JP5392099B2 - 転がり摺動部材およびその製造方法 - Google Patents
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Description
本発明は、転がり摺動部材およびその製造方法に関する。
自動車や産業機械などに用いられている転がり軸受を長寿命化させるために、軸受の軌道輪や転動体を形成する鋼材として、焼入れ性や耐磨耗性の向上に寄与するクロムを多く含む合金に対して1回の浸炭窒化処理および窒素を含まない雰囲気下での加熱拡散処理を施した軸受鋼からなる鋼材が提案されている(特許文献1を参照)。
しかしながら、前記特許文献1に記載の方法では、表面層における窒素の含有量を0.1〜0.5質量%程度にすることができるだけであり、十分な量の窒素を鋼材の表面層に含有させることができないため、耐熱性や耐磨耗性が十分に得られておらず、十分な長寿命化を図ることができないという欠点がある。また、希少金属であるクロムが多く含まれている軸受鋼は、高価であるため、転がり軸受の製造コストが増大する。
そこで、前記軸受鋼よりも安価な機械構造用炭素鋼を転がり軸受の材料として用いることが検討されている。
そこで、前記軸受鋼よりも安価な機械構造用炭素鋼を転がり軸受の材料として用いることが検討されている。
しかしながら、機械構造用炭素鋼は、十分な硬さに焼入れ、硬化することができず、従来のSUJ2などの軸受鋼製の転がり軸受と同等の寿命を確保することができない。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、安価な材料を用いて、従来の軸受鋼製の転がり摺動部材と同等以上の寿命を確保することができる転がり摺動部材およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明の転がり摺動部材は、0.1〜0.5質量%の炭素と、0.1質量%〜0.4質量%ケイ素と、0質量%を超え、かつ0.9質量%以下のマンガンと、0質量%を超え、かつ0.2質量%以下のクロムとを含有し、かつ残部が鉄および不可避不純物である鋼材から得られ、相手部材との間で相対的に転がり接触もしくは滑り接触または両接触を含む接触をする転がり摺動面を有する転がり摺動部材であって、
前記転がり摺動面の表面から略10μmの深さの位置での窒素の含有量が0.6〜0.9質量%であり、
前記転がり摺動面の表面から略200μmの深さの位置での窒素の含有量が0.4〜0.7質量%であり、
前記転がり摺動面の表面から10μmの深さの位置での残留オーステナイト量が25〜35%であり、
前記転がり摺動面の表面から少なくとも100μmの深さの位置での残留圧縮応力が600MPa以上であることを特徴とする。
なお、表面から略10μmの深さの位置での窒素の含有量は、表面から深さ方向の断面において、表面から10μmの深さの位置を中心とした深さ方向に±1μmの範囲における窒素の含有量のことをいう。また、表面から略200μmの深さの位置での窒素の含有量は、表面から深さ方向の断面において、表面から200μmの深さの位置を中心とした深さ方向に±1μmの範囲における窒素の含有量のことをいう。
前記転がり摺動面の表面から略10μmの深さの位置での窒素の含有量が0.6〜0.9質量%であり、
前記転がり摺動面の表面から略200μmの深さの位置での窒素の含有量が0.4〜0.7質量%であり、
前記転がり摺動面の表面から10μmの深さの位置での残留オーステナイト量が25〜35%であり、
前記転がり摺動面の表面から少なくとも100μmの深さの位置での残留圧縮応力が600MPa以上であることを特徴とする。
なお、表面から略10μmの深さの位置での窒素の含有量は、表面から深さ方向の断面において、表面から10μmの深さの位置を中心とした深さ方向に±1μmの範囲における窒素の含有量のことをいう。また、表面から略200μmの深さの位置での窒素の含有量は、表面から深さ方向の断面において、表面から200μmの深さの位置を中心とした深さ方向に±1μmの範囲における窒素の含有量のことをいう。
前記構成を備えた転がり摺動部材は、前記組成を有する機械構造用炭素鋼などの安価な鋼材から得られたものであるため、安い材料コストで製造することができる。
しかも、前記構成を備えた転がり摺動部材は、前記転がり摺動面の表面から略10μmの深さの位置での窒素の含有量が0.6〜0.9質量%、前記転がり摺動面の表面から略200μmの深さの位置での窒素の含有量が0.4〜0.7質量%となっているので、表面層における耐磨耗性および耐熱性を確保することができるとともに、内部(表面から略200μmの深さの位置)における内部起点剥離を抑制するのに十分な組織安定性とを確保することができる。また、前記転がり摺動部材は、表面から10μmの深さの位置での残留オーステナイト量が25〜35%となっているので、異物による表面損傷による応力集中を低減することができ、かつ従来の軸受鋼製の転がり摺動部材と同等以上の硬さを確保することができる。さらに、表面から少なくとも100μmの深さの位置での残留圧縮応力が600MPa以上となっているので、前記転がり摺動部材は、十分な疲労強度を確保することができる。
