JP4810866B2 - 軸受軌道輪の熱処理用の金型及び軸受軌道輪の製造方法 - Google Patents
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Description
このような超低速回転でかつ高荷重の条件下で使用される転がり軸受として、スラブ連続鋳造機が備えているロール装置用のものがある。
軌道輪の表面における破損により軸受が損傷すると、スラブを挟む方向のロール間距離が変化し、スラブ品質の低下につながる。従って、軸受が損傷すると製造ラインを停止させる必要があり、スラブの減産となってしまう。
また、軸受の軌道輪の製造において軌道輪を熱処理することによりひずみが生ずるが、前記ロール装置に用いられる軸受は比較的大型のものであるため、そのひずみによる軌道輪の寸法精度の悪化が顕著に現れてしまうという問題点を有している。
この方法により製造された軸受軌道輪は、焼入により軌道輪の表層部(表面部)の硬さを高めることができ、さらに、型焼工程により筒状半製品の歪みを抑えることができ、寸法精度の高いものが得られる。
そして、型焼工程により筒状半製品の歪みを抑えることができ、寸法精度の高いものが得られる。
この方法により製造された軸受軌道輪は、焼入により軌道輪の表層部(表面部)の硬さを高めることができる。さらに、型焼工程により筒状半製品の歪みを抑えることができ、寸法精度の高いものが得られる。そして、型焼工程では、筒状半製品の内周面において、部分的に外方の熱処理雰囲気と同じ露出状態とさせることができる。さらに、筒状半製品の一端面においても、部分的に外方の熱処理雰囲気と同じ露出状態とさせることができる。これにより、筒状半製品の内周面、一端面に対して、熱処理の際の熱を十分伝えることができ、型に熱が奪われることがなく、熱処理不良を防止できる。
図1はこの発明の軸受軌道輪の製造方法により製造された内輪・外輪を有している転がり軸受が使用されている装置の一部を示す断面図である。この転がり軸受は、スラブ連続鋳造機用ロール装置が備えているロールRを回転可能に支持する軸受とされている。
転がり軸受は、ロールRの端部に外嵌している内輪1と、その径方向外方の外輪2と、これら内外輪1,2の間に介在させて転動自在とされている転動体としてのころ3と、外輪2に外嵌している円筒状の軸受ケーシング4と、この軸受ケーシング4を孔部6に装着させているベース部材5とを備えている。この転がり軸受は、外輪2の外周面が凸状の球面とされ、軸受ケーシング4の内周面がその凸状の球面と嵌合する凹状の球面とされて、自動調心軸受とされている。
さらに、前記熱処理工程は、第1の浸炭焼入工程と、第2の浸炭焼入工程と、型焼工程とを有している。また、第2の浸炭焼入工程の後に焼き戻し工程を有している。
そして、このような鋼材としては、例えば炭素0.15〜0.3質量%、クロム1.2〜1.6質量%、ケイ素0.35〜0.55質量%およびマンガン0.35〜0.65質量%を含み、残部鉄および不可避不純物からなる、いわゆる準高温用軸受用鋼が用いられる。
このカーボンポテンシャルを1.1%〜1.4%としたのは、1.1%未満である場合、炭素含有量が0.15〜0.3質量%のワーク(筒状半製品W)に対して十分に浸炭が行われず、所望の硬さが得られない。また、カーボンポテンシャルが1.4%を超えると、過剰浸炭が生じたり、大量の煤が発生するおそれがある。
浸炭処理時間は被処理物の寸法・形状により決まるが、4時間〜8時間とするのが一般的である。この時間が4時間未満であると十分な浸炭を行うことができない。また、8時間を越えると粗大な炭化物が生じやすくなる。
また、前記加熱後の冷却温度は70℃〜90℃とするのが好ましい。なお、冷却は油冷とすることができる。
