JP2735732B2 - 含リン化合物 - Google Patents

含リン化合物

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JP2735732B2
JP2735732B2 JP7162392A JP7162392A JP2735732B2 JP 2735732 B2 JP2735732 B2 JP 2735732B2 JP 7162392 A JP7162392 A JP 7162392A JP 7162392 A JP7162392 A JP 7162392A JP 2735732 B2 JP2735732 B2 JP 2735732B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、重合性単量体として、
特に光学材料の原料の単量体として有用であり、その
他、塗料、インク、接着剤等に有用な新規含リン化合物
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】現在、広く用いられている光学材料とし
ては、ジエチレングリコールビスアリルカーボネートを
注型重合させた樹脂がある。しかし、この樹脂は屈折率
(nD)が1.50であり、無機レンズに比べて小さ
く、無機レンズと同等の光学特性を得るためにはレンズ
の中心厚、コバ厚及び曲率を大きくする必要があり、全
体的に肉厚になることが避けられない。そこで樹脂の高
屈折率化を計る手段として樹脂の分子構造、即ち単量体
の分子構造中にフッ素以外のハロゲン原子、芳香環及び
イオウ原子を導入することが検討されている(特開昭6
1−86701号公報、同63−45081号公報、同
63−130614号公報)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記の単量体から得ら
れる樹脂は、従来のレンズ材料と比較すると屈折率がか
なり高くなっている。しかしながら、比重、透明性、耐
候性等の光学特性の点でバランスのとれた材料ではな
く、レンズ材料としては必ずしも満足できるものではな
かった。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記課題
を解決すべく鋭意研究した結果、リン原子を有するチオ
アクリレートまたはチオメタクリレート化合物が上記目
的を達成し得る新規重合性単量体であることを見い出
し、本発明を提案するに至った。
【0005】即ち、本発明は、下記式(1)
【0006】
【化3】
【0007】[但し、A1 及びA1′は、それぞれ同種ま
たは異種の−(R4−X1)m−、−(R4−X1)m−R5−ま
たは−(R4−X1)m−R5−X2−(但し、X1 及びX2
は、それぞれ酸素原子またはイオウ原子であり、R4
びR5 は、それぞれ同種または異種のアルキレン基、フ
ェニレン基、トルエン−α−ジイル基またはキシレン−
α,α′−ジイル基であり、mは0以上の整数であ
る。)であり、R1 及びR1′は、それぞれ水素原子ま
たはメチル基であり、R2 は、アルキル基、アリール
基、アラルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ア
リールチオ基、アラルキルチオ基、または
【0008】
【化4】
【0009】{但し、A2 は、−(R7−X3)n−、−(R
7−X3)n−R8−または−(R7−X3)n−R8−X4−(但
し、X3 及びX4 は、それぞれ酸素原子またはイオウ原
子であり、R7 及びR8 は、それぞれ同種または異種の
アルキレン基、フェニレン基、トルエン−α−ジイル基
またはキシレン−α,α′−ジイル基であり、nは0以
上の整数である。)であり、R6 は、水素原子またはメ
チル基であり、X5は、酸素原子またはイオウ原子であ
る。}であり、Xは、酸素原子またはイオウ原子であ
る。]で示される含リン化合物である。
【0010】前記一般式(1)中のR4 ,R5 ,R7
びR8 で示されるアルキレン基は特に制限はないが、炭
素原子数の増加に伴い屈折率が低下するため炭素数が2
〜6個の範囲で、特に2〜4個の範囲で選択することが
好ましい。
【0011】また、前記一般式(1)中のR4 ,R5
7 及びR8 は、フェニレン基、トルエン−α−ジイル
基(−CH2−Ph−)及び、キシレン−α,α′−ジ
イル基(−CH2−Ph−CH2−)であってもよい。
