JP2013238274A - ラジアル転がり軸受用内輪およびその製造方法 - Google Patents

ラジアル転がり軸受用内輪およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】材料コストおよび熱処理コストを低減しうるとともに、静的強度およびクリープ強度が増大したラジアル転がり軸受用内輪の製造方法を提供する。
【解決手段】内輪2の製造方法は、炭素含有量が0.45wt%以上の鋼でつくられた加工済み中間素材の外周面および内周面のみに高周波焼入処理を含む熱処理を施し、軌道溝3の溝内面を含む外周面の表層部に、ビッカース硬さが700以上、圧縮残留応力が150MPa以上の外側硬化層7を形成し、内周面の表層部にビッカース硬さが700以上の内側硬化層8を形成し、外側硬化層7と内側硬化層8との間にビッカース硬さが500以下の非硬化層9を形成する。軌道溝3の最深部における内輪厚みをtmm、外側硬化層7の厚みをd1mm、内側硬化層8の厚みをd2mm、非硬化層9の厚みをd3mmとした場合、d1/t≧0.15、d2/t≧0.10、d3/t≧0.3とする。
【選択図】図2

Description

この発明は、外周面に軌道溝が形成されており、かつ駆動輪として用いられるラジアル転がり軸受用内輪およびその製造方法に関する。
たとえば外周面に軌道溝が形成されている内輪と、内周面に軌道溝が形成されている外輪と、内外両輪間に配置された複数の玉とを有するラジアル転がり軸受の転がり疲労寿命の長寿命化を図ることを目的として、Cr、Mo、Vなどを添加した鋼を所定の形状に加工して加工済み中間素材を作り、前記加工済み中間素材に浸炭処理や浸炭窒化処理を含む熱処理を施すことによって、表層部の硬さ、残留オーステナイト量、および炭化物量などが種々調整された内輪や外輪が用いられている。
しかしながら、浸炭処理や浸炭窒化処理を含む熱処理を施した場合、炭素や窒素が表面に浸入することにより表面脆化を起こし、静的強度である圧壊強度が低下するおそれがある。また、レアメタルの一種であるCr、Mo、Vなどを添加しているので材料コストが高くなるとともに、熱処理コストが高くなる。
また、転がり疲労寿命の長寿命化を図るとともに静的強度を増大させるためには、浸炭窒化処理の後に2次焼入処理を施して結晶粒を微細化することが有効であることが知られているが、熱処理コストがさらに高くなる。
外周面に軌道溝が形成されたラジアル転がり軸受用内輪の熱処理コストを低減させたものとして、0.45〜0.60wt%のCを含有する鋼からなる材料を所定の形状に加工して加工済み中間素材を作り、前記加工済み中間素材の外周面のみに高周波焼入処理を施し、さらに焼戻し処理および仕上げ加工処理を施すことによって、軌道溝の溝内面を含み、かつビッカース硬さが600〜720であるとともに圧縮残留応力が100MPa以上である硬化層が形成されており、中心線を含む断面において、軌道溝の最深部における軌道溝の深さ方向の内輪厚みをtmm、軌道溝の最深部における硬化層の厚みをdmmとした場合、0.20≦d/t≦0.35となっているするラジアル転がり軸受用内輪が知られている(特許文献1参照)。
しかしながら、特許文献1記載のラジアル転がり軸受用内輪の場合、内輪の内周面に硬化層が形成されていないので、当該内輪を駆動輪として使用した際のクリープ強度が不足するという問題がある。しかも、外周面のみに硬化層が形成されているので、静的強度であるラジアル方向に力が加わった際の圧壊強度が不足するという問題がある。
特開2009−19713号公報
この発明の目的は、上記問題を解決し、材料コストおよび熱処理コストを低減しうるとともに、静的強度およびクリープ強度が増大したラジアル転がり軸受用内輪およびその製造方法を提供することにある。
請求項1の発明によるラジアル転がり軸受用内輪は、
外周面に軌道溝が形成されており、かつ駆動輪として用いられるラジアル転がり軸受用内輪であって、
炭素含有量が0.45wt%以上の鋼からなる材料を所定の形状に加工して加工済み中間素材を作り、前記加工済み中間素材の外周面および内周面のみに昇温速度:950〜3500℃/秒、到達温度:900〜1100℃、焼入液液温:15〜35℃の条件での高周波焼入処理を施し、その後焼戻し処理および仕上げ加工処理を施すことによって、軌道溝の溝内面を含む外周面の表層部に、ビッカース硬さが700以上であるとともに圧縮残留応力が150MPa以上である外側硬化層が形成されるとともに、内周面の表層部にビッカース硬さが700以上である内側硬化層が形成され、さらに外側硬化層と内側硬化層との間にビッカース硬さが500以下である非硬化層が形成されており、
