JP2003194072A - 転動装置 - Google Patents

転動装置

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JP2003194072A
JP2003194072A JP2001395202A JP2001395202A JP2003194072A JP 2003194072 A JP2003194072 A JP 2003194072A JP 2001395202 A JP2001395202 A JP 2001395202A JP 2001395202 A JP2001395202 A JP 2001395202A JP 2003194072 A JP2003194072 A JP 2003194072A
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mass
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rolling
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Keizo Hori
惠造 堀
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 内方部材及び外方部材の作製に要する時間,
手間,及びコストが少ない転動装置を提供する。 【解決手段】 円すいころ軸受の内輪1及び外輪2を、
SUJ2製のビレット32を熱間鍛造して粗形リング3
3を作製した後、復炭焼鈍し及び冷間鍛造を施してニア
ネットシェイプ形状の被削リング34を作製することに
より製造した。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車,農業機
械,建設機械等、様々な分野において使用される転動装
置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、熱処理後に研削加工を行うことに
より製造される円すいころ軸受等の軌道輪(内輪及び外
輪)は、軸受鋼(JIS G 4805)が素材として
用いられる場合は、図1の(a)に示すような前工程を
経て製造される。すなわち、素材には球状化焼鈍し処理
済の丸棒鋼材を使用し(S0)、まず、その素材を切り
出し(S1)、温間鍛造にて据え込み,成形,打ち抜き
を行なって粗形リングを作製する(S2)。
【0003】その後に行う冷間鍛造(S3)は二工程に
分かれており、最初に粗形リングを図2の(a)に示す
ような形状に加工し、次に、後に内輪となる部分と外輪
となる部分とに分離する(ハッチングが施されている部
分が、後に内輪及び外輪となる部分である)。このよう
にして、冷間鍛造によって粗形リングから内輪及び外輪
の原形(被削リング)を成形する。なお、冷間鍛造を行
なう前に、粗形リングに潤滑剤となる金属石けんを塗布
する場合もある。また、被削リングにショットブラスト
を施して汚れやバリを除去する場合もある。
【0004】そして、この被削リングの全ての面に旋削
加工を施し、所望の寸法に加工する(S4)。一方、肌
焼き鋼が素材として用いられる場合は、図1の(b)に
示すような前工程を経て製造される。すなわち、軸受鋼
の場合と同様に丸棒鋼材(S10)を切り出し(S1
1)、前述の温間鍛造(S2)よりも加工温度が著しく
高い熱間鍛造にて粗形リングを作製する(S12)。
【0005】その後、金属組織を調整し且つ硬さを低下
させる目的で軟化焼鈍しを施す(S13)。そして、冷
間鍛造によって図2の(b)に示すようなニアネットシ
ェイプ形状(完成品の形状に限りなく近い形状)の被削
リングを成形し(S14)、軌道面が形成される面等に
旋削加工を施し、所望の寸法に加工する(S15)。な
お、図2の(b)においてハッチングが施されている部
分は、後に内輪及び外輪となる部分を示している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、軸受鋼
を用いた場合の軌道輪の旋削工程(上記S4)において
は、被削リングの全面に旋削加工を施さなければならな
いため、旋削加工だけで内輪,外輪それぞれに4〜5工
程を要し、旋盤で加工する際には被削リングを旋盤に何
度も装着し直す必要があるという問題があった。また、
肌焼き鋼を用いた場合は、熱間鍛造時や軟化焼鈍し時に
生じた脱炭による素材表面下の炭素不足を、旋削後に実
施される浸炭処理又は浸炭窒化処理等によって補うこと
ができるが、軸受鋼を用いた場合は、熱処理工程におい
て浸炭処理や浸炭窒化処理が行なわれないため、著しい
脱炭を伴う熱間鍛造加工を施すことができない。よっ
て、ニアネットシェイプ形状の被削リングを作製するこ
とができないという問題点も有していた。
【0007】つまり、軸受鋼を無理にニアネットシェイ
プ形状に熱間鍛造すると、粗形リングの表面近傍におい
て著しい脱炭が生じるため、焼入れを施しても、脱炭が
生じた部分の硬さは不十分となってしまうのである。さ
らに、冷間鍛造でニアネットシェイプ形状の被削リング
を成形するためには、粗形リングを独特の形状に加工す
る必要があり、そのような形状に温間鍛造で加工するこ
とは不可能であり、熱間鍛造を用いる必要があった。
【0008】そこで、本発明は上記のような従来技術が
有する問題点を解決し、内方部材及び外方部材の作製に
要する時間,手間,及びコストが少ない転動装置を提供
することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するた
め、本発明は次のような構成からなる。すなわち、本発
明に係る請求項1の転動装置は、外面に軌道面を有する
内方部材と、該内方部材の軌道面に対向する軌道面を有
し前記内方部材の外方に配置された外方部材と、前記両
軌道面間に転動自在に配設された複数の転動体と、を備
える転動装置において、前記内方部材及び前記外方部材
の少なくとも一方は、炭素0.7〜1.2質量%,ケイ
素0.1〜0.8質量%,マンガン0.2〜1.2質量
%,クロム0.4〜1.8質量%,及びモリブデン0.