このカーボンポテンシャルを1.1%〜1.4%としたのは、1.1%未満である場合、炭素含有量が0.15〜0.3質量%のワークに対して十分に浸炭が行われず、所望の硬さ等が得られない。また、カーボンポテンシャルが1.4%を超えると大量の煤が発生するおそれがある。
浸炭処理時間は被処理物の寸法・形状により決まるが、3時間〜5時間とするのが一般的である。この時間が3時間未満であると十分な浸炭を行うことができない。また、5時間を越えると粗大な炭化物が生じやすくなる。
また、冷却温度は70℃〜90℃とするのが好ましい。冷却は油冷とすることができる。
加熱温度を800℃〜900℃としたのは、800℃未満であるとオーステナイト化が不十分のため所望の表面硬さが得られない。また、900℃を超えると結晶粒の粗大化により機械的性質の低下を引き起こすおそれがある。また、加熱時間を5分〜60分としたのは、5分未満であると、ひずみ除去が不十分となる。上限は軌道輪寸法によるがこれ以上の効果の向上が望めない。
軸部11の外周側は、軸方向に真っ直ぐ延びる凹溝13と、軸方向に真っ直ぐ延びる凸条部14とが、周方向に所定間隔(交互)に形成されている。凹溝13は、軸部11に筒状半製品Wを外嵌させた状態で、筒状半製品Wの内周面22に接触させないよう形成したものである。そして、凸条部14は、筒状半製品Wの内周面22に接触させる部分であり、軸部11は全体として歯幅の広い歯車形状とされている。つまり、軸部11の外周側部は、軸方向の凹溝13が複数形成されて筒状半製品Wの内周面に部分的に接触させる複数の凸条部14を備えている。
さらに、熱処理の際の温度上昇による膨張で、筒状半製品Wと金型10(軸部11外周側)との間に隙間が生じないよう、金型10は、線膨張係数が筒状半製品Wよりも大きい材質とされている。
フランジ部12は、筒状半製品Wの下端面21に対して部分的に接触させるように欠損部15が形成されている。欠損部15は、円環板状のフランジ部12を外周側から切り欠いて形成した切り欠き部である。そして、フランジ部12のうち欠損部15以外の部分が、筒状半製品Wの下端面21と接触させる当接部16となる。
これにより、筒状半製品Wの下端面21を、フランジ部12の当接部16により周方向の複数箇所において部分的に支持すると共に、端面21のうちの残りの箇所においては、欠損部15により熱処理雰囲気中に露出状となるようにして熱処理を行う。
すなわち、この金型10は、図示しないが外周が平滑な円周面とされた軸部と、軸部よりも大径で外周が平滑な円周面とされたフランジ部とを有する部材に対して、その軸部の外周側部及びフランジ部を、ドリルやエンドミルなどにより、軸方向に1回のストロークで貫くようにして溝(凹溝13と欠損部15の溝底部)を形成することで製造される。これにより、凹溝13における断面が円弧状とされた底面と、欠損部15における断面が円弧状とされた底面とが一致している。
さらに、図4の拡大図に示すように、軸部11の凸条部14とフランジ部12との間の隅部に、周方向を溝方向とする貫通溝18が形成されている。貫通溝18は、その溝の両端が凸条部14の周方向両側の凹溝13に夫々開口するよう形成されている。貫通溝18の両側壁は、凸条部14の径方向外方側の面14aと、これに直交するフランジ部12の当接部16の当接面16aとの双方に対して傾斜する角度で直線的に形成されている。例えば、貫通溝18は、面14a及び当接面16aに対して45°の傾斜角度で傾斜する方向を深さ方向とする溝として形成されている。これにより、溝の形成が容易となる。
筒状半製品Wの下端部において金型10と接触する部分が多くなって、熱処理がその他の部分よりも十分に行われないおそれがあるが、貫通孔17、貫通溝18が形成されていることにより、これを解消できる。