中心線を含む断面において、軌道溝の最深部に対応する部分での軌道溝の深さ方向の内輪厚みをtmm、軌道溝の最深部に対応する部分での外側硬化層の厚みをd1mm、軌道溝の最深部に対応する部分での内側硬化層の厚みをd2mm、ならびに軌道溝の最深部に対応する部分での非硬化層の厚みをd3mmとした場合、d1/t≧0.15、d2/t≧0.10、d3/t≧0.3となっていることを特徴とするものである。
請求項2の発明によるラジアル転がり軸受は、
内輪、外輪および内外両輪間に配置された複数の転動体を備えており、前記内輪が駆動輪であるとともに前記外輪が固定輪であり、前記内輪が請求項1記載の内輪からなるものである。
請求項3の発明によるラジアル転がり軸受用内輪の製造方法は、
外周面に軌道溝が形成されており、かつ駆動輪として用いられるラジアル転がり軸受用内輪を製造する方法であって、
炭素含有量が0.45wt%以上の鋼からなる材料を所定の形状に加工して加工済み中間素材を作り、前記加工済み中間素材の外周面および内周面のみに昇温速度:950〜3500℃/秒、到達温度:900〜1100℃、焼入液液温:15〜35℃の条件で高周波焼入処理を施した後、焼戻し処理を施し、さらに仕上げ加工処理を施すことによって、軌道溝の溝内面を含む外周面の表層部に、ビッカース硬さが700以上であるとともに圧縮残留応力が150MPa以上である外側硬化層を形成するとともに、内周面の表層部にビッカース硬さが700以上である内側硬化層を形成し、さらに外側硬化層と内側硬化層との間にビッカース硬さが500以下である非硬化層を形成し、
中心線を含む断面において、軌道溝の最深部に対応する部分での軌道溝の深さ方向の内輪厚みをtmm、軌道溝の最深部に対応する部分での外側硬化層の厚みをd1mm、軌道溝の最深部に対応する部分での内側硬化層の厚みをd2mm、ならびに軌道溝の最深部に対応する部分での非硬化層の厚みをd3mmとした場合、d1/t≧0.15、d2/t≧0.10、d3/t≧0.3とすることを特徴とするものである。
請求項4の発明によるラジアル転がり軸受用内輪の製造方法は、請求項3の発明において、前記焼戻し処理を140℃以上に加熱保持することにより行うものである。
請求項1の発明のラジアル転がり軸受用内輪によれば、炭素含有量が0.45wt%以上の鋼を用いているので、大量生産されるJIS規格鋼である機械構造用炭素鋼や、SUJ2に代表される高炭素クロム軸受鋼を用いることが可能になり、材料コストが安くなる。また、昇温速度:950〜3500℃/秒、到達温度:900〜1100℃、焼入液液温:15〜35℃の条件での高周波焼入処理を施し、その後焼戻し処理および仕上げ加工処理を施すことによってつくられているので、浸炭処理や浸炭窒化処理を施す場合に比べて熱処理コストが安くなる。
しかも、軌道溝の溝内面を含む外周面の表層部に、ビッカース硬さが700以上であるとともに圧縮残留応力が150MPa以上である外側硬化層が形成されているので、転がり疲労寿命を長寿命化することが可能になるとともに、静的強度およびクリープ強度が増大する。特に、軌道溝の溝内面を含む外側硬化層の圧縮残留応力が150MPa以上であり、前記d1/t≧0.15となっているから、軌道溝の溝内面における疲労亀裂の発生および発生した疲労亀裂の進展を抑制することが可能になり、転がり疲労寿命を長寿命化することが可能になる。また、内周面の表層部にビッカース硬さが700以上である内側硬化層が形成されており、前記d2/t≧0.10となっているから、駆動輪として使用した際のクリープ強度および静的強度が増大する。さらに、前記d3/t≧0.3となっているから、外側硬化層の圧縮残留応力を150MPa以上とすることが可能になる。
請求項2の発明のラジアル転がり軸受によれば、転がり疲労寿命の長寿命化を図ることが可能になる。