6質量%以下のうち少なくとも炭素,ケイ素,マンガ
ン,及びクロムを含有し残部が鉄及び不可避の不純物で
ある合金鋼で構成されるとともに、熱間鍛造の後に復炭
焼鈍しが施されたものであることを特徴とする。
【0010】また、本発明に係る請求項2の転動装置
は、請求項1に記載の転動装置において、前記内方部材
の内径面及び前記外方部材の外径面の少なくとも一方
は、旋削加工が施されていないことを特徴とする。さら
に、本発明に係る請求項3の転動装置は、請求項1に記
載の転動装置において、前記内方部材及び前記外方部材
の少なくとも一方は、鍛造以外の機械加工が施されてい
ない表面を有することを特徴とする。
【0011】このように内方部材,外方部材は熱間鍛造
後に復炭焼鈍しが施されているので、熱間鍛造において
生じた脱炭による素材表面下の炭素不足が補われてい
る。よって、素材に軸受鋼や高炭素クロム鋼を使用した
場合でも、熱間鍛造によって粗形リングを製作すること
ができる。熱間鍛造によれば、ニアネットシェイプ形状
の被削リングを冷間鍛造によって成形できるような形状
に、粗形リングを成形することができる。
【0012】そして、ニアネットシェイプ形状の被削リ
ングであれば、旋削加工を施す必要のある部分が少なく
旋削工数が低減するので、旋削加工に要する加工時間や
手間が少なく、したがって、加工コストも低減される。
また、旋削工数が少ないから、旋削加工に使用する工具
の摩耗量も低減することができる。さらに、旋削加工に
よって削り取られる部分が少ないから、削りくず等の廃
棄物の発生量も低減することができる。そして、内方部
材,外方部材の製造に必要な素材量(ビレットの量)も
低減することができるので、歩留まりが向上して製造コ
ストが低減される。
【0013】また、復炭焼鈍しにより顕微鏡組織(金属
組織)が調整されるので、素材の段階で顕微鏡組織が整
っている必要はない。したがって、球状化焼鈍し済みの
鋼材を素材として用いる必要はなく、圧延したままで熱
処理を施されていない安価な鋼材を素材として使用でき
るので、製造コストを低くできる。ここで、前記合金鋼
の合金成分について説明する。まず、炭素(C)は、軸
受に必要な硬さと炭化物を得るための重要な元素であ
り、寿命に必要な十分な硬さと炭化物の面積率を得るた
めには最低でも0.7質量%必要であり、好ましくは
0.8質量%以上必要である。ただし、1.2質量%を
超えると製鋼時に巨大炭化物の発生や偏析が強くなり、
通常、SUJ2材で行なっているソーキング処理では巨
大炭化物や偏析を十分に調整できなくなる場合が生じる
ため、その後の温間圧延での炭化物微細化が不十分にな
る。以上の理由から、素材の炭素量は0.7〜1.2質
量%とする必要がある。
【0014】また、ケイ素(Si)は、素材の製鋼時に
脱酸剤として作用し、焼入性を向上させるとともに基地
マルテンサイトを強化するので、軸受寿命の延長に有効
な元素であり、その効果を出すためには0.1質量%以
上必要である。しかし、Si含有量が多すぎると被削性
や鍛造性を含めた加工性が劣化するので、上限は0.8
質量%とする必要がある。以上の理由から、素材のSi
量は0.1〜0.8質量%とする必要がある。
【0015】さらに、マンガン(Mn)は、焼入性を向
上させる元素であるが、その効果を出すためには最低
0.2質量%必要である。しかし、Mnは素材のフェラ
イトを強化する元素でもあり、特に素材の炭素量が0.
