JP2730033B2 - 感熱転写箔用二軸配向ポリエステルフィルム - Google Patents

感熱転写箔用二軸配向ポリエステルフィルム

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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、サーマルプリンターなどに用いられる感熱
転写箔、つまり、感熱転写リンや感熱転写シートの基材
に好適な二軸配向ポリエステルフィルムに関するもので
ある。
[従来の技術] 感熱転写箔の基材である二軸配向ポリエステルフィル
ムの厚さ方向の熱伝導性を高くするため、該フィルム中
に、熱伝導性の高い粒子を添加するという考え方はすで
によく知られている。例えば特開昭59−162090や59−17
4392号公報には、アルミナやステンレススチールの粉体
を添加する例が記載されており、また、特開昭61−1675
29号公報には、アルミナ粒子などを添加するとともに、
フィルムの面配向度を低くすることが記載されている。
なお、現在各種用途に用いられている一般の二軸配向
ポリエステルフィルムの厚さ方向の熱伝導率は0.14〜0.
22w/mKの範囲である (東レ(株)製造の二軸配向ポリエステルフィルム(商
品名“ルミラー”)のカタログや、Hoosung Lee 報告Re
v.Sci.Instrum.53(6)884(1982)に記載されてい
る)。
[発明が解決しようとする課題] 上述した従来技術に記載されているいずれのフィルム
も、これを基材として感熱転写箔とした時、印字速度の
早さ、印字の鮮明さ、ホットスティックを起しにくい
と、およびドロップアウトを生じにくいことという4つ
の性能を合わせて満足しているものは見当らない。ま
た、単にポリエステルフィルム中に熱良導性の粒子を多
量添加しても、フィルムの熱伝導率が上るとは限らず、
一般的には、逆に下ることの方が多い。これは、ポリエ
ステルが二軸配向されるため、粒子界面とポリエステル
の間に空隙(ボイド)が生成するためと考えられる。ま
た、少し熱伝導率が上ることがあっても、従来技術で
は、感熱転写箔に適したフィルム表面の粗さと両立させ
ることができない。また、この感熱転写箔用の用途で
は、熱伝導率が高いほど良いというものではなく、熱拡
散との兼合いで、適当な範囲がある。本発明は、感熱転
写箔の基材として用いられている二軸配向ポリエステル
フィルムを改良して、感熱転写箔の印字速度、印字の鮮
明さ、ホットスティックを起しにくいこと、およびドロ
ップアウトを生じにくいことという4つの性能を合わせ
て向上させることを目的とするものである。
[課題を解決するための手段] 本発明は、少なくとも下記の関係を満足する2種の粒
子A、Bを含有し、フィルムの厚さ方向の熱伝導率が0.
30〜1.00w/mKの範囲にあり、かつ、フィルムの表面の平
均表面粗さが0.06〜0.25μmの範囲にある感熱転写箔用
二軸配向ポリエステルフィルムをその骨子とするもので
ある。
粒子Aの熱伝導率 1〜20w/mK 粒子の熱伝導率 A>B 平均粒子径 A<B ここでいうポリエステルとは、エステル結合を主鎖の
主要な結合鎖とする高分子の総称であるが、特に好まし
いポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレー
ト、ポリエチレン2,6−ナフタレート、ポリエチレン
α,β−ビス(2−クロルフェノキシ)エタン4,4′−
ジカルボキシレート、ポリブチレンテレフタレートなど
であり、これらの中でも、品質、経済性などを総合的に
勘案すると、ポリエチレンテレフタレートが最も好まし
い。そのため、以後は、ポリエチレンテレフタレートを
ポリエステルの代表として記述を進める。
本発明でいうポリエチレンテレフタレート(以後PET
略称する)とは、80モル%以上、好ましくは90モル%以
上、更に好ましくは95モル%以上がエチレンテレフタレ
ートを繰返し単位とするものであるが、この限定量範囲
内で、酸成分および/又はグリコール成分の一部を下記
のような第3成分と置きかえてもよい。
−酸成分− イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,5−
ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン
酸、4,4′−ジフェニルジカルボン酸、4,4′−ジフェニ
ルスルホンジカルボン酸、4,4′−ジフェニルエーテル
ジカルボン酸、p−β−ヒドロキシエトキシ安息香酸、
アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、ヘキサヒドロ
テレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ε−オキシ
カプロン酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリ
ット酸、α,β−ビスフェノキシエタン−4,4′−ジカ
ルボン酸、α,β−ビス(2−クロルフェノキシ)エタ
ン−4,4′−ジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソ
フタル酸 −グリコール成分− プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサ
メチレングリコール、デカメチレングリコール、ネオペ
ンチレングリコール、1,1−シクロヘキサンジメタノー
ル、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2−ビス(4
−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ビス
(4−β−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン、ジ
エチレングリコール、トリチレングリコール、ペンタエ
リスリトール、トリメチロールプロパン、ポリエチレン
グリコールなど。
また、このPETの中に公知の添加剤、例えば、耐熱安
定剤、耐酸化安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、有機
の易滑剤、顔料、染料、有機または無機の微粒子、充填
剤、離型剤、帯電防止剤、核剤などを配合してもよい。
上記に述べたようなPETの極限粘度(25℃のオルソクロ
ロフェノール中で測定)は、0.40〜1.20、好ましくは0.
