JP2756063B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents

空気入りタイヤ

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JP2756063B2
JP2756063B2 JP4263649A JP26364992A JP2756063B2 JP 2756063 B2 JP2756063 B2 JP 2756063B2 JP 4263649 A JP4263649 A JP 4263649A JP 26364992 A JP26364992 A JP 26364992A JP 2756063 B2 JP2756063 B2 JP 2756063B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、空気入りタイヤ、な
かでも、氷上での旋回特性に優れたスタッドレスタイヤ
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来のスタッドレスタイヤ、たとえば図
7に示すようなトレッドパターンを有するスタッドレス
タイヤでは一般に、雪上および氷上での駆動性能および
制動性能を重視したパターン設計が行われており、その
設計に当り、雪上性能については、雪を堅く踏み固める
ことができるように、ネガティブ率を大きくしてブロッ
クを小さくすることが有利であるも、ブロックのヒール
アンドトゥ摩耗、ブロック欠けなどを防止するためには
ブロックの周方向剛性を考慮することが必要であり、ま
た、氷上性能については、ネガティブ率を小さくして氷
とブロックとの摩擦面積を増加させるとともに、トレッ
ド幅方向に延びるサイプを多数形成して、それのエッジ
効果による摩擦係数の向上をもたらす一方、サイプによ
るブロック剛性の低下を考慮することが必要であった。
【0003】そこで出願人は、そのようなエッジ効果お
よびブロック剛性をともに考慮し、とくに氷上での駆動
性能および制動性能をともに大きく改善した空気入りタ
イヤを、特開平4-183611号として先に提案した。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、かかる従来
技術によれば、制動性能および駆動性能の向上に伴っ
て、直進走行時の限界速度は高まることになるが、そこ
では、車両の旋回走行時におけるタイヤの路面グリップ
力はさほど考慮されていなかったため、比較的大きなス
リップアングルを付与する場合には、旋回速度を大きく
低減させることが余儀なくされていた。
【0005】この発明は、従来技術の有するかかる問題
点を解決することを課題として検討した結果なされたも
のであり、その目的は、限界旋回速度を有効に高めるこ
とができ、しかも、限界旋回速度を越えてなお、すぐれ
た路面グリップ力を維持することができる空気入りタイ
ヤを提供するにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】この発明は、旋回走行中
のタイヤの路面グリップ力、および、ブロックの、トレ
ッド幅方向の剛性指数(以下横剛性指数という)のそれ
ぞれについての種々の実験および検討を行ったところ、
氷上グリップ力に対しては、図1に示すように、ブロッ
クの横剛性指数が極めて大きな影響をもち、そのブロッ
ク横剛性指数の特定値において氷上限界旋回速度指数が
最高値となることを見い出した結果としてなされたもの
であり、この発明の空気入りタイヤは、ブロックパター
ンを有するものであって、一のブロックの形成に寄与す
る二本の周方向溝の平均深さをHとし、そのブロック
の、トレッド幅方向の長さをIとしたときのブロック剛
性指数G/H=0.12/H(2H2 /I2+1.5 )が、0.0
029〜0.0042の範囲となるブロックを、全ブロック数の5
0%以上設けたものである。なおここで、前記ブロック
の、踏面側部分の10%以上を発泡ゴムにて形成した場合
には、前記ブロック剛性指数を0.0032〜0.0042の範囲と
することが好ましい。
【0007】
【作用】氷上での旋回速度の速さだけに着目する場合に