(但し、上記式中、Phはフェニレン基である。) 前記一般式(1)中のX,X1,X2,X3、X4及びX5
は、酸素原子又はイオウ原子であれば良いが、得られる
樹脂を高屈折率にするためにはイオウ原子が好ましい。
【0012】また、前記一般式(1)中のm及びnは0
以上の整数であれば良いが、m及びnが大きくなりすぎ
ると得られる樹脂の耐熱性がそこなわれるといった問題
が生じてくるため、好ましくは0〜5、特に0〜2の範
囲が好適である。尚、m及びnが0のときは、−(R4
1)m−及び−(R7−X3)n−は結合手を表す。
【0013】さらに、前記一般式(1)中のR2で示さ
れるアルキル基は特に限定されないが、一般には、炭素
原子数1〜4個の直鎖状又は分枝状のものが好適であ
る。一般に好適に使用される該アルキル基の具体例を提
示すると、メチル基、エチル基、n−プロピル基、is
o−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基等を挙げ
ることができる。
【0014】また、R2で示されるアリール基として
は、炭素数に特に制限されるものではないが、フェニル
基、ナフチル基、フェナンスリル基、アンスリル基、ト
リル基又はキシリル基等の炭素数6〜14のアリール基
が好ましい。また、R2で示されるアラルキル基として
は、炭素数に特に制限されないが、ベンジル基、フェネ
チル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基等の炭
素数7〜10のアラルキル基が好ましい。
【0015】さらに、前記一般式(1)中のR2で示さ
れるアルコキシ基は特に限定されないが、一般には炭素
原子数1〜4個の直鎖状又は分枝状のアルキル基を含む
基が好適である。一般に好適に使用される該アルコキシ
基の具体例を示すと、メトキシ基、エトキシ基、n−プ
ロポキシ基、t−ブトキシ等を挙げることができる。
【0016】また、前記一般式(1)中のR2で示され
るアルキルチオ基は特に限定されないが、一般には炭素
数1〜4個の直鎖状又は分枝状のアルキル基を含む基が
好適である。一般に好適に使用される該アルキルチオ基
の具体例を提示すると、メチルチオ基、エチルチオ基、
n−プロピルチオ基、t−ブチルチオ基等を挙げること
ができる。
【0017】また、前記一般式(1)中、R2で示され
るアリールチオ基としては、炭素数に特に制限されるも
のではないが、フェニルチオ基、ナフチルチオ基、フェ
ナンスリルチオ基、アンスリルチオ基、トリルチオ基又
はキシリルチオ基等の炭素数6〜14のアリールチオ基
が好ましい。
【0018】また、前記一般式(1)中、R2 で示され
るアラルキルチオ基としては、炭素数に特に制限される
ものではないが、ベンジルチオ基、フェネチルチオ基、
フェニルプロピルチオ基、フェニルブチルチオ基等の炭
素数7〜10のアラルキルチオ基が好ましい。
【0019】本発明の前記一般式(1)で示される化合
物の構造は次の手段によって確認することができる。
【0020】(イ)赤外吸収スペクトル(IR)を測定
することにより、3150〜2800cm-1付近にC−H
結合に基づく吸収、1660〜1690cm-1付近にチオ
エステル基に基づくカルボニル基の強い吸収、1700
〜1750cm-1付近にエステル基に基づくカルボニル基
の強い吸収、さらに、1650〜1600cm-1付近に末
端の不飽和炭化水素基に基づく吸収を観察することがで
きる。
【0021】(ロ) 1H−核磁気共鳴スペクトル( 1
−NMR)を測定することにより前記一般式(1)で示
される本発明の化合物中に存在する水素原子の結合様式
を知ることができる。
【0022】(ハ)元素分析によって、炭素、水素、イ
オウ及びリンの各重量%を求め、さらに認知された各元
素の重量%の和を100から減じることによって酸素の
重量%を算出することができ、従って該化合物の組成式
を決定することができる。
【0023】一般式(1)で示される含リン化合物は、
どのような方法により得ても良いが、代表的な製造方法
を記述すると下記のふたつの方法を挙げることができ
る。
【0024】(A)一般式(2)及び(3)
【0025】
【化5】
【0026】
【化6】
【0027】および/または、一般式(4)及び(5)
【0028】
【化7】
【0029】
【化8】
【0030】{但し、A1 及びA1′は、それぞれ同種
