JPH0734816B2 - 医科用および歯科用硬化性材料 - Google Patents

医科用および歯科用硬化性材料

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JPH0734816B2
JPH0734816B2 JP4152280A JP15228092A JPH0734816B2 JP H0734816 B2 JPH0734816 B2 JP H0734816B2 JP 4152280 A JP4152280 A JP 4152280A JP 15228092 A JP15228092 A JP 15228092A JP H0734816 B2 JPH0734816 B2 JP H0734816B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、骨欠損部や骨空隙部
の修復に用いる接着または固着用の医科用セメント、歯
科用覆髄用セメント、歯科用根管充填用セメント等とし
て利用される医科用および歯科用硬化性材料に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、整形外科領域において骨欠損部お
よび骨空隙部の修復に用いられている接着または固着用
の医科用セメントとして、シアノアクリレート系接着剤
やメタクリル酸メチル重合体−メタクリル酸メチルモノ
マー系の骨セメントが使用されている。しかし、これら
の生体外の高分子化合物は、生体との適合性が少なく長
時間体内にあっても生体との一体化はできない。一方、
歯科治療において根管充填治療としては、水酸化カルシ
ウム系糊材を根管に充填する方法や、酸化亜鉛ユージノ
ールセメントをガッタパーチャポイントと併用して根尖
部を封鎖する方法が代表的である。ところが、水酸化カ
ルシウム系糊材では充填した近傍においてpHが強塩基
性となるため刺激を伴う等の問題がある。また、酸化亜
鉛ユージノールセメントは高い細胞毒性を持つことが多
方面より指摘されている。
【0003】近年、リン酸カルシウム化合物のハイドロ
キシアパタイト(Ca10 (PO4)6(OH)2:水酸アパタ
イトまたはHApとも言う)が生体との親和性に優れて
いるとの理由から、骨欠損部および骨空隙部の修復用の
材料としてハイドロキシアパタイトの顆粒、ブロック
体、多孔体が臨床利用され出しており、様々な報告がな
されている。
【0004】しかし、これらハイドロキシアパタイトか
らなる材料を骨欠損部や骨空隙部に充填しても切開した
部位から充填物が漏出しやすい。これは、ハイドロキシ
アパタイトが生体に対して無害ではあるが長時間体内に
あっても生体との一体化はできないからである。また、
ハイドロキシアパタイトは上記セメント材料の粉成分の
代替品にはならない。これは、ハイドロキシアパタイト
が乾式合成製品または湿式合成製品のいずれであっても
硬化反応を起こさないためである。
【0005】セメントタイプの材料、すなわち硬化性材
料の特徴は、一般のセラミックス(焼結体)にはない、
硬化性、接着性、複雑形状にも対応できる成形性など、
材料として利用するうえできわめて大きな可能性を持っ
ていることである。このため、生物学的に活性なリン酸
カルシウム化合物を使用した硬化性材料が検討されてお
り、リン酸カルシウムが水和反応により硬化していく凝
結硬化型の硬化性材料と、リン酸カルシウムが液成分中
に多量に含まれている有機酸またはカルボキシル基含有
重合体とキレート結合を形成して硬化していくキレート
硬化型の硬化性材料が提案されている。
【0006】凝結硬化型の硬化性材料は、リン酸カルシ
ウム化合物が水中では水和反応を起こして凝結し、最終
的にハイドロキシアパタイトまたはリン酸八カルシウム
(Ca8 2(PO4)6 ・5H2 O:OCPとも言う)に
転化するという現象により硬化するので、硬化のために
有機酸を多量に使用する必要がない。このため、凝結硬
化型の硬化性材料は、有機酸によるpHの低下が起こら
ない。
【0007】生物学的に活性なリン酸カルシウム化合物
は、たとえば、生体内や口腔内においてイドロキシア
パタイトへ徐々に転化し、しかも、生体と一体化しうる
ものであり、具体的には、α−リン酸三カルシウム(C
(PO(α型):α−TCPとも言う)、リ
ン酸四カルシウム(Ca(POO:TeCPま
たは4CPとも言う)などが例示される。これらのリン
酸カルシウム化合物を用いた水硬性リン酸カルシウム組
成物が種々提案されている。
【0008】リン酸四カルシウムを用いた凝結硬化型の
硬化性材料としては、たとえば、リン酸四カルシウムと
リン酸水素カルシウムとの混合物からなる凝結硬化型の
歯科修復用ペーストが提案されている(米国特許第45
18430号)。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】従来の凝結硬化型の硬
化性材料は、練和操作性が悪く、ペースト(ペースト
は、セメント泥または練和物とも言う)が均一に広がら
ないため充填箇所に均一に充填できない(充填性が悪
い)という問題がある。硬化性材料は、一般に、硬化時
間の長短を調節するのに粉成分と液成分の比率を適宜変
えている。硬化時間を短縮するために粉成分の分量を増
やすと、凝結硬化型の硬化性材料の練和操作性や充填性
がさらに悪くなる。
【0010】このため、粉成分と液成分を非常に限られ
た範囲の比率で練和しなければ所期の効果が発揮されな
い硬化性材料は実用困難である。発明者らの研究によれ
ば、従来の凝結硬化型の硬化性材料は硬化していくとき
にペースト近傍のpHが酸性域または強塩基性域になる
ため生体に刺激を与えることがわかった。
【0011】この発明は、練和操作性に優れ、ペースト
の充填性に優れ、硬化時間の調節が可能で、生体に充填
した直後の充填部近傍のpHが弱塩基性であり、生体
一体化しうる、医科用および歯科用硬化性材料を提供す
ることを課題とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、この発明は、少なくともリン酸四カルシウムおよび
リン酸水素カルシウムからなる粉成分と、第二リン酸根
および有機酸根を含む液成分との組み合わせからなる
科用および歯科用硬化性材料を提供する。この発明で用
