JP4575899B2 - ディンプル形成バニシング工具および加工方法 - Google Patents
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Description
従来、摺動面にディンプルを形成する技術としては、いわゆるWPC処理(微粒子ショットピーニング)やレーザ加工を利用したものがある。
そして、バニシング加工用の転圧ローラを振動させて、ピーニング加工とバニシング加工を同時に行なうバニシング工具が知られている(特許文献1)。
また、転圧ローラを使用したピーニング加工では、ワークの加工面に対して転圧ローラが軸方向に線接触するため、油穴等のエッジ部のバリ取り効果を期待することができなかった。
さらに、凸部の数や高さ、マンドレルの回転数や送り速度、マンドレルやボールの径等を適宜設定することで、ディンプルの形状、大きさや深さ等のサイズ、ディンプル間のピッチ等をワークに要求される使用条件に応じて最適に設定することができる。したがって、使用条件に合致した最適な潤滑特性および滑らかな仕上げ面を確保することが可能となる。
かかる構成によれば、転動体としてボールの他にさらにローラを備えて、転圧加工時の押圧面積を拡大することで、面粗度の良好な仕上げ面が得られるので、ボールの振動によってディンプルを形成しながら、ローラの転圧作用によって加工表面を滑らかに仕上げることができる。
すなわち、マンドレルを加工機により軸方向に送りをかけることで、ボールの振動によるディンプル形成とローラの転圧作用による加工表面の硬度および面粗さの向上というそれぞれの加工を交互に融合させて行なうことができるため、ディンプルが形成された滑らかでより耐久性の高い仕上げ面を形成することができる。
なお、「交互に配置」の用語は、前記と同様の意味である。
また、前記した本発明において、前記ボールおよび前記ローラが前記リテーナの軸方向に沿ってそれぞれ交互に配置されている場合、前記ボールおよび前記ローラは、前記リテーナの軸方向で互いに接触していることが望ましい。
また、前記した本発明のディンプル形成バニシング工具による加工方法において、前記ワークの内周面に対して、前記ボールによるディンプルの形成と前記ローラによるバニシング加工とを交互に行うことが望ましい。
かかる構成により、ボールおよびローラによるバニシング加工を交互に行なうので、両者の加工特性を融合させてディンプルを形成しながらより均一で滑らかな加工表面に仕上げることができる。
参照する図面において、図1は本発明の実施形態と部分的に共通する構造を有する参考形態に係るディンプル形成バニシング工具(以下、単に「バニシング工具」という。)の全体構成を説明するための断面図であり、図2は参考形態に係るバニシング工具の分解斜視図であり、図3はバニシング工具をワークに挿入した状態を示す図1のA−A断面図である。
シャンク21は、参考形態のようなストレート形状の他、テーパ形状のもの等、装着される加工機に適合できるように種々の形状が採用される。
また、リテーナ5において、摩擦係数を低減させるために、スペーサリング3の端面3aとリテーナ5に保持されたスペーサリング側のボール4a(本図における右側のボール)とが当接するようにボール4が配置されている。
平坦部23b1は、丸棒形状のリテーナ保持部23(図2参照)の外周面を軸方向に沿って削ぎ落とすようにして形成されている。このため、凸部23b2は、平坦部23b1に対してマンドレル2の回転中心Cから遠い位置に形成されている。そして、平坦部23b1から凸部23b2にかけて、ボール4が円滑に転動できるようになだらかな曲率の外周面が形成されている。
そして、バニシング工具1(図2参照)をワークWに挿入すると、図3に示すように、マンドレル2の外周面とワークWの内周面との間にボール4が介在された状態となる。このとき、リテーナ保持部23(図2参照)の各凸部23b2または各平坦部23b1と6等配で配列されたボール4とがそれぞれ同時に係合するように構成されている。
参考形態に係るバニシング工具1は、図3に示すように、マンドレル2を図示しない加工機に装着して時計回りに回転させると、マンドレル2の外周面に沿ってリテーナ5により回転自在に保持されているボール4は反時計回りに回転(自転)する。このとき、ワークWは固定されているから、ボール4が反時計回りに自転すると、ボール4はワークWの内周面およびマンドレル2の外周面に沿って時計回りに公転する。
ボール4は、マンドレル2の外周面に形成された凸部23b2と平坦部23b1とを交互に通過しながら転動するが、ボール4がマンドレル2の凸部23b2に位置するときには、図4(a)に示すように、ボール4はマンドレル2の凸部23b2で弾かれるようにして押圧されるため、ワークWの内周面にはディンプルDが形成される。
一方、ボール4が平坦部23b1に位置するときには、図4(b)に示すように、ボール4とワークWの内周面との間には若干の隙間を持たせることで、ボール4がワークWの内周面を押圧しないように構成されている。
したがって、本発明に係るバニシング工具1は、旋盤やマシニングセンタ等の汎用的な切削機械でも使用できるため、容易かつ安価に必要とされる形状のディンプルを形成することが可能となる。