または異種の−(R4−X1)m−、−(R4−X1)m−R5
または−(R4−X1)m−R5−X2−(但し、X1 及びX2
は、それぞれ酸素原子またはイオウ原子であり、R4
及びR5 は、それぞれ同種または異種のアルキレン基、
フェニレン基、トルエン−α−ジイル基またはキシレン
−α,α′−ジイル基であり、mは0以上の整数であ
る。)であり、R1 及びR1′は、それぞれ水素原子ま
たはメチル基であり、X6は、ハロゲン原子である。}
で示される化合物と、下記式(6)
【0031】
【化9】
【0032】[但し、R2 は、アルキル基、アリール
基、アラルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ア
リールチオ基、アラルキルチオ基、または
【0033】
【化10】
【0034】{但し、A2 は、−(R7−X3)n−、−(R
7−X3)n−R8−または−(R7−X3)n−R8−X4−(但
し、X3 及びX4 は、それぞれ酸素原子またはイオウ原
子であり、R7 及びR8 は、それぞれ同種または異種の
アルキレン基、フェニレン基、トルエン−α−ジイル基
またはキシレン−α,α′−ジイル基であり、nは0以
上の整数である。)であり、R6 は、水素原子またはメ
チル基であり、X5は、酸素原子またはイオウ原子であ
る。}であり、Zは、ハロゲン原子であり、Xは、酸素
原子またはイオウ原子である。]で示されるハロゲン化
リン化合物とを反応させる方法。
【0035】B)一般式(7)及び(8)
【0036】
【化11】
【0037】
【化12】
【0038】{但し、A1 及びA1′は、それぞれ同種
または異種の−(R4−X1)m−、−(R4−X1)m−R5
または−(R4−X1)m−R5−X2−(但し、X1 及びX2
は、それぞれ酸素原子またはイオウ原子であり、R4
及びR5 は、それぞれ同種または異種のアルキレン基、
フェニレン基、トルエン−α−ジイル基またはキシレン
−α,α′−ジイル基であり、mは0以上の整数であ
る。)であり、R1 及びR1′は、それぞれ水素原子ま
たはメチル基であり、Mは、水素原子またはアルカリ金
属である。}で示される化合物と、前記一般式(6)で
示されるハロゲン化リン化合物とを反応させる方法。
【0039】前記一般式(1)で示される化合物を得る
反応の具体例を例示すれば以下に通りである。
【0040】A)で示す方法、すなわち、一般式(2)
及び一般式(3)で示される化合物、または、一般式
(4)及び一般式(5)で示される化合物と一般式
(6)で示される化合物とを反応させる方法は、反応系
中にハロゲン化マグネシウムおよび/またはハロゲン化
リチウムの生成を伴う反応であり、一般に有機溶媒を用
いるのが好ましい。該溶媒として好適に使用されるもの
を例示すれば、ヘキサン、ヘプタン、石油エーテル、ベ
ンゼン、トルエン等の脂肪族または芳香族炭化水素類;
ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等
のエーテル類が挙げられる。
【0041】前記反応における各化合物の仕込モル比は
必要に応じて適宜決定すれば良いが、通常、一般式
(2)及び一般式(3)で示される化合物、または、一
般式(4)及び一般式(5)で示される化合物に対して
一般式(6)で示される化合物を化学量論量、すなわち
等モルで反応させるのが一般的である。
【0042】前記反応における温度は原料の種類、溶媒
の種類によって異なるが、一般には−50〜50℃が好
ましい。反応時間も原料の種類によって異なるが、通
常、5分から24時間、好ましくは30分から12時間
の範囲から選べば十分である。また、反応中においては
撹はんを行うのが好ましい。
【0043】B)で示す方法、すなわち、一般式(7)
及び一般式(8)で示される化合物と一般式(6)で示
される化合物とを反応させる方法は、反応系から脱ハロ
ゲン化水素または脱ハロゲン化アルカリ金属させる反応
であり、特に前者の場合には生成するハロゲン化水素を
反応系から除くために、反応系内にハロゲン化水素捕捉
剤として塩基を共存させることが好ましい。該ハロゲン
化水素捕捉剤としての塩基は特に限定されず公知のもの
を使用することができる。一般に好適に使用される塩基
としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン等のト
リアルキルアミン、ピリジン、テトラメチル尿素等が挙