したがって、前記転がり摺動部材は、従来の軸受鋼製の転がり摺動部材と同等以上の寿命を確保することができる。
しかも、前記構成を備えた転がり摺動部材は、前記転がり摺動面の表面から略10μmの深さの位置での窒素の含有量が0.6〜0.9質量%、前記転がり摺動面の表面から略200μmの深さの位置での窒素の含有量が0.4〜0.7質量%となっているので、表面層における耐磨耗性および耐熱性を確保することができるとともに、内部(表面から略200μmの深さの位置)における内部起点剥離を抑制するのに十分な組織安定性とを確保することができる。また、前記転がり摺動部材は、表面から10μmの深さの位置での残留オーステナイト量が25〜35%となっているので、異物による表面損傷による応力集中を低減することができ、かつ従来の軸受鋼製の転がり摺動部材と同等以上の硬さを確保することができる。さらに、表面から少なくとも100μmの深さの位置での残留圧縮応力が600MPa以上となっているので、前記転がり摺動部材は、十分な疲労強度を確保することができる。
したがって、前記転がり摺動部材は、従来の軸受鋼製の転がり摺動部材と同等以上の寿命を確保することができる。
本発明の転がり摺動部材の製造方法は、相手部材との間で相対的に転がり接触もしくは滑り接触または両接触を含む接触をする前記転がり摺動面を備えた転がり摺動部材の製造方法であって、
0.1〜0.5質量%の炭素と、0.1質量%〜0.4質量%ケイ素と、0質量%を超え、かつ0.9質量%以下のマンガンと、0質量%を超え、かつ0.2質量%以下のクロムとを含有し、かつ残部が鉄および不可避不純物である鋼材を、所定の形状に加工して、少なくとも前記転がり摺動面を形成する部分に研磨取代を有する素形材を得る前加工工程、
前記素形材を、カーボンポテンシャル0.9〜1.3で、残留アンモニア量が1〜1.4体積%の浸炭窒化雰囲気において、当該素形材を880〜920℃で加熱した後、前記浸炭窒化雰囲気において、当該素形材を前記加熱の際の温度より低い温度で、かつ800〜840℃で加熱し、急冷して、前記転がり摺動面を形成する部分の表面から10μmの深さの位置での残留オーステナイト量が45%以上である中間素材を得る浸炭窒化処理工程、
前記浸炭窒化処理後の中間素材に対して、当該中間素材を160℃以上で加熱する焼もどし処理を施す焼もどし処理工程、および
前記焼もどし処理後の中間素材の少なくとも前記転がり摺動面を形成する部分を研磨する研磨加工工程、
研磨加工工程後の中間素材の少なくとも前記転がり摺動面を形成する部分に対して、ショットピーニング加工を施し、前記転がり摺動面の表面から略10μmの深さの位置での窒素の含有量が0.6質量%以上であり、前記転がり摺動面の表面から略200μmの深さの位置での窒素の含有量が0.4質量%以上であり、前記転がり摺動面の表面から10μmの深さの位置での残留オーステナイト量が25〜35%であり、前記転がり摺動面の表面から少なくとも100μmの深さの位置での残留圧縮応力が600MPa以上である転がり摺動部材を得るショットピーニング加工工程
を含むことを特徴とする。
0.1〜0.5質量%の炭素と、0.1質量%〜0.4質量%ケイ素と、0質量%を超え、かつ0.9質量%以下のマンガンと、0質量%を超え、かつ0.2質量%以下のクロムとを含有し、かつ残部が鉄および不可避不純物である鋼材を、所定の形状に加工して、少なくとも前記転がり摺動面を形成する部分に研磨取代を有する素形材を得る前加工工程、
前記素形材を、カーボンポテンシャル0.9〜1.3で、残留アンモニア量が1〜1.4体積%の浸炭窒化雰囲気において、当該素形材を880〜920℃で加熱した後、前記浸炭窒化雰囲気において、当該素形材を前記加熱の際の温度より低い温度で、かつ800〜840℃で加熱し、急冷して、前記転がり摺動面を形成する部分の表面から10μmの深さの位置での残留オーステナイト量が45%以上である中間素材を得る浸炭窒化処理工程、
前記浸炭窒化処理後の中間素材に対して、当該中間素材を160℃以上で加熱する焼もどし処理を施す焼もどし処理工程、および
前記焼もどし処理後の中間素材の少なくとも前記転がり摺動面を形成する部分を研磨する研磨加工工程、
研磨加工工程後の中間素材の少なくとも前記転がり摺動面を形成する部分に対して、ショットピーニング加工を施し、前記転がり摺動面の表面から略10μmの深さの位置での窒素の含有量が0.6質量%以上であり、前記転がり摺動面の表面から略200μmの深さの位置での窒素の含有量が0.4質量%以上であり、前記転がり摺動面の表面から10μmの深さの位置での残留オーステナイト量が25〜35%であり、前記転がり摺動面の表面から少なくとも100μmの深さの位置での残留圧縮応力が600MPa以上である転がり摺動部材を得るショットピーニング加工工程
を含むことを特徴とする。