8質量%以上の場合は、Mnの含有量が1.2質量%を
超えると冷間加工性が著しく低下するため、上限を1.
2質量%とするの必要がある。さらに、クロム(Cr)
は、焼入性向上,焼戻軟化抵抗性向上など基地を強化す
る元素であり、その効果を出すためには最低0.1質量
%必要であり、好ましくは0.4質量%以上必要であ
る。しかし、1.8質量%を超えると、製鋼時に巨大炭
化物の発生や偏析が強くなり、通常SUJ2材で行って
いるソーキング処理では巨大炭化物や偏析を十分に調整
できなくなる場合があるため、その後の温間圧延での炭
化物微細化が不十分になる。以上の理由から、素材のC
r量は0.4〜1.8質量%とする必要がある。
【0016】さらに、モリブデン(Mo)は、焼入性の
向上に有効であるだけでなく炭化物の微細化効果が期待
できるので、製鋼上の下限値である0.1質量%以上を
添加することは有効であるが、0.6質量%を超えて含
有させても前記効果の向上は小さいので、上限値は0.
6質量%とすることが好ましい。ただし、0.3質量%
を超えると炭窒化物の粒径が大きくなってくるため、上
限値は0.3質量%とすることがより好ましい。なお、
Moは、所望により添加しなくてもよい。
【0017】なお、本発明は種々の転動装置に適用する
ことができる。例えば、転がり軸受,ボールねじ,リニ
アガイド装置,直動ベアリング等である。また、本発明
における前記内方部材とは、転動装置が転がり軸受の場
合には内輪、同じくボールねじの場合にはねじ軸、同じ
くリニアガイド装置の場合には案内レール、同じく直動
ベアリングの場合には軸をそれぞれ意味する。また、前
記外方部材とは、転動装置が転がり軸受の場合には外
輪、同じくボールねじの場合にはナット、同じくリニア
ガイド装置の場合にはスライダ、同じく直動ベアリング
の場合には外筒をそれぞれ意味する。
【0018】
【発明の実施の形態】以下に、本発明に係る転動装置の
実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。外
径面に軌道面を有する内輪(内方部材)と、その軌道面
と対向する軌道面を内径面に有する外輪(外方部材)
と、両軌道面の間に転動自在に配設された複数の円すい
ころと、を備える円すいころ軸受の前記内輪及び前記外
輪は、図1の(c)に示すような軌道輪の製造工程の前
工程を経て製造される。
【0019】素材としては、従来から軸受に最も多く使
用され、円すいころ軸受にも多く使用されている軸受鋼
2種(SUJ2)が好適であり、圧延したままで熱処理
を施されていない丸棒鋼材を使用する(S20)。その
素材(丸棒鋼材)を切り出し(S21)、1100〜1
200℃での熱間鍛造にて、据え込み,成形,打ち抜き
を行なって粗形リングを作製する(S22)。そして、
熱間鍛造によって脱炭された部分の炭素濃度を向上さ
せ、さらに粗形リングの顕微鏡組織を調整し且つ硬さを
低下させる目的で、復炭焼鈍しを施す(S23)。
【0020】続いて、冷間鍛造によって図2の(b)に
示すようなニアネットシェイプ形状の被削リングを成形
する(S24)。この冷間鍛造(S24)は二工程に分
かれており、最初に粗形リングを図2の(b)に示すよ
うな形状に加工し、次に、後に内輪となる部分と外輪と
なる部分とに分離する(図2の(b)においてハッチン
グが施されている部分が、後に内輪及び外輪となる部分
である)。このようにして、冷間鍛造によって粗形リン
グから内輪及び外輪の原形(被削リング)を成形する。
なお、冷間鍛造を行なう前に、粗形リングに潤滑剤とな
る金属石けんを塗布する場合もある。また、被削リング
にショットブラストを施して汚れやバリを除去する場合
もある。
【0021】さらに、得られた被削リングは、内輪の外
径面や外輪の内径面等の面に旋削が施されることによ
り、軌道面が形成されるとともに所望の寸法に加工され
る(S25)。被削リングは冷間鍛造によりニアネット