請求項3の発明のラジアル転がり軸受用内輪の製造方法によれば、炭素含有量が0.45wt%以上の鋼を用いているので、大量生産されるJIS規格鋼である機械構造用炭素鋼や、SUJ2に代表される高炭素クロム軸受鋼を用いることが可能になり、材料コストが安くなる。また、昇温速度:950〜3500℃/秒、到達温度:900〜1100℃、焼入液液温:15〜35℃の条件での高周波焼入処理を施し、その後焼戻し処理および仕上げ加工処理を施しているので、浸炭処理や浸炭窒化処理を施す場合に比べて熱処理コストが安くなる。さらに、製造されたラジアル転がり軸受用内輪は、請求項1の発明のラジアル転がり軸受用内輪で述べた効果を奏する。
この発明によるラジアル転がり軸受用内輪を備えたラジアル転がり軸受を示す中心線を含む部分拡大断面図である。 図1のラジアル転がり軸受の内輪を、内輪厚み、ならびに外側硬化層、内側硬化層および非硬化層の厚みを分かりやすくするために拡大して示す図である。
以下、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。この実施形態は、この発明のラジアル転がり軸受用内輪を、深溝玉軸受に適用したものである。
図1はこの発明の内輪を用いた深溝玉軸受型のラジアル転がり軸受を示し、図2はその内輪を示す。
図1において、深溝玉軸受型のラジアル転がり軸受(1)は、外周面に軌道溝(3)を有する内輪(2)、内周面に軌道溝(5)を有する外輪(4)、および内外両輪(2)(4)間に配置された複数の玉(6)を備えており、内輪(2)が駆動輪となっている。内輪(2)は、たとえばJIS規格鋼である機械構造用炭素鋼や、SUJ2に代表される高炭素クロム軸受鋼などの炭素含有量が0.45wt%以上の鋼からなる材料を用いてつくられている。
図2に示すように、内輪(2)における軌道溝(3)の溝内面を含む外周面の表層部に、ビッカース硬さが700以上であるとともに圧縮残留応力が150MPa以上である外側硬化層(7)が形成されるとともに、駆動軸が圧入される内周面の表層部にビッカース硬さが700以上である内側硬化層(8)が形成され、さらに外側硬化層(7)と内側硬化層(8)との間にビッカース硬さが500以下である非硬化層(9)が形成されている。中心線を含む断面において、内輪(2)における軌道溝(3)の最深部に対応する部分での軌道溝(3)の深さ方向の内輪厚みをtmm、軌道溝(3)の最深部に対応する部分での外側硬化層(7)の厚みをd1mm、軌道溝(3)の最深部に対応する部分での内側硬化層(8)の厚みをd2mm、ならびに軌道溝(3)の最深部に対応する部分での非硬化層(9)の厚みをd3mmとした場合、d1/t≧0.15、d2/t≧0.10、d3/t≧0.3となっている。なお、d1+d2+d3≦tである。また、内輪(2)の両端面には硬化層は形成されていない。
内輪(2)をつくる鋼中の炭素含有量を0.45wt%以上に限定したのは、これよりも少ない場合、後述する製造時の高周波焼入処理により形成される外側硬化層(7)および内側硬化層(8)のビッカース硬さを700以上にすることができないからである。なお、前記炭素含有量の上限は、たとえば熱間鍛造後の球状化焼鈍処理の有無などを考慮して適宜決められる。
内輪(2)の外側硬化層(7)の圧縮残留応力を150MPa以上に限定したのは、外側硬化層(7)の圧縮残留応力が150MPa未満であると、軌道溝(3)の溝内面における疲労亀裂の発生および発生した疲労亀裂の進展を抑制することができず、ラジアル転がり軸受(1)の転がり疲労寿命が短くなるからである。
中心線を含む断面において、内輪(2)における軌道溝(3)の最深部に対応する部分での軌道溝(3)の深さ方向の内輪厚みをtmm、軌道溝(3)の最深部に対応する部分での外側硬化層(7)の厚みをd1mm、軌道溝(3)の最深部に対応する部分での内側硬化層(8)の厚みをd2mm、ならびに軌道溝(3)の最深部に対応する部分での非硬化層(9)の厚みをd3mmとした場合、d1/t≧0.15に限定したのは、ラジアル転がり軸受(1)の転がり疲労寿命の長寿命化を図るためである。また、d2/t≧0.10に限定したのは、内輪(2)を駆動輪として使用した際のクリープ強度、およびラジアル方向の力が加わった際の圧壊強度である静的強度を増大させるためである。さらに、d3/t≧0.3に限定したのは、外側硬化層(7)の圧縮残留応力を150MPa以上にするためである。
内輪(2)の製造方法は、たとえばJIS規格鋼である機械構造用炭素鋼や、SUJ2に代表される高炭素クロム軸受鋼などの炭素含有量が0.45wt%以上の鋼からなる材料を所定の形状に加工して加工済み中間素材を作り、前記加工済み中間素材の外周面および内周面のみに昇温速度:950〜3500℃/秒、到達温度:900〜1100℃、焼入液液温:15〜35℃の条件で高周波焼入処理を施した後、焼戻し処理を施し、さらに仕上げ加工処理を施すものである。
