JPH06155287A - 高疲労強度アルミニウム合金コンロッドの製造方法 - Google Patents

高疲労強度アルミニウム合金コンロッドの製造方法

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JPH06155287A
JPH06155287A JP31205392A JP31205392A JPH06155287A JP H06155287 A JPH06155287 A JP H06155287A JP 31205392 A JP31205392 A JP 31205392A JP 31205392 A JP31205392 A JP 31205392A JP H06155287 A JPH06155287 A JP H06155287A
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connecting rod
inner peripheral
peripheral surface
small end
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JP31205392A
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Inventor
Chikatoshi Maeda
千芳利 前田
Kunihiko Imahashi
▲邦▼彦 今橋
Koji Nishida
幸司 西田
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Original Assignee
Toyota Motor Corp
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  • Finish Polishing, Edge Sharpening, And Grinding By Specific Grinding Devices (AREA)
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Abstract

(57)【要約】 【目的】小端孔の内周面の直下から深部に至るまでの高
い残留圧縮応力分布が得られ、小端孔の内周面の疲労強
度を高め得るアルミニウム合金コンロッドの製造方法を
提供すること。 【構成】急冷凝固アルミニウム合金粉末の成形体を温間
域で鍛造し、溶体化熱処理(T6処理)する。この組成
は、Al−17%Si−6%Fe系である。第1のロー
ラ加工工程では、コンロッド1の小端孔10内にバニシ
ュ装置3の第1強圧ローラ32を押込みつつ、第1マン
ドレル34を回転駆動させ、各第1強圧ローラ32を従
動回転させ、ローラ面32aの径大部32xにより小端
孔10の内周面10aを強圧する。その後、第1のロー
ラ加工工程では、断面多角形状の第2マンドレルを回転
し、第2強圧ローラで断続的に小端孔10の内周面10
aを叩き、断続的なピーニング作用及びローリング作用
を行う。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は高疲労強度アルミニウム
合金コンロッドの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】内燃機関では、ピストンピンとクランク
シャフトとを連結するコネクティングロッドとも呼ばれ
るコンロッドが用いられている。コンロッドは圧縮力、
引張力、曲げ等の荷重を繰り返して受けるので、これら
に充分耐え得る様に一般的に合金鋼で形成されている。
しかし、近年、内燃機関の低燃費化に伴う軽量化の要請
から、アルミニウム合金からなるコンロッドが検討され
ている。
【0003】アルミニウム合金では、コンロッドの使用
温度域である高温域(一般的に140〜190°C程
度)での強度特性が合金鋼に比較して劣る。特に、アル
ミニウム合金からなるコンロッドの小端孔には、熱膨張
差に起因する打音防止の関係で、小端孔とピストンピン
との間に介装されるブッシュが使用されないことが一般
的であり、この場合には、コンロッドの小端孔の内周面
とピストンピンとが直接接触するため、ピストンからの
爆発力が小端孔に直接伝わって小端孔に疲労破壊が生じ
ることがある。図10に示す様に、コンロッド100の
ステム101側の小端孔102の内周面を疲労起点とし
て疲労破壊が生じることが一般的である。
【0004】ところで、実開平1−109335号公報
には、コンロッドの大端孔の形状を整える目的で、大端
孔の内周面にローラ加工を施す技術が開示されている。
また、実開昭58−143158号公報には、横断面多
角形状のマンドレルを用い、マンドレルを回転させるこ
とにより強圧ローラを回転させつつワークの孔の内周面
に押し付け、バニシュ加工するローラバニシュ装置が開
