JP2735842B2 - 非水電解液二次電池 - Google Patents

非水電解液二次電池

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Description

【発明の詳細な説明】 イ. 産業上の利用分野 本発明は充電可能なマンガン酸化物を活物質とする正
極と、リチウム或いはリチウム合金よりなる負極と、非
水電解液とを備えた非水電解液二次電池に関するもので
ある。
ロ. 従来の技術 充電可能な活物質よりなる正極と、リチウム或いはリ
チウム合金よりなる負極と、非水電解液とを備えた非水
電解液二次電池は、高エネルギー密度を有するという利
点があり、活発な研究がなされている。その中でも、特
に正極活物質として充電可能なマンガン酸化物を用いれ
ば、電池放電電圧が高いためエネルギーの高密度化の点
で非常に有利である。
ところで、この種二次電池を実用化する上で重要な問
題点の1つは充放電効率或いはサイクル寿命を向上しう
る電解液組成の探索である。即ち、この種二次電池にお
ける充放電サイクル特性の劣化原因としては、マンガン
酸化物を活物質とする正極の電圧が高いこととマンガン
酸化物が有する強酸化性の影響によって、特に充電時に
おいて正極表面上で電解液の分解が生じることによるも
のと考えられる。又、充電時に負極表面に析出する活性
リチウムによる溶媒の還元反応によって負極容量が低下
することも一因と考えられる。
これらの問題点を解決するために、従来では例えば特
開昭63−32870号公報に開示されているように、溶媒と
してアセチル基置換されたプロピレンカーボネートを用
いたり、或いは特開昭59−167971号公報に開示されてい
るようにγ−ブチロラクトンとテトラヒドロフランとの
混合溶媒を用いることなどが提案されているが、十分に
満足しうるものとは言い難い。
ハ. 発明が解決しようとする課題 本発明は前述せる従来技術に着目し、充電時における
正極での電解液の分解反応及び負極でのリチウムと溶媒
との反応を抑制してこの種二次電池の充放電サイクルの
向上を図ることを目的とするものである。
ニ. 課題を解決するための手段 本発明は充電可能なマンガン酸化物を活物質とする正
極と、リチウム或いはリチウム合金よりなる負極と、非
水電解液とを備えた非水電解液二次電池において、非水
電解液が少なくとも2種類の環状炭酸エステル、或いは
少なくとも1種類の環状炭酸エステルとγ−ブチロラク
トンまたはスルホランとの混合溶媒に、トリフルオロメ
タンスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)を溶解したもので
あることを特徴とする。
ここで、前記環状炭酸エステルとしてはエチレンカー
ボネート、プロピレンカーボネート及びブチレンカーボ
ネートよりなる群から選ばれたものが好適である。
又、非水電解液に硝酸リチウムを添加することは、さ
らに効果的である。
ホ. 作用 充電時に正極表面上で生じる電解液の分解反応として
は、溶媒の分解と溶質(リチウム塩)の分解とが考えら
れる。いずれの分解反応も、電解液組成に変化をもたら
して充放電効率の低下を招き、又分解反応生成物が正極
或いは負極表面上に不活性被膜として析出し電池の充放
電反応を阻害するためにサイクル特性が劣化すると推察
される。
そこで、このような電解液の分解に起因するサイクル
特性の劣化を防止するために、本発明者等は種々の電解
液系について検討した結果、先ず溶質については、リチ
ウム塩の種類、即ちリチウム塩のアニオンの種類がサイ
クル特性に大きく影響することを見出した。これを更に
詳細に検討したところ、リチウム塩の種類によって電解
液の分解性が異なることが明らかとなり、特にトリフル
オロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)が安定な溶
質であり、電池のサイクル特性向上に寄与しうるという
結果を得た。
この理由を考察するに、正極活物質であるマンガン酸
化物は一般的に強い酸化性を示すことが知られており、
このマンガン酸化物と接する電解液は酸化作用を受け分
解しやすい状況にあると考えられる。又、マンガン酸化
物は高い電位を有するため、特に充電時においては正極
近傍の電解液は強い酸化雰囲気下に置かれていることに
なる。ここで、溶質として(LiCF3SO3)を用いると、前