シェイプ形状に加工されているので、内輪の内径面及び
外輪の外径面には旋削加工を施す必要はない。なお、内
輪の内径面から大つば側端面にかけての面や、外輪の外
径面から小径側端面にかけての面の形状や寸法の精度に
ついては、冷間鍛造によって優れたものとし、これらの
面以外の面(軌道面等)に旋削加工を施すことが好まし
い。
【0022】このような前工程により製作された旋削リ
ングに焼入れ及び焼戻しを施し、さらに研削加工を施し
て内輪及び外輪を完成する。そして、転動体(円すいこ
ろ)や保持器等と組み合わせて転がり軸受を組み立て
る。なお、本実施形態は本発明の一例を示したものであ
って、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
例えば、本実施形態においては素材にSUJ2を用いた
例を示したが、焼入れ・焼戻し処理により転がり軸受と
して必要な品質が得られるならば、素材に他の合金鋼を
用いることも可能である。
【0023】また、本実施形態においては円すいころ軸
受を例示して説明したが、本発明の転動装置は様々な転
がり軸受に対して適用することができる。例えば、深み
ぞ玉軸受,アンギュラ玉軸受,自動調心玉軸受,円筒こ
ろ軸受,針状ころ軸受,自動調心ころ軸受等のラジアル
形の転がり軸受や、スラスト玉軸受,スラストころ軸受
等のスラスト形の転がり軸受である。さらに、本実施形
態においては、転動装置として転がり軸受を例示して説
明したが、本発明の転動装置は、他の様々な種類の転動
装置に対して適用することができる。例えば、リニアガ
イド装置,ボールねじ,直動ベアリング等の他の転動装
置にも好適に適用可能である。
【0024】〔実施例〕以下に実施例をあげて、本発明
をさらに具体的に説明する。円すいころ軸受(呼び番号
HR30205J,外径52mm,内径25mm,幅1
6.25mm)を構成する内輪及び外輪の製造工程(熱
処理前までの工程)を、図3を参照しながら説明する。
まず、外径28mmのSUJ2鋼製の丸棒鋼材31(圧
延したままで熱処理を施されていない鋼材)を切断し
て、ビレット32を作製する(図3の(a))。そし
て、このビレット32を熱間鍛造にて軸方向に据え込み
(図3の(b))、さらに成形(図3の(c))した
後、その中心部を打ち抜いて粗形リング33を作製する
(図3の(d))。この粗形リング33の寸法は、外径
51.5mm、内径25.5mm、幅11.2mmであ
り、中心部の肉厚が円周部の肉厚よりも大きくなってい
る。そして、その肉厚の違いによって生じる2つの端面
の間には斜面が設けられていて、両端面間の段差は滑ら
かになっている。
【0025】次に、このような粗形リング33に復炭焼
鈍しを施す。復炭焼鈍しは、特許再公表公報99/34
023号に開示されるような連続炉により行うことが好
ましい。復炭焼鈍しは、前半の浸炭期と後半の軟化焼鈍
し期とに分けられ、それぞれ温度,時間,及び炉内雰囲
気成分の条件が異なる。本実施例においては、浸炭期の
条件は、温度は780℃、時間は6hrであり、炉内雰
囲気成分は、CO分圧とCO2 分圧との比(炉内分圧比
P(CO)2 /P(CO2 ))が6.0となるように、
RXガス,窒素ガス,及びプロパンガスで調整した。一
方、軟化焼鈍し期の条件は、温度及び時間は740℃か
ら700℃へ2hrかけて冷却する条件で、炉内雰囲気
成分は、炉内分圧比が1.5となるように調整した。
【0026】復炭焼鈍しを施した粗形リング33にショ
ットブラストを施し、ごみやバリを除去した後、冷間鍛
造する際の潤滑剤となる金属石けんを塗布した。そし
て、粗形リング33を上型40Aと下型40Bとで挟み
込むようにして冷間鍛造を行ない(図3の(e))、被
削リング34(図3の(f))を作製した。この時点
で、後に外輪の外径面となる面34aから小径側の端面
となる面34bにかけての部分と、内輪の内径面となる