げられる。
【0044】また、反応系内に、炭酸アルカリ、水酸化
アルカリ、水素化アルカリ等のアルカリ金属化合物を存
在させ、一般式(7)及び一般式(8)で示される化合
物との反応によってアルコラートまたはチオラートを生
成させて上記の反応を行うのが好適である。
【0045】前記反応における各化合物の仕込モル比は
必要に応じて適宜決定すれば良いが、通常、一般式
(7)及び一般式(8)で示される化合物に対して、一
般式(6)で示される化合物を化学量論量、すなわち等
モルで反応させるのが一般的である。
【0046】前記反応に際しては、一般に有機溶媒を用
いるのが好ましい。該溶媒として好適に使用されるもの
を例示すれば、ヘキサン、ヘプタン、石油エーテル、ベ
ンゼン、トルエン、クロロホルム、塩化メチレン、塩化
エチレン等の脂肪族または芳香族炭化水素類、あるいは
ハロゲン化炭化水素類;ジエチルエーテル、テトラヒド
ロフラン、ジオキサン等のエーテル類;アセトン、メチ
ルエチルケトン等のケトン類;アセトニトリル等のニト
リル類;N,N−ジメチルホルムアミド等のジアルキル
アミド類;ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
【0047】前記反応における温度は原料の種類、溶媒
の種類によって異なるが、一般には0℃〜溶媒の還流温
度が好ましい。反応時間も原料の種類によって異なる
が、通常、5分〜40時間、好ましくは30分から24
時間の範囲から選べば十分である。また反応中において
は撹はんを行うのが好ましい。
【0048】反応系から目的生成物、すなわち前記一般
式(1)で示される化合物を単離精製する方法は特に限
定されず、公知の方法が採用できる。
【0049】本発明の前記一般式(1)で示される化合
物は高屈折率で比重が小さく透明性に優れた樹脂を与え
る。本発明の含リン化合物を用いて光学材料、とりわけ
レンズ材料を得る際、前記一般式(1)で示される化合
物が1官能性であるときは、ラジカル共重合可能な多官
能性不飽和単量体と共重合するのが好ましい。該多官能
性不飽和単量体の例を挙げると次のとおりである。尚、
アクリレート及びメタクリレートを総称して(メタ)ア
クリレートと記す。エチレングリコールジ(メタ)アク
リレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレ
ート、チオグリコールジ(メタ)アクリレート等のジ
(メタ)アクリレート;ジビニルベンゼン、2,5−ジ
ビニルピリジン等が挙げられる。
【0050】さらに、高屈折率の重合体を得る観点から
その単独重合体の屈折率が1.55以上の多官能性不飽
和単量体を用いるのが良好である。このような多官能性
不飽和単量体を具体的に例示すると、ビスフェノール
A、ビスフェノールS、2,2′,6,6′−テトラク
ロロビスフェノールA、2,2′,6,6′−テトラク
ロロビスフェノールS、2,2′,6,6′−テトラブ
ロモビスフェノールA若しくは2,2′,6,6′−テ
トラブロモビスフェノールS等のビスフェノール類のビ
スβ−メタリルカーボネート、ジアクリレート又はジメ
タクリレート;テトラクロロフタル酸ビスヒドロキシエ
チルエステル、テトラクロロイソフタル酸ビスヒドロキ
シエチルエステル、テトラクロロテレフタル酸ビスヒド
ロキシエチルエステル、テトラブロモフタル酸ビスヒド
ロキシエチルエステル若しくはテトラブロモテレフタル
酸ビスヒドロキシエチルエステル等のビスβ−メタリル
カーボネート、ジアクリレート又はジメタクリレート;
ジビニルベンゼン、2,5−ジビニルピリジン等が挙げ
られる。
【0051】一方、前記の多官能性不飽和単量体と共に
ラジカル共重合可能な1官能性不飽和単量体を使用して
もさしつえない。1官能性不飽和単量体は、高屈折率の
重合体を得る観点からその単独重合体の屈折率が1.5
5以上の単量体を用いるのが良好である。
【0052】具体的には下記のとおりである。フェニル
(メタ)アクリレート、モノクロロフェニル(メタ)ア
クリレート、ジクロロフェニル(メタ)アクリレート、
トリクロロフェニル(メタ)アクリレート、モノブロモ
フェニル(メタ)アクリレート、ジブロモフェニル(メ
タ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリ
レート、ペンタブロモフェニル(メタ)アクリレート、
