JP4302806B2 - 感熱転写用積層フィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、感熱転写用積層フイルムの製造方法に関し、より詳しくは、プリンターの高速化、インクリボンの薄膜化に最適な感熱転写用積層フィルムの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリエチレンナフタレート(PEN)に代表されるポリエステルフイルムは、機械的強度、耐熱性、寸法安定性、耐薬品性など、多くの性能に優れており、コストパフォーマンスに優れているため、種々の用途に使用されている。
【0003】
加えて、更なる機能化のため、これらポリエステルフィルムの製膜工程中において、水溶性または水分散性の有機高分子を含む塗液をポリエステルフィルムの少なくとも片面に塗布し、次いで乾燥・延伸・熱処理を施して積層させる方法、いわゆるインラインコーティング法(以下、ILC法と略記する)が広く採用されている。
【0004】
感熱転写記録方式は、フィルム等からなる基材の表面に設けられたインク層を印字ヘッドの加熱状態に応じて印刷用紙などの表面に転写する記録方式であり、印字が鮮明であるとともに装置の簡便さや低騒音の観点から、広く普及しつつあり、基材として用いるポリエチレンテレフタレートフィルムにILC法により、種々の機能に応じたコート層を積層する手法が提案されている。
【0005】
ところで、近年、溶融型・昇華型ともにプリンターの高速化、インクリボンカセットの小型化の傾向が強まっており、それに伴い、以下に述べるような弊害が起きている。
(1)高速化に伴い、単位時間当りにフィルムにかかる熱量が大きくなるため、基材のポリエステルフィルムがいわゆる「熱負け」を起こし、インクリボンにしわが発生して、この部分が印字ぬけになったり、基材の印字ヘッドに当たる側に設けられた耐熱易滑層が印字ヘッドとの間で貼り付く、いわゆるスティッキング現象を起こしてしまい、使用に耐えられなくなってしまう。また、インクに昇華性のインクを用いる昇華型インクリボンについては昇華型インクを保持しているバインダー樹脂ごと転写してしまう、いわゆる異常転写を引き起こす。
(2)小型化に伴い、基材のポリエステルフィルムの厚さが薄くなるため、上記の熱負けによる弊害がさらに助長されるとともに、
▲1▼インクリボン厚さの変動割合が大きくなり、結果としてリボンの厚さ方向の熱伝導の、場所による変動が顕在化し、その結果、印字濃度のむらを引き起こす。
▲2▼強度不足がヘッドとの熱インパクト時のリボンの伸びを引き起こし、上記のインクリボンのしわがさらに悪化する。
▲3▼ILC法によりコート層が積層されたフィルムを製造し、これを一旦ロール状に巻き取った後、保管中に高温高湿度下にさらされた場合、重なり合ったフィルム同士がはりついてしまい、加工時に巻き出すことが不可能となる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の実情に鑑みなされたものであり、プリンターの高速化、インクリボンの薄膜化に最適な感熱転写用積層フィルムの製造方法を提供することを解決課題とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の製造条件を採用し、特定の構成を有する積層フィルムを製造することにより、上記課題が容易に解決されることを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の要旨は、水溶性または水分散性の有機高分子化合物を含む塗液を、配向結晶化が完了する前のポリエステルフィルムの少なくとも片面に塗布し、次いで、乾燥区間の振動によるフィルムの振幅を5cm以下として乾燥し、延伸・熱処理を施すことによって塗布層を形成することを含んでなる、全厚み1.0〜7.0μmの感熱転写用積層フィルムの製造方法であって、実施例に記載した方法により測定した当該フィルムの長手方向の任意の5m長区間における厚さムラが15%以下であり、実施例に記載した方法により測定した前記塗布層の固着力が100gf/125mm以下であることを特徴とする製造方法に存する。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の感熱転写用積層フイルム(以下、積層フイルムと略記する)は、基材としてポリエステルフィルムが使用される。
本発明で用いるポリエステルフィルムのポリエステルとは、その繰り返し単位の80モル%以上、好ましくは90モル%以上が、エチレンテレフタレート、エチレン−2,6−ナフタレート及びシクロヘキサンジメチレンテレフタレートの少なくとも1種に由来する繰り返し単位であるものを指す。上記繰り返し単位の割合が80モル%以上であれば、他の繰り返し単位を含むコポリエステルであってもよい。他の繰り返し単位を形成する共重合成分の例には、グリコール成分としてエチレングリコール、プロピレンングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメチレングリコール、ポリアルキレングリコール等のジオール成分など、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸、イソフタル酸、2,6ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、オキシ安息香酸等のオキシカルボン酸などが挙げられる。