いられるリン酸四カルシウム粉末は、化学式Ca
で表されるリン酸カルシウム化合物である。その製
造方法には特に限定はなく、いかなる方法で製造したも
のであってもよい。たとえば、Ca源として、CaCO
、CaO、Ca(OH)などが、P源として、P
、HPO、NHPO、(NH
PO、CaとPの両方を含有するCaHPO・2H
O、CaHPO、Ca(HPO、Ca
等が挙げられ、CaとPのモル比をCa/P=2
となるように組み合わせることによって種々の製造方法
が考えられるが、CaHPO・2HOを焼成して得
られたCaと、CaCOを焼成して得られ
たCaOを1:2モル比にて混合した後、焼成する乾式
製造方法が好ましい。この乾式製造方法により作られた
リン酸四カルシウム粉末はセメント用粉材としては好ま
しい。
【0013】この発明で用いられるリン酸水素カルシウ
ムは、2水和物(CaHPO4 ・2H2 O:DCPDと
も言う。鉱物名はブラッシャイト)でも無水物(CaH
PO 4 :DCPAとも言う。鉱物名はモネタイト)でも
使用されうる。リン酸水素カルシウムも製造方法に特に
制限はないが、日本薬局方品が好ましい。この発明にお
いて、粉末成分としては、リン酸四カルシウムとリン酸
水素カルシウムの2種だけでもよいし、リン酸四カルシ
ウム、リン酸水素カルシウム、および、他のリン酸カル
シウム化合物の3種以上の混合物でもよい。このような
他のリン酸カルシウム化合物としては、たとえば、ハイ
ドロキシアパタイト、炭酸アパタイト、α−リン酸三カ
ルシウム、α′−リン酸三カルシウム、γ−リン酸三カ
ルシウム、β−リン酸三カルシウム、リン酸八カルシウ
ムなどが挙げられる。
【0014】リン酸四カルシウムとリン酸水素カルシウ
ムの比率は、たとえば、リン酸四カルシウムとリン酸水
素カルシウムの混合物中のカルシウムとリンのモル比
(Ca/P比と呼ぶ)が1.16〜1.95の範囲内と
なるように設定するのが好ましく、1.28〜1.91
の範囲内となるように設定するのがより好ましい。この
範囲を外れるとセメントの硬化時間が長くなるおそれが
ある。
【0015】リン酸四カルシウムおよびリン酸水素カル
シウムの合計重量と他のリン酸カルシウム化合物の比率
は、たとえば、(リン酸四カルシウム+リン酸水素カル
シウム)/他のリン酸カルシウム化合物=0.5以上の
モル比が好ましく、1以上がより好ましい。この範囲を
外れるとセメントの硬化時間が長くなるおそれがある。
【0016】この発明では、粉成分の粒子径は特に制限
されないが、硬化性材料の練和操作時の練り易さをでき
るだけ向上させたり、あるいは、硬化性材料の硬化速度
をできるだけ速めたりするという点からは、平均粒子径
50μm以下が好ましく、0.1〜20μmの範囲がさ
らに好ましい。上記粉成分の練和に用いる液成分は、第
二リン酸根と有機酸根を含む水溶液である。第二リン酸
根の供給源としては、たとえば、第二リン酸ナトリウ
ム、第二リン酸カリウム、第二リン酸アンモニウムなど
の水溶性第二リン酸塩から選ばれる1種または2種以上
が挙げられる。有機酸根の供給源としては、たとえば、
クエン酸、リンゴ酸、マロン酸、マレイン酸、フマール
酸、フマレイン酸、乳酸、酢酸、オキサロ酢酸、イソク
エン酸、アコニット酸、コハク酸、アクリル酸の単独重
合体、アクリル酸とイタコン酸の共重合体などの有機酸
またはカルボキシル基を持つ高分子化合物またはその塩
などから選ばれる1種または2種以上が挙げられるが、
生体内での代謝回路であるクエン酸回路で生じる有機酸
またはその塩が好ましい。
【0017】液成分中の第二リン酸根の濃度は、第二リ
ン酸塩として1mM〜2Mが好ましく、20〜500m
Mがより好ましい。液成分中の有機酸根の濃度は、有機
酸または有機酸と有機酸塩の合計量として1mM〜2M
が好ましく、1〜500mMがより好ましい。これらの
範囲よりも低濃度だと、セメントの硬化速度が遅すぎる
おそれがあり、高濃度だと、セメントの硬化速度が速す
ぎるおそれがある。
【0018】第二リン酸塩と有機酸および/または有機
酸塩とは、(第二リン酸塩のモル濃度)/(有機酸およ
び/または有機酸塩の合計のモル濃度)が0.02〜1
42の範囲となるような混合割合で使用されるのが好ま
しく、そのモル濃度比が0.04〜71の範囲となるよ
うな混合割合で使用されるのがより好ましい。モル濃度
比が前記範囲を外れると液成分が緩衝能を持たないおそ
れがあり、前記範囲を下回るとペースト近傍のpHを弱
塩基性に維持できないおそれがあり、前記範囲を上回る
と練和操作性が悪くなるおそれがある。
【0019】前記液成分は、たとえば、第二リン酸ナト
リウムおよび第二リン酸カリウムのうちの少なくとも1
種と、クエン酸およびリンゴ酸のうちの少なくとも1種
とを含む緩衝溶液である。この発明の硬化性材料は、た
とえば、上記粉成分と液成分が、粉成分の重量/液成分
の重量=0.5〜4、好ましくは1〜2.4の比率で練
和される。この範囲を外れて粉が多い場合には粉の全量
を液と混ぜ合わすことができないおそれがあり、液が多
い場合にはペーストの流動性が大きくなり、成形ができ
なかったり硬化しなかったりするおそれがある。
【0020】この発明の硬化性材料は、必要に応じて、
増粘剤を含んでいてもよい。これは、ペーストの成形性
または均一な充填性を向上させるためである。増粘剤と
しては、たとえば、カルボキシメチルセルロース、カル
ボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピ
ルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリグルタミン
酸、ポリグルタミン酸塩、ポリアスパラギン酸、ポリア
スパラギン酸塩等の水溶性高分子などから選ばれる1種
または2種以上が挙げられるが、水への溶解性および粘
性の面からはカルボキシメチルセルロースナトリウム、
ヒドロキシプロピルセルロース、ポリグルタミン酸およ
びポリグルタミン酸塩から選ばれる少なくとも1つが好
ましい。増粘剤は、粉成分に混合されたり、液成分に混
合されたり、練和中のペーストに混合されたりすること
ができる。増粘剤の使用割合は、増粘剤の種類によって
異なり、たとえば、上記例示の増粘剤のうち、ポリグル
タミン酸とポリグルタミン酸塩は液成分全体の重量に対