面34cから大つば側の端面となる面34dにかけての
部分とについては、加工はすでに完了しており、この後
に当該部分に旋削加工等を施す必要はない。
【0027】得られた被削リング34に再度ショットブ
ラストを施してから、内輪になる部分35と外輪になる
部分36とに分離し(図3の(g))、後に内輪の外径
面となる面35aと外輪の内径面となる面36aに旋削
を施して軌道面を形成するとともに、未加工の面に旋削
を施して前工程を完了する(図3の(h))。このよう
に、本実施例においては、内輪及び外輪は同一の部材か
ら製造される。さらにこの後、内輪の外径面(軌道面1
a),内径面1b,大つば側端面1c,及び小つば側端
面1d、並びに外輪の内径面(軌道面2a),外径面2
b,大径側端面2c,及び小径側端面2dに研削を施し
て、軌道輪としての完成品を得る(図4を参照)。つま
り、完成された内輪1及び外輪2においては、内輪1の
大つば側の内径R面1eと、外輪の外径R面2e及び角
面2fとには、ショットブラストは施されるものの旋削
や研削が施されることはなく、鍛造により生じた面がそ
のまま残っている。なお、旋削加工の際に、被削リング
34を旋盤に装着する回数(チャック回数)は、内輪,
外輪ともに一回であった。
【0028】次に、内輪,外輪の表面炭素量(質量%)
を測定した結果を、比較例とともに表1に示す。なお、
表面炭素量は以下のようにして測定した。すなわち、被
測定物を切断し、その断面をラップして、島津製作所株
式会社製の電子プローブ微量分析装置EPMA−160
0により測定した。測定条件は、ビーム加速電圧が15
kVで、ビームスポット径が20μmである。
【0029】
【表1】
【0030】No.1〜No.6の測定結果は、前述の
実施例において製造したものについての結果であり、冷
間鍛造後に得られた被削リング(図3の(f)に示す冷
間鍛造後の外輪及び内輪に分離前のリング)の測定結果
と、冷間鍛造後に旋削,研削を施して得られた内輪及び
外輪の完成品(図4に示した状態)の測定結果とが併せ
て示してある。なお、表1における被削リング及び完成
品の定義は、実施例については上記の通りであるが、後
述の比較例A及び比較例Bについても全く同様である。
【0031】また、No.7〜12の測定結果は、前述
した従来の方法(図1の(a)の前工程)で製造したも
の(比較例A)についての結果であり、冷間鍛造により
得られた被削リングの測定結果と、被削リングに旋削,
研削を施して得られた内輪及び外輪の完成品の測定結果
とが併せて示してある。さらに、No.13〜No.1
8の測定結果は、前述した従来の方法(図1の(b)の
前工程)で製造したもの(比較例B)についての結果で
あり、冷間鍛造により得られた被削リングの測定結果
と、被削リングに旋削,研削を施して得られた内輪及び
外輪の完成品の測定結果とが併せて示してある。
【0032】なお、実施例及び比較例A,Bのいずれの
場合も素材はSUJ2で、炭素含有量は1.05質量%
である。No.7〜No.12(比較例A)の測定結果
を見ると、被削リングの表面炭素量は素材のそれよりも
若干低下している。これは、温間鍛造により粗形リング
の表面において脱炭が生じ、それが冷間鍛造後の被削リ
ングに残存しているためである。No.8〜No.10
及びNo.12は、旋削加工によって脱炭が生じた部分
が取り除かれるため、完成品の表面炭素量は素材のそれ
とほぼ同レベルとなっている。しかし、旋削加工が施さ
れず研削加工のみが施されたNo.7及びNo.11
は、脱炭が生じた部分が完全に取り除かれないため、完
成品の表面炭素量は素材のそれよりも若干低くなってい
る。ただし、表面硬さはいずれもHv720程度である
ので、転がり軸受の軌道輪として使用するには何ら問題
はない。
【0033】次に、No.13〜No.18(比較例
B)の測定結果を見ると、被削リングの表面炭素量は素
材のそれよりも大幅に低下している。これは、熱間鍛造