示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし上記した各公報
ともに、アルミニウム合金コンロッドの小端孔の疲労強
度向上のための適切な残留圧縮応力領域、即ち小端孔の
内周面においてその直下から深部に至るまでの高い残留
圧縮応力分布が得られない。本発明は上記した実情に鑑
みなされたものであり、その目的は、小端孔の内周面の
疲労強度を高め得る高疲労強度アルミニウム合金コンロ
ッドの製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の高疲労強度アル
ミニウム合金コンロッドの製造方法は、ピストンピンが
通る小端孔をもつアルミニウム合金からなるコンロッド
を用い、コンロッドの小端孔の内周面に強圧ローラを押
し当てて残留圧縮応力を付与するローラ加工を施す第1
のローラ加工工程と、コンロッドの小端孔の内周面に、
ピーニングを伴うローラ加工を施す第2のローラ加工工
程とを順に実施することを特徴とするものである。
【0007】
【作用】第1のローラ加工工程及び第2のローラ加工工
程により、コンロッドの小端孔の内周面には、内周面直
下から深部に至るまでの残留圧縮応力分布が付与され
る。更に、小端孔の内周面の面粗さが小さくなる。
【0008】
【実施例】以下、本発明の製造方法の実施例を説明す
る。この方法では、アルミニウム合金からなるコンロッ
ドを用いる。このコンロッドは車両に装備される内燃機
関に組み込まれるものである。コンロッドは次の様にし
て製造する。即ち、急冷凝固粉末を熱間プレスして高密
度のビレットとし、次いで、異形押出して押出材を得
た。この異形押出材を所定の厚さに切断して鍛造後の完
成部品と同じ重量になるようにし、完成品としてのコン
ロッドにほぼ似た形状の荒地成形体(図9に破線で示
す)を得る。次いでこの荒地成形体を400〜450℃
に加熱し、型温150℃の鍛造型でバリを出さず、密閉
鍛造して仕上鍛造品(図9に実線で示す)とする。小端
孔10の軸方向における小端部の厚さは、荒地成形体の
段階の厚みT1で21.5〜23.2mm、鍛造後の厚
みT2で24mmとなる。ピストン孔部分の押残し量T
3は6〜14mmである。プレス機械は機械的にダイス
の上下を行なうメカプレスを使用しており、歪速度10
-1である。鍛造の際の強圧方向は、荒地成形体の厚み
方向(図9の矢印Y方向)、つまり、図10に示すコン
ロッドにおいて紙面垂直方向(小端孔の軸方向と平行な
方向)である。この仕上鍛造品を溶体化熱処理と時効処
理(T6処理)した後、小端孔及び大端孔該当部分など
を形成すべく、旋削加工を施する。なお小端孔は、図9
に示すくぼみの施削で形成される。
【0009】用いた急冷凝固アルミニウム合金粉末の組
成は、重量%でAl−17%Si−6%Fe−4.5%
Cu−0.5%Mn−0.5%Mgである。小端孔の内
径は20mm程度であるが、これに限定されるものでは
ない。第1のローラ加工工程では、図1及び図2に示す
バニシュ装置3(スギノマシン(株) スパローラ)を
用いる。図1及び図2から理解できる様に、バニシュ装
置3は、本体30と、本体30に内側及び外側が突出し
て転動可能に保持された多数個の第1強圧ローラ32
(材質:ハイス)と、第1強圧ローラ32を回転させる
第1マンドレル34(材質:ハイス)とを備えている。
第1強圧ローラ32は円錐面状のローラ面32a(直径
は小径側で4.35mm程度、大径側で4.95mm程
度、テーパ度1/30)を備えている。第1マンドレル
34はローラ面32aに対面する円錐面34cを備えて
いる。バニシュ装置3の加工外径(第1強圧ローラ32
のローラ面32aの径大部32x間の径)をD1とし、
第1のローラ加工実施前の小端孔10の内径をD0(D
0<D1)とすると、D1からD0を減算した差(D1
−D0)、即ち、第1のローラ加工におけるバニシュ量
Δd11は、20〜60μm程度に設定されている。
【0010】上記した第1のローラ加工工程では、常温
域において、図2から理解できる様に、コンロッド1の
小端孔10内に第1強圧ローラ32を矢印A1方向から
押込みつつ、第1マンドレル34を矢印B1方向に回転
駆動させると、各第1強圧ローラ32が従動回転し、こ
れにより小端孔10の内周面10aは強圧される。特
に、第1強圧ローラ32のローラ面32aの径大部32
xにより小端孔10の内周面10aは強圧される。かか
る加工は、小端孔10の全周、軸方向の全域において行
われる。これにより小端孔10の内周面10aに所定深
さの残留圧縮応力領域が形成される。
【0011】第1のローラ加工は、供給管39から冷却
液をかけつつ行う。なお第1マンドレル34の回転速度
は300〜1500rpm、第1マンドレル34の矢印
A1方向への押込速度は0.05〜1.5mm/rev
程度とするが、これに限定されるものではない。第2の
ローラ加工工程で用いるローラ装置5(スギノマシン
(株) ベアリンガイザ)の要部を図3に示す。ローラ