【0009】
本発明で用いるポリエステルの極限粘度(o−クロロフェノール中25℃で測定)は、通常0.40〜1.20dl/g、好ましくは0.50〜0.80dl/gの範囲である。極限粘度が0.40未満の場合は、重合度が低く、フィルムとしたときに機械的強度が低下する傾向がある。また、極限粘度が1.20を超える場合は、溶融押し出しして未延伸シートを作るのが事実上、困難となる。
【0010】
上記の基材として特にポリエチレンナフタレートを使用した場合、他のポリエステルよりも耐熱性に優れるので、熱負けを最も効果的に防止でき、高強度化が図れるのでインクリボンのしわをさらに低減でき、最も好ましい。
ここで言うポリエチレンナフタレートとは、その構成単位の80モル%以上、好ましくは90モル%以上が、エチレン−2,6−ナフタレート単位から構成されているポリマーを指し、上記の制限範囲内で他のエステル成分を含んでいてもよい。ポリエチレンナフタレートは、触媒の存在下で適当な反応条件により、通常、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸またはそのアルキル誘導体と、エチレングリコールとを重縮合させることにより得ることができる。
【0011】
また、上記の基材ポリエステルフィルム中には、本発明の効果を阻害しない範囲内で、公知の添加剤、例えば、耐熱安定剤、耐酸化安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、有機の易滑剤、顔料、染料、微粒子、核剤などの少なくとも1種を添加してもよい。
【0012】
本発明の積層フイルムは、基材の少なくとも片面に水溶性または水分散性の有機高分子を含む塗布層を有する。
ここで言う、水溶性または水分散性の有機高分子とは、水溶性有機高分子化合物、および水に微分散が可能な有機高分子化合物を併せて指す。
これら有機高分子化合物を含む塗布層を適宜、設けることにより、上述した印字ヘッドとのスティッキング現象、昇華型インク/バインダーの異常転写等を防止することができる。
【0013】
水溶性有機高分子化合物としては、冷水または温水に可溶であるか、あるいはpHを調整すれば可溶化するものが好ましく、具体的には、ポリアルキレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリスチレンスルホン酸、ゼラチン、カゼイン、デキストラン、セルロースなどを挙げることができ、また、これらの誘導体も用いることができる。
【0014】
水に分散可能な有機高分子化合物としては、水中で安定に微分散できるものが好ましく、具体的には、サスペンジョン平均粒径の範囲が0.001〜50μmであることが好ましい。
有機高分子化合物の分散液は、もともと乳化重合で作られた分散液、機械的なせん断を強くかけて分散する方法、有機高分子化合物溶液に水を加えた後に溶剤を留去する方法等を用いて調製した分散液であってよく、有機高分子化合物を水に分散させるために、公知の分散剤を使用することもできる。
【0015】
水に微分散可能な有機高分子化合物の具体例には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリスチレン、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリロニトリル、ポリ酢酸ビニル、ポリ酪酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、芳香族または脂肪族ポリエステル、芳香族または脂肪族ポリアミド、芳香族または脂肪族ポリウレタン、芳香族または脂肪族ポリエーテル、芳香族または脂肪族ポリイミド、ポリカーボネート、ポリアリールケトン、芳香族または脂肪族エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、シアネート樹脂、ポリフルオロエチレン、ポリオルガノシロキサン、天然または合成のワックス、ポリアミノ酸など、およびこれらの誘導体を挙げることができる。
【0016】
これらの有機高分子化合物は、ホモポリマーであってもよいし、2種以上の繰り返し単位を含むランダムあるいはブロックあるいはグラフトコポリマーであってもよい。さらに、初めから目的の有機高分子化合物を水中に存在させるだけでなく、反応性モノマーあるいはポリマーを共存あるいは存在させて、塗布を行った後に架橋反応あるいは重合反応を行うことも可能であるし、この際には公知の触媒を併用してもよい。
【0017】
さらに、これらの有機高分子化合物を含む塗布剤中に、後述するように、積層フィルム間の固着力を低減するために架橋剤あるいは架橋性高分子を加えることができる。
上記の塗布剤の媒体は、水を主成分とするが、上記有機高分子化合物等の水への分散性または造膜性能を改良する目的で少量の有機溶剤を含有させてもよい。有機溶剤を用いる場合、主たる媒体である水に溶解する範囲で使用するのが好ましい。
【0018】
上記の塗布剤には、以上の各成分のほかに、本発明の効果を阻害しない範囲において、公知の添加剤、例えば、耐熱安定剤、耐酸化安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、有機易滑剤、有機または無機微粒子、界面活性剤、ワックス類などを添加してもよい。