モノクロロフェノキシエチル(メタ)アクリレート、ジ
クロロフェノキシエチル(メタ)アクリレート、トリク
ロロフェノキシエチル(メタ)アクリレート、モノブロ
モフェノキシエチル(メタ)アクリレート、ジブロモフ
ェノキシエチル(メタ)アクリレート、トリブロモフェ
ノキシエチル(メタ)アクリレート、ペンタブロモフェ
ノキシエチル(メタ)アクリレート、フェニルチオ(メ
タ)アクリレート、ベンジルチオ(メタ)アクリレー
ト、ベンジルチオエチルチオ(メタ)アクリレート、ス
チレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモス
チレン、ジブロモスチレン、ヨードスチレン、メチルス
チレン、メトキシスチレン、2−ビニルチオフエン、ビ
ニルナフタレン、N−ビニルカルバゾール、ベンジル
(メタ)アクリレート、エチルビニルベンゼン等が挙げ
られる。これらの単量体は一種又は二種以上を混合して
使用できる。
【0053】本発明において光学材料とりわけレンズ材
料を得る際、その単量体の組成比は前記一般式(1)で
示される化合物の全単量体中に占める割合が10〜10
0重量%、特に40〜100重量%の範囲で使用するの
が好ましい。一方、ラジカル共重合可能な多官能性不飽
和単量体の使用量は、全単量体中に占める割合で0〜9
0重量%、特に0〜60重量%の範囲が好ましい。更
に、ラジカル共重合可能な1官能性不飽和単量体の使用
量は、全単量体中に占める割合で0〜90重量%、特に
0〜60重量%の範囲が好ましい。
【0054】前記の単量体組成物を用いて高屈折率樹脂
を得る重合方法は、特に限定的でなく、公知の注型重合
方法を採用できる。重合開始手段は、種々の過酸化物や
アゾ化合物等のラジカル重合開始剤の使用、又は紫外
線、α線、β線、γ線等の照射或いは両者の併用によっ
て行うことができる。代表的な重合方法を例示すると、
エラストマーガスケットまたはスペーサーで保持されて
いるモールド間に、ラジカル重合開始剤を含む前記の単
量体組成物を注入し、空気炉中で硬化させた後、取出せ
ばよい。
【0055】ラジカル重合開始剤としては、特に限定さ
れず、公知のものが使用できるが、代表的なものを例示
すると、ベンゾイルパーオキサイド、p−クロロベンゾ
イルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウ
ロイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド等のジ
アシルパーオキサイド;t−ブチルパーオキシ−2−エ
チルヘキサネート、t−ブチルパーオキシネオデカネー
ト、クミルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパー
オキシベンゾエート等のパーオキシエステル;ジイソプ
ロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキ
シルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパ
ーオキシジカーボネート等のパーカーボネート;アゾビ
スイソブチロニトリル等のアゾ化合物である。該ラジカ
ル重合開始剤の使用量は、重合条件や開始剤の種類、前
記の単量体組成物の組成によって異なり、一概に限定は
できないが、一般には、単量体組成物100重量部に対
して0.01〜10重量部、好ましくは0.01〜5重
量部の範囲で用いるのが好適である。
【0056】重合条件のうち、特に温度は得られる高屈
折率樹脂の性状に影響を与える。この温度条件は、開始
剤の種類と量や単量体組成物の種類によって影響を受け
るので、一概に限定できないが、一般的に比較的低温下
で重合を開始し、ゆっくりと温度をあげて行き、重合終
了時に高温下に硬化させる所謂テーパ型の2段重合を行
うのが好適である。重合時間も温度と同様に各種の要因
によって異なるので、予めこれらの条件に応じた最適の
時間を決定するのが好適であるが、一般に2〜40時間
で重合を完結するように条件を選ぶのが好ましい。
【0057】勿論、前記重合に際し、離型剤、紫外線吸
収剤、酸化防止剤、着色防止剤、帯電防止剤、ケイ光染
料、染料、顔料、香料等の各種安定剤、添加剤は必要に
応じて選択して使用することが出来る。
【0058】さらに、上記の方法で得られる高屈折率樹
脂は、その用途に応じて以下のような処理を施すことも