装置5はピーニングを伴うローラ加工を行なうものであ
る。ローラ装置5は、係合溝50aをもつ円筒形状のホ
ルダー50と、ホルダー50の係合溝50aに転動可能
に保持された円柱状の多数個の第2強圧ローラ52(直
径3mm、材質:ハイス)と、ホルダー50の内部に回
転可能に保持された第2マンドレル54(直径12m
m、材質:ハイス)とを備えている。第2強圧ローラ5
2は係合溝50aに保持されつつつも、遠心方向に変位
可能とされている。第2マンドレル54の外周面は、ロ
ーラ個数に応じた横断面多角形状であり、その軸芯P4
を中心とする所定の曲率半径で形成された円弧部54t
と(領域α)、円弧部54t間に形成された平坦部54
i(領域β)とを備えている。第2マンドレル54の軸
芯P4から平坦部54iの中央までの距離をL1とし、
軸芯P4から円弧部54tの中央までの距離をL2とす
ると、L2はL1よりも大きく設定されている(L2>
L1)。従って、第2マンドレル54がその周方向に回
転すると、円弧部34tで押圧された各第2強圧ローラ
52が遠心方向に飛び出し、これによりピーニング作用
とローリング作用の双方が得られる。なお、ローラ装置
5の加工外径をD4とし、第2のローラ加工を実施する
前(即ち、第1のローラ加工を実施した後)の小端孔1
0の内径をD3(D3<D4)としたとき、D4からD
3を減算した差(D4−D3)、即ち、第2のローラ加
工におけるバニシュ量Δd12は、1〜40μm程度に設
定されている。なお、一般的には、第2のローラ加工に
おけるバニシュ量Δd12は、第1のローラ加工における
バニシュ量Δd11よりも小さくて済む。
【0012】上記した第2のローラ加工工程では、常温
域において、コンロッド1の小端孔10内に第2強圧ロ
ーラ52を押し込んだ状態で、第2マンドレル54をそ
の周方向に回転駆動させると、第2強圧ローラ52が遠
心方向に断続的に飛び出し、これによりローリング加工
の他に、断続的なピーニング作用が得られる。かかる加
工は小端孔10の全周及び軸方向の全域で行われる。こ
の結果、小端孔10の内周面10aの表面直下にピーク
をもつ残留圧縮応力分布が得られる。
【0013】第2のローラ加工工程では、第2マンドレ
ル54の回転速度は500〜2000rpm、第2マン
ドレル54の押込速度は0.3〜3mm/rev程度と
したが、これに限定されるものではない。なお、第2の
ローラ加工は冷却液をかけつつ行う。 (試験例)ところで、第1のローラ加工工程を実施した
小端孔10の内周面10aの軸方向におけるプロフィー
ルを測定し、これを図4(A)に示す。また、旋削工程
を実施し、第1のローラ加工工程を実施していない状態
の小端孔10の内周面10aの軸方向におけるプロフィ
ールを図4(B)に示す。図4において横軸の1目盛は
4mm、縦軸の1目盛は5μmを示す。プロフィールは
触針式測定装置で測定した。図4(A)と(B)との比
較から理解できる様に、第1のローラ加工工程を実施し
た小端孔10の内周面10aにおいては、その軸方向の
両端にダレ部18が形成される。殊に、バニシュ装置3
を押込む側のダレ部18aが大きい。このダレ部18は
後述する第2のローラ加工を実施しても、実質的に大差
ない大きさ、形状である。
【0014】ここで、コンロッドの使用時には、小端孔
10の内周面10aにおける軸方向の両端は、爆発圧力
によるピストンピンの変形により最大応力が作用し、ま
た、温度が高く疲労強度が低下しているため、疲労破壊
により亀裂が生じやすい部位であるが、小端孔10の内
周面10aの両端にダレ部18が生じることにより、小
端孔10に負荷される最大応力が低減される効果が期待
でき、従って、コンロッド作動の際にピストンピンから
負荷される応力が小さくなり、亀裂防止性が高まる。
【0015】ここで、図5はダレ部18の大きさによる
負荷応力の低減効果をFEM法で求めたものである。図
5は、横軸に軸方向の端面からの距離、縦軸に最大主応
力を取って、内周面10aの直下(内周面から深さ約1
mm)における最大主応力の分布を示している。図5に
示す様に、ダレ部18の深さH寸法が0のときには、内
周面10aに作用する最大主応力は高いが、ダレ部18
の深さH寸法が4μ、8μ、12μと大きくなるにつれ
て、最大主応力は低減される傾向にあることがわかる。
【0016】また、第1のローラ加工におけるバニシュ
量と小端孔10の内周面10aの面粗さとの関係を測定
した。測定結果を図6に示す。図6の特性線Nに示す様
に、バニシュ量が0のときには小端孔10の面粗さが旋
削加工の影響で1.0μmに近い値であるが、バニシュ
量が増す程、小端孔10の面粗さは次第に低下し、バニ
シュ量25μm〜30μm程度で面粗さは0.3μmで
ほほほ飽和することがわかる。なお、第2のローラ加工
を実施しても、小端孔10の面粗さはあまり変化しな
い。
【0017】更に、深さ方向における残留圧縮応力分布
を測定した。即ち、旋削加工を施した場合(NO.