なお、基材フイルムには、その表面への塗液の塗布性、形成される塗布層との密着性を改良するために、塗布前にその表面に化学処理や放電処理を施してもよい。これらの中で放電処理が特に効果的である。
【0019】
上述した塗液は、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に塗布されるが、この塗布工程は、ポリエステルフィルムの製造工程(製膜工程)内で行う必要がある。
塗布される面は、その機能に応じ、基材のどちらの面であっても構わない。もちろん、両面に施されても構わない。
【0020】
例えば、昇華型感熱リボンとして用いる場合は、昇華型インクの塗布される方の面にインクとの接着力を強化し、異常転写を防止するために易接着塗布層を設けるか、または、インク面側に易接着塗布層を設け、反対側の印字ヘッドに当たる方の面に耐熱塗布層(耐熱易滑層)を設けることができる。
また、例えば、溶融型感熱リボンとして用いる場合は、耐熱塗布層を設けるか、または、溶融インク側にインクの剥離用の塗布層を設け、反対面に耐熱塗布層を設けることができる。
【0021】
なお、本発明の積層フィルムの製造終了後に、さらに、個々の感熱転写機能に応じ、種々の塗布層を設けるのはむろん構わない。しかし、本発明で定義する全厚さとは、フィルム製膜の工程中にILC法により積層された塗布層と基材のポリエステルフィルムの総和と定義し、厚さむらとは、この全厚さの変動(比)を指す。
【0022】
塗液を基材のフイルムに塗布する方法としては、「コーティング方式」(原崎勇次著、槙書店、1979年発行)に示されるような公知のコーター、例えば、リバースロールコーター、グラビアコーター、ロッドコーター、エアドクターコーター、ダイコーターを使用する塗布方法が挙げられる。
塗液を塗布した後に、後述する乾燥区間を経て、さらに、横延伸を含む工程を経て、熱処理する必要がある。
【0023】
上記の塗布、乾燥、延伸および熱処理の各工程を実施する具体的な方法としては、例えば、次の2つの方法が例示されるが、これらに限られるものではない。
第一の方法は、未延伸シートを長手方向に一軸延伸(縦延伸)した後、フイルム表面に塗布剤を塗布し、これを加熱ゾーンに導き、乾燥区間を経て、幅方向に延伸(横延伸)した後、最後に熱処理を施す方法である。
第二の方法は、未延伸シートを長手方向に一軸延伸した後、フイルム表面に塗布剤を塗布し、これを加熱ゾーンに導き、乾燥区間を経て、幅方向に延伸した後、再度、長手方向および/または幅方向に再延伸し、最後に熱処理を施す方法である。
【0024】
上記の延伸において、延伸条件はポリエステルの種類により最適条件を選ぶ必要がある。例えばPENの場合は、延伸温度は、通常115〜180℃であり、延伸倍率は、全延伸工程を合わせて面積倍率で通常4〜35倍、好ましくは6〜30倍である。延伸されたフイルムは、通常150〜250℃で熱処理されるが、必要に応じ、熱処理の最高温度ゾーンおよび/または熱処理クーリングゾーンにおいて縦方向、横方向または両方向に0.1〜20%弛緩状態で熱処理する方法が好ましく採用される。
【0025】
本発明の積層フィルムの全厚さは、1.0〜7.0μmであり、好ましくは、1.5〜4.0μm、さらに好ましくは1.5〜3.0μmである。なお、全厚さの測定法は後述の実施例に記載された方法による。全厚さが1.0μm未満では、機械的強度が不足し不適当であり、7.0μmを超えると、インクリボンの薄膜化が不十分であり、不適当である。
【0026】
本発明の積層フィルムは長手方向の厚さむらが小さいことが必要である。すなわち、後述の実施例に記載された方法により測定された長手方向の任意の5m長区間での厚さむらが15%以下である必要があり、好ましくは10%以下、さらに好ましくは7%以下である。厚さむらが15%を超える場合、前述した印字濃度のむらを引き起こし、不適当である。
【0027】
ところで、水を多量に含む塗液をフィルムの上に塗布することが原因で、インラインコーティングを施さない場合と較べて、その後の延伸工程でフィルムの温度むらが生じやすく、この結果、フィルムの厚み変動が大きくなる問題が生じる。
つまり、フィルムの延伸のために与えられた熱量は、まず先に、水の蒸発潜熱により奪われてしまう。そして塗液の水分が十分に蒸発した後にフィルムの温度が上昇することになるため、インラインコーティングを施さない場合と較べて、フィルムの温度むらが生じやすく、この結果、フィルムの厚み変動が大きくなる。さらに、感熱転写用として薄いフィルムを生産する場合には、フィルムの厚みに対する塗液の厚みの比率、すなわち、ポリエステル量に対する水分量の比率が必然的に大きくなり、前述した傾向は一層、顕在化してしまう。
【0028】
本発明者らは、この問題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、基材のベースフィルムの振動が原因で、流動性の残っている塗膜が不均一な厚み分布となり、この結果、乾燥→横延伸と続く工程中にベースフィルムの温度分布も不均一となって、これが長手方向の厚さ変動に極めて大きな影響を及ぼすことが要因であるとの結論に到達した。すなわち、この振動を少なくするか、あるいは振動があってもその影響を受け難くすることで、ポリエステルフィルムの長手方向の厚さ変動を抑えられることが判明した。