出来る。即ち、分散染料などの染料を用いる染色、シラ
ンカップリング剤やケイ素、ジルコニア、アンチモン、
アルミニウム等の酸化物のゾルを主成分とするハードコ
ート剤や、有機高分子体を主成分とするハードコート剤
によるハードコーティング処理や、SiO2 ,Ti
2 ,ZrO2等の金属酸化物の薄膜の蒸着や有機高分
子体の薄膜の塗布等による反射防止処理、帯電防止処理
等の加工及び2次処理を施すことも可能である。
【0059】
【効果】本発明の含リン化合物は高屈折率で比重が小さ
く、透明性、耐候性等に優れた樹脂を与える単量体とし
て有用である。このため、本発明の含リン化合物の単独
重合又は該化合物と不飽和単量体との共重合により得ら
れる高屈折率樹脂は有機ガラスとして有用であり、例え
ば、メガネレンズ、光学機器レンズ等の光学レンズとし
て最適であり、更にプリズム、光ディスク基板、光ファ
イバー等の用途に好適に使用することができる。
【0060】
【実施例】以下、本発明を具体的に説明するために、実
施例を掲げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限
定されるものではない。
【0061】なお、実施例において得られた含リン化合
物、及び高屈折率樹脂は、下記の試験法によって諸物性
を測定した。
【0062】(1)IRスペクトル BIO−RAD製、DIGILAB FIS−7、フー
リエ変換赤外分光光度計を用い、液膜法またはKBr法
により測定した。
【0063】(2) 1H−NMRスペクトル 日本電子(株)製、PMX−60SI型(60MHz)
を用い、試料をCDCl3 に希釈し、テトラメチルシラ
ンを内部標準として測定した。
【0064】(3)屈折率 アタゴ(株)製、アッベ屈折計を用いて、20℃におけ
る屈折率を測定した。接触液にはブロモナフタリンまた
はヨウ化メチレンを使用した。
【0065】なお、含リン化合物の屈折率は該化合物が
常温で固体の場合には液状の不飽和単量体に溶解し外挿
法により求めた。
【0066】(4)外観 目視により測定した。
【0067】(5)耐候性 スガ試験機(株)製ロングライフキセノンフェードメー
ター(FAC−25AX−HC型)中に試料、及び比較
としてポリスチレンを設置し、100時間キセノン光を
露光した後、ポリスチレンよりも試料の着色の程度の低
いものを○、同等のものを△、高いものを×で評価し
た。
【0068】なお、以下の実施例で使用した不飽和単量
体は下記の記号で表した。但し、[]内は単独重合体の屈
折率である。
【0069】St: スチレン [1.590] ClSt: クロルスチレン (o,m体の混合物)
[1.610] DVB: ジビニルベンゼン [1.615] 実施例1 温度計、滴下ロート及びメカニカルスターラーを付けた
500ml3つ口フラスコにチオホスホニルクロリド10.0g
(0.059mol)とピリジン15.4g(0.195mol)を塩化メチレン2
00mlに溶解し、0℃で冷却した。撹はんしながら、2−
メルカプトエチルチオメタクリレート9.6g(0.059mol)を
徐々に滴下した。次いで、2−ヒドロキシエチルメタク
リレート16.9g(0.13mol)を滴下した。この際、反応温度
を0〜5℃に保ち、滴下終了後さらに20℃で2時間撹
はんした。その後、反応混合物を水にあけ、希塩酸、及
び希炭酸ナトリウム水溶液で有機層を洗浄した後、水洗
を行った。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶
媒を減圧下、留去することにより、無色透明な粘稠体2
8.0g(収率87%)を得た。
【0070】このもののIRチャートを図1に示した。
3150-2800cm-1にC−H結合に基づく吸収、1716およ
び1661cm-1にそれぞれメタクリロイル基およびチオメ
タクリロイル基のカルボニル基由来の強い吸収、1634c
-1にCH2=CH基に基づく吸収が認められた。
【0071】また、このものの1H−NMR(CDCl3溶媒
中、テトラメチルシラン基準、ppm)のチャートを図
2に示した。δ2.0ppmにチオメタクリロイル基のメチル
水素に由来する9個分のピークが一重線として、δ5.5
及び6.0ppmにチオメタクリロイル基のメチレン水素に由
来する6個分のピークが二重線として、δ2.7-3.4ppm、
および、δ4.1-4.4ppmにS−メチレン、およびO−メチ