1)、旋削加工後に第1のローラ加工を施した場合(N
O.2)、旋削加工後に第1のローラ加工及び第2のロ
ーラ加工を施した場合(NO.3)、旋削加工後に第2
のローラ加工のみを施した場合(NO.4)について、
小端孔10の内周面10aの深さ方向における残留圧縮
応力分布を測定した。測定はX線残留応力測定装置によ
り行った。
【0018】測定結果を図7に示す。図7において特性
線K1はNO.1における分布を示し、特性線K2はN
O.2における分布を示し、特性線K3はNO.3にお
ける分布を示し、特性線K4はNO.4における分布を
示す。旋削加工を施した場合においては、図7の特性線
K1から理解できる様に、内周面10a表面付近を除い
て、残留圧縮応力は小さい。旋削加工後に第1のローラ
加工工程を実施した場合には、特性線K2から理解でき
る様に、表面から100μmを越えた深さでは残留圧縮
応力は大きいが、表面よりも100μm未満の表面直下
では、残留圧縮応力は小さい。この様に表面直下の残留
圧縮応力が小さくなる理由は、オーバーピーニングによ
る影響と考えられる。また、旋削加工後に第1のローラ
加工工程及び第2のローラ加工工程を実施した場合に
は、特性線K3から理解できる様に、表面よりも100
μm未満の深さでは、残留圧縮応力が大きくなり、特に
表面よりも深さ20〜30μm付近の表面直下におい
て、残留圧縮応力が200MPaと大きくなり、更に、
それよりも深い150〜200μmの深さ位置において
も残留圧縮応力が150〜100MPaと大きくなる。
また、旋削加工後に第2のローラ加工工程のみを実施し
た場合には、特性線K4から理解できる様に、表面から
50μm未満の深さで残留圧縮応力が大きいものの、そ
れよりも深部では残留圧縮応力が小さい。
【0019】即ち、第1のローラ加工工程及び第2のロ
ーラ加工工程の双方を実施する本実施例によれば、第1
のローラ加工工程による効果、第2のローラ加工工程に
よる効果が相乗し、表面直下から深部まで高い残留圧縮
応力の分布が得られる。そのため、高温域においても高
い疲労強度が得られる。これを確認するため、上記した
コンロッド(NO.1〜NO.4)を用い、コンロッド
の小端孔10にピストンピンを嵌めると共に、大端孔に
クランクシャフト(駆動側)を装備した状態で、ピスト
ンピンとクランクシャフトの距離を相対的に変動するよ
う往復動させることにより、コンロッドに単純引張圧縮
荷重を負荷させ、疲労強度試験を行った。試験温度は1
50°Cである。測定結果を図8に示す。図8におい
て、縦軸はピストンピンにかかる圧縮荷重、横軸は繰返
し数を示し、特性線M1はNO.1の試験結果を示し、
特性線M2はNO.2の試験結果を示し、特性線M3は
NO.3の試験結果を示し、特性線M4はNO.4の試
験結果を示す。第1のローラ加工工程及び第2のローラ
加工工程の双方を実施した本実施例(NO.3)では、
図8の特性線M3から理解できる様に、繰返し数108
回でも圧縮荷重は55KN程度以上の値が得られ、高温
域においても高い疲労強度が得られることがわかる。一
方、他のコンロッド(NO.1、NO.2、NO.4)
では、充分満足できる疲労強度が得られない。尚、繰返
し数N=1とは、引張・圧縮が1サイクル行なわれたこ
とを意味する。
【0020】本実施例において高い疲労強度が得られる
要因としては、小端孔10の内周面10aの表面直下か
ら深部まで高い残留圧縮応力の分布が得られること、小
端孔10の内周面10aの軸方向の両端のダレ部18が
適性化すること、また、小端孔10の内周面10aの表
面欠陥(加工時のムシレ等)が低減され、小端孔10の
内周面10aの面粗さも適性化されることと、推察され
る。
【0021】更に本実施例では、仕上鍛造品を得る際に
おける強圧方向は、前述した様に小端孔10の軸方向と
ほぼ平行な方向であり、これ対して、第1のローラ加
工、第2のローラ加工における強圧方向は、いわば、鍛
造時の強圧方向と直交する方向、即ち、小端孔10の軸
直角方向である。そのため、鍛造工程とローラ工程とで
それぞれ異なる方向から強圧され、小端孔10の内周面
10aはより効果的に強化される。殊に粉末鍛造品から
なるコンロッドの小端孔10付近の粒子の完全固結化に
有効である。
【0022】ところで、合金元素が過飽和の急冷凝固粉
末で形成された本実施例のコンロッドは、使用時の荷重