なお、図6および図7におけるテーパ形状およびアジャストリング等の大きさは、説明の便宜上誇張して表現している。
したがって、以下この相違点を中心に説明し、前記した参考形態に係るバニシング工具1と同じ構成要素については、同一の符号を使用して重複する説明は省略する。
具体的には、本体部22′は、シャンク21に連続する胴部24と、胴部24に対して縮径されたリテーナ保持部23′と、を備えている。リテーナ保持部23′は、円筒形状のエンドリング3′が装着されるストレート部23a′と、リテーナ5が装着される六角形状のテーパ部23b′と、スラストリング6が装着される先端部23cと、を備えている。そして、リテーナ保持部23の先端部23cの端面23c1にはキャップナット8が螺入されて、リテーナ5が保持されている(図6参照)。
具体的には、エンドリング3′は胴部24の端面24aに当接して保持され、このエンドリング3′に隣接させてエンドリング3′側からアジャストリング31,32,33,34が装着され、さらにリテーナ5と、アジャストリング35と、スラストリング6とが順次装着され、キャップナット8で固定されている。
そして、図8に示されるように、リテーナ51,52の軸方向でのローラ42,44の長さは、ボール41,43の外径よりも大きい。また、図8(a),(b)に示されるように、ボール41およびローラ42は、リテーナ51の軸方向で互いに接触している。
すなわち、マンドレル2を加工機により軸方向に送りをかけることで、ボール41の振動によるディンプル形成とローラ42の転圧作用による加工表面の硬度および面粗さの向上というそれぞれの加工を交互に融合させて行なうことができるため、ディンプルDが形成された滑らかで耐久性の高い仕上げ面を形成することができる。
かかる構成によれば、ボール43とローラ44がリテーナ52の周方向に沿って交互に配置されているため、ボール43およびローラ44によるバニシング加工を交互に行なうので、両者の加工特性を融合させてディンプルD(図3参照)を形成しながら加工表面をより滑らかに仕上げることができる。
例えば、本実施形態においては、ボール4は、リテーナ保持部23の六角形状に対応させて、リテーナ5の円周方向6等配で配列されているが、これに限定されるものではなく、必ずしもマンドレル2に形成された凸部23b2の位置や数に対応させる必要はない。したがって、マンドレルには八角形状となるような凸部を設けて、ボールはリテーナの円周方向で10等配とすることもできる。
2,2′ マンドレル
3 スペーサリング
4 ボール
5 リテーナ
6 スラストリング
8 キャップナット
W1 油穴
W2 エッジ部
W3 バリ
21 シャンク
22 本体部
22′ 本体部
23b 六角形状部
23,23′ リテーナ保持部
23b 六角形状部
23b′ テーパ部
31〜35 アジャストリング(スペーサ)
41,43 ボール
42,44 ローラ
51,52 リテーナ
23b1 平坦部
23b2 凸部
C 回転中心
D ディンプル
W ワーク
Claims (4)
- 加工機に装着して回転させるマンドレルと、
このマンドレルに対して回転自在に外嵌され、前記マンドレルの回転により前記マンドレルの外周面を転動させる転動体を回転自在に保持するリテーナと、を有し、
前記マンドレルには、前記転動体と係合し前記マンドレルの外周面に断面視で略多角形状となるような凸部を設け、
前記リテーナは、ワークの内周面に対面するように挿入され、前記リテーナの外周面から径方向に前記転動体を出没自在に保持し、
前記マンドレルの回転により、前記凸部と前記転動体とが係合し、この転動体を前記ワークの内周面に対して振動させながら転動させるディンプル形成バニシング工具であって、
前記転動体として、ボールおよびローラを備え、
前記リテーナの軸方向での前記ローラの長さは、前記ボールの外径よりも大きく、
前記ボールおよび前記ローラは、前記リテーナの軸方向または周方向に沿ってそれぞれ交互に配置されていることを特徴とするディンプル形成バニシング工具。 - 前記ボールおよび前記ローラが前記リテーナの軸方向に沿ってそれぞれ交互に配置されている請求項1に記載のディンプル形成バニシング工具であって、
前記ボールおよび前記ローラは、前記リテーナの軸方向で互いに接触していることを特徴とするディンプル形成バニシング工具。 - 請求項1または請求項2に記載のディンプル形成バニシング工具であって、
前記マンドレルには、前記転動体を転動させる前記外周面が前記マンドレルの軸方向の先端に向かうにつれて縮径されたテーパ部を設け、
前記マンドレルに外嵌され、前記テーパ部に対して前記リテーナを前記マンドレルの軸方向の所定位置に保持するスペーサを備えていることを特徴とするディンプル形成バニシング工具。 - 請求項1記載のディンプル形成バニシング工具による加工方法であって、
前記ワークの内周面に対して、前記ボールによるディンプルの形成と前記ローラによるバニシング加工とを交互に行うことを特徴とする加工方法。
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