【0029】
塗液を塗布した後、乾燥工程に供されてから塗液中の水分が十分に蒸発する(塗膜中の水分量で1重量%を目安とする)までの間(以後、乾燥区間と略称する)に、フィルムに発生する振動の多くの部分は、テンタークリップでフイルムの耳部を把持する際に発生する衝撃によるもの、およびテンターでの熱風の吹き出しでフィルムが煽られることによるものである。これらの振動を少なくするためには、たとえばテンターでの熱風をインバーター制御として脈動を抑える方法、熱風の風量自体を下げる方法、フィルムが加熱されることにより膨張する分だけクリップ幅を徐々に広げて、両端をクリップで把持されたフィルムの中央に弛みを生じさせない方法、テンタークリップがフィルムの耳を把持する際に、衝撃が少なくなるようクリップに緩衝材を用いる方法などを採用することができる。また、振動があってもその影響を受け難くするために、乾燥区間において、コーターからテンタークリップでフィルムの耳を把持するまでの距離をできるだけ短くして、振動の振幅を小さく抑える方法、片面塗布の場合には、乾燥区間において塗布面とは反対のフィルム面に、駆動あるいはフリーロールを単独であるいは複数個接触させて、振動の伝搬を短い区間で遮断する方法などを用いることができる。もちろんこれらの2つ以上の方法を併用する事も可能である。
【0030】
上記のような方法を採用することにより、乾燥区間内のフィルムの振動、特に振幅が大きな振動を抑えることで、結果として二軸配向・熱固定が施されたフィルムで、長手方向の厚さムラの発生を小さく抑えることができる。この際に、乾燥区間の振動によるフィルムの振幅は、テンターの幅、フィルムの厚み、塗布厚みにもよるが、最大でも5cm以下、さらには3cm以下とするのが好ましい。
【0031】
本発明においては、インラインコーティングに起因する厚さむらの上記防止方法のほかにも、公知の厚さムラ防止方法を併用できる。本発明者らの経験によれば、フィルムの厚さムラは、最も不良となるプロセスに引きずられて、そのレベルが決まってしまう傾向にある。したがって、本発明によってインラインコーティングプロセスは改善できたとしても、それだけでは十分とは言えず、総合的な対策が必要となる。
【0032】
以下、本発明のフィルムを得るために好ましく用いることのできるプロセスの好ましい態様を説明するが、本発明はこれらに限定されるわけではない。
ポリエステル原料の溶融押し出しを行う際には、吐出の脈動を押さえる目的で、押し出し機のメルトラインにギヤーポンプを設置するのが好ましい。このほか溶融ポリエステルのメルトラインでの温度分布を均一化させるため、スタティックミキサーを設置するもの良い方法である。
【0033】
溶融ポリエステルをキャスティングして固化させ、未延伸フィルムとなすプロセスは、いわゆる静電密着法を用いるのが好ましい。静電密着法は、電極として、エッジ部の厚みが50μm以下のアモルファス金属電極(特開平1−152031号公報参照)、電気絶縁体の少なくとも片面に厚さ0.01〜10μmの導電性薄膜を設けてなる積層ブレード電極(特開平1−156036号公報参照)などを用いて、溶融ポリエステルを効果的に冷却ドラムへ密着させつつ行うことが好ましい。静電密着法を有効に行うため、原料として用いるポリエステルの溶融時の比抵抗を1×1010Ω・cm以下、好ましくは1×109Ω・cm〜1×106Ω・cmの範囲とすることが好ましい。
【0034】
また同じ目的で、特開昭57−190040号公報、特開昭58−225123号公報、特開昭59−91121号公報、特開昭59−172542号公報、特開昭59−182840号公報、特開昭59−229314号公報、特開昭60−141751号公報、特開昭60−248737号公報、特開昭62−218416号公報、特開昭62−236722号公報、特開昭62−236722号公報などに記載されている方法も用いることもできる。
さらに、溶融ポリエステルを口金から吐出させる際には、口金スリット間隙/冷却固化した未延伸フィルムの厚みの比を5〜20、さらには8〜15に調節することを併用すると、未延伸フィルムの厚さムラを少なくすることができて好ましい。これらのほか、冷却ドラムの回転ムラを極力小さくすること、風等を遮ることで、キャスティング時の溶融ポリエステルをできるだけ振動させないで冷却ドラムへ接地させる等の処方も用いることができる。これらの結果、シート状の溶融ポリエステルが冷却ドラムに接地する際に、冷却ドラム上に幅方向に広がる線状の接地点(以後、接地ラインと略称する)のゆらぎの幅が、有効製品幅に相当する領域で、最大でも1mm、さらには0.5mm以下とするのが好ましい。
【0035】
キャスティング工程で未延伸フィルムとしたポリエステルは、この後、上述した方法に代表される方法で処理されるが、縦延伸はロール延伸法を用いて行うのが好ましく、この際には、各々の延伸段階において、低速ロールおよび高速ロール上の延伸区間で、塑性変形が開始する位置および終了する位置のゆらぎが発生しないように、適切な位置にニップロールあるいは静電密着法を用いて、各ロールにフィルムを押さえ付けながら行うことが好ましい。
【0036】