50〜0.80、さらに好ましくは0.55〜0.75dl/gの範囲にあ
るものが本発明内容に適したものである。
次に、本発明でいう二軸配向ポリエステルフィルムと
は、無延伸状態のポリエステルシートまたはフィルム
を、長手方向および幅方向の、いわゆる二軸方向に各々
2.5〜5倍程度延伸されて作られるものであり、広角X
線回折で二軸配向のパターンを示すものをいう。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、その厚さ
方向の熱伝導率が0.30〜1.00w/mK、好ましくは0.35〜0.
90w/mK、更に好ましくは、0.40〜0.80w/mKの範囲内にあ
ることが必要である。熱伝導率が上記範囲より小さい
と、印字速度の向上という本発明目的に対して効果が少
ない。また、逆に、熱伝導率の値が上記範囲より大きい
と、印字の鮮明さが失なわれ、また、ドロップアウトも
増加する。
本発明フィルムの両表面の平均表面粗さ(Ra)の値
は、0.06〜0.25μm、好ましくは、0.08〜0.20μmの範
囲内にあることが必要である。Raが上記範囲より小さい
と、このフィルムを用いて感熱転写箔を作った時、サー
マルヘッドがこの箔の背面に粘着するというトラブル
(ホットスティックという)を起しやすい。また逆にRa
が上記範囲より大きいと、感熱転写箔を用いてサーマル
ヘッドで記録する時、本来、記録されるべき点あるいは
箇所が薄くなったり、全く記録されなかったりするトラ
ブル(画像のプリントぬけという意味でドロップアウト
という)を起こしやすくなる。フィルムの両表面のRaの
値は同じ値でもよいが、上記範囲内の値で、表と裏のRa
の値を変えてもよい。この場合は、色材層を塗布する側
の表面のRaの値を、背面側のRaの値より小さくすること
が望ましい。
サーマルヘッドから与えられる熱エネルギー量が多い
感熱転写箔の場合には、本発明フィルムの背面側(つま
り、色材層が塗布される表面の反対側の面)に、熱可塑
性および/または熱硬化性樹脂とオルガノポリシロキサ
ンとの混合物の層が、0.02〜0.8μmの厚さで塗布され
ていると、ホットスティックおよびドロップアウトの改
良に効果的である。
ここでいう熱可塑性樹脂とは特に限定されるものでは
ないが、代表的なものとして次のようなものを挙げるこ
とができる。ポリオレフィン樹脂、特にアクリル酸、ク
ロル等で変性された変性ポリオレフィン樹脂、ポリエス
テル系樹脂、特にスルホン酸あるいはスルホン酸金属塩
基含有ジカルボン酸成分が0.5〜15モル%共重合された
水溶性あるいは水分散性ポリエステル、アクリル系樹
脂、特に−COOH−、−CONR4R5、−NR4R5、−OH、 −COOCO− (但しR4、R5は水素又は炭素数1〜4の脂肪族炭化水素
基)から選ばれた基をもつアクリル系樹脂、メタクリル
系樹脂あるいはそれらの共重合体、あるいはパーフロロ
基をもつアクリル系樹脂、アクリロニトリル−スチレン
共重合体樹脂、フロロエチレン共重合体等のフッ素系樹
脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、酢酸ビニル系樹脂、あ
るいはこれらの共重合物乃至ブレンド物を挙げることが
できる。
またこれらの熱可塑性樹脂に常温固体のポリエチレン
グリコール、ジシクロヘキシルフタレート、ジフェニル
フタレート、トリフェニルホスフェート、ジメチルフマ
レート、ベンゾトリアゾール、2,4−ジヒドロキシベン
ゾフェノン、トリベンジルアミン、ベンジル、バニリン
およびフタロフェノン等の過冷却物質、あるいはアニオ
ン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性
