JP2544075B2 - 医科歯科用硬化体の製造方法 - Google Patents

医科歯科用硬化体の製造方法

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JP2544075B2
JP2544075B2 JP5084970A JP8497093A JP2544075B2 JP 2544075 B2 JP2544075 B2 JP 2544075B2 JP 5084970 A JP5084970 A JP 5084970A JP 8497093 A JP8497093 A JP 8497093A JP 2544075 B2 JP2544075 B2 JP 2544075B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、骨欠損部や骨空隙部
の修復、および覆髄や根管充填に用いる医科歯科用硬化
の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、抜歯等により生じた骨欠損部や骨
空隙部の修復用の充填材として、ハイドロキシアパタイ
トあるいはその前駆体のβ−リン酸三カルシウムの顆
粒、ブロック体等が用いられている。ハイドロキシアパ
タイトやβ−リン酸三カルシウムは、生体に対して無害
ではあるが、長時間体内にあっても硬組織との一体化は
できず、硬組織と表面上で接着されているにすぎない。
【0003】硬組織と一体化できる充填材として、α−
リン酸三カルシウム、リン酸四カルシウムなどの化学活
性を有するリン酸カルシウム化合物粉末と、有機酸を含
む硬 化溶液とを含むセメント材料を練和してから生体外
または口腔外において生体温度前後の温度で硬化させた
充填材が知られている。この充填材は、リン酸カルシウ
ム化合物が転化したハイドロキシアパタイトを含んでい
るので、生体硬組織と一体化することができる。しか
し、ハイドロキシアパタイトは、近年の研究によれば、
化学活性のないセラミックスタイプの材料であり、生体
骨との界面結合および生体骨との置換などの性能におい
て改良の余地がある。また、硬化体に含まれる過剰な有
機酸が生体組織に為害作用を与えるおそれがある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】したがって、この発明
は、生体親和性が良く、生体組織と結合でき、生体組織
と置きかわることのできる医科歯科用硬化体の製造方法
を提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、この発明にかかる医科歯科用硬化体の製造方法は、
化学活性を有するリン酸カルシウム化合物粉末とカルボ
キシル基を有する有機酸とを水の存在下で練和して練和
物を得る練和工程と、前記練和物を初期硬化させて初期
硬化物を得る初期硬化工程と、前記初期硬化物をオート
クレーブ処理でさらに硬化させるオートクレーブ処理工
程とを含む。この発明の医科歯科用硬化体の製造方法
は、また、練和工程においてさらにゼラチンが練和さ
れ、オートクレーブ処理をゼラチンの繊維が残るように
行うことができる。この発明の医科歯科用硬化体の製浩
方法では、また、ゼラチンがパイロジェンフリーゼラチ
ンであることができる
【0006】この発明に粉成分として用いられる化学活
性を有するリン酸カルシウム化合物としては、α−リン
酸三カルシウム(以下、α−TCPと記す)、リン酸四
カルシウム(以下、4CPと記す)、リン酸八カルシウ
ム(以下、OCPと記す)等が挙げられる。これらは、
たとえば、生体内や口腔内において、生体硬組織の主成
分であるハイドロキシアパタイト(以下、HApと記
す)へ徐々に転化し、生体硬組織と一体化し得るもので
ある。上記化学活性を有するリン酸カルシウム化合物