により粗形リングの表面において著しい脱炭が生じたた
めである。旋削加工が施されず研削加工のみが施された
No.13,No.15,No.17,及びNo.18
は、著しく脱炭が生じた部分が完成品にまで残ってしま
っている。この脱炭が生じた部分の硬さは、いずれもH
v697を下回っているため、転がり軸受の軌道輪とし
て使用することは困難である。
【0034】これに対して、No.1〜No.6(実施
例)の測定結果を見ると、被削リングの表面炭素量は素
材のそれよりも若干増加している。これは、粗形リング
の表面において、復炭焼鈍しにより僅かに浸炭がなされ
たためである。しかしながら、この実施例においては、
旋削の有無にかかわらず、完成品の表面炭素量は素材の
それとほぼ同レベルとなっている。これは、旋削加工が
施されず研削加工のみが施されたNo.1,No.3,
No.5,及びNo.6については、復炭焼鈍しによっ
て炭素が補われて脱炭した部分が消滅し、極表面の高炭
素濃度部分が研削加工によって除去されたためである。
同様に、旋削加工が施されたNo.2及びNo.4につ
いては、脱炭が生じた部分には復炭焼鈍しによって炭素
が補われたが、その部分の一部又は全部が旋削加工によ
って除去されたためである。
【0035】実施例の完成品の硬さはHv720〜80
0であり、転がり軸受の軌道輪として使用するのには何
ら問題はない。次に、実施例と比較例Aとにおいて、加
工に要した時間を比較したグラフを図5に示す。比較例
Aにおける加工工程(図1の(a)の工程)の所要時間
を1.0とした場合、実施例における加工工程(図1の
(c)の工程)の所要時間は0.77であった。加工時
間が短縮された理由は、主に、被削リングがニアネット
シェイプ形状に成形されたため旋削箇所を削減すること
ができ、これにより実加工時間及びチャック回数の低減
がなされたことによるものである。
【0036】
【発明の効果】以上のように、本発明の転動装置は、内
方部材及び外方部材の作製に要する時間,手間,及びコ
ストが少ない。
【図面の簡単な説明】
【図1】軌道輪の製造工程のうち前工程を説明する工程
図である。
【図2】被削リングの断面図である。
【図3】実施例の内輪及び外輪の製造工程を説明する図
である。
【図4】完成した軌道輪の断面図である。
【図5】実施例と比較例とにおいて加工に要した時間を
比較したグラフである。
【符号の説明】
1 内輪 1a 軌道面 2 外輪 2a 軌道面

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 外面に軌道面を有する内方部材と、該内
    方部材の軌道面に対向する軌道面を有し前記内方部材の
    外方に配置された外方部材と、前記両軌道面間に転動自
    在に配設された複数の転動体と、を備える転動装置にお
    いて、 前記内方部材及び前記外方部材の少なくとも一方は、炭
    素0.7〜1.2質量%,ケイ素0.1〜0.8質量
    %,マンガン0.2〜1.2質量%,クロム0.4〜
    1.8質量%,及びモリブデン0.6質量%以下のうち
    少なくとも炭素,ケイ素,マンガン,及びクロムを含有
    し残部が鉄及び不可避の不純物である合金鋼で構成され
    るとともに、熱間鍛造の後に復炭焼鈍しが施されたもの
    であることを特徴とする転動装置。
  2. 【請求項2】 前記内方部材の内径面及び前記外方部材
    の外径面の少なくとも一方は、旋削加工が施されていな
    いことを特徴とする請求項1に記載の転動装置。
  3. 【請求項3】 前記内方部材及び前記外方部材の少なく
    とも一方は、鍛造以外の機械加工が施されていない表面
    を有することを特徴とする請求項1に記載の転動装置。
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