剤、ノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、有機
カルボン酸および素の誘導体、高級脂肪族アルコール、
パラフィン、ワックス、界面活性剤、ワックスを熱可塑
性樹脂に対して1重量部〜50重量部、好ましくは3重量
部〜25重量部添加するとよい場合が多い。
上述した熱可塑性樹脂の中で特に本発明に適している
ものは、末端を親水化されたアクリル酸、メタクリル酸
共重合体および熱可塑性ポリウレタン樹脂である。
また、上述した熱硬化性樹脂とは特に限定されるもの
ではないが、代表的なものとしては、シランカップリン
グ剤、チタンカップリング剤等の縮重合しうる有機金属
化合物、ヒドロキシル、カルボキシル、アミド、アミ
ン、ニトリル、エポキシなどの橋かけ可能な官能基を有
するアクリレート、メタクリレートあるいはそれらの共
重合体やブレンド物を、エポキシ樹脂、アジリジニル樹
脂、アルキド樹脂、アミン、メラミン、ジアジン、尿
素、環式エチレン尿素、環式プロピレン尿素、アルキル
メラミン、アリールメラミン、ベンゾーグアナミン、グ
アナミン、アルデヒド、イソシアネートなどで架橋した
もの、あるいは架橋されたポリエステル共重合体やウレ
タン樹脂などあるいはこれらの混合物を挙げることがで
きるが、本発明に特に好ましいのは、架橋されたポリエ
ステル共重合体あるいは架橋されたポリウレタン樹脂で
ある。
前述したオルガノポリシロキサンとしてはシリコーン
オイルおよび各種官能基を導入した変性シリコーンオイ
ルなどを挙げることができる。オルガノポリシロキサン
の代表例は下記一般式(イ)〜(ハ)で示される。
[ただしX、Y、Zは1〜5000の整数、Rは炭素数1〜
100のアルキル基あるいは水酸基、R′は炭素数1〜10
のアルキレン基、フェニレン基、シクロヘキシレン基、
エーテル基から選ばれたもの、R″は水素、炭素数1〜
100のアルキル基、エポキシ基、アミノ基、カルボキシ
ル基、フェニル基、水酸基、メルカプト基、ポリオキシ
レンアルキル基、ハロゲンを含有するアルキル基より選
ばれたもの、Rは炭素数1〜100のアルキル基、ポリ
オキシレンアルキル基、水酸基、ハロゲンを含有するア
ルキル基より選ばれたものを示す。]。具体例としては
ジメチルポリシロキサンオイル、アミノ変性シリコーン
オイル、エポキシ変性シリコーンオイル、エポキシ・ポ
リエーテル変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シ
リコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、
アルコール変性シリコーンオイル、アルキルおよびアル
キル・アラルキル変性シリコーンオイル、アルキル、ア
ラルキル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、フッ素
変性シリコーンオイル、アルキル・高級アルコールエス
テル変性シリコーンオイル、メチルハイドロジェン、ポ
リシロキサンオイル、フェニルメチルシリコーンおよび
これらのエマルジョン化したものを例示することができ
る。本発明に特に好ましいものは、ジメチルポリシロキ
サンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、エポキシ
・ポリエーテル変性シリコーンオイル、ポリエーテル変
性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイルおよ
びこれらのエマルジョンである。またこれらの2種以上
を任意の比率で混合併用してもよい。さらには上記シリ
コーンオイルの反応性基と反応する各種の架橋剤を併用
すると特に好ましい。
本用途に好適なオルガノポリシロキサンは25℃で測定