は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0007】この発明において、ゼラチンを用いたとき
には、硬化後のセメント材の強度を高めることができ
る。また、ゼラチンのカルボキシル基がOCPまたはア
パタイトの水酸基やリン酸基と一部置換して炭酸アパタ
イト(以下、CO3 −Apと記す)が生成する。CO3
−Apは、生体組織と完全に置きかわることができる。
【0008】この発明に用いられるゼラチンとしては、
局方ゼラチン、水溶性ゼラチン(「ゼラチン21」新田
ゼラチン社製)等が挙げられるが、パイロジェンフリー
ゼラチンが特に好ましい。パイロジェンフリーゼラチン
は、生体への為害性が少ないからである。ここで、パイ
ロジェンフリーゼラチンとは、細菌の内毒素(高分子リ
ポポリサッカライド)等の発熱物質を除去したゼラチン
である。パイロジェンフリーゼラチンは、たとえば、ゼ
ラチンの原料であるオセインまたは獣皮をアルカリ処理
してパイロジェンフリー水で洗浄した後、ゼラチンを抽
出する方法(米国特許第4374063号参照)、ゼラ
チンを加水分解した後、限外濾過膜を透過させてパイロ
ジェンを濾別除去する方法(特開昭56−68607号
公報参照)等によって得ることができる。
【0009】この発明において、酸の役割は以下の通り
である。カルボキシル基を有する有機酸は、セメント材
料の硬化を促進し、硬化物の度を高め、また、ゼラチ
ンと同様、カルボン酸のカルシウム塩またはCaCO3
とHAp、OCPとが二次反応してCO3 −Apを生成
する。
【0010】この発明に用いられる酸としてはカルボ
キシル基を有する有機酸特にキレト力のあるジまた
はトリカルボン酸等が挙げられるが、生体内のクエン酸
回路で合成される有機酸が特に好ましい。クエン酸回路
で合成される有機酸は、生体への為害性が少ないからで
ある。具体的には、クエン酸、イソクエン酸、オキソグ
ルタル酸、スクシニルCo−A、コハク酸、フマル酸、
リンゴ酸、オキサロ酢酸等が挙げられる。また、アミノ
酸およびポリアミノ酸も生体為害性がなく、具体的に
は、アスパラギン酸、グルタミン酸等およびそれらの重
合体、共重合体が挙げられる。上記酸は、単独で用いて
も2種以上を併用してもよい。
【0011】上述のゼラチンは、微粉化することによっ
て、粉成分としての化学活性を有するリン酸カルシウム
化合物に粉成分として添加してもよく、液成分に溶解さ
せて使用してもよい。酸もまた同様である。
【0012】この発明では、生体組織と完全に置きかわ
ることのできるCO 3 −Apの生成が重要な効果を与え
る。化学活性を有するリン酸カルシウム化合物は、転化
して、OCP、HAp、CO 3 −Ap等を生成するが、
これらの生成物中のCO 3 −Apの割合は、種結晶にな
る程度(数%)以上が好ましい。そのためには、カルボ
キシル基を供給するゼラチンと化学活性を有するリン酸
カルシウム化合物との割合は、0.0025:1〜0.
01:1が好ましい。なお、カルボン酸を使用する時
は、ゼラチン量を加減できる。
【0013】この発明に用いるセメント材料は、粉成分
と液成分を練和し、パテ状として使用される。このセメ
ント材料は、練和後1〜5分でパテ状となる。使用に際
しては、粉成分の重量/液成分の重量(粉液重量比。以
下、「P/L比」と記す)=1.8〜2.3の比率で練
和されることが好ましい。この範囲を外れて粉成分が多
い場合には練和中に粉成分の全量を液成分と混ぜ合わす
ことができないおそれがあり、液成分が多い場合にはセ
メントの流動性が大きくなり成形ができないおそれがあ
る。
【0014】このパテ状セメント材は、たとえば、2〜
10分間で硬化してしまい変形できなくなるので、それ
までの間にこのパテ状セメント材を、たとえば、通常の
やり方に従って患部に直接充填し成形体を得た後、取り