して0.5〜15重量%の割合で使用されるのが好まし
く、1〜10重量%の割合で使用されるのがより好まし
く、ポリグルタミン酸とポリグルタミン酸塩以外のもの
は液成分全体の重量に対して0.5〜10重量%の割合
で使用されるのが好ましく、0.5〜5重量%の割合で
使用されるのがより好ましい。
【0021】この発明の硬化性材料は、必要に応じて、
X線造影剤を含んでいてもよい。これは、硬化性材料の
ペーストの充填をモニターしながら行ったり、充填後の
変化を追跡したりすることができるという理由による。
X線造影剤としては、たとえば、硫酸バリウム、次炭酸
ビスマス(オキシ炭酸ビスマス)、ヨードホルム、バリ
ウムアパタイト、チタン酸バリウムなどから選ばれる1
種または2種以上が挙げられる。X線造影剤は、粉成分
に混合されたり、液成分に混合されたり、練和中のペー
ストに混合されたりすることができ、たとえば、粉成分
全体の重量に対して5〜30重量%の割合で使用される
のが好ましい。
【0022】この発明の硬化性材料は、上述の必須成分
および任意成分に加えて、たとえばセルロース以外の多
糖類としてデンプン、グリコサミノグリカン、アルギン
酸、キチン、キトサン、ヘパリンなどを、蛋白質類とし
てコラーゲン、ゼラチンおよびこれらの誘導体などを、
また、抗リウマチ治療剤、抗炎症剤、抗生物質、抗腫瘍
剤、骨誘導因子、タンニン酸、カテキンなどのタンニン
酸誘導体、レチノイン酸、レチノイン酸誘導体、Decape
ntaplegic-Vg-related family (DVRgene familyとも言
う)、TGF−β1、TGF−β2、および、TGF−
β Family なども含みうる。
【0023】この発明の硬化性材料は、通常の医科用ま
たは歯科用分野で使用されている硬化性材料と同様にし
て使用される、たとえば、上述の必須成分および必要に
応じて含まれる任意成分を練和してペーストとされる。
このペーストはたとえば5〜30分間で硬化してしまい
変形できなくなるので、それまでの間にこのペースト
を、たとえば、通常のやり方にしたがって患部へ充填す
る。充填されたペーストは、生体内または口腔内の環境
下で硬化した後、たとえば1日間で完全にハイドロキシ
アパタイトへ転化し、その硬化物が一部新生骨に置換さ
れ、生体と一体化する。
【0024】この発明の硬化性材料は、たとえば、接着
または固着用の医科用セメント、歯科用覆髄用セメン
ト、歯科用根管充填用セメントなどとして使用される。
この発明の硬化性材料を上述の用途に利用した場合、練
和操作性は従来の硬化性材料よりも優れており、ペース
トの充填性に優れ、セメント硬化時間は数分以上から調
節可能で、ペーストの近傍pHは初期から弱塩基性で安
定化し、ペースト自体が生体内または口腔内で短期間の
うちにハイドロキシアパタイトへ転化し、充填した近傍
部に新生骨などの形成を促進し、しかもペースト表面が
新生骨に置換されるため、生体とペーストが接触する面
(界面)が認識できなくなるようになり一体化するなど
の点で従来の硬化性材料よりも優れている。
【0025】
【作用】この発明の硬化性材料は、粉成分が少なくとも
リン酸四カルシウムおよびリン酸水素カルシウムを含ん
でいることにより、短時間のうちにハイドロキシアパタ
イトへ転化する。液成分が第二リン酸根と有機酸根とを
含んでいることにより、材料の硬化時間の短縮ならびに
材料が硬化する初期段階からpHが弱塩基性域(たとえ
ば、pH8.0〜9.0)におさまり、そのpH領域で
安定化する。
【0026】
〔測定方法〕
(1) 平均粒子径 得られた粒子をイソプロピルアルコールに分散させて、
粒度分布計(CAPA−700、堀場製作所社製)で測
定した。測定原理は遠心沈降法で行った。 (2) 構造 粉末X線回折装置(MXP、マックサイエンス社製)
を用いて、製造したリン酸四カルシウム粉末と硬化性材
料の練和硬化による反応生成物の構造を同定した。 (3) 硬化性材料の硬化時間 ISO(International Organiz
ation forStandardization:
国際標準化機構)規格の歯科用根管充填材料の硬化時間
測定方法に準じた。すなわち、硬化性材料を1分間練和
したもの(ペースト)を直径10mm、高さ2mmのリ
ングに満たし、練和開始から2分後に室温37℃、相対
湿度95%以上の環境下で荷重100g、直径2mmの
ギルモア針を用いて測定し圧痕がつかなくなるまでの時
間を硬化時間とした。測定は2時間までとし、2時間を
越えるものは「硬化せず」という表現で示した。 (4) ペースト近傍のpH コンパクト・ピーエイチ・メーター(COMPACT
pH METER)(商品名「CARDY」、堀場製作
所製)を用いて測定した。まず初めに、コンパクト・ピ
ーエイチ・メーターのセンサーの上に吸水紙を載せ、蒸
留水を2〜3滴注いで紙を湿らせた。次に、湿らせた吸
水紙の上に、硬化性材料を1分間練和したもの(ペース
ト)を流し込み、練和開始から3分後、5分後、10分
後、15分後、20分後にそれぞれ常温下で測定したp
H値を、ペースト近傍のpHとした。 (5) 練和操作性 ペーストが、練和中に練和用ヘラに付着する材料は、
「操作性良好」とし、その他は、触感によって判定し
た。 (6) 生体との一体化 SDラットの下顎第一臼歯の歯根管部へペーストを直接
覆髄剤として充填して飼育後、屠殺して通法に従って切
片を作製し、根管部歯髄での石灰化を指標として病理組
織学的に評価を行った。 〔粉成分の調製例1〕 リン酸水素カルシウム2水和物(CaHPO・2H
O、保栄薬工株式会社製、日本薬局方品)を1100℃
で焼成することにより得られたピロリン酸カルシウム
(Ca)と、沈降炭酸カルシウム(CaCO
、恵美須薬品化工株式会社製、日本薬局方品)を11
00℃で焼成することにより得られた酸化カルシウムと
を1:2のモル比にて混合した後、この混合物を140
0℃で焼成した。得られた焼成物をボールミルで粉砕
し、分級により粒子径32μm以下の粒子を回収した。
このように調製した粉末を粉末X線回折装置で同定確認
を行ったところ、JCPDSカード番号25−1137
のリン酸四カルシウムピークにすべて一致しており、純
粋なリン酸四カルシウムであることが確認された。
【0027】このリン酸四カルシウム(平均粒子径9.