上述した内輪(2)の製造方法において、前記高周波焼入処理の際の昇温速度、到達温度および焼入液液温を上述したとおりに限定したのは、外側硬化層(7)のビッカース硬さを700以上にするとともに圧縮残留応力を150MPa以上とし、内側硬化層(8)のビッカース硬さを700以上とし、さらに前記d1/t≧0.15、d2/t≧0.10、d3/t≧0.3の条件を満たすためである。なお、焼入液としては、水溶性高周波焼入液、たとえば出光興産社製の「ダフニープラスチッククエンチF」の濃度を3〜12%に調整したものが用いられる。
また、高周波焼入後の焼戻し処理は、140℃以上に加熱保持して行うことが好ましい。焼戻し処理の加熱は、高周波焼入を施した部分のみに行ってもよいし、あるいは全体に行ってもよい。
外輪(4)および玉(6)は、たとえばJIS SUJ2からなる材料を所定の形状に加工して加工済み中間素材を作り、加工済み中間素材を、脱炭しない雰囲気中で加熱して急冷する焼入処理、焼戻し処理および仕上げ加工処理を施すことにより製造される。
以下、この発明の具体的実施例を比較例とともに説明する。
実施例1〜2および比較例1〜4
JIS SUJ2(実施例1、比較例1〜4)およびJIS S55C(実施例2)をからなる材料を加工して、型番6206の転がり軸受(図2参照)に用いられる加工済み内輪素材を6種類形成した。ついで、このうちの5種類の加工済み内輪素材(実施例1〜2、比較例1〜3)に高周波焼入処理を施した後、焼戻し処理を施し、さらに仕上げ加工処理を施して内輪を製造した。高周波焼入液としては、出光興産社製の「ダフニープラスチッククエンチF」の濃度を10%に調整した液温20℃のものを用いた。また、1種類の加工済み内輪素材(比較例4)に、脱炭が起きないように通常の焼入処理を施した後、焼戻し処理を施し、さらに仕上げ加工処理を施して内輪を製造した。使用した材料、高周波焼入処理条件および通常焼入処理条件を表1に示す。なお、焼戻し処理条件は、SUJ2を用いたものについては、180℃×2時間であり、S55Cを用いたものについては160℃×2時間である。
Figure 2013238274
実施例1〜2および比較例1〜3の内輪においては、軌道溝の溝内面を含む外周面の表層部におよびビッカース硬さがである外側硬化層が形成されるとともに、内周面の表層部にビッカース硬さがである内側硬化層が形成されており、さらに外側硬化層と内側硬化層との間にビッカース硬さが500以下である非硬化層が形成されていた。また、比較例4の内輪においては、全断面が硬化してビッカース硬さが700以上となっていた。
実施例1〜2および比較例1〜3の各内輪については、中心線を含む断面における軌道溝の最深部に対応する部分での軌道溝の深さ方向の内輪厚みtmm、軌道溝の最深部に対応する部分での外側硬化層の厚みd1mm、軌道溝の最深部に対応する部分での内側硬化層の厚みd2mm、ならびに軌道溝の最深部に対応する部分での非硬化層の厚みd3mmを測定し、d1/t、d2/t、d3/tを求めた。さらに、実施例1〜2および比較例1〜3の各内輪については外側硬化層の表面から深さ50μmの位置の圧縮残留応力を求め、比較例4の内輪については外周面の表面から深さ50μmの位置の圧縮残留応力を求めた。これらの結果を表2に示す。
Figure 2013238274
表2に示すように、比較例1においては、外側硬化層の圧縮残留応力およびd3/tが本願発明の範囲から外れ、比較例2においては、d1/tが本願発明の範囲から外れ、比較例3においては、d1/tおよびd2/tが本願発明の範囲から外れている。なお、比較例4は全断面において硬化している。
評価試験
実施例1〜2および比較例1〜4の内輪を、JIS SUJ2からなりかつ通常の焼入処理、焼戻し処理および仕上げ加工処理が施されてなる外輪および玉と組み合わせて型番6206の玉軸受を組立てた。外輪および玉の焼入処理条件は、脱炭が起きないように、カーボンポテンシャルが0.8の雰囲気中において、830℃に30分間加熱した後、80℃のコールド油を用いて10分間冷却するものであり、同じく焼戻し処理条件は180℃で2時間加熱保持するものである。