した粘度が、100センチストークス(以下センチストー
クスをC・Sと略称する)以上500万C・S以下のも
の、好ましくは2000C・S以上300万C・S以下のものが
好適である。
以上に述べたような熱可塑性および/または熱硬化性
樹脂とオルガノポリシロキサンとの混合物がフィルム背
面に塗布されるわけだが、この塗布層における樹脂とオ
ルガノポリシロキサンとの組成比は、樹脂重量を100と
した時、オルガノポリシロキサンが5〜50、特に10〜40
の範囲にあることが好ましい。オルガノポリシロキサン
の量がこの範囲より増えても減っても、ホットスティッ
クやドロップアウトが悪くなる傾向がある。なお、この
混合物層中には、公知の添加剤、例えば、無機や有機の
微粒子(粒径0.1〜1μm程度)、可塑剤、滑剤、界面
活性剤、帯電防止剤などが添加されていてもよい。この
フィルム背面に塗布される混合物層は、180℃以上、好
ましくは200℃以上で1〜10秒間の熱処理を受けている
ことが望ましい。このような高温の熱履歴を受けること
によって、ホットスティックやドロップアウトが大きく
改良される。このような高温熱処理は、二軸配向ポリエ
ステルフィルムに塗剤を塗布して乾燥熱処理するという
通常のコーティング手法では極めてむずかしい(本発明
に用いられるフィルムは通常1〜12μm程度の厚さであ
り、極めて薄いので、180℃以上というような高温をか
けると、フィルムが収縮して、しわだらけになる)。従
って、二軸配向ポリエステルフィルムを製造する工程の
中で、上記混合物を塗布し、その後、延伸して熱処理す
るという手法が好ましい。この手法であれば、180℃以
上、好ましくは200℃以上というような高温熱処理も、
何ら問題なく実施できるのである。なお、フィルム背面
に塗布される上記混合物層の厚さは、0.02〜0.8μm、
好ましくは0.30〜0.5μmの範囲内にあることが望まし
い。この範囲より厚くても薄くても、ホットスティック
やドロップアウトは悪くなる傾向がある。
さて、本発明の骨子である、熱伝導率と平均表面粗さ
の双方を特定の範囲にするための具体的方法について述
べる。
上記を満足させるためにはフィルム中に少なくとも特
定の2種の粒子を含有させることが必要である。すなわ
ち粒子Aは主に熱伝導率に寄与するもので、表面粗さに
はあまり関与しない粒子、他のもうひとつの粒子Bはそ
の逆で熱伝導率にはあまり関与せず、表面粗さを制御す
る粒子であり、それらは以下の関係を満足することが必
要である。
粒子Aの熱伝導率 1〜20w/mK 粒子の熱伝導率 A>B 平均粒子径 A<B 粒子Aとしては、粒径が小さいもの、例えば平均粒径10
〜200mμ程度のものをフィルム中に1〜15重量%程度存
在させることが望ましい。また、粒子Bとしては、粒径
が比較的大きいもの、例えば、平均粒径0.5〜2μm程
度のものをフィルム中に0.1〜1重量%程度存在させる
ことが望ましい。粒子AとBを単層のフィルム中に混在
させてもよく、あるいは、2層あるいは3層構成のフィ
ルムとして、その片面あるいは中心層に粒子Aを存在さ
せ、反対面あるいは両表面層に粒子Bを存在させてもよ
い。粒子Aとしては、その粒子自身の熱伝導率が1〜20
w/mKであって、その形状は、球状、楕円状、多角形状、
立方体状あるいは直方体状のものが好ましい。粒子Bと
しては、PET重合過程に生成する、いわゆる析出粒子で
もよく、あるいは、無機や有機の微粒子を別途添加して
もよい。粒子Aの熱伝導率は上記範囲に満たない場合
や、範囲を超える場合にはいずれも画像の鮮明度が低下
する。
次に、フィルム中に存在する粒子とPETポリマとの界
面に存在する空隙(ボイド)の量が、熱伝導率および平
均表面粗さの双方を大きく左右する。一般的に言えば、
ボイドの量が多く(あるいは大きく)なると、熱伝導率