レンの水素に由来する12個分のピークが多重線として
観測された。
【0072】更に、元素分析値(( )内は計算値であ
る。)はC:43.99%(44.80%)、H:5.53%(5.64%)、
S:20.15%(19.94%)、P:6.34%(6.42%)であり、計
算値とよく一致した。また屈折率を測定したところnD=
1.534であった。
【0073】以上より、得られた化合物は下記の構造式
で示されることが分かった。
【0074】
【化13】
【0075】実施例2 種々の原料を用いて実施例1において詳細に記述したの
と同様な方法により、表1に記載した含リン化合物を合
成した。なお、表1には得られた含リン化合物の性状、
元素分析結果、及び屈折率も併せて記した。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
【表3】
【0079】
【表4】
【0080】
【表5】
【0081】
【表6】
【0082】
【表7】
【0083】
【表8】
【0084】
【表9】
【0085】
【表10】
【0086】
【表11】
【0087】
【表12】
【0088】
【表13】
【0089】
【表14】
【0090】実施例42 実施例1で合成した含リン化合物60重量部と不飽和単
量体としてスチレン40重量部の混合物100重量部に
対して、ラジカル重合開始剤としてt-ブチルパーオキシ
−2−エチレンヘキサネート1重量部を添加してよく混
合した。この混合溶液をガラス板とエチレン−酢酸ビニ
ル共重合体とから成るガスケットで構成された鋳型の中
へ注入し、注型重合を行った。重合は空気炉を用い、3
0℃から90℃まで18時間かけ徐々に温度を上げて行
き、90℃に2時間保持した。重合終了後、鋳型を空気
炉から取り出し、放冷後、重合体を鋳型のガラスから取
り外した。
【0091】得られた重合体は無色透明であり、屈折率
D=1.587、比重1.18であり、耐光性も○であった。
【0092】実施例43 表2に示す含リン化合物、及びこれと共重合可能な単量
体とから成る組成物を用いた以外、実施例42と同様に
実施した。得られた重合体の物性を測定し、併せて表2
に示した。
【0093】
【表15】
【0094】
【表16】
【0095】
【表17】
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は実施例1で得られた本発明の含リン化
合物の赤外吸収スペクトルチャートである。
【図2】 図2は実施例1で得られた本発明の含リン化
合物の 1H−核磁気共鳴スペクトルチャートである。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記式 【化1】 [但し、A1 及びA1′は、それぞれ同種または異種の−
    (R4−X1)m−、−(R4−X1)m−R5−または−(R4
    1)m−R5−X2−(但し、X1 及びX2 は、それぞれ
    酸素原子またはイオウ原子であり、R4 及びR5 は、そ
    れぞれ同種または異種のアルキレン基、フェニレン基、
    トルエン−α−ジイル基またはキシレン−α,α′−ジ
    イル基であり、mは0以上の整数である。)であり、 R1 及びR1′は、それぞれ水素原子またはメチル基で
    あり、 R2 は、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アル
    コキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アラルキ
    ルチオ基、または 【化2】 {但し、A2 は、−(R7−X3)n−、−(R7−X3)n−R
    8−または−(R7−X3)n−R8−X4−(但し、X3 及び
    4 は、それぞれ酸素原子またはイオウ原子であり、R
    7 及びR8 は、それぞれ同種または異種のアルキレン
    基、フェニレン基、トルエン−α−ジイル基またはキシ
    レン−α,α′−ジイル基であり、nは0以上の整数で
    ある。)であり、R6 は、水素原子またはメチル基であ
    り、X5は、酸素原子またはイオウ原子である。}であ
    り、 Xは、酸素原子またはイオウ原子である。]で示される
    含リン化合物。
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