JP2005273759A - 転がり支持装置、転がり支持装置の構成部品の製造方法、鋼の熱処理方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 異物混入潤滑下で使用される転がり支持装置の転がり疲れ寿命を長くする。
【解決手段】 深溝玉軸受の内輪および外輪を、質量比で、C含有率0.1〜1.2%、Si含有率0.1〜2.0%、Mn含有率0.1〜2.0%、Cr含有率0.1〜4.0%、Mo含有率2.0%以下、V含有率2.0%以下、残部がFeおよび不可避不純物である鋼からなる素材に浸炭窒化処理を施す工程と、浸炭窒化処理を施した後の素材をA1 変態点以下まで過冷して、オースフォーミングを施す工程と、オースフォーミングを施した後の素材を所定形状に成形した後、再度A1 変態点以上の温度に加熱して、焼入れおよび焼戻し処理を施す工程とを経て作製する。これらの軌道面をなす表層部は、CおよびNの合計含有率を1.2〜1.8質量%、硬さをHRC62以上、残留オーステナイト量を25〜40体積%、そのオーステナイト結晶粒径を5μm以下とする。
【選択図】 図2
【解決手段】 深溝玉軸受の内輪および外輪を、質量比で、C含有率0.1〜1.2%、Si含有率0.1〜2.0%、Mn含有率0.1〜2.0%、Cr含有率0.1〜4.0%、Mo含有率2.0%以下、V含有率2.0%以下、残部がFeおよび不可避不純物である鋼からなる素材に浸炭窒化処理を施す工程と、浸炭窒化処理を施した後の素材をA1 変態点以下まで過冷して、オースフォーミングを施す工程と、オースフォーミングを施した後の素材を所定形状に成形した後、再度A1 変態点以上の温度に加熱して、焼入れおよび焼戻し処理を施す工程とを経て作製する。これらの軌道面をなす表層部は、CおよびNの合計含有率を1.2〜1.8質量%、硬さをHRC62以上、残留オーステナイト量を25〜40体積%、そのオーステナイト結晶粒径を5μm以下とする。
【選択図】 図2
Description
本発明は、転がり軸受、ボールねじ、リニアガイドなどの転がり支持装置およびその構成部品の製造方法に関する。
転がり軸受は、高面圧下で繰り返し剪断応力を受けて使用されるため、どのような転がり軸受であっても転がり疲れ寿命を有している。素材、寸法、熱処理方法が同じ軸受を同じ条件で作動させた場合でも、転がり疲れ寿命にはバラツキが多いため、転がり軸受の寿命を示す基準としては、定格疲れ寿命が用いられている。玉軸受の定格疲れ寿命L1 は下記(1)式で算出され、ころ軸受の定格疲れ寿命L2 は下記(2)式で算出される。
L1 =(C/P)3 ・・・(1)
L2 =(C/P)10/3 ・・・(2)
但し、(1),(2)式中、Cは基本動定格荷重、Pは軸受荷重を示す。
L1 =(C/P)3 ・・・(1)
L2 =(C/P)10/3 ・・・(2)
但し、(1),(2)式中、Cは基本動定格荷重、Pは軸受荷重を示す。
例えば、自動車、農業機械、建設機械、鉄鋼機械等の変速機、減速機、およびエンジンで使用される転がり支持装置は、潤滑油中に金属の切粉、削り屑、バリ、および摩耗粉が混入する等の苛酷な潤滑環境下(以下、「異物混入潤滑下」と記す。)で使用される。このような用途の転がり支持装置においては、上記定格疲れ寿命に達する前にフレーキング(転がり面の一部がうろこ状に剥離する現象)が発生する場合がある。
異物混入潤滑下における転がり疲れ寿命を長くするための技術としては、下記の特許文献1に記載の技術が挙げられる。
特許文献1では、内輪、外輪、および転動体の少なくとも一つを、合金鋼からなる素材を所定形状に加工した後、浸炭窒化処理および硬化熱処理を施すことにより、その表面層に存在する炭窒化物の単位面積当たりの面積率を10%以上、前記表層部に存在する最大炭窒化物径を3μm以下、前記表層部の残留オーステナイト量を25〜45体積%、前記表層部の硬さをHv750以上とすることが提案されている。ここで、硬化熱処理とは、浸炭窒化温度からA1 変態点以下に冷却した後、再度A1 変態点以上に加熱・保持して、その後焼入れおよび焼戻しを行う熱処理を指す。
特許文献1では、内輪、外輪、および転動体の少なくとも一つを、合金鋼からなる素材を所定形状に加工した後、浸炭窒化処理および硬化熱処理を施すことにより、その表面層に存在する炭窒化物の単位面積当たりの面積率を10%以上、前記表層部に存在する最大炭窒化物径を3μm以下、前記表層部の残留オーステナイト量を25〜45体積%、前記表層部の硬さをHv750以上とすることが提案されている。ここで、硬化熱処理とは、浸炭窒化温度からA1 変態点以下に冷却した後、再度A1 変態点以上に加熱・保持して、その後焼入れおよび焼戻しを行う熱処理を指す。
一方、環境問題を考慮して、輸送機器や構造物の軽量化および省エネルギー化を実現するために、鉄鋼材料のさらなる高強度化が要求されている。鋼の強化機構としては、上述した特許文献1に記載の析出硬化による強化の他、固溶硬化、転位強化、結晶粒径微細化による強化などが知られている。特に、結晶粒径微細化による効果としては、単位体積中の粒界の総面積が増大することにより粒界偏析が低減する「見かけ上の高純度化効果」や、すべり面が突き当たった粒界に集中する応力が低減する「粒界応力の低減効果」や、変形の異方性に起因した不均一な歪みが均一化される「歪みの分散効果」などが挙げられる。つまり、鋼の結晶粒径微細化は、延性や靱性を顕著に害することなく、鋼の強度向上を可能とする有効な手段として注目されている。