2μm)と、粒子径32μm以下の粒子に分級されたリ
ン酸水素カルシウム(平均粒子径5.8μm:上記リン
酸水素カルシウム2水和物)を下記表2〜4に示すモル
比で混合し、粉成分(粉材試料)とした。 〔液成分の調製〕表1に示す成分を同表に示す濃度で含
む水溶液を調製し、以下の実施例および比較例で使用し
た。
【0028】
【表1】
【0029】 −実施例1〜9,12〜15および比較例1〜3− 表2〜4に示す粉成分と液成分を同表に示す粉液重量比
(粉成分重量/液成分重量)で組み合わせて硬化性材料
を得た。 −比較例4− 実施例1において、液成分として蒸留水を用いたこと以
外は実施例1と同様にして硬化性材料を得た。
【0030】−比較例5− 実施例1において、液成分として20mM−オルトリン
酸水溶液を用いたこと以外は実施例1と同様にして硬化
性材料を得た。 −比較例6− 実施例2において、液成分として下記組成のグリシン−
NaCl−HCl系緩衝溶液(pH1.42)を用いた
こと以外は実施例2と同様にして硬化性材料を得た。
【0031】 組成: 0.1M−グリシン+0.1M−NaCl…3.0ml 0.1N−HCl…7.0ml −比較例7− 実施例2において、液成分として下記組成の第二クエン
酸ナトリウム−HCl系緩衝溶液(pH4.89)を用
いたこと以外は実施例2と同様にして硬化性材料を得
た。
【0032】 組成: 0.1M−第二クエン酸ナトリウム…9.5ml 0.1N−HCl…0.5ml −比較例8− 実施例2において、液成分として下記組成のグリシン−
NaCl−NaOH系緩衝溶液(pH11.25)を用
いたこと以外は実施例2と同様にして硬化性材料を得
た。
【0033】 組成: 0.1M−グリシン+0.1M−NaCl…5.0ml 0.1N−NaOH…5.0ml −実施例10− 表3に示すモル比の粉成分と、2.5wt%のカルボキシ
メチルセルロースナトリウム(表中、「CMCNa」で
示す)を含有させた第二リン酸ナトリウム−クエン酸系
緩衝溶液(pH5.0)とを粉液重量比=1.4で組み
合わせて硬化性材料を得た。
【0034】−比較例9− 実施例10において、液成分として2.5wt%のカルボ
キシメチルセルロースナトリウムを含有させた蒸留水を
用いたこと、および、粉液重量比=1.0にしたこと以
外は実施例10と同様にして硬化性材料を得た。 −実施例11− 実施例10において、X線造影剤(化合物名…ヨードホ
ルム)を粉成分全体重量に対して30重量%の割合で用
いたこと以外は実施例10と同様にして硬化性材料を得
た。
【0035】−比較例10− 粉成分として水酸化カルシウムを、液成分として生理的
食塩水を用いた硬化性材料を得た。 −実施例16〜30および比較例11〜20− 実施例1〜15および比較例1〜10の各硬化性材料を
練和して、練和操作性、硬化時間、ペースト近傍のpH
を上述のようにして調べた。結果を表2〜4に示した。
【0036】表中、リン酸水素Caはリン酸水素カルシ
ウム、第二リン酸Naは第二リン酸ナトリウム、第二リ
ン酸Kは第二リン酸カリウム、第二クエン酸Naは第二
クエン酸ナトリウムである。
【0037】
【表2】
【0038】
【表3】
【0039】
【表4】
【0040】表2〜4にみるように、実施例の硬化性材
料は、練和操作性が良好で、硬化時間が最短で7分間以
上で調節可能であり、ペースト近傍のpHが練和開始か
ら硬化の初期段階において弱塩基性域であった。図1に
は、実施例1および比較例4,5の硬化性材料のペース
トを温度37℃、相対湿度95%以上の雰囲気中に16
時間放置して得られた硬化物についての粉末X線回折装
置での同定結果を示した。
【0041】図2には、実施例1および比較例4,5の
硬化性材料の練和開始からの時間経過によるペースト近
傍のpHの変動を示した。図3には、実施例2,5およ
び比較例6〜8の硬化性材料の練和開始からの時間経過
によるペースト近傍のpHの変動を示した。第二リン酸
ナトリウム−クエン酸緩衝溶液(pH5.0)で練和し
た硬化性材料(実施例1)は、図2の曲線1にみるよう
に、練和開始20分後、ペースト近傍pHは弱塩基性
(pH8.5付近)で安定化した。また、この硬化性材
料は、図1の曲線11にみるように、練和開始16時間
後には粉成分が結晶性の悪いハイドロキシアパタイトに
転化していた。一方、液成分として蒸留水(比較例4:
図2の曲線2)または20mM−オルトリン酸水溶液
(比較例5:図2の曲線3)を用いた硬化性材料は、練
和開始20分後にペースト近傍pHは強塩基性(pH1
2.5付近)で安定化した。また、練和開始16時間後
の粉成分には変化がなかった(比較例4:図1の曲線1
2、比較例5:図1の曲線13)。なお、図1の曲線1
4は、実施例1で用いた粉成分の結果である。
【0042】第二リン酸ナトリウム−クエン酸緩衝溶液
(pH5.0からpH8.0まで調整)で練和した硬化
性材料(実施例2〜5)は、緩衝溶液のpHが5.0の
時には硬化時間が長く、緩衝溶液のpHが8.0の時に
は硬化時間が短くなり、溶液のpHが塩基性に傾くほど
硬化時間が短くなる傾向を示した。また、ペースト近傍
のpHは、いずれのpHの溶液の場合でも練和20分後
には弱塩基性(pH8.0〜9.0)で安定化した(図
3の曲線4:実施例2、曲線5:実施例5)。一方、液
成分としてグリシン−NaCl−HCl系緩衝溶液、グ
リシン−NaCl−NaOH系緩衝溶液、第二クエン酸
ナトリウム−HCl系緩衝溶液をそれぞれ用いた場合に
は、1時間以内で硬化はしたが、ペースト近傍のpHは