また、横延伸はテンターで行うのが好ましく、この際には、テンター内でフィルムを加熱・冷却するための空気の吹き出しは、インバーター制御を行って脈動を極力抑えるのが好ましく、また、特開平5−301284号公報に記載されているように、吹き出し口の角度を経時的に変化させて、幅方向の厚みムラを改善する処方も採用できる。
【0037】
さらに再縦延伸および/または再横延伸を行う場合には、再縦延伸はロール延伸法で、再横延伸はテンター法でそれぞれ行うのが好ましく、これらの際には前述したロール延伸法・テンター延伸法で用いた厚さムラ対策と同様の処方を用いることができる。
最後に熱処理を行う際には、テンター法を用いるのが好ましいが、この際にも横延伸と同様の厚さムラ対策を行うことができる。
【0038】
本発明の積層フィルムは、後述の実施例に記載された方法により測定された固着力が100gf/125mm以下であることが必要であり、好ましくは50gf/125mm以下、さらに好ましくは30gf/125mm以下である。このことは積層フィルムが一旦、ロール状に巻き取られた後、フィルム間に圧力がかかった状態で高温高湿度下にさらされた場合でもフィルム同士が貼り付かず、加工時、巻き出す際に容易にフィルムが引き出せることを意味する。
【0039】
固着力の制御は、例えば、塗液中に架橋剤あるいは架橋性高分子を添加し、上述のフィルムの熱処理工程中で上記の有機高分子化合物の各成分内あるいは成分間の架橋を進行させることにより達成される。また、これにより昇華型インクとの接着力向上のための塗布層の場合はさらにインクとの接着力が向上することができる。また、基材フィルム中に含まれる有機あるいは無機の粒子の種類と添加量を調整し、表面の粗度を高くすることも効果的である。即ち、後述の実施例に記載された方法により測定された平均粒子径が1.0μm以上の粒子を基材フィルム中に0.25重量%以上含有することが固着力の低減の点から好ましく、更に好ましい含有量は0.40重量%以上、最も好ましい含有量は0.60重量%以上である。
【0040】
さらに、本発明の積層フィルムの長手方向および幅方向のF5値はともに13.0kgf/mm2以上であることが好ましく、この条件を満足すれば、インクリボンの長手方向および幅方向の伸びをさらに低減させることができ、結果として印字しわおよび印字ぬけを低減することができる。なお、F5値の測定法は後述の実施例に記載された方法による。
【0041】
【実施例】
以下、本発明の積層フィルムを実施例により説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されない。
なお、実施例および比較例中において、単に「部」および「%」とあるのは、特に断わらない限り、それぞれ「重量部」および「重量%」を意味する。
また、本発明における特性の測定方法および判定基準は次のとおりである。
(1)積層フィルムの全厚さ
まず、フィルム試験片の密度(ρ:(g/cm3))をJIS K7112に規定するD法(密度勾配管法)により測定し、次に、100±0.5cm2のサイズに切り取った試験片を天秤に乗せ、フィルム質量(m:(g))を0.0001gまで精密に測定した後、以下の式により算出した。この測定を5回繰り返し、得られたtの値の中央値を積層フィルムの全厚さ(μm)とした。
【0042】
【数1】
t=100m/ρ
【0043】
(2)積層フィルムの長手方向の厚さむら
積層フィルムの長手方向の5m長区間を無作為に20点抽出した。光干渉の原理を用いた非接触型の膜厚測定器(大塚電子株式会社製 瞬間マルチ測光システム「MCPD−1000」)により、それぞれのサンプル毎に最大厚さ(μm)および最小厚さ(μm)を測定し、変動幅(=最大厚さ−最小厚さ)を算出した。かかる測定を20回繰り返し、最も大きい変動幅を用い、以下の式により厚さむら(%)を求めた。ここで用いる平均厚さ(μm)とは上記(1)により求めた積層フィルムの全厚さ(μm)である。
【0044】
【数2】
厚さむら(%)={(最大厚さ−最小厚さ)/平均厚さ)}×100
【0045】
(3)固着力
切り取った2枚の積層フィルム試験片を用い、一方の塗布面と、他方のこれと反対の面が接するように重ね合わせ、40℃、80%R.H.に調節された恒温恒湿室内でプレス機により、幅12.5cm、長さ10.0cmの長方形部分を圧力10kgf/cm2でプレスした状態で24時間放置した後、圧力を解除し、恒温恒湿室内を23℃、50%R.H.に変更し、そのまま24時間放置した。
【0046】
放置後、試験片を取り出し、この重ね合わせた2枚の試料の間に緊張させた線径0.8mmφのピアノ線を通し、プレスした長方形の幅12.5cmの辺に平行に維持した状態で、ピアノ線を50cm/分の速度で移動して前記のプレス部分を剥離した。この剥離の際にピアノ線にかかった剥離荷重(gf/125mm幅)値のチャートから平均線を求め、固着力とした。
【0047】
(4)F5値
インテスコ社製引張試験機 インテスコモデル2001型を用いて、温度23℃、50%R.H.に調節された室内において、幅15mmの試料フィルムを、チャック間50mmでチャックし、200mm/分の速度で引っ張り、元の長さより5%伸びた時の荷重(kgf)を試験片の元の断面積(mm2)(厚さとして上記の積層フィルムの全厚さを使用して計算)で除した数値を値とした。なお、5点測定し、その平均値をF5値とした。
【0048】