本発明の転がり摺動部材の製造方法は、前記鋼材を加工した素形材に対して、880〜920℃での浸炭窒化処理(「高温浸炭窒化処理」という)、当該高温浸炭窒化処理の際の加熱の温度より低い温度で、かつ800〜840℃での浸炭窒化処理(「低温浸炭窒化処理」という)、焼もどし処理、研磨加工およびショットピーニング加工をこの順で施しているため、得られる転がり摺動部材の表面から略10μmの深さの位置での窒素の含有量を0.6〜0.9質量%、表面から略200μmの深さの位置での窒素の含有量を0.4〜0.7質量%、表面から10μmの深さの位置での残留オーステナイト量を25〜35%、表面から少なくとも100μmの深さの位置での残留圧縮応力が600MPa以上とすることができる。
したがって、本発明の転がり摺動部材の製造方法によれば、前述の優れた作用効果を奏する転がり摺動部材を得ることができる。
したがって、本発明の転がり摺動部材の製造方法によれば、前述の優れた作用効果を奏する転がり摺動部材を得ることができる。
本発明の転がり摺動部材およびその製造方法によれば、安価な材料を用いて、従来の軸受鋼製の転がり摺動部材と同等以上の寿命を確保することができるという優れた効果を奏する。
(転がり摺動部材および転がり軸受)
以下、添付の図面により本発明の一実施形態に係る転がり摺動部材を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る転がり摺動部材を備えた玉軸受の構造を示す概略説明図である。
以下、添付の図面により本発明の一実施形態に係る転がり摺動部材を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る転がり摺動部材を備えた玉軸受の構造を示す概略説明図である。
玉軸受10は、内周面に転がり摺動面としての軌道面1aを有する外輪1と、外周面に転がり摺動面としての軌道面2aを有する内輪2と、前記外内輪1,2の両軌道面1a,2a間に配置され、転がり摺動面としての転動面を有する複数個の玉3と、前記複数個の玉3を周方向に所定間隔毎に保持する保持器4とを備えている。外内輪1,2および玉3は、本実施形態に係る転がり摺動部材である。
外内輪1,2および玉3は、0.1〜0.5質量%の炭素と、0.1質量%〜0.4質量%ケイ素と、0質量%を超え、かつ0.9質量%以下のマンガンと、0質量%を超え、かつ0.2質量%以下のクロムとを含有し、かつ残部が鉄および不可避不純物である鋼材から得られたものである。かかる鋼材は、安価に入手することができるものであるため、外内輪1,2および玉3は、低コストで製造することができる。
前記鋼材としては、S25C、S35C、S45Cなどの機械構造用炭素鋼が挙げられる。
前記鋼材としては、S25C、S35C、S45Cなどの機械構造用炭素鋼が挙げられる。
玉軸受10では、外内輪1,2の両軌道面1a,2aおよび玉3の転動面それぞれの表面から略10μmの深さの位置での窒素の含有量は、前記表面から10μmの範囲を含む表面層において、十分な耐磨耗性および耐熱性を確保する観点から、0.6質量%以上であり、十分な靱性を確保する観点から、0.9質量%以下である。
また、外内輪1,2の両軌道面1a,2aおよび玉3の転動面それぞれの表面から略200μmの深さの位置での窒素の含有量は、内部起点剥離を抑制するに十分な組織安定性を得る観点から、0.4質量%以上であり、焼入れの効果を十分に得る観点から、0.7質量%以下である。
これにより、外内輪1,2の両軌道面1a,2aおよび玉3の転動面それぞれの表面層において、耐磨耗性および耐熱性を確保することができ、かつ内部(表面から略200μmの深さの位置)において、内部起点剥離を抑制するのに十分な組織安定性を確保することができる。
また、外内輪1,2の両軌道面1a,2aおよび玉3の転動面それぞれの表面から略200μmの深さの位置での窒素の含有量は、内部起点剥離を抑制するに十分な組織安定性を得る観点から、0.4質量%以上であり、焼入れの効果を十分に得る観点から、0.7質量%以下である。
これにより、外内輪1,2の両軌道面1a,2aおよび玉3の転動面それぞれの表面層において、耐磨耗性および耐熱性を確保することができ、かつ内部(表面から略200μmの深さの位置)において、内部起点剥離を抑制するのに十分な組織安定性を確保することができる。
外内輪1,2の両軌道面1a,2aおよび玉3の転動面それぞれの表面から10μmの深さの位置での残留オーステナイト量は、異物による表面損傷による応力集中を低減する観点から、25%以上であり、転がり摺動部材として十分な硬さを確保する観点から、35%である。
外内輪1,2の両軌道部1a,2aおよび玉3の転動面それぞれの表面から少なくとも100μmの深さの位置での残留圧縮応力は、十分な疲労強度を確保する観点から、600MPa以上である。
(転がり摺動部材の製造方法)
つぎに、かかる転がり摺動部材の製造方法の例として、前記外輪1の製造方法を説明する。図2は、本発明の一実施形態に係る転がり摺動部材としての外輪の製造方法の工程図である。