いずれの緩衝溶液でも20分後には強塩基性(pH1
2.5〜13.0)で安定化した(図3の曲線6:比較
例6、曲線7:比較例7、曲線8:比較例8)。
【0043】液成分として2.5wt%のカルボキシメチ
ルセルロースナトリウムを含有させた蒸留水を用いた場
合には、硬化性材料を練和中にママコとなり、操作感が
悪かった(比較例9)。次に、実施例2、10、11、
13、14および比較例10の硬化性材料について生体
硬組織との一体化を、実施例2、10、11、13、1
4および比較例4,5について粉末X線回折による硬化
物の同定を下記のようにして調べた。
【0044】生体との一体化は、硬化性材料(セメント
材料)をSDラットの歯根管部へ直接覆髄剤として充填
した時の歯髄反応を病理組織学的に評価するというやり
方で調べ、根尖病変の有無、石灰化の有無、(石灰化し
ている場合には、開始時期と歯根管部での場所も)を見
た。これらの結果を、現在歯科領域で覆髄剤として使用
されている。水酸化カルシウムを粉成分とする硬化性材
料(比較例10)と対比した。
【0045】すなわち、SDラット下顎第一臼歯の髄室
を♯1/2ラウンドバー(歯科用の回転式切削器械で電
気エンジン用切削工具の1種)で開拡し(臼歯に穴を開
けて歯髄腔まで貫通させ)、歯冠部歯髄を機械的に除去
した歯髄腔に材料を填入してグラスアイオノマーセメン
ト(金属性修復材の合着、裏装または前歯の充填材など
として用いられている歯科用セメントの1種)で封鎖し
た。また、滅菌綿球を填入し実験終了期間まで歯髄腔を
開拡したものをコントロール(Control)とした。飼育後
1,2,3,4,5週間後にラットを屠殺して、下顎骨
を取り出し、脱灰後、通法に従ってパラフィン包埋し、
約5μmの連続切片を作製してヘマトキシリン・エオジ
ン染色を施して病理組織学的に検索した。
【0046】粉末X線回折による硬化物の同定は、硬化
性材料を練和した後、温度37℃、相対湿度95%以上
の雰囲気中に16時間放置してから粉末X線回折装置に
かけ、粉末成分の変化の有無を見た。結果として、コン
トロールでは経時的に歯髄は壊死し、4週間後には根尖
病変が形成されていた。一方、実施例2、10、11、
13、14の硬化性材料では、いずれも、3週間後に根
管壁への硬組織の著しい添加が認められ、5週間後に根
管全体が硬組織で閉鎖されていた。また、この実施例の
系では実験期間中、歯髄組織の炎症や壊死は認められな
かった。次に、比較例10の水酸化カルシウムを生理的
食塩水で練和した硬化性材料では、2〜4週間後に根管
上部の歯冠部側で石灰化しており、デンティンブリッジ
(象牙質様構造を有する硬組織の学術名)を形成してい
た。ところが、3週間後以降のものには根管中部で充血
が見られた。また、粉末X線回折により、実施例でのい
ずれの硬化物も16時間後にはHApに転化していた。
ここで、水酸化カルシウムによって形成されるデンティ
ンブリッジは、いずれ必要となることが多い機械的根管
処置を困難にする構造であり、必ずしも望ましい歯髄反
応とは言えない。これに対し、この発明の化性材料で
は、上述のように根管全体が硬組織で閉鎖されていたの
で、生体と一体化するように生体を誘導する特性を利用
した接着または固着用の医科用セメント、歯科用覆髄用
セメント、歯科用根管充填用セメント等として有用であ
る。〔粉成分の調製例2〕 粉成分の調製例1において、平均粒子径15.8μmの
リン酸四カルシウムと平均粒子径5.9μmのリン酸水
素カルシウムを1:1のモル比で混合したこと以外は調
製例1と同様にして粉成分(この粉成分をTeDCPD
と言う)を作り、下記の実施例と比較例に用いた。
【0047】−実施例31〜35− TeDCPDと表5に示す緩衝溶液とを組み合わせてこ
の発明の硬化性材料を得た。
【0048】
【表5】
【0049】−比較例21〜27− TeDCPDと表6,7に示す液成分とを組み合わせて
練和用材料を得た。実施例31〜35および比較例21
〜27の材料を表6および7に示す粉液重量比(粉成分
重量/液成分重量)で練和して、練和操作性、硬化時
間、ペースト近傍のpH(練和開始から5分後と20分
後)を上述のようにして調べた。結果を表6,7に示し
た。練和操作性の結果のうち「非常に良好」とは練和時
に粘りが出たことを示す。
【0050】
【表6】
【0051】
【表7】
【0052】比較例21〜25と実施例31の材料のう
ち、粉液重量比が1.6である場合についてペースト近
傍のpH挙動を図4に示した。図4中、31は実施例3
1、21は比較例21、22は比較例22、23は比較
例23、24は比較例24、25は比較例25である。
表6,7と図4に示された結果から次のことがわかる。
【0053】実施例31〜35の硬化性材料は、練和中
に粘りを生じ、練和開始直後からずっとペースト近傍の
pHが弱塩基性域に保たれた状態で1時間以内に硬化し
た。練和中に粘りを生じると、練和がなめらかになって
練和操作がやりやすくなる。粘りが生じたペーストは延
びが良いため、均一な充填がより行いやすくなる。比較
例21の材料は、蒸留水で練和したため、粉液重量比の
数値にかかわらず練和操作性が悪くてペースト近傍のp
H値が強塩基性域になっていた。
【0054】比較例22の材料は、生理食塩水で練和し
たため、練和操作性が悪くてペースト近傍のpH値が練
和開始時から硬化終了後まで強塩基性域になっていた。
比較例23の材料は、オルトリン酸水溶液で練和したた
め、粉液重量比1.0の時は硬化せず、粉液重量比1.