出してオートクレーブ処理を行って硬化させ、再度この
成形体を患部へ充填する。オートクレーブ処理を行うこ
とにより、HAp、CO 3 −Apの生成を促すことがで
き、さらに、炎症の原 因となる未反応の酸を除去するこ
とができる。なお、オートクレーブ処理を行うと成形体
の強度がやや低下するため、たとえば、海綿骨や軟組織
や歯肉等の成形体の強度があまり必要とされない部位に
この充填方法を適用すればよい。
【0015】
【作用】この発明にかかる医科歯科用硬化体の製造方法
は、化学活性を有するリン酸カルシウム化合物粉末とカ
ルボキシル基を有する有機酸とを水の存在下で練和して
練和物を得る練和工程と、前記練和物を初期硬化させて
初期硬化物を得る初期硬化工程と、前記初期硬化物をオ
ートクレーブ処理でさらに硬化させるオートクレーブ処
理工程とを含むので、生体硬組織の主要成分であるHA
p、CO−Apを生成している。CO−Apは、酸
またはゼラチンのカルボキシル基が反応し、HApの水
酸基またはリン酸基の一部を置換することによって生成
する。ところで、HApは、破骨細胞による盲食を受け
ないため、骨芽細胞による骨の生成が行われない。この
ため、生体組織と完全には置きかわらず、表面上で接着
しているにすぎない。一方、CO−Apは、破骨細胞
により貧食されるため、骨芽細胞による骨の生成が行わ
れる。このため、生体組織と完全に置きかわることがで
きる。したがって、この発明にかかる製造方法により得
られる医科歯科用硬化体は、生体親和性に優れている。
【0016】また、この発明にかかる医科歯科用硬化体
の製造方法は、練和工程においてさらにゼラチンが練和
され、前記オートクレーブ処理を前記ゼラチンの繊維が
残るように行うときには、練和時の操作性が良く、硬化
後の成形体は高強度である。
【0017】
〔測定方法〕
(1) 硬化時間 JIS−T−6602の歯科用リン酸亜鉛セメントの硬
化時間測定方法に準じた。すなわち、硬化性材料を練和
したもの(セメント泥)を直径10mm、高さ5mmのリン
グに満たし、練和開始から3分後に室温37℃、相対湿
度95%以上の環境下で質量300gのビカー針(針の
断面積1mm2 )の圧痕がつかなくなるまでの時間を硬化
時間とした。硬化時間は、3回の測定値の平均を15秒
単位で丸めて表した。 (2) 破砕抗力 内径6mm、高さ12mmの円筒状ステンレス金型にセメン
ト泥を充填し、両端を肉厚のガラス板で挟み、加圧し
た。練和開始3分後、加圧したまま温度37℃、相対湿
度100%の恒温器中に移した。30分後、硬化物を金
型から取り出し、37℃の蒸留水中に浸漬し、練和開始
24時間後に蒸留水から取り出し、試験片とした。この
試験片を島津オートグラフAG−2000Aを用いて破
砕抗力を測定した。クロスヘッドスピードは1mm/分、
測定は10個の試験片について行い、その総平均値の−
15%以下の数値を除いた残りの数値の平均値を測定値
とした。ただし、総平均値の−15%以下の数値が2個
以上の時は、再試験を行った。 (3) 崩壊率 崩壊率試験は、次の各号の順序により行う。
【0018】(a) 標準ちょう度のセメント0.5ml
を2回計量し、ガラス板の上にとる。 (b) この2個の試験片に質量既知の適当な長さの耐酸
性細線を挿入する。 (c) これを他のガラス板で軽く圧接してセメントの直
径を約20mmとし、練和を開始したときから3分を経
過したとき、温度37℃、相対湿度100%の恒温器中
に移す。
【0019】(d) 練和を開始したときから1時間を経
過したとき、2個の試験片をガラス板から剥離し、直ち
に質量既知の内容積約100mlの共せんガラスびんに
入れて栓をし、秤量する。 (e) この質量とびん及び細線の合計質量との差を求
め、試験片の質量ととする。
【0020】(f) これに50mlの蒸留水を入れ、2