下記の特許文献2では、軸受部品を、鋼からなる素材を所定形状に加工した後、A1 変態点を超える温度で浸炭窒化処理を施し、さらに、A1 変態点未満の温度に冷却した後、A1 変態点以上且つ浸炭窒化温度未満の温度に再加熱して、その後焼入れおよび焼戻しを施すことにより、その浸炭窒化層およびその内部の鋼のオーステナイト結晶粒径を8μm以下とすることが提案されている。
特開平5−78814号公報
特開2003−226918号公報
しかしながら、上述した特許文献1に記載の転がり軸受では、オーステナイト結晶粒径については言及されておらず、転がり疲れ寿命を向上させるという点で未だ改善の余地がある。
一方、上述した特許文献2に記載の転がり軸受では、残留オーステナイト量については特定されておらず、異物混入潤滑下における転がり疲れ寿命を向上させるという点で未だ改善の余地がある。
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、異物混入潤滑下で使用される場合であっても、転がり疲れ寿命を長くできる転がり支持装置およびその構成部品の製造方法を提供することを課題としている。
一方、上述した特許文献2に記載の転がり軸受では、残留オーステナイト量については特定されておらず、異物混入潤滑下における転がり疲れ寿命を向上させるという点で未だ改善の余地がある。
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、異物混入潤滑下で使用される場合であっても、転がり疲れ寿命を長くできる転がり支持装置およびその構成部品の製造方法を提供することを課題としている。
このような課題を解決するために、本発明は、互いに対向配置される軌道面を備えた第一部材および第二部材と、前記第一部材と第二部材の間に転動自在に配設された複数個の転動体と、を備え、前記転動体が転動することにより前記第一部材が前記第二部材に対して相対運動する転がり支持装置において、前記第一部材、第二部材、転動体の少なくとも一つは、質量比で、C含有率が0.1%以上1.2%以下、Si含有率が0.1%以上2.0%以下、Mn含有率が0.1%以上2.0%以下、Cr含有率が0.1%以上4.0%以下、Mo含有率が2.0%以下、V含有率が2.0%以下である鋼からなり、その転がり面をなす表層部は、CおよびNの合計含有率が1.2質量%以上1.8質量%以下で、硬さがHRC62以上であるとともに、25体積%以上40体積%以下の残留オーステナイトを有し、そのオーステナイト結晶粒径が5μm以下であることを特徴とする転がり支持装置を提供する。
本発明はまた、互いに対向配置される軌道面を備えた第一部材および第二部材と、前記第一部材と第二部材の間に転動自在に配設された複数個の転動体と、を備え、前記転動体が転動することにより前記第一部材が前記第二部材に対して相対運動する転がり支持装置の前記第一部材、第二部材、および転動体を製造する方法において、質量比で、C含有率が0.1%以上1.2%以下、Si含有率が0.1%以上2.0%以下、Mn含有率が0.1%以上2.0%以下、Cr含有率が0.1%以上4.0%以下、Mo含有率が2.0%以下、V含有率が2.0%以下、残部がFeおよび不可避不純物である鋼からなる素材に、浸炭または浸炭窒化処理を施して、転がり面をなす表層部のCおよびNの合計含有率を1.2質量%以上1.8質量%以下とする工程と、前記浸炭または浸炭窒化処理が施された後の素材をA1 変態点以下まで過冷して、オースフォーミングを施す工程と、前記オースフォーミングが施された後の素材を所定形状に成形した後、再度A1 変態点以上に加熱して、焼入れ処理および焼戻し処理を施す工程と、を備えることを特徴とする転がり支持装置の構成部品の製造方法を提供する。
本発明の転がり支持装置の構成部品の製造方法において、前記焼入れ処理は、前記転がり面をなす表層部に、結晶粒径が5μm以下のオーステナイトを25体積%以上40体積%以下で残留させ、且つ、前記表層部の硬さをHRC62以上とする条件で行うことが好ましい。
本発明はさらに、鋼からなる素材に、浸炭または浸炭窒化処理を施す工程と、前記浸炭または浸炭窒化処理が施された後の素材をA1 変態点以下まで過冷して、オースフォーミングを施す工程と、前記オースフォーミングが施された後の素材を所定形状に成形した後、再度A1 変態点以上に加熱して、焼入れ処理および焼戻し処理を施す工程と、を備えることを特徴とする鋼の熱処理方法を提供する。
本発明はさらに、鋼からなる素材に、浸炭または浸炭窒化処理を施す工程と、前記浸炭または浸炭窒化処理が施された後の素材をA1 変態点以下まで過冷して、オースフォーミングを施す工程と、前記オースフォーミングが施された後の素材を所定形状に成形した後、再度A1 変態点以上に加熱して、焼入れ処理および焼戻し処理を施す工程と、を備えることを特徴とする鋼の熱処理方法を提供する。