6では硬化したが、そのペースト近傍のpH値が練和開
始時から硬化終了後まで強塩基性域になっていた。比較
例23の材料で粉液比=1.0の場合は、比較例5と同
じなのでほぼ同じ結果を示すはずであるが、ペースト近
傍のpH値が大きく異なっている。これは、平均粒子径
の異なる粉成分を用いたためであると考えられる。
【0055】比較例21〜23のように、近傍のpHが
強塩基性を示すペーストを出血患部へ充填すると、溶血
や充血を引き起こし、ペーストの硬化が阻害される。し
かも、止血作用がないため、出血と共にペーストが患部
から流出して使用不可能となる。比較例24および25
の材料は、第二リン酸ナトリウム水溶液で練和したた
め、実施例31〜35と比べると、練和操作のなめらか
さが劣っており、ペースト近傍のpH値が初期の段階で
塩基性が少し強くなっていた。
【0056】比較例26および27の材料は、クエン酸
水溶液の濃度が希薄なため凝結硬化もキレート硬化も起
こさず、全く硬化しなかった。実施例31,32および
比較例21,23〜27の材料を粉液重量比1.0で練
和して、練和開始からの時間経過(3分後、5分後、1
0分後、15分後、20分後、25分後、30分後、4
0分後、50分後および60分後)によるペースト近傍
のpH変動を調べ、結果をそれぞれ図5〜12に示し
た。各図には、調製例2に用いたリン酸四カルシウム粉
末およびリン酸水素カルシウム粉末をそれぞれTeDC
PDの練和に用いたのと同じ液成分で練和したときのペ
ースト近傍のpH変動を同様に調べて示した。これらの
図中、曲線TeCPがリン酸四カルシウム粉末を練和し
た場合のpH変動、曲線DCPDがリン酸水素カルシウ
ム粉末を練和した場合のpH変動である。
【0057】リン酸水素カルシウムは蒸留水中でI式:
【0058】
【化1】
【0059】のように溶解して平衡に達する(図7参
照)。この平衡液はリン酸水素カルシウムの飽和水溶液
であってpH8.8と計算される。リン酸水素カルシウ
ムはこの平衡液中でII式のような水和反応:
【0060】
【化2】
【0061】を起こしてハイドロキシアパタイトへ転化
する。この平衡液はハイドロキシアパタイトに対して過
飽和であるため、生成したハイドロキシアパタイトが析
出する。II式で表される転化反応が進行するとハイドロ
キシアパタイトの析出とともに液のpH値が急激に降下
し、リン酸水素カルシウムとハイドロキシアパタイトと
の溶解度曲線の交差点付近(pH4.5付近)で平衡に
なる。このpH値で溶液が平衡になってしまうと、ハイ
ドロキシアパタイトはほとんど析出しなくなる。ハイド
ロキシアパタイトの析出を続けるためには、溶液のpH
を弱塩基性域(たとえば、pH7.5〜10)に保持す
る必要がある。
【0062】リン酸四カルシウムは蒸留水中で III式:
【0063】
【化3】
【0064】のように溶解して平衡に達する(図7参
照)。この平衡液はリン酸四カルシウムの飽和水溶液で
あって強塩基性(pH12以上)を示し、ハイドロキシ
アパタイトに対して過飽和である。リン酸四カルシウム
がこの平衡液中でIV式のような反応:
【0065】
【化4】
【0066】を起こしてハイドロキシアパタイトへ転化
し、生成したハイドロキシアパタイトが析出する。IVで
表される反応が進行すると水酸化カルシウムが生成する
ため液のpH値が上昇する。リン酸カルシウム類は、一
般に酸性溶液に溶解しやすく、塩基性溶液に溶解しにく
いため、液のpH値が上昇すると反応速度が低下し凝結
硬化は期待できない。
【0067】ハイドロキシアパタイトは蒸留水中でVお
よびVI式のような反応:
【0068】
【化5】
【0069】により溶解して平衡に達する。これらの反
応によると、リン酸四カルシウムのハイドロキシアパタ
イトへの転化の際に生じる水酸化カルシウムも第二リン
酸根が存在すれば、Ca2(HPO4)(OH)2を経由してハイドロ
キシアパタイトを生成することが可能である。図5およ
び6にみるように、Na2 HPO4 −クエン酸系緩衝溶
液で練和した場合のペースト近傍のpH値は、リン酸四
カルシウム粉末のペーストではpH6.5付近から漸増
しており、リン酸水素カルシウム粉末のペーストではp
H5.5付近で安定していたが、TeDCPDのペース
ト(実施例31および32)では練和開始時からずっ
と、曲線TeCPとDCPDの間にはなく、これらの曲
線から大きく外れており、変動が小さく、弱塩基性(p
H=8.5程度)で安定していた。
【0070】これに対し、Na2 HPO4 −クエン酸系
緩衝溶液以外の液成分で練和した場合は以下のような問
題があった。図7にみるように、蒸留水で練和した場合
のペースト近傍のpH値は、リン酸四カルシウム粉末の
ペーストではpH12.3付近で、リン酸水素カルシウ