つぎに、かかる転がり摺動部材の製造方法の例として、前記外輪1の製造方法を説明する。図2は、本発明の一実施形態に係る転がり摺動部材としての外輪の製造方法の工程図である。
まず、0.1〜0.5質量%の炭素と、0.1質量%〜0.4質量%ケイ素と、0質量%を超え、かつ0.9質量%以下のマンガンと、0質量%を超え、かつ0.2質量%以下のクロムとを含有し、かつ残部が鉄および不可避不純物である鋼材からなる外輪の環状素材13を製造し、得られた環状素材13に切削加工などを施して、所定形状に加工して、軌道面11a、端面11b、内周面11cおよび外周面11dそれぞれを形成する部分に研磨取代を有する外輪の素形材14を得る〔「前加工工程」、図2(a)および(b)参照〕。
かかる前加工工程では、安価に入手することができる前記機械構造用炭素鋼などの鋼材を用いるため、安価なコストで外輪1を製造することができる。
かかる前加工工程では、安価に入手することができる前記機械構造用炭素鋼などの鋼材を用いるため、安価なコストで外輪1を製造することができる。
つぎに、得られた外輪の素形材14(中間素材)を、カーボンポテンシャル0.9〜1.3で、残留アンモニア量が1〜1.4体積%の浸炭窒化雰囲気において、当該素形材を880〜920℃で加熱し、急冷し〔「高温浸炭窒化工程」、図2(c)参照〕、その後、前記と同じ浸炭窒化雰囲気において、当該素形材を800〜840℃で加熱し、急冷する〔「低温浸炭窒化工程」、図2(d)参照〕。
前記浸炭窒化雰囲気におけるカーボンポテンシャルは、外輪1,2の軌道面の表面における硬さを十分な硬さとする観点から、0.9以上であり、靱性を確保する観点から、1.3以下である。
前記浸炭窒化雰囲気における残留アンモニア量は、素形材14の内部に窒素を十分に浸透させる観点から、1体積%以上であり、素形材14の表面で窒素が気泡状となり浸透が妨げられることを抑制する観点から、1.4体積%以下である。
前記高温浸炭窒化工程において、加熱保持温度は、窒素を素形材の内部に十分に拡散させ、浸透させる観点から、880℃以上であり、過剰浸炭組織の発生を抑制する観点から、920℃である。これにより、窒素を前記素形材の内部にまで拡散させて侵入させることができる。加熱保持時間は、3時間以上であればよい。
前記高温浸炭窒化工程で加熱保持した後、前記浸炭窒化雰囲気中において10〜60分かけて、つぎの前記低温浸炭窒化工程の加熱保持温度まで降温する。
表面から少なくとも500μmの深さまでの範囲は、浸炭窒化層となっている。通常、かかる浸炭窒化層は、表面から800μm程度の深さまで形成されている。浸炭窒化層より深い位置は、浸炭窒化されていない。
前記高温浸炭窒化工程で加熱保持した後、前記浸炭窒化雰囲気中において10〜60分かけて、つぎの前記低温浸炭窒化工程の加熱保持温度まで降温する。
表面から少なくとも500μmの深さまでの範囲は、浸炭窒化層となっている。通常、かかる浸炭窒化層は、表面から800μm程度の深さまで形成されている。浸炭窒化層より深い位置は、浸炭窒化されていない。
前記低温浸炭窒化工程において、加熱保持温度は、軌道面の表面に十分な硬化層を形成させる観点から、800℃以上であり、軌道面の表面窒素含有量を確保する観点から、840℃である。これにより、前記素形材の表面から略10μmの深さの位置での窒素の含有量を増加させることができる。また、加熱保持時間は、2時間以上であればよい。
前記高温浸炭窒化工程および低温浸炭窒化工程をこの順に行なうことによって、得られた中間素材の軌道面11a、端面11b、外周面11dそれぞれを形成する部分の表面から10μmの深さの位置での残留オーステナイト量を45%以上(例えば、45〜65%)とすることができる。
急冷は、冷却油の油浴中における油冷により行われる。冷却油の油浴温度は、通常、60〜180℃であればよい。
その後、前記浸炭窒化処理後の中間素材14を、160℃以上の温度で加熱保持する焼もどし処理を行う〔「焼もどし処理工程」、図2(e)参照〕。
焼もどし処理における加熱保持温度は、焼入れ後の靱性を回復させる観点から、160℃以上であり、十分な硬さを確保する観点から、200℃以下である。
また、焼もどし処理における加熱保持時間は、特に限定されないが、通常2時間とすることができる。
焼もどし処理における加熱保持温度は、焼入れ後の靱性を回復させる観点から、160℃以上であり、十分な硬さを確保する観点から、200℃以下である。
また、焼もどし処理における加熱保持時間は、特に限定されないが、通常2時間とすることができる。
つぎに、得られた外輪の中間素材15の軌道面11a、端面11b、外周面11dそれぞれを形成する部分に対して、研磨加工を施す〔図2(f)参照、「研磨加工工程」〕。
その後、研磨加工後の外輪の中間素材15の軌道面11a、端面11b、外周面11dに対して、ショットピーニング加工を施す〔図2(g)参照、「ショットピーニング加工工程」〕。このようにして、目的の外輪11を得ることができる。