は、図1に示すところから明らかなように、氷上限界旋
回速度指数が最高値となるブロック横剛性指数を選択す
ることが好適であるが、車両の実車走行によれば、その
ブロック横剛性指数を、SFmax 、すなわち、スリップ
アングルの変化に伴うサイドフォースの変化を測定した
場合におけるサイドフォースの最大値が、その最大値も
しくはそれの近傍の値となるように選択した場合には、
旋回限界速度をわずかに越えるだけで、タイヤの路面グ
リップ力が急激に低下して唐突なスピンが発生すること
になるところ、ブロックの横剛性指数をその値より幾分
大きくして、前記SFmax をある程度低下させたタイヤ
では、旋回限界速度のさほどの低下をもたらすことなし
に、旋回限界速度を越えた場合の路面グリップ力の急激
な低下を有効に防止して、穏やかで粘りのある走行特性
をもたらすことができる。
【0008】そこでこの発明のタイヤでは、旋回限界速
度を越えた場合の、穏やかで粘りのある走行特性を重視
することとし、ブロックの横剛性指数0.12/H(2H2
/I2 +1.5 )を0.0029〜0.0042の範囲に選択する。す
なわち、その値が0.0042を越えると、旋回限界速度が小
さくなりすぎ、0.0029未満であると限界速度を越えた場
合の、唐突なスピンの発生を回避することができない。
【0009】なおここにおいて、0.12/H(2H2 /I
2 +1.5 )をブロックの横剛性指数としたのは以下の理
由による。図2に示すようなブロックモデルにおいて、
x方向の力がかかった場合のブロック剛性を日本機械学
会編 機械工学便覧、材料力学(上,下)(中原一郎著
養賢堂発行)などの既知文献により求めると、変形によ
るブロック先端(接地部)での傾斜角をθとすると、
【0010】
【数1】 が与えられ、単位接地面積あたりの剪断力をfとする
と、F=fbIであるので、傾斜角θに対するブロック
剛性をGとすると、
【0011】
【数2】 となる。
【0012】この一方において、氷結面上における摩擦
係数が最大となるHについて調べたところ、ブロック剛
性Gが大きく、かつ、周方向溝平均深さHが小さい方
が、即ち1/Hが大きい方が氷上摩擦係数μが大きくな
ることから、(1) 式で定まるブロック剛性に対してG/
Hが氷上摩擦係数μと良く対応することが判った。この
ことから、ここでは、
【0013】
【数3】 をブロックの横剛性指数とした。
【0014】またここで、上述したような剛性要件を満
たすブロックを、全ブロック数の50%以上設けることに
よって、旋回限界速度を維持して、旋回限界速度を越え
た場合のグリップ力の低下を防止し、穏やかで粘りのあ
る走行特性をもたらす。いいかえれば、それが50%未満
では、旋回限界速度が大きく低下するか、または旋回限
界速度を越えた場合のグリップ力が著しく低下する。
【0015】なお、トレッドゴムに発泡ゴムを用いたタ
イヤは一般に、非発泡ゴムを用いた場合に比してブロッ
ク剛性が15%程度低下し、それに伴って旋回性能も低下
するため、これをカバーするためにブロック剛性を高め
ているが、従来は、ブロックの横剛性を高くしすぎてい
たことを見い出したので、この発明では、ブロックの踏
面側部分の10%以上を発泡ゴムとする場合に、そのブロ
ックの横剛性指数を、0.0032〜0.0042の範囲とする。
【0016】ここで、その指数が0.0032未満では、限界
速度を越えた場合の唐突なスピンの発生を回避すること
ができず、また、それが0.0042を越えた場合にも、前述
の場合と同様の不都合が生じる。
【0017】また、ここにおいて、ブロックの発泡ゴム
の占める比率を10%以上とするのは、氷上走行性能を充
分に発揮させるためである。ところで、使用する発泡ゴ
ムとしては、発泡率が5〜50%、平均気泡径が5〜150
μmの独立気泡を有し、気泡直径が30〜200 μmの範囲
の気泡を1mm2 当り20個以上有し、また硬度が45〜70°
のものを用いることが好ましい。
【0018】
【実施例】以下にこの発明の実施例を図面に基いて説明
する。図3は、この発明の一実施例を示すトレッドパタ
ーンである。これは、トレッド周方向に連続して延びる