なお、本発明において「転がり支持装置」とは、転がり軸受、ボールねじ、およびリニアガイド等を指す。ここで、転がり支持装置が転がり軸受の場合には、第一部材および第二部材は内輪および外輪を指し、転がり支持装置がボールねじの場合には、第一部材および第二部材はねじ軸およびナットを指し、転がり支持装置がリニアガイドの場合には、第一部材および第二部材は案内レールおよびスライダを指す。
また、「表層部」とは、表面から所定深さ(例えば、100μm)までの部分を指す。 本発明の熱処理方法は、図1に示すように、鋼からなる素材に、浸炭または浸炭窒化処理を行った後、A1 変態点以下まで過冷してオースフォーミングを行い、さらにA1 変態点以上に加熱して焼入れおよび焼戻し処理を行うものである。
焼戻し処理後の表層部に存在するオーステナイトの結晶粒径を小さくするためには、浸炭または浸炭窒化処理の際に表層部に固溶させたCやNを、オースフォーミング後の加熱による鋼の再結晶時に炭化物や炭窒化物として析出させる必要がある。ここで、オーステナイトの固溶限以上に浸炭または浸炭窒化処理を行うと、オースフォーミング前のオーステナイト粒界に粗大な初析炭化物や初析炭窒化物が析出するため、靱性を害したり、オーステナイト結晶粒径を小さくできなくなる。
焼戻し処理後の表層部に存在するオーステナイトの結晶粒径を小さくするためには、浸炭または浸炭窒化処理の際に表層部に固溶させたCやNを、オースフォーミング後の加熱による鋼の再結晶時に炭化物や炭窒化物として析出させる必要がある。ここで、オーステナイトの固溶限以上に浸炭または浸炭窒化処理を行うと、オースフォーミング前のオーステナイト粒界に粗大な初析炭化物や初析炭窒化物が析出するため、靱性を害したり、オーステナイト結晶粒径を小さくできなくなる。
そこで、浸炭または浸炭窒化処理は、炭化物や炭窒化物の生成を抑制しつつ、多量のCやNを表層部に固溶可能な条件で行う。
なお、炭化物は、炭窒化物と比較して析出物が粗大化しやすいため、浸炭処理よりも浸炭窒化処理を行うことが好ましい。ここで、浸炭窒化処理を行う場合には、高温になるほどアンモニアガスの分解が促進されて、Nを添加し難くなる。よって、図2に示すように、一旦浸炭窒化処理を行った後に昇温して、浸炭処理を行うことが好ましい。
なお、炭化物は、炭窒化物と比較して析出物が粗大化しやすいため、浸炭処理よりも浸炭窒化処理を行うことが好ましい。ここで、浸炭窒化処理を行う場合には、高温になるほどアンモニアガスの分解が促進されて、Nを添加し難くなる。よって、図2に示すように、一旦浸炭窒化処理を行った後に昇温して、浸炭処理を行うことが好ましい。
また、オースフォーミングは、オーステナイト状態の鋼に外力を加えて成形する加工熱処理であるため、浸炭または浸炭窒化処理によりオーステナイト化した鋼を、パーライトへの変態が起こらないようにA1 変態点以下(好ましくは、Ms変態点以上650℃以下)まで過冷する。
このオースフォーミングを行うことにより、オースフォーミング後の組織が微細化するとともに、多量の格子歪みが発生する。この格子歪みの発生により、オースフォーミング後にA1 変態点以上に加熱することで起こる再結晶の際に、核発生数が増加するとともに、固溶していたCやNが粒界内の転位近傍に集積して微細な炭化物や炭窒化物を多数形成する。そして、炭化物および炭窒化物によるピン止め作用により、再結晶時の結晶粒成長が抑制されるため、オーステナイト結晶粒径が小さくなる。
このオースフォーミングを行うことにより、オースフォーミング後の組織が微細化するとともに、多量の格子歪みが発生する。この格子歪みの発生により、オースフォーミング後にA1 変態点以上に加熱することで起こる再結晶の際に、核発生数が増加するとともに、固溶していたCやNが粒界内の転位近傍に集積して微細な炭化物や炭窒化物を多数形成する。そして、炭化物および炭窒化物によるピン止め作用により、再結晶時の結晶粒成長が抑制されるため、オーステナイト結晶粒径が小さくなる。
さらに、オースフォーミング後の加熱は、焼戻し処理後の表層部に必要なオーステナイトを残留させ、且つ、必要な硬さを確保することが可能な条件で行う。このオースフォーミング後の加熱温度(焼入れ温度)が高すぎると、微細な炭化物や炭窒化物が過剰に溶け込んで、結晶粒の粗大化が生じる。一方、オースフォーミング後の加熱温度が低すぎると、微細な炭化物や炭窒化物の溶け込みが不足して、十分な残留オーステナイト量と硬さを確保できなくなる。
転がり支持装置として十分な転がり疲れ寿命を得るためには、その構成部品の転がり面をなす表層部のCおよびNの合計含有率を1.2質量%以上1.8質量%以下とし、表層部に存在する残留オーステナイト量を25体積%以上40体積%以下とし、そのオーステナイト結晶粒径を5μm以下、好ましくは3μm以下とし、表層部の硬さをHRC62以上とする必要がある。
このような構成の表層部を得るためには、後述する特定の鋼を用いて、以下に示す条件で前述した熱処理を行う必要がある。
浸炭または浸炭窒化処理を図1に示す方法で行う場合には、930℃以上、好ましくは950℃以上の比較的高温で行う。また、浸炭または浸炭窒化処理を図2に示す方法で行う場合には、820〜860℃程度で一旦浸炭窒化処理を行った後、930℃以上、好ましくは950℃以上の比較的高い温度に昇温して浸炭処理を行う。さらに、オースフォーミング後の加熱は、820℃以上、好ましくは830℃以上の温度で、0.5〜1.0時間保持する。