ム粉末のペーストではpH7.8付近でそれぞれ安定し
ており、TeDCPDのペースト(比較例21)では練
和開始時からずっと、曲線TeCPとほぼ同じ挙動を示
した。
【0071】図8にみるように、20mM−H3 PO4
水溶液で練和した場合のペースト近傍のpH値は、リン
酸四カルシウム粉末のペーストではpH8付近で安定し
ており、リン酸水素カルシウム粉末のペーストではpH
5.5前後でわずかに変動しており、TeDCPDのペ
ースト(比較例23)では練和開始時からずっと、pH
8.3付近で安定していた。
【0072】図9にみるように、0.2M−Na2 HP
4 水溶液で練和した場合のペースト近傍のpH値は、
リン酸四カルシウム粉末のペーストではpH9.4付近
から増加しており、リン酸水素カルシウム粉末のペース
トではpH8.6付近で安定しており、TeDCPDの
ペースト(比較例24)では、初めのうちは曲線TeC
PやDCPDの間にあり、その後、曲線DCPDと同じ
挙動を示した。図10にみるように、0.4M−Na2
HPO4 水溶液で練和した場合のペースト近傍のpH値
は、リン酸四カルシウム粉末のペーストではpH9.2
付近から増加しており、リン酸水素カルシウム粉末のペ
ーストではpH8.7付近で安定しており、TeDCP
Dのペースト(比較例25)では、曲線TeCPやDC
PDとは異なる挙動を示し、初めのうちはpH9.5付
近で一時安定した後、低下し、pH9付近で安定した。
【0073】図11にみるように、0.1M−クエン酸
水溶液で練和した場合のペースト近傍のpH値は、リン
酸四カルシウム粉末のペーストではpH5.5付近から
漸増しており、リン酸水素カルシウム粉末のペーストで
はpH4前後でわずかに変動しており、TeDCPDの
ペースト(比較例26)では練和開始時からずっと、曲
線TeCPとほぼ同じ挙動を示した。
【0074】図12にみるように、0.2M−クエン酸
水溶液で練和した場合のペースト近傍のpH値は、リン
酸四カルシウム粉末のペーストではpH5付近から漸増
しており、リン酸水素カルシウム粉末のペーストではp
H3.4付近から漸増しており、TeDCPDのペース
ト(比較例27)では練和開始時からずっと、曲線Te
CPと同じ挙動を示した。
【0075】図4と、図7〜12とでは、TeDCPD
のペースト近傍のpH値の変動が異なっているが、これ
は、粉液重量比が異なっているためである。以上の結果
から、練和液が弱酸性溶液だとTeDCPDのうちまず
リン酸四カルシウムが溶解することが予想される。リン
酸四カルシウムを第二リン酸ナトリウム−クエン酸系緩
衝溶液で練和した場合、図5,6にみるように、練和開
始時から1時間後のペースト近傍のpHが7付近であ
り、リン酸水素カルシウムを同じ緩衝溶液で練和した場
合、練和開始時から1時間後のペースト近傍のpHが
5.5付近であったことを考慮すると、リン酸四カルシ
ウムの溶解(III式) が速くなったか、または、リン酸四
カルシウムとリン酸水素カルシウムの溶解(III式とI
式)が速くなったと考えられる。
【0076】溶液の最初からの溶質である第二リン酸ナ
トリウムとクエン酸、および、リン酸四カルシウムとリ
ン酸水素カルシウムからの溶出物によって、I式とIII
式で表される溶解が非常に短時間のうちに進むため、練
和直後に平衡に達する。この平衡に達したときに溶液の
pH値が8.5付近であると、上記II式で表される反応
が進む。II式の反応は、pHが8.5付近の間はリン酸
水素カルシウムがすべてハイドロキシアパタイトになる
まで進行する。この反応で生じたH3 PO4 は、練和液
中の第二リン酸ナトリウムとクエン酸と溶液平衡にな
る。さらにpH値が8.5付近であると、IV式の反応も
進み、リン酸四カルシウムがハイドロキシアパタイトに
転化する。このとき副生したCa(OH)2は、リン酸水
素カルシウムから生じたH3 PO4 、練和液の第二リン
酸ナトリウムおよびクエン酸と溶液平衡になり、 VII式
および VIII 式で表される反応:
【0077】
【化6】
【0078】が進む。従来の技術の項で挙げた米国特許
第4518430号に記載されている硬化性材料は、リ
ン酸水素カルシウムとリン酸四カルシウムをたとえば希
薄オルトリン酸水溶液で練和することにより、リン酸水
素カルシウムおよびリン酸四カルシウムが水和反応を起
こしてハイドロキシアパタイトに転化して凝結硬化する
ものである。この水和反応は、リン酸水素カルシウムと
リン酸四カルシウムの溶解度曲線が交差するpH7.5
付近で起こっている。リン酸カルシウム化合物の水和反
応では、粉末の平均粒子径、練和液の濃度、粉液重量比
のような条件が少し違うとペースト近傍のpHが大きく
変動する。このため、リン酸水素カルシウムとリン酸四
カルシウムの水和反応の際にペースト近傍のpHを7.