に耐え得る様にアルミニウム合金としては高強度、高剛
性である。この場合、小端孔10の内周面10aを加工
する単位時間当たりの加工量が過大であれば、加工に起
因する亀裂が生じるおそれもある。この点本実施例で
は、第1のローラ加工ではバニシュ装置3の第1強圧ロ
ーラ32により、小端孔10の内周面10aが一部づつ
連続的に加工される局部的連続加工方式が採用されてい
る。同様に、第2のローラ加工でも、ローラ装置5の第
2強圧ローラ52により内周面10aが一部づつ連続的
に加工される局部的連続加工方式が採用されている。そ
のため、コンロッドの材質が高剛性であっても、小端孔
10の内周面10aの加工が無理なく行い得、過大加工
に起因する亀裂の回避に貢献できる。この意味でも、疲
労強度特性の向上に貢献できる。
【0023】(他の例)上記した例では、コンロッドと
しての優れた強度特性が得られる様に、急冷凝固アルミ
ニウム合金粉末を用いて形成した粉末鍛造品からコンロ
ッドを形成したが、これに限らず、アルミニウム合金系
の鋳造品で形成することもでき、更に、アルミニウム合
金系の組成も上記した値に限定されるものではなく、適
宜変更し得る。また上記した例で使用したバニシュ装置
3、ローラ装置5の構造、形状等は、上記したものに限
定されるものでなく、適宜変更できることは勿論であ
る。また上記した例におけるバニシュ量Δd11、Δd12
は上記した値に限定されるものでなく、コンロッドの種
類に応じて適宜変更できるものである。
【0024】その他、本発明は上記し且つ図面に示した
実施例のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しな
い範囲内で適宜変更して実施し得るものである。
【0025】
【発明の効果】本発明の製造方法によれば、小端孔の内
周面の表面直下から深部まで高い残留圧縮応力の分布が
得られる。そのため、高疲労強度のアルミニウム合金コ
ンロッドが得られる。更に、本発明の製造方法によれ
ば、小端孔の内周面の軸方向の両端のダレ部が適性化す
る。また、小端孔の内周面の表面欠陥(加工時のムシレ
等)が低減され、小端孔の内周面の面粗さも適性化され
る。これにより従来のアルミニウム合金コンロッドに比
較して、疲労強度が一層優れたアルミニウム合金コンロ
ッドが得られる。
【0026】更に本発明の製造方法によれば、小端孔の
内周面を旋削加工した場合、旋削加工後の面粗さが悪く
ても、第1のローラ加工、第2のローラ加工により面粗
さが向上するので、旋削加工のみで小端孔の加工精度及
び面粗さを確保する場合に比較して、旋削加工を容易化
でき、加工時間、加工工程の短縮化が可能となる。かか
る効果は高合金系の難削材に好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1のローラ加工工程で用いるバニシュ装置を
模式的に示す構成図である。
【図2】バニシュ装置の主要部を模式的に示す縦断面図
である。
【図3】第2のローラ加工工程で用いるローラ装置の横
断面図である。
【図4】小端孔の内周面のプロフィールを示す図であ
る。
【図5】ダレ部と最大応力との関係を示すグラフであ
る。
【図6】バニシュ量と面粗さとの関係を示すグラフであ
る。
【図7】深さ方向における残留圧縮応力の分布を示すグ
ラフである。
【図8】疲労試験の結果を示すグラフである。
【図9】仕上鍛造品の小端部付近の断面図である。
【図10】疲労破壊が生じた従来のコンロッドの正面図
である。
【符号の説明】
図中、1はコンロッド、10は小端孔、10aは内周
面、3はバニシュ装置、5はローラ装置を示す。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ピストンピンが通る小端孔をもつアルミ
    ニウム合金からなるコンロッドを用い、 該コンロッドの小端孔の内周面に強圧ローラを押し当て
    て残留圧縮応力を付与するローラ加工を施す第1のロー
    ラ加工工程と、 該コンロッドの小端孔の内周面に、ピーニングを伴うロ
    ーラ加工を施す第2のローラ加工工程とを順に実施する
    ことを特徴とする高疲労強度アルミニウム合金コンロッ
    ドの製造方法。
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