(ア)最表面(即ち表面)を基準として0〜50μmの深さの部分においては、炭素量が1.0〜1.5質量%であり、ロックウェルC硬さが64〜66であり、圧縮残留応力が150〜2000MPaであり、最大炭化物径が3μm以下であり、炭化物面積率が10〜25%である。
(イ)最表面を基準として50〜a/5μm(a=有効硬化層深さ:μm)の深さの部分においては、炭素量が0.75〜1.3質量%であり、圧縮残留応力が150〜1000MPaであり、残留オーステナイト量が25〜45%であり、最大炭化物径が1μm以下であり、炭化物面積率が15%以下である。
すなわち、上記炭素量が1.0質量%未満、上記ロックウェルC硬さが64未満、上記圧縮残留応力が150MPa未満、上記最大炭化物径が3μmを越えると表面における必要な耐摩耗性を得ることができず、一方、上記炭素量が1.5質量%を越え、ロックウェルC硬さが66を超え、上記圧縮残留応力が2000MPaを越えても耐摩耗性向上効果は飽和してそれ以上増大しない。さらに、上記炭化物面積率が10%未満であると必要な耐摩耗性を得ることができず、25%を越えても耐摩耗性向上効果は飽和してそれ以上増大しない。なお、最表面を基準として0〜50μmの深さの部分における炭素量は、析出した炭化物に含まれる炭素と、マトリックス中に含まれる炭素とを合わせた量である。
なお、最表面を基準として50〜a/5μmの深さの部分における炭素量は、析出した炭化物に含まれる炭素と、マトリックス中に含まれる炭素とを合わせた量である。
(実施例)
炭素0.2質量%、ケイ素0.4質量%、マンガン0.5質量%およびクロム1.4質量%を含み、残部鉄および不可避不純物からなる鋼材を用いて所定形状の筒状半製品Wを作製し、これにガス浸炭による浸炭処理を行った。具体的には、950℃で7時間加熱した後80℃に油冷する第1の浸炭焼入処理と、840℃で4時間加熱した後80℃に油冷する第2の浸炭焼入処理と、160℃で2時間加熱した後空冷する焼戻し処理と、前記金型10を用いて880℃で20分加熱した後80℃に冷却する型焼処理とを施した。上記2つの浸炭焼入処理の際のカーボンポテンシャルは1.2である。ついで、各素材の表面を、有効硬化層深さaが1000μmとなるように研磨した。
なお、炭化物面積率は、各深さ部分の断面における任意の0.1mm2の範囲での面積率である。また、表面硬さと内部硬さはいずれもロックウェルC硬さであり、表面硬さは最表面を基準として50μmまでの深さの部分の硬さであり、内部硬さは浸炭層以外の部分の硬さである。さらに、この内輪1、外輪2は、ひずみが少なく寸法精度が良好であった。
(比較例)
930℃で5時間加熱した後80℃に油冷する浸炭焼入処理を1回だけ行い、ついで160℃で2時間加熱して焼き戻し処理した。型焼処理を施していない。その他の条件は、上記実施例と同様とした。
その結果、最表面から0〜50μmの深さの部分においては、炭素量が0.9〜0.95質量%となり、ロックウェルC硬さが62となり、圧縮残留応力が150〜160MPaとなり、且つこの層には炭化物が存在しなかった。また、最表面から50〜200μmの深さの部分においては、炭素量が0.7〜0.95質量%となり、圧縮残留応力が140〜150MPaとなり、残留オーステナイト量が22%となり、且つこの層にも炭化物が存在しなかった。なお、浸炭層以外の部分の内部硬さは45HRCであった。
2 外輪
10 金型
11 軸部
12 フランジ部
13 凹溝
14 凸条部
15 欠損部
16 当接部
17 貫通孔
18 貫通溝
21 端面
22 内周面
W 筒状半製品
Claims (4)