本実施形態の転がり摺動部材の製造方法では、前記高温浸炭窒化工程および低温浸炭窒化工程において、軌道面11a、端面11b、外周面11dそれぞれを形成する部分の表面から10μmの深さの位置での残留オーステナイト量を45%以上(例えば、45〜65%)になるようにしているため、本ショットピーニング加工工程においてショットピーニング加工によって残留オーステナイト量が減少しても、十分な残留オーステナイト量を確保することができる。
本実施形態の転がり摺動部材の製造方法では、前記高温浸炭窒化工程および低温浸炭窒化工程において、軌道面11a、端面11b、外周面11dそれぞれを形成する部分の表面から10μmの深さの位置での残留オーステナイト量を45%以上(例えば、45〜65%)になるようにしているため、本ショットピーニング加工工程においてショットピーニング加工によって残留オーステナイト量が減少しても、十分な残留オーステナイト量を確保することができる。
なお、本実施形態の転がり摺動部材の製造方法は、内輪および転動体の製造にも採用することができる。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
〔実施例1〜4および比較例1〜3〕
機械構造用炭素鋼であるS25Cを、所定形状に加工して、転がり摺動面としての軌道面を形成する部分に研磨取代を有する玉軸受(型番6206)用外内輪それぞれの素形材を製造した。なお、S25Cの元素組成は、炭素0.20〜0.30質量%と、ケイ素0.15〜0.40質量%、マンガン0.30〜0.60質量%、クロム0.05〜0.15質量%、残部鉄および不可避不純物である。つぎに、得られた素形材に、図3〜図9に示す熱処理条件で熱処理を施した。
機械構造用炭素鋼であるS25Cを、所定形状に加工して、転がり摺動面としての軌道面を形成する部分に研磨取代を有する玉軸受(型番6206)用外内輪それぞれの素形材を製造した。なお、S25Cの元素組成は、炭素0.20〜0.30質量%と、ケイ素0.15〜0.40質量%、マンガン0.30〜0.60質量%、クロム0.05〜0.15質量%、残部鉄および不可避不純物である。つぎに、得られた素形材に、図3〜図9に示す熱処理条件で熱処理を施した。
ここで、図3に示される熱処理条件は、素形材を、カーボンポテンシャルが1.2、残留アンモニア量が1体積%の浸炭窒化雰囲気中において920℃で3時間加熱し(高温浸炭窒化処理)、つぎに、この浸炭窒化雰囲気中において30分間かけて800℃まで降温し、そのまま前記と同じ浸炭窒化雰囲気中において800℃で4時間加熱した後、80℃に油冷し(低温浸炭窒化処理)、その後、170℃で2時間加熱(焼もどし処理)するものである(実施例1の外内輪)。
図4に示される熱処理条件は、素形材を、カーボンポテンシャルが1.2、残留アンモニア量が1.2体積%の浸炭窒化雰囲気中において900℃で3時間加熱し(高温浸炭窒化処理)、つぎに、この浸炭窒化雰囲気中において30分間かけて840℃まで降温し、そのまま前記と同じ浸炭窒化雰囲気中において840℃で3時間加熱した後、80℃に油冷し(低温浸炭窒化処理)、その後、170℃で2時間加熱(焼もどし処理)するものである(実施例2の外内輪)。
図5に示される熱処理条件は、素形材を、カーボンポテンシャルが1.2、残留アンモニア量が1.2体積%の浸炭窒化雰囲気中において880℃で3.5時間加熱し(高温浸炭窒化処理)、つぎに、この浸炭窒化雰囲気中において30分間かけて820℃まで降温し、そのまま前記と同じ浸炭窒化雰囲気中において820℃で2時間加熱した後、80℃に油冷し(低温浸炭窒化処理)、その後、170℃で2時間加熱(焼もどし処理)するものである(実施例3の外内輪)。
図6に示される熱処理条件は、素形材を、カーボンポテンシャルが1.2、残留アンモニア量が1.3体積%の浸炭窒化雰囲気中において920℃で4時間加熱し(高温浸炭窒化処理)、つぎに、この浸炭窒化雰囲気中において30分間かけて800℃まで降温し、そのまま前記と同じ浸炭窒化雰囲気中において800℃で3.5時間加熱した後、80℃に油冷し(低温浸炭窒化処理)、その後、170℃で2時間加熱(焼もどし処理)するものである(実施例4の外内輪)。
図7に示される熱処理条件は、素形材を、カーボンポテンシャルが1.2、残留アンモニア量が1.3体積%の浸炭窒化雰囲気中において900℃で3時間加熱し(高温浸炭窒化処理)、つぎに、この浸炭窒化雰囲気中において30分間かけて860℃まで降温し、そのまま前記と同じ浸炭窒化雰囲気中において860℃で2時間加熱した後、80℃に油冷し(低温浸炭窒化処理)、その後、170℃で2時間加熱(焼もどし処理)するものである(比較例1の外内輪)。
図8に示される熱処理条件は、素形材を、カーボンポテンシャルが1.2、残留アンモニア量が1.3体積%の浸炭窒化雰囲気中において870℃で2時間加熱し(高温浸炭窒化処理)、つぎに、この浸炭窒化雰囲気中において30分間かけて820℃まで降温し、そのまま前記と同じ浸炭窒化雰囲気中において820℃で2時間加熱した後、80℃に油冷し(低温浸炭窒化処理)、その後、170℃で2時間加熱(焼もどし処理)するものである(比較例2の外内輪)。