(5)基材フィルム中に含有される粒子の平均粒子径(μm)
島津製作所製遠心沈降式粒度分布測定装置(SA−CP3型)で測定した等価球形分布において大粒子側から積算した積算体積分率50%の粒径を平均粒子径(μm)とした。
【0049】
[塗布剤]
実施例および比較例において使用した塗布剤は、下記のとおりである。
<ポリエステル系ポリマー:A>
ジカルボン酸中のテレフタル酸90モル%、5−ソジウムスルホイソフタル酸10モル%、グリコール中のエチレングリコール73モル%、ジエチレングリコール27モル%よりなるポリエステル系ポリマー
<アクリル系ポリマー:B>
メタクリル酸35モル%、メタクリル酸アルキル35モル%、スチレン30モル%よりなるアクリル系ポリマー
<架橋剤あるいは架橋性高分子:C1>
テトラグリセロールテトラグリシジルエーテルを主成分とする水溶性エポキシ化合物
<架橋剤あるいは架橋性高分子:C2>
ほぼ4官能のメチロールおよびメトキシメチロールメラミンの1核体、2核体、3核体を中心とする水溶性メラミン化合物
【0050】
実施例1
シリカ粒子(平均粒子径1.2μm)を0.7%含有するポリエチレンナフタレートペレット(固有粘度0.55)を、十分に加熱乾燥した後、押出機に供給し、305℃で溶融押出して未延伸フィルムとした。この際、押出機には、異物除去のために10μmカットのフィルター、脈動を抑えて計量吐出するようにギヤーポンプを設置し、かつメルトラインには溶融ポリエステルの温度分布を均一化させるためのスタティックミキサーを設置した。
Tダイよりフィルム状に押出し、これに静電密着法を用いて表面温度60℃の冷却ドラムに巻きつけて冷却固化させた。Tダイの口金は、スリット間隙が1.1mmであった。またこの静電密着法では、厚さ20μm、幅2mmのコバルト−クロム−モリブデン−カーボンのアモルファス金属ブレードを用いて、6kVを印加した。さらにキャスティング行うゾーンを小部屋として囲い、空調機等の風による影響を遮断した。この結果、溶融ポリエステルが冷却ドラムに接地する接地ラインのゆらぎを、有効製品幅全域でほぼ0とすることができた。
【0051】
この未延伸フィルムを、次に縦延伸工程へと導いた。縦延伸は、ロール延伸法を用いて行い、1段目の延伸は130℃で2.70倍とした後、さらに2段目は123℃で1.90倍の延伸を行った。この際、1段目および2段目の延伸時ともに、周速差を利用して延伸を行う低速ロールと高速ロールには、各々ロールからフィルムが離れる位置、およびロールにフィルムが接する位置にニップロールを設置して、延伸区間で塑性変形が開始する位置および終了する位置のゆらぎが発生しないように、フィルムをロールに押さえ付けて縦延伸を行った。
【0052】
この一軸延伸フィルムの片面に空気中でコロナ放電処理を施し、その処理面にグラビア塗布方式で、下記表1に示す固形分比となるように各々の水分散液あるいは水溶液を混合したものを塗布した。
この塗布処理の後に、乾燥・予熱工程に導いたが、このとき塗液が塗布されたフィルムができるだけ振動しないように次の手段を講じた。
まずグラビアコーターとテンター入り口までの間隔(2m)に、2本のフリーロールを等間隔となるように設置して、塗液が塗布してある面とは反対の面に、フィルムの抱き角が2゜となるように接触させた。次にテンタークリップでフィルムの両端部(耳部)を把持し、インバーター制御で脈動を抑えた熱風をフィルムに当てて、塗液の水分の除去を行った。この際に塗布層の水分が無くなるに従って徐々にフィルムの温度が上昇し、この結果フィルムが熱膨張して中央部が弛む現象が見られた。そこで中央部の弛みがなくなるまで、テンターの奥へ行くほど広くなるようにクリップ幅を微小に広げた。
【0053】
上記処方を講じることで、塗布液のコーター出口から塗布層の水分が十分に蒸発するまでの乾燥区間内で、フィルムが受けた振動の振幅は、最大で1.5cmであった。
次いで、横方向に135℃で4.8倍延伸し、連続したテンター内で、230℃2秒間の熱処理を行った。この後、180℃でクリップ幅を3%縮めて弛緩処理を行い、冷却ゾーンを通過させて、最終的に厚さ0.09μmの塗布層が積層された、積層フィルムを得た。この塗布層は昇華型インクとの接着力を向上(易接着)するものである。
【0054】
この積層フィルムを500mm幅にトリミングしつつ、内径6インチ、肉厚10mmの巻き芯に巻きずれが起きないような適度な硬度でロール状に30000m巻き取った。
得られた積層フィルムの特性を評価した。結果を下記表2に示す。
【0055】
次にこのロール状の積層フィルムから下記に示す方法で高温高湿処理した後、昇華型感熱転写リボンを作成し、諸特性を評価した。
<高温高湿処理後の昇華型感熱転写リボンの製造および印刷画像の濃度むらおよび異常転写の評価>
上記で得られたロール状の積層フィルムを40℃、80%R.H.に調整した恒温恒湿室に入れ、24時間処理した。処理後、恒温恒湿内を23℃50%R.H.に変更し、そのまま24時間放置した。この後、取り出した積層フィルムを巻き出して塗布層の反対面に、複数の回転するローラー上を搬送させた後、積水化学社製ポリビニルブチラール エスレックBX−1が2部、大日本インキ社製ポリイソシアネート バーノックD750−45が9部、第一工業製薬社製リン酸エステル滑剤 プライサーフA208Sが2部、日本タルク社製タルク ミクロエースL−1が0.3部およびトルエン/メチルエチルケトン(以下MEKと略記する)=1/1(重量比)が86.7部からなる塗布液をグラビア塗布法により塗布し、乾燥して最終厚さ1.0μmの耐熱易滑層を設けた。