- 軸受軌道輪用の筒状半製品を外嵌させる軸部と、この軸部の一端部に設けられて前記筒状半製品の一端面に当接させる環状のフランジ部と、を備え、
前記軸部の外周側は、前記筒状半製品の内周面に対して非接触となる軸方向に延びる凹溝と、当該筒状半製品の内周面に接触させて拘束する軸方向に延びる凸条部とが、周方向所定間隔に形成されており、
前記フランジ部は、前記筒状半製品の一端面に対して部分的に接触させるべく欠損部が形成されており、
前記フランジ部のうち前記欠損部以外であって前記筒状半製品の一端面と接触させる当接部に、軸方向の貫通孔が形成され、
前記軸部の前記凸条部と前記フランジ部との間の隅部に、当該凸条部の周方向両側の前記凹溝に夫々開口する貫通溝が形成されている
ことを特徴とする軸受軌道輪の熱処理用の金型。 - 鋼材からなる軸受軌道輪用の筒状半製品を浸炭または浸炭窒化焼入する工程と、
この工程を終えた半製品を金型に嵌めて熱処理する型焼工程と、を含み、
前記金型は、軸受軌道輪用の筒状半製品を外嵌させる軸部と、この軸部の一端部に設けられて前記筒状半製品の一端面に当接させる環状のフランジ部と、を備え、前記軸部の外周側は、前記筒状半製品の内周面に対して非接触となる軸方向に延びる凹溝と、当該筒状半製品の内周面に接触させて拘束する軸方向に延びる凸条部とが、周方向所定間隔に形成されており、前記フランジ部は、前記筒状半製品の一端面に対して部分的に接触させるべく欠損部が形成されていることを特徴とする軸受軌道輪の製造方法。 - 炭素を0.15〜0.3質量%含む鋼材からなる筒状半製品を浸炭又は浸炭窒化雰囲気中において加熱した後に冷却する第1の浸炭焼入工程と、
この第1の浸炭焼入工程を終えた前記筒状半製品を浸炭又は浸炭窒化雰囲気中において加熱した後に冷却する第2の浸炭焼入工程と、
この第2の浸炭焼入工程を終えた前記筒状半製品を金型に嵌めて熱処理する型焼工程と、を有し、前記筒状半製品を軸受軌道輪とし、
前記金型は、軸受軌道輪用の筒状半製品を外嵌させる軸部と、この軸部の一端部に設けられて前記筒状半製品の一端面に当接させる環状のフランジ部と、を備え、前記軸部の外周側は、前記筒状半製品の内周面に対して非接触となる軸方向に延びる凹溝と、当該筒状半製品の内周面に接触させて拘束する軸方向に延びる凸条部とが、周方向所定間隔に形成されており、前記フランジ部は、前記筒状半製品の一端面に対して部分的に接触させるべく欠損部が形成されていることを特徴とする軸受軌道輪の製造方法。 - 鋼材からなる軸受軌道輪用の筒状半製品を浸炭または浸炭窒化焼入する工程と、
この工程を終えた前記筒状半製品を外嵌させる軸部とこの軸部の一端部に設けられて当該筒状半製品の一端面に当接させる環状のフランジ部とを備えた金型に、当該筒状半製品を嵌めて熱処理する型焼工程とを含み、
前記金型の前記軸部の外周側は、前記筒状半製品の内周面に対して非接触となる軸方向に延びる凹溝と、当該筒状半製品の内周面に接触させて拘束する軸方向に延びる凸条部とが、周方向所定間隔に形成されており、前記金型の前記フランジ部は、前記筒状半製品の一端面に対して部分的に接触させるべく欠損部が形成されており、
前記型焼工程は、前記筒状半製品の内周面を、前記軸部により周方向の複数箇所から部分的に拘束して保持すると共に、残りの箇所においては熱処理雰囲気中に露出状となるようにして熱処理し、かつ、前記筒状半製品の一端面を、前記フランジ部により周方向の複数箇所において部分的に支持すると共に、残りの箇所においては前記熱処理雰囲気中に露出状となるようにして熱処理することを特徴とする軸受軌道輪の製造方法。
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