述した強い酸化雰囲気においてもトリフルオロメタンス
ルホン酸イオン(CF3SO3 -)の耐酸化性が大きいために
電解液の分解が抑制される。
一方溶媒については、従来から広く用いられているプ
ロピレンカーボネートやγ−ブチロラクトンなどの沸点
が180℃以上であるいわゆる高沸点溶媒と、1,2−ジメト
キシエタンやテトラヒドロフランなどの低沸点溶媒との
2成分系混合溶媒に比して、少なくとも2種類の環状炭
酸エステル、或いは少なくとも1種類の環状炭酸エステ
ルとγ−ブチロラクトンまたはスルホランとの混合溶媒
はサイクル特性に大きな向上が認められた。
この理由を考察するに、プロピレンカーボネートなど
の環状炭酸エステルは耐酸化性に優れるもののリチウム
との反応によって炭酸リチウム(Li2CO3)の緻密な被膜
を生成してリチウムの反応が阻害されサイクル特性の低
下を惹起していると考えられる。ここで2種類の環状炭
酸エステル、或いは少なくとも1種類の環状炭酸エステ
ルとγ−ブチロラクトンまたはスルホランとの混合溶媒
を用いると、リチウムとの反応によって炭酸リチウムや
酸化リチウムの被膜が生成するが、この場合2種類以上
の溶媒を用いるため物性の異なる炭酸リチウムの混成被
膜、物性の異なる酸化リチウムの混成被膜或いは炭酸リ
チウムと酸化リチウムとの混成被膜のように、2種以上
が混成せる被膜であり、斯る混成被膜は単一被膜に比し
て緻密性が低いためリチウムの反応阻害が抑えられ、サ
イクル特性の改善が図れる。尚、上記被膜生成物におい
て、炭酸リチウムの方が酸化リチウムより電流を流しや
すいため、被膜としては炭酸リチウム被膜が生成する方
が好ましい。そのため、混合溶媒のうち少なくとも一つ
として環状炭酸エステルを用いている。
ところで、溶質としてLiCF3SO3を用いる場合、電池缶
材として使用されているステンレス鋼表面がLiCF3SO3
よって腐蝕作用を受け、極端な時には電池缶材にひび割
などを生じて漏液現象が発生したり、又溶出した鉄イオ
ン、クロムイオンなどが充放電反応に影響を及ぼしサイ
クル特性を劣化させるという問題がある。このような現
象を防止するために種々の添加剤について検討したとこ
ろ硝酸リチウムが有効であることがわかった。これは硝
酸イオンの酸化作用によりステンレス鋼表面に酸化被膜
が生成し、この酸化被膜が電解液による腐蝕反応を抑制
するためであると考えられる。
ヘ. 実施例 以下本発明の実施例につき詳述する。
実施例1 電解液として、エチレンカーボネートとプロピレンカ
ーボネートとの等体積混合溶媒にLiCF3SO3を1モル/
溶解し、更に硝酸リチウムを1000ppm添加したものを用
いた。
第1図は本発明の1実施例としての扁平型非水電解液
二次電池の半断面図を示し、(1)はリチウム−アルミ
ニウム合金よりなる負極であり、負極缶(2)の内底面
に固着せる負極集電体(3)に圧着されている。(4)
は正極であって、マンガン酸化物85重量部に導電剤とし
てのアセチレンブラック10重量部及び結着剤としてのフ
ッ素樹脂5重量部を加えた混合物を加圧成型したもので
あり、正極缶(5)の内底面に固着せる正極集電体
(6)に圧接されている。(7)はポリプロピレン多孔
膜よりなるセパレータ、(8)は絶縁パッキングであ
り、電池寸法は直径24.0mm、厚み3.0mmである。この本
発明電池を(A1)とする。
比較例1〜3 電解液組成のみ実施例1と異なり、その他は実施例1
と同様の比較電池(B1)〜(B3)を作製した。比較電池
(B1)は溶質としてLiCF3SO3に代えて過塩素酸リチウム
を用いたもの、比較電池(B2)は溶媒としてエチレンカ
ーボネートを単独で用いたもの、比較電池(B3)は溶媒
としてプロピレンカーボネートを単独で用いたものであ
る。第2図はこれら電池(A1)(B1)(B2)(B3)の充
放電サイクル特性であり、充放電条件は充放電電流及び
充放電時間をいずれも2mA及び4時間とし、放電時間内
に1.5vに達した電池を寿命とした。
実施例2 電解液として、エチレンカーボネートとスルホランと
の等体積混合溶媒にLiCF3SO3を1モル/溶解し、更に
硝酸リチウムを1000ppm添加したものを用い、その他は
実施例1と同様の本発明電池(A2)を作製した。
比較例4〜5 電解液組成のみ実施例2と異なり、その他は実施例2
と同様の比較電池(B4)(B5)を作製した。比較電池