浸炭または浸炭窒化処理を図1に示す方法で行う場合には、930℃以上、好ましくは950℃以上の比較的高温で行う。また、浸炭または浸炭窒化処理を図2に示す方法で行う場合には、820〜860℃程度で一旦浸炭窒化処理を行った後、930℃以上、好ましくは950℃以上の比較的高い温度に昇温して浸炭処理を行う。さらに、オースフォーミング後の加熱は、820℃以上、好ましくは830℃以上の温度で、0.5〜1.0時間保持する。
次に、本発明で使用する鋼の各成分について、その臨界的意義を詳細に説明する。
〔Cの含有率(質量比):0.1〜1.2%〕
C(炭素)は、転がり支持装置として必要な強度と転がり疲れ寿命を得るために有効な元素である。C含有率が少なすぎると、芯部に必要な強度が得られない。また、浸炭または浸炭窒化処理で必要な硬化層深さを得るための熱処理時間が長くなるため、コストの上昇を招く。これらの点を考慮して、C含有率は0.1%以上、好ましくは0.3%以上とする。
一方、C含有率が多すぎると、素材の製鋼時に巨大炭化物や偏析を無くすためのソーキング(均熱処理)が必要となるだけでなく、加工性も低下するため、コストの上昇を招く。これを防止するために、C含有率は1.2%以下とする。
〔Cの含有率(質量比):0.1〜1.2%〕
C(炭素)は、転がり支持装置として必要な強度と転がり疲れ寿命を得るために有効な元素である。C含有率が少なすぎると、芯部に必要な強度が得られない。また、浸炭または浸炭窒化処理で必要な硬化層深さを得るための熱処理時間が長くなるため、コストの上昇を招く。これらの点を考慮して、C含有率は0.1%以上、好ましくは0.3%以上とする。
一方、C含有率が多すぎると、素材の製鋼時に巨大炭化物や偏析を無くすためのソーキング(均熱処理)が必要となるだけでなく、加工性も低下するため、コストの上昇を招く。これを防止するために、C含有率は1.2%以下とする。
〔Siの含有率(質量比):0.1〜2.0%〕
Si(ケイ素)は、素材の製鋼時に脱酸剤として作用して、焼入れ性を向上させるとともに、基地であるマルテンサイトを強化して、転がり疲れ寿命を向上させるために有効な元素である。この効果を得るために、Siの含有率は0.1%以上、好ましくは0.2%以上とする。
一方、Siの含有率が多すぎると、被削性、鍛造性、および冷間加工性が低下する。また、浸炭または浸炭窒化処理特性が低下して十分な硬化層深さを確保できなくなる場合がある。これを防止するために、Si含有率は2.0%以下、好ましくは1.5%以下とする。
Si(ケイ素)は、素材の製鋼時に脱酸剤として作用して、焼入れ性を向上させるとともに、基地であるマルテンサイトを強化して、転がり疲れ寿命を向上させるために有効な元素である。この効果を得るために、Siの含有率は0.1%以上、好ましくは0.2%以上とする。
一方、Siの含有率が多すぎると、被削性、鍛造性、および冷間加工性が低下する。また、浸炭または浸炭窒化処理特性が低下して十分な硬化層深さを確保できなくなる場合がある。これを防止するために、Si含有率は2.0%以下、好ましくは1.5%以下とする。
〔Mnの含有率(質量比):0.1〜2.0%〕
Mn(マンガン)は、Siと同様に、素材の製鋼時に脱酸剤として作用して焼入れ性を向上させるとともに、残留オーステナイトの生成を促進させるために有効な元素である。この効果を得るために、Mn含有率は0.1%以上、好ましくは0.8%以上とする。
一方、Mn含有率が多すぎると、被削性、鍛造性、および冷間加工性が低下する。また、熱処理後に多量の残留オーステナイトが残存して、十分な転がり疲れ寿命が得られなくなる場合がある。これを防止するために、Mn含有率は2.0%以下、好ましくは1.5%以下とする。
Mn(マンガン)は、Siと同様に、素材の製鋼時に脱酸剤として作用して焼入れ性を向上させるとともに、残留オーステナイトの生成を促進させるために有効な元素である。この効果を得るために、Mn含有率は0.1%以上、好ましくは0.8%以上とする。
一方、Mn含有率が多すぎると、被削性、鍛造性、および冷間加工性が低下する。また、熱処理後に多量の残留オーステナイトが残存して、十分な転がり疲れ寿命が得られなくなる場合がある。これを防止するために、Mn含有率は2.0%以下、好ましくは1.5%以下とする。
〔Crの含有率(質量比):0.1〜4.0%〕
Cr(クロム)は、基地に固溶して、焼入れ性および焼戻し軟化抵抗性を向上させるために有効な元素である。また、Crの存在により、浸炭または浸炭窒化の際に表層部に高硬度の微細炭化物や微細炭窒化物が形成される。これにより、表層部の硬さを確保し、且つ、熱処理時の結晶粒粗大化を防止できる。したがって、Crは、転がり疲れ寿命を向上させるために有効な元素である。この効果を得るために、Cr含有率は0.1%以上、好ましくは0.8%以上とする。
一方、Cr含有率が多すぎると、素材の製鋼時に巨大炭化物や偏析を無くすためのソーキングが必要となり、コストの上昇を招く。また、Cr含有率の増加に伴い、浸炭または浸炭窒化処理特性や冷間加工性が低下する傾向がある。これを防止するために、Cr含有率は4.0%以下とする。