個の試験片を細線をもって水中に懸垂させ、軽くせんを
して温度37℃の恒温器中に24時間保つ。 (g) 試験片をびんから取り出し、その表面に結晶の析
出が有るかどうかを調べる。 (h) ガラスびんを水浴上で加熱して蒸発させ、さらに
温度150℃の恒温器中で、びんの質量変化が24時間
につき0.5mg以下になるまで乾燥させる。
【0021】(i) 次にデシケータの中に入れて放冷し
た後、びんを秤量する。 (j) この値からもとのガラスびんの質量を引いて蒸発
残留物の質量を求め、試験片のもとの質量に対する%を
求め、これを崩壊率とする。 (4) 硬化体pH コンパクト・ピーエイチ・メーター(COMPACT pH METER)
(商品名「CARDY」、堀場製作所製)を用いて測定
した。まず初めに、コンパクト・ピーエイチ・メーター
のセンサーの上に吸水紙を載せ、蒸留水を2〜3滴注い
で紙を湿らせた。次に、湿らせた吸水紙の上に、硬化性
材料を1分間練和したもの(セメント泥)を流し込み、
練和開始から5分後、15分後、30分後、45分後、
60分後、75分後、90分後にそれぞれ常温下でセメ
ント材料の練和物近傍で測定したpH値を、セメント泥
pHとした。また、練和開始後24時間の成形体のpH
を同様に測定して、成形体のpHとした。 (5) X線回析 粉末X線回析装置(MXP3 、マックサイエンス社製)
を用いて、同定した。 (6) 走査電顕 走査電子顕微鏡(CS−2100A型、株式会社日立製
作所製)で表面を観察した。
【0022】−参考例1− 粉成分として、粒子径32μm以下のリン酸4カルシウ
ム(Ca4 (PO4 2 O)と、粒子径32μm以下の
リン酸カルシウム2水和物(CaHPO4 ・2H2 O)
を等モルずつ混合した。一方、液成分として、ゼラチン
(牛骨由来)を0.5%(w/v)含む40%(w/
w)クエン酸水溶液を調製した。これらの粉成分と液成
分を、P/L比=2.0で組み合わせてセメント材料を
得た。
【0023】−参考例2− 液成分にゼラチンを含まないこと以外は、参考例1と同
様にしてセメント材料を得た。参考例1、2のセメント
材料について、上述の物性測定を行った。結果を表1、
図1〜7に示した。なお、以下でオートクレーブ処理
は、121℃、2atm、25分行った。
【0024】
【表1】
【0025】1.硬化時間 表1にみるように、参考例1と2の練和物は、ともに、
練和開始後約1分30秒よりパテ状を呈し、2〜3分の
間に硬化を完了した。 2.破砕抗力 表1にみるように、初期硬化後の成形体の破砕抗力は、
参考例1と2の練和物は、ともに、オートクレーブ処理
を行ったもの(実施例1と2)では、処理前に比べて約
1/2以下の強度に低下した値を示した。 3.崩壊率 表1にみるように、崩壊率は、ゼラチンを含む参考例1
が、ゼラチンを含まない参考例2よりも若干高い値を示
した。 4.硬化体pH 図1にみるように、参考例1と2ともに、硬化反応直後
は一時的に低いpH値を示すが、硬化に伴い経時的に中
性付近に推移した。また、硬化24時間後の成形体のp
Hも、双方とも、未反応な酸の徐放に伴って経時的にp
H6付近に推移した。 5.X線回析参考例1と2 について、初期硬化後の硬化体(a)、そ
れら硬化体を水中に浸漬させたもの(b)、初期硬化後
オートクレーブ処理した硬化体(c)(実施例1と2)
の3種についてX線回析を行った。結果をそれぞれ図2
〜7に示した。各チャートの上に付した記号は上記
(a)、(b)、(c)に対応する。
【0026】図8は、HAp、4CP、リン酸水素カル
シウム二水和物(以下、DCPDと記す)、リン酸水素
カルシウム(以下、DCPAと記す)、炭酸カルシウム
(CaCO3 )のX線回析結果である。図2〜7より、
参考例1と2ともに、その結晶形態は、図8に示される