(B4)は溶質としてLiCF3SO3に代えて過塩素酸リチウム
を用いたもの、比較電池(B5)は溶媒としてスルホラン
を単独で用いたものである。第3図はこれら電池(A2
(B4)(B5)の充電サイクル特性であり、充放電条件は
第2図の場合と同様である。
実施例3 電解液として、エチレンカーボネート、γ−ブチロラ
クトン及び1,2−ジメトキシエタンを3:3:4の体積比で混
合溶媒にLiCF3SO3を1モル/溶解し、更に硝酸リチウ
ムを1000ppm添加したものを用い、その他は実施例1と
同様の本発明電池(A3)を作製した。
比較例6〜7 電解液組成のみ実施例3と異なり、その他は実施例3
と同様の比較電池(B6)(B7)を作製した。比較電池
(B6)は溶質としてエチレンカーボネートと1,2−ジメ
トキシエタンとの等体積混合溶媒を用いたもの、比較電
池(B7)は溶媒としてγ−ブチロラクトンと1,2−ジメ
トキシエタンとの等体積混合溶媒を用いたものである。
第4図はこれら電池(A3)(B6)(B7)の充放電サイ
クル特性図であり、充放電条件は第2図の場合と同様で
ある。
実施例4 電解液として、エチレンカーボネート、ブチレンカー
ボネート及び1,2−ジメトキシエタンを3:3:4の体積比で
混合した混合溶媒にLiCF3SO3を1モル/溶解し、更に
硝酸リチウムを1000ppm添加したものを用い、その他は
実施例1と同様の本発明電池(A4)を作製した。
実施例5 実施例4において、電解液に硝酸リチウムを添加しな
いことを除いて、その他は実施例4と同様の本発明電池
(A5)を作製した。
第5図はこれら電池(A4)(A5)の充放電サイクル特
性図であり、電池(A′)(A′)の特性は電池
(A4)(A5)を製造後、60℃恒温槽中で60日間保存した
後の特性を示すものである。
この特製図より、硝酸リチウムを添加すれば保存性の
特性がさらに改善されることがわかる。
ト. 発明の効果 上述した如く、充電可能なマンガン酸化物を活物質と
する正極と、リチウム或いはリチウム合金よりなる負極
と、非水電解液とを備えた非水電解液二次電池におい
て、非水電解液として少なくとも2種類の環状炭酸エス
テル、或いは少なくとも1種類の環状炭酸エステルとγ
−ブチロラクトンまたはスルホランとの混合溶媒にトリ
フルオロメタンスルホン酸リチウムを溶解したるものを
用いることにより充放電サイクル特性を改善しうるもの
であり、その工業的価値は極めて大である。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明電池の半断面図、第2図乃至第5図は電
池の充放電サイクル特性図を夫々示す。 (1)……負極、(2)……負極缶、(3)……負極集
電体、(4)……正極、(5)……正極缶、(6)……
正極集電体、(7)……セパレータ、(8)……絶縁パ
ッキング、(A1)(A2)(A3)(A4)(A′)(A5
(A′)……本発明電池、(B1)(B2)(B3)(B4
(B5)(B6)(B7)……比較電池。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭63−148565(JP,A) 特開 昭61−230276(JP,A) 特開 平1−14877(JP,A)

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】充電可能なマンガン酸化物を活物質とする
    正極と、リチウム或いはリチウム合金よりなる負極と、
    非水電解液とを備えるものであって、前記非水電解液が
    少なくとも2種類の環状炭酸エステル、或いは少なくと
    も1種類の環状炭酸エステルとγ−ブチロラクトンまた
    はスルホランとの混合溶媒に、トリフルオロメタンスル
    ホン酸リチウム(LiCF3SO3)を溶解したものであること
    を特徴とする非水電解液二次電池。
  2. 【請求項2】前記環状炭酸エステルが、エチレンカーボ
    ネート、プロピレンカーボネート及びブチレンカーボネ
    ートよりなる群から選ばれたものである請求項(1)記
    載の非水電解液二次電池。
  3. 【請求項3】前記非水電解液に硝酸リチウムが添加され
    ている請求項(1)または(2)に記載の非水電解液二
    次電池。
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