Cr(クロム)は、基地に固溶して、焼入れ性および焼戻し軟化抵抗性を向上させるために有効な元素である。また、Crの存在により、浸炭または浸炭窒化の際に表層部に高硬度の微細炭化物や微細炭窒化物が形成される。これにより、表層部の硬さを確保し、且つ、熱処理時の結晶粒粗大化を防止できる。したがって、Crは、転がり疲れ寿命を向上させるために有効な元素である。この効果を得るために、Cr含有率は0.1%以上、好ましくは0.8%以上とする。
一方、Cr含有率が多すぎると、素材の製鋼時に巨大炭化物や偏析を無くすためのソーキングが必要となり、コストの上昇を招く。また、Cr含有率の増加に伴い、浸炭または浸炭窒化処理特性や冷間加工性が低下する傾向がある。これを防止するために、Cr含有率は4.0%以下とする。
〔Moの含有率(質量比):2.0%以下〕
Mo(モリブデン)は、必須成分ではないが、Crと同様に、基地に固溶して、焼入れ性および焼戻し軟化抵抗性を向上させるために有効な元素である。また、Moの存在により、浸炭または浸炭窒化の際に高硬度の微細炭化物や炭窒化物が形成される。これにより、表層部の硬さを確保し、且つ、熱処理時の結晶粒粗大化を防止できる。したがって、Moは、転がり疲れ寿命を著しく向上させるために有効な元素である。この効果を得るために必要なMo含有率は0.5%以上、好ましくは0.8%以上である。
一方、Mo含有率が多すぎると、素材の製鋼時に巨大炭化物や偏析を無くすためのソーキングが必要となり、コストの上昇を招く。また、Mo含有量の増加に伴い、浸炭または浸炭窒化処理特性や冷間加工性が低下する傾向がある。これを防止するために、Mo含有率は2.0%以下とする。
Mo(モリブデン)は、必須成分ではないが、Crと同様に、基地に固溶して、焼入れ性および焼戻し軟化抵抗性を向上させるために有効な元素である。また、Moの存在により、浸炭または浸炭窒化の際に高硬度の微細炭化物や炭窒化物が形成される。これにより、表層部の硬さを確保し、且つ、熱処理時の結晶粒粗大化を防止できる。したがって、Moは、転がり疲れ寿命を著しく向上させるために有効な元素である。この効果を得るために必要なMo含有率は0.5%以上、好ましくは0.8%以上である。
一方、Mo含有率が多すぎると、素材の製鋼時に巨大炭化物や偏析を無くすためのソーキングが必要となり、コストの上昇を招く。また、Mo含有量の増加に伴い、浸炭または浸炭窒化処理特性や冷間加工性が低下する傾向がある。これを防止するために、Mo含有率は2.0%以下とする。
〔Vの含有率(質量比):2.0%以下〕
V(バナジウム)は、必須成分ではないが、Vの存在により、浸炭または浸炭窒化の際に高硬度な微細炭化物や微細炭窒化物が形成される。これにより、表層部の硬さを確保し、且つ、熱処理時の結晶粒粗大化を防止できる。したがって、Vは、転がり疲れ寿命を著しく向上させるために有効な元素である。この効果を得るために必要なV含有率は0.2%以上、好ましくは0.5%以上である。
一方、V含有率が多すぎると、素材の製鋼時に巨大炭化物や偏析を無くすためのソーキングが必要となり、コストの上昇を招く。また、V含有量の増加に伴い、浸炭または浸炭窒化処理特性や冷間加工性が低下する傾向がある。これを防止するために、V含有率は2.0%以下とする。
V(バナジウム)は、必須成分ではないが、Vの存在により、浸炭または浸炭窒化の際に高硬度な微細炭化物や微細炭窒化物が形成される。これにより、表層部の硬さを確保し、且つ、熱処理時の結晶粒粗大化を防止できる。したがって、Vは、転がり疲れ寿命を著しく向上させるために有効な元素である。この効果を得るために必要なV含有率は0.2%以上、好ましくは0.5%以上である。
一方、V含有率が多すぎると、素材の製鋼時に巨大炭化物や偏析を無くすためのソーキングが必要となり、コストの上昇を招く。また、V含有量の増加に伴い、浸炭または浸炭窒化処理特性や冷間加工性が低下する傾向がある。これを防止するために、V含有率は2.0%以下とする。
〔不可避不純物について〕
不可避不純物としては、S(硫黄)、P(リン)、Al(アルミニウム)、Ti(チタン)、O(酸素)等を含有する。鋼の清浄度は、特に、クリーン潤滑条件での転がり疲れ寿命に大きく影響するため、その含有率は出来る限り小さいことが好ましい。しかし、不可避不純物の含有率を極端に小さくすることは、コストの著しい上昇を招く。よって、本発明においては、コストの上昇を招くような厳しい不純物規制は行わず、JIS G 4805に規定された高炭素クロム軸受鋼鋼材の清浄度規制を満たす品質レベルとした。
不可避不純物としては、S(硫黄)、P(リン)、Al(アルミニウム)、Ti(チタン)、O(酸素)等を含有する。鋼の清浄度は、特に、クリーン潤滑条件での転がり疲れ寿命に大きく影響するため、その含有率は出来る限り小さいことが好ましい。しかし、不可避不純物の含有率を極端に小さくすることは、コストの著しい上昇を招く。よって、本発明においては、コストの上昇を招くような厳しい不純物規制は行わず、JIS G 4805に規定された高炭素クロム軸受鋼鋼材の清浄度規制を満たす品質レベルとした。