ような、主に多種のリン酸カルシウムが混ざり合ったア
モルファスな結晶形態であることが分かる。ところが、
その主なピークは条件変化に伴い変わっていき、初期硬
化反応のみでは未反応DCPDのピークが顕著であり、
HApとCO3 −Apとの混合物(以下アパタイトと略
す)の生成はあまり進行していない。水中に浸漬させた
ものでは、DCPDからDCPAへの主要ピークの変化
が確認されるが、依然として未反応な4CPのピークが
残存し、生成したアパタイトは低結晶なものである。一
方、硬化体にオートクレーブ処理を行う(実施例1と
2)と、ほぼ純粋なCO3 −Apに置換しており、オー
トクレーブ処理によりCO3 −Apの生成が促進された
ことが分かる。
【0027】これらの生成アパタイトは、初期硬化反応
後より炭酸カルシウムのピークが多く確認されることよ
り、近年、より生体骨に近いとされるCO3 −Apが生
成されていると考えられる。生体骨近似なCO3 −Ap
は、化学活性のないセラミックスタイプのHApとは異
なり、化学活性が高く、生体骨との界面結合のみならず
骨と置換し得るものであり、生体材料として非常に好ま
しい。CO3 −Apの炭酸の供給源は、酸やゼラチンの
有するカルボキシル基が置換したものであると考えられ
る。
【0028】また、オートクレーブ処理によって、過剰
な酸が除去され、生体組織に与える為害作用は少なくな
る。しかし、破砕抗力の結果にみられた様に、オートク
レーブ処理でCO3 −Apが生成されることにより、そ
れまで骨材効果を発揮していた未反応物質が無くなり、
硬化体内部の強度が、主に生成したCO3 −Ap結晶同
士の絡み合いによって維持されることになるため、強度
低下が起こる。この発明のセメント材料は、長期にわた
って高い圧縮強度を必要とするものではないが、初期に
おいてはある程度の強度維持が望ましいと考えられる。
【0029】−応用例1− この発明のセメント材料の組織親和性を検討するため、
参考例1のセメント材料をオートクレーブ処理したもの
(実施例1)をラットの皮下に埋入した。 (方法) SDラット7週齢雄の背面の体毛を除去し、エタノ
ヒビテンで洗浄後、同部位を切開、筋膜を剥離した。前
述の成型体を剥離筋膜下に埋入、すみやかに縫合したの
ち、抗菌スプレを用いて創面をコティングした。所
定期間後に屠殺し、採取した成型体をエタノルにて洗
浄後試験に供した。
【0030】−応用例2参考例2 のセメント材料を用いた以外は、応用例1と同
様に行った。応用例1、応用例2のセメント材料につい
て、上述の物性測定を行った。結果を図9〜11に示し
た。 1.破砕抗力 セメント材料をラット背部皮下へ埋入したものの経時的
な破壊抗力を図9に示す。図9より、比較応用例はほぼ
直線的に強度が低下していくのに対し、応用例では強
度の低下は緩やかであり、2週以後は強度が150kgf/
cm2 以上で維持されていることが分かる。 2.X線回析 セメント材料をラット背部皮下へ埋入したものの経時的
な反応生成物を同定した結果を図10(応用例1)、図
11(応用例2)に示す。図10、11より、応用例1
応用例2に比べ、アパタイト結晶の成長が比較的遅れ
て開始されている。よって、強度低下を及ぼすアパタイ
ト結晶の成長が比較的早い応用例2では、強度低下が顕
著であると考えられ、破砕抗力の結果と一致している。 3.走査電顕 X線回析に供した試料と同じものを走査型電子顕微鏡で
観察したところ、応用例1については表面に繊維状の物
質が確認されたが、応用例2には繊維状の物質は確認さ
れなかった。この繊維状の物質はゼラチン繊維と思われ
る。すなわち、オートクレーブ処理を行っても一部のゼ
ラチン繊維は残存することを示す。これらがオートクレ
ーブ処理により丈夫な網目状繊維物を形成し、生体内で
の硬化体自体の崩壊を緩やかにして、アパタイト結晶の
