JP2768849B2 - 非磁性鋼円筒鍛造品の結晶粒微細化方法 - Google Patents

非磁性鋼円筒鍛造品の結晶粒微細化方法

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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、非磁性鋼円筒鍛造品の
結晶粒微細化方法に関し、例えば、発電機用保持リング
の製造に利用される。
【0002】
【従来の技術】室温でオーステナイト組織を示す鋼は、
溶鋼から凝固した状態から室温に至るまでに変態点がな
いため結晶粒の微細化は熱間鍛造による動的ひずみ再結
晶に頼らざるを得ない。ここで、微細な結晶粒は構造材
として使用される場合、内部欠陥を探傷する超音波の透
過性を良好にするため非常に重要である。
【0003】一方、オーステナイト鋼として高MnCr
系鋼を使用する場合、当該鋼はNiCr系鋼に比べて熱
間加工性に劣る。すなわち、表面割れが発生しやすくそ
のため大きなひずみを与えることができず、結晶粒の充
分な微細化がなされない。特に、円柱状鋼塊から円筒鍛
造品をうる場合、前記割れの発生を抑制することが重要
である。
【0004】ところで、従来においては、図3〜図5に
示す手順で非磁性鋼円筒鍛造品の結晶粒の微細化がなさ
れていた。図3において、高さH0 の円柱状鋼塊1 はこ
の柱長方向に高さHの如く圧縮鍛造され、該偏平鍛造品
2 は肉厚Tをもってその中心にポンチング作業等によっ
て中心孔3Aを形成した後、当該孔付鍛造品3 を図4およ
び図5に示したマンドレル鍛造加工を行なうことで結晶
粒を微細化した円筒鍛造品4 を得ている。
【0005】ここで、圧縮量は結晶粒微細化のための鍛
造比を得るため予め伸ばし代をもたせたものであり、通
常、Hf/H≧2.00 を経験上の基準としている。マン
ドレル鍛造による鍛伸作業は、図4および図5に示す如
く中心孔3Aにマンドレル5 を挿入し、素材 (孔付鍛造
品) 3 の外周面にV字溝6Aを有する上下一対の金型6 を
圧下させることにより、円周方向および半径方向を拘束
することによって軸方向に鍛伸することで結晶粒の微細
化した肉厚Tfの円筒鍛造品8 を製作していた。なお、
金型6 については少なくとも一方にV字溝6Aを有するも
のを採用し、他方は所謂平金敷を用いてもよい。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】前述した従来技術にあ
っては、マンドレル5が素材3 の内周面全長にわたって
接触しているため、軸方向の材料の流れ (変形) は拘束
されたものとなる。更に、円周方向の変形を拘束した状
態で半径方向に圧下力を付与して端面3Bを絞り出すよう
に変形させようとするため素材の変形は容易ではない。
【0007】すなわち、最も温度が下りやすい端面3Bに
引張応力が加わり、材料が伸びにくいため素材円周方向
には曲げの交番ひずみが繰返され、端面3Bに割れ7 が発
生するという課題がある。このため、加熱回数を増加す
るとサイクルタイムが長くなるし、肝心な結晶粒の微細
化が行ない難くなっていた。また、図5に示す如く工具
(金型)6 およびマンドレル5 による加工部にそれら工
具5,6 の接触部があるため、デッドメタル9,9Aが大きく
結晶粒の微細化ができないという課題があった。
【0008】本発明は、叙述の課題に鑑み、マンドレル
鍛伸法に代替してリング鍛造加工を行なうとともに、そ
の後に、金型 (工具) による加工を行なうことによる2
工程の鍛伸作業とすることで、割れ、デッドメタルをな
くし、延いては、結晶粒の微細化が保障できるようにし
たことを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、円柱状鋼塊10
を柱長方向に圧縮鍛造するとともに柱長方向に貫通した
孔明け加工を施した後、当該非磁性鋼円筒素材12を鍛伸
加工することで結晶粒を微細化する方法において、前述
の目的を達成するために次の技術的手段を講じている。
【0010】すなわち、本発明は、前記鍛伸加工が、円
筒素材12の円周方向および軸方向を拘束しないで該円筒
素材12を仕上げ径より25〜35%大きい径のリング14にす
るリング鍛造工程と、該リング鍛造後に該リング14を円
周方向に回転しつつその外周面を円周方向に鍛伸する工
程よりなることを特徴とするものである。
【0011】
【作用】リング鍛造工程において、円筒素材12は円周方
向および軸方向を拘束しないので端面の割れ発生を抑制
し、デッドメタルをできる限り少なくする。従って、充
分なひずみ量を確保し、結晶粒の均一な微細化ができ、
材料歩留を向上する。
【0012】リング鍛造工程後の鍛伸工程において工具
による外径仕上げがなされ、このときのデッドメタルも
少なくする。
【0013】
【実施例】以下、図を参照して本発明の実施例を説明す
る。図1において、10は円柱状鋼塊であり、具体的には
発電機用保持リングとして使用される18%Mn−18%
Cr鋼(ASTM A289Cl、C鋼)である。この
鋼塊10は熱伝導性が悪く、凝固時柱状晶が発達し異方性
が大きく、線膨張係数下で 900℃〜550 ℃で粒界析出物
が生成するため極めて熱間鍛造性が悪いものである。
【0014】本発明では高さH0 の前述鋼塊10を柱長方
向に高さHとなるように圧縮鍛造し偏平鍛造素材11とし
た後、該素材11をポンチング等によって中心孔12A を有