本発明の転がり支持装置によれば、転がり支持装置の構成部品の転がり面をなす表層部に存在する残留オーステナイト量と、そのオーステナイト結晶粒径と、硬さとを特定することにより、異物混入潤滑下で使用される転がり支持装置であっても、転がり疲れ寿命を長くできる。
本発明の転がり支持装置の構成部品の製造方法によれば、異物混入潤滑下で使用される場合でも転がり疲れ寿命の長い転がり支持装置を実現できる。
本発明の鋼の熱処理方法によれば、浸炭または浸炭窒化処理後にA1 変態点以下に過冷却してオースフォーミングを施し、さらにA1 変態点以上に加熱して焼入れおよび焼戻し処理を施すことにより、オーステナイト結晶粒径を小さくできる。
本発明の転がり支持装置の構成部品の製造方法によれば、異物混入潤滑下で使用される場合でも転がり疲れ寿命の長い転がり支持装置を実現できる。
本発明の鋼の熱処理方法によれば、浸炭または浸炭窒化処理後にA1 変態点以下に過冷却してオースフォーミングを施し、さらにA1 変態点以上に加熱して焼入れおよび焼戻し処理を施すことにより、オーステナイト結晶粒径を小さくできる。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
本実施形態では、まず、呼び番号6006(内径30mm,外径55mm,幅13mm)の深溝玉軸受用の内輪および外輪を、以下の方法で作製した。
本実施形態では、まず、呼び番号6006(内径30mm,外径55mm,幅13mm)の深溝玉軸受用の内輪および外輪を、以下の方法で作製した。
No.1〜No.7では、まず、表1に示す各組成の鋼A〜Fからなる深溝玉軸受の内輪用ブランク(内径18.6mm,外径31.7mm)と外輪用ブランク(内径31.5mm,外径43mm)を用意した。次に、以下に示す熱処理を施した。
まず、各ブランクに対して、RXガス+エンリッチガス+アンモニアガスの雰囲気(Cp:0.9〜1.1)下で830〜850℃に加熱して30〜40分間保持して浸炭窒化を行った後、RXガス+エンリッチガスの雰囲気(Cp:1.2〜1.4)下で960〜980℃に加熱して2〜3時間保持することにより浸炭を行った。 次いで、各ブランクをファン空冷(冷却速度:5℃/s以上)によって、600℃程度(A1 変態点以下)まで過冷した。次いで、ローリング成形機を用いて、各ブランクに圧下率35〜36%でオースフォーミングを行った。次いで、各ブランクを空冷してサイジング加工を行った後、施削加工を行って、内輪および外輪の各形状に成形した。
まず、各ブランクに対して、RXガス+エンリッチガス+アンモニアガスの雰囲気(Cp:0.9〜1.1)下で830〜850℃に加熱して30〜40分間保持して浸炭窒化を行った後、RXガス+エンリッチガスの雰囲気(Cp:1.2〜1.4)下で960〜980℃に加熱して2〜3時間保持することにより浸炭を行った。 次いで、各ブランクをファン空冷(冷却速度:5℃/s以上)によって、600℃程度(A1 変態点以下)まで過冷した。次いで、ローリング成形機を用いて、各ブランクに圧下率35〜36%でオースフォーミングを行った。次いで、各ブランクを空冷してサイジング加工を行った後、施削加工を行って、内輪および外輪の各形状に成形した。
次いで、各成形品に対して、820〜840℃(A1 変態点以上の温度)に加熱して20〜30分間保持した後、油焼入れを行った。次いで、160℃〜180℃に加熱して1.5時間保持することにより、焼戻しを行った。そして、これらの成形品を研削加工して、深溝玉軸受の内輪および外輪を作製した。
No.8 では、浸炭時のカーボンポテンシャル(Cp)を1.45にした以外は、No.1〜No.7と同じ条件で、深溝玉軸受の内輪および外輪を作製した。
No.8 では、浸炭時のカーボンポテンシャル(Cp)を1.45にした以外は、No.1〜No.7と同じ条件で、深溝玉軸受の内輪および外輪を作製した。
No.9では、まず、表1に示す組成の鋼Gからなる素材を、深溝玉軸受の内輪および外輪の各形状に成形した。次に、各成形品に対して、以下に示す熱処理を施した。
まず、830〜850℃に加熱して30〜40分保持した後、油焼入れを行った。次いで、160〜180℃に加熱して1.5時間保持することにより、焼戻しを行った。そして、これらの成形品を研削加工して、深溝玉軸受の内輪および外輪を作製した。
まず、830〜850℃に加熱して30〜40分保持した後、油焼入れを行った。次いで、160〜180℃に加熱して1.5時間保持することにより、焼戻しを行った。そして、これらの成形品を研削加工して、深溝玉軸受の内輪および外輪を作製した。
No.10では、まず、表1に示す組成の鋼Gからなる素材を、深溝玉軸受の内輪および外輪の各形状に成形した。次に、各成形品に対して、以下に示す熱処理を施した。
まず、RXガス+エンリッチガス+アンモニアガスの雰囲気(Cp:0.9〜1.1)下で830〜850℃に加熱して3〜4時間保持することにより、浸炭窒化を行った。次いで、油焼入れを行った。次いで、160〜180℃に加熱して1.5時間保持することにより、焼戻しを行った。そして、これらの成形品を研削加工して、深溝玉軸受の内輪および外輪を作製した。
