてそれぞれ練和して、JIS T6602歯科用リン酸亜鉛セメントの標準稠度の試験方法を準用し、標準稠度を求めて各セメント用組成物を調製し、これらを硬化させてその硬化時間及び圧縮強度を測定して、下記表2に示す結果を得た。
【0033】
【0034】
表2の結果より、本発明の実施例により得られるセメント硬化体は、圧縮強度に優れていることが分かる。
従って、本発明のセメント用組成物は、歯科用材料に代表される生体修復材料として用いた場合にも十分な機械的強度を発揮するものであることが分かる。
それ故、本発明のセメント用組成物は、従来機械的強度が不十分であるとして適用範囲が制限されていた4CPの医科用分野及び歯科用分野への使用を可能とするものである。
その上、従来のセメント用組成物に比して硬化時間が若干延長されているということは、その分、術者による操作時間が長く取れることを意味し、セメント用組成物の混練物をより正確に充填対象部位に充填することができる。
【0035】
実施例5
実施例1で得られた分級粉末と下記水溶液とを、下記表3に示す〔粉/液〕比(グラム比)にて練和してセメント用組成物を調製し、稠度を求めると共にこれを硬化させてその硬化時間を測定して、下記表3に示す結果を得た。
水溶液: 4重量%クエン酸+ 2重量%リンゴ酸+0.2重量%リン酸+0.85重量%塩化ナトリウム
この結果、比較的機械的強度が要求されない用途に適用されるセント用組成物であれば、以上のように本発明の4CPを用いこの4CPに対する酸成分の配合割合を少なくし、かつ無機塩水溶液を混合することにより、硬化時間を長く稼いだセメント用組成物として提供することができる。
【0036】
【発明の効果】
本発明によれば、チタン化合物を添加することにより、焼成温度を下げることができ、焼成時間が短縮できるので省電力で製造することができる。
従来行われていた4CP製造時に伴う急冷操作、焼成炉内の除湿乾燥などを行う必要はなくなり、従って、特殊な構成の焼成炉を必要としなく通常の焼成炉にて製造できる上、焼成炉内で自然放冷して取り出せるので、製造が簡単かつ安全に行うことができる。
【0037】
本発明の製造方法は、冷却速度が遅くても大気中の水分を殆ど吸収しないので、HAPの生成を押さえ高純度でかつ安定した品質の4CPを製造することができる。その上、チタン化合物として酸化チタンを用いているので、さらに結晶性が高く保存性に優れた商品価値の高い4CPを得ることができる。本発明の製造方法により得られる4CPは、嵩密度が高くかつ高純度である上淡黄色であり、歯科用材料としては勿論のこと生体修復材料としても好適に用いられる。歯科用材料に用いた場合特に歯質に近く審美性が高いものを得ることができる。
【0038】
さらに本発明の製造方法により得られる4CPを用いたセメント用組成物は、各種液剤と練和した場合、従来のものに比して硬化時間が若干延長されると共に硬化体の圧縮強度も高いものとなり、この点からも歯科用材料としては勿論のこと生体修復材料一般としても好適なものを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1において製造された本発明の4CPのX線回折チャート
【図2】実施例2において製造された本発明の4CPのX線回折チャート
【図3】実施例3において製造された本発明の4CPのX線回折チャート
【図4】比較例1において製造された4CPのX線回折チャート
【図5】比較例2において製造された4CPのX線回折チャート
【図6】比較例3において製造された4CPのX線回折チャート
Claims (5)
- カルシウム原料粉末及びリン原料粉末からリン酸四カルシウムを製造する方法であって、これらの両原料をCa/P=2モル比となるように配合すると共に、リン酸四カルシウムの理論生成量 100重量部に対して酸化チタンを0.1〜10重量部添加・混合し、この混合物を1350℃以上の雰囲気下で1時間以上焼成することにより、粒径30μm以下で嵩密度1.0〜2.0g/cm3の粉末状のリン酸四カルシウムを得ることを特徴とするリン酸四カルシウムの製造方法。
- カルシウム原料粉末及びリン原料粉末からリン酸四カルシウムを製造する方法であって、これらの両原料をCa/P=2モル比となるように配合すると共に、リン酸四カルシウムの理論生成量 100重量部に対して酸化チタンを0.1〜10重量部添加・混合し、この混合物をプレス成型した後、1350℃以上の雰囲気下で1時間以上焼成することにより、嵩密度2.5〜3.5g/cm3の塊状のリン酸四カルシウムを得ることを特徴とするリン酸四カルシウムの製造方法。
- カルシウム原料粉末の平均粒径が1〜 30 μ m であり、リン原料粉末の平均粒径が1〜 40 μ m であり、酸化チタンの粒径が 0.1 〜 1.0 μ m である請求項1又は2に記載のリン酸四カルシウムの製造方法。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法により得られるリン酸四カルシウム。
- 請求項4のリン酸四カルシウムを必要に応じて平均粒径 30 μ m 以下に粉砕した粉末と、無機酸、カルボキシル基を2個以上含む有機酸、ポリアクリル酸の単独重合体及びその共重合体からなる群から選択される1種以上の酸成分とを主成分とし、上記酸成分が上記リン酸四カルシウム粉末に対して 20 〜 40 重量%の割合で用いられてなるセメント用組成物。
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1994
- 1994-03-29 JP JP8388894A patent/JP3558680B2/ja not_active Expired - Lifetime
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JPH07267617A (ja) | 1995-10-17 |
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