図9に示される熱処理条件は、素形材を、カーボンポテンシャルが1.2、残留アンモニア量が0.8体積%の浸炭窒化雰囲気中において920℃で3時間加熱し(高温浸炭窒化処理)、つぎに、この浸炭窒化雰囲気中において30分間かけて800℃まで降温し、そのまま前記と同じ浸炭窒化雰囲気中において800℃で3時間加熱した後、80℃に油冷し(低温浸炭窒化処理)、その後、170℃で2時間加熱(焼もどし処理)するものである(比較例3の外内輪)。
図4に示される熱処理条件は、素形材を、カーボンポテンシャルが1.2、残留アンモニア量が1.2体積%の浸炭窒化雰囲気中において900℃で3時間加熱し(高温浸炭窒化処理)、つぎに、この浸炭窒化雰囲気中において30分間かけて840℃まで降温し、そのまま前記と同じ浸炭窒化雰囲気中において840℃で3時間加熱した後、80℃に油冷し(低温浸炭窒化処理)、その後、170℃で2時間加熱(焼もどし処理)するものである(実施例2の外内輪)。
図5に示される熱処理条件は、素形材を、カーボンポテンシャルが1.2、残留アンモニア量が1.2体積%の浸炭窒化雰囲気中において880℃で3.5時間加熱し(高温浸炭窒化処理)、つぎに、この浸炭窒化雰囲気中において30分間かけて820℃まで降温し、そのまま前記と同じ浸炭窒化雰囲気中において820℃で2時間加熱した後、80℃に油冷し(低温浸炭窒化処理)、その後、170℃で2時間加熱(焼もどし処理)するものである(実施例3の外内輪)。
図6に示される熱処理条件は、素形材を、カーボンポテンシャルが1.2、残留アンモニア量が1.3体積%の浸炭窒化雰囲気中において920℃で4時間加熱し(高温浸炭窒化処理)、つぎに、この浸炭窒化雰囲気中において30分間かけて800℃まで降温し、そのまま前記と同じ浸炭窒化雰囲気中において800℃で3.5時間加熱した後、80℃に油冷し(低温浸炭窒化処理)、その後、170℃で2時間加熱(焼もどし処理)するものである(実施例4の外内輪)。
図7に示される熱処理条件は、素形材を、カーボンポテンシャルが1.2、残留アンモニア量が1.3体積%の浸炭窒化雰囲気中において900℃で3時間加熱し(高温浸炭窒化処理)、つぎに、この浸炭窒化雰囲気中において30分間かけて860℃まで降温し、そのまま前記と同じ浸炭窒化雰囲気中において860℃で2時間加熱した後、80℃に油冷し(低温浸炭窒化処理)、その後、170℃で2時間加熱(焼もどし処理)するものである(比較例1の外内輪)。
図8に示される熱処理条件は、素形材を、カーボンポテンシャルが1.2、残留アンモニア量が1.3体積%の浸炭窒化雰囲気中において870℃で2時間加熱し(高温浸炭窒化処理)、つぎに、この浸炭窒化雰囲気中において30分間かけて820℃まで降温し、そのまま前記と同じ浸炭窒化雰囲気中において820℃で2時間加熱した後、80℃に油冷し(低温浸炭窒化処理)、その後、170℃で2時間加熱(焼もどし処理)するものである(比較例2の外内輪)。
図9に示される熱処理条件は、素形材を、カーボンポテンシャルが1.2、残留アンモニア量が0.8体積%の浸炭窒化雰囲気中において920℃で3時間加熱し(高温浸炭窒化処理)、つぎに、この浸炭窒化雰囲気中において30分間かけて800℃まで降温し、そのまま前記と同じ浸炭窒化雰囲気中において800℃で3時間加熱した後、80℃に油冷し(低温浸炭窒化処理)、その後、170℃で2時間加熱(焼もどし処理)するものである(比較例3の外内輪)。
なお、前記低温浸炭窒化処理後、中間素材の軌道面を形成する部分の表面から10μmの深さの位置での残留オーステナイト量を測定した。前記低温浸炭窒化処理後の中間素材の軌道面を形成する部分の表面から10μmの深さの位置での残留オーステナイト量は、前記中間素材の軌道面を形成する部分の表面から10μmの深さまでを電解研磨し、電解研磨された表面の残留オーステナイト量を測定することにより求めた。
前記熱処理後の中間素材の前記軌道面を形成する部分に研磨加工を施し、つぎに、研磨加工後の中間素材の軌道面を形成する部分にショットピーニング加工を施し、実施例1〜4および比較例1〜3の外内輪を製造した。ショットピーニング加工におけるショット条件は、表1に示される通りである。
〔比較例4〕
軸受鋼であるSUJ2を用いて、型番6206の玉軸受の外内輪を製造するための素形材それぞれを製造した。つぎに、得られた素形材に、図10に示す熱処理条件で熱処理を施して、比較例4の外内輪を製造した。
なお、図10に示される熱処理条件は、素形材を、840℃で0.5時間加熱した後、80℃に油冷し(焼入れ)、180℃で2時間加熱(焼もどし処理)するものである。
軸受鋼であるSUJ2を用いて、型番6206の玉軸受の外内輪を製造するための素形材それぞれを製造した。つぎに、得られた素形材に、図10に示す熱処理条件で熱処理を施して、比較例4の外内輪を製造した。