まず、RXガス+エンリッチガス+アンモニアガスの雰囲気(Cp:0.9〜1.1)下で830〜850℃に加熱して3〜4時間保持することにより、浸炭窒化を行った。次いで、油焼入れを行った。次いで、160〜180℃に加熱して1.5時間保持することにより、焼戻しを行った。そして、これらの成形品を研削加工して、深溝玉軸受の内輪および外輪を作製した。
No.11では、まず、表1に示す組成の鋼Gからなる素材を、深溝玉軸受の内輪および外輪の各形状に成形した。次に、各成形品に対して、以下に示す熱処理を施した。
まず、RXガス+エンリッチガス+アンモニアガスの雰囲気(Cp:0.9〜1.1)下で830〜850℃に加熱して3〜4時間保持することにより、浸炭窒化を行った。次いで、油焼入れを行った。次いで、800〜820℃に加熱して30〜40分間保持した後、二次焼入れを行った。次いで、160〜180℃に加熱して1.5時間保持することにより、焼戻しを行った。そして、これらの成形品を研削加工して、深溝玉軸受の内輪および外輪を作製した。
まず、RXガス+エンリッチガス+アンモニアガスの雰囲気(Cp:0.9〜1.1)下で830〜850℃に加熱して3〜4時間保持することにより、浸炭窒化を行った。次いで、油焼入れを行った。次いで、800〜820℃に加熱して30〜40分間保持した後、二次焼入れを行った。次いで、160〜180℃に加熱して1.5時間保持することにより、焼戻しを行った。そして、これらの成形品を研削加工して、深溝玉軸受の内輪および外輪を作製した。
No.12では、まず、表1に示す組成の鋼Aからなる素材を、深溝玉軸受の内輪および外輪の各形状に成形した。次に、各成形品に対して、以下に示す熱処理を施した。
まず、RXガス+エンリッチガス+アンモニアガスの雰囲気(Cp:0.9〜1.1)下で900〜920℃に加熱して3〜4時間保持することにより、浸炭窒化を行った。次いで、油焼入れを行った。次いで、830〜850℃に加熱して30〜40分間保持した後、二次焼入れを行った。次いで、160〜180℃に加熱して1.5時間保持することにより、焼戻しを行った。そして、これらの成形品を研削加工して、深溝玉軸受の内輪および外輪を作製した。
まず、RXガス+エンリッチガス+アンモニアガスの雰囲気(Cp:0.9〜1.1)下で900〜920℃に加熱して3〜4時間保持することにより、浸炭窒化を行った。次いで、油焼入れを行った。次いで、830〜850℃に加熱して30〜40分間保持した後、二次焼入れを行った。次いで、160〜180℃に加熱して1.5時間保持することにより、焼戻しを行った。そして、これらの成形品を研削加工して、深溝玉軸受の内輪および外輪を作製した。
このようにして得られた内輪および外輪に対して、軌道面(転がり面)をなす表層部のC含有率及びN含有率と、前記表層部の硬さと、前記表層部に存在する残留オーステナイト量(γR )と、そのオーステナイト結晶粒径(γ粒径)とをそれぞれ測定した。これらの結果は、熱処理方法とともに、下記の表2に示した。
なお、前記表層部のC含有率及びN含有率(質量比)は、軌道面をなす表面から100μmの深さまでの部分を、電子線マイクロアナライザにより測定した。
なお、前記表層部のC含有率及びN含有率(質量比)は、軌道面をなす表面から100μmの深さまでの部分を、電子線マイクロアナライザにより測定した。
また、前記表層部の硬さ(HRC)は、軌道面の深さ方向における硬さ分布をビッカース硬度計により測定し、100μmの深さ位置のビッカース硬さをロックウェル硬さに換算して算出した。
さらに、前記表層部に存在する残留オーステナイト量 (体積比)の測定は、軌道面をなす表面から100μmの深さまでの部分を電解研磨で除去した後、X線回折装置により行った。
さらに、前記表層部に存在する残留オーステナイト量 (体積比)の測定は、軌道面をなす表面から100μmの深さまでの部分を電解研磨で除去した後、X線回折装置により行った。
さらに、前記表層部に存在するオーステナイトの結晶粒径は、以下のように測定した。まず、ピクリン酸溶液(ピクラール:ラウリルベンゼンスルフォン酸=1:1)を用いて軌道面を腐食させることで、表層部の組織を現出させた。そして、この組織を走査型電子顕微鏡で観察し、結晶粒界をトレースして画像処理することにより、オーステナイト結晶粒径を算出した。
そして、このようにして得られた内輪および外輪と、SUJ2(高炭素クロム軸受鋼二種)製で浸炭窒化処理が施された玉と、プラスチック製の保持器とを用いて、呼び番号6006の深溝玉軸受を組み立てた。
そして、このようにして得られた内輪および外輪と、SUJ2(高炭素クロム軸受鋼二種)製で浸炭窒化処理が施された玉と、プラスチック製の保持器とを用いて、呼び番号6006の深溝玉軸受を組み立てた。
次に、これらの深溝玉軸受について、異物混入潤滑下で使用されることを想定した以下の条件で寿命試験を行った。なお、この試験は、内輪または外輪にフレーキングが発生するまで行い、このフレーキングが発生するまでの累積応力繰り返し回転数を寿命として測定した。この結果は、ワイブル分布関数に基づくL10寿命と定格疲れ寿命Lcal との寿命比(L10/Lcal )として、表2に併せて示した。
〔寿命試験条件〕
荷重:4412.99N(450kgf)
回転数:3000min-1
潤滑油:♯68タービン油
混入異物:Fe3 C系粉
(硬さ)HRC52
