JP3618587B2 - 特殊鋼からの冷間転造リングの製造方法およびその方法により製造の特殊鋼冷間転造リング - Google Patents

特殊鋼からの冷間転造リングの製造方法およびその方法により製造の特殊鋼冷間転造リング Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
難加工性の特殊鋼素材の冷間転造技術によるリング状製品の製造に関する。
【0002】
【従来の技術】
ベアリングレースなどのリング状製品は、従来は熱間圧延鋼管を焼鈍したものを切断してリング素材とし、これを旋削することにより製造するか、あるいは鍛造によりリング素材に形成した後、さらにこのリング素材を旋削によりリング状製品に仕上げている。しかし、省コストが強く求められている昨今では、上記の工程をさらに短縮するものとして材料歩留がよく生産効率の良好な冷間転造(以下、「CRF」という。)によりニアネットシェイプ化することが行われている。ところで、このニアネットシェイプ化を目的として、球状化焼鈍後の硬さが90HRBを超える特殊鋼を素材としたブランクをCRFする場合、加工硬化により脆化するので製品にクラックが発生する。このためCRFによりリング状製品とすることは不可能で、ニアネットシェイプ化することは出来なかった。
【0003】
そこで、従来は上記のとおり熱延鋼管を切断して旋削するか、またはリング状に鍛造してから旋削して仕上ていた。ところでリング状製品においてベアリングレースは特に軌道溝の旋削代が多いため、歩留が悪く、生産性が悪い問題があった。さらに、ベアリングレースの製造方法としてクラックを発生させずにCRFする方法として、リング素材に予め軌道部の類似形状を切削加工してからCRFを行う方法が特開平3−90238号公報に開示されているが、この方法は素材を切削加工するので歩留の悪い問題は依然としてあった。
【0004】
さらにマンドレル径や平均圧下量を適正な値にしてCRFを行う方法が特開平5−69075号公報に開示されている。しかし、難加工性の特殊鋼の場合では割れが発生するため、この方法を難加工性の特殊鋼からなるブランクの加工に応用することはできなかった。さらに寸法精度の良好な脱炭層を0.05〜0.15mmとしたリング素材を使用してCRFを行い仕上げは研磨のみで良いとする方法が特開平3−285041号公報に開示されているが、球状化焼鈍後の硬さが90HRB以上になる特殊鋼、例えばSUJでSi≧0.50%の鋼、はCRF時に割れが発生することが判明し、このような特殊鋼への応用はできない。
【0005】
一方、出願人はCRFにより球状化焼鈍後の硬さが90HRB以下の軸受用鋼をリング素材としてリング状製品を製造している。この軸受用鋼からの製造では、熱間圧延した鋼管を焼鈍して素材リングを得ているが、その寸法精度は外径で≦±0.35〜0.50mmで、脱炭深さは≦0.25mmである。このためにこの鋼による上記の製造方法では、素材リングの寸法精度が悪い上に、脱炭層が厚いため、CRF後の研磨だけではCRFで発生した微細割れや≦0.15mmの脱炭層は取りきれない。そこで、CRF後の仕上として片側0.5mm以上の旋削をした上で0.06〜0.15mmの研磨を行っている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
難加工性の特殊鋼をCRFする時に発生するリング製品の溝部・溝肩部等の割れを防止し、歩留の高い、高品質なCRFリング状製品を製造する方法およびリング状製品の溝部・溝肩部等に割れが無く、かつ高品質なCRFリング状製品を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するための本発明の手段は、請求項1の発明では、球状化焼鈍後の硬さが90HRBを超える特殊鋼、例えばSi:0.50%以上を含有するSUJ鋼、からなる素材リングの表面層を深さ0.40mm以上脱炭した後に冷間転造することを特徴とする特殊鋼冷間転造リングの製造方法である。
【0008】
請求項2の発明では、請求項1における手段により製造の球状化焼鈍後の硬さが90HRBを超える特殊鋼の素材リングから冷間転造してなることを特徴とする微細クラックおよび割れの無い特殊鋼冷間転造リングである。
【0009】
発明者らは割れ発生原因について考究したところ、割れ発生原因はCRF中に加工硬化によって靭性が失われ、結果として図1に示すようにブランク1を成形ロール1とマンドレル3を矢印の方向に回転してCRFするとき、マンドレル3と素材リングであるブランク1との間の接触面に水平方向の引張り応力が発生することにより割れが発生するものであることが判明した。
【0010】
一方、図2に示すように表面脱炭材は通常材に比べて変形抵抗が小さい。そのためマンドレル3とブランク1の接触面に発生する水平方向の応力が図3に見られるように軽減される。従ってブランク1である素材リングを表面脱炭させることによって割れ発生を押さえることが出来る。
【0011】
【発明の実施の形態】
重量%で、Si:1.0%を含有する難加工性軸受用鋼をアッセルミルで熱間圧延し、外径φ89.2mm、肉厚6.3mmの鋼管を製造した。これを球状化焼鈍を実施し、雰囲気調整で鋼管表面に脱炭層を0.45mmの深さで生成させた。この素材寸法の精度は、≦±0.35〜0.50mmであった。この場合の内部硬さは98.8HRBであった。この得られた鋼管を突切切断機で幅13.8mmに切断し、環状素材にして素材リングとした。この素材リングであるブランク1を図1に示すように成形ロール2とマンドレル3の間に挟持して、矢印方向に回転してCRFにより外径φ116mm、内径φ106.7mm、軌道径108.5mm、幅14.0mmに成形した。内部硬さは32.7HRCに達したが、割れの発生無しに成形できた。CRF後の寸法精度は良好で、その脱炭層の深さは≧0.20mmであった。得られたベアリングレース材を旋削、研磨することにより、高品質のベアリングレースが高歩留りで製造することができた。
【0012】
【発明の効果】
以上説明したとおり、本発明により高寿命な難加工性特殊鋼を素材としたニアネットシェイプのベアリングレース用素材を冷間転造するとき、歩留の良い、旋削コストの低減した高品質な冷間転造リングが供給することができ、低コストでベアリングレースなどのリングが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】素材リングの冷間転造を模式的に示す図である。
【図2】通常材と表面脱炭材との変形抵抗の比較を示すグラフである。
【図3】マンドレルとブランク間の水平方向にかかる横領区と肉厚圧下率との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 ブランク
2 マンドレル
3 成形ロール

Claims (2)

  1. 球状化焼鈍後の硬さが90HRBを超える特殊鋼からなる素材リングの表面層を深さ0.40mm以上脱炭した後に冷間転造することを特徴とする特殊鋼冷間転造リングの製造方法。
  2. 請求項1記載の方法により製造の球状化焼鈍後の硬さが90HRBを超える特殊鋼素材リングから冷間転造してなることを特徴とする微細クラックおよび割れの無い特殊鋼冷間転造リング。
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