は低下し、逆に、平均表面粗さは大きくなる。このボイ
ドの量を制御する手法としては、1)粒子表面にOH基の
ような極性基を存在させる。2)粒子表面をシランカッ
プリング剤やチタンカップリング剤のような化学薬品で
処理する。3)粒子表面に凹凸をつける。4)粒子を多
孔質化する。5)PETの方を共重合体とする。6)フィ
ルムを延伸する時の温度を高目にする。7)フィルムの
延伸倍率を低目にする。8)二軸延伸後のフィルムを融
点近傍の温度で熱処理する。9)二軸延伸後のフィルム
を熱処理する時、一方向または二方向に弛緩処理を与え
る。10)二軸延伸の途中段階あるいは終了後に、フィル
ムを圧延加工あるいはカレンダー加工する、などの手段
がある。これらの手法を必要に応じて組み合わせて、ボ
イドの量を制御することにより、熱伝導率および平均表
面粗さを適正な範囲内に納めることができる。
次に、本発明フィルムの製造方法の1例を述べるが、
もちろん、本発明は、これらの製造方法に限定されるも
のではない。
PETとポリエステル系共重合体(融点あるいは軟化点
が235℃以下のものが好ましい。例えば、ポリエチレン
テレフタレート・イソフタレート共重合体(PET・Iと
略す)で、イソフタル酸が15モル%含まれているもの)
を共押出して、PET/PET・I/PETの3層からなる3層積層
フィルムを作る。両表層のPETの中には、非ボイド形成
性でやや粒径の大きい無機微粒子(例えば、粒径1μm
位の湿式シリカなど)を0.1〜1.0重量%程度均一分散さ
せておき、また、中心層のPET・I層の中には、非ボイ
ド形成性で、粒径の小さい無機微粒子(例えば、粒径20
mμのコロイダル酸化チタンなど)を1〜10重量%程
度、均一分散させておく。この3層積層フィルムを80〜
100℃に加熱して、長手方向に、2.5〜3.5倍程度延伸す
る。このフィルムの片面にコロナ放電処理をした後、そ
の処理面に、耐熱性保護層用塗剤(例えば、熱可塑性ポ
リウレタンと水溶性オルガノポリシロキサンとの混合物
の水分散液)を塗布し、予備乾燥させた後、90〜110℃
にて幅方向に、2.8〜3.8倍程度延伸する。長手方向およ
び幅方向の延伸倍率は、いずれも、厚みむらなどが悪化
しない範囲内で、低い倍率にすることが望ましい。次
に、この二軸延伸されたフィルムを緊張状態および/ま
たは弛緩状態で、1〜10秒間程度、熱処理する。熱処理
温度は、中心層のPET・Iの融点(又は軟化点)以上の
温度とすることが好ましい。このようにして作られた二
軸配向PETフィルムは全厚みが例えば9μmで、両表層
のPET層が各々2μm、中心層のPET・I層が5μmの厚
みから成立っている。
このフィルムの表面側(耐熱性保護層用塗剤を塗布さ
れていない方の表面)に、色材層を塗布し、必要に応じ
て、適当幅にスリットして、感熱転写箔を作ることがで
きる。色材層に用いる塗布材料としては、いわゆる昇華
性色材層や熱溶融性の色材層のいずれでも適用すること
ができる。
このようにして作られた感熱転写箔は、単色用(黒の
み)と多色用(カラー)のものがあり、ワードプロセッ
サー、ファックス、パソコン用プリンター、ビデオプリ
ンター、バーコード発券機、タイプライター、プレイン
ペーパーコピアなどの文字あるいは画像のプリントアウ
トに使用されるものである。
[特性の測定方法および効果の評価方法] 本発明における特性の測定方法および効果の評価方法
は次のとうりである。
(1)厚さ方向の熱伝導率 Hoosung Lee:Rev.Sci.Instrum.53(6)884−887(Ju
n.1982)に記載されている簡便法により測定した。な
お、汎用されている二軸配向ポリエステルフィルム(東
レ(株)製“ルミラー"T60タイプ)の厚さ方向の熱伝導