大小各種の周方向溝1〜4と、一方のトレッド端から他
方のトレッド端まで延在する幅方向溝5とによって、図
では六列のブロック列6,7,8をそれぞれ形成すると
ともに、これらのブロック列のうちの少なくとも四列、
ここでは全てのブロック列のブロック6a,7a,8a
の、トレッド幅方向に延びるそれぞれの辺縁を、タイヤ
子午線に対していずれかの方向に傾斜させ、そして、各
ブロック6a,7a,8aの、トレッド周方向のほぼ中
央部位置に、ブロック辺縁と実質的に平行に延在して一
方のブロック側端から他方のブロック側端に達する各一
本のサイプ6b,7b,8bを形成したところにおい
て、相互に隣接する二本の周方向溝1〜4の平均深さを
H、それらの二本の周方向溝にて区画されるブロック
の、トレッド幅方向の長さをIとしたときのブロック横
剛性指数0.12/H(2H2 /I2 +1.5 )が、0.0029〜
0.0042の要件を満たすブロックを、全ブロック数の50%
以上としたものである。ちなみにこの例では、すべての
ブロック6a,7a,8aが横剛性指数0.0029〜0.0042
を満たしている。
【0019】図4は、他の実施例を示すブロックパター
ンであり、ここでは五列のブロック列10,11,12のう
ち、中央ブロック列10のブロック10aを除く、他の列の
ブロック11a,12aの全てにおいて、トレッド幅方向に
延びるそれぞれの辺縁を、タイヤ子午線に対していずれ
かの方向に傾斜させる一方、ブロック10aの辺縁だけを
子午線方向に延在させ、そしてここでもまた、各ブロッ
クの、トレッド周方向のほぼ中央部位置に、ブロック辺
縁と実質的に平行に延びてそれを横切る一本のサイプ10
b,11b,12bを設け、さらに、特定の数のブロックに
ついての横剛性指数を、前述したと同様に、0.0029〜0.
0042の範囲としたものである。この例では、全ブロック
の横剛性指数を0.0029〜0.0042としている。
【0020】図5は、六列のブロック列21,22,23の全
てのブロック21a,22a,23aの辺縁を、タイヤ子午線
に対していずれかの方向に傾斜させるとともに、とく
に、ブロック22a,23aのそれぞれについては、辺縁長
さのほぼ半分を子午線と実質的に平行に延在させ、そし
て、各ブロック21a,22a,23aに、前述したと同様に
してサイプ21b,22b,23bを形成し、併せて、各ショ
ルダーブロック23aに、旋回性能の向上をもたらすべく
機能する二本の周方向サイプ23cをそのブロック23a
の、トレッド幅方向に延びるそれぞれの辺縁位置から、
タイヤ赤道線と実質的に平行に形成して、それらの両周
方向サイプ23cを、サイプ23bに到達させることなく終
了させ、さらに、全てのブロックの横剛性指数を0.0029
〜0.0042の範囲としたものである。
【0021】図6は、この発明のさらに他の実施例を示
すトレッドパターンである。この例では、六列のブロッ
ク列31,32,33のそれぞれのブロック31a,32a,33a
の全てにつき、トレッド幅方向に延びる辺縁をタイヤ子
午線に対していずれかの方向に傾けて延在させ、また、
各ブロック31a,32a,33aの、トレッド周方向の中央
領域に、相互に近接して位置する二本のサイプ34,35,
36をそれぞれ設けて、それらのうち、サイプ34,35をタ
イヤ子午線と平行に、そしてサイプ36をその子午線に対
して一定の方向へ傾斜させてそれぞれ延在させたところ
において、それぞれのサイプ34,35,36に挟まれる小ブ
ロック部分37,38,39の表面レベルを、各ブロック31
a,32a,33aの他の部分の表面レベルより幾分低く
し、さらに、各ブロック31a,32a,33aの、小ブロッ
ク部分37,38,39を隔てて位置するそれぞれの部分に、
それをトレッド幅方向に横切る浅い(サイプ34, 35,36
の10〜50%) 各一本のサイプ40,41,42を設ける。とこ
ろで、ここにおいてもまた、全ブロックの横剛性指数を
0.0029〜0.0042の範囲としている。
【0022】この例によれば、氷上でのより一層優れた
制動・駆動性能を発揮しつつ、すぐれたグリップ力を維
持することができる。