なお、図10に示される熱処理条件は、素形材を、840℃で0.5時間加熱した後、80℃に油冷し(焼入れ)、180℃で2時間加熱(焼もどし処理)するものである。
〔試験例1〕
実施例1〜4、比較例1〜4の内輪について、軌道面の表面から略10μmの深さの位置での窒素の含有量、軌道面の表面から略200μmの深さの位置での窒素の含有量、軌道面の表面から10μmの深さの位置での残留オーステナイト量および軌道面の表面から100μmの深さの位置での残留圧縮応力を調べた。また、実施例1〜4、比較例1〜4の各外内輪を有する玉軸受について、寿命試験を行なった。
実施例1〜4、比較例1〜4の内輪について、軌道面の表面から略10μmの深さの位置での窒素の含有量、軌道面の表面から略200μmの深さの位置での窒素の含有量、軌道面の表面から10μmの深さの位置での残留オーステナイト量および軌道面の表面から100μmの深さの位置での残留圧縮応力を調べた。また、実施例1〜4、比較例1〜4の各外内輪を有する玉軸受について、寿命試験を行なった。
軌道面の表面から略10μmの深さの位置での窒素の含有量は、前記内輪を表面から深さ方向に切断した後、前記表面から10μmの深さの位置を中心とした深さ方向に±1μmの範囲における窒素の含有量を測定することにより求めた。また、軌道面の表面から略200μmの深さの位置での窒素含有量は、前記内輪を表面から深さ方向に切断した後、前記表面から200μmの深さの位置を中心とした深さ方向に±1μmの範囲における窒素含有量を測定することにより求めた。軌道面の表面から10μmの深さの位置での残留オーステナイト量は、前記内輪の表面から10μmの深さまでを電解研磨し、電荷研磨された表面の残留オーステナイト量を測定することにより求めた。軌道面の表面から100μmの深さの位置での残留圧縮応力は、前記内輪の表面から100μmの深さまでを電解研磨し、電解研磨された表面の残留圧縮応力をX線残留応力測定装置によって測定することにより求めた。
また、寿命試験は、実施例1〜4および比較例1〜4の内外輪と、比較例4と同様にして製造した転動体との組み合わせを用いて、それぞれ、実施例1〜4および比較例1〜4の各玉軸受を組み立て、得られた各玉軸受について、表2に示す条件で試験した。そして、玉軸受の内輪が破損するまでの時間を測定するという試験を5回繰り返し、ワイブル分布により10%の損傷確率があると推定されるL10寿命を求めた。
これらの結果を表3に示す。表3中、「浸炭窒化処理後の残留オーステナイト量」は、低温浸炭窒化処理後の中間素材の軌道面を形成する部分の表面から10μmの深さの位置での残留オーステナイト量、「表面窒素含有量」は、軌道面の表面から略10μmの深さの位置での窒素の含有量、「内部窒素含有量」は、軌道面の表面から略200μmの深さの位置での窒素の含有量、「表面残留圧縮応力」は、軌道面の表面から100μmの深さの位置での残留圧縮応力、「残留オーステナイト量」は、軌道面の表面から10μmの深さの位置での残留オーステナイト量、「寿命」は、L10寿命をそれぞれ示す。なお、寿命は、比較例4の玉軸受の寿命を1として、相対値として算出した。
表3に示された結果から、実施例1〜4の内輪では、軌道面の表面から略10μmの深さの位置での窒素の含有量が0.6〜0.9質量%であること、軌道面の表面から略200μmの深さの位置での窒素の含有量が0.4〜0.7質量%であること、軌道面の表面から10μmの深さの位置での残留オーステナイト量が25〜35%であること、および軌道面の表面から100μmの深さの位置での残留圧縮応力が600MPa以上であることのいずれをも満たしていることがわかる。一方、比較例1〜3の内輪では、軌道面の表面から略10μmの深さの位置での窒素の含有量の範囲、軌道面の表面から略200μmの深さの位置での窒素の含有量の範囲、軌道面の表面から100μmの深さの位置での残留圧縮応力の範囲、軌道面の表面から10μmの深さの位置での残留オーステナイト量の範囲のいずれかを満たしていないことがわかる。
また、表3に示された結果から、実施例1〜4の内輪では、比較例4の玉軸受の3倍以上の寿命を示すことがわかる。これに対して、比較例1〜3の玉軸受では、比較例4の玉軸受の1.7倍以下の寿命を示すにとどまっていることがわかる。
一般的に、転がり摺動部材を製造するための鋼材として、前記S25Cなどの機械構造用炭素鋼を用いた場合、1回の浸炭窒化処理を行なっただけでは、表面の硬さが不十分であり、十分な寿命を確保することができない。
しかしながら、表3に示された結果からわかるように、鋼材として、0.1〜0.5質量%の炭素と、0.1質量%〜0.4質量%ケイ素と、0質量%を超え、かつ0.9質量%以下のマンガンと、0質量%を超え、かつ0.2質量%以下のクロムとを含有し、かつ残部が鉄および不可避不純物である安価な鋼材(S25Cなどの機械構造用炭素鋼)を用いた場合であっても、かかる鋼材からなる素形材を、カーボンポテンシャル0.9〜1.3で、残留アンモニア量が1〜1.4体積%の浸炭窒化雰囲気において、当該素形材を880〜920℃で加熱した後(高温浸炭窒化処理)、前記浸炭窒化雰囲気において、当該素形材を800〜840℃で加熱し、急冷し(低温浸炭窒化処理)、得られた中間素材を160℃以上で加熱し(焼もどし処理)、焼もどし処理後の中間素材の少なくとも転がり摺動面を形成する部分を研磨し(研磨加工)、研磨加工工程後の中間素材の少なくとも転がり摺動面を形成する部分に対して、ショットピーニング加工を施すことにより、十分な寿命を示す転がり摺動部材を低コストで得ることができることがわかる。