率を本方法で測定した結果、30℃において0.18w/mKの値
を示すことがわかったので、常にこのサンプルを比較用
の標準として用いた。また、測定に供するフィルムの厚
さが12μmより薄い場合は、そのフィルムを前述した標
準フィルムと重ね合わせて測定し、計算によって、該フ
ィルムの厚さ方向熱伝導率を求めた。
(2)平均表面粗さ(Ra) Jis−B0601−1976に準じて測定した。カットオフ値は
0.25mmとした。
(3)感熱転写箔の作成と評価 評価すべきフィルムの片面(耐熱性保護層が塗布され
ている面の反対側)に、昇華性染料を含む色材層を塗
布、乾燥せしめて感熱転写箔を作り、これを画像受客用
シートと重ね合わせて、サーマルヘッドによる記録(印
字)を行なった。
印字速度 反射濃度1.7の記録画像を得るのに必要な熱エネルギ
ーの大小で評価した。この熱エネルギーの値が小さいほ
ど、印字速度は早くできるとみなすことができる。
ホットスティック 感熱転写箔の背面とサーマルヘッドとの粘着の程度
を、目視判定および音の発生具合などから総合判断し
て、ホットスティックのレベルを優、良、可、不可の4
段階に判定した。
ドロップアウト 記録画像の濃淡部の発生具合や部分脱落の程度などを
総合判断して、ドロップアウトのレベルを、優、良、
可、不可の4段階に判定した。
[実施例] 本発明を実施例にもとづいて説明する。
実施例1 下記3種類の原料を準備した。
原料A:極限粘度0.65dl/gの無粒子系PETポリマ中に、
平均粒径約1μmの湿式シリカ粒子が0.7重量%均一分
散されているもの。
原料B:湿式シリカ粒子の量が0.35重量%で、あとは原
料Aと同じもの。
原料C:極限粘度0.62dl/gの無粒子系PET・Iポリマ
(イソフタル酸含量15モル%。軟化点230℃)中に、平
均粒径が20mμのコロイダル酸化チタン粒子が8重量%
均一分散されているもの。
これらの3種類の原料を十分に真空乾燥した後、3台
の別々の押出機に供給して、280〜290℃で溶融押出し、
これら3つの溶融体を口金に集めて、口金内部で合流せ
しめ、口金からA/C/Bの形の3層積層のシートとして押
出した。この溶融シートを表面温度40℃の冷却ドラムに
巻きつけて冷却固化せしめた。溶融シートと冷却ドラム
表面との密着性を良くするため、シート側にワイア電極
を張り、この電極に8000Vの直流を印加して、静電気力
で密着性が向上するようにした。かくして得られた未延
伸の3層積層シートを95℃に加熱して、長手方向に3倍
延伸し、次いで、そのA面側に、コロナ放電処理を施し
た。この処理面に、ロッドコート方式で、下記の水系塗
剤を塗布した。
−水系塗剤の製造− 熱可塑性ポリウレタンエマルジョンとアミノ変性シリ
コンエマルジョンとを、固型分重量比が90/10の比率に
なるように混合し、これに水を加えて、固型分濃度8重
量%になるように希釈し、これにフッ素界面活性剤を全
固型分重量に対して1.2%にあたる量を添加し、均一に
混合攪拌して、20℃における粘度が8センチポイズの水
系塗剤を作った。
この片面に水系塗剤を塗布されたフィルムを100℃に
加熱して、幅方向に3.4倍延伸した。次いで、緊張状態
のまま、235℃に加熱して、5秒間熱処理し、次に、幅
方向に2%分の弛緩を与え、再度、同じ温度で2秒間緊
張熱処理した後、徐々に冷却し、室温まで至ったところ
でフィルムを巻き取った。かくして得られたフィルムは
A/C/Bの3層から成っており、総厚みが9μmで、A層
とB層が各々2μm、C層が5μmであった。このフィ
ルムのA層側の平均表面粗さは0.16μm、B層側の平均
表面粗さは0.10μmであった。また、このフィルムの厚
さ方向の熱伝導率は0.55w/mKであり、汎用の二軸配向ポ
リエステルフィルムの3倍位高い値であった。なお、こ