成長を遅延させ、初期における強度維持に効果をもたら
していると考えられる。
【0031】−応用例− ゼラチンをパイロジェンフリーゼラチン「ビスタプラズ
マ」( 新田ゼラチン)に置きかえた他は実施例と同様の
セメント材料を用いて、応用例1と同様に行った。これ
について、破砕抗力、X線回析、走査電顕の結果を表2
および図12に示す。図12にみるように、初期(〜1
週)においては、応用例1とほぼ同様の結果を示してい
る。したがって、より生体親和性が高いパイロジェンフ
リーゼラチンを用いることが望ましい。応用例につい
ても、表面に繊維状の物質が確認された。
【0032】
【表2】
【0033】
【発明の効果】この発明の製造方法により得られた医科
歯科用硬化体は、生体親和性が良く、生体組織と結合で
き、生体組織と置きかわることができる。したがって、
抜歯後の歯槽堤形成のための歯槽骨、顎骨への充填や、
歯牙組織、骨組織への直接充填、接着材や固着材等への
利用も可能である。また、ゼラチンとしてパイロジェン
フリーゼラチンを用いれば、出血歯槽骨充填患部での止
血効果もある。パイロジェンフリーゼラチンの含有量を
多くすれば、膜状成形物も作製できるので、GTR(G
uided Tissue Regeneratio
n)法に用いる生体吸収性膜としての用途にも有効であ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】参考例1と2のセメント泥、成形体のpHの経
時的変動を示す。
【図2】参考例1の硬化体のX線回析装置によるチャー
ト (a)を示す。
【図3】参考例1の硬化体のX線回析装置によるチャー
ト (b)を示す。
【図4】参考例1の硬化体(実施例1)のX線回析装置
によるチャート (c)を示す。
【図5】参考例2の硬化体のX線回析装置によるチャー
ト (a)を示す。
【図6】参考例2の硬化体のX線回析装置によるチャー
ト (b)を示す。
【図7】参考例2の硬化体(実施例2)のX線回析装置
によるチャート (c)を示す。
【図8】HAp、4CP、DCPD、DCPA、CaC
3 のX線回析装置によるチャートを示す。
【図9】応用例1および応用例2の硬化体の破砕抗力の
経時的変動を示す。
【図10】応用例1の硬化体のX線回析装置によるチャ
ートを示す。
【図11】応用例2の硬化体のX線回析装置によるチャ
ートを示す。
【図12】応用例の硬化体のX線回析装置によるチャ
ートを示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 永冨 功治 大阪府八尾市二俣2丁目22番地 新田ゼ ラチン株式会社大阪工場内 (72)発明者 井上 宏 大阪府堺市浜寺昭和町2―182―2 (72)発明者 江藤 隆徳 大阪府吹田市千里山西5―19―2 (72)発明者 畦崎 泰男 大阪市旭区今市1―1―11

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 化学活性を有するリン酸カルシウム化合
    物粉末とカルボキシル基を有する有機酸とを水の存在下
    で練和して練和物を得る練和工程と、前記練和物を初期
    硬化させて初期硬化物を得る初期硬化工程と、前記初期
    硬化物をオートクレーブ処理でさらに硬化させるオート
    クレーブ処理工程とを含む医科歯科用硬化体の製造方
  2. 【請求項2】 前記練和工程においてさらにゼラチンが
    練和され、前記オートクレーブ処理を前記ゼラチンの繊
    維が残るように行う、請求項1記載の医科歯科用硬化体
    の製造方法
  3. 【請求項3】 前記ゼラチンがパイロジェンフリーゼラ
    チンである請求項2記載の医科歯科用硬化体の製造方
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