(粒径)74〜147μm
(混入量)潤滑油中に300ppmとなるように混入
〔寿命試験条件〕
荷重:4412.99N(450kgf)
回転数:3000min-1
潤滑油:♯68タービン油
混入異物:Fe3 C系粉
(硬さ)HRC52
(粒径)74〜147μm
(混入量)潤滑油中に300ppmとなるように混入
表2に示すように、深溝玉軸受の内輪および外輪の構成(鋼,熱処理方法,軌道面をなす表層部の硬さ,表層部の残留オーステナイト量,表層部のオーステナイト結晶粒径)が全て本発明の範囲内であるNo.1〜7は、寿命比が0.89〜1.22(定格疲れ寿命と同等かそれ以上)であった。これに対して、いずれか一つが本発明の範囲外であるNo.8〜12は、寿命比が0.09〜0.55(定格疲れ寿命の半分程度かそれ以下)であった。
また、表2に示す内輪および外輪の軌道面をなす表層部のオーステナイト結晶粒径と寿命比の結果を用いて、図3のグラフを作成した。なお、図3では、表2に示すオーステナイト結晶粒径を小数第一位で四捨五入した値で示した。
図3に示すように、オーステナイト結晶粒径を5μm以下とすると、寿命比0.89以上の長寿命が得られることが分かった。この結果は、オーステナイト結晶粒径の微細化による強度向上作用に加えて、オーステナイト結晶粒径の微細化に伴うマルテンサイト結晶および残留オーステナイトの緻密化による強度向上作用や、微細炭化物および微細炭窒化物の析出硬化による強度向上作用も影響していると想定される。
以上の結果から、内輪および外輪の構成を本発明の範囲とすることにより、異物混入環境下で使用される深溝玉軸受の転がり疲れ寿命を、定格疲れ寿命と同等かそれ以上に長くできることが分かった。
図3に示すように、オーステナイト結晶粒径を5μm以下とすると、寿命比0.89以上の長寿命が得られることが分かった。この結果は、オーステナイト結晶粒径の微細化による強度向上作用に加えて、オーステナイト結晶粒径の微細化に伴うマルテンサイト結晶および残留オーステナイトの緻密化による強度向上作用や、微細炭化物および微細炭窒化物の析出硬化による強度向上作用も影響していると想定される。
以上の結果から、内輪および外輪の構成を本発明の範囲とすることにより、異物混入環境下で使用される深溝玉軸受の転がり疲れ寿命を、定格疲れ寿命と同等かそれ以上に長くできることが分かった。
Claims (4)
- 互いに対向配置される軌道面を備えた第一部材および第二部材と、前記第一部材と第二部材の間に転動自在に配設された複数個の転動体と、を備え、前記転動体が転動することにより前記第一部材が前記第二部材に対して相対運動する転がり支持装置において、
前記第一部材、第二部材、転動体の少なくとも一つは、
質量比で、C含有率が0.1%以上1.2%以下、Si含有率が0.1%以上2.0%以下、Mn含有率が0.1%以上2.0%以下、Cr含有率が0.1%以上4.0%以下、Mo含有率が2.0%以下、V含有率が2.0%以下である鋼からなり、
その転がり面をなす表層部は、CおよびNの合計含有率が1.2質量%以上1.8質量%以下で、硬さがHRC62以上であるとともに、25体積%以上40体積%以下の残留オーステナイトを有し、そのオーステナイト結晶粒径が5μm以下であることを特徴とする転がり支持装置。 - 互いに対向配置される軌道面を備えた第一部材および第二部材と、前記第一部材と第二部材の間に転動自在に配設された複数個の転動体と、を備え、前記転動体が転動することにより前記第一部材が前記第二部材に対して相対運動する転がり支持装置の前記第一部材、第二部材、および転動体を製造する方法において、
質量比で、C含有率が0.1%以上1.2%以下、Si含有率が0.1%以上2.0%以下、Mn含有率が0.1%以上2.0%以下、Cr含有率が0.1%以上4.0%以下、Mo含有率が2.0%以下、V含有率が2.0%以下、残部がFeおよび不可避不純物である鋼からなる素材に、浸炭または浸炭窒化処理を施して、転がり面をなす表層部のCおよびNの合計含有率を1.2質量%以上1.8質量%以下とする工程と、
前記浸炭または浸炭窒化処理が施された後の素材をA1 変態点以下まで過冷して、オースフォーミングを施す工程と、
前記オースフォーミングが施された後の素材を所定形状に成形した後、再度A1 変態点以上に加熱して、焼入れ処理および焼戻し処理を施す工程と、
を備えることを特徴とする転がり支持装置の構成部品の製造方法。 - 前記焼入れ処理は、前記転がり面をなす表層部に、結晶粒径が5μm以下のオーステナイトを25体積%以上40体積%以下で残留させ、且つ、前記表層部の硬さをHRC62以上とする条件で行うことを特徴とする請求項2に記載の転がり支持装置の構成部品の製造方法。
- 鋼からなる素材に、浸炭または浸炭窒化処理を施す工程と、
前記浸炭または浸炭窒化処理が施された後の素材をA1 変態点以下まで過冷して、オースフォーミングを施す工程と、
前記オースフォーミングが施された後の素材を所定形状に成形した後、再度A1 変態点以上に加熱して、焼入れ処理および焼戻し処理を施す工程と、
を備えることを特徴とする鋼の熱処理方法。
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