5付近に保つことは困難であり、保つことができるとし
ても前記条件が非常に限られる。図4と図8の比較例2
3の結果にみられるように、同じ濃度のリン酸水溶液で
も粉液重量比が違うと、ペースト近傍のpHが大きく違
っていた。
【0079】第二リン酸ナトリウム−クエン酸系緩衝溶
液では、図4と図5の実施例31や図6の実施例32の
結果に見られるように、粉液重量比や緩衝溶液の溶質濃
度が違っていても、ペースト近傍のpHは何ら影響を受
けずに、同じように安定するのである。表7にみるよう
に、TeDCPDは、第二リン酸ナトリウム水溶液で練
和した場合には6,8分で硬化しており、クエン酸水溶
液で練和した場合には硬化していない。この結果から、
TeDCPDを第二リン酸ナトリウム−クエン酸系緩衝
溶液で練和して硬化させる場合に硬化反応に必要なのは
第二リン酸根であることがわかる。練和溶液のpH調整
さらには溶質の濃度調整により、硬化時間の調節が可能
である。このことは、第二リン酸根および有機酸根の濃
度を上昇させることにより硬化が速くなったことでも実
証された。
【0080】練和溶液が有機酸根を含有していることに
より、若干ではあるが、カルシウムと有機酸根とのキレ
ート反応が起こり、練和時に粘りが生まれてくる。 −実施例36〜40− 調製例2で得られた粉成分と表8に示す液成分とを組み
合わせてこの発明の硬化性材料を得た。
【0081】−比較例28,29− 調製例2で得られた粉成分と表8に示す液成分とを組み
合わせて練和用材料を得た。実施例36〜40および比
較例28,29の材料を表8に示す粉液重量比(粉成分
重量/液成分重量)で練和して、練和操作性、硬化時
間、ペースト近傍のpH(練和開始から5分後と20分
後)を上述のようにして調べ、レンツロ付着性を下記の
ようにして調べた。結果を表8に示した。 〔レンツロ付着性〕ペーストが歯科用根管充填材料の充
填用器具(レンツロ)に均一に付着する材料を付着性良
好とした。
【0082】
【表8】
【0083】第二リン酸根と有機酸根とを含む溶液でT
eDCPDを練和すると若干の粘りを生じるが、表8に
みるように、カルボキシメチルセルロースナトリウムや
ポリグルタミン酸ナトリウムを含むNa2 HPO4 −ク
エン酸系またはNa2 HPO 4 −リンゴ酸系の緩衝溶液
は、曳糸性を引き出す溶液として非常に優れていた。蒸
留水、20mM−H3 PO4 水溶液へのカルボキシメチ
ルセルロースナトリウムの添加は、操作性をより悪化さ
せる上、硬化性の消失にまで至った。
【0084】カルボキシメチルセルロースナトリウムや
ポリグルタミン酸ナトリウムのような増粘剤を使用して
液の粘度を高める場合、粘性はpHの影響を強く受ける
ことが知られている。そのような増粘剤は中性域付近で
増粘効果が顕著であるので、同増粘剤を強い塩基性を示
すペーストに用いても効果がない。これに対し、練和す
ると瞬時にペースト近傍のpHが弱塩基性で安定化する
硬化性材料の液成分である第二リン酸根−有機酸根系緩
衝溶液に上記増粘剤を添加することは増粘効果さらには
ペーストに曳糸性を持たせるために有用である。
【0085】
【発明の効果】この発明の硬化性材料は、練和操作性に
優れ、ペーストの均一な充填性に優れ、適度な硬化時間
に調節可能であり、生体に充填した直後の充填部近傍の
pHが弱塩基性域であり、生物学的に生体と一体化しう
るものである。硬化性材料が増粘剤をも有すると、材料
の練和操作性がさらに向上するという利点がある。
【0086】硬化性材料がX線造影剤をも有すると、
への転化をX線撮影により追跡することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1および比較例4,5の硬化性材料の硬
化物についてのX線回折装置によるチャートを表す。
【図2】実施例1および比較例4,5の硬化性材料の練
和開始からの時間経過によるペースト近傍のpHの変動
を示す。
【図3】実施例2,5および比較例6〜8の硬化性材料
の練和開始からの時間経過によるペースト近傍のpHの
変動を示す。
【図4】液成分の種類を変えた場合(実施例31および
比較例21〜25の材料)の練和開始からの時間経過に
よるペースト近傍のpHの変動を示す。
【図5】実施例31の材料と、この材料において粉成分
の種類を変えた場合の練和開始からの時間経過によるペ
ースト近傍のpHの変動を示す。
【図6】実施例32の材料と、この材料において粉成分
の種類を変えた場合の練和開始からの時間経過によるペ
ースト近傍のpHの変動を示す。
【図7】比較例21の材料と、この材料において粉成分
の種類を変えた場合の練和開始からの時間経過によるペ
ースト近傍のpHの変動を示す。
【図8】比較例23の材料と、この材料において粉成分
の種類を変えた場合の練和開始からの時間経過によるペ
ースト近傍のpHの変動を示す。
【図9】比較例24の材料と、この材料において粉成分
の種類を変えた場合の練和開始からの時間経過によるペ
ースト近傍のpHの変動を示す。
【図10】比較例25の材料と、この材料において粉成
分の種類を変えた場合の練和開始からの時間経過による
ペースト近傍のpHの変動を示す。
【図11】比較例26の材料と、この材料において粉成
分の種類を変えた場合の練和開始からの時間経過による
ペースト近傍のpHの変動を示す。
【図12】比較例27の材料と、この材料において粉成
分の種類を変えた場合の練和開始からの時間経過による
ペースト近傍のpHの変動を示す。
【符号の説明】
1 実施例1のデータ 4 実施例2のデータ 5 実施例5のデータ 11 実施例1のデータ 31 実施例31のデータ TeDCPD TeDCPDのデータ

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少なくともリン酸四カルシウムおよびリ
    ン酸水素カルシウムからなる粉成分と、第二リン酸根お
    よび有機酸根を含む液成分との組み合わせからなる医科
    用および歯科用硬化性材料。
  2. 【請求項2】 液成分が、第二リン酸ナトリウムおよび
    第二リン酸カリウムのうちの少なくとも1種と、クエン
    酸およびリンゴ酸のうちの少なくとも1種とを含む緩衝
    溶液である請求項1記載の化性材料。
  3. 【請求項3】 増粘剤を含む請求項1または2記載の
    化性材料。
  4. 【請求項4】 増粘剤が、カルボキシメチルセルロース
    ナトリウム、ポリグルタミン酸、ポリグルタミン酸塩お
    よびヒドロキシプロピルセルロースから選ばれる少なく
    とも1種である請求項3記載の化性材料。
  5. 【請求項5】 X線造影剤を含む請求項1から4までの
    いずれかに記載の化性材料。
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