のフィルムのA層表面に塗布された塗膜の厚さは約0.2
μmであった。
このフィルムのB層側表面に色材層を塗布して感熱転
写箔を作り、これのホットスティックおよびドロップア
ウトのレベルを評価したが、いずれも“優”であり、き
わめて優れていた。また印字速度を判断する熱エネルギ
ー量は、40mJ/mm2で、汎用の二軸配向ポリエステルフィ
ルム(9μm厚さ)を用いて場合に比べて、約1/2の熱
量で、同一反射濃度の記録画像を得ることができた。
実施例2 極限粘度0.62dl/gの無粒子系PET原料中に、平均粒径
1.2μmの多孔質マイクロカプセル状シリカ粒子0.6重量
%および平均粒径40mμのコロイダルシリカ粒子を5重
量%均一分散させたものを原料とし、これを十分に真空
乾燥した後、押出機に供給して、280〜290℃で溶融押出
し、これをT型口金からシート状に出して、実施例1と
同様に冷却固化せしめて、単層の未延伸シートを作っ
た。この未延伸シートを、実施例1と同様に処理して、
厚さ9μmの二軸配向フィルムを作った。但し、片面に
塗布する水系塗剤は、実施例1とは異なり、下記の方法
で調整したものを用いた。
[水系塗剤の製造] 下記の3成分を(A)/(B)/(C)の固型分重量
比が65/20/15になるように混合し、これに水を加えて固
型分濃度8重量%に希釈し、さらに、フッ素系界面活性
剤を全固型分重量に対して1.2%にあたる量を添加し、
均一に攪拌混合して、20℃における粘度が10センチポイ
ズの水系塗剤を作った。
(A)側鎖に反応性アクリル基を有する水溶性ポリエス
テル共重合体 (B)水溶性アミノ変性シリコンオイル (C)下記構造のブロックド・イソシアネート かくして得られた厚さ9μmの二軸配向PETフィルム
は、次の特性を有していた。
厚さ方向の熱伝導率 :0.38w/mK 平均表面粗さ(塗布面) :0.10μm 平均表面粗さ(非塗布面):0.10μm 塗布された塗膜厚さ :0.15μm このフィルムの非塗布面側に色材層を塗布して感熱転
写箔を作り、これのホットスティックおよびドロップア
ウトのレベルを調べたが、いずれも“優”であり、きわ
めて優れていた。また、印字速度を判断する熱エネルギ
ー量は60mJ/mm2で、汎用の二軸配向ポリエステルフィル
ム(9μm厚さ)を用いた場合に比べて、約3/4の熱量
で同一反射濃度の記録画像を得ることができた。
[発明の効果] 本発明は、二軸配向ポリエステルフィルムの厚さ方向
の熱伝導率およびフィルム表面の平均表面粗さを特定範
囲にすることにより、そのフィルムを基材とする感熱転
写箔の印字速度、印字の鮮明さ、耐ホットスティック性
および耐ドロップアウト性を向上させるという効果を奏
したものである。本発明フィルムは、昇華タイプの感熱
転写シートあるいは熱溶融タイプの感熱転写リボンある
いはシートのいずれにも、基材として有効に利用されう
るものである。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】少なくとも下記の関係を満足する2種の粒
    子A、Bを含有し、フィルムの厚さ方向の熱伝導率が、
    0.30〜1.00w/mKの範囲にあり、かつ、フィルム表面の平
    均表面粗さが0.06〜0.25μmの範囲にある感熱転写箔用
    二軸配向ポリエステルフィルム。 粒子Aの熱伝導率 1〜20w/mK 粒子の熱伝導率 A>B 平均粒子径 A<B
  2. 【請求項2】更に、熱可塑性樹脂及び/又は熱硬化性樹
    脂とオルガノポリシロキサンとの混合物の層が片面に塗
    布されてなる請求項1記載の感熱転写箔用二軸配向ポリ
    エステルフィルム。
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