【0056】
次に、上記の耐熱易滑層の設けられたフィルムを複数の回転するローラー上を搬送させた後、耐熱易滑層と反対面の塗布層上に下記に示す組成のインク塗布液を各々グラビア塗布法により塗布し、乾燥して各々、最終厚さ1.0μmの昇華型インク層を設けた。
インク塗布液組成
イエロー:
マクロレックスイエロー6G (バイエル社製) 2部
ポリビニルアセトアセタール KS−5D(積水化学社製) 3部
トルエン/MEK=1/1(重量比) 95部
マゼンダ:
バイミクロンVPSN2670 (バイエル社製) 3部
ポリビニルアセトアセタール KS−5D(積水化学社製) 4部
トルエン/MEK=1/1(重量比) 93部
シアン:
カヤセットブルー714 (日本化薬社製) 4部
ポリビニルアセトアセタール KS−5D(積水化学社製) 4部
トルエン/MEK=1/1(重量比) 92部
さらに、これを、所定の幅に裁断して、カセットに組み込んでインクリボンとした。
【0057】
これらのインクリボンカートリッジを、市販のカラープリンターに組み込んで、昇華転写モードで印刷を行った。なお印刷紙は、プリンター標準の専用紙を用いた。
【0058】
濃度むらのテストでは、人の顔写真のデジタルデータ(データサイズ約32Mb、A4サイズ画像)を基に、同じ画像を連続して3枚印刷し、色調の再現性を評価した。評価は、3枚の画像について、目視で注意深く全体の色調を比較すること、および東京電色社製カラーアナライザー TC―1800MKII型を用いて、肌色部分の同じ個所を測定し、色差の最大値を求めた。目視での評価の基準は、色調の再現性について次の3つのランクに分けた。
【0059】
◎:(優秀)画像の色調に、全く差を認められず再現性が良好である
○:(良好)画像に色調の差が認められるが、よほど注意深く見ないと認識できない
×:(不良)画像に色調の差が認められ、一目見て差が認識できる(不適格)
【0060】
異常転写のテストは、上記濃度むら(色調むら)のテストと同様に昇華転写モードで印刷した3枚の画像を目視観察して、インク層が異常転写しているかどうかについて次の3つのランクに分けた。
【0061】
◎:(優秀)異常転写が全く認められない
○:(良好)わずかではあるが異常転写が認められるが、よほど注意深く見ないと認識できない
×:(不良)しばしば異常転写が認められ、実用上、使用できない(不適格)
【0062】
<昇華型感熱転写リボンの印字しわ、印字ぬけの評価>
上記で作成したインクリボンカートリッジを市販のカラープリンターに組み込んで、昇華転写モードでベタ印刷(同一色で一様に印刷)を各々のインクについて行った。なお印刷紙は、プリンター標準の専用紙を用いた。このベタ印刷を行った後のすべてのインクリボンおよびベタ印字部分を目視観察し、印字しわおよび印字ぬけの様子を次の3つのランクに分けた。
【0063】
◎:(優秀)印字しわ、印字ぬけが全く認められない
○:(良好)わずかではあるが印字しわ、印字ぬけが認められるが、よほど注意深く見ないと認識できない
×:(不良)しばしば印字しわ、印字ぬけが認められ、実用上、使用できない(不適格)
以上の評価結果をまとめて表2に示す。
【0064】
実施例2
実施例1において、最終の基材のポリエチレンナフタレートフィルムの厚さが実施例1のそれと同一になるように未延伸シートの厚さを変更し、縦延伸の2段目の倍率を1.6倍に変更し、塗布層の最終厚さが実施例1と同じになるように塗液の固形分濃度を調整し、かつ、横延伸の倍率を4.3倍に変更したほかは、全く同様にして積層フィルムを作成した。この積層フィルムの特性を評価した結果を表2に示す。さらに、実施例1と全く同様にして、高温高湿処理後、昇華型感熱転写リボンを作成し、諸特性を評価した。得られた結果を表2に示す。
【0065】
比較例1
実施例1と同じポリエステル原料を用いて、実施例1と全く同様にして押し出し・キャスティング・縦延伸・コロナ放電処理を行い、さらに同様の塗液を同じ方法で塗布した。
この後、実施例1で行った乾燥区間内のフィルム振動対策のうち、グラビアコーターとテンター入り口までの間隔にフリーロールを設置せずに、テンタークリップでフィルムの両端部(耳部)を把持させた。この後インバーター制御で脈動を抑えた熱風をフィルムに当てて、塗液の水分の除去を行った。この際に、テンターの奥へ行くほど広くなるようにクリップ幅を微小に広げることをせずに、中央部に弛みができた状態で乾燥区間を通過させた。乾燥区間内で、フィルムが受けた振動の振幅は、最大で7cmであった。
【0066】
次いで、実施例1とまったく同様に横延伸・熱固定・幅弛緩を行い、積層フィルムを得た。この積層フィルムの特性を評価した結果を表2に示す。さらに、実施例1と全く同様にして、高温高湿処理後、昇華型感熱転写リボンを作成し、諸特性を評価した。得られた結果を表2に示す。
【0067】
比較例2
実施例1において、塗液の組成を表1に示す組成に変更した以外は全く同様にして積層フィルムを得た。この積層フィルムの特性を評価した結果を表2に示す。さらに、実施例1と全く同様にして昇華型感熱転写リボンを作成しようとしたが、40℃、80%R.H.処理後のロール状積層フィルムはフィルム同士が強く貼り付いて巻き出すことができず、加工不能であった。