ついで、これらの玉軸受を使用して寿命試験を行った。試験条件は表3に示す通りである。表3に示す試験機は、同時に4個の玉軸受の試験を行うことが可能であり、試験機に同じ内輪を備えた玉軸受を4個セットし、いずれかの玉軸受の内輪が破損するまでの時間を計測するという試験を5回繰り返し、破損までの時間の平均をとることにより寿命試験を行った。なお、表3中の荷重は1つの玉軸受のラジアル荷重を意味し、最大接触面圧は1つの玉軸受の内輪および外輪の最大接触面圧を意味する。
Figure 2013238274
そして、比較例4の内輪を用いた玉軸受の寿命を1とし、比較例4の内輪を用いた玉軸受の寿命に対する実施例1〜2および比較例1〜3の内輪を用いた玉軸受の寿命の比を求めた。その結果も表2にまとめて示す。
以上の結果から明らかなように、本発明品である実施例1〜2の内輪を用いた玉軸受の寿命が、外側硬化層の圧縮残留応力、d1/t、d2/tおよびd3/tのうちの少なくともいずれか1つが本願発明の範囲から外れた比較例1〜3の内輪を用いた玉軸受の寿命に比べてはるかに長くなっている。
この発明による内輪は、内輪が駆動輪となるラジアル転がり軸受に好適に用いられる。
(1):ラジアル転がり軸受、(2):内輪、(3):軌道溝、(4):外輪、(6):玉(転動体)、(7):外側硬化層、(8):内側硬化層、(9):非硬化層

Claims (4)

  1. 外周面に軌道溝が形成されており、かつ駆動輪として用いられるラジアル転がり軸受用内輪であって、
    炭素含有量が0.45wt%以上の鋼からなる材料を所定の形状に加工して加工済み中間素材を作り、前記加工済み中間素材の外周面および内周面のみに昇温速度:950〜3500℃/秒、到達温度:900〜1100℃、焼入液液温:15〜35℃の条件での高周波焼入処理を施し、その後焼戻し処理および仕上げ加工処理を施すことによって、軌道溝の溝内面を含む外周面の表層部に、ビッカース硬さが700以上であるとともに圧縮残留応力が150MPa以上である外側硬化層が形成されるとともに、内周面の表層部にビッカース硬さが700以上である内側硬化層が形成され、さらに外側硬化層と内側硬化層との間にビッカース硬さが500以下である非硬化層が形成されており、
    中心線を含む断面において、軌道溝の最深部に対応する部分での軌道溝の深さ方向の内輪厚みをtmm、軌道溝の最深部に対応する部分での外側硬化層の厚みをd1mm、軌道溝の最深部に対応する部分での内側硬化層の厚みをd2mm、ならびに軌道溝の最深部に対応する部分での非硬化層の厚みをd3mmとした場合、d1/t≧0.15、d2/t≧0.10、d3/t≧0.3となっていることを特徴とするラジアル転がり軸受用内輪。
  2. 内輪、外輪および内外両輪間に配置された複数の転動体を備えており、前記内輪が駆動輪であるとともに前記外輪が固定輪であり、前記内輪が請求項1記載の内輪からなるラジアル転がり軸受。
  3. 外周面に軌道溝が形成されており、かつ駆動輪として用いられるラジアル転がり軸受用内輪を製造する方法であって、
    炭素含有量が0.45wt%以上の鋼からなる材料を所定の形状に加工して加工済み中間素材を作り、前記加工済み中間素材の外周面および内周面のみに昇温速度:950〜3500℃/秒、到達温度:900〜1100℃、焼入液液温:15〜35℃の条件で高周波焼入処理を施した後、焼戻し処理を施し、さらに仕上げ加工処理を施すことによって、軌道溝の溝内面を含む外周面の表層部に、ビッカース硬さが700以上であるとともに圧縮残留応力が150MPa以上である外側硬化層を形成するとともに、内周面の表層部にビッカース硬さが700以上である内側硬化層を形成し、さらに外側硬化層と内側硬化層との間にビッカース硬さが500以下である非硬化層を形成し、
    中心線を含む断面において、軌道溝の最深部に対応する部分での軌道溝の深さ方向の内輪厚みをtmm、軌道溝の最深部に対応する部分での外側硬化層の厚みをd1mm、軌道溝の最深部に対応する部分での内側硬化層の厚みをd2mm、ならびに軌道溝の最深部に対応する部分での非硬化層の厚みをd3mmとした場合、d1/t≧0.15、d2/t≧0.10、d3/t≧0.3とすることを特徴とするラジアル転がり軸受用内輪の製造方法。
  4. 前記焼戻し処理を140℃以上に加熱保持することにより行う請求項3記載のラジアル転がり軸受用内輪の製造方法。
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