する肉厚Tの円筒素材12に鍛造し、その後、当該円筒素
材12を鍛伸加工するのに、リング鍛造工程後に仕上げ鍛
伸工程を経由する。リング鍛造工程は、図1に示す如く
中心孔12A より充分に小径のマンドレル13を円筒素材12
に串差し状に挿通し、円筒素材12の外周面に平金型 (工
具) を圧下させ目標とする製品の外径に対して25〜35%
大きな径にリング14にリング圧延する。なお、13A は受
台を示している。
【0015】このリング圧延において、円筒素材12は円
周方向および軸方向に拘束しない状態でリング圧延さ
れ、従って、割れの要因はない。このリング圧延段階に
おけるリング14の長さ (高さ) HmはHm/ H比で1.3
〜1.4 となる。また、この圧延においては、変形域とデ
ッドメタル域とは一致するも前述した通り、割れは発生
しない。
【0016】ここで、製品外径に対して25〜35%大きな
径にリング圧延するのは、次の理由による。すなわち、
結晶粒の微細化のためにはひずみ量は25%必要であり、
ひずみ量は微細化のみを図るには多ければ多い程よい。
しかし、35%以上に拡大するとリング14の肉厚が薄くな
り、次の工程での円周方向に圧縮を加えても据込まれる
ことなく座屈する。故に25%〜35%とされている。
【0017】次に、リング14はV字溝16A を有する金型
(工具)16 の一対を用いてリング14を回転させながら外
周面を円周方向に圧下し、図2に示す如く側面部14A に
円周方向圧縮ひずみ (掘込み) を付与して所定の外径に
し、その長さを少なくともHf/H比で1.50以上に鍛伸
する。なお、この場合、工具16は少なくとも一方がV字
溝16A を有するものであっても構わない。
【0018】また、素材の長さが短い場合には、図2に
示す如くマンドレル17を串差しして回転のための助力と
してもよい。但し、マンドレル17の径は充分に小さく
し、上下の工具16による圧下力がマンドレル17に及ばな
いようにする。次に、非磁性鋼円筒鍛造品 (製品) の外
径820mmφ、内径 500mmφ、長さ 850mmφのものを従来
法と本発明法で製造し、両者を比較した。
【0019】
【表1】 上記表1は、超音波探傷試験で確認したデータである。
【0020】ここで、超音波の透過性 (減衰定数α db/
cm) は結晶粒が微細である程小さい値となり良いことを
示し、ノイズレベルは未再結晶の粗大結晶粒の残留を示
し、この値が小さい程均一であることを示す。また、結
晶粒度 (ASTM E112)はその値が大きい程細粒で良
いことを示す。
【0021】
【発明の効果】本発明は以上の通りであり、鍛伸加工に
際してリング鍛造を先行して行ない、円筒素材の円周方
向及び軸方向を拘束しないので、該素材の端面において
割れ発生が抑制され、これにより、充分なひずみ(変
形)が付与できて結晶粒の均一な微細化を図れるととも
に材料歩留りが向上する。
【0022】すなわち、従来技術では変形させる部位に
工具面との接触摩擦によるデッドメタルのため加工再結
晶(微細化)しにくいのに対し、本発明では、変形され
る部位(内周面)には工具(マンドレル)との接触がな
く、デッドメタルは発生せず、また、軸方向に絞り出す
力は作用せず引張応力が発生しないことから素材の端面
に割れが発生しない。
【0023】また、本発明によれば、結晶粒の微細化の
ために必要な限界ひずみ量が従来技術の如く工具(マン
ドレル)との接触がないことから、150 %〜200 %にで
き、これにより、鍛造時間の短縮化、エネルギ消費の削
減ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明実施例の工程図である。
【図2】本発明の最終鍛造工程の正面図である。
【図3】従来例の工程図である。
【図4】従来例の鍛造工程の斜視図である。
【図5】図4の正面図である。
【符号の説明】
10 円柱状鋼塊 12 孔付円筒素材 14 リング 15 工具 16 工具
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平2−200342(JP,A) 特開 平3−243240(JP,A) 特開 昭52−131967(JP,A) 特開 昭64−62241(JP,A) 特開 平2−179338(JP,A) 特開 昭61−286033(JP,A) 特公 平3−8858(JP,B2) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) B21J 5/06

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 円柱状鋼塊(10)を柱長方向に圧縮鍛造す
    るとともに柱長方向に貫通した孔明け加工を施した後、
    当該非磁性鋼円筒素材(12)を鍛伸加工することで結晶粒
    を微細化する方法において、前記鍛伸加工が、円筒素材
    (12)の円周方向および軸方向を拘束しないで該円筒素材
    (12)を仕上げ径より25〜35%大きい径のリング(14)にす
    るリング鍛造工程と、該リング鍛造後に該リング(14)を
    円周方向に回転しつつその外周面を円周方向に鍛伸する
    工程よりなることを特徴とする非磁性鋼円筒鍛造品の結
    晶粒微細化方法。
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