しかしながら、表3に示された結果からわかるように、鋼材として、0.1〜0.5質量%の炭素と、0.1質量%〜0.4質量%ケイ素と、0質量%を超え、かつ0.9質量%以下のマンガンと、0質量%を超え、かつ0.2質量%以下のクロムとを含有し、かつ残部が鉄および不可避不純物である安価な鋼材(S25Cなどの機械構造用炭素鋼)を用いた場合であっても、かかる鋼材からなる素形材を、カーボンポテンシャル0.9〜1.3で、残留アンモニア量が1〜1.4体積%の浸炭窒化雰囲気において、当該素形材を880〜920℃で加熱した後(高温浸炭窒化処理)、前記浸炭窒化雰囲気において、当該素形材を800〜840℃で加熱し、急冷し(低温浸炭窒化処理)、得られた中間素材を160℃以上で加熱し(焼もどし処理)、焼もどし処理後の中間素材の少なくとも転がり摺動面を形成する部分を研磨し(研磨加工)、研磨加工工程後の中間素材の少なくとも転がり摺動面を形成する部分に対して、ショットピーニング加工を施すことにより、十分な寿命を示す転がり摺動部材を低コストで得ることができることがわかる。
さらに、通常、ショットピーニング加工を行なった場合、残留オーステナイト量が減少するが、実施例1〜4の内輪では、前記高温浸炭窒化処理および低温浸炭窒化処理によって、浸炭窒化処理後の中間素材の軌道面を形成する部分の表面から10μmの深さの位置での残留オーステナイト量を45%以上としているため、十分な残留オーステナイト量を確保することができる。
1 外輪、1a 軌道部、2 内輪、2a 軌道部、4 保持器、10 玉軸受、
11 外輪
11 外輪
Claims (2)
- 0.1〜0.5質量%の炭素と、0.1質量%〜0.4質量%ケイ素と、0質量%を超え、かつ0.9質量%以下のマンガンと、0質量%を超え、かつ0.2質量%以下のクロムとを含有し、かつ残部が鉄および不可避不純物である鋼材から得られ、相手部材との間で相対的に転がり接触もしくは滑り接触または両接触を含む接触をする転がり摺動面を有する転がり摺動部材であって、
前記転がり摺動面の表面から略10μmの深さの位置での窒素の含有量が0.6〜0.9質量%であり、
前記転がり摺動面の表面から略200μmの深さの位置での窒素の含有量が0.4〜0.7質量%であり、
前記転がり摺動面の表面から10μmの深さの位置での残留オーステナイト量が25〜35%であり、
前記転がり摺動面の表面から少なくとも100μmの深さの位置での残留圧縮応力が600MPa以上であることを特徴とする転がり摺動部材。 - 相手部材との間で相対的に転がり接触もしくは滑り接触または両接触を含む接触をする前記転がり摺動面を備えた転がり摺動部材の製造方法であって、
0.1〜0.5質量%の炭素と、0.1質量%〜0.4質量%ケイ素と、0質量%を超え、かつ0.9質量%以下のマンガンと、0質量%を超え、かつ0.2質量%以下のクロムとを含有し、かつ残部が鉄および不可避不純物である鋼材を、所定の形状に加工して、少なくとも前記転がり摺動面を形成する部分に研磨取代を有する素形材を得る前加工工程、
前記素形材を、カーボンポテンシャル0.9〜1.3で、残留アンモニア量が1〜1.4体積%の浸炭窒化雰囲気において、当該素形材を880〜920℃で加熱した後、前記浸炭窒化雰囲気において、当該素形材を前記加熱温度より低い温度で、かつ800〜840℃で加熱し、急冷して、前記転がり摺動面を形成する部分の表面から10μmの深さの位置での残留オーステナイト量が45%以上である中間素材を得る浸炭窒化処理工程、
前記浸炭窒化処理後の中間素材に対して、当該中間素材を160℃以上で加熱する焼もどし処理を施す焼もどし処理工程、および
前記焼もどし処理後の中間素材の少なくとも前記転がり摺動面を形成する部分を研磨する研磨加工工程、
研磨加工工程後の中間素材の少なくとも前記転がり摺動面を形成する部分に対して、ショットピーニング加工を施し、前記転がり摺動面の表面から略10μmの深さの位置での窒素の含有量が0.6質量%以上であり、前記転がり摺動面の表面から略200μmの深さの位置での窒素の含有量が0.4質量%以上であり、前記転がり摺動面の表面から10μmの深さの位置での残留オーステナイト量が25〜35%であり、前記転がり摺動面の表面から少なくとも100μmの深さの位置での残留圧縮応力が600MPa以上である転がり摺動部材を得るショットピーニング加工工程
を含むことを特徴とする転がり摺動部材の製造方法。
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