【0023】〔試験例〕 以下に発明タイヤと比較タイヤとの、氷上限界旋回性
能、限界を越えた時の滑り感および氷上制動性能に関す
る比較試験について説明する。 ◎供試タイヤ 図3に示すトレッドパターンを有し、周方向溝1〜4の
それぞれの溝幅を、9mm、3mm、9mmおよび2mmとし、
それらの溝深さを10〜20mmとするとともに、幅方向溝5
の溝幅を7.5 mm、溝深さを15mm、トレッド周方向のブロ
ック長さを26.5mm、ブロック幅を20〜35mmとしたサイズ
が11R22.5のタイヤである。 ・発明タイヤ1 上述したところにおいて、全てのブロックを非発泡ゴム
にて形成するとともに、全ブロックの横剛性指数を0.00
31としたもの。 ・発明タイヤ2 全てのブロックの、踏面側部分の50%を発泡ゴムにより
形成するとともに、全ブロック中70%のブロックの横剛
性指数を0.0035としたもの。 ・比較タイヤ1 ブロックを非発泡ゴムにより形成して、全ブロックにつ
き横剛性指数を0.0047としたもの。 ・比較タイヤ2 全てのブロックの横剛性指数を0.0027としたもの ・比較タイヤ3 全ブロックの、踏面側部分の50%を発泡ゴムにて形成
し、全ブロックの横剛性指数を0.0055としたもの。 ◎試験方法 上記各タイヤにつき、氷上限界旋回性能は、実車で半径
25mのコース(氷上)を走行したときの限界速度を指数
で表わす。限界を越えた時の滑り感は、限界を越えたと
きの滑り感をフィーリングで表す。氷上制動性能は、実
車で20km/hからロックブレーキングしたときの停止距
離を指数で表わす。 ◎試験結果 試験の結果を表1に指数をもって示す。なお指数値は大
きいほどすぐれた結果を示すものとする。
【0024】
【表1】
【0025】この表によれば、横剛性指数が0.0029〜0.
0042にあれば、限定を越えても急激にグリップを失うこ
とがなく、高い氷上旋回性能が得られることがわかる。
【0026】
【発明の効果】かくして、この発明によれば、とくに、
ブロックの横剛性指数を適正範囲に選択することによっ
て、限界旋回速度を有効に高めるとともに、その限界旋
回速度を越えてなお、すぐれた路面グリップ力を確保す
ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】横剛性指数と氷上限界旋回速度指数との関係を
示すグラフである。
【図2】ブロックモデルを示す図である。
【図3】この発明の実施例を示すブロックパターンであ
る。
【図4】この発明の他の実施例を示すブロックパターン
である。
【図5】この発明の他の実施例を示すブロックパターン
である。
【図6】この発明のさらに他の実施例を示すブロックパ
ターンである。
【図7】従来例を示すブロックパターンである。
【符号の説明】
1〜4 周方向溝 5 幅方向溝 6a〜12a,21a〜23a,31a〜33a ブロック I トレッド幅方向長さ

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 トレッド踏面部に、周方向溝と幅方向溝
    とによってブロックを形成した空気入りタイヤであっ
    て、 一のブロックの形成に寄与する二本の周方向溝の平均深
    さをH、そのブロックの、トレッド幅方向の長さをIと
    したときのブロックの剛性指数0.12/H(2H2 /I2
    +1.5 )が、0.0029〜0.0042の範囲となるブロックを、
    全ブロック数の50%以上設けてなる空気入りラジアルタ
    イヤ。
  2. 【請求項2】 前記ブロックの、踏面側部分の10%以上
    を発泡ゴムにて形成するとともに、そのブロックの前記
    剛性指数を、0.0032〜0.0042の範囲としてなる請求項1
    記載の空気入りタイヤ。
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JP3238101B2 (ja) * 1997-06-27 2001-12-10 住友ゴム工業株式会社 重荷重用空気入りタイヤ
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