【0068】
実施例3
平均粒子径1.2μmのシリカ粒子を0.7%含有する固有粘度0.66のポリエチレンテレフタレートペレットを、十分に加熱乾燥した後、押出機に供給して290℃で溶融押出して未延伸フィルムとした。この際押出機には、実施例1と同様のフィルター、ギヤーポンプ、およびスタティックミキサーが各々設置されている。Tダイよりフィルム状に押出し、これに静電密着法を用いて表面温度40℃の冷却ドラムに巻きつけて冷却固化させた。Tダイの口金は、スリット間隙が1.1mmであった。またこの静電密着法では、実施例1と同じアモルファス金属ブレードを用いて、同じ電圧を印加した。さらに実施例1と同様に、キャスティング行うゾーンを小部屋として囲い、空調機等の風による影響を遮断した。この結果、溶融ポリエステルが冷却ドラムに接地する接地ラインのゆらぎを、有効製品幅全域でほぼ0とすることができた。
【0069】
この未延伸フィルムを、次に縦延伸工程へと導いた。縦延伸は、ロール延伸法を用いて行い、1段目の延伸は100℃で2.70倍とした後、さらに2段目は87℃で1.60倍の延伸を行った。この際、1段目および2段目の延伸時ともに、低速ロールと高速ロールには、実施例1と同様の位置にニップロールを設置して、延伸区間で塑性変形が開始する位置および終了する位置のゆらぎが発生しないように、フィルムをロールに押さえ付けて縦延伸を行った。
【0070】
この一軸延伸フィルムの片面に空気中でコロナ放電処理を施し、その処理面にグラビア塗布方式で、表1に示す組成に変更し、かつ、塗布層の最終の厚さが実施例1と同じになるように塗液の固形分を変更した以外は実施例1と全く同様にして塗布した。
この塗布処理の後に、乾燥・予熱工程に導いたが、このとき塗液が塗布されたフィルムができるだけ振動しないように、実施例1と全く同様の手段を講じた。この処方を講じることで、塗布液のコーター出口から塗布層の水分が十分に蒸発するまでの乾燥区間内で、フィルムが受けた振動の振幅は、最大で1.5cmであった。
【0071】
次いで、横方向に105℃で4.4倍延伸し、連続したテンター内で、220℃2秒間の熱処理を行った。この後180℃でクリップ幅を3%縮めて弛緩処理を行い、冷却ゾーンを通過させて、最終的に厚さ0.09μmの塗布層が積層された、積層フィルムを得た。
この積層フィルムの特性を評価した結果を表2に示す。さらに、実施例1と全く同様にして、高温高湿処理後、昇華型感熱転写リボンを作成し、諸特性を評価した。得られた結果を表2に示す。
【0072】
実施例4
実施例3において、平均粒子径が2.0μmの炭酸カルシウム粒子を0.24%含有する固有粘度0.66のポリエチレンテレフタレートペレットに変更する以外は全く同様にして積層フィルムを得た。この積層フィルムの特性を評価した結果を表2に示す。更に実施例1と全く同様にして高温高湿処理後のロール状の積層フィルムを巻き出した際、フィルム間が一部、固着しており、ときたま、破断が発生し、昇華型感熱転写リボンを作成するのに、歩留まり(生産性)が若干、低下した。得られた昇華型感熱転写リボンの諸特性を評価した。得られた結果を表2に示す。
【0073】
【表1】
【0074】
【表2】
【0075】
以上のように、本発明で特定した要件のいずれかを満足しない場合には、昇華型インクリボンとしてのすべての特性を満足することはできなかった。
【0076】
【発明の効果】
本発明の感熱転写用積層フィルムは、薄膜化されても、高速印刷に極めて優れ、その工業的価値は甚大である。
Claims (1)
- 水溶性または水分散性の有機高分子化合物を含む塗液を、配向結晶化が完了する前のポリエステルフィルムの少なくとも片面に塗布し、次いで、乾燥区間の振動によるフィルムの振幅を5cm以下として乾燥し、延伸・熱処理を施すことによって塗布層を形成することを含んでなる、全厚み1.0〜7.0μmの感熱転写用積層フィルムの製造方法であって、
得られる積層フィルムの長手方向の任意の5m長区間から無作為に抽出した20点において測定した最大厚さ、最小厚さおよび平均厚さから、下記式:
【数1】
厚さむら(%)={(最大厚さ−最小厚さ)/平均厚さ)}×100
により求めた当該フィルムの厚さムラが15%以下であり、下記方法により測定した前記塗布層の固着力が100gf/125mm以下であることを特徴とする製造方法:
積層フィルムから切り取った2枚の試験片を、一方の塗布面と、他方のこれと反対の面が接するように重ね合わせ、40℃、80%R.H.に調節された恒温恒湿室内で、幅12.5cm、長さ10.0cmの長方形部分を圧力10kgf/cm2でプレスした状態で24時間放置した後、圧力を解除し、恒温恒湿室内を23℃、50%R.H.に変更し、そのまま24時間放置する。放置後、試験片を取り出し、重ね合わせた2枚の試験片の間に緊張させた線径0.8mmφのピアノ線を通し、プレスした長方形の幅12.5cmの辺に平行に維持した状態で、ピアノ線を50cm/分の速度で移動して前記のプレス部分を剥離する。この剥離の際にピアノ線にかかった剥離荷重(gf/125mm幅)値のチャートから平均線を求める。
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